説明

検査装置

【課題】コストを抑制しながら検査精度を向上させる。
【解決手段】スコープ本体21のロッド部材23には照明ユニット25が設けられ、スコープ本体21の先端部28には反射板27が設けられる。また、照明ユニット25と反射板27との間に位置する挿入軸26には受光窓31が形成される。検査時には、受光窓31が隙間Xに対向するまで、吸排気ポート12,13にスコープ本体21の先端部28が挿入される。そして、照明ユニット25からスコープ本体21の先端部28に向けて光が照射され、この光は反射板27を介して吸排気ポート12,13のポート内壁面33に照射される。このように、簡単な構成によって吸排気ポート12,13の内部からポート内壁面33を照らすことができ、コストを抑制しながら検査精度を高めることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸排気ポートの内壁面に現れる取付凹部とバルブシートとの隙間を検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンのシリンダヘッドには、燃焼室に開口する吸気ポートおよび排気ポート(以下、吸排気ポートという)が形成されている。この吸排気ポートの開口端に形成される取付凹部には、吸気バルブや排気バルブに接するバルブシートが圧入されている。このように圧入されるバルブシートからの圧縮漏れを防ぐためには、取付凹部に対するバルブシートの圧入状態を管理することが重要となっている。すなわち、バルブシートと取付凹部との隙間の幅寸法を検査することが必要であるが、検査員が隙間ゲージ等を用いて隙間の幅寸法を検査することは、検査コストを増大させるとともに検査結果の安定性を損なう要因であった。そこで、吸排気ポートの内壁面を撮像して画像データを得るとともに、この画像データから隙間の幅寸法について判定する検査装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−256162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載された検査装置においては、撮像時に吸排気ポートの内壁面を明るく照らすため、吸排気ポート内に挿入される検査ヘッドに対して複数の発光ダイオードを装着している。しかしながら、小型化が要求される検査ヘッドに対して発光ダイオード等の光源を搭載することは、検査装置の高コスト化を招く要因となっていた。しかも、特許文献1の検査装置においては、吸排気ポートの内壁面に対して垂直に光を照射する構造であることから、照射された光が隙間の奥まで直に入り込み、内壁面だけでなく隙間も明るく撮像してしまうおそれがある。このように、吸排気ポートの内壁面に対して垂直に光を照射することは、画像データにおける内壁面と隙間との境界を不鮮明にするため、隙間の誤検知を招いて検査精度を低下させてしまう要因となっていた。
【0005】
本発明の目的は、吸排気ポートの内壁面に現れる取付凹部とバルブシートとの隙間を検査する検査装置において、コストを抑制しながら検査精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の検査装置は、シリンダヘッドの吸排気ポートに端部が挿入されるスコープ本体を備え、前記吸排気ポートの内壁面に現れる取付凹部とバルブシートとの隙間を検査する検査装置であって、前記スコープ本体の基部に設けられ、前記スコープ本体の端部に向けて光を照射する投光部と、前記スコープ本体の端部に設けられ、前記投光部からの光を径方向外方に反射する反射部と、前記スコープ本体の基部と端部との間に設けられ、径方向外方からの光を取り込む受光部とを有し、前記スコープ本体の端部が前記吸排気ポートに挿入される検査時には、前記投光部からの光を前記反射部によって反射させ、前記吸排気ポートの内部から前記内壁面を照らすことを特徴とする。
【0007】
本発明の検査装置は、前記反射部からの反射光は、前記スコープ本体の中心軸に対して傾斜しながら径方向外方に照射されることを特徴とする。
【0008】
本発明の検査装置は、前記反射部からの反射光は、前記内壁面に対して斜めに照射されることを特徴とする。
【0009】
本発明の検査装置は、前記反射部の反射面は、前記スコープ本体の先端にかけて広がるテーパ面状に形成されることを特徴とする。
【0010】
