説明

樹脂剥がし装置および研削加工装置

【課題】ワークの一面を被覆する硬化した樹脂を容易に剥離できる樹脂剥がし装置を提供する。
【解決手段】円盤状のワークWの表面に貼りついた硬化樹脂膜Rを前記ワークWから剥離する樹脂剥がし装置であって、前記硬化樹脂膜Rは前記ワークWのエッジ全周からはみ出した状態で前記ワークWの表面に貼りついており、前記ワークWの裏面を吸着保持する保持面10hが形成された保持部10aと、前記保持部10aに保持された前記ワークWに貼りついた前記硬化樹脂膜Rのうち前記ワークWのエッジからはみ出した箇所に前記ワークWの裏面から表面に向けて外力を与える外力付与部10bと、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハなどのワーク(被加工物)の一面を被覆するように塗布した樹脂を剥離する樹脂剥がし装置およびこれを備えた研削加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造に用いるワークのうねりや反りを除去するために、ワークの一面に樹脂を塗布し、これを硬化させた後にワークを研削することによってワーク表面を平坦に加工する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−148866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記方法を用いた場合には、ワーク表面の研削後に、ワークの一面を被覆する硬化した樹脂を剥離する必要がある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、ワークの一面を被覆する硬化した樹脂を容易に剥離することができる樹脂剥がし装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の樹脂剥がし装置は、円盤状のワークの表面に貼りついた樹脂を前記ワークから剥がす樹脂剥がし装置であって、前記樹脂は前記ワークのエッジ全周からはみ出した状態で前記ワークの表面に貼りついており、前記ワークの裏面を吸着保持する保持面が形成された保持部と、前記保持部に保持された前記ワークに貼りついた前記樹脂のうち前記ワークのエッジからはみ出した箇所に前記ワークの裏面から表面に向けて外力を与える外力付与部と、を有することを特徴とする。
【0007】
この樹脂剥がし装置によれば、ワーク表面に貼りついた樹脂のうち、ワークのエッジからはみ出した箇所に外力を与えることにより、樹脂の外縁部を部分的にワークから剥離して、この剥離領域をきっかけとして樹脂全体の剥離を行うことができるため、ワーク一面を被覆する硬化した樹脂を容易に剥離することが可能となる。
【0008】
例えば、上記樹脂剥がし装置において、前記外力付与部は、前記保持面を囲繞して前記保持面よりも突出した突出部で構成される。
【0009】
なお、上記樹脂剥がし装置において、前記外力付与部は、前記樹脂を突き上げる突き上げ部と、前記突き上げ部を前記保持面よりも突出した位置に移動させる移動部と、を有する構成としてもよい。
【0010】
特に、上記樹脂剥がし装置において、前記突き上げ部は、前記保持面を囲繞していることが好ましい。
【0011】
また、上記樹脂剥がし装置において、前記突き上げ部は、前記保持面に隣接するローラーの外周曲面であり、前記突き上げ部と前記保持部とを前記突き上げ部が前記保持面の周囲を相対的に回転移動するように移動させる構成としてもよい。
【0012】
本発明の研削加工装置は、上記樹脂剥がし装置を内蔵することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ワークの一面を被覆する硬化した樹脂を容易に剥離できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施の形態に係る研削加工装置の外観斜視図である。
【図2】一面を硬化樹脂膜で被覆したワークを示す断面模式図である。
