説明

樹脂成形品の切断装置および切断方法

【課題】樹脂成形品の製品部からゲート部とオーバーフロー部とを効率的に切り離すことができる樹脂成形品の切断装置および切断方法を提供する。
【解決手段】樹脂成形品1が製品部2の外周部にゲート部3とオーバーフロー部4とを備えており、製品部2からゲート部3とオーバーフロー部4とを切り離す樹脂成形品の切断装置であって、樹脂成形品1は熱硬化性樹脂から形成されかつ複数個の製品部2を備えているとともに、各製品部2からそれぞれゲート部3とオーバーフロー部4とをレーザービームLBを照射して切断するレーザー加工機8を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品部の外周部にゲート部とオーバーフロー部とを備えている樹脂成形品に用いられ、製品部からゲート部とオーバーフロー部とを切り離すための樹脂成形品の切断装置および切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、特願2006−73625号で、透明光学素子などの熱硬化性樹脂からなる樹脂成形品を液状樹脂射出成形法(LIM法)により成形する際に、製品部に気泡が残らないように、金型にオーバーフローキャッチャ部を設けることを提案している。この特許出願に係る発明を用いて得られた樹脂成形品は、製品部の外周部にゲート部のほかに、前記オーバーフローキャッチャ部で形成されるオーバーフロー部を備えている。
したがって、この樹脂成形品においては、製品部からゲート部およびオーバーフロー部を切り離す必要があるが、この作業を自動化して作業効率を高め、製品コストを低減することが求められる。
【0003】
一方、例えば、特許文献1、2に記載のように、樹脂成形品の製品部からゲート部を切断する技術は種々提案されている。
しかしながら、これらの技術はいずれも、樹脂成形品の製品部からゲート部を切断することに留まり、製品部からゲート部およびオーバーフロー部を切り離す技術を開示していない。
【0004】
【特許文献1】特開2005−88437号公報
【特許文献2】特開2006−15586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、樹脂成形品の製品部からゲート部とオーバーフロー部とを効率的に切り離すことができる樹脂成形品の切断装置および切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の樹脂成形品の切断装置は、樹脂成形品が製品部の外周部にゲート部とオーバーフロー部とを備えており、前記製品部から前記ゲート部と前記オーバーフロー部とを切り離す樹脂成形品の切断装置であって、
前記樹脂成形品は熱硬化性樹脂から形成されかつ複数個の前記製品部を備えているとともに、
前記各製品部からそれぞれ前記ゲート部と前記オーバーフロー部とをレーザービームを照射して切断するレーザービーム切断手段を備えている、
ことを特徴とする。
【0007】
この請求項1に記載された発明においては、樹脂成形品が熱硬化性樹脂から形成されかつ製品部の外周部にゲート部とオーバーフロー部を備えている場合に、製品部からそれぞれゲート部とオーバーフロー部とをレーザービームを照射して切断するので、切断刃等による切断の場合のように樹脂成形品が欠けたり割れたりすることなく切断することができる。しかも、樹脂成形品が8個取り等で切断部の接近している複数個の製品部を備えていても、各製品部からそれぞれゲート部とオーバーフロー部を効率的に切り離すことができる。
【0008】
また、請求項2に記載の樹脂成形品の切断装置は、請求項1に記載の発明において、前記レーザービーム切断手段は、前記樹脂成形品の切断部に対してレーザービームを移動させて切断部に間欠的に複数回レーザービームを照射するレーザービーム走査手段を備えていることを特徴とする。
【0009】
ここで、例えば、製品部とこの製品部の外周部に設けられたゲート部およびオーバーフロー部のユニットが複数個放射状に配置された樹脂成形品の場合には、レーザービームを回転移動させることにより、樹脂成形品の切断部に間欠的に複数回レーザービームを照射することができる。なお、切断装置の部品等の損傷等を防止するために、切断部以外ではレーザービームの照射は行わないようにすることが好ましい。
【0010】
