説明

歩行者携帯用無線通信端末

【課題】聴覚的な出力を歩行者に的確に認識させる。
【解決手段】音声入力制御部22は、所定の操作部材に対する所定の操作順の複数の操作、或いは、操作部材に対して所定の操作時間に亘って継続される所定の操作を検出した場合に、所定時間以内に亘ってマイク12による録音可能状態とし、操作者の音声入力を記憶部23に格納する。警報判定部25は、端末状態量検出部21から出力される歩行者携帯用無線通信端末10の現在位置および進行方向および速度と、車両状態量検出部24により検出される周囲の車両までの距離および周囲の車両の速度および進行方向とに基づき、歩行者と周囲の車両との接触の可能性があるか否かを判定する。出力制御部26は、警報判定部25の判定結果に基づき、記憶部23に格納されている所定の音声を取得して警報装置14の聴覚的伝達装置から出力させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、歩行者携帯用無線通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両と歩行者間で情報授受を行い、歩行者に対する注意または警報を、モニター上での表示等による視覚的な通知や、音響出力や合成音声出力等による聴覚的な通知や、振動等による触感的な通知により報知する無線通信システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−220143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来技術に係る無線通信システムによれば、歩行者周囲の環境に応じて、例えば交通量が相対的に多い場所や人が相対的に多い場所等のように、周囲の騒音が相対的に高い場合には、歩行者が聴覚的な通知を的確に認識することが困難となる虞がある。しかも、音響出力や合成音声出力等の聴覚的な出力が、例えば他の機器からの聴覚的なの出力に類似している場合等のように、相対的に高い汎用性を有する場合には、これらの聴覚的な出力によって歩行者の注意を喚起することは、より一層、困難となる虞がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、聴覚的な出力を歩行者に的確に認識させることが可能な歩行者携帯用無線通信端末を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の歩行者携帯用無線通信端末は、車両に搭載された車載無線通信装置と直接的または間接的に通信を行うことにより所定の状況で歩行者に対して警報を出力可能な歩行者携帯用無線通信端末であって、音声を録音して記憶する音声記憶手段(例えば、実施の形態での記憶部23)と、該音声記憶手段が記憶した前記音声を前記警報として出力する音声出力手段(例えば、実施の形態での出力制御部26および警報装置14)とを備えることを特徴としている。
【0005】
上記の歩行者携帯用無線通信端末によれば、音声記憶手段が記憶した音声を警報として出力することから、歩行者が習慣的に反応し易い音声、例えば肉親による名前の称呼等を記憶することにより、歩行者の注意を的確に喚起することができる。
【0006】
さらに、請求項2に記載の本発明の歩行者携帯用無線通信端末では、前記所定の状況は車両と前記歩行者が接触する可能性がある状況であり、前記警報は前記状況であることを伝達もしくは前記状況を回避する方法を伝達する音声の少なくとも何れかであることを特徴としている。
【0007】
上記の歩行者携帯用無線通信端末によれば、車両と歩行者が接触する可能性がある状況で警報を出力することにより、車両と歩行者との接触を適切に回避させることができる。
【0008】
さらに、請求項3に記載の本発明の歩行者携帯用無線通信端末は、所定数の操作部材を備え、前記音声記憶手段は前記操作部材の所定の操作順と所定の操作時間との少なくとも何れかの操作により録音可能となることを特徴としている。
【0009】
上記の歩行者携帯用無線通信端末によれば、操作部材に対する所定の操作順の複数の操作、あるいは、操作部材に対して所定の操作時間に亘って継続される所定の操作を検出した場合に録音可能とすることにより、操作者の操作意志に反して、あるいは、操作者が意図していない状態で録音状態となってしまうことを防止することができる。
【0010】
さらに、請求項4に記載の本発明の歩行者携帯用無線通信端末では、前記音声記憶手段は所定時間以内の前記音声を録音可能であることを特徴としている。
【0011】
上記の歩行者携帯用無線通信端末によれば、出力される音声が過剰に長くなることを防止して、緊急時等において適切な警報を出力させることができる。
【0012】
