説明

植物抽出物、それを含む組成物、抽出方法及びその使用

クワ植物の葉から植物抽出物を得た。これはクワ植物の葉から抽出されたものであり、この抽出物のα−グルコシダーゼIを阻害するIC50値は濃度にして90μg/ml未満である。該抽出物は好ましくは5〜40%(w/w)の全イミノ糖及び20〜70%(w/w)の全アミノ酸を含む。該抽出物は、3つの抽出工程及び精製過程から得られ、雀卵斑、肝斑、妊娠線、老人斑及び黒色腫のような、色素沈着による病気又は疾患の治療において、メラニン生産を低下させるために用いることができる。血中グルコースレベルを制御するためにもまた使用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物抽出物、それを含む組成物、抽出方法、及び前記抽出物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
クワの葉は、アジア諸国、特に中国で、長年に渡って医薬品として使用されてきた。近年、植物化学者らが、1−デオキシノジリマイシン(DNJ)、ファゴミン、及びN−メチル−DNJなどの数多くのイミノ糖成分をクワの葉から単離している。イミノ糖の化学構造は単糖の構造と同様であり、その多くは、5〜6員環のポリヒドロキシ複素環化合物である。イミノ糖と単糖の大きな違いは、複素環のヘテロ原子にある。前者は窒素原子(N)を含むが、後者は酸素(O)を含む。
【0003】
クワの葉由来のイミノ糖成分が、α−グルコシダーゼI及びIIに対して明らかな阻害活性を呈すること、特にDNJが最も強い活性をもつことが分かってきた。さらに薬理学的な実験から、DNJがメラニン細胞に作用し、TYRの成熟過程を阻害することによってメラニン生産の低下をもたらすことが明らかになった(Genji Imokawa, Analysis of Carbohydrate Properties Essential for Melanogenesis in TYRs of Cultured Malignant Melanoma Cells by Differential Carbohydrate Processing Inhibition. The Journal of Investigative dermatology, 1990, 95(1 ):39-49; Ju Young Park, hyunjung Choi, Jae Sung hwang, Junoh Kim, Ih-Seop Chang, Enhanced depigmenting effects of N-glycosylation inhibitors delivered by pH-sensitive liposomes into HM3KO melanoma cells, Journal of Cosmetic Science, 2008, 59:139-150)。
【0004】
本発明の発明者らは、酵素を用いた一連の実験を行い、そして、本発明の抽出物として記載した、クワの葉由来の全イミノ糖抽出物(1−デオキシノジリマイシン(DNJ)、N−メチル−DNJ、及びファゴミン含量として測定した)が、純粋なDNJ化合物よりも、α−グルコシダーゼI及びIIに対する強力な阻害活性をもつことを見い出した。この発見から、そのようなクワ抽出物をα−グルコシダーゼI及びIIを阻害するために使用することが可能となり、この抽出物に含まれるDNJはより低濃度であるため、薬の副作用(ADR)を低減できる可能性があり、また、より安全に使用できるように最終的な製品を製造することができる。加えて、本発明に記載したクワ抽出物の製造にかかる費用は、純粋なDNJ化合物を製造する費用よりもかなり低いため、病気による色素沈着過度の治療にかかる費用が大幅に減少する。
【0005】
従って、そのような抽出物から作成した化粧品及び医薬品は、以下に構造を示すDNJのような、純粋な化合物を含むものよりも、効果、安全性、及び費用の面で多くの利点を有する。
【0006】
【化1】

【0007】
過去には、中国又はその他の国の多くの研究者達が、美白及びシミを少なくするための市場で、クワ抽出物を含む化粧品の商業化を試みた。しかしながら、それと比較すると、本抽出物は非常に異なる特徴や多数の利点を有する。
【0008】
中国特許第ZL99123894X号には、皮膚の色素沈着治療用の植物抽出物組成物が開示されており、この組成物は、3つの主要な成分、すなわち、クワ属の植物由来抽出物、スクテラリア属の植物由来抽出物、及びサリチル酸誘導体を含んでいる。その発明のクワ抽出物はクワの根から得られたもので主にクワノンを含むが、抽出物の正確な組成については明らかになっていない。
【0009】
米国特許出願第347884号には、同様の化粧品を目的としたクワの木の枝由来の抽出物の使用が開示されており、この抽出物中の活性成分はオキシレスベラトロール及びムルベロシドである。これら2つの発明と比較すると、本発明は以下の利点及び特徴を有する。
1.生の材料である利点。本発明で使用する生の材料、すなわちクワの葉は容易に再生でき、根及び枝よりも持続可能な資源である。また、上述した2つの発明と比較して、費用を安く抑えられる。
2.異なる作用機序。上述した2つの発明では、TYRを競合的に阻害することにより活性が達成された。本発明の作用機序は、α−グルコシダーゼの阻害を介してメラニンの生産を減少させ、成熟度の低い(かつより不活性な)TYRを生じる。
3.異なる作用成分。上述した特許では、活性成分は、フラボノイド、例えばクワノン、又はジフェニルエテノイド、例えばオキシレスベラトロール及びムルベロシドであった。一方、本発明の作用成分はイミノ糖であり、また、これらイミノ糖を豊富に含む抽出物を単離するために、異なる調製方法を用いている。
4.独特な調製方法。活性成分の抽出に最適であり、そして、例えば抽出物の物理学的特性を改善するような精製工程を確保するようにこの方法を設計しているため、抽出物は、例えば化粧品への使用により適したものとなる。
【0010】
メラニンは、人の皮膚の色を決定する上で最も重要な因子である。メラニンは、表皮基底層のメラニン細胞におけるメラノソーム中で生合成される。通常の生理学的条件下でメラニンは、紫外線による損傷から皮膚を保護している。外部因子によってメラニンの合成や代謝が阻害されると、ホルモン障害や老化などが起こり、表皮基底層のメラニンが増加して皮膚の色が黒くなる場合がある。これはその後、病気による色素沈着、又は、雀卵斑、肝斑、妊娠線、老人斑及び黒色腫のような疾患を生じる可能性がある。さらに、皮膚をより白くしたいと熱望している多数の美容愛好家がいることから、皮膚を明るくする、美白、及びシミを少なくするための薬剤及び化粧品への需要がある。
【0011】
簡単に説明すると、メラニンの生合成は以下の工程を含む。
【0012】
【化2】

【0013】
チロシナーゼ(TYR)は銅イオンをもつ糖タンパク質の1種であり、メラニン生合成に重要な酵素である。TYRは、チロシンがドーパ及びドーパキノンに変換される反応を触媒する。TYRは色素沈着の減少にとって重要な標的であると考えられており、皮膚の美白及びシミを減少させる機能をもつ製品を対象とする研究分野においてしばしば用いられている。
【0014】
TYRを標的としている現在の主な方法は、その形成及び活性を阻害して、メラニンの生産を減少させるものである。TYR阻害剤を含む現行の製品には、1,4−ジヒドロキシベンゼン(ヒドロキノン)及びその誘導体、コウジ酸及びその誘導体、並びにアルブチンが挙げられる。
【0015】
1,4−ジヒドロキシベンゼン及びその誘導体はTYRの活性を100%阻害することができるが、それらはまたメラニン細胞を刺激し、そして細胞毒性を示す。1,4−ジヒドロキシベンゼンを長期間にわたって使用し、日光にも当たり続けると、外生の色素沈着斑が生じる場合がある。そのため、これらをスキンケア製品に使用することは禁止されている。
【0016】
コウジ酸は非常に安定であり、かつ、銅イオンをキレートしてTYRの活性を低減させることにより、色素沈着斑の低下に良い効果をもつ。しかしながら、コウジ酸の長期使用は、皮膚疾患を起こす細胞毒性を生じる場合がある。日本の研究者らは、コウジ酸が肝臓癌を引き起こす可能性があることを示した(Tamotsu Takizawa, Toshio Imai, Jun-ichi Onose, Makoto Ueda, Toru Tamura, Kunitoshi Mitsumori, Keisuke Izumi and Masao Hirose. Enhancement of Hepatocarcinogenesis by Kojic Acid in Rat Two-Stage Models after Initiation with N-bis(2-hydroxypropyl)nitrosamine or N-diethylnitrosamine. Toxicological Sciences 2004 81 (1):43-49)。
【0017】
アルブチンは、副作用が非常に弱い、美白及びシミ減少用美容製品だと考えられているが、光に対する感受性が非常に高く、その結果、最終的な製品には大量の日焼け防止剤を加えることが必要となる。このことは皮膚にとって負担となり、従って皮膚の老化過程が促進されることになる。
【0018】
上述した欠点は、皮膚を白くするため及びシミを減少させるための美容製品市場に現存する製品の適用を制限するものである。
