歪発生器及び歪補償増幅器
【課題】出力する歪のレベルを調整することができる歪発生器を提供する。
【解決手段】ドライバ増幅器22で増幅され且つ非線形側伝送線路34−1から取り出されたマイクロ波信号は、マイクロ波信号のキャリア周波数に整合している出力端側整合回路52を介して歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bに供給される。歪発生用トランジスタ増幅器48は、出力端子48bに供給されたマイクロ波信号を基に歪成分を発生して入力端子48a及び出力端子48bの両方から出力する。可変移相器54により歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aと開放端57との間を通過する信号の位相を調整することで、歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48b側で合成される歪成分の位相差を調整することができる。
【解決手段】ドライバ増幅器22で増幅され且つ非線形側伝送線路34−1から取り出されたマイクロ波信号は、マイクロ波信号のキャリア周波数に整合している出力端側整合回路52を介して歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bに供給される。歪発生用トランジスタ増幅器48は、出力端子48bに供給されたマイクロ波信号を基に歪成分を発生して入力端子48a及び出力端子48bの両方から出力する。可変移相器54により歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aと開放端57との間を通過する信号の位相を調整することで、歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48b側で合成される歪成分の位相差を調整することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波信号を基に歪を発生させる歪発生器、及び増幅器からの出力信号中に含まれる歪が低減するよう歪補償を行う歪補償増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
増幅器の非線形性により増幅器からの出力信号に生じる歪成分を低減するよう歪補償を行う歪補償増幅器において、歪を発生させる歪発生器が用いられている。この歪発生器を用いた歪補償増幅器においては、歪補償の対象となる被補償増幅器への入力信号または被補償増幅器からの出力信号に歪発生器で発生させた歪を結合することにより、歪補償が行われている。下記特許文献1〜4には、ダイオードを用いて歪を発生させる歪発生器が開示されている。
【0003】
その他の関連技術として、下記特許文献5による歪発生器、及び下記特許文献6による歪補償増幅器が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−196371号公報
【特許文献2】実開昭62−19812号公報
【特許文献3】特公平8−31748号公報
【特許文献4】特公平8−15245号公報
【特許文献5】特開平3−190301号公報
【特許文献6】特公平7−85523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被補償増幅器への入力信号または被補償増幅器からの出力信号に歪発生器で発生させた歪を結合することにより歪補償を行う場合に、十分な歪補償効果を安定して得るためには、歪発生器から出力される歪のレベルを調整できることが望ましい。しかし、特許文献1〜4のダイオードを用いた歪発生器では、デバイスの性質上、小電力で動作させる必要があるため、発生させる歪のレベルも低くなり、歪のレベルを調整することが困難である。したがって、十分な歪補償効果を安定して得ることが困難である。
【0006】
本発明は、出力する歪のレベルを調整することができる歪発生器を提供することを目的とする。また、本発明は、十分な歪補償効果を安定して得ることができる歪補償増幅器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る歪発生器及び歪補償増幅器は、上述した目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本発明に係る歪発生器は、第1伝送路を伝搬するマイクロ波信号を取り出し、当該取り出したマイクロ波信号を基に歪を発生させ、当該発生させた歪を第2伝送路へ供給する歪発生器であって、マイクロ波信号が出力端子に供給されることにより歪を発生し、当該発生した歪を入力端子及び出力端子の両方から出力する歪発生用トランジスタ増幅器と、歪発生用トランジスタ増幅器の入力端子と信号反射端との間を通過する信号の振幅及び位相の少なくとも一方を調整するための調整手段と、を備え、第1伝送路から取り出したマイクロ波信号を歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子に供給することにより歪発生用トランジスタ増幅器で歪を発生させ、当該発生させた歪を歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子から第2伝送路へ供給し、さらに、調整手段により歪発生用トランジスタ増幅器の入力端子と信号反射端との間を通過する信号の振幅及び位相の少なくとも一方を調整することで、第2伝送路へ供給する歪の調整が可能であることを要旨とする。
【0009】
本発明の一態様では、歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子側に、マイクロ波信号のキャリア周波数に整合している出力端側整合回路が設けられていることが好適である。また、本発明の一態様では、歪発生用トランジスタ増幅器の入力端子側に、マイクロ波信号のキャリア周波数に整合している入力端側整合回路が設けられていることが好適である。
【0010】
本発明の一態様では、第1伝送路から歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子へのマイクロ波信号の通過、及び歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子から第2伝送路への歪の通過を許容するとともに、第1伝送路から第2伝送路へのマイクロ波信号の通過を抑えるための方向性素子を備えることが好適である。この態様では、方向性素子は、サーキュレータまたはハイブリッドであることが好適である。
【0011】
本発明の一態様では、歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子に供給するマイクロ波信号は、歪発生用トランジスタ増幅器で歪が発生するよう歪発生用トランジスタ増幅器の線形領域を超えた電力値を有することが好適である。
【0012】
本発明の一態様では、マイクロ波信号を増幅するドライバ増幅器が設けられ、ドライバ増幅器で増幅されたマイクロ波信号を歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子に供給することが好適である。
【0013】
本発明の一態様では、歪発生用トランジスタ増幅器はFETを含み、歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子はFETのドレイン端子であり、歪発生用トランジスタ増幅器の入力端子はFETのゲート端子であることが好適である。
【0014】
また、本発明に係る歪補償増幅器は、マイクロ波信号を増幅する主増幅器と、主増幅器からの出力信号中に含まれる歪が低減するよう歪補償を行う歪補償部と、を備える歪補償増幅器であって、歪補償部は、マイクロ波信号を基に歪を発生させる歪発生器を含み、歪発生器で発生させた歪を主増幅器に入力されるマイクロ波信号または主増幅器からの出力信号に結合することにより歪補償を行い、前記歪発生器が、本発明に係る歪発生器であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、マイクロ波信号を歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子に供給することにより歪発生用トランジスタ増幅器で歪を発生させてその入力端子及び出力端子の両方から出力することができる。さらに、調整手段により歪発生用トランジスタ増幅器の入力端子と信号反射端との間を通過する信号の振幅及び位相の少なくとも一方を調整することで、歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子側で合成される歪の振幅差及び位相差の少なくとも一方を調整することができる。その結果、歪発生器から出力される歪のレベルを調整することができる。
【0016】
また、本発明によれば、主増幅器からの出力信号中に残留する歪成分が低減するように歪発生器から出力される歪のレベルを調整することができるので、十分な歪補償効果を安定して得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下実施形態という)を図面に従って説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る歪発生器を備える歪補償増幅器の概略構成を示す図であり、本発明をプリディストーション型歪補償増幅器に適用した例を示す。本実施形態に係る歪補償増幅器は、被補償増幅器(主増幅器)12からの出力信号中に含まれる歪成分が低減するよう歪補償部16により歪補償を行うものである。
【0019】
入力端子INに入力されたマイクロ波信号(歪が生じていないマイクロ波線形信号)は、歪補償部16に入力される。歪補償部16は、入力端子INからのマイクロ波線形信号にプリディストーション(前置歪)を与えて出力する。被補償増幅器12は、歪補償部16から供給されたマイクロ波信号、つまり前置歪が与えられたマイクロ波信号を増幅して出力端子OUTへ出力する。このように、歪補償部16により被補償増幅器12に入力されるマイクロ波信号にプリディストーションを与えることで、被補償増幅器12からの出力信号中に含まれる歪成分が低減するよう歪補償が行われる。
【0020】
次に、歪補償部16の構成について説明する。歪補償部16は、以下に説明するドライバ増幅器22、分配器24、線形ルート26、非線形ルート28、及び合成器30を備える。
【0021】
ドライバ増幅器22は、歪補償部16に入力されたマイクロ波線形信号を増幅して分配器24へ出力する。ここでのドライバ増幅器22としては、線形性に優れたリニアアンプが用いられる。分配器24は、ドライバ増幅器22で増幅されたマイクロ波信号を線形ルート26の線形側伝送線路32−1と非線形ルート28の非線形側伝送線路34−1とに分配する。
【0022】
線形ルート26には、入力ポート36aと反射ポート36bと出力ポート36cとを有するサーキュレータ36が方向性素子として配設されている。サーキュレータ36においては、入力ポート36aには線形側伝送線路32−1が接続され、反射ポート36bにはマイクロ波信号の位相を調整するための位相調整回路38が接続され、出力ポート36cには線形側伝送線路32−2が接続されている。サーキュレータ36は、入力ポート36aから反射ポート36bへのマイクロ波信号の通過を許容することで、線形側伝送線路32−1から位相調整回路38へのマイクロ波信号の通過を許容する。そして、サーキュレータ36は、反射ポート36bから出力ポート36cへのマイクロ波信号の通過を許容することで、位相調整回路38から線形側伝送線路32−2へのマイクロ波信号の通過を許容する。また、サーキュレータ36は、入力ポート36aから出力ポート36cへのマイクロ波信号の通過を抑えることで、位相調整回路38を介することなく線形側伝送線路32−1から線形側伝送線路32−2へマイクロ波信号が通過するのを抑える(理想的には遮断する)。
【0023】
ここでの位相調整回路38については、例えば図2に示すようにオープンスタブ、または図3に示すようにショートスタブにより構成することができる。線形側伝送線路32−1からサーキュレータ36を介してオープンスタブ(またはショートスタブ)38に供給されたマイクロ波線形信号は、オープンスタブ(またはショートスタブ)38の信号反射端にて反射され、この反射されたマイクロ波線形信号がサーキュレータ36を介して線形側伝送線路32−2に供給される。そのため、図2,3に示す例では、オープンスタブ(またはショートスタブ)38の長さ(電気長)を調整することで、線形ルート26を伝搬するマイクロ波線形信号の位相を調整することができる。
【0024】
あるいは、位相調整回路38は、図4に示すように、互いに並列配置された複数の伝送線路33−1〜33−3と、各伝送線路33−1〜33−3をグランド56に接続するための複数のスイッチ35−1〜35−3と、を含むこともできる。スイッチ35−1〜35−3のいずれか1つを閉じて伝送線路33−1〜33−3のいずれか1つをグランド56に接続することで、グランド56に接続された伝送線路はショートスタブとして機能する。そして、スイッチ35−1を閉じたときのサーキュレータ36の反射ポート36bとグランド56との間の電気長、スイッチ35−2を閉じたときのサーキュレータ36の反射ポート36bとグランド56との間の電気長、及びスイッチ35−3を閉じたときのサーキュレータ36の反射ポート36bとグランド56との間の電気長がそれぞれ異なる。そのため、図4に示す例では、閉じるスイッチ35−1〜35−3、つまりグランド56に接続する伝送線路33−1〜33−3を切り替えることで、線形ルート26を伝搬するマイクロ波線形信号の位相を調整することができる。
【0025】
