説明

樹脂組成物、樹脂フィルム、カバーレイフィルム、層間接着剤、金属張積層板、フレキシブルプリント回路板および多層回路板。

【課題】 本発明は、フレキシブルプリント回路板に用いる樹脂組成物であって、加熱・加圧時、接着剤層の流れ出しのない樹脂組成物を提供すること。また、樹脂組成物を、樹脂フィルムに塗工し乾燥して得られるカバーレイフィルムを提供すること。また、樹脂組成物を、離型フィルムに塗工し乾燥して得られる層間接着剤を提供すること。
【解決手段】 フレキシブルプリント回路板に用いる樹脂組成物であって、平均粒径が、1nm以上、500nm以下である無機充填材を含有することを特徴とする樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、樹脂フィルム、カバーレイフィルム、層間接着剤、金属張積層板、フレキシブルプリント回路板および多層回路板に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント回路板は薄く、軽く、屈曲性に優れることから、携帯電話、PDA、デジタルカメラを始めとしてモバイル機器を中心に利用されているが、近年、これら電子機器の高性能化、小型化に伴いフレキシブルプリント回路板への配線の微細化、高密度実装化、耐屈曲性などがますます要求されてきている。
【0003】
また、環境対応問題より鉛を含まない鉛フリーはんだを用いる実装も増えつつあり、今後は主流となってくることが予想される。鉛フリーはんだを用いての実装では、実装温度が通常のはんだに比べ15〜20℃高く、これに伴いフレキシブルプリント回路板も従来以上の高耐熱性、高寸法安定性が求められている。
【0004】
また、難燃剤としてもハロゲンを含まないことが要求されている。従来の難燃性接着剤としては臭素化エポキシ樹脂を使用するのが一般的であったが(例えば特許文献1)、燃焼時にダイオキシンの発生が懸念され、ハロゲンフリー材料が求められている。
【0005】
一方、耐熱性の面において、耐熱性を克服する材料として熱可塑性ポリイミドを使用する場合がある(例えば特許文献2)。しかし、熱可塑性ポリイミドはまだまだ高価であり、コスト面で使用できる用途が限定されてしまう。
【0006】
また、フレキシブルプリント回路板の回路部を保護するために用いるカバーレイフィルムについても、同様に、高耐熱性、高寸法安定性が求められている(例えば特許文献3)。それに加えて、新たな要求として、配線密度が少なく導体回路となる金属箔の残存率が低く回路板の剛性が小さい片面フレキシブルプリント回路板に部品を実装する場合において、剛性が小さいため実装時の熱の応力で回路板が反り、実装部品が所定の位置からずれてしまう問題があり、実装時の熱でも反りの少ない回路板が求められている。
【0007】
一方、こういった種々要求に加えて、カバーレイフィルム、フレキシブルプリント回路基板用金属張積層板、プリント回路基板の多層化等のためには、金属箔と基材あるいは基板間の層間接着のためには、接着剤層が必要となる。これまで、これら接着剤層は、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂などが用いられてきた。しかし、これらの樹脂系では、加熱・加圧時に接着剤が層間からあるいは金属層と基材間から多量に流れだし、接着強度が十分確保できない、また、接着剤層が薄くなってしまうことから、硬化後の吸湿時耐熱性に劣るという問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開平11−054934号公報
【特許文献2】特開平05−003395号公報
【特許文献3】特開平05−218616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、フレキシブルプリント回路板に用いる樹脂組成物であって、加熱・加圧時、接着剤層の流れ出しのない樹脂組成物を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の樹脂組成物は、フレキシブルプリント回路板に用いる樹脂組成物であって、平均粒径が1nm以上、500nm以下である無機充填材を含有することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、ナノレベルの無機充填材を含有することにより、加熱・加圧時の溶融粘度を制御することが可能となり、樹脂の流れ出しを少なくすることができる。
【0012】
また、本発明の樹脂組成物を樹脂フィルムとすることができる。
【0013】
また、本発明の樹脂フィルムを、被覆フィルムに積層してフレキシブルプリント回路板用のカバーレイフィルムとしてもよい。こうすることにより、加熱加圧時の接着剤の染みだしが少なく導体パッドを汚染することのない樹脂フィルムが積層されたカバーレイフィルムとすることができる。
【0014】
また、本発明の樹脂フィルムを離型フィルムに積層して層間接着剤としてもよい。こうすることにより、リジッド板とフレキシブル回路基板との層間接着に用いたとき、周辺からの接着剤の染み出しを抑えることができる。
