説明

樹脂組成物溶液の製造方法、及び製造装置

【課題】樹脂組成物溶液中に含まれるディフェクト要因となり得る微粒子を効果的に除去できディフェクトの発生を抑制することができる樹脂組成物溶液の製造方法、及び製造装置を提供する。
【解決手段】樹脂組成物溶液を収容するタンク10に収容された樹脂組成物溶液を、タンク10から排出し、送液手段及びろ過手段を有する循環経路にて循環ろ過させる樹脂組成物溶液の製造方法である。送液手段として、ダイアフラムポンプ13を使用し、さらに、ダイアフラムポンプ13の下流のポンプ吐出ライン28pに第1のダンパー30を有する循環経路にて循環ろ過を行う製造方法である。ダイアフラムポンプ13に、第2のダンパー13cを備えることがさらに好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物溶液の製造方法、及び製造装置に関する。具体的には、フォトレジスト用樹脂含有溶液、液浸用組成物溶液、上層膜形成組成物等の樹脂組成物溶液の製造方法、及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子や液晶表示素子の製造において、リソグラフィ技術の進歩により、急速に微細化が進行している。微細化するための方法としては、例えば、露光光の短波長化や、液浸露光法の利用が挙げられる。ところが、このような微細化方法において、従来のレジスト材料を使用した場合、形成されるレジストパターン表面に欠陥(ディフェクト)が生じやすいという問題がある。尚、「ディフェクト」とは、現像後のレジストパターンを上部から観察した際に検知される不具合全般のことをいう。
【0003】
そして、近年では、更に高解像度のパターンニングが要求されるようになり、ディフェクトを無視することができなくなってきており、その改善が試みられている。このディフェクト要因には、レジスト樹脂を含有する溶液中に、樹脂の重合の際に副生するオリゴマーや低分子量のポリマー、目的とする質量平均分子量よりも高分子量のポリマー、精製工程等の際に装置、配管及びバルブ等から混入するゴミ、微粒子等といった固形状の異物が存在することが挙げられる。
【0004】
このようなディフェクト要因を除去するための方法としては、レジスト樹脂を含有する溶液をミクロン単位の孔径を有するフィルターに通液させてろ過を行いながら容器に充填し製品化するという、1回通過方式のろ過方法が知られている。しかしながら、1回通過方式のろ過ではフィルターから充填までの部分の微粒子がレジスト材料に混入してしまうため、十分に端きりをする必要性があり、生産性に問題がある。
【0005】
また、ディフェクト要因を除去する方法としては、フィルターが設置された閉鎖系内において循環させ、レジスト組成物中の微粒子の量を低減する方法(特許文献1参照)、がある。その際、設備の接液部が金属であると金属が溶出してしまい、金属分によりリソグラフィ材料を性能不良とさせる。その際、全ての接液部を金属ではなく、金属溶出の少ないフッ素系樹脂とすることが好まれる。そこでダイアフラムポンプ、レビトロポンプなどが金属溶出の少ないポンプとして有用視されているが、ダイアフラムポンプはその駆動方法から脈動、流量変動しやすいため、脈動防止用ダンパーを設置する方法が取られている(特許文献2参照)
【0006】
【特許文献1】特開2002−62667号公報
【特許文献2】特開平10−288160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、急速に微細化が進行している半導体素子や液晶表示素子の製造分野等においては、前述のような方法を用いた場合であっても、わずかながらに脈動してしまい、前記微粒子の除去が十分であるとはいえないのが現状である。
【0008】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたものであり、樹脂組成物溶液中に含まれるディフェクト要因となり得る微粒子を効果的に除去できる樹脂組成物溶液の製造方法、及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ダイアフラムポンプを使用し、さらに、ダイアフラムポンプの下流のポンプ吐出ラインにダンパーを有する循環経路にて循環ろ過を行うことにより、上記課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明によれば、以下の樹脂組成物溶液の製造方法、及び製造装置が提供される。
【0010】
[1] タンクに収容された前記樹脂組成物溶液を、前記タンクから排出し、送液手段及びろ過手段を有する循環経路にて循環ろ過する樹脂組成物溶液の製造方法であって、前記送液手段として、ダイアフラムポンプを使用し、さらに、前記ダイアフラムポンプの下流のポンプ吐出ラインに、前記樹脂組成物溶液の脈動を減衰させるための第1のダンパーを備える循環経路にて循環ろ過を行う樹脂組成物溶液の製造方法。
