説明

樹脂成形装置

【課題】金型が進退動した場合でも、離型フィルムに掛かるテンションを一定の範囲内に調整する。
【解決手段】上型112と該上型112に対して進退動可能な下型114とを備え、該下型114の表面に離型フィルム160を介在させた状態で樹脂封止を行う樹脂封止装置であって、使用前の離型フィルム160が巻回された供給ロール150と使用後の離型フィルム160を巻回して回収する回収ロール151とを下型114に対して水平方向同じ側に配置すると共に、離型フィルム160を供給ロール150から回収ロール151まで案内する複数の案内ローラ154を備え、下型114が進退動した場合でも、離型フィルム160に掛かるテンションを一定範囲内に調整可能なバッファローラ159を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型を用いて溶融した樹脂を成形する樹脂成形の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ICリードフレーム等を金型の封止キャビティ内で樹脂封止する際に、該金型の上型または下型の封止キャビティ面側と封止する樹脂との間にフィルムを介在させるように構成した樹脂封止装置(樹脂成形装置)が注目されている(特許文献1参照)。
【0003】
フィルムを金型のキャビティ面と樹脂との間に介在させる理由としては、例えばフィルムを介在させることによって、1)封止後の金型と製品とを剥離させるときに、いわゆるエジェクタピン等を用いて金型から製品を強引に引き離す必要がないため、製品が損傷しにくい、2)一個一個の最終製品が樹脂封止の段階で明確に分離されておらず、一度に多数の製品を同時に樹脂封止し、封止後にカッターによって分離するような場合であって、且つ、封止部分の形状が頻繁に変更されるような場合であっても、エジェクトピンの進退動機構を必要としないため、問題なく柔軟に対応できる、3)金型の封止キャビティ面に樹脂が付着しないため、該キャビティ面のクリーニングのメンテナンス負担が軽くなる、4)剥離工程を簡略化できるため、封止のサイクルタイムを短縮できる、等のメリットが得られることが挙げられる。
【0004】
図4は特許文献1に記載されている従来の樹脂封止装置を示す側面図である。図4において、1は樹脂封止を行うためのプレス機、5aは金型の上型、6aは上側の固定プラテン(クラウン:天板)である。この樹脂封止装置は、上型5aの封止キャビティ面と、封止する樹脂(図示略)との間に封止用のフィルム14を介在させるようにするため、上型5aの封止キャビティ面に対してフィルム14を供給するためのフィルム搬送構造を備えている。
【0005】
フィルム搬送構造としては、プレス機1の前方(図中左方)に供給ロール30a、後方(図中右方)に巻取りロール(回収ロール)32aを配置しており、供給ロール30aおよび巻取りロール32aを回転させることにより、1回の封止ごとにフィルム14を矢印方向に間欠的に供給ロール30a側から巻取りロール32a側に搬送するようになっている。また、下型5b側にも同様にフィルム搬送構造が設けられ、フィルム14が搬送供給可能とされている。
【0006】
ところで、この種のフィルム搬送構造を備えた樹脂封止装置においては、当然にフィルム14の交換作業が必要になる。ここでは供給ロール30aをプレス機1の前側に配置し、巻取りロール32aをプレス機1の後側に配置していたため、巻取りロール32aの交換を、プレス機1の後に回り込んで行わなければならず、作業が面倒であった。また、操業時、プレス機1は高温であるため、作業スペースを確保しにくいプレス機1の後側に回り込む作業は、安全面でも問題があった。そのため、特に、プレス機1が複数台並んで配置されている樹脂封止装置の場合、プレス機1の後側へ回り込むのに先立って、安全のために、隣接する他のプレス機の運転も止めなければならず、生産性を低下させる原因になっていた。また、プレス機の前後に供給ロールと巻取りロールが存在することから、装置自体が大型化し易いという問題もあった。
【0007】
これらの問題点を解消した発明を、既に出願人は行っている(特許文献2参照)。ここでは、供給ロールと巻取りロールとを金型に対して同じ側に配置することによって、ロール交換作業を簡易且つ安全に可能とし、更に装置のコンパクト化を図っている。
【0008】
【特許文献1】特開2000−252311号公報
【特許文献2】特開2003−168698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
金型の型締めは、金型表面に設けられたフィルム吸着機構によってフィルムが金型表面に吸着された上で行われる場合が多い。これは型締め時にフィルムにずれが生じると成形品に不具合(皺や樹脂漏れ等)が発生してしまうからである。また離型フィルムは、金型への吸着等の際に不要な「皺」が発生しないよう、常時、適度に緊張された状態にて供給されている。
