説明

機械式過給装置を備えた内燃機関及びその過給方法

【課題】内燃機関の運転の過渡状態においても、定常状態の目標過給圧に近い過給圧を発生して排ガス改善を行うことができ、しかも、機械式過給装置の駆動損失を減少できて燃費の悪化を抑制できる機械式過給装置を備えた内燃機関及びその過給方法を提供する。
【解決手段】ターボチャージャー7と機械式過給装置6を備えた内燃機関1,1Aにおいて、過渡状態でかつ前記ターボチャージャー7の過給圧が上がらないときに、前記機械式過給装置6を使って過給圧を上昇させ、前記ターボチャージャー7による過給圧の上昇に合わせて前記機械式過給装置6による過給圧を下げて、前記ターボチャージャーの7過給圧が要求された目標過給圧Pcになったところで、前記機械式過給装置6を停止して前記ターボチャージャー7に切り替える過給制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の運転が過渡状態のときに、過給圧を迅速に上昇でき、ターボチャージャーのみに比べて過給遅れを著しく少なくすることができると共に、機械式過給装置による駆動損失を低減できる機械式過給装置を備えた内燃機関及びその過給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術のディーゼルエンジンでは、インタークーラ付きターボチャージャー、EGR(排気再循環)装置、DPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)装置等によって、エンジンから排出される排ガスの浄化を行っている。また、今後の排ガス規制強化に対応するために、低圧EGR装置、2段階式ターボチャージャー、カムレス弁機構等の色々な装置が検討されている。
【0003】
この内燃機関の排ガス特性の向上と燃費改善には、シリンダ内に新気(空気)とEGRガスを最適な状態で導入することが重要であり、過給特性が大きく影響する。しかしながら、ターボチャージャーでは、負荷の上昇があると排ガス流量が増加し、排気マニホールド内の温度と圧力が上昇してタービンの回転数が上昇し、タービンと同軸上にあるコンプレッサも同時に回転して、回転数が上昇した後に過給圧が上昇する。そのため、エンジンの運転状態が変化する過渡状態においては、過給遅れ(ターボラグ)が生じ、最適な過給圧が得られない時期が生じる。従って、過渡時の過給特性の改善が排ガス改善への重要な課題の一つとなっている。
【0004】
つまり、ターボチャージャーを用いた内燃機関においては、過給圧の立ち上がりにターボラグと呼ばれる時間遅れ(タイムラグ)があるので、内燃機関の運転状態の過渡状態においては、図6の上段に示すように、車速をゼロから加速して定常状態にする場合に、燃焼噴射量Qstは、加速中は増量され、定常状態で一定になるように供給される。このときに、新気(Air)とEGRガス(EGR)は、図6の中段に示すように、シリンダ内に供給されるのが望ましいが、実際には、図6の下段に示すように、加速中の過渡状態においては、過給遅れが生じて、過給圧が目標過給圧よりも低くなるため、新気の供給は、実線のAirのように低くなるので、空燃比が下がるため、EGRを行うことができなくなる。そのため、図6の下段に示すような新気(Air)とEGRガス(EGR)がシリンダ内に供給されることになる。つまり、この過渡状態では、スモークを排出しないように、空燃比を設定するとEGRガスが吸気側に入らなくなってしまう。このことから、過渡時の排ガスは定常状態に比べて悪化してしまうという問題がある。
【0005】
これに関連して、ターボ過給機(ターボチャージャー)又は機械式過給機を備えた過給機付エンジンにおいて、排気還流が行われる運転領域において、排気還流弁の制御と過給機の制御とを効果的に協調させ、過給機の効率等を良好に保つために、排気還流が行われている運転領域で、運転状態の変化に伴い、過給圧と新気量とが互いに対応して増減するように過給機の駆動量とEGR弁の開口量とのうちの少なくとも一方を制御する過給機付エンジンの制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
また、EGRシステムにおいて、燃焼用空気と混合されて吸気マニホールドに導入される排気ガスの量を微調整するために、一方の組の排気マニホールドに連結する第1ターボチャージャーと他方の組の排気マニホールドに連結する第2ターボチャージャーを備え、バルブにより両方の組のEGR用の排気ガス量を調整する内燃機関における排気ガス再循環システムが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