【0015】
また、本発明の樹脂フィルムを基材または金属箔に積層し、金属箔または基材と積層接着することによりフレキシブルプリント回路板用の金属張積層板としてもよい。また、カバーレイフィルムや層間接着剤を用いたフレキシブルプリント回路板や多層回路板としてもよい。
また、金属張積層板をエッチング加工してフレキシブルプリント回路板としてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フレキシブルプリント回路板に用いる樹脂組成物であって、加熱・加圧時、接着剤層の流れ出しのない樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の樹脂組成物、樹脂フィルム、カバーレイフィルム、層間接着剤、金属張積層板、フレキシブルプリント回路板および多層回路板について、詳細に説明する。
【0018】
本発明の樹脂組成物は、フレキシブルプリント回路板に用いる樹脂組成物であって、
平均粒径が、1nm以上、500nm以下である無機充填材を含有している。そのため、加熱積層時の溶融粘度の大きな接着剤となる。溶融粘度としては、150〜200℃における溶融粘度が0.1以上、10000Pa・s以下であることが好ましく、1以上、5000Pa・sであればより好ましく、2以上、1000Pa・sであればさらに好ましい。この範囲内にあると、加熱加圧時の積層接着の際、接着剤の染みだしが少なく回路板とすることができる。
また、エポキシ樹脂などと組み合わせることで、より密着力に優れた樹脂組成物となる。さらには、還元剤を含有することで、はんだバンプを溶融させて層間の電気的接合時に半田表面の酸化膜および被接続面である銅箔表面の酸化膜を還元し強度の大きい良好な接合を可能にする樹脂組成物となる。
【0019】
無機充填材の平均粒径は、1nm以上、500nm以下であることが好ましく、より好ましく、1nm以上、200nm以下で、さらに好ましくは、1nm以上、50nm以下である。粒径が小さくなるほど比表面積が大きくなるため、少量の添加でも溶融粘度の制御が容易となる。
【0020】
本発明に用いられる無機充填材としては、アルミナ、マイカ、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、クレー、酸化チタンなどが挙げられるが、特にシリカが好ましい。これにより得られる樹脂組成物の誘電率を低くすることができる。前記シリカとしては、ゾル−ゲル法により合成されたシリカフィラー、気相法により合成されたシリカフィラー、溶融シリカフィラー、結晶シリカフィラーなどがある。特に、気相法により合成されたシリカフィラー、ゾル−ゲル法により合成されたシリカフィラーが好ましい。
これらの無機充填材を含有することで加熱・加圧時の染み出しを抑え、吸湿耐熱性を向上させることができる。
【0021】
また、樹脂への無機充填材の分散性を向上させるために、疎水処理を行うことが適当であり、アルキルエトキシシランなどのシランカップリング剤、ジメチルジクロロシランなどのクロロシラン、シリコーンオイルなどが処理剤として用いられる。
無機充填材は、樹脂組成物100重量部に対して、1重量部以上、200重量部以下含有されるのが好ましい。無機充填材がこの範囲内にあれば、剛性に優れた硬化物とすることが可能となる。
【0022】
本発明に用いられるエポキシ樹脂は、特に限定されるものではないが、例えば、ビスフェノールA系、ビスフェノールF系、フェノールノボラック系、クレゾールノボラック系、ビフェニル骨格やナフタレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格を持つアルキルフェノール系、などのエポキシ樹脂が1種または2種以上で用いられる。
【0023】
本発明に用いられる硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化剤として通常用いられているものを使用することができる。例えば、酸無水物、アミン、エステル樹脂、フェノール性水酸基を1分子中に2個以上含有する化合物などが挙げられる。また、本発明に用いられる硬化促進剤は、イミダゾールなどを使用することができる。
【0024】
本発明に用いられるエラストマーは、ゴム状弾性を有するものであればよい。例えば、高分子エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、アクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴムなどの合成ゴム、変性ポリイミド、変性ポリアミドイミドなどが挙げられる。これらは、単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0025】