さらに、請求項5に記載の本発明の歩行者携帯用無線通信端末では、前記所定の状況は、前記車両と前記歩行者との接触の危険性がある状況であることを特徴としている。
【0013】
上記の歩行者携帯用無線通信端末によれば、車両と歩行者との接触の危険性がある状況で歩行者に対して、音声記憶手段が記憶した音声を警報として出力することにより、車両と歩行者との接触を未然に防止することができる。
【0014】
さらに、請求項6に記載の本発明の歩行者携帯用無線通信端末は、前記接触の危険性の程度を推定する推定手段(例えば、実施の形態での警報判定部25)を備え、前記音声出力手段は前記危険性の程度に応じて、前記警報として出力する前記音声を変更することを特徴としている。
【0015】
上記の歩行者携帯用無線通信端末によれば、車両と歩行者との接触の危険性の程度に応じて、警報として出力する音声を変更することにより、歩行者に危険な状況の危険性の程度を適切に認識させることができる。
【0016】
さらに、請求項7に記載の本発明の歩行者携帯用無線通信端末では、前記推定手段は、前記接触の危険性の程度を、通信電波の受信により得られる前記車両と前記歩行者との相対距離および前記通信電波の電波強度に基づき推定するものであり、前記相対距離の接近に伴う前記電波強度の変化に応じて、少なくとも、前記車両が前記歩行者の側方を通過するか、または、前記歩行者に正対して接近するかを判別するものであることを特徴としている。
【0017】
上記の歩行者携帯用無線通信端末によれば、通信電波の受信により得られる車両と歩行者との相対距離、および、通信電波の電波強度に基づき、車両と歩行者との接触の危険性の程度を推定することにより、推定精度を向上させることができる。そして、相対距離の接近に伴う電波強度の変化に応じて、車両が歩行者に正対して接近するかを判別することに加えて、車両が歩行者の側方を通過するかを判別することにより、単に、歩道等に存在する歩行者の側方を車両が通過するような場合であっても、歩行者に適切に注意を促すことにより、歩行者が危険な状況に陥ることを未然に防ぐことができる。
【0018】
さらに、請求項8に記載の本発明の歩行者携帯用無線通信端末では、前記推定手段は、前記相対距離の変化に対して前記電波強度の変化が相対的に少ない場合に、前記車両が前記歩行者の側方を通過すると判別し、前記相対距離の増加に伴い前記電波強度が相対的に急激に減少する場合に、前記車両が前記歩行者に正対して接近すると判別することを特徴としている。
【0019】
上記の歩行者携帯用無線通信端末によれば、車両が歩行者の側方を通過する場合と、車両が前記歩行者に正対して接近する場合とを適切に判別することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明の歩行者携帯用無線通信端末によれば、歩行者が習慣的に反応し易い音声を記憶しておくことにより、歩行者の注意を的確に喚起することができる。
さらに、請求項2に記載の本発明の歩行者携帯用無線通信端末によれば、車両と歩行者が接触する可能性がある状況で警報を出力することにより、車両と歩行者との接触を適切に回避させることができる。
さらに、請求項3に記載の本発明の歩行者携帯用無線通信端末によれば、操作者の操作意志に反して、あるいは、操作者が意図していない状態で録音状態となってしまうことを防止することができる。
さらに、請求項4に記載の本発明の歩行者携帯用無線通信端末によれば、出力される音声が過剰に長くなることを防止して、緊急時等において適切な警報を出力させることができる。
【0021】
さらに、請求項5に記載の本発明の歩行者携帯用無線通信端末によれば、車両と歩行者との接触の危険性がある状況で歩行者に対して、音声記憶手段が記憶した音声を警報として出力することにより、車両と歩行者との接触を未然に防止することができる。
さらに、請求項6に記載の本発明の歩行者携帯用無線通信端末によれば、車両と歩行者との接触の危険性の程度に応じて、警報として出力する音声を変更することにより、歩行者に危険な状況の危険性の程度を適切に認識させることができる。
【0022】
さらに、請求項7に記載の本発明の歩行者携帯用無線通信端末によれば、単に、歩道等に存在する歩行者の側方を車両が通過するような場合であっても、歩行者に適切に注意を促すことにより、歩行者が危険な状況に陥ることを未然に防ぐことができる。
さらに、請求項8に記載の本発明の歩行者携帯用無線通信端末によれば、車両が歩行者の側方を通過する場合と、車両が前記歩行者に正対して接近する場合とを適切に判別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る歩行者携帯用無線通信端末について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による歩行者携帯用無線通信端末10は、例えば図1に示すように、測位信号受信装置11と、マイク12と、通信装置13と、警報装置14と、処理装置15とを備えて構成されている。
