説明

極端紫外光源装置

【課題】EUV光発生チャンバ内に設置されたレーザ光集光光学系の光学素子の劣化を確実に検出して、的確な劣化判定を行えるEUV光源装置を提供する。
【解決手段】このEUV光源装置は、EUV光発生チャンバ2と、ターゲット物質供給部と、EUV光集光ミラー8と、ドライバーレーザ12,13と、ウインドウ6(1)(2)と、コリメートされたレーザ光を反射して集光するEUV光発生チャンバ内に配置された放物面鏡43(1)(2)と、ウインドウと放物面鏡の温度を測定する温度センサ82(1),(2),(3),(4)と、極端紫外光の発生が行われるときに温度センサによって検出されたウインドウ及び光学素子の温度に基づいてウインドウ及び放物面鏡の劣化を判定する処理部80とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等を露光するために用いられる極端紫外光を発生するLPP(laser produced plasma)型EUV(extreme ultra violet:極端紫外)光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴い、光リソグラフィの微細化も急速に進展しており、次世代においては、60nm〜45nmの微細加工、さらには32nm以下の微細加工が要求されるようになっている。そのため、例えば、32nm以下の微細加工に応じるべく、波長13nm程度の極端紫外(EUV)光を発生するEUV光源と縮小投影反射光学系(reduced projection reflective system)とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光源としては、レーザビームをターゲットに照射することによって生成するプラズマを用いたLPP(laser produced plasma)光源と、放電によって生成するプラズマを用いたDPP(discharge produced plasma)光源と、軌道放射光を用いたSR(synchrotron radiation)光源との3種類がある。これらの内でも、LPP光源は、プラズマ密度をかなり大きくできるので黒体輻射に近い極めて高い輝度が得られ、ターゲット材料を選択することにより必要な波長帯のみの発光が可能であり、ほぼ等方的な角度分布を持つ点光源であるので光源の周囲に電極等の構造物がなく、2π〜5π steradという極めて大きな捕集立体角の確保が可能であること等の利点から、100ワット以上のパワーが要求されるEUVリソグラフィ用の光源として有力であると考えられている。
【0004】
図16は、従来のLPP型のEUV光源装置の概要を示す図である。図16に示すように、このEUV光源装置は、ドライバーレーザ101と、EUV光発生チャンバ102と、ターゲット物質供給部103と、レーザ光集光光学系104とを主要な構成要素として構成される。
【0005】
ドライバーレーザ101は、ターゲット物質を励起させるために用いられる駆動用のレーザ光を発生する発振増幅型レーザ装置である。
EUV光発生チャンバ102は、EUV光の生成が行われるチャンバであり、ターゲット物質のプラズマ化を容易にするとともにEUV光の吸収を防止するため、真空ポンプ105によって真空引きされている。また、EUV光発生チャンバ102には、ドライバーレーザ101から発生したレーザ光120をEUV光発生チャンバ102内に通過させるためのウインドウ106が取り付けられている。さらに、EUV光発生チャンバ102の内部には、ターゲット噴射ノズル103aと、ターゲット回収筒107と、EUV光集光ミラー108とが配置されている。
【0006】
ターゲット物質供給部103は、EUV光を発生するために用いられるターゲット物質を、ターゲット物質供給部103の一部であるターゲット噴射ノズル103aを介して、EUV光発生チャンバ102内に供給する。供給されたターゲット物質の内、レーザ光が照射されずに不要となったものは、ターゲット回収筒107によって回収される。
【0007】
レーザ光集光光学系104は、ドライバーレーザ101から出射したレーザ光120をEUV光発生チャンバ102の方向に反射するミラー104aと、ミラー104の位置及び角度(アオリ角)を調整するミラー調整機構104bと、ミラー104aによって反射されたレーザ光120を集光する集光素子104cと、集光素子104cをレーザ光の光軸に沿って移動させる集光素子調整機構104dとを含んでいる。レーザ光集光光学系104によって集光されたレーザ光120は、ウインドウ106、及びEUV光集光ミラー108の中央部に形成された孔を通過して、ターゲット物質の軌道上に達する。このように、レーザ光集光光学系104は、レーザ光120をターゲット物質の軌道上に焦点を形成するように集光する。それにより、ターゲット物質109が励起してプラズマ化し、EUV光121が発生する。
【0008】
EUV光集光ミラー108は、例えば、13.5nmの光を高反射率で反射するMo/Si膜がその表面に形成された凹面鏡であり、発生したEUV光121を反射することによりIF(中間集光点)に集光する。EUV光集光ミラー108によって反射されたEUV光121は、EUV光発生チャンバ102に設けられたゲートバルブ110、及びプラズマから発生した光の内の不要な光(EUV光より波長が短い電磁波(光)、EUV光より波長が長い光(例えば、紫外線、可視光線、赤外線等)を除去して所望のEUV光(例えば、波長13.5nmの光)のみを透過させるフィルタ111を通過する。IF(中間集光点)に集光されたEUV光121は、その後、伝送光学系を介して露光器等へ導かれる。
【0009】
EUV光発生チャンバ102内において発生したプラズマからは大きなエネルギーが輻射されるため、この輻射により、EUV光発生チャンバ102内の部品の温度が上昇してしまう。このような部品の温度上昇を防止する技術が知られている(例えば、下記の特許文献1参照)。
【0010】
特許文献1には、標的材料をプラズマ化し、該プラズマからX線を輻射させるX線源と、該X線源を収容する真空容器とを具備するX線発生装置であって、上記真空容器の内側に、赤外からX線領域の電磁波に対して吸収率が高い材料で形成された内壁が設けられていることを特徴とするX線発生装置が記載されている。このX線発生装置によれば、真空容器の内壁によって反射・散乱される輻射エネルギーのために真空容器内の部品が不必要に加熱されることを防止することができる。
【0011】
ところで、図16に示すEUV光発生チャンバ102内において発生したプラズマは、時間の経過とともに拡散し、その一部が原子やイオンとなって飛散する。この原子やイオンは、デブリとも呼ばれ、EUV光発生チャンバ102の内壁や構造物に照射される。上記のようなプラズマから飛散したデブリや電磁波の照射により、次のような現象が発生し得る。
【0012】
(a)プラズマから飛散した原子が、ウインドウ106のEUV光発生チャンバ102の内部側の面に付着する。このようにしてウインドウ106のEUV光発生チャンバ102の内部側の面に付着した原子がレーザ光120を吸収してしまう。
【0013】
(b)プラズマから飛散したイオンがウインドウ106のEUV光発生チャンバ102の内部側の面に照射され、ウインドウ106のEUV光発生チャンバ102の内部側の面が劣化する(面が荒れて、滑らかでなくなる)。これにより、ウインドウ106がドライバーレーザ101から出射されるレーザ光120を吸収するようになってしまう。
【0014】
(c)プラズマから飛散したイオンがEUV光発生チャンバ102の内壁や構造物に照射される。このスパッタリングによりEUV光発生チャンバ102の内壁や構造物から飛散した原子が、ウインドウ106のEUV光発生チャンバ102の内部側の面に付着する。このようにしてウインドウ106のEUV光発生チャンバ102の内部側の面に付着した原子が、レーザ光120を吸収してしまう。
【0015】
(d)ウインドウ106が、プラズマから発生する短い波長の電磁波(光)を吸収することにより、その材質が劣化する。これにより、ウインドウ106がレーザ光120を吸収するようになってしまう。
【0016】
(e)EUV光源装置の稼動期間が或る程度にまで長くなると、その間のレーザ光120の照射により、ウインドウ106の材質が劣化又は損傷する。これにより、ウインドウ106がレーザ光120を吸収するようになってしまう。
【0017】
上記(a)〜(e)の現象が発生すると、ターゲット物質をプラズマ化するためのエネルギーが低下し、EUV光121の発生効率が低下する。
【0018】
また、ウインドウ106やウインドウ106に付着した原子がレーザ光120を吸収すると、ウインドウ106の温度が上昇して、ウインドウ106の基板(基材)に歪が発生し、集光性が低下する。このような集光性の低下は、EUV光121の発生効率の更なる低下を招く。さらに、ウインドウ106の基板の歪が大きくなると、ひいてはウインドウ106の破損を招く。
【0019】
なお、レーザ光集光光学系104の一部(例えば、レンズ、ミラー等)が、EUV光発生チャンバ102の内部に配置される場合もある。そのような場合には、EUV光発生チャンバ102の内部に配置されたレーザ光集光光学系104の一部においても、上記(a)〜(e)の現象が発生し得る。特に、EUV光発生チャンバ102の内部にレーザ光を反射するミラーが配置されている場合に、そのミラーに上記(a)〜(e)の現象が発生すると、ミラーの反射面の増反射コーティングのレーザ光反射率が低下する。これにより、ターゲット物質をプラズマ化するためのエネルギーが低下し、EUV光121の発生効率が低下する。
【0020】
上記(a)〜(e)のような現象が発生し、ウインドウ106やレーザ光集光光学系104が劣化した場合には、劣化した光学素子を新たな光学素子に交換する必要がある。
しかしながら、レーザ光120はEUV光発生チャンバ102内のプラズマ発生位置(ターゲット物質の軌道上)に集光されるため、ウインドウ106やレーザ光集光光学系104が劣化したか否かを容易に知ることが出来ず、迅速に対応措置を執る(光学素子の交換を行う)ことが出来ないという問題があった。
【0021】
一方、ウインドウ106やレーザ光集光光学系104の劣化の他に、プラズマ発生の不安定化を招き、ひいてはEUV光121の発生効率を変動又は低下させる要因として、レーザ光121の集光(焦点)位置のずれが挙げられる。レーザ光121の集光位置のずれは、レーザ光集光光学系104のアライメントのずれや、ドライバーレーザ101のポインティングのずれ等により発生する。レーザ光集光光学系104のアライメントのずれは、主に、EUV光源装置の稼動に伴い、レーザ光集光光学系104に含まれる光学素子やそのような光学素子をホールドする光学素子ホルダーに熱負荷がかかり、光学素子や光学素子ホルダーが変形することにより生ずる。また、ドライバーレーザ101のポインティングのずれは、主に、EUV光源装置の稼動に伴い、ドライバーレーザ101内の素子や構成部品に熱負荷がかかり、素子や構成部品が変形することにより生ずる。
【0022】
上記のようなレーザ光121の集光位置のずれが発生した場合には、プラズマ発生位置(ターゲット物質の軌道上)における集光スポットサイズや強度分布が適正ではなくなってしまったり、レーザ光121がターゲット物質から逸れてしまうため、プラズマ発生の不安定化を招き、ひいてはEUV光121の発生効率が変動又は低下してしまう。
【0023】