【0011】
[2] 前記樹脂組成物溶液が吐出する吐出側に、第2のダンパーを備える前記ダイアフラムポンプを用いて循環ろ過を行う前記[1]に記載の樹脂組成物溶液の製造方法。
【0012】
[3] 前記ダンパー及び前記ダイアフラムポンプに、それぞれ異なる圧力の駆動用エアーを供給して駆動させる前記[1]または[2]に記載の樹脂組成物溶液の製造方法。
【0013】
[4] 前記樹脂組成物溶液の流路がフッ素系ポリマーで形成されている前記ダイアフラムポンプを用いる前記[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂組成物溶液の製造方法。
【0014】
[5] ポンプ設計最大流量が、1〜100L/minである前記ダイアフラムポンプを用いる前記[1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂組成物溶液の製造方法。
【0015】
[6] 樹脂組成物溶液を収容するタンクと、前記タンクから排出された前記樹脂組成物溶液を前記タンクへと循環させる循環ラインと、前記循環ライン中に備えられた前記樹脂組成物溶液を送液するための送液手段と、前記循環ライン中に備えられた前記樹脂組成物溶液をろ過するためのろ過手段と、前記樹脂組成物溶液を容器に充填するための充填手段と、を備え、前記送液手段は、ダイアフラムポンプであり、さらに、前記ダイアフラムポンプの下流のポンプ吐出ラインに、前記樹脂組成物溶液の脈動を減衰させるための第1のダンパーを備え、前記循環ラインにて循環ろ過した後に、前記充填手段にて前記樹脂組成物溶液を容器に充填する樹脂組成物溶液の製造装置。
【0016】
[7] 前記ダイアフラムポンプは、前記樹脂組成物溶液が吐出する吐出側に、第2のダンパーを備える前記[6]に記載の樹脂組成物溶液の製造装置。
【0017】
[8] 前記ダンパー及び前記ダイアフラムポンプに、それぞれ異なる圧力の駆動用エアーを供給する駆動エアー供給手段を備える前記[6]または[7]に記載の樹脂組成物溶液の製造装置。
【0018】
[9] 前記ダイアフラムポンプは、前記樹脂組成物溶液の流路がフッ素系ポリマーで形成されている前記[6]〜[8]のいずれかに記載の樹脂組成物溶液の製造装置。
【0019】
[10] 前記ダイアフラムポンプは、ポンプ設計最大流量が、1〜100L/minである前記[6]〜[9]のいずれかに記載の樹脂組成物溶液の製造装置。
【発明の効果】
【0020】
循環ろ過の際に、樹脂組成物溶液が脈動すると、ろ過手段等において十分に微粒子を低減し、異物数を減少させることが困難であるが、本発明の樹脂組成物溶液の製造方法、製造装置によれば、送液手段としてダイアフラムポンプを使用し、さらにポンプ吐出ラインに第1のダンパーを設置することで樹脂組成物溶液の脈動を抑制することができ、微粒子の低減した樹脂組成物溶液を効率的に提供することができる。また、ダイアフラムポンプに第2のダンパーを備えることにより、さらに効果的に脈動を抑制し、微粒子の低減した樹脂組成物溶液を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0022】
図1に本発明の樹脂組成物溶液の製造装置の一実施形態の模式図を示す。樹脂組成物溶液の製造装置1(以下、単に製造装置1ともいう)は、樹脂組成物溶液を収容するタンク10と、タンク10から排出された樹脂組成物溶液をタンク10へと循環させる循環ライン28と、を有する。そして、循環ライン28中に備えられた樹脂組成物溶液を送液するための送液手段としての送液ポンプ13と、循環ライン中に備えられた樹脂組成物溶液をろ過するためのろ過手段してのろ過装置20と、を有し、さらに、樹脂組成物溶液を容器に充填するための充填手段として充填ノズル14、を有する。また、送液手段としての送液ポンプ13は、ダイアフラムポンプを使用し、ダイアフラムポンプ13の下流のポンプ吐出ライン28pに、前記樹脂組成物溶液の脈動を減衰させるための第1のダンパー30を有する。ダイアフラムポンプ13には、脈動防止ダンパー(第2のダンパー13c)が付随している(脈動防止ダンパー付ダイアフラムポンプ)ことが好ましい。第1のダンパー30は、送液ポンプ13から離間した場所に、第2のダンパー13cは、送液ポンプ13に付随して設置される。なお、ポンプ吐出ライン28pとは、送液ポンプ13の下流でろ過装置20の上流のラインを意味する。
【0023】
