説明

歯車装置、および、それを用いた回転式アクチュエータ

【課題】少ない部品点数で複数の加減速に変更可能な歯車装置、および、それを用いた回転式アクチュエータを提供する。
【解決手段】
歯車装置41は、駆動歯車33および従動歯車34を備える。駆動歯車33は、中心が同じでピッチ円半径が異なる第1駆動歯部331および第2駆動歯部332を有する。従動歯車34は、第1駆動歯部331に噛み合い可能な第2従動歯部342を有する。第1駆動歯部331および第2駆動歯部332は、駆動歯車33の周方向において異なる位置に設けられている。これにより、歯車装置41は、駆動歯車33の駆動軸と従動歯車34の従動軸との軸間距離が固定であって、駆動歯車33および従動歯車34を交換することなし、または、一方の歯車を取り換えるのみで複数の加減速比に変更可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車装置、および、それを用いた回転式アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動変速機のシフトレンジを切り換えるシフトバイワイヤとして、その駆動部に回転式アクチュエータを用いたものが知られている。例えば特許文献1に記載の回転式アクチュエータは、電動機の回転出力を減速し駆動対象としてのディテント機構に出力するための減速機を備えている。この減速機は、互いにピッチ円半径の異なる第1歯車および第2歯車からなる歯車装置を備えている。ここで、歯車装置は所定の変速比に固定されている。よって、減速機および回転式アクチュエータの減速比も所定の値に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−25222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の回転式アクチュエータでは、変速比の異なる歯車装置、すなわち減速比の異なる回転式アクチュエータを製造する場合、第1歯車および第2歯車の二つを取り換える必要がある。そのため、減速比の異なる製品毎に第1歯車と第2歯車との組を用意する必要がある。したがって、部品コストおよび製造コストが増大するおそれがある。
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、少ない部品点数で複数の加減速比に変更可能な歯車装置、および、それを用いた回転式アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明によると、歯車装置は、駆動歯車の駆動軸と従動歯車の従動軸との軸間距離が固定であって、駆動歯車および従動歯車を交換することなし、または、一方の歯車を取り換えるのみで複数の加減速比に変更可能である。歯車装置は、第1歯車および第2歯車を備える。第1歯車は、中心が同じでピッチ円半径が異なる第1歯部を複数有する。第2歯車は、複数の第1歯部のうち少なくとも一つに噛み合い可能な第2歯部を有する。複数の第1歯部は、第1歯車の周方向において異なる位置に設けられている。
これにより、第1歯車と第2歯車との中心間距離が一定であり、変速比の異なる複数の歯車装置を製造する場合、「第1歯車および第2歯車を取り換えることなく、第1歯車と第2歯車との噛み合い位置を変更すること」、または、「第1歯車を取り換えることなく、第2歯車のみ取り換えること」で対応することができる。このため、少ない部品点数で異なる加減速比に対応することができる。したがって、部品コストおよび製造コストを低減することができる。
【0006】
請求項2に係る発明によると、第2歯車は、中心が同じでピッチ円半径が異なる第2歯部を複数有する。複数の第2歯部は、第2歯車の軸方向において異なる位置に設けられている。
これにより、第1歯車と第2歯車との中心間距離が一定であり、変速比の異なる複数の歯車装置を製造する場合、「第1歯車および第2歯車を取り換えることなく、第1歯車と第2歯車との噛み合い位置を変更すること」で対応することができる。このため、より少ない部品点数で異なる加減速比に対応することができる。したがって、部品コストおよび製造コストをより低減することができる。
【0007】
請求項3に係る発明によると、回転式アクチュエータは、請求項1または2に記載の歯車装置、ステータ、ロータ、サンギア、リングギア、および、出力軸を備える。ステータは筒状である。ロータは、ステータの内側に回転可能に支持され、軸中心に対し偏心する偏心部が形成されたロータ軸を有する。サンギアは、円板状であり、偏心部に回転可能に支持され、外周に外歯が形成され、第1歯車に形成された被嵌合部に嵌合する嵌合部を有し、嵌合部を経由して回転を第1歯車に伝達する。リングギアは、円環状であり、サンギアの径方向外側に配置され、サンギアの外歯に噛み合う内歯が内周に形成されている。出力軸は、第2歯車の回転中心に設けられ、第2歯車とともに回転する。
