説明

機械の操作装置

【課題】
ティーチペンダントの非常停止スイッチが有効に機能していない状態にも関わらず、有効に機能しているものとして報知することがある。
【解決手段】
TP(ティーチペンダント)100は非常停止SW110と、非常停止SW110の状態に応じて発光する発光体Lと、非常停止SW110の接点状態を監視し、接点状態に応じて光源制御信号を出力する第1CPU120,第2CPU130を備える。光源制御回路125は発光体Lを光源制御信号に基づいて制御する。ウオッチドッグ回路160は、第1CPU120,第2CPU130の作動状態を監視し、異常の場合に光源制御回路125に対し発光体Lの制御を禁止する。非常停止SW110が有効に機能していないにも関わらず機械を緊急停止させようとする行動を回避させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械を制御する機械の操作装置に関し、詳しくは機械を非常停止させるための機械の操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボット制御装置はロボットの動力を遮断するための非常停止スイッチを備えた可搬式の操作盤(例えば、ティーチペンダント)とケーブルで接続されていた。これに対し、特許文献1ではロボット制御装置とティーチペンダント間のデータの通信を、ケーブルでの物理的な接続によるものではなく、電波や赤外線等の伝達媒体を使用して行う通信システムが開示されている。
【0003】
さらに、特許文献2では、操作ボタン(本発明の非常停止スイッチに相当)とこの操作ボタンの操作が可能か否かに応じて発光状態が変わる光源を搭載した可搬型操作盤が提案されている。前記可搬型操作盤は、該可搬型操作盤が制御装置に接続されたか否かに応じて前記光源の発光状態を変えるようにしている。特許文献2では、人為的なミスを避ける目的から、前記光源の発光状態(すなわち、色の変化)により操作ボタンが有効に機能しているか否かを、作業者に容易に視認させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−009872号公報
【特許文献2】特開2004−319258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、非常停止スイッチが有効状態が無効状態であるかを作業者に示す機能が無い。このため、ロボット等の機械設備を緊急に停止させるために、作業者がティーチペンダントに備えられた非常停止スイッチを操作しても、無効状態の非常停止スイッチであったために、緊急停止が行われないということが起こりえる。
【0006】
特許文献2では、操作ボタンの発光状態の決定を、可搬型操作盤が制御装置に接続された否かにより決定している。しかし、特許文献2では、実際には操作ボタンの接点の状態を監視しているものではないため、操作ボタンの接点に故障が発生した場合、操作ボタンが無効状態であるにもかかわらず、光源が点灯したままの状態(発光状態)となることが起こりえる。この場合、作業者は、操作ボタンが有効に機能していると誤認してしまい、操作ボタンによる安全性が損なわれる問題がある。この場合、操作ボタンの接点を監視する手段を設けることが考えられるが、監視する手段自体が異常の場合の対策については、従来は提案されていない。
【0007】
本発明の目的は、非常停止スイッチの接点を監視する手段の異常により、前記接点の状態が無効になっているにもかかわらず、機械を緊急停止させようとする作業者の行動を回避させることができる機械の操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、非常停止スイッチと、前記非常停止スイッチが有効又は無効の状態表示をする光源と、前記非常停止スイッチの接点状態を監視し、前記接点状態に応じて無効信号又は有効信号を出力する第1監視手段と、前記光源の状態表示を、前記無効信号及び有効信号に基づいて制御する光源制御手段とを備え、前記非常停止スイッチが操作されたときに、機械を制御する機械制御装置に前記第1監視手段が非常停止信号を付与する機械の操作装置において、前記第1監視手段の作動状態を監視するとともに前記第1監視手段の作動状態が異常の場合に前記光源制御手段に対して前記光源の制御を禁止する第2監視手段を備えることを特徴とする機械の操作装置を要旨としている。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1において、前記第1監視手段は、さらに、前記非常停止スイッチの接点状態の監視以外に、当該第1監視手段に電気的に接続されている部位から取得した信号に基づいて、前記非常停止スイッチの接点状態を前記機械制御装置に伝達しても無意味な状態が発生しているか否かを判断し、前記無意味な状態でない場合には正常として前記有効信号を、無意味な状態である場合には、前記無効信号を前記光源制御手段に付与することを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2において、前記第1監視手段は、複数備えて多重化され、前記第2監視手段は、前記複数の第1監視手段の作動状態を監視し、前記複数の第1監視手段の作動状態が互いに同じ作動状態でない場合には、多重化された第1監視手段が異常の場合であるとして前記光源制御手段に対して前記複数の第1監視手段が付与した有効信号に基づく前記光源の制御を禁止することを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項において、前記第2監視手段は、前記第1監視手段の電源電圧を監視し、前記電源電圧が異常の場合、前記光源制御手段に対して前記光源の制御を禁止することを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項において、表示手段と、前記光源の動作状態をモニタするモニタ手段と、前記モニタ手段のモニタ結果と、前記光制御手段に付与する有効信号又は無効信号とに矛盾がある場合には、前記機械制御装置に非常停止信号を出力するとともに、前記表示手段に、前記非常停止スイッチの機能が有効か否かを前記光源が表示できない旨を表示させる表示制御手段を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項において、前記機械制御装置と非有線通信で行う通信手段を備え、前記非常停止信号を前記通信手段を介して前記機械制御装置に付与することを特徴とする。
