説明

機械電気変換素子及び機械電気変換装置の製造方法

【課題】 機械電気変換装置の製造時に、素子の物理的強度を補強でき、素子の加工後には容易に短時間で剥離することができる製造方法を提供する。
【解決手段】 基板とメンブレンとからなるエレメントを有する被処理基板に対し、後の裏面加工に耐えうるような流路を設けたハンドリング部材を用意し、前記素子内の少なくとも一部が前記ハンドリング部材により支持されるように、前記ハンドリング部材を前記被処理基板に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械電気変換素子及び機械電気変換装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロマシンニングを用いた機械電気変換素子の研究が盛んに行われている。中でも容量型の機械電気変換素子は、軽量の振動膜を用いて超音波等の弾性波を送信、又は受信するデバイスであり、液中および空中でも広帯域特性が容易に得られるため、従来の医用診断モダリティより高精度な超音波診断が有望な技術と注目されつつある。
【0003】
この容量型の機械電気変換素子は、基板と振動膜である薄膜との間に空隙(以下、キャビティという)が設けられたセルが複数形成されて電気的に接続された素子(エレメント)からなる。そして、この機械電気変換素子となる被処理基板に集積回路を電気的に接合することで機械電気変換装置を制作する。しかし、被処理基板自体が薄いため、製造時のハンドリングや加工により壊れやすいという難点があった。また、この被処理基板は、エレメント毎に信号を検出するため、振動膜が形成された面の裏面の一部を切削、研摩、エッチング等によって除去して凹部を形成するトレンチ加工を行うことがある。このトレンチ加工を行うことで下部電極を素子毎に分離し、素子毎に信号を検出することができる。しかし、被処理基板は基板自体も薄く、トレンチ加工部はさらに薄くなるため、被処理基板のみではさらなる裏面加工を行うことが困難であった。
【0004】
そこで、非特許文献1では、振動膜の保護と被処理基板自体の強度向上のために、石英基板をハンドリング用の部材として用い、被処理基板の振動膜側の面にドライフィルムを介して固定している。その後、固定面の裏面にトレンチ加工と下部電極の作製を行い、集積回路とフリップチップ接合をする。最後にハンドリング用として用いた石英基板を除去しセル表面を露出させることで、機械電気変換装置を製造している。
【0005】
また、特許文献1では、機械電気変換素子とは異なるが、ハンドリング部材に流路を設けて被処理基板を支持し、被処理基板の裏面加工等を行う基板処理方法が開示されている。このハンドリング部材の流路上には金属層を形成することで、ハンドリング部材除去の際、金属を溶解する酸またはアルカリ性の溶解液を流路に供給し、被処理基板からハンドリング部材を分離している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Sensors and Actuators A 138(2007)221−229
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−188967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1では平坦な石英基板をハンドリング部材として用い、被処理基板にドライフィルム(接着剤)を介して固定している。そのため、ハンドリング部材を除去する際に、接着面にアセトンを行き渡らせて分離しようとすると、アセトンが接着面の中心部まで浸透できずハンドリング部材を除去できない場合があった。機械研摩によってハンドリング部材を除去した場合は、緻密な制御が必要な上、時間がかかる。
【0009】
また、特許文献1では、ハンドリング部材に流路を設けているが、素子やトレンチ加工部との関係で流路形状やハンドリング部材の固定方法を考慮していない。そのため、このハンドリング部材を機械電気変換素子となる被処理基板に固定したとしても、被処理基板が破損する可能性がある。
【0010】
そこで本発明では、被処理基板に形成されるトレンチの位置を考慮して流路を有するハンドリング部材を固定することで、ハンドリング時や加工時に被処理基板が破損する確率を低下することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の機械電気変換素子の製造方法は、基板と、該基板との間に空隙が形成されるように設けられた振動膜と、を備えた素子を有する機械電気変換素子の製造方法であって、前記素子の前記振動膜側の面に、溝が形成されたハンドリング部材を固定する固定工程と、前記素子の前記振動膜が形成されている側の面とは反対側の面にトレンチを加工する工程と、前記素子から前記ハンドリング部材を除去する除去工程と、を含み、前記固定工程では、前記ハンドリング部材の前記溝は、前記素子と固定された状態で外部と連通する流路の一部を構成し、前記素子内の少なくとも一部が前記ハンドリング部材により支持されるように、前記ハンドリング部材を前記被処理基板に固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ハンドリング時及び加工時に被処理基板が破損する確率を低下させることができるため、機械電気変換素子の製造歩留まりを向上する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】機械電気変換装置の製造フロー模式図
【図2】機械電気変換装置の基本構造の模式図
【図3】被処理基板の作製フロー模式図
【図4】キャビティ形状の一例(上面図)
【図5】流路を設けたハンドリング部材の例
【図6】流路を設けたハンドリング部材の一例(断面図)
【図7】金属層又は接着層を設けたハンドリング部材の例(断面図)
【図8】トレンチ加工後の状態の一例
【図9】ハンドリング部材除去工程の例
【図10】実施形態1で作製した被処理基板の模式図
【図11】実施形態1で作製したハンドリング部材の模式図
【図12】実施形態1における被処理基板とハンドリング部材の結合方向の投影図
【図13】実施形態2で作製した被処理基板の模式図
【図14】実施形態2で作製したハンドリング部材の模式図
【図15】実施形態2における被処理基板とハンドリング部材の結合方向の投影図
【図16】実施形態3で作製したハンドリング部材の模式図
【図17】ハンドリング部材と被処理基板の投影図1
【図18】ハンドリング部材と被処理基板の投影図2
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。本発明の機械電気変換素子としては、上述の容量型機械電気変換素子に限られず、同様な構造をもつものであれば本発明を適用できる。例えば、歪み、磁場、光による検出方法を用いるものが挙げられる。
【0015】