本発明の検査装置は、前記バルブシートの中心軸を回転軸として前記スコープ本体を回転させる駆動手段を有し、前記受光部と前記内壁面との距離を一定に保持しながら前記受光部を前記内壁面の複数箇所に対向させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、吸排気ポートに挿入されるスコープ本体の端部に、投光部からの光を反射する反射部を設けるようにしたので、反射部によって吸排気ポートの内部から内壁面を照らすことが可能となる。このように、反射部を用いて内壁面を明るく照らすことができるため、コストを抑制しながら検査精度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)および(b)はシリンダヘッドの構造を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施の形態である検査装置による検査状況を示す説明図である。
【図3】シリンダヘッドおよびスコープ本体を示す斜視図である。
【図4】検査装置の構成を示す説明図である。
【図5】検査装置による検査状況を示す説明図である。
【図6】図5の矢印A方向から排気ポートの検査状況を示す説明図である。
【図7】吸気ポートの検査状況を示す説明図である。
【図8】(a)および(b)は本発明の他の実施の形態である検査装置が備えるスコープ本体の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1(a)および(b)はシリンダヘッド10の構造を示す概略図である。図1(a)および(b)に示すように、シリンダヘッド10には燃焼室11に開口する吸気ポート12および排気ポート13が形成されている。なお、以下の説明においては、吸気ポート12および排気ポート13を、まとめて吸排気ポート12,13と記載する。図1(a)に示すように、吸排気ポート12,13の開口端には取付凹部14が形成されており、図1(b)に示すように、取付凹部14にはバルブシート15が圧入されている。このバルブシート15の圧入不良は圧縮漏れ等を招く要因であることから、バルブシート15の下端面15aと取付凹部14の座面14aとの隙間Xを検査することにより、バルブシート15の圧入状態が適切となるように管理されている。
【0014】
図2は本発明の一実施の形態である検査装置20による検査状況を示す説明図である。また、図3はシリンダヘッド10およびスコープ本体21を示す斜視図である。さらに、図4は検査装置20の構成を示す説明図である。図2および図3に示すように、被検査物であるシリンダヘッド10が所定の検査ステージに搬送されると、スコープ本体21を保持する駆動手段としてのロボットアーム22は、スコープ本体21をシリンダヘッド10の吸排気ポート12,13に向けて移動させる。図3および図4に示すように、検査装置20を構成するスコープ本体21は、基部として中空構造のロッド部材23を有している。このロッド部材23には、複数の発光ダイオード24を備えた投光部としての照明ユニット25が設けられている。また、ロッド部材23の端部には中空構造の挿入軸26が設けられており、この挿入軸26の先端には反射部としての反射板27が設けられている。このように、スコープ本体21のロッド部材(基部)23には照明ユニット25が設けられており、スコープ本体21の先端部(端部)28には反射板27が設けられている。
【0015】
また、図4に示すように、ロッド部材23のロボットアーム22側の端部には、CCDイメージセンサ等の撮像デバイスによって構成されるカメラユニット30が取り付けられている。また、照明ユニット25と反射板27との間に位置する挿入軸26には、径方向外方からの光を取り込む受光部としての受光窓31が形成されている。さらに、挿入軸26の内部には、受光窓31から取り込まれた光をカメラユニット30に向けて反射するミラー32が設置されている。なお、受光窓31に取り込まれる径方向外方からの光とは、スコープ本体21の外側から中心に向かう光を意味している。
【0016】
このスコープ本体21を用いて隙間Xを検査する際には、受光窓31が隙間Xに対向するまで、吸排気ポート12,13内にスコープ本体21の先端部28が挿入される。これにより、吸排気ポート12,13の内壁面33(以下、ポート内壁面という)からの反射光は、矢印αで示すように受光窓31から取り込まれた後に、矢印βで示すようにミラー32で反射してカメラユニット30に導かれる。そして、カメラユニット30によって撮像されたポート内壁面33の画像データは、マイクロコンピュータ等によって構成される画像解析装置34に送信されることになる。
【0017】
画像解析装置34においては、画像データのノイズ除去や画質調整等が施された後に、所定値を境に画像データの明暗を「0」と「1」に分ける2値化処理が施される。すなわち、2値化処理が施された画像データにおいては、明るいポート内壁面33と暗い隙間Xとが、「0」と「1」で識別される。そして、画像解析装置34は、2値化処理を施した画像データを用い、隙間Xの幅寸法Wが許容範囲に収まるか否かを判定することになる。このような検査用の画像データを精度良く得るためには、ポート内壁面33を撮像する段階において、ポート内壁面33を明るく照らす必要がある。さらに、隙間Xに対して影を作りつつ、ポート内壁面33に対して、付着物、バリ、欠け等による影を作らないように光を照射することが重要となっている。