また、製造装置1は、ダイアフラムポンプ13、第1のダンパー30、及び第2のダンパー13cにエアーを供給して駆動させるためにエアー源33を備える。エアー源33からダイアフラムポンプ13、第1のダンパー30、及び第2のダンパー13cにエアーを供給するためのエアー供給ラインには、それぞれに異なる圧力のエアーを供給するために、レギュレーター34が備えられている。エアー源33及びレギュレーター34は、駆動エアー供給手段である。
【0024】
タンク10は、上部バルブ15a、薬液供給ノズル11を備え、タンク10内に薬液を供給できる。また、薬液を攪拌する攪拌装置12、薬液を排出する下部バルブ15bを備える。
【0025】
タンク10と、ろ過装置20は、配管によって接続され、その間に送液ポンプ13を備えており、タンク10からろ過装置20へ送液可能となっている。
【0026】
ろ過装置20の下流には、充填手段として、充填ノズル14を備える。また、配管によって循環ライン28が構成されており、樹脂組成物溶液をタンク10へ戻すことが可能となっている。
【0027】
ろ過手段であるろ過装置20には、フィルターが備えられ、そのフィルターの種類は、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ナイロン(NYLON)、及びPEとNYLONの複合膜のいずれかである。これらの材料からなるフィルターを用いると、耐薬品性が高く、金属などの異物が溶出し難いという利点がある。
【0028】
また、フィルターの孔径は、0.005〜1μmであることが異物を除去するために好ましい。
【0029】
循環ライン28を構成する配管の配管材質は、SUS304、SUS316、SUS316L、SUS304+PFAコーティングのいずれかであることが異物を除去するために好ましい。
【0030】
送液ポンプ13は、ダイアフラムポンプを使用し、ダイアフラムポンプ13には脈動を防止するためのダンパー13cが付随しているもの(一体型)を使用することが好ましい。ダイアフラムポンプ13、ダンパー13cの接液部材質(樹脂組成物溶液の流路の材質)は、金属溶出の少ないフッ素系ポリマーが好ましく、例えば、PFA、PTFEが好ましい。
【0031】
また、ダイアフラムポンプ13のポンプ設計最大流量は、1〜100L/minであることが好ましい。ダイアフラムポンプ13の流量が1〜100L/minの場合、ポンプ中のダイアフラムの容量が大きくなるため、ダイアフラムポンプ13自体の脈動が大きくなるため、本発明の効果が大きく得られる。流量が100L/minを超えた場合、流量が大きいため、フィルターから一度捕集した異物が抜け出てしまい、効果的に異物を取り除くことはできなくなる。
【0032】
送液ポンプ13として用いられるダイアフラムポンプ13は、エアー源33からの駆動エアーによってポンプ内のダイアフラムを駆動して、タンク10から排出された樹脂組成物溶液を吸入口13aから吸引し、下流側の吐出口13bから排出する。樹脂組成物溶液が吐出する吐出側の吐出口13bには、脈動防止のダンパー13cが備えられていることが好ましく、ダンパー13cも、エアー源33からの駆動エアーによって駆動するように構成される。そして、ダンパー13cによって、ダイアフラムポンプ13のダイアフラムの駆動に起因する樹脂組成物溶液の脈動を減衰させることができる。
【0033】
さらにダンパー13cの下流には、配管を介して第1のダンパー30が備えられている。ダンパー30も、エアー源33からの駆動エアーによって駆動するように構成されるエアーダンパーである。図2A及び図2Bを用いて、ダンパー30の構造及び作動を説明する。なお、第2のダンパー13cも同様である。
【0034】
図2Aに示すように、ダンパー30は、樹脂組成物溶液が導入される導入口30a、導入された樹脂組成物溶液が流通する流路30c、排出される排出口30bを備える。また、流路30cを形成するダイアフラム30dによって隔てられた空気室30hを備える。空気室30hに、エアー源33からのエアーを導入するためのエアー導入口30g、バルブ30f、エアーを排出するためのエアー排出口30iを備える。バルブ30fは、ダイアフラム30dに接続されたダイアフラム支持部30eによって上昇するように構成されている。
【0035】
ダンパー30の導入口30aから樹脂組成物溶液が導入されると、流路30cを形成するダイアフラム30dが液圧により押し上げられ、ダイアフラム30dに接続されたダイアフラム支持部30eがバルブ30fを開状態とする。これによりエアー源33からの駆動エアーがエアー導入口30gから空気室30hに導入される。
【0036】