図2は機械電気変換装置の構造の一例である。図2(A)は、断面模式図であり、図2(B)は、上面模式図である。図2(B)のX−X’線での断面図が図2(A)である。図2(A)では、基板1の上に振動膜であるメンブレン4と、メンブレンを支持するメンブレン支持部2(すなわち振動膜支持部)がある。また、メンブレン4とメンブレン支持部2とによって空隙であるキャビティ3が形成されており、メンブレン4の上に上部電極5が形成されている。キャビティは、基板とメンブレンとの間に形成されていればよく、基板上にメンブレン支持部2の一部となるような絶縁膜が形成されていてもよい。基板とメンブレン支持部とが一体形成されている場合(基板に凹部を形成することによりキャビティの一部を形成している場合)も、メンブレンを支えている部分がメンブレン支持部となる。図2の場合、基板1とメンブレン支持部2とメンブレン4と9つのキャビティ3と上部電極5と下部電極9とで1つのエレメントを構成している。上部電極5は、メンブレン4の上部、裏面、内部のうち、少なくとも一箇所に存在するか、若しくはメンブレン4自体を上部電極として用いても良い。また、キャビティ1つに対するエレメントの構成をセルと表現する。つまり、セルが少なくとも一つ以上集まって電気的に結合された集合体がエレメント6である。図2の場合、エレメント6が二つあることになる。エレメント6の領域は図2(B)の実線で囲まれた領域であって、エレメント6を構成するセルのうち、最外周に存在する各セルの最外壁に囲まれた領域である。7は4つあるエレメントの辺のうちの一辺を表している。また、上部電極5の電位は全てのエレメントで共通であり、上部電極パッド20に繋がっている。基板1と下部電極層9からなる下部電極は、エレメント6毎にトレンチ28で分離されている。各エレメント6の各セルが受信した機械的な振動は、エレメント毎(素子毎)に1つの電気信号に変換され、トレンチ28で分離された基板1と信号を取り出す為の下部電極層9とから成る下部電極から電気接点であるバンプ10を経由して集積回路11に伝わる。上部電極5は、エレメント毎にアレイ状に設けられている。本発明においては、機械電気変換素子と集積回路とで機械電気変換装置を構成する。
【0016】
このようなエレメントを有する被処理基板の作製方法は特に制限されないが、例えば図3に示す方法を用いて作製できる。図3では、一例として1セル1エレメントの作製方法を示す。
【0017】
図3(A)のように、洗浄したシリコン基板12を用意する。次に図3(B)のように、シリコン基板12を熱酸化炉に入れ、熱酸化膜13を形成する。熱酸化膜13はキャビティが形成される部分(メンブレン支持部)となるため、熱酸化膜13の厚さは、10nm乃至4000nmの範囲が好ましく、20nm乃至3000nmの範囲がより好ましく、30nm乃至2000nmの範囲が最も好ましい。次に図3(C)のように、熱酸化膜13をパターニングする。次に図3(D)のように、第2回目の熱酸化工程を行い、薄い熱酸化膜の絶縁膜14を形成する。前記絶縁膜14の厚さは、絶縁を確保するため、1nm乃至500nmの範囲が好ましく、5nm乃至300nmの範囲がより好ましく、10nm乃至200nmの範囲が最も好ましい。以降の工程を簡潔に説明するため、前記図3(D)までの工程で完成した基板を、A基板15と呼ぶ。
【0018】
次に、SOI(Silicon On Insulator)基板26を洗浄、準備する。SOI基板26は、シリコン基板(以下、ハンドリング層18という)と表面シリコン層(以下、デバイス層16という)との間に酸化膜(以下、BOX(Buried Oxide)層17という)を挿入した構造の基板である。このSOI基板のデバイス層16はメンブレンとなる部分である。超音波の送受信を行う機械電気変換素子としては、0.1MHz以上20MHz以下の周波数帯域が望まれ、前記周波数帯域を得ることのできるメンブレンの厚さとしては、ヤング率や密度等の関係から求められる。そのため、デバイス層16の厚さとしては、10nm乃至5000nmが好ましく、20nm乃至3000nmがより好ましく、30nm乃至1000nmの範囲が最も好ましい。
【0019】
このSOI基板を図3(E)のように前記A基板15の上に熱酸化膜13とデバイス層16とが互いに接するように(内側になるように)位置合わせして接合すると、デバイス層16と熱酸化膜13とによりキャビティ3が形成される。前記接合工程の圧力条件は、大気中でも可能だが、キャビティ内に空気が存在すると、空気のクッション効果により、駆動時のメンブレンの変位が制限されてしまう為、真空雰囲気で行うことが好ましい。真空中で接合することにより、初期状態でメンブレンが撓み、駆動時のバイアス電圧が小さくて済む。真空で接合する場合、10Pa以下が好ましく、10Pa以下がより好ましく、1Pa以下が最も好ましい。
【0020】
なお、SOI基板のデバイス層16と熱酸化膜13は熱処理により脱水縮合して接合する。そのため、前記接合工程の温度は室温より高い温度とするが、高過ぎると基板の組成変形が起こる可能性が考えられるため、1200℃以下の範囲が好ましく、80℃乃至1000℃がより好ましく、150℃乃至800℃が最も好ましい。
【0021】
その後、前記接合される基板の全体表面にLPCVD SiN膜を成膜して、SOI基板側のハンドリング層18表面のLPCVD SiN膜のみをドライエッチング等の方法で除去する。次に加熱されたアルカリ性の液でハンドリング層18をウェットエッチングする。アルカリ性のエッチング液は、Si対SiOのエッチング選択比が非常に高いため(約100乃至10000の範囲)、前記ウェットエッチングが前記ハンドリング層18を選択的にエッチング除去して、BOX層17で止まる。その後、フッ酸を含む液を用いて、前記BOX層17をエッチングし、除去することで図3(F)の状態が形成される。ハンドリング層及びBOX層の除去方法としてはウェットエッチングが好ましいが、機械研摩やドライエッチング等の方法を用いても良い。
【0022】
なお、大気圧より低い圧力下で接合する場合、大気圧により前記基板のデバイス層16が基板側に撓むように変形されて、凹型である状態になる。即ち、前記デバイス層16は特に外力を加えない状態で凹型のままであり、機械電気変換素子のメンブレン4となる。
【0023】
次にキャビティの存在しない位置に、メンブレン4を構成するデバイス層16をドライエッチングでパターニングする。このパターニング用のフォトレジストを除去しないで直接酸化膜13をウェットエッチングでパターニングする。前記工程により図3(G)に示すように、エッチング穴19が形成される。穴の形成方法としては上記のようにウェットエッチングによって形成するのが好ましいが、機械研摩やドライエッチング等の方法を用いても良い。
【0024】
次に電極用の金属膜を成膜してパターニングし、不図示の上部電極パッド及び、図3(H)に示す上部電極5、および下部電極パッド8を形成する。このようにして被処理基板21が作製できる。なお、上部電極パッド、下部電極パッドの位置は、所望の位置に設ければよい。また、前記金属膜はAl、Cr、Ti、Au、Pt、Cuなどの金属を使用することができる。
【0025】
超音波の送受信に用いる機械電気変換素子の場合、メンブレン4の撓みが数百nm以下であり、かつセルの寸法(例えば、メンブレン4の直径)が数十乃至数百μmである。このため、前記金属膜のパターニング工程の中にある露光プロセスにおいて、通常の露光装置の焦点深度よりもメンブレンの撓みが小さいことから、光回折などの露光ズレが生じることなく金属膜を設けることができる。
【0026】
図3(H)に示すように、下部電極としてシリコン基板12を利用することができる。シリコン基板12を下部電極としない場合、導電性が高い下部電極を図2(A)の基板1とキャビティ底面の間に、埋め込むことも可能である。また、メンブレンが絶縁材料の場合や、キャビティ底面に絶縁膜が形成されている場合は、キャビティ底面の上に下部電極を設けることも可能である。
【0027】
メンブレン4にもう一層の絶縁膜、例えば、SiN、SiO、SiNO、Y、HfO、HfAlOなどの誘電材料のうち少なくとも一種からなる絶縁膜を設けて、さらにこの絶縁膜の上に上部電極を設置することも可能である。また、本実施形態ではメンブレン4はシリコンを用いたが、メンブレン4は絶縁材料でもよく、その場合、SiN膜のような高誘電率材料、絶縁膜6を設置しなくてもいい。この場合、メンブレン4の上に上部電極を設けるとよい。
