検出装置および方法、並びにプログラム
【課題】プリクラッシュ安全装置用のレーダと、車線変更支援装置用のレーダとを共用できるようにする。
【解決手段】送信部11のアンテナ36は、第1の方向で、かつ第1の距離近傍の第1の範囲と、第2の方向で、かつ第2の距離近傍の第2の範囲とを含む範囲に電波を照射することにより送信信号を送信し、受信部12は、送信信号としての電波のうち、反射されてくる電波を受信して、受信した電波より受信信号を生成し、衝突予備動作用信号処理部13は、受信信号を、第1の所定時間の間でサンプリングして、物体を検出し、検出結果に応じ衝突予備動作制御部14を制御して衝突に備える動作を実行させ、車線変更警告用信号処理部15は、受信信号を、第1より長い第2の所定時間の間でサンプリングして、物体を検出し、検出結果に応じ車線変更警告動作制御部16を制御して、車線変更の危険を警告させる。本発明は、車両安全装置に適用することができる。
【解決手段】送信部11のアンテナ36は、第1の方向で、かつ第1の距離近傍の第1の範囲と、第2の方向で、かつ第2の距離近傍の第2の範囲とを含む範囲に電波を照射することにより送信信号を送信し、受信部12は、送信信号としての電波のうち、反射されてくる電波を受信して、受信した電波より受信信号を生成し、衝突予備動作用信号処理部13は、受信信号を、第1の所定時間の間でサンプリングして、物体を検出し、検出結果に応じ衝突予備動作制御部14を制御して衝突に備える動作を実行させ、車線変更警告用信号処理部15は、受信信号を、第1より長い第2の所定時間の間でサンプリングして、物体を検出し、検出結果に応じ車線変更警告動作制御部16を制御して、車線変更の危険を警告させる。本発明は、車両安全装置に適用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置および方法、並びにプログラムに関し、特に、高速で処理が必要なプリクラッシュ機能と、比較的高速でなくてもよい車線変更支援機能とを統一した構成として実現できるようにした検出装置および方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車と他車との間の相対速度や距離を測定するセンサとして、2周波CW(Continuous Wave)方式のセンサが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。すなわち、この2周波CW方式のセンサは、受信された搬送波に対するドップラ信号の周波数(以下、ドップラ周波数と称する)や位相を検出し、それらを利用して、自車と他車との相対速度や距離を測定する。
【0003】
また、自車と他車との相対的な位置を示す角度を測定するセンサとして、モノパルス方式のセンサが知られている。
【0004】
このように、2周波CW方式のセンサを用いて自車と他車との距離を測定し、モノパルス方式のセンサにより自車と他車との角度を測定することで、接近する他車の存在する位置を検出することが可能となっている。
【0005】
【特許文献1】特許第3203600号公報
【特許文献2】特開2004−69693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したような方式の測定装置を用いることにより後方より接近する他車の存在を検出することで、他車の自車への衝突を予測し、衝突に予め備えた動作を実施させる技術、所謂、プリクラッシュ安全装置が開発されている。
【0007】
また、同様の機能を用いることにより自車の側面後方に接近する他車を検出することにより、車線変更の危険の有無を警告する車線変更支援装置が開発されている。
【0008】
このプリクラッシュ安全装置は、自車の後方に、高速で衝突の可能性がある他車を検出する必要があるため、自車の真後ろに近い範囲を、遠い距離まで監視する必要がある。一方、車線変更支援装置は、自車の側面後方に接近する他車との距離を比較的近い範囲で監視する必要がある。
【0009】
したがって、両者は、異なる監視範囲、および監視距離を監視する必要があるため、従来、検出用に設置すべきレーダの配置が異なっていた。すなわち、一般に、プリクラッシュ安全装置は、車両本体の真後ろの中央位置に、左右に対して比較的狭い範囲で遠い範囲までを監視するレーダが設けられるのに対して、車線変更支援装置においては、車両本体の左右の後端に設けられ、車両の側面後方の比較的広い範囲であって、距離が近い範囲を監視するレーダが設けられる。
【0010】
このため、両者を設置すると、それぞれに対応したレーダが設置されることにより、製品のコストを高めてしまうことがあった。
【0011】
また、プリクラッシュ安全装置の使用頻度は、車線変更支援装置の使用頻度に対して極端に少ないため、この使用頻度とコストとのバランスから今現在においても、一部の高級車にのみ使用されているだけである。
【0012】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、プリクラッシュ安全装置用のレーダと、車線変更支援装置用のレーダとを共用できるようにし、コストの低減を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一側面の検出装置は、第1の方向であって、第1の距離近傍までの範囲からなる第1の範囲と、前記第1の方向とは異なる第2の方向であって、前記第1の距離よりも近距離の第2の距離近傍までの範囲からなる第2の範囲とを含む範囲に電波を照射するように構成され、前記電波を照射することにより送信信号を送信する送信手段と、前記送信手段により送信された送信信号としての電波のうち、反射されてくる電波を受信し、受信した前記電波より受信信号を生成する受信手段と、前記受信手段により生成された受信信号を、第1の所定時間の間でサンプリングすることにより、物体を検出する第1の検出手段と、前記受信手段により生成された受信信号を、前記第1の所定時間よりも長い第2の所定時間の間でサンプリングすることにより、前記物体を検出する第2の検出手段とを含む。
【0014】
送信手段は、例えば、送信部であり、車両の真後ろに近い後方の方向であって、左右に対して狭く遠い範囲の第1の範囲と、前記第1の範囲よりも近い、車両の側面後方の第2の範囲とに電波を照射することにより送信信号を送信する。このため、第1の範囲においては、真後ろの方向に対して比較的狭い範囲であるが、遠方の範囲まで送信信号である電波を照射することができ、第2の範囲においては、左右の側面後方に対して、比較的広い範囲であるが、近い範囲で送信信号である電波を照射することができる。
【0015】
受信手段は、例えば、受信部であり、真後ろの比較的狭い範囲ではあるが遠方の第1の範囲における、送信信号のうち反射されてくる電波を受信し、受信した電波より受信信号を生成すると共に、側面後方の比較的広い範囲であるが近傍の第2の範囲の送信信号のうち反射されてくる電波を受信し、受信した電波より受信信号を生成する。
【0016】
第1の検出手段は、例えば、衝突予備動作用信号処理部であり、前記受信部により受信された受信信号を、比較的短い周期となる第1の所定時間でサンプリングすることにより、物体を検出する。すなわち、衝突予備動作用信号処理部は、比較的短い周期でサンプリングされる受信信号を処理することにより物体を検出する。衝突予備動作用信号処理部は、車両本体の真後ろの方向に対して比較的狭い遠方の範囲の物体を検出する必要があるが、遠方まで照射できる範囲の電波を送信信号として送信するため、物体の接近に伴って、物体から反射される電波を、強度の高い受信信号として受信することができるので、短いサンプリング時間で、高速に比較的高い精度で物体の位置を検出することができる。
【0017】
第2の検出手段は、例えば、車線変更警告用信号処理部であり、前記受信部により受信された受信信号を、比較的長い周期となる第1の所定時間より長い第2の所定時間でサンプリングすることにより、物体を検出する。すなわち、車線変更警告用信号処理部は、比較的長い周期でサンプリングされる受信信号を処理することにより物体を検出する。車線変更警告用信号処理部は、車両本体の側面後方に対して比較的広い近傍の範囲の物体を検出する必要があるが、近傍の範囲まで照射できればよい、比較的弱い電波を、受信信号として受信するため、受信信号の精度は低いが、長い第2の所定時間でサンプリングして処理するため、第1の検出手段に比べて低速ではあるが、比較的広い範囲である第2の範囲に存在する物体の位置を検出することができる。
【0018】
このため、本発明の検出装置は、同一の送信部と受信部とにより、左右に比較的狭いが、距離にして遠い範囲までを含む第1の範囲については、高速で、すなわち、短い周期で物体を検出することが可能となり、左右に比較的広いが、距離にして近い範囲を含む第2の範囲については、比較的低速ながらも、広い範囲で物体を検出することが可能となる。
【0019】
前記第1の検出手段には、検出された前記物体の速度を、第1の速度として検出する第1の速度検出手段と、検出された前記物体の存在する角度を、第1の角度として検出する第1の角度検出手段と、検出された前記物体の存在する距離を、第1の距離として検出する第1の距離検出手段とを含み、前記第2の検出手段には、検出された前記物体の速度を、第2の速度として検出する第2の速度検出手段と、検出された前記物体の存在する角度を、第2の角度として検出する第2の角度検出手段と、検出された前記物体の存在する距離を、第2の距離として検出する第2の距離検出手段とを含ませるようにすることができる。
【0020】
第1の速度検出手段、第1の角度検出手段、および第1の距離検出手段は、それぞれ、例えば、衝突予備動作用信号処理部におけるドップラ周波数算出部、角度算出部、および距離算出部であり、主に第1の範囲における物体の速度、物体の存在する位置の角度、および距離を、狭い範囲についてではあるが比較的高速で検出することを目的として使用することができる。
【0021】
第2の速度検出手段、第2の角度検出手段、および第2の距離検出手段は、それぞれ、例えば、車線変更警告用信号処理部におけるドップラ周波数算出部、角度算出部、および距離算出部であり、主に第2の範囲における物体の速度、物体の存在する位置の角度、および距離を、比較的低速ではあるが、広い範囲で検出することを目的として使用することができる。
【0022】
前記第1の速度が、第1の所定速度よりも高速で、かつ、前記第1の距離および前記第1の角度に基づいた前記物体の位置が、所定範囲であるとき、衝突予備動作を実行する衝突予備動作実行手段を含ませるようにすることができる。
【0023】
衝突予備動作実行手段は、例えば、衝突予備動作制御部であり、後方に接近する物体が衝突の可能性のある所定速度以上で、所定範囲に検出された場合、衝突に備えた予備的な動作を実行させるようにすることができ、車両に設けられたとき、衝突時の安全性を向上させることができる。
【0024】
前記第2の速度が、第2の所定速度よりも高速で、かつ、前記第2の距離および前記第2の角度に基づいた前記物体の位置が、前記第2の所定速度で設定される第1の警告範囲であるとき、警告を発する警告手段を含ませるようにすることができる。
【0025】
警告手段は、例えば、車線変更警告動作制御部であり、側面後方に接近する物体が第2の所定速度以上で、第2の所定速度に対応して設定された第1の警告範囲内で検出された場合、車線変更に際して危険性が高いことを警告させるようにすることができ、車両に設けられたとき、車線変更時の危険を促すことができるので、車線変更時の安全性を向上させることができる。
【0026】
前記警告手段には、前記第2の所定速度よりも高速の、第3の所定速度よりも高速で、かつ、前記第2の距離および前記第2の角度に基づいた前記物体の位置が、前記第3の所定速度で設定される、前記第1の警告範囲よりも遠い範囲を含む、第2の警告範囲であるとき、警告を発するようにさせることができる。
【0027】
警告手段は、例えば、車線変更警告動作制御部であり、側面後方に接近する物体が第2の所定速度よりも高速の第3の所定速度以上で、第3の所定速度に対応して設定された第1の警告範囲よりも遠い範囲を含む第2の警告範囲内で検出された場合、車線変更に際して危険性が高いことを警告させるようにすることができ、車両に設けられたとき、相対速度に応じて、警告範囲を設定することで、低速時には、比較的接近した位置で他の車両を検出したときに警告を発するようにさせ、高速時には、比較的離れた遠い位置からでも他の車両を検出したときに警告を発するようにさせることができ、相対速度に対応して適切に車線変更時の安全性を向上させることができる。
【0028】
前記第2の速度、前記第2の角度、および前記第2の距離を記憶する記憶手段と、前記第2の検出手段により前記第2の範囲に存在する物体が検出されていた状態から、前記物体を検出しない状態となった場合、前記記憶手段に記憶されている前記第2の速度、前記第2の角度、および前記第2の距離の情報に基づいて、前記物体の位置を推定する推定手段とを含ませるよにすることができ、前記推定手段により推定される物体の位置が、前記第1の警告範囲、または前記第2の警告範囲である場合、前記警告手段には、警告を発するようにさせることができる。
【0029】
記憶手段は、例えば、データ記憶部であり、推定手段は、例えば、推定部である。すなわち、推定部は、第2の範囲に存在する物体が検出されていた状態から、前記物体を検出しない状態に変化したような場合、データ記憶部に記憶されている前記第2の速度、前記第2の角度、および前記第2の距離に基づいて、物体の位置を推定し、第1の警告範囲であるか、または、第2の警告範囲であるときに、警告を発することができる。このため、検出装置が、車両に設けられるような場合、接近する物体として車両が検出されていた状態から、車両により反射された電波が受信部により受信できない範囲に移動するようなときでも、車両の存在する位置を推定して警告することができるので、車線変更時の安全性を向上させることができる。
【0030】
前記推定手段により推定される物体の位置が、前記第1の警告範囲、または第2の警告範囲である場合、前記第2の検出手段により前記第2の範囲に接近する物体が検出されていた状態から、検出しない状態となったタイミングから所定時間が経過していないとき、前記警告手段には、警告を発するようにさせることができる。
【0031】
すなわち、前記第2の範囲に接近する物体が検出されていた状態から、検出しない状態となったタイミングから所定時間が経過しているような場合、物体が移動することにより、第1の警告範囲、または、第2の警告範囲から既に離れてしまっている可能性が高く、そのような場合、警告しないようにすることができ、不要な警告を抑制することができるので、警告そのものの信頼性を向上させることができ、車線変更時の安全性をより向上させることができる。
【0032】
前記送信手段には、2種類の周波数のCW(Continuous Wave)の電波を交互に送信させ、前記受信手段により生成された、前記2種類の周波数のCWの電波に対応する受信信号の、それぞれの和信号および差信号を、前記第1の検出手段、および、前記第2の検出手段に振り分ける振分手段をさらに含ませるようにすることができる。
【0033】
すなわち、2周波CW方式による距離の測定原理と、モノパルス方式による角度の測定原理とを用いることが可能となり、1つの検出装置により、物体の速度、距離、および角度を検出することができ、コストを低減すると共に、装置そのものを小型化することが可能となる。
【0034】
本発明の一側面の検出方法は、第1の方向であって、第1の距離近傍までの範囲からなる第1の範囲と、前記第1の方向とは異なる第2の方向であって、前記第1の距離よりも近距離の第2の距離近傍までの範囲からなる第2の範囲とを含む範囲に電波を照射するように構成され、前記電波を照射することにより送信信号を送信する送信ステップと、前記送信ステップの処理により送信された送信信号としての電波のうち、反射されてくる電波を受信し、受信した前記電波より受信信号を生成する受信ステップと、前記受信ステップの処理により生成された受信信号を、第1の所定時間の間でサンプリングすることにより、物体を検出する第1の検出ステップと、前記受信ステップの処理により生成された受信信号を、前記第1の所定時間よりも長い第2の所定時間の間でサンプリングすることにより、前記物体を検出する第2の検出ステップとを含む。
【0035】
本発明の一側面のプログラムは、第1の方向であって、第1の距離近傍までの範囲からなる第1の範囲と、前記第1の方向とは異なる第2の方向であって、前記第1の距離よりも近距離の第2の距離近傍までの範囲からなる第2の範囲とを含む範囲に電波を照射するように構成され、前記電波を照射することにより送信信号を送信する送信ステップと、前記送信ステップの処理により送信された送信信号としての電波のうち、反射されてくる電波を受信し、受信した前記電波より受信信号を生成する受信ステップと、前記受信ステップの処理により生成された受信信号を、第1の所定時間の間でサンプリングすることにより、物体を検出する第1の検出ステップと、前記受信ステップの処理により生成された受信信号を、前記第1の所定時間よりも長い第2の所定時間の間でサンプリングすることにより、前記物体を検出する第2の検出ステップとを含む処理を実行させる。
【0036】
本発明の一側面においては、第1の方向であって、第1の距離近傍までの範囲からなる第1の範囲と、前記第1の方向とは異なる第2の方向であって、前記第1の距離よりも近距離の第2の距離近傍までの範囲からなる第2の範囲とを含む範囲に電波を照射するように構成され、前記電波を照射することにより送信信号が送信され、送信された送信信号としての電波のうち、反射されてくる電波が受信され、受信された前記電波より受信信号が生成され、生成された受信信号が、第1の所定時間の間でサンプリングされることにより、物体が検出され、生成された受信信号が、前記第1の所定時間よりも長い第2の所定時間の間でサンプリングされることにより、前記物体が検出される。
【0037】
以上により、プリクラッシュ安全装置用のレーダと、車線変更支援装置用のレーダとを共通で使用し、コストの低減を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、プリクラッシュ安全装置用のレーダと、車線変更支援装置用のレーダとを共通で使用することが可能となり、コストの低減を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
図1は、本発明に係るレーダ装置の一実施の形態の構成を示す図である。
【0040】
レーダ装置1は、車両に搭載され、車両の後方範囲(ほぼ真後ろであって、比較的遠い部分を含む範囲)に相対速度が所定の速度以上の高速で接近する車両を検出して、衝突を予期して、衝突に備えた予備的な動作を実行させる、いわゆるプリクラッシュ機能と、車両の側面後方範囲(走行中の走行車線からみて、左右に隣接する走行車線における後方の比較的近い部分を含む範囲)で、走行している車両を検出し、車線変更時に危険があるとき警告を発する、いわゆる車線変更支援機能(車線変更警告機能)とを備えたものである。
【0041】
レーダ装置1は、送信部11、受信部12、衝突予備動作用信号処理部13、衝突予備動作制御部14、車線変更警告用信号処理部15、および車線変更警告動作制御部16とから構成されている。
【0042】
送信部11は、2周波CW(Continuous Wave)からなる電波を送信信号として発生し照射する。受信部12は、送信部11より送信された送信信号である電波のうち、物体により反射されてくる電波を受信して、受信した電波より受信信号を生成し、衝突予備動作用信号処理部13、および車線変更警告用信号処理部15のそれぞれに供給する。
【0043】
