説明

樹脂パイプおよび樹脂成形品

【課題】フィラーパイプ20は、蛇腹部30におけるバリア層20cの肉厚を少ない樹脂材料で形成するとともに、優れた耐燃料透過性を備えること。
【解決手段】フィラーパイプ20は、複数の樹脂材料を同時に押出して流体用の通路を形成するとともに、山部30aと谷部30bとを連続して配置した蛇腹部30を賦形しており、高密度ポリエチレンから形成された外層20eと、耐燃料透過性に優れたEVOHから形成されたバリア層20cと、高密度ポリエチレンから形成された内層20aとを備えている。山部30aの頂点から谷部30bの底までの深さをdとし、山部30aの頂点からバリア層20cまでの距離をLとすると、d<Lとなるように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリア層を含む多層の管体を同時に押し出すとともに蛇腹部を形成した樹脂パイプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の樹脂パイプのうち、インレットパイプなどの燃料用のパイプに適用した場合において、耐燃料透過性に優れたバリア層を介在させることで、燃料蒸気の外部への放出量を低減している。こうしたインレットパイプとして、配策経路に沿って曲げ易くするために蛇腹部を設けたものが知られている(例えば、特許文献1)。図9は従来の樹脂パイプの蛇腹部の付近を示す断面図である。樹脂パイプ100は、通路100aを形成し、内層102と、バリア層104と、外層106とを積層することにより形成され、蛇腹部110を山部110aと谷部110bとにより形成している。こうした樹脂パイプ100は、ブロー成形法やコルゲート成形法により製造されている。ブロー成形法は、多層のパリソン内にブローすることにより金型で蛇腹形状に賦形する方法であり、コルゲート成形法は、多層の押出管体を押し出しつつループ状に搬送した金型で蛇腹形状に賦形する方法である。
【0003】
しかし、こうした成形方法では、蛇腹部110を賦形する際に、バリア層104も金型の成形面に沿って伸ばされるために、蛇腹部110におけるバリア層104の肉厚がストレート部と比べて50%以下になり、しかも表面積も増大する。これにより、肉厚の減少および表面積の増加に比例して耐燃料透過性が悪くなる。このため、蛇腹部110において、所定以上の耐燃料透過性を得るためには、蛇腹部110で薄くなる厚さを見込んだバリア層104の肉厚としなければならず、高価なバリア層104の材料量が多くなり、コストアップの要因になっていた。
【0004】
【特許文献1】特開平7−217776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の技術の問題点を解決することを踏まえ、蛇腹部におけるバリア層の肉厚を少ない樹脂材料で形成するとともに、優れた耐燃料透過性を備えた樹脂パイプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明は、
複数の樹脂材料を同時に押出して流体用の通路を形成するとともに、山部と谷部とを連続して配置した蛇腹部を賦形した樹脂パイプであって、
第1樹脂材料から形成された外層と、
上記外層より上記通路側に形成され、第1樹脂材料より耐流体透過性に優れた第2樹脂材料から形成されたバリア層と、
を備え、
上記山部の頂点から上記谷部の底までの深さをdとし、上記山部の頂点から上記バリア層の外層側までの距離をLとすると、d<Lとなるように構成したこと、を特徴とする。
【0007】
本発明にかかる樹脂パイプは、山部と谷部とを連続して配置した蛇腹部を備えているから、この蛇腹部を曲げることで曲がった経路への配策が容易である。また、樹脂パイプは、蛇腹部を含めて、外層より通路側にバリア層が配置されている。バリア層は、外層の樹脂材料より耐流体透過性に優れた樹脂材料から形成されているので、通路を流れる流体蒸気がバリア層に遮られ、外部への放出量を低減する。
また、蛇腹部の山部の頂点から谷部の底までの深さをdとし、上記山部の頂点からバリア層の外層側までの距離をLとすると、d<Lとなるように構成されている。この構成により、複数の樹脂材料を同時に押出しするとともに蛇腹部を賦形するときに、バリア層は、蛇腹部の外形に沿って大きく曲げられず、肉厚の大幅な低減や表面積の増加が防止される。これにより、樹脂パイプは、バリア層により、優れた耐流体透過性が得られる。
さらに、従来の技術のように、蛇腹部に配置されるバリア層が薄くなる量を見込んで、押出時におけるバリア層の肉厚を大きくする必要がなく、高価なバリア層の材料量を減らすことができる。
