説明

気体混合物から形成されるガス・クラスター・イオン・ビームを制御する方法および装置

気体混合物中の複数のプロセス気体から形成されるガス・クラスター・イオン・ビームを制御する方法および装置。本方法および装置は、気体分析器(308、360、414、502、552)で気体混合物の組成に関係する気体分析データを測定し、検出されたパラメータに応じて作業対象物(152)の照射を修正することに関わる。気体分析データは、気体ソース(230、232)からガス・クラスター・イオン・ビーム装置(300、350、400、500、550)に流れる気体混合物の組成のサンプルから、あるいはガス・クラスター・イオン・ビーム装置(300、350、400、500、550)の真空容器(102)内の残留気体のサンプルから導出できる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概括的にはガス・クラスターイオン・ビームの形成のための方法および装置に関し、より詳細には気体混合物から形成されるガス・クラスター・イオン・ビームによる加工対象の照射を制御する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス・クラスター・イオン・ビーム(GCIB: gas cluster ion beam)処理装置は、表面を処理するために使われるクラスター・イオン・ビームを生成するよう構成される。本稿において、気体クラスター(gas cluster)とは、標準温度および圧力の条件下で気体である、物質のナノ・サイズの集合体として定義される。そのような気体クラスターは典型的には、クラスターをなす数個ないし数千個の分子がゆるやかに束縛された集合体からなる。クラスターは、電子衝撃または他の手段によってイオン化でき、それにより制御可能なエネルギーをもつ方向付けられたビームに整形できる。そのようなイオンはそれぞれ典型的にはqeの正電荷を担持する(eは電子電荷であり、qはクラスター・イオンの荷電状態を表す1ないし若干数の整数)。クラスター・イオン・ビーム中にはイオン化されていないクラスターも存在する。より大きなサイズのクラスター・イオンはしばしば、分子当たりのエネルギーはほどほどでしかなくても、クラスター・イオン当たりかなりのエネルギーを担持できるため、最も有用である。クラスターは衝撃に際して分解し、個々の分子は全クラスター・イオン・エネルギーの小さな部分しか担持しない。その結果、大きなクラスター・イオンの衝撃効果はかなりのものだが、非常に浅い表面領域に制限される。このため、クラスター・イオンは、通常のモノマー・イオン・ビーム処理に特徴的なより深い表面下での損傷を生ずる傾向がなく、多様な表面修正プロセスのために有効となる。
【0003】
現在のところ利用可能なクラスター・イオン源は、サイズNの幅広い分布をもつクラスター・イオンを生成する(N=各クラスター・イオン内の分子の数――本論を通じて、アルゴンのような単原子気体の場合、単原子気体の原子が分子と称され、そのような単原子気体のイオン化された原子が分子イオンまたは単にモノマー・イオンと称される)。GCIBで表面を衝撃することによって、多くの有用な表面処理効果が達成できる。これらの処理効果は、必ずしもこれに限られないが、洗浄、平滑化、エッチング、ドーピングおよび膜形成または膜成長を含む。
【0004】
気体クラスターを形成するために、加圧されたソース気体がノズルを通じて真空中に射出され、超音速の気体ジェットを形成する。ジェットの膨張から帰結する温度低下のため、ジェット中の気体はクラスターに凝縮する。各クラスターは数個ないし数千個の弱く束縛された原子または分子からなる。多くの用途について、アルゴンのような希ガスからまたは酸素のような反応性の気体から作られる気体クラスターが有用であるが、半導体ドーピング、反応性エッチングまたは特定の所望の化学量論性をもつフィルムの堆積のようなある種の用途については、二つ以上の気体を既知の混合において含む気体混合物から気体クラスターを形成することが望ましいことがしばしばある。そのような混合気体は、気体供給業者から混合済みの形で購入してもよいし、あるいは使用直前に、マス・フロー・コントローラまたは必要な混合物を達成するための他の混合コントロールを使って別個の純粋なソース気体から混合されてもよい。
【0005】