一方、非線形ルート28には、非線形側伝送線路34−1を伝搬するマイクロ波信号を取り出し、この取り出したマイクロ波信号を基に歪成分を発生させ、この発生させた歪成分を非線形側伝送線路34−2へ供給する歪発生器40が配設されている。ここでの歪発生器40は、入力ポート46aと反射ポート46bと出力ポート46cとを有するサーキュレータ(方向性素子)46と、マイクロ波信号が出力端子48bに供給されることにより歪成分を発生する歪発生用トランジスタ増幅器48と、歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aと開放端(信号反射端)57との間を通過する信号の位相を調整する可変移相器(位相調整器)54と、を備える反射型歪発生器である。歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48a側にはマイクロ波信号のキャリア周波数に整合している入力端側整合回路50が配設されている。つまり、歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48a側では、マイクロ波信号のキャリア周波数においてインピーダンス整合(マッチング)が取れており、マイクロ波信号の反射が抑えられる。そして、歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48b側にはマイクロ波信号のキャリア周波数に整合している出力端側整合回路52が配設されている。つまり、歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48b側でも、マイクロ波信号のキャリア周波数においてインピーダンス整合(マッチング)が取れており、マイクロ波信号の反射が抑えられる。可変移相器54は、歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48a(入力端側整合回路50)と開放端57との間に配置されており、歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aは、入力端側整合回路50及び可変移相器54を介して開放端57に接続されている。
【0026】
サーキュレータ46においては、入力ポート46aには非線形側伝送線路34−1が接続され、反射ポート46bには出力端側整合回路52(歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48b)が接続され、出力ポート46cには非線形側伝送線路34−2が接続されている。サーキュレータ46は、入力ポート46aから反射ポート46bへのマイクロ波信号の通過を許容することで、非線形側伝送線路34−1から出力端側整合回路52(歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48b)へのマイクロ波信号の通過を許容する。そして、サーキュレータ46は、反射ポート46bから出力ポート46cへの歪成分の通過を許容することで、出力端側整合回路52から非線形側伝送線路34−2への歪成分の通過を許容する。また、サーキュレータ46は、入力ポート46aから出力ポート46cへのマイクロ波信号の通過を抑えることで、非線形側伝送線路34−1から非線形側伝送線路34−2へのマイクロ波信号の通過を抑える(理想的には遮断する)。
【0027】
歪発生用トランジスタ増幅器48の構成例を図5に示す。図5に示す例では、FET58のゲート端子58aが歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aとなっており、FET58のドレイン端子58bが歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bとなっている。そして、FET58のソース端子58cはグランド56に接続されている。また、ゲートバイアス回路59は、チョークコイル60を介してFET58のゲート端子58a(歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48a)にバイアス電圧を印加し、ドレインバイアス回路61は、チョークコイル62を介してFET58のドレイン端子58b(歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48b)にバイアス電圧を印加する。このように、歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48a及び出力端子48bには、別々のバイアス電圧が印加されている。
【0028】
ドライバ増幅器22で増幅され且つ非線形側伝送線路34−1から取り出されたマイクロ波線形信号は、出力端側整合回路52を介して歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bに供給される。歪発生用トランジスタ増幅器48は、出力端子48bに供給されたマイクロ波線形信号を基に歪成分を発生する。歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bに供給されるマイクロ波線形信号は、ドライバ増幅器22で増幅されているため、歪発生用トランジスタ増幅器48の線形領域(線形増幅範囲)を超えた電力値を有するマイクロ波線形信号を歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bに供給することができる。したがって、歪発生用トランジスタ増幅器48を非線形領域で動作させることができ、歪発生用トランジスタ増幅器48で十分な電力値の歪成分を発生させることができる。歪発生用トランジスタ増幅器48で発生した歪成分は、歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48a及び出力端子48bの両方から出力される。歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bから出力された歪成分は、出力端側整合回路52及びサーキュレータ46を介して非線形側伝送線路34−2に供給される。そして、歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aから出力された歪成分は、開放端57で反射し、歪発生用トランジスタ増幅器48を通過して出力端子48bから出力端側整合回路52及びサーキュレータ46を介して非線形側伝送線路34−2に供給される。また、歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aからは、歪成分(非線形成分)だけでなく線形成分も出力される。通常の増幅器は、入力端子に入力されたマイクロ波信号を増幅して出力端子から出力する(歪発生用トランジスタ増幅器48も入力端子48aに入力されたマイクロ波信号を増幅して出力端子48bから出力することが可能である)が、本実施形態の歪発生用トランジスタ増幅器48は、通常の増幅器の使用方法とは異なり、マイクロ波信号を出力端子48b側から逆注入することにより歪成分を発生させる。
【0029】
合成器30は、線形側伝送線路32−2を伝搬するマイクロ波線形信号と非線形側伝送線路34−2を伝搬する歪成分とを合成して被補償増幅器12へ出力する。被補償増幅器12によりマイクロ波信号を増幅する際には歪成分が発生するが、被補償増幅器12に入力されるマイクロ波線形信号に歪発生器40(歪発生用トランジスタ増幅器48)で発生させた歪成分を結合することにより、被補償増幅器12に入力されるマイクロ波信号にプリディストーションを与えることができ、被補償増幅器12からの出力信号中に含まれる歪成分が低減するよう歪補償を行うことができる。なお、歪補償を行う際には、被補償増幅器12からの出力信号中に残留する歪成分が最小になるように、位相調整回路38による位相調整量(オープンスタブやショートスタブの電気長)が調整される。
【0030】
図6に示すように、非線形側伝送線路34−1から非線形側伝送線路34−2に供給される線形成分については、D1,D2,D3(ここではD1,D2,D3の上の→を省略する)の3つの成分に分けて考えることができる。図6において、D1は、サーキュレータ46の入力ポート46aから出力ポート46cへリークすることで、非線形側伝送線路34−2に供給される線形成分である。D2は、サーキュレータ46を入力ポート46aから反射ポート46bへ通過し、歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48b側で反射し、サーキュレータ46を反射ポート46bから出力ポート46cへ通過することで、非線形側伝送線路34−2に供給される線形成分である。D3は、サーキュレータ46を入力ポート46aから反射ポート46bへ通過し、歪発生用トランジスタ増幅器48を出力端子48bから入力端子48aへ逆方向に通過し、可変移相器54を通過して開放端57で反射し、可変移相器54を再び通過し、歪発生用トランジスタ増幅器48を入力端子48aから出力端子48bへ順方向に通過し、サーキュレータ46を反射ポート46bから出力ポート46cへ通過することで、非線形側伝送線路34−2に供給される線形成分である。
【0031】
サーキュレータ46の通過損失及び線路の電気長を無視すると、各線形成分D1,D2,D3とこれらの合成信号(非線形側伝送線路34−2に供給される線形成分)Doutは、以下の式で表される。ただし、以下の式において、Din(ここではDinの上の→を省略する)は、非線形側伝送線路34−1を伝搬するマイクロ波線形信号を表す。また、LCIRは、サーキュレータ46の入力ポート46aと出力ポート46cとの間のアイソレーションであり、φは、可変移相器54の位相調整量(移相量)である。また、S12,S21,S22(ここではS12,S21,S22の上の→を省略する)は、それぞれ歪発生用トランジスタ増幅器48のS12パラメータ、S21パラメータ、S22パラメータである。
【0032】
【数1】
【0033】
また、図7に示すように、歪発生器40(歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48b)から非線形側伝送線路34−2に供給される歪成分(非線形成分)については、U1,U2,U3(ここではU1,U2,U3の上の→を省略する)の3つの成分に分けて考えることができる。図7において、U1は、歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bに逆注入されたマイクロ波線形信号により歪発生用トランジスタ増幅器48の内部で発生した歪成分であって、歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bから出力され、サーキュレータ46を反射ポート46bから出力ポート46cへ通過することで、非線形側伝送線路34−2に供給される歪成分である。U2は、歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bに逆注入されたマイクロ波線形信号により歪発生用トランジスタ増幅器48の内部で発生した歪成分であって、歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aから出力され、可変移相器54を通過して開放端57で反射し、可変移相器54を再び通過し、歪発生用トランジスタ増幅器48を入力端子48aから出力端子48bへ通過し、サーキュレータ46を反射ポート46bから出力ポート46cへ通過することで、非線形側伝送線路34−2に供給される歪成分である。U3は、歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bに逆注入されたマイクロ波線形信号の一部が入力端子48aから出力され、可変移相器54を通過して開放端57で反射し、可変移相器54を再び通過し、歪発生用トランジスタ増幅器48を入力端子48aから出力端子48bへ通過する際に、歪発生用トランジスタ増幅器48の内部で発生した歪成分であって、歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bから出力され、サーキュレータ46を反射ポート46bから出力ポート46cへ通過することで、非線形側伝送線路34−2に供給される歪成分である。
【0034】
歪成分U1と歪成分U3との合成は非線形演算であり、歪成分U1,U3と歪成分U2との合成は線形演算である。U2は歪成分であるものの、歪発生用トランジスタ増幅器48を入力端子48aから出力端子48bへ通過する際には線形に通過するためである。歪発生用トランジスタ増幅器48の線形信号入力(入力端子48aへの線形信号入力)Eに対する歪成分出力(出力端子48bからの歪成分出力)をUとし、歪発生用トランジスタ増幅器48の歪特性をU=T(E)と表すことにすると、各歪成分U1,U2,U3の合成信号、つまり非線形側伝送線路34−2に供給される歪成分Uout(ここではUoutの上の→を省略する)は、以下の式で表される。ただし、以下の式において、U1=T(E1)、U2=T(E2)、U3=T(E3)であり(ここではE1,E2,E3の上の→を省略する)、θは、E1とE2の位相差である。
【0035】
【数2】
【0036】
ここで、本願発明者が行った実験結果を図8,9に示す。図8は、マイクロ波線形信号を歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aに順注入した場合に出力端子48bから取り出される線形信号及び非線形信号(歪成分)のレベルと、マイクロ波線形信号を歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bに逆注入した場合に出力端子48bから取り出される線形信号(線形成分D2に相当)及び非線形信号(歪成分U1に相当)のレベルと、を示す。そして、図9は、マイクロ波線形信号を歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aに順注入した場合に出力端子48bから取り出される線形信号及び非線形信号(歪成分)のレベルと、マイクロ波線形信号を歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bに逆注入した場合に入力端子48aから取り出される線形信号(線形成分D3に相当)及び非線形信号(歪成分U2に相当)のレベルと、を示す。図8,9に示すように、マイクロ波線形信号を歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bに逆注入することで、歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48a及び出力端子48bから歪成分が出力されることがわかる。なお、マイクロ波線形信号の逆注入により歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aから取り出される線形信号のレベルについては、歪発生用トランジスタ増幅器48のS12パラメータにより調整可能である。そして、マイクロ波線形信号の逆注入により歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bから取り出される線形信号のレベルについては、歪発生用トランジスタ増幅器48のS22パラメータにより調整可能である。