【0018】
ここで、図5は検査装置20による検査状況を示す説明図である。図5に示すように、ポート内壁面33を撮像する際には、受光窓31が隙間Xに対向するまで、吸排気ポート12,13内にスコープ本体21の先端部28が挿入される。そして、照明ユニット25からスコープ本体21の先端部28に向けて光が照射され、この光が反射板27によって径方向外方(スコープ本体21の中心から外側)に反射されることになる。これにより、吸排気ポート12,13の内部からポート内壁面33を明るく照らすことができるため、ポート内壁面33を良好に撮像することができ、隙間Xの検査精度を高めることが可能となる。また、小型化が要求されるスコープ本体21の先端部28は、反射板27を備えるという簡単な構造であることから、スコープ本体21の低コスト化を達成することが可能となる。さらに、照明ユニット25が吸排気ポート12,13の外部に配置されることから、照明ユニット25に対して過度な小型化が要求されることはなく、この点からもスコープ本体21の低コスト化を達成することが可能となる。
【0019】
しかも、反射板27の反射面27aはスコープ本体21の先端にかけて広がるテーパ面状に形成されている。これにより、反射板27からの反射光は、図5に破線の矢印で示すように、スコープ本体21の中心軸CLに対して傾斜しながら径方向外方に照射されることになる。すなわち、反射板27からの反射光は、ポート内壁面33に対して垂直方向に照射されるのではなく、図5に破線の矢印で示すように、ポート内壁面33に対して斜めに照射されることになる。このように、ポート内壁面33に対して斜めに光を照射することにより、隙間Xの奥まで光が直に入り込むことが無く、隙間Xに影を付けることが可能となる。すなわち、ポート内壁面33を明るく照らしつつも、隙間Xに影を付けることができるため、画像データから精度良く隙間Xを検出することが可能となり、隙間Xの検査精度を高めることが可能となる。
【0020】
さらに、受光窓31に対向するポート内壁面33は、反射板27によって吸排気ポート12,13の内部から照らされるだけでなく、照明ユニット25によって吸排気ポート12,13の外部からも照らされている。このように、ポート内壁面33に対して様々な角度から光が照射されるため、ポート内壁面33から付着物やバリ等による影を排除することができ、検査用の画像データを精度良く得ることが可能となる。
【0021】
続いて、スコープ本体21の回転動作について説明する。ここで、図6は図5の矢印A方向から排気ポート13の検査状況を示す説明図である。図6に示すように、ロボットアーム22は、ポート内壁面33にスコープ本体21の焦点を合わせるため、バルブシート15の中心軸C1とスコープ本体21の中心軸CLとが一致するように、排気ポート13にスコープ本体21の先端部28を挿入する。すなわち、図示するスコープ本体21は、ポート内壁面33と受光部31との間隔が距離Lになったときに、ポート内壁面33に対して焦点が合うように設計されている。そして、カメラユニット30によってポート内壁面33が撮像される度に、ロボットアーム22はスコープ本体21を所定角度(例えば90°)で回転させる。すなわち、バルブシート15の中心軸C1を回転軸としてスコープ本体21を回転(自転)させながら、複数箇所のポート内壁面33が撮像されることになる。このように、排気ポート13毎に複数箇所のポート内壁面33を撮像することにより、隙間Xの検査精度を高めることが可能となる。
【0022】
次いで、図7は吸気ポート12の検査状況を示す説明図である。なお、図7においては図6と同様の方向から検査状況を示している。図7に示すように、排気ポート13よりも大径の吸気ポート12を検査する際には、ポート内壁面33に焦点を合わせるため、受光窓31とポート内壁面33との間隔が距離Lになるまで、スコープ本体21をポート内壁面33に向けて移動させる(矢印α)。その後、バルブシート15の中心軸C2を回転軸としてスコープ本体21を回転(公転)させることにより、受光窓31とポート内壁面33との距離Lを一定に保持しながら、複数箇所のポート内壁面33が撮像されることになる。このように、径寸法の異なるバルブシート15の隙間Xを検査する際にも、ポート内壁面33に焦点を合わせ続けることができ、鮮明な画像データを撮像することが可能となる。このように、同一のスコープ本体21を用いて様々な径寸法のバルブシート15の隙間Xを検査することができるため、検査装置20の汎用性を高めて検査コストを大幅に引き下げることが可能となる。なお、同一の検査装置20を用いて仕様の異なるシリンダヘッド10を検査する際には、生産情報やヘッドボルトID等からバルブシート15の径寸法を認識させ、スコープ本体21を適切な経路に沿って移動させることになる。