【0014】
なお、非有線通信とは、無線通信(通信媒体:電波)、赤外線通信、光通信、或いは磁気通信を含み、いずれもワイヤレスで行う伝送方式のことをいう。又、多重化とは、2重化以上を含む趣旨である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、非常停止スイッチの接点を監視できない状態になっているにもかかわらず、それにより、機械を緊急停止させようとする作業者の行動を回避させることができる。この場合、非常停止スイッチの接点が無効状態になっていることが作業者に分からせることができるため、作業者に他の非常停止手段による機械の非常停止の操作を促すことができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、第1監視手段は、当該第1監視手段に電気的に接続されている部位から取得した信号に基づいて、前記非常停止スイッチの接点状態を前記機械制御装置に伝達しても無意味な状態が発生しているか否かを判断し、無意味な状態である場合には、前記無効信号を前記光源制御手段に付与する。
【0017】
この結果、非常停止スイッチの接点状態を前記機械制御装置に伝達しても無意味な状態が発生している場合には、光源制御手段は、前記無効信号に基づいた光源の状態表示を行うことができるため、作業者に他の非常停止手段による非常停止の操作を促すことができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、第1監視手段が多重化された場合においても、請求項1の効果を奏することができる。
請求項4の発明によれば、第2監視手段が、第1監視手段の電源電圧を監視して、前記電源電圧が閾値より低下している場合に、請求項1の効果を容易に実現できる。
【0019】
請求項5の発明によれば、非常停止スイッチの有効状態又は無効状態を表示する光源並びに光源制御手段が故障した場合であっても、作業者は、同故障の発生を識別することができるため、作業者が非常停止スイッチが有効に機能しているか否かを誤認することを回避できる。
【0020】
請求項6の発明によれば、操作装置が機械制御装置と非有線通信で行う場合において、請求項1乃至請求項4のいずれかの効果を容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)は本発明を具体化した第1実施形態のロボット制御装置のティーチペンダントのブロック回路図、(b)は光源制御回路のブロック回路図。
【図2】非常停止信号処理のプログラムのフローチャート。
【図3】非常停止データパケットの説明図。
【図4】無線送信データパケットの説明図。
【図5】応答データパケットの説明図。
【図6】無線応答データパケットの説明図。
【図7】第2実施形態の要部ブロック回路図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の機械の操作装置をティーチペンダント(以下、単にTPという)100に具体化した一実施形態を図1〜6を参照して説明する。TP100は、図示しないロボットの教示を行う際に使用されるとともに教示データ等を教示が行われるロボット制御装置200に対して無線で交信する。なお、ロボット制御装置200は、図1(a)では説明の便宜上、1つのみ図示されている。TP100は、複数のロボット制御装置200と交信が可能である。これら複数のロボット制御装置は、図示しない管理装置(ホストコンピュータ)により管理されている。前記ロボット制御装置200が制御するロボットは、例えば溶接ロボットや、搬送ロボット等である、これらのロボットに限定されるものではない。ロボット制御装置200は、機械制御装置に相当する。
【0023】
図1(a)に示すようにTP100は2つの接点110a,110bを非常停止スイッチの入力回路として持つ非常停止スイッチ110を備えている。なお、本実施形態では、図1(a)に示すように該接点110aはGNDに接続されるとともに接点110bは電源Vccに接続されているが、限定されるものではない。例えば、両接点をともに電源に接続したり、GNDに接続したり、或いは接点110aを電源Vccに接続するとともに接点110bをGNDに接続してもよい。なお、前記電源Vccは、TP100に搭載したバッテリ170から図示しない電源回路を介して供給される。
【0024】
同図に示すように、非常停止スイッチ110を収納する有底筒状の嵌合部材111は、TP100の本体ケース(図示しない)に固定された有底筒状の嵌合部材112に対し嵌合されている。非常停止スイッチ110は、嵌合部材111に対して外部操作可能(すなわち、作業者により押下可能)に収納されるとともに、図示しないスプリングにより、押下される前の位置に復帰して可能である。なお、嵌合部材111には、非常停止スイッチ110の嵌合部材111からの抜けを防止する抜け防止部材(図示しない)が設けられ、非常停止スイッチ110は嵌合部材111からの離脱が不能である。
【0025】
又、図1(a)に示すように非常停止スイッチ110は、透明材質又は半透明材質からなる操作部110c内に光源としての発光体Lが設けられている。発光体Lは、本実施形態では、赤色LEDから形成されている。本実施形態では、発光体Lの発光色を赤色としているが、赤色は例示であって、この色に限定されるものではない。発光体Lが赤色に発光した場合、非常停止スイッチ110の操作部全体が赤色となる。
【0026】
