説明

機械部品洗浄装置

【課題】圧造後の機械部品に付着した余分なオイルを有効に除去できると共に、洗浄後の部品の表面に防錆剤及び洗浄されたオイルが薄く付着して製品の錆の発生を防止できる機械部品洗浄装置を提供する。
【解決手段】パーツホーマー7により圧造される各種機械部品Pを洗浄する機械部品洗浄装置であって、洗浄水CWを溜めたプール1と、始端側がプール1内の低位置、終端側がプール1内の水面WLから出る高位置となるように設置され、始端部上に供給された被洗浄部品Pを終端部まで搬送する間にプール1内の洗浄水CWで被洗浄部品Pを洗浄する搬送洗浄用コンベヤ2と、このコンベヤ2で搬送されて水面WLから上がってくる被洗浄部品Pに清浄な洗浄水CWを噴射するシャワー3と、プール1の水面WLに浮遊する油を含む上水をポンプ3cで吸引排出するフロート型オイルスキマー4とを備えてなること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーツホーマーによって冷間圧造加工される各種機械部品を洗浄する機械部品洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パーツホーマー(冷間圧造機)によって圧造加工される大型部品(直径20mm・重量100g〜直径40mm・重量300g)や小型部品(直径10mm程度・重量100g以下)は、通常1秒間に1個の速度で圧造熱の冷却と、金型及び圧造品の潤滑のために、一般的にはタービン油のベースに塩素、硫黄等の添加剤を混合した冷却油(オイル)を掛けながら連続圧造生産される。また、冷却油(オイル)は圧造品と金型の間の潤滑にも効果が出るように粘土の高いものが使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような圧造加工の結果、特に、大型部品の表面や、図8の(a) ,(b) に示すようなカップ状部品Pの内底部等には多量のオイル(冷却油)Oが、管理されない状態で多く付着する。特にカップ状部品Pのように凹凸の多い複雑形状の部品ではオイルOが不均一で必要以上に多量に付着して、不都合な問題を生ずる。しかし、品質管理上はオイルOの油膜が部品Pの表面全体に薄く均一適量に付いていることが必要であり、それは錆の発生を防ぐためである。
【0004】
圧造生産中や圧造後は圧造熱の発生に依る高温(300℃前後)のために、液化状態のオイルでも、加工後はしばらく在庫等で滞留保管しているオイルが凝固してペースト状になる。また、時間が経過すれば変色し、部品の商品としての価値が低下することになる。それらは、次工程で切断加工やメッキ等の二次処理加工にかけて完成品にする時に、凝固ペーストが原因で精度不良や自動化の流れに多くの問題を生じることになる。しかし、油膜が薄く、適量なオイルが表面に均一に付着していることは、錆が発生せず、生産管理上では良いとされている。
【0005】
それらの不都合を解消するために圧造直後の部品表面付着オイルを何らかの方法によって除去することが行われている。その多くの装置機器は、圧造機とシュートやコンベヤによりインラインによって接続されている。
【0006】
一般に行われている部品表面付着オイルの除去方法に次のようなものがある。その一つは、数百個から数千個の部品を、バケットに入れた状態で高速回転のドラムを有する遠心分離機によりタイマー等で自動的に無人化状態で数分間の脱油工程を終えて、製品缶に排出するようにしたものであるが、次のような問題が生じる。
【0007】
(1).部品どうしが折り重なった状態に密着し、所々完全に表面の脱油ができなくなって油膜のムラが生じる。
(2).複雑形状部品や特にカップ状部品の底に溜まったオイルは、部品が密着固定された状態で回転するので、位置と方向とにより100%の脱油ができない。
【0008】
また、インラインによるコンベヤ上の部品に、部品が動いている間に洗浄油(軽油)や温水をシャワーで噴霧して脱油し、そのまま製品缶に移すようにした方法では、次のような問題点がある。