【0023】
図8(a)および(b)は本発明の他の実施の形態である検査装置が備えるスコープ本体40,41の一部を示す斜視図である。まず、図3の拡大図に示すように、前述した照明ユニット25の発光ダイオード24は、挿入軸26を囲むように全周に渡って配置されているが、照明ユニット25の構造としては図示する構造に限られることはない。適切にポート内壁面33を照らすことが可能であれば、例えば図8(a)に示すように、照明ユニット(投光部)42の発光ダイオード43を部分的に配置しても良い。また、図3の拡大図に示すように、スコープ本体21の先端部28にはテーパ状の反射板27が設けられているが、反射板27としては図示する形状に限られることはない。例えば、図8(b)に示すように、多角錐状に反射板(反射部)44を形成しても良い。また、反射板を全周にわたって設けるのではなく、受光窓31に対応した位置にのみ設置して、スコープ本体21の先端部28の小型化を図っても良い。
【0024】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、前述の説明では、2値化処理を施した画像データを用いて隙間Xを検査しているが、これに限られることはなく、濃淡画像やカラー画像からなる画像データを用いて隙間Xを検査しても良い。また、前述の説明では、照明ユニット25を発光ダイオード24によって構成しているが、他の光源を用いて照明ユニット25を構成しても良い。さらに、図6および図7に示す場合には、吸排気ポート12,13毎に4箇所の画像データを撮像しているが、これに限られることはなく、更に多くの画像データを撮像しても良い。
【符号の説明】
【0025】
10 シリンダヘッド
12 吸気ポート
13 排気ポート
14 取付凹部
15 バルブシート
20 検査装置
21 スコープ本体
22 ロボットアーム(駆動手段)
23 ロッド部材(基部)
25 照明ユニット(投光部)
27 反射板(反射部)
27a 反射面
28 先端部(端部)
31 受光窓(受光部)
33 ポート内壁面(内壁面)
40,41 スコープ本体
42 照明ユニット(投光部)
44 反射板(反射部)
X 隙間
C1,C2 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドの吸排気ポートに端部が挿入されるスコープ本体を備え、前記吸排気ポートの内壁面に現れる取付凹部とバルブシートとの隙間を検査する検査装置であって、
前記スコープ本体の基部に設けられ、前記スコープ本体の端部に向けて光を照射する投光部と、
前記スコープ本体の端部に設けられ、前記投光部からの光を径方向外方に反射する反射部と、
前記スコープ本体の基部と端部との間に設けられ、径方向外方からの光を取り込む受光部とを有し、
前記スコープ本体の端部が前記吸排気ポートに挿入される検査時には、前記投光部からの光を前記反射部によって反射させ、前記吸排気ポートの内部から前記内壁面を照らすことを特徴とする検査装置。
【請求項2】
請求項1記載の検査装置において、
前記反射部からの反射光は、前記スコープ本体の中心軸に対して傾斜しながら径方向外方に照射されることを特徴とする検査装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の検査装置において、
前記反射部からの反射光は、前記内壁面に対して斜めに照射されることを特徴とする検査装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の検査装置において、
前記反射部の反射面は、前記スコープ本体の先端にかけて広がるテーパ面状に形成されることを特徴とする検査装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の検査装置において、
前記バルブシートの中心軸を回転軸として前記スコープ本体を回転させる駆動手段を有し、前記受光部と前記内壁面との距離を一定に保持しながら前記受光部を前記内壁面の複数箇所に対向させることを特徴とする検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−78319(P2012−78319A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226507(P2010−226507)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】