説明

植物ダニエリア・オリベリの滲出物の抽出物の、特に抗シワ剤としての化粧品分野での使用

【課題】植物ダニエリア・オリベリの滲出物の抽出物の、化粧品組成物における使用又は化粧品組成物の製造方法の提供。
【解決手段】植物ダニエリア・オリベリの滲出物の抽出物を化粧品組成物に使用すれば、シワ及び/又は小ジワの深さを低減することを通してより滑らかな外観を皮膚表面に与えること及び/又は皮膚表面に再膨化効果をもたらすことにより、皮膚表面を改善することができる。前記滲出物は、少なくとも部分的に、前記植物の含油樹脂で構成されている。また、問題となっている皮膚の領域にこの抽出物を含有する化粧品組成物を塗布し、シワ及び小ジワの深さを低減することを通してより滑らかな外観を皮膚表面に与えること及び/又は皮膚表面に再膨化効果をもたらすことにより、皮膚表面を改善する美容ケア方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、化粧品分野に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、植物ダニエリア・オリベリ(Daniellia oliveri)より具体的には、この植物の天然滲出物から得られる抽出物の化粧品分野での使用に関する。
【0003】
本発明は、より具体的には、化粧品分野でのそのような滲出物の抽出物の化粧品組成物での使用、又は、皮膚表面に再膨化効果をもたらすことによってシワ及び/又は小ジワの深さを低減することを通して皮膚表面に滑らかな外観を与えることによる、皮膚表面の改善を目的とした化粧品組成物の調製のための使用に関する。
【0004】
ダニエリア属の樹木は、地理的には熱帯アフリカに分布している。ダニエリア・オリベリは、西アフリカ(ブルキナファソ、コートジボアール、ナイジェリアなど)で主に見られる。ダニエリア・オリベリは、スーダン及びギニアのサバンナの植物種の1つである。
【0005】
マメ科(Fabaceae又はLeguminosae)に属するダニエリア属は、シアノシルサス・ハルムス(Cyanothyrsus harms)又はパラダニエリア・ロルフェ(Paradaniellia rolfe)などの他の植物学的異名でも知られている。
【0006】
ダニエリア・オリベリ種は、ダニエリア・オリベリ(ロルフェ)ハッチ&ダルズィール(Hutch&Dalziel)という植物学的名称でも知られている。
【0007】
この種は、他の植物学的異名、特にパラダニエリア・オリベリ・ロルフェ(Paradaniellia oliveri Rolfe)でも知られている。
【0008】
トロピカルエッセンスであると見なされているダニエリア属の種の木部のエッセンスを意味することが望まれる場合、この植物は、ファロ(Faro)又はオゲア(Daniellia)という名前でも知られている。
【0009】
ダニエリア・オリベリは、先端が広がっている比較的高くて細長い樹木であり、15〜20mの高さに達する。その葉は、開花時にはピンクから赤色であり、その鱗状樹皮は灰色で、白色の縞模様の深赤色の切れ込みがある。その幹は、含油樹脂の形態で滲出物を分泌する。その生産量は、自然現象、例えば、樹皮を分解するイモムシなどの寄生虫による攻撃、又は山火事の時に増幅し得る。おがくず及び含油樹脂の形態をした樹皮の混合物は、一般に、樹木の根元で見出される。
【0010】
ダニエリア・オリベリ種は、様々な医薬の用途で伝統的に使用されている。
【0011】
ブルキナファソでは、その葉は、肝臓障害を伴うマラリア及び白目の黄疸(white jaundice)の治療の一部である。その樹皮は、下痢症の治療のために使用される。その葉の茂った幹は、妊娠中の疲労及び痛みに対して使用される。その種子から抽出された油は、皮膚障害の治療に使用される。他に苞葉とも呼ばれる、その付け根から花が発生するその葉は、そこから汁を飲みこむように噛むと、咳を治療するために使用され得る。
【0012】
その葉(煮出液として)及びその樹皮(煎じ液として)は、利尿薬及び催淫薬として使用される。その際、その治療薬は、ローションのように体に塗布される。乾燥させた葉の粉末は、黄熱病、腰痛及び頭痛の治療のために経口摂取され、傷に塗布され得る。
【0013】
したがって、化粧品分野での該植物の使用は文献で明らかにされておらず、再膨化効果による抗シワ剤としてはなおさら明らかにされていない。
【0014】
本発明の主題を形成するのは、まさにこの様式の使用である。
【0015】
実際、本発明の発明者らは、驚いたことに予想外にも、植物ダニエリア・オリベリの滲出物の抽出物、より具体的には、この植物の含油樹脂を含有する抽出物が、抗シワ活性を有し、皮膚表面の外観を向上させるため、特にシワの深さを低減し小ジワを消失させるための化粧剤として使用され得ることを今や見出した。
