説明

樹脂組成物、樹脂成型体、及び樹脂成型体の製造方法

【課題】成形性を落とすことなく、耐熱性に優れ、且つ力学物性や耐薬品性等を改善したポリ乳酸組成物を提供する。特に、ポリ乳酸の特徴である透明性を落とすことなく上記の物性の改善を可能としたポリ乳酸組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の樹脂組成物は、ポリマー及び/またはプレポリマーと、多官能性架橋剤と、無機系微粒子とを含み、高エネルギー線照射により処理されてなる。ポリマー及び/またはプレポリマーは、ポリ乳酸であることが好ましく、本発明の樹脂組成物は、より好ましくは、ポリ乳酸、多官能性架橋剤及び無機微粒子を含み、高エネルギー線により処理されてなるポリ乳酸樹脂組成物等である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、樹脂成型体及び樹脂成型体の製造方法に関する。更に詳しくはポリ乳酸等のポリマー及び/又はプレポリマー、多官能性架橋剤及び無機微粒子を含み、高エネルギー線により処理されてなるポリ乳酸樹脂組成物等の樹脂組成物、その成型体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリマー或いはポリマーの前駆体であるプレポリマーの多くは、化学的に安定で、各種の成形が可能で且つ安価であるため、現在では非常に幅広い用途に大量に使用されている。しかしながら、これらポリマー類は、一般的に、耐熱性、経時的な寸法安定性(クリープ性)、力学物性(強度、弾性率)等は必ずしも十分ではなく、各種の改善が試みられている。
【0003】
例えば、異種モノマーの共重合、異種ポリマーのブレンド・アロイ化、或いは無機フィラー或いは有機フィラーとのコンポジット等が代表的な方法として挙げられる。しかし、異種モノマーとの共重合では重合可能なモノマーへの限定や生成ポリマーの変質があり、また、異種ポリマーのブレンドやアロイでは非相溶による不透明化、力学物性の低下、熱物性の低下等が生じる場合が多い。フィラーとのコンポジットでは、不透明化及び成形性の低下等、問題が多い。
【0004】
生分解性樹脂は使用後に微生物の活動により分解され、最終的には炭酸ガスと水になると言われており、更に原料として植物でんぷんやセルロースを利用することが出来、原油を使用する必要がなくなり、省資源や地球温暖化防止、環境保全への大きな効果が期待されている。
しかし、生分解性樹脂は非常に単純な分子構造の為に、上述したポリマーの欠点が更に顕著であり、大きく用途を広げる事が出来ておらず、早急に解決すべき問題である。
【0005】
ポリ乳酸樹脂は原料がとうもろこしでんぷんやジャガイモのでんぷん等の再生可能な植物性でんぷんが使用でき、石油資源を使用しなくてもよく資源問題や地球温暖化に繋がる炭酸ガスの発生量のない極めて環境に優しい素材として大いに期待されている材料のひとつである。また、ポリ乳酸樹脂が他の生分解樹脂と異なる大きな特徴は非常に透明性に優れる点であり、このために透明性が必要とされる各種フィルムやシート或いは包装容器、筐体等に使用されようとしている。このポリ乳酸の透明性はポリ乳酸の成型体の結晶性に依存し、例えば100℃を超える温度で加熱すると容易にポリ乳酸は結晶化(球晶の生成)し、白化(失透)する。むろんポリ乳酸が本質的に非晶性(例えば、ポリ乳酸樹脂を構成するL-乳酸の比率が30mol%以下では本質的にポリ乳酸樹脂は非晶性となり加熱しても結晶化することがなく、白化しない。この非晶性ポリ乳酸は耐熱性(寸法安定性、耐熱変形性)に乏しく用途に限界がある。
【0006】
つまり、非常に環境に優しいポリ乳酸樹脂をその特徴である透明性を維持しながら耐熱性を改善することはこれまで出来ておらず、その結果期待されながらその用途の拡大がなされなかった大きな原因である。従って、ポリ乳酸の用途拡大には、その特徴である透明性を維持しながら耐熱性を改善することが非常に重要である。
【0007】
耐熱性の改善には、従来芳香族ポリエステル成分の共重合、アミド成分の共重合、或いは他の耐熱性に優れたポリマーのブレンド等が検討されてきたが、いずれもポリ乳酸との相溶性が不十分で相分離による失透や物性の低下或いは結晶化による白化・失透が避けられず十分な改善は達成されていない。
【0008】
上述した対策以外に生分解性樹脂の改質に可能性のある方法としては、ポリマーの分子鎖同士を架橋させて、網目構造を形成させる方法がある。架橋構造の導入により、実質的な分子量の増加や分子運動性の低下が可能となり、ポリマーの耐熱性や力学物性、耐薬品性等の改善が考えられる。例えば、特開平10−251402号公報、特開2002−194221号公報、特開平6−322358号公報や特開2001−329070号公報には、グルタミン酸やでんぷんの架橋体を利用した高吸水性樹脂等の提案があるが、ここでは、本願の目的とするポリマーの耐熱性や力学物性の改善につながるような提案は全くなされていない(特許文献1〜4参照)。
【0009】
また、特開2002−69206号公報、特開2002−114921号公報、特開2003−165862号公報、特開平11−276044号公報、特開平11−279271号公報、特開平11−279272号公報、特開平11−279391号公報、特開2001−254010号公報には、代表的な合成生分解性樹脂であるポリカプロラクトン、ポリ乳酸、或いは脂肪族ポリエステル、或いはそれらの誘導体へ放射線架橋、電子線架橋を施して、物性の経時変化を抑えることや溶融粘度の増大による成形性の改善(たれの防止、発泡性の改善)、強度等物性改善、収縮率の増大、等の改善が提案されている(特許文献5〜12参照)。
【0010】
また、ケナフや竹の繊維等の天然物の充填材をポリ乳酸樹脂に添加したコンポジット材料も、特開平−号公報、特開平−号公報、特開平−号公報、稲生(稲生ら:成型加工学会要旨集p50(2004))らや北川等(北川等:成型加工学会要旨集p146,p474(2004))の学会報告等に提案されているが、10%程度の添加量ではむしろ力学物性は低下し、更に材料自体は全くの不透明になる。十分な耐熱性を達成するにはケナフを50%以上必要とし、これでは透明性がないばかりか成型加工性も殆どなくなり特定の加工方法によるごく限られた製品しか得られず広くに実用性に供する技術であるとはいえない(特許文献、文献5〜12参照)。
【特許文献1】特開平10−251402号公報
【特許文献2】特開2002−194221号公報
【特許文献3】特開平6−322358号公報
【特許文献4】特開2001−329070号公報
【特許文献5】特開2002−69206号公報
【特許文献6】特開2002−114921号公報
【特許文献7】特開2003−165862号公報
【特許文献8】特開平11−276044号公報
【特許文献9】特開平11−279271号公報
【特許文献10】特開平11−279272号公報
【特許文献11】特開平11−279391号公報
【特許文献12】特開2001−254010号公報
【特許文献13】特開平2004−255833号公報
【特許文献14】特開平2003−201662号公報
【特許文献15】特開2004−143438号公報
【非特許文献1】稲生ら:成型加工学会要旨集p50(2004)
【非特許文献2】北川等:成型加工学会要旨集p146(2004)