TYRは糖鎖をもつタンパク質(糖タンパク質)である。生化学分野における近年の研究から、その生産(及び成熟)過程で新しく生産されたTYRを通常の生物学的機能を有する成熟TYRに変換するためには、元の糖鎖が一連の修飾を受けることが必須であることが明らかになった。α−グルコシダーゼI及びIIはこの過程の重要な酵素である。α−グルコシダーゼIは主に、α−1,2結合を糖鎖の遠端にもつグルコース部分の「開裂」に関与し、α−グルコシダーゼIIは2つの工程で、α−1,3結合によって結合した残る2つのグルコース部分の開裂に関与すると考えられている(Mehta A, Zitzmann N, Rudd PM, Block TM, Dwek RA. α-Glucosidase inhibitors as potential broad based anti-viral agents, FEBS Letters, 1998, 430(1):17-22)。
【0019】
α−グルコシダーゼI及びIIを阻害すると糖タンパク質中の糖鎖の修飾が阻害されるため、成熟したTYRが生産されないと考えられている。その結果、「未成熟なTYR」により、低い割合のメラニンしか生産されない(Hiroyuki Takahashi, Peter G. Parsons, Rapid and reversible inhibition of TYR activity by glucosidase inhibitors in human melanoma cells, The Journal of Investigative dermatology, 1992, 98(4):481-487)。
【0020】
そのため、メラニン合成を阻害するための作用機序案を示している図4に表したように、成熟TYRの形成を最小限に抑えるためには、α−グルコシダーゼI及びIIを阻害し、それによってメラニン生産とそれに続く皮膚の色素沈着を減少させることが非常に都合のよい方法である。クワ属抽出物は、α−グルコシダーゼによって触媒されるチロシナーゼの必須な修飾を阻害し、その結果、不活性型のチロシナーゼを形成する。
【発明の概要】
【0021】
本発明は、クワ属植物の葉から得られる植物抽出物を提供する。該抽出物はα−グルコシダーゼIを阻害するためのIC50値が90μg/ml未満の濃度である。
この植物のα−グルコシダーゼIを阻害するためのIC50値は、好ましくは濃度にして70μg/ml未満、より好ましくは5〜60μg/ml、そしてさらに好ましくは5〜40μg/mlである。
【0022】
IC50は、実験1に示したように決定することができる。
この抽出物の活性が単離した純粋なDNJの活性よりも高い原因は、抽出物中に存在するその他のイミノ糖の活性によるものであると考えられる。抽出物は好ましくは、定量HPLC及び/又はLC−MS(液体クロマトグラフィー/質量分析)を用いて測定した場合に、総量にして5〜40%(w/w)のイミノ糖を含む。測定したイミノ糖には、1−デオキシノジリマイシン(DNJ)、N−メチル−DNJ、及びファゴミンが含まれる。
【0023】
抽出物は、より好ましくは、総量にして8〜30%(w/w)のイミノ糖、さらに好ましくは総量にして15〜20%(w/w)のイミノ糖を含む。
特徴的な化学成分の含量を正確に制御することにより、製品の質を効率的に制御することが可能になり、そして、製品の化粧用又は治療用効果を一定に保つことができる。
【0024】
最も好ましくは、抽出物は、イミノ糖である1,4−ジデオキシ−1,4−イミノ−D−アラビニトール(DAB)、2−O−α−D−ガラクトピラノシル−DNJ(GAL−DNJ)及びカリステギンBをさらに含む。
【0025】
グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤であるDABの存在は糖代謝を制御する抽出物の使用において重要であると考えられ、この応用は本発明のさらなる側面を構成する。
抽出物はイミノ糖に加えて、好ましくは総量にして20〜70%(w/w)のアミノ酸を含む。
【0026】
より好ましくは、抽出物は総量にして30〜60%(w/w)のアミノ酸を、さらに好ましくは総量にして40〜50%(w/w)のアミノ酸を含む。
抽出物に含まれるアミノ酸には、ヒトが体内で生産することのできない8種類の必須アミノ酸、並びに、インスリンの分泌を促進するアルギニン、ロイシン、リシン及びフェニルアラニンが含まれる。周知のように、アミノ酸は皮膚の水分保持及び弾性に必須である。アミノ酸が欠如すると皮膚の代謝が低下し、皮膚の老化過程が促進される(Marty J. P., NMF and cosmetology of cutaneous hydration. Annates de Dermatologie et de Venereologie, 2002, 129(1 Pt 2):131 -136)。従って、本発明の抽出物は皮膚の健康の維持を補助する機能もまた有する。
【0027】
本発明の抽出物は、クワ科、クワ属、及び
a.マグワ(Morus alba L.)
b.ロソウ(Morus alba var.multicaulisL.)
c.クロミグワ(Morus nigra)及び
d.ヤマグワ(Morus australis Poir)
から選択されるクワの葉に由来する。
【0028】
本発明の発明者らは、一般的なクワ植物の葉の化学成分の化学分析を行い、上述したすべての種に含まれるイミノ糖含量が、その他の種の含量よりも相対的に高く、マグワの葉が最も高いイミノ糖を含むことを見い出した。
【0029】
より好ましくは、抽出物の総重量を基に計算した場合にDNJの1〜20%(w/w)の量になるように、より好ましくは、抽出物の総重量を基に計算した場合にDNJの2〜10%(w/w)になるように、イミノ糖含量をDNJを基準で標準化する。使用目的によっては、抽出物の総重量を基に計算した場合にDNJの4〜6%(w/w)、又は抽出物の総重量を基に計算した場合にDNJの1〜3%(w/w)に標準化する。DNJはまた、含まれる主要な(最も収量の高い)イミノ糖である。
【0030】
本発明の抽出物は、
・色−淡い黄色である、
・溶解度−水に溶けやすい、
・pH−1%水溶液のpH値は5.5〜6.5の範囲である、及び
・UVスペクトル−218nm及び263nmに最大吸収を示す、
を含む数多くの点において、現行のクワ抽出物とは異なる。
【0031】
基本となる3つの工程からなる新規の抽出及び精製方法により、この抽出物を生産することができ、この方法は本発明のさらなる側面を構成する。
本発明の第二の側面では、
a.葉材料の水又はアルコール抽出を実施する工程;
b.強酸性陽イオン交換樹脂を用い、水で洗浄し、アンモニア溶液で溶出し、溶出液を回収して、その後それからアンモニアを除去する、カラムクロマトグラフィーによる精製工程;
c.溶出液をマクロ多孔性吸収樹脂を用いたカラムクロマトグラフィーに供し、溶液を回収する工程;及び
d.抽出物を濃縮し、乾燥させる工程;
を含む、α−グルコシダーゼIを阻害するIC50値が、90μg/ml未満の濃度である、クワ植物の葉由来抽出物の生産方法を提供する。
【0032】
好ましくは、植物の葉をオーブンで乾燥させて、粗い粉末に調製し、その後、
a.クワ植物の葉の量に対して5〜18倍量(w/w)の0〜40%低分子量アルコールを用いて、最大5回まで抽出工程を繰り返し、
b.カラム容量に対して1〜2倍量の水でカラムを洗浄し、洗い液を捨て、その後、カラム容量に対して2〜8倍量の0.2〜1.0Nアンモニア水溶液で、1時間当たりカラム容量の1〜3倍量の溶出液となる流速で溶出し、そしてpH値が9.0〜11.0の範囲の溶出液を回収し、
c.溶液とカラム容量との割合が20:1〜5:1の範囲になるようにカラムからの溶出を行い、及び
d.乾燥させた抽出物が80番のふるいを通過するように粉砕する。
【0033】
次に、本発明の抽出物を得るための抽出過程をさらに詳細に示す。
抽出(工程1):植物の葉をオーブンで乾燥させ、粗い粉末に調製した。生の材料の5〜18倍量(w/w)の0〜40%低分子量アルコールを用いて、好ましくは生の材料の10〜13倍量(w/w)の20〜30%低分子量アルコールを用いて、より好ましくは生の材料の11倍量(w/w)の25%低分子量アルコールを用いて、粉末を1〜5回抽出し、液体抽出物を得る。
【0034】
精製1(工程2):陽イオン交換樹脂を用いたカラムクロマトグラフィー:工程(1)で得られた液体抽出物をろ過した後、溶液を、強酸性陽イオン樹脂を充填したカラムに通す。カラム容積の1〜2倍、好ましくは1.5倍量の水をカラムに通し、溶出液を捨てる。カラム容積の2〜8倍量の0.2〜1.0Nアンモニア水溶液、好ましくは5倍量の0.7Nアンモニア水溶液を、1時間当たりカラム容積の1〜3倍量、好ましくは1.5倍量を通過させる流速で、さらにカラムに通す。pH値が9.0〜11.0の範囲の溶出液を回収する。
【0035】
精製(工程3):マクロ多孔性吸収樹脂を用いたカラムクロマトグラフィー:工程(2)の溶出液からアンモニアを除去し、pHを7に調整する。溶液を、マクロ多孔性吸収樹脂を充填したカラムに通す。溶液とカラム容量の割合は20:1〜5:1、好ましくは15:1〜10:1、そしてより好ましくは13:1である。カラムを通した後に回収した溶液を濃縮し、この濃縮液を乾燥させ、その後80番のふるいを通過出来るように微粉末にして、本発明の抽出物を得る。
【0036】
前述した抽出方法の工程(1)で使用する前記低分子量アルコールは、炭素原子が4つ以下の直鎖アルキルアルコール、好ましくはメタノール又はエタノールである。前記抽出工程では、1〜3時間、好ましくは1〜2時間、より好ましくは2時間の還流抽出を行う。
【0037】
工程(1)で得られた液体抽出物をろ過した後には、抽出物の生理活性を改善させ、抽出物を脱色するために、より多くの不純物を除去するためのさらなる方法を適用することができる。それらの方法には、アルコール沈殿、綿状沈殿、並びに、タンパク質、タンニン、及び単糖を除去するためのその他の適切な方法が含まれる。沈殿物を遠心分離又はろ過のいずれかにより除去することができる。本明細書での好ましい精製方法は、アルコール沈殿と遠心分離である:液体抽出物を最初の容量の4分の1になるまで濃縮し、1〜3倍量の95%エタノールを加え、30分間撹拌し、その後8〜12時間おいてから、12000回転/分で15分間、遠心分離する。上清をさらなる精製に用いる。