さらに、本実施形態では上述の工程にて被処理基板を作製したが、Surface Micromachining法(金属層等の犠牲層を除去し、キャビティを形成する方法)等のMEMS技術を利用することによって、被処理基板を作製することも可能である。
【0028】
なお、図3(H)に示す断面図は、機械電気変換素子の一例であるが、図面を簡略化するため、電気配線の保護膜、もしくは上部電極5と上部電極パッド20との電気配線などは図示していない。
【0029】
図1は、流路を設けたハンドリング部材を被処理基板に固定して、機械電気変換装置を製造する方法の一例を示している。図1は簡略化する為、機械電気変換素子の一部を拡大して模式化した図である。
【0030】
図1(A)に示すように、図3の被処理基板作製工程で作製した被処理基板21を用意する。ここで、被処理基板の有する面(すなわちエレメントの有する面)のうち、キャビティを基準としてメンブレン側(振動膜側)の面を「第一の面」とし、前記第一の面とは反対側の面を「第二の面」とする。図中では101が第一の面であり、102が第二の面である。
【0031】
一方図1(B)で、ハンドリング部材作製工程にてハンドリング部材22を用意する。図1(B)のハンドリング部材22は、流路23及び金属層24と接着層25が設けてある。ここで、ハンドリング部材が有する面のうち、被処理基板に固定する側の面を「第三の面」とし、第三の面とは反対側の面を「第四の面」とする。また、ハンドリング部材は、第三の面に、被処理基板と固定された状態で流路となるような溝が形成されている。図中では、103が第三の面であり、104が第四の面である。以降の説明において、第三の面の凹凸を表現する場合は、流路に相当する部分を「流路凹部」と称し、流路凹部と凹部の間に存在する部分を、「流路凸部」と称する。ただし、「流路」としか記載されていない場合は通常の意味どおり、溝もしくは溝を形成することにより設けられた液体の供給路を意味する。また、第三の面から第四の面へ孔が設けられている場合も、孔の部分が流路凹部に相当し、孔以外の第三の面が流路凸部に相当する。これらの流路は、第三の面以外の面(第四の面もしくはそれ以外の面)から、少なくとも一つ以上外部へ連通している。
【0032】
図1(C)の27は流路凹部の幅を示し、43は流路凸部の幅を示している。図1(C)は、被処理基板21にハンドリング部材22を固定する固定工程である。この固定工程で、被処理基板に形成されているエレメントとの関係でハンドリング部材の固定する方向を考慮しないと、溝の大きさ、形状、位置によっては被処理基板が破損する可能性がある。後で詳細に説明するが、本発明では、被処理基板の破損を低下するため、エレメント内の少なくとも一部がハンドリング部材により支持されるように、ハンドリング部材を被処理基板に固定する。
【0033】
図1(D)、(E)は、第二の面を加工する工程(以下、裏面加工工程という)である。
図1(D)では、シリコン基板12を所望の厚さまで切削し、切削後の第二の面の表面にシグナルを取り出す為の下部電極層9を形成する。その後、エレメント6毎に下部電極を分離するためのトレンチ28を形成するトレンチ加工を行う。
図1(E)は、フリップチップ接合を行う工程(裏面加工工程の中の一工程)である。集積回路11上にバンプ10を形成し、そこへトレンチ加工済みの被処理基板である機械電気変換素子を接合する。
【0034】
図1(F)は、フリップチップ接合後に、被処理基板からハンドリング部材を除去する除去工程である。ここでは、金属層24が形成されているため金属層24を溶解するような酸性またはアルカリ性の溶解液を、流路23内部へ供給することでハンドリング部材22を除去できる。流路への溶解液の供給方法としては、流路23のみへ溶解液を供給しても良いし、上部電極5から集積回路11までの部分を保護ケース29で保護し、ハンドリング部材22が固定されている状態で溶解液中へ浸漬させても良い。保護ケース29と裏面加工済みの被処理基板側との接触部は、実際には図1(F)とは異なり、エレメントから十分離れた箇所で接触させている。
【0035】
以上の工程を経て、図1(G)の様な機械電気変換装置が完成する。
【0036】
次に、図4を用いて、本発明が適用できる機械電気変換素子のキャビティ及びエレメントについて詳細に説明する。
図4(A)乃至(C)は、機械電気変換素子が有するキャビティの第一の面における形状の一例を示した模式図(上面図)である。図4(A)乃至(C)においては、メンブレンや上部電極などは省略している。
【0037】
図4(A)は、四角形のキャビティ3を有するセルが、3行3列のアレイ状に配置されている。この9つのセルで一つのエレメント6を構成している。そしてエレメント6の2行2列配置により、一つの機械電気変換素子を構成している。キャビティ3やエレメント6は、所望の大きさ及び配置で形成されれば良い。第一の面におけるキャビティ3の形状は、図4(A)の様に四角形でも良いし、図4(C)の様に、六角形でも円形でも良く、所望の形状で設けられていれば良い。また、キャビティ3(セル)の大きさや、エレメント6を構成するキャビティ3(セル)の数は、所望の数設けられていればよい。図4(B)の様にエレメント6の大きさや配置も所望の物を設けられていればよい。図4(C)の様に一つの機械電気変換素子内に、形状や大きさが異なるキャビティ(セル)が設けられていてもよい。さらにキャビティ(セル)の配置は、マトリクス状に配置されていても良いし、千鳥状、放射状、円形状等の様に配置されていても良く、どのような配置の被処理基板でも用いることができる。
【0038】
次に、流路を設けたハンドリング部材及びハンドリング部材の固定方法について詳細について説明する。
【0039】
本発明では、被処理基板の破損を低下するため、エレメント内の少なくとも一部がハンドリング部材により支持されるように、ハンドリング部材を被処理基板に固定する。このように固定することにより、エレメントにかかる負荷を軽減することが出来る。また、被処理基板は、裏面加工工程においてトレンチを形成するため、残ったトレンチの加工部は厚さ1μm以下となる。そのような機械的強度の弱い被処理基板にフリップチップ接合により集積回路を接合する。そのため、薄いトレンチ加工部にかかる負荷を軽減する必要がある。つまり、ハンドリング部材は、トレンチの加工部を均一に支持することが好ましい。よって、トレンチの加工部がハンドリング部材により支持されていない部分の長さが、エレメントの最大辺の長さより小さくなるように、ハンドリング部材を被処理基板に固定することが好ましい。言い換えると、流路凹部と対応するトレンチの加工部の長さがエレメントの最大辺の長さより小さくなるようにハンドリング部材を被処理基板に固定する。ここで「トレンチの加工部」とは、図1(D)の31であり、トレンチ形成によって下部電極(基板及び下部電極層)が除去された位置に存在する被処理基板の残りの部分を示す。つまり、下部電極が存在しない部分のメンブレン支持部及びメンブレンを示す。また「トレンチの加工部がハンドリング部材により支持されていない部分の長さ」とは、ハンドリング部材を被処理基板に固定した状態で第一の面から見た投影図を考えた際に、流路凹部と重なって存在するトレンチ加工部の連続した長さをいう。具体的には、図18中の50で示す部分である。つまり、50がエレメントの辺の中で最大となる辺の長さより小さくなることを示す。具体的に、図18(A)では、直線状の流路を有するハンドリング部材を、被処理基板が有する長方形のエレメントの長辺に対して45°の角度を設けて固定している。図18(B)は図18(A)の一部を拡大した模式図である。流路凹部27と重なって存在するトレンチ加工部の長さ50がエレメントの最大辺よりも小さいことがわかる。このような構造にすることにより、流路凸部によって支持されていないトレンチの加工部の長さが長くなり過ぎず、ハンドリング時及び裏面加工時に、薄くなったトレンチの加工部分から被処理基板が破損する確率を低減することができる。