【図3】上記実施の形態に係る樹脂剥がし装置において(a)保持部にワークを載置した状態、(b)ワークのエッジからはみ出した硬化樹脂膜に外力を与えた状態を示す断面模式図である。
【図4】上記実施の形態に係る樹脂剥がし装置のローラーおよびクランプ機構により硬化樹脂膜を剥離する状態を示す断面模式図である。
【図5】第2の実施の形態に係る樹脂剥がし装置において(a)保持部にワークを載置した状態、(b)ワークのエッジからはみ出した硬化樹脂膜に外力を与えた状態を示す断面模式図である。
【図6】第3の実施の形態に係る樹脂剥がし装置において(a)保持部にワークを載置した状態、(b)ワークのエッジからはみ出した硬化樹脂膜に外力を与えた状態を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
以下の説明において、本発明に係る樹脂剥がし装置が研削加工装置に内蔵される場合について説明するが、樹脂剥がし装置が内蔵される装置についてはこれに限定されるものではない。
【0016】
図1は、第1の実施の形態に係る研削加工装置1の外観斜視図である。図1に示すように、研削加工装置1は、硬化樹脂膜Rが形成された面を下向きにしてワークWを保持するチャックテーブル2と、研削ユニット3の研削ホイール3aとを相対回転してワークW表面に研削加工を施した後、ワークWに貼着された硬化樹脂膜Rを剥離するように構成される。
【0017】
ここで、図2に基づいて、研削加工装置1の被加工物であるワークWについて説明する。図2は、一面を硬化樹脂膜Rで被覆したワークWを示す断面模式図である。円盤状のワークWは、ワイヤソーを用いた切断装置によってインゴットを所定の厚さにスライスして得られたもので、うねりや反りが生じている。このうねりや反りを除去するために、ワークWの一面(表面Ws)に液状樹脂を塗布して、この液状樹脂を硬化することによって平坦な基準面である硬化樹脂膜Rを形成する。硬化樹脂膜Rを形成した後、ワークWを所望の厚さに研削することによってワークWに生じたうねりや反りが除去される。
【0018】
硬化樹脂膜Rは、樹脂塗布装置においてワークWに液状樹脂を塗布し、それを硬化することによって形成される。樹脂塗布装置は、例えば、ステージに吸着保持されたシートSに液状のUV硬化樹脂を供給し、押圧パッドに保持されたワークWをUV硬化樹脂の上方からステージ側へ押圧する構成からなる。ワークWが押圧されると、シートSに供給された液状樹脂はワークWの表面Ws全面に均一に広がり、ワークWのエッジ全周からはみだす状態となる。続いて、液状樹脂に対して、UVランプから発せられる紫外線を照射すると液状樹脂は硬化し、ワークWの表面Wsに硬化樹脂膜Rが形成される。なお、シートSは、例えば、ポリエチレンテレフタラート等の弾性を有する柔らかい材料であればよい。
【0019】
図1に示すように、研削加工装置1には、略直方体状の基台4のY軸手前側の端部からY軸方向に突出する一対のカセット載置部5a,5bが設置されている。カセット載置部5aは、搬入口として機能し、加工前のワークWを収容した搬入側のカセット6aが載置される。また、カセット載置部5bは、搬出口として機能し、加工後のワークWを収容した搬出側のカセット6bが載置される。
【0020】
基台4上には、カセット載置部5a,5bに面してX軸方向に延在する矩形状の開口部7cが設けられている。開口部7c内には、カセット6a,6bに対してワークWの搬入および搬出を行う第1の搬送ロボット7が、開口部7cに沿ってX軸方向に移動自在に設置されている。第1の搬送ロボット7は、駆動領域の広い多節リンク機構7aと、多節リンク機構7aの先端に設けられたロボットハンド7bとを含んで構成される。第1の搬送ロボット7は、多節リンク機構7aを駆動して搬入側のカセット6a内に収容されたワークWを仮置きテーブル8に搬送し、また、洗浄手段9から搬出側のカセット6b内にワークWを搬送する。さらに、洗浄手段9から樹脂剥がし装置10へワークWを搬送し、また、樹脂剥がし装置10から仮置きテーブル8へワークWを搬送する。