【0038】
本明細書で記載した抽出方法では、工程(2)の液体抽出物の総量は陽イオン交換樹脂カラムの2〜20倍量、好ましくは10〜15倍量、より好ましくは13倍量である。
これらの条件下では、活性成分を効率的に陽イオン交換樹脂に吸収させることができ、このことが活性化合物の含量を上昇させる助けとなる。
【0039】
本明細書で使用する強酸性陽イオン樹脂は、以下の型から選択することができる:001X7(#732)、アンバーライトIR−120、ダウエックス−50、Lewatit−100、Zrolit225又はダイヤイオンSK−1など。001X7(732)が活性成分を濃縮させるより良い吸収特性をもち、かつ、費用が安いため、最も好ましい。
【0040】
アンモニア水を用いて陽イオン交換カラムからの溶出を行うと、溶出液のpH値は徐々に上昇する。溶出液の生物学的及び化学的解析から、pH9〜11の画分に含まれるものが最も高い活性を示すことが明らかになったため、pH9〜11のこれら画分のみを回収した。
【0041】
本明細書で記載した抽出では、工程(3)での流速は、1時間当たりカラム容積の1〜4倍量、好ましくは2倍量である。この条件で、色の付いた不純物のマクロ多孔性樹脂への吸着が最大になり、しっかりと脱色することができる。
【0042】
上述したカラムクロマトグラフィー用には、AB−8、HP20、S−8及びYWD03F4の4型のマクロ多孔性樹脂を選択することができる。この過程を行った後の比較及び確認から、S−8樹脂を使用した場合に最もよく脱色されることが明かになり、従ってS−8型樹脂が好ましいマクロ多孔性樹脂材料である。
【0043】
上記過程によって得られたクワ葉抽出物は、紫外線でスキャンした場合に218.3nmで最大の吸収を示し、淡い黄色であり、現在市場で入手可能なその他のクワ葉抽出物とは区別できるものである。市販されている美容製品中に用いられている大部分のクワ葉抽出物はもっと濃い色、すなわち黄色又は茶色がかった黄色のいずれかであるため最終製品に色がついてしまい、理想的な外観とは言えない。
【0044】
本発明に記載した抽出物は容易に水に溶けるため、活性成分のより良い拡散性及び標的領域へのより良い吸収性を提供する。美容用美白製品に用いられている現行のクワ抽出物はフラボノイド(例えばクワノン)及びジフェニルエテノイド(例えばオキシレスベラトロール及びムルベロシド)を含むため、水に対する溶解度が低く、平均的な拡散性を有する。そのため、溶解度を上昇させるための低分子量アルコールを製品中に使用することが必要になり、その結果、皮膚への負担が上昇する。
【0045】
本発明に記載した抽出物のpH値は1%水溶液で5.5〜6.5である。このやや酸性のpHは、皮膚表面の皮脂層のpH、すなわち4.5〜6.6と近似している。そのため、前記抽出物をスキンケア製品にした場合、活性成分によって引き起こされる皮膚への刺激が低減する。
【0046】
本発明の抽出物を、皮膚の美白剤又は皮膚の色素沈着過度を減少させるために使用する医薬品又は化粧品として又は血中グルコースレベルを制御するための医薬品、栄養補助食品又は食品若しくは飲料用の成分として処方することができる。従って、それを、例えば2型糖尿病を治療するために、又は食品若しくは飲料のグリセミック指数を下げるために用いることができる。
【0047】
本発明の第三の側面では、色素沈着による症状を治療するための化粧品又は薬物として使用する、本発明の第一の側面による植物抽出物又は本発明の第二の側面による過程から得られる製品を提供する。
【0048】
好ましくは化粧品又は治療用製品はメラニン生産を減少させるものであり、雀卵斑、肝斑、妊娠線、老人斑及び黒色腫を含む色素沈着過度によって引き起こされる病気又は疾患の治療を含む。
【0049】
本発明のクワ葉抽出物を用いた薬理学的実験から、前記抽出物はα−グルコシダーゼの活性を効果的に阻害し、等量の純粋なDNJ試料よりも高い効果をもつことが明らかになった。DNJの濃度の半分の濃度の抽出物のみで、純粋なDNJと同様の効果が得られる。細胞株中で試験した場合、前記抽出物は黒色腫A375及びB16細胞株中のメラニン形成に対して効果的な阻害効果を示し、市販されている美容用美白製品にしばしば用いられているアルブチン及びL−アスコルビン酸−2−リン酸マグネシウムなどの成分よりも高い効果を示した。本発明のクワ葉抽出物の作用機序は、アルブチン及びL−アスコルビン酸−2−リン酸マグネシウムの作用機序とは異なる。後者2つはTYRの活性を直接的に及び競合的に阻害するが、前記クワ葉抽出物は主に、成熟した活性型のTYRの形成を阻害する。前記クワ葉抽出物の利点には、高い効果及び作用の持続性が含まれる。作用機序が異なることから、本発明の前記抽出物を単独で、又は上述したTYR阻害剤と共に使用することができる。ヒトでの臨床試験により、この生体外でのデータが確認され、及び、0.2%又は0.5%クワ葉抽出物クリーム製剤を28日間、局所的に使用すると、皮膚の色素沈着が有意に減少し(P<0.001)、皮膚の色が有意に明るくなった(P<0.001)。
【0050】
本発明の第四の側面では、血中グルコースレベルを制御するために使用する、本発明の第一の側面による植物抽出物又は本発明の第二の側面による過程から得られる製品を提供する。
【0051】
血中グルコースを制御するために使用する抽出物は、好ましくは、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤をさらに含む。
ウィスターラットモデル動物実験及びヒトでの臨床試験において本発明のクワ葉抽出物は、血中グルコースを有意に低下させる効果を示した。
【0052】
本発明の抽出物は、活性成分が組み合わせられていることから特に良い。従って、DNJなどのイミノ糖成分は消化管でα−グルコシダーゼを阻害することにより単糖類の吸収の低下をもたらし(Asano N., Glycosidase inhibitors: update and perspectives on practical use. Glycobiology, 2003, 13(10): 93R -104R)、別のイミノ糖である1,4−ジデオキシ−1,4−イミノ−D−アラビニトール(D−AB1)、が肝臓グリコーゲンホスホリラーゼに対して強力な阻害活性をもつこと、及び生体内での肝臓グリコーゲンの分解を阻害することもまた見出された。そのため、それは抗高血糖である。さらに、アルギニン、ロイシン、リシン及びフェニルアラニンのようなアミノ酸が含まれるため、インスリン分泌を促進する機能をもつ。
【0053】
従って、本発明に記載した抽出物を、食後の血中グルコースレベルを制御するため、及び血中グルコースの均衡を調整するために使用することができる。
そのような抽出物を、血中グルコースを制御するための医薬品又は健康用製品(食品添加剤又はサプリメントなど)として処方することができる。
【0054】
第三の側面を提供するために、抽出物を賦形剤及び任意に1つ以上のその他の活性成分を含む化粧品又は医薬品として処方することができる。
皮膚の色を明るくする薬剤として使用するためには、例えば、ビタミンC及びビタミン−マグネシウムホスファチジン酸のようなその誘導体、コウジ酸、アルブチン、ジアセチルボルジン、アゼライン酸、オクタデセン二酸(octadecenedioic acid)、ウンデシレノイルフェニルアラニン(DEP−11)、カンゾウ抽出物、アロエ抽出物、クレソン(Nastutium officinale)抽出物、アスコフィルム(Ascophyllum nodosum)抽出物、ホップ(Humulus lupulus)抽出物、グルタチオン、エクジソン及び/又はエラグ酸から、その他の活性成分を選択することができる。
【0055】
好ましい化粧品又は医薬品は、本発明の抽出物と共に、ビタミンC誘導体及びL−アスコルビン酸−2−リン酸マグネシウム(VC−PMG)を含む。
併用製品では、抽出物対その他の皮膚美白剤とが好ましくは10:1〜1:1、より好ましくは5:1の比で抽出物を含む。
【0056】
本発明のクワ葉抽出物又はその他の成分を含む組成物を用いて皮膚疾患用の化粧品又は医薬品を製造する場合には、グリセリン、ポリエチレングリコール、セルロース誘導体などの水溶性基剤、及び脂肪、脂質、炭化水素などの脂溶性基剤などを含む、医薬品に使用可能なすべての一般的な基剤を使用することができる。下記の賦形剤も一般的に用いられ、これらには、ニパギン、クロロブタノール及びソルビン酸のような保存剤、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、BHTなどの抗酸化剤、ステアリン酸、蜜ろう、パラフィン、ラウリルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)などの増粘剤、トリエタノールアミン、モノステアリン酸グリセロール、Tweenなどの乳化剤、メトキシけい皮酸オクチル、ベンゾフェノン−3など紫外線防止剤、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトールなどの湿潤剤(加湿剤)、脱臭剤、香料及び着色料なども含まれる。上に挙げた賦形剤の量は、当業者には周知である。
【0057】
前記抽出物をメラニン生産を低下させるための化粧品中に加えて使用する場合、最終産物に含まれる推奨量は0.05〜2%、好ましくは0.1〜1%、そしてより好ましくは0.2〜0.5%(wt/wt)である。
【0058】
第四の側面を提供するために、抽出物を、医薬品又は、食品若しくは飲料に加えて栄養補助食品として、又は有効量を添加して使用するサプリメントとして処方することができる。
【0059】
食品又は飲料中で抽出物は、グリセミック指数を下げる機能をもつ。そのような場合には、1回当たり50〜600mgの用量で(サイズによる)使用される。