衝突予備動作用信号処理部13は、受信部12より供給されてくる受信信号を比較的短い周期でサンプリングし、後方からの他車の接近を検出して、衝突の有無を判定し、判定結果に応じて、衝突予備動作制御部14に対して衝突予備動作を実行させる。衝突予備動作制御部14は、例えば、音声警告装置、シートベルト、エアバッグ、または可動式ヘッドレストなどのいわゆる衝突時に乗員を保護する衝突保護機器の動作を制御し、衝突予備動作用信号処理部13より衝突予備動作を実施するように指示が出されると、音声により衝突の発生を事前警告して注意を促し、シートベルトを引き上げて乗員を座席に固定させ、いわゆる鞭打ち症などの発生を抑止したり、衝突前に適切なタイミングでエアバッグを動作させて衝突時の乗員の衝撃を吸収したり、さらには、可動式ヘッドレストを動作させて乗員の頭部に押し当てるなどして、乗員の衝突時の頭部への反動による衝撃を抑制させるといった処置を実行させる。
【0044】
車線変更警告用信号処理部15は、受信部12より供給されてくる受信信号を比較的長い周期でサンプリングし、側面後方からの他車の存在位置を認識し、車線変更に際しての危険の有無を判定し、判定結果に応じて、車線変更警告動作制御部16に対して、車線変更警告の動作を実行させる。車線変更警告動作制御部16は、車線変更警告用信号処理部15より警告を促すように指示を受けた場合、例えば、警告音、警告を促す音声指示、または、警告を促すように乗員が着座する座席を振動させることにより、車線変更を実施すると危険な状態であることを警告する。
【0045】
次に、送信部11の詳細な構成について説明する。
【0046】
送信部11は、発振部31、周波数切替部32、増幅部33、3分岐部34、増幅部35、およびアンテナ36より構成されている。
【0047】
発振部31は、周波数切替部32から所定の間隔で供給されてくる切替信号に基づいて、数10GHz帯の周波数f1のCW信号と、周波数f1と数MHz異なる周波数f2のCW信号とを搬送波として切り替えて発生し、増幅部33で増幅させて3分岐部34に供給する。周波数切替部32は、発振部31に発振すべき周波数の切替を指示する切替信号を供給すると共に、受信部12にも切替信号を供給する。
【0048】
3分岐部34は、増幅部33より供給されてくる周波数f1またはf2のCW信号を受信部12、および、増幅部35のそれぞれに分岐して供給する。増幅部35は、3分岐部34より供給されてくる周波数f1またはf2のCW信号を送信信号としてアンテナ36より電波として出力する。
【0049】
アンテナ36は、車両本体の後方中央部付近に設けられており、図2で示されるような範囲Z1,Z2−1,Z2−2からなる強度分布特性の電波を送信信号として出力する。図2においては、図中下方向が車両C1の進行方向であり、車両C1の後方中央部付近に設けられたアンテナA(図1におけるアンテナ36,51−1,51−2が一体となって構成されている)から電波が発せられているときの強度分布特性が示されている。
【0050】
図2の強度分布特性における範囲Z1は、アンテナAの存在する位置から後方正面を中央とした、水平方向に角度αで、かつ、比較的遠い位置までを含む図中の斜線部の範囲である。また、範囲Z2−1,Z2−2は、アンテナAの存在する位置から後方正面を中央とした、水平方向に角度β(>α)で、かつ、比較的近い位置までを含む図中の無地の範囲である。尚、図2においては、車両C1が、車線L1乃至L3のうちの車線L2を図中の下方向に走行している状態が示されている。
【0051】
次に、受信部12の構成について説明する。
【0052】
受信部12は、アンテナ51−1,51−2、加算部52、減算部53、LNA(Low Noise Amplifier)54−1,54−2、混合器55−1,55−2、振分部56,57、LPF(Low Pass Filter)58−1乃至58−3、増幅部59−1,59−2、およびADC(Analog Digital Converter)60−1乃至60−3から構成されている。
【0053】
アンテナ51−1,51−2は、送信部11のアンテナ36より照射された送信信号としての電波のうち、車両、または、人間などの物体に反射してくる電波を順次して受信し、受信した電波に対応する信号をそれぞれ加算部52および減算部53に供給する。尚、上述したように送信信号は、周波数f1,f2が順次切り替えられて送信されるが、物体が移動している場合、反射によって、周波数f1,f2に対応して、ドップラ周波数fd1,fd2が発生することになる。このため、アンテナ51−1,51−2により受信される電波は、周波数f1+fd1のCW信号に対応するものと、周波数f2+fd2のCW信号に対応するものとが、送信信号におけるf1,f2周波数の切替タイミングど同期して、順次切り替えられて受信されることになる。また、送信部11および受信部12の構成を含むレーダ装置1は、一体のパッケージとして構成され、車両の後部略中央部に搭載されるものであり、車両の大きさからみて、アンテナ51−1,51−2と、アンテナ36とは、実質的に略同位置に配置されるものである。このため、アンテナ51−1,51−2は、アンテナ36で出力された送信信号としての電波のうち、物体により反射され、略同一の位置に反射されて戻ってくる電波を受信する。
【0054】
加算部52は、アンテナ51−1,51−2より供給されてくる信号を加算して、f1和信号(周波数f1のCW信号が反射することにより受信されたドップラ周波数fd1を含む周波数(f1+fd1)の和信号)、およびf2和信号(周波数f2のCW信号が反射することにより受信されたドップラ周波数fd2を含む周波数(f2+fd2)の和信号)としてLNA54−1に供給する。減算部53は、アンテナ51−1,51−2より供給されてくる信号を減算して、差信号(周波数f1のCW信号が反射することにより受信されたドップラ周波数fd1を含む周波数(f1+fd1)の差信号)、およびf2差信号(周波数f2のCW信号が反射することにより受信されたドップラ周波数fd2を含む周波数(f2+fd2)の差信号)としてLNA54−1に供給する。
【0055】
LNA54−1,54−2は、それぞれ加算部52および減算部53より供給されてくるf1和信号またはf2和信号、およびf1差信号、またはf2差信号を、それぞれ後段の混合器55−1,55−2に3分岐部34より供給されてくる周波数f1またはf2のCW信号のレベルと同程度にまで増幅し、混合器55−1,55−2に供給する。
【0056】
混合器55−1,55−2は、送信部11の3分岐部34より供給されてくる周波数f1またはf2のCW信号と、LNA54−1,54−2のそれぞれから供給されてくるf1和信号およびf1差信号、または、f2和信号およびf2差信号とを混合し、それぞれ振分部56,57に供給する。尚、f1和信号およびf1差信号が、周波数f1のCW信号と混合された信号については、それぞれfd1和信号およびfd1差信号と称するものとし、f2和信号およびf2差信号が、周波数f2のCW信号と混合された信号については、それぞれfd2和信号およびfd2差信号と称するものとする。
【0057】
振分部56は、混合器55−1より供給されてくる信号を、切替信号に対応して、LPF58−1,58−2に周波数ごとに、それぞれfd1和信号およびfd2和信号として振り分けて出力する。振分部57は、それぞれ混合器55−2より供給されてくるfd1差信号、およびfd2差信号のうち、切替信号に対応して、fd1差信号のみをLPF58−3に振り分けて出力する。
【0058】
LPF58−1乃至58−3は、それぞれ振分部56,57より供給されてくるfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号を平滑化した後、増幅部59−1乃至59−3に供給する。増幅部59−1乃至59−3は、それぞれLPF58−1乃至58−3より供給されてきたfd1和信号、fd2和信号、および、fd1差信号を増幅して、ADC60−1乃至60−3に供給する。ADC60−1乃至60−3は、平滑化されて、さらに増幅されたfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号を、デジタル信号に変換し、受信信号として、それぞれ衝突予備動作用信号制御部13、および車線変更警告用信号処理部15に供給する。
【0059】
次に、衝突予備動作用信号処理部13の構成について説明する。
【0060】
衝突予備動作用信号処理部13は、FFT(Fast Fourier transform:高速フーリエ変換部)71−1乃至71−3、衝突判定用FFTタイミング制御部72、ドップラ周波数算出部73、距離算出部74、角度算出部75、衝突判定部76より構成されている。
【0061】
FFT71−1乃至71−3は、衝突判定用FFTタイミング制御部72からの制御信号に基づいて、受信部12より受信信号としてそれぞれに供給されてくるfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号を順次サンプリングして、FFT処理し、FFT71−1が、fd1和信号のスペクトル分布から得られる結果を距離算出部74および角度算出部75に供給し、FFT71−2は、fd2和信号のスペクトル結果から得られる結果をドップラ周波数算出部73、および距離算出部74に供給し、FFT71−3が、fd1差分信号のスペクトル分布から得られる結果を角度算出部75に供給する。
【0062】
衝突判定用FFTタイミング制御部72は、内蔵するカウンタ72aを所定時間ごとに加算し、所定時間T1が経過したところで、FFT71−1乃至71−3に対してFFT処理を実行するように指示する。
【0063】
ドップラ周波数算出部73は、FFT71−2より供給されてくるfd2和信号のスペクトル結果に基づいて、ドップラ周波数fd2を算出すると共に、求められたドップラ周波数fd2から検出物体の速度v1を算出し、距離算出部74、角度算出部75、および衝突判定部76に供給する。
【0064】
距離算出部74は、FFT71−1,71−2より供給されてくるfd1和信号およびfd2差信号、並びにドップラ周波数算出部73より供給されてくる速度v1に基づいて、fd1和信号とfd2差信号との位相差の情報から、物体までの距離D1を算出し、衝突判定部76に供給する。
【0065】
角度算出部75は、FFT71−1からのfd1和信号とFFT71−3からのfd1差信号、並びに速度v1に基づいて、fd1和信号とfd1差信号との強度比から物体の存在する位置の角度θ1を算出し、衝突判定部76に供給する。
【0066】
衝突判定部76は、速度判定部76aを制御して、ドップラ周波数算出部73より供給されてきた速度v1が所定速度V1以上であるか否かを判定させる。衝突判定部76は、速度v1が所定速度V1より高速である場合、範囲判定部76bを制御して、距離D1、および角度θ1に基づいて、衝突の可能性のある所定範囲内に車両が存在するか否かを判定させる。そして、衝突判定部76は、範囲判定部76により所定範囲内に車両が存在すると判定された場合、衝突の可能性があると判定し、衝突予備動作指示部76cを制御して、衝突予備動作制御部14に対して、衝突予備動作を実行させる。
【0067】
次に、車線変更警告用信号処理部15の構成について説明する。
【0068】
車線変更警告用信号処理部15は、FFT91−1乃至91−3、車線変更警告用FFTタイミング制御部92、ドップラ周波数算出部93、距離算出部94、角度算出部95、車線変更警告判定部96より構成されている。
【0069】
FFT91−1乃至91−3は、車線変更警告用FFTタイミング制御部92からの制御信号に基づいて、受信部12より受信信号としてそれぞれに供給されてくるfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号を順次サンプリングして、FFT処理し、FFT91−1が、fd1和信号のスペクトル分布から得られる結果を距離算出部94および角度算出部95に供給し、FFT91−2が、fd2和信号のスペクトル分布から得られる結果をドップラ周波数算出部93、および距離算出部94に供給し、FFT91−3が、fd1差分信号のスペクトル分布から得られる結果を角度算出部95に供給する。
【0070】
車線変更警告用FFTタイミング制御部92は、内蔵するカウンタ92aを所定時間ごとに加算し、所定時間T2(>T1)が経過したところで、FFT91−1乃至91−3に対してFFT処理を実行するように指示する。ここで、所定時間T2は、所定時間T1よりも長い時間が設定されており、FFT91−1乃至91−3によるFFT処理は、FFT71−1乃至71−3によるFFT処理よりもサンプリング時間が長くなるように設定されている。
【0071】
ドップラ周波数算出部93は、FFT91−2より供給されてくるfd2和信号に基づいて、ドップラ周波数fd2を算出すると共に、求められたドップラ周波数fd2から検出物体の速度v2を算出し、距離算出部94、角度算出部95、および車線変更警告判定部96に供給する。
【0072】
距離算出部94は、FFT91−1,91−2より供給されてくるfd1和信号およびfd2和信号、並びにドップラ周波数算出部93より供給されてくる速度v2に基づいて、fd1和信号およびfd2和信号の位相差の情報から、物体までの距離D2を算出し、車線変更警告判定部96に供給する。
【0073】
角度算出部95は、FFT91−1,91−3より供給されてくるfd1和信号およびfd1差信号、並びに速度v2に基づいて、fd1和信号およびfd1差信号の強度比から、物体の存在する位置の角度θ2を算出し、車線変更警告判定部96に供給する。
【0074】
車線変更警告判定部96は、速度判定部96aを制御して、ドップラ周波数算出部93より供給されてきた速度v2が所定速度VaまたはVb(<Va)以上であるか否かを判定させる。車線変更警告判定部96は、速度v2が所定速度VaまたはVb(<Va)より高速である場合、範囲判定部96bを制御して、距離D2、および角度θ2に基づいて、速度対範囲テーブル96dに、所定速度Va<v2、または、Va>v2>Vbのそれぞれに対応して予め記憶されている警告範囲W1、または、警告範囲W2(警告範囲W1より近傍の狭い範囲)内で、物体が存在するか否かを判定させる。そして、車線変更警告判定部96は、範囲判定部96bにより警告範囲W1またはW2内に物体が存在すると判定した場合、車線変更に危険の可能性があるとみなし、警告指示部96fを制御して、車線変更警告動作制御部16に対して、車線変更警告動作を実行させる。
【0075】
また、車線変更警告判定部96は、速度v2、距離D2、および角度θ2を記憶するデータ記憶部96cを備えている。例えば、直前まで警告範囲内に車両が存在すると判定されていたが、車両の存在が検出されていない状態に切り替わった場合、車線変更警告判定部96は、推定部96eを制御して、データ記憶部96cに記憶されている速度v2、距離D2、および角度θ2に基づいて、受信信号では検出できない範囲であって、警告範囲を含む範囲である、いわゆるブラインドスポットにおける車両の存在位置を推定させ、再び範囲判定部96bを制御して、警告範囲に存在するか否かを判定させる。この際、推定されたブラインドスポット内の存在位置に基づいて、車両が所定範囲に存在すると判定された場合、車線変更警告判定部96は、ブラインドスポットタイミング判定部96gを制御して、ブラインドスポットに入ったと推定される最後に検出されたタイミングから所定時間以上経過しているか否か、すなわち、ブラインドスポットに入ってから所定時間経過したか否かを判定させ、所定時間が経過していないければ、警告指示部96fを制御して、車線変更警告動作を実行させる。一方、ブラインドスポットに入ってから所定時間以上経過していた場合、車線変更警告判定部96は、警告範囲から離脱したものとみなし、車線変更警告動作を停止させる(車線変更警告動作をさせない)。
【0076】
次に、図3のフローチャートを参照して、図1のレーダ装置1による物体の計測処理について説明する。
【0077】
ステップS1において、発振部31は、周波数切替部32からの切替信号に基づいて、f1周波数のCW信号、または、f2周波数のCW信号のいずれかを発振し、増幅部33で増幅させて3分岐部34に出力させる。このとき、周波数切替部32は、同一の切替信号を受信部12にも供給する。
【0078】
ステップS2において、3分岐部34は、増幅部33より供給されてきたf1周波数のCW信号、または、f2周波数のCW信号のいずれかのCW信号を分岐して、受信部12および増幅部35にそれぞれ供給する。そして、増幅部35は、3分岐部34より供給されてきたf1周波数のCW信号、または、f2周波数のCW信号のいずれかのCW信号をアンテナ36より電波を出力することにより、送信信号として送信する。このとき、アンテナ36より送信された送信信号としての電波は、例えば、図2で示されるような強度分布で出力される。尚、図2における範囲Z1,Z2−1,Z2−2からなる形状は、厳密なものである必要はなく、概ね同様の形状となるような強度分布となるように送信されれば良いものである。
【0079】
ステップS2の処理により出力された電波としての送信信号は、図2で示される強度分布により出力されるため、範囲Z1,Z2−1,Z2−2から構成される範囲に物体(車両)が存在する場合、その物体により反射される。すなわち、送信信号は、上述の通り、図4の上部で示されるように、アンテナA(図4では、アンテナ36,51−1,51−2を一体化したものとし簡略化して表現している)より順次周波数f1およびf2のCW信号が切り替えられて出力される。このため、物体である車両C1で反射されると、それぞれの周波数のCW信号に対応してドップラ周波数fd1またはfd2が発生することにより、図4の下部で示されるように、順次周波数f1+fd1、または、f2+fd2のCW信号として反射され、この反射波となる電波が受信されることになる。
【0080】
そこで、ステップS3において、アンテナ51−1,51−2は、反射されてくる電波を受信し、受信した電波に対応する信号を加算部52、および減算部53にそれぞれ供給する。
【0081】
ステップS4において、加算部52は、アンテナ51−1,51−2より供給されてきた受信信号を相互に加算してf1和信号またはf2和信号を生成し、LNA54−1に出力し、所定の電圧まで増幅して混合器55−1に出力させる。
【0082】
ステップS5において、減算部53は、アンテナ51−1,51−2より供給されてきた受信信号を相互に減算してf1差信号、またはf2差信号を生成し、LNA54−2に出力し、所定の電圧まで増幅して混合器55−2に出力させる。
【0083】
ステップS6において、混合器55−1は、送信部11の3分岐部34より供給されてくる送信信号と、和信号とを混合し、和信号の混合信号として振分部56に出力する。また、混合器55−2は、送信部11の3分岐部34より供給されてくる送信信号と、差信号とを混合し、差信号の混合信号として振分部57に出力する。
【0084】
尚、このステップS2乃至S6の処理は、フローチャートの表記として異なるタイミングで処理されるものとされているが、実際の処理は、ほぼ同時に処理されており、実質的に並列処理されているものである。
【0085】
ステップS7において、振分部56は、送信部11の周波数切替部32よりステップS11の処理で供給されてくる切替信号が、周波数f1に対応する切替信号のとき、対応する和信号であるfd1和信号をLPF58−1に供給し、切替信号が、周波数f2に対応する切替信号のとき、対応する和信号であるfd2和信号をLPF58−2に供給する。また、振分部57は、送信部11の周波数切替部32よりステップS11の処理で供給されてくる切替信号が、周波数f1に対応する切替信号のときのみ、対応する差信号であるfd1差信号をLPF58−3に供給する。
【0086】
すなわち、図5の左上段で示されるように、周波数切替部32が、切替信号として、周波数f1のときHiを、周波数f2のときLowを出力する場合、図5の左中段で示されるように、振分部56には、切替信号に対応して、混合器55−1より周波数f1に対応する和信号であるfd1和信号、および周波数f2に対応する和信号であるfd2和信号が交互に順次供給されてくる。このとき、振分部56は、切替信号が周波数f1に対応するHiのとき、図5の右上段で示されるように、fd1和信号をLPF58−1に供給し、切替信号が周波数f2に対応するLowのとき、図5の右中段で示されるように、fd2和信号をLPF58−2に供給する。