【0021】
基台4上の開口部7cに隣接するX軸手前側には、ワークWを中央合わせするための仮置きテーブル8が設けられている。仮置きテーブル8は、径方向に移動可能な複数本(本実施の形態では6本)のピン8aを備えている。
【0022】
基台4上の開口部7cに隣接するX軸奥側には、加工後のワークWを洗浄する洗浄手段9が設けられている。洗浄手段9は、加工後のワークWが供給されると開口部9aを介して基台4内に下降して、洗浄液が噴射された状態で高速回転することでワークWを洗浄し、その後ワークWを乾燥する。
【0023】
仮置きテーブル8と洗浄手段9との間には、基台4上の開口部7cに隣接して、ワークWから硬化樹脂膜Rを剥離する樹脂剥がし装置10が設けられている。樹脂剥がし装置10は、硬化樹脂膜Rが形成されていないワークW裏面を吸着保持する保持部10aと、ワークWのエッジからはみ出した硬化樹脂膜Rに対して外力を与える外力付与部10bと、剥離用のローラー10cおよびクランプ機構10dと、ローラー10cおよびクランプ機構10dを支持する略L字状の支持壁10eと、剥離した樹脂を廃棄する廃棄穴10fと、を含んで構成される。保持部10aは、吸引孔10gと保持面10hとから構成される。吸引孔10gは、基台4内に設置された図示しない吸引源に接続される。保持面10hは、ワークWに対応した略円板状であり、ワークWより0.5[mm]〜2[mm]外径が大きく形成されている。また、保持面10hは、基台4表面より低い位置にあるため、保持面10hと基台4表面との間には段差が生じている。
【0024】
外力付与部10bは、保持面10hを囲繞し、保持面10hよりも突出した突出部を構成している。第1の実施の形態に係る樹脂剥がし装置10においては、外力付与部10bは、研削加工装置1の基台4表面に等しい。
【0025】
支持壁10eには、ローラー10cおよびクランプ機構10dに対応したガイド溝10i,10jがそれぞれ設けられている。ローラー10cは、自由回転しながら、ガイド溝10iに沿って保持部10aから廃棄穴10fまでX軸方向に移動自在に設置される。一方、クランプ機構10dは、ガイド溝10jに沿って保持部10aから廃棄穴10fまでX軸方向に移動自在、かつ、ガイド溝10jの両端部でZ軸方向に移動自在に設置される。
【0026】
基台4上には、仮置きテーブル8、洗浄手段9および樹脂剥がし装置10に面してX軸方向に延在する矩形状の開口部11cが設けられている。開口部11c内には、チャックテーブル2に対してワークWの供給および回収を行う第2の搬送ロボット11が、開口部11cに沿ってX軸方向に移動自在に設置されている。第2の搬送ロボット11は、第1の搬送ロボット7と同様の構成であり、駆動領域の広い多節リンク機構11aと、多節リンク機構11aの先端に設けられたロボットハンド11bとを含んで構成される。第2の搬送ロボット11は、多節リンク機構11aを駆動して仮置きテーブル8にて中心合わせされた研削加工前のワークWをチャックテーブル2に搬送し、また、チャックテーブル2から研削加工後のワークWを回収して洗浄手段9に搬送する。
【0027】
基台4上には、開口部11cに隣接して、Y軸方向に延在する矩形状の開口部12aが設けられている。開口部12aには、チャックテーブル2とともに移動可能な移動板12bおよび蛇腹状の防水カバー12cにより被覆される。防水カバー12cの下方には、チャックテーブル2をY軸方向に移動する図示しないボールねじ式の移動機構が設けられている。チャックテーブル2は、この移動機構により、第2の搬送ロボット11によってワークWが移載される移載位置と、研削ユニット3によってワークWが研削加工される加工位置との間を往復移動する。
【0028】
移動板12b上に、チャックテーブル2が設置されている。チャックテーブル2は、円板状に形成されており、ワークWを吸着保持するワーク保持部2aを備える。ワーク保持部2aは、例えば、ポーラスセラミック材により形成されており、基台4内に設置された図示しない吸引源に接続される。