これにより、変速比の異なる複数の回転式アクチュエータを製造する場合、第2歯車のみ取り換えることで対応できる。あるいは、第1歯車および第2歯車を取り換えることなく、第1歯車と第2歯車との噛み合い位置を変更するのみで対応することができる。このため、少ない部品点数で異なる減速比に対応することができる。したがって、回転式アクチュエータの部品コストおよび製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態による回転式アクチュエータの歯車装置を示す平面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態による回転式アクチュエータを示す断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態のシフトレンジ切替装置を示す模式図である。
【図5】本発明の第2実施形態による回転式アクチュエータの歯車装置を示す平面図である。
【図6】図5のVI−VI線断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態による回転式アクチュエータの歯車装置を示す平面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線断面図である。
【図9】本発明の第4実施形態による回転式アクチュエータの歯車装置を示す平面図である。
【図10】図9のX−X線断面図である。
【図11】本発明の第5実施形態による回転式アクチュエータの回転式アクチュエータを示す断面図である。
【図12】本発明の第5実施形態による回転式アクチュエータの歯車装置を示す平面図である。
【図13】図12のXIII−XIII線断面図である。
【図14】本発明の第6実施形態による回転式アクチュエータの歯車装置を示す平面図である。
【図15】図14のXV−XV線断面図である。
【図16】本発明の第7実施形態による回転式アクチュエータの歯車装置を示す平面図である。
【図17】図16のXVII−VII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
自動車の自動変速機のシフトレンジ切替装置に取り付けられる回転式アクチュエータに本発明を適用した第1実施形態を図1〜4に示す。図4に示すように、回転式アクチュエータ1は、シフトバイワイヤシステムにおいて、シフトレンジ切替装置100を駆動するのに用いられる。シフトレンジ切替装置100は、マニュアルシャフト101が回転式アクチュエータ1により回転駆動されることによって、自動変速機のシフトレンジを切り替える。回転式アクチュエータ1は、電子制御ユニット(ECU)109によって回転が制御される。回転式アクチュエータ1は、シフトレンジ切替装置100に取り付けられる。まず、シフトレンジ切替装置100について以下で説明する。
【0010】
シフトレンジ切替装置100は、シフトレンジ切替機構110およびパーキング切替機構120を備えている。
シフトレンジ切替機構110は、マニュアルシャフト101、ディテントプレート102および油圧バルブボディ104等から構成されている。マニュアルシャフト101は、一方の端部が回転式アクチュエータ1の出力軸35にスプライン結合されている。ディテントプレート102は、マニュアルシャフト101から径外方向に延びる扇形状に形成され、マニュアルシャフト101と一体に回転する。ディテントプレート102には、マニュアルシャフト101と平行に突出するピン103が設けられている。ピン103は、油圧バルブボディ104に設けられるマニュアルスプール弁105の端部に係止されている。このため、マニュアルスプール弁105は、マニュアルシャフト101と一体で回転するディテントプレート102によって、軸方向へ往復移動する。マニュアルスプール弁105は、軸方向に往復移動することで、図示しない自動変速機の油圧クラッチへの油圧供給路を切り替える。この結果、油圧クラッチの係合状態が切り替わり、自動変速機のシフトレンジが変更される。
【0011】
ディテントプレート102は、径方向の端部に凹部151、凹部152、凹部153および凹部154を有している。凹部151〜154は、例えば、それぞれ図示しない自動変速機のシフトレンジであるPレンジ、Rレンジ、Nレンジ、およびDレンジに対応している。板ばね106の先端に支持されているストッパ107が、ディテントプレート102の凹部151〜154のいずれかと噛み合うことにより、マニュアルスプール弁105の軸方向の位置が決定する。