【非特許文献3】北川等:成型加工学会要旨集p474(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように従来の技術は、天然高分子に極軽度の架橋を導入し高吸水樹脂を製造する方法や溶融成形時の粘度を維持するために軽度の架橋を行う事が主であり、本発明の目的とする耐熱性や寸法安定性、力学物性の改善にはほど遠いものがある。また、架橋度が低いためにガラス転移点(Tg)以上に加熱した場合、分子鎖の局所運動の拘束には全く効果がなく物性的にもポリ乳酸の大きな欠点である脆さの改善はなく、一方結晶化したポリマーではポリマー全体にわたり球晶の発生がみられ、その結果透明性が消失したり脆さ等物性の低下がある。特に、透明性を維持しながら力学物性や耐熱性を改善することについては効果が期待できない。ポリ乳酸樹脂は生分解性樹脂では唯一の透明樹脂であるが、耐熱性を改善する為に結晶化させたり、或いは無機微粒子等とのコンポジット化すれば最大の特徴である透明性が失われる。
【0012】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、成形性を落とすことなく、耐熱性に優れ、且つ力学物性や耐薬品性等を改善したポリマー或いはプレポリマー組成物を提供することにある。特に、透明性材料ではその透明性を落とすことなく上記の耐熱性、寸法安定性等の物性の改善を可能としたポリ乳酸樹脂組成物、ポリ乳酸樹脂成型体及びポリ乳酸樹脂成型体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の樹脂組成物は、ポリマー及び/またはプレポリマーと、多官能性架橋剤と、無機系微粒子とを含み、高エネルギー線照射により処理されてなることを特徴としている。
請求項2記載の樹脂組成物は、ポリマー及び/またはプレポリマーが生分解性を有することを特徴としている。
【0014】
請求項3の樹脂組成物は、ゲル分率が、60%以上であることを特徴としている。
【0015】
請求項4の樹脂組成物は、ポリマー及び/またはプレポリマーがポリ乳酸であることを特徴としている。
【0016】
請求項5の樹脂組成物は、ポリ乳酸が少なくとも70%以上のL-乳酸を共重合したことを特徴としている。
【0017】
請求項6の樹脂組成物は、多官能性架橋剤をポリ乳酸100重量部当たり少なくとも3重量部含むことを特徴としている。
【0018】
請求項7の樹脂組成物は、無機微粒子の最大長が200nm以下であることを特徴としている。
【0019】
請求項8の樹脂組成物は、無機微粒子をポリ乳酸100重量部当たり少なくとも5重量部含むことを特徴としている。
【0020】
請求項9の樹脂組成物は、高エネルギー線を少なくとも10KGy照射したことを特徴としている。
請求項10の樹脂組成物は、クロロホルム中で測定したゲル分率が75%以上であることを特徴としている。
【0021】
請求項11の樹脂組成物は、空気中110℃で30分間処理後の広角X線回折による結晶化度が未処理のものに比べて高々0.9であることを特徴としている。
【0022】
請求項12の樹脂組成物は、30-120℃までの平均熱膨張係数が高々5×10-4であることを特徴としている。
【0023】
請求項13の樹脂組成物は、樹脂組成物を130℃で30分間加熱した時の樹脂組成物の550nmの光透過率が0.2mm厚み換算で少なくとも70%であることを特徴としている。
請求項14の樹脂成型体は、請求項1〜13のいずれか1項記載の樹脂組成物を押し出し成型、射出成型、トランスファー成型、シートモルド成型、粉末成型から選ばれる少なくとも1つの方法により成型することよりなることを特徴としている。
【0024】
請求項15記載の樹脂成型体は、粒子状のペレットであることを特徴としている。
【0025】
請求項16記載の樹脂成型体は、押し出しシートであることを特徴としている。
【0026】
請求項17記載の樹脂成型体は、インフレーションフィルムであることを特徴としている。
【0027】
請求項18記載の樹脂成型体は、繊維状物であることを特徴としている。
【0028】
請求項19記載の樹脂成型体は、箱状物であることを特徴としている。
【0029】
請求項20記載の樹脂成型体は、筒状物であることを特徴としている。
【0030】
請求項21記載の樹脂成型体は、中空粒子状物であることを特徴としている。
【0031】
請求項22記載の樹脂成型体は、発泡成形体であることを特徴としている。
【0032】
請求項23記載の樹脂成型体は、射出成型体であることを特徴としている。
【0033】
請求項24記載の樹脂成型体は、成型体が0.2mm厚さ換算での550nmの光の透過率が少なくとも85%であることを特徴としている。
【0034】
請求項25記載の樹脂成型体は、成型体を130℃空気中で30分熱処理した時の成型体の0.2mm厚さ換算での550nmの光透過率が少なくとも65%であることを特徴としている。
【0035】
請求項26記載の樹脂成型体は、成型体の30-120℃での熱膨張率が高々5×10-4であることを特徴としている。
【0036】
請求項27記載の樹脂成型体は、成型体を130℃空気中で30分間熱処理した成型体の30-120℃での熱膨張率が高々0.5×10-4であることを特徴としている。
【0037】
請求項28記載の樹脂成型体の製造方法は、ポリマー及び/又はプレポリマーと、多官能性架橋剤と、無機微粒子とを含むポリ乳酸樹脂組成物を溶融成型後、高エネルギー線照射を行うことを特徴としている。
【0038】
請求項29記載の樹脂成型体の製造方法は、ポリマー及び/又はプレポリマーがポリ乳酸であることを特徴としている。
【0039】
請求項30記載の樹脂成型体の製造方法は、ポリ乳酸樹脂組成物を溶融押し出し後に粒子状ペレット化し、次いで該ペレットに高エネルギー線照射を行い、更に押し出し成型、射出成型、トランスファー成型、粉末成型から選ばれる少なくとも1つの方法により成型することを特徴としている。
【0040】
請求項31記載の樹脂成型体の製造方法は、ポリ乳酸樹脂組成物を溶融押し出し後に粒子状ペレット化し、該ペレットに高エネルギー線照射を行い、更に押し出し成型、射出成型、トランスファー成型、粉末成型から選ばれる少なくとも1つの方法により成型し、次いで再度高エネルギー線照射することを特徴としている。
【0041】
請求項32記載の樹脂成型体の製造方法は、2回目以降に行う高エネルギー線照射の線量が、少なくとも20KGyであることを特徴としている。
【0042】
請求項33の樹脂成型体の製造方法は、高エネルギー線照射後に更に冷間或いは熱間で少なくとも0.1%の変形を与える処理を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0043】
本発明の樹脂組成物、樹脂成型体は、以上のように、これまで困難であった透明性を維持しながら強度や弾性率といった物性・性能と成形性を兼ね備えた材料を工業的容易且つ安価に提供でき、又、従来の架橋構造物のように架橋助剤や触媒を使用しない為に成形体からのVOC(揮発性有機化合物)の発生やブリードアウト及び変色等がなく、長期間安定した品質を保つことが出来る等、工業の発展や社会に発展及び安全で安定した商品提供に極めて有用な技術である。特に、耐熱性と透明性が必要とされる電子・電気機器筐体、ディスプレイ用窓、各種機械部品等の表面部分に用いることにより、それらの硬度・化学的及び物理的安定性を向上させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