【0040】
より好ましくは、トレンチの加工部がハンドリング部材により支持されていない部分の長さが、エレメントの最小辺の長さより小さくなるようにするとよい。流路凸部によって支持されていないトレンチの加工部の長さがエレメントの最小の辺より小さくすることで、トレンチの加工部をより密に支持することができる。
【0041】
さらには、トレンチの加工部は全てハンドリング部材によって支持されるようにすると、トレンチの加工部を全領域支持することができるため好ましい。具体的に、図17は直線及び孔状の流路を有するハンドリング部材の流路凸部を、全てのトレンチの加工部に向かい合うように固定した模式図である。本発明において流路が孔のみからなり、孔と孔が繋がっていない場合も、第三の面における孔の広がりを流路とみなす。図17(B)は図17(A)の一部を拡大した模式図である。図17(A)の被処理基板内には、正方形のエレメントが25個形成されている。この被処理基板の上に、直線状の流路及び貫通孔41を有するハンドリング部材が固定されている。図17(B)において、斜線部分は被処理基板と固定されている流路凸部の箇所を示し、投影図では、トレンチの加工部は全て流路凸部の領域と重なって存在することが示されている。
【0042】
また、エレメント毎に、溝のエッジが、少なくとも2つ以上のエレメントの辺と交差するようにすることも好ましい。溝のエッジとは、流路凸部の角部であり、第三の面において流路凸部と流路凹部との境を示す線である。また、エレメント毎に溝のエッジが少なくとも2つ以上のエレメントの辺と交差するとは、1つのエレメント単位で連続した一本の溝のエッジが2つ以上のエレメントの辺と交差することを示す。図18中の51で示す。具体的に、図18(B)では、エレメント1つに対して連続した溝のエッジ(流路凸部)がエレメントの2つ以上の辺と交差している。流路凸部を隣接するエレメントに跨って設けることで、エレメント部分をより強固に支持することができる。
また、被処理基板の機械的強度を向上させるためには、エレメントに対して流路凸部がなるべく多く接合される構成とすることも好ましい。特にエレメントは全てハンドリング部材により支持されていると機械強度が向上する。
【0043】
流路の大きさは、流路内に溶解液が浸透できる大きさであれば良いが、エレメントの大きさを考慮した大きさである事が好ましい。具体的には流路凹部の幅27は2000μm以下である事が好ましい。さらに、流路のピッチ(1つの流路凹部と隣り合う1つの流路凸部の幅)が、被処理基板が有するエレメントの最大辺よりも小さい事が好ましい。このようなハンドリング部材を用いることで、バランスよく被処理基板の強度を補強して、破損をより低減する事ができる。また、流路となる溝はダイシング加工やレーザー加工により形成するため、流路深さ(すなわち溝の深さ)は10μm以上であることが好ましい。ここで、流路凹部及び流路凸部の幅とは、第三の面における流路凹部及び流路凸部の幅をいい、流路深さとは、形成される流路のうち、最も深い部分までの深さを指す。
【0044】
具体的な流路形状について図5を用いて説明する。図中の51が流路のエッジを示す。図5(a)や図5(b)のような周期的な流路の場合、被処理基板全体を均一に保持しやすいため好ましい。またこのような流路形状の場合、後のハンドリング部材の除去工程において、毛細管現象による溶解液の浸透が起こりやすいという利点がある。さらに、図5(c)の様な放射状の流路の基点(中心点)に孔を設けたハンドリング部材を用いた場合、当該孔から溶解液を供給し、ハンドリング部材と被処理基板を、基点を軸に回転させる。そうすることにより遠心力により溶解液の供給を効率化させ、ハンドリング部材の剥離を迅速にすることが出来て好ましい。図5(d)のような曲線状の流路形状の場合、被処理基板内のエレメントの配置が曲線状である場合に用いると、被処理基板全体を均一に保持しやすいため好ましい。また曲線状の場合、1つの流路凸部が接するエレメントの面積を直線よりも増やすことが出来て好ましい。さらに流路が、渦巻の始点に孔を有した渦巻き状である場合には、渦巻の始点から溶解液を供給し、終点から溶解液を回収することが出来る為、用いる溶解液に無駄が無くて好ましい。各形状と孔を組み合わせることで、ハンドリング部材を除去する工程において、溶解液がより浸透しやすくなる。また溶解液の置換を促進することが出来る為、被処理基板とハンドリング部材の除去がより迅速になされて好ましい。
【0045】
図6には、流路を設けたハンドリング部材の断面図(第三の面とは垂直な方向の断面図)の一例を示している。流路に孔を設けるなど、複数の形状の流路を組み合わせても良い。また、第三の面とは垂直な方向の流路の断面形状としては、半円形や四角形、三角形など様々な形状が考えられる。用いる基材の特性及び流路を設ける手法に応じ、適宜選択してもよい。
【0046】
ハンドリング部材22の基材としては次の材料が挙げられる。合成石英やパイレックス(登録商標)などの各種ガラス基板、シリコンウェハなどの半導体基板、プラスチック基板や金属基板など、ある程度の剛性を持つものであれば用いることができる。中でも、基板の平坦度や加工の容易さを考慮すると、石英基板やシリコンウェハ、感光性ガラス基板などが好ましい。
【0047】
流路を設ける手法としては、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチング加工やレーザー加工、機械加工、サンドブラスト加工などで形成することができる。加工後の流路表面に突起や汚れが存在する場合には、研磨や洗浄を行うのが好ましい。
【0048】
図7(a)は、流路を設けたハンドリング部材の流路凹凸部に、金属層24を1層設けた図である。この金属層24を設けた上に接着層を用意し、接着層を介して固定することにより、迅速に被処理基板からハンドリング部材を除去することが容易となる。金属層24としては、酸性又はアルカリ性の溶解液に溶解できる金属であれば特に限定されないが、アルミニウム、ゲルマニウム、チタン、インジウムが適用できる。特にアルミニウムやゲルマニウムは、第三の面側に、スパッタ法などの真空成膜手段で容易に形成することができるため好ましい。また、金属層は薄いほうが除去しやすいため、金属層24の厚さは10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。さらに1乃至2μmの範囲が最も好ましい。図7(a)の様に、第三の面側全体に金属層24を設けても良いし、第三の面の一部に金属層24を設けても良い。また金属層24を複数設けても良い。ただし、エレメント内に上部電極を形成している場合、上部電極に用いている金属よりエッチングレートの高い金属を用いることが好ましい。
【0049】
図7(b)は、金属層24を設けずに、第三の面側の一部(流路凸部)に設けた図である。この固定方法も、接着層25が被処理基板の一部としか接触しない為、接着層25の除去にかかる時間を短縮する事ができ、好適である。この場合には、接着層25を溶解できる有機溶媒等の溶解液を用いて、ハンドリング部材を除去すると良い。接着層25は、図7の金属層24のように第三の面側全体に設けても良いし、図1(A)の第一の面に設けても良い。
【0050】
接着層25としては、被処理基板とハンドリング部材とが固定され、後の被処理基板の加工時に被処理基板を支持できる程度の接着力を持つものであれば限定されない。しかし後の被処理基板の裏面加工工程において、加熱や加圧処理が行われることから、レジストやポリイミド、耐熱性のワックス、耐熱性の両面テープ等が好適である。このような両面テープを流路凸部のみに接触するように、流路を横断して貼り付けても良い。接着層25は薄いほうが除去しやすいため、接着層の厚さは、30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましい。ただし、薄くて且つ接着力を確保するためには、1乃至20μmの範囲が最も好ましい。