多くのビーム・プロセスと同様、GCIBで表面を処理することは、ビーム条件およびビーム線量(dose)の注意深い制御を必要とする。ビーム線量測定は典型的には、イオン・ビームが処理されている表面にもたらす単位面積当たりの電荷を積分することによって行われる。GCIBの場合、ビーム線量以外の因子も処理結果に影響しうる。もたらされる線量に加えて、GCIBの平均クラスター・イオン荷電状態、平均クラスター・イオン質量および平均クラスター・イオン・エネルギーがみな、表面に入射するGCIBの表面処理効果に影響する。
【0006】
混合気体から形成される気体クラスターを使うガス・クラスター・イオン・ビーム処理を必要とする用途では、線量制御および他のビーム・パラメータの制御に加えて、しばしば、気体クラスター・イオン中の気体種の混合が精密に知られていることが処理がうまくいくための要件であり、よって、ソース気体の成分気体の混合または比率も精密に知られていることが必要である。たとえば、ドーピングおよび/または堆積される膜の化学量論性の精度は、(他の因子と並んで)ソース気体混合物中の気体成分の比率に直接に依存する。半導体ウェーハまたは他のGCIB処理製品の誤処理されたバッチは、高くつくエラーとなりうる。
【0007】
さらに、正しい気体混合物が使われていることおよび/または正しい気体クラスター・イオン組成が帰結することを保証するために、ソース気体の混合に対する、あるいは気体クラスター・イオンの組成に対するプロセス検査をもつことが望ましいことがしばしばある。しかしながら、事前混合済みの気体瓶をGCIB処理装置での使用前に化学分析することはしばしば高くつく、あるいは他の理由で実際的ではないことがありうる。さらに、他の時には、気体混合物は、GCIB装置ツール自身において形成されることがある。そうした状況では、通常のGCIB処理装置は、気体混合物を形成するために組み合わされる個々のプロセス・ガスの流れを制御することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらおよびその他の理由により、ガス・クラスター・イオン・ビームを形成するために使われる気体混合物の組成を制御する改善されたGCIB処理装置および方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は請求項記載の手段によって解決される。
【0010】
本明細書に組み込まれ本明細書の一部をなす付属の図面は、本発明の実施形態を図示しており、上記の発明の一般的な記述および下記の実施形態の詳細な説明とともに、本発明の原理を説明するのに使われる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来技術に基づくGCIB処理装置を示す概略図である。
【図2】本発明のある実施形態に基づくGCIB処理装置を示す概略図である。
【図3】本発明のある代替的な実施形態に基づくGCIB処理装置を示す概略図である。
【図4】本発明のある代替的な実施形態に基づくGCIB処理装置を示す概略図である。
【図5】本発明のある代替的な実施形態に基づくGCIB処理装置を示す概略図である。
【図6】本発明のある代替的な実施形態に基づくGCIB処理装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照すると、GCIB処理装置100についての典型的な構成は真空容器102を含み、真空容器102は三つの連通するチャンバ、つまりソース・チャンバ104、イオン化/加速チャンバ106および処理チャンバ108に分割されている。三つのチャンバ104、106、108は、それぞれ真空ポンプ・システム146a、146bおよび146cによって、好適な動作気圧まで真空にされる。
【0013】
第一気体ソース111に蓄積された第一の凝縮可能ソース気体112(たとえばアルゴンまたは窒素または事前混合された気体混合物)が圧力下で、第一の気体遮断バルブ115、第一の気体調節(metering)バルブ113、ガス・マニホールド238および気体給送管114を通じて、滞留チャンバ116に導入される。任意的な第二の気体ソース230に蓄積されている任意的な第二の凝縮可能なソース気体232(たとえば二酸化炭素、酸素、ジボラン、NF3、シラン、ゲルマンまたは事前混合済み気体混合物)が任意的に、圧力下で、第二の気体遮断バルブ236、第二の気体調節(metering)バルブ234を通じて導入される。両方のソース気体111、232が使用されるとき、それらは、気体給送管114にはいる前にガス・マニホールド238において混合する。気体ソース111、232は真空容器102の外部に位置される。図1には示されないが、ガス・マニホールド238内に生成される適切な混合の開ループ設定のために、気体調節バルブ113および234は電子的にあるいは他の方法で遠隔制御されてもよい。
