説明

樹脂組成物、および、表皮材

【課題】車両、特に乗用車などの内装材に好適に使用される、適度な弾力性や自然な艶により、天然の皮革に近い外観と触感をもつ表皮材及びその表皮材に好適な樹脂組成物を提供することにある。
【解決手段】植物由来樹脂1質量%〜50質量%、オレフィン系樹脂1質量%〜80質量%及びスチレン系エラストマー1質量%〜50質量%を含有する樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、およびそれを用いた自動車等の車両内装用に好適な表皮材に関し、詳細には、車両のドア、インナーパネルなど、加熱成形される成形材料の表面に好適に用いられる表皮材及び表皮材の樹脂層形成に有用な樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の内装表皮材としては、適度な弾力性や自然な艶により、天然の皮革に近い外観と感触をもつ内装表皮材が切望されている。
表皮材に適度の弾力性を与える樹脂層には、加工性や感触が良好なオレフィン系樹脂が汎用されている。近年、地球環境への関心が高まっており、オレフィン系樹脂などの石油由来材料に変わる材料として植物由来樹脂が注目されるようになってきた。植物由来樹脂は、製造時の炭酸ガス排出量が少なく、廃棄時も生分解性に優れるなど種々の利点を有するものの、これを表皮材の樹脂層に使用する場合、成型時に様々な問題が発生する。
【0003】
具体的には、オレフィン系樹脂に植物由来樹脂をブレンドして樹脂層を形成すると、真空成型時の延伸性不足に起因する破れ、偏伸び、白化が発生しやすくなり、スタンピング成型時にも樹脂の延伸性不足に起因して同様の問題が生じ、外観に優れた表皮材は得がたかった。
廃棄容易性を目的として、生分解性樹脂と架橋促進剤とを含有する発泡シートが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。このシートは生分解性に優れるものの、触感の他、耐久性についてはなお改良の余地があり、表面の触感や外観を満足させるには至っていないのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−91588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記課題を考慮してなされたものであり、本発明の目的は、車両、特に乗用車などの内装材に好適に使用される、適度な弾力性や自然な艶により、天然の皮革に近い外観と触感をもつ表皮材及びその表皮材に好適な樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、検討の結果、植物由来樹脂とポリオレフィン系樹脂とをブレンドし、さらに特定量のスチレン系エラストマーを含有させることで上記問題点を解決しうることを見いだし、本発明を完成した。
即ち、本発明の樹脂組成物は、植物由来樹脂1質量%〜50質量%、オレフィン系樹脂1質量%〜80質量%及びスチレン系エラストマー1質量%〜50質量%を含有することを特徴とする。
また、本発明の表皮材は、発泡層の上に樹脂層と表面処理層を設けた表皮材であって、該樹脂層が、植物由来樹脂1質量%〜50質量%、オレフィン系樹脂1質量%〜80質量%及びスチレン系エラストマー1質量%〜50質量%を含有する樹脂組成物からなることを特徴とする。
【0007】
ここで、前記樹脂組成物に含まれるスチレン系エラストマーの含有量が5質量%〜40質量%であることが好ましい。
また、植物由来樹脂としては。ポリ乳酸系樹脂が好ましく、スチレン系エラストマーとしては、水添スチレン系ブロック共重合体及び水添スチレン系ランダム共重合体からなる群より選択される1種以上であることが好ましい態様である。
また、表面処理層は、ウレタン樹脂を主成分とすることが好ましい。
【0008】
本発明の作用は明確ではないが、本発明においては、表皮材における樹脂層に、植物由来樹脂とオレフィン系樹脂とを含有するが、通常はこのブレンド物は相溶性が十分ではなく、植物由来樹脂の物性に起因する延伸性や成形性の問題が出やすいが、ここにスチレン系エラストマーを1質量%〜50質量%を添加することで、両者の相溶性が向上し、均一な物性の樹脂層が形成される。このため、加工性と触感に優れた樹脂層が形成されるものと考えている。