【0012】
回転式アクチュエータ1からマニュアルシャフト101を経由してディテントプレート102に回転力が加わると、ストッパ107は隣接する他の凹部(凹部151〜154のいずれか)へ移動する。これにより、マニュアルスプール弁105の軸方向の位置が変化する。
例えば、マニュアルシャフト101を図4の矢印Y方向から見て時計回り方向に回転させると、ディテントプレート102を介してピン103がマニュアルスプール弁105を油圧バルブボディ104の内部に押し込み、油圧バルブボディ104内の油路がD、N、R、Pの順に切り替えられる。これにより、自動変速機のシフトレンジがD、N、R、Pの順に切り替えられる。
【0013】
一方、マニュアルシャフト101を反時計回り方向に回転させると、ピン103がマニュアルスプール弁105を油圧バルブボディ104から引き出し、油圧バルブボディ104内の油路がP、R、N、Dの順に切り替えられる。これにより、自動変速機のシフトレンジがP、R、N、Dの順に切り替えられる。
このように、回転式アクチュエータ1により回転駆動されるマニュアルシャフト101の回転角度、すなわち回転方向の所定の位置は、自動変速機の各シフトレンジに対応している。
【0014】
パーキング切替機構120は、パークロッド121、パークポール123およびパーキングギア126等から構成されている。パークロッド121は、略L字型に形成され、一方の端部にディテントプレート102が接続されている。パークロッド121の他方の端部には、円錐部122が設けられている。ディテントプレート102の回転運動をパークロッド121が直線運動に変換することで、円錐部122は、軸方向へ往復移動する。円錐部122の側面には、パークポール123が当接している。そのため、パークロッド121が往復移動すると、パークポール123は軸部124を中心に回転駆動する。パークポール123には突部125が設けられており、この突部125がパーキングギア126の歯に噛み合うと、パーキングギア126の回転が規制される。これにより、図示しないドライブシャフトまたはディファレンシャルギア等を経由して駆動輪がロックする。一方、パークポール123の突部125がパーキングギア126の歯から外れると、パーキングギア126は回転可能となり、駆動輪のロックは解除する。
【0015】
次に、回転式アクチュエータ1を図3に基づいて説明する。
回転式アクチュエータ1は、図3に示すように、ハウジング10、電動機20、および減速機30などを備えている。回転式アクチュエータ1は、シフトレンジ切替装置100のシフトレンジ切替機構110を駆動するサーボモータである。
【0016】
減速機30は、電動機20の回転出力を減速して、出力軸35を介しシフトレンジ切替装置100のシフトレンジ切替機構110に伝達する。電動機20は、回転式アクチュエータ1に接続されたECU109によって回転が制御される(図4参照)。すなわち、シフトレンジ切替装置100は、ECU109によって電動機20の回転方向、回転数および回転角度等を制御することで、シフトレンジ切替機構110およびパーキング切替機構120を切替制御するものである。
【0017】
ハウジング10は、フロントハウジング11とリヤハウジング12とから構成されている。本実施形態では、フロントハウジング11は金属により形成され、リヤハウジング12は樹脂により形成されている。フロントハウジング11とリヤハウジング12とは、ボルト19により固定されている。フロントハウジング11とリヤハウジング12とにより形成されるハウジング10の内部空間に、電動機20および減速機30等が収容されている。
【0018】
電動機20は、永久磁石を用いることなく駆動力を発生するブラシレスのSRモータ(スイッチトリラクタンスモータ)である。電動機20は、ステータ21およびロータ22を備えている。ステータ21は、略円環状に形成され、リヤハウジング12にインサート成形された金属製の固定プレート13に圧入されることにより、リヤハウジング12に回転不能に固定されている。
【0019】
ステータ21は、ステータコア211およびコイル212から構成されている。ステータコア211は、金属の薄板を板厚方向に複数積層することによって形成されている。ステータコア211には、径内方向へ向けて所定の角度毎(例えば30度毎)に突設された複数のステータティースが設けられている。各ステータティースのそれぞれに、ステータティースに磁力を発生させるコイル212が設けられている。コイル212は、ECU109によって通電制御される。