本発明に用いられるカルボキシル基およびフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物は分子中にカルボキシル基とフェノール性ヒドロキシル基が少なくともそれぞれが1つ以上存在するもので液状、固体は問わない。限定されるものではないが、本発明で用いることが出来る化合物として以下のものが挙げられる。例えば、サリチル酸、シキミ酸、バニリン酸、フェノールフタリン、センダ−クロムAL、1,2−ジカルボキシ−cis−4,5−ジヒドロキシシクロヘキサ−2,6−ジエン等の1種または2種以上の組合せで使用可能である。中でもシキミ酸、フェノールフタリン、1,2−ジカルボキシ−cis−4,5−ジヒドロキシシクロヘキサ−2,6−ジエン等、フェノール性ヒドロキシル基が2個以上あるものがベース樹脂であるエポキシ樹脂との反応に三次元的に取り込まれるため好ましい。また、その含有量は含有成分の内、樹脂固形分の5〜25重量%が好ましい。この範囲内にあれば、バンプを溶融させて層間の電気的接合時に半田表面の酸化膜および被接続面である銅箔表面の酸化膜を還元し強度の大きい良好な接合を可能にする樹脂組成物となるので好ましい。
【0026】
次に、カバーレイフィルムについて説明する。
【0027】
本発明のカバーレイフィルムは、上記の樹脂組成物を所定の溶剤に、所定の濃度で溶解したワニスを樹脂フィルムに塗工後80℃以上、150℃以下の乾燥を行って作製することが好ましい。乾燥後の樹脂組成物の厚みについては、用途によって10μm以上、100μm以下の範囲になるように塗工する。カバーレイフィルムの場合は乾燥後にその樹脂組成物面にポリエチレンテレフタレートやポリエチレン、ポリプロピレンなどのフィルムを異物混入防止などの理由で離型フィルムとして使用してもよい。
【0028】
ワニスに用いられる溶剤としては、樹脂組成物に対し良好な溶解性を持つものを選択しなければならない。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、メタノール、エタノール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセロソルブ、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのうち一種または二種以上の混合系を使用することが可能である。
【0029】
樹脂フィルムとしては、例えばポリイミド樹脂フィルム、ポリエーテルイミド樹脂フィルム、ポリアミドイミド樹脂フィルム等のポリイミド系樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム等のポリアミド系樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム等のポリエステル系樹脂フィルムが挙げられる。このうち、弾性率と耐熱性を向上させる観点から、特にポリイミド系樹脂フィルムが好ましく用いられる。
【0030】
樹脂フィルムの厚さは、特に限定されないが、1μm以上、100μm以下が好ましく、特に5μm以上、50μm以下が好ましい。厚さがこの範囲内であると、特に屈曲性に優れる。
【0031】
次に、層間接着剤について説明する。
【0032】
本発明の層間接着剤は、上記樹脂組成物を離型可能な基材に塗工して層間接着剤としてもよい。前記離型可能な基材としては、例えば銅または銅系合金、アルミまたはアルミ系合金等で構成される金属箔、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等で構成される樹脂フィルム等が挙げられる。
【0033】
前述の樹脂組成物を前記離型可能な基材に塗工する際には、通常ワニスの形態で行われる。これにより、塗工性を向上することができる。
ワニスを調製するのに用いられる溶媒は、樹脂組成物に対して良好な溶解性を示すことが望ましいが、悪影響を及ばさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、メタノール、エタノール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセロソルブ、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどを一種または二種以上の混合系を使用することが可能である。
また、ワニスを調製する場合、樹脂組成物の固形分は、特に限定されないが10重量%以上、90重量%以下が好ましく、特に30重量%以上、70重量%以下が好ましい。
【0034】
ワニスを、前記離型可能な基材に塗工し80℃以上、200℃以下で乾燥することにより層間接着剤を得ることが出来る。
塗工、乾燥後の樹脂厚さは、はんだバンプの高さの±20%以内にあわせるのが好ましい。この範囲にないにあれば、良好な接合を可能にするので好ましい。
【0035】
次に、金属張積層板について説明する。
【0036】
本発明の金属張積層板は、基材の片面または両面にワニスを塗工し乾燥後、熱圧着ロールなどによって金属箔を樹脂組成物面に積層して作製されることが好ましい。