そして、非常停止スイッチ110は、押下されて接点110a,110b(すなわち、回路)が開となった場合が非常停止状態で、以下ではこれを「非常停止スイッチ開」、逆に非常停止状態を解除し、接点110a,110bが閉となった場合を「非常停止スイッチ閉」とする。
【0027】
又、TP100は、前記接点110a,110bの開閉状態をそれぞれ監視して監視結果を送信する第1CPU120、第2CPU130を備えている。各CPUは中央演算処理装置(cental processing unit)であり、ROM121、RAM122を有する。
【0028】
第1CPU120、第2CPU130は、後述する光源制御処理により、光源制御回路125に対して、後述する有効信号又は無効信号を出力する。光源制御回路125は、光源制御手段に相当する。前記第1CPU120及び第2CPU130はシリアル通信により、互いに必要な種々のデータの交信が可能とされている。第1CPU120、及び第2CPU130は、第1監視手段に相当する。又、第1監視手段は、第1CPU120及び第2CPU130により多重化されている。
【0029】
送受信制御回路140は第1CPU120に接続されるとともに、第1CPU120が作成した非常停止データパケットに基づいて後述する無線送信データパケット(図4参照)を作成して無線送受信回路150に送信する。
【0030】
無線送受信回路150は前記無線送信データパケットを無線でロボット制御装置200の無線送受信回路210に送信するとともに、無線送受信回路210からの無線応答データパケットを受信し、送受信制御回路140に送信する。無線送受信回路150は、ロボット制御装置200との無線通信による接続が1対1で確立している場合、及び通信が途絶した場合には、第1CPU120、及び、第1CPU120を介して第2CPU130にその旨を出力する。無線送受信回路150は、非有線でロボット制御装置200と通信を行う通信手段に相当する。
【0031】
電源電圧監視・ウオッチドッグ回路(以下、説明の便宜上、単に、ウオッチドッグ回路160という)は、電源電圧監視回路とウオッチドッグ回路とを備えている。前記電源電圧監視回路は、所定の周期で第1CPU120及び第2CPU130に供給される共通の電源回路(図示しない)における電源電圧の監視を行うとともにその監視結果を第1CPU120及び第2CPU130にそれぞれ出力する。
【0032】
さらに、前記ウオッチドッグ回路160は、第1CPU120及び第2CPU130の作動状態を監視する。具体的には、ウオッチドッグ回路160は、第1CPU120及び第2CPU130が正常に動作している場合には、第1CPU120及び第2CPU130から定期的なアクセス(すなわち、ウオッチドッグクリア信号の出力)を受けるようにされている。そして、ウオッチドッグ回路160は、第1CPU120、第2CPU130のいずれか一方に何らかの異常が発生して、定期的なアクセスが無くなった場合には、両CPUがともに、同じ作動状態ではないと判断して両CPUに対して強制的にリセットを掛けることができるようにされている。
【0033】
又、ウオッチドッグ回路160は、光源制御回路125に対して許可又は禁止の光源イネーブル信号を常時出力している。本実施形態では、光源イネーブル信号は、例えば、電圧がハイの場合を許可信号にするとともに、ローの場合を禁止信号とする。なお、光源イネーブル信号の許可と禁止の出力態様は、限定するものではなく、許可と禁止が区別できる信号であればよい。例えば、電圧がローの場合を許可信号にするとともに、ハイの場合を禁止信号とする場合には、ウオッチドッグ回路160と光源制御回路125との間にインバータを接続することにより、スイッチング素子125a,125bをオンオフ作動することができる。
【0034】
ウオッチドッグ回路160は、前記電源電圧が正常範囲であって、かつ、前記両CPUに対してリセットをかけない場合に光源制御回路125に対して許可信号(光源イネーブル信号)を出力する。又、ウオッチドッグ回路160は、前記電源電圧が正常範囲でない場合(すなわち異常の場合)、又は、前記両CPUに対してリセットを掛ける場合に禁止信号(光源イネーブル信号)を光源制御回路125に対して出力する。ウオッチドッグ回路160は、第2監視手段に相当する。なお、電源電圧が正常範囲とは、前記CPU及びその周辺の電子機器が正常に動作する予め定められた電圧範囲のことである。
【0035】
光源制御回路125は、ウオッチドッグ回路160から出力された光源イネーブル信号が許可信号の場合、オン動作するハード構成のスイッチング素子125a、125b(例えば、半導体スイッチ)を備えている。前記スイッチング素子125a、125bは、禁止信号の光源イネーブル信号を入力するとオフ動作する。
【0036】
又、光源制御回路125は、制御部125cを備えており、第1CPU120、第2CPU130からの有効信号又は無効信号を前記スイッチング素子125a、125bを介してそれぞれ入力するようになっている。
【0037】
従って、ウオッチドッグ回路160から許可信号(光源イネーブル信号)を入力している状態のときに前記制御部125cは、第1CPU120及び第2CPU130から入力した信号がともに有効信号の場合、前記発光体Lを所定周期で点滅させる。
【0038】
又、ウオッチドッグ回路160から許可信号(光源イネーブル信号)を入力している場合、光源制御回路125は、第1CPU120及び第2CPU130から入力した信号のいずれか、又はすべてが無効信号の場合であって、前記発光体Lを消灯する。
【0039】
又、ウオッチドッグ回路160から禁止信号(光源イネーブル信号)が入力されている場合、光源制御回路125は、前記スイッチング素子125a,125bがオフのため、前記発光体Lを消灯する。
【0040】
ロボット制御装置200は、無線送受信回路210、ロボット制御部220、非常停止制御回路230、及び電磁接触器240を備えている。