【0087】
また、図5の左上段で示されるように、周波数切替部32が、切替信号として、周波数f1のときHiを、周波数f2のときLowを出力する場合、図5の左下段で示されるように、振分部57には、切替信号に対応して、混合器55−2より周波数f1に対応する差信号であるfd1差信号、および周波数f2に対応する差信号であるfd2差信号が交互に順次供給されてくる。このとき、振分部57は、切替信号が周波数f1に対応するHiのときのみ、図5の右下段で示されるように、fd1差信号をLPF58−3に供給する。
【0088】
ステップS8において、LPF58−1乃至58−3は、順次振分部56,57より供給されてくるfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号を、それぞれ平滑化して増幅部59−1乃至59−3に供給する。増幅部59−1乃至59−3は、供給されてきたfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号を、それぞれ増幅し、ADC60−1乃至60−3に供給する。ADC60−1乃至60−3は、平滑化され、さらに増幅されたfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号をデジタル信号に変換し、ステップS9において、衝突予備動作用信号処理部13および車線変更警告用信号処理部15に分配して受信信号として供給する。
【0089】
ステップS10において、周波数切替部32は、今現在出力している周波数f1、またはf2のいずれかのCW信号に切り替えてから所定時間が経過したか否かを判定し、所定時間が経過していないと判定された場合、処理は、ステップS2に戻る。一方、ステップS10において、所定時間が経過していると判定された場合、ステップS11において、周波数切替部32は、切替信号を切り替えて、すなわち、それまでに出力していた周波数とは別の周波数に切り替えて、発振部31にCW信号を発振させる。
【0090】
以上の処理を纏めると以下のようになる。ステップS2の処理において、例えば、送信部11のアンテナ36より出力される電波が、以下の式(1)で表されるものとすると、アンテナ51−1,51−2で受信される電波は、以下の式(2),式(3)として表される。
【0091】
【数1】
【0092】
【数2】
【0093】
【数3】
【0094】
ここで、Tiは、送信電波を、Rx1,Rx2は、それぞれアンテナ51−1,51−2の電波を、A,Bは、それぞれ送信電波および受信電波の強度を、dは物体までの距離を、vはレーダ装置1を搭載した車両と、送信信号としての電波を反射する物体としての車両C1との相対速度を、fiは送信された電波の周波数(i=1のとき周波数f1、i=2のとき周波数f2)を、cは光速を、Lは、例えば、図6で示されるアンテナ51−1,51−2間の距離を、θは図6で示されるアンテナ51−1,51−2間の中心から物体C1の角度(到来角)を、それぞれ表している。また、式(3)における括弧内の第3項のLsin(θ)は、図6で示されるように、アンテナ51−1,51−2の双方に到達する電波の経路差を示すものである。したがって、車両C1から受信される電波のアンテナ51−1,51−2への経路は平行であるものとすれば、アンテナ51−1,51−2の双方で受信される受信信号には、経路差Lsin(θ)分に相当する位相差が生じていることになる。
【0095】
そこで、ステップS4の処理においては、加算部52が、式(2),式(3)で示されるアンテナ51−1,51−2で受信される電波の信号を加算することにより、以下の式(4)で示される和信号Raddを生成する。式(4)においては、経路差Lsin(θ)により生じる位相差の情報が、振幅として表されている。すなわち、式(4)においては、2Bcos(π・Lsin(θ)・fi/c)の項により、経路差Lsin(θ)により生じる位相差の情報が振幅として表されている。
【0096】
【数4】
【0097】
また、ステップS5の処理においては、減算部53が、式(2),式(3)で示されるアンテナ51−1,51−2の受信電波に対応する信号を減算することにより、以下の式(5)で示される差信号Rsubを生成する。式(5)においては、経路差Lsin(θ)により生じる位相差の情報が、振幅として表される。すなわち、式(5)においては、2Bsin(π・Lsin(θ)・fi/c)の項により、経路差Lsin(θ)により生じる位相差の情報が振幅として表されている。
【0098】
【数5】
【0099】
そして、ステップS6の処理により、混合器55−1、55−2が、式(4),式(5)で表される和信号Raddおよび差信号Rsubを、それぞれ送信信号と混合することにより、以下の式(6),式(7)で示される和信号の混合信号Radd_dおよび差信号の混合信号Rsub_dが求められる。
【0100】
【数6】
【0101】
【数7】
【0102】
この和信号の混合信号Radd_dが、図5における周波数f1またはf2に対応するfd1和信号またはfd2和信号であり、差信号の混合信号Rsub_dが、図5における周波数f1に対応するfd1差信号である。
【0103】
すなわち、以上の処理により、式(6),式(7)で表されるfd1和信号およびfd2和信号、並びにfd1差信号が、周波数f1またはf2の切替信号に同期して、図5で示されるように、それぞれLPF58−1乃至58−3に供給される。そして、ステップS9の処理により、LPF58−1乃至58−3は、離散的に供給されてくるfd1和信号およびfd2和信号、並びにfd1差信号を、それぞれに平滑化することにより連続的な値に変換し、増幅部59−1乃至59−3に供給する。増幅部59−1乃至59−3は、それぞれを増幅して、ADC60−1乃至60−3に供給する。さらに、ADC60−1乃至60−3がデジタル信号に変換して、衝突予備動作用信号処理部13、および車線変更警告用信号処理部15に、それぞれ3種類の受信信号(平滑化されて連続的なデジタル信号にされたfd1和信号およびfd2和信号、並びにfd1差信号)として供給される。
【0104】
次に、図7のフローチャートを参照して、衝突予備動作用信号処理について説明する。
【0105】
ステップS21において、衝突判定用FFTタイミング制御部72は、衝突判定用FFTタイミング計測用のカウンタ72aのカウント値Xを初期化してカウントを開始する。
【0106】
ステップS22において、FFT71−1乃至71−3は、受信部12より供給されてくるデジタル信号からなるfd1和信号およびfd2和信号、並びにfd1差信号を取得し、順次記憶し、サンプリングする。
【0107】
ステップS23において、衝突判定用FFTタイミング制御部72は、カウンタ72aのカウント値Xが所定の時間T1を超えているか否か、すなわち、所定のサンプリング時間を超えているか否かを判定する。尚、この時間T1は、衝突を判定し、衝突が判定された場合には、衝突に対応するための予備動作を実行させる必要があるため、比較的短い時間とする必要があり、特に後述する車線変更警告用信号処理のサンプリング時間より短い時間である。
【0108】
ステップS23において、カウント値Xが所定の時間T1よりも大きくないと判定された場合、処理は、ステップS22に戻る。すなわち、所定の時間Tが経過するまで、ステップS22,S23の処理が繰り返され、サンプリングが継続される。
【0109】
ステップS23において、例えば、カウント値Xが所定の時間T1よりも大きいと判定され、サンプリングを終了して処理を開始するタイミングに到達したと判定された場合、ステップS24において、衝突判定用FFTタイミング制御部72は、FFT71−1乃至71−3に対してFFTの処理を実行させる。この指示を受けて、FFT71−1乃至71−3は、それぞれサンプリングしたデータに基づいて、FFTを掛けて、FFT71−1が、fd1和信号のスペクトル分布から得られる結果を距離算出部74に供給する。また、FFT71−2が、fd2和信号のスペクトル分布から得られる結果をドップラ周波数算出部73、および距離算出部74に供給する。さらに、FFT71−3が、fd1差信号のスペクトル分布から得られる結果を角度算出部75に供給する。
【0110】
ステップS25において、ドップラ周波数算出部73は、fd2和信号のスペクトルに基づいて、ドップラ周波数fd2を求め、さらに、ドップラ周波数fd2より、物体の速度v1を算出し、距離算出部74、角度算出部75、および衝突判定部76に出力する。すなわち、ドップラ周波数fd2と物体の速度vとの関係は、以下の式(8)で示される関係となる。ここで、vは、速度を、fi(i=1or2)は、CW信号の周波数、cは、光速である。したがって、ドップラ周波数算出部73は、fd2和信号のスペクトル分布から求められたドップラ周波数fd2に基づいて、式(8)を変形して速度vを速度v1として算出する。
【0111】
【数8】
【0112】
ステップS26において、距離算出部74は、FFT71−1より供給されてくるfd1和信号のスペクトル分布から得られる結果、および、FFT71−2より供給されてくるfd2和信号のスペクトル分布から得られる結果、並びに、速度v1に基づいて、fd1和信号とfd2和信号との位相差から物体までの距離D1を算出し、衝突判定部76に供給する。
【0113】
すなわち、周波数f1が数10GHzであるのに対して、周波数f2は、周波数f1と数MHzの周波数差でしかないため、ドップラ周波数fd1,fd2は、いずれも2vf1/c,2vf2/cで表されるが、いずれも同一であるものとして考えることができる。
【0114】
また、上述した式(6),式(7)で表される和信号の混合信号Radd_dと、差信号の混合信号Rsub_dとの位相差Δφは、以下の式(9)で表される。ここで、周波数f1,f2の周波数差をΔfとすれば、物体の距離dは、以下の式(10)で表される。
【0115】
【数9】
【0116】
【数10】
【0117】
そこで、ステップS26において、距離算出部74は、上述した式(10)を用いて、物体までの距離dを距離D1として計算する。
【0118】
ステップS27において、角度算出部75は、FFT71−1より供給されてくるfd1和信号のスペクトル分布から得られる結果、およびfd1差信号のスペクトル分布から得られる結果、並びに速度v1に基づいて、fd1和信号のスペクトル分布から得られる結果とfd1差信号のスペクトル分布から得られる結果との比率から物体の存在する位置の角度θ1(図6の到来角θに相当する)を算出する。すなわち、上述した式(6),式(7)で表される和信号の混合信号Radd_dと、差信号の混合信号Rsub_dとにおける振幅Aadd,Asubは、それぞれ以下の式(11),式(12)で表される。
【0119】
【数11】
【0120】
【数12】
【0121】
ここで、図6における到来角θは、以下の式(13)で示されるように表される。
【0122】
【数13】
【0123】
角度算出部75は、上述した式(13)を用いて、角度θを角度θ1として算出し、衝突判定部76に供給する。
【0124】
以上の処理により、この時点で衝突判定部76には、検出された物体の速度v1、距離D1、および角度θ1が供給されていることになる。
【0125】
そこで、ステップS28において、衝突判定部76は、速度判定部76aを制御して、供給されてきた速度v1が、所定の速度V1よりも高速であるか否かを判定させる。例えば、速度v1が、所定の速度V1よりも高速ではないと判定された場合、衝突の可能性はないものとみなし、処理は、ステップS21に戻る。
【0126】
一方、ステップS28において、速度v1が、所定の速度V1よりも高速であると判定された場合、ステップS29において、衝突判定部76は、範囲判定部76bを制御して、検出された物体の距離D1と角度θ1とに基づいて、物体の存在する位置を求め、衝突の可能性が高い所定の範囲内、すなわち、図2で示される範囲Z1のうち、所定の距離以内の範囲内に存在するのか否かを判定させる。ステップS29において、例えば、衝突の可能性が高い所定の範囲内に存在しない場合、衝突の可能性はないものとみなし、処理は、ステップS21に戻る。尚、この衝突の可能性が高い所定の範囲は、速度v1に対応して設定するようにしても良い。
【0127】
一方、ステップS29において、衝突の可能性が高い所定の範囲内に存在すると判定された場合、ステップS30において、衝突判定部76は、衝突予備動作指示部76cを制御して、衝突予備動作制御部14に対して、衝突予備動作を実施するように指示させる。
【0128】
この処理に応じて、ステップS31において、衝突予備動作制御部14は、衝突に備えて、例えば、警告音声を発することで衝突の発生を警告すると共に、シートベルトを引き上げて、乗員を座席に固定させ、いわゆる鞭打ち症などの発生を抑止したり、衝突前に適切なタイミングでエアバッグを動作させて衝突時の衝撃を吸収したり、さらには、可動式ヘッドレストを頭部に押し当てるなどして、乗員の衝突時の頭部への反動による衝撃を抑制させるといった動作を実施する。
【0129】
以上の処理により、比較的短いサンプリング時間で衝突の有無を判定し、衝突の可能性があると判定された場合、衝突に備えた予備動作を実施することが可能となるので、乗員の衝突時の安全性を向上させることができる。また、図2を参照して、上述したように、範囲Z1の範囲は、強い電波を送信信号として出力することにより、比較的遠くまで検出範囲として設定されているため、物体として検出される車両が検出される程接近しているような場合、接近に伴って、受信される受信信号も強い電波として受信されることになるため、サンプリング時間が短くても、比較的条件のよいデータをサンプリングして利用することができ、自車への衝突の有無を高精度で検出することが可能となる。
【0130】
次に、図8のフローチャートを参照して、車線変更警告用信号処理について説明する。
【0131】
ステップS41において、車線変更警告用FFTタイミング制御部92は、車線変更警告用FFTタイミング計測用のカウンタ92aのカウント値Yを初期化してカウントを開始する。
【0132】
ステップS42において、FFT91−1乃至91−3は、受信部12より供給されてくるfd1和信号およびfd2和信号、並びにfd1差信号を取得し、順次記憶し、サンプリングする。
【0133】
ステップS43において、車線変更警告用FFTタイミング制御部92は、カウンタ92aのカウント値Yが所定の時間T2を超えているか否か、すなわち、所定のサンプリング時間を超えているか否かを判定する。尚、この時間T2は、車線変更時の危険の有無を判定し、車線変更の危険があると判定された場合には、車線変更に対する警告を実行させる必要があるためのものであり、運転者の危険回避動作が行えるものであればよいので、衝突時の予備動作に比べて求められる時間が長くてもよいため、衝突の有無を判定する処理に用いられたサンプリング時間である時間T1よりも、比較的長い時間とすることができる。
【0134】
ステップS43において、カウント値Yが所定の時間T2よりも大きくないと判定された場合、処理は、ステップS42に戻る。すなわち、所定の時間T2が経過するまで、ステップS42,S43の処理が繰り返される。
【0135】
ステップS43において、例えば、カウント値Yが所定の時間T2よりも大きいと判定され、サンプリングを終了して、処理を開始するタイミングに到達したと判定された場合、ステップS44において、車線変更警告用FFTタイミング制御部92は、FFT91−1乃至91−3に対してFFTの処理を実行させる。この指示を受けて、FFT91−1乃至91−3は、それぞれサンプリングしたデータに基づいて、FFTを掛けて、FFT91−1が、fd1和信号のスペクトル分布から得られる結果を距離算出部94に供給する。また、FFT91−2が、fd2和信号のスペクトル分布から得られる結果をドップラ周波数算出部93、および距離算出部94に供給する。さらに、FFT91−3が、fd1差信号のスペクトル分布から得られる結果を角度算出部95に供給する。
【0136】
ステップS45において、ドップラ周波数算出部93は、fd2和信号のスペクトルから得られる結果に基づいて、ドップラ周波数fd2を求め、さらに、ドップラ周波数fd2より、物体の速度v2を算出し、距離算出部94、角度算出部95、および車線変更警告判定部96に出力する。尚、ドップラ周波数算出部93、距離算出部94、および角度算出部95における処理は、実質的に、上述したドップラ周波数算出部73、距離算出部74、および角度算出部75における処理と同様であるので、以降においても、その説明は、適宜省略するものとする。
【0137】
ステップS46において、距離算出部94は、FFT91−1より供給されてくるfd1和信号のスペクトル分布から得られる結果、および、FFT91−2より供給されてくるfd2和信号のスペクトル分布から得られる結果、並びに、速度v2に基づいて、物体までの距離D2を算出し、車線変更警告判定部96に供給する。
【0138】
ステップS47において、角度算出部95は、FFT91−1より供給されてくるfd1和信号のスペクトル分布から得られる結果、およびfd1差信号のスペクトル分布から得られる結果、並びに速度v2に基づいて、fd1和信号のスペクトル分布から得られる結果とfd1差信号のスペクトル分布から得られる結果との比率から物体の存在する位置の角度θ2(図6の到来角θに相当する)を算出する。
【0139】
以上の処理により、この時点で車線変更警告判定部96には、検出された物体の速度v2、距離D2、および角度θ2が供給されていることになる。
【0140】
ステップS48において、車線変更警告判定部96は、この検出された物体の速度v2、距離D2、および角度θ2を検出した時刻情報と対応付けてデータ記憶部96cに順次記憶させる。尚、データ記憶部96cに記憶される物体の速度v2、距離D2、および角度θ2は、直近の数秒分を記憶すればよく、データ記憶部96cに記憶される情報が、所定時間分以上となる場合、最新のデータが最も古いデータの記録領域に上書きされて記録される。
【0141】
ステップS49において、車線変更警告判定部96は、速度判定部96aを制御して、供給されてきた速度v2が、所定の速度Vaよりも高速であるか否かを判定させる。例えば、速度v2が、所定の速度Vaよりも高速であると判定した場合、処理は、ステップS50に進む。
【0142】
ステップS50において、車線変更警告判定部96は、範囲判定部96bを制御して、速度v2(>Va)に応じた警告範囲W1を速度対範囲テーブル96dより読み出させる。
【0143】
ステップS51において、車線変更警告判定部96は、範囲判定部96bを制御して、検出された物体の距離D2と角度θ2とに基づいて、物体の存在する位置を求め、警告範囲W1内に存在するのか否かを判定させる。ステップS51において、例えば、図9で示されるように、レーダ装置1が車両C1の後部に搭載され、太線で示される警告範囲W1内に車両C13が存在するような場合、車線変更が危険であるものとみなし、ステップS52において、車線変更警告判定部96は、警告指示部96fを制御して、車線変更警告動作制御部16に対して、車線変更警告動作を実施するように指示させる。尚、図9における警告範囲W1は、車両C1が図中の車線L2を下方向に走行中であるとき、車両C1の運転席横付近の位置(目視により車線変更しようとする車線に存在する車両を確認できる位置)から後方に距離N1の範囲である。尚、図示しないが、当然のことながら、同様に、警告範囲は、車線L3側にも同様に設定されている。
【0144】
ステップS53において、車線変更警告動作制御部16は、ステップS52における車線変更警告判定部96からの指示に応じて、警告音、警告を促す音声指示、または、警告を促すように座席を振動させるなどすることにより、車線変更を実施すると危険であることを警告する。
【0145】
一方、ステップS49において、例えば、速度v2が、所定の速度Vaよりも高速ではないと判定した場合、ステップS54において、車線変更警告判定部96は、速度判定部96aを制御して、供給されてきた速度v2が、所定の速度Vb(<Va)よりも高速であるか否かを判定させる。例えば、速度v2が、所定の速度Vbよりも高速であると判定された場合、処理は、ステップS55に進む。