なお、レーザ光121の集光位置のずれは、光学素子の交換を行うことなく、レーザ光集光光学系104のアライメントを再調整することにより修正可能である。それにより、レーザ光121の集光位置を本来あるべき位置(プラズマ発生位置)に戻すことができ、プラズマ発生を安定化させ、ひいてはEUV光121の発生効率を本来の値に戻すことができる。
【0024】
しかしながら、レーザ光120はEUV光発生チャンバ102内(プラズマ発生位置)に集光されるため、レーザ光121の集光位置のずれが生じたか否かを容易に知ることが出来ず、迅速に対応措置を執る(レーザ光集光光学系104のアライメントを再調整する)ことが出来ないという問題があった。
【0025】
そこで、上記の点に鑑み、本願出願人は、既に特許文献2および特許文献3により、EUV光発生チャンバのウインドウ及び/又はレーザ光集光光学系の劣化等によるEUV光の発生効率の低下や変動に迅速に対処することが可能な極端紫外光源装置を開示している。
【0026】
開示した発明の1の観点に係る極端紫外光源装置は、レーザ光を極端紫外光発生チャンバに導入するウインドウに温度センサを設置し、温度センサによって検出されたウインドウの温度に基づいて、ウインドウの劣化を判定する。
本開示発明によれば、EUV光発生チャンバのウインドウの劣化等を容易に検出することができる。これにより、EUV光の発生効率の低下や変動に迅速に対処することが可能となる。
【0027】
また、開示した発明の別の観点に係る極端紫外光源装置は、極端紫外光発生チャンバの外部に設けたレーザ光強度検出器により、極端紫外光の発生が行われないときに、レーザ光集光光学系によって集光された後にターゲット物質に照射されることなく発散して極端紫外光発生チャンバから出射したレーザ光の強度を検出して、極端紫外光の発生が行われないときに、レーザ光強度検出器によって検出されたレーザ光の強度に基づいて、ウインドウ及び/又は光学素子の劣化を判定する。
【0028】
開示した発明のさらに別の観点に係る開示された極端紫外光源装置は、レーザ光強度検出器の代わりにエリアセンサを備え、極端紫外光発生チャンバから出射したレーザ光を再び集光して、エリアセンサで検出したレーザ光の画像に基づいて、ウインドウ及び/又は光学素子の劣化及び/又は歪み、及び/又は、レーザ光集光光学系によって集光されたレーザ光の焦点がプラズマを発生させる位置からずれていることを判定する。
【0029】
図17は、典型的な極端紫外光源装置(以下において、単に「EUV光源装置」とも言う)の概要を示す模式図である。図17に示すように、このEUV光源装置は、ドライバーレーザ201と、EUV光発生チャンバ202と、ターゲット物質供給部203と、レーザ光集光光学系204とを含んでいる。
ドライバーレーザ201は、ターゲット物質を励起させるために用いられる駆動用のレーザ光を発生する発振増幅型レーザ装置である。
【0030】
EUV光発生チャンバ202は、EUV光の生成が行われる真空チャンバである。EUV光発生チャンバ202には、ドライバーレーザ201から発生したレーザ光220をEUV光発生チャンバ202内に通過させるためのウインドウ206が取り付けられている。また、EUV光発生チャンバ202の内部には、ターゲット噴射ノズル203aと、ターゲット回収筒207と、EUV光集光ミラー208とが配置されている。
【0031】
ターゲット物質供給部203は、EUV光を発生するために用いられるターゲット物質を、ターゲット物質供給部203の一部であるターゲット噴射ノズル203aを介して、EUV光発生チャンバ202内に供給する。EUV光源装置がEUV光の発生を行う場合に、ターゲット物質をEUV光発生チャンバ202内に供給し、EUV光源装置がEUV光の発生を行わない場合には、ターゲット物質をEUV光発生チャンバ202内に供給しない。供給されたターゲット物質の内、レーザ光が照射されずに不要となったものは、ターゲット回収筒207によって回収される。
【0032】
レーザ光集光光学系204は、ドライバーレーザ201から出射したレーザ光220を、ターゲット物質の軌道上に焦点を形成するように集光する。それにより、ターゲット物質209が励起してプラズマ化し、EUV光221が発生する。なお、レーザ光集光光学系204は、1つの光学素子(たとえば、1枚の凸レンズ等)で構成することもでき、複数の光学素子で構成することもできる。レーザ光集光光学系204を複数の光学素子で構成する場合には、それらの内のいくつかをEUV光発生チャンバ202内に配置することも可能である。
【0033】
EUV光集光ミラー208は、例えば、13.5nmの光を高反射率で反射するMo/Si膜がその表面に形成された凹面鏡であり、発生したEUV光221を反射することにより集光して伝送光学系に導く。さらに、このEUV光221は、伝送光学系を介して露光器等へ導かれる。なお、図17において、EUV光集光ミラー208は、紙面の手前方向にEUV光221を集光する。
【0034】
図18および図19は、特許文献2に開示された第1の観点に係る極端紫外光源装置のEUV光発生時の様子を示す模式図である。図18は、開示されたEUV光源装置のEUV光発生時における様子を示す模式図であり、図19は、開示されたEUV光源装置のEUV光非発生時における様子を示す模式図である。なお、図18及び図19においては、ターゲット物質供給部203及びターゲット物質回収筒207の図示を省略しており、ターゲット物質は、紙面に垂直に噴射されるものとする。
【0035】
まず、図18を主に参照しながら、開示されたEUV光源装置のEUV光発生時における動作について説明し、その後、図19を主に参照しながら、開示されたEUV光源装置のEUV光非発生時における動作について説明する。
【0036】
図18に示すように、ドライバーレーザ201から図中の右方向に出射されたレーザ光220は、凹レンズ241によって発散され、凸レンズ242によってコリメートされ、ウインドウ206を透過してEUV光発生チャンバ202内に入射する。
【0037】
EUV光発生チャンバ202内には、放物凹面鏡243と、放物凹面鏡243の位置及び角度(アオリ角)を調整する放物凹面鏡調整機構244とが配置されている。
ウインドウ206を透過してEUV光発生チャンバ202内に入射したレーザ光220は、放物凹面鏡243によって、図中の上方に反射され、ターゲット物質の軌道上に集光される。それにより、ターゲット物質が励起してプラズマ化し、EUV光221が発生する。
【0038】
EUV光集光ミラー208は、例えば、13.5nmの光を高反射率で反射するMo/Si膜がその表面に形成された凹面鏡であり、発生したEUV光221を図中の右方向に反射することによりIF(中間集光点)に集光する。EUV光集光ミラー208によって反射されたEUV光221は、EUV光発生チャンバ202に設けられたゲートバルブ210、及びプラズマから発生した光の内の不要な光(EUV光より波長が短い電磁波(光)、EUV光より波長が長い光(例えば、紫外線、可視光線、赤外線等)を除去して所望のEUV光(例えば、波長13.5nmの光)のみを透過させるフィルタ211を通過する。IF(中間集光点)に集光されたEUV光221は、その後、伝送光学系を介して露光器等へ導かれる。
【0039】
このEUV光源装置は、さらに、パージガスをそれぞれ噴出して供給するためのパージガス供給部231、232と、パージガス供給部231から噴出されるパージガスをウインドウ206のEUV光発生チャンバ202の内部側の面に導くためのパージガス導入路233と、パージガス供給部232から噴出されるパージガスを放物凹面鏡243の反射面に導くためのパージガス導入路234とを具備する。
【0040】
パージガスとしては、不活性ガス(例えば、Ar、He、N、Kr等)が望ましい。
なお、EUV光源装置がEUV光の発生を行わない場合には、パージガス供給部231、232が、パージガスをそれぞれ噴出しないこととしても良い。
【0041】
また、EUV光発生チャンバ202の内壁には、ウインドウ206、放物凹面鏡243、及び、放物凹面鏡駆動機構244を囲むパージガスチャンバ250が取り付けられている。パージガスチャンバ250の図中の上方は、先細りの筒状になっており、その先端(図中上方)には、放物凹面鏡243によって反射されたレーザ光220を通過させるための開口部250aが設けられている。
【0042】
さらに、EUV光発生チャンバ202の図中の上方の部分には、ゲートバルブ216が配置されている。ゲートバルブ216は、EUV光源装置がEUV光の発生を行う場合には閉じられ、EUV光源装置がEUV光の発生を行わない場合には開かれる。そのため、EUV光源装置がEUV光の発生を行う場合に、プラズマやEUV光発生チャンバ202の内壁等がプラズマによって削られる(スパッタされる)ことにより飛散した物質やEUV光は、ゲートバルブ216によって遮蔽され、EUV光発生チャンバ202の外に出射することはない。
【0043】
次に、図19を参照しながら、開示されたEUV光源装置のEUV光非発生時における動作について説明する。
【0044】
EUV光源装置がEUV光の発生を行わない場合には、先に説明したように、ターゲット物質供給部203は、ターゲット物質をEUV光発生チャンバ202内に供給せず、また、ゲートバルブ216は、開かれる。そのため、放物凹面鏡243によって集光されたレーザ光は、ターゲット物質を照射することなく、発散しながら、ゲートバルブ216を通過して、EUV光発生チャンバ202から図中の上方に出射する。
【0045】
ゲートバルブ216の図中の上方には、EUV光発生チャンバ202からゲートバルブ216を通過して出射するレーザ光を検出するためのレーザ光検出器261が配置されている。レーザ光検出器261としては、レーザ光に対する耐性の観点から、焦電型(パイロ)センサが好適である。
【0046】
ゲートバルブ216を通過したレーザ光は、レーザ光検出器261に入射し、レーザ光検出器261は、入射したレーザ光の強度を検出する。レーザ光検出器261によって検出されたレーザ光の強度を表す信号又はデータは、ウインドウ206及び/又は放物凹面鏡243が劣化しているか否かを判定するための処理を実行するレーザ光光学系劣化チェック処理部280に送られる。なお、レーザ光光学系劣化チェック処理部280をパーソナルコンピュータ(PC)とプログラムで実現することができる。レーザ光光学系劣化チェック処理部280には、ウインドウ206及び/又は放物凹面鏡243が劣化している場合に、そのことをユーザ(オペレータ)に報知するための警告灯281が接続されている。
【0047】
図20は、レーザ光光学系劣化チェック処理部280が実行する処理を示すフローチャートである。レーザ光光学系劣化チェック処理部280は、EUV光源装置がEUV光の発光を行わない場合に、図20に示す処理を実行する。
【0048】
まず、レーザ光光学系劣化チェック処理部280は、レーザ光の強度Wを表す信号又はデータをレーザ光検出器261から受け取る(ステップS11)。
【0049】
先に説明したように、ウインドウ206に劣化が生じている場合には、レーザ光220がウインドウ206を透過する透過率が低下し、それにより、EUV光発生チャンバ202内に入射するレーザ光の強度が低下する。また、放物凹面鏡243の反射面に劣化が生じている場合には、放物凹面鏡243がレーザ光を反射する反射率が低下し、それにより、ターゲット物質に照射されるレーザ光の強度が低下する。
【0050】