【0024】
測位信号受信装置11は、例えば人工衛星を利用して現在位置を測定するためのGPS(Global Positioning System)信号等の測位信号を外部から受信する。
マイク12は、操作者による音声入力の信号を処理装置15に出力する。
通信装置13は、外部の情報発信装置から発信される各種の情報、例えば周囲の車両から発信される自車両の走行状態や走行路に関する情報等を受信する。
【0025】
警報装置14は、例えば、触覚的伝達装置と、視覚的伝達装置と、聴覚的伝達装置とを備えて構成されている。
触覚的伝達装置は、例えば振動装置等であって、処理装置15から入力される制御信号に応じて、例えば歩行者携帯用無線通信端末1に歩行者が知覚可能な振動を発生させることによって、歩行者の注意喚起を促す。
視覚的伝達装置は、例えば表示装置(例えば、図2(a),図3に示す各表示画面C1)等を備え、処理装置15から入力される制御信号に応じて、例えば表示装置に所定の警報情報を表示したり、所定の警報灯を点滅させることによって、歩行者の注意喚起を促す。
聴覚的伝達装置は、例えばスピーカ等であって、処理装置15から入力される制御信号に応じて、所定の音声を出力することによって、歩行者の注意喚起を促す。
【0026】
処理装置15は、例えば端末状態量検出部21と、音声入力制御部22と、記憶部23と、車両状態量検出部24と、警報判定部25と、出力制御部26とを備えて構成されている。
【0027】
端末状態量検出部21は、GPS(Global Positioning System)信号等の測位信号に基づき、現在位置を検出すると共に、この現在位置の時間変化等に基づき、進行方向および速度を算出する。
なお、端末状態量検出部21は、例えば、GPS信号等の複数の測位信号毎に応じた現在位置の平均値や、地磁気センサや加速度センサ等のセンサ(図示略)の検出値に基づき、GPS信号等の測位信号に基づいて算出した現在位置の算出結果を補正してもよい。
【0028】
音声入力制御部22は、例えばボタンやスイッチ等からなる所定の操作部材(例えば、図2(b),図3に示す各操作ボタンd1〜d3等)に対する所定の操作順の複数の操作(例えば、図3に示す複数の操作ボタンd1〜d3に対する所定順の押下操作や複数の操作ボタンd1〜d3のうちの何れか2つの操作ボタンに対する同時の押下操作等)、あるいは、操作部材に対して所定の操作時間に亘って継続される所定の操作(例えば、図2(b)に示す歩行者携帯用無線通信端末10の側部表面上から窪むようにして配置された操作ボタンd1に対する所定時間以上に亘る押下操作等)を検出した場合に、例えば所定時間(例えば、2〜3秒等)以内に亘ってマイク12による録音可能状態とし、操作者の音声入力を記憶部23に格納する。
【0029】
車両状態量検出部24は、例えば周囲の車両から発信される車両の走行状態や走行路に関する情報に基づき、周囲の車両までの距離と、周囲の車両の速度および進行方向を検出する。
警報判定部25は、端末状態量検出部21から出力される歩行者携帯用無線通信端末10の現在位置および進行方向および速度と、車両状態量検出部24により検出される周囲の車両までの距離および周囲の車両の速度および周囲の車両の進行方向とに基づき、例えば周囲の車両との接触の可能性があるか否かを判定することにより、警報出力の要否を判定する。
【0030】
出力制御部26は、警報判定部25から出力される警報出力の要否の判定結果に基づき、記憶部23に格納されている所定の音声を取得して警報装置14の聴覚的伝達装置から出力させる。
【0031】
なお、出力制御部26は、例えば相対的に危険度が高い状態での警報として、記憶部23に記憶された音声を出力するように設定してもよいし、例えば記憶部23に記憶された音声を適宜の警報音と併用して出力可能とし、相対的に危険度が低い状態では警報音のみを出力し、危険度が所定値以上となった場合に記憶部23に記憶された音声を出力するように設定してもよい。
また、出力制御部26は、例えば車両と歩行者との接触の危険性の程度や、例えば衝突発生までの時間に応じて記憶部23から警報として選択する音声を変更してもよい。この場合、例えば衝突発生までの時間が短くなることに伴い、音声の録音時間が短縮傾向に変化するように設定してもよい。
【0032】
例えば下記表1に示すように、出力制御部26は、衝突までの時間が相対的に長い所定時間(例えば、10秒等)においては、自分の行動に気をつけさせる警報として、例えば録音時間が相対的に長い所定時間(例えば、5秒等)の音声である「道路に出たら危ないよ」や「歩道を歩いてる?」等を選択して出力させる。