【0010】
一方、離型フィルムは供給ロールから回収ロール(巻取りロール)へと連続した形で供給されるため、供給ロールと回収ロールとを同じ側(金型に対して水平方向同じ側)に配置しようとすれば、必然的にフィルムが金型を上下に一周することとなる。このように供給ロールと回収ロールとを同じ側に配置することによって、新たな問題が生じた。
【0011】
例えば、上下の金型のうち、上金型が固定され下金型のみがプレス機構によって進退動し金型が開閉する場合、下金型側に供給される離型フィルムには、下金型の進退動の状況によって生じる引張力が変化し得る。即ち、下金型が上金型側へと移動するに従って、下金型を一周するのに必要なフィルム長さが増加する一方で供給されているフィルムの長さは変わらないため、下金型を一周している離型フィルムに過度の引張力が発生する。その結果、金型表面への吸着力に打ち勝ってフィルムにズレが生じたり、離型フィルム自体に破れが生じる。
【0012】
本発明は、このような問題点を解消するべくなされたものであって、供給ロールと回収ロールとを進退動する金型に対して同じ側(水平方向に同じ側)に配置した場合であっても、離型フィルムに過度の引張力が生じないバッファ機構を有する樹脂封止装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、第1の金型と該第1の金型に対して進退動可能な第2の金型とを備え、該第2の金型の表面に離型フィルムを介在させた状態で樹脂成形を行う樹脂成形装置であって、使用前の前記離型フィルムが巻回された供給ロールと使用後の前記離型フィルムを巻回して回収する回収ロールとを前記第2の金型に対して水平方向同じ側に配置すると共に、前記離型フィルムを前記供給ロールから前記回収ロールまで案内する複数の案内部材を備え、前記第2の金型が進退動した場合でも、前記離型フィルムに掛かるテンションを一定範囲内に調整可能なバッファ機構を備えることにより上記課題を解決するものである。
【0014】
このようにバッファ機構を備えることによって、第2の金型の進退動による引張力の発生を吸収し、離型フィルムのズレや破れを防止している。
【0015】
より具体的には、例えば、前記複数の案内部材の少なくとも1つが前記バッファ機構を構成するバッファ部材とされ、該バッファ部材が前記第2の金型の進退動に応じて所定の方向に移動することにより前記離型フィルムに掛かるテンションを調整することで実現可能である。
【0016】
このとき、前記供給ロールが、前記第2の金型を支持し該第2の金型と共に進退動する可動プラテンから支持され、且つ、前記回収ロールが、前記可動プラテンを内包し前記第2の金型と共に進退動しない本体部から支持され、更に、前記バッファ部材を、前記離型フィルムの案内経路における前記第2の金型から前記回収ロールの間に位置する前記案内部材によって構成すれば、供給ロールと第2の金型との間にはバッファ機構を設ける必要がないため、簡易且つ低コストでバッファ機構を実現することができる。更に、供給ロールから供給される未使用の離型フィルムが、供給ロールから供給されてから実際に金型にて樹脂成形に使用されるまでの時間を短くすることができるため、雰囲気の不純物(樹脂カスやチリ等)のフィルム上への蓄積を低減できる。
【0017】
またバッファ機構は、その他にも、前記供給ロールまたは前記回収ロールの少なくとも一方の回転を両方向に制御可能とし、前記第2の金型の進退動に応じて前記供給ロールまたは前記回収ロールの少なくとも一方を回転させることにより同様の効果を発揮することも可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明を適用することにより、進退動する金型に対しても、(離型フィルムの)供給ロールと回収ロールとを同じ側に配置することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。
【0020】
図1は、樹脂封止装置100の概略平面図である。図2は、同概略正面図である。図3は、図1における矢示III方向から見た概略構成図である。
【0021】
<樹脂封止装置全体の構成>
樹脂成形装置の一種である樹脂封止装置100は、樹脂封止金型110(上型(第1の金型)112および下型(第2の金型)114)を備える樹脂封止金型ユニット101と、この樹脂封止金型ユニット101に対して樹脂(図示しない)を供給可能な樹脂供給部102と、樹脂封止金型ユニット101に対して樹脂封止前の基板(被成形品)を供給したり、樹脂封止後の基板を収納したりする基板供給収納部103とから構成されている。
【0022】