前記金属箔を構成する金属としては、例えば銅および銅系合金、アルミおよびアルミ系合金、鉄および鉄系合金等が挙げられ、銅がより好ましい。
また、基材としては、樹脂フィルムがあげられ、例えばポリイミド樹脂フィルム、ポリエーテルイミド樹脂フィルム、ポリアミドイミド樹脂フィルム等のポリイミド系樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム等のポリアミド系樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム等のポリエステル系樹脂フィルムが挙げられる。このうち、弾性率と耐熱性を向上させる観点から、特にポリイミド系樹脂フィルムが好ましく用いられる。
【0037】
前記ワニスに用いられる溶剤としては、樹脂組成物に対し良好な溶解性を持つものを選択しなければならない。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、メタノール、エタノール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセロソルブ、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどを一種または二種以上の混合系を使用することが可能である。
【0038】
次にフレキシブルプリント回路板について説明する。
【0039】
フレキシブルプリント回路板とは、基材の少なくとも片面に第1の樹脂組成物を介して導電層を有し、前記導電層に第2の樹脂組成物付き基材を積層したものである。
本発明のフレキシブルプリント回路板は、上記のようにして得られた金属張積層板の金属箔を化学的にエッチングすることで回路加工する。その回路上の必要な部分にあらかじめ必要としない部分を打ち抜いておいたカバーレイフィルムを真空熱プレスや熱ロールなどの一般的な方法で積層される。
【0040】
次に、多層プリント回路板について説明する。
【0041】
本発明の多層プリント回路板は、上記接着剤層をはんだバンプ付き内層回路基板の片面又は両面に重ね合わせ、はんだバンプを溶融させて層間の電気的接合時にはんだ表面の酸化膜および被接続面である銅箔表面の酸化膜を還元し強度の大きい良好な接合からなる多層プリント回路板である。更に、本発明の樹脂組成物は、はんだ接合後に洗浄などにより除去する必要がなく、そのまま加熱することにより、三次元架橋した樹脂となり密着力に優れた、多層プリント回路板である。
加熱する温度は、特に限定されないが、接着剤が軟化する第1の温度として100〜160℃が好ましく、その後はんだを溶融させる第2の温度として200〜280℃が好ましい。前記接着剤の三次元架橋は、はんだを溶融させるとき同時に行う、また必要によりアフターベーキングによってより密着力を向上させることもできる。その際の温度は特に限定されないが、150〜200℃が好ましい。
加圧する圧力は、特に限定されないが、前記第一の温度では、0.01〜5MPaが好ましく、0.1〜3MPaがより好ましい。前記第2の温度では、0.01〜10MPaが好ましい。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【0043】
本発明の樹脂組成物、層間接着剤および多層プリント回路板の有効性を確認する為に以下に示す多層回路板を作成し次の評価を行った。結果は表1に示す。
・溶融粘度は、粘弾性測定装置(ジャスコインターナショナル(株)製)で測定した。条件は昇温速度30℃/min、周波数1.0Hzとした。
・接合後の染み出し量を測定し、1mm以下を合格とした。
・基材への塗膜後の外観を評価し、凝集物のないものを合格とした。
・吸湿半田リフロー試験:30℃/60%/168時間処理後、最高温度260℃のはんだリフローを3回通し剥離やデラミがないものを合格とした。
・温度サイクル試験:−65℃/30分⇔125℃/30分、1000サイクル処理前後の導通抵抗を確認し、変化率が10%以下の場合を合格とした。
・吸湿後の絶縁抵抗:30℃/85%/DC50V/240時間処理後の吸湿後の絶縁抵抗が108Ω以上の場合を合格とした。
【0044】
(多層フレキシブル回路板の作製)
1.外層片面回路基板の作製
図2に示すように、金属張積層板として、厚み25μmのポリイミドフィルムからなる支持基材102上に厚み12μmの銅箔101が付いたフレキシブル銅張積層板110(宇部興産製 ユピセルN)を、支持基材102側の面から、UVレーザーにより100μm径の支持基材開口部103を形成し、過マンガン酸カリウム水溶液によるデスミアを施す。この支持基材開口部103内に電解銅メッキを施し銅箔のある反対面側の絶縁基材表面より高さ15μmとした銅ポスト104を形成後、銅ポスト104を覆う金属被覆層105としてはんだメッキを厚み15μmになるように施し、導体ポスト1045を形成する。
次に、片面積層板110の銅箔101をエッチングし、配線パターン106を形成し、厚み12.5μmのポリイミド(鐘淵化学工業製 アピカルNPI)に厚み25μmの熱硬化性接着剤(自社開発材料)を塗布したカバーレイを真空プレスによりラミネートすることで、表面被覆107を施した後、表面被覆開口部108を形成し、金属層被覆109を施す。