そこで、ステップS12において、レーザ光光学系劣化チェック処理部280は、レーザ光の強度Wが所定の閾値Wth以上であるか否かをチェックし、レーザ光の強度Wが所定の閾値Wth以上である場合には、ウインドウ206及び放物凹面鏡243に劣化が生じていないと判定して処理を終了し、レーザ光の強度Wが所定の閾値Wth以上ではない場合には、ウインドウ206及び/又は放物凹面鏡243に劣化が生じていると判定して、処理をステップS13に移す。なお、レーザ光の強度Wが所定の閾値Wth以上である場合に、処理をステップS11に戻して、レーザ光の強度のチェックを繰り返し実行するようにしても良い。
【0051】
そして、レーザ光光学系劣化チェック処理部280は、レーザ光の強度Wが所定の閾値Wth以上ではない場合、すなわち、ウインドウ206及び/又は放物凹面鏡243に劣化が生じていると判定した場合には、そのことをユーザ(オペレータ)に報知する(ステップS13)。なお、ウインドウ206及び/又は放物凹面鏡243に劣化が生じていることを、警告灯281を点灯させたり点滅させたり点滅パターンを変更させたりすることで報知しても良い。また、ブザー等を鳴らせることで報知しても良いし、LCD等の表示装置に文字や画像を表示させることで報知しても良い。
【0052】
このように、開示されたEUV光源装置によれば、EUV光非発生時において、ウインドウ206及び/又は放物凹面鏡243が劣化していることを容易に検出してユーザ(オペレータ)に報知することができるので、ユーザ(オペレータ)は、ウインドウ206及び/又は放物凹面鏡243を交換しなければならないか否かを適切に把握することができる。これにより、EUV光を安定して発生させることが可能となる。
【0053】
また、EUV光源装置がEUV光の発生を行う場合(図18)にゲートバルブ216が閉じられるので、レーザ光検出器261がプラズマやEUV光発生チャンバ202の内壁等がプラズマによって削られる(スパッタされる)ことにより飛散した物質やEUV光によって破壊されることを防止することができる。
【0054】
開示されたEUV光源装置は、ウインドウ206の温度を検出する温度センサ282を更に含んでいる。温度センサ282としては、EUV光発生チャンバ202内の真空状態及び清浄な状態を維持できるように、例えば、シース型熱電対等を用いることができる。温度センサ282によって検出されたウインドウ206の温度を表す信号又はデータは、レーザ光光学系劣化チェック処理部280に送られる。
図21は、開示されたEUV光源装置のEUV光発生時にレーザ光光学系劣化チェック処理部280が実行する処理を示すフローチャートである。
【0055】
まず、レーザ光光学系劣化チェック処理部280は、ウインドウ206の温度Tを表す信号又はデータを温度センサ282から受け取る(ステップS21)。
【0056】
先に説明したように、ウインドウ206に劣化が生じている場合には、ウインドウ206がレーザ光220を吸収し、それにより、ウインドウ206の温度が上昇する。
【0057】
そこで、ステップS22において、レーザ光光学系劣化チェック処理部280は、ウインドウ206の温度Tが所定の閾値Tth以下であるか否かをチェックし、ウインドウ206の温度Tが所定の閾値Tth以下である場合には、ウインドウ206に劣化が生じていないと判定して、処理をステップS21に戻し、ウインドウ206の温度Tが所定の閾値Tth以下ではない場合には、ウインドウ206に劣化が生じていると判定して、処理をステップS23に移す。
【0058】
そして、レーザ光光学系劣化チェック処理部280は、ウインドウ206の温度Tが所定の閾値Tth以下ではない場合、すなわち、ウインドウ206に劣化が生じていると判定した場合には、そのことをユーザ(オペレータ)に報知する(ステップS23)。なお、ウインドウ206及び/又は放物凹面鏡243に劣化が生じていることを、警告灯281を点灯させたり点滅させたり点滅パターンを変更させたりすることで報知しても良いし、ブザー等を鳴らせることで報知しても良いし、LCD等の表示装置に文字や画像を表示させることで報知しても良い。また、このとき、レーザ光光学系劣化チェック処理部280が、ドライバーレーザ201に動作停止制御信号を出力し、ドライバーレーザ201の動作を停止させるようにしても良い。
【0059】
このように、開示されたEUV光源装置によれば、EUV光発生時において、ウインドウ206に劣化が生じていることを容易に検出してユーザ(オペレータ)に報知することができる。これにより、ウインドウ206に劣化が生じたか否かの判定をより確実なものにすることができる。
【0060】
図22は、開示されたEUV光源装置の別の形態に係るEUV光源装置を示す模式図である。図22は、EUV光源装置のEUV光非発生時における様子を示す模式図である。このEUV光源装置は、凸レンズ263によって集光されたレーザ光を分割するビームスプリッタ271と、レーザ光検出器264と、エリアセンサ267とを更に具備する。
【0061】
次に、図22を参照しながら、開示のEUV光源装置のEUV光非発生時における動作について説明する。
【0062】
開示のEUV光源装置では、EUV光非発生時において、ゲートバルブ216を通過したレーザ光は、凸レンズ263によって集光され、ビームスプリッタ271によって第1の方向(図中上側)と第2の方向(図中右側)とに分割される。ビームスプリッタ271を第1の方向に通過したレーザ光は、レーザ光検出器264に入射し、ビームスプリッタ271を第2の方向に通過したレーザ光は、エリアセンサ267に入射する。
【0063】
レーザ光光学系劣化チェック処理部280は、EUV光源装置のEUV光非発生時において、レーザ光検出器264からの信号又はデータを用いて図20のフローチャートに示す処理を実行するとともに、エリアセンサ267からの画像データを用いて図23のフローチャートに示す処理を実行する。
図23は、開示されたEUV光源装置のEUV光非発生時にレーザ光光学系劣化チェック処理部280が実行する処理を示すフローチャートである。
【0064】
まず、レーザ光光学系劣化チェック処理部280は、レーザ光の2次元画像を表す画像信号(以下、「画像データ」又は「撮像データ」という)をエリアセンサ267から受け取る(ステップS31)。
【0065】
次に、レーザ光光学系劣化チェック処理部280は、所定のテンプレート画像データと撮像データとに対して、正規化相互相関関数を用いたパターンマッチング処理を行い、撮像データにおけるレーザ光の集光スポットの中心座標P(x,y)を求めるとともに、そのときの相関係数Rを算出する(ステップS32)。なお、テンプレート画像データは、ウインドウ206及び放物凹面鏡243に劣化やアライメントずれが生じていない正常時のレーザ光の集光スポットの画像データであり、(n×m)画素(n<N、m<M)であるものとする。テンプレート画像における座標(0,0)と集光スポットの中心座標とのi軸方向のオフセットをioffとし、j軸方向のオフセットをjoffとする。
【0066】
正規化相互相関関数を用いたパターンマッチング処理とは、テンプレート画像データを構成する各画素値をT(i,j)(ここで、0≦i≦n−1、0≦j≦m−1)とし、撮像データを構成する各画素値をF(u,v)(ここで、0≦u≦N−1、0≦v≦M−1)としたときに、撮像データの各座標(u,v)の正規化相互相関係数NR(u,v)を下記の(1)式により計算し、正規化相互相関係数NR(u,v)の最大値を探すことで、撮像データ内においてテンプレート画像データと最も相関の高い領域(本実施形態においては、(n×m)画素の領域)を探す処理である。
【0067】
【数1】

【0068】
この(1)式において、
【数2】

である。
【0069】
また、
【数3】

である。
【0070】
上記した(1)式の値が最大となる撮像データの座標(umax,vmax)のu軸成分umaxに先に説明したオフセットioffを加えた値をxとし、v軸成分vmaxに先に説明したオフセットjoffを加えた値をyとし、座標(x,y)を集光スポットの中心座標P(x,y)とする。
また、NR(umax,vmax)を相関係数Rとする。
【0071】
すなわち、
x=umax+ioff …(4)
y=vmax+joff …(5)
R=NR(umax,vmax) …(6)
である。
【0072】
再び図23を参照すると、レーザ光光学系劣化チェック処理部280は、集光スポットの中心座標P(x,y)を中心とした所定の半径r内に位置する画素の画素値を積分し、その値をレーザ光の強度Wとする(ステップS33)。
【0073】
次に、ステップS34において、レーザ光光学系劣化チェック処理部280は、レーザ光の強度Wが所定の閾値Wth以上であるか否かをチェックし、レーザ光の強度Wが所定の閾値Wth以上ではない場合には、ウインドウ206及び/又は放物凹面鏡243に劣化が生じていると判定して、処理をステップS35に移し、レーザ光の強度Wが所定の閾値Wth以上である場合には、ウインドウ206及び放物凹面鏡243に劣化が生じていないと判定して、処理をステップS38に移す。
【0074】
ステップS35において、レーザ光光学系劣化チェック処理部280は、更に、相関係数Rが所定の閾値Rth以上であるか否かをチェックし、相関係数Rが所定の閾値Rth以上ではない場合には、集光スポットの分布が異常であり、ウインドウ206及び/又は放物凹面鏡243に歪みが生じているものと判定して、処理をステップS36に移し、相関係数Rが所定の閾値Rth以上である場合には、集光スポットの分布が正常であり、ウインドウ206及び放物凹面鏡243に歪みが生じていないものと判定して、処理をステップS37に移す。
【0075】
レーザ光光学系劣化チェック処理部280は、レーザ光の強度Wが所定の閾値Wth以上ではなく且つ相関係数Rが所定の閾値Rth以上ではない場合には、ウインドウ206及び/又は放物凹面鏡243に劣化が生じているとともに、ウインドウ206及び/又は放物凹面鏡243に歪みが生じていると判定して、そのことをユーザ(オペレータ)に報知する(ステップS36)。この場合には、ユーザ(オペレータ)がウインドウ206及び/又は放物凹面鏡243の交換を行うことで、正常にEUV光を発生させることができる。なお、ウインドウ206及び/又は放物凹面鏡243に劣化及び歪みが生じていることを、警告灯281を点灯させたり点滅させたり点滅パターンを変更させたりすることで報知しても良い。また、ブザー等を鳴らせることで報知しても良いし、LCD等の表示装置に文字や画像を表示させることで報知しても良い。
【0076】
一方、レーザ光光学系劣化チェック処理部280は、レーザ光の強度Wが所定の閾値Wth以上ではなく且つ相関係数Rが所定の閾値Rth以上である場合には、ウインドウ206及び/又は放物凹面鏡243に劣化が生じていると判定して、そのことをユーザ(オペレータ)に報知する(ステップS37)。この場合にも、ユーザ(オペレータ)がウインドウ206及び/又は放物凹面鏡243の交換を行うことで、正常にEUV光を発生させることができる。
【0077】
ステップS38において、レーザ光光学系劣化チェック処理部280は、レーザ光の強度Wが所定の閾値Wth以上である場合にも、更に、相関係数Rが所定の閾値Rth以上であるか否かをチェックし、相関係数Rが所定の閾値Rth以上ではない場合には、レーザ光のフォーカスがレーザ光の光軸方向にずれていると判定して、処理をステップS39に移し、相関係数Rが所定の閾値Rth以上である場合には、レーザ光のフォーカスが光軸方向にずれていないと判定して、処理をステップS40に移す。
【0078】