本実施形態における樹脂封止装置100は、樹脂封止金型ユニット101が2列配置された、所謂「マルチプレス」型の樹脂封止装置である。並列配置された樹脂封止金型ユニット101に対して、一方側に樹脂供給部102が配置され、他方側に基板供給収納部103が配置されている。これら樹脂封止金型ユニット101、樹脂供給部102、基板供給収納部103にはそれぞれが連結された状態で、連続する移動ガイド130が設けられている。また当該移動ガイド130上を樹脂ローダ122や、基板用ローダ・アンローダ140が移動可能とされている。樹脂封止金型ユニット101は適宜増減可能であり、1つの樹脂封止金型ユニット101で樹脂封止装置を構成することも可能である。また、3つ以上の樹脂封止金型ユニット101を並列配置することも可能である。
【0023】
樹脂供給部102は、樹脂封止金型110に投入される樹脂が供給される部分である。当該樹脂供給部102から供給される樹脂は、例えばペレット状、粉状、粒状、平板状等のさまざまな状態で供給される。当該樹脂供給部102から供給される樹脂は、移動ガイド130上に配置される樹脂ローダ122によって所定のタイミングで樹脂封止金型ユニット101における樹脂封止金型110に対して供給可能とされている。
【0024】
一方、基板供給収納部103は、半導体チップ等が搭載された基板(被成形品)であってこれから樹脂封止されようとする基板が複数収納された供給マガジン172と、樹脂封止金型110によって樹脂封止された封止後の基板が収納される収納マガジン174とが配置されている。両マガジン172、174は上下に位置を異ならせて配置されており(図2参照)、マガジンエレベータ170を介して基板(封止前基板、封止後基板)の出し入れが行われる。また、基板供給収納部103には、供給マガジン172から取り出された基板を樹脂封止金型110に対して搬送する前に事前に所定の温度に温めておくことが可能なプレヒータ部180が備わっている。
【0025】
また、移動ガイド130上には、基板用ローダ・アンローダ140が配置されており、封止前基板を樹脂封止金型110に対して搬入したり、封止後基板を樹脂封止金型110から搬出することが可能とされている。基板用ローダ・アンローダ140は、移動ガイド130上をX方向(図1参照)に自由に移動できると共に、自身の一部をY方向に進退させることが可能とされている。
【0026】
図3に示されるように、樹脂封止金型ユニット101では、上型(第1の金型)112と下型(第2の金型)114とによって基板(被成形品)をクランプし、投入された樹脂を用いて樹脂封止が行われる。上型112は固定プラテン113から垂設され、下型114は可動プラテン115上に載置されている。この可動プラテン115は本体116の内側に配置されている。この本体116には上下に貫通する貫通孔が設けられており、当該貫通孔内に可動プラテン115が配置されている。即ち、可動プラテン115が本体116に内包されている。また、可動プラテン115はボールねじ(プレス機構)194に連結しており、当該ボールねじ194の動作によって固定された本体116に対して上下に進退動可能とされている。その結果、上型112と下型114とが所定のタイミングで当接・離間可能とされている。なお本体116には4本のタイバー117が立設され、この4本のタイバー117の上部に固定プラテン113が連結固定されている。
【0027】
また、各樹脂封止金型ユニット101には、それぞれサーボモータ190が設けられている。このサーボモータ190を動力源として、可動プラテン115の進退動が行なわれる。サーボモータ190の出力軸には第1プーリ191が固定されている。一方、ボールねじ194の下端部には第2プーリ193が連結固定されている。更に、これら第1プーリ191および第2プーリ193にはタイミングベルト192が係合している。このような構成によりサーボモータ190の回転をボールねじ194へと伝達可能とされている。
【0028】
また、下型114の表面(上型112側表面)には、樹脂封止後の基板の離型性を向上させるための離型フィルム160が供給されている。この離型フィルム160は、下型114の正面側(図3において右側:樹脂封止装置100の正面側:以下同じ)に設けられた供給ロール150から供給され、下型114の表面、下型114の背面側(図3において左側:樹脂封止装置100の背面側:以下同じ)および下型114の底面側を通ってぐるりと一周した上で、更に、この供給ロール150と水平方向同じ側、即ち、下型114の正面側に備わる回収ロール151へと回収される態様で供給される。この間に、離型フィルム160は複数の案内ローラ(案内部材)154によって案内されている。
【0029】
供給ロール150には、未使用の離型フィルム160が巻回されている。供給ロール150は、供給ロールホルダ150Aから回転可能に支持されている。この供給ロールホルダ150Aは、第1リフトシリンダ152に連結固定されている。第1リフトシリンダ152は第1台座157上に載置されており、この第1台座157は可動プラテン115の正面側に連結固定されている。即ち供給ロール150は可動プラテン115から支持されている。なお、本体116の正面側には本体内部の貫通孔と連通する孔116Aが設けられており、当該孔116Aを介して第1台座157が本体116の外部へと露出している。また、第1リフトシリンダ152には、第1案内ローラ支持体155が設けられている。この第1案内ローラ支持体155には2つの案内ローラ(案内部材)154A、154Bが軸支されている。