【0016】
本発明者らは、この活性が、脂肪細胞又は前脂肪細胞の体内の脂質生成に対する刺激活性と、少なくとも部分的に関連があることを実証することもできた。このことは、細胞外タンパク質ネットワークとのより良好な接触を生じる、後者の細胞体積の増加によって反映される。したがって、真皮は、シワ及び小ジワの深さを低減し、結果としてそれらを目立たなくすることを可能にする、わずかな膨張によって再膨化される。
【0017】
この活性の発見により、本発明者らは、皮膚表面の外観を向上させるための、非常に独創的な解決策を提案できるようになった。この解決策は、治療すべき皮膚の部分に、植物ダニエリア・オリベリの滲出物から得られる抽出物を有効量塗布することにある。
【0018】
研究を継続することにより、本発明の発明者らは、該滲出物が、カダレン、すなわち、式C1518の1,6−ジメチル−4−(1−メチルエチル)ナフタレン誘導体を含有し、このカダレンが該抽出物の活性に少なくとも部分的に関与していることを実証することもできた。
【0019】
本発明者らは、カダレンについて該抽出物を濃縮するように、抽出の方法を向上させることもできた。
【0020】
したがって、第1の本質的特徴によると、本発明は、植物ダニエリア・オリベリの滲出物の抽出物の、化粧品組成物での使用又は化粧品組成物の製造のための使用に関し、前記滲出物は、少なくとも部分的に前記植物の含油樹脂で構成されている。
【0021】
第2の本質的特徴によると、本発明は、シワ及び小ジワの深さを低減することを通してより滑らかな外観を皮膚表面に与えること及び/又は皮膚表面に再膨化効果をもたらすことによって、皮膚表面を改善するための美容ケア方法に関し、これは該滲出物の抽出物を含有する化粧品組成物を、問題となっている皮膚の領域へ塗布することを含む。
【0022】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明、及びまた例示的な実施形態で明らかになろう。
【0023】
以下の本文では、用語「本発明の抽出物」は、それ自体が少なくとも部分的に該植物の含油樹脂で構成されている滲出物から得られる抽出物を示し、用語「本発明の組成物」は、本発明の抽出物を含有する化粧品組成物を示す。
【0024】
上で開示したものから明らかになるように、滲出物が該樹木の幹から自然に分泌され、その生産量が、樹皮を分解するイモムシなどの寄生虫の攻撃などの自然現象によって増大され得ることは、一般に知られている。
【0025】
したがって、木部及び/又は樹皮の含油樹脂とおがくずとを両方含有する混合物は、一般に幹に沿って流れる。そのような混合物は、本発明の抽出物の調製方法を実行するのに特に好ましい滲出物を構成する。
【0026】
本発明の滲出物の抽出物は、以下の実施例から明らかになるように、シワ及び/又は小ジワの深さを低減することを通してより滑らかな外観を皮膚表面に与えること及び/又は皮膚表面に再膨化効果をもたらすことにより、皮膚表面を改善するための化粧剤として使用され、したがって、本発明の組成物に抗シワ特性を賦与する。
【0027】
本発明の抽出物は、無極性溶媒を用いる少なくとも1つの抽出ステップを含む方法によって該滲出物を処理することにより得られることが特に有利である。
【0028】
広範囲の溶媒が使用され得る。しかし、好ましくは、Veronika R.Meyer in Practical High−Performance Liquid Chromatography (1988),John Wiley and Sons,p.120−121によって発表されたような極性による溶媒の分類を参照すると、極性パラメーターP’が−2と0.2の間の溶媒又は溶媒の混合物が、選択されよう。
【0029】
この無極性溶媒は、有利には、メトキシノナフルオロブタン、エトキシノナフルオロブタン、又は1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンなどのフルオロアルカン及びその誘導体、シクロヘキサン、シクロヘプタン、ヘプタン、イソヘプタン、ヘキサン並びにペンタン、及びこれらの混合物を含む群から選択されよう。
【0030】
本発明の特に有利な変法によると、超臨界状態のCOが無極性溶媒として使用される。
【0031】
無極性溶媒、特に超臨界状態のCOを、前記無極性溶媒の極性を変性させるための作用剤の存在下で使用することが、特に有利であることが分かった。この極性変性剤は、極性溶媒から有利に選択される。好ましくは、メタノール、エタノール又はエタノール/水混合物が使用されよう。
【0032】