図2Bに示すように、導入口30aから流路30cに導入される樹脂組成物溶液が減少すると、空気室30hのエアー圧によりダイアフラム30dが押し下げられることにより樹脂組成物溶液が排出口30bから排出されるため、液圧の下降が防止される。ダイアフラム30dが押し下げられる途中でバルブ30fが閉状態となり、空気室30hのエアーがエアー排出口iから排出されることにより、送液ポンプ13からの液圧が上昇すると、再度ダイアフラムが押し上げられる。これにより、樹脂組成物溶液の脈動を減少させることができる。
【0037】
また、本発明の樹脂組成物溶液の製造装置1には、循環ライン28のろ過装置20の上流及び下流に、送液される樹脂組成物溶液の液圧を測定する圧力計31が備えられている。これにより、微粒子捕集効率低減の要因となる樹脂組成物溶液の脈動を監視することができる。
【0038】
さらに、循環ラインには、送液される樹脂組成物溶液の液量を測定するための流量計32が備えられている。
【0039】
本発明の樹脂組成物溶液の製造方法における樹脂組成物溶液は、レジスト用樹脂含有溶液、液浸用組成物溶液、上層膜形成用組成物溶液、下層膜形成用組成物溶液等が挙げられる。
【0040】
レジスト用樹脂含有溶液は少なくともレジスト用樹脂及び溶剤を含むものであり、酸発生剤や酸拡散制御剤等の他の添加剤を更に含有していてもよい。具体的には、例えば、g線、i線等の紫外線、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、EUV等の(超)遠紫外線、電子線等の各種放射線による微細加工に適したレジストを形成可能なポジ型或いはネガ型のレジスト組成物や、多層レジストにおける上層膜や下層膜(反射防止膜等)を形成するための樹脂組成物等のフォトリソグラフィーに使用される樹脂組成物、これらの組成物に用いられるレジスト用樹脂を得るための粗レジスト用樹脂を含有する樹脂溶液等が挙げられる。
【0041】
前記レジスト用樹脂としては、例えば、アクリレート系樹脂、メタクリレート系樹脂、ヒドロキシスチレン系樹脂、ノボラック系樹脂等が挙げられる。尚、このようなレジスト用樹脂は、例えば、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物(単量体)等の所定の重合性化合物を溶剤の存在下で重合させることにより得ることができる。
【0042】
また、前記溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、グライム、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエーテルエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
液浸用組成物溶液は、液浸露光工程に用いる波長193nmの屈折率が水の屈折率以上である液浸露光用液体は、波長193nmにおける屈折率が、水の屈折率(1.44)以上の屈折率を有するものであるが、本発明の製造方法による液浸用組成物溶液としては、脂環式炭化水素化合物、脂環式炭化水素化合物が挙げられる。さらに、脂環式炭化水素化合物としては、trans−デカヒドロナフタレン、脂環式炭化水素化合物としては、exo−テトラジシクロペンタジエンが挙げられる。
【0044】
上層膜形成組成物は、フォトレジスト膜の表面上に上層膜を形成するために用いられるものであるが、例えば、酸解離性基修飾アルカリ可溶性樹脂と、感放射線性酸発生剤とを必須成分として含有する感放射線性の樹脂組成物等を挙げることができる。
【0045】
次に、本発明の樹脂組成物溶液の製造方法を説明する。本発明の製造方法は、タンク10に収容された樹脂組成物溶液を、タンク10から排出し、送液手段及びろ過手段を有する循環経路にて循環ろ過させる樹脂組成物溶液の製造方法である。送液手段として、ダイアフラムポンプ13を使用し、さらに、ダイアフラムポンプ13の下流のポンプ吐出ライン28pにダンパーを有する循環経路にて循環ろ過を行う。
【0046】
以下、具体的に製造方法を説明する。まず、調製装置の下部バルブ15bを閉にした後に、上部バルブ15aを開にして、薬液供給ノズル11から、例えば、薬液を投入し、バルブ15aを閉にした後に、攪拌装置12にて容物の濃度が均一になるまで攪拌する。
【0047】
その後、下部バルブ15bを開にして、送液ポンプ13によって、循環ライン28にて循環させ、循環ろ過を行うことにより、液浸用組成物溶液を製造する。
【0048】
循環ろ過は、タンク10に収容された樹脂組成物溶液を、送液手段及びろ過手段を有しタンク10から排出された樹脂組成物溶液をタンク10へと循環させる循環経路を循環させることにより行う。
【0049】