【0030】
一方、可動プラテン115における背面側には第2台座158が設けられている。またこの第2台座158には、第2リフトシリンダ153が載置され、更に当該第2リフトシリンダ153上に第2案内ローラ支持体156が設置されている。この第2案内ローラ支持体156においても、前述した第1案内ローラ支持体155と同様に、2つの案内ローラ154C、154Dが設けられ、当該第2案内ローラ支持体156に対して回転可能に構成されている。離型フィルム160は、これら4つの案内ローラ154A、154B、154C、154Dに係合して下型114の正面側から背面側へと導かれている。
【0031】
このように、第1案内ローラ支持体155は第1リフトシリンダ152上に、および、第2案内ローラ支持体156は第2リフトシリンダ153上に設けられているため、両シリンダ152、153を同時に作動させることによって、離型フィルム160を下型114の表面に対して当接・離間させることが可能とされている。また、いずれも可動プラテン115に連結されているため、可動プラテン115の進退動(上下動)に伴って上下する。即ち、可動プラテン115の進退動に応じて上下に進退動すると同時に、可動プラテン115の進退動とは独立した上下の進退動が可能とされている。
【0032】
また、本体116の底面には2つの支持部材116Bが設けられ、それぞれの支持部材116Bの先端に案内ローラ154E、154Fが回転可能に設けられている。下型114の背面側に導かれた離型フィルム160はこの底面側に備わる案内ローラ154E、154Fに更に係合し、正面側(本体116の正面側)へと導かれる。また本体116の正面にも案内ローラ154Gが設けられ、下型114の底面側から導かれた離型フィルムが係合し案内される。
【0033】
更に、本体116の正面側には回収ロールホルダ151Aが固定されており、当該回収ロールホルダ151Aから回収ロール151が軸支されている。即ち回収ロール151は本体116から支持されている。この回収ロール151には樹脂封止に使用された使用済みの離型フィルム160が回収される。また、回収ロール151は前述した供給ロール150の下側であって、且つ案内ローラ154Gの上側に設けられている。
【0034】
回収ロール160と本体正面側に備わる案内ローラ154Gとの間にはバッファローラ(バッファ部材:バッファ機構)159が設けられている。このバッファローラ159も案内ローラとして機能する。またこのバッファローラ159は、上下に移動することが可能に構成されている。離型フィルム160は、案内ローラ154Gから当該バッファローラ159を介して回収ロール151へと導かれている。
【0035】
このように、離型フィルム160は、供給ロール150→案内ローラ154A→案内ローラ154B→案内ローラ154C→案内ローラ154D→案内ローラ154E→案内ローラ154F→案内ローラ154G→バッファローラ159を経て、最後に回収ロール151によって回収される。
【0036】
なお、下型114の表面には離型フィルム160を吸着保持することが可能なフィルム吸着機構(図示しない)が備わっている。一方、上型112の表面には、基板を吸着保持することが可能な基板吸着機構(図示しない)が備わっている。
【0037】
<樹脂封止装置全体の作用>
最初に、上型112と下型114とが離間した状態で、下型114の表面に対して離型フィルム160が吸着保持される。この吸着保持は、第1リフトシリンダ152および第2リフトシリンダ153が同時に下降することによって、案内ローラ154Bと案内ローラ154Cの間の離型フィルム160を下型114の表面に当接させた上で行なわれる。このとき、下型114の真上に位置する離型フィルム160が使用済みである等の場合は、吸着に先立って供給ロール150が回転すると同時に(またはその直後に)バッファローラ159が移動(下降)することにより、未使用の離型フィルム160を下型114の真上の位置へと供給する。その後、回収ロール151によって新たに供給された分の離型フィルム160が巻回回収されると共に、当該回収に従いバッファローラ159が上昇する。吸着後、下型114の表面には、樹脂供給部102から供給される樹脂(図示しない)が樹脂ローダ122によって搬送・供給される。
【0038】
一方、供給マガジン172からマガジンエレベータ170によって取り出された基板は、プレヒータ部180へと搬送され、所定の温度にまで加熱される。続いて基板用ローダ・アンローダ140に引き渡された後、所定のタイミングで樹脂封止金型へと搬送・供給される。この供給は、上型112に対して行なわれ、上型112の表面に備わる基板吸着機構(図示しない)によって吸着保持される形で供給される。
