説明

欠陥検出装置および欠陥検出方法、制御プログラム、可読記憶媒体

【課題】転位や積層欠陥などの結晶欠陥を容易かつ精度よく検出する。
【解決手段】単結晶基板上に化合物半導体層をエピタキシャル成長させたエピタキシャル成長基板17の上方より励起光を照射して励起した後に、フォトルミネッセンスによる発光強度のマッピングをエピタキシャル成長基板全体に渡って行う座標変換手段としてのXY座標変換手段112と、座標変換手段112により座標に分割された複数のピクセルのそれぞれとこれに隣接する複数ピクセルとの差を用いて、欠陥検出すべきピクセルが欠陥ピクセルかどうかを順次検出する欠陥検出手段113とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばLEDなどの発光素子やパワーデバイスに用いられる化合物半導体エピタキシャルウエハの欠陥検出装置およびこれを用いた欠陥検出方法、この欠陥検出方法の各ステップをコンピュータに実行させるための制御プログラム、この制御プログラムが格納された可読記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
この化合物半導体エピタキシャルウエハは、LEDやLDなどの発光素子の製造には必要不可欠である。特に、GaN(窒化ガリウム)を始めとする窒化物半導体材料は、GaAsと比べてバンドギャップが約3倍、飽和ドリフト速度が約2倍、絶縁破壊電界強度が約10倍と非常に優れた物性値を有しており、大きな熱伝導率を有する半導体である。青色LEDなどの発光素子のほか、次世代の高電圧・低損失半導体素子を実現する材料として期待されている。
【0003】
一般的に、窒化物半導体は、サファイア単結晶基板上にMOCVD(有機金属気相成長法)、MBE(分子線エピタキシー法)およびHVPE(ハロゲン化物気相成長法)などを用いて作成される。
【0004】
特に、近年では、環境意識の高まりによって、LEDを始めとする窒化物半導体デバイスの需要が高まり、生産性を上げるためにウエハ径も大口径化しつつある。
【0005】
化合物半導体エピタキシャルウエハの品質評価として、エピタキシャル完了の段階でフォトルミネッセンス法により発光波長および発光強度の測定が行われる。これにより、素子化された後の発光波長や発光強度が予測される。
【0006】
特に、近年では、フォトルミネッセンス測定をウエハ全体に渡って行ってマッピングデータを取得する方法が採られている。
【0007】
その方法としては、図10のようにレーザ素子101からのレーザ光Lを用いてウエハ102上をスキャンし、測定スポットP1からのフォトルミネッセンス光を含む反射光PLを、分光器またはバンドパスフィルタ103を通して光検出器104で検出する方法がある。また、図11のように発光ダイオードアレイ201からの発光によりウエハ202全面を均一光強度で照射して測定エリアP2からのフォトルミネッセンス光を含む反射光PLを、バンドパスフィルタ203を通して2次元CCDアレイ204で検出する方法がある。
【0008】
このようにして得られたフォトルミネッセンスマッピングデータのうち、光波長は、化合物半導体エピタキシャル膜の組成や膜厚によって変化するため、マッピングデータより組成や膜厚に影響を及ぼすエピタキシャル層の管理に活用される。一方、光強度は組成や膜厚以外にエピタキシャル層の結晶中の転位、積層欠陥、コンタミネーション、異物にも関係するものと考えられる。
【0009】
特許文献1には、この発光強度のマッピングデータを元に、ウエハ面内での結晶欠陥領域を特定して、これをスクリーニングすることにより信頼性の高い半導体素子を製造する方法が示されている。
【0010】
この結晶欠陥の判定方法として、まず、結晶欠陥のないウェハの発光スペクトルを検査開始前に予め測定してコンピュータの記憶部に格納しておき、試料の測定により得られた光強度をこの基準となる発光スペクトルと比較し、結晶欠陥の有無を判定する方法がある。また、結晶欠陥の判定方法として、コントラストなどとして把握される欠陥形状の画像解析などによって、転位、積層欠陥などの結晶欠陥の種類を判別する方法がある。結晶欠陥の判定方法としてこれらの2種類の方法があり、ピクセルを最小単位とした結晶欠陥の位置およびその種類がコンピュータに格納されるとしている。
【0011】
また、特許文献2では、この発光強度マッピングデータを元に、ウエハ面内での欠陥領域(金属コンタミネーション)を特定するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−318031号公報
【特許文献2】特表2004−511104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1に開示されている従来の上記構成のように、結晶欠陥のない基準のウェハとの比較を行って結晶欠陥を検出する方法では、予め基準のウエハを準備したり、基準のウエハを測定したりする手間がかかるという問題があった。
【0014】
また、特許文献1に開示されている従来の上記コントラストで結晶欠陥かどうかを判定する方法では、その定義によっては、異なった結果を与える。例えば特許文献2では、点(x,y)でのコントラストを次の式1(数1)で定義している。
【0015】
【数1】



PL(x,y)は、ウエハ面内位置(x,y)における光強度、IPL(∞)はコンタミネーションから最も離れた位置の光強度である。しかしながら、比較対象との距離が離れるにつれ結晶欠陥以外の膜厚分布などの要因もコントラストに影響しやすくなるため、コントラストで結晶欠陥かどうかを判定する精度が悪くなるという問題があった。
【0016】
本発明は、上記従来の問題を解決するもので、欠陥測定に予め基準ウエハを用意して測っておく必要がなく、結晶欠陥以外の膜厚分布に左右されることもなく、転位や積層欠陥などの結晶欠陥を容易かつ精度よく検出することができる欠陥検出装置およびこれを用いた欠陥検出方法、この欠陥検出方法の各ステップをコンピュータに実行させるための制御プログラム、この制御プログラムが格納された可読記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の欠陥検出装置は、単結晶基板上に化合物半導体層をエピタキシャル成長させたエピタキシャル成長基板の上方より励起光を照射して励起した後に、フォトルミネッセンスによる発光強度のマッピングをエピタキシャル成長基板全体に渡って行う座標変換手段と、該座標変換手段により座標に分割された複数のピクセルのそれぞれとこれに隣接する複数ピクセルとの差を用いて、欠陥検出すべきピクセルが欠陥ピクセルかどうかを順次検出する欠陥検出手段とを有するものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0018】
また、好ましくは、本発明の欠陥検出装置における座標変換手段は、前記エピタキシャル成長基板全面の反射光強度分布データを座標データに変換する。
【0019】
さらに、好ましくは、本発明の欠陥検出装置における座標変換手段は、前記エピタキシャル成長基板全面の反射光強度分布データを直交座標に分割して座標(X,Y)データに変換する。
【0020】
さらに、好ましくは、本発明の欠陥検出装置における座標変換手段は、前記エピタキシャル成長基板全面の反射光強度分布データを極座標に分割して座標(r,θ)データに変換する。
【0021】
さらに、好ましくは、本発明の欠陥検出装置における欠陥検出手段は、前記欠陥検出すべきピクセルの光強度に対して、その上下左右の4隣接ピクセルのうちの少なくとも複数隣接ピクセルの光強度との差のいずれかが所定の閾値Tよりも負の値である場合に欠陥ピクセルと決定する。ここで閾値Tは負の値である。
【0022】
さらに、好ましくは、本発明の欠陥検出装置における欠陥検出手段は、前記欠陥検出すべきピクセルの光強度に対して、その左斜め上、左斜め下、右斜め上および右斜め下の4隣接ピクセルのうちの少なくとも複数隣接ピクセルの光強度との差のいずれかが所定の閾値Tよりも負の値である場合に欠陥ピクセルと決定する。ここで閾値Tは負の値である。
【0023】