血中グルコースレベルを制御するための経口薬を製造する場合、本発明のクワ葉抽出物を、崩壊剤(例えば乾燥でんぷん、カルボキシメチルでんぷんナトリウム、L−HPC、架橋PVPなど);滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルク粉末、安息香酸ナトリウム、ポリエチレングリコール4000など)及び粘着剤(例えばCMC)のような、経口薬に一般的な賦形剤と共に処方することができる。
【0060】
血中グルコースレベルを制御するために前記抽出物を使用する場合、抽出物中の活性成分の濃度により、推奨量は各回当たり25〜600mgで1日3回となり;好ましくは各回当たり100〜300mgで1日3回であり;より好ましくは各回当たり50〜150mgで1日3回である。
【0061】
標準的には、以下の形態の皮膚疾患用化粧品又は医薬品を製造することができる。これらの形態には、水、水−アルコール若しくは油を含む溶液、水若しくは油を含むゲル/コロイド、微細乳濁液、希釈剤又は粘度の高い乳濁液、遊離している若しくは密着している粉末、重合体粒子及びカプセル、とりわけ、イオン若しくは非イオン脂質媒体のような微粒子を含む水中油型分散液が含まれる。
【0062】
本発明のクワ葉抽出物又は組成物を用いて皮膚疾患用の化粧品又は医薬品を製造する場合には、それらは、クリーム、軟膏、ローション、乳白色の液体、乳濁液、粘液、ペースト、泡、エアロゾル、などの比較的軟らかい「剤形」及び無水固体製剤(例えば棒状の)となる場合がある。
【0063】
本発明のクワ葉抽出物を用いて血中グルコースを制御するための経口薬を製造する場合、それらを錠剤、カプセル及び粉末のような、一般的に使用される経口薬の剤形で製造することができる。
【0064】
本発明の実施形態を、添付の図面を参照することにより、以下にさらに詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、実施例1の植物抽出物のHPLCクロマトグラムである。上段は標準物質であるDNJのHPLCのクロマトグラムを示し、下段は実施例1の植物抽出物のHPLCクロマトグラムである。
【図2】図2は、実施例1の植物抽出物のUVスペクトルである。
【図3】図3は、先行技術による抽出物のUVスペクトルである。
【図4】図4は、色素沈着を低下させる作用機序の模式図である。
【図5】図5a及び図5bは、クワ抽出物(5a)及びDNJ(5b)によるα−グルコシダーゼレベルの阻害を示す。
【図6】図6は、チロシナーゼに対するDNJ、アルブチン及びクワ抽出物の効果の比較を示す。
【図7】図7は、メラニン合成阻害に対するDNJ、VC−PMG及びクワ抽出物の効果の比較を示す。
【図8】図8a〜図8cは、DNJ(a)、VC−PMG(b)及びクワ抽出物(c)の細胞毒性の比較を示す。
【図9】図9は、ウィスターラットでのクワ抽出物によるグルコース低下効果を示す。
【図10】図10は、ヒトでのクワ抽出物によるグルコース低下効果を示す。
【図11】図11a及び図11bは、ヒトの皮膚のクワ抽出物による美白効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0066】
図1のHPLCは、以下の条件で行った:
装置:ウォーターズ(米国)のHPLC用装置一式、w600−2420−717、及びEmpowerデータ処理システム。
カラム:Shodex Asahipakの旧NH2P−50E(250×4.65μm)カラムを逆相で用いた。
試薬:6.5nmol酢酸アンモニウム含有アセトニトリル−水。
カラム:温度40℃
流速:1.0ml/分
検出器:W2420ELSD
ゲイン:100;ドリフトチューブの温度50℃;溶離液加熱レベル60%
移動相:アセトニトリル:水(6.5nmol酢酸アンモニウム含有)(84:16)
図2及び図3のUVスペクトルは以下の条件を用いて得られた。
装置:UNICO、UV−2100分光光度計
測定波長:200〜600nm
試料濃度:1mg/ml
本発明の植物抽出物を、実施例1〜5を基に記述した方法により、実施例6〜9を基に説明した、様々なクワの葉から得ることができる。
【0067】
得られた植物抽出物を化粧品若しくは医薬品として、又は食品若しくは飲料栄養補助食品として、又は実施例10〜16を基に説明した添加剤として処方することができる。
抽出物の様々な活性を、実施例1〜8の方法を通じてさらに説明する。
【0068】
実施例1
乾燥させたマグワ(Morus alba)の葉100kgを微粉末にし、12倍量(生材料の重量に対して)の30%エタノールを用い、3回還流抽出する(1回当たり1時間)。抽出物を一定量まで濃縮し、001X7のような強酸性陽イオン樹脂を充填したカラムに通す。カラム容量は、液体抽出物の14分の1とした。水でカラムを洗浄し(カラム容量の1.5倍量)、その後目的の構成要素(イミノ糖)を、0.7Nアンモニア水(カラム容量の5倍量)で、1時間当たりカラム容量の1.5倍量の溶出液となる流速で溶出した。pHが9〜11のアンモニア水溶出液を回収した。溶出液を一定量まで濃縮し、アンモニアを除去し、そしてpHを7に調整した。次に溶出液をS−8のようなマクロ多孔性樹脂を充填したカラムに通した。カラム容量は、液体溶出液の10分の1とし、流速は、1時間あたりカラム容量の2倍の溶出液となるようにした。回収した溶液をその後減圧下で乾燥させ、乾燥物が80番のふるいを通過するように微粉化した。DNJ5.8%、全イミノ糖21%、及び全アミノ酸48%を含む、淡い黄色の粉末1.4kgを得た。
【0069】
以下に示すアッセイによりイミノ糖含量を決定し、その結果を図1に示した。図1下段のプロファイルが、主要なイミノ糖のピークを示しているHPLCのクロマトグラムである(DNJ標準物質のプロファイルを上段に示した)。
【0070】
(a)適切な量のDNJを、対照として正確に計量し、0.1mg/ml溶液となるようにメタノールを加え、よく撹拌する。正確に溶液1mlを計量し、25mlの分析用フラスコに移す。これに、1mlの0.4mol/Lホウ酸−塩化カリウム緩衝液(pH8.5)及び2mlの無水アセトニトリルに溶解した5mmol/LFMOC−CIを加える。室温で20分間超音波処理し、すぐに2mlの0.2mol/Lグリシン溶液及び0.1%酢酸を加え、よく撹拌して、対照試料溶液とする。
【0071】
(b)抽出物0.3gを適量の水に溶解し、予め調整しておいたポリアミドカラムに通す。塩酸溶液(pH3)で溶出する。溶出液を回収し、減圧下で約10mlになるまで濃縮する。予め調整しておいた陰イオン交換樹脂カラムに溶液を通す。カラムを水で洗浄し、溶出液を回収する。減圧下で約30mlになるまで濃縮した後、溶出液を50mlの分析用フラスコに移し、水を加える。正確に計量した溶液1mlを25mlの分析用フラスコに移し、上述の(a)と同様に、1mlの0.4mol/Lホウ酸−塩化カリウム緩衝液(pH8.5)及び2mlの無水アセトニトリルに溶解した5mmol/LFMOC−CIを加える。室温で20分間超音波処理し、すぐに2mlの0.2mol/Lグリシン溶液及び0.1%酢酸を加え、よく撹拌して、試験溶液とする。
【0072】
(c)以下に示す条件で、溶液をHPLCにかけ、イミノ含量をそこから(Empowerにより)決定した。カラム:C18−ODS;移動相:アセトニトリル:0.1%酢酸(30:70)、で30分間、その後移動相をアセトニトリル:0.1%酢酸(70:30)に換え、10分間流す。次の試料を注入する前に、元の移動相を用いてシステムを平衡化する。クロマトグラムを検出波長265nmで30分間記録した。対照試料及び試験試料をそれぞれ20μl、正確に計量してHPLC装置に注入し、測定してHPLCの結果を得た。
【0073】
標準的なアミノ酸解析装置を用いて全アミノ酸含量をアッセイした。
実施例2
乾燥させたマグワ(Morus alba)の葉100kgを微粉末にし、18倍量(生材料の重量に対して)の水を用い、3回還流抽出する(1回当たり1時間)。抽出物をDowex−50のような強酸性陽イオン樹脂を充填したカラムに通す。カラム容量は、抽出物の20分の1とした。水でカラムを洗浄し(カラム容量の2倍量)、その後0.5Nアンモニア水(カラム容量の8倍量)で、1時間当たりカラム容量の3倍量の溶出液となる流速で溶出した。pHが9〜11のアンモニア水溶出液を回収した。溶出液を一定量まで濃縮し、アンモニアを除去し、そしてpHを7に調整した。溶出液をHP20のようなマクロ多孔性樹脂を充填したカラムに通した。カラム容量は、液体溶出液の20分の1とし、流速は、1時間あたりカラム容量の4倍の溶出液となるようにした。回収した溶液をその後減圧下で乾燥させ、乾燥物が80番のふるいを通過するように微粉化した。DNJ4.3%、全イミノ糖19%、及び全アミノ酸40%を含む、淡い黄色の粉末1.4kgを得た。UVスペクトルを図2に示す。その他のクワ抽出物とは異なり、本発明の抽出物では2つの離れたピークが見られる。不純物をより高い割合で含むその他のクワ抽出物では、その不純物が原因で2つのピークが別れず(図3を参照のこと)、そのため効果レベルが低下する可能性がある。
【0074】
実施例3
乾燥させたマグワ(Morus alba)の葉20kgを微粉末にし、生材料の重量に対して5倍量の40%エタノールを用い、3回還流抽出する。抽出物をまとめてろ過し、等量のエタノールを加え、一定の速度で30分間撹拌し、その後一晩静置する。12000回転/分で15分間遠心分離することにより沈殿を除去し、一定量になるまでエタノールを加える。上清を、例えば001X7型のような強酸性陽イオン樹脂を充填したカラムに通す。カラム容量を液体の3分の1とした。カラムを水で洗浄し(カラム容量と等量)1.0Nアンモニア水(カラム容量の2倍量)で、1時間あたりカラム容量と等量の溶出液となる流速で溶出した。pHが9〜11のアンモニア水を回収した。溶出液を一定量まで濃縮し、アンモニアを除去し、そしてpHを7に調整した。溶出液をS−8のようなマクロ多孔性樹脂を充填したカラムに通した。カラム容量は、溶出液の13分の1とし、流速は、1時間あたりカラム容量と等量の溶出液となるようにした。回収した溶液をその後減圧下で乾燥させ、乾燥物が80番のふるいを通過するように微粉化した。DNJ9.1%、全イミノ糖29%、及び全アミノ酸32%を含む、白に近い色の粉末0.11kgを得た。