また、本発明の好ましい態様では、スチレン系エラストマーとして、水添スチレン系ブロック共重合体及び水添スチレン系ランダム共重合体からなる群より選択される1種以上が使用されるが、このようなエラストマーのハードセグメント、ソフトセグメントのバランスに起因して、一層の触感の向上が達成されるものと考えている。
【発明の効果】
【0009】
また、本発明によれば、天然の皮革に近い触感と弾力性をもつシートを形成しうる、表皮材の樹脂層を構成するのに好適な樹脂組成物を提供することができる。
本発明によれば、車両、特に乗用車などの内装材に好適に使用される、適度な弾力性や自然な艶により、天然の皮革に近い外観と触感をもつ表皮材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の表皮材10の一態様を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、植物由来樹脂、オレフィン系樹脂及びスチレン系エラストマーを特定の比率で含有することを特徴とする。
以下、本発明の樹脂組成物に含まれる各成分について説明する。
【0012】
<植物由来樹脂>
本発明における植物由来樹脂とは、デントコーン、サトウキビなどの植物やパルプ製造時の廃液などの植物やその廃材などを原料とするプラスチックであり、所謂バイオマスプラスチックに包含される。
植物由来樹脂の代表例としては、下記に詳述するポリ乳酸系樹脂が挙げられるが、ポリ乳酸系樹脂以外の植物由来樹脂としては、デンプン樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂、ひまし油ポリオールを原料とするウレタン樹脂などが挙げられる。
【0013】
(ポリ乳酸系樹脂)
ポリ乳酸系樹脂は、分子中に乳酸単位を含む樹脂であり、原料に用いられる乳酸としては、L−体とD−体とが存在する。
本発明におけるポリ乳酸系樹脂は、L−体とD−体のいずれの乳酸単位を含むものであってもよいが、なかでも、ポリ乳酸系樹脂として、デンプンを発酵させ、その後、重合して製造されたポリ−L−乳酸を主成分とするものが望ましい。ポリ−L−乳酸としては、重量平均分子量が10万以上が好ましく、20万以上がより好ましい。分子量の上限は、樹脂の使用目的によって適宜定められるが、一般には、30万以下であることが好ましい。
また、ポリ乳酸系樹脂は、目的に応じて、L−乳酸と他のハイドロカルボン酸との一部共重合であってもよい。
ポリ乳酸系樹脂は、市販品としても入手可能であり、商品例としては、例えば、三井化学社製のポリ乳酸系樹脂 レイシアH−280、レイシアH−440、ユニチカ社製のテラマックTE−7000シリーズ、TM4000シリーズ、TE6100シリーズ、カネボウ合繊社製のラクトロンB−100、東洋紡績社製のバイロエコール−BE410等が挙げられ、これらはいずれも本発明に好適に用いられる。
【0014】
(ポリブチレンサクシネート系樹脂)
ポリブチレンサクシネート系樹脂は、コハク酸とブタンジオールとを原料として、脱水重縮合により製造されるが、物性を向上させるための分子量の増大を目的とし、添加成分(ジイソシアナート等)の利用されたものが望ましく、また種々の共重合(エチレングリコール、アジピン酸等の利用)されたものであっても良い。ポリブチレンサクシネート系樹脂は、三菱化学製GSPla、昭和高分子製ビオノーレ1001等が挙げられ、これらはいずれも本発明に好適に用いられる。
【0015】
本発明の樹脂組成物には、上記植物由来樹脂は1種のみを含んでいてもよく、2種以上を併用してもよい。
樹脂組成物中の植物由来樹脂の含有量は、1質量%〜50質量%であることを要し、好ましくは5質量%〜40質量%の範囲であり、さらに好ましくは10質量%〜30質量%の範囲である。
【0016】
<オレフィン系樹脂>
本発明の樹脂組成物には、オレフィン系樹脂を含有する。