更に、ターボチャージャーと過給機(機械式過給機)の2つを備え、過給機下流の吸気圧力が所望値になるまで、ターボチャージャーと過給機の出力を調整する過給ディーゼルエンジンが提案されており、この制御では、高い吸気圧ではターボチャージャーの出力増加を優先し、低い吸気圧では過給機の出力低減を優先としている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−170580号公報
【特許文献2】特開2002−180911号公報
【特許文献3】特表2008−546946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、内燃機関の運転の過渡状態においても、定常状態の目標過給圧に近い過給圧を発生して排ガス改善を行うことができ、しかも、機械式過給装置の駆動損失を減少できて燃費の悪化を抑制できる機械式過給装置を備えた内燃機関及びその過給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような目的を達成するための機械式過給装置を備えた内燃機関は、ターボチャージャーと機械式過給装置の両方を備えた内燃機関において、内燃機関の運転が過渡状態でかつ前記ターボチャージャーの過給圧が上がらないときに、前記機械式過給装置を使って過給圧を上昇させ、前記ターボチャージャーによる過給圧の上昇に合わせて前記機械式過給装置による過給圧を下げて、前記ターボチャージャーの過給圧が要求された目標過給圧になったところで前記機械式過給装置を停止して前記ターボチャージャーに切り替える過給制御を行うように構成される。
【0011】
この構成によれば、内燃機関の運転が過渡状態のときに、過給圧を迅速に上昇でき、ターボチャージャーのみに比べて過給遅れ(ターボラグ)を著しく少なくすることができる。また、機械式過給装置(スーパーチャージャー)のみに比べて、過給遅れで過給圧が不足する部分だけを機械式過給装置で補う過給を行うので、機械式過給装置による駆動損失を低減できる。
【0012】
また、低圧EGRを用いている場合には、ターボチャージャーのみを有する場合においては、内燃機関の運転の過渡状態では、過給遅れで過給圧(ブースト圧)が定常状態の目標過給圧よりも低くなってしまうために、空燃比が下がって、EGRの最適制御を行えないが、この構成によれば、過渡状態でも低圧EGRでEGRの最適制御を行うことができる。
【0013】
また、上記の機械式過給装置を備えた内燃機関において、過渡状態における過給圧の制御では、前記ターボチャージャーによる過給圧と前記機械式過給装置による過給圧の和が、過渡状態終了後の定常状態における目標過給圧になるように、前記機械式過給装置による過給圧を調整するように構成すると、速やかに定常状態で必要とする目標過給圧になるように過給できる。
【0014】
更に、上記の機械式過給装置を備えた内燃機関において、前記機械式過給装置による過給圧の調整を、前記機械式過給装置を迂回する通路に設けたバイパスバルブの開度で調整するように構成すると、容易に機械式過給装置による過給圧を調整でき、しかも、機械式過給装置による駆動損失を低減できる。
【0015】
そして、上記の目的を達成するための本発明の機械式過給装置を備えた内燃機関の過給方法は、ターボチャージャーと機械式過給機の両方を備えた内燃機関の過給方法において、内燃機関の運転が過渡状態でかつ前記ターボチャージャーの過給圧が上がらないときに、前記機械式過給機を使って過給圧を上昇させ、前記ターボチャージャーによる過給圧の上昇に合わせて前記機械式過給機による過給圧を下げて、前記ターボチャージャーの過給圧が要求された目標過給圧になったところで前記機械式過給機を停止して前記ターボチャージャーに切り替えて過給することを特徴する方法である。
【0016】
この方法によれば、内燃機関の運転が過渡状態のときに、過給圧を迅速に上昇でき、ターボチャージャーのみに比べて過給遅れを著しく少なくすることができる。また、機械式過給装置のみに比べて、過給遅れで過給圧が不足する部分だけを機械式過給装置で補う過給を行うので、機械式過給装置による駆動損失を低減できる。
【0017】
また、上記の機械式過給装置を備えた内燃機関の過給方法において、過渡状態における過給圧の制御では、前記ターボチャージャーによる過給圧と前記機械式過給装置による過給圧の和が、過渡状態終了後の定常状態における目標過給圧になるように、前記機械式過給装置による過給圧を調整すると、速やかに定常状態で必要とする目標過給圧になるように過給できるようになる。
【0018】