【0075】
実施例4
乾燥させたマグワ(Morus alba)の葉50kgを微粉末にし、生材料の重量に対して12倍量の40%エタノールを用い、3回還流抽出する。抽出物をまとめてろ過し、沈降剤として硫酸アルミニウムカリウム、pH3、を加え、そして30分間撹拌する。2時間静置した後、遠心分離により沈殿を除去し、上清のpHを7に調整する。上清を陽イオン樹脂、すなわち001X7を充填したカラムに通す。カラム容量を液体の13分の1とした。カラムを水で洗浄し(カラム容量の2倍量)、0.2Nアンモニア水(カラム容量の8倍量)で、1時間あたりカラム容量と等量の溶出液となる流速で溶出した。pHが9〜11のアンモニア水を回収した。溶出液を一定量まで濃縮し、アンモニアを除去し、そしてpHを7に調整した。溶出液を、AB−8マクロ多孔性樹脂を充填したカラムに通した。カラム容量は、溶出液の20分の1とし、流速は、1時間あたりカラム容量の2倍量の溶出液となるようにした。回収した溶液をその後減圧下で乾燥させ、乾燥物が80番のふるいを通過するように微粉化した。DNJ18.6%、全イミノ糖39%、及び全アミノ酸21%を含む、白に近い色の粉末0.12kgを得た。
【0076】
実施例5
乾燥させたマグワ(Morus alba)の葉50kgを微粉末にし、生材料の重量に対して11倍量の25%エタノールを用い、4回還流抽出する。抽出物をまとめてろ過し、アンバーライトIR−120(H+)型を充填した陽イオン樹脂カラムに通す。カラム容量は液体の15分の1とした。カラムを水で洗浄し(カラム容量の1.5倍量)、0.7Nアンモニア水(カラム容量の5倍量)で、1時間あたりカラム容量の1.5倍量の溶出液となる流速で溶出する。pHが9〜11のアンモニア水溶出液を回収した。溶出液を一定量まで濃縮し、アンモニアを除去し、そしてpHを7に調整する。S−8マクロ多孔性樹脂を充填したカラムに溶出液を通す。カラム容量は、溶出液の5分の1とし、流速は、1時間あたりカラム容量と等量の溶出液となるようにした。回収した溶液をその後減圧下で乾燥させ、乾燥物が80番のふるいを通過するように微粉化した。DNJ5.6%、全イミノ糖24%、及び全アミノ酸48%を含む、淡い黄色の粉末0.46kgを得た。
【0077】
実施例6
乾燥させたロソウ(Morus alba var.multicaulis L.)の葉5kgを微粉末にし、生材料の重量に対して11倍量の25%エタノールを用い、3回還流抽出する。抽出物をまとめてろ過し、001X7型陽イオン交換樹脂を充填した陽イオン樹脂カラムに通した。カラム容量は液体の13分の1とした。カラムを水で洗浄し(カラム容量の2倍量)、0.5Nアンモニア水(カラム容量の5倍量)で、1時間あたりカラム容量の1.5倍量の溶出液となる流速で溶出した。pHが9〜11のアンモニア水溶出液を回収した。溶出液を一定量まで濃縮し、アンモニアを除去し、そしてpHを7に調整した。溶出液をHP20マクロ多孔性樹脂を充填したカラムに通した。カラム容量は、溶出液の10分の1とし、流速は、1時間あたりカラム容量の4量の溶出液となるようにした。回収した溶液をその後減圧下で乾燥させ、乾燥物が80番のふるいを通過するように微粉化した。DNJ2.1%、全イミノ糖8.3%、及び全アミノ酸65%を含む、淡い黄色の粉末48gを得た。
【0078】
実施例7
乾燥させたクロミグワ(Morus nigra)の葉5kgを微粉末にし、生材料の重量に対して8倍量の80%エタノールを用い、3回還流抽出する。抽出物をまとめてろ過し、その後約6Lになるまで濃縮し、これに約12Lのエタノールを加えた。一定の速度で30分間撹拌し、その後一晩静置した。12000回転/分で15分間遠心分離することにより沈殿を除去し、一定量になるまでエタノールを加え、そして硫酸アルミニウムのような凝集剤を適量加える。しばらく置いて完全に沈殿させた後、遠心分離によって沈殿物を除去する。上清を、001X7型のような陽イオン樹脂を充填したカラムに通す。カラム容量は液体の10分の1とした。カラムを水で洗浄し(カラム容量と等量)、0.5Nアンモニア水(カラム容量の4倍量)で、1時間あたりカラム容量の3倍量の溶出液となる流速で溶出した。pHが9〜11のアンモニア水溶出液を回収した。溶出液を指定された量まで濃縮し、アンモニアを除去し、そしてpHを7に調整する。溶出液をHP20マクロ多孔性樹脂を充填したカラムに通した。カラム容量は溶出液の15分の1とし、流速は、1時間あたりカラム容量の4量の溶出液となるようにした。回収した溶液をその後減圧下で乾燥させ、乾燥物が80番のふるいを通過するように微粉化した。DNJ3.9%、全イミノ糖15%、及び全アミノ酸58%を含む、白に近い色の粉末40gを得た。
【0079】
実施例8
乾燥させたヤマグワ(Morus australis Poir.)の葉5kgを微粉末にし、生材料の重量に対して8倍量の80%エタノールを用い、3回還流抽出する。抽出物をまとめてろ過し、アンバーライトIR−120(H+)型陽イオン樹脂を充填した陽イオン樹脂カラムに通す。カラム容量は液体の10分の1とした。カラムを水で洗浄し(カラム容量の1.5倍量)、0.7Nアンモニア水(カラム容量の5倍量)で、1時間あたりカラム容量の1.5倍量の溶出液となる流速で溶出する。pHが9〜11のアンモニア水溶出液を回収した。溶出液を一定量まで濃縮し、アンモニアを除去し、そしてpHを7に調整する。AB−8マクロ多孔性樹脂を充填したカラムに溶出液を通す。カラム容量は、溶出液の13分の1とし、流速は、1時間あたりカラム容量の2倍量の溶出液となるようにした。回収した溶液をその後減圧下で乾燥させ、乾燥物が80番のふるいを通過するように微粉化した。DNJ1.4%、全イミノ糖5.2%、及び全アミノ酸68%を含む、淡い黄色の粉末42gを得た。
【0080】
実施例9
乾燥させたマグワ(Morus alba)の葉50kgを微粉末にし、生材料の重量に対して10倍量の30%エタノールを用い、1回還流抽出する。抽出物をろ過し、アンバーライトIR−120(H+)型陽イオン樹脂を充填した陽イオン樹脂カラムに通す。カラム容量は液体の13分の1とした。カラムを水で洗浄し(カラム容量の1.5倍量)、0.7Nアンモニア水(カラム容量の7倍量)で、1時間あたりカラム容量の2倍量の溶出液となる流速で溶出する。pHが9〜11のアンモニア水溶出液を回収する。溶出液を一定量まで濃縮し、アンモニアを除去し、そしてpHを7に調整する。AB−8マクロ多孔性樹脂を充填したカラムに溶出液を通す。カラム容量は、溶出液の15分の1とし、流速は、1時間あたりカラム容量と等量の溶出液となるようにした。回収した溶液をその後減圧下で乾燥させ、乾燥物が80番のふるいを通過するように微粉化した。DNJ4.2%、全イミノ糖22%、及び全アミノ酸46%を含む、淡い黄色の粉末0.5kgを得た。
【0081】
実施例10
ステアリン酸、グリセロールモノステアレート、流動パラフィン、鯨ロウ、蜜ロウ、及びシリコン油を、8:5:3:8:1:5部の割合で混合し、75℃に加熱する(「基剤1」の形成)。トリエタノールアミン、グリセリン、メチルパラベンを、0.7:5:0.05部の割合で混合し、75℃に加熱する(「基剤2」の形成)。基剤1と2を混合し、そこに3部(w/w)の実施例1のクワ葉抽出物を加える。よく混合し、100mlになるまで水を加える。冷却した後、適量の香料を加えて、前記クワ葉抽出物を含む美白用クリームを生産する。
【0082】
実施例11
グリセリン、プロピレングリコール、30%NaOH及びソルビン酸カリウムを、7:4:0.2:0.1部の割合(w/w)で混合する。100mlになるまで蒸留水を加えて水相とする。これとは別に、ステアリン酸、ステアリン酸ブチル、グリセロールモノステアレート及びステアリルアルコールを、10:8:1:3部の割合で混合し、加熱して油相とする。上記の水相を95℃に加熱し、この温度で撹拌しながら、油相を徐々に加える。約45℃になったら、実施例4のクワ葉抽出物とL−アスコルビン酸−2−リン酸マグネシウムとの2:0.4部の割合の混合物に加え、香料を数滴加えて、2相が混ざるまで撹拌する。冷却してペーストとする。
【0083】
実施例12
グリセリン、プロピレングリコール、30%NaOH及びソルビン酸カリウムを、7:4:0.2:0.1部の割合(w/w)で混合する。100mlになるまで蒸留水を加えて水相とする。これとは別に、ステアリン酸、ステアリン酸ブチル、モノステアリン酸グリセロール及びステアリルアルコールを、10:8:1:3部の割合で混合し、加熱して油相とする。上記の水相を95℃に加熱し、この温度で撹拌しながら、油相を徐々に加える。約60℃になったら、実施例1のクワ葉抽出物とDEP−11との2:0.2部の割合の混合物に加える。香料を数滴加え、2相がよく混ざるまで撹拌する。冷却してペーストとする。
【0084】
実施例13
実施例5のクワ葉抽出物0.4部(w/w)に、0.1部のエチルパラベン、0.5部の重硫酸ナトリウム、0.1部のエデト酸2ナトリウム、及び9部のグリセリンを加え、100mlになるまで蒸留水を加えてローションとする。
【0085】
実施例14
実施例1のクワ葉抽出物5kg、でんぷん1.8kg、微結晶セルロース1.5kg、架橋PVP0.45kg、CSM−Na0.55kg、及び適量のステアリン酸マグネシウム及びシリコンマイクロ粉末をよく混ぜる。各錠剤の重量が約0.5gの錠剤20,000個を製造する。
【0086】
実施例15