【0029】
基台4上には、開口部12aに隣接して支柱部13aが立設されている。支柱部13aにはZ軸方向に形成された一対のZ軸ガイドレール13b,13cが配設されている。Z軸テーブル13dは、Z軸ガイドレール13b,13cに沿ってZ軸方向に移動自在に設置されている。Z軸テーブル13dの背面部には、図示しないナット部が形成され、ナット部にボールねじ13eが螺合されている。そして、ボールねじ13eの端部には、駆動モータ13fが連結され、駆動モータ13fによりボールねじ13eが回転駆動される。
【0030】
Z軸テーブル13dには、支持部13gを介して研削ユニット3が支持されている。研削ユニット3には、図示しないスピンドルの下端に研削ホイール3aが着脱自在に装着される。研削ホイール3aは、例えば、ダイヤモンドの砥粒をメタルボンドやレジンボンドなどの結合剤で固めたダイヤモンド砥石で構成されている。研削ユニット3は、図示しないノズルから研削液を噴射しながら、チャックテーブル2に保持されたワークWを研削加工する。
【0031】
続いて、第1の実施の形態に係る研削加工および樹脂剥離の流れについて説明する。まず、第1の搬送ロボット7によって硬化樹脂膜Rが形成された研削加工前のワークWをカセット6aから搬出し、硬化樹脂膜Rが形成された面を下向きにして仮置きテーブル8に載置する。仮置きテーブル8において中心合わせされたワークWは、第2の搬送ロボット11によって硬化樹脂膜Rが形成された面を下向きにしてチャックテーブル2上に載置される。チャックテーブル2に保持されたワークWは、加工位置において研削ユニット3によって所定の厚みまで表面を平坦に研削される。
【0032】
研削加工終了後、移載位置にあるワークWを第2の搬送ロボット11によって硬化樹脂膜Rが形成された面を下向きにして洗浄手段9に供給する。洗浄処理終了後、第1の搬送ロボット7によって、ワークWを洗浄手段9から樹脂剥がし装置10へ搬送する。このとき、第1の搬送ロボット7のロボットハンド7bをワークWの下に挿入してワークWをすくうように持ち上げ、硬化樹脂膜Rが形成されていない面(ワークW裏面)が下向きになるようにワークWをひっくり返して、樹脂剥がし装置10の保持部10aに載置する。
【0033】
ここで、樹脂剥がし装置10による樹脂剥離について詳細に説明する。図3は、樹脂剥がし装置10において(a)保持部10aにワークWを載置した状態、(b)ワークWのエッジからはみ出した硬化樹脂膜Rに外力を与えた状態を示す断面模式図である。図3(a)に示すように、ワークWを保持部10aの保持面10hに載置すると、ワークWのエッジからはみ出した硬化樹脂膜R(以下、硬化樹脂膜Rのエッジ部とも記す)に外力付与部10bが当接する構造となっている。
【0034】
図3(a)に示す状態から、吸引孔10gに接続された吸引源によってワークWを吸引すると、ワークW裏面には保持面10hに引き寄せられる方向(図3に示す下向き)に力が加わり、外力付与部10bに接触する硬化樹脂膜Rのエッジ部には、この部分を持ち上げる方向(図3に示す上向き、ワークWの裏面側から表面Ws側に向かう方向)の外力が加わる。その結果、図3(b)に示すように、硬化樹脂膜Rのエッジ部はワークWから剥離し、硬化樹脂膜Rのエッジ部とワークWとの間には、硬化樹脂膜Rの剥離のきっかけとなる隙間が形成される。
【0035】
図4は、樹脂剥がし装置10のローラー10cおよびクランプ機構10dにより硬化樹脂膜Rを剥離する状態を示す断面模式図である。まず、ローラー10cおよびクランプ機構10dを、それぞれガイド溝10i,10jのX軸手前側の端部まで移動する。クランプ機構10dは、ガイド溝10jのX軸手前側の端部においてZ軸方向下向きに移動し、クランプ部10kの先端が下を向くため、クランプ機構10dのクランプ部10kの高さは硬化樹脂膜Rのエッジ部とほぼ等しい高さとなる。これにより、硬化樹脂膜Rのエッジ部に位置するシートSをクランプすることが可能となる。クランプ部10kによって硬化樹脂膜Rのエッジ部に位置するシートSをクランプした後、ガイド溝10jに沿ってクランプ機構10dを移動する。クランプ機構10dはまず、Z軸方向上向きに移動するため、ワークWに対してZ軸方向上向きに硬化樹脂膜Rを剥離する力が加わる。