この請求項2に記載された発明においては、レーザービームを移動させて樹脂成形品の切断部に間欠的に複数回レーザービームを照射して切断するので、切断部にレーザービームが照射していないときに切断部が冷却されるため、切断部をほぼ同じ温度状態で切断することができる。したがって、切断部が必要以上に温度上昇して切断面がダレルなど荒れたり、あるいは変色したりするのを防止することができる。
【0011】
また、請求項3に記載の樹脂成形品の切断装置は、請求項2に記載の発明において、前記レーザービーム走査手段は、前記製品部と前記ゲート部との切断部にレーザービームを照射して切断した後、前記製品部と前記オーバーフロー部との切断部にレーザービームを照射して切断するように、レーザービームを移動させるものであることを特徴とする。
【0012】
ゲート部にランナー部等が繋がっているので、樹脂成形品はゲート部側よりもオーバーフロー部側がより反っている傾向があるが、この請求項3に記載された発明においては、製品部からゲート部を切断した後に、製品部からオーバーフロー部を切断するので、製品部からオーバーフロー部を切断するときには、製品部およびオーバーフロー部が他の部分から分離されているため、この製品部およびオーバーフロー部において反りがほとんどないものとなっており、したがって各製品部と各オーバーフロー部との各切断部にも適正な焦点距離でレーザービームを照射することができ、適切な切断を行うことができる。
【0013】
また、請求項4に記載の樹脂成形品の切断装置は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の発明において、前記樹脂成形品を押圧して反りを修正する押圧治具を備えていることを特徴とする。
【0014】
この請求項4に記載された発明においては、樹脂成形品を押圧して反りを修正する押圧治具を備えているので、樹脂成形品の各切断部のいずれにも適正な焦点距離でレーザービームを照射することができ、適切な切断を行うことができる。
【0015】
また、請求項5に記載の樹脂成形品の切断装置は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の発明において、前記樹脂成形品の切断部のレーザービームの照射方向の厚さは一様であることを特徴とする。
【0016】
この請求項5に記載された発明においては、樹脂成形品の切断部のレーザービームの照射方向の厚さが一様であるので、各切断部で同じ条件でレーザービームの照射を行うことができ、効率的な切断を行うことができる。
【0017】
また、請求項6に記載の樹脂成形品の切断装置は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の発明において、前記樹脂成形品は、液状樹脂射出成形法により成形された熱硬化性樹脂からなるものであることを特徴とする。
【0018】
この請求項6に記載された発明においては、熱硬化性樹脂からなる樹脂成形品を液状樹脂射出成形法により成形する際に、製品部に気泡が残らないように、金型にオーバーフローキャッチャ部を設けることが有効であるので、このようにして形成された樹脂成形品の切断に本発明の切断装置を利用すると効果的である。
【0019】
また、請求項7に記載の樹脂成形品の切断装置は、請求項6に記載の発明において、前記樹脂成形品は、透明光学素子であることを特徴とする。
【0020】
この請求項7に記載された発明においては、レンズのような透明光学素子では特に気泡が残らないようにすることは重要であり、このため金型にオーバーフローキャッチャ部を設けることが必要とされるため、このような樹脂成形品の切断に本発明の切断装置を利用することは特に効果的である。
【0021】
また、請求項8に記載の樹脂成形品の切断装置は、請求項7に記載の発明において、前記樹脂成形品は、シリコーンからなるものであることを特徴とする。
【0022】
この請求項8に記載された発明においては、シリコーンは粘度が低く流動性が高いため、液状樹脂射出成形法により成形する際に、製品部に気泡が残り易いので、金型にオーバーフローキャッチャ部を設けることが特に有効であるため、このような樹脂成形品の切断に本発明の切断装置を利用することは極めて効果的である。
【0023】
また、請求項9に記載の樹脂成形品の切断方法は、樹脂成形品が製品部の外周部にゲート部とオーバーフロー部とを備えており、前記製品部から前記ゲート部と前記オーバーフロー部とを切り離す樹脂成形品の切断方法であって、
前記樹脂成形品は熱硬化性樹脂から形成されかつ複数個の前記製品部を備えており、
前記各製品部からそれぞれ前記ゲート部と前記オーバーフロー部とをレーザービームを照射して切断する、