さらに、好ましくは、本発明の欠陥検出装置における欠陥検出手段は、前記欠陥検出すべきピクセルの光強度に対して、その上下左右および、左斜め上、左斜め下、右斜め上、右斜め下の8隣接ピクセルのうちの少なくとも5隣接ピクセルの光強度との差のいずれかが所定の閾値Tよりも負の値である場合に欠陥ピクセルと決定する。ここで閾値Tは負の値である。
【0024】
さらに、好ましくは、本発明の欠陥検出装置における欠陥検出手段は、前記上下左右の4隣接ピクセルのうちの少なくとも複数隣接ピクセルの光強度との差は、後述する式(1)〜式(4)のうちの少なくとも複数式により順次求める。
【0025】
さらに、好ましくは、本発明の欠陥検出装置における欠陥検出手段は、前記左斜め上、左斜め下、右斜め上および右斜め下の4隣接ピクセルのうちの少なくとも複数隣接ピクセルの光強度との差は、後述する式(5)〜式(8)のうちの少なくとも複数式により順次求める。
【0026】
さらに、好ましくは、本発明の欠陥検出装置における欠陥検出手段は、上下左右および、左斜め上、左斜め下、右斜め上、右斜め下の8隣接ピクセルのうちの少なくとも5隣接ピクセルの光強度との差は、後述する式(1)〜式(8)のうちの少なくとも5つの式により順次求める。
【0027】
さらに、好ましくは、本発明の欠陥検出装置における欠陥検出手段は、一または複数のピクセルを複数の欠陥ピクセルが囲むほど欠陥サイズが大きい場合には、その囲まれた該一または複数のピクセルは欠陥ピクセルであると決定する。
【0028】
さらに、好ましくは、本発明の欠陥検出装置において、前記欠陥ピクセルの欠陥情報を所定の記憶部に登録する不良登録手段を更に有する。
【0029】
さらに、好ましくは、本発明の欠陥検出装置における不良登録手段は、前記欠陥情報として、前記欠陥検出手段により欠陥ピクセルであると決定された領域の光強度をそのアドレスの座標と共に前記所定の記憶部に登録するかまたは、当該座標のみを該所定の記憶部に登録する。
【0030】
さらに、好ましくは、本発明の欠陥検出装置における不良登録手段は、前記欠陥ピクセル数を前記エピタキシャル成長基板毎に計数し、この計数値を前記欠陥情報として前記所定の記憶部に登録すると共に、該計数値により該エピタキシャル成長基板の品質を判定可能とする。
【0031】
さらに、好ましくは、本発明の欠陥検出装置において、発光により前記エピタキシャル成長基板の全面を均一光強度で照射する発光手段と、該エピタキシャル成長基板からのフォトルミネッセンス光を含む反射光を撮像する撮像手段と、該発光手段および該撮像手段を駆動させて該エピタキシャル成長基板全面の反射光強度分布データを得るPL測定手段とを更に有する。
【0032】
本発明の欠陥検出方法は、単結晶基板上に、化合物半導体層をエピタキシャル成長させ、該化合物半導体層の上方より励起光を照射して励起した後、座標変換手段が、フォトルミネッセンスによる発光強度のマッピングをエピタキシャル成長基板全体に渡って行う座標変換ステップと、欠陥検出手段が、該座標変換手段により座標に分割された複数のピクセルのそれぞれとこれに隣接する複数ピクセルとの差を用いて、欠陥検出すべきピクセルが欠陥ピクセルかどうかを順次検出する欠陥検出ステップとを有するものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0033】
また、好ましくは、本発明の欠陥検出方法における座標変換ステップは、前記エピタキシャル成長基板全面の反射光強度分布データを座標データに変換する。
【0034】
さらに、好ましくは、本発明の欠陥検出方法における座標変換ステップは、前記エピタキシャル成長基板全面の反射光強度分布データを直交座標に分割して座標(X,Y)データに変換する。
【0035】
さらに、好ましくは、本発明の欠陥検出方法における座標変換ステップは、前記エピタキシャル成長基板全面の反射光強度分布データを極座標に分割して座標(r,θ)データに変換する。
【0036】
さらに、好ましくは、本発明の欠陥検出方法における欠陥検出ステップは、前記欠陥検出すべきピクセルの光強度に対して、その上下左右の4隣接ピクセルのうちの少なくとも複数隣接ピクセルの光強度との差のいずれかが所定の閾値Tよりも負の値である場合に欠陥ピクセルと決定する。ここで閾値Tは負の値である。
【0037】
さらに、好ましくは、本発明の欠陥検出方法における欠陥検出ステップは、前記欠陥検出すべきピクセルの光強度に対して、その左斜め上、左斜め下、右斜め上および右斜め下の4隣接ピクセルのうちの少なくとも複数隣接ピクセルの光強度との差のいずれかが所定の閾値Tよりも負の値である場合に欠陥ピクセルと決定する。ここで閾値Tは負の値である。
【0038】
さらに、好ましくは、本発明の欠陥検出方法における欠陥検出ステップは、前記欠陥検出すべきピクセルの光強度に対して、その上下左右および、左斜め上、左斜め下、右斜め上、右斜め下のうちの少なくとも5隣接ピクセルの光強度との差のいずれかが所定の閾値Tよりも負の値である場合に欠陥ピクセルと決定する。ここで閾値Tは負の値である。
【0039】
さらに、好ましくは、本発明の欠陥検出方法における欠陥検出手段は、一または複数のピクセルを複数の欠陥ピクセルが囲むほど欠陥サイズが負の値である場合には、その囲まれた該一または複数のピクセルは欠陥ピクセルであると決定する。ここで閾値は負の値である。
【0040】
さらに、好ましくは、本発明の欠陥検出方法における欠陥ピクセルの欠陥情報を所定の記憶部に登録する不良登録手段を更に有する。
【0041】
さらに、好ましくは、本発明の欠陥検出方法における不良登録ステップは、前記欠陥情報として、前記欠陥検出手段により欠陥ピクセルであると決定された領域の光強度をそのアドレスの座標と共に前記所定の記憶部に登録するかまたは、当該座標のみを前記欠陥情報として該所定の記憶部に登録する。
【0042】
さらに、好ましくは、本発明の欠陥検出方法における不良登録ステップは、前記欠陥ピクセル数を前記エピタキシャル成長基板毎に計数し、この計数値を前記欠陥情報として前記所定の記憶部に登録すると共に、該計数値により該エピタキシャル成長基板の品質を判定可能とする。
【0043】
本発明の制御プログラムは、本発明の上記欠陥検出方法の各ステップをコンピュータに実行させるための処理手順が記述されたものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0044】
本発明の可読記録媒体は、本発明の上記制御プログラムが格納されたコンピュータ読み取り可能なものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0045】
上記構成により、以下、本発明の作用を説明する。
【0046】
本発明においては、単結晶基板上に化合物半導体層をエピタキシャル成長させたエピタキシャル成長基板の上方より励起光を照射して励起した後に、フォトルミネッセンスによる発光強度のマッピングをエピタキシャル成長基板全体に渡って行う座標変換手段と、座標変換手段により座標に分割された複数のピクセルのそれぞれとこれに隣接する複数ピクセルとの差を用いて、欠陥検出すべきピクセルが欠陥ピクセルかどうかを順次検出する欠陥検出手段とを有している。
【0047】
これによって、発光強度のマッピングをエピタキシャル成長基板全体に渡って行うと共に、欠陥検出に隣接複数ピクセルとの差を用いるので、欠陥検出に予め基準ウエハを用意して測っておく必要がなく、結晶欠陥以外の膜厚分布に左右されることもなく、転位や積層欠陥などの結晶欠陥を容易かつ精度よく検出することが可能となる。
できる
【発明の効果】
【0048】
以上により、本発明によれば、発光強度のマッピングをエピタキシャル成長基板全体に渡って行うと共に、欠陥検出に隣接複数ピクセルとの差を用いるため、欠陥検出に予め基準ウエハを用意して測っておく必要がなく、結晶欠陥以外の膜厚分布に左右されることもなく、転位や積層欠陥などの結晶欠陥を容易かつ精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態1における欠陥検出装置の要部ハード構成例を示すブロック図である。
【図2】(a)は、図1のXY座標変換手段が基板面光強度データを座標(Xn,Ym)に複数分割した状態を模式的に示す図、(b)は、基板面光強度データを極座標(r,θ)に複数分割した状態を模式的に示す図である。
