説明

樹脂封止装置

【課題】使用する金型毎に「型当り」の微調整を可能とし、更に、当該微調整を下型側にて行うことを可能とする。
【解決手段】上下金型112、114内で基板116を樹脂にて封止する樹脂封止装置であって、下金型114表面の少なくとも一部が、独立した下チェイス114Aで構成され、下金型114側に付設され、下チェイス114A全体の型締め方向の位置を補正可能な金型位置補正機構Aと、該機構Aが型締め開始時に取るべき型締め方向の最適位置の指標を検出可能な最適位置検出機構Bと、該最適位置検出機構Bによって検出された最適位置の指標に基づいて、金型位置補正機構Aを最適位置に対応する位置にまで駆動する駆動機構Cと、を備え、更に、金型位置補正機構に対する下チェイス114Aの型締め方向の位置を部分的に微調整可能な複数のピラー136とシム138を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対向する金型内で被封止材を樹脂にて封止する樹脂封止装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1において、図8(A)(B)に示されるような樹脂封止装置10が提案されている。この樹脂封止装置10は、上金型12および下金型14の間に基板16を配置し、この基板16上に配置されている半導体チップ18を、ランナ19を介して供給される樹脂によってチェイス空間SP内で封止するものである。この種の樹脂封止に当たっては、当該基板16を最適な圧力で型締め(クランプ)する必要がある。この型締め力が小さ過ぎると、甚だしいときには溶融樹脂が金型12、14間に漏れ出してしまうことがあり、基板16に「ばり」と称される不要樹脂部材が付着してしまう原因となる。逆に、この型締め力が大き過ぎると、精密なチップ等を有する基板を損傷させてしまう恐れがある。しかし、基板の厚さは、その種類によってさまざまに変化し、また、同一の種類であっても、製造のばらつきにより決して同一ではない。基板16の厚さが想定されている厚さからずれると、当然に最適な圧力で型締めすることができなくなる。そこで、この樹脂封止装置10では、下金型14の下部に、ステージテーパ部材30および可動テーパ部材40を配置している。各テーパ部材30、40はそれぞれテーパ面32、42を有し、圧縮ばね50を介して対向している。第2の補正体40はエアシリンダ70によって水平方向(型締め方向と垂直の方向)に変位可能とし、基板16の厚さ変動分を補正可能とされている。なお、樹脂封止装置10は、上金型12と下金型14との間に発生する型締力を両テーパ部材30、40のテーパ面32、42を介して受け止める構成とされていたため、型締力が掛かることによって該テーパ面32、42に水平方向の分力が発生し、型締の際に各テーパ部材30、40がずれる方向に力が加わってしまう。
【0003】
一方、特許文献2においては、ステージテーパ部材30および可動テーパ部材40の前記テーパ面32、42が、型締面と平行で且つ該型締面からの距離が順次異なる位置に形成された複数の階段状のフラット面によって構成された改良型の樹脂封止装置が提案されている。この改良型の樹脂封止装置によれば、この階段状のフラット面の段差部の高さに相当する分解能で金型の型締め方向の位置を補正することが可能である。フラット面は、金型の型締め面と平行であり、したがって、強力な型締力が該フラット面に加わっても、型締力と垂直な方向に分力が発生する恐れはない。
【0004】
【特許文献1】特開2002−343819号公報
【特許文献2】特開2006−35766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2において示されているような構成を採用した場合でも、フラット面の段差は、型締め位置補正の際の分解能に相当することになるため、2μm〜10μmのオーダーとなることから、繰り返しの使用(割り込み挿入)により、段差端部が摩耗して一つ一つのフラット面が明瞭でなくなってくるという問題があることが分かった。
【0006】