本発明の実施態様について、以下説明していくが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
本発明のポリマーとは、成型性を有し、特定のモノマーの組み合わせよりなる、平均分子量が約10,000以上の重合体をいい、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類或いはそれらの共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の芳香族ポリエステル類或いはそれらの共重合体、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、等のビニル系ポリマー類或いはそれらの共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等のアクリル系ポリマー類或いはそれらの共重合体、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−610、等の脂肪族ポリアミド類或いはそれらの共重合体、ポリカーボネートA,ポリカーボネートF等のポリカーボネート類或いはそれらの共重合体、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキサイド等のポリフェニレン類或いはそれらの共重合体、ポリイミド類或いはそれらの共重合体、芳香族ポリアミド類、シリコーンポリマー類或いはそれらの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリパーフルオロエチレンプロピレン等のフッ素系ポリマー類或いはそれらの共重合体、ポリウレタン類或いはそれらの共重合体、ポリ乳酸或いはそれらの共重合体、ポリカプロラクトン、ポリブチルサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、等の生分解性ポリマー類或いはそれらの共重合体、或いはそれらポリマーの分子量10,000未満のオリゴマー、モノマー等の混合物等をいう。
【0046】
上記例示の重合体のうち、どれを使用するかは、用途、目的、成形法等によって選定すればよく、特に限定しない。例えば、透明性や表面硬度が必要な場合は、ポリスチレン或いはその誘導体、ポリメチルメタクリレート或いはその誘導体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート或いはその誘導体、変性ナイロン、ポリカーボネート或いはその誘導体、等が採用できる。例えば、生分解が必要な場合は、ポリ乳酸或いはその誘導体、ポリカプロラクトン或いはその誘導体、ポリブチレンサクシネート或いはその誘導体、ポリアミノ酸或いはその誘導体、ポリグリコール酸或いはその誘導体、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレート等、でんぷん、ゼラチン、ヒアルロン酸、キトサン・キチン等の天然高分子等或いはそれらの誘導体が使用できる。また、プレポリマーとは上記のポリマーの重合度の低い段階のものを示し、通常分子量は高々10000未満である。上記例示のポリマーのうち、ポリ乳酸が最も好ましい。
【0047】
本願発明に使用するポリ乳酸樹脂は、通常使用されるポリ乳酸、例えばL-乳酸或いはD-乳酸を成分とし、それに共重合可能な他のモノマー、オリゴマー、或いは他のポリマーを含んでもよいが、L-乳酸成分或いはD-乳酸成分が70mol%より低くなるとポリ乳酸の結晶性が低下し、成型した時の耐熱性や耐溶剤性、強度や伸度或いは弾性率等の力学特性が低下し、成型法・成型条件や用途において制限されることがある。また、D-乳酸を主成分として含むポリ乳酸は生分解性が乏しくなる為に、好ましくはL-乳酸成分を少なくとも70モル%、好ましくは少なくとも80モル%、更に好ましくは少なくとも90モル%含むポリL−乳酸樹脂である。(以下、ポリ乳酸と略称する。)
ポリ乳酸は、乳酸の2量体(ラクチド)の開環重合(例えば、特開平07-300520号公報、特開平07-305227号公報、特開平7−305228号公報、等)或いは乳酸の脱水縮合重合(例えば、特開平6−122148号公報、特開平7−133344号公報、特開平7−228675号公報、等)にて得る事が出来、重量平均分子量(Mw)は、通常少なくとも100,000、好ましくは少なくとも120,000、更に好ましくは130,000-250,000である。上記分子量が100,000より小さい場合は、十分な強度や成形性が期待できない場合や、一方、上記分子量が250,000以上では成形性が十分ではなく可塑剤等の使用が必要となり実用的な問題がある場合がある。分子量の調整はポリ乳酸の重合時に開始剤濃度、触媒量、或いは重合時間等で容易に調整可能である。
【0048】
ポリ乳酸樹脂のL-乳酸の量、分子量については、用途、目的、成形法等によって上述した範囲の中で選定すればよく、特に限定しない。例えば、透明性や表面硬度が必要な場合は、L-乳酸の量を高く、例えば85モル%以上必要に応じては90%以上や97%以上にすること及び分子量を大きくする、例えば重量平均分子量150,000以上の方が好ましい。一方、成形性を上げる為には、分子量は180,000以下が好ましく、バランスの取れた分子量としては、90,000〜170,000である。
【0049】
本発明の多官能性架橋剤は、高エネルギー線にて架橋可能な化合物であり、高エネルギー線にてラジカルを発生する官能基を2個以上有する事が必要である。そのような架橋剤としては、例えば、炭素、酸素、窒素、硫黄、珪素、リン等の原子同士を結合形態を有し、その中には一重(単)結合は勿論であるが、炭素・炭素結合、炭素・窒素結合、炭素・酸素結合、酸素・酸素結合、酸素・窒素結合、炭素・硫黄結合、硫黄・硫黄結合、窒素・窒素結合、炭素・リン結合、酸素・リン結合、等からなる二重結合或いは三重結合を持っていても良い。こうした化合物の具体的な例としては、二重結合を有し、好ましくは複数個有し、高エネルギー線で容易に開裂し、ラジカルを生じやすいものであり、例えば、多官能イソシアネート類、多官能アクリレート類、多官能メタクリレート類、多官能エポキシ類、多官能イソシアヌレート類、ジエン類、が例示され、これらは単独でも或いは2種類以上の混合物でも使用されるが、その他架橋可能な化合物も使用する事が出来る。これらの例示したもので、具体的な化合物としては、1,2−ジイソシアネートエタン、1,4−ジイソシアネートブタン、2,4−ジイソシアネートトルエン(2,4−TDI)、2,6−ジイソシアネートトルエン(2,6−TDI)、3,5−ジイソシアネート−o-キシレン、4,6−ジイソシアネート−m−キシレン、2,6−ジイソシアネート−p−キシレン、2,4−ジイソシアネート−l−クロロベンゼン、2,4−ジイソシアネート−l−ニトロベンゼン、2,5−ジイソシアネート−l−ニトロベンゼン、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、エチレンオキシド(EO)変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(PO)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、2,4−ジイソシアナトトルエン、2,6−ジイソシアナトトルエン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルベンゼンホスフォネート等が挙げられる。