また、例えば衝突までの時間が相対的に中程度の所定時間(例えば、5秒等)においては、周りに気をつけさせる警報として、例えば録音時間が相対的に中程度の所定時間(例えば、3秒等)の音声である「車に気をつけて」等を選択して、出力させる。
また、例えば衝突までの時間が相対的に短い所定時間(例えば、3秒等)においては、少なくとも危険に気づかせる警報として、例えば録音時間が相対的に短い所定時間(例えば、2秒等)の音声である「危ない!」や「ぶつかる!」等を選択して、出力させる。
【0033】
【表1】

【0034】
本実施の形態による歩行者携帯用無線通信端末10は上記構成を備えており、次に、この歩行者携帯用無線通信端末10の動作について説明する。
【0035】
先ず、例えば図4に示すステップS01においては、操作者による所定の操作部材に対する所定の操作順の複数の操作、あるいは、操作部材に対して所定の操作時間に亘って継続される操作者による所定の操作を検出した場合に、例えば所定時間(例えば、2〜3秒等)以内に亘ってマイク12による録音可能状態とし、操作者の音声入力を記憶する。
【0036】
そして、ステップS02においては、周囲の車両から発信される車両の走行状態や走行路に関する情報を取得する。
そして、ステップS03においては、GPS(Global Positioning System)信号等の測位信号に基づき、歩行者携帯用無線通信端末10を携帯する歩行者の現在位置を検出すると共に、この現在位置の時間変化等に基づき、歩行者の進行方向および速度を算出する。
【0037】
そして、ステップS04においては、歩行者携帯用無線通信端末10を携帯する歩行者の現在位置および進行方向および速度と、周囲の車両の走行状態や走行路に関する情報に基づき算出される周囲の車両までの距離および周囲の車両の速度および周囲の車両の進行方向とに基づき、例えば歩行者と周囲の車両との接触の可能性があるか否かを判定することにより、警報出力が必要とされる危険状態であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、上述したステップS02に戻る。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS05に進む。
そして、ステップS05においては、記憶部23に格納されている所定の音声を取得し、警報装置14の聴覚的伝達装置から出力させて、一連の処理を終了する。
【0038】
上述したように、本実施の形態による歩行者携帯用無線通信端末10によれば、記憶部23に記憶された操作者の音声を警報として出力することから、歩行者が習慣的に反応し易い音声、例えば肉親による名前の称呼等を記憶することにより、例えば車両との接触の可能性がある危険状態等において、歩行者の注意を的確に喚起することができる。
【0039】
なお、上述した実施の形態において、車両状態量検出部24は、周囲の車両から発信される自車両の走行状態や走行路に関する情報に基づき、周囲の車両までの距離と、周囲の車両の速度および進行方向を検出するとしたが、これに限定されず、例えば周囲の車両に搭載されたカメラやレーダ装置等の外界センサにより検出された歩行者(つまり、この歩行者携帯用無線通信端末10を携帯する歩行者)との相対的な状態量(例えば、相対速度および相対位置および相対進行方向等)に係る情報に基づき、例えば周囲の車両との接触の可能性があるか否かを判定することにより、警報出力の要否を判定してもよい。
【0040】
この場合、周囲の車両から出力される情報には、車両の外界センサにより検出された各歩行者に対応して、例えば各歩行者が携帯する歩行者携帯用無線通信端末10を識別するための所定の識別情報が付加されており、この情報を取得した各歩行者携帯用無線通信端末10は、予め各歩行者携帯用無線通信端末10毎に記憶している所定の識別情報と、周囲の車両から取得した識別情報とが一致するか否かを判定し、この判定結果に基づいて、自己が周囲の車両により検出されたか否かを判定する。
【0041】
この第1変形例では、先ず、例えば図5に示すステップS11において、操作者による所定の操作部材に対する所定の操作順の複数の操作、あるいは、操作部材に対して所定の操作時間に亘って継続される操作者による所定の操作を検出した場合に、マイク12による録音可能状態とし、操作者の音声入力を記憶する。
【0042】
そして、ステップS12においては、例えば周囲の車両から発信される自車両と歩行者との相対的な状態量(例えば、相対速度および相対位置および相対進行方向等)に係る情報を、各歩行者携帯用無線通信端末10に固有の識別情報と共に取得する。
【0043】