(1). 複雑形状部品や特にカップ状部品の底に溜まったオイルは、部品の方向が固定されるために、位置と方向によりシャワーの洗浄油が均一に当たらず、脱油にムラが出できる。図9の(a) ,(b) には、脱油が不十分で、カップ状部品Pの凹部やコーナー部にオイルが付着残存している状態を示す。
(2).洗浄油(軽油)は揮発性があり、引火点が低いために、圧造後の熱の有る部品がミスト状のオイルに引火して、非常に危険である。
(3).洗浄油(軽油)や温水では、後日、製品に錆びが発生する危険性がある。
【0009】
本発明は、上記のような問題点を解消し得るものであって、圧造後の機械部品に付着した余分なオイルを有効に除去できると共に、洗浄後の部品の表面に防錆剤及び洗浄されたオイルが均一に薄く付着して、洗浄された部品に錆が発生するのを防止できる機械部品洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明は、パーツホーマー7により圧造される各種機械部品Pを洗浄する機械部品洗浄装置であって、防錆剤を含む温水からなる洗浄水CWを溜めたプール1と、始端側がプール1内の低位置、終端側がプール1内の水面WLから出る高位置となるように設置され、始端部上に供給された被洗浄部品Pを終端部まで搬送する間にプール1内の洗浄水CWで被洗浄部品Pを洗浄する搬送洗浄用コンベヤ2と、前記コンベヤ2の終端側上方に設置されていて、前記コンベヤ2で搬送されて水面WLから上がってくる被洗浄部品Pに対しプール1内の洗浄水CW中の汚れた浮遊オイルを避けた清浄な洗浄水CWを噴射するシャワー3と、プール1内の水面WLに浮かべられて、その水面WLに浮遊する油を含む上水をポンプ3cで吸引して排出するフロート型オイルスキマー4と、を備えてなることを特徴とする。
【0011】
請求項2は、請求項1に記載の機械部品洗浄装置において、搬送洗浄用コンベヤ2の始端側上方に位置するプール1内の水面WL下に、上下両端が開口した角筒体25内の対向する両側面25a,25aから柔らかい板面を持つ下向き傾斜状の棚板26を交互に上下複数段状に突設してなる緩衝棚5を設け、前記角筒体25内にその上方より被洗浄部品Pを投入して、上段側棚板26から下段側棚板26へ順次落下させながら前記コンベヤ2の始端部上に供給するようにしたことを特徴とする。
【0012】
請求項3は、請求項1又は2に記載の機械部品洗浄装置において、搬送洗浄用コンベヤ2に起振機15を取り付けて、このコンベヤ2を振動させるようにしたことを特徴とする。
【0013】
請求項4は、請求項1〜3の何れかに記載の機械部品洗浄装置において、フロート型オイルスキマー4によってプール1内から吸引したオイルを含む上水を油水分離槽20に導入し、この分離槽20内の清水のみをプール1に戻すようになっていることを特徴とする。
【0014】
請求項5は、請求項1〜4の何れかに記載の機械部品洗浄装置において、搬送洗浄用コンベヤ2の終端側から搬出されてくる被洗浄部品Pを始端側で受けて、これに起振機37により振動を与えながら、始端側より低位置にある終端側まで下り勾配の簀の子状のシュート38上を摺動させて排出する振動シューター36を備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上記解決手段による発明の効果を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明の機械部品洗浄装置によれば、被洗浄部品Pの脱油洗浄をプール1内の温水中で行なうと共に、被洗浄部品Pの移動及び排出を個別に行なえるため、被洗浄部品Pどうしの干渉による打痕等の発生を防止できる。また、被洗浄部品Pの脱油洗浄を、プール1内の温水中で搬送洗浄用コンベヤ2による被洗浄部品Pの移動中に行なうため、複雑形状の被洗浄部品P、特にカップ状部品の底等に溜まったオイルでも脱油され易く、ペースト状に固形化することを防止できる。そして、搬送洗浄用コンベヤ2で搬送されて水面WLから上がってくる被洗浄部品Pには、プール1内の洗浄水CW中の汚れた浮遊オイルを避けた清浄な温水からなる洗浄水CWが、シャワー3によって噴射されるために、最終的な汚れや微細な鉄粉等を確実に除去することができる。