ことを特徴とする。
【0024】
この請求項9に記載された発明においては、樹脂成形品が熱硬化性樹脂から形成されかつ製品部の外周部にゲート部とオーバーフロー部を備えている場合に、製品部からそれぞれゲート部とオーバーフロー部とをレーザービームを照射して切断するので、切断刃等による切断の場合のように樹脂成形品が欠けたり割れたりすることなく切断することができる。しかも、樹脂成形品が8個取り等で切断部の接近している複数個の製品部を備えていても、各製品部からそれぞれゲート部とオーバーフロー部を効率的に切り離すことができる。
【0025】
また、請求項10に記載の樹脂成形品の切断方法は、請求項9に記載の発明において、前記樹脂成形品の切断部に対してレーザービームを移動させて切断部に間欠的に複数回レーザービームを照射することを特徴とする。
【0026】
ここで、例えば、製品部とこの製品部の外周部に設けられたゲート部およびオーバーフロー部のユニットが複数個放射状に配置された樹脂成形品の場合には、レーザービームを回転移動させることにより、樹脂成形品の切断部に間欠的に複数回レーザービームを照射することができる。なお、切断装置の部品等の損傷等を防止するために、切断部以外ではレーザービームの照射は行わないようにすることが好ましい。
【0027】
この請求項10に記載された発明においては、レーザービームを移動させて樹脂成形品の切断部に間欠的に複数回レーザービームを照射して切断するので、切断部にレーザービームが照射していないときに切断部が冷却されるため、切断部をほぼ同じ温度状態で切断することができる。したがって、切断部が必要以上に温度上昇して切断面がダレルなど荒れたり、あるいは変色したりするのを防止することができる。
【0028】
また、請求項11に記載の樹脂成形品の切断方法は、請求項10に記載の発明において、前記製品部と前記ゲート部との切断部にレーザービームを照射して切断した後、前記製品部と前記オーバーフロー部との切断部にレーザービームを照射して切断することを特徴とする。
【0029】
ゲート部にランナー部等が繋がっているので、ゲート部側よりもオーバーフロー部側がより反っているが、この請求項11に記載された発明においては、製品部からゲート部を切断した後に、製品部からオーバーフロー部を切断するので、製品部からオーバーフロー部を切断するときには、製品部およびオーバーフロー部が分離されているため、この製品部およびオーバーフロー部において反りがほとんどないものとなっており、したがって各製品部と各ゲート部との各切断部のいずれにも適正な焦点距離でレーザービームを照射することができ、適切な切断を行うことができる。
【0030】
また、請求項12に記載の樹脂成形品の切断方法は、請求項9ないし請求項11のいずれかに記載の発明において、前記樹脂成形品を押圧して反りを修正しつつ、レーザービームを照射することを特徴とする。
【0031】
この請求項12に記載された発明においては、樹脂成形品を押圧して反りを修正しつつ、レーザービームを照射するので、樹脂成形品の各切断部のいずれにも適正な焦点距離でレーザービームを照射することができ、適切な切断を行うことができる。
【0032】
また、請求項13に記載の樹脂成形品の切断方法は、請求項9ないし請求項12のいずれかに記載の発明において、前記樹脂成形品の切断部のレーザービームの照射方向の厚さは一様であることを特徴とする。
【0033】
この請求項13に記載された発明においては、樹脂成形品の切断部のレーザービームの照射方向の厚さが一様であるので、各切断部で同じ条件でレーザービームの照射を行うことができ、効率的な切断を行うことができる。
【0034】
また、請求項14に記載の樹脂成形品の切断方法は、請求項9ないし請求項13のいずれかに記載の発明において、前記樹脂成形品は、液状樹脂射出成形法により成形された熱硬化性樹脂からなるものであることを特徴とする。
【0035】
この請求項14に記載された発明においては、熱硬化性樹脂からなる樹脂成形品を液状樹脂射出成形法により成形する際に、製品部に気泡が残らないように、金型にオーバーフローキャッチャ部を設けることが有効であるので、このようにして形成された樹脂成形品の切断に本発明の切断方法を利用すると効果的である。
【0036】
また、請求項15に記載の樹脂成形品の切断方法は、請求項14に記載の発明において、前記樹脂成形品は、透明光学素子であることを特徴とする。
【0037】