さらに図1(B)のように、第三の面側に、金属層24を設け、その上に接着層25を設けても良い。接着層25は流路全面に設けてもよいが、金属層を設けた場合には流路凸部のみに設けるほうが、金属層を除去しやすいため好ましい。
【0051】
一方、ハンドリング部材の流路表面に、親水化処理を施しても良い。親水化処理は、UV洗浄、洗剤洗浄、アルコール洗浄、プラズマ照射、HF処理、コーティング処理などを施すことで実現できる。親水化処理を施すことで、ハンドリング部材除去時の流路内への溶解液の供給が容易となる。親水化処理は、流路表面に直接施しても良いし、流路表面に金属層を設けた場合には、金属層の上に施しても良い。
【0052】
上記の様なハンドリング部材の大きさは、被処理基板よりも大きいことが好ましい。被処理基板よりハンドリング部材を大きくすることにより、被処理基板のハンドリング及び加工時に、被処理基板に治具や道具が接触する可能性を低下することができる。例えば、被処置基板の大きさが4inchである場合には、ハンドリング部材の大きさは4inch+2cm程度の大きさであるとより好ましい。また厚さは、ハンドリング時にハンドリング部材が破損しない程度の厚さであれば特に限定はされないが、通常200μm以上あることが好ましく、500μm乃至3000μmの範囲がより好ましい。
【0053】
図8はトレンチ28加工後の模式図であり、図1(D)と同じ図である。トレンチ28加工時にはまず第二の面側から、シリコン基板12を厚さが120乃至180μm程度の厚さになるまで、切削と研磨を行う。次にトレンチ28を、エレメント6毎に分離するように設ける。トレンチ28は、エッチング技術を利用することで作製することができ、キャビティ底部に達する深さまで加工を行う。エレメント間の間隔が大きいと、その間隔の部分(トレンチ加工部)は信号が検出できないため、トレンチの幅は小さいほうが好ましい。具体的には、トレンチ28の幅は、20μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。さらに2μm以下が最も好ましい。最後にシグナルを取り出す為の下部電極層9を設ける。シグナルを取り出す為の下部電極層9は、加工済みの凸部にチタン/銅/銀の順番で、200Å/500Å/1000nm程度で蒸着して形成する。このような加工において、トレンチの深さは振動部の絶縁層まで達するため、トレンチ加工部31の厚さはと振動部32の厚さとはほぼ等しく、1μm以下であることが多い。
【0054】
図8のトレンチ28加工後には、図1(E)のように被処理基板21を集積回路11へフリップチップ接合させる。バンプ10は、集積回路11と下部電極を強固に結合できるような物であれば特に限定されない。一般的には、亜鉛、金、銀、銅、錫、鉛の様な各種金属またはこれらの組み合わせの各種バンプが用いられる。また、フリップチップ接合でなくても、集積回路と被処理基板を電気的に接続する方法であれば良い。
【0055】
図9(a)は、被処理基板21からハンドリング部材22を除去する際の模式図である。ハンドリング部材22を除去する為には、集積回路11や被処理基板21が破損しないように、溶解液をハンドリング部材22の流路23へ供給し、金属層24や接着層25を溶解することが好ましい。図9(a)では、フリップチップ接合後、メンブレン4より下側の部分(ハンドリング部材以外の部分)を保護ケース29で覆い、ハンドリング部材22の端を容器33の外に出すようにして、溶解液の満たされた容器33へセットしている。保護ケース29は、除去方法や用いる溶解液に応じて使用するか否かを決めればよい。また、フリップチップ接合の際に、アンダーフィル(樹脂接着剤)を用いることで、保護ケース29を使用せず、ハンドリング部材22の除去することも可能である。
【0056】
溶解液はハンドリング部材の流路23内に、毛細管現象や自然拡散によって導かれる。溶解液をより迅速に流路内へ導く為に、容器33に外部から刺激を加えても良い。容器33に温度変化を与えて溶解液に対流を生じさせたり、マグネットスターラーや揺動装置により溶解液を攪拌しても良い。また容器33に超音波などの振動を与えても良い。さらに、容器33内に入り口と出口を設け、溶解液を入れ替えることも効果的である。
【0057】
さらに効果的にハンドリング部材を除去する為には、流路23内の溶解液の流れを制御することも望ましい。直接流路入り口へ溶解液を供給することで、より迅速に接着層25や金属層24を溶解することができる。しかし流路内部の被処理基板21が有するメンブレン4が破損しない程度の流速(流圧)であることが好ましい。図9(a)のような構成だと、ある程度金属層24や接着層25の溶解が進んだ所で、被処理基板21が自重によって容器33の底部に移動していく。これによりハンドリング部材22を除去することができる。
【0058】
図9(b)は、ハンドリング部材側に溶解液が満たされる容器34を設け、この容器を保護液が満たされた容器36の上に設置し溶解液を供給することで、被処理基板21の自重によりハンドリング部材22を除去する工程の模式図である。
【0059】
容器34が機械電気変換素子に接続する接続箇所35は、被処理基板21とハンドリング部材22の隙間を覆うような箇所で接続することが好ましい(隙間をシールするように接合する)。被処理基板21は保護ケース29で集積回路11部分が保護されている。これを、被処理基板21側に保護液を満たした容器36の上に、容器34の接続箇所35が接するようにセットする。この状態で、容器34に溶解液を満たし循環させていくと、ある程度金属層24や接着層25の溶解が進んだ所で、被処理基板21が自重によって保護液を満たした容器36内に沈んでいく。これによりハンドリング部材22を除去することができる。保護液は、被処理基板21に腐食等の影響を与えない液体であれば特に制限は無い。例えば水でも良いし溶解液でも良い。保護液の密度が被処理基板21よりも大きい場合には被処理基板は沈むことなく分離することができる。第三の面上に、金属層24と接着層25を有する場合には、保護液を接着層25が溶解できる溶液とすることで、迅速にハンドリング部材22の除去を実現することができる。
【0060】
被処理基板21にハンドリング部材22が複数層(金属層24と接着層25)介して固定されている場合には、まず金属層24を溶解できる溶液を容器33や容器34に供給してハンドリング部材22を除去する。次に接着層25を溶解できる溶液を各容器に供給することで、被処理基板21のメンブレン4を露出することができる。
金属層24の溶解液としては、酸性やアルカリ性の溶液が利用でき、接着層25の溶解液としては各種有機溶媒などが利用できる。使用する金属層24や接着層25に応じた溶解液を用いれば良い。上記方法によって被処理基板21から除去したハンドリング部材22は、研磨すること無く被処理基板21から分離することができるので再度利用することができる。
【0061】
《実施形態1》
本実施形態では、流路上に接着層を設けたハンドリング部材を用いた場合の機械電気変換素子の製造方法について示す。被処理基板とハンドリング部材の物理パラメーターは、以下の通りである。
【0062】
(被処理基板の設定)
被処理基板の基材・・・・・・・・p−Type{100}シリコンウェハ
被処理基板の大きさ・・・・・・・4インチ(10.16cm)
キャビティの形状・大きさ・・・・1辺20μmの正方形
エレメントの形状・幅・・・・・・長方形・縦幅0.505mm、横幅6.005mm