オレフィン系樹脂としては、エチレン−α−オレフィン系共重合体を含む熱可塑性エラストマー(TPO樹脂)や、ポリエチレン、ポリプロピレンなど、エチレン、プロピレンなどのオレフィン系構造単位を主成分とする熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0017】
(TPO樹脂)
TPO樹脂は、エチレン−α−オレフィン系共重合ゴム、熱可塑性オレフィン樹脂、及びプロセスオイル等からなる部分的に架橋された熱可塑性エラストマーを含む。TPO樹脂の物性は、ショアA硬度が70から99、メルトフローレートが5から80(230℃/10kgf)のものが好ましい。
【0018】
(ポリエチレン(PE)樹脂)
PE樹脂は、エチレンを主成分とする熱可塑性オレフィン樹脂であり、低密度ポリエチレン(LDPE)、L−LDPE及び高密度ポリエチレン(HDPE)等を含む。また、プロピレン、炭素数が4から10のα−オレフィン、エチレンと共重合し得る他のモノマー(例えば、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等)とエチレンモノマーとが共重合して得られる樹脂及びエラストマーも本発明におけるPE樹脂に含まれる。
PE樹脂としては、特に耐衝撃強度、透明性に優れた低密度ポリエチレン又は機械的特性、耐熱安定性に優れた高密度ポリエチレンが好適であり、これらは単独又は併用して使用することができる。
これらのポリエチレン(PE樹脂)は、例えば、溶融温度が70〜140℃程度が好ましく、ショアD硬度が20から70、またメルトフローレート(JIS K 6760)が0.3〜30g/10min.好ましくは0.3〜10g/10min.のものが望ましい。
【0019】
(ポリプロピレン(PP)樹脂)
本発明におけるPP樹脂は、ホモポリプロピレンの他、ブロックPP、及びランダムPP等のプロピレンを主成分とする熱可塑性オレフィン樹脂を包含する。
また、エチレン、炭素数が4から10のα−オレフィン等のプロピレンモノマーと共重合し得る他のモノマー(例えば、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等)との共重合して得られる樹脂及びエラストマーも含まれる。
PP樹脂の物性としては、ロックウエル硬さがR60からR110、メルトフローレートが0.3から10(230℃/2.16kgf)のものが好ましい。
PP樹脂としては、得られるフィルム・シートの透明性、メルトフローレート、曲げ弾性率、融点、及び結晶性などの点から目的に応じて任意に選定すればよいが、特にプロピレンを主成分とするエチレン−プロピレンランダム共重合体(PE:PP(モル比)1:8〜92:99)が好適である。プロピレンを主成分とするエチレン−プロピレンランダム共重合体は、ポリマーの立体規則性が乱れて結晶性が比較的低く、そのため透明度が高く柔軟性を付与することができる。
【0020】
このようなプロピレンを主成分とするエチレン−プロピレンランダム共重合体において、特に透明性に優れ、メルトフローレート(JIS K 6758)は0.3〜30g/10min.好ましくは0.3〜9g/10min.曲げ弾性率(JlS K 6758)は3000〜30000kgf/cm、好ましくは4000〜13000kgf/cm、ビカット軟化点(JIS K 6758)は70〜150℃のものが望ましい。
本発明に用いうる好適なPP樹脂は市販品としても入手可能であり、例えば、プライムポリプロB221WA(プライムポリマー社製)、住友ノーブレンGEB−G5(住友化学(株)製)などを挙げることができる。
【0021】
本発明の樹脂組成物には、上記オレフィン系樹脂は1種のみを含んでいてもよく、2種以上を併用してもよい。
樹脂組成物中のオレフィン系樹脂の含有量は、1質量%〜80質量%であることを要し、好ましくは20質量%〜80質量%の範囲であり、さらに好ましくは30質量%〜70質量%の範囲である。
【0022】
<スチレン系エラストマー>
スチレン系エラストマーは、植物由来樹脂と、オレフィン系樹脂とを相溶させるのに有用であると考えられる。
本発明におけるスチレン系エラストマーとしては、水添スチレン系ブロック共重合体及び水添スチレン系ランダム共重合体からなる群より選択される1種以上が使用される。