【図3】図1のXY座標変換手段によりXY座標変換されたマッピングデータ情報を模式的に示す図である。
【図4】図3のマッピングデータ情報のエピタキシャル欠陥Fの付近におけるX方向のピクセル位置とPL光強度Iとの関係を示す図である。
【図5】図1の欠陥検出装置により欠陥検出する化合物半導体層のエピタキシャル成長方法を説明するためのMOCVD反応室を模式的に示す図である。
【図6】図1の欠陥検出装置における欠陥検出動作について説明するためのフローチャートである。
【図7】欠陥ピクセル数/ウエハに対する歩留まりの関係を示す図である。
【図8】本発明の実施形態2における欠陥検出装置の要部ハード構成例を示すブロック図である。
【図9】図8の欠陥検出装置における欠陥検出動作について説明するためのフローチャートである。
【図10】従来の欠陥検出装置におけるフォトルミネッセンス欠陥測定をレーザ素子を用いて行うための模式図である。
【図11】従来の欠陥検出装置におけるフォトルミネッセンス欠陥測定をLEDアレイを用いて行うための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下に、本発明の欠陥検出装置およびこれを用いた欠陥検出方法の実施形態1,2について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図における構成部材のそれぞれの厚みや長さなどは図面作成上の観点から、図示する構成に限定されるものではない。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1における欠陥検出装置の要部ハード構成例を示すブロック図である。
【0051】
図1において、本実施形態1の欠陥検出装置10は、全体の制御を行うCPU(中央演算処理装置)からなる制御手段11と、制御手段11に対して入力指令を行うためのキーボード、マウス、タッチパネルおよびペン入力装置、さらには通信ネットワーク(例えばインターネットやイントラネット)を介して受信入力する入力装置などの操作部12と、表示画面上に、初期画面、選択場面、制御手段11による制御結果画面および操作入力画面などの各種画面を表示する表示部13と、欠陥検出するための制御プログラムおよびそのデータなどが記憶されたコンピュータ読み出し可能な可読記録媒体としてのROM14と、起動時に制御プログラムおよびそのデータなどが読み出されて、制御手段11による制御毎にデータを読み出し・記憶するワークメモリとして高速に働く一時記憶部としてのRAM15と、発光手段としての発光ダイオードアレイ(LEDアレイ)からの発光によりウエハなどのエピタキシャル成長基板17全面を均一光強度で照射する発光部16と、エピタキシャル成長基板17からのフォトルミネッセンス光PLを含む反射光を撮像する撮像部18(撮像手段)とを有している。
【0052】
制御手段11は、ROM14内の制御プログラムおよびそのデータに基づいて、発光部16および撮像部18を用いてエピタキシャル成長基板17全面の反射光強度分布データを得るPL測定手段111と、PL測定手段111により得たエピタキシャル成長基板17全面の反射光強度分布データを直交座標に分割して座標(X,Y)データに変換するXY座標変換手段112と、XY座標変換手段112により分割された複数の小領域(画素またはピクセル)に対し、これに隣接する複数ピクセル(ここでは4)を用いて欠陥領域かどうかを順次検出する欠陥検出手段113と、欠陥小領域の座標(X,Y)データを登録する不良登録手段114との各機能を実行する。
【0053】
PL測定手段111は、発光部16を発光させると共に撮像部18を動作させてエピタキシャル成長基板17からの反射光を撮像することにより反射光強度(または反射光波長)の基板面分布を測定することができる。
【0054】
XY座標変換手段112は、図2(a)に示すようにPL測定手段111により得た反射光強度分布データを行列方向(縦方向および横方向)のマトリクス状の複数の小領域(画素またはピクセル)に分割し、複数の小領域(画素またはピクセル)の反射光強度およびその位置をそれぞれ示す座標(Xn,Ym;n,mは自然数)データに変換する。このように、図3に示すように、エピタキシャル成長基板17に対して反射光強度分布がXY座標変換された、エピタキシャル欠陥Fを含むマッピングデータ情報は一旦コンピュータシステム内の記憶部(RAM15)に記憶される。
【0055】
図4は、図3のマッピングデータ情報のエピタキシャル欠陥Fの付近におけるX方向のピクセル位置とPL光強度Iとの関係を示している。ここでは、エピタキシャル欠陥F付近のマッピングデータを拡大して示しており、図4からも分かるように、エピタキシャル欠陥Fの付近で急激にフォトルミネッセンス光強度(PL光強度I)が3ピクセル分だけ最も低く変化している。
【0056】
欠陥検出手段113は、コントラストCによって欠陥検出をより精度よく行うために、隣接小領域(隣接ピクセル)の光強度Iの差によりエピタキシャル欠陥Fかどうかを判定する。即ち、図2(a)に示すように、欠陥検出すべき中心ピクセルの光強度I(x、y)に対して、その斜線部に示す上下左右の4隣接ピクセル(中心ピクセルに対して1行上の隣接ピクセル、1行下の隣接ピクセル、一つ左の隣接ピクセルおよび一つ右の隣接ピクセル)の光強度Iとの差(コントラストC)のいずれかが所定の閾値Tよりも負の値である場合に欠陥画素と判定する。ここで閾値Tは負の値である。
【0057】
不良登録手段114は、欠陥検出手段113により欠陥画素(欠陥領域)であると決定された小領域の光強度Iをそのアドレスの座標(X,Y)と共に所定の記憶部(例えばRAM15)にNG登録する。または、座標(X,Y)のみを欠陥登録してもよい。また、不良登録手段114は、欠陥ピクセル数をエピタキシャル成長基板17毎に計数し、この計数値によりエピタキシャル成長基板17の品質を判定可能としている。
【0058】
上記構成の欠陥検出装置10の動作について詳細に説明する前に、本実施形態1で欠陥検出する化合物半導体層のエピタキシャル成長方法について説明する。
【0059】
図5は、図1の欠陥検出装置により欠陥検出する化合物半導体層のエピタキシャル成長方法を説明するためのMOCVD反応室を模式的に示す図である。
【0060】
MOCVD法によりサファイア基板を元にGaN系のエピタキシャル成長基板17を作成する。LED素子の場合、以下のような方法でエピタキシャル成長基板17を作成することができる。
【0061】
図5に示すように、MOCVD反応室1内に収容されたヒータ2上にサセプタ3が搭載され、このサセプタ3上にサファイア基板4が搭載される。MOCVD反応室1には、外部より有機ガリウムなどの有機金属、アンモニアガスおよび水素ガスをサファイア基板4上に供給し、これらを外部に排気できるようになっている。
【0062】
ここで、まず、単結晶ウエハとしてのサファイア基板4の温度をおよそ摂氏1100度に昇温し、有機ガリウムおよびアンモニアガスなどをMOCVD反応室1内に供給し、サファイア基板4上にテンプレート層を形成する。
【0063】
次に、上記有機ガリウム、有機アルミニウムおよびアンモニアガスと共に、容器から供給されたシランなどのSi化合物を管を通してMOCVD反応室1内に供給して、テンプレート層上にn型半導体層を形成する。
【0064】
続いて、およそ摂氏800度に降温し、上記有機ガリウム、有機アルミニウムおよびアンモニアガスと共に、有機ガリウムインジウムを反応室内に供給して、n型半導体層上に活性層を形成する。
【0065】
さらに、およそ摂氏1100度に再び昇温し、上記有機ガリウム、有機アルミニウムおよびアンモニアガスと共に、ビスシクロペンタジエニルマグネシウムなどのMg化合物をMOCVD反応室1内に供給して、活性層上にp型半導体層を形成し、この状態の基板をMOCVD反応室1内から取り出す。
【0066】
これによって、単結晶ウエハとしてのサファイア基板4上にテンプレート層を形成した後に、このテンプレート層上に、n型半導体層、活性層およびp型半導体層がこの順に形成されてエピタキシャル成長基板17を形成することができる。
【0067】