レーザ光光学系劣化チェック処理部280は、レーザ光の強度Wが所定の閾値Wth以上であり且つ相関係数Rが所定の閾値Rth以上ではない場合には、レーザ光のフォーカスがレーザ光の光軸方向にずれていると判定して、そのことをユーザ(オペレータ)に報知する(ステップS39)。この場合には、ユーザ(オペレータ)が放物凹面鏡調整機構244を操作して放物凹面鏡243を光軸方向に移動させることで、所望のEUV光を発生させることができる。
【0079】
一方、レーザ光光学系劣化チェック処理部280は、レーザ光の強度Wが所定の閾値Wth以上であり且つ相関係数Rが所定の閾値Rth以上である場合には、更に、集光スポットの中心座標P(x,y)が所定の範囲内にあるか否かをチェックする(ステップS40)。集光スポットの中心座標P(x,y)が所定の範囲内にあるか否かは、xが所定の閾値xlとxhとの間にあるか否か、すなわち、xl<x<xhが成立するか否か、及び、yが所定の閾値ylとyhとの間にあるか否か、すなわち、yl<y<yhが成立するか否かで、チェックすることが可能である。
【0080】
ステップS40において、レーザ光光学系劣化チェック処理部280は、集光スポットの中心座標P(x,y)が所定の範囲内にある場合には、ウインドウ206及び/又は放物凹面鏡243に劣化、歪み、及び、アライメントずれが生じていないと判定して、処理を終了し、集光スポットの中心座標P(x,y)が所定の範囲内にない場合には、レーザ光のフォーカスがレーザ光の光軸と異なる方向にずれており、放物凹面鏡243にx、yアライメントずれが生じていると判定して、処理をステップS41に移す。放物凹面鏡243にx、yアライメントずれが生じている場合としては、放物凹面鏡243がx軸方向及び/又はy軸方向にずれている場合や、放物凹面鏡243のアオリ角がθx方向及び/又はθy方向にずれている場合がある。なお、ウインドウ206及び放物凹面鏡243に何らの異常もない場合に、処理をステップS31に戻して、レーザ光の強度のチェックを繰り返し実行するようにしても良い。
【0081】
ステップS41において、レーザ光光学系劣化チェック処理部280は、放物凹面鏡243にx、yアライメントずれが生じていることをユーザ(オペレータ)に報知する。この場合には、ユーザ(オペレータ)が放物凹面鏡調整機構244を操作して放物凹面鏡243をx軸方向及び/又はy軸方向に移動させたり、放物凹面鏡243のアオリ角を調整することで、所望のEUV光を発生させることができる。
【0082】
このように、開示のEUV光源装置によれば、EUV光非発生時において、ウインドウ206及び/又は放物凹面鏡243に劣化及び/又は歪みが生じていること、及び/又は、レーザ光のフォーカスがずれていることを容易に検出してユーザ(オペレータ)に報知することができるので、ユーザ(オペレータ)は、ウインドウ206及び/又は放物凹面鏡243の交換を行わなければならないか否か、及び/又は、アライメント調整を行わなければならないか否かを、適切に把握することができる。これにより、EUV光を安定して発生させることが可能となる。
【0083】
このように、開示のEUV光源装置によれば、レーザ光の強度をレーザ光検出器264によって検出するとともに、レーザ光の中心座標等をエリアセンサ267によって検出することができる。これにより、ウインドウ206及び/又は放物凹面鏡243に劣化等が生じたか否かの判定をより確実なものにすることができる。
【0084】
なお、図22に示した開示のEUV光源装置は、温度センサ282を更に具備しており、レーザ光光学系劣化チェック処理部280が、図21のフローチャートに示す処理を実行するようにすることができる。
【0085】
開示された発明によれば、EUV光発生チャンバのウインドウ及び/又はレーザ光集光光学系の劣化等を容易に検出することができる。これにより、EUV光の発生効率の低下や変動に迅速に対処することが可能となる。
【特許文献1】特開2003−229298号公報(第1頁、図1)
【特許文献2】特開2008−097883号公報
【特許文献3】特開2008−103151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0086】
しかし、先に開示した発明では、温度センサをウインドウに設けて、ウインドウ温度を監視することで劣化の判定を行うので、ウインドウに劣化が生じたときには検出ができるが、レーザ光集光光学系の凹面鏡など他の光学素子に劣化があったときに検出することができない。特に、EUV光源装置の光出力が大きくなると、デブリの発生量も大きくなり、ウインドウ以外にも、EUV光発生チャンバ内に設けられた種々の光学素子の表面が簡単に汚染されるようになり、劣化の状態を的確に把握して清掃したり取り替えたりする必要がある。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、ドライバーレーザのウインドウ及びEUV光発生チャンバ内に設置されたレーザ光集光光学系の光学素子の劣化を確実に検出して、的確な劣化判定を行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0087】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点に係る極端紫外光源装置は、ターゲット物質にレーザ光を照射することによりターゲット物質をプラズマ化して極端紫外光を発生させる極端紫外光源装置であって、極端紫外光の発生が行われる極端紫外光発生チャンバと、極端紫外光の発生が行われるときに、ターゲット物質を極端紫外光発生チャンバ内に噴射するターゲット物質供給部と、レーザ光を出射するドライバーレーザと、極端紫外光発生チャンバに設けられ、レーザ光を極端紫外光発生チャンバ内に透過させるウインドウと、光学素子を含むレーザ光集光光学系であって、ドライバーレーザから出射されたレーザ光を極端紫外光発生チャンバ内に噴射されるターゲット物質の軌道上に集光させることによりプラズマを発生させるレーザ光集光光学系と、プラズマから放出される極端紫外光を集光して出射する極端紫外光集光光学系と、ウインドウ及び極端紫外光発生チャンバ内に設けられた光学素子のそれぞれに設けられ、それらの温度を検出する温度センサと、極端紫外光の発生が行われるときに、温度センサによって検出されたウインドウ及び光学素子の温度に基づいて、ウインドウ及び光学素子の劣化を判定する処理部とを具備する。
【0088】
また、上記課題を解決するため、本発明の第2の観点に係るEUV光源装置は、ターゲット物質にレーザ光を照射することによりターゲット物質をプラズマ化して極端紫外光を発生させる極端紫外光源装置であって、極端紫外光の発生が行われる極端紫外光発生チャンバと、極端紫外光の発生が行われるときに、ターゲット物質を極端紫外光発生チャンバ内に噴射するターゲット物質供給部と、レーザ光を出射するドライバーレーザと、極端紫外光発生チャンバに設けられ、レーザ光を極端紫外光発生チャンバ内に透過させるウインドウと、極端紫外光発生チャンバ内に配置された光学素子を含むレーザ光集光光学系であって、ドライバーレーザから出射されたレーザ光を極端紫外光発生チャンバ内に噴射されるターゲット物質の軌道上に集光させることによりプラズマを発生させるレーザ光集光光学系と、プラズマから放出される極端紫外光を集光して出射する極端紫外光集光光学系と、ウインドウ及び極端紫外光発生チャンバ内に設けられた光学素子のそれぞれに冷却水を供給する冷却水路と、冷却水路の冷却水の還流位置に設けられ還流水の温度を検出する温度センサと、極端紫外光の発生が行われるときに温度センサで検出された温度を使って求めた冷却水による廃熱量に基づいて、ウインドウ及び極端紫外光発生チャンバに設けられた光学素子の劣化を判定する処理部とを具備する。
なお、ドライバーレーザは、メインパルスレーザとプリパルスレーザを備えたものであってもよい。
【発明の効果】
【0089】
本発明によれば、EUV光発生チャンバ内に設けられたレーザ光集光光学系の光学素子の劣化を、レーザ装置やチャンバ外の光学素子の劣化と区別して、確実に検出することができる。これにより、EUV光発生チャンバ内のレーザ光集光光学系光学素子を的確に効率よく保全して、EUV光の発生効率の低下や変動に迅速に対処することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0090】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
【0091】
(第1実施形態)
図1は、本発明の1実施形態に係る極端紫外光源装置(以下において、単に「EUV光源装置」とも言う)の概要を示す平面模式図、図2はその立面模式図である。
本実施形態のEUV光源装置は、EUV光発生チャンバのレーザ光集光光学系における劣化等を的確に検出することにより、EUV光発生効率の低下や変動に迅速に対処することができるところに特徴を有する。本実施形態のEUV光源装置は、図に示すように、ドライバーレーザと、EUV光発生チャンバ2と、ターゲット物質供給部3と、ビームエキスパンダを含むレーザ光集光光学系とを具備する。
【0092】
本実施形態のEUV光源装置は、ターゲットであるドロップレットにプリパルスレーザ光を照射して、ターゲットを膨張またはプラズマ化し、膨張またはプラズマ化したターゲットにメインパルスレーザ光を照射することにより、効率よくプラズマ発光させるシステムである。
ドライバーレーザは、ターゲット物質を励起させるために用いられる駆動用のレーザ光を発生する発振増幅型レーザ装置であるが、本実施形態では、図中一点鎖線で示すように、メインパルスレーザ12とプリパルスレーザ13で構成されている。ドライバーレーザ1としては、公知の様々なレーザ(例えば、KrF、XeF等の紫外線レーザや、Ar、CO、YAG等の赤外レーザ等)を用いることができる。
【0093】
EUV光発生チャンバ2は、EUV光の生成が行われる真空チャンバである。EUV光発生チャンバ2には、ドライバーレーザ1のメインパルスレーザ12とプリパルスレーザ13から発生したレーザ光をEUV光発生チャンバ2内に通過させるためのウインドウ6(1),6(2)が取り付けられている。また、EUV光発生チャンバ2の内部には、ドロップレット発生器3のターゲット噴射ノズルと、ドロップレット回収装置7と、EUV光集光ミラー8とが配置されている。
【0094】
ドロップレット発生器3は、EUV光を発生するために用いられるターゲット物質を、ターゲット噴射ノズルを介して、EUV光発生チャンバ2内に供給する。供給されたターゲット物質の内、レーザ光が照射されずに残ったものは、ドロップレット回収装置7によって回収される。ターゲット物質としては、公知の様々な材料(例えば、錫(Sn)、キセノン(Xe)等)を用いることができる。
【0095】
また、ターゲット物質の状態は、固体、液体、気体のいずれでも良く、連続流れ(ターゲット噴流)や液滴(ドロップレット)等の公知のいずれの態様でEUV光発生チャンバ2内の空間に供給しても良い。例えば、ターゲット物質として液体のキセノン(Xe)ターゲットを用いる場合には、ドロップレット発生器3は、高純度キセノンガスを供給するガスボンベ、マスフローコントローラ、キセノンガスを液化するための冷却装置、ターゲット噴射ノズル等によって構成される。一方、ターゲット物質として錫(Sn)を使用する場合は、ドロップレット発生器3は、Snを液体にするために加熱する加熱装置、ターゲット噴射ノズル等によって構成される。また、ドロップレットを生成する場合には、それらを含む構成に、ピエゾ素子等の加振装置が追加される。
【0096】
なお、ドロップレット発生器3は、ドロップレットコントローラ30に制御され、EUV光源装置がEUV光の発生を行う場合に、ターゲット物質をEUV光発生チャンバ2内に供給し、EUV光源装置がEUV光の発生を行わない場合には、ターゲット物質をEUV光発生チャンバ2内に供給しない。