このとき、図1と異なり、第2のダンパー13cを設置しないことも可能である。また、送液ポンプ13、第1のダンパー30、第2のダンパー13cへ供給するエアー源33からのエアー供給ライン上にレギュレーター34を設置せずに循環ろ過を行うことも可能である。しかし、図1に示したように、ダイアフラムポンプ13から離間した位置に設置された第1のダンパー30のみならず、ダイアフラムポンプ13に一体とされた第2のダンパー13cを設置することが好ましい。さらに、エアー供給ライン上にレギュレーター34を設置して、レギュレーター34を調整し、送液ポンプ13、第1のダンパー30、第2のダンパー13cへ異なる圧力のエアーを供給することが脈動を防止し、微粒子(異物数)を減少させるために好ましい。また、ポンプ吐出ライン28pには、2以上のダンパーを備えても良い。
【0050】
所定の基準以下に微粒子が減少するまで循環ろ過を行い、その後、充填手段の充填ノズル14によって、樹脂組成物溶液を充填瓶24に充填する。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
まず、図1に示すように、3mのタンク10、脈動防止ダンパー付ダイアフラムポンプ(送液ポンプ13、第2のダンパー13c)、フィルター(ろ過装置20内、インテグリス製:マイクロガードPlus 0.01μm)、ポンプ吐出ライン28pに別置きダンパー(第1のダンパー30)、圧力計31、流量計32を備える樹脂組成物の製造装置を組み立てた。ただし、図1と異なり、送液ポンプ13、第1のダンパー30、第2のダンパー13cへ供給するエアー源33からのエアー供給ライン上にレギュレーター34は、設置しなかった。タンク10内に液浸用上層膜組成物(2−メチル−アクリル酸4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキシ−1−メチル−3−トリフルオロメチル−ブチルとビニルスルホン酸の共重合体、Mw(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量)が10500であるものを4%含む4−メチル−2−ペンタノール溶液)を3m仕込み、流量15L/minで循環ろ過を実施し、図1に示すろ過装置20の上流及び下流の圧力計31によってフィルターの圧力差を測定した。図3に示すように、フィルターの圧力差の時間に対する圧力変動量をΔPとして表すこととする。ΔPは、流量を一定とした場合のろ過時間内の最大と最小の差である。したがってΔPが小さいほど圧力変動が小さいことになる。また、オンラインパーティクルカウンターで異物数の測定を実施した。0.15μm以上の異物が100個/10mlまで減少するまでの循環回数、ろ過時間、ろ過時間内の圧力変動量ΔPを表1に示す。
【0053】
(実施例2)
実施例1の装置でダイアフラムポンプ(送液ポンプ13)、ダイアフラムポンプ13に備えられた一体型の脈動防止ダンパー(第2のダンパー13c)、ポンプ吐出ライン28pの別置きダンパー(第1のダンパー30)の駆動エアーラインにそれぞれレギュレーター34を設置し、異なる圧力のエアーを供給した。異なる圧力のエアーを供給すること以外は実施例1と同様に循環ろ過を実施した。この際のエアー駆動圧力はダイアフラムポンプ13へは0.3MPa、一体型の脈動防止ダンパーへは0.4MPa、別置きダンパーへは0.35MPaで供給した。実施例1と同様の条件で循環ろ過を行い、圧力差の測定と異物数の測定を実施し、0.15μm以上の異物が100個/10mlまで減少するまでの循環回数、ろ過時間、ろ過時間内の圧力変動量ΔPを調べた。
【0054】
(比較例1)
別置きダンパーを取り外す以外は実施例1と同様な装置を用い、同様に圧力差の測定とオンラインパーティクルカウンターで異物数の測定を実施し、0.15μm以上の異物が100個/10mlまで減少するまでの循環回数、ろ過時間、ろ過時間内の圧力変動量ΔPを調べた。
【0055】
【表1】

【0056】
表1に示すように、ダンパー30を備える実施例1及び2では、フィルター前後の圧力差の圧力変動量ΔPが比較例1に対して小さくなっており、0.15μm以上の異物が100個/10mlまで減少するためのろ過時間、循環回数が短くなった。さらに、ダイアフラムポンプ(送液ポンプ13)、ダイアフラムポンプ13に備えられた一体型の脈動防止ダンパー(第2のダンパー13c)、ポンプ吐出ライン28pの別置きダンパー(第1のダンパー30)に、異なる圧力のエアーを供給することにより、圧力変動量ΔPが小さくなり、循環回数を減少させ、ろ過時間を短縮することができた。すなわち、脈動防止ダンパー付ダイアフラムポンプ、ダンパーを備え、さらに、異なる圧力のエアーを供給して駆動することにより、樹脂組成物溶液中に含まれるディフェクト要因となり得る微粒子を効果的に除去できた。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の樹脂組成物溶液の製造方法、及び製造装置は、金属異物等の異物や金属成分等の不純物の混入に対して厳格なサブクォーターミクロンレベルの微細加工等の用途に用いられるフォトレジスト用樹脂含有溶液、液浸用組成物溶液、上層膜形成組成物等の樹脂組成物溶液の製造に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の樹脂組成物溶液の製造装置の一実施形態を示す模式図である。