この問題点を解決するべく、出願人は、既に更なる改良を加えた樹脂封止装置を提案済みである(特願2006−025140:未公知)。この提案済みの発明は、相対向する金型内で被封止材を樹脂にて封止する樹脂封止装置において、前記金型の少なくとも一方側に対して付設され、該金型の型締め方向の位置を補正可能な金型位置補正機構と、該金型位置補正機構がその機能を発揮していない状態で前記金型をソフトクランプすることにより、該金型位置補正機構が型締め開始時に取るべき型締め方向の最適位置の指標を検出可能な最適位置検出機構と、該最適位置検出機構によって検出された最適位置の指標に基づいて、前記金型位置補正機構を該最適位置に対応する位置にまで駆動する駆動機構と、を備えている。即ち、金型位置補正機構から金型の最適位置を検出するという機能を分離し、当該金型位置補正機構が型締め開始時にとるべき型締方向の最適位置の指標を検出する最適位置検出機構を別途設けている。この最適位置検出機構は、金型位置補正機構がフリーの状態で金型をソフトクランプすることにより、該最適位置の指標を検出する。金型位置補正機構は、この検出された最適位置の指標に基づいて当該最適位置に対応する位置にまで駆動される。この結果、例えば、前記改良樹脂封止装置のように、金型位置補正機構自体がその最適位置を得るために段差部を有しているものであっても、これらを衝突させながら駆動する必要がなくなるため、段差部の形状を長期に亘って良好に維持することが可能となる。
【0007】
しかしながら、このような最適位置検出機構や金型位置補正機構を採用した場合であっても、相対向する金型(例えば上金型と下金型)との「型当り」が常に最適化されるわけではない。ここでいう「型当り」とは、相対向する金型の型締め時(型締め圧力が加わった時点)における金型全体の圧力分布状態のことである。例えば、図9に示したように、プレス機構としてトグルリンク式プレスを採用した場合であれば、型締め時においてはその構造上、金型を平面視した場合における当該金型の中央部よりも、周辺部分においてプレス圧力が相対的に大きく掛かり、当該金型(チェイスを含む)全体に歪みを生じさせてしまう(図10参照)。この歪みは金型の「型当り」状態に直接的に影響を与えることとなる。即ち、金型を平面視した場合の中央部分において本来あるべき圧力よりも低く、一方、金型周辺部分において本来あるべき圧力よりも高くなってしまう。当然、この「型当り」状態が悪い場合(即ち、均等に圧力が分布していない状態)では、樹脂漏れを誘発する等、精度のよい樹脂封止を行うことが不可能である。
【0008】
この「型当り」状態を改善するには、例えば図9にて示した樹脂封止装置80の場合であれば、上金型82の中央部付近にシム84を介在させ、上金型82の平面視における中央部付近を下金型83側へと盛り上がらせるように調整すれば理論的には解消可能である。しかしながらこのような解消方法では断面が所謂「V字」状に歪んだ上下の金型で樹脂封止をすることとなり、成形品に悪影響(例えばクラック、反りなど)を与えてしまう。また、金型の歪みによって、基板等を金型表面上に位置決めする際の基準位置(オフセンタ)が不明確となり、かかる観点からも精度のよい樹脂封止を望むことができない。更に、場合によっては、上型82側の調整そのものが何らかの理由で困難な場合も想定される。
【0009】
本発明は、このような従来の問題を解消するためになされたものであって、使用する金型に応じて「型当り」の微調整を可能とし、更に、当該微調整を最適位置検出機構や金型位置補正機構が備わる側の金型にて可能とすることをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、相対向する金型内で被封止材を樹脂にて封止する樹脂封止装置であって、前記金型の一方側の表面の少なくとも一部が、独立した表面部材で構成され、前記金型の一方側に付設され、前記表面部材全体の型締め方向の位置を補正可能な金型位置補正機構と、該金型位置補正機構がフリーの状態で前記金型をソフトクランプすることにより、該金型位置補正機構が型締め開始時に取るべき型締め方向の最適位置の指標を検出可能な最適位置検出機構と、該最適位置検出機構によって検出された最適位置の指標に基づいて、前記金型位置補正機構を該最適位置に対応する位置にまで駆動する駆動機構と、を備え、更に、前記金型位置補正機構に対する前記表面部材の型締め方向の位置を部分的に微調整可能な複数の微調整機構を備えるように構成することで、上記課題を解決するものである。
【0011】
このような構成を採用したことによって、基板が載置される「表面部材」と「金型位置補正機構」との型締め方向の位置関係を部分的に微調整することが可能となる。その結果、当該金型位置補正機構が備わる側の金型にて所謂「型当り」の調整が可能となる。
【0012】