【0146】
ステップS55において、車線変更警告判定部96は、範囲判定部96bを制御して、速度v2(>Vb)に応じた警告範囲W2を速度対範囲テーブル96dより読み出させる。
【0147】
ステップS56において、車線変更警告判定部96は、範囲判定部96bを制御して、検出された物体の距離D2と角度θ2とに基づいて、物体の存在する位置を求め、警告範囲W2内に存在するのか否かを判定させる。ステップS56において、例えば、図9で示されるように、レーダ装置1が車両C1の後部に搭載され、点線で示される警告範囲W2内に車両C12が存在するような場合、車線変更が危険であるものとみなし、ステップS52において、車線変更警告判定部96は、警告指示部96fを制御して、車線変更警告動作制御部16に対して、車線変更警告動作を実施するように指示させる。尚、図9における警告範囲W2は、車両C1が図中の車線L2を下方向に走行中であるとき、車両C1の運転席横付近の位置(目視により車線変更しようとする車線に存在する車両を確認できる位置)から後方に距離N2(<N1)の範囲である。尚、図示しないが、当然のことながら、同様に、警告範囲は、車線L3側にも同様に設定されている。
【0148】
また、ステップS51において、物体の位置が警告範囲W1内ではないと判定された場合、ステップS54において、速度v2が速度Vbよりも高速ではないと判定された場合、または、ステップS56において、物体の位置が警告範囲W2内ではないと判定された場合、いずれにおいても、ステップS52,S53の処理がスキップされて、処理は、ステップS57に進む。
【0149】
すなわち、範囲判定部96bは、物体として検出された車両の速度v2の大きさに応じて、予め速度対範囲テーブル96dに格納されている警告範囲を切り替える。このため、検出された車両の相対速度v2が低速であれば、車両C1に対して比較的近い範囲からなる警告範囲W2を設定することで、ある程度接近してから警告を発するようにさせることができ、逆に、検出された車両の相対速度v2が高速であれば、車両C1に対して比較的遠い範囲を含む警告範囲W1を設定することで、ある程度離れた位置からでも警告を発するようにさせることができる。このように、警告範囲を速度に応じて設定することにより、不要な警告の発報を抑制し、相対速度に応じ適切な車線変更の警告を発することが可能となる。
【0150】
尚、以上においては、警告範囲は、速度v2に対する閾値により2つの警告範囲が設定される例について説明してきたが、それ以上の閾値を設けて、さらに多く警告範囲を設定するようにしても良い。また、予め速度対範囲テーブル96dに、速度に対応した警告範囲の情報が記憶される例について説明してきたが、例えば、速度に応じて、演算により警告範囲をシームレスに設定できるようにしても良い。
【0151】
ステップS57において、車線変更警告判定部96は、データ記憶部96cを参照して、所定時間だけ直前までの間に車両(物体)が検出されていたか否かを判定する。ステップS57において、例えば、データ記憶部96cに記憶されている物体の速度v2、距離D2、および角度θ2の情報のうち、時刻として直近の所定時間内に存在するデータが存在する場合、ステップS58において、車線変更警告判定部96は、推定部96eを制御して、データ記憶部96cに記憶されている、所定時間内の物体の速度v2、距離D2、および角度θ2の情報に基づいて、今現在の物体の位置を算出することにより位置を推定させる。
【0152】
ステップS59において、車線変更警告判定部96は、範囲判定部96bを制御して、推定部96eにより算出された物体の存在する位置の情報に基づいて、警告範囲内に物体が存在するか否かを判定させる。尚、このステップS59の処理については、上述したステップS49乃至S51,S54乃至S56の処理と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0153】
ステップS59において、推定された位置から警告範囲内に物体が存在すると判定された場合、車線変更警告判定部96は、ブラインドスポットタイミング判定部96gを制御して、検出物体がブラインドスポットに入ってから所定時間が経過していないか否かを判定させる。ブラインドスポットとは、レーダ装置1では物体の存在を検出することができない範囲であって、警告範囲を含む範囲である。例えば、図9における車両C13が、車線L1を車両C1よりも高速で走行しながら移動し、車両C12の位置を経てさらに進むと、やがてレーダ装置1で検出できない状態となり(範囲Z2−1から脱した状態となり)、車両C11で示されるように、一点鎖線で囲まれたブラインドスポットB1内に到達する。ブラインドスポットタイミング判定部96gは、データ記憶部96cに記憶されている時刻情報に対応付けて記憶されている速度v2、距離D2、および角度θ2から検出物体がブラインドスポットに入ったと思われるタイミング(最後に検出された時刻情報)を検索し、検索されたブラインドスポットに入ったと思われるタイミングから所定の時間内であるか否かを判定する。
【0154】
ステップS60において、検出物体がブラインドスポットに入ってから所定時間が経過していないと判定された場合、ブラインドスポット内の推定された位置に検出物体が存在するものとみなし、ステップS61において、車線変更警告判定部96は、警告指示部96fを制御して、車線変更警告動作制御部16に対して、車線変更警告動作を実施するように指示させる。
【0155】
ステップS62において、車線変更警告動作制御部16は、ステップS61における車線変更警告判定部96からの指示に応じて、警告音、警告を促す音声指示、または、警告を促すように座席を振動させるなどすることにより、車線変更を実施すると危険であることを警告する。
【0156】
一方、ステップS59において、推定された位置から警告範囲内に物体が存在しないと判定された場合、ステップS60乃至S62の処理がスキップされて、処理は、ステップS41に戻る。
【0157】
また、ステップS60において、ブラインドスポットに入ってから所定時間が経過していると判定された場合、直前まで検出されていた物体が、移動してブラインドスポット内から外れて、警告範囲内に存在しないものとみなし、ステップS61,S62の処理がスキップされて、処理は、ステップS41に戻る。
【0158】
尚、ステップS60の処理における検出物体がブラインドスポットに入ってからの経過時間については、速度v2に応じた所定時間との比較により、物体がブラインドスポット内に存在するか否かを判定するようにしてもよく、このようにすることで、低速で接近してきた車両については、ブラインドスポット内における考慮時間を長くし、高速で接近してきた車両については、ブラインドスポット内における考慮時間を短くできるので、ブラインドスポットを脱するまでの時間を適正に考慮して、必要とされる警告のみを実施することが可能となる。
【0159】
以上の処理により、検出物体が、受信部12により受信される受信信号では検出できないブラインドスポットに入るようなことがあっても、時刻情報に対応付けて記憶されている速度v2、距離D2、および角度θ2に基づいて、位置を推定し、推定された位置に基づいて警告範囲内であるか否かを判定することで、車線変更により生じる可能性の高い危険に対して警告することが可能となる。
【0160】
結果として、物体が直接検出できる場合には、検出結果から取得される物体の位置と警告範囲との比較により車線変更の危険を認識することができ、物体が直接検出でない場合には、過去の検出結果から推定される物体の位置と警告範囲との比較により車線変更の危険を認識することができるので、ブラインドスポットをカバーするように送信信号を送信するためのアンテナを特に設ける必要がなくなるため、コストを低減することが可能になると共に、レーダ装置全体として、適切に車線変更の危険を警告することが可能となる。
【0161】
尚、以上の例においては、警告範囲の設定については、速度v2に対応して設定される例について説明してきたが、例えば、ブラインドスポット内であるか否かに対応付けて警告範囲を設定するようにしても良く、このようにすることで、車線変更を警告する際、実際に物体の存在を検出した位置に基づいて車線変更の警告をしているのか、または、実際に物体の存在を検出していないが、過去の検出結果を用いて推定された位置に基づいて車線変更の警告をしているのかを運転者に提示することができるので、運転者は、車線変更の警告の根拠を認識した上で、車線変更の警告を受けることが可能となる。具体的な提示方法としては、例えば、ドアミラーの付け根などに運転者からのみ視認できる角度で点滅灯を設けて、車線変更の警告時に発光させるような装置を用いる場合、実際に物体の存在を検出しているときの警告は、赤色のランプを点灯させ、実際に物体の存在は検出されていないが過去の検出結果に基づいた推定による警告は、黄色のランプを点灯させるといったものとしてもよい。
【0162】
また、当然のことながらブラインドスポットの有無とは無関係に警告範囲を設定するようにしても良く、このようにすることで、ブラインドスポットの範囲とは無関係に、速度v2で適切な警告範囲を設けることが可能となるので、車線変更時の危険を適切に警告することが可能となる。
【0163】
さらに、以上においては、検出された物体の速度の算出にあたり、ドップラ周波数fd2を用いる例について説明してきたが、周波数f1,f2との周波数差は数MHzであるため、ドップラ周波数fd1を用いて求めるようにしても略同一の速度を求めることができる。また、同様に、以上においては、距離の計算に当たり、fd1和信号およびfd2和信号の位相差を用いる例について説明してきたが、fd1差信号およびfd2差信号の位相差を用いるようにしても良く、例えば、いずれも計測できる構成とし、fd1和信号およびfd2和信号の信号品質と、fd1差信号およびfd2差信号の信号品質とを比較した上で、信号品質の高いものを用いて距離を計算するようにし、精度を向上させるようにしても良い。さらに、同様に、以上においては、角度の計算に当たり、fd1和信号とfd1差信号との比率により求める例について説明してきたが、fd2和信号とfd2差信号との比率により求めるようにしてもよく、さらには、fd1和信号およびfd1差信号の信号品質と、fd2和信号およびfd2差信号の信号品質とを比較し、信号品質の高いものを用いて角度を計算するようにし、精度を向上させるようにしても良い。
【0164】
結果として、衝突予備動作を実行させる、いわゆるプリクラッシュ安全装置と、車線変更警告動作を実行させる、いわゆる車線変更支援装置とを共用したレーダ装置を実現することが可能となるので、両機能による安全性を確保すると共に、装置のコストの低減と、小型化を実現することが可能になる。
【0165】
以上の如く、本発明によれば、プリクラッシュ安全装置用のレーダと、車線変更支援装置用のレーダとを共通で使用し、コストの低減を図ることが可能となる。
【0166】
ところで、上述した一連の監視処理は、ハードウェアにより実行させることもできるが、ソフトウェアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、記録媒体からインストールされる。
【0167】
図10は、汎用のパーソナルコンピュータの構成例を示している。このパーソナルコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)1001を内蔵している。CPU1001にはバス1004を介して、入出力インタフェース1005が接続されている。バス1004には、ROM(Read Only Memory)1002およびRAM(Random Access Memory)1003が接続されている。
【0168】
入出力インタフェース1005には、ユーザが操作コマンドを入力するキーボード、マウスなどの入力デバイスよりなる入力部1006、処理操作画面や処理結果の画像を表示デバイスに出力する出力部1007、プログラムや各種データを格納するハードディスクドライブなどよりなる記憶部1008、LAN(Local Area Network)アダプタなどよりなり、インターネットに代表されるネットワークを介した通信処理を実行する通信部1009が接続されている。また、磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini Disc)を含む)、もしくは半導体メモリなどのリムーバブルメディア1011に対してデータを読み書きするドライブ1010が接続されている。
【0169】
CPU1001は、ROM1002に記憶されているプログラム、または磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、もしくは半導体メモリ等のリムーバブルメディア1011から読み出されて記憶部1008にインストールされ、記憶部1008からRAM1003にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM1003にはまた、CPU1001が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0170】
尚、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理は、もちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1】本発明を適用したレーダ装置の一実施の形態の構成を示す図である。
【図2】図1の送信部により照射される電波の強度分布である。
【図3】計測処理を説明するフローチャートである。
【図4】計測処理を説明する図である。
【図5】振分部の動作を説明する図である。
【図6】受信部におけるアンテナの経路差を説明する図である。
【図7】衝突予備動作用信号処理を説明するフローチャートである。
【図8】車線変更警告用信号処理を説明するフローチャートである。
【図9】車線変更警告用信号処理を説明する図である。
【図10】汎用のパーソナルコンピュータの構成例を説明する図である。
【符号の説明】
【0172】
1 レーダ装置
11 送信部
12 受信部
13 衝突予備動作用信号処理部
14 衝突予備動作制御部
15 車線変更警告用信号処理部
16 車線変更警告動作制御部
36 アンテナ
51−1,51−2 アンテナ
71−1乃至71−3 FFT
72 衝突判定用FFTタイミング制御部
73 ドップラ周波数算出部
74 距離算出部
75 角度算出部
76 衝突判定部
91−1乃至91−3 FFT
92 車線変更警告用FFTタイミング制御部
93 ドップラ周波数算出部
94 距離算出部
95 角度算出部
96 車線変更警告判定部
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置および方法、並びにプログラムに関し、特に、高速で処理が必要なプリクラッシュ機能と、比較的高速でなくてもよい車線変更支援機能とを統一した構成として実現できるようにした検出装置および方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車と他車との間の相対速度や距離を測定するセンサとして、2周波CW(Continuous Wave)方式のセンサが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。すなわち、この2周波CW方式のセンサは、受信された搬送波に対するドップラ信号の周波数(以下、ドップラ周波数と称する)や位相を検出し、それらを利用して、自車と他車との相対速度や距離を測定する。
【0003】
また、自車と他車との相対的な位置を示す角度を測定するセンサとして、モノパルス方式のセンサが知られている。
【0004】
このように、2周波CW方式のセンサを用いて自車と他車との距離を測定し、モノパルス方式のセンサにより自車と他車との角度を測定することで、接近する他車の存在する位置を検出することが可能となっている。
【0005】
【特許文献1】特許第3203600号公報
【特許文献2】特開2004−69693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したような方式の測定装置を用いることにより後方より接近する他車の存在を検出することで、他車の自車への衝突を予測し、衝突に予め備えた動作を実施させる技術、所謂、プリクラッシュ安全装置が開発されている。
【0007】
また、同様の機能を用いることにより自車の側面後方に接近する他車を検出することにより、車線変更の危険の有無を警告する車線変更支援装置が開発されている。
【0008】
このプリクラッシュ安全装置は、自車の後方に、高速で衝突の可能性がある他車を検出する必要があるため、自車の真後ろに近い範囲を、遠い距離まで監視する必要がある。一方、車線変更支援装置は、自車の側面後方に接近する他車との距離を比較的近い範囲で監視する必要がある。
【0009】
したがって、両者は、異なる監視範囲、および監視距離を監視する必要があるため、従来、検出用に設置すべきレーダの配置が異なっていた。すなわち、一般に、プリクラッシュ安全装置は、車両本体の真後ろの中央位置に、左右に対して比較的狭い範囲で遠い範囲までを監視するレーダが設けられるのに対して、車線変更支援装置においては、車両本体の左右の後端に設けられ、車両の側面後方の比較的広い範囲であって、距離が近い範囲を監視するレーダが設けられる。
【0010】
このため、両者を設置すると、それぞれに対応したレーダが設置されることにより、製品のコストを高めてしまうことがあった。
【0011】
また、プリクラッシュ安全装置の使用頻度は、車線変更支援装置の使用頻度に対して極端に少ないため、この使用頻度とコストとのバランスから今現在においても、一部の高級車にのみ使用されているだけである。
【0012】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、プリクラッシュ安全装置用のレーダと、車線変更支援装置用のレーダとを共用できるようにし、コストの低減を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一側面の検出装置は、第1の方向であって、第1の距離近傍までの範囲からなる第1の範囲と、前記第1の方向とは異なる第2の方向であって、前記第1の距離よりも近距離の第2の距離近傍までの範囲からなる第2の範囲とを含む範囲に電波を照射するように構成され、前記電波を照射することにより送信信号を送信する送信手段と、前記送信手段により送信された送信信号としての電波のうち、反射されてくる電波を受信し、受信した前記電波より受信信号を生成する受信手段と、前記受信手段により生成された受信信号を、第1の所定時間の間でサンプリングすることにより、物体を検出する第1の検出手段と、前記受信手段により生成された受信信号を、前記第1の所定時間よりも長い第2の所定時間の間でサンプリングすることにより、前記物体を検出する第2の検出手段とを含む。
【0014】
送信手段は、例えば、送信部であり、車両の真後ろに近い後方の方向であって、左右に対して狭く遠い範囲の第1の範囲と、前記第1の範囲よりも近い、車両の側面後方の第2の範囲とに電波を照射することにより送信信号を送信する。このため、第1の範囲においては、真後ろの方向に対して比較的狭い範囲であるが、遠方の範囲まで送信信号である電波を照射することができ、第2の範囲においては、左右の側面後方に対して、比較的広い範囲であるが、近い範囲で送信信号である電波を照射することができる。
【0015】
受信手段は、例えば、受信部であり、真後ろの比較的狭い範囲ではあるが遠方の第1の範囲における、送信信号のうち反射されてくる電波を受信し、受信した電波より受信信号を生成すると共に、側面後方の比較的広い範囲であるが近傍の第2の範囲の送信信号のうち反射されてくる電波を受信し、受信した電波より受信信号を生成する。
【0016】