【0050】
本発明では、多官能性架橋剤を用い多官能基を有する化合物の架橋反応を行うため、上記従来の特許公開公報等に示されるような硬化剤や反応における加熱を必要としない。従って、モノマー、重合、成形加工、或いはその後という風に工程を選ぶことなく高エネルギー線を照射する事が出来る。即ち、例えば熱架橋反応型であれば成形時に架橋反応が生じ成形精度が低下したり、十分な架橋構造を有する事が出来ず目標とする性能が得られなかったり、或いは成形機中で反応が進みすぎると成形機中にて樹脂が架橋し詰まる等のトラブルが想定される。本発明は、成形と架橋とを完全に分離することができる為に、こうしたトラブルはなく目標とする性能が得られる。
【0051】
上述した化合物の添加量は、目的や性能に応じて選定すればよいが、ポリ乳酸樹脂100重量部当たり通常少なくとも3重量部、好ましくは5重量部、更に好ましくは5−40重量部、特に好ましくは10-30重量部である。3重量部より少ない場合は、高エネルギー線による架橋構造の形成が不十分で透明性が優れ、且つ耐熱性に優れた性能が得られない。一方、40重量部を越えるとその効果が飽和に達するばかりか、未反応の化合物が残存し、却って耐熱性や力学物性の低下を招く場合がある。
【0052】
本発明の樹脂組成物に含まれる無機微粒子は、最大長が好ましくは200nm(0.2μm)、更に好ましくは高々150nm(0.15μm)以下、特に好ましくは高々100nm(0.1μm)以下である無機系粒子、例えばAL2O3、ZnO2、TiO2、Al(OH)3、Mg(OH)2、SiO2、AL2O3、MgO、Y2O3、MgAl3O4、BeO、ZnO、Zr2O3、TiO2等の酸化物微粒子、TiC、SiC、TaC、Mo2C成分を主とした窒化物微粒子、ダイヤモンド状カーボン微粒子、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、炭素繊維微粒子等の炭素系微粒子、マイカ、セリサイト、モンモリロナイト、石綿等の天然由来の劈開性粘土鉱物、合成マイカ、合成スメクタイト、或いはサポナイト等の合成劈開性鉱物、ガラスの微粉砕物或いは板状ガラス微粒子、ガラス繊維の微粒子等ガラス系微粒子、金、銀、白金、銅、ニッケル等金属微粒子、或いはフィブリル化したセルロース、コットン、ケナフ、石綿等の天然資源、等を例示することが出来る。これらの微粒子は目的に応じて使用すればよいが、例えば透明性に優れたシート材料、箱材料等の為には、粒子径が100nm以下のAL2O3、ZnO2、TiO2、Al(OH)3、Mg(OH)2、SiO2、AL2O3、MgO、Y2O3、MgAl3O4、BeO、ZnO、Zr2O3、TiO2等の酸化物微粒子、マイカ、セリサイト、モンモリロナイト、石綿等の天然由来の劈開性粘土鉱物、合成マイカ、合成スメクタイト、或いはサポナイト等の合成劈開性鉱物を使用する事が好ましい。特に、AL2O3、ZnO2、TiO2、Al(OH)3、Mg(OH)2、SiO2、AL2O3、MgO、MgAl3O4、BeO、ZnO、Zr2O3、TiO2等の金属酸化物微粒子やモンモリロナイト、合成スメクタイト、或いはサポナイト等の劈開性鉱物ではポリ乳酸への親和性を高める為に微粒子への有機化合物の表面処理を行うことが出来好ましいものである。有機化合物としては、ポリ乳酸への親和性を上げるものであれば特に限定されないが、通常シランカップリング剤、チタンカップリング剤が使用でき、例えばビニルトリメチルシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、β-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、β-3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、等或いはモンモリロナイト、スメクタイト等の劈開性鉱物であれば4級アンモニウム基を有する低分子化合物、例えばオクチルトリメチルアンモニウム塩化物、デシルトリメチルアンモニウム塩化物、ラウリルトリメチルアンモニウム塩化物、シリスチルトリメチルアンモニウム塩化物、セチルトリメチルアンモニウム塩化物、ステアリルトリメチルアンモニウム塩化物、オクチルトリエチルアンモニウム塩化物、デシルトリエチルアンモニウム塩化物、ラウリルトリエチルアンモニウム塩化物、シリスチルトリエチルアンモニウム塩化物、セチルトリエチルアンモニウム塩化物、ステアリルトリエチルアンモニウム塩化物、或いはこれらの臭化物、或いはその他のアルキルアンモニウムハロゲン化物が好適に使用可能である。
【0053】
無機微粒子効果は正確には不明であるが、無機粒子を含有しない系では高エネルギー線を大量に照射しても樹脂組成物や成型体の耐熱性や透明性が不十分である。これは、ポリ乳酸の分子間の架橋は進んでいるが分子の温度に対する運動性の制御の効果は少ない。即ち、分子運動は小さくは結合角の変化や隣り合う炭素原子間の回転運動等、原子分子レベルの極めて小さい範囲から生じており、これをすべて制限することは不可能である。本願発明で特定する無機微粒子を含むことにより、これが丁度架橋点間の分子の運動性を制限するように分子中に分散することにより耐熱性と透明性を改善できたものと推測できる。
【0054】
ここで使用する微粒子の形状は、上記のような作用に悪影響しない限り特に限定しないが、真球状、楕円球状、板状、ロッド状、チューブ状或いはハニカム状等のものが好適に使用可能である。その他ポリマーの光安定剤、熱安定剤、着色料、顔料、その他成形性改善剤、熱安定剤、耐光安定剤、或いは必要に応じて色素、顔料等も必要に応じて使用可能である。
【0055】
本発明に使用する高エネルギー線とは、上記の官能基の一部の結合を切断させるに十分なエネルギーを有するものを言い、例えば、電子線、α線、β線、γ線等の放射線、或いは波長の短い紫外線、X線、放射光X線、等を上げる事が出来る。
【0056】
放射線量は、例えばγ線であれば、透過率が非常に大きく大型の成型体や組成物或いは金属等の材料に囲まれた部分でも処理が加工であり、多方面での利用が可能となる。又、電子線照射は電子線の加速電圧によりその浸透力や線量が調整でき、又装置的にも比較的容易に大面積の処理が可能であり、比較的嵩張らない成型体やシート、フィルム等の加工に適し、処理時間も短く又処理コストも比較的安く実用性に優れる。高エネルギー線の照射線量は通常少なくとも10kGy、好ましくは少なくとも20kGy、更に好ましくは30―500kGy、特に好ましくは40−300KGyであるが、目的に応じては1MGy以上の高線量処理も可能であるが処理に長時間必要としたり、或いは処理中に温度が上がり物性の劣化や形状が変化する可能性もある。
【0057】