【0037】
歪補償増幅器において十分な歪補償効果を安定して得るためには、歪発生器から出力される歪成分のレベルを調整できることが望ましい。特許文献1〜4のダイオードを用いた歪発生器では、デバイスの性質上、小電力で動作させる必要があるため、発生させる歪成分のレベルも低くなり、歪成分のレベルを調整することが困難である。したがって、十分な歪補償効果を安定して得ることが困難である。
【0038】
これに対して本実施形態の歪発生器40では、ダイオードではなく歪発生用トランジスタ増幅器48にマイクロ波線形信号を供給して歪成分を発生させることで、歪発生用トランジスタ増幅器48に供給するマイクロ波線形信号の電力レベルを増大させることができ、歪発生用トランジスタ増幅器48で発生させる歪成分の電力レベルを増大させることができる。さらに、本実施形態では、通常の増幅器の使用方法とは異なり、マイクロ波線形信号を歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bに逆注入することにより、歪発生用トランジスタ増幅器48から出力される線形成分の電力レベルを抑えながら、歪発生用トランジスタ増幅器48から出力される歪成分の電力レベルを増大させることができる。さらに、出力端側整合回路52はマイクロ波信号のキャリア周波数に整合している(歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48b側ではマイクロ波信号のキャリア周波数においてインピーダンスマッチングが取れている)ため、非線形側伝送線路34−1から取り出したマイクロ波線形信号を歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bに供給する際に、マイクロ波線形信号が反射して非線形側伝送線路34−2に供給されるのを抑えることができる。
【0039】
さらに、本実施形態の歪発生器40では、可変移相器54の位相調整量(移相量)φを変化させる、つまり歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aと開放端57との間を通過する信号(線形成分及び歪成分)の位相を変化させると、歪成分U1と歪成分U2,U3との位相差が変化し、非線形側伝送線路34−2に供給される歪成分Uoutの電力レベルが変化する。したがって、可変移相器54により歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aと開放端57との間を通過する信号の位相を制御することで、歪成分U1と歪成分U2,U3との位相差を制御することができ、歪発生器40から出力される歪成分Uoutの電力レベルを制御することができる。さらに、可変移相器54の移相量φを変化させると、線形成分D1,D2と線形成分D3との位相差も変化し、非線形側伝送線路34−2に供給される線形成分Doutの電力レベルも変化する。したがって、可変移相器54により歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aと開放端57との間を通過する信号の位相を制御することで、線形成分D1,D2と線形成分D3との位相差も制御することができ、歪発生器40から出力される線形成分Doutの電力レベルも制御することができる。さらに、入力端側整合回路50はマイクロ波信号のキャリア周波数に整合している(歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48a側ではマイクロ波信号のキャリア周波数においてインピーダンスマッチングが取れている)ため、可変移相器54により歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aと開放端57との間を通過する信号の位相を調整する際に、マイクロ波信号が反射するのを抑えることができる。
【0040】
非線形側伝送線路34−2に供給される線形成分Dout及び歪成分Uoutをある条件で図示すると、図10に示すようになる。ただし、図10では、線形成分Dout及び歪成分Uoutを正規化して図示している。図10に示すように、可変移相器54の位相調整量φを調整することにより、線形成分Dout及び歪成分Uoutのレベルがマイクロ波の波長で決まる周期で変化するため、歪発生器40から出力される線形成分Dout及び歪成分Uoutのレベルを調整できることがわかる。また、図10に示すように、線形成分Doutが極大(最大)となる位相調整量φと歪成分Uoutが極大(最大)となる位相調整量φとが若干異なることと、位相調整量φの変化に対して歪成分Uoutは線形成分Doutよりも大きく変化することを利用すると、歪成分Uoutのレベルを増大させるとともに線形成分Doutのレベルを減少させることができる位相調整量φが存在し、歪成分Uoutと線形成分Doutとのレベル差が最大となる位相調整量φが存在することがわかる。したがって、可変移相器54の位相調整量φの調整により歪発生器40から出力される歪成分Uoutのレベルを増大させることができるとともに線形成分Doutのレベルを減少させることができる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態によれば、可変移相器54の位相調整量φの調整により歪発生器40から出力される歪成分Uoutの電力レベルを調整することができる。そして、例えば被補償増幅器12からの出力信号中に残留する歪成分が最小になるように、可変移相器54の位相調整量φを調整する、つまり歪発生器40から出力される歪成分Uoutの電力レベルを調整することで、十分な歪補償効果を安定して得ることができる。
【0042】
また、歪補償増幅器において十分な歪補償効果を得るためには、歪発生器の歪特性(非線形特性)を被補償増幅器の歪特性(非線形特性)と一致させるように近づけることが望ましい。特許文献1〜4のダイオードを用いた歪発生器では、デバイスの性質上、ダイオードによる歪特性が被補償増幅器の歪特性と異なるため、十分な歪補償効果を得ることが困難である。
【0043】
これに対して本実施形態の歪発生器40では、ダイオードではなく歪発生用トランジスタ増幅器48にマイクロ波線形信号を供給して歪成分を発生させることで、歪発生用トランジスタ増幅器48の歪特性(非線形特性)を被補償増幅器12の歪特性(非線形特性)に近づけることができる。したがって、歪補償効果を向上させることができる。なお、歪発生用トランジスタ増幅器48の歪特性を被補償増幅器12の歪特性に一致させるようにより近づけるためには、歪発生用トランジスタ増幅器48を被補償増幅器12と同一プロセスで製造し、被補償増幅器12に対しスケールダウンされた増幅器を歪発生用トランジスタ増幅器48として用いることが好ましい。さらに、歪発生用トランジスタ増幅器48と被補償増幅器12とで、動作級(A級、AB級、C級等)を一致させることが好ましい。
【0044】
また、被補償増幅器12の歪特性は、メモリ効果の影響を受けることがある。ここでのメモリ効果とは、被補償増幅器12への入力信号の包絡線振幅の影響でバイアスが変動し、被補償増幅器12の歪特性が時変となる現象である。メモリ効果が発生すると、歪補償効果の低下を招きやすくなる。
【0045】
これに対して本実施形態では、歪発生器40に歪発生用トランジスタ増幅器48を利用しているため、被補償増幅器12と類似のメモリ効果を歪発生用トランジスタ増幅器48に持たせることが可能となる。より具体的には、歪発生用トランジスタ増幅器48と被補償増幅器12とで、バイアス回路のインピーダンス周波数特性を一致させる。これによって、被補償増幅器12にメモリ効果が生じても、十分な歪補償効果を得ることができる。
【0046】
次に、本実施形態の他の構成例について説明する。
【0047】
本実施形態では、歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bの電圧(FET58のドレイン〜ソース間電圧)、あるいは歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bの電流(FET58のドレイン〜ソース間電流)を制御する制御回路を設けることもできる。制御回路により出力端子48bの電圧(FET58のドレイン電圧)や出力端子48bの電流(FET58のドレイン電流)を制御することで、歪発生用トランジスタ増幅器48で発生させる歪成分のレベルを制御することができる。
【0048】
また、本実施形態では、可変移相器54に加えて、または可変移相器54に代えて、可変減衰器(振幅調整器)を歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48a(入力端側整合回路50)と開放端57との間に設けることもできる。ここでの可変減衰器は、歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aと開放端57との間を通過する信号の振幅を調整する。可変減衰器の振幅調整量(減衰量)を変化させる、つまり歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aと開放端57との間を通過する信号(線形成分及び歪成分)の振幅を変化させると、歪成分U1と歪成分U2,U3との振幅差が変化し、非線形側伝送線路34−2に供給される歪成分Uoutのレベルが変化する。したがって、可変減衰器により歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aと開放端57との間を通過する信号の振幅を制御することで、歪成分U1と歪成分U2,U3との振幅差を制御することができ、歪発生器40から出力される歪成分Uoutのレベルを制御することができる。さらに、可変減衰器の減衰量を変化させると、線形成分D1,D2と線形成分D3との振幅差も変化し、非線形側伝送線路34−2に供給される線形成分Doutのレベルも変化する。したがって、可変減衰器により歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aと開放端57との間を通過する信号の振幅を制御することで、線形成分D1,D2と線形成分D3との振幅差も制御することができ、歪発生器40から出力される線形成分Doutのレベルも制御することができる。さらに、線形成分D1+D2の振幅と線形成分D3の振幅とを一致させるように可変減衰器の減衰量を調整することで、理論上、線形成分Doutのレベルを0にすることも可能である。
【0049】
また、本実施形態では、可変移相器54(可変減衰器)を歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48a(入力端側整合回路50)とグランド(信号反射端)56との間に設け、歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aを入力端側整合回路50及び可変移相器54(可変減衰器)を介してグランド56に接続することもできる。ここでの可変移相器54(可変減衰器)は、歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aとグランド56との間を通過する信号の位相(振幅)を調整することで、非線形側伝送線路34−2に供給される歪成分Uout及び線形成分Doutのレベルを調整することができる。
【0050】
また、本実施形態では、歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aと開放端57(あるいはグランド56)との間を通過する信号の位相を、遅延器によって調整することもできる。この場合は、遅延器の遅延時間を調整することにより、非線形側伝送線路34−2に供給される歪成分Uout及び線形成分Doutのレベルを調整することができる。
【0051】
また、図11に示す構成例では、図1に示す構成例と比較して、方向性素子としてサーキュレータ36,66の代わりにハイブリッド66,76がそれぞれ設けられている。ハイブリッド66は、線形側伝送線路32−1に接続された入力ポート66aと、位相調整回路38に接続された反射ポート66bと、線形側伝送線路32−2に接続された出力ポート66cと、を有する。そして、ハイブリッド66は、線形側伝送線路32−1(入力ポート66a)から位相調整回路38(反射ポート66b)へのマイクロ波信号の通過、及び位相調整回路38(反射ポート66b)から線形側伝送線路32−2(出力ポート66c)へのマイクロ波信号の通過を許容するとともに、位相調整回路38(反射ポート66b)を介することなく線形側伝送線路32−1(入力ポート66a)から線形側伝送線路32−2(出力ポート66c)へマイクロ波信号が通過するのを抑える(理想的には遮断する)。また、ハイブリッド76は、非線形側伝送線路34−1に接続された入力ポート76aと、出力端側整合回路52に接続された反射ポート76bと、非線形側伝送線路34−2に接続された出力ポート76cと、を有する。そして、ハイブリッド76は、非線形側伝送線路34−1(入力ポート76a)から出力端側整合回路52(反射ポート76b)へのマイクロ波信号の通過、及び出力端側整合回路52(反射ポート76b)から非線形側伝送線路34−2(出力ポート76c)への歪成分の通過を許容するとともに、非線形側伝送線路34−1(入力ポート76a)から非線形側伝送線路34−2(出力ポート76c)へのマイクロ波信号の通過を抑える(理想的には遮断する)。