第1の検出手段は、例えば、衝突予備動作用信号処理部であり、前記受信部により受信された受信信号を、比較的短い周期となる第1の所定時間でサンプリングすることにより、物体を検出する。すなわち、衝突予備動作用信号処理部は、比較的短い周期でサンプリングされる受信信号を処理することにより物体を検出する。衝突予備動作用信号処理部は、車両本体の真後ろの方向に対して比較的狭い遠方の範囲の物体を検出する必要があるが、遠方まで照射できる範囲の電波を送信信号として送信するため、物体の接近に伴って、物体から反射される電波を、強度の高い受信信号として受信することができるので、短いサンプリング時間で、高速に比較的高い精度で物体の位置を検出することができる。
【0017】
第2の検出手段は、例えば、車線変更警告用信号処理部であり、前記受信部により受信された受信信号を、比較的長い周期となる第1の所定時間より長い第2の所定時間でサンプリングすることにより、物体を検出する。すなわち、車線変更警告用信号処理部は、比較的長い周期でサンプリングされる受信信号を処理することにより物体を検出する。車線変更警告用信号処理部は、車両本体の側面後方に対して比較的広い近傍の範囲の物体を検出する必要があるが、近傍の範囲まで照射できればよい、比較的弱い電波を、受信信号として受信するため、受信信号の精度は低いが、長い第2の所定時間でサンプリングして処理するため、第1の検出手段に比べて低速ではあるが、比較的広い範囲である第2の範囲に存在する物体の位置を検出することができる。
【0018】
このため、本発明の検出装置は、同一の送信部と受信部とにより、左右に比較的狭いが、距離にして遠い範囲までを含む第1の範囲については、高速で、すなわち、短い周期で物体を検出することが可能となり、左右に比較的広いが、距離にして近い範囲を含む第2の範囲については、比較的低速ながらも、広い範囲で物体を検出することが可能となる。
【0019】
前記第1の検出手段には、検出された前記物体の速度を、第1の速度として検出する第1の速度検出手段と、検出された前記物体の存在する角度を、第1の角度として検出する第1の角度検出手段と、検出された前記物体の存在する距離を、第1の距離として検出する第1の距離検出手段とを含み、前記第2の検出手段には、検出された前記物体の速度を、第2の速度として検出する第2の速度検出手段と、検出された前記物体の存在する角度を、第2の角度として検出する第2の角度検出手段と、検出された前記物体の存在する距離を、第2の距離として検出する第2の距離検出手段とを含ませるようにすることができる。
【0020】
第1の速度検出手段、第1の角度検出手段、および第1の距離検出手段は、それぞれ、例えば、衝突予備動作用信号処理部におけるドップラ周波数算出部、角度算出部、および距離算出部であり、主に第1の範囲における物体の速度、物体の存在する位置の角度、および距離を、狭い範囲についてではあるが比較的高速で検出することを目的として使用することができる。
【0021】
第2の速度検出手段、第2の角度検出手段、および第2の距離検出手段は、それぞれ、例えば、車線変更警告用信号処理部におけるドップラ周波数算出部、角度算出部、および距離算出部であり、主に第2の範囲における物体の速度、物体の存在する位置の角度、および距離を、比較的低速ではあるが、広い範囲で検出することを目的として使用することができる。
【0022】
前記第1の速度が、第1の所定速度よりも高速で、かつ、前記第1の距離および前記第1の角度に基づいた前記物体の位置が、所定範囲であるとき、衝突予備動作を実行する衝突予備動作実行手段を含ませるようにすることができる。
【0023】
衝突予備動作実行手段は、例えば、衝突予備動作制御部であり、後方に接近する物体が衝突の可能性のある所定速度以上で、所定範囲に検出された場合、衝突に備えた予備的な動作を実行させるようにすることができ、車両に設けられたとき、衝突時の安全性を向上させることができる。
【0024】
前記第2の速度が、第2の所定速度よりも高速で、かつ、前記第2の距離および前記第2の角度に基づいた前記物体の位置が、前記第2の所定速度で設定される第1の警告範囲であるとき、警告を発する警告手段を含ませるようにすることができる。
【0025】
警告手段は、例えば、車線変更警告動作制御部であり、側面後方に接近する物体が第2の所定速度以上で、第2の所定速度に対応して設定された第1の警告範囲内で検出された場合、車線変更に際して危険性が高いことを警告させるようにすることができ、車両に設けられたとき、車線変更時の危険を促すことができるので、車線変更時の安全性を向上させることができる。
【0026】
前記警告手段には、前記第2の所定速度よりも高速の、第3の所定速度よりも高速で、かつ、前記第2の距離および前記第2の角度に基づいた前記物体の位置が、前記第3の所定速度で設定される、前記第1の警告範囲よりも遠い範囲を含む、第2の警告範囲であるとき、警告を発するようにさせることができる。
【0027】
警告手段は、例えば、車線変更警告動作制御部であり、側面後方に接近する物体が第2の所定速度よりも高速の第3の所定速度以上で、第3の所定速度に対応して設定された第1の警告範囲よりも遠い範囲を含む第2の警告範囲内で検出された場合、車線変更に際して危険性が高いことを警告させるようにすることができ、車両に設けられたとき、相対速度に応じて、警告範囲を設定することで、低速時には、比較的接近した位置で他の車両を検出したときに警告を発するようにさせ、高速時には、比較的離れた遠い位置からでも他の車両を検出したときに警告を発するようにさせることができ、相対速度に対応して適切に車線変更時の安全性を向上させることができる。
【0028】
前記第2の速度、前記第2の角度、および前記第2の距離を記憶する記憶手段と、前記第2の検出手段により前記第2の範囲に存在する物体が検出されていた状態から、前記物体を検出しない状態となった場合、前記記憶手段に記憶されている前記第2の速度、前記第2の角度、および前記第2の距離の情報に基づいて、前記物体の位置を推定する推定手段とを含ませるよにすることができ、前記推定手段により推定される物体の位置が、前記第1の警告範囲、または前記第2の警告範囲である場合、前記警告手段には、警告を発するようにさせることができる。
【0029】
記憶手段は、例えば、データ記憶部であり、推定手段は、例えば、推定部である。すなわち、推定部は、第2の範囲に存在する物体が検出されていた状態から、前記物体を検出しない状態に変化したような場合、データ記憶部に記憶されている前記第2の速度、前記第2の角度、および前記第2の距離に基づいて、物体の位置を推定し、第1の警告範囲であるか、または、第2の警告範囲であるときに、警告を発することができる。このため、検出装置が、車両に設けられるような場合、接近する物体として車両が検出されていた状態から、車両により反射された電波が受信部により受信できない範囲に移動するようなときでも、車両の存在する位置を推定して警告することができるので、車線変更時の安全性を向上させることができる。
【0030】
前記推定手段により推定される物体の位置が、前記第1の警告範囲、または第2の警告範囲である場合、前記第2の検出手段により前記第2の範囲に接近する物体が検出されていた状態から、検出しない状態となったタイミングから所定時間が経過していないとき、前記警告手段には、警告を発するようにさせることができる。
【0031】
すなわち、前記第2の範囲に接近する物体が検出されていた状態から、検出しない状態となったタイミングから所定時間が経過しているような場合、物体が移動することにより、第1の警告範囲、または、第2の警告範囲から既に離れてしまっている可能性が高く、そのような場合、警告しないようにすることができ、不要な警告を抑制することができるので、警告そのものの信頼性を向上させることができ、車線変更時の安全性をより向上させることができる。
【0032】
前記送信手段には、2種類の周波数のCW(Continuous Wave)の電波を交互に送信させ、前記受信手段により生成された、前記2種類の周波数のCWの電波に対応する受信信号の、それぞれの和信号および差信号を、前記第1の検出手段、および、前記第2の検出手段に振り分ける振分手段をさらに含ませるようにすることができる。
【0033】
すなわち、2周波CW方式による距離の測定原理と、モノパルス方式による角度の測定原理とを用いることが可能となり、1つの検出装置により、物体の速度、距離、および角度を検出することができ、コストを低減すると共に、装置そのものを小型化することが可能となる。
【0034】
本発明の一側面の検出方法は、第1の方向であって、第1の距離近傍までの範囲からなる第1の範囲と、前記第1の方向とは異なる第2の方向であって、前記第1の距離よりも近距離の第2の距離近傍までの範囲からなる第2の範囲とを含む範囲に電波を照射するように構成され、前記電波を照射することにより送信信号を送信する送信ステップと、前記送信ステップの処理により送信された送信信号としての電波のうち、反射されてくる電波を受信し、受信した前記電波より受信信号を生成する受信ステップと、前記受信ステップの処理により生成された受信信号を、第1の所定時間の間でサンプリングすることにより、物体を検出する第1の検出ステップと、前記受信ステップの処理により生成された受信信号を、前記第1の所定時間よりも長い第2の所定時間の間でサンプリングすることにより、前記物体を検出する第2の検出ステップとを含む。
【0035】
本発明の一側面のプログラムは、第1の方向であって、第1の距離近傍までの範囲からなる第1の範囲と、前記第1の方向とは異なる第2の方向であって、前記第1の距離よりも近距離の第2の距離近傍までの範囲からなる第2の範囲とを含む範囲に電波を照射するように構成され、前記電波を照射することにより送信信号を送信する送信ステップと、前記送信ステップの処理により送信された送信信号としての電波のうち、反射されてくる電波を受信し、受信した前記電波より受信信号を生成する受信ステップと、前記受信ステップの処理により生成された受信信号を、第1の所定時間の間でサンプリングすることにより、物体を検出する第1の検出ステップと、前記受信ステップの処理により生成された受信信号を、前記第1の所定時間よりも長い第2の所定時間の間でサンプリングすることにより、前記物体を検出する第2の検出ステップとを含む処理を実行させる。
【0036】
本発明の一側面においては、第1の方向であって、第1の距離近傍までの範囲からなる第1の範囲と、前記第1の方向とは異なる第2の方向であって、前記第1の距離よりも近距離の第2の距離近傍までの範囲からなる第2の範囲とを含む範囲に電波を照射するように構成され、前記電波を照射することにより送信信号が送信され、送信された送信信号としての電波のうち、反射されてくる電波が受信され、受信された前記電波より受信信号が生成され、生成された受信信号が、第1の所定時間の間でサンプリングされることにより、物体が検出され、生成された受信信号が、前記第1の所定時間よりも長い第2の所定時間の間でサンプリングされることにより、前記物体が検出される。
【0037】
以上により、プリクラッシュ安全装置用のレーダと、車線変更支援装置用のレーダとを共通で使用し、コストの低減を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、プリクラッシュ安全装置用のレーダと、車線変更支援装置用のレーダとを共通で使用することが可能となり、コストの低減を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
図1は、本発明に係るレーダ装置の一実施の形態の構成を示す図である。
【0040】
レーダ装置1は、車両に搭載され、車両の後方範囲(ほぼ真後ろであって、比較的遠い部分を含む範囲)に相対速度が所定の速度以上の高速で接近する車両を検出して、衝突を予期して、衝突に備えた予備的な動作を実行させる、いわゆるプリクラッシュ機能と、車両の側面後方範囲(走行中の走行車線からみて、左右に隣接する走行車線における後方の比較的近い部分を含む範囲)で、走行している車両を検出し、車線変更時に危険があるとき警告を発する、いわゆる車線変更支援機能(車線変更警告機能)とを備えたものである。
【0041】
レーダ装置1は、送信部11、受信部12、衝突予備動作用信号処理部13、衝突予備動作制御部14、車線変更警告用信号処理部15、および車線変更警告動作制御部16とから構成されている。
【0042】
送信部11は、2周波CW(Continuous Wave)からなる電波を送信信号として発生し照射する。受信部12は、送信部11より送信された送信信号である電波のうち、物体により反射されてくる電波を受信して、受信した電波より受信信号を生成し、衝突予備動作用信号処理部13、および車線変更警告用信号処理部15のそれぞれに供給する。
【0043】
衝突予備動作用信号処理部13は、受信部12より供給されてくる受信信号を比較的短い周期でサンプリングし、後方からの他車の接近を検出して、衝突の有無を判定し、判定結果に応じて、衝突予備動作制御部14に対して衝突予備動作を実行させる。衝突予備動作制御部14は、例えば、音声警告装置、シートベルト、エアバッグ、または可動式ヘッドレストなどのいわゆる衝突時に乗員を保護する衝突保護機器の動作を制御し、衝突予備動作用信号処理部13より衝突予備動作を実施するように指示が出されると、音声により衝突の発生を事前警告して注意を促し、シートベルトを引き上げて乗員を座席に固定させ、いわゆる鞭打ち症などの発生を抑止したり、衝突前に適切なタイミングでエアバッグを動作させて衝突時の乗員の衝撃を吸収したり、さらには、可動式ヘッドレストを動作させて乗員の頭部に押し当てるなどして、乗員の衝突時の頭部への反動による衝撃を抑制させるといった処置を実行させる。
【0044】
車線変更警告用信号処理部15は、受信部12より供給されてくる受信信号を比較的長い周期でサンプリングし、側面後方からの他車の存在位置を認識し、車線変更に際しての危険の有無を判定し、判定結果に応じて、車線変更警告動作制御部16に対して、車線変更警告の動作を実行させる。車線変更警告動作制御部16は、車線変更警告用信号処理部15より警告を促すように指示を受けた場合、例えば、警告音、警告を促す音声指示、または、警告を促すように乗員が着座する座席を振動させることにより、車線変更を実施すると危険な状態であることを警告する。
【0045】
次に、送信部11の詳細な構成について説明する。
【0046】
送信部11は、発振部31、周波数切替部32、増幅部33、3分岐部34、増幅部35、およびアンテナ36より構成されている。
【0047】
発振部31は、周波数切替部32から所定の間隔で供給されてくる切替信号に基づいて、数10GHz帯の周波数f1のCW信号と、周波数f1と数MHz異なる周波数f2のCW信号とを搬送波として切り替えて発生し、増幅部33で増幅させて3分岐部34に供給する。周波数切替部32は、発振部31に発振すべき周波数の切替を指示する切替信号を供給すると共に、受信部12にも切替信号を供給する。
【0048】
3分岐部34は、増幅部33より供給されてくる周波数f1またはf2のCW信号を受信部12、および、増幅部35のそれぞれに分岐して供給する。増幅部35は、3分岐部34より供給されてくる周波数f1またはf2のCW信号を送信信号としてアンテナ36より電波として出力する。
【0049】
アンテナ36は、車両本体の後方中央部付近に設けられており、図2で示されるような範囲Z1,Z2−1,Z2−2からなる強度分布特性の電波を送信信号として出力する。図2においては、図中下方向が車両C1の進行方向であり、車両C1の後方中央部付近に設けられたアンテナA(図1におけるアンテナ36,51−1,51−2が一体となって構成されている)から電波が発せられているときの強度分布特性が示されている。
【0050】
図2の強度分布特性における範囲Z1は、アンテナAの存在する位置から後方正面を中央とした、水平方向に角度αで、かつ、比較的遠い位置までを含む図中の斜線部の範囲である。また、範囲Z2−1,Z2−2は、アンテナAの存在する位置から後方正面を中央とした、水平方向に角度β(>α)で、かつ、比較的近い位置までを含む図中の無地の範囲である。尚、図2においては、車両C1が、車線L1乃至L3のうちの車線L2を図中の下方向に走行している状態が示されている。
【0051】
次に、受信部12の構成について説明する。
【0052】
受信部12は、アンテナ51−1,51−2、加算部52、減算部53、LNA(Low Noise Amplifier)54−1,54−2、混合器55−1,55−2、振分部56,57、LPF(Low Pass Filter)58−1乃至58−3、増幅部59−1,59−2、およびADC(Analog Digital Converter)60−1乃至60−3から構成されている。
【0053】
アンテナ51−1,51−2は、送信部11のアンテナ36より照射された送信信号としての電波のうち、車両、または、人間などの物体に反射してくる電波を順次して受信し、受信した電波に対応する信号をそれぞれ加算部52および減算部53に供給する。尚、上述したように送信信号は、周波数f1,f2が順次切り替えられて送信されるが、物体が移動している場合、反射によって、周波数f1,f2に対応して、ドップラ周波数fd1,fd2が発生することになる。このため、アンテナ51−1,51−2により受信される電波は、周波数f1+fd1のCW信号に対応するものと、周波数f2+fd2のCW信号に対応するものとが、送信信号におけるf1,f2周波数の切替タイミングど同期して、順次切り替えられて受信されることになる。また、送信部11および受信部12の構成を含むレーダ装置1は、一体のパッケージとして構成され、車両の後部略中央部に搭載されるものであり、車両の大きさからみて、アンテナ51−1,51−2と、アンテナ36とは、実質的に略同位置に配置されるものである。このため、アンテナ51−1,51−2は、アンテナ36で出力された送信信号としての電波のうち、物体により反射され、略同一の位置に反射されて戻ってくる電波を受信する。
【0054】
加算部52は、アンテナ51−1,51−2より供給されてくる信号を加算して、f1和信号(周波数f1のCW信号が反射することにより受信されたドップラ周波数fd1を含む周波数(f1+fd1)の和信号)、およびf2和信号(周波数f2のCW信号が反射することにより受信されたドップラ周波数fd2を含む周波数(f2+fd2)の和信号)としてLNA54−1に供給する。減算部53は、アンテナ51−1,51−2より供給されてくる信号を減算して、差信号(周波数f1のCW信号が反射することにより受信されたドップラ周波数fd1を含む周波数(f1+fd1)の差信号)、およびf2差信号(周波数f2のCW信号が反射することにより受信されたドップラ周波数fd2を含む周波数(f2+fd2)の差信号)としてLNA54−1に供給する。
【0055】
LNA54−1,54−2は、それぞれ加算部52および減算部53より供給されてくるf1和信号またはf2和信号、およびf1差信号、またはf2差信号を、それぞれ後段の混合器55−1,55−2に3分岐部34より供給されてくる周波数f1またはf2のCW信号のレベルと同程度にまで増幅し、混合器55−1,55−2に供給する。
【0056】
混合器55−1,55−2は、送信部11の3分岐部34より供給されてくる周波数f1またはf2のCW信号と、LNA54−1,54−2のそれぞれから供給されてくるf1和信号およびf1差信号、または、f2和信号およびf2差信号とを混合し、それぞれ振分部56,57に供給する。尚、f1和信号およびf1差信号が、周波数f1のCW信号と混合された信号については、それぞれfd1和信号およびfd1差信号と称するものとし、f2和信号およびf2差信号が、周波数f2のCW信号と混合された信号については、それぞれfd2和信号およびfd2差信号と称するものとする。
【0057】
振分部56は、混合器55−1より供給されてくる信号を、切替信号に対応して、LPF58−1,58−2に周波数ごとに、それぞれfd1和信号およびfd2和信号として振り分けて出力する。振分部57は、それぞれ混合器55−2より供給されてくるfd1差信号、およびfd2差信号のうち、切替信号に対応して、fd1差信号のみをLPF58−3に振り分けて出力する。