【0020】
ロータ22は、ステータ21の径内側に設けられている。ロータ22は、ロータ軸221およびロータコア222から構成されている。ロータ軸221は、一方の端部を第1ベアリング14に、他方の端部を第2ベアリング15によって回転可能に支持されている。これにより、ロータ22は、ハウジング10およびステータ21に対し相対的に回転可能である。
【0021】
なお、第1ベアリング14は、後述する減速機30の駆動歯車33の内周に配置されている。また、駆動歯車33はフロントハウジング11に設けられている第3ベアリング16によって回転可能に支持されている。つまり、ロータ軸221の一方の端部は、第3ベアリング16、駆動歯車33、および、第1ベアリング14を介してフロントハウジング11によって回転可能に支持されている。
一方、第2ベアリング15は、リヤハウジング12によって支持されている。
【0022】
ロータコア222は、金属の薄板を板厚方向に複数積層することによって形成され、ロータ軸221に圧入固定されている。ロータコア222には、径外側のステータコア211に向けて所定の角度毎(例えば45度毎)に突設された複数のロータティースが設けられている。
【0023】
ECU109から出力された駆動信号に基づいて、各コイル212の通電位置および通電方向を順次切り替えると、ロータティースを磁気吸引するステータティースが順次切り替わり、ロータ22は一方または他方へ回転する。このように、各コイル212への通電を切り替え、各コイル212に生じる磁力を制御することで、ロータ22を任意の方向へ回転させることができる。
【0024】
減速機30は、サンギア31、リングギア32、駆動歯車33、従動歯車34、および出力軸35等を備えている。上述したロータ軸221は、ロータコア222の軸方向の出力軸35側に、偏心部223を有している。偏心部223は、ロータ軸221の回転中心に対して偏心回転する。
【0025】
サンギア31は、略円盤状に形成されている。サンギア31は、第4ベアリング17を介して偏心部223に相対回転可能に支持されている。そのため、サンギア31は、ロータ軸221に対して偏心回転する。サンギア31は、軸方向のフロントハウジング11側の端面に、突出部312を有する。また、サンギア31の径外方向の外周には外歯311が形成されている。
【0026】
リングギア32は、略円環状に形成されている。リングギア32は、フロントハウジング11に圧入固定されている。リングギア32は、内周にサンギア31の外歯に噛み合い可能な内歯321を有している。これにより、サンギア31は、ロータ軸221に対して偏心回転するとき、リングギア32の内歯321にサンギア31の外歯311を順に噛み合わせることでロータ軸221の回転方向とは反対方向に自転する。サンギア31の外歯311とリングギア32の内歯321との歯数により、サンギア31の自転速度は、ロータ軸221の回転速度を例えば60分の1に減速したものとなる。
【0027】
次に、駆動歯車33および従動歯車34から構成されている歯車装置41を図1および図2に基づいて説明する。図1は図3のY方向から見た本実施形態の歯車装置41を示す平面図である。図2は図1のII−II線断面を示す図である。駆動歯車33および従動歯車34は、特許請求の範囲における「第1歯車」および「第2歯車」に対応する。
駆動歯車33は、上述したように、フロントハウジング11に設けられている第3ベアリング16によって回転可能に支持されている。駆動歯車33は、周方向に所定の間隔を空けて形成される複数の穴330を有し、当該穴330に突出部312が嵌合することで、サンギア31と連結されている。ここで、穴330および突出部312は、特許請求の範囲における「被嵌合部」および「嵌合部」に対応する。
【0028】
本実施形態では、駆動歯車33は第1駆動歯部331および第2駆動歯部332から構成される。ここで、第1駆動歯部331および第2駆動歯部332は、それぞれ、特許請求の範囲における「第1歯部」に対応する。第1駆動歯部331および第2駆動歯部332は、駆動歯車33の周方向において異なる位置に設けられ、いずれもロータ軸221の軸線上の点を中心とし、中心角が180°である扇形、すなわち半円形に形成されている。第1駆動歯部331と第2駆動歯部332とは、略同一の平面上に形成されている。ここで、第1駆動歯部331のピッチ円半径をR1とし、第2駆動歯部332のピッチ円半径をR2とすると、R1およびR2は下記式1を満たす。
R1<R2 ・・・式1
【0029】