この請求項15に記載された発明においては、レンズのような透明光学素子では特に気泡が残らないようにすることは重要であり、このため金型にオーバーフローキャッチャ部を設けることが必要とされるため、このような樹脂成形品の切断に本発明の切断方法を利用することは特に効果的である。
【0038】
また、請求項16に記載の樹脂成形品の切断方法は、請求項15に記載の発明において、前記樹脂成形品は、シリコーンからなるものであることを特徴とする。
【0039】
この請求項16に記載された発明においては、シリコーンは粘度が低く流動性が高いため、液状樹脂射出成形法により成形する際に、製品部に気泡が残り易いので、金型にオーバーフローキャッチャ部を設けることが特に有効であるため、このような樹脂成形品の切断に本発明の切断方法を利用することは極めて効果的である。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、樹脂成形品が熱硬化性樹脂から形成されかつ製品部の外周部にゲート部とオーバーフロー部を備えている場合に、製品部からそれぞれゲート部とオーバーフロー部とをレーザービームを照射して切断するので、切断刃等による切断の場合のように樹脂成形品が欠けたり割れたりすることなく、適切に切断することができる。さらに、樹脂成形品が8個取り等で切断部の接近している複数個の製品部を備えていても、各製品部からそれぞれゲート部とオーバーフロー部を効率的に切り離すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
まず、本実施の形態に係る樹脂成形品の切断装置および切断方法に用いる樹脂成形品を説明する。
図1ないし図4に示すように、この樹脂成形品1は、本出願人が特願2006−73625号で提案した金型を用いて液状樹脂射出成形法(LIM法)により成形して得られたものである。すなわち、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂から液状樹脂射出成形法により製品部(本例では、透明光学素子としてレンズ)2を成形する際に、金型にオーバーフローキャッチャ部を設けて製品部2内に気泡が残るのを防止している。したがって、前記特許出願に係る発明を用いて得られた樹脂成形品1は、製品部2の外周部にゲート部3のほかに、前記オーバーフローキャッチャ部で形成されるオーバーフロー部4を備えている。ゲート部3にはランナー部5が連結されており、このランナー部5は樹脂の流入通路により形成されたスプルー部6に連結されている。
【0042】
この樹脂成形品1は、1回の成形で8個の製品を得る8個取りのもので、ほぼ直線状に連結されたランナー部5、ゲート部3、製品部2およびオーバーフロー部4がこの順にほぼ直線状に連結され、平面視において、これらが概略切頭円錐状のスプルー部6を中心部に、放射状に配置されている。断面形状が円弧状の各製品部2はスプルー部6と同じ側に突出しており、ランナー部5、ゲート部3およびオーバーフロー部4はそれぞれ製品部2と反対側に突出している。
【0043】
次に、本実施の形態に係る樹脂成形品の切断装置を説明する。
図5ないし図16は、本実施の形態に係る樹脂成形品の切断装置を示す図であって、図5は概略構成図であり、図6は押圧治具の受け部材を示す平面図であり、図7は受け部材の正面図であり、図8は図6のA−A線に沿う断面図であり、図9は押圧治具の蓋部材を示す平面図であり、図10は蓋部材の正面図であり、図11は図6のB−B線に沿う断面図であり、図12は押圧治具の受け部材に樹脂成形品を載せた状態の平面図であり、図13は図12のC−C線に沿う断面図であり、図14は押圧治具の受け部材に蓋部材を装着した状態を示す平面図であり、図15は図14のD−D線に沿う断面図であり、図16はレーザービームの照射位置(照射パターン)を示す平面図である。
【0044】
図5において、符号8はレーザー加工機(レーザービーム切断手段)を示している。このレーザー加工機8は、樹脂成形品1の各製品部2からそれぞれゲート部3とオーバーフロー部4とをレーザービームLBを照射して切断するものである。レーザービームLBは、レーザー加工機8の装置本体8aに設けられたレーザー発振装置で発振され、ビーム調整装置や反射鏡等を介して加工ヘッド8bに案内される。加工ヘッド8bの内部には集光レンズが設けられており、レーザービームLBは、この集光レンズで集光されて、焦点位置で熱切断する。
【0045】