【図2A】ダンパーの作動を示す模式図である。
【図2B】図2Aに続く、ダンパーの作動を示す模式図である。
【図3】フィルター前後の圧力差の変動を示すグラフである。
【符号の説明】
【0059】
1:樹脂組成物溶液の製造装置、10:タンク、11:薬液供給ノズル、12:攪拌装置、13:送液ポンプ(ダイアフラムポンプ)、13a:吸入口、13b:吐出口、13c:第2のダンパー、14:充填ノズル、15a:上部バルブ、15b:下部バルブ、20:ろ過装置、24:充填瓶、28:循環ライン、28p:ポンプ吐出ライン、30:第1のダンパー、30a:導入口、30b:排出口、30c:流路、30d:ダイアフラム、30e:ダイアフラム支持部、30f:バルブ、30g:エアー導入口、30h:空気室、30i:エアー排出口、31:圧力計、32:流量計、33:エアー源、34:レギュレーター。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクに収容された樹脂組成物溶液を、前記タンクから排出し、送液手段及びろ過手段を有する循環経路にて循環ろ過する樹脂組成物溶液の製造方法であって、
前記送液手段として、ダイアフラムポンプを使用し、さらに、前記ダイアフラムポンプの下流のポンプ吐出ラインに、前記樹脂組成物溶液の脈動を減衰させるための第1のダンパーを備える循環経路にて循環ろ過を行う樹脂組成物溶液の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂組成物溶液が吐出する吐出側に、第2のダンパーを備える前記ダイアフラムポンプを用いて循環ろ過を行う請求項1に記載の樹脂組成物溶液の製造方法。
【請求項3】
前記ダンパー及び前記ダイアフラムポンプに、それぞれ異なる圧力の駆動用エアーを供給して駆動させる請求項1または2に記載の樹脂組成物溶液の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂組成物溶液の流路がフッ素系ポリマーで形成されている前記ダイアフラムポンプを用いる請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物溶液の製造方法。
【請求項5】
ポンプ設計最大流量が、1〜100L/minである前記ダイアフラムポンプを用いる請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物溶液の製造方法。
【請求項6】
樹脂組成物溶液を収容するタンクと、
前記タンクから排出された前記樹脂組成物溶液を前記タンクへと循環させる循環ラインと、
前記循環ライン中に備えられた前記樹脂組成物溶液を送液するための送液手段と、
前記循環ライン中に備えられた前記樹脂組成物溶液をろ過するためのろ過手段と、
前記樹脂組成物溶液を容器に充填するための充填手段と、を備え、
前記送液手段は、ダイアフラムポンプであり、さらに、前記ダイアフラムポンプの下流のポンプ吐出ラインに、前記樹脂組成物溶液の脈動を減衰させるための第1のダンパーを備え、
前記循環ラインにて循環ろ過した後に、前記充填手段にて前記樹脂組成物溶液を容器に充填する樹脂組成物溶液の製造装置。
【請求項7】
前記ダイアフラムポンプは、前記樹脂組成物溶液が吐出する吐出側に、第2のダンパーを備える請求項6に記載の樹脂組成物溶液の製造装置。
【請求項8】
前記ダンパー及び前記ダイアフラムポンプに、それぞれ異なる圧力の駆動用エアーを供給する駆動エアー供給手段を備える請求項6または7に記載の樹脂組成物溶液の製造装置。
【請求項9】
前記ダイアフラムポンプは、前記樹脂組成物溶液の流路がフッ素系ポリマーで形成されている請求項6〜8のいずれか1項に記載の樹脂組成物溶液の製造装置。
【請求項10】
前記ダイアフラムポンプは、ポンプ設計最大流量が、1〜100L/minである請求項6〜9のいずれか1項に記載の樹脂組成物溶液の製造装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−111002(P2010−111002A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285408(P2008−285408)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】