【0014】
滞留チャンバ116内の気体または気体混合物は、適正に成形されたノズル110を通じて実質的により低い圧力の真空中に射出される。超音速気体ジェット118が帰結する。ジェットにおける膨張から帰結する温度低下のため、気体ジェット118の一部が気体クラスターに凝縮する。各クラスターは数個ないし数千個の弱く束縛された原子または分子からなる。ガス・スキマー(skimmer)開口120は、気体クラスター・ジェットに凝縮していない気体分子を気体クラスター・ジェットから部分的に分離する。そのようなより高い圧力が有害になる下流領域(たとえば、イオン化器122、高電圧電極126および処理チャンバ108)において圧力を最小にするためである。好適な凝縮可能ソース気体112は、必ずしもこれに限られないが、アルゴン、窒素、二酸化炭素、酸素および他の気体および/または気体混合物を含む。
【0015】
気体クラスターを含む超音速気体ジェット118が形成されたのち、気体クラスターはイオン化器122においてイオン化される。イオン化器122は典型的には、一つまたは複数の白熱フィラメント124から熱電子を生成し、その電子を加速および方向付けして、ジェットがイオン化器122中を通過するところで気体ジェット118中の気体クラスターと衝突させる電子衝撃イオン化器である。電子衝撃は気体クラスターから電子を放出し、気体クラスターの一部を正にイオン化させる。一部の気体クラスターでは二つ以上の電子が放出されることがありえ、結果として、多重イオン化されうる。
【0016】
好適にバイアスされた一組の高電圧電極126が、イオン化器122からビームを形成する気体クラスター・イオンを抽出し、その気体クラスター・イオンを所望のエネルギーまで加速し(典型的には数百Vないし数十kVの加速電位で)、フォーカスさせてGICB 128を形成する。フィラメント電源136は、イオン化器フィラメント124を加熱するためにフィラメント電圧Vfを与える。アノード電源134は、気体クラスター含有気体ジェット118を照射してイオンを生成するようフィラメント124から放出された熱電子を加速するためのアノード電圧VAを与える。抽出電源138は、イオン化器122のイオン化領域からイオンを抽出してGCIB 128を形成するよう高電圧電極にバイアスをかけるための抽出電圧VEを与える。加速器電源140は、イオン化器122に対して高電圧電極にバイアスをかけるための加速電圧VAccを与える。これにより、VAccに等しい全GCIB加速電位が帰結する。GCIB 128をフォーカスするようフォーカス電圧(たとえばVL1およびVL2)で高電圧電極にバイアスをかけるために一つまたは複数のレンズ電源(たとえば図示した142および144)が設けられてもよい。
【0017】
半導体ウェーハまたはGCIB処理によって処理されるべき他の種類の処理材料であってもよい加工対象152は加工対象ホルダ150によって保持され、GCIB 128の経路中に配置される。たいていの用途は、大きな加工対象を空間的に一様な結果をもって処理することを考えるので、空間的に均一な結果を生じるためには、GCIB 128を大面積にわたって一様に走査するために走査システムが望ましい。GCIB 128は定常であり、GCIB軸129をもち、加工対象152はGCIB 128を通じて機械的に走査され、GCIB 128の効果を加工対象152の表面にわたって分散させる。
【0018】
X走査アクチュエータ202は、X走査運動208の方向(紙面に対して出し入れする方向)の加工対象ホルダ150の線形運動を与える。Y走査アクチュエータ204は、典型的にはX走査運動208と垂直なY走査運動210の方向の加工対象ホルダ150の線形運動を与える。X走査運動およびY走査運動の組み合わせは、加工対象ホルダ150によって保持された加工対象152を、GCIB 128を通じてラスタ状の走査運動で動かし、加工対象152の処理のための加工対象152の表面のGCIB 128による一様な(または他のプログラムされた)照射をもたらす。