レーザー加工機8は制御部9を備えており、この制御部9からの制御信号に基づいて樹脂成形品1の切断部に対してレーザービームLBを移動させて、切断部に間欠的に複数回レーザービームLBを照射するようになっている。すなわち、レーザー加工機8の加工ヘッド8bには、レーザービームLBを走査させるスキャナ(XスキャナおよびYスキャナ)が設けられており、XスキャナのXミラーおよびYスキャナのYミラーを高速かつ高精度に駆動し、XミラーおよびYミラーにレーザービームLBを照射して、レーザービームLBを高速且つ高精度に移動させるようになっている。そして、このようなXミラーおよびYミラーの位置制御、ならびにレーザービームLBの照射のオン・オフの制御が制御部9からの制御信号により行われる。
【0046】
また、レーザービームLBは、樹脂成形品1が押圧治具10により押圧されて反りを修正された状態で、樹脂成形品1の切断部に照射される。
押圧治具10は、受け部材11と蓋部材12とから構成されている。
受け部材11は、図6〜図8に示すように、所定の厚さを有する平らな略四角板状に形成されたもので、上面には樹脂成形品1が載置される載置部21が複数(この例では4つ)設けられている。この載置部21は、平面視において樹脂成形品1と略同じ形状に形成されている。
【0047】
樹脂成形品1が載置された際に、スプルー部6、8つのランナー部5および8つのゲート部3が位置する載置部21の部分には、平面視において円形の穴22が形成されており、各ゲート部3が切断されたときに、これらのスプルー部6、8つのランナー部5および8つのゲート部3が穴22内に落下するように、平面視における穴22の大きさは8つのゲート部3の最外側よりも少し大きく設定されている。
【0048】
また、樹脂成形品1が載置された際に、8つのオーバーフロー部4が位置する載置部21の部分にはそれぞれ、平面視において略長穴状の穴23が形成されており、各オーバーフロー部4が切断されたときに、各オーバーフロー部4が各穴23内に落下するように、平面視における穴23の大きさはオーバーフロー部4の大きさよりも少し大きく設定されている。
【0049】
他方、樹脂成形品1が載置された際に、8つの製品部2が位置する載置部21の部分にはそれぞれ、平面視において略円形の穴24が形成されている。平面視における穴24の大きさは製品部2の大きさよりも少し小さく設定されており、これにより樹脂成形品1を載置部21に置くと、各製品部2の下側の外周縁部が各穴24の外側の受け部材11の上面に引っ掛かり、樹脂成形品1が載置部21に載置される。各穴24は両側においてそれぞれ各穴23および穴22に繋がっている。
【0050】
また、受け部材11の下側半分の中央部には、下側に向けて開口する大きな切欠部26が形成されている。また、受け部材11の四隅のうちの対向する2箇所にはそれぞれ、ガイドブッシュ27の内径により形成される位置決め用の穴28が設けられている。
【0051】
一方、蓋部材12は、図9〜図11に示すように、2つの略四角板状の平板31,32が重ねられて、ボルト33により固定されてなるものである。上側の平板31の中央部には、上下に貫通する大きな切欠部34が形成されている。他方、下側の平板32の下面の対向する2つの隅には、受け部材11の位置決め用の各穴28に嵌入される位置決め用のピン35が設けられている。
【0052】
また、下側の平板32には、平面視において円形の貫通孔36が形成されている。この貫通孔36の大きさは、樹脂成形品1が載置された受け部材11の上に蓋部材12を載せた際に、スプルー部6、8つのランナー部5、8つのゲート部3および8つの製品部2のゲート部3側の一部が上側から見て露出する大きさに設定されており、これにより8つのゲート部3側の全切断部が上側から見て露出するようになっている。また、下側の平板32には、貫通孔36の外側にこの貫通孔36を囲むように平面視において略楕円形の8つの貫通孔37が形成されている。この貫通孔37の大きさは、樹脂成形品1が載置された受け部材11の上に蓋部材12を載せた際に、各オーバーフロー部4および各製品部2のオーバーフロー部4側の一部が上側から見て露出する大きさに設定されており、これにより各オーバーフロー部4側の各切断部が上側から見て露出するようになっている。貫通孔36および貫通孔37にはそれぞれ、上側に広がるテーパが設けられている。
【0053】
次に、この樹脂成形品の切断装置を用いた樹脂成形品の切断方法を、図5および図12ないし図16を参照しつつ説明する。