このように、単結晶ウエハ上に、化合物半導体層をエピタキシャル成長させ、この化合物半導体層の上方より励起光を照射して励起した後、フォトルミネッセンスによる発光強度のマッピングをウエハ全体に渡って行い、隣接ピクセルの光強度差が一定以上のピクセル数をウエハ毎に計数し、これによりエピタキシャルウエハの品質を判断することができる。
【0068】
上記構成の欠陥検出装置10により上記エピタキシャル成長基板17の欠陥部分を検出する動作について説明する。
【0069】
このようにして得られたフォトルミネッセンスマッピングデータのうち、光波長は、化合物半導体エピタキシャル膜の組成や膜厚によって変化するため、マッピングデータより組成や膜厚に影響を及ぼすエピタキシャル層の管理に活用される。また、光強度は、組成や膜厚以外にエピタキシャル層の結晶中の転位、積層欠陥、コンタミネーションおよび異物に関係する。ここでは、光強度Iの差(コントラストC)を用いて欠陥検出を行う場合について説明する。
【0070】
図6は、図1の欠陥検出装置10の欠陥検出動作について説明するためのフローチャートである。
【0071】
図6に示すように、まず、ステップS1で、PL測定手段111は、発光部16の発光ダイオードアレイを発光させると共に撮像部18を撮像駆動する。発光部16からの光がエピタキシャル成長基板17の表面で反射し、その反射光を撮像部17で撮像する。撮像部18からの光強度Iの基板全面の分布を示す反射光強度分布データを得る。なお、この反射光強度分布データは、図10および図11に示すような従来のフォトルミネッセンスマッピング測定装置により得るようにしてもよい。
【0072】
次に、ステップS2で、XY座標変換手段112が、撮像部18から得た反射光強度分布データをマトリクス状の複数の小領域(画素;ピクセル)に分割し、複数のピクセル(小領域)の光強度Iと共にその位置をそれぞれ示す座標(X,Y)データに変換する。この複数のピクセル毎の(X,Y)変換情報は一旦コンピュータシステム内の記憶部(RAM15)に記憶される。
【0073】
その後、コンピュータシステムの欠陥検出手段113は、XY座標変換されたマッピングデータを元に、各ピクセル毎に、対応するウエハ(エピタキシャル成長基板17)の各ピクセル毎の欠陥の有無を判定する。この場合、コントラストCによって欠陥検出をより精度よく行うために、欠陥検出すべきピクセル(x、y)の光強度Iに対して、平面視で上下左右の4隣接ピクセル(1行上の隣接ピクセル、1行下の隣接ピクセル、一つ左の隣接ピクセルおよび一つ右の隣接ピクセル)の光強度Iとの差(コントラストC)のいずれかが所定の閾値Tよりも負の値である場合に、欠陥検出すべきピクセル(x、y)の光強度Iが欠陥であると判定する。ここで閾値T2は負の値である。
【0074】
このように、欠陥ピクセルの決定方法を、閾値Tよりも負の値である場合に欠陥ピクセルと決定する。このようにすることにより、正常ピクセルを欠陥ピクセルとする問題をより精度良くに回避することができる。
【0075】
その欠陥判定方法は以下の計算による。
【0076】
まず、ステップS3で、欠陥検出手段113が、欠陥検出すべきピクセル(Xn、Ym)を設定する。このピクセル(Xn、Ym)は、第m行第n列の複数のピクセルに対して、第1行第1列目の(1,1)からスタートしてその行の終端の(n、1)、次の行の先頭の第2行第1列目の(1,2)からその終端の(n、2)、・・・最終行の先頭の第m行第1列目の(1,m)からその行の終端の(n、m)の順で順次、欠陥検出すべきピクセルを設定する。
【0077】
次に、ステップS4で、欠陥検出手段113が、欠陥検出すべき座標(x、y)位置の設定ピクセルに対する上下左右の4隣接ピクセルとの差(コントラストC1〜C4)を次の式(1)〜式(4)により順次求めるが、まずは、欠陥検出すべき座標(x、y)ピクセルに対する右横の隣接ピクセルとの差(コントラストC1)を次の式(1)により求める。
【0078】
【数2】

ここで、式(1)〜式(4)において、光強度I(x+1,y)は、欠陥検出すべき座標(x,y)ピクセルのx軸プラス方向への隣接ピクセルの光強度、I(x−1,y)は、欠陥検出すべき座標(x,y)ピクセルのx軸マイナス方向への隣接ピクセルの光強度、I(x,y+1)は、欠陥検出すべき座標(x,y)ピクセルのy軸プラス方向への隣接ピクセルの光強度、I(x,y+1)は、欠陥検出すべき座標(x,y)ピクセルのy軸マイナス方向への隣接ピクセルの光強度を表している。これは図2(a)に示ように、欠陥検出すべき設定ピクセルの光強度I(x,y)に対して斜線部分の上下左右の4隣接ピクセルの光強度Iに対応している。
【0079】
次に、ステップS5で、欠陥検出手段113が、上記式(1)のコントラストC1を、予め決めた閾値Tと比較して、C1<閾値Tであれば(YES)、欠陥ピクセルであると認定(YES)して次のステップS6の処理に移行する。
【0080】
さらに、ステップS6では、不良登録手段114が、欠陥検出手段113により欠陥ピクセルであると決定された光強度Iをそのアドレスの座標(X,Y)と共に所定の記憶部(例えばRAM15)にNG登録する。この場合、座標(X,Y)だけをNG登録してもよい。
【0081】
また、ステップS5で、欠陥検出手段113が、上記式(1)のコントラストC1を、予め決めた閾値Tと比較して、コントラストC1<閾値T以外であれば(NO)、ステップS7の処理に移行する。
【0082】
さらに、ステップS7では、欠陥検出すべき座標(x、y)ピクセルに対して4隣接ピクセルとのコントラストC1〜C4の比較を全て終えたかどうかを決定する。欠陥検出すべき座標(x、y)ピクセルに対して4隣接ピクセルとのコントラストC1〜C4の比較を全て終えていなければ(NO)、ステップS4で再びコントラストC2を求め、ステップS5でコントラストC2と閾値Tと比較して、コントラストC2<閾値T2以外であれば(NO)、ステップS7の処理に再び戻ってくる。ステップS7で、欠陥検出すべき座標(x、y)ピクセルに対して4隣接ピクセルとのコントラストC1〜C4の比較を全て終えた場合(YES)には、次のステップS8の処理に移行する。
【0083】
さらに、ステップS8では、設定した座標(x、y)ピクセルが欠陥ピクセルではないと判定するが、ここでは、欠陥検出手段113により欠陥ピクセルではないと決定された光強度Iをそのアドレスの座標(X,Y)と共に所定の記憶部(例えばRAM15)に良品登録はせず、なにもしない。その理由は、もちろん良品登録してもよいが、NG登録をしておけば、NG登録されていない座標(X,Y)のピクセルは全て良品と判定することができるからである。
【0084】
要するに、ステップS5において、上記式(1)〜式(4)のコントラストC1、C2、C3およびC4を、予め決めた閾値Tとそれぞれ比較するが、コントラストC1<T、コントラストC2<T、コントラストC3<T、コントラストC4<Tのいずれかに当てはまる場合(YES)、座標(x,y)に該当する設定ピクセルは欠陥ピクセルと判定してステップS6のNG登録処理を行う。
【0085】
ステップS6またはステップS8の後、ステップS9の処理に移行して、全ピクセルに対して欠陥判定処理を行ったかどうかを決定する。ステップS9で、全ピクセルに対して欠陥判定処理を行っていなければ(NO)、ステップS3の処理に戻り、次の欠陥判定すべきピクセルを設定する。また、ステップS9で、全ピクセルに対して欠陥判定処理を行っていれば(YES)、この欠陥判定処理を終了する。
【0086】
この欠陥ピクセルの個数は、NG登録結果によって、ウエハ(エピタキシャル成長基板17)単位で集計され、ウエハの品質を表す指標を簡便に求めることができる。
【0087】
測定が完了したウエハ(エピタキシャル成長基板17)は、その後の電極形成工程、個片化工程を経て、発光ダイオードなどのデバイス完成品となる。
【0088】
このように、化合物半導体層をエピタキシャル成長させたエピタキシャル成長基板17に対してフォトルミネッセンスによる発光強度Iのマッピングデータを取得し、隣接ピクセルとの差を演算することにより、化合物半導体基板の欠陥を評価することができる。これにより、ウエハの品質を表す指標を簡便に求めることができる。
【0089】
欠陥と判定されたピクセルの個数とウエハ一枚辺りのデバイスの歩留まりとの関係を図7に示している。欠陥と判定されたピクセルの個数とウエハ一枚辺りのデバイスの歩留まりとの間に相関が見られるが、これを活用して、デバイス歩留まり予測やエピタキシャル装置の管理などに用いることができる。