また、バリア層が蛇腹部の谷部の底よりも通路側に位置することで、蛇腹部の外層が多少傷ついても、バリア層まで達することがなく、耐燃料透過性に影響を及ぼさない。
【0008】
また、本発明の他の態様は、上記蛇腹部に接続されほぼ管状のストレート部を設け、上記山部の頂点から上記谷部の底までの深さをdとし、上記ストレート部の肉厚をtとすると、d<tとなるように構成することができる。このような、ストレート部の肉厚tよりも蛇腹部の谷部の深さdを小さくする態様によって、山部に内層(バリア層)が引き込まれることがなくなり、バリア層の表面積を少なくすることができる。
【0009】
さらに、本発明の好適な態様は、上記ストレート部に配置されている上記バリア層は、該ストレート部の外層の外面から該バリア層の外層側までの距離をLbとすると、Lb>t/2に配置されている構成をとることができる。この構成により、ストレート部に配置されているバリア層は、外層の肉厚がバリア層の通路側の肉厚よりも厚くなっているから、ストレート部に連続して蛇腹部を賦形するときに、外層を構成する第1樹脂材料が山部および谷部となるように塑性変形され、バリア層の塑性変形を小さくするから、バリア層は、蛇腹部の外形に沿って大きく曲げられず、肉厚の大幅な低減や表面積の増加が一層防止される。この場合において、第1樹脂材料は、第2樹脂材料よりヤング率が低い樹脂材料で調製することにより、外層の成形が容易になるとともに、バリア層の変形を一層小さくすることができる。
【0010】
また、他の態様は、第2樹脂材料は、耐燃料透過性に優れた樹脂材料であり、バリア層の通路側の面に、燃料に対する耐性を備えた第3樹脂材料からなる内層を積層した構成をとることができる。この構成により、樹脂パイプを燃料に適用した場合に、内層による燃料の耐性に加えて、バリア層による耐燃料透過性を高めることができる。
【0011】
さらに、他の態様として、上記外層と上記バリア層との間、および上記バリア層と上記内層との間に第4樹脂材料からなる接着層をそれぞれ設けた構成をとることができ、これにより各層間の接着を確実に達成することができる。ここで、上記第1および第3樹脂材料は、ポリエチレンであり、第2樹脂材料は、エチレンビニルアルコール共重合体であり、上記第4樹脂材料は、上記エチレンビニルアルコール共重合体に化学接着する変性ポリエチレンから形成することができる。
【0012】
また、本発明の他の好適な態様として、樹脂パイプに、射出成形により成形した射出成形品を溶着した樹脂成形品であって、上記樹脂パイプは、記射出成形品は、上記第1樹脂材料から形成され、上記樹脂パイプと溶着する成形品側溶着面を備え、上記樹脂パイプは、上記蛇腹部に形成され上記成形品側溶着面と溶着するパイプ側溶着面を備え、上記パイプ側溶着面は、上記蛇腹部の山部の外周部から上記バリア層の外面に至る上記外層により形成された面である構成をとることができる。この構成によると、樹脂パイプのパイプ側溶着面は、蛇腹部の山部の外周部からバリア層に至る外層により形成された広い面であり、バリア層の端面が露出しない面であるから、射出成形品の成形品側溶着面に広い面積で当たり、しかも同じ第1樹脂材料で形成されているから、成形品側溶着面に強固に溶着することができる。
本態様において、上記パイプ側溶着面は、上記山部の外周部から上記谷部の底にわたって形成される上記外層の斜面とする構成や、上記山部を上記バリア層に向かって切断したときに形成される上記外層の面とする構成をとることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以上説明した本発明の構成・作用を一層明らかにするために、以下本発明の好適な実施例について説明する。
【0014】
(1) 燃料供給機構10の構成
図1は本発明の第1実施例にかかる蛇腹部を有するフィラーパイプにより燃料タンクに接続する燃料供給機構を示す斜視図である。燃料供給機構10は、自動車の燃料タンクFTへの燃料供給に使用されるものであり、フィラーネックFNに接続されるフィラーパイプ20(樹脂パイプ)と、このフィラーパイプ20から分岐され燃料の注入時における燃料タンクFTの内圧を逃がすためのブリーザパイプ22とを備えている。フィラーパイプ20は、フィラーネックFNから燃料タンクFTまでの通路を形成している。フィラーネックFNの外壁には、フランジFNaが形成されており、このフランジFNaがインレットボックス(図示省略)に取り付けられることにより燃料供給機構10が車体側部材に装着される。フィラーパイプ20は、ストレート部24と、このストレート部24に接続された蛇腹部30とを備えている。蛇腹部30は、フィラーネックFNから燃料タンクFTまでの曲がった経路への配策を容易にするために設けられている。
【0015】