水添スチレン系ブロック共重合体、および水添スチレン系ランダム共重合体は、必ずしもすべての二重結合が飽和されていなくてもよい。
【0023】
水添スチレン系ブロック共重合体としては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−SBRブロック共重合体、スチレン−SBR−スチレンブロック共重合体等の水添したものが例示される。
水添スチレン系ブロック共重合体の市販品としては、例えば、クレイトンG(クレイトン製)、ハイブラー((株)クラレ製)、タフテック(旭化成ケミカルズ(株)製)等が挙げられる。
【0024】
また、水添スチレン系ランダム共重合体としては、スチレンとブタジエンの水素添加したランダム共重合体等が挙げられる。
水添スチレン系ランダム共重合体の市販品としては、例えば、ダイナロン(JSR(株)製)等が挙げられる。
【0025】
本発明における樹脂組成物におけるスチレン系エラストマーの含有量は、樹脂組成物に対して、1〜50質量%の範囲であり、好ましくは5〜40質量%の範囲であり、10〜30質量%の範囲がより好ましい。この範囲でスチレン系エラストマーを含むことによって、凸引き真空成形、凹引き真空成形、スタンピング成形などの成形工程において、破れ、偏延び、表面白化を防止することができる。
さらに、スチレン系エラストマーはマレイン酸変性あるいはアミノ基変性したものが、植物由来樹脂とオレフィン系樹脂とを微分散させ相溶させるのに有用である。
マレイン酸変性スチレン系エラストマーとしては、クレイトンFG(クレイトン製)、タフテックM、タフテックMP(旭化成ケミカルズ製)等が挙げられる。
【0026】
本発明の樹脂組成物には、必要によって光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤等の成分を添加することができる。
【0027】
(光安定剤、紫外線吸収剤)
光安定剤と紫外線吸収剤とは、ともに耐候(光)性を付与するために添加するものであり、いずれかの単独使用でもよいが、両者を混合して使用することが望ましい。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系等の有機系のもの、或いは微粒子の二酸化チタン、酸化セリウム等の無機系のものが用いられる。また、光安定剤としては、ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤等が用いられる。紫外線吸収剤、光安定剤とも樹脂組成物に対して、0.1〜1質量%程度の添加量である。
【0028】
(着色剤)
顔料或いは染料により樹脂組成物を着色する場合、用途に応じて透明着色又は不透明(隠蔽性)着色とすることができる。顔料としては、チタン白、亜鉛華、群青、コバルトブルー、弁柄、朱、黄鉛、チタン黄、カーボンブラック等の無機顔料、キナクリドン、パーマネントレッド4R、イソインドリノン、ハンザイエローA、フタロシアニンブルー、インダスレンブルーRS、アニリンブラック等の有機顔料乃至は染料、アルミニウム、真鍮等の箔粉からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛の箔粉等からなる真珠光沢(パール)顔料等が用いられる。
この他、必要に応じて炭酸カルシウム、シリカ(二酸化硅素)、アルミナ(酸化アルミニウム)、硫酸バリウムのような体質顔料(充填剤)を添加してもよい。
【0029】
[表皮材]
次に、前記本発明の樹脂組成物を用いて得られる本発明の表皮材について、その製造方法とともに説明する。
本発明の表皮材は、下記の発泡層の上に樹脂層と表面処理層を設けた表皮材であって、該樹脂層が、植物由来樹脂1質量%〜50質量%、オレフィン系樹脂1質量%〜80質量%及びスチレン系エラストマー1質量%〜50質量%を含有する樹脂組成物からなることを特徴とする。
図1は、本発明の表皮材10の一態様を占めず断面図である。表皮材10は、発泡層12表面に樹脂層14及び表面処理層16を備える。本実施形態では、樹脂層14と表面処理層16との間に、両層の接着性向上のためのプライマー層18を備える。