無線送受信回路210は、無線送信された無線送信データパケット(図4参照)を受信する。ロボット制御部220は、多重化(例えば、2重化)されたCPUからなる。ロボット制御部220は、前記無線送信データパケットを解析処理した後、応答データパケットを含む応答データパケット(図5参照)を作成して、無線送受信回路210を介して前記応答データパケットを含む無線応答データパケット(図6参照)を送信する。この送信した無線応答データパケットに含まれる応答データパケットは、第1CPU120、及び第1CPU120を経由して第2CPU130が受信するデータパケットとなる。
【0041】
又、前記無線送信データパケット(図4参照)に通信エラー等がない正常なデータの場合、無線送信データパケット内の非常停止データパケットに基づき、ロボット制御部220は、非常停止制御回路230を介して図示しないロボットに電力を供給する回路に設けられた2重化された電磁接触器240を非常停止データパケットに含まれている後述する第1CPUデータ、第2CPUデータの内容にそれぞれに応じて遮断制御する。この結果、図示しないロボットへの電力出力は遮断され。ロボットが非常停止する。
【0042】
なお、ロボット制御装置200は、多重化された電磁接触器240のそれぞれの開閉状態を監視する図示しない監視部を備えている。ロボット制御部220は、前記監視部による多重化された電磁接触器240のそれぞれの開閉状態の監視結果を、前記応答データパケットの作成時に、応答データ内に監視データを含ませる(図5参照)。
【0043】
(実施形態の作用)
上記のように構成されたTP100の作用を図2を参照しながら説明する。図2は、TP100の各CPUが実行する非常停止信号処理のプログラムのフローチャートである。なお、このフローチャートに示される処理は、各CPUにおいて、所定の制御周期毎(例えば、0.05秒毎)に、すなわち、定期的に実行される。
【0044】
(1.非常停止データパケットの生成及び送信:S10〜S18,S30〜S42)
1. 第2CPU130の処理(S10〜S18)
第2CPU130は、非常停止信号処理のプログラムを実行して非常停止スイッチ110の接点110bの状態を監視する。そして、第2CPU130は、S10の初期化処理、S12の非常停止スイッチの入力処理(すなわち、非常停止スイッチ110の前記接点110bの接点状態の監視処理)を行う、続いて、第2CPU130は、S14の通信データ変換処理を行うことにより「非常停止データパケット」を生成する(図3参照)。
【0045】
S14における通信データ変換処理について説明する。
図3に示すように「非常停止データパケット」は、宛先データ(すなわち、宛先アドレス)、送信元データ(送信元アドレス)、第1CPUエラーフラグ、第2CPUエラーフラグ、通信番号データとしての送信番号データ、第1CPUデータ、第2CPUデータ、誤り検出データにて構成される。この非常停止データパケット(すなわち、通信データ)は、予め定められた通信プロトコルに従ってパケットの形式で作成される。
【0046】
前記送信番号データは前回送信した送信番号データに1が加えられることにより更新される。又、第2CPU130は、第1CPUデータには初期値として、非常停止スイッチ110の接点110aが開であるとしたデータをセットする。
【0047】
併せて、第2CPU130は、「非常停止データパケット」を作成する直前に行った非常停止スイッチ入力処理(S12)の結果である非常停止スイッチ110の接点110bの開閉状態を第2CPUデータとしてセットする。
【0048】
なお、第1CPUデータ及び第2CPUデータにセットされるものとしては、初期値以外に、接点110a、110bが開状態のときの「非常停止スイッチ開」と、接点110a,110bが閉状態のときの「非常停止スイッチ閉」がある。「非常停止スイッチ開」と「非常停止スイッチ閉」は、監視結果に相当する。
【0049】
又、第2CPU130は、前記宛先データとして、ROM131に記憶されるとともに予めパラメータで定められた送信先のロボット制御装置200の図示しないCPUのデータをセットする。又、第2CPU130は、送信元データとして、予めパラメータで定められた送信元のTP100の第2CPU130のデータをセットする。
【0050】
前記第1CPUエラーフラグデータは、第1CPU120が何らかの異常をそれぞれ検出したときに、それぞれそのエラー状態を書き示すデータである。又、前記第2CPUエラーフラグデータは、第2CPU130が何らかの異常を検出したときにそのエラー状態を書き示すデータである。第2CPUエラーフラグは、第1CPUエラーフラグデータと同様に構成されている。第2CPUエラーフラグには、このフローチャートが実行される直前に検出して更新した第2CPU130で検出する異常パラメータの状態をセットする。
【0051】
第1CPUエラーフラグデータは、例えば、非常停止データCRC異常、非常停止データタイムアウト異常、応答データCRC異常、応答データ不一致異常、及び応答データタイムアウト異常の各種フラグがセット可能である。
【0052】
誤り検出データは、前記宛先データ、前記送信元データ、第1CPUエラーフラグデータ、第2CPUエラーフラグデータ、送信番号データ、第1CPUデータ、第2CPUデータを合成したデータから誤り検出演算により生成されたデータである。
【0053】
次に、フローチャートの話に戻して、第2CPU130は、以上の全てのデータをセットした上で、合成されたデータの誤り検出データを計算して更新する。誤り検出データの計算としては、例えば、CRC(Cyclic Redundancy Check)方式や、垂直パリティチェック方式或いは水平パリティチェック方式等があるが、限定されるものではない。本実施形態では、CRC方式を採用している。
【0054】
S16では、第2CPU130はS14で生成した「非常停止データパケット」をシリアル通信にて、第1CPU120に送信する。