一般に、極性変性剤として使用される溶媒は、主な溶剤を構成する無極性抽出剤と比較して低い比率で存在することになろう。この変性剤は、一般に、無極性溶媒に対して0〜10重量%、好ましくは0〜3重量%の比率で含まれよう。
【0033】
上で開示したように、本発明の発明者らが実施した試験によって、カダレンが本発明の抽出物の活性に主に関与していることを実証することが可能となった。
【0034】
この新しい発見は、本出願の発明者らが、カダレンの全く予期されていない特性を実証することができたので、それ自体が発明に相当する。実際、後者は、脂肪細胞又は前脂肪細胞の脂質生成を刺激することを可能にし、それらの細胞体積を増加させ、上で開示したように、シワ及び小ジワの深さの低減をもたらし、結果としてそれらを目立たなくさせることが可能になる。
【0035】
したがって、本発明の発明者らは、特にシワ及び小ジワの深さを低減する皮膚老化防止剤としての、カダレン及びカダレンを含有する植物の抽出物の新しい用途を示すことができた。
【0036】
好ましくは、本発明の抽出物のうち、カダレンを含有するものが選択されよう。
【0037】
好ましくは、カダレンの最終抽出物を濃縮可能にする抽出方法が使用されよう。これは特に、適切な場合には極性変性溶媒の存在下で、滲出物を無極性溶媒を用いて処理した後で得られる抽出物を、フラッシュクロマトグラフィー技術及び/又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)技術によって処理することによって可能となろう。
【0038】
本発明の化粧品組成物は、0.01重量%〜5重量%、より一層良好には0.1重量%と1重量%の間の前記乾燥抽出物を含有することが有利である。
【0039】
本発明の化粧品組成物は、局所適用に適合する様々な形態で製剤化されてよく、特にローション、乳液、ゲルクリーム又は特に唇の周囲のためのスティックの形態でもよい。
【0040】
最後に、本発明の化粧品組成物は、ガラクトリピド、特にガラクトシルグリセリドなどのフィブロネクチン合成に作用する生成物、並びに/又は、特にI型プロコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸、ビタミンC、α−リポ酸及びそれらの化粧品として許容可能な誘導体などのコラーゲン、特にコラーゲン及びその前駆体の合成に作用する生成物も含有してもよい。
【0041】
フィブロネクチン合成に作用する生成物として、ガラクトリピド、特にモノガラクトシルモノグリセリド(MGMG)、モノガラクトシルジグリセリド(MGDG)、ジガラクトシルモノグリセリド(DGMG)及びジガラクトシルジグリセリド(DGDG)が挙げられよう。有利には、モノ又はジガラクトシルジグリセリドが選択されよう。
【0042】
エラスチン合成に作用する生成物として、ビタミンCが挙げられよう。
【0043】
該組成物は、有利には、微小循環に作用する生成物、特にシナモンの抽出物、イチョウの抽出物又は毛氈苔の抽出物も含有してもよい。
【0044】
本発明は、シワ及び小ジワの深さを低減することを通してより滑らかな外観を皮膚表面に与えること及び/又は皮膚表面に再膨化効果をもたらすことにより、皮膚表面を改善するための美容ケア方法にも関する。この方法は、問題となっている皮膚の領域へ、上で定義した化粧品組成物を塗布することを含む。
【0045】
本発明の他の特徴及び利点は、以下に単に例示のために示す実施例を読めば明らかになろう。
【実施例】
【0046】
[実施例1:本発明の抽出物の調製]
[1.a 3%エタノール存在下での超臨界COを用いた抽出]
樹脂及びおがくず半量ずつからなる滲出物60gを、SeparexモデルSF500という名称の装置を使用して、60℃、290バールで、2.8%のエタノールを含む超臨界COを用いた抽出によって処理する。COを超臨界状態からガス状態へ減圧した後、エタノール抽出物を得て、引き続き、エタノールを除去するためにそれを真空蒸発ステップに付す。
【0047】
こうして得た抽出物は、オレンジ色のペーストの形態である。
【0048】
抽出物Iと示すこの抽出物を、引き続き、動物実験のための原液を調製するために、DMSO中で重量体積比5%で可溶化する。
【0049】
[1.b メトキシノナフルオロブタンを用いた抽出による抽出物の調製]
実施例1.aと同じ出発原料100gを、還流(67℃)下、磁気攪拌しながらメトキシノナフルオロブタン(HFE7100)500mLを用いて処理する。抽出時間は3hであり、得た懸濁液を、減圧下で濾過する。その濾液を、40℃で回転蒸発器中で蒸発させる。
【0050】
IIと示すこの抽出物を、動物実験のための原液を調製するために、DMSO中で重量体積比5%で溶解する。
【0051】