実施例3のクワ葉抽出物1.0kgを適量のでんぷんに混合し、各カプセルが100mgの抽出物を含むように、10,000個のカプセル中に充填する。
【0087】
実施例16
実施例3のクワ葉抽出物2.0kgに、0.5kgのビタミンC、1.0kgのクエン酸、0.8kgの炭酸水素ナトリウム、0.08kgのマンニトール、PVP、PEG6000、香料添加剤及び結合剤を加え、起泡性の顆粒を製造する。
【0088】
活性試験実験
実験1.α−グルコシダーゼに及ぼすクワ葉抽出物の阻害活性アッセイ
本発明のクワ葉抽出物がα−グルコシダーゼに及ぼす阻害活性を解析することを目的とした。以下に試薬及び装置を示す。
【0089】
(1)実施例1のクワ葉抽出物、
(2)DNJ標準化合物、
(3)α−グルコシダーゼ(I型、Bakers yeast、EC232.604.7)を0.1mol/Lのリン酸緩衝液(pH6.8)に溶解して0.42U/ml溶液とした。
【0090】
(4)pNPG。0.1mol/Lのリン酸緩衝液に溶解して5mmol/L溶液とした。
(5)pNP。0.1mol/Lのリン酸緩衝液(pH6.8)に溶解して200μmol/L溶液とした。
【0091】
(6)Multiskan Ascentマイクロプレートリーダー(Thermo Electron Co.、米国)。
方法を以下に示す。
検量線
200μmol/LのpNP溶液を0.1μmol/Lのリン酸緩衝液で、それぞれ、100μmol/L、50μmol/L、25μmol/L、12.5μmol/L、6.25μmol/L及び3.125μmol/Lになるように希釈する。各希釈液から200μlをとりわけ、405nmでODを測定し、OD値を用いて検量線を引く。
【0092】
試験試料のアッセイ
(1)それぞれ異なる濃度の試験試料80μlをマイクロプレートの個別のウェルに入れる。リン酸緩衝液80μlを偽薬とした。
【0093】
(2)それぞれのウェルに、30μlの酵素(0.42U/ml)を加え、30秒静置し、その後、基質(pNPG)を加えて37℃で15分間インキュベートする。マイクロプレートリーターの電源を入れ、温度37℃、キネティックモード、10秒間隔に設定する。測定を13回行う(合計2分)。
【0094】
(3)各ウェルに基質(5mmol/LのpNPG)を90μl加え、30秒間撹拌し、マイクロプレートリーダーの中に置く。開始ボタンを押し、続けて37℃でのOD値を測定する。
【0095】
(4)pNPの濃度をX軸に、OD値をY軸にとって検量線を引く。反応物の相対量を求めるために、工程(3)で得られた検量線上のOD値を使用する。
(5)偽薬及びそれぞれ異なる濃度の試験試料については、時間をX軸に、反応物量をY軸に取って反応進行曲線を引く。直線の傾斜が反応時間である。
【0096】
(6)試験試料の濃度をX軸にとり、Y軸に反応時間をとって、試験試料の濃度曲線を引き、IC50を求める。阻害活性(U/μg)=(0.5×各ウェルの酵素活性)/(IC50×各ウェルの試料容量)=(0.5×0.42×0.03)/(IC50×0.08)=0.07875/IC50
【0097】
結果及び考察
上述の結果から、実施例1のクワ葉抽出物がα−グルコシダーゼを阻害するIC50値は13.6μg/mlであり、一方、純粋なDNJのIC50は70μg/mlであることが示された。このことは、実施例1のクワ葉抽出物の活性が純粋なDNJの活性よりもかなり高いことを示すものであった。実施例1のクワ葉抽出物中のDNJ含量が僅か3.5%だったことを考慮すると、前記抽出物を使用することにより、同じ若しくはそれよりも高い活性を得ることができ、それと同時に、高濃度の純粋な化合物による副作用を低減させること可能になる。クワ抽出物及びDNJによるα−グルコシダーゼの生体外での阻害、並びに初期反応速度をそれぞれ示す、図5a及びbを参照のこと。
【0098】
実験2:TYRに及ぼす、クワ葉抽出物及びアルブチンの阻害活性アッセイ
黒色腫細胞株B16でのTYR活性に試験試料が及ぼす効果及び作用機序を解析することを目的とした。以下に試薬及び装置を示す。
【0099】
(1)実施例1のクワ葉抽出物
(2)DNJ標準化合物
(3)アルブチン標準化合物
(4)L−ドーパ溶液。使用する直前に、pH6.8のリン酸緩衝液を用いて1mg/mlに調整した。
【0100】
(5)WIP細胞溶解緩衝液
(6)細胞培養プレート(24ウェル及び96ウェル)
(7)光学顕微鏡
(8)遠心機
(9)マイクロプレートリーダー
以下に方法を示した。
【0101】
B16黒色腫細胞をリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、遠心分離管に回収した。遠心分離した後、フッ化フェニル−メチルスルホニル(PMSF)を含むWIP−溶解緩衝液を細胞沈殿物に加え、氷中に管を立てて30分おき、細胞を溶解させた。その後溶液を12000g、4℃で10分間遠心分離し、細胞要素を含む上清(細胞抽出物)をアッセイに使用する目的で保持した。
【0102】
チロシナーゼの触媒活性に及ぼす、DNJ、アルブチン、及びクワ抽出物の直接的な効果を決定するために、60μlのDNJ、アルブチン又はクワ抽出物(様々な濃度の化合物を用いた)を、96ウェルマイクロプレートに入れた、60μlの細胞抽出物に加えた。プレートを37℃で1時間インキュベートし、その後各ウェルに80μlのL−ドーパを加えた。マイクロプレートリーダーを用い、各ウェルの吸収(492nm)を5分間間隔で30分間、37℃で記録した。
【0103】
チロシナーゼの触媒活性に及ぼす、DNJ、アルブチン、及びクワ抽出物の間接的な効果を決定するために、B16黒色腫細胞にそれぞれ異なる濃度のDNJ、アルブチン、又はクワ抽出物を加えて3日間培養し、その後抽出及び評価を行った。抽出した後、40μlの細胞抽出物、120μlのリン酸緩衝液(pH6.8)、及び40μlのL−ドーパ(2mg/ml)を96ウェルマイクロプレート中に入れ、マイクロプレートリーダーを用いて各ウェルの492nmでの吸収を5分間間隔で30分間、37℃で記録した。
【0104】
結果及び考察
アッセイの結果を図6に見ることができる。明色のカラムは、細胞抽出物中でのチロシナーゼ活性に及ぼす、DNJ、アルブチン、及びクワ抽出物の直接的な効果を示し、暗色のカラムはチロシナーゼ活性に及ぼす化合物の間接的な結果を示す。
【0105】
直接的な活性アッセイでは、アルブチンが容量依存的にチロシナーゼの活性を弱めたが、DNJ及びクワ抽出物はチロシナーゼ活性に何の効果も示さなかった。しかしながら間接的な活性アッセイでは、試験化合物の存在下で3日間細胞をインキュベートとした後には、DNJ及びクワ抽出物群においてチロシナーゼ活性の容量依存的な低下がみられたが、アルブチンはチロシナーゼ活性に影響を及ぼさなかった。
【0106】
これらの発見は報告されている文献と一致し、かつ、α−グルコシダーゼ阻害剤、DNJ及びクワ抽出物の作用機序が異なると考えられていることを支持するものである。直接的な活性アッセイでは、アルブチンはチロシナーゼと直接相互作用し、活性部位に結合して酵素を不活性化させ、その結果、L−ドーパからo−ドーパキノンへの酸化が減少した。α−グルコシダーゼ阻害剤はチロシナーゼの活性に直接は作用せず、このことが、DNJ及びクワ抽出物がチロシナーゼ阻害活性に効果を示さなかった直接的な活性アッセイの結果に反映された。
【0107】
間接的な活性アッセイでは、DNJ及びクワ抽出物の両方がチロシナーゼに対して阻害活性をもつことが示された。α−グルコシダーゼ阻害剤は未成熟なチロシナーゼに作用し、かつ、チロシナーゼの成熟過程におけるカルネキシンの結合を阻害することにより、成熟したチロシナーゼの酵素活性に影響を及ぼす構造の変化が生じる。これらの変化は、DNJ及びクワ抽出物を加えて3日間インキュベートした後に酵素活性が低下したことからも明かとなった。アルブチンはチロシナーゼ活性部位と直接競合したが、アッセイ溶液にアルブチンが含まれていない間接的なアッセイでは、酵素活性の阻害は見られなかった。
【0108】
実験3.本発明のクワ葉抽出物がメラニン細胞でのメラニン含量に及ぼす効果
試験試料が黒色腫細胞株B16のメラニン含量に与える効果を解析することを目的とした。以下に使用した試薬及び装置を示す。
【0109】
(1)実施例1のクワ葉抽出物
(2)DNJ標準化合物
(3)VC−PMG標準化合物
(4)WIP溶解緩衝液
(5)光学顕微鏡
(6)細胞培養プレート(24ウェル及び96ウェル)
(7)遠心機
(8)マイクロプレートリーダー。
【0110】
以下に方法を示した。
1.対数増殖期の黒色腫B16細胞を回収し、細胞懸濁液を適切な濃度に調整し、24ウェルプレートに分け入れて、細胞をウェルの壁に接着させる。
【0111】
2.培地で希釈することにより調製した、様々な濃度の試験試料1mlを各ウェルに加える(各濃度につき同じものを4つ準備した)。2日間インキュベートし、試料溶液を交換し、さらに2日間インキュベートした。
【0112】
3.4日目に細胞を回収し、PBSで2回、しっかりと洗浄した。WIP溶解緩衝液を250μl加え、5分毎に4〜5回ボルテックスで撹拌しながら、氷浴中で溶解させた。
4.12000rpm、4℃で10分間遠心分離する。上清を捨て、沈殿物を400μlの1NのNaOHに溶解し、80℃の湯浴中に1時間おく。
【0113】
5.マイクロプレートリーダーを用いて405nmでのOD値を測定し、相対量を算出する。
結果及び考察
アッセイの結果を図7に見ることができる。中間色のカラムは、B16黒色腫細胞でのメラニン含量に及ぼすDNJの阻害効果を示し、暗色のカラム及び白色のカラムはB16黒色腫細胞でのメラニン含量に及ぼすVC−PMG及びクワ抽出物の阻害効果を示す。すべての効果は、様々な濃度のDNJ、VC−PMG又はクワ抽出物と3日間インキュベートした後に見られた効果である。
【0114】