更に、上記の機械式過給装置を備えた内燃機関の過給方法において、前記機械式過給装置による過給圧の調整を、前記機械式過給装置を迂回する通路に設けたバイパスバルブの開度で調整すると、容易に機械式過給装置による過給圧を調整でき、しかも、機械式過給装置による駆動損失を低減できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る機械式過給装置を備えた内燃機関及びその過給方法によれば、内燃機関の運転が過渡状態のときに、過給圧を迅速に上昇でき、ターボチャージャーのみに比べてターボラグを著しく少なくすることができ、しかも、機械式過給装置のみに比べて、機械式過給装置の駆動損失を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態の機械式過給装置を備えた内燃機関の構成を示した図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態の機械式過給装置を備えた内燃機関の構成を示した図である。
【図3】本発明を説明するためのアクセル開度と過給圧の関係を示した図である。
【図4】本発明に係る過給圧制御ロジックを示した図である。
【図5】本発明の実施例でのエンジンの過渡状態におけるターボラグの改善状況を示した図である。
【図6】従来技術のエンジンの過渡状態におけるターボラグを示した図である。
【図7】ターボチャージャーと機械式過給装置(スーパーチャージャー)における過渡状態の過給圧の差を模式的に示した図である。
【図8】機械式過給装置(スーパーチャージャー)の過給圧と駆動損失の関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施の形態の機械式過給装置を備えた内燃機関及びその過給方法について、図面を参照しながら説明する。図1に、本発明の第1の実施の形態の内燃機関1の構成を示し、図2に本発明の第2の実施の形態の内燃機関1Aの構成を示す。
【0022】
図1に示すように、第1の実施の形態の機械式過給装置を備えた内燃機関(エンジン)1では、エンジン本体2の吸気マニホールド3に接続された吸気通路4に、上流側から順に、吸気絞り弁(インテークスロットル弁)5、機械式過給装置(スーパーチャージャー)6、ターボチャージャー7のコンプレッサ7a、インタークーラ8が設けられる。また、過給圧を制御するために、機械式過給装置6を迂回するバイパス通路6aが設けられ、このバイパス通路6aにバイパスバルブ6bが設けられる。
【0023】
また、エンジン本体2の排気マニホールド9に接続される排気通路10に、上流側から順に、ターボチャージャー7のタービン7b、触媒付きDPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)11、排気絞り弁(エクゾーストバルブ)12が設けられる。なお、このタービン7bにはウェストゲートバルブ7cが設けられている。
【0024】
更に、低圧EGR用に、吸気絞り弁5の下流側の吸気通路4と排気絞り弁12の上流側の排気通路10を連結するEGR通路13が設けられる。このEGR通路13には、EGRガスを冷却するためのEGRクーラー14とEGRを制御するためのEGR弁15が配設される。なお、この図1のような機械式過給装置6の配置においては、機械式過給装置6では排気マニホールド9の圧力が高くならないので、触媒付きDPF11の出口側から排ガスを取り、機械式過給装置6の入口側に戻す低圧EGR用の配置としている。
【0025】
また、過給圧(ブースト圧)を調整するために、吸気通路4には、吸気絞り弁5の上流側に第1排気ガス温度センサ21と第1圧力センサ22を設け、吸気絞り弁5と機械式過給装置6との間に、第2排気ガス温度センサ23と第2圧力センサ24を設ける。更に、機械式過給装置6の下流側の吸気通路4に第3排気ガス温度センサ25を設け、吸気マニホールド3に第4排気ガス温度センサ26と第3圧力センサ27を設ける。
【0026】
これらの各センサの検出値は、エンジン全体を制御するエンジンコントロールユニット(ECU)と呼ばれる制御装置(図示しない)に入力される。この制御装置は、各センサからの信号を入力し、燃料噴射制御、過給制御、EGR制御等のエンジン1の運転制御のみならず、触媒付きDPF11の再生制御等も行う。この制御装置の出力により、燃料噴射機構、吸気・排気用の弁開閉機構、吸気絞り弁5、機械式過給装置6、バイパスバルブ6b、ウェストゲートバルブ7c、排気絞り弁12、EGR弁15等が制御される。
【0027】
次に、第2の実施の形態の機械式過給装置を備えた内燃機関について説明する。図2に示すように、第2の実施の形態の機械式過給装置を備えた内燃機関1Aでは、第1の実施の形態に比べて、機械式過給装置6がターボチャージャー7のコンプレッサ7aの下流側に配置されると共に、EGR通路13が低圧EGR用ではなく高圧EGR用に構成されている点が異なる。それ以外は同じ構成である。
【0028】