こうした官能基に高エネルギー線が作用して生成した架橋構造は、ポリマー或いはプレポリマーの分子内での架橋構造或いは分子間での架橋構造であっても良いが、好ましくは分子間架橋を主体とすることが好ましい。分子間架橋を主体とするものでは、ポリマー或いはプレポリマーを溶解する溶剤によっても溶解しない架橋体が得られる。こうした構造体では、例えば一定の引っ張り振動を与えてその力学的な応答をみる動的粘弾性測定で未架橋体の融点以上でも流動化することなく一定の弾性率を有する(図2〜図3参照)。図2〜3は、それぞれ、本発明の一実施の形態に係るポリ乳酸の貯蔵弾性率及び正接損失の温度変化を示すグラフである(いずれも、横軸:温度(℃),縦軸1:貯蔵弾性率E’(MPa), 損失弾性率:E’’(MPa), 縦軸2:正接損失tanδ)。
【0058】
即ち、実使用条件下でも変形せずに使用でき、耐熱性が改善した事を示し実用的に大きな有用性を有する。こうした特性は、架橋点間の分子量に依存し、この分子量が小さいほど耐熱性の改善は大きくなる。従って、架橋点間分子量は目的とする用途、性能や成形方法により最適化する必要がある。特に、透明性を維持して耐熱性や耐薬品性、力学特性等を改善する場合は、架橋点間の分子量は架橋間で結晶化による球晶が生成しない程度であるが好ましい。この判定には、架橋物をその未架橋ポリマーのガラス転移温度以上に加熱して球晶の生成にて判定する。例えば、通常の結晶性ポリエチレンでは大体110℃で10分間熱処理し、そのものが白化すれば球晶の生成があり、透明なままであれば球晶の生成はないと判断できる。この場合生成する球晶の大部分のサイズは光の波長以下に、好ましくは300nm以下更に好ましくは200nm以下、最も好ましくは100nm以下である。球晶のサイズは偏向顕微鏡や電子顕微鏡或いは光散乱法によって容易に測定できる。
【0059】
従って、本発明の組成物ポリ乳酸の結晶化条件、例えば110℃で30分熱処理した時、ポリ乳酸の結晶性(下記(1)式で定義する結晶化度の比)が未架橋処理の対照品よりも通常低くなる事があるが、それでも好ましくは高々0.9、更に好ましくは0.2〜0.85である。この比が0.9より高い場合は十分な熱を受けて結晶化した場合、透明性を失う事が多く、又0.2より小さくなると結晶化領域が少なくなり、耐熱性が逆に低下する場合があるが透明性の制御は容易になる。しかし、目的や用途によってはこの値が結晶化度は0.2以下でもよい。ここで結晶性の評価は通常用いられる評価法が用いる事が出来るが、サンプルをそのままの状態で測定可能なX線回折法が好ましい。X線回折法としては例えば、角戸正夫,笠井暢民,「高分子X線回折」(1968)を参考にして、全体の回折強度から非結晶部分の回折強度を差し引いて、下式(1)にて結晶化度χc(%)を求める事が出来る。測定はサンプルの性状によって適切な方法を選定する必要があるが、例えば、粉体法或いは回転試料法等はサンプルの特定の配向の影響を受けず好ましい方法である。
【0060】
結晶化度χc(%)=(ΣIc)/(ΣI)×100 (1)
但し、I:全回折強度 Ic:結晶部による回折強度
本願発明のポリ乳酸は、上記組成や構造を有するために透明性に優れる。例えば、厚さ0.2mm厚さに換算した550nmの光の透過率は好ましくは少なくとも85%、更に好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%である。透過率が85%に至らない場合は、透明性や清潔性が求められる用途には適用することが困難な場合がある。又、使用中に受ける熱の透明性への影響をなくすために、130℃で30分加熱後の0.2mm厚さ換算の光透過率が、好ましくは少なくとも65%、更に好ましくは少なくとも70%、特に好ましくは少なくとも75%であるポリ乳酸樹脂組成物が好ましい。通常のポリ乳酸樹脂、或いは放射線架橋助剤を使用しても無機微粒子を使用しない系では130℃×30分加熱では結晶化・球晶生成により完全に不透明(失透)化し、用途が限定されたり、使用中での品位が低下したり、結晶化・球晶生成により力学物性の低下が見られる場合が多く使用上において大きな制限を受ける。
【0061】
架橋の程度は用途・目的或いは加工方法により最適値は異なるが、該ポリマーの良溶媒に24時間室温にて浸漬した場合、下記式(2)で定義するゲル分率(%)が通常少なくとも30%、好ましくは少なくとも35%、更に好ましく少なくとも40%である。例えば、吸水性や球油性に優れた組成物を目的とする場合は比較的ゲル分率は小さい方が好ましく、一方耐熱性や強度・弾性率を改善した成形体の場合は高い方が好ましい。成形体が透明性を有して耐熱性、強度・弾性率等を改善する場合は更に架橋度を上げてゲル分率は通常少なくとも60%以上、好ましくは75%以上、更に好ましくは85%以上、最も好ましくは90%以上である。勿論、この範囲外でも目的とする性能や使用法により十分に使用できる可能性はあるために、上記の数字は一つの目安に過ぎない。
【0062】
ゲル分率(%)=(W0-W1)/W0×100 (2)
但し、W0:初期サンプル重量 W1:24時間浸漬後に未溶解サンプルを回収し溶媒除去乾燥後のサンプル重量を示す。
本発明の組成物はポリ乳酸中での光学純度の高さや架橋構造等により、耐熱性が高いことが特徴である。耐熱性の評価基準としては、定性的には一定の温度での試料片の変形の状態を観察することによって判断できるが、定量的にはTMA(機械熱分析法)によるサンプルの線膨張係数αを基準とした。これはサンプルに一定の力をかけて昇温していき一定の温度範囲で応力方向にサンプルがどれだけ伸張或いは収縮したかを示すものである。或いは、通常物性測定に用いられている動的粘弾性の貯蔵弾性率(E’)の温度依存性からも判断できる。動的粘弾性評価の特徴は短時間で再現性のよい結果が出ることである。線膨張係数αは下記(3)式にて定義される。
線膨張係数α=(L-Lo)/(Lo×(T-To)) (3)
尚、Lo:サンプルの基準温度での長さ(mm) L:サンプルの測定温度での長さ(mm)
To:基準温度(30℃) T:測定温度(120℃)
本発明の組成物は上記式で表される30-120℃までの線膨張係数が、通常高々5×10-4、好ましくは高々1×10-4、更に好ましくは5×10-5である。この耐熱性は、分子鎖間の架橋による分子運動の拘束により発現することが出来る。或いは、上記組成物を130℃の温度で30分間加熱した時のポリ乳酸組成物の30-120℃までの線膨張係数が、通常高々1×10-4、好ましくは高々5×10-5、更に好ましくは1×10-5となり、熱変形が非常に小さくなり高度に耐熱性があるということを示す。
【0063】
本発明の樹脂組成物は、通常の成型方法にて成型することが出来る。例えば、ポリ乳酸、多官能性架橋剤及び無機微粒子を含むポリ乳酸樹脂組成物を通常の成型方法、例えば、押し出し成型、射出成型、トランスファー成型、シートモールディング成型、粉末成型等により成型可能であり、成型後に高エネルギー線照射する事により本発明の成型体が得られる。成型体としては、射出成型による成型体、押し出して粒状に切断したペレット、押し出し成型によるシート、フィルム、棒状体、管状体、ネット状体、等があげられる。
【0064】