S18では、第2CPU130は、故障診断処理Aを行う。故障診断処理Aは電源電圧監視(すなわち、過電圧或いは電圧低下)、ウオッチドッグ回路診断、及び非常停止スイッチの入力回路の診断を含む。前記電源電圧監視は、ウオッチドッグ回路160が出力した監視結果の診断処理である。第2CPU130は、前記監視結果が過電圧又は電圧低下である場合には、異常、すなわち故障と診断し、過電圧及び電圧低下でないと診断すると正常であると診断する。ウオッチドッグ回路診断は、ウオッチドッグ回路160がカウンタ動作しているか否かの判断である。非常停止スイッチの入力回路、すなわち、接点110bの診断は、入力回路が断線しているか否かの公知の方法によるチェックである。
【0055】
2.第1CPU120の処理(S30〜S42)
第1CPU120は、図2に示すように非常停止信号処理のプログラムを第2CPU130が行う非常停止信号処理と同期して所定の制御周期で実行する。
【0056】
第1CPU120は、この非常停止信号処理がスタートした直後のS30において初期化する。第1CPU120は、S32で第2CPU130からの信号の受信処理を行う。
S34の受信データ診断処理では、第1CPU120は、第2CPU130から「非常停止データパケット」データを受信した場合、当該「非常停止データパケット」データの中の誤り検出データを使用して、データに誤りがないかをチェックする。
【0057】
S36では、第1CPU120は、非常停止スイッチ110の入力処理、すなわち、第1CPUデータにこのパケットの受信直前に検出した非常停止スイッチ110の状態をセットする。具体的には、第1CPU120は、非常停止スイッチ入力処理(S36)の結果である非常停止スイッチ110の接点110aの開閉状態を、「非常停止データパケット」データの第1CPUデータとして更新する。
【0058】
以上のデータを更新した上で、S38の通信データ処理では、第1CPU120は、合成されたデータの誤り検出データを計算して更新する。続くS40では、第1CPU120はこうして生成した「非常停止データパケット」を送受信制御回路140に書き込む。送受信制御回路140は、第1CPU120からセットされた「非常停止データパケット」に無線送信を実行するためのヘッダデータを、図4に示すように付加し「無線送信データパケット」として無線送受信回路150に送信する。ここで、前記ヘッダデータには、使用する前記通信プロトコルによって定められた、送信元ポート番号、宛先ポート番号、データサイズ、誤り検出データ等が含まれる。
【0059】
次に、TP100の無線送受信回路150は、送受信制御回路140から受信した「無線送信データパケット」を無線信号として送信する。
S42では、第1CPU120は、故障診断処理A1を行う。故障診断処理A1は、電源電圧監視(すなわち、過電圧或いは電圧低下)、ウオッチドッグ回路診断、非常停止スイッチの入力回路の診断、及び非常停止スイッチの系統間一致診断を含む。第1CPU120は、前記電源電圧監視、及びウオッチドッグ回路診断では、前述した第2CPU130が故障診断処理Aで行う処理と同様に行う。又、非常停止スイッチの入力回路、すなわち、接点110aの診断は、入力回路が断線しているか否かの公知の方法によるチェックである。又、非常停止スイッチの系統間一致診断は、前記受信した「非常停止データパケット」の第2CPUデータ中の、接点110bに関する「非常停止スイッチ開」又は「非常停止スイッチ閉」と、S36で得られた非常停止スイッチ110の接点110aの開閉状態とが、一致しているか否かの診断である。
【0060】
次に、第1CPU120のS44〜S52のステップについて説明する。
(2.ティーチペンダント側の無線応答データパケットの処理)
(2.1.第1CPU120の処理)
TP100の無線送受信回路150は、制御装置200から「無線応答データパケット」(図6参照)を受信し、送受信制御回路140に送信する。
【0061】
送受信制御回路140は、受信した「無線応答データパケット」のヘッダデータ内の誤り検出データを利用して受け取った無線応答データパケットの内容が正しいことを確認後、ヘッダデータ内の宛先ポート番号で自分宛のデータかどうかを判断する。
【0062】
そして、送受信制御回路140はヘッダデータ内の宛先ポート番号が自分宛であった場合は「無線応答データパケット」から「応答データパケット」を取り出し、第1CPU120から読み出し可能な状態として、第1CPU120に対して割り込みをかける。なお、送受信制御回路140は、自分宛でなかった場合はデータを破棄する。
【0063】
第1CPU120は送受信制御回路140からの割り込みを受けて、送受信制御回路140から、「応答データパケット」を読み出す。
そして、図2に示すように、S44において、第1CPU120は、受信処理を行い、S46で受信データ診断処理を行う。この受信データ診断処理は、「応答データパケット」データの中の誤り検出データを使用して、データに誤りがないかをチェックする処理である。
【0064】
S48では、第1CPU120は、受信した「応答データパケット」をそのまま第2CPU130にシリアル通信で送信する。なお、第2CPU130における処理は後述する。続くS50では、故障診断処理Bを行う。
【0065】
故障診断処理Bは、第1CPU120が使用している各種メモリ、レジスタのチェック処理が含まれている。又、故障診断処理Bには、ロボット制御装置200から応答データパケットに含まれる監視データ(すなわち、電磁接触器240の開閉状態)と、S40で、今回送信した非常停止データパケットに含まれていた非常停止スイッチの開閉状態とが一致しているか否かを診断する処理が含まれている。
【0066】
S52では、第1CPU120は、光源制御処理を行う。
本実施形態では、光源制御処理は、フローチャートで示すように繰り返し実行される処理の最終ステップで実行される。前記光源制御処理は、発光体Lを点滅するための光源制御信号を生成する処理、又は発光体Lを常時消灯するための光源制御信号を生成する処理を含む。発光体Lを点滅するための光源制御信号は、予め定められた点滅周期毎に、発光体Lを点灯状態と消灯状態に切り替えるための信号であり、有効信号に相当する。又、発光体Lを消灯するための光源制御信号は、無効信号に相当する。