【0058】
LPF58−1乃至58−3は、それぞれ振分部56,57より供給されてくるfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号を平滑化した後、増幅部59−1乃至59−3に供給する。増幅部59−1乃至59−3は、それぞれLPF58−1乃至58−3より供給されてきたfd1和信号、fd2和信号、および、fd1差信号を増幅して、ADC60−1乃至60−3に供給する。ADC60−1乃至60−3は、平滑化されて、さらに増幅されたfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号を、デジタル信号に変換し、受信信号として、それぞれ衝突予備動作用信号制御部13、および車線変更警告用信号処理部15に供給する。
【0059】
次に、衝突予備動作用信号処理部13の構成について説明する。
【0060】
衝突予備動作用信号処理部13は、FFT(Fast Fourier transform:高速フーリエ変換部)71−1乃至71−3、衝突判定用FFTタイミング制御部72、ドップラ周波数算出部73、距離算出部74、角度算出部75、衝突判定部76より構成されている。
【0061】
FFT71−1乃至71−3は、衝突判定用FFTタイミング制御部72からの制御信号に基づいて、受信部12より受信信号としてそれぞれに供給されてくるfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号を順次サンプリングして、FFT処理し、FFT71−1が、fd1和信号のスペクトル分布から得られる結果を距離算出部74および角度算出部75に供給し、FFT71−2は、fd2和信号のスペクトル結果から得られる結果をドップラ周波数算出部73、および距離算出部74に供給し、FFT71−3が、fd1差分信号のスペクトル分布から得られる結果を角度算出部75に供給する。
【0062】
衝突判定用FFTタイミング制御部72は、内蔵するカウンタ72aを所定時間ごとに加算し、所定時間T1が経過したところで、FFT71−1乃至71−3に対してFFT処理を実行するように指示する。
【0063】
ドップラ周波数算出部73は、FFT71−2より供給されてくるfd2和信号のスペクトル結果に基づいて、ドップラ周波数fd2を算出すると共に、求められたドップラ周波数fd2から検出物体の速度v1を算出し、距離算出部74、角度算出部75、および衝突判定部76に供給する。
【0064】
距離算出部74は、FFT71−1,71−2より供給されてくるfd1和信号およびfd2差信号、並びにドップラ周波数算出部73より供給されてくる速度v1に基づいて、fd1和信号とfd2差信号との位相差の情報から、物体までの距離D1を算出し、衝突判定部76に供給する。
【0065】
角度算出部75は、FFT71−1からのfd1和信号とFFT71−3からのfd1差信号、並びに速度v1に基づいて、fd1和信号とfd1差信号との強度比から物体の存在する位置の角度θ1を算出し、衝突判定部76に供給する。
【0066】
衝突判定部76は、速度判定部76aを制御して、ドップラ周波数算出部73より供給されてきた速度v1が所定速度V1以上であるか否かを判定させる。衝突判定部76は、速度v1が所定速度V1より高速である場合、範囲判定部76bを制御して、距離D1、および角度θ1に基づいて、衝突の可能性のある所定範囲内に車両が存在するか否かを判定させる。そして、衝突判定部76は、範囲判定部76により所定範囲内に車両が存在すると判定された場合、衝突の可能性があると判定し、衝突予備動作指示部76cを制御して、衝突予備動作制御部14に対して、衝突予備動作を実行させる。
【0067】
次に、車線変更警告用信号処理部15の構成について説明する。
【0068】
車線変更警告用信号処理部15は、FFT91−1乃至91−3、車線変更警告用FFTタイミング制御部92、ドップラ周波数算出部93、距離算出部94、角度算出部95、車線変更警告判定部96より構成されている。
【0069】
FFT91−1乃至91−3は、車線変更警告用FFTタイミング制御部92からの制御信号に基づいて、受信部12より受信信号としてそれぞれに供給されてくるfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号を順次サンプリングして、FFT処理し、FFT91−1が、fd1和信号のスペクトル分布から得られる結果を距離算出部94および角度算出部95に供給し、FFT91−2が、fd2和信号のスペクトル分布から得られる結果をドップラ周波数算出部93、および距離算出部94に供給し、FFT91−3が、fd1差分信号のスペクトル分布から得られる結果を角度算出部95に供給する。
【0070】
車線変更警告用FFTタイミング制御部92は、内蔵するカウンタ92aを所定時間ごとに加算し、所定時間T2(>T1)が経過したところで、FFT91−1乃至91−3に対してFFT処理を実行するように指示する。ここで、所定時間T2は、所定時間T1よりも長い時間が設定されており、FFT91−1乃至91−3によるFFT処理は、FFT71−1乃至71−3によるFFT処理よりもサンプリング時間が長くなるように設定されている。
【0071】
ドップラ周波数算出部93は、FFT91−2より供給されてくるfd2和信号に基づいて、ドップラ周波数fd2を算出すると共に、求められたドップラ周波数fd2から検出物体の速度v2を算出し、距離算出部94、角度算出部95、および車線変更警告判定部96に供給する。
【0072】
距離算出部94は、FFT91−1,91−2より供給されてくるfd1和信号およびfd2和信号、並びにドップラ周波数算出部93より供給されてくる速度v2に基づいて、fd1和信号およびfd2和信号の位相差の情報から、物体までの距離D2を算出し、車線変更警告判定部96に供給する。
【0073】
角度算出部95は、FFT91−1,91−3より供給されてくるfd1和信号およびfd1差信号、並びに速度v2に基づいて、fd1和信号およびfd1差信号の強度比から、物体の存在する位置の角度θ2を算出し、車線変更警告判定部96に供給する。
【0074】
車線変更警告判定部96は、速度判定部96aを制御して、ドップラ周波数算出部93より供給されてきた速度v2が所定速度VaまたはVb(<Va)以上であるか否かを判定させる。車線変更警告判定部96は、速度v2が所定速度VaまたはVb(<Va)より高速である場合、範囲判定部96bを制御して、距離D2、および角度θ2に基づいて、速度対範囲テーブル96dに、所定速度Va<v2、または、Va>v2>Vbのそれぞれに対応して予め記憶されている警告範囲W1、または、警告範囲W2(警告範囲W1より近傍の狭い範囲)内で、物体が存在するか否かを判定させる。そして、車線変更警告判定部96は、範囲判定部96bにより警告範囲W1またはW2内に物体が存在すると判定した場合、車線変更に危険の可能性があるとみなし、警告指示部96fを制御して、車線変更警告動作制御部16に対して、車線変更警告動作を実行させる。
【0075】
また、車線変更警告判定部96は、速度v2、距離D2、および角度θ2を記憶するデータ記憶部96cを備えている。例えば、直前まで警告範囲内に車両が存在すると判定されていたが、車両の存在が検出されていない状態に切り替わった場合、車線変更警告判定部96は、推定部96eを制御して、データ記憶部96cに記憶されている速度v2、距離D2、および角度θ2に基づいて、受信信号では検出できない範囲であって、警告範囲を含む範囲である、いわゆるブラインドスポットにおける車両の存在位置を推定させ、再び範囲判定部96bを制御して、警告範囲に存在するか否かを判定させる。この際、推定されたブラインドスポット内の存在位置に基づいて、車両が所定範囲に存在すると判定された場合、車線変更警告判定部96は、ブラインドスポットタイミング判定部96gを制御して、ブラインドスポットに入ったと推定される最後に検出されたタイミングから所定時間以上経過しているか否か、すなわち、ブラインドスポットに入ってから所定時間経過したか否かを判定させ、所定時間が経過していないければ、警告指示部96fを制御して、車線変更警告動作を実行させる。一方、ブラインドスポットに入ってから所定時間以上経過していた場合、車線変更警告判定部96は、警告範囲から離脱したものとみなし、車線変更警告動作を停止させる(車線変更警告動作をさせない)。
【0076】
次に、図3のフローチャートを参照して、図1のレーダ装置1による物体の計測処理について説明する。
【0077】
ステップS1において、発振部31は、周波数切替部32からの切替信号に基づいて、f1周波数のCW信号、または、f2周波数のCW信号のいずれかを発振し、増幅部33で増幅させて3分岐部34に出力させる。このとき、周波数切替部32は、同一の切替信号を受信部12にも供給する。
【0078】
ステップS2において、3分岐部34は、増幅部33より供給されてきたf1周波数のCW信号、または、f2周波数のCW信号のいずれかのCW信号を分岐して、受信部12および増幅部35にそれぞれ供給する。そして、増幅部35は、3分岐部34より供給されてきたf1周波数のCW信号、または、f2周波数のCW信号のいずれかのCW信号をアンテナ36より電波を出力することにより、送信信号として送信する。このとき、アンテナ36より送信された送信信号としての電波は、例えば、図2で示されるような強度分布で出力される。尚、図2における範囲Z1,Z2−1,Z2−2からなる形状は、厳密なものである必要はなく、概ね同様の形状となるような強度分布となるように送信されれば良いものである。
【0079】
ステップS2の処理により出力された電波としての送信信号は、図2で示される強度分布により出力されるため、範囲Z1,Z2−1,Z2−2から構成される範囲に物体(車両)が存在する場合、その物体により反射される。すなわち、送信信号は、上述の通り、図4の上部で示されるように、アンテナA(図4では、アンテナ36,51−1,51−2を一体化したものとし簡略化して表現している)より順次周波数f1およびf2のCW信号が切り替えられて出力される。このため、物体である車両C1で反射されると、それぞれの周波数のCW信号に対応してドップラ周波数fd1またはfd2が発生することにより、図4の下部で示されるように、順次周波数f1+fd1、または、f2+fd2のCW信号として反射され、この反射波となる電波が受信されることになる。
【0080】
そこで、ステップS3において、アンテナ51−1,51−2は、反射されてくる電波を受信し、受信した電波に対応する信号を加算部52、および減算部53にそれぞれ供給する。
【0081】
ステップS4において、加算部52は、アンテナ51−1,51−2より供給されてきた受信信号を相互に加算してf1和信号またはf2和信号を生成し、LNA54−1に出力し、所定の電圧まで増幅して混合器55−1に出力させる。
【0082】
ステップS5において、減算部53は、アンテナ51−1,51−2より供給されてきた受信信号を相互に減算してf1差信号、またはf2差信号を生成し、LNA54−2に出力し、所定の電圧まで増幅して混合器55−2に出力させる。
【0083】
ステップS6において、混合器55−1は、送信部11の3分岐部34より供給されてくる送信信号と、和信号とを混合し、和信号の混合信号として振分部56に出力する。また、混合器55−2は、送信部11の3分岐部34より供給されてくる送信信号と、差信号とを混合し、差信号の混合信号として振分部57に出力する。
【0084】
尚、このステップS2乃至S6の処理は、フローチャートの表記として異なるタイミングで処理されるものとされているが、実際の処理は、ほぼ同時に処理されており、実質的に並列処理されているものである。
【0085】
ステップS7において、振分部56は、送信部11の周波数切替部32よりステップS11の処理で供給されてくる切替信号が、周波数f1に対応する切替信号のとき、対応する和信号であるfd1和信号をLPF58−1に供給し、切替信号が、周波数f2に対応する切替信号のとき、対応する和信号であるfd2和信号をLPF58−2に供給する。また、振分部57は、送信部11の周波数切替部32よりステップS11の処理で供給されてくる切替信号が、周波数f1に対応する切替信号のときのみ、対応する差信号であるfd1差信号をLPF58−3に供給する。
【0086】
すなわち、図5の左上段で示されるように、周波数切替部32が、切替信号として、周波数f1のときHiを、周波数f2のときLowを出力する場合、図5の左中段で示されるように、振分部56には、切替信号に対応して、混合器55−1より周波数f1に対応する和信号であるfd1和信号、および周波数f2に対応する和信号であるfd2和信号が交互に順次供給されてくる。このとき、振分部56は、切替信号が周波数f1に対応するHiのとき、図5の右上段で示されるように、fd1和信号をLPF58−1に供給し、切替信号が周波数f2に対応するLowのとき、図5の右中段で示されるように、fd2和信号をLPF58−2に供給する。
【0087】
また、図5の左上段で示されるように、周波数切替部32が、切替信号として、周波数f1のときHiを、周波数f2のときLowを出力する場合、図5の左下段で示されるように、振分部57には、切替信号に対応して、混合器55−2より周波数f1に対応する差信号であるfd1差信号、および周波数f2に対応する差信号であるfd2差信号が交互に順次供給されてくる。このとき、振分部57は、切替信号が周波数f1に対応するHiのときのみ、図5の右下段で示されるように、fd1差信号をLPF58−3に供給する。
【0088】
ステップS8において、LPF58−1乃至58−3は、順次振分部56,57より供給されてくるfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号を、それぞれ平滑化して増幅部59−1乃至59−3に供給する。増幅部59−1乃至59−3は、供給されてきたfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号を、それぞれ増幅し、ADC60−1乃至60−3に供給する。ADC60−1乃至60−3は、平滑化され、さらに増幅されたfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号をデジタル信号に変換し、ステップS9において、衝突予備動作用信号処理部13および車線変更警告用信号処理部15に分配して受信信号として供給する。
【0089】
ステップS10において、周波数切替部32は、今現在出力している周波数f1、またはf2のいずれかのCW信号に切り替えてから所定時間が経過したか否かを判定し、所定時間が経過していないと判定された場合、処理は、ステップS2に戻る。一方、ステップS10において、所定時間が経過していると判定された場合、ステップS11において、周波数切替部32は、切替信号を切り替えて、すなわち、それまでに出力していた周波数とは別の周波数に切り替えて、発振部31にCW信号を発振させる。
【0090】
以上の処理を纏めると以下のようになる。ステップS2の処理において、例えば、送信部11のアンテナ36より出力される電波が、以下の式(1)で表されるものとすると、アンテナ51−1,51−2で受信される電波は、以下の式(2),式(3)として表される。
【0091】
【数1】
【0092】
【数2】
【0093】
【数3】
【0094】
ここで、Tiは、送信電波を、Rx1,Rx2は、それぞれアンテナ51−1,51−2の電波を、A,Bは、それぞれ送信電波および受信電波の強度を、dは物体までの距離を、vはレーダ装置1を搭載した車両と、送信信号としての電波を反射する物体としての車両C1との相対速度を、fiは送信された電波の周波数(i=1のとき周波数f1、i=2のとき周波数f2)を、cは光速を、Lは、例えば、図6で示されるアンテナ51−1,51−2間の距離を、θは図6で示されるアンテナ51−1,51−2間の中心から物体C1の角度(到来角)を、それぞれ表している。また、式(3)における括弧内の第3項のLsin(θ)は、図6で示されるように、アンテナ51−1,51−2の双方に到達する電波の経路差を示すものである。したがって、車両C1から受信される電波のアンテナ51−1,51−2への経路は平行であるものとすれば、アンテナ51−1,51−2の双方で受信される受信信号には、経路差Lsin(θ)分に相当する位相差が生じていることになる。
【0095】
そこで、ステップS4の処理においては、加算部52が、式(2),式(3)で示されるアンテナ51−1,51−2で受信される電波の信号を加算することにより、以下の式(4)で示される和信号Raddを生成する。式(4)においては、経路差Lsin(θ)により生じる位相差の情報が、振幅として表されている。すなわち、式(4)においては、2Bcos(π・Lsin(θ)・fi/c)の項により、経路差Lsin(θ)により生じる位相差の情報が振幅として表されている。
【0096】
【数4】
【0097】
また、ステップS5の処理においては、減算部53が、式(2),式(3)で示されるアンテナ51−1,51−2の受信電波に対応する信号を減算することにより、以下の式(5)で示される差信号Rsubを生成する。式(5)においては、経路差Lsin(θ)により生じる位相差の情報が、振幅として表される。すなわち、式(5)においては、2Bsin(π・Lsin(θ)・fi/c)の項により、経路差Lsin(θ)により生じる位相差の情報が振幅として表されている。
【0098】
【数5】
【0099】
そして、ステップS6の処理により、混合器55−1、55−2が、式(4),式(5)で表される和信号Raddおよび差信号Rsubを、それぞれ送信信号と混合することにより、以下の式(6),式(7)で示される和信号の混合信号Radd_dおよび差信号の混合信号Rsub_dが求められる。
【0100】
【数6】
【0101】
【数7】
【0102】
この和信号の混合信号Radd_dが、図5における周波数f1またはf2に対応するfd1和信号またはfd2和信号であり、差信号の混合信号Rsub_dが、図5における周波数f1に対応するfd1差信号である。
【0103】
すなわち、以上の処理により、式(6),式(7)で表されるfd1和信号およびfd2和信号、並びにfd1差信号が、周波数f1またはf2の切替信号に同期して、図5で示されるように、それぞれLPF58−1乃至58−3に供給される。そして、ステップS9の処理により、LPF58−1乃至58−3は、離散的に供給されてくるfd1和信号およびfd2和信号、並びにfd1差信号を、それぞれに平滑化することにより連続的な値に変換し、増幅部59−1乃至59−3に供給する。増幅部59−1乃至59−3は、それぞれを増幅して、ADC60−1乃至60−3に供給する。さらに、ADC60−1乃至60−3がデジタル信号に変換して、衝突予備動作用信号処理部13、および車線変更警告用信号処理部15に、それぞれ3種類の受信信号(平滑化されて連続的なデジタル信号にされたfd1和信号およびfd2和信号、並びにfd1差信号)として供給される。
【0104】
次に、図7のフローチャートを参照して、衝突予備動作用信号処理について説明する。
【0105】
ステップS21において、衝突判定用FFTタイミング制御部72は、衝突判定用FFTタイミング計測用のカウンタ72aのカウント値Xを初期化してカウントを開始する。
【0106】
ステップS22において、FFT71−1乃至71−3は、受信部12より供給されてくるデジタル信号からなるfd1和信号およびfd2和信号、並びにfd1差信号を取得し、順次記憶し、サンプリングする。
【0107】
ステップS23において、衝突判定用FFTタイミング制御部72は、カウンタ72aのカウント値Xが所定の時間T1を超えているか否か、すなわち、所定のサンプリング時間を超えているか否かを判定する。尚、この時間T1は、衝突を判定し、衝突が判定された場合には、衝突に対応するための予備動作を実行させる必要があるため、比較的短い時間とする必要があり、特に後述する車線変更警告用信号処理のサンプリング時間より短い時間である。