対照と比較すると、様々な濃度のDNJ、VC−PMG及び実施例1で処理することにより、メラニン含量は容量依存的に有意に減少した。3種類の化合物の活性の強度は、強い方から順に、DNJ>クワ抽出物>VC−PMG、という順序であった。
【0115】
DNJはクワ抽出物から同定された活性化合物であり、α−グルコシダーゼ阻害剤と同様にチロシナーゼの活性を弱めて、B−16黒色腫細胞株でのメラニン生産の減少を低下させることができる。天然に生じるDNJの含量はすべての植物において非常に低いため、天然のDNJを商業目的で使用することは不可能である。クワ抽出物は、クワ抽出物中のDNJ含量は2〜5%と低いが、DNJの活性と同様の効果を示した。このことにより、クワ抽出物中ではDNJがその他の活性成分と相乗的に機能して、強い抗色素沈着効果をもたらしている可能性が示された。
【0116】
我々の観察から、B16黒色腫細胞に加えたVC−PMGの濃度を200ppmより高くすると、細胞の生存能力が下がることが示された。このことにより、過剰な濃度のVC−PMGによって細胞が傷つけられる恐れがある可能性が示された。天然物としてのクワ抽出物はより安全な特性をもち、かつ、VC−PMGよりも強い効果をもつ。クワ抽出物の作用機序はVC−PMGの作用機序とは異なるため、クワ抽出物を単独で、又はより高い抗色素沈着効果を達成するためにVC−PMGと併用して用いることができる。
【0117】
クワ抽出物を化粧品に加えるための美白製品として開発するために、一般的に化粧品に使用されている美白成分の用量について検討した。アルブチン:1%〜5%、コウジ酸:0.2%〜3%、ビタミン誘導体:<3%。我々の研究から、実施例1の推奨用量は3%より低いものである。
【0118】
実験4.本発明のクワ葉抽出物がメラニン細胞の成長に及ぼす効果
方法
細胞の生存能力
生存能力のある細胞のミトコンドリア内酵素により、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミドをMTTホルマザンの結晶に変換する反応を用いたMTTアッセイにより、細胞の生存率を測定した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いてMTTを2mg/mlになるように新しく調製した。1ml当たり2×10個の細胞を96ウェルプレート中にプレーティングし、DNJ、VC−PMG、クワ抽出物又はDMEMを培地中に加えた。実験経過の様々な時点で、MTTストック溶液20μlをウェルに加え、プレートを5%CO、加湿条件下、37℃で4時間インキュベートした。4時間後、これら細胞のホルマザン結晶をゆっくりと撹拌することにより、100μlのDMSO中に溶解した。10分後、エライサプレートリーダーを用いて540nmで測定することにより、ホルマザンの量を分光光度法で定量した。
【0119】
黒色腫細胞中のメラニン含量の決定
B16黒色腫細胞を、1ウェル当たり4×10個の密度で24ウェル培養プレート中に播種し、5%CO雰囲気下、37℃で24時間インキュベートした。次に細胞を様々な濃度のDNJ、VC−PMG又はクワ抽出物で3日間処理した。細胞をリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、遠心管に集めた。遠心分離した後、細胞沈殿にフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)を含むWIP溶解緩衝液を加え、氷上で30分間かけて細胞を破砕した。溶液を12000g、4℃で10分間遠心分離し、沈殿に1NのNaOHを加えて70℃で1時間沸騰させることにより溶解した。分光光度計を用いて405nmでメラニン含量を検定した。
【0120】
結果及び考察
細胞の生存能力に及ぼすDNJ、VC−PMG及びクワ抽出物の効果
MTTを用いて行ったB16黒色腫細胞の生死判別試験のデータを、図8A、図8B及び図8Cに示した。
【0121】
DNJ、VC−PMG及びクワ抽出物は、用いた濃度ではB16黒色腫細胞の成長を阻害しなかった。これらのデータから、天然のDNJ、VC−PMG及びクワ抽出物が、200ppmより低い濃度ではB16黒色腫細胞に対して細胞毒性をもたないこと、及び、メラニン含量を下げるアッセイでは細胞の成長は影響を受けないことがはっきりと示された。
【0122】
実験5:ウィスターラットの血中グルコースに及ぼす本発明のクワ葉抽出物の効果
用いた試薬及び装置は以下の通りである。
(1)実施例1のクワ葉抽出物
(2)生理食塩水
(3)ミグリトール標準化合物
(4)64ウィスターラット
(5)ジョンソン社製One Touch Ultra血中グルコース計測器及びCode9血中グルコース試験ストリップ
以下に示した方法を用いた。
【0123】
腹腔内注入(15mg/kg又は30mg/kg)又は胃内投与(25mg/kg又は50mg/kg)により、動物にクワ抽出物を投与した。2型糖尿病用に認可されたα−グルコシダーゼ阻害薬であるミグリトール(グリセット(Glyset)(登録商標)、25mg/kg)を陽性対照として用いた。空腹時の血糖レベルを基準として記録し、でんぷん食を与えてから30分、1時間及び2時間後の血糖レベルを測定した。動物にはでんぷん食を与える前に、クワ抽出物を投与した。
【0124】
結果及び考察
デンプン投与30分、1時間、2時間後の血中グルコース(X±SD、n=10)。
【0125】
【表1】

【0126】
結果から、クワ抽出物が血中グルコースレベルを有意に低下させることが示された。胃内経路による投与では、活性化合物の経口生物学的利用率が良いこと、代謝によっても不活化しないことが示された。本試験では、胃内及び腹腔内両方による投与により、50mg/kgのクワ抽出物が、ミグリトール(グリセット(登録商標))と同等に、血中グルコースレベルを有意に下げることが示された。図9を参照のこと。
【0127】
実験6:ヒトの血中グルコースレベルの低下に及ぼすクワ抽出物の効果
方法
ヒトでの小規模試験では、一晩の絶食の後、400mgのクワ抽出物又は偽薬のいずれかを、50gの粉末糖と共に患者に投与した。血糖レベルを3時間監視した。また患者の1人には、陽性対照として作用するように50gのミグリトールを投与した。
【0128】
結果及び考察
データから、クワ抽出物が血糖レベルを劇的に減少させることが示された。クワ抽出物により、開始時の血糖の振幅が59.91%、2時間後の血糖レベルが50.78%、3時間後の血糖レベルが47.18%減少した。クワ抽出物は、粉末糖のグリセミック指数を83.8から41.2に低下させることができた。図10を参照のこと。
【0129】
実験7:ヒトの皮膚の美白におけるクワ抽出物の効果
方法
本試験用に、実施例1のクワ抽出物を0.2%及び0.5%クリーム製剤に調製した。書面による同意が得られた対象女性(18才以上)20人の、前腕の予め所定領域に各製剤1日2回投与した。初回投与に先立ち、所定領域の皮膚色を色彩色差計CR300で測定した。
【0130】
処置の28日後、対象に試験施設を再訪してもらい、同じ所定領域の皮膚色を新たに測定して0日目とした。
以下の3つの試験指標により評価を行った。
−L(暗から明への変化)。これは皮膚の明度の指標である。この指標の上昇は皮膚色が明るくなったことを特徴付けるものである。
−b(青から黄への変化)。この指標の低下は、皮膚の黄味が低下したことを特徴付けるものである。
−ITA°(individual typological angle)。この指標は、明度(L)及び皮膚のメラニン指標(b)を用いて対象の皮膚の色素沈着の度合いを示す。ITA°の上昇は、皮膚の色素沈着の低下を特徴付けるものである。
【0131】
結果及び考察
指標は、0.2%製品を毎日28日間使用した後、有意に(P<0.001)上昇した(平均して+0.54A.U.)。このことは皮膚色の明度が上昇したことを表している。この効果は対象の90%で観察された。図11Aを参照のこと。
【0132】
個別類型角(individual typological angle=ITA°)指標は、0.2%製品を毎日28日間使用した後、有意に(P<0.001)上昇した(平均して+1A.U.)。このことは、皮膚の色素沈着が低下したことを意味している。この効果は対象の57%で観察された。図11Bを参照のこと。
【0133】
0.5%製品を使用した場合には:L指標は製品を毎日28日間使用した後、有意に(P<0.001)上昇し、このことは皮膚の明度が上昇したことを意味している。この効果は対象の86%で観察された。図11Aを参照のこと。
【0134】
個別類型角(ITA°)指標は、0.5%製剤を毎日28日間使用した後、有意に(P<0.001)上昇し、このことは皮膚の色素沈着が低下したことを意味している。この効果は対象の67%で観察された。図11Bを参照のこと。
【0135】
実験8.抽出物のデータ
本発明の抽出物(試料1から3)は下記表1に表した特性値により、先行技術の抽出物とは異なる。
【0136】
【表2】

【0137】
上記表1の説明。
試料1〜3は実施例1〜3の製品を指す。
試料4は特許第03139028.5号に従って調製した製品を指す。
【0138】
試料5は以下に記載した方法によって調製した。クワの葉を微粉末にし、80%エタノールで3回、各回1〜2時間かけて還流抽出する。1回目は生の材料の重量に対して6倍量(w/w)のエタノールを用い、その後2回目及び3回目の抽出は4倍量のエタノールを用いて行う。抽出物をまとめて24時間おき、その後ろ過する。ろ液を濃縮し、水を用いて5回、70〜80℃で濃縮した抽出物を抽出した。各回につき、出発材料(クワの葉)の重量に対して10倍量の水を用いた。水抽出物をまとめてpHを3〜4に調整し、NaClを3〜5%の濃度になるように加える。液体を、60cm(H)×3cm(D)カラムを用いたD101マクロ多孔性樹脂クロマトグラフィーにかけた。溶出液が透明になるまで水で溶出し、その後カラム容量に対して5倍量の30〜50%エタノールを用い、流速20/mlで溶出した。溶出液をまとめ、濃縮し、乾燥させて試料(5)とする。