【0019】
加工対象ホルダ150は、加工対象152を、GCIB 128の軸に対して角度を付けて配置する。それにより、GCIB 128は、加工対象152の表面に対してあるビーム入射角206をもつ。ビーム入射角206は90°または他の何らかの角度でありうるが、典型的には90°または90°近くである。Y走査の間、加工対象152および加工対象ホルダ150は、図示した位置から、それぞれ参照符号152Aおよび150Aによって示される代わりの位置「A」まで動く。二つの位置の間を動く際に、加工対象152はGCIB 128を通じて走査され、両極端の位置においては、GCIB 128の経路から完全に外に動かされる(過剰走査)。図1には明示していないが、同様の走査および過剰走査はX走査運動208の(典型的には)垂直な方向(紙面に向かうおよび紙面から出てくる方向)にも行われる。
【0020】
ビーム電流センサー218が、加工対象ホルダ150を越えたところでGCIB 128の経路中に配置される。加工対象ホルダ150がGCIB 128の経路の外に走査されるときにGCIB 128のサンプルを受け止めるためである。ビーム電流センサー218は典型的には、ビーム入射開口のほかは閉じたファラデー・カップなどであり、典型的には真空容器102の壁に電気絶縁マウント212で固定されている。
【0021】
マイクロコンピュータ・ベースのコントローラであってもよいコントローラ220は、X走査アクチュエータ202およびY走査アクチュエータ204に電気ケーブル216を通じて接続し、加工対象152をGCIB 128の中に入れたり出したりして加工対象152をGCIB 128に対して一様に走査してGCIB 128による加工対象152の所望の処理を達成するよう、X走査アクチュエータ202およびY走査アクチュエータ204を制御する。コントローラ220は、ビーム電流センサー218によって収集されたサンプルされたビーム電流をリード214によって受領し、それによりGCIBを監視し、加工対象152が受けるGCIB線量を制御する。制御は、あらかじめ決められた所望の線量が送達されたときにGCIB 128から加工対象152を除去することによる。図示していないが、コントローラ220は、GCIB処理装置100の動作において要求される複数の機能(または全機能)を制御する汎用コンピュータまたはコントローラであってよい。そうした機能は、操作者インターフェース機能、プロセス監視およびアラーム機能およびシステム故障時にGCIB処理を停止させる能力を含む。
【0022】
任意的な残留気体分析器240は、プロセス・チャンバ108内の気体環境から低圧気体を導入するための開口242をもつ。残留気体分析器240は、電気ケーブル244によって、任意的にプロセス・チャンバ108内の低圧気体の分圧を分析および表示するために残留気体分析器コントローラ246に接続される。その情報は診断目的のためであってもよい。
【実施例1】
【0023】
図2を参照すると、同様の参照符号は図1と同様の特徴を指すが、GCIB処理装置300は、GCIB処理装置100(図1)と同様の構成であるが、本発明の第一の実施形態に基づく修正を含む。気体ソース111および/または230は、加圧気体混合物を、気体遮断バルブ115および/または気体遮断バルブ236、気体調節バルブ318および/または気体調節バルブ316、ガス・マニホールド238および気体給送管114を通じて、滞留チャンバ116に与える。ノズル110を通じて射出してクラスター・ジェット118が形成される。気体調節バルブ316および318は、それぞれを通じて通過調節される気体の流れがコントローラ220によって独立して制御可能なように遠隔制御可能に適応される。
【0024】
気体給送管114内の加圧気体混合物のサンプルが気体サンプリング管302およびスロットル・バルブ304を通じて分析チャンバ306内に流入する。分析チャンバから、気体混合物はスロットル・バルブ312および排気管314を通じて、たとえばソース・チャンバ104のような真空中に流入する。ソース・チャンバ104は、図1に示すような真空ポンプ・システム146aによって排気され、低圧に維持されている。
【0025】