【0036】
クランプ機構10dによる剥離が開始されると、ワークWに加わるダメージを軽減するため、ローラー10cが回転しながらガイド溝10iに沿って移動する。図4に示すように、ローラー10cおよびクランプ機構10dを図示左方向に移動しながら、硬化樹脂膜RおよびシートSを剥離していく。このとき、ワークWは保持面10hに吸引保持されているため、ワークWが浮き上がることなく硬化樹脂膜RおよびシートSを剥離することができる。
【0037】
ローラー10cがワークW上を通過し、硬化樹脂膜R全体がワークWから剥離された後、クランプ機構10dは硬化樹脂膜Rのエッジ部に位置するシートSをクランプしたままガイド溝10jに沿ってZ軸方向上向きに移動する。クランプ機構10dは、ガイド溝10jの最上位置に位置する端部に到達すると、クランプ部10kを開放する。その結果、ワークWから剥離された硬化樹脂膜RおよびシートSは、廃棄穴10fに落下して廃棄される。
【0038】
樹脂剥がし装置10によって硬化樹脂膜Rが剥離されたワークWは、第1の搬送ロボット7によって、樹脂剥がし装置10から仮置きテーブル8まで搬送され、硬化樹脂膜Rが形成されていた面(ワークW表面Ws)を上向きにして仮置きテーブル8に載置される。仮置きテーブル8において中心合わせされたワークWは、第2の搬送ロボット11によってワークW表面Wsを上向きにしてチャックテーブル2上に載置される。チャックテーブル2に保持されたワークWは、加工位置において研削ユニット3によって所定の厚みまで表面を研削される。
【0039】
研削加工終了後、移載位置にあるワークWを第2の搬送ロボット11によってワークW表面Wsを上向きにして洗浄手段9に載置する。洗浄処理終了後、第1の搬送ロボット7によって洗浄手段9からワークWを搬出し、カセット6b内に収容する。
【0040】
以上のように、第1の実施の形態に係る樹脂剥がし装置10によれば、ワークWの一面に形成された硬化樹脂膜Rのエッジ部に外力を与えることにより、硬化樹脂膜Rのエッジ部を部分的にワークWから剥離して、この剥離領域をきっかけとして硬化樹脂膜R全体の剥離を行うことができるため、ワークW一面を被覆する硬化樹脂膜Rを容易に剥離することが可能となる。
【0041】
また、第1の実施の形態に係る樹脂剥がし装置10において、外力付与部10bは、保持面10hを囲繞し、保持面10hよりも突出した突出部を構成しているため、保持面10hに載置されたワークWを吸引することによって、外力付与部10bに接触する硬化樹脂膜Rのエッジ部全体に均一に外力を加えることができる。
【0042】
このような樹脂剥がし装置10を内蔵した研削加工装置1によれば、研削加工と樹脂剥離を同一の装置で行うことができるため、装置間の移動に伴うワークWの汚染を防ぐことができ、また、処理時間を短縮することができる。さらに、装置の設置スペースを抑えることができる。
【0043】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態で示した樹脂剥がし装置10とは異なる構造の樹脂剥がし装置20について説明する。樹脂剥がし装置20は、保持部10aおよび外力付与部10bの構造が、樹脂剥がし装置10と相違する。以下、第2の実施の形態に係る樹脂剥がし装置20について、図5に基づいて説明する。図5は、樹脂剥がし装置20において(a)保持部20aにワークWを載置した状態、(b)ワークWのエッジからはみ出した硬化樹脂膜Rに外力を与えた状態を示す断面模式図である。なお、第2の実施の形態において、第1の実施の形態に係る研削加工装置1と共通する構成については同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0044】