【0108】
ステップS23において、カウント値Xが所定の時間T1よりも大きくないと判定された場合、処理は、ステップS22に戻る。すなわち、所定の時間Tが経過するまで、ステップS22,S23の処理が繰り返され、サンプリングが継続される。
【0109】
ステップS23において、例えば、カウント値Xが所定の時間T1よりも大きいと判定され、サンプリングを終了して処理を開始するタイミングに到達したと判定された場合、ステップS24において、衝突判定用FFTタイミング制御部72は、FFT71−1乃至71−3に対してFFTの処理を実行させる。この指示を受けて、FFT71−1乃至71−3は、それぞれサンプリングしたデータに基づいて、FFTを掛けて、FFT71−1が、fd1和信号のスペクトル分布から得られる結果を距離算出部74に供給する。また、FFT71−2が、fd2和信号のスペクトル分布から得られる結果をドップラ周波数算出部73、および距離算出部74に供給する。さらに、FFT71−3が、fd1差信号のスペクトル分布から得られる結果を角度算出部75に供給する。
【0110】
ステップS25において、ドップラ周波数算出部73は、fd2和信号のスペクトルに基づいて、ドップラ周波数fd2を求め、さらに、ドップラ周波数fd2より、物体の速度v1を算出し、距離算出部74、角度算出部75、および衝突判定部76に出力する。すなわち、ドップラ周波数fd2と物体の速度vとの関係は、以下の式(8)で示される関係となる。ここで、vは、速度を、fi(i=1or2)は、CW信号の周波数、cは、光速である。したがって、ドップラ周波数算出部73は、fd2和信号のスペクトル分布から求められたドップラ周波数fd2に基づいて、式(8)を変形して速度vを速度v1として算出する。
【0111】
【数8】
【0112】
ステップS26において、距離算出部74は、FFT71−1より供給されてくるfd1和信号のスペクトル分布から得られる結果、および、FFT71−2より供給されてくるfd2和信号のスペクトル分布から得られる結果、並びに、速度v1に基づいて、fd1和信号とfd2和信号との位相差から物体までの距離D1を算出し、衝突判定部76に供給する。
【0113】
すなわち、周波数f1が数10GHzであるのに対して、周波数f2は、周波数f1と数MHzの周波数差でしかないため、ドップラ周波数fd1,fd2は、いずれも2vf1/c,2vf2/cで表されるが、いずれも同一であるものとして考えることができる。
【0114】
また、上述した式(6),式(7)で表される和信号の混合信号Radd_dと、差信号の混合信号Rsub_dとの位相差Δφは、以下の式(9)で表される。ここで、周波数f1,f2の周波数差をΔfとすれば、物体の距離dは、以下の式(10)で表される。
【0115】
【数9】
【0116】
【数10】
【0117】
そこで、ステップS26において、距離算出部74は、上述した式(10)を用いて、物体までの距離dを距離D1として計算する。
【0118】
ステップS27において、角度算出部75は、FFT71−1より供給されてくるfd1和信号のスペクトル分布から得られる結果、およびfd1差信号のスペクトル分布から得られる結果、並びに速度v1に基づいて、fd1和信号のスペクトル分布から得られる結果とfd1差信号のスペクトル分布から得られる結果との比率から物体の存在する位置の角度θ1(図6の到来角θに相当する)を算出する。すなわち、上述した式(6),式(7)で表される和信号の混合信号Radd_dと、差信号の混合信号Rsub_dとにおける振幅Aadd,Asubは、それぞれ以下の式(11),式(12)で表される。
【0119】
【数11】
【0120】
【数12】
【0121】
ここで、図6における到来角θは、以下の式(13)で示されるように表される。
【0122】
【数13】
【0123】
角度算出部75は、上述した式(13)を用いて、角度θを角度θ1として算出し、衝突判定部76に供給する。
【0124】
以上の処理により、この時点で衝突判定部76には、検出された物体の速度v1、距離D1、および角度θ1が供給されていることになる。
【0125】
そこで、ステップS28において、衝突判定部76は、速度判定部76aを制御して、供給されてきた速度v1が、所定の速度V1よりも高速であるか否かを判定させる。例えば、速度v1が、所定の速度V1よりも高速ではないと判定された場合、衝突の可能性はないものとみなし、処理は、ステップS21に戻る。
【0126】
一方、ステップS28において、速度v1が、所定の速度V1よりも高速であると判定された場合、ステップS29において、衝突判定部76は、範囲判定部76bを制御して、検出された物体の距離D1と角度θ1とに基づいて、物体の存在する位置を求め、衝突の可能性が高い所定の範囲内、すなわち、図2で示される範囲Z1のうち、所定の距離以内の範囲内に存在するのか否かを判定させる。ステップS29において、例えば、衝突の可能性が高い所定の範囲内に存在しない場合、衝突の可能性はないものとみなし、処理は、ステップS21に戻る。尚、この衝突の可能性が高い所定の範囲は、速度v1に対応して設定するようにしても良い。
【0127】
一方、ステップS29において、衝突の可能性が高い所定の範囲内に存在すると判定された場合、ステップS30において、衝突判定部76は、衝突予備動作指示部76cを制御して、衝突予備動作制御部14に対して、衝突予備動作を実施するように指示させる。
【0128】
この処理に応じて、ステップS31において、衝突予備動作制御部14は、衝突に備えて、例えば、警告音声を発することで衝突の発生を警告すると共に、シートベルトを引き上げて、乗員を座席に固定させ、いわゆる鞭打ち症などの発生を抑止したり、衝突前に適切なタイミングでエアバッグを動作させて衝突時の衝撃を吸収したり、さらには、可動式ヘッドレストを頭部に押し当てるなどして、乗員の衝突時の頭部への反動による衝撃を抑制させるといった動作を実施する。
【0129】
以上の処理により、比較的短いサンプリング時間で衝突の有無を判定し、衝突の可能性があると判定された場合、衝突に備えた予備動作を実施することが可能となるので、乗員の衝突時の安全性を向上させることができる。また、図2を参照して、上述したように、範囲Z1の範囲は、強い電波を送信信号として出力することにより、比較的遠くまで検出範囲として設定されているため、物体として検出される車両が検出される程接近しているような場合、接近に伴って、受信される受信信号も強い電波として受信されることになるため、サンプリング時間が短くても、比較的条件のよいデータをサンプリングして利用することができ、自車への衝突の有無を高精度で検出することが可能となる。
【0130】
次に、図8のフローチャートを参照して、車線変更警告用信号処理について説明する。
【0131】
ステップS41において、車線変更警告用FFTタイミング制御部92は、車線変更警告用FFTタイミング計測用のカウンタ92aのカウント値Yを初期化してカウントを開始する。
【0132】
ステップS42において、FFT91−1乃至91−3は、受信部12より供給されてくるfd1和信号およびfd2和信号、並びにfd1差信号を取得し、順次記憶し、サンプリングする。
【0133】
ステップS43において、車線変更警告用FFTタイミング制御部92は、カウンタ92aのカウント値Yが所定の時間T2を超えているか否か、すなわち、所定のサンプリング時間を超えているか否かを判定する。尚、この時間T2は、車線変更時の危険の有無を判定し、車線変更の危険があると判定された場合には、車線変更に対する警告を実行させる必要があるためのものであり、運転者の危険回避動作が行えるものであればよいので、衝突時の予備動作に比べて求められる時間が長くてもよいため、衝突の有無を判定する処理に用いられたサンプリング時間である時間T1よりも、比較的長い時間とすることができる。
【0134】
ステップS43において、カウント値Yが所定の時間T2よりも大きくないと判定された場合、処理は、ステップS42に戻る。すなわち、所定の時間T2が経過するまで、ステップS42,S43の処理が繰り返される。
【0135】
ステップS43において、例えば、カウント値Yが所定の時間T2よりも大きいと判定され、サンプリングを終了して、処理を開始するタイミングに到達したと判定された場合、ステップS44において、車線変更警告用FFTタイミング制御部92は、FFT91−1乃至91−3に対してFFTの処理を実行させる。この指示を受けて、FFT91−1乃至91−3は、それぞれサンプリングしたデータに基づいて、FFTを掛けて、FFT91−1が、fd1和信号のスペクトル分布から得られる結果を距離算出部94に供給する。また、FFT91−2が、fd2和信号のスペクトル分布から得られる結果をドップラ周波数算出部93、および距離算出部94に供給する。さらに、FFT91−3が、fd1差信号のスペクトル分布から得られる結果を角度算出部95に供給する。
【0136】
ステップS45において、ドップラ周波数算出部93は、fd2和信号のスペクトルから得られる結果に基づいて、ドップラ周波数fd2を求め、さらに、ドップラ周波数fd2より、物体の速度v2を算出し、距離算出部94、角度算出部95、および車線変更警告判定部96に出力する。尚、ドップラ周波数算出部93、距離算出部94、および角度算出部95における処理は、実質的に、上述したドップラ周波数算出部73、距離算出部74、および角度算出部75における処理と同様であるので、以降においても、その説明は、適宜省略するものとする。
【0137】
ステップS46において、距離算出部94は、FFT91−1より供給されてくるfd1和信号のスペクトル分布から得られる結果、および、FFT91−2より供給されてくるfd2和信号のスペクトル分布から得られる結果、並びに、速度v2に基づいて、物体までの距離D2を算出し、車線変更警告判定部96に供給する。
【0138】
ステップS47において、角度算出部95は、FFT91−1より供給されてくるfd1和信号のスペクトル分布から得られる結果、およびfd1差信号のスペクトル分布から得られる結果、並びに速度v2に基づいて、fd1和信号のスペクトル分布から得られる結果とfd1差信号のスペクトル分布から得られる結果との比率から物体の存在する位置の角度θ2(図6の到来角θに相当する)を算出する。
【0139】
以上の処理により、この時点で車線変更警告判定部96には、検出された物体の速度v2、距離D2、および角度θ2が供給されていることになる。
【0140】
ステップS48において、車線変更警告判定部96は、この検出された物体の速度v2、距離D2、および角度θ2を検出した時刻情報と対応付けてデータ記憶部96cに順次記憶させる。尚、データ記憶部96cに記憶される物体の速度v2、距離D2、および角度θ2は、直近の数秒分を記憶すればよく、データ記憶部96cに記憶される情報が、所定時間分以上となる場合、最新のデータが最も古いデータの記録領域に上書きされて記録される。
【0141】
ステップS49において、車線変更警告判定部96は、速度判定部96aを制御して、供給されてきた速度v2が、所定の速度Vaよりも高速であるか否かを判定させる。例えば、速度v2が、所定の速度Vaよりも高速であると判定した場合、処理は、ステップS50に進む。
【0142】
ステップS50において、車線変更警告判定部96は、範囲判定部96bを制御して、速度v2(>Va)に応じた警告範囲W1を速度対範囲テーブル96dより読み出させる。
【0143】
ステップS51において、車線変更警告判定部96は、範囲判定部96bを制御して、検出された物体の距離D2と角度θ2とに基づいて、物体の存在する位置を求め、警告範囲W1内に存在するのか否かを判定させる。ステップS51において、例えば、図9で示されるように、レーダ装置1が車両C1の後部に搭載され、太線で示される警告範囲W1内に車両C13が存在するような場合、車線変更が危険であるものとみなし、ステップS52において、車線変更警告判定部96は、警告指示部96fを制御して、車線変更警告動作制御部16に対して、車線変更警告動作を実施するように指示させる。尚、図9における警告範囲W1は、車両C1が図中の車線L2を下方向に走行中であるとき、車両C1の運転席横付近の位置(目視により車線変更しようとする車線に存在する車両を確認できる位置)から後方に距離N1の範囲である。尚、図示しないが、当然のことながら、同様に、警告範囲は、車線L3側にも同様に設定されている。
【0144】
ステップS53において、車線変更警告動作制御部16は、ステップS52における車線変更警告判定部96からの指示に応じて、警告音、警告を促す音声指示、または、警告を促すように座席を振動させるなどすることにより、車線変更を実施すると危険であることを警告する。
【0145】
一方、ステップS49において、例えば、速度v2が、所定の速度Vaよりも高速ではないと判定した場合、ステップS54において、車線変更警告判定部96は、速度判定部96aを制御して、供給されてきた速度v2が、所定の速度Vb(<Va)よりも高速であるか否かを判定させる。例えば、速度v2が、所定の速度Vbよりも高速であると判定された場合、処理は、ステップS55に進む。
【0146】
ステップS55において、車線変更警告判定部96は、範囲判定部96bを制御して、速度v2(>Vb)に応じた警告範囲W2を速度対範囲テーブル96dより読み出させる。
【0147】
ステップS56において、車線変更警告判定部96は、範囲判定部96bを制御して、検出された物体の距離D2と角度θ2とに基づいて、物体の存在する位置を求め、警告範囲W2内に存在するのか否かを判定させる。ステップS56において、例えば、図9で示されるように、レーダ装置1が車両C1の後部に搭載され、点線で示される警告範囲W2内に車両C12が存在するような場合、車線変更が危険であるものとみなし、ステップS52において、車線変更警告判定部96は、警告指示部96fを制御して、車線変更警告動作制御部16に対して、車線変更警告動作を実施するように指示させる。尚、図9における警告範囲W2は、車両C1が図中の車線L2を下方向に走行中であるとき、車両C1の運転席横付近の位置(目視により車線変更しようとする車線に存在する車両を確認できる位置)から後方に距離N2(<N1)の範囲である。尚、図示しないが、当然のことながら、同様に、警告範囲は、車線L3側にも同様に設定されている。
【0148】
また、ステップS51において、物体の位置が警告範囲W1内ではないと判定された場合、ステップS54において、速度v2が速度Vbよりも高速ではないと判定された場合、または、ステップS56において、物体の位置が警告範囲W2内ではないと判定された場合、いずれにおいても、ステップS52,S53の処理がスキップされて、処理は、ステップS57に進む。
【0149】
すなわち、範囲判定部96bは、物体として検出された車両の速度v2の大きさに応じて、予め速度対範囲テーブル96dに格納されている警告範囲を切り替える。このため、検出された車両の相対速度v2が低速であれば、車両C1に対して比較的近い範囲からなる警告範囲W2を設定することで、ある程度接近してから警告を発するようにさせることができ、逆に、検出された車両の相対速度v2が高速であれば、車両C1に対して比較的遠い範囲を含む警告範囲W1を設定することで、ある程度離れた位置からでも警告を発するようにさせることができる。このように、警告範囲を速度に応じて設定することにより、不要な警告の発報を抑制し、相対速度に応じ適切な車線変更の警告を発することが可能となる。
【0150】
尚、以上においては、警告範囲は、速度v2に対する閾値により2つの警告範囲が設定される例について説明してきたが、それ以上の閾値を設けて、さらに多く警告範囲を設定するようにしても良い。また、予め速度対範囲テーブル96dに、速度に対応した警告範囲の情報が記憶される例について説明してきたが、例えば、速度に応じて、演算により警告範囲をシームレスに設定できるようにしても良い。
【0151】
ステップS57において、車線変更警告判定部96は、データ記憶部96cを参照して、所定時間だけ直前までの間に車両(物体)が検出されていたか否かを判定する。ステップS57において、例えば、データ記憶部96cに記憶されている物体の速度v2、距離D2、および角度θ2の情報のうち、時刻として直近の所定時間内に存在するデータが存在する場合、ステップS58において、車線変更警告判定部96は、推定部96eを制御して、データ記憶部96cに記憶されている、所定時間内の物体の速度v2、距離D2、および角度θ2の情報に基づいて、今現在の物体の位置を算出することにより位置を推定させる。
【0152】
ステップS59において、車線変更警告判定部96は、範囲判定部96bを制御して、推定部96eにより算出された物体の存在する位置の情報に基づいて、警告範囲内に物体が存在するか否かを判定させる。尚、このステップS59の処理については、上述したステップS49乃至S51,S54乃至S56の処理と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0153】
ステップS59において、推定された位置から警告範囲内に物体が存在すると判定された場合、車線変更警告判定部96は、ブラインドスポットタイミング判定部96gを制御して、検出物体がブラインドスポットに入ってから所定時間が経過していないか否かを判定させる。ブラインドスポットとは、レーダ装置1では物体の存在を検出することができない範囲であって、警告範囲を含む範囲である。例えば、図9における車両C13が、車線L1を車両C1よりも高速で走行しながら移動し、車両C12の位置を経てさらに進むと、やがてレーダ装置1で検出できない状態となり(範囲Z2−1から脱した状態となり)、車両C11で示されるように、一点鎖線で囲まれたブラインドスポットB1内に到達する。ブラインドスポットタイミング判定部96gは、データ記憶部96cに記憶されている時刻情報に対応付けて記憶されている速度v2、距離D2、および角度θ2から検出物体がブラインドスポットに入ったと思われるタイミング(最後に検出された時刻情報)を検索し、検索されたブラインドスポットに入ったと思われるタイミングから所定の時間内であるか否かを判定する。
【0154】
ステップS60において、検出物体がブラインドスポットに入ってから所定時間が経過していないと判定された場合、ブラインドスポット内の推定された位置に検出物体が存在するものとみなし、ステップS61において、車線変更警告判定部96は、警告指示部96fを制御して、車線変更警告動作制御部16に対して、車線変更警告動作を実施するように指示させる。
【0155】
ステップS62において、車線変更警告動作制御部16は、ステップS61における車線変更警告判定部96からの指示に応じて、警告音、警告を促す音声指示、または、警告を促すように座席を振動させるなどすることにより、車線変更を実施すると危険であることを警告する。
【0156】
一方、ステップS59において、推定された位置から警告範囲内に物体が存在しないと判定された場合、ステップS60乃至S62の処理がスキップされて、処理は、ステップS41に戻る。
【0157】
また、ステップS60において、ブラインドスポットに入ってから所定時間が経過していると判定された場合、直前まで検出されていた物体が、移動してブラインドスポット内から外れて、警告範囲内に存在しないものとみなし、ステップS61,S62の処理がスキップされて、処理は、ステップS41に戻る。
【0158】
尚、ステップS60の処理における検出物体がブラインドスポットに入ってからの経過時間については、速度v2に応じた所定時間との比較により、物体がブラインドスポット内に存在するか否かを判定するようにしてもよく、このようにすることで、低速で接近してきた車両については、ブラインドスポット内における考慮時間を長くし、高速で接近してきた車両については、ブラインドスポット内における考慮時間を短くできるので、ブラインドスポットを脱するまでの時間を適正に考慮して、必要とされる警告のみを実施することが可能となる。
【0159】