分析チャンバ306は、気体混合物の二つ以上の構成成分(すなわち、気体混合物中の個々の気体)の相対濃度を感知し、分析することができる気体分析器308を含む。これらの相対濃度は、分析チャンバ306にはいる気体混合物の組成を決定するために使用できる気体分析データを定義する。そのような気体分析器308はしばしば、適正な動作のために、分析される気体の圧力が、利用される特定の気体分析器のある種の限界特性範囲内であることを要求する。
【0026】
気体分析器308は、気体ソース111および/または230からの気体混合物の流れを採取するよう構成される。気体分析器308はさらに、本稿で説明するように気体混合物のサンプルから気体分析データを決定し、気体分析データに関係する信号を生成するよう構成される。その信号は、気体混合を制御するおよび/または気体混合が受け容れ可能範囲外である場合にGCIBプロセスを中止する際に使用される。気体分析器308は、当業者が理解するようないかなる既知の構成を有していてもよい。
【0027】
ある実施形態では、気体分析器308は四重極質量分析器残留気体分析器(RGA: residual gas analyzer)であってもよい。これは典型的には約1×10-10torrないし約5×10-4torr(約1.3×10-8Paないし約6.7×10-2Pa)の低圧範囲において最もよく動作する。RGAは典型的にはある体積の分析対象気体を解離させ、イオン化し、次いでコンパクトな質量分析器を使ってその体積の気体中のさまざまな構成成分または分子種の相対量を決定する。ある代替的な実施例では、気体分析器308はマイクロプラズマ発光分析器(MPES: microplasma emission spectrometer)であってもよく、これは典型的には約10-3torrないし約10torr(約0.13Paないし約1300Pa)のより高い圧力範囲またはそれ以上において最もよく動作する。MPESは典型的には、分析対象気体のプラズマを形成し、プラズマからの発光を分光分析して気体体積中のさまざまな構成要素または分子種の相対量を決定する。
【0028】
さらにもう一つの実施例では、気体分析器308は音響気体濃度センサー(AGCS: acoustical gas concentration sensor)であってもよい。これは典型的には、約20torrないし約8000torr(約2.7×103Paないし約1.1×106Pa)のずっと高い圧力範囲で最もよく動作する。AGCSは典型的には、混合物の音響属性を測定することによって既知の成分気体の気体混合比を推定するもので、混合される気体(事前混合済み気体混合物を含む)の分子量が精密にわかっているときに最も有用となりうる。本稿での用法では、用語「分析」は、測定を行うために実際に気体混合物を構成成分の部分に分解することなく、要求される混合成分が正しい比率で存在していることを確証する気体混合の測定を包含する。たとえば、気体分析器308は、これに限られないが音響属性を含む気体混合物の属性を測定しうる。
【0029】
分析チャンバ306内の圧力は、スロットル・バルブ304および312のそれぞれの伝導性の調節によって(または代替的にそれらの伝導性の一方または両方について固定値を選択することによって)決定される。例示の目的で二つのスロットル・バルブ304および312が示されているが、当業者は、スロットル・バルブ304および312のいずれか一方または両方が、所定の伝導性をもつ固定オリフィス(図示せず)によって置換されることができること、あるいはスロットル・バルブ304が圧力調整器によって置換されることができることを理解するであろう。したがって、分析チャンバ306内の圧力PA
は、RGA、MPES、AGCSその他のいずれであれ、本発明において用いられる型の気体分析器308が適正動作と両立する圧力範囲内に設定され、維持されることができる。
【0030】