次いで、本発明の厚み25μmのシート状還元機能付き層間接着剤(自社開発品 DBF)111を真空ラミネーターにてラミネートすることにより形成した。最後に、積層部のサイズに外形加工し、外層片面回路基板120を得た。
【0045】
2.内層フレキシブル回路基板の作製
図3に示すように、銅箔201が12μm、支持基材202がポリイミドフィルム厚み25μmの2層両面板210(三井化学製 NEX23FE(25T))を、ドリルによる穴明け後、ダイレクトメッキし、電解銅メッキによりスルーホール203を形成し表裏の電気的導通を形成した後、エッチングにより、配線パターン及び導体ポスト1045を受けることができるパッド204を形成する。その後、フレキシブル部330に相当する部分の配線パターン205に、厚み12.5μmのポリイミド(鐘淵化学工業製 アピカルNPI)に厚み25μmの熱硬化性接着剤(自社開発材料)により表面被覆206を形成した。最後に、外形サイズに裁断し、内層フレキシブル回路基板220を得た。
【0046】
3.多層フレキシブル回路板の作製
図4に示すように、外層片面回路基板120を内層フレキシブル回路基板220に、位置合わせ用のピンガイド付き治具を用いてレイアップした。その後、250℃のスポットヒーターにて部分的に位置決めのため仮接着した。次いで、真空式プレスにて150℃、0.8MPa、90秒で積層し、導体ポスト1045を導体パッド204に接触するまで成形することと、導体パッド204がある内層フレキシブル回路基板220の回路を成形埋め込みした。次いで、油圧式プレスで260℃、0.5MPaで60秒間プレスし、本発明の厚み25μmのシート状還元機能付き層間接着剤(自社開発品 DBF)111を介して、導体ポスト1045が、内層フレキシブル回路基板220のパッド204と半田熔融接合しはんだ接合及びはんだフィレットを形成し、層間を接合した。引き続き、接着剤を硬化させるために温度を180℃、60分間加熱し、層間を積層した多層部320とフレキシブル部330とを有する多層フレキシブル回路基板310を得た。
層間接合部の模式図を図1に示す。
【0047】
(実施例1)
平均粒径16nmシリカ(日本アエロジル(株)製)を5重量部、シランカップリング剤オクチルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製)を0.5重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業(株)製 エピクロン840−S)を40重量部、ノボラック型フェノール樹脂(住友ベークライト(株)製 PR−53647)を40重量部、フェノキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製 YL−6954 数平均分子量:14500)を20重量部、サリチル酸(関東化学(株)製 試薬)を20重量部、アセトンを100重量部測り取り混合攪拌して溶解しワニスを得た。
【0048】
前記離型可能な基材として静電防止処理をした厚み25μmのPETフィルムにコンマナイフ方式のコーターにて乾燥後の厚みが25μmとなるように塗工、乾燥してシート状還元機能付き層間接着剤(DBF)を作成した。これを先述したの通りに接着剤層として使用し多層フレキシブル回路板を作成した。次いで上述した評価を行った。
【0049】
(実施例2)
実施例1のシリカ(日本アエロジル(株)製)を平均粒径13nmのアルミナ(日本アエロジル(株)製)とした以外は同様にして層間接着剤を作成した。その後、多層フレキシブル回路板を作成した。次いで先述した評価を行った。
【0050】
(実施例3)
実施例1のシリカ(日本アエロジル(株)製)を平均粒径500nmのシリカ(アドマテックス(株)製)を30重量部とした以外は同様にして層間接着剤を作成した。その後、多層フレキシブル回路板を作成した。次いで先述した評価を行った。
【0051】
(比較例1)
実施例1のシリカ(日本アエロジル(株)製)を含有しなかった以外は実施例1と同様にして層間接着剤を作成した。その後、多層フレキシブル回路板を作成した。次いで先述した評価を行った。
(比較例2)
実施例1のシリカ(日本アエロジル(株)製)を平均粒径2000nmのシリカ(アドマテックス(株)製)とした以外は実施例1と同様にして層間接着剤を作成した。その後、多層フレキシブル回路板を作成した。次いで先述した評価を行った。
【0052】
【表1】

・溶融粘度は、粘弾性測定装置(ジャスコインターナショナル(株)製)で測定した。条件は昇温速度30℃/min、周波数1.0Hzとした。
・接合後の染み出し量を測定し、1mm以下を合格とした。
・基材への塗膜後の外観を評価し、凝集物のないものを合格とした。
・吸湿半田リフロー試験:30℃/60%/168時間処理後、最高温度260℃のはんだリフローを3回通し剥離やデラミがないものを合格とした。