従動歯車34は、第1従動歯部341、第2従動歯部342、および、アーム343を有する。ここで、第1従動歯部341および第2従動歯部342は、それぞれ特許請求の範囲における「第2歯部」に対応する。第1従動歯部341および第2従動歯部342は、従動歯車34の回転軸線上の点を中心とする扇形に形成され、軸方向において異なる位置に設けられている。ここで、第1従動歯部341のピッチ円半径をr1とし、第2従動歯部342のピッチ円半径をr2とすると、r1およびr2は、下記式2を満たす。
r1<r2 ・・・式2
なお、ここで、R1、R2、r1、およびr2は、下記式3を満たす。
R1+r2=R2+r1 ・・・式3
【0030】
本実施形態の場合、駆動歯車33は、第1駆動歯部331が第2従動歯部342に噛み合うよう設けられている。このため、従動歯車34は、第2従動歯部342と第1駆動歯部331とが噛み合いながら、駆動歯車33の回転により駆動回転される。
アーム343は、一端に第1従動歯部341および第2従動歯部342が設けられ、他端に従動歯車34の回転軸線に沿って出力軸35が設けられている。
出力軸35は、従動歯車34とともに回転する。また、出力軸35は上述のマニュアルシャフト101に、スプライン嵌合により連結される。
【0031】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態による回転式アクチュエータの歯車装置を図5および図6に基づいて説明する。なお、第1実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
本実施形態の場合、駆動歯車33は、第2駆動歯部332が第1従動歯部341に噛み合うよう設けられている。そのため、歯車装置42は、第1実施形態の歯車装置41とは異なる減速比に設定される。
【0032】
上記第1実施形態および第2実施形態では、駆動歯車33は第1駆動歯部331および第2駆動歯部332を有し、従動歯車34は第1従動歯部341および第2従動歯部342を有する。これにより、減速比の異なる回転式アクチュエータを製造する場合、駆動歯車33および従動歯車34を取り換えることなく、駆動歯車33と従動歯車34との噛み合い位置を変更するのみで対応することができる。このため、少ない部品点数で異なる減速比に対応することができる。したがって、回転式アクチュエータの部品コストおよび製造コストを低減することができる。
【0033】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態による回転式アクチュエータの歯車装置を図7および図8に基づいて説明する。なお、第1実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
本実施形態では、歯車装置43は、駆動歯車33および従動歯車36から構成される。従動歯車36は、従動歯部361、および、アーム362を有する。ここで、従動歯車36および従動歯部361は、特許請求の範囲における「第2歯車」および「第2歯部」に対応する。従動歯部361は、ピッチ円半径をr2とする扇形に形成されている。
【0034】
本実施形態の場合、駆動歯車33は、第1駆動歯部331が従動歯部361に噛み合うよう設けられている。ここで、本実施形態の歯車装置43の変速比は、第1実施形態の歯車装置41の減速比と同じである。
アーム362は、一端に従動歯部361が設けられ、他端に従動歯車36の回転軸線に沿って出力軸35が設けられている。出力軸35は、従動歯車36とともに回転する。
【0035】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態による回転式アクチュエータの歯車装置を図9および図10に基づいて説明する。なお、第1実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
本実施形態では、歯車装置44は、駆動歯車33および従動歯車37から構成される。従動歯車37は、従動歯部371、および、アーム372を有する。ここで、従動歯車37および従動歯部371は、特許請求の範囲における「第2歯車」および「第2歯部」に対応する。従動歯部371は、ピッチ円半径をr1とする扇形に形成されている。
【0036】
本実施形態の場合、駆動歯車33は、第2駆動歯部332が従動歯部371に噛み合うよう設けられている。そのため、歯車装置44は、上記第3実施形態の歯車装置43とは異なる減速比に設定される。なお、本実施形態の歯車装置44の変速比は、第2実施形態の歯車装置42の変速比と同じである。
アーム372は、一端に従動歯部371が設けられ、他端に従動歯車37の回転軸線に沿って出力軸35が設けられている。出力軸35は、従動歯車37とともに回転する。