1エレメント内のキャビティ数・・4800個(20行、240列)
メンブレン支持部の幅(キャビティとキャビティの間隔)・・・・・・・・・・5μm
エレメント間の距離・・・・・・・縦間隔5μm、横間隔5μm
トレンチ幅・・・・・・・・・・・5μm
1つの被処理基板内のエレメント数・・・・・1240個(124行、10列)
(ハンドリング部材の設定)
ハンドリング部材の基材・・・・・・合成石英基板
ハンドリング部材の大きさ・・・・直径12cm、厚さ1mm
流路凹部の幅・・・・・200μm
流路凸部の幅・・・・・200μm
流路深さ・・・・・・200μm
流路の本数・・・・・・・300本
流路の形状・・・・・・波状
(接着層の設定)
流路凹凸部へ接着層を形成
接着層の種類・・・・・・・ポジレジスト
レジスト厚さ・・・・・・20μm
【0063】
(1)被処理基板作製工程
(1−1)シリコン基板の用意
図3(A)と同様に、シリコン基板12を洗浄、準備をする。その後、拡散(Diffusion)法、もしくはイオン注入(Ion Implantation)法でSi基板表面を低抵抗化する。
(1−2)メンブレン支持部の作製
図3(B)乃至(D)と同様に、メンブレン支持部を作製し、A基板15を得る。
(1−3)キャビティの作製
図3(E)と同様に、SOIウェハを用意し、(2)で作製したメンブレン支持部表面と接合する。また、EVG社製EVG520等を用いて接合面の表面を室温で活性化し、150℃以下、10−3Paで接合する。次に、接合されたSOI基板のハンドリング層18を数十μmの厚さが残るように研磨し、洗浄する。その後、片面エッチング治具を用いて、前記研磨された基板の裏面を保護しながら、80℃のKOH液でハンドリング層18をエッチングする。その後、フッ酸を含む液でBOX層17をエッチングし、図3(F)に示すようにデバイス層16を露出させる。このデバイス層16を、本実施形態のメンブレン4とする。
(1−4)電極の作製
図3(G)と同様に、メンブレン4の周縁外の付近に、メンブレン4を構成するデバイス層16をドライエッチングでパターニングする。その後、このパターニング用のフォトレジストを除去しないで、直接酸化膜13をウェットエッチングでパターニングする。前記工程により図3(G)に示すように、エッチング穴19が形成される。次に電極用のCrをスパッタリングで成膜して、ウェットエッチングでパターニングし、図3(H)に示すような上部電極5、上部電極パッド20、および下部電極パッド8を形成する。最後に、本実施形態における複数のセルを電気分離するため、デバイス層16をパターニングして、被処理基板を完成する。なお、その上に電気配線の保護膜もしくは上部電極5と上部電極パッド20との電気配線などは図面に表示していない。
実施形態1で作製される被処理基板の模式図を図10(A)から(C)に示す。図10(A)はシリコン基板12上のエレメント形成部37を示した図であり、図10(B)は図10(A)の一部の拡大図である。図10(B)はエレメント6が複数個シリコン基板上に形成されているのを示している。図10(C)は1つのエレメントを拡大した図である。また、図10(C)では、上部電極5や上部電極パッド20、下部電極パッド8などは省略している。
【0064】
(2)ハンドリング部材の作製工程
(2−1)流路を設けたハンドリング部材の作製
まず、洗浄済みの合成石英基板を用意する。合成石英基板の大きさは、直径12cm、厚さ1mmである。洗浄は、中性洗剤及び純水で超音波洗浄を行い、アルカリ溶液に短時間浸した後に純水及び超純水で超音波洗浄及び流水洗浄を行う。次に、洗浄済みの合成石英基板の片面に、幅200μm、深さ200μm、の波状の流路を、流路間隔が200μmとなるように、CO2レーザー加工により作製する。レーザー加工では、レーザーの焦点を第三の面の表面から少しずつ第四の面の方向にずらしていくことで、垂直に近い流路壁を形成する。また、レーザー加工を真空中で行うことで、加工中に融解した石英が流路表面へ固着しないようにする。再度加工済みのハンドリング部材を洗浄することで、波状の流路が300本設けられたハンドリング部材が得られる。図11(A)は、実施形態1で作製したハンドリング部材の外観模式図である。図11(B)は図11(A)の一部を拡大した模式図である。
(2−2)接着層の形成
(2−1)で作製される流路を設けたハンドリング部材の流路凹凸部に、ポジレジストをスプレー法で塗布し、厚さ20μmの接着層を形成する。
【0065】
(3)固定工程
(3−1)ハンドリング部材の配置
(1)で作製した被処理基板の第一の面に、(2)で作製したハンドリング部材の第三の面を向かい合わせる。この時、被処理基板に対してハンドリング部材を45度回転させて配置する。図12(A)に、実施形態1における被処理基板にハンドリング部材を固定する際の投影図を示す。図12(B)は、図12(A)の一部分の拡大図である。図12(C)は被処理基板に対してハンドリング部材を回転させずに配置した場合(図12(A)で被処理基板のオリフラ42とハンドリング部材のオリフラ40を一致させた場合)の拡大図である。図12(B)(C)ともに、エレメント内の少なくとも一部がハンドリング部材によって支持されている。よってどちらの場合もエレメントにかかる負荷を軽減することが出来る。また、図12(B)のように、角度を設けて配置すると、流路凹部と対応するトレンチ加工部の長さ50がエレメントの最大辺39の長さより小さくなり、ハンドリング部材の流路凸部がトレンチを跨がるように配置できる。よって、薄いトレンチ加工部にかかる負荷を軽減することができる。またこの場合、エレメント毎に、溝のエッジが、少なくとも2つ以上のエレメントの辺と交差するため、各エレメントは必ず流路凸部によって支持される部分があることになる。
(3−2)被処理基板とハンドリング部材の固定
被処理基板にハンドリング部材が配置された状態のまま、115℃程度に加熱したオーブン中で30分間程度ベークすることで、被処理基板21にハンドリング部材22を固定する。
【0066】
(4)集積回路の準備
(4−1)集積回路上へのフリップチップパッドの形成
集積回路11を用意し、フリップチップパッドとして5μmのNi/Al層をはんだバンプで形成する。次に直径80μmのSn/Pb共晶はんだ球を、フリップチップパッド上に形成する。
【0067】
(5)被処理基板の裏面加工工程
(5−1)バックグラインド工程
(3)でハンドリング部材22が固定される被処理基板の第二の面のシリコン基板を、厚さが150μm程度残るまで研磨を行う。
(5−2)トレンチ加工
キャビティ側の熱酸化膜の層までドライエッチングを行い、各エレメントを分離するようにトレンチを作製する。作製したトレンチの幅は5μmである。
(5−3)下部電極となる下部電極層の形成
第二の面の凸部にシグナルを取り出す下部電極層9を設ける為、Tiを200Å、Cuを500Å、Auを2000Å、成膜する。
(5−4)フリップチップ接合
(4)で用意される集積回路の共晶はんだ球の位置と、シグナル電極層の位置合わせを行った後に、150℃、4g/bump位の力で両者を接合する。
【0068】
(6)ハンドリング部材除去工程
(6−1)集積回路側の保護
(5)で集積回路が接合される被処理基板のハンドリング部材以外の部分を保護ケースで覆う。保護ケースは、エレメントと接触しないよう配置する。
(6−2)溶解液への浸漬
図9(a)のような、アセトン溶液を満たした容器33を用意し、(6−1)にて保護ケースで覆った被処理基板を容器33にセットする。容器33は、循環ポンプと接続されており、内部のアセトン溶液はポンプによって循環させる。ある程度時間が経過した所で、循環させているアセトン溶液の量を減少させて、接着層の溶解具合を確認する。数回目の確認で、容器33内のアセトン溶液の界面の減少と共に保護ケースに覆われた被処理基板が移動していき、ハンドリング部材から分離される。