図5に示すように、樹脂剥がし装置20の保持部20aは、保持面20cと吸引孔20dとから構成される。保持面20cは、ワークWの外径とほぼ同径に構成されている。また、保持面20cの上面は、基台4の上面と高さが等しい。外力付与部20bは、硬化樹脂膜Rのエッジ部を突き上げる突き上げ部20eと、突き上げ部20eを保持面20cよりも突出した位置に移動させる図示しない移動部とから構成される。突き上げ部20eは、円形状の保持面20cを囲繞しており、保持面20cよりも突出した位置に移動することにより、保持面20cとの間に段差が作られる。なお、突き上げ部20eの上面は、移動部によって移動されていない状態では、基台4の上面と高さが等しい。
【0045】
樹脂剥がし装置20による樹脂剥離工程について説明する。まず、図5(a)に示すように、硬化樹脂膜Rが形成されていない面(ワークW裏面)を下向きにして、保持部20aにワークWを載置する。このとき、硬化樹脂膜Rのエッジ部は、保持面20cからはみ出した状態となる。
【0046】
吸引孔20dに接続された吸引源によってワークWを吸引した状態で、図5(b)に示すように、外力付与部20bの移動部によって、突き上げ部20eを保持面20cよりも突出した位置に移動させる。突き上げ部20eは、保持面20cからはみ出している硬化樹脂膜Rのエッジ部に接触し、硬化樹脂膜Rのエッジ部にはこの部分を持ち上げる方向(図5に示す上向き)の外力が加わる。その結果、図5(b)に示すように、硬化樹脂膜Rのエッジ部はワークWから剥離し、硬化樹脂膜Rのエッジ部とワークWとの間には、硬化樹脂膜Rの剥離のきっかけとなる隙間が形成される。
【0047】
その後は、第1の実施の形態と同様に、樹脂剥がし装置20のローラー10cおよびクランプ機構10dにより、ワークWから硬化樹脂膜Rを剥離すればよい。
【0048】
以上のように、第2の実施の形態に係る樹脂剥がし装置20によれば、ワークWの一面に形成された硬化樹脂膜Rのエッジ部に外力を与えることにより、硬化樹脂膜Rのエッジ部を部分的にワークWから剥離して、この剥離領域をきっかけとして硬化樹脂膜R全体の剥離を行うことができるため、ワークW一面を被覆する硬化樹脂膜Rを容易に剥離することが可能となる。
【0049】
また、樹脂剥がし装置20における保持部20aの保持面20cおよび外力付与部20bにおける突き上げ部20eの上面は、非使用状態において研削加工装置1の基台4の上面と等しい高さとなる。したがって、研削加工装置1の表面に段差がないため、樹脂剥がし装置20を洗浄し易いという利点がある。
【0050】
また、第2の実施の形態に係る樹脂剥がし装置20において、突き上げ部20eは、保持面20cを囲繞しているため、突き上げ部20eを保持面20cよりも突出した位置に移動させることによって、外力付与部10bに接触する硬化樹脂膜Rのエッジ部全体に均一に外力を加えることができる。
【0051】
(第3の実施の形態)
第1の実施の形態で示した樹脂剥がし装置10とは異なる構造の樹脂剥がし装置30について説明する。樹脂剥がし装置30は、保持部10aおよび外力付与部10bの構造が、樹脂剥がし装置10と相違する。以下、第3の実施の形態に係る樹脂剥がし装置30について、図6に基づいて説明する。図6は、樹脂剥がし装置30において(a)保持部30aにワークWを載置した状態、(b)ワークWのエッジからはみ出した硬化樹脂膜Rに外力を与えた状態を示す断面模式図である。なお、第3の実施の形態において、第1の実施の形態に係る研削加工装置1と共通する構成については同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0052】
図6に示すように、樹脂剥がし装置30の保持部30aは、保持面30cと吸引孔30dとから構成される。保持面30cは、ワークWの外径とほぼ同径に構成されている。また、保持面30cの上面は、基台4の上面と高さが等しい。外力付与部30bは、保持面30cの外周を回転しながら移動するローラーから構成される。このローラーは、図6に示す上下方向に移動可能であり、硬化樹脂膜Rのエッジ部に接触してエッジ部を突き上げた状態で保持面30cの周囲を相対的に回転移動する。したがって、このローラーの外周曲面は突き上げ部を構成している。