【0097】
プリパルスレーザ光集光光学系は、ビームエキスパンダ4(2)とウインドウ6(2)と放物面鏡43(2)で構成され、プリパルスレーザ13から出射したレーザ光を、ターゲット物質の軌道上に焦点を形成するように集光する。また、メインパルスレーザ光集光光学系は、ビームエキスパンダ4(1)とウインドウ6(1)と放物面鏡43(1)で構成され、メインパルスレーザ12から出射したレーザ光を、プリパルスレーザ光で膨張したターゲット物質9に焦点を形成するように集光する。それにより、ターゲット物質9が励起してプラズマ化し、EUV光が発生する。なお、レーザ光集光光学系は、1つの光学素子(たとえば、1枚の凸レンズ等)で構成することもでき、複数の光学素子で構成することもできる。レーザ光集光光学系を複数の光学素子で構成する場合には、それらの内のいくつかをEUV光発生チャンバ2内に配置することも可能である。
【0098】
なお、メインパルスレーザ12やプリパルスレーザ13として、エキシマレーザやYAGレーザの高調波光や基本波のYAGレーザを用いる場合は、エキスパンダ4を形成する凹レンズや凸レンズ、及び、ウインドウ6の材質としては、合成石英、CaF、MgF等のようにレーザ光の吸収が少ないものが望ましい。メインパルスレーザ12としてCOレーザ等の赤外レーザを用いる場合には、凹レンズ、凸レンズ、及び、ウインドウ6の材質として、ZnSe、GaAs、Ge、Si、ダイヤモンド等が適する。また、凹レンズ、凸レンズ、及び、ウインドウ6の表面に誘電体多層膜による減反射(AR)コートを施すことが望ましい。
【0099】
EUV光集光ミラー8は、例えば、13.5nmの光を高反射率で反射するMo/Si膜がその表面に形成された楕円形状の凹面鏡であり、発生したEUV光を反射することにより集光して伝送光学系に導く。さらに、このEUV光は、伝送光学系を介して露光器等へ導かれる。
【0100】
図1に示すように、プリパルスレーザ光はビームエキスパンダ4(2)によりビーム拡大して、ビームスプリッタ71(2)により一部を分岐し、凸レンズ26(2)を介してパワーメータ25(2)に入力して、EUV光発生チャンバ2に入射する前のプリパルスレーザの出力Wp0をモニタする。
一方、ビームスプリッタ71(2)を透過したプリパルスレーザ光は、ウインドウ6(2)を透過してEUV光発生チャンバ2内に入り、軸外放物面鏡43(2)に入射反射させて、ドロップレット発生器3から供給されるドロップレット9が所定の位置に到達するタイミングに同期して、ドロップレット9の上に集光照射される。すると、レーザ光が照射した部分のドロップレット9が瞬時に膨張あるいはプラズマ化する。
【0101】
一方、メインパルスレーザ光は、ビームエキスパンダ4(1)によりビーム拡大されて、ビームスプリッタ71(1)で分割され、一部が凸レンズ26(1)を介してパワーメータ25(1)に入射して、EUV光発生チャンバ2に入射する前のメインパルスレーザ光の出力Wm0をモニタする。分割された残りは、ウインドウ6(1)を透過してEUV光発生チャンバ2内に入り、軸外放物面鏡43(1)に入射反射させて、プリパルスレーザ光により膨張したターゲットに集光照射する。
【0102】
このように、ドロップレット9がプリパルスレーザ光の照射により膨張あるいはプラズマ化したところにメインパルスレーザ光が照射するので、EUVへの変換効率が高いEUV発光を実現することができる。
なお、プリパルスレーザの集光用の放物凹面鏡43(2)の基板材質としては、合成石英、CaF、Si、Zerodur(ゼロデュア(登録商標))、Al、Cu、Mo等を用いることができ、そのような基板の表面に誘電体多層膜による高反射コートを施すことが好ましい。
また、メインパルスレーザ12がCO2レーザの場合、集光用の放物凹面鏡43(1)の基板材質としては、冷却装置を組み込んだCu等を用いることができ、そのような基板の表面にAuによる高反射コートを施すことが好ましい。
【0103】
本実施形態のEUV光源装置は、レーザ用光学素子に温度モニタを設置している。
メインパルスレーザ用ウインドウ62(1)、放物面鏡43(1)、およびプリパルスレーザ用ウインドウ62(2)、放物面鏡43(2)に、熱電対や白金測温抵抗体、あるいは放射温度計などの温度センサ82(1),82(2),82(3),82(4)が設置されており、これらの光学素子が劣化するとレーザ光を吸収し発熱し温度が上昇するので、温度を検出することにより光学素子の劣化を検知するようにしたものである。
【0104】
本実施形態のEUV光源装置は、さらに、メインパルスレーザ光用のレーザダンパ兼カロリーメータ35(1)とプリパルスレーザ光用のレーザダンパ兼カロリーメータ35(2)を備えていて、プリパルスレーザ光とメインパルスレーザ光のターゲット位置(集光点15)におけるエネルギーを測定することができる。
レーザ光のターゲット位置(集光点15)におけるエネルギーを測定するときは、レーザ光光学系劣化チェック処理部80がドロップレットコントローラ30とメインパルスレーザ装置12あるいはプリパルスレーザ装置13に指令を送り、レーザ光が集光照射するタイミングの集光点15位置にドロップレットが存在しないようにする。
【0105】
プリパルスレーザ光は、放物面鏡43(2)で一旦集光点15に集光し、集光点15をドロップレットに衝突することなく通過し、その後広がりながら開口部50a(4)の開口を通過し、ウインドウ6(3)を透過して、レーザダンパ兼カロリーメータ35(2)に入射し、吸収される。レーザダンパ兼カロリーメータ35(2)のカロリーメータにより、プリパルスレーザ光の集光点15におけるエネルギーWpが検出される。
また、メインパルスレーザ光は、放物面鏡43(1)で一旦集光点15に集光し、集光点15をドロップレットに衝突することなく通過し、その後広がりながら、レーザダンパ兼カロリーメータ35(1)に入射し、吸収される。レーザダンパ兼カロリーメータ35(1)のカロリーメータにより、プリパルスレーザ光の集光点15におけるエネルギーWmが検出される。
【0106】
なお、各ウインドウ6(1),6(2),6(3),6(4)および放物面鏡43(1),43(2)をデブリから保護するために、集光点15に向けてロート状に開口する部分以外を壁で囲ったデブリシールドを設置することが好ましい。
【0107】
図2に示すように、レーザ光の集光点15は、図中紙面と平行に走行するメインパルスレーザ光と紙面に垂直に走行するプリパルスレーザ光の光路とドロップレット9の軌跡とが互いに交差する点となっている。なお、Snのような金属ターゲットの場合には、プレパルスレーザ光によりターゲットを膨張またはプラズマ化すると、膨張またはプラズマ化したターゲットの中心位置が、多少ずれる場合がある。このような場合はかならずしもプレパルスレーザ光とメインパルスレーザ光の集光点は一致しない。ただし、両集光点のずれは非常に小さいので、両レーザ光のエネルギーを検出するのに誤差を発生することはない。本文では、集光点15は一致するように記載されているが、両集光点がずれていても、本実施例を適用するには問題のない程度である。
ここで、レーザ光の照射エネルギーを測定するときに、ドロップレットが集光点15に存在しないようにする方法として、以下に挙げる3つの方法がある。
【0108】
(a)ドロップレットの発生を止めて、メインパルスレーザ光とプリパルスレーザ光のエネルギーを測定する。この方法は、両レーザ光の光軸を変化させることなく、測定ができる利点がある。
(b)ドロップレットの発生タイミングもしくはメインパルスレーザ光あるいはプリパルスレーザ光の発振タイミングをずらすことにより、ドロップレットとレーザ光の衝突を避けてレーザ光のエネルギー測定をする。ドロップレットの発生を一旦中止すると、定常にドロップレットを発生させるようにするまでかなりの時間が必要である。この方法では、ドロップレットの発生タイミングをずらすだけなので、正常に復帰するために短い時間しか要しないという利点がある。また、レーザ光の光軸は変化しない。一方、メインパルスレーザ光あるいはプリパルスレーザ光の発振タイミングをずらすことによりドロップレットとレーザ光の衝突を避けて測定するレーザ光のエネルギー測定方法においては、ドロップレットの発生のタイミングも変化させる必要なく、レーザ発振のみのタイミング変化ですむため、両レーザの光軸とドロップレットの発生非常に安定した状態を維持できるので、EUV光の立ち上がり時間が短くて済むという利点がある。
(c)ドロップレットの発生はそのままにして、メインパルスレーザ光とプリパルスレーザ光の光軸をターゲットから僅かにずらして、それぞれドロップレットおよび膨張若しくはプラズマ化した状態のターゲットに当たらないようにして、レーザ光のエネルギーを測定する。ドロップレットの滴下を止めずに安定なドロップレットを発生させながら、レーザ光のエネルギーを検出するので、復帰後の立ち上がり時間が短くて済むという利点がある。
【0109】
図3は、本実施形態のEUV光源装置において、レーザ光光学系劣化チェック処理部80で実行されるレーザ光学系の劣化を検出する手順例を説明するメインフローチャートである。
レーザ光光学系劣化チェック処理部80は、初めに、レーザ用光学素子異常診断要否判定サブルーチン(S101)を実行して、レーザ用光学素子の劣化診断を行うか否かを決定する。ここで、診断しない(NO)と判定された場合は、再びS101に戻って、劣化診断を行うことになるまで何度でもサブルーチンを実行することになる。
【0110】
一方、光学素子の劣化診断を実行する(YES)と判定されたときは、次のステップに進んで、ドロップレット非照射制御サブルーチン(S102)を実行し、続いてレーザ光学素子劣化検出サブルーチン(S103)を実行して、その結果に基づいて、プリパルスとメインパルスレーザの光学素子劣化判定サブルーチン(S104)を実行して、劣化あり(YES)と判定されたときは、S105に進んで、警告灯に出力して光学素子に劣化が生じたことをオペレータに告知すると共に、露光装置の制御装置に通知した上で、EUV光源装置を停止する(S107)。一方、プリパルスレーザとメインパルスレーザの光学素子劣化判定サブルーチン(S104)を実行して、劣化が許容範囲にある(NO)と判定されたときは、レーザの光学素子異常なしサブルーチン(S106)に移行し、その後、最初のS101に戻って、このルーチンを繰り返す。
【0111】
図4と図5は、レーザ用光学素子異常診断要否判定サブルーチン(S101)の内容を示すフローチャートである。
光学素子の異常診断の要否を判定する基準として、先回の診断からの経過時間に基づくものと、EUV出力に基づくものと、先回の診断時からレーザ光のパルス数の累積値に基づくものと、EUV光発生チャンバ内に設けられたレーザ光集光光学系の光学素子の温度に基づくものとを使用する。これらの基準は、いくつかを選択して使用してもよいし、全てを使っていずれか1つでも抵触したら異常診断を行うようにしてもよい。
【0112】
図4には、(a)光学素子の温度管理ルーチンが、また図5には、(b)時間管理ルーチン、(c)EUV出力管理ルーチン、(d)パルス数管理ルーチンが、いずれか1個が実行される場合として表示されている。なお、これらのルーチンを直列に繋いで、1個のルーチンを実行してNOの結果が出た場合に、次のルーチンに進むようにすれば、全ての条件をチェックして1つでも該当したら異常診断を行うようにすることができる。
【0113】