更に、前記金型位置補正機構が、相対向して配置され、それぞれが前記金型の型締め面と平行で、且つ該型締め面からの距離が順次異なる位置に形成された複数の階段状のフラット面を有する構成とされた対となる第1、第2の金型位置補正体を有し、前記最適位置検出機構が、前記階段状のフラット面が互いに当接していない状態で前記金型をソフトクランプすることにより、前記第1、第2の金型位置補正体が型締め開始時に取るべき型締め方向の最適位置の指標を検出するものであって、前記第1、第2の金型位置補正体の前記フラット面の前記型締め面からの距離が順次変化してゆく傾斜とは逆に傾斜したテーパ面を有する構成とされた対となる第1、第2の検出体を有し、前記表面部材側に配置される前記第1の金型位置補正体と前記第1の検出体がフリーとされ、且つ、前記第2の検出体が前記駆動機構によって前記第2の金型位置補正体と共に駆動可能とされるように構成してもよい。
【0013】
このような構成を採用すれば、一旦、微調整機構によって金型位置補正機構に対する「表面部材」の型締め方向の位置を部分的に微調整した場合でも、当該微調整により生じた変位(金型位置補正機構に対する表面部材の型締め方向の変位)の影響を受けることなく、最適位置検出機構による最適位置の検出が可能となる。仮に、「前記第1の金型位置補正体と前記第1の検出体がフリー」とされていなければ、当該微調整機構による部分的な変位によって、正確な位置検出(最適位置検出機構による最適位置の検出)が困難となる。
【0014】
また、前記微調整機構を、前記金型位置補正機構に埋め込まれた柱部材とシムで構成すれば、簡易な構成で微調整機構を構成できる。加えて、このような構成であれば、柱部材の位置や数、更には大きさを適宜調整することで、微調整機構そのもののバリエーションを確保することができるため、樹脂封止装置の種類や大きさ、プレス圧力、使用する金型等に応じて自由に設計することが可能となる。
【0015】
なお、この明細書において「ソフトクランプ」とは、通常の型締めに比べ十分に弱い荷重(1〜3トン程度)での型締めを言うものとする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る樹脂封止装置によれば、使用する金型毎に「型当り」の微調整が可能となる。更に当該微調整を金型位置補正機構が備わる金型側にて行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0018】
図1は、当該実施形態の一例に係る樹脂封止装置の機能を示す模式図、図2は同装置の上金型を取り去った状態の下金型の平面図、図3は、同側面図である。図4は、第1、第2の補正体のフラット面付近の要部詳細図である。図5は、第2の補正体と第2の検出体を一体化された様子を示す平面図および正面図である。なお、各図は機能説明のために模式化しており、各部材の寸法比率や配置位置、形状等は必ずしも正確ではない。
【0019】
この樹脂封止装置110は、相対向する金型(上金型112および下金型114)内で基板(被封止部材)116を樹脂にて封止するものである。樹脂封止装置110は、金型位置補正機構A、最適位置検出機構B、および金型位置補正機構Aの駆動機構Cを備える。以下、詳述する。
【0020】
<樹脂封止装置の全体構成>
この樹脂封止装置110は、金型として、上金型112および下金型114を備える。上金型112は、上チェイス112Aを備える。上チェイス112Aは、基板116を封止するための空間SPを備える。下金型114は、その表面の一部に、基板116を載置するための下チェイス(表面部材:可動キャビティ)114Aを備えると共に、その周囲に当該下チェイス114Aを支持するための竪壁部114Bを有している。
【0021】
下金型114の下チェイス114Aは、上チェイス112Aと共に基板116の外周縁を含む所定部位をクランプ可能である。なお、上チェイス112Aおよび下チェイス114Aのセットは、ひとつの金型112、114内に複数(図示の例では2個)設けられている(図2参照)。
【0022】
この下チェイス114Aは金型位置補正機構A(詳細は後述する)を構成する第1の補正体130上に載置された構成とされている。また、この第1の補正体130は、下金型114に対し、ばね155にてフローティング状態で上下動可能に支持されている。その結果、下チェイス114Aは、上金型112側から受ける力によって、所定の範囲で上下動(Z方向)可能とされている。即ち、上下金型112、114にてクランプする基盤116の厚みに応じて、下チェイス114A全体が沈み込むことが可能とされている。