【0016】
また、プール1内の水面WLには水よりも軽い汚れた脱油オイルと半オイル状態のオイル(オイル成分が多く含まれる温水)が混成状態で浮遊しており、しかしてこの浮遊する脱油オイル及び半オイル状態オイルは、オイルスキマー4により吸引除去されるが、このオイルスキマー4は、フロート型のオイルスキマーであって、水面WL上を浮遊しながらプール1内のほぼ全域にわたって移動可能であるため、脱油オイル及び半オイル状態オイルを効率良く有効に吸引排出することができる。
【0017】
また、プール1内の洗浄水CWには、防錆剤が混入されていると共に、プール1内で洗浄脱油されたオイルが適量に乳化含有されていて、洗浄された部品の表面全体に薄く均一に付着されるため、洗浄を終えて排出された後の錆の発生を防止でき、機械部品の製品価値を損なうことがない。また、被洗浄部品Pはプール1内を通過する間、洗浄水CWである温水によって温められるため、錆びの原因である微量な付着水分は洗浄を終えた部品の余熱により蒸発して取り除かれる。
【0018】
請求項2に係る発明のように、緩衝棚5を設けた場合には、緩衝棚5の角筒体25内に投入した被洗浄部品Pは、洗浄水CW中を上段側棚板26から下段側棚板26へと順次落下していく間に、各棚板26に衝当する際の振動によって付着したオイル(冷却油)Oが脱油されるか、脱油され易い状態となる。この場合、各棚板26の板面が柔らかいため、被洗浄部品Pが棚板26に衝当する時の衝撃が緩和され、被洗浄部品Pの表面に傷がつくことがなく、しかも落下速度が緩くなるため、搬送洗浄用コンベヤ2上に落下した時も傷がつくようなことがない。
【0019】
請求項3に係る発明のように、搬送洗浄用コンベヤ2に起振機15を取り付けて、コンベヤ2を振動させるように構成した場合には、プール1内での洗浄水CWによる脱油洗浄及びシャワー3での洗浄水CWの噴射による脱油洗浄をより効果的に行なわせることができる。
【0020】
請求項4に係る発明のように、オイルスキマー4によってプール1内から吸引されたオイルを含む上水である脱油オイル及び半オイル状態オイルを油水分離槽20に導入してオイルと清水とに分離し、きれいな清水のみをプール1に戻して循環再させるようにすることによって、水を有効に使用することができる。
【0021】
請求項5に係る発明のように、振動シューター36を設けた場合には、搬送洗浄用コンベヤ2から搬出されてくる被洗浄部品Pがシュート38の始端側上に排出されると、この被洗浄部品Pは、起振機37の起動によるシュート38の振動によって振動しながらシュート38上を摺動してゆき、それにより微量付着水分が早期に振るい落とされ、残留していた鉄粉等の付着物も除去されて、洗浄効果が一層良くなると共に、機械部品の品質が一層向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に本発明の好適な一実施形態を図面に基づいて説明すると、図1は本発明に係る機械部品洗浄装置全体の外観を示す斜視図であり、また図2は同洗浄装置の縦断側面図、図3は同洗浄装置の平面図である。この機械部品洗浄装置は、防錆剤を含む温水からなる洗浄水CWを溜めたプール1と、始端側がプール1内の低位置に、終端側がプール1内の水面WLから出る高位置となるように設置され、始端側で搬入した被洗浄部品Pを終端側まで搬送する間に前記洗浄水CWで洗浄する搬送洗浄用コンベヤ2と、このコンベヤ2の終端側上方に設置されていて、このコンベヤ2で搬送されて水面WLから上がってくる被洗浄部品Pに前記洗浄水CWを噴射するシャワー3と、プール1内の水面WLに浮かべられ、その水面WLに浮遊するオイルを含む上水をポンプの吸引力で吸引して排出するフロート型のオイルスキマー4と、前記コンベヤの始端側上方に位置するプール1内の水面WL下に設けられた緩衝棚5とを備えている。