(a)光学素子の温度管理ルーチンは、各光学素子の温度を管理して、温度管理する光学素子それぞれについて、1個でも所定の閾値を超えた場合に、異常診断を実行すると判定するサブルーチンである。
まず、メインパルスレーザ用ウインドウ6(1)の温度T1がその閾値T1thを超えたか、あるいはメインパルスレーザ用放物面鏡43(1)の温度T2がその閾値T2thを超えたか、プリパルスレーザ用ウインドウ6(2)の温度T3がその閾値T3thを超えたか、プリパルスレーザ用放物面鏡43(2)の温度T4がその閾値T4thを超えたか、を判定して(S131)、いずれか1つでも温度が閾値を超える光学素子があったときは、レーザ用光学素子における異常発生をオペレータあるいは露光装置等の外部に通知し(S132)、異常診断を必要(YES)とすると判定して(S113)、温度管理ルーチンを抜ける。
一方、ステップS131において、管理対象の光学素子の温度が全て閾値を超えなかった場合は、異常診断の用はない(NO)として(S134)、温度管理ルーチンを抜ける。
【0114】
光学素子の温度管理ルーチンにより、ドライバーレーザ用集光光学系における光学素子のうち、EUV光発生チャンバ内に配置されてデブリに汚染される可能性を有するウインドウと放物面鏡のいずれかが、光学特性を劣化させたときに、レーザ光を余分に吸収して常態より高温になるので、温度センサにより昇温を検知したときには、さらに異常診断手順を実行して異常の有無を確認することができる。
また、温度測定値が閾値を超えた温度センサを特定すれば、劣化した可能性のある光学素子を特定することもできる。
さらに、光学素子の温度管理ルーチンで異常診断の有無を判断するのではなく、このルーチンを実行した結果から直接に劣化した光学素子を特定して警報するようにしてもよい。
【0115】
(b)時間管理ルーチンは、一定周期で異常診断をする場合のルーチンである。
タイマーを使って、計時結果が周期とするK時間に達しているかを判断する(S201)。K時間に満たなければ、異常診断は不要(NO)として、このルーチンを抜ける。また、K時間を経過した場合は、タイマーをリセットして(S202)、異常診断を必要(YES)とすると判定して(S203)、時間管理ルーチンを抜ける。
【0116】
(c)EUV出力管理ルーチンは、EUV出力を監視していて、EUV出力が所定の値に達しなければ異常診断をするようにした場合のルーチンである。
EUV出力測定器で測定したEUV出力Eeuvを予め決められた閾値Eeuvthと比較し(S211)、EeuvがEeuvthより小さくなければ異常診断を不要(NO)として(S213)このルーチンを抜け、EeuvがEeuvthより小さければ、異常診断を必要(YES)とすると判定して(S212)、EUV出力管理ルーチンを抜ける。
【0117】
(d)パルス数管理ルーチンは、EUV光の照射パルス数が所定数に達するごとに異常診断をするようにした場合のルーチンである。
カウンターでEUV光のパルス数Nを計数しておき、カウンターの計数値が予め設定した閾値Nthと比較し(S221)、NがNthを超えなければ異常診断を不要(NO)として(S224)このルーチンを抜け、NがNthを超えたときに、カウンターをリセットして(S222)、異常診断を必要(YES)とすると判定して(S223)、パルス数管理ルーチンを抜ける。
【0118】
図6は、ドロップレット非照射制御サブルーチン(S102)の内容を示すフローチャートである。レーザ光光学系劣化チェック処理部80は、集光点15におけるレーザ光の照射エネルギーを測定するために、レーザ光の集光点15にドロップレットが存在しないようにする3つの方法を予め選択して実行する。したがって、ドロップレット非照射制御サブルーチン(S102)は、(a)ドロップレット発生停止するルーチンと、(b)ドロップレットとレーザ光のタイミングを変更するルーチンと、(c)パルスレーザの光軸を変更するルーチンを持ち、レーザ光光学系劣化チェック処理部80は、いずれか1つのルーチンを選択して実行する。
【0119】
(a)ドロップレット発生停止するルーチンは、ドロップレットコントローラ30を介してドロップレット発生器3にドロップレット発生停止信号を出力して(S301)、ドロップレットの発生を停止させてからリターンするルーチンである。このルーチンを実行することにより、プリパルスレーザ光とメインパルスレーザ光は、ドロップレットを照射しないでカロリーメータに入射するようになる。
【0120】
(b)ドロップレットとレーザ光のタイミングを変更するルーチンは、ドロップレットコントローラ30を介してドロップレット発生器3によるドロップレット発生タイミングをプリパルスレーザ光とメインパルスレーザ光の発振タイミングとずらすか、プリパルスレーザ制御装置とメインパルスレーザ制御装置を介してこれらパルスレーザ光の発振タイミングをドロップレット発生タイミングとずらすことにより、パルスレーザ光がドロップレットに照射しないようにして(S311)、リターンするルーチンである。
【0121】
(c)パルスレーザの光軸を変更するルーチンは、プリパルスレーザの光軸とメインパルスレーザの光軸をドロップレットの軌道から僅かに変更させて(S321)、両パルスレーザ光がドロップレットに当たらずにカロリーメータに入射するようにしてからリターンするルーチンである。ドロップレットの系は30μmから100μm程度なので、光軸は数100μm程度ずらせば十分で、光軸の移動が両パルスレーザのエネルギー計測値に影響を与えることはない。
【0122】
図7は、レーザ用光学素子劣化検出サブルーチン(S103)の第1例における内容を示すフローチャートである。レーザ光光学系劣化チェック処理部80は、集光点15におけるレーザ光の照射エネルギーを測定して、出力低下からレーザ用光学素子劣化状態を検知する。レーザ用光学素子劣化検出サブルーチン(S103)は、(a)メインパルスレーザ光学素子について劣化検出するルーチンと、(b)プリパルスレーザ光学素子について劣化検出するルーチンで構成される。
【0123】
(a)メインパルスレーザ光学素子劣化検出ルーチンは、初めにメインパルスレーザ用のパワーメータ25(1)でEUV光発生チャンバ2に射入する前のメインパルスレーザの出力Wm0を検出する(S401)。次に、メインパルスレーザ用のレーザダンパ兼カロリーメータ35(1)でメインパルスレーザの集光点15における出力Wmを測定し(S402)、次の工程に進む。
【0124】
(b)プリパルスレーザ光学素子劣化検出ルーチンは、初めにプリパルスレーザ用のパワーメータ25(2)でEUV光発生チャンバ2に射入する前のプリパルスレーザの出力Wp0を検出する(S403)。次に、プリパルスレーザ用のレーザダンパ兼カロリーメータ35(2)でプリパルスレーザの集光点15における出力Wpを測定し(S404)、リターンしてメインルーチンに戻る。
なお、EUV光発生チャンバ2に射入する前のメインパルスレーザ出力Wm0とプリパルスレーザ出力Wp0は、それぞれレーザ装置に内蔵されるパワーモニタの出力を利用することもできる。
【0125】
図8は、レーザ用光学素子劣化判定サブルーチン(S104)の内容を示すフローチャートである。レーザ光光学系劣化チェック処理部80は、プリパルスレーザとメインパルスレーザに用いられる光学素子のうち、EUV光発生チャンバ2の中に設置される光学素子について、透過率を算出して、劣化の状態を判定する。
【0126】
レーザ用光学素子劣化判定サブルーチン(S104)では、初めに、EUV光発生チャンバ2に射入する前のレーザ出力Wm0,Wp0と集光点15におけるレーザ出力Wm,Wpを用い、下の式に従って、メインパルスレーザとプリパルスレーザに用いられる光学素子のトータルの透過率Tm,Tpを算出する(S501)。
Tm=Wm/Wm0
Tp=Wp/Wp0
【0127】
次に、トータルの透過率Tm,Tpを透過率の上限閾値Tmt,Tptと比較して(S502)、光学素子の劣化を判定する。プリパルスレーザとメインパルスレーザのトータルの透過率Tm,Tpのいずれかが上限閾値Tmt,Tptより低ければ、光学素子に劣化があると判定して、異常を通知すると共に(S503)、劣化した(YES)として(S504)、メインルーチンに戻る。また、透過率Tm,Tpのいずれも上限閾値Tmt,Tptに達していなければ、劣化していない(NO)として(S505)、メインルーチンに戻る。
【0128】
レーザ光光学系劣化チェック処理部80は、レーザ用光学素子劣化判定サブルーチン(S104)でプリパルスレーザとメインパルスレーザの光学素子の劣化が許容範囲にあると判定されたときに、レーザ用光学素子異常なし通知サブルーチン(S106)を実行する。
図9は、レーザ用光学素子異常なし通知サブルーチン(S106)の内容を示すフローチャートである。
【0129】
このサブルーチンでは、まず、レーザ用光学素子に異常がないことをオペレータまたは露光装置に通知する(S601)。そして、メインパルスレーザの光学素子とプリパルスレーザの光学素子それぞれのトータルの透過率Tmc,Tpcを、最新の測定値Tm,Tpに置き換えて(S602)、判定指標に現状を正確に反映するようにする。
Tmc=Tm
Tpc=Tp
なお、両レーザの光学系の透過率変化を経時的に記憶しておいてもよい。
【0130】
さらに、両パルスレーザの必要とされる出力エネルギーEm,Epを、トータルの透過率と集光点15において必要とされるレーザ光エネルギーEmt,Eptとから、下の式を用いて算出する(S603)。その後、メインフローにリターンする。
Em=Emt/Tmc
Ep=Ept/Tpc
フローチャートには表示されていないが、レーザ光光学系劣化チェック処理部80は、この結果に基づいてレーザ装置の出力を調整する。メインフローにおいては、メインパルスレーザの光学素子とプリパルスレーザの光学素子それぞれのトータルの最新の透過率Tmc,Tpcを用いて、メインパルスレーザ12及びプリパルスレーザ13のエネルギーを制御する。
【0131】
上記の処理により、下の利益が期待できる。
(1)レーザ用光学系の最新の透過率に基づいて、ドロップレットに集光照射することができるため、EUV光のパルスエネルギーを安定させることができる。
(2)両レーザの光学系について透過率の経時変化を計測することで、レーザ光学系の劣化予測が可能となり、予防的な保守保全ができる。たとえば、事前に警告を出すことにより、EUV光源装置の突発的な停止を避けて、メンテナンス上都合のよい時を選んで交換修理をすることができ、装置のダウンタイムが減少する。
【0132】
(第2実施形態)
図10は、本発明の第2の実施形態に係るEUV光源装置の概要を示す平面模式図である。本実施形態のEUV光源装置は、第1の実施形態のEUV光源装置に対して、メインパルスレーザ光のカロリーメータをデブリから保護した配置にしたことが異なるだけで、その他の構成要素はほぼ同じである。
【0133】
すなわち、メインパルスレーザ光用のレーザダンパ兼カロリーメータ35(3)は、集光点15の直ぐ際に設ける代わりに、EUV光発生チャンバ2の壁に開口部50a(4)を設けて、その外側に配置されている。そして、集光点15で一旦集光して発散するメインパルスレーザ光は、凹面ミラー21により反射し再び集光して、デブリシールドになっている開口部50a(4)の穴を通して、ウインドウ6(3)を透過し、レーザダンパ兼カロリーメータ35(3)に達するようになっている。
【0134】
さらに、凹面ミラー21は、常時は集光(またはコリメートミラー)交換装置20の保護筐体中に収納され、デブリから保護されていて、測定時のみミラー交換アクチュエータ22によりメインパルスレーザ光路中に挿入されるようになっている。したがって、凹面ミラー21は、デブリに汚染されず劣化が小さい。