これらの成型体は透明性、耐熱性或いは機械的物性を改善する為に高エネルギー線を照射する。高エネルギー線の種類は成型体の構造や大きさ及び目的に応じて選択すればよいが、一般的に立体的な成型体或いは金属等の部材を含んだり囲まれたりしている成型体には透過力の大きいγ線が好ましく、 一方、フィルム、シート、繊維、布状物、コーティング物等では広幅の処理が可能な電子線照射の方が好ましい。この場合の、照射線量は、通常少なくとも10kGy、好ましくは少なくとも20kGy、更に好ましくは30−500kGy、特に好ましくは40−300KGyであるが、目的に応じては1MGy以上の高線量処理も可能である。こうすることによって、成形性と耐熱性や力学物性を更に改善することが出来る。例えば、本発明の成型体は透明性に優れ、厚さ0.2mmに換算した550nmの光の透過率は好ましくは少なくとも85%、更に好ましくは少なくとも90%であり、特に好ましくは95%である。又、本発明の成型体は耐熱性にも優れ、130℃の空気中で30分間加熱した成型体での550nmの光の透過率は0.2mm厚みに換算して、好ましくは65%、更に好ましくは70%、特に好ましくは75%である。一方、本発明の要件を満たさない成型体では、加熱によりポリ乳酸が結晶化して白化(失透)し透明性が大きく低下する。又、成型体の分子構造が架橋構造をしているために、変形抵抗も大きく、例えば成型体にMPaの荷重をかけて30℃から120℃まで5℃/分の昇温速度で加熱した場合の一定方向の変形量は前述した式(3)の線膨張係数で表現できるが、本願発明の成型体は好ましくは高々5×10-4、更に好ましくはである。こういう小さい線膨張率を有することによって成型体の熱安定性が大きく改善する。更に、好ましくは本願成型体を130℃空気中で30分間加熱した場合、この成型体の同様に測定した線膨張係数は、好ましくは0.5×10-4、更に好ましくは1×10-5であり、この値はスーパーエンプラ並みの耐熱性を有することを示し、ポリ乳酸成型体の用途を大きく拡大することが可能となる。線膨張率の低下は無機微粒子を入れない系でもある程度は達成できるが必ずしも十分ではなく、又高エネルギー線での架橋密度にはどうしてもムラが出来、そのために結晶化の際に大きな球晶が発生して白化(失透)がさけられない。
【0065】
成型体がペレットの場合では通常の溶融成型に使用可能しようする為に成型するが、成型後更に高エネルギー線を照射することが出来る為に、ペレットに照射する線量は余り高い必要はなく、好ましくは少なくとも5KGy、好ましくは10-50KGyである。この程度の線量でもポリ乳酸の溶融粘度を上げて成形性の改善が出来、又部分的な架橋構造の形成により成型体の熱的或いは機械的安定性が改善する。この場合の成型体はTダイ法によるシート或いはフィルム、インフレーション法によるフィルム或いはスプリットヤーン、押し出し法による筒状成型体、棒状成型体或いはネット状成型体、射出成型法による各種成型体等がある。これらの成型体はそのまま使用することも可能であるが、更に高エネルギー線を照射して、透明性、耐熱性や機械的物性或いは染色性等を改善することが可能である。この場合の照射線量は通常少なくとも20KGy、好ましくは30kGy、更に好ましくは40-100kGyである。
【0066】
こうした成型体は、高エネルギー線照射後に更に冷間で或いはポリ乳酸の結晶化温度以下の熱間で好ましくは0.1%、更に好ましくは0.3%、特に好ましくは0.5-5%の歪を与えることによって、詳細な理由は不明であるが更に寸法安定性或いは透明性等の物性を改善することが出来る。ここで与える歪は成型体の形状によって最適の歪を選択する必要があるが、例えば、シート状物では冷間圧延ローラ、或いは高々80℃に加熱した熱間ローラーにて0.5%程度の圧延或いは冷間延伸或いは高々80℃の温度にて熱間延伸を行うことによって、寸法安定性や透明性が改善する。これは、架橋組成物或いは成型体を分子運動が十分でない温度で歪をかける事により、材料全体に均一な歪がかかる構造にかえることが出来るからと推測される。
【0067】
本発明の樹脂組成物の用途としては、ポリ乳酸樹脂が使用されてきた分野或いは透明樹脂が使用されてきた分野或いは生分解性が求められる分野に使用でき、特に限定するものではないが、例えば、ゲル分率の低い成形体では、水膨潤性や油膨潤性を利用した各種用途、ゲル分率の高いものでは、耐熱性や硬度、寸法安定性、透明性、化学的安定性を活かした成形体が考えられる。特に非常に微小な表面凹凸を有した耐熱性や強度に優れたフィルム或いはシート、透明性と寸法安定性に優れたフィルム或いは各種成形体、窓材、有機溶剤保持性に優れた成形体や多孔性体、繊維、等が考えられ、従来にない耐熱性、強度・弾性率等の力学特性、耐薬品性等を有する用途が考えられる。
【0068】
以下実施例を示して、本発明を更に詳細に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0069】
〔実施例1〜4〕
LL-ラクチドを開環して得られた重量平均分子量(Mw)15.2万、融点170.8℃のポリ乳酸樹脂(株式会社ビーエムジー製)のペレット100重量部を125℃の通風式乾燥機にて8時間乾燥し、その一部(20重量部)に表1に示す量のトリアリルイソシアヌレート(TAIC:アルドリッチ製)を振りかけN2ガスを流し除湿したグローブボックスの中でペレットの表面に十分均一にTAICが付着するように混合した。次いで、残りのポリ乳酸とTAIC処理したポリ乳酸と有機化スメクタイト(コープケミカル製SEN)10部とを密閉したガラス瓶の中で十分に混合して2軸混練機に供給した。2軸混練機の供給槽及びフィード口はN2ガスを流し空気の影響を排除した。2軸混練機の温度はC1/C2/C3/C4/D=140/190/200/210/180(℃)として溶融混練後、混練機の先につけたTダイより巾30mm厚さ0.5mmのシートを水平に押し出しカレンダーロールにて冷却し、透明なポリ乳酸フィルムシート(非晶状態)を得た。次いで、このフィルムシートを長さ15cmに切断し、アルミプライのポリプロピレン袋に入れて中の空気を窒素で十分に置換除去しCo60を線源としたγ線(10kGy/hr)を表1に示す線量照射した。力学物性の評価は、フィルムシートをダンベル状に金型で打ち抜き、島津製作所製オートグラフAG-5000Eにて25℃相対湿度60%の雰囲気中で測定した。尚、引っ張り速度は100%とした。
【0070】
【表1】

【0071】
〔比較例1〕
多官能性架橋剤を0重量部とする以外は、実施例1と同様の操作を行い比較用のフィルムシートを得た。
【0072】
実施例1〜4、比較例1の各フィルムシートを巾15mm長さ50mmに切り出し110℃に加熱した通風乾燥機に10分間入れて、その状態を観察した。結果を表2に示す。比較例のサンプルは乾燥機に投入後直ちに変形と白化(失透)を始め、耐熱性及び透明性に劣ることを示した。
【0073】
【表2】

【0074】
次に、実施例1〜4、比較例1の各シートを巾3mm長さ5mmに切り出し、マックサイエンス製MTC1000のTMA装置にて、N2流通下で室温(25℃)から5℃/分の昇温速度で昇温しサンフ゜ルの変形を自動的に記録した。その結果を解析し表3には室温から120℃までの平均線膨張係数を示す。また、図1には、No.1(比較例1)とNo.4(実施例3)、No.5(実施例4)のTMA図を示す。本発明のサンプルは比較例1のサンプルに比べて熱変形性が低い事が分かる。特に、No.4(実施例3)、No.5(実施例4)では極めて安定している。
【0075】
【表3】