【0052】
また、図12に示す構成例では、図1に示す構成例と比較して、方向性素子としてサーキュレータ36,66の代わりに90°ハイブリッド86,96がそれぞれ設けられている。90°ハイブリッド86は、線形側伝送線路32−1に接続された入力ポート86aと、位相調整回路38に接続された反射ポート86b,86cと、線形側伝送線路32−2に接続された出力ポート86dと、を有する。ここでの位相調整回路38は、反射ポート86bに接続された可変容量ダイオード39−1と、反射ポート86cに接続された可変容量ダイオード39−2と、可変容量ダイオード39−1とグランド56との間に設けられたコイル37−1と、可変容量ダイオード39−2とグランド56との間に設けられたコイル37−2と、を有する。そして、90°ハイブリッド86は、線形側伝送線路32−1(入力ポート86a)から可変容量ダイオード39−1(反射ポート86b)へのマイクロ波信号の通過、可変容量ダイオード39−1(反射ポート86b)から線形側伝送線路32−2(出力ポート86d)へのマイクロ波信号の通過、線形側伝送線路32−1(入力ポート86a)から可変容量ダイオード39−2(反射ポート86c)へのマイクロ波信号の通過、及び可変容量ダイオード39−2(反射ポート86c)から線形側伝送線路32−2(出力ポート86d)へのマイクロ波信号の通過を許容する。また、90°ハイブリッド86は、位相調整回路38(反射ポート86b,86c)を介することなく線形側伝送線路32−1(入力ポート86a)から線形側伝送線路32−2(出力ポート86d)へマイクロ波信号が通過するのを抑える(理想的には遮断する)とともに、反射ポート86b,86c間をマイクロ波信号が通過するのを抑える(理想的には遮断する)。線形側伝送線路32−1から90°ハイブリッド86の反射ポート86b,86cに分配されて供給されたマイクロ波線形信号は、位相調整回路38で位相が調整されてから、90°ハイブリッド86で合成されて線形側伝送線路32−2に供給される。ここでは可変容量ダイオード39−1,39−2の容量を調整することで、線形ルート26を伝搬するマイクロ波信号の位相を調整することができる。
【0053】
さらに、図12に示す構成例では、歪発生器40は、90°ハイブリッド96と、複数の歪発生用トランジスタ増幅器48−1,48−2と、歪発生用トランジスタ増幅器48−1の入力端子48−1aと開放端(信号反射端)57−1との間を通過する信号の位相を調整する可変移相器(位相調整器)54−1と、歪発生用トランジスタ増幅器48−2の入力端子48−2aと開放端(信号反射端)57−2との間を通過する信号の位相を調整する可変移相器(位相調整器)54−2と、を備える。歪発生用トランジスタ増幅器48−1の入力端子48−1a側にはマイクロ波信号のキャリア周波数に整合している入力端側整合回路50−1が配設され、歪発生用トランジスタ増幅器48−1の出力端子48−1b側にはマイクロ波信号のキャリア周波数に整合している出力端側整合回路52−1が配設されている。可変移相器54−1は、歪発生用トランジスタ増幅器48−1の入力端子48−1a(入力端側整合回路50−1)と開放端57−1との間に配置されており、歪発生用トランジスタ増幅器48−1の入力端子48−1aは、入力端側整合回路50−1及び可変移相器54−1を介して開放端57−1に接続されている。同様に、歪発生用トランジスタ増幅器48−2の入力端子48−2a側にはマイクロ波信号のキャリア周波数に整合している入力端側整合回路50−2が配設され、歪発生用トランジスタ増幅器48−2の出力端子48−2b側にはマイクロ波信号のキャリア周波数に整合している出力端側整合回路52−2が配設されている。可変移相器54−2は、歪発生用トランジスタ増幅器48−2の入力端子48−2a(入力端側整合回路50−2)と開放端57−2との間に配置されており、歪発生用トランジスタ増幅器48−2の入力端子48−2aは、入力端側整合回路50−2及び可変移相器54−2を介して開放端57−2に接続されている。
【0054】
90°ハイブリッド96は、非線形側伝送線路34−1に接続された入力ポート96aと、出力端側整合回路52−1に接続された反射ポート96bと、出力端側整合回路52−2に接続された反射ポート96cと、非線形側伝送線路34−2に接続された出力ポート96dと、を有する。そして、90°ハイブリッド96は、非線形側伝送線路34−1(入力ポート96a)から出力端側整合回路52−1(反射ポート96b)へのマイクロ波信号の通過、出力端側整合回路52−1(反射ポート96b)から非線形側伝送線路34−2(出力ポート96d)への歪成分の通過、非線形側伝送線路34−1(入力ポート96a)から出力端側整合回路52−2(反射ポート96c)へのマイクロ波信号の通過、及び出力端側整合回路52−2(反射ポート96c)から非線形側伝送線路34−2(出力ポート96d)への歪成分の通過を許容する。また、90°ハイブリッド96は、非線形側伝送線路34−1(入力ポート96a)から非線形側伝送線路34−2(出力ポート96d)へのマイクロ波信号の通過、及び反射ポート86b,86c間のマイクロ波信号の通過を抑える(理想的には遮断する)。
【0055】
ドライバ増幅器22で増幅され且つ非線形側伝送線路34−1から取り出されたマイクロ波線形信号は、90°ハイブリッド96の反射ポート96b,96cに分配されて供給され、反射ポート96bに分配されたマイクロ波線形信号が出力端側整合回路52−1を介して歪発生用トランジスタ増幅器48−1の出力端子48−1bに供給(逆注入)され、反射ポート96cに分配されたマイクロ波線形信号が出力端側整合回路52−2を介して歪発生用トランジスタ増幅器48−2の出力端子48−2bに供給(逆注入)される。歪発生用トランジスタ増幅器48−1は、出力端子48−1bに供給されたマイクロ波線形信号を基に歪成分を発生し、歪発生用トランジスタ増幅器48−2は、出力端子48−2bに供給されたマイクロ波線形信号を基に歪成分を発生する。歪発生用トランジスタ増幅器48−1で発生した歪成分は、90°ハイブリッド96の反射ポート96bに供給され、歪発生用トランジスタ増幅器48−2で発生した歪成分は、90°ハイブリッド96の反射ポート96cに供給される。90°ハイブリッド96は、反射ポート96b,96cに供給された歪成分を合成して非線形側伝送線路34−2へ供給する。90°ハイブリッド96の反射ポート96b,96cに供給される歪成分は、いずれも前述の歪成分U1,U2,U3の合成信号であるため、可変移相器54−1,54−2の位相調整量を制御することで、反射ポート96b,96cに供給される歪成分のレベルをそれぞれ制御することができ、非線形側伝送線路34−2に供給される歪成分のレベルを制御することができる。なお、ここでは、歪発生用トランジスタ増幅器48−1の出力端子48−1bの電圧(あるいは電流)、及び歪発生用トランジスタ増幅器48−2の出力端子48−2bの電圧(あるいは電流)を制御することもできる。
【0056】
また、図13に示す構成例では、図1に示す構成例と比較して、被補償増幅器12がサーキュレータ36と合成器30との間の線形側伝送線路32−2に設けられており、線形側伝送線路32−2を伝搬するマイクロ波線形信号を増幅する。さらに、ドライバ増幅器72がサーキュレータ46と合成器30との間の非線形側伝送線路34−2に設けられており、非線形側伝送線路34−2を伝搬する歪成分を増幅する。合成器30は、被補償増幅器12からの出力信号(歪成分を含む)に非線形側伝送線路34−2を伝搬する歪成分(歪発生器40で発生しドライバ増幅器72で増幅された歪成分)を結合することにより、被補償増幅器12からの出力信号中に含まれる歪成分が低減するよう歪補償を行うことができる。このように、本発明をプリディストーション型歪補償増幅器以外の歪補償増幅器に適用することもできる。なお、図13に示す構成例では、サーキュレータ36の代わりに図11に示す構成例のハイブリッド66または図12に示す構成例の90°ハイブリッド86を設け、サーキュレータ46の代わりに図11に示す構成例のハイブリッド76または図12に示す構成例の90°ハイブリッド96を設けることもできる。また、図13に示す構成例では、被補償増幅器12を分配器24とサーキュレータ36との間の線形側伝送線路32−1に設け、ドライバ増幅器72を分配器24とサーキュレータ46との間の非線形側伝送線路34−1に設けることもできる。
【0057】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態に係る歪発生器を備える歪補償増幅器の概略構成を示す図である。
【図2】位相調整回路の構成例を示す図である。
【図3】位相調整回路の他の構成例を示す図である。
【図4】位相調整回路の他の構成例を示す図である。
【図5】歪発生用トランジスタ増幅器の構成例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る歪発生器の動作を説明する図である。
【図7】本発明の実施形態に係る歪発生器の動作を説明する図である。
【図8】本願発明者が行った実験結果を示す図である。
【図9】本願発明者が行った実験結果を示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係る歪発生器から出力される線形成分及び歪成分のレベルの一例を示す図である。
【図11】本発明の実施形態に係る歪発生器を備える歪補償増幅器の他の概略構成を示す図である。
【図12】本発明の実施形態に係る歪発生器を備える歪補償増幅器の他の概略構成を示す図である。
【図13】本発明の実施形態に係る歪発生器を備える歪補償増幅器の他の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
12 被補償増幅器、16 歪補償部、22,72 ドライバ増幅器、24 分配器、26 線形ルート、28 非線形ルート、30 合成器、32−1,32−2 線形側伝送線路、34−1,34−2 非線形側伝送線路、36,46 サーキュレータ、38 位相調整回路、40 歪発生器、48 歪発生用トランジスタ増幅器、48a 入力端子、48b 出力端子、50 入力端側整合回路、52 出力端側整合回路、54 可変移相器、56 グランド、57 開放端、58 FET、66,76 ハイブリッド、86,96 90°ハイブリッド。
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波信号を基に歪を発生させる歪発生器、及び増幅器からの出力信号中に含まれる歪が低減するよう歪補償を行う歪補償増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
増幅器の非線形性により増幅器からの出力信号に生じる歪成分を低減するよう歪補償を行う歪補償増幅器において、歪を発生させる歪発生器が用いられている。この歪発生器を用いた歪補償増幅器においては、歪補償の対象となる被補償増幅器への入力信号または被補償増幅器からの出力信号に歪発生器で発生させた歪を結合することにより、歪補償が行われている。下記特許文献1〜4には、ダイオードを用いて歪を発生させる歪発生器が開示されている。
【0003】
その他の関連技術として、下記特許文献5による歪発生器、及び下記特許文献6による歪補償増幅器が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−196371号公報
【特許文献2】実開昭62−19812号公報
【特許文献3】特公平8−31748号公報
【特許文献4】特公平8−15245号公報
【特許文献5】特開平3−190301号公報
【特許文献6】特公平7−85523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被補償増幅器への入力信号または被補償増幅器からの出力信号に歪発生器で発生させた歪を結合することにより歪補償を行う場合に、十分な歪補償効果を安定して得るためには、歪発生器から出力される歪のレベルを調整できることが望ましい。しかし、特許文献1〜4のダイオードを用いた歪発生器では、デバイスの性質上、小電力で動作させる必要があるため、発生させる歪のレベルも低くなり、歪のレベルを調整することが困難である。したがって、十分な歪補償効果を安定して得ることが困難である。
【0006】
本発明は、出力する歪のレベルを調整することができる歪発生器を提供することを目的とする。また、本発明は、十分な歪補償効果を安定して得ることができる歪補償増幅器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る歪発生器及び歪補償増幅器は、上述した目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本発明に係る歪発生器は、第1伝送路を伝搬するマイクロ波信号を取り出し、当該取り出したマイクロ波信号を基に歪を発生させ、当該発生させた歪を第2伝送路へ供給する歪発生器であって、マイクロ波信号が出力端子に供給されることにより歪を発生し、当該発生した歪を入力端子及び出力端子の両方から出力する歪発生用トランジスタ増幅器と、歪発生用トランジスタ増幅器の入力端子と信号反射端との間を通過する信号の振幅及び位相の少なくとも一方を調整するための調整手段と、を備え、第1伝送路から取り出したマイクロ波信号を歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子に供給することにより歪発生用トランジスタ増幅器で歪を発生させ、当該発生させた歪を歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子から第2伝送路へ供給し、さらに、調整手段により歪発生用トランジスタ増幅器の入力端子と信号反射端との間を通過する信号の振幅及び位相の少なくとも一方を調整することで、第2伝送路へ供給する歪の調整が可能であることを要旨とする。