【0023】
<金型位置補正機構の構成>
ここで、金型位置補正機構Aについて説明する。金型位置補正機構Aは、該金型の型締め方向(Z方向)の位置(より具体的には下チェイス114Aの型締め方向の位置)を補正するために金型のうちの一方側(この実施形態では下金型114側)に対して付設されたもので、一対の第1、第2の補正体(金型位置補正体)130、140を備える。
【0024】
第1の補正体130は、前述の通り、下金型114に対してばね155にてフローティング状態で上下動可能に支持されている。この第1の補正体130の上面側は、下チェイス114Aを載置するために平坦(水平)に構成されている。その一方で、当該第1の補正体130の下面側は、所定の傾斜に沿って階段状に構成された第1のフラット面132を有する構成とされている。
【0025】
一方、第2の補正体140は、前述した第1の補正体130に対向して配置されており、駆動機構C(詳細は後述する)により型締め方向(Z方向)と垂直な方向(X方向)に所定のタイミングおよび所定の範囲で変位可能な構成とされている。またこの第2の補正体140の上面側は、前述した第1の補正体130における第1のフラット面132に対応するように、所定の傾斜に沿って階段状に構成された第2のフラット面142として構成されている。
【0026】
なお、本実施形態においては、図4に示すように、第1の補正体130の第1のフラット面132のステップ距離(X方向の距離)L1および段差H1は、第2の補正体140の第2フラット面142のステップ距離L2および段差H2のそれぞれ約2倍に設定してある。すなわち、第1のフラット面132は、第2のフラット面142と1つおきに当接するようになっている。
【0027】
また、各フラット面132、142は、金型面と平行(基板116の表裏面116A、116Bと平行)である。第2の補正体140の第2のフラット面142は、金型面からの距離に対応する第1の補正体130の裏面133からの距離(厚さ)D1、D2(図示略)… Dn−1、Dn、Dn+1… が順次異なる位置に階段状に形成されている。また、第1の補正体130の第1のフラット面132は、一つおきの …Dn−2、Dn、Dn+2、… の位置に階段状に形成されている。
【0028】
第2のフラット面142の1段あたりの段差H2は、当該第1、第2の補正体130、140によって金型位置を補正する際の分解能を決定する要素となるため、封止する基板116の大きさや性質(特性)等に依存して適宜の値に設定する。この実施形態では、5μmに設定されているが、さまざまな観点で適正な範囲が存在する。
【0029】
なお、この実施形態では、第1、第2のフラット面132、142の段差端部は、所定のアール処理がなされ、該段差端部を保護するようにしているが、この処理は必ずしも必要ない。
【0030】
<最適位置検出機構の構成>
次に、最適位置検出機構Bの構成について説明する。
【0031】
最適位置検出機構Bは、金型位置補正機構Aがその機能を発揮していない状態(即ち、第1、第2のフラット面132、142同士が当接していない状態)で上下の金型112、114をソフトクランプすることにより、該金型位置補正機構Aが型締め開始時に取るべき型締め方向Zの最適位置に関する指標を検出する。
【0032】
最適位置検出機構Bは、上下に対向する第1、第2の検出体190、192を有した構成とされている。上側に位置する第1の検出体190は、前述した第1の補正体130の略中央部に形成された貫通孔に嵌合する態様で配置されている(図5参照)。なお、当該嵌合は、完全に固定されたものではなく、第1の検出体190は第1の補正体130に対して少なくとも上下方向(Z方向)に摺動可能とされており、所謂「フリーの状態」で嵌合している。また、第1の補正体130には引掛け部(図示していない)が設けられており、当該引掛け部の存在によって、第1の検出体190が貫通孔から抜け落ちないような構成とされている。即ち、第1の検出体190は、第1の補正体130に固定されていないものの、引掛り部の存在によって、第1の補正体130を介してばね155によるフローティング支持がなされている。なお、第1の検出体190の上面は、第1の補正体130と同様に平坦(水平)な面で構成されている。また、第1の検出体190の下面側は所定の傾斜をした第1のテーパ面194で構成される。なおこの第1のテーパ面194の傾斜は、前述した第1、第2のフラット面132、142全体の傾斜方向とは逆方向の傾斜とされている(後述する第2のテーパ面196も同様)。