【0023】
また、図1〜図3において、6は被洗浄部品Pをプール1内の緩衝棚5に供給する被洗浄部品供給コンベヤで、このコンベヤ6の始端部にはパーツホーマー7で圧造された被洗浄部品Pが別のコンベヤ8によって搬入されるようになっている。
【0024】
プール1は、周壁部1aと底壁部1bとからなる箱形で、上部開口に上板1cが取り付けられる。このプール1には防錆剤を10%程度含む60〜80℃の温水(洗浄脱油液)が常時一定量を溜められるようになっており、周壁部1aの所要部には水を加熱するパイプヒーター11が設けてある。また、プール1内の温水の温度、防錆剤の濃度及び水量は夫々所定値に自動管理されるようになっている。
【0025】
搬送洗浄用コンベヤ2は、ベルト表面にベルト幅方向に延びる掛止片13をベルト長さ方向一定ピッチで取り付けた例えばネット状の無端ベルト12を、コンベヤフレームFに軸着したプーリa,b及びガイドローラc,d,e,fに装架して、図2に示すように始端側水平搬送部2aと上り傾斜状搬送部2bと終端側水平搬送部2cとを形成したネット状ベルトコンベヤからなるもので、始端側水平搬送部2aと上り傾斜状搬送部2aの大半がプール1内の洗浄水CWに浸かるように設置されていて、始端側水平搬送部2a上に供給された被洗浄部品Pを、始端側水平搬送部2aから上り傾斜状搬送部2aに沿って搬送する間にプール1内の洗浄水CWで洗浄するようになっている。
【0026】
シャワー3は、搬送洗浄用コンベヤ2の終端部側を覆うようにプール1に設けられたコンベヤカバー14の傾斜状窓開口部14aの上下2箇所に噴射管3aを水平に設置して、これらの噴射管3aに、フィルター3bを介してポンプ3cで吸引したプール1内の底部側の洗浄水CWを洗浄水供給管3dにより供給するようにしたもので、搬送洗浄用コンベヤ2で搬送されて洗浄されながら水面WLから上がってくる被洗浄部品Pに対し、プール1内の洗浄水CW中の汚れた浮遊オイルを避けた綺麗な、防錆剤を含む温水からなる洗浄水CWを噴射して洗浄を行なうようになっている。
【0027】
図2に示すように、搬送洗浄用コンベヤ2にはコンベヤフレームFの終端部側に起振機15が取り付けられており、この起振機15でコンベヤ2を振動させることにより、このコンベヤ2で搬送される被洗浄部品Pに振動を与えて、プール1内での洗浄水CWによる洗浄及びシャワー3での洗浄水CWの噴射による洗浄をより効果的に行なわせるようにしてんる。尚、起振機15は、コンベヤカバー14の上部側開口部14b内に挿入されて、コンベヤフレームFの終端部に連結するように取り付けられる。またコンベヤフレームFには、起振機15の振動がプール1自体に伝わるのを避けるためにプール1との間に緩衝バネ46が設けてある。
【0028】
フロート型オイルスキマー4は、図2及び図4から分かるように、スキマー本体部16に一対のフロート17,17を取り付けると共に、スキマー本体16から延出される長い可撓性の吸引用ホース18をポンプ19の吸引口19aに接続してなるもので、図示のようにプール1内の水面WLに浮かべた状態で、その水面WLに浮遊するオイルを含む上水をポンプ19の吸引力でスキマー本体部16より吸引して排出するようになっている。尚、上水は、汚れた脱油オイルと半オイル状態のオイル(オイル成分が多く含まれる温水)とからなるものとする。
【0029】
このフロート型のオイルスキマー4によりプール1内から吸引されたオイルを含む上水は、図4に示すように、ポンプ19の吐出口19bに接続された排水管21によってその排水口21aから油水分離槽20に導入され、しかしてこの油水分離槽20内に導入されたオイルを含む上水は、仕切板22aの下を潜り、仕切板22bの上を通過するなどすることにより、オイルと清水とに分離されて、その清水のみが清水戻り管23によりプール1に戻されて、循環再使用されるようになっている。また、油水分離槽20内の上部に浮いた油分は、ドレン口24から排出される。