【0090】
以上説明したように、本実施形態1によれば、化合物半導体層をエピタキシャル成長させたエピタキシャル成長基板17に対しフォトルミネッセンスによる発光強度Iの反射光強度分布データを細かく各ピクセル領域(例えば1mm角程度であれば、半径10cmのウエハで数万個)に分割してX,Y座標変換して取得し、欠陥検出をすべきピクセルと複数(ここでは4)の隣接ピクセルとの差をコントラストCとして演算し、このコントラストCと所定の閾値Tとの比較により、当該化合物半導体基板の欠陥を評価するようにしたので、従来のように、欠陥測定に予め基準ウエハを用意して測っておく必要がなく、また、結晶欠陥以外の膜厚分布に左右されることもなく、転位、積層欠陥などの結晶欠陥を容易かつ精度よく検出することができる。要するに、エピタキシャル成長基板17に対する光強度分布を示す反射光強度分布データを複数のピクセル領域に分割してX,Y座標変換して取得し、細かく分割した小領域(ピクセル領域)毎にアドレスを座標(x、y)で指定し、これと隣接ピクセルとの差を用いて良否判定するので、NGピクセルの数もその位置も明確になり、化合物半導体エピタキシャルウエハ(エピタキシャル成長基板17)の品質を表す指標を簡便に求めることができる。これを活用して、デバイス歩留まり予測やエピタキシャル装置の管理などに用いることができる。
【0091】
なお、本実施形態1では、欠陥検出手段113が、欠陥検出すべき座標(x、y)ピクセルに対する上下左右の4隣接ピクセルとの差(コントラストC1〜C4)を上記式(1)〜式(4)により順次求めたが、これに限らず、上下左右の4隣接ピクセルに代えて、左斜め上、左斜め下、右斜め上および右斜め下の4隣接ピクセルであってもよい。即ち、欠陥検出手段113が、欠陥検出すべき座標(x、y)ピクセルに対する左斜め上、左斜め下、右斜め上および右斜め下の4隣接ピクセルとの差(コントラストC5〜C8)を上記式(5)〜式(8)により順次求めるようにしてもよい。
【0092】
【数3】

ここで、式(5)〜式(8)において、光強度I(x+1,y+1)は、欠陥検出すべき座標(x,y)ピクセルのx軸およびy軸プラス方向への隣接ピクセル(右斜め下)の光強度、光強度I(x+1,y−1)は、欠陥検出すべき座標(x,y)ピクセルのx軸プラス方向およびy軸マイナス方向への隣接ピクセル(右斜め上)の光強度、光強度I(x−1,y+1)は、欠陥検出すべき座標(x,y)ピクセルのx軸マイナス方向、y軸プラス方向への隣接ピクセル(左斜め下)の光強度、光強度I(x−1,y−1)は、欠陥検出すべき座標(x,y)ピクセルのx軸マイナス方向、y軸マイナス方向への隣接ピクセル(左斜め上)の光強度を表している。これは図2(a)に示す中央ピクセルの光強度I(x,y)に対してドット部分に示す左斜め上、左斜め下、右斜め上および右斜め下の4隣接ピクセルの光強度Iに対応している。
【0093】
なお、本実施形態1では、欠陥検出手段113が、欠陥検出すべきピクセルの光強度に対して、その上下左右の4隣接ピクセルの光強度との差のいずれかが所定の閾値Tよりも負の値である場合に欠陥画素と決定する場合または、その左斜め上、左斜め下、右斜め上および右斜め下の4隣接ピクセルの光強度との差のいずれかが所定の閾値Tよりも負の値である場合に欠陥画素と決定する場合について説明したが、これに限らず、上下左右の4隣接ピクセルおよびのうちの少なくとも複数隣接ピクセルの光強度との差のいずれかが所定の閾値Tよりも負の値である場合に欠陥画素と決定するかまたは、その左斜め上、左斜め下、右斜め上および右斜め下の4隣接ピクセルのうちの少なくとも複数隣接ピクセルの光強度との差のいずれかが所定の閾値Tよりも負の値である場合(小さい場合)に欠陥画素と決定してもよい。
【0094】
(実施形態2)
上記実施形態1では、欠陥検出手段113が、欠陥検出すべき座標(x、y)ピクセルに対する上下左右の4隣接ピクセルとの差(コントラストC1〜C4)を上記式(1)〜式(4)により順次求めるかまたは、欠陥検出すべき座標(x、y)ピクセルに対する左斜め上、左斜め下、右斜め上および右斜め下の4隣接ピクセルとの差(コントラストC5〜C8)を上記式(5)〜式(8)により順次求めるように構成する場合について説明したが、本実施形態2では、欠陥検出手段113Aが、欠陥検出すべき座標(x、y)ピクセルに対する上下左右および、左斜め上、左斜め下、右斜め上および右斜め下の8隣接ピクセルとの差(コントラストC1〜C8;図2(a)に示すピクセルの光強度I(x,y)を取り巻く斜線部分およびドット部分の全ピクセル)を上記式(1)〜式(8)により順次求めるように構成する場合について説明する。この方が欠陥検出精度がより確かなものとなる。
【0095】
図8は、本発明の実施形態2における欠陥検出装置の要部ハード構成例を示すブロック図である。なお、図1の構成部材と同一の作用効果を奏する部材には同一の番号を付けてその説明を省略する。
【0096】
図8において、本実施形態2の欠陥検出装置10Aの制御手段11Aは、ROM14内の制御プログラムおよびそのデータに基づいて、発光部16および撮像部18を用いてエピタキシャル成長基板17全面の反射光強度分布データを得るPL測定手段111と、PL測定手段111により得たエピタキシャル成長基板17全面の反射光強度分布データを所定の寸法(例えば1mm角程度)で分割して座標(X,Y)データに変換するXY座標変換手段112と、XY座標変換手段112により分割された複数の小領域(画素またはピクセル)に対し、これに隣接する複数ピクセル(ここでは8)を用いて欠陥領域(欠陥ピクセル)かどうかを順次検出する欠陥検出手段113Aと、欠陥小領域の座標(X,Y)データを登録する不良登録手段114との各機能を実行する。
【0097】
欠陥検出手段113Aは、コントラストCによって欠陥検出をより精度よく行うために、隣接小領域(隣接ピクセル)の光強度Iの差によりエピタキシャル欠陥Fかどうかを判定する。即ち、欠陥検出すべきピクセル(x、y)に対して、上下左右位置の4隣接ピクセルに加えて、左斜め上、左斜め下、右斜め上および右斜め下の4隣接ピクセルの合計8隣接ピクセルの各光強度Iとの差(コントラストC)のいずれかが所定の閾値Tよりも負の値である場合に欠陥ピクセルと判定する。このように、欠陥検出すべきピクセル(x、y)に対して、これを囲む8隣接ピクセルの各光強度Iとの差(コントラストC)をそれぞれ求めることにより、上記実施形態1の場合のように4隣接ピクセルの各光強度Iとの差(コントラストC)をそれぞれ求める場合に比べて、より精度よく欠陥ピクセルを求めることができる。
【0098】
しかも、上記実施形態1では、XY座標変換されたピクセルサイズに比べて欠陥サイズが数倍程度であれば全く問題ないが、XY座標変換された隣接9ピクセルが欠陥サイズに完全に入ってしまうように、欠陥サイズがピクセルサイズの十倍以上と大きくなって、一または複数のピクセルを複数の欠陥ピクセルが囲むほど欠陥サイズが大きい場合には、その囲まれた一または複数のピクセルは欠陥ピクセルでありながら、正常ピクセルであると判定されてしまう不都合が生じる。このため、本実施形態2の欠陥検出手段113Aでは、これをも是正している。
【0099】
即ち、欠陥検出手段113Aは、欠陥判定すべきピクセルが、欠陥ピクセルにより囲まれた正常ピクセルである場合に、この正常ピクセルを欠陥ピクセルとして変更する処理を行う。
【0100】
上記構成の欠陥検出装置10Aにより上記エピタキシャル成長基板17の欠陥部分を検出する動作について詳細に説明する。
【0101】
図9は、図8の欠陥検出装置10Aの欠陥検出動作について説明するためのフローチャートである。
【0102】
図9に示すように、まず、ステップS1で、PL測定手段111は、発光部16の発光ダイオードアレイを発光させると共に撮像部18を撮像駆動する。発光部16からの光がエピタキシャル成長基板17の表面で反射し、その反射光を撮像部17で撮像する。撮像部18からの光強度Iの基板全面の分布を示す反射光強度分布データを得る。
【0103】