【0039】
このように樹脂封止に必要な材料が樹脂封止金型110へと投入されると、サーボモータ190の働きによって可動プラテン115が上昇する。即ち、下型114が上型112側へと進退動を始める。これにより、上型112と下型114とが当接し、更に所定の圧力が加えられることによって、上型112に供給された基板に対して樹脂による封止が行なわれる。なお、可動プラテン115の上昇に先立ち、予めバッファローラ159が下降する(同時に回収ロール151が反回収方向に回転する)。即ち、離型フィルム160のテンションを調整するためのバッファ分が蓄えられる。
【0040】
このとき(可動プラテン115が上昇するとき)、供給ロール150、第1案内ローラ支持体155および第2案内ローラ支持体156はいずれも可動プラテン115から支持される態様とされているため、当該可動プラテン115の進退動に応じて、これら供給ロール150、第1案内ローラ支持体155および第2案内ローラ支持体156も連動して進退動する(即ち、可動プラテン115や下型114との相対的な位置関係は変化しない)。一方、回収ロール151は、本体116から回収ロールホルダ151Aを介して支持されているため、可動プラテン115の進退動に拘わらず、常に一定の位置に存在している。即ち、可動プラテン115が上型112側へと上昇(進退動)するに従って、本来的には、供給ロール150から回収ロール151に至るまでに必要な離型フィルム160の長さが増大する。換言すると、可動プラテン115の上昇に従って、離型フィルム160に対して掛かる引張力が増大することになる。
【0041】
しかしながら、本実施形態においては、回収ロール151と案内ロール154Gとの間にバッファローラ159が設けられ、当該バッファローラ159が可動プラテン115の進退動に応じて(連動して)上下方向に移動することによって、離型フィルム160に掛かる引張力を一定の範囲内に調整している。その結果、可動プラテン115の進退動によっても、離型フィルム160に対して過度の引張力が掛かることを防止でき、型締め工程における離型フィルム160のズレを防止することができると共に、離型フィルム160自体の破損を防止している。
【0042】
なお、上記実施形態においては、供給ロール150が、下型114を支持し該下型114と共に進退動する可動プラテン115から支持され、且つ、回収ロール151が本体116から支持され、更に、バッファローラ159が、下型114から回収ロール151の間(離型フィルム160の案内経路としての間)に配置されていた。このように構成することによって、供給ロール150−下型114間にはバッファ機構を設ける必要がないため、簡易且つ低コストでバッファ機構を実現することができる。更に、供給ロール150から供給される未使用の離型フィルム160が、供給ロール150から供給されてから実際に樹脂封止金型110にて樹脂封止に使用されるまでの時間を短くすることができるため、雰囲気の不純物(樹脂カスやチリ等)のフィルム上への蓄積を低減できる。
【0043】
また、本実施形態においては、バッファローラ159が、離型フィルム160が供給されてから回収される過程において、回収ロール151の直前の位置(樹脂封止に使用されてから回収ロール151に回収されるまでの位置)に配置構成されていた。その結果、(バッファローラ159の存在によって)離型フィルム160が樹脂封止に使用された後、回収ロール151に回収されるまでのフィルム長が増大し、回収までの時間が延長されることとなるが、既に樹脂封止に使用された使用済みの離型フィルム160であるため、回収されるまでの時間が延長されることによって生じる不具合(例えば、フィルム上に樹脂カス等が付着すること)の影響はない。
【0044】
その後、樹脂の硬化を見計らって型開きがなされる。なお、当該型開きに先立ってバッファローラ159が上昇し(同時に回収ロール151が回収方向に回転し)、型開きに伴う離型フィルム160の余り分(弛み分)をバッファローラ159にて吸収可能に準備される。また、樹脂封止が完了した基板は、基板用ローダ・アンローダ140によって回収され、基板供給収納部103側へと移動する。その後、マガジンエレベータ170を介して収納マガジン174へと収納される。その後は当該作用を繰り返し行なうことによって封止作業が繰り返される。
【0045】
上記実施形態では、複数の樹脂封止金型ユニット101が複数台並んで配置されている場合において、供給ロール150と回収ロール151とをいずれも手前側(金型に対して水平方向同じ側)に配置しているので、ロールの交換等の際に金型の後側へ回り込む必要が無く、更に作業に先立って、安全のために隣接する他の金型の運転を止める必要がないため生産性の低下防止に有効に機能する。
【0046】