【0135】
また、レーザダンパ兼カロリーメータ35(3)は、デブリシールドとウインドウ6(3)によりデブリによる劣化を効果的に防止されている。
メインパルスレーザ用光学素子のトータルの透過率を計測するときには、汚染劣化していない凹面ミラー21を引き出して使うので、正確な測定結果を得ることができる。
なお、図9には、メインパルスレーザ光とプリパルスレーザ光がEUV光発生チャンバ2に入射する前の出力を測定するパワーメータが記載されていないが、それぞれのレーザ装置に内蔵されたレーザ出力モニタで測定された値をWm0,Wp0とすることで代用することができる。
【0136】
また、メインパルスレーザ光のエネルギーを測定した後は、劣化のない凹面ミラー21を集光(またはコリメートミラー)交換装置20の筐体中に戻し、常用する元の凹面ミラー21に戻して、凹面ミラーに入射するメインパルスレーザ光をレーザダンパ兼カロリーメータ35(3)にダンプするようにしてもよい。また、凹面ミラー21の下流にレーザダンプを設けておいて、凹面ミラー21を退避させると、レーザダンプにダンプするようにしてもよい。
【0137】
図11は、本発明のEUV光源装置におけるメインフローチャートを第2実施形態に適用するときに、第1例のレーザ用光学素子劣化検出サブルーチンに代えて適用される第2例のレーザ用光学素子劣化検出サブルーチン(S103)の内容を示すフローチャートである。第2例のサブルーチンが図6に示した第1例のサブルーチンと異なるのは、主として、メインパルスレーザの光学素子劣化検出ルーチン(a)で、他の部分には大きな差異はない。以下、第2例のレーザ用光学素子劣化検出サブルーチン(S103)について説明する。
【0138】
第2例のレーザ用光学素子劣化検出サブルーチン(S103)の(a)メインパルスレーザ光学素子劣化検出ルーチンでは、初めに、デブリに汚染されていない基準凹面ミラー21を集光(またはコリメートミラー)交換装置20の筐体から引き出して、測定光路中に据える作業を行う(S411)。
【0139】
次に、メインパルスレーザ装置に内蔵するパワーモニタを使って、メインパルスレーザをWm0のパワーにロックして出力させる(S412)。メインパルスレーザ用のレーザダンパ兼カロリーメータ35(3)でメインパルスレーザの集光点15における出力Wmを測定し(S413)、基準凹面ミラー21を元のミラーに戻して(S414)、次の(b)プリパルスレーザ光学素子劣化検出ルーチンに進む。
【0140】
(b)プリパルスレーザ光学素子劣化検出ルーチンでは、初めにプリパルスレーザ装置によりプリパルスレーザをWp0となるように出力する(S415)。そして、プリパルスレーザ用のレーザダンパ兼カロリーメータ35(2)でプリパルスレーザの集光点15における出力Wpを測定し(S416)、リターンしてメインルーチンに戻る。
【0141】
(第3実施形態)
図12は本発明の第3の実施形態に係るEUV光源装置の概要を示す平面模式図、図13は第3実施形態における冷却水循環回路図である。本実施形態のEUV光源装置は、図10に示した第2の実施形態のEUV光源装置に対して、レーザ用光学素子に冷却水を流して廃熱量管理したところに特徴がある。その他の構成要素はほぼ同じである。
【0142】
メインパルスレーザの出力は10kW〜20kWであるから、光学素子は表面劣化していなくても、発熱のため波面がゆがむので、集光性能を維持するために冷却することが好ましい。
そこで、本実施形態に係るEUV光源装置では、メインパルスレーザ用ウインドウ6(1)、放物面鏡43(1)、およびプリパルスレーザ用ウインドウ6(2)、放物面鏡43(2)に、冷却水を流し、光学素子が熱応力等で歪まないようにしている。
【0143】
プリパルスレーザは出力が100Wから200Wであるので、デブリによる劣化がなければ冷却の必要はないが、光学素子が多少劣化していて熱を吸収する場合でも、冷却することにより波面の歪みを抑制して集光性能を維持することができる。
したがって、レーザ用光学素子を冷却することは、集光性能のためにも好ましい。
【0144】
図13に示す通り、本実施形態では、チラー40から出た冷却水は、ウインドウ6(1),6(2)および放物面鏡43(1),43(2)の各光学素子へ並列に分岐して供給され、光学素子を冷却して、チラー40への戻り配管に並列に排出されている。各光学素子について、冷却水の入口温度Tin(T1in,T2in,T3in,T4in)と出口温度Tout(T1out,T2out,T3out,T4out)、および冷却水の流量V(V1,V2,V3,V4)を計測し、廃熱量を算出して光学素子の劣化状態を検出し適正管理する。
なお、各光学素子に一定温度の冷却水を供給する場合は、冷却水量と出口温度の測定値を用いて廃熱量を算定することができる。
【0145】
なお、図には、関連する全ての光学素子について冷却水を並列に循環させたシステムを記載しているが、この例に限定されるものでなく、たとえば全ての光学素子について直列に配管したり、直列配管と並列配管を組み合わせたりしてもよいことは言うまでもない。要するに、メインパルスレーザとプリパルスレーザの集光性能に影響を与えない配管経路を組み、各光学素子について出入り口の温度と冷却水流量を計測するものであればよい。
また、たとえば、直列配管で全ての光学素子について冷却水量が同じ値になるように構成した場合ならば、各光学素子の出入り口の温度だけを計測するものであってもよい。
【0146】
図14は、第4実施形態のレーザ用光学素子異常診断要否判定サブルーチン(S101)における光学素子の異常診断の要否を判定するルーチンとして必要な(e)光学素子の廃熱量管理ルーチンを示すフローチャートである。
(e)光学素子の廃熱量管理ルーチンは、冷却水により搬出された各光学素子の廃熱量に基づいて、異常診断を実行するか否かを判定するサブルーチンである。各光学素子の廃熱量Qは、冷却水量Vと冷却水入口温度Tinと冷却水出口温度Toutから、Q=V(Tout−Tin)の式にしたがって求めることができる。
【0147】
まず、メインパルスレーザ用のウインドウ6(1)、放物面鏡43(1)、およびプリパルスレーザ用のウインドウ6(2)、放物面鏡43(2)の各々について、冷却水流量V、冷却水入口温度Tin、冷却水出口温度Toutの測定値を使用して、廃熱量Q(Q1,Q2,Q3,Q4)を求める(S141)。
【0148】
次に、メインパルスレーザ用のウインドウ6(1)の廃熱量Q1がその閾値Q1thを超えたか、あるいはメインパルスレーザ用放物面鏡43(1)の廃熱量Q2がその閾値Q2thを超えたか、プリパルスレーザ用ウインドウ6(2)の廃熱量Q3がその閾値Q3thを超えたか、プリパルスレーザ用放物面鏡43(2)の廃熱量Q4がその閾値Q4thを超えたか、を判定して(S142)、いずれか1つでも廃熱量が閾値を超える光学素子があったときは、レーザ用光学素子における異常発生をオペレータあるいは露光装置等の外部に通知し(S143)、異常診断を必要(YES)とすると判定して(S144)、光学素子の廃熱量管理ルーチンを抜ける。
一方、ステップS142において、管理対象の光学素子の廃熱量が全て閾値を超えなかった場合は、異常診断の用はない(NO)として(S145)、廃熱量管理ルーチンを抜ける。
【0149】
上記説明では、各光学素子に対する冷却水の入口温度Tin、出口温度Tout、冷却水量Vをそれぞれ測定して、廃熱量Qを求めて診断の要否を判断したが、この例に限定されることなく、廃熱量に相当する計測値に基づいて判断することもできる。
たとえば、冷却水を直列に供給するようにした場合は、流量計測は1カ所でよい。また、流量が所定の値となるように制御している場合は、流量計測は必要なく、冷却水出入口の温度差を用いて管理することができる。
また、各光学素子における冷却水の入口温度が全て同じで流量も互いに同じになるように制御した場合は、各光学素子における冷却水出口温度Toutのみを使って、図12に示すフローに従って管理することができる。
また、図9、図11、図13の実施例では、メインレーザ光を凹面ミラー21により集光して開口部50a(4)入射させていたが、この実施例に限定されることなく、開口部50a(4)を多少広くして、この凹面ミラーで一旦コリメートして入射させてもよい。さらに、この凹面ミラー21が凹面ではなく平面ミラーの場合でも、広がったメインレーザ光を開口部50a(4)とレーザダンパ兼カロリーメータc35(3)に入射させることができれば、問題はない。このように、メインパルスレーザ光を一旦反射させて、レーザダンパ兼カロリーメータに導入するような光学素子であればなんでもよい。ただし、図9、図11、図13の実施例のように凹面ミラー21により一旦集光して、小さな開口50a(4)に入射させた場合は、ウインドウ6(4)へのデブリの汚染を避けることができるので効果が大きくなる。また、プレパルスレーザ光の場合にもレーザダンパ兼カロリーメータに導入するのに光学素子を使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明は、半導体ウエハ等を露光する極端紫外光を発生するLPP型EUV光源装置に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】本発明の第1実施形態に係るEUV光源装置の概要を示す平面模式図である。
【図2】第1実施形態に係るEUV光源装置の立面模式図である。
【図3】第1実施形態のEUV光源装置において実行されるレーザ光学系の劣化を検出する手順例を説明するメインフローチャートである。
【図4】レーザ用光学素子異常診断要否判定サブルーチンで使用される光学素子の温度管理ルーチンを示すフローチャートである。
【図5】レーザ用光学素子異常診断要否判定サブルーチンで使用される他の3個のルーチンを示すフローチャートである。
【図6】ドロップレット非照射制御サブルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図7】レーザ用光学素子劣化検出サブルーチンの第1例における内容を示すフローチャートである。
【図8】レーザ用光学素子劣化判定サブルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図9】レーザ用光学素子異常なし通知サブルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第2実施形態に係るEUV光源装置の概要を示す平面模式図である。
【図11】第2実施形態において適用される第2例のレーザ用光学素子劣化検出サブルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第3実施形態に係るEUV光源装置の概要を示す平面模式図である。
【図13】第3実施形態における冷却水循環回路図である。
【図14】第3実施形態のレーザ用光学素子異常診断要否判定サブルーチンにおいて使用される光学素子の廃熱量管理ルーチンを示すフローチャートである。
【図15】従来のLPP型のEUV光源装置の概要を示す図である。
【図16】典型的なEUV光源装置の概要を示す模式図である。
【図17】開示発明の第1の観点に係るEUV光源装置のEUV光発生時の様子を示す模式図である。
【図18】開示発明の第1の観点に係るEUV光源装置のEUV光非発生時の様子を示す模式図である。
【図19】開示発明においてレーザ光光学系劣化チェック処理部が実行する処理を示すフローチャートである。
【図20】開示発明においてレーザ光光学系劣化チェック処理部がEUV光発生時に実行する処理を示すフローチャートである。