【0067】
第1CPU120は、下記の条件に該当する場合、無効信号を生成して光源制御回路125に出力し、下記の条件に該当しない場合には、有効信号を生成して光源制御回路125に出力する。これらの条件は、非常停止スイッチ110の接点状態をロボット制御装置200に伝達しようとしても無意味な状態が発生している場合である。
【0068】
(条件)
1) TP100がロボット制御装置200との無線通信による接続が確立していない場合。
【0069】
2) TP100とロボット制御装置200との通信が途絶した。
3) 第1CPU120と第2CPU130が読み出した非常停止スイッチの接点状態が一致していない。
【0070】
4) ロボット制御装置200の電磁接触器240が、指示どおりに動作していなかった。具体的には、本実施形態では電磁接触器240が多重化されているため、第1CPUデータに応じて遮断制御される電磁接触器240がデータ(指示)通りに動作していなかった。
【0071】
第1CPU120は、条件1),2)に該当するかを送受信制御回路140からの通知で判断する。又、第1CPU120は、条件3)に該当するかをS42の非常停止スイッチの系統間一致診断で判断する。又、第1CPU120は、条件4)に該当するかをS50での処理、すなわち、応答データパケットに含まれる監視データと、S40で、今回送信した非常停止データパケットに含まれていた非常停止スイッチの開閉状態とが一致しているか否かの診断結果で判断する。
【0072】
(2.2. 第2CPU130の処理)
次に、第2CPU130の処理を説明する。S20で、第2CPU130は、第1CPU120とのシリアル通信による受信処理を行い、次にS22で受信データ診断処理行う。この受信データ診断処理は、第2CPU130は、第1CPU120から応答データパケットを受信した場合、誤り検出データを使用して、データに誤りがないかをチェックする処理である。S24では、第2CPU130は、故障診断処理B1を行う。
【0073】
故障診断処理B1は、下記の処理を含む。
第2CPU130が使用している各種メモリ、レジスタのチェック処理が含まれている。又、故障診断処理B1には、ロボット制御装置200から応答データパケットに含まれる監視データ(すなわち、電磁接触器240の開閉状態)と、S16で、今回送信した非常停止データパケットに含まれていた非常停止スイッチの開閉状態とが一致しているか否かを診断する処理が含まれている。
【0074】
S26では、第2CPU130は、光源制御処理を行う。
第2CPU130が処理を行う中で、本実施形態では、光源制御処理は、フローチャートで示すように繰り返し実行される処理の最終ステップで実行される。ここで、光源制御処理は、第1CPU120がS52で行う処理と同様に、有効信号の生成出力、或いは無効信号の生成出力を行う。これらの信号は、光源制御回路125に出力される。
【0075】
又、第2CPU130は、有効信号、或いは無効信号を生成出力する条件は、前記説明した条件の1),2),4)である。
第2CPU130は、条件1),2)に該当するかを送受信制御回路140からの通知で判断する。又、第2CPU130は、条件4)に該当するかをS24での処理、すなわち、応答データパケットに含まれる監視データと、S16で、今回送信した非常停止データパケットに含まれていた非常停止スイッチの開閉状態とが一致しているか否かの診断結果で判断する。
【0076】
上記のようにして、第1CPU120、第2CPU130は、有効信号又は無効信号を光源制御回路125に出力する。
光源制御回路125では、ウオッチドッグ回路160から許可信号の光源イネーブル信号が入力されていると、スイッチング素子125a,125bはともにオン作動し、有効信号、又は無効信号の光源制御信号が前記制御部125cに入力される。前記制御部125cは、入力した信号が共に有効信号であれば、発光体Lを点滅状態に作動する。この結果、非常停止スイッチ110の機能が有効である場合は、非常停止スイッチ110内部に設けられたされた発光体L、点灯状態と消灯状態を交互に繰り返し、その結果、作業者には非常停止スイッチ110の発光体Lが点滅しているように見える。
【0077】
又、少なくともいずれか一方が無効信号のときは、発光体Lを消灯状態にする。或いは、ウオッチドッグ回路160から禁止信号である光源イネーブル信号が入力されていると、スイッチング素子125a,125bはともにオフ作動する。この結果、作業者には非常停止スイッチ110の発光体Lが消灯していると視認できる。
【0078】
本実施形態のTP100は下記の特徴がある。
(1) 本実施形態のTP100は、非常停止スイッチ110と、非常停止スイッチ110が有効又は無効の状態表示をする発光体L(光源)と、非常停止スイッチ110の接点状態を監視し、前記接点状態に応じて光源制御信号(無効信号又は有効信号)を出力する第1CPU120,第2CPU130(第1監視手段)を備える。又、TP100は、発光体Lの状態表示を、前記光源制御信号に基づいて制御する光源制御回路125(光源制御手段)を備える。そして、非常停止スイッチ110が操作されたときに、ロボットを制御するロボット制御装置200に第1CPU120,第2CPU130が非常停止信号を付与する。そして、TP100は、第1CPU120,第2CPU130の作動状態を監視するとともに第1CPU120,第2CPU130の作動状態が異常の場合に、光源制御回路125に対して発光体Lの制御を禁止するウオッチドッグ回路160(第2監視手段)を備える。この結果、本実施形態によれば、非常停止スイッチ110の接点が監視できない状態になっているにもかかわらず、それにより、ロボットを緊急停止させようとする作業者の行動を回避させることができる。この場合、非常停止スイッチ110の接点が監視できない状態になっていることを作業者に分からせることができるため、作業者に他の非常停止手段による非常停止の操作を促すことができる。