以上の処理により、検出物体が、受信部12により受信される受信信号では検出できないブラインドスポットに入るようなことがあっても、時刻情報に対応付けて記憶されている速度v2、距離D2、および角度θ2に基づいて、位置を推定し、推定された位置に基づいて警告範囲内であるか否かを判定することで、車線変更により生じる可能性の高い危険に対して警告することが可能となる。
【0160】
結果として、物体が直接検出できる場合には、検出結果から取得される物体の位置と警告範囲との比較により車線変更の危険を認識することができ、物体が直接検出でない場合には、過去の検出結果から推定される物体の位置と警告範囲との比較により車線変更の危険を認識することができるので、ブラインドスポットをカバーするように送信信号を送信するためのアンテナを特に設ける必要がなくなるため、コストを低減することが可能になると共に、レーダ装置全体として、適切に車線変更の危険を警告することが可能となる。
【0161】
尚、以上の例においては、警告範囲の設定については、速度v2に対応して設定される例について説明してきたが、例えば、ブラインドスポット内であるか否かに対応付けて警告範囲を設定するようにしても良く、このようにすることで、車線変更を警告する際、実際に物体の存在を検出した位置に基づいて車線変更の警告をしているのか、または、実際に物体の存在を検出していないが、過去の検出結果を用いて推定された位置に基づいて車線変更の警告をしているのかを運転者に提示することができるので、運転者は、車線変更の警告の根拠を認識した上で、車線変更の警告を受けることが可能となる。具体的な提示方法としては、例えば、ドアミラーの付け根などに運転者からのみ視認できる角度で点滅灯を設けて、車線変更の警告時に発光させるような装置を用いる場合、実際に物体の存在を検出しているときの警告は、赤色のランプを点灯させ、実際に物体の存在は検出されていないが過去の検出結果に基づいた推定による警告は、黄色のランプを点灯させるといったものとしてもよい。
【0162】
また、当然のことながらブラインドスポットの有無とは無関係に警告範囲を設定するようにしても良く、このようにすることで、ブラインドスポットの範囲とは無関係に、速度v2で適切な警告範囲を設けることが可能となるので、車線変更時の危険を適切に警告することが可能となる。
【0163】
さらに、以上においては、検出された物体の速度の算出にあたり、ドップラ周波数fd2を用いる例について説明してきたが、周波数f1,f2との周波数差は数MHzであるため、ドップラ周波数fd1を用いて求めるようにしても略同一の速度を求めることができる。また、同様に、以上においては、距離の計算に当たり、fd1和信号およびfd2和信号の位相差を用いる例について説明してきたが、fd1差信号およびfd2差信号の位相差を用いるようにしても良く、例えば、いずれも計測できる構成とし、fd1和信号およびfd2和信号の信号品質と、fd1差信号およびfd2差信号の信号品質とを比較した上で、信号品質の高いものを用いて距離を計算するようにし、精度を向上させるようにしても良い。さらに、同様に、以上においては、角度の計算に当たり、fd1和信号とfd1差信号との比率により求める例について説明してきたが、fd2和信号とfd2差信号との比率により求めるようにしてもよく、さらには、fd1和信号およびfd1差信号の信号品質と、fd2和信号およびfd2差信号の信号品質とを比較し、信号品質の高いものを用いて角度を計算するようにし、精度を向上させるようにしても良い。
【0164】
結果として、衝突予備動作を実行させる、いわゆるプリクラッシュ安全装置と、車線変更警告動作を実行させる、いわゆる車線変更支援装置とを共用したレーダ装置を実現することが可能となるので、両機能による安全性を確保すると共に、装置のコストの低減と、小型化を実現することが可能になる。
【0165】
以上の如く、本発明によれば、プリクラッシュ安全装置用のレーダと、車線変更支援装置用のレーダとを共通で使用し、コストの低減を図ることが可能となる。
【0166】
ところで、上述した一連の監視処理は、ハードウェアにより実行させることもできるが、ソフトウェアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、記録媒体からインストールされる。
【0167】
図10は、汎用のパーソナルコンピュータの構成例を示している。このパーソナルコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)1001を内蔵している。CPU1001にはバス1004を介して、入出力インタフェース1005が接続されている。バス1004には、ROM(Read Only Memory)1002およびRAM(Random Access Memory)1003が接続されている。
【0168】
入出力インタフェース1005には、ユーザが操作コマンドを入力するキーボード、マウスなどの入力デバイスよりなる入力部1006、処理操作画面や処理結果の画像を表示デバイスに出力する出力部1007、プログラムや各種データを格納するハードディスクドライブなどよりなる記憶部1008、LAN(Local Area Network)アダプタなどよりなり、インターネットに代表されるネットワークを介した通信処理を実行する通信部1009が接続されている。また、磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini Disc)を含む)、もしくは半導体メモリなどのリムーバブルメディア1011に対してデータを読み書きするドライブ1010が接続されている。
【0169】
CPU1001は、ROM1002に記憶されているプログラム、または磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、もしくは半導体メモリ等のリムーバブルメディア1011から読み出されて記憶部1008にインストールされ、記憶部1008からRAM1003にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM1003にはまた、CPU1001が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0170】
尚、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理は、もちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1】本発明を適用したレーダ装置の一実施の形態の構成を示す図である。
【図2】図1の送信部により照射される電波の強度分布である。
【図3】計測処理を説明するフローチャートである。
【図4】計測処理を説明する図である。
【図5】振分部の動作を説明する図である。
【図6】受信部におけるアンテナの経路差を説明する図である。
【図7】衝突予備動作用信号処理を説明するフローチャートである。
【図8】車線変更警告用信号処理を説明するフローチャートである。
【図9】車線変更警告用信号処理を説明する図である。
【図10】汎用のパーソナルコンピュータの構成例を説明する図である。
【符号の説明】
【0172】
1 レーダ装置
11 送信部
12 受信部
13 衝突予備動作用信号処理部
14 衝突予備動作制御部
15 車線変更警告用信号処理部
16 車線変更警告動作制御部
36 アンテナ
51−1,51−2 アンテナ
71−1乃至71−3 FFT
72 衝突判定用FFTタイミング制御部
73 ドップラ周波数算出部
74 距離算出部
75 角度算出部
76 衝突判定部
91−1乃至91−3 FFT
92 車線変更警告用FFTタイミング制御部
93 ドップラ周波数算出部
94 距離算出部
95 角度算出部
96 車線変更警告判定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を検出する検出装置において、
第1の方向であって、第1の距離近傍までの範囲からなる第1の範囲と、前記第1の方向とは異なる第2の方向であって、前記第1の距離よりも近距離の第2の距離近傍までの範囲からなる第2の範囲とを含む範囲に電波を照射するように構成され、前記電波を照射することにより送信信号を送信する送信手段と、
前記送信手段により送信された送信信号としての電波のうち、反射されてくる電波を受信し、受信した前記電波より受信信号を生成する受信手段と、
前記受信手段により生成された受信信号を、第1の所定時間の間でサンプリングすることにより、物体を検出する第1の検出手段と、
前記受信手段により生成された受信信号を、前記第1の所定時間よりも長い第2の所定時間の間でサンプリングすることにより、前記物体を検出する第2の検出手段と
を含む検出装置。
【請求項2】
前記第1の検出手段は、
検出された前記物体の速度を、第1の速度として検出する第1の速度検出手段と、
検出された前記物体の存在する角度を、第1の角度として検出する第1の角度検出手段と、
検出された前記物体の存在する距離を、第1の距離として検出する第1の距離検出手段とを含み、
前記第2の検出手段は、
検出された前記物体の速度を、第2の速度として検出する第2の速度検出手段と、
検出された前記物体の存在する角度を、第2の角度として検出する第2の角度検出手段と、
検出された前記物体の存在する距離を、第2の距離として検出する第2の距離検出手段とを含む
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記第1の速度が、第1の所定速度よりも高速で、かつ、前記第1の距離および前記第1の角度に基づいた前記物体の位置が、所定範囲であるとき、衝突予備動作を実行する衝突予備動作実行手段を含む
請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記第2の速度が、第2の所定速度よりも高速で、かつ、前記第2の距離および前記第2の角度に基づいた前記物体の位置が、前記第2の所定速度で設定される第1の警告範囲であるとき、警告を発する警告手段を含む
請求項3に記載の検出装置。
【請求項5】
前記警告手段は、
前記第2の速度が、前記第2の所定速度よりも高速の、第3の所定速度よりも高速で、かつ、前記第2の距離および前記第2の角度に基づいた前記物体の位置が、前記第3の所定速度で設定される、前記第1の警告範囲よりも遠い範囲を含む、第2の警告範囲であるとき、警告を発する
請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記第2の速度、前記第2の角度、および前記第2の距離を記憶する記憶手段と、
前記第2の検出手段により前記第2の範囲に存在する物体が検出されていた状態から、前記物体を検出しない状態となった場合、前記記憶手段に記憶されている前記第2の速度、前記第2の角度、および前記第2の距離の情報に基づいて、前記物体の位置を推定する推定手段とを含み、
前記推定手段により推定される物体の位置が、前記第1の警告範囲、または前記第2の警告範囲である場合、前記警告手段は、警告を発する
請求項5に記載の検出装置。
【請求項7】
前記推定手段により推定される物体の位置が、前記第1の警告範囲、または第2の警告範囲である場合、前記第2の検出手段により前記第2の範囲に接近する物体が検出されていた状態から、検出しない状態となったタイミングから所定時間が経過していないとき、前記警告手段は、警告を発する
請求項6に記載の検出装置。
【請求項8】
前記送信手段は、2種類の周波数のCW(Continuous Wave)からなる電波を交互に送信し、
前記受信手段により生成された、前記2種類の周波数のCWの電波に対応する受信信号の、それぞれの和信号および差信号を、前記第1の検出手段、および、前記第2の検出手段に振り分ける振分手段をさらに含む
請求項1に記載の検出装置。
【請求項9】
物体を検出する検出装置の検出方法において、
第1の方向であって、第1の距離近傍までの範囲からなる第1の範囲と、前記第1の方向とは異なる第2の方向であって、前記第1の距離よりも近距離の第2の距離近傍までの範囲からなる第2の範囲とを含む範囲に電波を照射するように構成され、前記電波を照射することにより送信信号を送信する送信ステップと、
前記送信ステップの処理により送信された送信信号としての電波のうち、反射されてくる電波を受信し、受信した前記電波より受信信号を生成する受信ステップと、
前記受信ステップの処理により生成された受信信号を、第1の所定時間の間でサンプリングすることにより、物体を検出する第1の検出ステップと、
前記受信ステップの処理により生成された受信信号を、前記第1の所定時間よりも長い第2の所定時間の間でサンプリングすることにより、前記物体を検出する第2の検出ステップと
を含む検出方法。
【請求項10】
物体を検出する検出装置を制御するコンピュータに、
第1の方向であって、第1の距離近傍までの範囲からなる第1の範囲と、前記第1の方向とは異なる第2の方向であって、前記第1の距離よりも近距離の第2の距離近傍までの範囲からなる第2の範囲とを含む範囲に電波を照射するように構成され、前記電波を照射することにより送信信号を送信する送信ステップと、
前記送信ステップの処理により送信された送信信号としての電波のうち、反射されてくる電波を受信し、受信した前記電波より受信信号を生成する受信ステップと、
前記受信ステップの処理により生成された受信信号を、第1の所定時間の間でサンプリングすることにより、物体を検出する第1の検出ステップと、
前記受信ステップの処理により生成された受信信号を、前記第1の所定時間よりも長い第2の所定時間の間でサンプリングすることにより、前記物体を検出する第2の検出ステップと
を含む処理を実行させるプログラム。
【請求項1】
物体を検出する検出装置において、
第1の方向であって、第1の距離近傍までの範囲からなる第1の範囲と、前記第1の方向とは異なる第2の方向であって、前記第1の距離よりも近距離の第2の距離近傍までの範囲からなる第2の範囲とを含む範囲に電波を照射するように構成され、前記電波を照射することにより送信信号を送信する送信手段と、
前記送信手段により送信された送信信号としての電波のうち、反射されてくる電波を受信し、受信した前記電波より受信信号を生成する受信手段と、
前記受信手段により生成された受信信号を、第1の所定時間の間でサンプリングすることにより、物体を検出する第1の検出手段と、
前記受信手段により生成された受信信号を、前記第1の所定時間よりも長い第2の所定時間の間でサンプリングすることにより、前記物体を検出する第2の検出手段と
を含む検出装置。
【請求項2】
前記第1の検出手段は、
検出された前記物体の速度を、第1の速度として検出する第1の速度検出手段と、
検出された前記物体の存在する角度を、第1の角度として検出する第1の角度検出手段と、
検出された前記物体の存在する距離を、第1の距離として検出する第1の距離検出手段とを含み、
前記第2の検出手段は、
検出された前記物体の速度を、第2の速度として検出する第2の速度検出手段と、
検出された前記物体の存在する角度を、第2の角度として検出する第2の角度検出手段と、
検出された前記物体の存在する距離を、第2の距離として検出する第2の距離検出手段とを含む
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記第1の速度が、第1の所定速度よりも高速で、かつ、前記第1の距離および前記第1の角度に基づいた前記物体の位置が、所定範囲であるとき、衝突予備動作を実行する衝突予備動作実行手段を含む
請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記第2の速度が、第2の所定速度よりも高速で、かつ、前記第2の距離および前記第2の角度に基づいた前記物体の位置が、前記第2の所定速度で設定される第1の警告範囲であるとき、警告を発する警告手段を含む
請求項3に記載の検出装置。
【請求項5】
前記警告手段は、
前記第2の速度が、前記第2の所定速度よりも高速の、第3の所定速度よりも高速で、かつ、前記第2の距離および前記第2の角度に基づいた前記物体の位置が、前記第3の所定速度で設定される、前記第1の警告範囲よりも遠い範囲を含む、第2の警告範囲であるとき、警告を発する
請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記第2の速度、前記第2の角度、および前記第2の距離を記憶する記憶手段と、
前記第2の検出手段により前記第2の範囲に存在する物体が検出されていた状態から、前記物体を検出しない状態となった場合、前記記憶手段に記憶されている前記第2の速度、前記第2の角度、および前記第2の距離の情報に基づいて、前記物体の位置を推定する推定手段とを含み、
前記推定手段により推定される物体の位置が、前記第1の警告範囲、または前記第2の警告範囲である場合、前記警告手段は、警告を発する
請求項5に記載の検出装置。
【請求項7】
前記推定手段により推定される物体の位置が、前記第1の警告範囲、または第2の警告範囲である場合、前記第2の検出手段により前記第2の範囲に接近する物体が検出されていた状態から、検出しない状態となったタイミングから所定時間が経過していないとき、前記警告手段は、警告を発する
請求項6に記載の検出装置。
【請求項8】
前記送信手段は、2種類の周波数のCW(Continuous Wave)からなる電波を交互に送信し、
前記受信手段により生成された、前記2種類の周波数のCWの電波に対応する受信信号の、それぞれの和信号および差信号を、前記第1の検出手段、および、前記第2の検出手段に振り分ける振分手段をさらに含む
請求項1に記載の検出装置。
【請求項9】
物体を検出する検出装置の検出方法において、
第1の方向であって、第1の距離近傍までの範囲からなる第1の範囲と、前記第1の方向とは異なる第2の方向であって、前記第1の距離よりも近距離の第2の距離近傍までの範囲からなる第2の範囲とを含む範囲に電波を照射するように構成され、前記電波を照射することにより送信信号を送信する送信ステップと、
前記送信ステップの処理により送信された送信信号としての電波のうち、反射されてくる電波を受信し、受信した前記電波より受信信号を生成する受信ステップと、
前記受信ステップの処理により生成された受信信号を、第1の所定時間の間でサンプリングすることにより、物体を検出する第1の検出ステップと、
前記受信ステップの処理により生成された受信信号を、前記第1の所定時間よりも長い第2の所定時間の間でサンプリングすることにより、前記物体を検出する第2の検出ステップと
を含む検出方法。
【請求項10】
物体を検出する検出装置を制御するコンピュータに、
第1の方向であって、第1の距離近傍までの範囲からなる第1の範囲と、前記第1の方向とは異なる第2の方向であって、前記第1の距離よりも近距離の第2の距離近傍までの範囲からなる第2の範囲とを含む範囲に電波を照射するように構成され、前記電波を照射することにより送信信号を送信する送信ステップと、
前記送信ステップの処理により送信された送信信号としての電波のうち、反射されてくる電波を受信し、受信した前記電波より受信信号を生成する受信ステップと、
前記受信ステップの処理により生成された受信信号を、第1の所定時間の間でサンプリングすることにより、物体を検出する第1の検出ステップと、
前記受信ステップの処理により生成された受信信号を、前記第1の所定時間よりも長い第2の所定時間の間でサンプリングすることにより、前記物体を検出する第2の検出ステップと
を含む処理を実行させるプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2009−265029(P2009−265029A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−117604(P2008−117604)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
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