まず、図12および図13に示すように、押圧治具10の受け部材11の各載置部21にそれぞれ、樹脂成形品1を載せる。そうすると、各製品部2の下側の外周縁部が各穴24の外側の受け部材11の上面に引っ掛かり、樹脂成形品1が載置部21に載置される。このとき、樹脂成形品1のスプルー部6および各製品部2の大部分が受け部材11の上面より下側に位置し、その他の部分は受け部材11の上面より上側に位置する。この工程は、本例では手動で行うが、チャック、吸着具等の把持具を用いて自動で行うようにしてもよい。
【0054】
次いで、図14および図15に示すように、受け部材11の位置決め用の穴28に蓋部材12の位置決め用のピン35を挿入して、受け部材11の上に蓋部材12を載せる。そうすると、蓋部材12の貫通孔36と貫通孔37との間の部分により樹脂成形品1の製品部2の上面が蓋部材12の重さ(自重)で押え付けられ、これによりゲート部3と製品部2との切断部および製品部2とオーバーフロー部4との切断部の反りが修正される。これらのゲート部3と製品部2との各切断部および製品部2とオーバーフロー部4との各切断部は蓋部材2の上側から見て露出している。ゲート部3と製品部2との8つの切断部は、貫通孔36を通して露出し、製品部2とオーバーフロー部4との各切断部はそれぞれ、各貫通孔37を通して露出している。
【0055】
次いで、図5に示すように、レーザー加工機8の加工ヘッド8bから樹脂成形品1の切断部にレーザービームLBを照射し、切断部を熱溶融により切断する。この場合、制御部9からの制御信号に基づいてレーザービームLBを移動させるとともに、切断部のみにレーザービームLBを照射する。
【0056】
すなわち、まず、貫通孔36の外周部に沿ってレーザービームLBを回転移動させて、ゲート部3と製品部2との各切断部にレーザービームLBを照射する。この場合、図16に示すように、レーザービームLBの回転移動中、ゲート部3と製品部2との各切断部のみにレーザービームLBを照射し、その他の部分にはレーザービームLBを照射しない。また、平面視において所定の切断形状になるように、レーザービームLBを各切断部に照射する。また、レーザービームLBを複数回回転移動させて、各切断部に間欠的に複数回レーザービームLBを照射して切断する。そうすると、各製品部2から各ゲート部3が切り離されて、8つのゲート部3、8つのランナー部5およびスプルー部6が一体的に落下する。
【0057】
このようにしてゲート部3と製品部2との各切断部を切断した後、8つの貫通孔37に渡ってレーザービームLBを回転移動させて、製品部2とオーバーフロー部4との各切断部にレーザービームLBを照射する。この場合、図16に示すように、レーザービームLBの回転移動中、製品部2とオーバーフロー部4との各切断部のみにレーザービームLBを照射し、その他の部分にはレーザービームLBを照射しない。また、平面視において所定の切断形状になるように、レーザービームLBを各切断部に照射する。また、レーザービームLBを複数回回転移動させて、各切断部に間欠的に複数回レーザービームLBを照射して切断する。そうすると、各製品部2から各オーバーフロー部4が切り離されて、各オーバーフロー部4がそれぞれ別個に落下する。
【0058】
次いで、受け部材11から蓋部材12を取り外す。
その後、押圧治具10の受け部材11の載置部21からそれぞれ、各製品部2を取り外す。この工程は、本例では手動で行うが、チャック、吸着具等の把持具を用いて自動で行うようにしてもよい。
【0059】
以上のように構成された樹脂成形品の切断装置および切断方法にあっては、樹脂成形品1が熱硬化性樹脂から形成されかつ製品部2の外周部にゲート部3とオーバーフロー部4を備えている場合に、製品部2からそれぞれゲート部3とオーバーフロー部4とをレーザービームLBを照射して切断するので、切断刃等による切断の場合のように樹脂成形品が欠けたり割れたりすることなく切断することができる。さらに、樹脂成形品1が8個取りで切断部の接近している複数個の製品部2を備えていても、各製品部2からそれぞれゲート部3とオーバーフロー部4とを効率的に切り離すことができる。
【0060】
また、レーザービームLBを移動させて樹脂成形品の切断部に間欠的に複数回レーザービームLBを照射して切断するので、切断部にレーザービームLBが照射していないときに切断部が冷却されるため、切断部をほぼ同じ温度状態で切断することができる。これに対し、樹脂成形品1の切断部に連続的にレーザービームLBを照射する場合には、切断部が必要以上に温度上昇して切断面がダレルなど荒れたり、あるいは変色したりなどする虞がある。
【0061】