【0053】
樹脂剥がし装置30による樹脂剥離工程について説明する。まず、図6(a)に示すように、硬化樹脂膜Rが形成されていない面(ワークW裏面)を下向きにして、保持部30aにワークWを載置する。このとき、硬化樹脂膜Rのエッジ部は、保持面30cからはみ出した状態となる。また、外力付与部30bを構成するローラーは、硬化樹脂膜Rのエッジ部に当接していない。
【0054】
外力付与部30bを構成するローラーを、硬化樹脂膜Rのエッジ部に当接する位置まで移動させ、吸引孔30dに接続された吸引源によってワークWを吸引した状態で、図6(b)に示すように、ローラーを保持部30aの外周に沿って回転させながら移動させる。ローラーは、保持面30cからはみ出している硬化樹脂膜Rのエッジ部に接触し、硬化樹脂膜Rのエッジ部にはこの部分を持ち上げる方向(図6に示す上向き)の外力が加わる。その結果、図6(b)に示すように、硬化樹脂膜Rのエッジ部はワークWから剥離し、硬化樹脂膜Rのエッジ部とワークWとの間には、硬化樹脂膜Rの剥離のきっかけとなる隙間が形成される。
【0055】
その後は、第1の実施の形態と同様に、樹脂剥がし装置30のローラー10cおよびクランプ機構10dにより、ワークWから硬化樹脂膜Rを剥離すればよい。
【0056】
以上のように、第3の実施の形態に係る樹脂剥がし装置30によれば、ワークWの一面に形成された硬化樹脂膜Rのエッジ部に外力を与えることにより、硬化樹脂膜Rのエッジ部を部分的にワークWから剥離して、この剥離領域をきっかけとして硬化樹脂膜R全体の剥離を行うことができるため、ワークW一面を被覆する硬化樹脂膜Rを容易に剥離することが可能となる。
【0057】
また、樹脂剥がし装置30における突き上げ部は、外力付与部30bを構成するローラーの外周曲面なので、装置に占める外周付与部30bの設置スペースを抑えることができる。特に、保持部30aを回転することにより、保持部30aの外周に沿って相対的にローラーを移動させる構成とすれば、装置に占める外周付与部30bの設置スペースをさらに抑えることができる。
【0058】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、さまざまに変更して実施可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更が可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施可能である。
【0059】
例えば、第2の実施の形態においては、突き上げ部20eが保持面20c全体を囲繞する構成について説明したが、この構成に限定されず、適宜変更が可能である。例えば、突き上げ部20eを、保持面20cの周りに断片的に設ける構成であってもよい。
【0060】
また、第3の実施の形態においては、外力付与部30bを構成するローラーを1つ設ける構成について説明したが、この構成に限定されず、適宜変更が可能である。例えば、外力付与部30bを構成するローラーを、複数設ける構成であってもよい。
【0061】
上記実施の形態においては、樹脂剥がし装置10(20,30)の外力付与部10b(20b、30b)により、硬化樹脂膜Rのエッジ部全周を剥離して、樹脂剥離のきっかけとなる隙間を形成する構成について説明したが、この構成に限定されず、適宜変更が可能である。例えば、樹脂剥離のきっかけとなる隙間を、硬化樹脂膜Rのエッジ部の一部に設ける構成であってもよい。あるいは、樹脂剥離のきっかけとなる隙間を、硬化樹脂膜Rのエッジ部に沿って所定間隔ごとに部分的に設ける構成であってもよい。
【0062】