・温度サイクル試験:−65℃/30分⇔125℃/30分、1000サイクル処理前後の導通抵抗を確認し、変化率が10%以下の場合を合格とした。
・吸湿後の絶縁抵抗:30℃/85%/DC50V/240時間処理後の吸湿後の絶縁抵抗が108Ω以上の場合を合格とした。
【産業上の利用可能性】
【0053】
パッドオンビア構造を取る事が出来る為、より高密度実装に対応し、小さく薄い多層回路板を得る事が出来る。これにより、高機能、小型化が求められるモバイル機器、例えば携帯電話、デジタルビデオカメラ、デジタルカメラ、小型ノートパソコンなどに利用される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の接着剤層を使用してはんだバンプによる接合部。本接着剤の還元作用により被接着部にはんだが濡れ広がっている。
【0055】
【図2】本発明の接着剤層の有効性を確認する為の多層回路基板作製用の外層片面回路基板とその製造方法を説明するための断面図。
【0056】
【図3】本発明の接着剤層の有効性を確認する為の多層回路基板作製用の内層フレキシブル回路基板とその製造方法を説明するための断面図。
【0057】
【図4】本発明の接着剤層の有効性を確認する為の4層構成の多層フレキシブル回路基板とその製造方法を説明するための断面図。
【符号の説明】
【0058】
101、201:銅箔
102、202:支持基材
103:支持基材開口部
104:銅ポスト
1045:導体ポスト
105:金属被覆層
106、205:配線パターン
107、206:表面被覆
108:表面被覆開口部
109:金属層被覆
110:フレキシブル銅張積層板
111:層間接着剤
120:外層片面回路基板
203:スルーホール
204:パッド
210:2層両面板
220:内層フレキシブル回路基板
310:多層フレキシブル回路基板(4層)
320:多層部
330:フレキシブル部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルプリント回路板に用いる樹脂組成物であって、
平均粒径が、1nm以上、500nm以下である無機充填材を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂組成物の、150℃〜200℃における溶融粘度が0.1Pa・s以上、10000Pa・s以下である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂組成物には、カップリング剤をさらに含む請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記カップリング剤は、アミノシランである請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記無機充填材は、アルミナまたはシリカを含むものである請求項1ないし4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記無機充填材の含有量は、樹脂組成物100重量部に対して1重量部以上、200重量部以下である請求項1ないし5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂組成物が、(A)エポキシ樹脂と、(B)エポキシ樹脂用硬化剤と、(C)硬化促進剤と、(D)エラストマーを含む請求項1ないし6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
カルボキシル基およびフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物をさらに含む請求項1ないし7のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の樹脂組成物から得られる樹脂フィルム。
【請求項10】
請求項9に記載の樹脂フィルムを、被覆フィルムに積層したカバーレイフィルム。
【請求項11】
請求項9に記載の樹脂フィルムを、離型フィルムに積層した層間接着剤。
【請求項12】
請求項9に記載の樹脂フィルムを、基材または金属箔に積層したのち、金属箔または基材と積層接着したフレキシブルプリント回路板用の金属張積層板。
【請求項13】
請求項10に記載のカバーレイフィルムを少なくとも片面に積層して得られるフレキシブルプリント回路板。
【請求項14】
請求項11に記載の層間接着剤を層間に積層接着して得られる多層回路板。
【請求項15】
請求項12に記載の金属張積層板をエッチング加工して得られるフレキシブルプリント回路板。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−204696(P2007−204696A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28086(P2006−28086)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】