[1.c エトキシノナフルオロブタンを抽出溶媒として使用する抽出物の調製]
この手順を、実施例1.bのように実施するが、別のフッ素化溶媒、エトキシノナフルオロブタンを使用する。
【0052】
出発原料100gを、76℃の還流下、磁気攪拌しながら溶媒(HFE7200)500mLを用いて抽出する。
【0053】
抽出時間は3hである。得た懸濁液を、減圧下で濾過する。
【0054】
その濾液を、40℃で回転蒸発器中で蒸発させる。
【0055】
IIIと示すこの抽出物を、動物実験のための原液を調製するために、DMSO中で重量体積比5%で溶解する。
【0056】
[1.d 1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンを抽出溶媒として使用する抽出物の調製]
前の実施例と同じ出発原料100gを、還流(40℃で)下、磁気攪拌しながら溶媒500mLを用いて処理する。
【0057】
抽出時間は3hである。
【0058】
得た懸濁液を、減圧下で濾過する。
【0059】
その濾液を、周囲温度で回転蒸発器中で蒸発させる。
【0060】
IVと示すこの抽出物を、動物実験のための原液を調製するために、DMSO中で重量体積比5%で溶解する。
【0061】
[1.e カダレンが豊富な精製抽出物の調製]
第1のステップで、樹脂とおがくずの同じ出発混合物76gを、実施例1.aで記載した条件下で処理する。
【0062】
次いで、依然としてオレンジ色のペーストの形態の、第1の抽出物約10gを得る。
【0063】
第2のステップで、この第1の抽出物8.81gを、引き続き、ヘプタン及びシリカからなるシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(70〜230メッシュの多孔度の極性固定相)によって分別する。
【0064】
ヘプタン及びジエチルエーテルの様々な混合物を、極性が増大する溶媒勾配を生じるように調製し、それらを用いて、窒素流によって押し出される様々な画分を得る。
【0065】
以下の表1は、分別の結果を示す。
【0066】
【表1】

【0067】
こうして得た各画分は、210nm及び230nmでの二重のUV検出を用いてHPLCによって分析する。
【0068】
画分F5は、所望のカダレンを含む。したがって後者は、引き続き、以下の条件で、分取高速液体クロマトグラフィー(島津製の装置)による第3のステップで精製する。
逆極性固定相:Lichrospher 100 RP 18カラム(LXI:250×25mm、直径:5μm)。
【0069】
水/アセトニトリル混合物からなる溶離勾配を有する移動相(以下の表2参照)
【表2】

【0070】
流量:20mL/分。
230nmでのUV検出。
注入:アセトニトリル2mL中に溶解した124mgの画分5。
【0071】
カダレンのピークは、20.1分で現れる。回収した相は、減圧下で回転蒸発器で蒸発させる。純度が95%(HPLCによって210nmで推定)のカダレン7.7mg(油の形態)を回収する。
【0072】
Vと示すこの抽出物は、動物実験のための原液を調製するために、DMSO中で2.75%(w/v)で溶解する。
【0073】
[実施例2:本発明の抽出物の脂質生成に対する作用の実証]
使用する細胞は、正常なヒト前脂肪細胞(供給源はR&D biotech)である。
【0074】
集密状態の細胞は、その早期分化段階に入るように、分裂を初期に停止する。この分化の結果、細胞のコロニーが形成され、これが脂肪細胞へ変換される。
【0075】
この分化は、いくつかのタンパク質の生合成の変化、及びGPDHとして知られているグリセロール−3−リン酸脱水素酵素を含めた様々な酵素活性の増大を伴う。
【0076】
PDHは、細胞内脂質(トリグリセリド)の新合成に後に関与する分子、グリセロール−3−リン酸の形成を可能にすることが想起される。したがって、GPDHの活性の増大は、この合成の強化と直接関連している。
【0077】
本発明者らは、本発明のダニエリア・オリベリの抽出物の、このモデルに対する効果を試験した。
【0078】
[1−使用した生成物]
脂質生成を増大させるために使用した正の対照は、Silab社が販売しているPulpactyl(登録商標)である。それはブチレングリコール及びサザンウッド(Artemisia abrotanum)の滅菌水性溶液である。Pulpactyl(登録商標)は、培地中で0.5%の濃度で直接使用する。
【0079】
本発明のダニエリア・オリベリの抽出物I〜Vは、それら全てを25mg/mLの同じ濃度で試験するように、DMSO中に溶解する。本発明の抽出物は、0.1%v/v、すなわち、25μg/mLの活性剤の最終濃度で培地に導入する。同時に、最終濃度0.1%v/vでの賦形剤対照(DMSO)を調製した。