さらに、上記実施の形態において、硬化樹脂膜Rのエッジ部を剥離して樹脂剥離のきっかけとなる隙間を形成した後、樹脂剥がし装置10(20,30)のローラー10cおよびクランプ機構10dにより硬化樹脂膜Rを剥離する構成について説明したが、この構成に限定されず、適宜変更が可能である。例えば、ローラー10cを用いずにクランプ機構10dのみで硬化樹脂膜R全体を剥離する構成であってもよい。あるいは、樹脂剥離のきっかけとなる隙間にくさび形状をなす部材を差し込んで、この部材を進行させることにより硬化樹脂膜R全体を剥離する構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上説明したように、本発明は、ワークの一面を被覆する硬化した樹脂を容易に剥離できるため、半導体ウェーハなどのワーク(被加工物)の一面を被覆するように塗布した樹脂を剥離する樹脂剥がし装置に有用である。
【符号の説明】
【0064】
1 研削加工装置
2 チャックテーブル
2a ワーク保持部
3 研削ユニット
3a 研削ホイール
4 基台
5a,5b カセット載置部
6a,6b カセット
7 第1の搬送ロボット
7a 多節リンク機構
7b ロボットハンド
7c 開口部
8 仮置きテーブル
8a ピン
9 洗浄手段
9a 開口部
10 樹脂剥がし装置
10a 保持部
10b 外力付与部
10c ローラー
10d クランプ機構
10e 支持壁
10f 廃棄穴
10g 吸引孔
10h 保持面
10i,10j ガイド溝
10k クランプ部
11 第2の搬送ロボット
11a 多節リンク機構
11b ロボットハンド
11c 開口部
12a 開口部
12b 移動板
12c 防水カバー
13a 支柱部
13b,13c Z軸ガイドレール
13d Z軸テーブル
13e ボールねじ
13f 駆動モータ
13g 支持部
20 樹脂剥がし装置
20a 保持部
20b 外力付与部
20c 保持面
20d 吸引孔
20e 突き上げ部
30 樹脂剥がし装置
30a 保持部
30b 外力付与部
30c 保持面
30d 吸引孔
W ワーク
R 硬化樹脂膜
S シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状のワークの表面に貼りついた樹脂を前記ワークから剥がす樹脂剥がし装置であって、
前記樹脂は前記ワークのエッジ全周からはみ出した状態で前記ワークの表面に貼りついており、
前記ワークの裏面を吸着保持する保持面が形成された保持部と、
前記保持部に保持された前記ワークに貼りついた前記樹脂のうち前記ワークのエッジからはみ出した箇所に前記ワークの裏面から表面に向けて外力を与える外力付与部と、を有することを特徴とする樹脂剥がし装置。
【請求項2】
前記外力付与部は、前記保持面を囲繞して前記保持面よりも突出した突出部であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂剥がし装置。
【請求項3】
前記外力付与部は、前記樹脂を突き上げる突き上げ部と、
前記突き上げ部を前記保持面よりも突出した位置に移動させる移動部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂剥がし装置。
【請求項4】
前記突き上げ部は、前記保持面を囲繞していること特徴とする請求項3に記載の樹脂剥がし装置。
【請求項5】
前記突き上げ部は、前記保持面に隣接するローラーの外周曲面であり、
前記突き上げ部と前記保持部とを前記突き上げ部が前記保持面の周囲を相対的に回転移動するように移動させることを特徴とする請求項3に記載の樹脂剥がし装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の樹脂剥がし装置を内蔵することを特徴とする研削加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−151275(P2012−151275A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8790(P2011−8790)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】