そして、ステップS13においては、端末状態量検出部21から出力される歩行者携帯用無線通信端末10の現在位置および進行方向および速度と、車両状態量検出部24により検出される周囲の車両までの距離および周囲の車両の速度および周囲の車両の進行方向とに基づき、例えば周囲の車両との接触の可能性があるか否かを判定することにより、警報出力が必要とされる危険状態であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、上述したステップS12に戻る。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS14に進む。
そして、ステップS14においては、記憶部23に格納されている所定の音声を取得し、警報装置14の聴覚的伝達装置から出力させて、一連の処理を終了する。
【0044】
また、上述した実施形態の第1変形例に係る歩行者携帯用無線通信端末10においては、例えば周囲の車両において、外界センサにより検出された歩行者との接触の可能性があるか否かが判定され、この判定結果が、各歩行者携帯用無線通信端末10に固有の識別情報と共に周囲の車両から発信されてもよい。
この場合には、周囲の車両との接触の可能性が有ると判定された情報を受信した歩行者携帯端末無線装置10は、直ちに記憶部23に格納されている所定の音声を取得し、警報装置14の聴覚的伝達装置から出力させることになる。
【0045】
また、上述した実施の形態において、車両状態量検出部24は、例えば周囲の車両から発信される電波に対する受信強度の時間変化に基づき、周囲の車両までの距離および周囲の車両の速度および周囲の車両の進行方向を検出してもよい。
例えば、図6および図7に示す第2変形例において、歩行者携帯用無線通信端末10を携帯する歩行者が周囲の適宜の車両Aの進行方向前方で車両Aの進行軌跡RA上に存在する場合(例えば、図6および図7に示す正面の場合)には、車両Aから発信される電波に対する受信強度は、相対的に車両Aに近接した領域で急激に変化する。これに対して、歩行者携帯用無線通信端末10を携帯する歩行者が周囲の適宜の車両Aの進行方向前方で進行軌跡RA上からずれた位置に存在する場合(例えば、図6および図7に示す横(側方)の場合)には、車両Aから発信される電波に対する受信強度は、相対距離に応じて相対的に緩やかに変化する。
【0046】
この第2変形例において、出力制御部26は、周囲の車両から発信される電波に対する受信強度の強弱に応じて記憶部23に格納された音声を選択する場合には、例えば下記表2に示すように、例えば受信強度が相対的に弱い場合においては、周りに気をつけさせる警報として、例えば録音時間が相対的に中程度の所定時間(例えば、3秒等)の音声である「車に気をつけて」等を選択して出力させる。
また、例えば受信強度が相対的に強い場合においては、少なくとも危険に気づかせる警報として、例えば録音時間が相対的に短い所定時間(例えば、2秒等)の音声である「危ない!」や「ぶつかる!」等を選択して、出力させる。
【0047】
【表2】

【0048】
また、この第2変形例において、出力制御部26は、周囲の車両から発信される電波に対する受信強度の強弱に加えて、周囲の車両との相対位置に応じて記憶部23に格納された音声を選択する場合には、例えば下記表3に示すように、例えば受信強度が相対的に弱い場合において、歩行者携帯用無線通信端末10を携帯する歩行者が周囲の適宜の車両の進行方向前方で進行軌跡上からずれた位置に存在する場合(横(側方)の場合)には、警報の出力を禁止し、歩行者携帯用無線通信端末10を携帯する歩行者が周囲の適宜の車両の進行方向前方で車両の進行軌跡上に存在する場合(正面の場合)には、周りに気をつけさせる警報として、例えば録音時間が相対的に中程度の所定時間(例えば、3秒等)の音声である「車に気をつけて」等を選択して、出力させる。
【0049】
【表3】

【0050】
また、出力制御部26は、例えば受信強度が相対的に強い場合においては、歩行者携帯用無線通信端末10を携帯する歩行者が周囲の適宜の車両の進行方向前方で進行軌跡上からずれた位置に存在する場合(横(側方)の場合)には、周りに気をつけさせる警報として、例えば録音時間が相対的に中程度の所定時間(例えば、3秒等)の音声である「車に気をつけて」等を選択して出力させ、歩行者携帯用無線通信端末10を携帯する歩行者が周囲の適宜の車両の進行方向前方で車両の進行軌跡上に存在する場合(正面の場合)には、少なくとも危険に気づかせる警報として、例えば録音時間が相対的に短い所定時間(例えば、2秒等)の音声である「危ない!」や「ぶつかる!」等を選択して出力させる。
【0051】