【0080】
[2−培養プロトコル]
使用する細胞は、正常なヒト前脂肪細胞(供給源はR&D biotech)である。
【0081】
前脂肪細胞を、前脂肪細胞成長培地入りの12ウェル培養マイクロプレートの底に播種し、集密に至らせる。分化段階の間、細胞は、ウシインシュリン(0.5μg/mL)、デキサメタゾン(400ng/mL)及びA.G.Scientific Inc.が販売しているIBMX(44μg/mL)又は3−イソブチル−1−メチルキサンチンで補足された前脂肪細胞分化培地(R&D biotechによって供給された)の存在下で培養する。
【0082】
本発明の抽出物を用いた処理の段階の間、もはやインシュリンを含有していないが、3%ウシ胎児血清(FCS)を含有している脂肪細胞栄養培地を使用する。
【0083】
本発明の抽出物は、三重に試験する。
【0084】
培養操作は、以下の方法で実施する。
D=0日:前脂肪細胞分化培地中に5000細胞/cmの割合で播種する。
D=2及びD=4:培地を変える。
D=6:前脂肪細胞分化培地を用いて3日間培養する。
D=9〜D=18:脂肪細胞栄養培地を用いて培養する。
D=18:本発明の試験抽出物25μg/mLを含有する脂肪細胞栄養培地で培地を交換する。
処理を24時間後に繰り返す。
処理の48時間後に、GPDH活性を検定するために培地を取り除き、細胞を磨砕する。
【0085】
[3−GPDH活性の検定]
[3−1 細胞可溶化物の回収]
吸引により培地を取り除いた後、1ウェル当たり500μLの溶解緩衝液(Tris25mM、EDTA1mM、pH7.5)を添加する。細胞をかき取ってエッペンドルフチューブに回収した後、上澄みを取り除くことができるようにするために、それを6000gで5分間遠心分離する。後者は、後でGPDH活性及びタンパク質を検定するために、−20℃で凍結させる。
【0086】
[3−2 GPDH活性の検定]
3−2.1 原理
細胞単層は、かき取りにより回収し、4℃で1mmolのEDTAを含有するTRIS−HCl緩衝液(25mM、pH7.4)中で勢いよく均質化する。GPDH活性の検定は、遠心分離の直後に、磨砕した細胞物質の上澄みに対して実施する。
【0087】
PDHは、以下の反応を触媒する。
【化1】

【0088】
試験した各生成物について、酵素反応の速度、したがってGPDH酵素の活性を反映する補酵素NADH(水素化ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)のNADへの変換を、1分後の340nmでの分光測定によって測定する。
【0089】
t=0とt=1分の間の酵素反応の初期速度に相当する吸収差(ΔAbs)/分は、計算することができる。
【0090】
細胞タンパク質の総量は、BCA−PIERCE方法、タンパク質測定試薬によって評価する。
【0091】
3−2.2 反応媒質
1.5mMのNADH(Sigma、N7410):2mg/検定緩衝液(トリエタノールアミン50mM、EDTA1mM、pH7.5)1.925mLの溶液50μL。
1mMのジヒドロキシアセトン(Sigma、D7137):3.6mg/検定緩衝液(トリエタノールアミン50mM、EDTA1mM、pH7.5)2mLの溶液50μL。
検定緩衝液:350μL
磨砕した細胞物質:50μL。
【0092】
3−2.3 結果−GPDH活性
結果は以下の表4に示し、GPDH活性は百分率で表す。この値は、本発明の抽出物のΔ吸光度の値を、細胞の基礎活性(すなわち、100%の活性)を表すと考えられる賦形剤対照の値と比較することによって得られる。
【0093】
【表3】

【0094】
上の表から、本発明の生成物が、対照培養液中のGPDH酵素の活性と比較すると、正常なヒト脂肪細胞の培養液中のGPDH酵素の活性を非常に大幅に増大させることが明らかになる。したがって、本発明の生成物が、細胞内脂質(トリグリセリド)の合成の実質的な増大に寄与することが実証される。
【0095】
[実施例3:本発明の化粧品組成物]
以下の構成成分の比率は、最終組成物に対する重量百分率として表している。
[ゲル]
グリコール 3
AMPSポリマー(Sepigel305) 3
水添ヒマシ油(Cremophor CO−60) 2
ポリエチレングリコール 1.5
保存料 0.5
香料濃縮物 0.3
水 83.7
抽出物I 5
ベンゾフェノン4 1
【0096】
[クリーム]
ステアレス−21(Steareth−21)(Brij721) 2.5
ステアリン酸グリセリル(Tegin) 1.1
ステアリルアルコール 5
トリカプリン酸/トリカプリル酸グリセロール 11.5
ブチレングリコール 3