【0009】
本発明の一態様では、歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子側に、マイクロ波信号のキャリア周波数に整合している出力端側整合回路が設けられていることが好適である。また、本発明の一態様では、歪発生用トランジスタ増幅器の入力端子側に、マイクロ波信号のキャリア周波数に整合している入力端側整合回路が設けられていることが好適である。
【0010】
本発明の一態様では、第1伝送路から歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子へのマイクロ波信号の通過、及び歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子から第2伝送路への歪の通過を許容するとともに、第1伝送路から第2伝送路へのマイクロ波信号の通過を抑えるための方向性素子を備えることが好適である。この態様では、方向性素子は、サーキュレータまたはハイブリッドであることが好適である。
【0011】
本発明の一態様では、歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子に供給するマイクロ波信号は、歪発生用トランジスタ増幅器で歪が発生するよう歪発生用トランジスタ増幅器の線形領域を超えた電力値を有することが好適である。
【0012】
本発明の一態様では、マイクロ波信号を増幅するドライバ増幅器が設けられ、ドライバ増幅器で増幅されたマイクロ波信号を歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子に供給することが好適である。
【0013】
本発明の一態様では、歪発生用トランジスタ増幅器はFETを含み、歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子はFETのドレイン端子であり、歪発生用トランジスタ増幅器の入力端子はFETのゲート端子であることが好適である。
【0014】
また、本発明に係る歪補償増幅器は、マイクロ波信号を増幅する主増幅器と、主増幅器からの出力信号中に含まれる歪が低減するよう歪補償を行う歪補償部と、を備える歪補償増幅器であって、歪補償部は、マイクロ波信号を基に歪を発生させる歪発生器を含み、歪発生器で発生させた歪を主増幅器に入力されるマイクロ波信号または主増幅器からの出力信号に結合することにより歪補償を行い、前記歪発生器が、本発明に係る歪発生器であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、マイクロ波信号を歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子に供給することにより歪発生用トランジスタ増幅器で歪を発生させてその入力端子及び出力端子の両方から出力することができる。さらに、調整手段により歪発生用トランジスタ増幅器の入力端子と信号反射端との間を通過する信号の振幅及び位相の少なくとも一方を調整することで、歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子側で合成される歪の振幅差及び位相差の少なくとも一方を調整することができる。その結果、歪発生器から出力される歪のレベルを調整することができる。
【0016】
また、本発明によれば、主増幅器からの出力信号中に残留する歪成分が低減するように歪発生器から出力される歪のレベルを調整することができるので、十分な歪補償効果を安定して得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下実施形態という)を図面に従って説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る歪発生器を備える歪補償増幅器の概略構成を示す図であり、本発明をプリディストーション型歪補償増幅器に適用した例を示す。本実施形態に係る歪補償増幅器は、被補償増幅器(主増幅器)12からの出力信号中に含まれる歪成分が低減するよう歪補償部16により歪補償を行うものである。
【0019】
入力端子INに入力されたマイクロ波信号(歪が生じていないマイクロ波線形信号)は、歪補償部16に入力される。歪補償部16は、入力端子INからのマイクロ波線形信号にプリディストーション(前置歪)を与えて出力する。被補償増幅器12は、歪補償部16から供給されたマイクロ波信号、つまり前置歪が与えられたマイクロ波信号を増幅して出力端子OUTへ出力する。このように、歪補償部16により被補償増幅器12に入力されるマイクロ波信号にプリディストーションを与えることで、被補償増幅器12からの出力信号中に含まれる歪成分が低減するよう歪補償が行われる。
【0020】
次に、歪補償部16の構成について説明する。歪補償部16は、以下に説明するドライバ増幅器22、分配器24、線形ルート26、非線形ルート28、及び合成器30を備える。
【0021】
ドライバ増幅器22は、歪補償部16に入力されたマイクロ波線形信号を増幅して分配器24へ出力する。ここでのドライバ増幅器22としては、線形性に優れたリニアアンプが用いられる。分配器24は、ドライバ増幅器22で増幅されたマイクロ波信号を線形ルート26の線形側伝送線路32−1と非線形ルート28の非線形側伝送線路34−1とに分配する。
【0022】
線形ルート26には、入力ポート36aと反射ポート36bと出力ポート36cとを有するサーキュレータ36が方向性素子として配設されている。サーキュレータ36においては、入力ポート36aには線形側伝送線路32−1が接続され、反射ポート36bにはマイクロ波信号の位相を調整するための位相調整回路38が接続され、出力ポート36cには線形側伝送線路32−2が接続されている。サーキュレータ36は、入力ポート36aから反射ポート36bへのマイクロ波信号の通過を許容することで、線形側伝送線路32−1から位相調整回路38へのマイクロ波信号の通過を許容する。そして、サーキュレータ36は、反射ポート36bから出力ポート36cへのマイクロ波信号の通過を許容することで、位相調整回路38から線形側伝送線路32−2へのマイクロ波信号の通過を許容する。また、サーキュレータ36は、入力ポート36aから出力ポート36cへのマイクロ波信号の通過を抑えることで、位相調整回路38を介することなく線形側伝送線路32−1から線形側伝送線路32−2へマイクロ波信号が通過するのを抑える(理想的には遮断する)。
【0023】
ここでの位相調整回路38については、例えば図2に示すようにオープンスタブ、または図3に示すようにショートスタブにより構成することができる。線形側伝送線路32−1からサーキュレータ36を介してオープンスタブ(またはショートスタブ)38に供給されたマイクロ波線形信号は、オープンスタブ(またはショートスタブ)38の信号反射端にて反射され、この反射されたマイクロ波線形信号がサーキュレータ36を介して線形側伝送線路32−2に供給される。そのため、図2,3に示す例では、オープンスタブ(またはショートスタブ)38の長さ(電気長)を調整することで、線形ルート26を伝搬するマイクロ波線形信号の位相を調整することができる。
【0024】
あるいは、位相調整回路38は、図4に示すように、互いに並列配置された複数の伝送線路33−1〜33−3と、各伝送線路33−1〜33−3をグランド56に接続するための複数のスイッチ35−1〜35−3と、を含むこともできる。スイッチ35−1〜35−3のいずれか1つを閉じて伝送線路33−1〜33−3のいずれか1つをグランド56に接続することで、グランド56に接続された伝送線路はショートスタブとして機能する。そして、スイッチ35−1を閉じたときのサーキュレータ36の反射ポート36bとグランド56との間の電気長、スイッチ35−2を閉じたときのサーキュレータ36の反射ポート36bとグランド56との間の電気長、及びスイッチ35−3を閉じたときのサーキュレータ36の反射ポート36bとグランド56との間の電気長がそれぞれ異なる。そのため、図4に示す例では、閉じるスイッチ35−1〜35−3、つまりグランド56に接続する伝送線路33−1〜33−3を切り替えることで、線形ルート26を伝搬するマイクロ波線形信号の位相を調整することができる。
【0025】
一方、非線形ルート28には、非線形側伝送線路34−1を伝搬するマイクロ波信号を取り出し、この取り出したマイクロ波信号を基に歪成分を発生させ、この発生させた歪成分を非線形側伝送線路34−2へ供給する歪発生器40が配設されている。ここでの歪発生器40は、入力ポート46aと反射ポート46bと出力ポート46cとを有するサーキュレータ(方向性素子)46と、マイクロ波信号が出力端子48bに供給されることにより歪成分を発生する歪発生用トランジスタ増幅器48と、歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aと開放端(信号反射端)57との間を通過する信号の位相を調整する可変移相器(位相調整器)54と、を備える反射型歪発生器である。歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48a側にはマイクロ波信号のキャリア周波数に整合している入力端側整合回路50が配設されている。つまり、歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48a側では、マイクロ波信号のキャリア周波数においてインピーダンス整合(マッチング)が取れており、マイクロ波信号の反射が抑えられる。そして、歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48b側にはマイクロ波信号のキャリア周波数に整合している出力端側整合回路52が配設されている。つまり、歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48b側でも、マイクロ波信号のキャリア周波数においてインピーダンス整合(マッチング)が取れており、マイクロ波信号の反射が抑えられる。可変移相器54は、歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48a(入力端側整合回路50)と開放端57との間に配置されており、歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aは、入力端側整合回路50及び可変移相器54を介して開放端57に接続されている。
【0026】
サーキュレータ46においては、入力ポート46aには非線形側伝送線路34−1が接続され、反射ポート46bには出力端側整合回路52(歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48b)が接続され、出力ポート46cには非線形側伝送線路34−2が接続されている。サーキュレータ46は、入力ポート46aから反射ポート46bへのマイクロ波信号の通過を許容することで、非線形側伝送線路34−1から出力端側整合回路52(歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48b)へのマイクロ波信号の通過を許容する。そして、サーキュレータ46は、反射ポート46bから出力ポート46cへの歪成分の通過を許容することで、出力端側整合回路52から非線形側伝送線路34−2への歪成分の通過を許容する。また、サーキュレータ46は、入力ポート46aから出力ポート46cへのマイクロ波信号の通過を抑えることで、非線形側伝送線路34−1から非線形側伝送線路34−2へのマイクロ波信号の通過を抑える(理想的には遮断する)。
【0027】
歪発生用トランジスタ増幅器48の構成例を図5に示す。図5に示す例では、FET58のゲート端子58aが歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aとなっており、FET58のドレイン端子58bが歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bとなっている。そして、FET58のソース端子58cはグランド56に接続されている。また、ゲートバイアス回路59は、チョークコイル60を介してFET58のゲート端子58a(歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48a)にバイアス電圧を印加し、ドレインバイアス回路61は、チョークコイル62を介してFET58のドレイン端子58b(歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48b)にバイアス電圧を印加する。このように、歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48a及び出力端子48bには、別々のバイアス電圧が印加されている。
【0028】