【0030】
このフロート型のオイルスキマー4は、フロート17によりプール1内の水面WL上を浮遊しながらプール1内のほぼ全域にわたって移動可能であるから、被洗浄部品Pの洗浄時に洗い落とされてプール1内の水面WLに浮遊する油分を効率良く有効に吸引排出することができる。
【0031】
前記緩衝棚5は、図2に示すように、搬送洗浄用コンベヤ2の始端側上方に位置するプール1内の水面下にあって、上下両端が開口した角筒体25内の対向する両側面25a,25aから柔らかい板面を持つ下向き傾斜状の棚板26を交互に上下複数段状に突設してなるもので、角筒体25内にその上方より被洗浄部品Pを投入して、上段側棚板26から下段側棚板26へと順次落下させながら前記コンベヤ2の始端側水平搬送部2a上に供給するようになっている。柔らかい板面を持つ下向き傾斜状の棚板26は、例えばウレタン材によって形成される。
【0032】
図2及び図3において、27は搬送洗浄用コンベヤ2の終端側水平搬送部2cから落下排出される洗浄済み被洗浄部品Poを受け入れる製品缶である。
【0033】
また、被洗浄部品Pをプール1内の緩衝棚5に供給する被洗浄部品供給コンベヤ6は、搬送洗浄用コンベヤ2と同様に、ネット状コンベヤベルト28の表面にベルト幅方向に延びる掛止片29をベルト長さ方向に一定ピッチで取り付けて、図2に示すように、始端側水平搬送部6aと上り傾斜状搬送部6aと終端側水平搬送部6cとを形成したベルトコンベヤからなるもので、このコンベヤ6のほぼ全体を覆うようなカバー30が設けられている。
【0034】
この被洗浄部品供給コンベヤ6の終端側水平搬送部6cより排出される被洗浄部品Pは、プール1の上板1cに設けてある被洗浄部品投入口31から緩衝棚5の角筒体25内に投入されるようになっている。
【0035】
また図2に示すように、プール1の上板1cの中央部には点検口32が設けてあって、この点検口32には図1に示すように透光板33a付きの開閉蓋33が蝶着されている。尚、図1において、34は制御ボックス、35は覗き窓を示す。
【0036】
上記のように構成される機械部品洗浄装置の動作について説明すると、先ず、パーツホーマー7で圧造された被洗浄部品Pは、コンベヤ8によって被洗浄部品供給コンベヤ6の始端側水平搬送部6a上に搬入され、ここから上り傾斜状搬送部6aを経て終端側水平搬送部6cよりプール1内の緩衝棚5の角筒体25内に投入される。尚、パーツホーマー7で圧造される被洗浄部品Pは、図8の(a) ,(b) に示すように、カップ状部品で、内底部等に多量のオイル(冷却油)Oが付着しているものとする。
【0037】
緩衝棚5の角筒体25内に投入された被洗浄部品Pは、防錆剤を含む温水からなる洗浄水CW中を上段側棚板26から下段側棚板26へと順次落下していく間に、各棚板26に衝当する際の振動によって付着したオイル(冷却油)Oが脱油されるか、脱油され易い状態となる。この場合、各棚板26の板面が柔らかいため、被洗浄部品Pが棚板26に衝当する時の衝撃が緩和され、被洗浄部品Pの表面に傷がつくことがなく、しかも落下速度が緩くなるため、搬送洗浄用コンベヤ2上に落下した時も傷がつくようなことがない。こうして緩衝棚5を通過することによって、被洗浄部品Pは脱油洗浄されながら、搬送洗浄用コンベヤ2の始端側水平搬送部2a上にゆっくりと緩く落下供給されてゆく。
【0038】
搬送洗浄用コンベヤ2の始端側水平搬送部2a上に供給された被洗浄部品Pは、防錆剤を含む温水からなる洗浄水CW中を水平搬送部2aから上り傾斜状搬送部2aへと搬送される間に洗浄水CWによって脱油洗浄されてゆき、しかして上り傾斜状搬送部2aの後半部に至って水面WLを出ると、シャワー3による清浄な洗浄水CWの噴射作用を受けて最終的な汚れや微細な鉄粉等を除去され、こうして脱油洗浄された洗浄済み被洗浄部品Poが終端側水平搬送部2cの先端から製品缶27に落下排出されることになる。