【0030】
〔樹脂層の形成〕
表皮材を得るためには、下記の発泡層の上に本発明の樹脂組成物からなる樹脂層及び表面処理層を設ける。樹脂層14の形成方法としては、Tダイを有する押出機によりシート状にする方法が一般的であるが、これに制限されず、樹脂層を予めシート状に成形し、発泡層の上に接着剤により接着したり、ラミネートしたりすることも可能である。シート厚みは0.2〜1.0mm、好ましくは0.3〜0.8mm、より好ましくは0.3〜0.6mmである。
【0031】
〔発泡層〕
発泡層12には、東レ(株)製あるいは積水化学工業(株)製のPP(ポリプロピレン)系発泡体(発泡倍率10〜30倍程度、厚み1〜3mm程度)、または、積水化学工業(株)製のPE(ポリエチレン)系発泡体ならいずれも使用できる。
【0032】
〔表面処理層〕
表皮材の最表面に設けられる表面処理層は、表皮材に好ましい外観を付与するための層であり、表皮材の使用目的に応じて選択されるが、皮革状の外観を付与するためには、通常は、ウレタン樹脂を主成分とするウレタン樹脂組成物を用いる。このウレタン樹脂組成物には、外観の向上などの目的で、高分子量シリコーンオイル等の油剤、球状樹脂粒子や微粒子シリカなどの充填剤などを含有してもよい。
なお、表面処理層の形成にあたっては、これらの発泡層の表面に、接着性の向上のために、コロナ放電処理などの易接着処理を施したり、接着助剤層(プライマー層)を設けたりすることもできる。プライマー層は、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系等が挙げられ、特に2液型エポキシ系、2液型ウレタン系、2液型アクリルウレタン系が好ましい。
【実施例】
【0033】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
実施例1、4および比較例1、4では凸引き真空成形方法を用い、また、実施例2、5および比較例2、5では凹引き真空成形方法を用い、さらに、実施例3、6および比較例3、6ではスタンピング成形方法を用いて、それぞれの成形方法において、本発明の構成を有する場合と、有さない場合とを比較した。
【0034】
(実施例1および実施例4)
Tダイを有する2軸押出機で表1に示した配合A、および配合Dをそれぞれ用いて、0.5mm厚、1200mm幅で押出し、次に、コロナ処理してぬれ指数を40dyne以上にした後、グラビアプリントロールにて2液硬化型プライマー及び表面処理剤を塗布し、次いでシートを約180℃まで加熱し、従来のロールエンボス方式にて裏面にPPフォームをラミネートしながら表面に皮絞を施して、実施例1および実施例4の成形用表皮材を得た。常温での50%モジュラスは、MD方向が20〜50N/cm、TD方向が15〜35N/cmの範囲にあり、低温成形性に優れた凸引き真空成形の表皮材であった。
次に、この成形用表皮材を用いて、自動車内装部品であるドアアッパーの形状を有する凸引き真空成形型に接着剤をスプレーし、乾燥したPP基材をセットし、従来よりも5〜10℃低い表皮材温度にて、表皮貼り込み凸引き真空成形し、破れ、偏伸び、表面白化のない外観の優れたドアアッパー部品を作製した。
【0035】
【表1】

【0036】
(比較例1、および比較例4)
実施例1において、配合Aを表2に示す配合G、配合Jにそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1および比較例4の成形用表皮材を得た。
【0037】
【表2】

【0038】
(実施例2、および実施例5)
Tダイを有する2軸押出機で表3に示した配合B、および配合Eをそれぞれ用いて、0.5mm厚、1200mm幅で押出し、次に、コロナ処理して、ぬれ指数を40dyne以上にした後、グラビアプリントロールにて2液硬化型プライマー及び表面処理剤を塗布し、次いでシートを約180℃まで加熱し、従来のロールエンボス方式にて裏面にPPフォームをラミネートしながら表面にナシ地絞を施して、実施例2、および実施例5の成形用表皮材を得た。常温での50%モジュラスは、MD方向が40〜70N/cm、TD方向が35〜55N/cmの範囲にあり、低温成形性に優れた凹引き真空成形の表皮材であった。