【0033】
一方、下側に位置する第2の検出体192は、前述した第2の補正体140の略中央部に形成された貫通孔に嵌合する態様で配置されている(図5参照)。この嵌合は、完全に固定のものであり、第2の補正体140と所謂「一体化」されている(この点、上記の第1の検出体190と第1の補正体130との関係とは異なる。)。また、この第2の検出体192の上面は、第1の検出体190における第1のテーパ面194に対応する第2のテーパ面196として構成されている。
【0034】
この実施形態では、この第1、第2の検出体190、192の第1、第2のテーパ面194、196同士の相対摺動位置が、構造上、第1、第2の補正体130、140の型締方向の相対位置に対応している関係を利用している。即ち、上下の金型112、114、具体的にはそれぞれの上チェイス112Aおよび下チェイス114Aが、(基板116を配置した上で)ソフトクランプ状態とされたときに、これらのテーパ面194、196が当接するまで第2の補正体140ごと第2のテーパ面196をX方向(型締め方向Zと垂直な方向)に移動(駆動機構Cによる移動)させることにより、ソフトクランプ状態における第1、第2のテーパ面194、196の相対位置(第2のテーパ面196のX方向の絶対位置:指標)を知ることができる(後述)。
【0035】
この第1、第2のテーパ面194、196の相対位置(指標)に対応する金型補正機構の位置が「金型位置補正機構Aが型締め開始時に取るべき型締め方向Zの最適位置」に当たるため、当該「最適位置」を形成し得る第1の補正体130のX方向の絶対位置を予め設計上で把握しておくことにより、第1、第2の補正体130、140のフラット面132、142同士を直接摺動させることなく第2の補正体140を目標とする位置までダイレクトに移動させる構成を構築することができる。
【0036】
前記駆動機構Cは、このようにして最適位置検出機構Bによって検出された最適位置の指標に基づいて、金型位置補正機構A(具体的にはその第2の補正体140)を該最適位置にまで実際に駆動するためのもので、この実施形態では、第2の補正体140を型締め方向Zと直角の方向Xに駆動するためのエンコーダ(図示しない)付きのサーボモータ152、ボールねじ154、および、該ボールねじ154によってX方向に駆動されるロッド156等によって構成されている(図2および図3参照)。
【0037】
なお、図2の符号158はヒータである。
【0038】
<微調整機構の構成>
本実施形態では、上述した通り、第1の補正体130上に下チェイス114Aが載置される構成とされている。この第1の補正体130の上面には、複数の挿入穴130Aが形成されており、当該挿入穴130A内に、それぞれピラー136を嵌入させることが可能とされている。また、必要により、ピラー136を挿入穴130Aに嵌入させるに先立って、所定の厚みを有するシム138を挿入させることが可能とされている。本実施形態においては、図2にて示したように、各下チェイス114Aの左右(X方向)端付近にそれぞれ前後に(Y方向に)並んで挿入穴130Aが形成され、それぞれの挿入穴130Aにピラー136が嵌入している。即ち、必要により、それぞれの挿入穴130Aに所定の厚みのシム138を挿入した上で、ピラー136を嵌入させることによって、下チェイス114Aを部分的に変位(型締め方向に変位)させることが可能に構成されている。その結果、第1の補正体に対する下チェイス114Aの位置(型締め方向の位置)の部分的な微調整が可能となっている。これらそれぞれのピラー136およびシム138が、微調整機構を構成している。なお、ピラー136の配置位置は上記の態様に限定されるものではない。例えばより小さなピラーを数多く配置してもよい。更に、Y方向のみならずX方向に配列してもよいし両方向に配列してもよい。また、ピラー自体の形状の図示したような円柱形状である必要はなく、適宜最適な形状に変更可能である。
【0039】
なお、上記のように微調整機構が下型114側に備わっているため、「型当り」の微調整を下型114側、即ち、金型位置補正機構Aや最適位置検出機構Bが存在する金型側にて可能となる。その結果、「型当り」の調整を上型112側にて行なう必要がない。更に、型当り調整によって上下の金型が「V字」状に歪んだ状態での樹脂封止を防止できるため、成形品に悪影響(例えばクラック、反りなど)を与えることもない。また、金型の歪みによって、基板等を金型表面上に位置決めする際の基準位置(オフセンタ)が不明確となることも防止できる。