【0037】
上記第3実施形態および第4実施形態では、駆動歯車として同じ部材(駆動歯車33)が設けられ、従動歯車として異なる部材(従動歯車36、従動歯車37)が設けられている。これにより、減速比の異なる回転式アクチュエータを製造する場合、従動歯車36または従動歯車37のみ取り換えることで対応できる。このため、少ない部品点数で異なる減速比に対応することができる。したがって、回転式アクチュエータの部品コストおよび製造コストを低減することができる。
【0038】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態の回転式アクチュエータを図11に示す。また、第5実施形態の回転式アクチュエータに用いられる歯車装置を図12および13に基づいて説明する。なお、第1実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。図12は、図11のY方向から見た歯車装置45を示す平面図である。
【0039】
本実施形態では、歯車装置45は駆動歯車38および従動歯車39から構成される。駆動歯車38は、第1駆動歯部381、第2駆動歯部382、および、第3駆動歯部383から構成されている。ここで、駆動歯車38は特許請求の範囲における「第1歯車」に対応し、第1駆動歯部381、第2駆動歯部382、および、第3駆動歯部383は特許請求の範囲における「第1歯部」に対応する。第1駆動歯部381、第2駆動歯部382、および、第3駆動歯部383は、いずれもロータ軸221の軸線上の点を中心とし、中心角が120°である扇形に形成され、周方向において異なる位置に設けられている。第1駆動歯部381と第2駆動歯部382と第3駆動歯部383とは、略同一の平面上に形成されている。ここで、第1駆動歯部381のピッチ円半径をR3とし、第2駆動歯部382のピッチ円半径をR4とし、第3駆動歯部383のピッチ円半径をR5とすると、R3、R4、および、R5は下記式4を満たす。
R3<R4<R5 ・・・式4
【0040】
従動歯車39は、第1従動歯部391、第2従動歯部392、第3従動歯部393、および、アーム394を有する。ここで、従動歯車39は特許請求の範囲における「第2歯車」に対応し、第1従動歯部391、第2従動歯部392、および第3従動歯部393は特許請求の範囲における「第2歯部」に対応する。第1従動歯部391、第2従動歯部392、および、第3従動歯部393は、軸方向において異なる位置に設けられ、回転軸の軸線上の点を中心とする扇形に形成されている。ここで、第1従動歯部391のピッチ円半径をr3とし、第2従動歯部392のピッチ円半径をr4とし、第3従動歯部393のピッチ円半径をr5とすると、r3、r4、および、r5は、下記式5を満たす。
r3<r4<r5 ・・・式5
ここで、R3、R4、R5、r3、r4、およびr5は、下記式6を満たす。
R3+r5=R4+r4=R5+r3 ・・・式6
【0041】
本実施形態の場合、駆動歯車38は、第1駆動歯部381が第3従動歯部393に噛み合うよう設けられている。
アーム394は、一端に第1従動歯部391、第2従動歯部392、および第3従動歯部393が設けられ、他端に従動歯車39の回転軸線に沿って出力軸35が設けられている。出力軸35は、従動歯車39とともに回転する。
【0042】
(第6実施形態)
本発明の第6実施形態による回転式アクチュエータの歯車装置を図14および図15に基づいて説明する。なお、第5実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
本実施形態の場合、駆動歯車38は、第2駆動歯部382が第2従動歯部392に噛み合うよう設けられている。そのため、本実施形態の歯車装置46は上記第5実施形態の歯車装置45と異なる変速比に設定される。
【0043】
(第7実施形態)
本発明の第7実施形態による回転式アクチュエータの歯車装置を図16および図17に基づいて説明する。なお、第5実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
本実施形態の場合、駆動歯車38は、第3駆動歯部383が第1従動歯部391に噛み合うよう設けられている。そのため、歯車装置47は、上記第5実施形態の歯車装置45および第6実施形態の歯車装置46と異なる変速比に設定される。
【0044】