【0039】
一方、プール1内の水面WLには、水よりも軽い汚れた脱油オイルと半オイル状態のオイル(オイル成分が多く含まれる温水)が混成状態で浮遊しているが、このように浮遊する脱油オイル及び半オイル状態のオイルは、オイルスキマー4によって吸引除去される。この場合に、オイルスキマー4は、プール1の中心部の回収の容易な位置に置かれるとともに、フロート型のオイルスキマーであって水面WL上を浮遊しながらプール1内のほぼ全域にわたって移動可能であるため、脱油オイル及び半オイル状態オイルを効率良く有効に吸引排出することができてる。そして、オイルスキマー4によってプール1内から吸引された油を含む上水である脱油オイル及び半オイル状態のオイルは、油水分離槽20に導入されることによりオイルと清水とに分離されて、綺麗な清水のみがプール1に戻され、循環再使用されるため、水を有効に使用することができ、経済的である。
【0040】
プール1内の温水の温度、防錆剤の濃度及び水量は夫々所定値に自動管理され、プール1内の水量が減れば、逐次補給され、防錆剤の濃度が薄くなれば、適宜に防錆剤が補給され、また水温もパイプヒーター11によって、60℃〜80℃間の所定の温度に保持される。
【0041】
パーツホーマー7によって圧造される機械部品の材質によって、粘度の高い冷却オイルを使用するような場合には、起振機15を起動させてコンベヤ2を振動させ、コンベヤ2で搬送される被洗浄部品Pに振動を与えることによって、プール1内での洗浄水CWによる脱油洗浄及びシャワー3での洗浄水CWの噴射による脱油洗浄をより効果的に行なわせることができる。
【0042】
上記のようにして洗浄された洗浄済み被洗浄部品Poを図7に示す。即ち、洗浄水CWには、防錆剤が混入されていると共に、プール1内で洗浄脱油されたオイルOが適量乳化含有されていて、被洗浄部品の表面全体に薄く均一に付着しているため、洗浄を終えて排出された後の錆の発生を防止でき、機械部品の製品価値を損なうことがない。また、被洗浄部品Pはプール1内を通過する間、洗浄水CWである温水により温められるため、錆びの原因である微量な付着水分は洗浄を終えた部品の余熱により蒸発して取り除かれる。
【0043】
図5は搬送洗浄用コンベヤ2の終端と製品缶27との間に設けられる振動シューター36を示す縦断側面図、図6はその平面図である。この振動シューター36は、搬送洗浄用コンベヤ2の終端側から搬出されてくる被洗浄部品Pを始端側で受けてこれに起振機37により振動を与えながら、始端側より低位置にある終端側まで下り勾配の簀の子状のシュート38上を摺動させて排出するようにしたもので、図5の(a) ,(b) から分かるように、基台39の上に、前後左右4つの緩衝バネ40を介してシュート取付台41を設置し、このシュート台41には、下り勾配の簀の子状シュート38を取り付けると共に、起振機支持枠42を介して起振機37を設置して簀の子状シュート38を振動させるようにしている。尚、シュート取付台41の底板41aには水抜き孔43が、また基台39の天板39aには水抜き孔44が夫々設けられ、また基台39の下側には水滴受皿45が置かれている。
【0044】
このような振動シューター36によれば、搬送洗浄用コンベヤ2から搬出されてくる被洗浄部品Pがシュート38の始端側上に排出されると、この被洗浄部品Pは、起振機37の起動によるシュート38の振動によって振動しながらシュート38上を摺動してゆき、それにより微量付着水分が早期に振るい落とされ、残留していた鉄粉等の付着物が除去されて、洗浄効果が一層良くなると共に、機械部品の品質が一層向上する。
【0045】