【0076】
〔実施例5〜10〕
実施例1に使用したポリ乳酸樹脂及びトリアリルイソシアヌレート及び有機化した合成スメクタイト(コープケミカル製SPN)を表に示す重量比(ポリ乳酸100重量部当たり)にてラボプラストミル(製)で180℃で15分溶融混合し、3者混合のコンパウンドを得た。次いで、このコンパウンドを用いてホットプレスで190℃の温度、20MPaの圧力を3分間かけて0.2mmのシート化した。
【0077】
次いで、このフィルムをそのままの状態で高圧電子線照射装置(株式会社NHVコーポレーション)を用いて電子線を50KGy照射した。各種物性はこのシート試料を用いて行った。シート物性は実施例1−4と同様に行い、光透過率は照射後のシートを130℃で30分熱処理後に550nmの光の透過率(JASCO製Ubest-50)を測定した。光透過率の対照としては0.2mm厚さのポリ乳酸単独シートの透過率を100%とした。結果を表4に示す。
【0078】
【表4】

【0079】
〔実施例11〕
実施例7の照射後のシートをポリ乳酸のガラス転移点(Tg=57℃)以下の50℃にて50MPaの力をかけて約2%プレス圧縮した。これを、実施例7と同様に処理し、又評価した。強度は76MPa、伸度は15%、弾性率3410MPaであり、この圧縮シートを同様に130℃、30分処理後の光透過率は85.7%であり、30-120℃の線膨張率は2.92×10-5であった。尚、熱処理前のシートの同様の線膨張率は4.71×10-5であった。又、比較例2及び実施例7のシートを幅5mm長さ30mmに切り出し一軸伸長モード(使用機器:株式会社ユービーエム社製Rheogel-E4000周波数100Hz)にて動的粘弾性を測定した。比較例1は、180℃を超えると流動変形が生じているが、実施例7では300℃近くまで耐熱性が改善したことを示す。

〔実施例12〕
比較例1、3,4実施例6、7,8、9、10の厚さ0.5mm、幅10mm、長さ60mmのシートサンプルの片端の10mmを木片で抑えサンプルを水平に固定して130℃空気中で30分間放置後のシートサンプルの変形の状態を観察した。この評価は耐熱変形性に相当する。その結果、比較例1、2,3では、完全に垂れ下がり測定不能であった。比較例4では12mmとなり、一方1実施例6,7,8,9,10ではそれぞれ7mm、5mm、5mm、3mm、3mmの変化が観察され、比較例に比べて本願発明のポリ樹脂成型物の耐熱性がはるかに高いことがわかる。又、上記にサンプルを先ず120℃の温度で20分熱処理後、同様にテストをすると、変形量は、比較例1、2,3,4が5mm、6mm、5mm、9mm実施例がそれぞれ7mm、5mm、5mm、3mm、3mmとなった。比較例1−4は結晶化し白化(失透)したが、実施例のシートは殆ど透明性が変化せずに明らかに本発明の商品価値の高さを示した。
【0080】
〔実施例13〕
実施例9で得たポリ乳酸樹脂組成物を2軸混練機(テクノベル株式会社)を用いて200℃にて混練し径3mm長さ4mmのペレットを作成した。このペレットを使用して、マルチフィラメント紡糸機(株式会社中部化学機械製作所製)にて210℃にて溶融後空中に押し出して紡糸を行い未延伸糸を得た。次いで、未延伸糸を延伸温度73℃にて4倍の延伸を行い連続して150℃にて定長熱処理を行い最終的に105dTex/38filの透明な繊維を得た。この繊維の物性は3.2g/dTex、38%の伸度を有していた。この延伸糸を金枠に巻きつけ長さを固定して、ポリプロピレン袋に入れて中の空気を窒素で置換しCo60を線源としたγ線を25kGy照射した。照射後の繊維を130℃の空気中で30分加熱しても透明性を維持したままであったが、比較例1の樹脂を同様にして繊維化したものでは結晶化により白化(失透)した。
【0081】
〔実施例14〕
L-乳酸/D-乳酸=75/25(mol%)よりなるポリ乳酸樹脂及びトリアリルイソシアヌレート、有機化した合成スメクタイト(コープケミカル製SEN)及び発泡剤としてセルラー(永和化成)を夫々100重量部、30重量部、5重量部、5重量部をラボプラストミル(株式会社トーシン製 ラボニーダーミルTDR100-500×3型)にて190℃で30分間溶融混練して均一な組成物を得た。
次いで、この組成物に実施例12と同様にしてγ線を10kGy照射した。次いで、該照射後の樹脂を円盤状のプレス容器に入れて、230℃に加熱して十分に発泡剤を分解後、除圧して約3倍にゆっくり膨らませ、次いで急冷しポリ乳酸発泡体を得た。均一に微小な発泡が生じた発泡体と十分な強度を有した発泡体が得られた。
【0082】
〔実施例15〜17〕
平均粒子径20nmのシリカ微粒子のメタノール分散液(日産化学製、シリカ濃度%)に、多官能性架橋剤として、末端にエポキシ基を有するシランカップリング剤(信越シリコーン製、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)をシリカ微粒子当り1.5重量%加えて、室温で17時間反応させた。次いで、ジオキサンに溶解したポリ乳酸(Tm=171.5℃ Mw=13.5)に混合・溶解させシリカ微粒子が均一に分散したポリ乳酸溶液を得た。溶液は幾分青みを帯びた透明性を有した。この溶液をガラス板上にスパイラルコーター(松尾産業社製No.80)を用いて流延し60℃のホットプレート上で10分間乾燥しメタノールを蒸発させた。厚さ50μmの透明で均一なシートを得た。このシートをアルミ箔を有するポリプロピレン袋に入れて中の空気を窒素で置換しCo60を線源としたγ線(10kGy/hr)を、それぞれ表5に示す線量照射し、シート内に架橋構造を生成させた。
【0083】
〔比較例5〕
シリカ微粒子及び多官能性架橋剤を添加しない以外は、実施例15と同様の操作を行い、比較用のシートを成形した。
【0084】
〔比較例6〕
多官能性架橋剤を添加しない以外は、実施例15と同様の操作を行い、比較用のシートを成形した。
表5に各種シートの性状を示すが、架橋構造を導入した物では耐溶剤性や耐熱性、寸法安定性が優れていることがわかる。
更に、得られたシートをポリ乳酸が結晶化する110℃で10分間放置したところ比較例6はかなり白くなった。これは可視光以上の球晶の生成を意味する。一方、実施例15〜17はいずれもかなり透明性が改善した。この傾向は放射線量が増えると改善する傾向にあった。
【0085】
【表5】

【0086】
〔実施例18〕
モンモリロナイト(クニミネ工業製クニピアF)を常法によりセチルトリメチルアンモニウムクロライド(シグマアルドリッチ試薬)を用いて有機化した。有機化率は48%であった。有機化モンモリロナイトをトルエンに溶解して、2軸混練機にてポリメチメタクリレート(PMMA)(三菱レイヨン社製一般グレード)に混合した。尚、モンモリロナイトとPMMAの比率は7.5:100(重量費)とした。2軸混練機へはPMMAはペレット供給装置からモンモリロナイト溶液はギヤポンプで供給した。混練はモンモリロナイトのトルエン溶液を直接投入した。同時に別の押し出しは厚さ0.3mm幅30mmのスリットを介して行い、厚さ0.35mm幅30mmの透明なシートを得た。シートからはトルエン臭はせず、ベントから完全にトルエンが除去されたことを示す。得られたシートを実施例1と同様にγ線を30kGy照射した。尚、対照として放射線未処理のシートを用いた。本発明のシートは、強度83MPa、伸度12%、弾性率2560MPaであった。