【0079】
(2) 本実施形態の電磁接触器240の第1CPU120、第2CPU130(第1監視手段)は、非常停止スイッチ110の接点状態以外の監視も行っている。例えば、本実施形態では、TP100とロボット制御装置200との接続が確立していない場合、TP100とロボット制御装置200との通信が途絶しているか否か、第1CPU120と第2CPU130が読み出した非常停止スイッチの接点状態が一致しているか否か、及び電磁接触器240が、指示どおりに動作していなかったか否かを監視している。
【0080】
このように本実施形態では、第1CPU120と第2CPU130に電気的に接続されている部位から取得した信号に基づいて、非常停止スイッチ110の接点状態をロボット制御装置200に伝達しても無意味な状態が発生している場合には、無効信号を光源制御回路125に付与する。このため、第1CPU120と第2CPU130の作動状態が正常の場合には、非常停止スイッチ110の接点が無効状態になっていることを作業者に分からせることができるため、作業者に他の非常停止手段の非常停止の操作を促すことができる。
【0081】
(3) 本実施形態では、TP100のCPUは、複数備えて多重化されている。そして、ウオッチドッグ回路160は、第1CPU120,第2CPU130(第1監視手段)の作動状態を監視し、両CPUの作動状態が互いに同じ作動状態でない場合、多重化されたCPUが異常の場合であるとして光源制御回路125に対して複数のCPUが付与した有効信号に基づく発光体Lの制御を禁止するようにした。この結果、本実施形態によれば、CPUが多重化された場合においても、上記(1)の効果を奏することができる。
【0082】
(4) 本実施形態では、ウオッチドッグ回路160(第2監視手段)は、第1CPU120,第2CPU130(第1監視手段)の電源電圧を監視し、前記電源電圧が異常の場合、光源制御回路125に対して発光体Lの制御を禁止する。この結果、本実施形態では、第2監視手段が、第1監視手段の電源電圧を監視して、前記電源電圧が閾値より低下している場合に、上記(1)の効果を容易に実現できる。
【0083】
(5) 本実施形態では、TP100は、ロボット制御装置200と無線(非有線)通信で行う無線送受信回路150(通信手段)を備え、非常停止信号を無線送受信回路150を介してロボット制御装置200に付与する。この結果、本実施形態によれば、TP100がロボット制御装置200と無線通信で行う場合において、上記(1)〜(4)の効果を容易に実現できる。
【0084】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図7を参照して説明する。第1実施形態と同一構成、又は相当する構成については同一符号を付す。
【0085】
第2実施形態では、第1実施形態の構成にさらに、非常停止スイッチ110の操作部110cに設けられた発光体Lの近傍に、モニタ手段としての光源センサLSが設けられているところが第1実施形態と異なっており、他の構成は、第1実施形態と同様に備えている。前記光源センサLSの設置位置は、発光体Lの発光を検出できる部位として操作部110c内でもよく、或いは、嵌合部材111としてもよい。光源センサLSは、第1CPU120、及び第2CPU130にそれぞれ接続され、同センサが検知した発光体Lの発光状態、すなわち、モニタ結果としての光源モニタ信号を第1CPU120、及び第2CPU130に出力する。
【0086】
なお、説明の便宜、図7では、第2実施形態の特徴的な構成を図示しているため、送受信制御回路140、無線送受信回路150、ウオッチドッグ回路160、バッテリ170の図示は省略しているが、第2実施形態のTP100においても備えている。又、前記第1実施形態では、TP100に表示装置を備えていることは説明しなかったが、TP100には液晶表示装置等からなる表示装置180を備えている。表示装置180は表示手段に相当する。
【0087】
第1CPU120及び第2CPU130は、第1実施形態のフローチャートの「光源制御処理」において、さらに、前記光源モニタ信号の状態と、光源制御信号の状態を監視する。そして、第1CPU120及び第2CPU130は、光源制御信号と「光源モニタ信号」に矛盾が生じた場合は、ロボット制御装置200側に電磁接触器240の接点を開くように送受信制御回路140を介して非常停止信号(すなわち、無線送信データパケット)を出して指示すると共に、TP100の表示装置180に異常メッセージを表示する。第1CPU120,第2CPU130は、表示制御手段に相当する。この異常メッセージは、例えば、「非常停止スイッチ110の機能が有効か否かを発光体Lが表示できません。」等のように、発光体Lが本来の機能を発揮できない旨の警告メッセージである。
【0088】
この表示装置180の異常メッセージにより、非常停止スイッチ110の発光体Lの発光状態が、非常停止スイッチ110の機能が有効か否かを示すことができない旨を作業者に示す。
【0089】
この結果、非常停止スイッチ110の発光体L又は光源制御回路125に故障が生じた場合でも、作業者が、非常停止スイッチ110の機能が有効か否かを示すことができると共に、他の方法でロボット制御装置200を安全な状態に停止させることができる。
【0090】
第2実施形態では、下記の特徴がある。
(6) 本実施形態では、TP100は、表示装置180(表示手段)、発光体Lの動作状態をモニタする光源センサLS(モニタ手段)を備える。又、第1CPU120、第2CPU130は、表示制御手段として、光源センサLSのモニタ結果と、光源制御回路125(光源制御手段)に付与する有効信号又は無効信号とに矛盾がある場合、ロボット制御装置200に非常停止信号を出力する。併せて、第1CPU120、第2CPU130は、表示装置180に、非常停止スイッチ110の機能が有効か否かを発光体Lが表示できない旨を表示させる。この結果、本実施形態では、非常停止スイッチ110の有効状態又は無効状態を表示する発光体L並びに光源制御回路125が故障した場合であっても、作業者は、同故障の発生を識別することができるため、作業者が非常停止スイッチ110が有効に機能しているか否かを誤認することを回避することができる。