グリセリン 2
保存料 0.5
香料濃縮物 0.5
水 64.4
抽出物III 2
メトキシ桂皮酸オクチル 7.5
【0097】
[ローション]
ブチレングリコール 3
EDTA 0.1
可溶化剤 1
香料濃縮物 0.3
アルコール 5
水 適量
抽出物IV 0.05
ベンゾフェノン4 0.13
【0098】
[再膨化口紅]
ラノリン 8
ポリブテン 10
パールリーム(Parleam) 12
イソステアリン酸イソステアリル 15
テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル 15
カンデリラ蝋 5
地蝋 1.5
蜜蝋 2
ポリエチレン 6
顔料 5
真珠光沢剤 3
抽出物V 0.5
ヒマシ油 適量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物ダニエリア・オリベリの滲出物の抽出物を含む化粧剤であって、前記滲出物が少なくとも部分的に前記植物の含油樹脂で構成されている化粧剤。
【請求項2】
前記滲出物が、木部及び/又は樹皮の含油樹脂とおがくずとの混合物を含有する植物ダニエリア・オリベリの天然の滲出物である、請求項1に記載の化粧剤。
【請求項3】
シワ及び/又は小ジワの深さを低減することを通してより滑らかな外観を皮膚表面に与えること及び/又は皮膚表面に再膨化効果をもたらすことにより、皮膚表面を改善するためのものである、請求項1又は2に記載の化粧剤。
【請求項4】
前記抽出物が、無極性溶媒を用いる少なくとも1つの抽出ステップを含む方法によって前記滲出物を処理することにより得られる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化粧剤。
【請求項5】
前記無極性溶媒が、−2と0.2の間の極性パラメーターP’を有する、請求項4に記載の化粧剤。
【請求項6】
前記無極性溶媒が、メトキシノナフルオロブタン、エトキシノナフルオロブタン又は1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンなどのフルオロアルカン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、ヘプタン、イソヘプタン、ヘキサン並びにペンタン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項4又は5に記載の化粧剤。
【請求項7】
前記抽出物が、無極性溶媒として作用する超臨界状態のCOを用いた少なくとも1つの抽出ステップを含む方法で得られる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化粧剤。
【請求項8】
前記無極性溶媒が、メタノール、エタノール又はエタノール/水混合物などの、前記無極性溶媒の極性を変性するための作用剤の存在下で使用される、請求項4〜7のいずれか一項に記載の化粧剤。
【請求項9】
前記抽出物が、カダレン又は1,6−ジメチル−4−(1−メチルエチル)ナフタレンを含有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化粧剤。
【請求項10】
前記抽出物が、少なくとも1つの精製ステップ、特にフラッシュクロマトグラフィー技術及び/又は高速液体クロマトグラフィー技術によってカダレンについて濃縮される、請求項9に記載の化粧剤。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項で定義されている化粧剤を含む化粧品組成物。
【請求項12】
0.01重量%と5重量%の間、より良好にはさらに0.1重量%と1重量%の間の前記乾燥抽出物を含有する、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
局所適用のために製剤化され、ローション、乳液、ゲル、クリーム又はスティックの形態である、請求項11又は12に記載の組成物。
【請求項14】
シワ及び小ジワの深さを低減することを通してより滑らかな外観を皮膚表面に与えること及び/又は皮膚表面に再膨化効果をもたらすことにより、皮膚表面を改善するための請求項11〜13のいずれか一項に記載の美容ケア組成物。

【公開番号】特開2009−269916(P2009−269916A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−110969(P2009−110969)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(502189579)エルブイエムエイチ レシェルシェ (68)
【Fターム(参考)】