上記第5実施形態、第6実施形態、および、第7実施形態では、駆動歯車38は、第1駆動歯部381、第2駆動歯部382、および、第3駆動歯部383を有する。また、従動歯車39は、第1従動歯部391、第2従動歯部392、および、第3従動歯部393を有する。これにより、減速比の異なる回転式アクチュエータを製造する場合、駆動歯車38および従動歯車39を取り換えることなく、駆動歯車38と従動歯車39との噛み合い位置を変更するのみで対応することができる。このため、少ない部品点数で異なる減速比に対応することができる。したがって、回転式アクチュエータの部品コストおよび製造コストを低減することができる。
【0045】
(他の実施形態)
上記実施形態では、歯車装置は回転式アクチュエータの減速機に適用されている。これに対し、他の実施形態では、歯車装置を増速機に適用することとしてもよい。
上記実施形態では、第1駆動歯部と第2駆動歯部とを有する駆動歯車、および、第1駆動歯部または第2駆動歯部に噛み合い可能な従動歯部を有する従動歯車からなる歯車装置が開示されている。これに対し、他の実施形態では、第1従動歯部と第2従動歯部とを有する従動歯車、および、第1従動歯部または第2従動歯部に噛み合い可能な駆動歯部を有する駆動歯車から構成されていることとしてもよい。
【0046】
上記実施形態では、第1駆動歯部と第2駆動歯部と第3駆動歯部とを有する駆動歯車、および、第1従動歯部と第2従動歯部と第3従動歯部とを有する従動歯車から構成されている歯車装置が開示されている。これに対し、他の実施形態では、歯車装置は、第1駆動歯部と第2駆動歯部と第3駆動歯部とを有する駆動歯車、および、第1駆動歯部、第2駆動歯部、または第3駆動歯部に噛み合い可能な従動歯部を有する従動歯車から構成されていることとしてもよい。
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 ・・・回転式アクチュエータ
21 ・・・ステータ
22 ・・・ロータ
30 ・・・減速機
31 ・・・サンギア
32 ・・・リングギア
33、38 ・・・駆動歯車(第1歯車)
34、36、37、39 ・・・従動歯車(第2歯車)
35 ・・・出力軸
41、42、43、44、45、46、47・・・歯車装置
331 ・・・第1駆動歯部(第1歯部)
332 ・・・第2駆動歯部(第1歯部)
341 ・・・第1従動歯部(第2歯部)
342 ・・・第2従動歯部(第2歯部)
361 ・・・従動歯部(第2歯部)
371 ・・・従動歯部(第2歯部)
381 ・・・第1駆動歯部(第1歯部)
382 ・・・第2駆動歯部(第1歯部)
383 ・・・第3駆動歯部(第1歯部)
391 ・・・第1従動歯部(第2歯部)
392 ・・・第2従動歯部(第2歯部)
393 ・・・第3従動歯部(第2歯部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動歯車の駆動軸と従動歯車の従動軸との軸間距離が固定であって、前記駆動歯車および前記従動歯車を交換することなし、または、一方の歯車を取り換えるのみで複数の加減速比に変更可能な歯車装置であって、
中心が同じでピッチ円半径が異なる第1歯部を複数有する第1歯車と
前記複数の第1歯部のうち少なくとも一つに噛み合い可能な第2歯部を有する第2歯車とを備え、
前記複数の第1歯部は、前記第1歯車の周方向において異なる位置に設けられていることを特徴とする歯車装置。
【請求項2】
前記第2歯車は、中心が同じでピッチ円半径が異なる前記第2歯部を複数有し、
前記複数の第2歯部は、前記第2歯車の軸方向において異なる位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の歯車装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の歯車装置と、
筒状のステータと、
前記ステータの内側に回転可能に支持され、軸中心に対し偏心する偏心部が形成されたロータ軸を有するロータと、
前記偏心部に回転可能に支持され、外周に外歯が形成され、前記第1歯車に形成された被嵌合部に嵌合する嵌合部を有し、当該嵌合部を経由して回転を前記第1歯車に伝達する円板状のサンギアと、
前記サンギアの径方向外側に配置され、前記外歯に噛み合う内歯が内周に形成された円環状のリングギアと、
前記第2歯車の回転中心に設けられ、前記第2歯車とともに回転する出力軸と、
を備えることを特徴とする回転式アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−219909(P2012−219909A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86112(P2011−86112)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】