なお、バッファ機構は上記以外の構成によって実現することも可能である。例えば、回収ロール150の回転を「両方向」に制御可能とし、下型114の進退動に応じて回収ロール151を回転させる(例えば、下型114が上昇するに従って回収ロール151を離型フィルムを回収する方向と反対方向に回転させる)ことにより離型フィルム160に掛かるテンションを調整することも可能である。
【0047】
また、上記説明では下型側が進退動する構成を例に説明しているが、上下を略逆転し、上型側が進退動する構成であっても差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
例えば半導体チップを搭載した基板を樹脂封止する樹脂封止装置として、また、広く樹脂を所定の形状に成形する樹脂成形装置として広く適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】樹脂封止装置100の概略平面図
【図2】同概略正面図
【図3】図1における矢示III方向から見た概略構成図
【図4】特許文献1に記載されている樹脂封止装置
【符号の説明】
【0050】
100…樹脂封止装置(樹脂成形装置)
101…樹脂封止金型ユニット
102…樹脂供給部
103…基板供給収納部
110…樹脂封止金型
112…上型
113…固定プラテン
114…下型
115…可動プラテン
116…本体
116A…孔
117…タイバー
122…樹脂ローダ
130…移動ガイド
140…基板用ローダ・アンローダ
150…供給ロール
150A…供給ロールホルダ
151…回収ロール
151A…回収ロールホルダ
152…第1リフトシリンダ
153…第2リフトシリンダ
154A〜G…案内ローラ
155…第1案内ローラ支持体
156…第2案内ローラ支持体
157…第1台座
158…第2台座
159…バッファローラ
160…離型フィルム
170…マガジンエレベータ
172…供給マガジン
174…収納マガジン
180…プレヒータ部
190…サーボモータ
191…第1プーリ
192…タイミングベルト
193…第2プーリ
194…ボールねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金型と該第1の金型に対して進退動可能な第2の金型とを備え、該第2の金型の表面に離型フィルムを介在させた状態で樹脂成形を行う樹脂成形装置であって、
使用前の前記離型フィルムが巻回された供給ロールと使用後の前記離型フィルムを巻回して回収する回収ロールとを前記第2の金型に対して水平方向同じ側に配置すると共に、前記離型フィルムを前記供給ロールから前記回収ロールまで案内する複数の案内部材を備え、
前記第2の金型が進退動した場合でも、前記離型フィルムに掛かるテンションを一定範囲内に調整可能なバッファ機構を備える
ことを特徴とする樹脂成形装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記複数の案内部材の少なくとも1つが前記バッファ機構を構成するバッファ部材とされ、該バッファ部材が前記第2の金型の進退動に応じて所定の方向に移動することにより前記離型フィルムに掛かるテンションを調整する
ことを特徴とする樹脂成形装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記供給ロールが、前記第2の金型を支持し該第2の金型と共に進退動する可動プラテンから支持され、且つ、前記回収ロールが、前記可動プラテンを内包し前記第2の金型と共に進退動しない本体部から支持され、更に、
前記バッファ部材が、前記離型フィルムの案内経路における前記第2の金型から前記回収ロールの間に位置する前記案内部材によって構成されている
ことを特徴とする樹脂成形装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記供給ロールまたは前記回収ロールの少なくとも一方の回転が両方向に制御可能とされ、前記第2の金型の進退動に応じて前記供給ロールまたは前記回収ロールの少なくとも一方を回転させることにより前記離型フィルムに掛かるテンションを調整する
ことを特徴とする樹脂成形装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記第1の金型または前記第2の金型に対して半導体チップが搭載された被成形品が供給され、該被成形品が樹脂にて封止される
ことを特徴とする樹脂成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−178901(P2009−178901A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19159(P2008−19159)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】