【0091】
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 前記各実施形態では、ロボット制御装置に使用するTP100に具体化したが、工作機械における非常停止スイッチを有する可搬式操作装置や、各産業機械における非常停止スイッチを有する可搬式操作装置に具体化してもよい。
【0092】
・ 前記実施形態において、CPUを2重化した構成をさらに、3重化以上に構成してもよいことは勿論である。
・ 前記各実施形態では、操作装置と機械制御装置間を無線通信で通信を行うようにしたが、無線方式に限らず、非有線通信として赤外線通信、光通信、或いは磁気通信で行うようにしてもよい。
【0093】
・ 前記各実施形態では、操作装置と機械制御装置間を無線通信で通信を行うようにしたが、無線方式に限らず、有線で通信を行うようにしてもよい。この場合、無線送受信回路150、無線送受信回路210の代わりに、それぞれ有線接続可能な接続ポートを設ける。
【0094】
・ 前記実施形態では、発光体Lを点滅させるようにしたが、点滅ではなく、単に点灯させるようにしてもよい。又、発光体Lの点滅は、単調な点滅に限定されるものではなく、点滅周期を徐々に増加、或いは減少するようにしてもよい。或いは、点滅の発光強度を周期的に変更してもよい。
【0095】
・ 前記実施形態では、光源制御回路125をスイッチング素子125a,125b,制御部125cとにより構成した。この代わりに、光源イネーブル信号のハイ、又はロー信号に応じて、第1CPU、第2CPUからのオンオフのバルス信号の出力を停止或いは透過する一対のラッチ回路と、該一対のラッチ回路の出力(出力がパルス信号の場合は、互いに同期させた信号とする。)の論理積により有効信号を出力する論理回路を組み合わせてもよい。
【0096】
・ 又、前記スイッチング素子125a,125bをリレー接点としてもよい。
【符号の説明】
【0097】
110…非常停止スイッチ、120…第1CPU(第1監視手段、表示制御手段)、125…光源制御回路(光源制御手段)、130…第2CPU(第1監視手段、表示制御手段)、150…無線送受信回路(通信手段)、160…ウオッチドッグ回路(第2監視手段)、180…表示装置(表示手段)、L…発光体(光源)、LS…光源センサ(モニタ手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非常停止スイッチと、前記非常停止スイッチが有効又は無効の状態表示をする光源と、前記非常停止スイッチの接点状態を監視し、前記接点状態に応じて無効信号又は有効信号を出力する第1監視手段と、前記光源の状態表示を、前記無効信号及び有効信号に基づいて制御する光源制御手段とを備え、前記非常停止スイッチが操作されたときに、機械を制御する機械制御装置に前記第1監視手段が非常停止信号を付与する機械の操作装置において、
前記第1監視手段の作動状態を監視するとともに前記第1監視手段の作動状態が異常の場合に前記光源制御手段に対して前記光源の制御を禁止する第2監視手段を備えることを特徴とする機械の操作装置。
【請求項2】
前記第1監視手段は、さらに、前記非常停止スイッチの接点状態の監視以外に、当該第1監視手段に電気的に接続されている部位から取得した信号に基づいて、前記非常停止スイッチの接点状態を前記機械制御装置に伝達しても無意味な状態が発生しているか否かを判断し、前記無意味な状態でない場合には正常として前記有効信号を、無意味な状態である場合には、前記無効信号を前記光源制御手段に付与することを特徴とする請求項1に記載の機械の操作装置。
【請求項3】
前記第1監視手段は、複数備えて多重化され、前記第2監視手段は、前記複数の第1監視手段の作動状態を監視し、前記複数の第1監視手段の作動状態が互いに同じ作動状態でない場合には、多重化された第1監視手段が異常の場合であるとして前記光源制御手段に対して前記複数の第1監視手段が付与した有効信号に基づく前記光源の制御を禁止することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の機械の操作装置。
【請求項4】
前記第2監視手段は、前記第1監視手段の電源電圧を監視し、前記電源電圧が異常の場合、前記光源制御手段に対して前記光源の制御を禁止することを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の機械の操作装置。
【請求項5】
表示手段と、
前記光源の動作状態をモニタするモニタ手段と、
前記モニタ手段のモニタ結果と、前記光源制御手段に付与する有効信号又は無効信号とに矛盾がある場合には、前記機械制御装置に非常停止信号を出力するとともに、前記表示手段に、前記非常停止スイッチの機能が有効か否かを前記光源が表示できない旨を表示させる表示制御手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項に記載の機械の操作装置。
【請求項6】
前記機械制御装置と非有線通信で行う通信手段を備え、前記非常停止信号を前記通信手段を介して前記機械制御装置に付与することを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項に記載の機械の操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−197859(P2011−197859A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62004(P2010−62004)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)
【Fターム(参考)】