図2はフィラーパイプ20を示す断面図である。フィラーパイプ20は、耐燃料透過性に優れた樹脂材料から形成されたバリア層をサンドイッチにした5層から形成されている。すなわち、フィラーパイプ20は、内層20aと、接着層20bと、バリア層20cと、接着層20dと、外層20eとを備え、これらを形成する樹脂材料を同時に押し出すとともにパイプ形状に賦形する、後述するコルゲート成形方法により製造される。
【0016】
ここで、内層20aは、燃料に対する耐性を主目的として高密度ポリエチレン(HDPE)を選択している(第3樹脂材料)。バリア層20cは、耐燃料透過性を主目的としてエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)を選択している(第2樹脂材料)。外層20eは、機械的強度を主目的として高密度ポリエチレン(HDPE)を選択している(第1樹脂材料)。また接着層20b,20dは、バリア層20cと内層20aまたは外層20eの両方に接着することを主目的として、極性官能基としてマレイン酸変性した変性ポリエチレン(m−PE)を選択している。変性ポリエチレンは、同系のポリエチレンであるから外層20eおよび内層20aのHDPEに溶着するとともに、EVOHと化学接着により接合することから、これらの層間を接着する作用がある。
ここで、フィラーパイプ20において、各層に用いられている樹脂材料のヤング率は、HDPEが1000MPa、変性PEが750MPa、EVOHが3000MPaに調製されている。
また、押出成形する際の各々の樹脂材料において、JIS規格K7210におけるメルトフローレートは、HDPEが0.2g/10minに、EVOHが1.6g/10minに、変性PEが0.7g/10minに調製されている。
また、ストレート部24の肉厚tが4mmである場合において、内層20aが1.0mm、接着層20b,20dが0.5mm、バリア層20cが0.3mm、外層20eが1.7mmに調製されている。すなわち、バリア層20cは、ストレート部24の外層20eの外面からバリア層20cの外層20e側までの距離をLbとすると、Lb>t/2に配置されている。
【0017】
図3は蛇腹部を示す半断面図であり、各々の図3(A)〜(C)の蛇腹部30は、ストレート部24に接続され、山部30aと、谷部30bとを連続して形成され、軸方向に対して直角方向へ可撓性を有している。各々の第1ないし第3蛇腹部31〜33は、ピッチPが5mmで一定であるが、谷部30bの深さd1〜d3が異なっている。すなわち、ストレート部24の外径が34mm、肉厚tが4mmの場合において、図3(A)の第1蛇腹部31の谷部30bの深さd1が1.5mm、図3(B)の第2蛇腹部32の谷部30bの深さd2が2mm、図3(C)の第3蛇腹部33の谷部の深さd3が3mmになっている。このとき、第1ないし第3蛇腹部31〜33の谷部30bの深さd1〜d3とストレート部24の肉厚tの関係は、d1=0.375t、d2=0.5t、d3=0.75tで表わされる。なお、図9の従来に示す蛇腹部は、谷部の深さdが8mmとなっており、d=2tとなっている。第1ないし第3蛇腹部31〜33の谷部30bの深さd1〜d3を異にしたことに伴う作用などは後述する。
【0018】
(2) 燃料供給機構10の製造工程
次に、フィラーパイプ20の製造工程について説明する。図4はフィラーパイプ20を製造するためのパイプ製造装置50を説明する概略構成図である。パイプ製造装置50は、ストレート部24と蛇腹部30とで異なる断面形状にて、連続的にフィラーパイプ20を形成することができるものであり、いわゆるコルゲート機構を用いている。パイプ製造装置50は、押出管体20Pを押し出す管体押出ユニット60と、管体押出ユニット60から押し出された押出管体20Pの外周部を賦形する成形用金型ユニット70と、成形用金型ユニット70をループ状に搬送する搬送装置80と、により構成されている。
管体押出ユニット60は、フィラーパイプ20を5層の樹脂材料を同心状に押し出すための押出装置を備え、押出装置はスクリュ、シリンダおよびダイなどから構成されている。成形用金型ユニット70は、フィラーパイプ20の各部に倣った成形面、つまりストレート部24、蛇腹部30の形状に倣った成形面をそれぞれ有する複数の金型71(71A〜71D・・・)を備え、これらが押出管体20Pが搬送される搬送経路FLを通るようにそれぞれ配置されている。金型71は、搬送される押出管体20Pの中心軸に沿って分割された割型で構成されており、それらの割型がそれぞれループ状であり、型締めされるように配置されている。金型71の成形面には、図示しない吸引ポンプに接続される吸引通路が開口している。
【0019】