次に、ステップS2で、XY座標変換手段112が、撮像部18から得た反射光強度分布データをマトリクス状の複数の小領域(画素;ピクセル)に分割し、複数のピクセルの光強度Iと共にその位置をそれぞれ示す座標(X,Y)データに変換する。この複数のピクセル毎の(X,Y)変換情報は一旦コンピュータシステム内の記憶部(RAM15)に記憶される。
【0104】
その後、コンピュータシステムの欠陥検出手段113Aは、XY座標変換されたマッピングデータを元に、各ピクセル毎に、対応するウエハ(エピタキシャル成長基板17)の各ピクセル毎の欠陥の有無を判定する。この場合、コントラストCによって欠陥検出をより精度よく行うために、欠陥検出すべきピクセル(x、y)に対して、平面視で上下左右および、左斜め上、左斜め下、右斜め上、右斜め下の合計8隣接ピクセル(1行上の隣接ピクセル、1行下の隣接ピクセル、一つ左の隣接ピクセル、一つ右の隣接ピクセル、左斜め上の隣接ピクセル、左斜め下の隣接ピクセル、右斜め上の隣接ピクセルおよび右斜め下の隣接ピクセル)の各光強度Iとの差(コントラストC)のいずれかが所定の閾値Tよりも負の値である場合に欠陥と判定する。
【0105】
その欠陥判定方法は以下の計算による。
【0106】
まず、ステップS3で、欠陥検出手段113Aが、欠陥検出すべきピクセル(Xn、Ym)を設定する。このピクセル(Xn、Ym)は、第m行第n列の複数のピクセルに対して、第1行第1列目の(1,1)からスタートしてその行の終端の(n、1)、次の行の先頭の第2行第1列目の(1,2)からその終端の(n、2)、・・・最終行の先頭の第m行第1列目の(1,m)からその行の終端の(n、m)の順で順次設定する。
【0107】
次に、ステップS4で、欠陥検出手段113Aが、欠陥検出すべき座標(x、y)ピクセルに対する上下左右および、左斜め上、左斜め下、右斜め上、右斜め下の合計8隣接ピクセルとの差(コントラストC1〜8)を次の式(1)〜式(8)により順次求めるが、まずは、欠陥検出すべき座標(x、y)ピクセルに対する右横の隣接ピクセルとの差(コントラストC1)を次の式(1)により求める。
【0108】
【数4】

ここで、式(1)〜式(4)において、光強度I(x+1,y)は、欠陥検出すべき座標(x,y)ピクセルのx軸プラス方向(右横)への隣接ピクセルの光強度、I(x−1,y)は、欠陥検出すべき座標(x,y)ピクセルのx軸マイナス方向(左横)への隣接ピクセルの光強度、I(x,y+1)は、欠陥検出すべき座標(x,y)ピクセルのy軸プラス方向(下側)への隣接ピクセルの光強度、I(x,y+1)は、欠陥検出すべき座標(x,y)ピクセルのy軸マイナス方向(上側)への隣接ピクセルの光強度を表している。これは図2(a)に示すピクセルの光強度I(x,y)に対して斜線部分の上下左右の4隣接ピクセルの光強度Iに対応している。
【0109】
さらに、式(5)〜式(8)において、光強度I(x+1,y+1)は、欠陥検出すべき座標(x,y)ピクセルのx軸およびy軸プラス方向への隣接ピクセル(右斜め下)の光強度、光強度I(x+1,y−1)は、欠陥検出すべき座標(x,y)ピクセルのx軸プラス方向およびy軸マイナス方向への隣接ピクセル(右斜め上)の光強度、光強度I(x−1,y+1)は、欠陥検出すべき座標(x,y)ピクセルのx軸マイナス方向、y軸プラス方向への隣接ピクセル(左斜め下)の光強度、光強度I(x−1,y−1)は、欠陥検出すべき座標(x,y)ピクセルのx軸マイナス方向、y軸マイナス方向への隣接ピクセル(左斜め上)の光強度を表している。これは図2(a)に示す中央ピクセルの光強度I(x,y)に対してドット部分に示す左斜め上、左斜め下、右斜め上および右斜め下の4隣接ピクセルの光強度Iに対応している。
【0110】
次に、ステップS5で、欠陥検出手段113Aが、上記式(1)のコントラストC1を、予め決めた閾値Tと比較して、コントラストC1<閾値Tであれば(YES)、ステップS6の処理に移行する。
【0111】
さらに、ステップS6では、不良登録手段114が、欠陥検出手段113Aにより欠陥ピクセルであると決定された光強度Iをそのアドレスの座標(X,Y)と共に所定の記憶部(例えばRAM15)にNG登録する。この場合、座標(X,Y)だけをNG登録してもよい。
【0112】
また、ステップS5で、欠陥検出手段113Aが、上記式(1)のコントラストC1を、予め決めた閾値Tと比較して、コントラストC1<閾値T以外であれば(NO)、ステップS7Aの処理に移行する。
【0113】
さらに、ステップS7Aでは、欠陥検出すべき座標(x、y)ピクセルに対して、座標(x、y)を囲む8隣接ピクセルとのコントラストC1〜C8の各比較を全て終えたかどうかを決定する。欠陥検出すべき座標(x、y)ピクセルと、座標(x、y)を囲む8隣接ピクセルとのコントラストC1〜C8の各比較を全て終えていなければ(NO)、ステップS4で別の隣接ピクセルとのコントラストC2を求め、ステップS5でコントラストC2と閾値Tと比較して、コントラストC2<閾値T以外であれば(NO)、ステップS7Aの処理に戻る。ステップS7Aで、欠陥検出すべき座標(x、y)ピクセルに対して8隣接ピクセルとのコントラストC1〜C8の比較を全て終えた場合(YES)に、次のステップS8の処理に移行する。
【0114】
さらに、ステップS8では、設定した座標(x、y)ピクセルが欠陥ピクセルではないと判定するが、ここでは、欠陥検出手段113Aにより欠陥ピクセルではないと決定された光強度Iをそのアドレスの座標(X,Y)と共に所定の記憶部(例えばRAM15)に良品登録はせず、なにもしない。その理由は、もちろん良品登録してもよいが、NG登録をしておけば、登録されていない座標(X,Y)のピクセルは全て良品と判定することができるからである。
【0115】
ステップS5において、上記式(1)〜式(8)のコントラストC1〜C8を、予め決めた閾値T1またはT2とそれぞれ比較するが、コントラスC1<T、コントラストC2<T、コントラストC3<T、・・・コントラストC8<Tのいずれかに当てはまる場合(YES)、座標(x,y)に該当するピクセルは欠陥ピクセルと判定してステップS6のNG登録処理を行う。
【0116】
その後、ステップS6またはステップS8の処理の後、ステップS10の処理に移行する。ステップS10では、欠陥判定すべきピクセルが、欠陥ピクセルにより囲まれた正常ピクセルであるかどうかを欠陥検出手段113Aが決定する。欠陥判定すべきピクセルが、欠陥ピクセルにより囲まれた正常ピクセルである場合(ステップS10でYES)には、この正常ピクセルを欠陥ピクセルとして変更してステップS6でNG登録する必要がある。これは、欠陥判定すべき中央ピクセルが、欠陥ピクセルにより囲まれている場合、その中央ピクセルが欠陥ピクセルの場合に、中央ピクセルとその周辺の隣接欠陥ピクセルとの各光強度Iの差(コントラストC)をとると、両方とも欠陥ピクセルであるため、それらの差(コントラストC)が小さく、ステップS5では欠陥検出手段113Aは正常ピクセルと判定されてしまうからである。
【0117】
最後に、ステップS9では、全ピクセルに対して欠陥判定処理を行ったかどうかを決定する。ステップS9で、全ピクセルに対して欠陥判定処理を行っていなければ(NO)、ステップS3の処理に戻り、次の欠陥判定すべきピクセルを設定する。また、ステップS9で、全ピクセルに対して欠陥判定処理を行っていれば(YES)、この欠陥判定処理を終了する。
【0118】
この欠陥ピクセルの個数は、NG登録結果によって、ウエハ(エピタキシャル成長基板17)単位で集計され、ウエハの品質を表す指標を簡便に求めることができる。
【0119】
測定が完了したウエハ(エピタキシャル成長基板17)は、電極形成工程、個片化工程を経て、発光ダイオードなどのデバイス完成品となる。
【0120】
このように、化合物半導体層をエピタキシャル成長させたエピタキシャル成長基板17に対してフォトルミネッセンスによる発光強度のマッピングデータを取得し、隣接ピクセルとの差を測定することにより、化合物半導体基板の欠陥を評価する。これにより、ウエハの品質を表す指標を簡便に求めることができる。
【0121】
欠陥と判定されたピクセルの個数とウエハ一枚辺りのデバイスの歩留まりとの関係を図7に示している。欠陥と判定されたピクセルの個数とウエハ一枚辺りのデバイスの歩留まりとの間に相関が見られるが、これを活用して、デバイス歩留まり予測やエピタキシャル装置の管理などに用いることができる。