次に、この成形用表皮材を用いて、自動車内装部品であるドアアッパーの形状を有する凹引き真空成形型に接着剤をスプレーし、乾燥したPP基材をセットし、従来よりも5〜10℃低い表皮材温度にて、表皮貼り込み凹引き真空成形し、凹引き紋転写性、破れ、偏伸び、表面白化のない外観の優れたドアアッパー部品を作製した。
【0039】
【表3】

【0040】
(比較例2、および比較例5)
実施例2において、配合Bを表4に示す配合H、および配合Kにそれぞれ変更した以外は、実施例2と同様にして、比較例2、および比較例5の成形用表皮材を得た。
【0041】
【表4】

【0042】
(実施例3、および実施例6)
Tダイを有する2軸押出機で表5に示した配合C、および配合Fをそれぞれ用いて、0.5mm厚、1200mm幅で押出し、次に、コロナ処理して、ぬれ指数を40dyne以上にした後、グラビアプリントロールにて2液硬化型プライマー及び表面処理剤を塗布し、次いでシートを約180℃まで加熱し、従来のロールエンボス方式にて裏面にPPフォームをラミネートしながら表面に皮絞を施して、実施例3、および実施例6の成形用表皮材を得た。
次に、自動車内装部品であるシート成形表皮材をセットし、型締めと同時に溶融樹脂をキャビティー内に注入し、冷却後型から取り出して、外周の不要な表皮をトリミングし所望の成形用表皮材を得た。
【0043】
【表5】

【0044】
(比較例3、および比較例6)
実施例3において、配合Cを表6に示す配合I、および配合Lにそれぞれ変更した以外は、実施例3と同様にして、比較例3、および比較例6の成形用表皮材を得た。
【0045】
【表6】

【0046】
実施例1〜6、および比較例1〜6の成形用表皮材を用いて、下記に示す評価方法で評価し、各評価基準に従い判定し、結果を表7にまとめた。
【0047】
<押出し加工性:メヤニ>
評価方法:Tダイを有する押出機にて、10分以上シート成形した際にTダイ口金部分の樹脂付着物(メヤニ)の有無を目視にて確認し評価する。
判定基準:
○:メヤニの発生なし
×:メヤニの発生有り
【0048】
<押出し加工性:面荒れ>
評価方法:Tダイを有する押出機にて、所望厚みにシート成形した際に、シート表面のツヤムラ、厚みムラを目視にて評価する。
判定基準:
○:ツヤムラ、厚みムラ 共になし
×:ツヤムラ、厚みムラ いずれかが認められる。
【0049】
<押出し加工性:耳切れ>
評価方法:Tダイを有する押出機にて、所望厚みにシート成形した際に、シート両端部のシート破れを目視にて評価する。
判定基準:
○:耳切れなし。
×:耳切れあり。
【0050】
<表皮材成形性:低温成形性>
評価方法:凸引き真空成形の場合、ドアアッパー形状にて表皮材表面温度110℃にて成形した際のフランジ部の賦形性を目視にて評価する。
判定基準:
○:形状がシャープ。
×:形状がシャープでない。
【0051】
<表皮材成形性:破れ>
評価方法:150%延伸時に表皮材の破れを目視にて評価する。
判定基準:
○:表皮材の破れ無し。
△:絞谷部が透けているが、破れは無し。
×:表皮材の破れ有り。
【0052】
<表皮材成形性:偏伸び>
評価方法:150%延伸時に表皮材の偏伸びを目視にて評価する。
判定基準:
○:偏伸び無し。
△:絞谷部に若干偏伸びが見られる。
×:著しい偏伸びが有り。
【0053】
<表皮材成形性:白化>
評価方法:150%延伸時に表皮材の白化、また表皮材折り曲げ時の白化を目視にて評価する。
判定基準:
○:白化無し。
×:白化有り。
【0054】
<表皮材成形性:絞流れ性 外観>
評価方法:120%、140%延伸部分の絞残り外観を目視評価する。
判定基準:
○:140%部分でしっかり絞が残っている。
△:140%部分では絞が浅くなっているが、120%部分でしっかり絞が残っている。
×:120%部分で絞が浅くなっている。
【0055】
<表皮材成形性:絞流れ性 絞残存率>
評価方法:120%延伸部分を表面粗さ計にて絞深度を測定し、成形前の表皮材の絞深度を100%として比較する。
絞深度の測定は、サーフコム130Aを用いて、Rz(μm)を測定し比較した。測定条件を下記に示す。