【0139】
試料6は以下に記載した方法によって調製した。クワの葉を微粉末にし、各回クワの葉の重量に対して10〜12倍量の50〜60%エタノールを用い、50℃で2回抽出する。抽出物を濃縮し、D72強酸性マクロ多孔性樹脂を充填したカラムを通し、溶液(画分1)を回収する。エタノールで溶出して画分2とし、その後2%アンモニア含有70%エタノールで溶出して画分3を得る。画分1、2及び3をそれぞれ遠心分離し、濃縮する。乾燥させ、まとめて試料(6)とする。
【0140】
試料7は以下に記載した方法によって調製した。クワの葉を微粉末にし、80℃の水(10〜15倍量の水)で2回抽出した。抽出物をまとめてpHを2〜3に調整し、0℃に冷却して完全に沈殿させた。抽出物をろ過し、濃縮したろ液を陽イオン樹脂クロマトグラフィーにかけた。水で溶出し、その後等量の50%エタノール−アンモニア水溶液の混合物で、溶出液が透明になるまで溶出する。溶出液を濃縮し、乾燥させて試料(7)とする。
【0141】
試料8は以下に記載した方法によって調製した。クワの葉を微粉末にし、30%エタノール(各回当たりクワの葉の5倍量)で3回抽出する。抽出物をまとめて濃縮し、エタノールを加えて沈殿させる。上清を濃縮して水を加え、D101マクロ多孔性樹脂カラムに通して溶液を回収する。3倍量の水で溶出し、溶液をまとめて、水での溶出液を画分1とする。続けて60%エタノール(5倍量)で溶出し、溶出液を画分2とする。画分1のpHを4に調整し、陽イオン交換カラムに通す。溶出液が透明になるまでカラムを水で洗浄し、その後0.5Nのアンモニア溶液(8倍量)で溶出し、溶出液を回収して画分3とする。画分2及び3をそれぞれ濃縮して乾燥させ、試料(8)とする。
【0142】
表中で用いた溶解度を表す用語は以下のように定義する。
・「容易に溶解可能」1gの試料が1ml未満の水に溶ける
・「可溶性」1gの試料が10〜30mlの水に溶ける
・「平均的」1gの試料が30〜100mlの水に溶ける。
【0143】
上述した結果から、本発明の製品は、活性、重要な活性化合物の含量、色調及び水への溶解度の点で、現行の製品よりも優れていることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クワ植物の葉から得られ、α−グルコシダーゼIを阻害するIC50値が濃度にして90μg/ml未満である植物抽出物。
【請求項2】
α−グルコシダーゼIを阻害するIC50値が濃度にして5〜40μg/mlである、請求項1に記載の植物抽出物。
【請求項3】
定量HPLC及び/又はLC−MS(液体クロマトグラフィー/質量分析)で測定した場合に全イミノ糖を5〜40%(w/w)含む、請求項1又は2に記載の植物抽出物。
【請求項4】
全イミノ糖を8〜30%(w/w)含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の植物抽出物。
【請求項5】
全イミノ糖を15〜20%(w/w)含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の植物抽出物。
【請求項6】
イミノ糖が、DNJ、ファゴミン、N−メチル−DNJ、1,4ジデオキシ−1,4−イミノ−D−アラビニトール(DAB)、2−O−α−D−ガラクトピラノシル−DNJ(GAL−DNJ)及びカリステギンBをさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の植物抽出物。
【請求項7】
20〜70%(w/w)の全アミノ酸をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の植物抽出物。
【請求項8】
30〜60%(w/w)の全アミノ酸を含んでなる、請求項7に記載の植物抽出物。
【請求項9】
40〜50%(w/w)の全アミノ酸を含んでなる、請求項8に記載の植物抽出物。
【請求項10】
クワが
a.マグワ(Morus alba L.)
b.ロソウ(Morus alba var.multicaulis L.)
c.クロミグワ(Morus nigra)及び
d.ヤマグワ(Morus australis Poir)
より選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の植物抽出物。
【請求項11】
抽出物の総重量を基準にして算出した場合に1〜20%(w/w)のDNJを含む、請求項3に記載の植物抽出物。
【請求項12】
抽出物の総重量を基準にして算出した場合に2〜10%(w/w)のDNJを含む、請求項3に記載の植物抽出物。
【請求項13】
抽出物の総重量を基準にして算出した場合に4〜6%(w/w)のDNJを含む、請求項3に記載の植物抽出物。
【請求項14】
抽出物の総重量を基準にして算出した場合に1〜3%(w/w)のDNJを含む、請求項3に記載の植物抽出物。
【請求項15】
淡い黄色又は白色に近い色であることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の植物抽出物。
【請求項16】
水に容易に溶解可能であることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項に記載の植物抽出物。
【請求項17】
1%水溶液とした場合にpH値が5.5〜6.5になる、請求項1〜16のいずれか1項に記載の植物抽出物。
【請求項18】
抽出物のUVスペクトルが218nm及び263nmで最大吸収を示すことを特徴とする、請求項1〜17のいずれか1項に記載の植物抽出物。
【請求項19】
クワ植物の葉から、α−グルコシダーゼIを阻害するIC50値が濃度にして90μg/ml未満の抽出物を製造する方法であって、
a.葉材料の水又はアルコール抽出を実施する工程と;
b.強酸性陽イオン交換樹脂を用い、水で洗浄し、アンモニア溶液で溶出し、溶出液を回収して、その後それからアンモニアを除去する、カラムクロマトグラフィーによる精製工程と;
c.溶出液を、マクロ多孔性吸収樹脂を用いたカラムクロマトグラフィーに供し、溶液を回収する工程と;
d.該抽出物を濃縮し、乾燥させる工程と;
を含んでなる製造方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、
a.植物の葉を乾燥させて、粗い粉末に調製し、その後、クワ植物の葉の量に対して5〜18倍量(w/w)の0〜40%低分子量アルコールを用いて、最大5回まで抽出工程を繰り返し、
b.カラム容量に対して1〜2倍量の水でカラムを洗浄し、洗い液を捨て、その後、カラム容量に対して2〜8倍量の0.2〜1.0Nのアンモニア水溶液で、1時間当たりカラム容量の1〜3倍量の溶出液となる流速で溶出し、そしてpH値が9.0〜11.0の範囲の溶出液を回収し、
c.溶液とカラム容量との割合が20:1〜5:1の範囲になるようにカラムからの溶出を行い、及び
d.乾燥させた抽出物が80番のふるいを通過するように粉砕する、
方法。
【請求項21】
色素沈着による状態を治療するための化粧品又は医薬品に用いるための、請求項1〜18に記載の植物抽出物、又は、請求項19又は20に記載の方法による植物抽出物。
【請求項22】
メラニン生産を低下させるための、請求項21に記載の植物抽出物。
【請求項23】
雀卵斑、肝斑、妊娠線、老人斑及び黒色腫を含む、色素沈着過度により引き起こされる病気又は疾患を治療するための、請求項21又は22に記載の植物抽出物。
【請求項24】
血中グルコースレベルを制御するため、又は食品若しくは飲料のグリセミック指数を低下させるために使用する、請求項1〜18に記載の植物抽出物、又は、請求項19又は20に記載の方法による植物抽出物。
【請求項25】
請求項1〜18に記載の植物抽出物、又は、請求項19又は20に記載の方法による植物抽出物と、ビタミンC及びその誘導体、コウジ酸、アルブチン、ジアセチルボルジン、アゼライン酸、オクタデセン二酸、ウンデシレノイルフェニルアラニン、カンゾウ抽出物、アロエ抽出物、クレソン抽出物、アスコフィルム抽出物、ホップ抽出物、グルタチオン、エクジソン及び/又はエラグ酸から選択される、1つ以上の皮膚美白剤の組み合わせを含んでなる、化粧品又は医薬品。
【請求項26】
ビタミンC誘導体がL−アスコルビン酸−2−リン酸マグネシウム(VC−PMG)である、請求項25に記載の化粧品又は医薬品。
【請求項27】
抽出物とその他皮膚美白剤との比が10:1〜1:1である、請求項25又は26に記載の化粧品又は医薬品。
【請求項28】
請求項1〜18に記載の植物抽出物、又は、請求項19又は20に記載の方法による植物抽出物を含んでなる、医薬品、栄養補助食品又は食品若しくは飲料用添加剤又はサプリメント。
【請求項29】
請求項1〜18に記載の植物抽出物、又は、請求項19又は20に記載の方法による植物抽出物を含んでなる食品又は飲料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2013−504607(P2013−504607A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529114(P2012−529114)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際出願番号】PCT/CN2010/076988
【国際公開番号】WO2011/032502
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(512068673)ボタニック センチュリー(ベイジン)カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】