尚、被洗浄部品Pから振るい落とされた水滴は、簀の子状シュート38を通ってシュート取付台41の底板41aの水抜き孔43及び基台39の天板39aの水抜き孔44から基台39の下方の水滴受皿45に受容される。この振動シューター36の使用は、洗浄した機械部品を直ぐに使用したいような場合に特に有効とされる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る機械部品洗浄装置全体の外観を示す斜視図である。
【図2】同洗浄装置の縦断側面図である。
【図3】同洗浄装置の平面図である。
【図4】フロート型オイルスキマー及び油水分離槽を示す拡大縦断面図である。
【図5】搬送洗浄用コンベヤの終端と製品缶との間に設けられる振動シューターを示す縦断側面図である。
【図6】同振動シューターの平面図である。
【図7】本発明の機械部品洗浄装置によって洗浄された機械部品を示す縦断面図である。
【図8】(a) はパーツホーマーで圧造された直後のオイルが付着した機械部品の斜視図、(b) はその縦断面図である。
【図9】(a) は従来の洗浄装置で洗浄された機械部品を示す斜視図、(b) はその縦断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 プール
CW 洗浄水
WL プール内の洗浄水の水面
2 搬送洗浄用コンベヤ
3 シャワー
4 フロート型オイルスキマー
5 緩衝棚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーツホーマーにより圧造される各種機械部品を洗浄する機械部品洗浄装置であって、防錆剤を含む温水からなる洗浄水を溜めたプールと、始端側がプール内の低位置、終端側がプール内の水面から出る高位置となるように設置され、始端部上に供給された被洗浄部品を終端部まで搬送する間にプール内の洗浄水で被洗浄部品を洗浄する搬送洗浄用コンベヤと、前記コンベヤの終端側上方に設置されていて、前記コンベヤで搬送されて水面から上がってくる被洗浄部品に対しプール内の洗浄水中の汚れた浮遊オイルを避けた清浄な洗浄水を噴射するシャワーと、プール内の水面に浮かべられて、その水面に浮遊するオイルを含む上水をポンプで吸引して排出するフロート型オイルスキマーと、を備えてなる機械部品洗浄装置。
【請求項2】
搬送洗浄用コンベヤの始端側上方に位置するプール内の水面下に、上下両端が開口した角筒体内の対向する両側面から柔らかい板面を持つ下向き傾斜状の棚板を交互に上下複数段状に突設してなる緩衝棚を設け、前記角筒体内にその上方より被洗浄部品を投入して、上段側棚板から下段側棚板へ順次落下させながら前記コンベヤの始端部上に供給するようにした請求項1に記載の機械部品洗浄装置。
【請求項3】
搬送洗浄用コンベヤに起振機を取り付けて、このコンベヤを振動させるようにした請求項1又は2に記載の機械部品洗浄装置。
【請求項4】
フロート型オイルスキマーによってプール内から吸引したオイルを含む上水を油水分離槽に導入し、この分離槽内の清水のみをプールに戻すようにした請求項1〜3の何れかに記載の機械部品洗浄装置。
【請求項5】
搬送洗浄用コンベヤの終端側から搬出されてくる被洗浄部品を始端側で受けて、これに起振機により振動を与えながら、始端側より低位置にある終端側まで下り勾配の簀の子状のシュート上を摺動させて排出する振動シューターを備えてなる請求項1〜4の何れかに記載の機械部品洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−274005(P2009−274005A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127199(P2008−127199)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(508144543)ナタックス・エンジ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】