【0069】
(7)機械電気変換装置の完成
(7−1)洗浄と保護ケースの除去
保護ケースで覆われたまま被処理基板を洗浄し、保護ケースを取り外すことで機械電気変換装置が完成する。
【0070】
上記の様な作製方法により、エレメントにかかる負荷を軽減することが出来る。また、図12(A)のように配置することにより、流路凸部によって支持されないトレンチの加工部の長さがエレメントの最大辺の長さより小さくなるので、トレンチの加工部の機械的強度が向上し、被処理基板が破損する確率をさらに低減することができる。
【0071】
《実施形態2》
本実施形態では、流路(波状流路+孔)及び金属層(Ge)を設けたハンドリング部材を用いた機械電気変換装置の製造方法について示す。被処理基板とハンドリング部材の物理パラメーターは、以下の通りである。
【0072】
(被処理基板の設定)
被処理基板の基材・・・・・・・・・p−Type(100)シリコンウェハ
被処理基板の大きさ・・・・・・・・4インチ(10.16cm)
キャビティの形状・大きさ・・・・・1辺125μmの正六角形
エレメントの形状・大きさ・・・・・・多角形・縦幅約6mm、横幅約6mm(図13参照)
1エレメント内のキャビティ数・・・780個(図13参照)
メンブレン支持部の幅(キャビティとキャビティの間隔)・・・・・・・・・・5μm
エレメント間の距離・・・・・・・・縦間隔5μm、横間隔5μm
1つの被処理基板内のエレメント数・・・・・・・・100個(10行、10列)
(ハンドリング部材の設定)
ハンドリング部材の基材・・・・・・合成石英基板
ハンドリング部材の大きさ・・・・・直径12cm、厚さ2mm
流路凹部の幅・・・・・1mm
流路凸部の幅・・・・・0.5mm
流路深さ・・・・・・0.4mm
流路の形状・・・・・・波状
流路の本数・・・・・・・80本
流路孔の大きさ・・・・・・直径1mm
流路孔のピッチ・・・・・・5mm(各流路端から各流路に沿って)
(接着層の設定)
第一の面へ接着層を形成
接着層の種類・・・・・・・ポジレジスト
接着層の厚さ・・・・・・20μm
(金属層の設定)
流路凹凸部全体へ形成
金属層の種類・・・・・・・Ge
金属層の厚さ・・・・・・・・2μm
【0073】
(1)被処理基板の作製
実施形態1の(1−1)乃至(14)と同様に、被処理基板を用意した。なお、実施形態2で作製できる被処理基板の模式図を図13に示す。図13(B)は、図13(A)の一部を拡大した図であり、エレメント6が複数個シリコン基板上に形成されているのを示している。図13(C)は、1つのエレメントの形状の模式図であり、図13(D)にセルの具体的な様子を示している。図13(D)のセル数は省略してあるが、実際は千鳥状に780個セルを作製した。そのときの1エレメントの大きさは、エレメント縦幅が6mm、エレメント横幅が6mmであるため、エレメントの最大辺39もエレメントの最小辺38も同じ長さである。また、図13(D)では、上部電極5や上部電極パッド20、下部電極パッド8などは省略しているまた、作製した第一の面をレーザー干渉計で観察した所、実施形態1と同様に大気圧によって第二の面側へ撓んでいることが確認できた。
【0074】
(2)流路上に金属層を設けたハンドリング部材の作製と、第一の面への接着層の形成
(2−1)ハンドリング部材作製工程
まず、直径12cm、厚さ2mmの洗浄済みの合成石英基板を用意する。洗浄は、中性洗剤及び純水で超音波洗浄を行い、アルカリ溶液に短時間浸した後に純水及び超純水で超音波洗浄及び流水洗浄を行う。次に、洗浄済みの合成石英基板の片面に、幅1mm、深さ0.4mm、の波状の流路を、流路間隔が1.5mmとなるように、COレーザー加工により作製する。波状の流路を加工後、COレーザーにより、流路凹部へ貫通孔を形成する。直径1mmの貫通孔を流路凹部の端から5mm間隔で形成する。レーザー加工では、レーザーの焦点を第三の面から少しずつ第四の面の方向にずらしていくことで、垂直に近い流路壁を形成する。また、レーザー加工を真空中で行うことで、加工中に融解した石英が流路表面へ固着しないようにする。次に、再度加工済みのハンドリング部材を洗浄し、貫通孔を有する直線の流路が80本設けられたハンドリング部材が得られる。図14(A)は、実施形態2で作製したハンドリング部材の外観模式図である。図14(B)は、図14(A)の一部を拡大した模式図である。
(2−2)金属層の形成
(2−1)で作製されるハンドリング部材の流路凹凸部及び貫通孔壁面に、厚さ2μmのGeをスパッタ法で成膜する。
(2−3)接着層の形成
(1)で作製される被処理基板21のメンブレン側に、ポジレジストをスプレー法で塗布し、厚さ20μmの接着層25を形成する。
【0075】
(3)ハンドリング部材の固定工程
(3−1)被処理基板とハンドリング部材の配置
(1)で作製される被処理基板の第一の面に、(2)で作製されるハンドリング部材の第三の面を向かい合わせる。ここでも、実施形態1同様に、被処理基板のオリフラとハンドリング部材のオリフラとの間に角度を設けて、ハンドリング部材を配置する。(図15参照)このような配置をとることにより、エレメント内の少なくとも一部がハンドリング部材により支持されるだけでなく、流路凹部と対応するトレンチ加工部の長さがエレメントの最大辺の長さより小さくなる構造となる。つまり、ハンドリング部材によって支持されないトレンチ加工部の長さはエレメントの最大辺の長さより小さくなり、ハンドリング部材の流路凸部は、トレンチを跨がるように配置される。またこの場合も、エレメント毎に、溝のエッジが、少なくとも2つ以上のエレメントの辺と交差するため、各エレメントは必ず流路凸部によって支持される部分があることになる。
(3−2)ハンドリング部材の固定
被処理基板とハンドリング部材をあわせた状態のまま、115℃程度に加熱したオーブン中で30分間程度ベークし、被処理基板にハンドリング部材を固定する。
【0076】
(4)集積回路の準備
実施形態1の(4)と同様に、集積回路を用意する。
【0077】
(5)被処理基板の裏面加工工程
実施形態1の(5)と同様に、被処理基板の裏面加工を行う。
【0078】
(6)ハンドリング部材の除去工程
(6−1)集積回路側の保護
実施形態1の(6)と同様に、集積回路が結合した被処理基板のハンドリング部材以外の部分を保護ケース29で覆う。
(6−2)金属層の溶解液への浸漬
図9(a)のような容器33を用意し、(6−1)にて保護ケースで覆った被処理基板を容器33にセットする。容器33は、循環ポンプと接続されており、内部へ過酸化水素水を供給し、溶液をポンプによって循環させる。ある程度時間が経過した所で、循環させている過酸化水素水の量を減少させて、金属層の溶解具合を確認する。数回目の確認で、容器33内の過酸化水素水の界面の減少と共に保護ケースに覆われた被処理基板が、容器33の下側へ移動していき、ハンドリング部材から分離される。
(6−3)接着層の溶解液への浸漬
ハンドリング部材の除去後、ハンドリング部材を容器33から取り出し、容器33に蓋をする。容器33内の過酸化水素水を除去し、アセトン溶液を供給する。次いでアセトン溶液をポンプによって循環させ、第一の面に付着しているレジストを溶解させる。
【0079】
(7)機械電気変換素子の完成
(7−1)洗浄と保護ケースの除去
保護ケース29で覆われたまま、加工済みの被処理基板を洗浄し、保護ケースを取り外すことで機械電気変換素子が完成する。
【0080】
上記の様に作製することで、被処理基板が破損する確率を低減することができる。また、流路に金属層を設けることにより、ハンドリング部材の除去を容易に行うことができる。