【0087】
〔比較例7〕
γ線照射を行わない以外は、実施例4と同様の操作を行い、比較用のシートを得た。比較用のシートは強度63MPa、伸度7%、弾性率1750MPaであった。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明のポリ乳酸組成物は、高度の熱安定性、力学特性、透明性、耐溶剤性及び成形性を有し、これまで困難であった耐熱性と透明性、成形性、化学的安定性、摩擦強度等が必要とされる包装材料関連のシートやフィルム、電子・電気機器用のシート・筐体、ディスプレイ用窓、各種機械部品等に有用に使用可能な組成物或いは繊維製品を工業的容易に得る事が出来、極めて産業にとって有用である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の一実施の形態に係るポリ乳酸樹脂組成物を用いたフィルムシートのTMA温度変化を示すグラフである。
【図2】本発明の一実施の形態に係るポリ乳酸の貯蔵弾性率及び正接損失の温度変化を示すグラフである
【図3】本発明の一実施の形態に係るポリ乳酸の貯蔵弾性率及び正接損失の温度変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー及び/またはプレポリマーと、多官能性架橋剤と、無機系微粒子とを含み、高エネルギー線照射により処理されてなることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
ポリマー及び/またはプレポリマーが生分解性を有することを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
ゲル分率が、60%以上であることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
ポリマー及び/またはプレポリマーがポリ乳酸であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項5】
ポリ乳酸が少なくとも70%以上のL-乳酸を共重合したことを特徴とする請求項4記載の樹脂組成物。
【請求項6】
多官能性架橋剤をポリ乳酸100重量部当たり少なくとも3重量部含むことを特徴とする請求項4または5記載の樹脂組成物。
【請求項7】
無機微粒子の最大長が200nm以下であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項8】
無機微粒子をポリ乳酸100重量部当たり少なくとも5重量部含むことを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項9】
高エネルギー線を少なくとも10KGy照射したことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項10】
クロロホルム中で測定したゲル分率が75%以上であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項11】
空気中110℃で30分間処理後の広角X線回折による結晶化度が未処理のものに比べて高々0.9である請求項1〜10のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項12】
30-120℃までの平均熱膨張係数が高々5×10-4であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項13】
樹脂組成物を130℃で30分間加熱した時の樹脂組成物の550nmの光透過率が0.2mm厚み換算で少なくとも70%であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項記載の樹脂組成物を押し出し成型、射出成型、トランスファー成型、シートモルド成型、粉末成型から選ばれる少なくとも1つの方法により成型することよりなる樹脂成型体。
【請求項15】
粒子状のペレットである請求項14記載の樹脂成型体。
【請求項16】
押し出しシートである請求項14記載の樹脂成型体。
【請求項17】
インフレーションフィルムである請求項14記載の樹脂成型体。
【請求項18】
繊維状物である請求項14記載の樹脂成型体。
【請求項19】
箱状物である請求項14記載の樹脂成型体。
【請求項20】
筒状物である請求項14記載の樹脂成型体。
【請求項21】
中空粒子状物である請求項14記載の樹脂成型体。
【請求項22】
発泡成形体である請求項14記載の樹脂成型体。
【請求項23】
射出成型体である請求項14記載の樹脂成型体。
【請求項24】
成型体が0.2mm厚さ換算での550nmの光の透過率が少なくとも85%である請求項14〜24のいずれか1項記載の樹脂成型体。
【請求項25】
成型体を130℃空気中で30分間熱処理した時の成型体の0.2mm厚さ換算での550nmの光透過率が少なくとも65%である請求項14〜24のいずれか1項記載の樹脂成型体。
【請求項26】
成型体の30-120℃での熱膨張率が高々5×10-4であることを特徴とする請求項14〜25のいずれか1項記載の樹脂成型体。
【請求項27】
成型体を130℃空気中で30分間熱処理した成型体の30-120℃での熱膨張率が高々0.5×10-4であることを特徴とする請求項14〜26のいずれか1項記載の樹脂成型体。
【請求項28】
ポリマー及び/又はプレポリマーと、多官能性架橋剤と、無機微粒子とを含むポリ乳酸樹脂組成物を溶融成型後、高エネルギー線照射を行うことを特徴とする樹脂成型体の製造方法。
【請求項29】
ポリマー及び/又はプレポリマーがポリ乳酸であることを特徴とする請求項28記載の樹脂成型体の製造方法。
【請求項30】
ポリ乳酸樹脂組成物を溶融押し出し後に粒子状ペレット化し、次いで該ペレットに高エネルギー線照射を行い、更に押し出し成型、射出成型、トランスファー成型、粉末成型から選ばれる少なくとも1つの方法により成型することを特徴とする請求項29記載の樹脂成型体の製造方法。
【請求項31】
ポリ乳酸樹脂組成物を溶融押し出し後に粒子状ペレット化し、該ペレットに高エネルギー線照射を行い、更に押し出し成型、射出成型、トランスファー成型、粉末成型から選ばれる少なくとも1つの方法により成型し、次いで再度高エネルギー線照射することを特徴とする請求項29または30記載の樹脂成型体の製造方法。
【請求項32】
2回目以降に行う高エネルギー線照射の線量が、少なくとも20KGyであることを特徴とする請求項31記載の樹脂成型体の製造方法。
【請求項33】
高エネルギー線照射後に更に冷間或いは熱間で少なくとも0.1%の変形を与える処理を行うことを特徴とする請求項28〜32のいずれか1項記載の樹脂成型体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−8972(P2006−8972A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−303427(P2004−303427)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(591167430)株式会社KRI (211)
【Fターム(参考)】