パイプ製造装置50によりフィラーパイプ20を製造するには、まず、管体押出ユニット60により押出管体20Pを押し出した後に、成形用金型ユニット70の金型71をループ状に搬送することにより行なう。このとき、金型71は、押出管体20P内にブローされるとともに、金型71の成形面が吸引ポンプにより吸引されることにより第1ないし第3蛇腹部31〜33が賦形される。ここで、バリア層20cの肉厚は、蛇腹部30で肉厚が薄くなるが、谷部30bの深さdを小さくしたので、押出管体20Pの肉厚に対して70%以上の肉厚を確保することができる。こうした連続工程を繰り返し、賦形された押出管体20Pを所定の位置で切断する。その後、蛇腹部を賦形した押出管体を樹脂の軟化点80〜90℃に予熱して、図示しない成形型の曲げ凹所に沿わせる曲げ加工を施すことにより、フィラーパイプ20が得られる。ここで、曲げ加工は、フィラーパイプ20の全長にわたって行なう工程をとったり、第1蛇腹部31のように谷部30bが小さく、曲げ難い箇所だけに行なう工程をとってもよい。
【0020】
(3) フィラーパイプ20の作用・効果
フィラーパイプ20およびその製造方法によれば、以下の作用効果を奏する。
(3)−1 フィラーパイプ20は、山部30aと谷部30bとを連続して配置した蛇腹部30を備えているから、蛇腹部30を曲げることで曲がった経路への配策性を容易にしている。
また、図3に示すように蛇腹部30は、谷部30bの深さを異にした3種類の形状を用いることにより、耐燃料透過性を考慮しつつ、配策性と燃料の流れ易さを実現している。すなわち、第1蛇腹部31は、谷部30bの深さd1が1.5mmと小さくすることにより、通路をより平滑面として流路抵抗を低減することができる。よって、給油時におけるフィラーパイプ20の注入口の近くであって、流量を大きくしたい箇所に適用されている。一方、第2蛇腹部32および第3蛇腹部33は、d2が2mm、d3が3mmと大きくすることにより、曲げやすいことから配策性に優れるとともに、振動吸収性にも優れる。よって、フィラーパイプ20の途中の経路で配策を容易にしたい箇所や、車両振動時に燃料タンクの揺れを吸収したい箇所に適用されている。
【0021】
(3)−2 バリア層20cは、外層20eの樹脂材料より耐燃料透過性に優れた樹脂材料から形成されているので、通路を流れる燃料蒸気の放出を遮り、外部への放出量を低減する。
しかも、バリア層20cは、蛇腹部30の賦形によって、できる限り薄くなるのを防止するために以下の構成がとられている。すなわち、第1ないし第3蛇腹部31〜33は、谷部30bの深さd(1〜3)と、山部30aの頂点からバリア層20cまでの距離をL(1〜3)との関係で、d<Lとなるように構成されており、しかも、肉厚tとの関係で、d<tとなるように形成されている。これにより、複数の樹脂材料を同時に押し出すとともに第1ないし第3蛇腹部31を賦形するときに、バリア層20cは、蛇腹部の形状に沿って大きく伸ばされず、押出前の70%以上の肉厚が確保される。しかも、バリア層20cの表面積も従来の技術と比べて小さくなる。これにより、バリア層20cは、その肉厚および表面積の増加が押出直後の肉厚と比べて小さく、表面積の増加も小さいから、優れた耐燃料透過性が得られる。
さらに、従来の技術のように、蛇腹部に配置されるバリア層が薄くなる量を見込んで、押出時におけるバリア層の肉厚を大きくする必要がなく、高価なバリア層の材料量を減らすことができる。
また、バリア層20cが蛇腹部30の谷部30bの底よりも内側に位置することで、蛇腹部30の外層が多少傷ついても、バリア層20cまで達することがなく、耐燃料透過性に影響を及ぼさない。
【0022】
(3)−3 フィラーパイプ20は、金型71の成形面の形状を変更すれば、蛇腹部30の深さも容易に変更することができる。
【0023】
(3)−4 ストレート部24に配置されているバリア層20cは、外層20eの肉厚がバリア層20cの通路側の肉厚よりも厚くなっているから、ストレート部24に連続して蛇腹部30を賦形するときに、外層20eを構成する第1樹脂材料が山部30aおよび谷部30bとなるように塑性変形され、バリア層20cの塑性変形を小さくするから、バリア層20cは、蛇腹部30の外形に沿って大きく曲げられず、肉厚の大幅な低減や表面積の増加が一層防止される。しかも、外層20eのHDPE(第1樹脂材料)は、バリア層20cのEVOH(第2樹脂材料)よりヤング率が低い樹脂材料を用いることにより、外層20eの成形が容易になるとともに、バリア層20cの変形を一層小さくすることができる。
【0024】