また、樹脂成形品1を押圧して反りを修正する押圧治具10を備えているので、樹脂成形品1の各切断部のいずれにも適正な焦点距離でレーザービームLBを照射することができ、適切な切断を行うことができる。
【0062】
また、樹脂成形品1が若干反っている場合、ゲート部3にランナー部5等が繋がっているので、ゲート部3側よりもオーバーフロー部4側がより反っているが、このように反っている状態の樹脂成形品1を押圧治具10の受け部材11の載置部21に載せると、各製品部2が各穴24にうまく収まらず、つまり各製品部2の下側の外周縁部が各穴24の外側の受け部材11の上面に均等に引っ掛からず、各製品部2のゲート部3側が若干浮いた状態になり、またこの状態で受け部材11の上に載せた蓋部材12も若干浮いた状態になる。このような場合でも、本実施の形態では、製品部2からゲート部3を切断した後に、製品部2からオーバーフロー部4を切断するので、製品部2からオーバーフロー部4を切断するときには、製品部2およびオーバーフロー部4がランナー部5等の部分から分離されているため、浮いていた蓋部材12が自重で下がり、蓋部材12が受け部材11上に正常に載置されるとともに、製品部2およびオーバーフロー部4の部分がほぼ水平状態になって、各製品部2の下側の外周縁部が各穴24の外側の受け部材11の上面にほぼ均等に引っ掛かり、各製品部2が各穴24に正常に収まる。したがって、各製品部2とオーバーフロー部4との各切断部を適正な焦点距離でレーザービームLBを照射することができ、適切な切断を行うことができる。
【0063】
また、樹脂成形品1のゲート部3と製品部2との切断部および製品部2とオーバーフロー部4との切断部のレーザービームLBの照射方向の厚さがそれぞれ一様であるので、各切断部で同じ条件でレーザービームLBの照射を行うことができ、効率的な切断を行うことができる。
【0064】
また、熱硬化性樹脂からなる樹脂成形品を液状樹脂射出成形法により成形する際に、製品部2に気泡が残らないように、金型にオーバーフローキャッチャ部を設けることが有効であるので、このようにして形成された樹脂成形品1の切断にこの切断装置および切断方法を利用すると効果的である。
【0065】
さらに、レンズのような透明光学素子では特に気泡が残らないようにすることは重要であり、このため金型にオーバーフローキャッチャ部を設けることが必要とされるため、このような樹脂成形品の切断に本発明の切断装置を利用することは特に効果的である。
【0066】
さらには、シリコーンは粘度が低く流動性が高いため、液状樹脂射出成形法により成形する際に、製品部に気泡が残り易いので、金型にオーバーフローキャッチャ部を設けることが特に有効であるため、このような樹脂成形品の切断にこの切断装置および切断方法を利用することは極めて効果的である。
【0067】
なお、前述の実施の形態では、押圧治具10を用いて樹脂成形品1を押えた状態でレーザービームLBを照射するようにしたが、押圧治具10を用いないでレーザービームLBを照射するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施の形態に係る樹脂成形品を示す図であって、平面図である。
【図2】同、一部を切り欠いて示す側面図である。
【図3】図1の一部拡大図である。
【図4】図2の一部拡大図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る樹脂成形品の切断装置を示す概略構成図である。
【図6】押圧治具の受け部材を示す平面図である。
【図7】受け部材の正面図である。
【図8】図6のA−A線に沿う断面図である。
【図9】押圧治具の蓋部材を示す平面図である。
【図10】蓋部材の正面図である。
【図11】図9のB−B線に沿う断面図である。
【図12】押圧治具の受け部材に樹脂成形品を載せた状態の平面図である。
【図13】図12のC−C線に沿う断面図である。
【図14】押圧治具の受け部材に蓋部材を装着した状態を示す平面図である。
【図15】図14のD−D線に沿う断面図である。
【図16】レーザービームの照射位置(照射パターン)を示す平面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 樹脂成形品(透明光学素子)
2 製品部
3 ゲート部
4 オーバーフロー部
8 レーザー加工機(レーザービーム切断手段)
10 押圧治具