より詳細には、エンジン本体2の吸気マニホールド3に接続された吸気通路4に上流側から順に、吸気絞り弁5、ターボチャージャー7のコンプレッサ7a、機械式過給装置6、インタークーラ8が設けられる。
【0029】
また、エンジン本体2の排気マニホールド9に接続される排気通路10に、上流側から順に、ターボチャージャー7のタービン7b、触媒付きDPF11、排気絞り弁12が設けられる。なお、このタービン7bにはウェストゲートバルブ7cが設けられている。
【0030】
更に、高圧EGR用に、機械式過給装置6がターボチャージャー7のコンプレッサ7aの下流側に配置され、ターボチャージャー7のコンプレッサ7aの下流側でかつ機械式過給装置6の上流側の吸気通路4とターボチャージャー7のタービン7bの上流側の排気通路10を連結するEGR通路13が設けられる。
【0031】
そして、その他のバイパス通路6、バイパスバルブ6b、EGRクーラー14、EGR弁15等や、各センサ21〜27等の構成及び制御装置等も第1の実施の形態と同様である。
【0032】
次に、上記の構成の機械式過給装置を備えた内燃機関1、1Aにおける過給方法について説明する。これらの内燃機関1、1Aのシステムでは、機械式過給装置6とターボチャージャー7が直列に配置されていて、過給圧の調整は機械式過給装置6の前後を結び、機械式過給装置6を迂回するバイパス通路6aのバイパスバルブ6bの開度調整により行う。なお、EGRに関しては、低圧EGR又は高圧EGRのためのEGR制御が別に必要となり、各EGR用の酸素濃度モデルをベースにした制御を実施することになるが、詳細についてはここでは言及しない。
【0033】
図7にターボチャージャー7の過渡時の過渡特性Tと機械式過給装置(スーパーチャージャー)6の過渡特性Sの違いを示す。ターボチャージャー7の特性Tでは、負荷の上昇があるとまず排ガス流量が増加し、排気マニホールド3内の温度と圧力が上昇してタービン7bの回転数が上昇する。タービン7bと同軸上にあるコンプレッサ7aも同時に回転して、回転数が上昇した後に過給圧が上昇するので過給遅れ(ターボラグ)と呼ばれる時間遅れ(タイムラグ)が生じる。
【0034】
一方、機械式過給装置6ではコンプレッサは常に回転しており、図1又は図2に示す機械式過給装置6のバイパスバルブ6bを閉めるだけで過給圧が上昇するので、図7に示す機械式過給装置6の特性Sのように、ターボラグは殆ど存在しない。
【0035】
図8に機械式過給装置6における過給圧と駆動力の関係を示す。ターボチャージャー7の場合には、排気エネルギーを使用して過給を行うが、機械式過給装置6ではエンジンによって直接駆動するので駆動損失が生じる。つまり、過給圧を高くするほど駆動損失が増え、また、回転速度が速いほど駆動損失が増える。ルーツブロア式等の機械式過給装置6の場合には、内部圧縮が無いのでバイパス通路6aを経由して過給圧を逃がすことによって、駆動損失を低くすることができる。
【0036】
本発明では、図1又は図2のような構成で、機械式過給装置(スーパーチャージャー)6とターボチャージャー7を組み合わせてそれぞれの良いところを生かす。即ち、過渡時にターボチャージャー7の過給圧が上がらない時に機械式過給装置6を使って過給圧を上昇させる。
【0037】
この機械式過給装置6は駆動損失があるのでターボチャージャー7の過給圧が高くなってきたところで、機械式過給装置6からターボチャージャー7に切り替える。つまり、図3に示す斜線部分に対して機械式過給装置6で過給を行い、ターボチャージャー7の過給圧Tの上昇に合わせて機械式過給装置6の過給圧を下げて駆動損失を低減させる。
【0038】
過給圧の制御については、過渡時においても、エンジン回転数Neと噴射燃料量Qfinから定常状態の目標過給圧マップM1を参照して目標過給圧Pcを算出し、この目標過給圧Pcに対して、測定される過給圧Boostが目標過給圧になるように、過給圧制御手段(ブーストコントローラ)で、PID制御等で機械式過給装置6のバイパスバルブ6bの開度制御を行うフィードバック制御を行う。この制御フローを図4に示す。
【0039】
本発明においては、機械式過給装置(スーパーチャージャー)6とターボチャージャー7を直列に配置し、過渡時の過給圧の制御を機械式過給装置6のバイパスバルブ6bの開度制御で行うことで、内燃機関1、1Aの運転の過渡時の過給特性及び排ガス特性を改善する。
【0040】
このとき、ターボチャージャー7による過給圧の上昇に合わせて、目標過給圧Pcになるように機械式過給装置6のバイパスバルブ6bの開度を調整し、目標過給圧Pcを維持しながら機械式過給装置6による過給圧を低下させて駆動損失を減少する。この構成により、第1の実施の形態での低圧EGRの実施例を示す図5の下段の実施例に示すように、過渡過給特性を改善することで、シリンダ内への新気(Air)及びEGRガス(EGR)の同流量を中段に示す制御目標に近づけることができ、排ガス特性を改善できる。つまり、過渡特性を改善して排ガス特性を改善ながら、機械式過給装置6の駆動損失増加を最小限にすることができる。