【0040】
<微調整機構による微調整方法>
最初に上金型112と下金型114上とで、型締め圧力を検出可能なシート状のゲージ(例えば圧力の程度によって変色するもの等)をクランプする。なおこの時点では、全ての挿入穴130Aにはシム138は挿入されておらず、ピラー136のみが嵌入しているのみ(即ち微調整されていない状態)である。
【0041】
その後サーボモータを駆動させ、第2の補正体140を適当な位置に移動させる。
【0042】
その状態で図示せぬプレス機構を作動させ、型締め(本クランプ)する。
【0043】
型開き後、シート状のゲージの検出結果に基づいて、必要な挿入穴130A内に、必要量のシム138を挿入する。具体的には、圧力が低い部分に相当する挿入穴130Aからピラー136を一旦抜き取った後、必要量の(必要厚さの)シム138をそれぞれ挿入し、再度ピラー136を嵌入させる。
【0044】
この状態で再度ゲージを挟んで型締めし、型当り(圧力分布)を判断する。
【0045】
この作業を「型当り」状態が許容範囲に至るまで繰り返す。
【0046】
このような微調整によって、上下金型112、114を型締め(本クランプ)した際の、両金型112、114の「型当り」が均一化される。
【0047】
なお、当該微調整は、図6にて示した「基準板厚+t1」と「基準板厚+t2」とのストロークの範囲内で行われるものである。
【0048】
<樹脂封止装置の作用>
次に、この実施形態の作用を説明する。
【0049】
(1)原点検出
基板116がクランプされていない状態で原点検出を行う。
【0050】
(2)待機位置へ移動
通常の型締めに比べ十分に弱い荷重(1〜3〔トン〕程度)で型締め(ソフトクランプ
)を行う。ソフトクランプ状態とは、ここでは、ばね155の付勢力によって基板116がクランプされる状態である。このとき、第2の補正体140および第2の検出体192は、事前にフローティングしていた第1の補正体130および第1の検出体190がソフトクランプにより押し下げられても接触しない位置(フリー位置)に移動しておく。このソフトクランプ状態の位置を「待機位置」とする。
【0051】
(3)基板116の厚みに対応する最適位置の検出
次に、基板116の厚み(基板の種類やばらつきに起因して変動する厚み)に対応する「最適位置」の指標を得るために、前記ソフトクランプ状態において第1、第2の検出体190、192の第1、第2のテーパ面194、196同士を衝突させ、両テーパ面194、196の間にあった隙間をなくす。このとき、サーボモータ152のエンコーダの読値から計算される第2の補正体140を介した第2の検出体192の位置を以って最適位置の指標を求める。本実施形態においては、第1の補正体130と第1の検出体190が少なくとも型締め方向に「フリー」とされているため、下チェイス114Aが微調整機構の微調整(ピラー136とシム138による微調整)によって変位(金型位置補正機構に対する表面部材の型締め方向の変位)している場合においても、当該変位の影響を受けることなく、最適位置検出機構による最適位置の検出が可能となっている。
【0052】
(4)ソフトクランプ解除
基板116の厚みに対応する最適位置の指標を検出できたならば、ソフトクランプを解除する。
【0053】
(5)第2の補正体140を最適位置に移動
基板116の厚みを補正可能な「最適位置」に第2の補正体140(および第2の検出体192)をソフトクランプが解除されている状態で移動させる。その移動量は「(最適位置に対応する値)+(基板潰し量分)」である。基板つぶし量とは、樹脂封止の際に丁度封止可能な位置より更に型締めすることにより、封止の確実性を担保するときのその上乗せ分の締め代をいう。このつぶし量は、基板の種類によって異なる値で事前にコントローラに入力される。
【0054】
(6)本クランプ
補正のための移動が完了したならば、そこで本クランプを開始し本来の成形・樹脂封止を行う。本実施形態においては、微調整機構による微調整(「表面部材」と「金型位置補正機構」との型締め方向の部分的な位置関係の微調整)を行っているため上下金型112、114の「型当り」が良好となる。その結果、「型当り」に起因する樹脂漏れ等の不具合は発生しない。
【0055】
(7)本クランプ解除
成形が完了したら、クランプを解除し製品を搬出する。
【0056】
(8)原点に移動
上記動作の(1)に戻る。
【0057】