図5は第2実施例にかかる燃料供給機構10Bの要部を示す斜視図である。本実施例は、フィラーネックFNの流出管体FNbと、フィラーパイプ20Bの接続部の溶着構造に特徴を有する。すなわち、フィラーネックFNの流出管体FNbは、フィラーパイプ20Bの端部に溶着により接続されている。図6は流出管体FNbとフィラーパイプ20Bとの溶着部の付近を示す断面図、図7は流出管体FNbとフィラーパイプ20Bとを溶着する前の状態を説明する説明図である。流出管体FNbは、HDPE(第1樹脂材料)による射出成形により成形されており、その端部に成形品側溶着面FNcを備えている。一方、フィラーパイプ20Bの端部には、山部30Baと谷部30Bbとを備える蛇腹部30Bが形成されている。蛇腹部30Bは、その端部に流出管体FNbの成形品側溶着面FNcに溶着されるパイプ側溶着面30Bcを備えている。パイプ側溶着面30Bcは、蛇腹部30Bの山部30Baの外周部からバリア層20Bcに至る外層20Beにより形成された面であり、つまり、谷部30Bbの底で切断されたときの山部30Baの斜面である。
【0025】
流出管体FNbとフィラーパイプ20Bとを接続するには、成形品側溶着面FNcおよびパイプ側溶着面30Bcを熱板(図示省略)などにより加熱し両面を押し付けることにより行なう。パイプ側溶着面30Bcは、蛇腹部30Bの山部30Baの外周部からバリア層20Bcに至る外層20Beにより形成された広い面であり、バリア層20Bcの端面が露出しない面であるから、流出管体FNbの成形品側溶着面FNcに広い面積で当たり、しかも同じ第1樹脂材料で形成されているから、成形品側溶着面FNcに強固に溶着することができる。
なお、第2実施例のようにパイプ側溶着面は、山部の斜面を利用するほか、山部の外層を広い面積とし、バリア層を露出させない面であればよく、例えば、図8の変形例に示すように、フィラーパイプ20Cのパイプ側溶着面30Ccは、蛇腹部30Cの山部30Caの外周部からバリア層20Ccに向かって直角に切断されるときに形成される面であってもよい。
【0026】
(4) この発明は上記実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0027】
(4)−1 フィラーパイプを形成する樹脂材料として、耐燃料透過性に優れた材料であることが好ましく、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、ポリアミド(PA)、ポリオキシメチレン(アセタール)(POM)などの各種の材料を用いることができる。また、バリア層としては、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)のほかに、フッ素樹脂(ETFE,PVDF)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などを適用できる。
【0028】
(4)−2 上記実施例は、接着層を用いてバリア層と内層および外層と接着する構成について説明したが、これに限らず、内層および外層の樹脂材料として変性PEを用いてバリア層との接着性を付与することで、接着層をなくすことができ、3層の簡単な構成とすることができる。
【0029】
(4)−3 上記実施例では、コルゲート成形法によりフィラーパイプ20を成形したが、これに限らず、ブロー成形方法を用いてもよい。
【0030】
(4)−4 図9に示す従来の技術に相当する谷部の深い蛇腹部は、燃料タンクFTとの接合端部または途中に併設けることにより、フィラーパイプ20と燃料タンクFTとの共振周波数をずらして車両の振動を吸収するとともに、ラインの組付性を向上させてもよい。
【0031】
(4)−5 上記実施例では、フィラーパイプに適用したが、これに限らず、例えば、エンジンの冷却水系のウォータパイプなどにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施例にかかる蛇腹部を有するフィラーパイプにより燃料タンクに接続する燃料供給機構を示す斜視図である。
【図2】フィラーパイプを示す断面図である。
【図3】蛇腹部を説明する説明図である。
【図4】フィラーパイプを製造するためのパイプ製造装置を説明する概略構成図である。
【図5】第2実施例にかかる燃料供給機構の要部を示す斜視図である。
【図6】フィラーネックの流出管体とフィラーパイプとの溶着部の付近を示す断面図である。
【図7】流出管体とフィラーパイプとを溶着する前の状態を説明する説明図である。
【図8】第2実施例の変形例を説明する説明図である。
【図9】従来の樹脂パイプの蛇腹部の付近を示す断面図である。
【符号の説明】
【0033】
10...燃料供給機構
10B...燃料供給機構
20...フィラーパイプ
20B...フィラーパイプ
20C...フィラーパイプ
20P...押出管体
20a...内層