【0081】
《実施形態3》
本実施形態では、流路凸部がエレメント及びトレンチ加工部全体に接触するようなハンドリング部材を用いた機械電気変換装置の製造方法について示す。被処理基板とハンドリング部材の物理パラメーターは、以下の通りである。
【0082】
(被処理基板の設定)
実施形態2と同様に設定した。
(ハンドリング部材の設定)
ハンドリング部材の基材・・・・・・合成石英基板
ハンドリング部材の大きさ・・・・直径12cm、厚さ2mm
流路凹部の幅・・・・・1mm
第一の流路凸部の幅・・・・・縦幅6.1mm、横幅6.1mm、
第二の流路凸部の幅・・・・・1mm
流路深さ・・・・・・0.4mm
流路の形状・・・・・・直線状(図16参照)
(接着層の設定)
実施形態2と同様に設定した。
(金属層の設定)
実施形態2と同様に設定した。
【0083】
(1)被処理基板の作製工程
実施形態2の(1)と同様に用意した。
【0084】
(2)流路に金属層を設けたハンドリング部材の作成と、第一の面への接着層の形成
(2−1)ハンドリング部材作製工程
まず、直径12cm、厚さ2mmの洗浄済みの合成石英基板を用意する。洗浄は、中性洗剤及び純水で超音波洗浄を行い、アルカリ溶液に短時間浸した後に純水及び超純水で超音波洗浄及び流水洗浄を行う。次に、洗浄済みの合成石英基板の片面に、第一の流路凸部を作製する(図16参照)。第一の流路凸部44は、中央に6.1mm四方の流路凸部が形成されるように、4本の直線の流路凹部をCOレーザー加工により作製する。流路凹部の幅は1mmであり、深さは0.4mmである。さらに第一の流路凸部を形成した4本の各流路凹部に垂直となるような流路凹部を、第一の流路凸部の周辺にCOレーザー加工により作製することで、第二の流路凸部45を複数個設ける。流路凹部と流路凸部の幅は1mmであり、深さは0.4mmである。これにより、第二の流路凸部を複数個設ける。なお、四隅の流路凸部46には流路凹部を設けない構造とする。レーザー加工では、レーザーの焦点を第三の面から少しずつ第四の面の方向にずらしていくことで、垂直に近い流路壁を形成する。また、レーザー加工を真空中で行うことで、加工中に融解した石英が流路表面へ固着しないようにする。再度加工済みのハンドリング部材を洗浄することで、図16のようなハンドリング部材が得られる。図16(A)は外観模式図であり、図16(B)は、図16(A)の一部を拡大した模式図である。
(2−2)金属層の形成
実施形態2の(2―2)と同様に用意する。
(2−3)接着層の形成
実施形態2の(2―3)と同様に用意する。
【0085】
(3)ハンドリング部材固定工程
(3−1)被処理基板とハンドリング部材の配置
(1)で作製される被処理基板の第一の面に、(2)で作製されるハンドリング部材の第三の面を向かい合わせる。このとき、エレメント及びトレンチの加工部が全てハンドリング部材で支持されるように(流路凸部で覆われるように)配置する。
(3−2)ハンドリング部材の固定
被処理基板とハンドリング部材とをあわせた状態のまま、115℃程度に加熱したオーブン中で30分間程度ベークすることで、被処理基板とハンドリング部材を固定する。
【0086】
(4)集積回路の準備
実施形態2の(4)と同様に、集積回路を用意する。
(5)被処理基板の裏面加工工程
実施形態2の(5)と同様に、被処理基板の裏面加工を行う。
(6)ハンドリング部材除去工程
実施形態2の(6)と同様にハンドリング部材の除去を行う。
(7)機械電気変換素子の完成
実施形態2の(7)と同様に機械電気変換素子を完成させる。
【0087】
上記の様に作製することで、エレメント及びトレンチ加工部は全てハンドリング部材によって支持されるので、被処理基板が破損する確率を低減することができる。また、流路に金属層を設けることにより、ハンドリング部材の除去を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0088】
1 基板
2 メンブレン支持部
3 キャビティ
4 メンブレン
5 上部電極
6 エレメント
7 エレメントの辺
9 下部電極層
11 集積回路
21 被処理基板
22 ハンドリング部材
23 流路
28 トレンチ
31 トレンチの加工部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板との間に空隙が形成されるように設けられた振動膜と、を備えた素子を有する機械電気変換素子の製造方法であって、
前記素子の前記振動膜側の面に、溝が形成されたハンドリング部材を固定する固定工程と、前記素子の前記振動膜が形成されている側の面とは反対側の面にトレンチを加工する工程と、前記素子から前記ハンドリング部材を除去する除去工程と、を含み、
前記固定工程では、前記ハンドリング部材の前記溝は、前記素子と固定された状態で外部と連通する流路の一部を構成し、
前記素子内の少なくとも一部が前記ハンドリング部材により支持されるように、前記ハンドリング部材を前記被処理基板に固定することを特徴とする機械電気変換素子の製造方法。
【請求項2】
前記トレンチの加工部が前記ハンドリング部材により支持されていない部分の長さが、前記素子の最大辺の長さより小さくなるように、前記ハンドリング部材を前記被処理基板に固定することを特徴とする請求項1に記載の機械電気変換素子の製造方法。
【請求項3】
前記固定工程では、前記トレンチの加工部の前記ハンドリング部材により支持されていない部分の長さが、前記素子の最小辺の長さより小さくなるように、前記ハンドリング部材を前記被処理基板に固定することを特徴とする請求項1に記載の機械電気変換素子の製造方法。
【請求項4】
前記固定工程では、前記トレンチの加工部は全て前記ハンドリング部材により支持されるように前記ハンドリング部材を前記被処理基板に固定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の機械電気変換素子の製造方法。
【請求項5】
前記固定工程では、前記素子毎に、前記溝のエッジが少なくとも2つ以上の前記素子の辺と交差するように、前記ハンドリング部材を前記被処理基板に固定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の機械電気変換素子の製造方法。
【請求項6】
前記素子は全て前記ハンドリング部材により支持されていることを特徴とする請求項1に記載の機械電気変換素子の製造方法。
【請求項7】
前記固定工程では、接着層のみ又は接着層と金属層を介して前記ハンドリング部材を前記被処理基板に固定し、前記ハンドリング部材除去工程にて、前記接着層のみを介して固定している際は前記接着層を溶解する溶解液を前記流路に供給し、前記接着層と金属層を介して固定している際は前記金属層を溶解する酸性又はアルカリ性の溶解液を前記流路に供給して、前記ハンドリング部材を前記被処理基板から除去することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の機械電気変換素子の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の機械電気変換素子の製造方法を用い、前記裏面加工工程において、前記反対側の面に集積回路を固定することを特徴とする機械電気変換装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−35156(P2010−35156A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148015(P2009−148015)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】