【0122】
以上説明したように、本実施形態2によれば、化合物半導体層をエピタキシャル成長させたエピタキシャル成長基板17に対しフォトルミネッセンスによる発光強度Iの反射光強度分布データを細かく各ピクセル領域(例えば1mm角程度であれば、半径10cmのウエハで数万個)に分割してX,Y座標変換して取得し、欠陥検出をすべきピクセルと複数(ここでは8)の隣接ピクセルとの差をコントラストCとして演算し、このコントラストCと所定の閾値Tとの比較により、当該化合物半導体基板の欠陥を評価するようにしたので、従来のように、欠陥測定に予め基準ウエハを用意して測っておく必要がなく、また、結晶欠陥以外の膜厚分布に左右されることもなく、転位、積層欠陥などの結晶欠陥を容易かつ精度よく検出することができる。要するに、エピタキシャル成長基板17に対する光強度分布を示す反射光強度分布データを複数のピクセル領域に分割してX,Y座標変換して取得し、細かく分割した小領域(ピクセル領域)毎にアドレスを座標(x、y)で指定し、これと隣接ピクセルとの差を用いて良否判定するので、NGピクセルの数もその位置も明確になり、化合物半導体エピタキシャルウエハ(エピタキシャル成長基板17)の品質を表す指標を簡便に求めることができる。これを活用して、デバイス歩留まり予測やエピタキシャル装置の管理などに用いることができる。さらに、欠陥検出すべきピクセル(x、y)に対して、これを囲む8隣接ピクセルの各光強度Iとの差(コントラストC)をそれぞれ求めるため、上記実施形態1の場合のように4隣接ピクセルの各光強度Iとの差(コントラストC)をそれぞれ求める場合に比べて、より精度よく欠陥ピクセルを求めることができる。しかも、欠陥検出手段113Aは、欠陥判定すべきピクセルが、欠陥ピクセルにより囲まれた正常ピクセルである場合に、この正常ピクセルを欠陥ピクセルとして変更するため、XY座標変換された隣接9ピクセルが欠陥サイズに完全に入ってしまうように、欠陥サイズがピクセルサイズの十倍以上と大きくなって、一または複数のピクセルを複数の欠陥ピクセルが囲むほど欠陥サイズが大きい場合にも、より正確な欠陥ピクセルの判定を行うことができる。
【0123】
なお、本実施形態1、2では、特に説明しなかったが、単結晶基板上に化合物半導体層をエピタキシャル成長させたエピタキシャル成長基板17の上方より励起光を照射して励起した後に、フォトルミネッセンスによる発光強度のマッピングをエピタキシャル成長基板全体に渡って行う座標変換手段としてのXY座標変換手段112と、座標変換手段112により座標に分割された複数のピクセルのそれぞれとこれに隣接する複数ピクセルとの差を用いて、欠陥検出すべきピクセルが欠陥ピクセルかどうかを順次検出する欠陥検出手段113または113Aとを有することにより、欠陥測定に予め基準ウエハを用意して測っておく必要がなく、結晶欠陥以外の膜厚分布に左右されることもなく、転位や積層欠陥などの結晶欠陥を容易かつ精度よく検出する本発明の目的を達成することができる。
【0124】
なお、本実施形態2では、欠陥判定すべきピクセルが、欠陥ピクセルにより囲まれた正常ピクセルであるかどうかを欠陥検出手段113Aが決定する場合に、囲まれる欠陥ピクセルが、上記8隣接ピクセルの場合について説明したが、これに限らず、上記4隣接ピクセルであってもよく、さらには、その他複数の隣接ピクセルであってもよい。
【0125】
なお、本実施形態1、2では、欠陥判定すべき中央ピクセルに対して差(コントラストC)を求めるための4または8隣接ピクセルの場合について説明したが、これに限らず、上記上下または左右などの2隣接ピクセルであってもよく、さらには、8隣接ピクセルの外周側のピクセルであってもよく、要するに、欠陥判定すべき中央ピクセルに対して差(コントラストC)を求めるための複数の隣接ピクセルであればよい。
【0126】
なお、上記実施形態1、2では、PL測定手段111により得たエピタキシャル成長基板17全面の反射光強度分布データを所定の寸法(例えば1mm角程度)で分割して直交座標(X,Y)データに変換するXY座標変換手段112を用いたが、これに限らず、PL測定手段111により得たエピタキシャル成長基板17全面の反射光強度分布データを所定の寸法(例えば1mm角程度)で分割して極座標(r,θ)データに変換する極座標変換手段を用いることもできる。この場合、欠陥検出手段は、極座標変換手段により分割された複数の小領域(画素またはピクセル)に対し、これに隣接する複数ピクセル(ここでは4または8としてもよいが単に複数でもよい)を用いて欠陥領域(欠陥ピクセル)かどうかを順次検出することができる。
【0127】
なお、上記実施形態2では、欠陥検出手段113Aは、欠陥検出すべきピクセルの光強度に対して、その上下左右および、左斜め上、左斜め下、右斜め上、右斜め下の8隣接ピクセルの光強度との差のいずれかが所定の閾値Tよりも負の値である場合に欠陥画素と決定する場合について説明したが、これに限らず、上下左右および、左斜め上、左斜め下、右斜め上、右斜め下の8隣接ピクセルのうちの少なくとも5隣接ピクセルの光強度との差のいずれかが所定の閾値Tよりも負の値である場合に欠陥画素と決定するようにしてもよい。
【0128】
なお、上記実施形態1.2では、欠陥検出手段は、欠陥検出すべきピクセルの光強度に対して、4または8隣接ピクセルの光強度との差のいずれかが所定の閾値Tよりも負の値である場合に欠陥画素と決定する場合について説明したが、これに限らず、欠陥検出すべき座標(x、y)ピクセルに対して、複数隣接ピクセル(例えば4または8隣接ピクセル)の光強度との差の絶対値のいずれかが所定の閾値Tよりも大きい場合に欠陥ピクセルと決定してもよい。この場合、欠陥検出すべき設定ピクセルの光強度I(x,y)に対して差の絶対値を求めた隣接ピクセルが欠陥ピクセルであると既に認定されたものである場合には、コントラストC>閾値Tで差があっても、差を求めた隣接ピクセルが欠陥ピクセルの場合は正常ピクセルであると認定(NO)することもできる。
【0129】
以上のように、本発明の好ましい実施形態1、2を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態1、2に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態1、2の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明は、例えばLEDなどの発光素子やパワーデバイスに用いられる化合物半導体エピタキシャルウエハの欠陥検出装置およびこれを用いた欠陥検出方法、この欠陥検出方法の各ステップをコンピュータに実行させるための制御プログラム、この制御プログラムが格納された可読記憶媒体の分野において、発光強度のマッピングをエピタキシャル成長基板全体に渡って行うと共に、欠陥検出に隣接複数ピクセルとの差を用いるため、欠陥検出に予め基準ウエハを用意して測っておく必要がなく、結晶欠陥以外の膜厚分布に左右されることもなく、転位や積層欠陥などの結晶欠陥を容易かつ精度よく検出することができる。
【符号の説明】
【0131】
10,10A 欠陥検出装置
11、11A 制御手段(CPU;中央演算処理装置)
112 XY座標変換手段
113、113A 欠陥検出手段
114 不良登録手段
12 操作部
13 表示部
14 ROM(可読記録媒体)
15 RAM(記憶部)
16 発光部
17 エピタキシャル成長基板
18 撮像部
111 PL測定手段
1 MOCVD反応室
2 ヒータ
3 サセプタ
4 サファイア基板
C、C1〜C4 コントラスト
I 光強度
T1、T2 閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶基板上に化合物半導体層をエピタキシャル成長させたエピタキシャル成長基板の上方より励起光を照射して励起した後に、フォトルミネッセンスによる発光強度のマッピングをエピタキシャル成長基板全体に渡って行う座標変換手段と、該座標変換手段により座標に分割された複数のピクセルのそれぞれとこれに隣接する複数ピクセルとの差を用いて、欠陥検出すべきピクセルが欠陥ピクセルかどうかを順次検出する欠陥検出手段とを有する欠陥検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の欠陥検出装置において、前記座標変換手段は、前記エピタキシャル成長基板全面の反射光強度分布データを座標データに変換する欠陥検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の欠陥検出装置において、前記座標変換手段は、前記エピタキシャル成長基板全面の反射光強度分布データを直交座標に分割して座標(X,Y)データに変換する欠陥検出装置。