ドライバ増幅器22で増幅され且つ非線形側伝送線路34−1から取り出されたマイクロ波線形信号は、出力端側整合回路52を介して歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bに供給される。歪発生用トランジスタ増幅器48は、出力端子48bに供給されたマイクロ波線形信号を基に歪成分を発生する。歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bに供給されるマイクロ波線形信号は、ドライバ増幅器22で増幅されているため、歪発生用トランジスタ増幅器48の線形領域(線形増幅範囲)を超えた電力値を有するマイクロ波線形信号を歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bに供給することができる。したがって、歪発生用トランジスタ増幅器48を非線形領域で動作させることができ、歪発生用トランジスタ増幅器48で十分な電力値の歪成分を発生させることができる。歪発生用トランジスタ増幅器48で発生した歪成分は、歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48a及び出力端子48bの両方から出力される。歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bから出力された歪成分は、出力端側整合回路52及びサーキュレータ46を介して非線形側伝送線路34−2に供給される。そして、歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aから出力された歪成分は、開放端57で反射し、歪発生用トランジスタ増幅器48を通過して出力端子48bから出力端側整合回路52及びサーキュレータ46を介して非線形側伝送線路34−2に供給される。また、歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aからは、歪成分(非線形成分)だけでなく線形成分も出力される。通常の増幅器は、入力端子に入力されたマイクロ波信号を増幅して出力端子から出力する(歪発生用トランジスタ増幅器48も入力端子48aに入力されたマイクロ波信号を増幅して出力端子48bから出力することが可能である)が、本実施形態の歪発生用トランジスタ増幅器48は、通常の増幅器の使用方法とは異なり、マイクロ波信号を出力端子48b側から逆注入することにより歪成分を発生させる。
【0029】
合成器30は、線形側伝送線路32−2を伝搬するマイクロ波線形信号と非線形側伝送線路34−2を伝搬する歪成分とを合成して被補償増幅器12へ出力する。被補償増幅器12によりマイクロ波信号を増幅する際には歪成分が発生するが、被補償増幅器12に入力されるマイクロ波線形信号に歪発生器40(歪発生用トランジスタ増幅器48)で発生させた歪成分を結合することにより、被補償増幅器12に入力されるマイクロ波信号にプリディストーションを与えることができ、被補償増幅器12からの出力信号中に含まれる歪成分が低減するよう歪補償を行うことができる。なお、歪補償を行う際には、被補償増幅器12からの出力信号中に残留する歪成分が最小になるように、位相調整回路38による位相調整量(オープンスタブやショートスタブの電気長)が調整される。
【0030】
図6に示すように、非線形側伝送線路34−1から非線形側伝送線路34−2に供給される線形成分については、D1,D2,D3(ここではD1,D2,D3の上の→を省略する)の3つの成分に分けて考えることができる。図6において、D1は、サーキュレータ46の入力ポート46aから出力ポート46cへリークすることで、非線形側伝送線路34−2に供給される線形成分である。D2は、サーキュレータ46を入力ポート46aから反射ポート46bへ通過し、歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48b側で反射し、サーキュレータ46を反射ポート46bから出力ポート46cへ通過することで、非線形側伝送線路34−2に供給される線形成分である。D3は、サーキュレータ46を入力ポート46aから反射ポート46bへ通過し、歪発生用トランジスタ増幅器48を出力端子48bから入力端子48aへ逆方向に通過し、可変移相器54を通過して開放端57で反射し、可変移相器54を再び通過し、歪発生用トランジスタ増幅器48を入力端子48aから出力端子48bへ順方向に通過し、サーキュレータ46を反射ポート46bから出力ポート46cへ通過することで、非線形側伝送線路34−2に供給される線形成分である。
【0031】
サーキュレータ46の通過損失及び線路の電気長を無視すると、各線形成分D1,D2,D3とこれらの合成信号(非線形側伝送線路34−2に供給される線形成分)Doutは、以下の式で表される。ただし、以下の式において、Din(ここではDinの上の→を省略する)は、非線形側伝送線路34−1を伝搬するマイクロ波線形信号を表す。また、LCIRは、サーキュレータ46の入力ポート46aと出力ポート46cとの間のアイソレーションであり、φは、可変移相器54の位相調整量(移相量)である。また、S12,S21,S22(ここではS12,S21,S22の上の→を省略する)は、それぞれ歪発生用トランジスタ増幅器48のS12パラメータ、S21パラメータ、S22パラメータである。
【0032】
【数1】
【0033】
また、図7に示すように、歪発生器40(歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48b)から非線形側伝送線路34−2に供給される歪成分(非線形成分)については、U1,U2,U3(ここではU1,U2,U3の上の→を省略する)の3つの成分に分けて考えることができる。図7において、U1は、歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bに逆注入されたマイクロ波線形信号により歪発生用トランジスタ増幅器48の内部で発生した歪成分であって、歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bから出力され、サーキュレータ46を反射ポート46bから出力ポート46cへ通過することで、非線形側伝送線路34−2に供給される歪成分である。U2は、歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bに逆注入されたマイクロ波線形信号により歪発生用トランジスタ増幅器48の内部で発生した歪成分であって、歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aから出力され、可変移相器54を通過して開放端57で反射し、可変移相器54を再び通過し、歪発生用トランジスタ増幅器48を入力端子48aから出力端子48bへ通過し、サーキュレータ46を反射ポート46bから出力ポート46cへ通過することで、非線形側伝送線路34−2に供給される歪成分である。U3は、歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bに逆注入されたマイクロ波線形信号の一部が入力端子48aから出力され、可変移相器54を通過して開放端57で反射し、可変移相器54を再び通過し、歪発生用トランジスタ増幅器48を入力端子48aから出力端子48bへ通過する際に、歪発生用トランジスタ増幅器48の内部で発生した歪成分であって、歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bから出力され、サーキュレータ46を反射ポート46bから出力ポート46cへ通過することで、非線形側伝送線路34−2に供給される歪成分である。
【0034】
歪成分U1と歪成分U3との合成は非線形演算であり、歪成分U1,U3と歪成分U2との合成は線形演算である。U2は歪成分であるものの、歪発生用トランジスタ増幅器48を入力端子48aから出力端子48bへ通過する際には線形に通過するためである。歪発生用トランジスタ増幅器48の線形信号入力(入力端子48aへの線形信号入力)Eに対する歪成分出力(出力端子48bからの歪成分出力)をUとし、歪発生用トランジスタ増幅器48の歪特性をU=T(E)と表すことにすると、各歪成分U1,U2,U3の合成信号、つまり非線形側伝送線路34−2に供給される歪成分Uout(ここではUoutの上の→を省略する)は、以下の式で表される。ただし、以下の式において、U1=T(E1)、U2=T(E2)、U3=T(E3)であり(ここではE1,E2,E3の上の→を省略する)、θは、E1とE2の位相差である。
【0035】
【数2】
【0036】
ここで、本願発明者が行った実験結果を図8,9に示す。図8は、マイクロ波線形信号を歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aに順注入した場合に出力端子48bから取り出される線形信号及び非線形信号(歪成分)のレベルと、マイクロ波線形信号を歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bに逆注入した場合に出力端子48bから取り出される線形信号(線形成分D2に相当)及び非線形信号(歪成分U1に相当)のレベルと、を示す。そして、図9は、マイクロ波線形信号を歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aに順注入した場合に出力端子48bから取り出される線形信号及び非線形信号(歪成分)のレベルと、マイクロ波線形信号を歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bに逆注入した場合に入力端子48aから取り出される線形信号(線形成分D3に相当)及び非線形信号(歪成分U2に相当)のレベルと、を示す。図8,9に示すように、マイクロ波線形信号を歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bに逆注入することで、歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48a及び出力端子48bから歪成分が出力されることがわかる。なお、マイクロ波線形信号の逆注入により歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aから取り出される線形信号のレベルについては、歪発生用トランジスタ増幅器48のS12パラメータにより調整可能である。そして、マイクロ波線形信号の逆注入により歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bから取り出される線形信号のレベルについては、歪発生用トランジスタ増幅器48のS22パラメータにより調整可能である。
【0037】
歪補償増幅器において十分な歪補償効果を安定して得るためには、歪発生器から出力される歪成分のレベルを調整できることが望ましい。特許文献1〜4のダイオードを用いた歪発生器では、デバイスの性質上、小電力で動作させる必要があるため、発生させる歪成分のレベルも低くなり、歪成分のレベルを調整することが困難である。したがって、十分な歪補償効果を安定して得ることが困難である。
【0038】
これに対して本実施形態の歪発生器40では、ダイオードではなく歪発生用トランジスタ増幅器48にマイクロ波線形信号を供給して歪成分を発生させることで、歪発生用トランジスタ増幅器48に供給するマイクロ波線形信号の電力レベルを増大させることができ、歪発生用トランジスタ増幅器48で発生させる歪成分の電力レベルを増大させることができる。さらに、本実施形態では、通常の増幅器の使用方法とは異なり、マイクロ波線形信号を歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bに逆注入することにより、歪発生用トランジスタ増幅器48から出力される線形成分の電力レベルを抑えながら、歪発生用トランジスタ増幅器48から出力される歪成分の電力レベルを増大させることができる。さらに、出力端側整合回路52はマイクロ波信号のキャリア周波数に整合している(歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48b側ではマイクロ波信号のキャリア周波数においてインピーダンスマッチングが取れている)ため、非線形側伝送線路34−1から取り出したマイクロ波線形信号を歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bに供給する際に、マイクロ波線形信号が反射して非線形側伝送線路34−2に供給されるのを抑えることができる。
【0039】
さらに、本実施形態の歪発生器40では、可変移相器54の位相調整量(移相量)φを変化させる、つまり歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aと開放端57との間を通過する信号(線形成分及び歪成分)の位相を変化させると、歪成分U1と歪成分U2,U3との位相差が変化し、非線形側伝送線路34−2に供給される歪成分Uoutの電力レベルが変化する。したがって、可変移相器54により歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aと開放端57との間を通過する信号の位相を制御することで、歪成分U1と歪成分U2,U3との位相差を制御することができ、歪発生器40から出力される歪成分Uoutの電力レベルを制御することができる。さらに、可変移相器54の移相量φを変化させると、線形成分D1,D2と線形成分D3との位相差も変化し、非線形側伝送線路34−2に供給される線形成分Doutの電力レベルも変化する。したがって、可変移相器54により歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aと開放端57との間を通過する信号の位相を制御することで、線形成分D1,D2と線形成分D3との位相差も制御することができ、歪発生器40から出力される線形成分Doutの電力レベルも制御することができる。さらに、入力端側整合回路50はマイクロ波信号のキャリア周波数に整合している(歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48a側ではマイクロ波信号のキャリア周波数においてインピーダンスマッチングが取れている)ため、可変移相器54により歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aと開放端57との間を通過する信号の位相を調整する際に、マイクロ波信号が反射するのを抑えることができる。
【0040】