【0041】
従って、本発明に係る機械式過給装置を備えた内燃機関1、1A及びその過給方法によれば、内燃機関1、1Aの運転の過渡状態のときに、過給圧を迅速に上昇でき、ターボチャージャー7のみに比べてターボラグを著しく少なくすることができ、機械式過給装置6のみに比べて、機械式過給装置6の駆動損失を低減できる。
【0042】
また、低圧EGRを用いている場合には、ターボチャージャー7のみを有する場合では、内燃機関の運転の過渡状態では、過給遅れで過給圧が定常状態の目標過給圧Pcよりも低くなってしまうために、空燃比が下がって、EGRの最適制御を行えないが、本発明では、過渡状態でも低圧EGRでEGRの最適制御を行うことができる。
【0043】
更に、過給遅れで過給圧が不足する部分だけを機械式過給装置6で補う過給を行うので、機械式過給装置6による駆動損失を低減でき、燃費の悪化を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の機械式過給装置を備えた内燃機関及びその過給方法は、上記のように、内燃機関の過渡状態においても、定常状態の目標過給圧に近い過給圧を発生して排ガス改善を行うことができ、しかも、機械式過給装置の駆動損失を減少できて燃費の悪化を抑制できるという効果を奏することができるので、自動車搭載等の内燃機関やその過給方法として利用できる。
【符号の説明】
【0045】
1、1A 内燃機関
2 エンジン本体
4 吸気通路
6 機械式過給装置(スーパーチャージャー)
6a バイパス通路
6b バイパスバルブ
7 ターボチャージャー
7a コンプレッサ
7b タービン
7c ウェストゲートバルブ
10 排気通路
13 EGR通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボチャージャーと機械式過給装置の両方を備えた内燃機関において、内燃機関の運転が過渡状態でかつ前記ターボチャージャーの過給圧が上がらないときに、前記機械式過給装置を使って過給圧を上昇させ、前記ターボチャージャーによる過給圧の上昇に合わせて前記機械式過給装置による過給圧を下げて、前記ターボチャージャーの過給圧が要求された目標過給圧になったところで前記機械式過給装置を停止して前記ターボチャージャーに切り替える過給制御を行うことを特徴する機械式過給装置を備えた内燃機関。
【請求項2】
過渡状態における過給制御では、前記ターボチャージャーによる過給圧と前記機械式過給装置による過給圧の和が、過渡状態終了後の定常状態における目標過給圧になるように、前記機械式過給装置による過給圧を調整することを特徴とする請求項1記載の機械式過給装置を備えた内燃機関。
【請求項3】
前記機械式過給装置による過給圧の調整を、前記機械式過給装置を迂回する通路に設けたバイパスバルブの開度で調整することを特徴とする請求項1又は2に記載の機械式過給装置を備えた内燃機関。
【請求項4】
ターボチャージャーと機械式過給機の両方を備えた内燃機関の過給方法において、内燃機関の運転が過渡状態でかつ前記ターボチャージャーの過給圧が上がらないときに、前記機械式過給機を使って過給圧を上昇させ、前記ターボチャージャーによる過給圧の上昇に合わせて前記機械式過給機による過給圧を下げて、前記ターボチャージャーの過給圧が要求された目標過給圧になったところで前記機械式過給機を停止して前記ターボチャージャーに切り替えて過給することを特徴する機械式過給装置を備えた内燃機関の過給方法。
【請求項5】
過渡状態における過給制御では、前記ターボチャージャーによる過給圧と前記機械式過給装置による過給圧の和が、過渡状態終了後の定常状態における目標過給圧になるように、前記機械式過給装置による過給圧を調整することを特徴とする請求項4記載の機械式過給装置を備えた内燃機関の過給方法。
【請求項6】
前記機械式過給装置による過給圧の調整を、前記機械式過給装置を迂回する通路に設けたバイパスバルブの開度で調整することを特徴とする請求項4又は5に記載の機械式過給装置を備えた内燃機関の過給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−1877(P2011−1877A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145415(P2009−145415)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】