ここで、第2の補正体140および第2の検出体192の動作ストロークと検出/補正ストロークの関係について、図6を用いて説明する。図6は、第2の補正体140および第2の検出体192の動作ストロークと検出・補正ストロークの関係を示したグラフである。
【0058】
第2の補正体140および第2の検出体192は一体的に動くが、その動作ストロークは、機能的には「最適位置の指標を検出するための第2の検出体192のストローク」と「検出した最適位置の指標に基づく実際の補正を行うためのストローク」に分けられる。
【0059】
前述したように、待機位置X1にいた第2の検出体192が、ソフトクランプ状態でX方向に移動したときに(板厚検出範囲ストローク内の)X2位置で第1の検出体190に当接したとする。当接によって第1、第2のテーパ面194、196の間にあった隙間がなくなり、第2の検出体192が停止すると、その位置X2がサーボモータ152のエンコーダを用いて測定される。
【0060】
第2の検出体192の位置と最適位置の指標には図9のラインL1で示すような関係があることから、該ラインL1と第2の検出体192と一体化されている第2の補正体140の位置(エンコーダの位置)との交点P1から最適位置の指標OP1を算出することが出来る。
【0061】
指標OP1が求まると、補正量(移動すべき量)Sが、設計上予め知られている第2の補正体140のストロークラインL2で示す関係とに基づいて算出される。補正量Sは、前述したように、「基準となる最適位置まで補正する量S1」と「成形時に基板を押し潰す量S2」の和である。前者は図6の指標OP1によって確定されるラインL3と前記ラインL2との交点P2を読み取ることにより求めることができる。また、つぶし量S2は、基板116の種類によって異なる値で事前にコントローラに入力されている値を読み出す。基板116の厚みを補正するための補正量S(=S1+S2)の導出の後、第2の補正体140および第2の検出体192を一体的に当該補正量Sだけ移動し、「最適位置」に対応するX方向位置X3にまでに移動させる。より具体的には、ラインL2は図6において一部拡大して示すように階段状となっているため、該補正量Sに対応するX方向位置X3に最も近く、且つ第1、第2の補正体130、140のフラット面同士が最も幅広く重なり得る位置X3aにまで移動させることになる。
【0062】
移動後、このX方向位置X3aで本クランプを実施し、製品の成形・樹脂封止を行う。
【0063】
なお、何らかのトラブルが発生して金型、例えば下チェイス114A、第1の補正体130、および第1の検出体190のブロックが型締方向に固着されたような状態が形成されたときに、該最適位置検出機構Bの一対のテーパ面194、196を利用して、サーボモータ152の駆動によって該固着状態となった金型を強制的に離反させることもできる。このような固着が発生したときには、従来は、多くの場合、金型を分解して当該固着状態を解消をする等の方法が採用されたが、本実施形態においては、テーパ面194、196の存在により、このような離反を簡易に行うことができる。
【0064】
なお、上記実施形態においては、金型位置補正機構Aの第2の補正体140と最適位置検出機構Bの第2の検出体192を一体化していたが、本発明における金型位置補正機構や最適位置検出機構等の構成は、このような構成に限定されるものではない。
【0065】
本発明の大きな特徴の一つとして、金型の型締方向の位置を補正可能な金型位置補正機構と、該金型補正機構が型締開始時にとるべき型締方向の最適位置の指標を検出可能な最適位置検出機構とが、それぞれ独立して設けられていることが挙げられる。そのため、金型補正機構は、要は最適位置検出機構によって検出された最適位置の指標に基づいて金型の型締方向の位置を補正できさえすればよく、その構成の自由度が格段に広がるのが大きな特徴のひとつである。金型位置補正機構の具体的な構成に関わらず、最適位置検出機構によって検出された最適位置の指標に基づいて結果として該金型の型締め方向の位置が補正できれば、先の実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0066】
また、更に、本発明では、図7に示されるように、基板の厚みの検出/補正可能な範囲α1は、予め想定される当該基板の厚みのばらつきの範囲α0を超えた範囲まで可能であるが、ばらつきの許容範囲外β1の部分に最適位置の指標が求められた場合には、これから封止しようとする被封止部材に何らかの異常が発生していると認識し、相応の警告を発生するような構成とすることもできる。これは、本発明が実際の補正機構とは別に、最適位置の検出機構を備えているが故に容易に実現できる効果と言える。