非線形側伝送線路34−2に供給される線形成分Dout及び歪成分Uoutをある条件で図示すると、図10に示すようになる。ただし、図10では、線形成分Dout及び歪成分Uoutを正規化して図示している。図10に示すように、可変移相器54の位相調整量φを調整することにより、線形成分Dout及び歪成分Uoutのレベルがマイクロ波の波長で決まる周期で変化するため、歪発生器40から出力される線形成分Dout及び歪成分Uoutのレベルを調整できることがわかる。また、図10に示すように、線形成分Doutが極大(最大)となる位相調整量φと歪成分Uoutが極大(最大)となる位相調整量φとが若干異なることと、位相調整量φの変化に対して歪成分Uoutは線形成分Doutよりも大きく変化することを利用すると、歪成分Uoutのレベルを増大させるとともに線形成分Doutのレベルを減少させることができる位相調整量φが存在し、歪成分Uoutと線形成分Doutとのレベル差が最大となる位相調整量φが存在することがわかる。したがって、可変移相器54の位相調整量φの調整により歪発生器40から出力される歪成分Uoutのレベルを増大させることができるとともに線形成分Doutのレベルを減少させることができる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態によれば、可変移相器54の位相調整量φの調整により歪発生器40から出力される歪成分Uoutの電力レベルを調整することができる。そして、例えば被補償増幅器12からの出力信号中に残留する歪成分が最小になるように、可変移相器54の位相調整量φを調整する、つまり歪発生器40から出力される歪成分Uoutの電力レベルを調整することで、十分な歪補償効果を安定して得ることができる。
【0042】
また、歪補償増幅器において十分な歪補償効果を得るためには、歪発生器の歪特性(非線形特性)を被補償増幅器の歪特性(非線形特性)と一致させるように近づけることが望ましい。特許文献1〜4のダイオードを用いた歪発生器では、デバイスの性質上、ダイオードによる歪特性が被補償増幅器の歪特性と異なるため、十分な歪補償効果を得ることが困難である。
【0043】
これに対して本実施形態の歪発生器40では、ダイオードではなく歪発生用トランジスタ増幅器48にマイクロ波線形信号を供給して歪成分を発生させることで、歪発生用トランジスタ増幅器48の歪特性(非線形特性)を被補償増幅器12の歪特性(非線形特性)に近づけることができる。したがって、歪補償効果を向上させることができる。なお、歪発生用トランジスタ増幅器48の歪特性を被補償増幅器12の歪特性に一致させるようにより近づけるためには、歪発生用トランジスタ増幅器48を被補償増幅器12と同一プロセスで製造し、被補償増幅器12に対しスケールダウンされた増幅器を歪発生用トランジスタ増幅器48として用いることが好ましい。さらに、歪発生用トランジスタ増幅器48と被補償増幅器12とで、動作級(A級、AB級、C級等)を一致させることが好ましい。
【0044】
また、被補償増幅器12の歪特性は、メモリ効果の影響を受けることがある。ここでのメモリ効果とは、被補償増幅器12への入力信号の包絡線振幅の影響でバイアスが変動し、被補償増幅器12の歪特性が時変となる現象である。メモリ効果が発生すると、歪補償効果の低下を招きやすくなる。
【0045】
これに対して本実施形態では、歪発生器40に歪発生用トランジスタ増幅器48を利用しているため、被補償増幅器12と類似のメモリ効果を歪発生用トランジスタ増幅器48に持たせることが可能となる。より具体的には、歪発生用トランジスタ増幅器48と被補償増幅器12とで、バイアス回路のインピーダンス周波数特性を一致させる。これによって、被補償増幅器12にメモリ効果が生じても、十分な歪補償効果を得ることができる。
【0046】
次に、本実施形態の他の構成例について説明する。
【0047】
本実施形態では、歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bの電圧(FET58のドレイン〜ソース間電圧)、あるいは歪発生用トランジスタ増幅器48の出力端子48bの電流(FET58のドレイン〜ソース間電流)を制御する制御回路を設けることもできる。制御回路により出力端子48bの電圧(FET58のドレイン電圧)や出力端子48bの電流(FET58のドレイン電流)を制御することで、歪発生用トランジスタ増幅器48で発生させる歪成分のレベルを制御することができる。
【0048】
また、本実施形態では、可変移相器54に加えて、または可変移相器54に代えて、可変減衰器(振幅調整器)を歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48a(入力端側整合回路50)と開放端57との間に設けることもできる。ここでの可変減衰器は、歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aと開放端57との間を通過する信号の振幅を調整する。可変減衰器の振幅調整量(減衰量)を変化させる、つまり歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aと開放端57との間を通過する信号(線形成分及び歪成分)の振幅を変化させると、歪成分U1と歪成分U2,U3との振幅差が変化し、非線形側伝送線路34−2に供給される歪成分Uoutのレベルが変化する。したがって、可変減衰器により歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aと開放端57との間を通過する信号の振幅を制御することで、歪成分U1と歪成分U2,U3との振幅差を制御することができ、歪発生器40から出力される歪成分Uoutのレベルを制御することができる。さらに、可変減衰器の減衰量を変化させると、線形成分D1,D2と線形成分D3との振幅差も変化し、非線形側伝送線路34−2に供給される線形成分Doutのレベルも変化する。したがって、可変減衰器により歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aと開放端57との間を通過する信号の振幅を制御することで、線形成分D1,D2と線形成分D3との振幅差も制御することができ、歪発生器40から出力される線形成分Doutのレベルも制御することができる。さらに、線形成分D1+D2の振幅と線形成分D3の振幅とを一致させるように可変減衰器の減衰量を調整することで、理論上、線形成分Doutのレベルを0にすることも可能である。
【0049】
また、本実施形態では、可変移相器54(可変減衰器)を歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48a(入力端側整合回路50)とグランド(信号反射端)56との間に設け、歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aを入力端側整合回路50及び可変移相器54(可変減衰器)を介してグランド56に接続することもできる。ここでの可変移相器54(可変減衰器)は、歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aとグランド56との間を通過する信号の位相(振幅)を調整することで、非線形側伝送線路34−2に供給される歪成分Uout及び線形成分Doutのレベルを調整することができる。
【0050】
また、本実施形態では、歪発生用トランジスタ増幅器48の入力端子48aと開放端57(あるいはグランド56)との間を通過する信号の位相を、遅延器によって調整することもできる。この場合は、遅延器の遅延時間を調整することにより、非線形側伝送線路34−2に供給される歪成分Uout及び線形成分Doutのレベルを調整することができる。
【0051】
また、図11に示す構成例では、図1に示す構成例と比較して、方向性素子としてサーキュレータ36,66の代わりにハイブリッド66,76がそれぞれ設けられている。ハイブリッド66は、線形側伝送線路32−1に接続された入力ポート66aと、位相調整回路38に接続された反射ポート66bと、線形側伝送線路32−2に接続された出力ポート66cと、を有する。そして、ハイブリッド66は、線形側伝送線路32−1(入力ポート66a)から位相調整回路38(反射ポート66b)へのマイクロ波信号の通過、及び位相調整回路38(反射ポート66b)から線形側伝送線路32−2(出力ポート66c)へのマイクロ波信号の通過を許容するとともに、位相調整回路38(反射ポート66b)を介することなく線形側伝送線路32−1(入力ポート66a)から線形側伝送線路32−2(出力ポート66c)へマイクロ波信号が通過するのを抑える(理想的には遮断する)。また、ハイブリッド76は、非線形側伝送線路34−1に接続された入力ポート76aと、出力端側整合回路52に接続された反射ポート76bと、非線形側伝送線路34−2に接続された出力ポート76cと、を有する。そして、ハイブリッド76は、非線形側伝送線路34−1(入力ポート76a)から出力端側整合回路52(反射ポート76b)へのマイクロ波信号の通過、及び出力端側整合回路52(反射ポート76b)から非線形側伝送線路34−2(出力ポート76c)への歪成分の通過を許容するとともに、非線形側伝送線路34−1(入力ポート76a)から非線形側伝送線路34−2(出力ポート76c)へのマイクロ波信号の通過を抑える(理想的には遮断する)。
【0052】
また、図12に示す構成例では、図1に示す構成例と比較して、方向性素子としてサーキュレータ36,66の代わりに90°ハイブリッド86,96がそれぞれ設けられている。90°ハイブリッド86は、線形側伝送線路32−1に接続された入力ポート86aと、位相調整回路38に接続された反射ポート86b,86cと、線形側伝送線路32−2に接続された出力ポート86dと、を有する。ここでの位相調整回路38は、反射ポート86bに接続された可変容量ダイオード39−1と、反射ポート86cに接続された可変容量ダイオード39−2と、可変容量ダイオード39−1とグランド56との間に設けられたコイル37−1と、可変容量ダイオード39−2とグランド56との間に設けられたコイル37−2と、を有する。そして、90°ハイブリッド86は、線形側伝送線路32−1(入力ポート86a)から可変容量ダイオード39−1(反射ポート86b)へのマイクロ波信号の通過、可変容量ダイオード39−1(反射ポート86b)から線形側伝送線路32−2(出力ポート86d)へのマイクロ波信号の通過、線形側伝送線路32−1(入力ポート86a)から可変容量ダイオード39−2(反射ポート86c)へのマイクロ波信号の通過、及び可変容量ダイオード39−2(反射ポート86c)から線形側伝送線路32−2(出力ポート86d)へのマイクロ波信号の通過を許容する。また、90°ハイブリッド86は、位相調整回路38(反射ポート86b,86c)を介することなく線形側伝送線路32−1(入力ポート86a)から線形側伝送線路32−2(出力ポート86d)へマイクロ波信号が通過するのを抑える(理想的には遮断する)とともに、反射ポート86b,86c間をマイクロ波信号が通過するのを抑える(理想的には遮断する)。線形側伝送線路32−1から90°ハイブリッド86の反射ポート86b,86cに分配されて供給されたマイクロ波線形信号は、位相調整回路38で位相が調整されてから、90°ハイブリッド86で合成されて線形側伝送線路32−2に供給される。ここでは可変容量ダイオード39−1,39−2の容量を調整することで、線形ルート26を伝搬するマイクロ波信号の位相を調整することができる。
【0053】
さらに、図12に示す構成例では、歪発生器40は、90°ハイブリッド96と、複数の歪発生用トランジスタ増幅器48−1,48−2と、歪発生用トランジスタ増幅器48−1の入力端子48−1aと開放端(信号反射端)57−1との間を通過する信号の位相を調整する可変移相器(位相調整器)54−1と、歪発生用トランジスタ増幅器48−2の入力端子48−2aと開放端(信号反射端)57−2との間を通過する信号の位相を調整する可変移相器(位相調整器)54−2と、を備える。歪発生用トランジスタ増幅器48−1の入力端子48−1a側にはマイクロ波信号のキャリア周波数に整合している入力端側整合回路50−1が配設され、歪発生用トランジスタ増幅器48−1の出力端子48−1b側にはマイクロ波信号のキャリア周波数に整合している出力端側整合回路52−1が配設されている。可変移相器54−1は、歪発生用トランジスタ増幅器48−1の入力端子48−1a(入力端側整合回路50−1)と開放端57−1との間に配置されており、歪発生用トランジスタ増幅器48−1の入力端子48−1aは、入力端側整合回路50−1及び可変移相器54−1を介して開放端57−1に接続されている。同様に、歪発生用トランジスタ増幅器48−2の入力端子48−2a側にはマイクロ波信号のキャリア周波数に整合している入力端側整合回路50−2が配設され、歪発生用トランジスタ増幅器48−2の出力端子48−2b側にはマイクロ波信号のキャリア周波数に整合している出力端側整合回路52−2が配設されている。可変移相器54−2は、歪発生用トランジスタ増幅器48−2の入力端子48−2a(入力端側整合回路50−2)と開放端57−2との間に配置されており、歪発生用トランジスタ増幅器48−2の入力端子48−2aは、入力端側整合回路50−2及び可変移相器54−2を介して開放端57−2に接続されている。
【0054】
90°ハイブリッド96は、非線形側伝送線路34−1に接続された入力ポート96aと、出力端側整合回路52−1に接続された反射ポート96bと、出力端側整合回路52−2に接続された反射ポート96cと、非線形側伝送線路34−2に接続された出力ポート96dと、を有する。そして、90°ハイブリッド96は、非線形側伝送線路34−1(入力ポート96a)から出力端側整合回路52−1(反射ポート96b)へのマイクロ波信号の通過、出力端側整合回路52−1(反射ポート96b)から非線形側伝送線路34−2(出力ポート96d)への歪成分の通過、非線形側伝送線路34−1(入力ポート96a)から出力端側整合回路52−2(反射ポート96c)へのマイクロ波信号の通過、及び出力端側整合回路52−2(反射ポート96c)から非線形側伝送線路34−2(出力ポート96d)への歪成分の通過を許容する。また、90°ハイブリッド96は、非線形側伝送線路34−1(入力ポート96a)から非線形側伝送線路34−2(出力ポート96d)へのマイクロ波信号の通過、及び反射ポート86b,86c間のマイクロ波信号の通過を抑える(理想的には遮断する)。