この第2変形例によれば、相対距離の接近に伴う電波強度(受信強度)の変化に応じて、車両が歩行者に正対して接近するかを判別することに加えて、車両が歩行者の側方を通過するかを判別することにより、単に、歩道等に存在する歩行者の側方を車両が通過するような場合であっても、歩行者に適切に注意を促すことにより、歩行者が危険な状況に陥ることを未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態に係る歩行者携帯用無線通信端末の構成図である。
【図2】図2(a),(b)は、本発明の実施の形態に係る歩行者携帯用無線通信端末の外形形状の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る歩行者携帯用無線通信端末の外形形状の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る歩行者携帯用無線通信端末の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態の第1変形例に係る歩行者携帯用無線通信端末の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態の第2変形例に係る歩行者携帯用無線通信端末と周囲の車両との相対的な位置状態を示す図である。
【図7】周囲の車両から発信される電波に対する受信強度と、周囲の車両と歩行者携帯用無線通信端末との間の相対距離との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
10 歩行者携帯用無線通信端末
14 警報装置(音声出力手段)
23 記憶部(音声記憶手段)
25 警報判定部(推定手段)
26 出力制御部(音声出力手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された車載無線通信装置と直接的または間接的に通信を行うことにより所定の状況で歩行者に対して警報を出力可能な歩行者携帯用無線通信端末であって、
音声を録音して記憶する音声記憶手段と、
該音声記憶手段が記憶した前記音声を前記警報として出力する音声出力手段と
を備えることを特徴とする歩行者携帯用無線通信端末。
【請求項2】
前記所定の状況は車両と前記歩行者が接触する可能性がある状況であり、前記警報は前記状況であることを伝達もしくは前記状況を回避する方法を伝達する音声の少なくとも何れかであることを特徴とする請求項1に記載の歩行者携帯用無線通信端末。
【請求項3】
所定数の操作部材を備え、
前記音声記憶手段は前記操作部材の所定の操作順と所定の操作時間との少なくとも何れかの操作により録音可能となることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の歩行者携帯用無線通信端末。
【請求項4】
前記音声記憶手段は所定時間以内の前記音声を録音可能であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかひとつに記載の歩行者携帯用無線通信端末。
【請求項5】
前記所定の状況は、前記車両と前記歩行者との接触の危険性がある状況であることを特徴とする請求項1から請求項4の何れかひとつに記載の歩行者携帯用無線通信端末。
【請求項6】
前記接触の危険性の程度を推定する推定手段を備え、
前記音声出力手段は前記危険性の程度に応じて、前記警報として出力する前記音声を変更することを特徴とする請求項5に記載の歩行者携帯用無線通信端末。
【請求項7】
前記推定手段は、前記接触の危険性の程度を、通信電波の受信により得られる前記車両と前記歩行者との相対距離および前記通信電波の電波強度に基づき推定するものであり、前記相対距離の接近に伴う前記電波強度の変化に応じて、少なくとも、前記車両が前記歩行者の側方を通過するか、または、前記歩行者に正対して接近するかを判別するものであることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の歩行者携帯用無線通信端末。
【請求項8】
前記推定手段は、前記相対距離の変化に対して前記電波強度の変化が相対的に少ない場合に、前記車両が前記歩行者の側方を通過すると判別し、前記相対距離の増加に伴い前記電波強度が相対的に急激に減少する場合に、前記車両が前記歩行者に正対して接近すると判別することを特徴とする請求項7に記載の歩行者携帯用無線通信端末。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−257302(P2007−257302A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−80887(P2006−80887)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】