測定長:12.5mm
測定速度:0.3mm/s
カットオフ:2.5mm
【0056】
<表皮材成形性:凹引き絞転写性 外観>
評価方法:120%、140%延伸部分の絞転写の外観を、目視にて評価する。
判定基準:
○:140%部分でしっかり絞が転写されている。
△:140%部分では絞が浅いが、120%部分でしっかり絞が転写されている。
×:120%部分で絞が浅い。
【0057】
<表皮材成形性:凹引き絞転写性 転写率>
評価方法:120%延伸部分を表面粗さ計にて絞深度を測定し、金型の絞深度を100%として比較する。
絞深度の測定方法、および条件は、絞流れ性における絞残存率と同じである
【0058】
<表皮材耐久性:傷付き性>
評価方法:テーパースクラッチ法:炭化タングステンでメッキ処理した金属からなる引っ掻き子で引っ掻き試験を行い、300g荷重をかけた際に表皮材表面の傷を目視にて評価する。
判定基準
○:傷無し。
×:傷有り。
【0059】
<表皮材耐久性:耐光性>
評価方法:フェードメーターにてブラックパネル温度83℃に設定し、成形表皮材に500時間照射後の変色/退色変化をグレースケールにて評価する。
判定基準:
○:変色/退色=4級/3級以上
×:変色/退色=3級/2級以下
【0060】
<表皮材耐久性:耐熱性>
評価方法:ギヤオーブン温度100℃に設定し、成形表皮材を500時間連続処理後の変色/退色変化をグレースケールにて評価する。
判定基準:
○:変色/退色=4級/3級以上
×:変色/退色=3級/2級以下
【0061】
<表皮材耐久性:耐湿熱性>
評価方法:環境試験機を50℃ 95%RHに設定し、成形表皮材を500時間連続処理後の引張強度保持率を評価する。
判定基準:
○:強度保持率80%以上
×:強度保持率80%未満
【0062】
【表7】

【0063】
表7から以下のことがわかる。
成形の方法として、凸引き真空成形方法、凹引き真空成形方法、およびスタンピング成形方法のいずれの場合も、本発明の構成を有する実施例1〜6は、本発明の構成を有さない比較例1〜6に比べて、押出し加工性、表皮材成形性、および表皮材耐久性が良好であった。本発明は自動車内装用の表皮材として好ましいものであることがわかる。
【符号の説明】
【0064】
10:表皮材
12:発泡層
14:樹脂層
16:表面処理層
18:プライマー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物由来樹脂1質量%〜50質量%、オレフィン系樹脂1質量%〜80質量%及びスチレン系エラストマー1質量%〜50質量%を含有する樹脂組成物。
【請求項2】
発泡層の上に樹脂層と表面処理層を設けた表皮材であって、該樹脂層が、植物由来樹脂1質量%〜50質量%、オレフィン系樹脂1質量%〜80質量%及びスチレン系エラストマー1質量%〜50質量%を含有する樹脂組成物からなる表皮材。
【請求項3】
前記スチレン系エラストマーを5質量%〜40質量%含有する請求項2に記載の表皮材。
【請求項4】
前記植物由来樹脂が、ポリ乳酸系樹脂である請求項2又は請求項3に記載の表皮材。
【請求項5】
前記スチレン系エラストマーが、水添スチレン系ブロック共重合体及び水添スチレン系ランダム共重合体からなる群より選択される1種以上である請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の表皮材。
【請求項6】
自動車内装用の表皮材である請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の表皮材。

【図1】
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【公開番号】特開2010−285484(P2010−285484A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138592(P2009−138592)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(390023009)共和レザー株式会社 (17)
【Fターム(参考)】