【図21】開示されたEUV光源装置の別の形態に係る装置を示す模式図である。
【図22】開示されたEUV光源装置のEUV光非発生時にレーザ光光学系劣化チェック処理部が実行する処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0152】
1…ドライブレーザ、2,102,202,212〜214…EUV光発生チャンバ、3,103,203…ターゲット物質供給部、4,104,204…レーザ光集光光学系、4(1)〜(2)…ビームエキスパンダ、5,105,205…真空ポンプ、6(1)〜(4),106,206…ウインドウ、7…ドロップレット回収装置、8,108,208…EUV光集光ミラー、9,109,209…ターゲット物質、10,110,210,216…ゲートバルブ、11,111,211…フィルタ、12…メインパルスレーザ、13…プリパルスレーザ、15…集光点、20…コリメートミラー交換装置、21…凹面ミラー、22…ミラー交換アクチュエータ、25(1)〜(2)…パワーメータ、26(1)〜(2)…凸レンズ、30…ドロップレットコントローラ、35(1)〜(3)…レーザダンパ兼カロリーメータ、40…チラー、43(1)〜(2),243…放物凹面鏡、44(1)〜(2),244…放物凹面鏡調整機構、50a(1)〜(4),250a,251a,252a,253a…開口部、71(1)〜(2),271…ビームスプリッタ、80,280…レーザ光光学系劣化チェック処理部、81,281…警告灯、82(1)〜(4),282…温度センサ、101,201…ドライバーレーザ、103a,203a…ターゲット噴射ノズル、104a…ミラー、104b…ミラー調整機構、104c…集光素子、104d…集光素子調整機構、107,207…ターゲット回収筒、120,220…レーザ光、121,221…EUV光、231,232…パージガス供給部、233〜237…パージガス導入路、241,245,249b…凹レンズ、242,246,249c,249d,263,269…凸レンズ、250〜253…パージガスチャンバ、261,264…レーザ光検出器、267…エリアセンサ、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲット物質にレーザ光を照射することにより前記ターゲット物質をプラズマ化して極端紫外光を発生させる極端紫外光源装置であって、
極端紫外光の発生が行われる極端紫外光発生チャンバと、
極端紫外光の発生が行われるときに、ターゲット物質を前記極端紫外光発生チャンバ内に噴射するターゲット物質供給部と、
レーザ光を出射するドライバーレーザと、
前記極端紫外光発生チャンバに設けられ、レーザ光を前記極端紫外光発生チャンバ内に透過させるウインドウと、
光学素子を含むレーザ光集光光学系であって、前記ドライバーレーザから出射されたレーザ光を前記極端紫外光発生チャンバ内に噴射されるターゲット物質の軌道上に集光させることによりプラズマを発生させる前記レーザ光集光光学系と、
前記プラズマから放出される極端紫外光を集光して出射する極端紫外光集光光学系と、
前記ウインドウ及び前記極端紫外光発生チャンバ内に設けられた光学素子のそれぞれに設けられ、それらの温度を検出する温度センサと、
極端紫外光の発生が行われるときに、前記温度センサによって検出された前記ウインドウ及び前記光学素子の温度に基づいて、前記ウインドウ及び前記光学素子の劣化を判定する処理部と、
を具備する極端紫外光源装置。
【請求項2】
ターゲット物質にレーザ光を照射することにより前記ターゲット物質をプラズマ化して極端紫外光を発生させる極端紫外光源装置であって、
極端紫外光の発生が行われる極端紫外光発生チャンバと、
極端紫外光の発生が行われるときに、ターゲット物質を前記極端紫外光発生チャンバ内に噴射するターゲット物質供給部と、
レーザ光を出射するドライバーレーザと、
前記極端紫外光発生チャンバに設けられ、レーザ光を前記極端紫外光発生チャンバ内に透過させるウインドウと、
前記極端紫外光発生チャンバ内に設けられた光学素子を含むレーザ光集光光学系であって、前記ドライバーレーザから出射されたレーザ光を前記極端紫外光発生チャンバ内に噴射されるターゲット物質の軌道上に集光させることによりプラズマを発生させる前記レーザ光集光光学系と、
前記プラズマから放出される極端紫外光を集光して出射する極端紫外光集光光学系と、
前記ウインドウ及び前記極端紫外光発生チャンバ内に設けられた前記光学素子のそれぞれに冷却水を供給する冷却水路と、
前記冷却水路の冷却水の還流位置に設けられ、還流冷却水の温度を検出する温度センサと、
極端紫外光の発生が行われるときに、該温度センサで検出された温度を使って求めた該冷却水による廃熱量に基づいて、前記ウインドウ及び前記光学素子の劣化を判定する処理部と、
を具備する極端紫外光源装置。
【請求項3】
前記ドライバーレーザは、プリパルスレーザとメインパルスレーザにより構成され、それぞれのレーザごとに前記ウインドウと前記レーザ光集光光学系を備える、請求項1または2に記載の極端紫外光源装置。
【請求項4】
前記処理部が、前記ウインドウが劣化していると判定した場合に、レーザ光の出射を停止させるための制御信号を前記ドライバーレーザに出力する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の極端紫外光源装置。
【請求項5】
さらに、極端紫外光の発生が行われないときに、前記レーザ光集光光学系によって集光された後にターゲット物質に照射されることなく発散したレーザ光のエネルギーを検出する第1のエネルギー検出器を備え、
前記処理部が、極端紫外光の発生が行われないときに、前記第1のエネルギー検出器によって検出されたレーザ光のエネルギーに基づいて、前記ウインドウ及び前記光学素子の劣化を判定する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の極端紫外光源装置。
【請求項6】
さらに、前記極端紫外光発生チャンバの外部に設けられウインドウを透過する前のレーザ光のエネルギーを検出する第2のエネルギー検出器を備えて、
前記処理部が、極端紫外光の発生が行われないときに、前記第1のエネルギー検出器と前記第2のエネルギー検出器とによって検出されたレーザ光のエネルギーに基づいて、前記ウインドウ及び前記光学素子の劣化を判定する、請求項5記載の極端紫外光源装置。
【請求項7】
前記メインパルスレーザ用の第1のエネルギー検出器は前記極端紫外光発生チャンバの外部に設けられ、ターゲット物質に照射せずに発散したレーザ光を前記第1のエネルギー検出器に導く凹面ミラーが前記極端紫外光発生チャンバ内に設けられた、請求項5または6に記載の極端紫外光源装置。
【請求項8】
前記凹面ミラーは、保護筐体中に出入可能に格納され、前記第1のエネルギー検出器による測定時に前記レーザ光の光路中に挿入される、請求項7記載の極端紫外光源装置。
【請求項9】
前記極端紫外光の発生が行われないときに、前記ターゲット物質供給部が前記ターゲット物質を噴射せず、前記ドライバーレーザがレーザ光を出射する、請求項5〜8のいずれか1項に記載の極端紫外光源装置。
【請求項10】
前記極端紫外光の発生が行われないときに、前記ターゲット物質供給部による前記ターゲット物質の噴射タイミングと、前記ドライバーレーザによるレーザ光の出射タイミングを調整して、前記レーザ光が前記ターゲット物質に照射しないようにした、請求項5〜8のいずれか1項に記載の極端紫外光源装置。
【請求項11】
前記極端紫外光の発生が行われないときに、前記ターゲット物質供給部による前記ターゲット物質の軌道と、前記ドライバーレーザによるレーザ光の光路を調整して、前記レーザ光が前記ターゲット物質に照射しないようにした、請求項5〜8のいずれか1項に記載の極端紫外光源装置。
【請求項12】
極端紫外光の発生が行われるときに、前記極端紫外光発生チャンバから出射する物質及び電磁波を遮蔽して前記ウインドウ及び前記極端紫外光発生チャンバ内に設けられた前記光学素子を保護する遮蔽手段を更に具備する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の極端紫外光源装置。
【請求項13】
ターゲット物質にレーザ光を照射することにより前記ターゲット物質をプラズマ化して極端紫外光を発生させる極端紫外光源装置であって、
極端紫外光の発生が行われる極端紫外光発生チャンバと、
極端紫外光の発生が行われるときに、ターゲット物質を前記極端紫外光発生チャンバ内に噴射するターゲット物質供給部と、
レーザ光を出射するドライバーレーザと、
前記極端紫外光発生チャンバに設けられ、レーザ光を前記極端紫外光発生チャンバ内に透過させるウインドウと、
前記極端紫外光発生チャンバ内に設けられた少なくとも1つの光学素子を含むレーザ光集光光学系であって、前記ドライバーレーザから出射されたレーザ光を前記極端紫外光発生チャンバ内に噴射されるターゲット物質の軌道上に集光させることによりプラズマを発生させる前記レーザ光集光光学系と、
前記ウインドウ及び前記極端紫外光発生チャンバ内に設けられた前記少なくとも1つの光学素子の温度を検出する温度センサと、
を具備し、
前記処理部が、極端紫外光の発生が行われるときに、前記温度センサによって検出された前記温度に基づいて、前記ウインドウ及び前記光学素子の劣化を判定する、極端紫外光源装置。
【請求項14】
前記ウインドウ及び前記極端紫外光発生チャンバ内に設けられた前記少なくとも1つの光学素子のそれぞれに冷却水を供給する冷却水路を備え、
前記判定部が、該冷却水による廃熱量に基づいて、前記ウインドウ及び前記少なくとも1つの光学素子の劣化を判定する、請求項13に記載の極端紫外光源装置。
【請求項15】
ターゲット物質にレーザ光を照射することにより前記ターゲット物質をプラズマ化して極端紫外光を発生させる極端紫外光源装置であって、
極端紫外光の発生が行われる極端紫外光発生チャンバと、
極端紫外光の発生が行われるときに、ターゲット物質を前記極端紫外光発生チャンバ内に噴射するターゲット物質供給部と、
レーザ光を出射するドライバーレーザと、
前記極端紫外光発生チャンバに設けられ、レーザ光を前記極端紫外光発生チャンバ内に透過させるウインドウと、
少なくとも1つの光学素子を含むレーザ光集光光学系であって、前記ドライバーレーザから出射されたレーザ光を前記極端紫外光発生チャンバ内に噴射されるターゲット物質の軌道上に集光させることによりプラズマを発生させる前記レーザ光集光光学系と、
前記ウインドウ及び前記少なくとも1つの光学素子の温度を検出する温度センサと、
を具備し、
前記ウインドウ及び前記極端紫外光発生チャンバ内に設けられた前記少なくとも1つの光学素子のそれぞれに冷却水を供給する冷却水路を備え、
前記判定部が、該冷却水による廃熱量に基づいて、前記ウインドウ及び前記少なくとも1つの光学素子の劣化を判定する、極端紫外光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−161318(P2010−161318A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4041(P2009−4041)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「極端紫外線(EUV)露光システムの基盤開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(300073919)ギガフォトン株式会社 (227)
【Fターム(参考)】