【請求項4】
請求項2に記載の欠陥検出装置において、前記座標変換手段は、前記エピタキシャル成長基板全面の反射光強度分布データを極座標に分割して座標(r,θ)データに変換する欠陥検出装置。
【請求項5】
請求項1に記載の欠陥検出装置において、前記欠陥検出手段は、前記欠陥検出すべきピクセルの光強度に対して、その上下左右の4隣接ピクセルのうちの少なくとも複数隣接ピクセルの光強度との差のいずれかが所定の閾値Tよりも負の値である場合に欠陥ピクセルと決定する欠陥検出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の欠陥検出装置において、前記欠陥検出手段は、前記欠陥検出すべきピクセルの光強度に対して、その左斜め上、左斜め下、右斜め上および右斜め下の4隣接ピクセルのうちの少なくとも複数隣接ピクセルの光強度との差のいずれかが所定の閾値Tよりも負の値である場合に欠陥ピクセルと決定する欠陥検出装置。
【請求項7】
請求項1に記載の欠陥検出装置において、前記欠陥検出手段は、前記欠陥検出すべきピクセルの光強度に対して、その上下左右および、左斜め上、左斜め下、右斜め上、右斜め下の8隣接ピクセルのうちの少なくとも5隣接ピクセルの光強度との差のいずれかが所定の閾値Tよりも負の値である場合に欠陥ピクセルと決定する欠陥検出装置。
【請求項8】
請求項5に記載の欠陥検出装置において、前記欠陥検出手段は、
前記上下左右の4隣接ピクセルのうちの少なくとも複数隣接ピクセルの光強度との差は、次の式(1)〜式(4)のうちの少なくとも複数式により順次求める欠陥検出装置。
【数5】

【請求項9】
請求項6に記載の欠陥検出装置において、前記欠陥検出手段は、
前記左斜め上、左斜め下、右斜め上および右斜め下の4隣接ピクセルのうちの少なくとも複数隣接ピクセルの光強度との差は、次の式(5)〜式(8)のうちの少なくとも複数式により順次求める欠陥検出装置。
【数6】

【請求項10】
請求項7に記載の欠陥検出装置において、前記欠陥検出手段は、
上下左右および、左斜め上、左斜め下、右斜め上、右斜め下の8隣接ピクセルのうちの少なくとも5隣接ピクセルの光強度との差は、次の式(1)〜式(8)のうちの少なくとも5つの式により順次求める欠陥検出装置。
【数7】

【請求項11】
請求項5〜10のいずれかに記載の欠陥検出装置において、前記欠陥検出手段は、一または複数のピクセルを複数の欠陥ピクセルが囲むほど欠陥サイズが大きい場合には、その囲まれた該一または複数のピクセルは欠陥ピクセルであると決定する欠陥検出装置。
【請求項12】
請求項1に記載の欠陥検出装置において、前記欠陥ピクセルの欠陥情報を所定の記憶部に登録する不良登録手段を更に有する欠陥検出装置。
【請求項13】
請求項12に記載の欠陥検出装置において、前記不良登録手段は、前記欠陥情報として、前記欠陥検出手段により欠陥ピクセルであると決定された領域の光強度をそのアドレスの座標と共に前記所定の記憶部に登録するかまたは、当該座標のみを該所定の記憶部に登録する欠陥検出装置。
【請求項14】
請求項12または13に記載の欠陥検出装置において、前記不良登録手段は、前記欠陥ピクセル数を前記エピタキシャル成長基板毎に計数し、この計数値を前記欠陥情報として前記所定の記憶部に登録すると共に、該計数値により該エピタキシャル成長基板の品質を判定可能とする欠陥検出装置。
【請求項15】
発光により前記エピタキシャル成長基板の全面を均一光強度で照射する発光手段と、該エピタキシャル成長基板からのフォトルミネッセンス光を含む反射光を撮像する撮像手段と、該発光手段および該撮像手段を駆動させて該エピタキシャル成長基板全面の反射光強度分布データを得るPL測定手段とを更に有する欠陥検出装置。
【請求項16】
単結晶基板上に、化合物半導体層をエピタキシャル成長させ、該化合物半導体層の上方より励起光を照射して励起した後、座標変換手段が、フォトルミネッセンスによる発光強度のマッピングをエピタキシャル成長基板全体に渡って行う座標変換ステップと、欠陥検出手段が、該座標変換手段により座標に分割された複数のピクセルのそれぞれとこれに隣接する複数ピクセルとの差を用いて、欠陥検出すべきピクセルが欠陥ピクセルかどうかを順次検出する欠陥検出ステップとを有する欠陥検出方法。
【請求項17】
請求項16に記載の欠陥検出方法において、前記座標変換ステップは、前記エピタキシャル成長基板全面の反射光強度分布データを座標データに変換する欠陥検出方法。
【請求項18】
請求項17に記載の欠陥検出方法において、前記座標変換ステップは、前記エピタキシャル成長基板全面の反射光強度分布データを直交座標に分割して座標(X,Y)データに変換する欠陥検出方法。
【請求項19】
請求項17に記載の欠陥検出方法において、前記座標変換ステップは、前記エピタキシャル成長基板全面の反射光強度分布データを極座標に分割して座標(r,θ)データに変換する欠陥検出方法。
【請求項20】
請求項16に記載の欠陥検出方法において、前記欠陥検出ステップは、前記欠陥検出すべきピクセルの光強度に対して、その上下左右の4隣接ピクセルのうちの少なくとも複数隣接ピクセルの光強度との差のいずれかが所定の閾値Tよりも負の値である場合に欠陥ピクセルと決定する欠陥検出方法。
【請求項21】
請求項16に記載の欠陥検出方法において、前記欠陥検出ステップは、前記欠陥検出すべきピクセルの光強度に対して、その左斜め上、左斜め下、右斜め上および右斜め下の4隣接ピクセルのうちの少なくとも複数隣接ピクセルの光強度との差のいずれかが所定の閾値Tよりも負の値である場合に欠陥ピクセルと決定する欠陥検出方法。
【請求項22】
請求項16に記載の欠陥検出方法において、前記欠陥検出ステップは、前記欠陥検出すべきピクセルの光強度に対して、その上下左右および、左斜め上、左斜め下、右斜め上、右斜め下のうちの少なくとも5隣接ピクセルの光強度との差のいずれかが所定の閾値Tよりも負の値である場合に欠陥ピクセルと決定する欠陥検出方法。
【請求項23】
請求項20〜22のいずれかに記載の欠陥検出方法において、前記欠陥検出手段は、一または複数のピクセルを複数の欠陥ピクセルが囲むほど欠陥サイズが大きい場合には、その囲まれた該一または複数のピクセルは欠陥ピクセルであると決定する欠陥検出方法。
【請求項24】
請求項16に記載の欠陥検出方法において、前記欠陥ピクセルの欠陥情報を所定の記憶部に登録する不良登録手段を更に有する欠陥検出方法。
【請求項25】
請求項16に記載の欠陥検出方法において、前記不良登録ステップは、前記欠陥情報として、前記欠陥検出手段により欠陥ピクセルであると決定された領域の光強度をそのアドレスの座標と共に前記所定の記憶部に登録するかまたは、当該座標のみを前記欠陥情報として該所定の記憶部に登録する欠陥検出方法。
【請求項26】
請求項24または25に記載の欠陥検出方法において、前記不良登録ステップは、前記欠陥ピクセル数を前記エピタキシャル成長基板毎に計数し、この計数値を前記欠陥情報として前記所定の記憶部に登録すると共に、該計数値により該エピタキシャル成長基板の品質を判定可能とする欠陥検出方法。
【請求項27】
請求項16〜26のいずれかに記載の欠陥検出方法の各ステップをコンピュータに実行させるための処理手順が記述された制御プログラム。
【請求項28】
請求項27に記載の制御プログラムが格納されたコンピュータ読み取り可能な可読記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−258904(P2011−258904A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134551(P2010−134551)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】