20b,20d...接着層
20c...バリア層
20e...外層
20Bc...バリア層
20Cc...バリア層
20Be...外層
22...ブリーザパイプ
24...ストレート部
30...蛇腹部
30B...蛇腹部
30C...蛇腹部
30a...山部
30b...谷部
30Ba...山部
30Ca...山部
30Bb...谷部
30Bc...パイプ側溶着面
30Cc...パイプ側溶着面
31...第1蛇腹部
32...第2蛇腹部
33...第3蛇腹部
50...パイプ製造装置
60...管体押出ユニット
70...成形用金型ユニット
71...金型
80...搬送装置
FT...燃料タンク
FN...フィラーネック
FNa...フランジ
FNb...流出管体
FNc...成形品側溶着面
FL...搬送経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の樹脂材料を同時に押出して流体用の通路を形成するとともに、山部と谷部とを連続して配置した蛇腹部を賦形した樹脂パイプであって、
第1樹脂材料から形成された外層と、
上記外層より通路側に形成され、第1樹脂材料より耐流体透過性に優れた第2樹脂材料から形成されたバリア層と、
を備え、
上記山部の頂点から上記谷部の底までの深さをdとし、上記山部の頂点から上記バリア層の外層側までの距離をLとすると、d<Lとなるように構成したこと、を特徴とする樹脂パイプ。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂パイプにおいて、
上記蛇腹部に接続されたほぼ管状のストレート部を設け、
上記ストレート部の肉厚をtとすると、d<tとなるように構成した樹脂パイプ。
【請求項3】
請求項2に記載の樹脂パイプにおいて、
上記ストレート部に配置されている上記バリア層は、該ストレート部の外層の外面から該バリア層の外層側までの距離をLbとすると、Lb>t/2に配置されている樹脂パイプ。
【請求項4】
請求項1に記載の樹脂パイプにおいて、
上記蛇腹部に接続されたほぼ管状のストレート部を設け、
上記ストレート部に配置されている上記バリア層は、該ストレート部の外層の外面から該バリア層の外層側までの距離をLbとすると、Lb>t/2に配置されている樹脂パイプ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の樹脂パイプにおいて、
上記第1樹脂材料は、上記第2樹脂材料よりヤング率が低い樹脂材料で調製されている樹脂パイプ。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の樹脂パイプにおいて、
上記バリア層の通路側の面に、燃料に対する耐性を備えた第3樹脂材料からなる内層を積層した樹脂パイプ。
【請求項7】
請求項6に記載の樹脂パイプにおいて、
上記外層と上記バリア層との間、および上記バリア層と上記内層との間に第4樹脂材料からなる接着層をそれぞれ設けた樹脂パイプ。
【請求項8】
請求項7に記載の樹脂パイプにおいて、
上記第1および第3樹脂材料は、ポリエチレンであり、第2樹脂材料は、エチレンビニルアルコール共重合体であり、上記第4樹脂材料は、上記エチレンビニルアルコール共重合体に化学接着する変性ポリエチレンから形成されている樹脂パイプ。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の樹脂パイプに、射出成形により成形された射出成形品を溶着した樹脂成形品であって、
上記射出成形品は、上記第1樹脂材料から形成され、上記樹脂パイプと溶着する成形品側溶着面を備え、
上記樹脂パイプは、上記蛇腹部に形成され上記成形品側溶着面と溶着するパイプ側溶着面を備え、上記パイプ側溶着面は、上記蛇腹部の山部の外周部から上記バリア層の外面に至る上記外層により形成された面である樹脂成形品。
【請求項10】
請求項9に記載の樹脂成形品において、
上記パイプ側溶着面は、上記山部の外周部から上記谷部の底にわたって形成される上記外層の斜面である樹脂成形品。
【請求項11】
請求項9に記載の樹脂成形品において、
上記パイプ側溶着面は、上記山部を上記バリア層に向かって切断したときに形成される上記外層の面である樹脂成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−46772(P2007−46772A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−138683(P2006−138683)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】