LB レーザービーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形品が製品部の外周部にゲート部とオーバーフロー部とを備えており、前記製品部から前記ゲート部と前記オーバーフロー部とを切り離す樹脂成形品の切断装置であって、
前記樹脂成形品は熱硬化性樹脂から形成されかつ複数個の前記製品部を備えているとともに、
前記各製品部からそれぞれ前記ゲート部と前記オーバーフロー部とをレーザービームを照射して切断するレーザービーム切断手段を備えている、
ことを特徴とする樹脂成形品の切断装置。
【請求項2】
前記レーザービーム切断手段は、前記樹脂成形品の切断部に対してレーザービームを移動させて切断部に間欠的に複数回レーザービームを照射するレーザービーム走査手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形品の切断装置。
【請求項3】
前記レーザービーム走査手段は、前記製品部と前記ゲート部との切断部にレーザービームを照射して切断した後、前記製品部と前記オーバーフロー部との切断部にレーザービームを照射して切断するように、レーザービームを移動させるものであることを特徴とする請求項2に記載の樹脂成形品の切断装置。
【請求項4】
前記樹脂成形品を押圧して反りを修正する押圧治具を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の樹脂成形品の切断装置。
【請求項5】
前記樹脂成形品の切断部のレーザービームの照射方向の厚さは一様であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の樹脂成形品の切断装置。
【請求項6】
前記樹脂成形品は、液状樹脂射出成形法により成形された熱硬化性樹脂からなるものであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の樹脂成形品の切断装置。
【請求項7】
前記樹脂成形品は、透明光学素子であることを特徴とする請求項6に記載の樹脂成形品の切断装置。
【請求項8】
前記樹脂成形品は、シリコーンからなるものであることを特徴とする請求項7に記載の樹脂成形品の切断装置。
【請求項9】
樹脂成形品が製品部の外周部にゲート部とオーバーフロー部とを備えており、前記製品部から前記ゲート部と前記オーバーフロー部とを切り離す樹脂成形品の切断方法であって、
前記樹脂成形品は熱硬化性樹脂から形成されかつ複数個の前記製品部を備えており、
前記各製品部からそれぞれ前記ゲート部と前記オーバーフロー部とをレーザービームを照射して切断する、
ことを特徴とする樹脂成形品の切断方法。
【請求項10】
前記樹脂成形品の切断部に対してレーザービームを移動させて切断部に間欠的に複数回レーザービームを照射することを特徴とする請求項9に記載の樹脂成形品の切断方法。
【請求項11】
前記製品部と前記ゲート部との切断部にレーザービームを照射して切断した後、前記製品部と前記オーバーフロー部との切断部にレーザービームを照射して切断することを特徴とする請求項10に記載の樹脂成形品の切断方法。
【請求項12】
前記樹脂成形品を押圧して反りを修正しつつ、レーザービームを照射することを特徴とする請求項9ないし請求項11のいずれかに記載の樹脂成形品の切断方法。
【請求項13】
前記樹脂成形品の切断部のレーザービームの照射方向の厚さは一様であることを特徴とする請求項9ないし請求項12のいずれかに記載の樹脂成形品の切断方法。
【請求項14】
前記樹脂成形品は、液状樹脂射出成形法により成形された熱硬化性樹脂からなるものであることを特徴とする請求項9ないし請求項13のいずれかに記載の樹脂成形品の切断方法。
【請求項15】
前記樹脂成形品は、透明光学素子であることを特徴とする請求項14に記載の樹脂成形品の切断方法。
【請求項16】
前記樹脂成形品は、シリコーンからなるものであることを特徴とする請求項15に記載の樹脂成形品の切断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−61620(P2009−61620A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−229783(P2007−229783)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(391002775)株式会社東伸精工 (40)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】