【0067】
なお、上記実施形態においては、金型位置補正機構や最適位置検出機構は、下金型側に配置されていたが、上金型側に配置されていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、電子部品等を搭載した基板を樹脂封止する際に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施形態の一例に係る樹脂封止装置の機能を示す模式図
【図2】同樹脂封止装置を、その上金型を取り去った状態で示した平面図
【図3】同側断面図
【図4】図3の矢視IV部分の拡大断面図
【図5】第2の補正体と第2の検出体を一体化された様子を示す平面図および正面図
【図6】第2の補正体および第2の検出体の動作ストロークと検出・補正ストロークの関係を示したグラフ
【図7】基板のばらつきの範囲と検出/補正可能な範囲の関係を示す線図
【図8】従来の樹脂封止装置による封止工程を示す断面図
【図9】トグルプレス機構を備えた樹脂封止装置全体の概略構成図
【図10】金型の歪みの状態を模式的に示した図
【符号の説明】
【0070】
110…樹脂封止装置
112…上金型
112A…上チェイス
114…下金型
114A…下チェイス
114B…堅牢部
116…基板
116A…基板の表面
116B…基板の裏面
130…第1の補正体
132…(第1の補正体の)フラット面
136…ピラー
138…シム
140…第2の補正体
142…(第2の補正体の)フラット面
152…サーボモータ
154…ボールねじ
190…第1の検出体
192…第2の検出体
194…第1テーパ面
196…第2テーパ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対向する金型内で被封止材を樹脂にて封止する樹脂封止装置であって、
前記金型の一方側の表面の少なくとも一部が、独立した表面部材で構成され、
前記金型の一方側に付設され、前記表面部材全体の型締め方向の位置を補正可能な金型位置補正機構と、
該金型位置補正機構がその機能を発揮していない状態で前記金型をソフトクランプすることにより、該金型位置補正機構が型締め開始時に取るべき型締め方向の最適位置の指標を検出可能な最適位置検出機構と、
該最適位置検出機構によって検出された最適位置の指標に基づいて、前記金型位置補正機構を該最適位置に対応する位置にまで駆動する駆動機構と、を備え、
更に、前記金型位置補正機構に対する前記表面部材の型締め方向の位置を部分的に微調整可能な複数の微調整機構が備わっている
ことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記金型位置補正機構が、相対向して配置され、それぞれが前記金型の型締め面と平行で、且つ該型締め面からの距離が順次異なる位置に形成された複数の階段状のフラット面を有する構成とされた対となる第1、第2の金型位置補正体を有し、
前記最適位置検出機構が、前記階段状のフラット面が互いに当接していない状態で前記金型をソフトクランプすることにより、前記第1、第2の金型位置補正体が型締め開始時に取るべき型締め方向の最適位置の指標を検出するものであって、前記第1、第2の金型位置補正体の前記フラット面の前記型締め面からの距離が順次変化してゆく傾斜とは逆に傾斜したテーパ面を有する構成とされた対となる第1、第2の検出体を有し、
前記表面部材側に配置される前記第1の金型位置補正体と前記第1の検出体がフリーとされ、且つ、前記第2の検出体が前記駆動機構によって前記第2の金型位置補正体と共に駆動可能とされている
ことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記微調整機構が、前記金型位置補正機構に埋め込まれた柱部材とシムである
ことを特徴とする樹脂封止装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−34888(P2009−34888A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200698(P2007−200698)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】