【0055】
ドライバ増幅器22で増幅され且つ非線形側伝送線路34−1から取り出されたマイクロ波線形信号は、90°ハイブリッド96の反射ポート96b,96cに分配されて供給され、反射ポート96bに分配されたマイクロ波線形信号が出力端側整合回路52−1を介して歪発生用トランジスタ増幅器48−1の出力端子48−1bに供給(逆注入)され、反射ポート96cに分配されたマイクロ波線形信号が出力端側整合回路52−2を介して歪発生用トランジスタ増幅器48−2の出力端子48−2bに供給(逆注入)される。歪発生用トランジスタ増幅器48−1は、出力端子48−1bに供給されたマイクロ波線形信号を基に歪成分を発生し、歪発生用トランジスタ増幅器48−2は、出力端子48−2bに供給されたマイクロ波線形信号を基に歪成分を発生する。歪発生用トランジスタ増幅器48−1で発生した歪成分は、90°ハイブリッド96の反射ポート96bに供給され、歪発生用トランジスタ増幅器48−2で発生した歪成分は、90°ハイブリッド96の反射ポート96cに供給される。90°ハイブリッド96は、反射ポート96b,96cに供給された歪成分を合成して非線形側伝送線路34−2へ供給する。90°ハイブリッド96の反射ポート96b,96cに供給される歪成分は、いずれも前述の歪成分U1,U2,U3の合成信号であるため、可変移相器54−1,54−2の位相調整量を制御することで、反射ポート96b,96cに供給される歪成分のレベルをそれぞれ制御することができ、非線形側伝送線路34−2に供給される歪成分のレベルを制御することができる。なお、ここでは、歪発生用トランジスタ増幅器48−1の出力端子48−1bの電圧(あるいは電流)、及び歪発生用トランジスタ増幅器48−2の出力端子48−2bの電圧(あるいは電流)を制御することもできる。
【0056】
また、図13に示す構成例では、図1に示す構成例と比較して、被補償増幅器12がサーキュレータ36と合成器30との間の線形側伝送線路32−2に設けられており、線形側伝送線路32−2を伝搬するマイクロ波線形信号を増幅する。さらに、ドライバ増幅器72がサーキュレータ46と合成器30との間の非線形側伝送線路34−2に設けられており、非線形側伝送線路34−2を伝搬する歪成分を増幅する。合成器30は、被補償増幅器12からの出力信号(歪成分を含む)に非線形側伝送線路34−2を伝搬する歪成分(歪発生器40で発生しドライバ増幅器72で増幅された歪成分)を結合することにより、被補償増幅器12からの出力信号中に含まれる歪成分が低減するよう歪補償を行うことができる。このように、本発明をプリディストーション型歪補償増幅器以外の歪補償増幅器に適用することもできる。なお、図13に示す構成例では、サーキュレータ36の代わりに図11に示す構成例のハイブリッド66または図12に示す構成例の90°ハイブリッド86を設け、サーキュレータ46の代わりに図11に示す構成例のハイブリッド76または図12に示す構成例の90°ハイブリッド96を設けることもできる。また、図13に示す構成例では、被補償増幅器12を分配器24とサーキュレータ36との間の線形側伝送線路32−1に設け、ドライバ増幅器72を分配器24とサーキュレータ46との間の非線形側伝送線路34−1に設けることもできる。
【0057】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態に係る歪発生器を備える歪補償増幅器の概略構成を示す図である。
【図2】位相調整回路の構成例を示す図である。
【図3】位相調整回路の他の構成例を示す図である。
【図4】位相調整回路の他の構成例を示す図である。
【図5】歪発生用トランジスタ増幅器の構成例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る歪発生器の動作を説明する図である。
【図7】本発明の実施形態に係る歪発生器の動作を説明する図である。
【図8】本願発明者が行った実験結果を示す図である。
【図9】本願発明者が行った実験結果を示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係る歪発生器から出力される線形成分及び歪成分のレベルの一例を示す図である。
【図11】本発明の実施形態に係る歪発生器を備える歪補償増幅器の他の概略構成を示す図である。
【図12】本発明の実施形態に係る歪発生器を備える歪補償増幅器の他の概略構成を示す図である。
【図13】本発明の実施形態に係る歪発生器を備える歪補償増幅器の他の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
12 被補償増幅器、16 歪補償部、22,72 ドライバ増幅器、24 分配器、26 線形ルート、28 非線形ルート、30 合成器、32−1,32−2 線形側伝送線路、34−1,34−2 非線形側伝送線路、36,46 サーキュレータ、38 位相調整回路、40 歪発生器、48 歪発生用トランジスタ増幅器、48a 入力端子、48b 出力端子、50 入力端側整合回路、52 出力端側整合回路、54 可変移相器、56 グランド、57 開放端、58 FET、66,76 ハイブリッド、86,96 90°ハイブリッド。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1伝送路を伝搬するマイクロ波信号を取り出し、当該取り出したマイクロ波信号を基に歪を発生させ、当該発生させた歪を第2伝送路へ供給する歪発生器であって、
マイクロ波信号が出力端子に供給されることにより歪を発生し、当該発生した歪を入力端子及び出力端子の両方から出力する歪発生用トランジスタ増幅器と、
歪発生用トランジスタ増幅器の入力端子と信号反射端との間を通過する信号の振幅及び位相の少なくとも一方を調整するための調整手段と、
を備え、
第1伝送路から取り出したマイクロ波信号を歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子に供給することにより歪発生用トランジスタ増幅器で歪を発生させ、当該発生させた歪を歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子から第2伝送路へ供給し、
さらに、調整手段により歪発生用トランジスタ増幅器の入力端子と信号反射端との間を通過する信号の振幅及び位相の少なくとも一方を調整することで、第2伝送路へ供給する歪の調整が可能である、歪発生器。
【請求項2】
請求項1に記載の歪発生器であって、
歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子側に、マイクロ波信号のキャリア周波数に整合している出力端側整合回路が設けられている、歪発生器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の歪発生器であって、
歪発生用トランジスタ増幅器の入力端子側に、マイクロ波信号のキャリア周波数に整合している入力端側整合回路が設けられている、歪発生器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1に記載の歪発生器であって、
第1伝送路から歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子へのマイクロ波信号の通過、及び歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子から第2伝送路への歪の通過を許容するとともに、第1伝送路から第2伝送路へのマイクロ波信号の通過を抑えるための方向性素子を備える、歪発生器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1に記載の歪発生器であって、
歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子に供給するマイクロ波信号は、歪発生用トランジスタ増幅器で歪が発生するよう歪発生用トランジスタ増幅器の線形領域を超えた電力値を有する、歪発生器。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1に記載の歪発生器であって、
マイクロ波信号を増幅するドライバ増幅器が設けられ、
ドライバ増幅器で増幅されたマイクロ波信号を歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子に供給する、歪発生器。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1に記載の歪発生器であって、
歪発生用トランジスタ増幅器はFETを含み、
歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子はFETのドレイン端子であり、歪発生用トランジスタ増幅器の入力端子はFETのゲート端子である、歪発生器。
【請求項8】
マイクロ波信号を増幅する主増幅器と、主増幅器からの出力信号中に含まれる歪が低減するよう歪補償を行う歪補償部と、を備える歪補償増幅器であって、
歪補償部は、マイクロ波信号を基に歪を発生させる歪発生器を含み、歪発生器で発生させた歪を主増幅器に入力されるマイクロ波信号または主増幅器からの出力信号に結合することにより歪補償を行い、
前記歪発生器が、請求項1〜7のいずれか1に記載の歪発生器である、歪補償増幅器。
【請求項1】
第1伝送路を伝搬するマイクロ波信号を取り出し、当該取り出したマイクロ波信号を基に歪を発生させ、当該発生させた歪を第2伝送路へ供給する歪発生器であって、
マイクロ波信号が出力端子に供給されることにより歪を発生し、当該発生した歪を入力端子及び出力端子の両方から出力する歪発生用トランジスタ増幅器と、
歪発生用トランジスタ増幅器の入力端子と信号反射端との間を通過する信号の振幅及び位相の少なくとも一方を調整するための調整手段と、
を備え、
第1伝送路から取り出したマイクロ波信号を歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子に供給することにより歪発生用トランジスタ増幅器で歪を発生させ、当該発生させた歪を歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子から第2伝送路へ供給し、
さらに、調整手段により歪発生用トランジスタ増幅器の入力端子と信号反射端との間を通過する信号の振幅及び位相の少なくとも一方を調整することで、第2伝送路へ供給する歪の調整が可能である、歪発生器。
【請求項2】
請求項1に記載の歪発生器であって、
歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子側に、マイクロ波信号のキャリア周波数に整合している出力端側整合回路が設けられている、歪発生器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の歪発生器であって、
歪発生用トランジスタ増幅器の入力端子側に、マイクロ波信号のキャリア周波数に整合している入力端側整合回路が設けられている、歪発生器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1に記載の歪発生器であって、
第1伝送路から歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子へのマイクロ波信号の通過、及び歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子から第2伝送路への歪の通過を許容するとともに、第1伝送路から第2伝送路へのマイクロ波信号の通過を抑えるための方向性素子を備える、歪発生器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1に記載の歪発生器であって、
歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子に供給するマイクロ波信号は、歪発生用トランジスタ増幅器で歪が発生するよう歪発生用トランジスタ増幅器の線形領域を超えた電力値を有する、歪発生器。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1に記載の歪発生器であって、
マイクロ波信号を増幅するドライバ増幅器が設けられ、
ドライバ増幅器で増幅されたマイクロ波信号を歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子に供給する、歪発生器。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1に記載の歪発生器であって、
歪発生用トランジスタ増幅器はFETを含み、
歪発生用トランジスタ増幅器の出力端子はFETのドレイン端子であり、歪発生用トランジスタ増幅器の入力端子はFETのゲート端子である、歪発生器。
【請求項8】
マイクロ波信号を増幅する主増幅器と、主増幅器からの出力信号中に含まれる歪が低減するよう歪補償を行う歪補償部と、を備える歪補償増幅器であって、
歪補償部は、マイクロ波信号を基に歪を発生させる歪発生器を含み、歪発生器で発生させた歪を主増幅器に入力されるマイクロ波信号または主増幅器からの出力信号に結合することにより歪補償を行い、
前記歪発生器が、請求項1〜7のいずれか1に記載の歪発生器である、歪補償増幅器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−67325(P2008−67325A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246035(P2006−246035)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】
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