気体分析器308は、分析のために分析チャンバ306から気体混合物のサンプルがはいることを許容する開口320を有する。気体分析器306は、電気ケーブル310内の電気リードを通じてコントローラ220と通信する。気体分析器306は、電気ケーブル310を通じて必要な電力および制御信号を受け取り、気体混合物の二つ以上の構成成分の相対的な大きさに関する気体分析データを含む信号を返す。たとえば、反応性エッチングのためのアルゴン、酸素およびNF3の混合物の場合、コントローラ220に返される信号は、質量分析またはプラズマ発光分析または用いられる特定の型の気体分析器308に適切なその他の測定手段によって決定される混合物中に存在するAr+、O+、N+およびF+イオンに関係する振幅を含みうる。コントローラ220は、二つ以上の構成要素、たとえばAr+、O+およびF+の間の比を決定し、混合物中での気体アルゴン、酸素およびNF3の比を計算しうる。さまざまな型の気体分析器の出力信号には、気体混合物の種々の構成要素の相対イオン化効率(ionization efficiency)のようなさまざまな因子が影響しうる。しかしながら、そのようなことによる変動は、既知の技法に従って、既知の混合の単数または複数の気体を使って測定システムの較正をすることによって扱える。
【0031】
動作では、コントローラ220は、必要な較正があればそれも含めた、気体分析器308によって測定された気体構成要素の比を比較する。コントローラ220は、気体給送管114からサンプルされている気体がGCIBプロセスのための所定の許容可能な限界内にあるかどうかをも判定する。気体混合物が、コントローラ220によって、気体構成要素比の一つまたは複数に基づいて許容可能な限界外であると判定される場合、コントローラ220はプロセスを中断することができる。これはたとえば、加工対象152を動かして、完全にGCIB 128の経路から外し、GCIB 128がビーム電流センサー218にはいるようにすることによる。また、GCIB処理装置内での加工対象の誤処理を防止するためにアラームを発することができる。あるいはまた、気体ソース110および230からの異なる気体がガス・マニホールド238において混合される場合、コントローラ220は、電気ケーブル310内の電気リードを通じて、気体調節バルブ316および/または気体調節バルブ318に制御信号を送り、バルブ316および318のどちらか一方または両方における流れを適宜増減させ、気体給送管114内の気体混合を復元し、GCIBプロセス要求のための許容可能な限界内である気体混合を再確立させることができる。
【0032】
ある実施形態では、二つの気体ソース111、230が使用されうる。第一の気体ソース111は、たとえば第一の気体Aおよび第二の気体Bの混合物を含んでいてもよく、第二の気体ソース230は純粋気体Bを含んでいてもよい。この実施形態では、気体ソース111内の気体混合物は、要求される混合に比較して気体Bに対し気体Aにやや富んでいる混合物を含む。よって、気体ソース111からの流れに対して気体ソース230からの流れを増すことによって、ガス・マニホールド238内に帰結する混合物は、プロセスのために要求される精密な必要気体混合まで薄められることができる。
【実施例2】
【0033】
図3を参照すると、同様の参照符号は図1および図2と同様の特徴を指すが、GCIB処理装置350は、GCIB処理装置200(図2)と同様の構成であるが、本発明の第二の実施形態に基づく修正を含む。第一の実施形態においてGCIB処理装置200(図1)によってなされるように気体給送管114からの高圧気体のサンプルを分析する代わりに、GCIB処理装置350は、ノズル110およびスキマー開口120の近傍でソース・チャンバ104内に位置された気体分析器360を含む。気体分析器360は、分析のためにソース・チャンバ104内の排気された気体環境からの残留気体のサンプルがはいることを許容する開口362を有する。
【0034】
気体分析器360は、電気ケーブル364中の電気リードを通じてコントローラ220と電気的に結合されている。気体分析器360は、サンプルされた残留気体に関係する信号を生成し、それらの信号を電気ケーブル310を介して気体分析データとしてコントローラ220に通信する。気体分析器360は電気ケーブル364を通じて必要な電力および制御信号を受け取り、気体混合物の二つ以上の構成成分の相対的な大きさに関する気体分析データを含む信号をコントローラ220に返す。ソース・チャンバ104は通常、RGAのような低圧範囲で動作する気体分析器の使用に好適な圧力範囲で運用される。ノズル110から放出された気体のうちクラスター・ジェット118の形成に寄与しないものは、スキマー開口120を通過せず、ノズル110から射出される混合気体と同じ混合をもつソース・チャンバ104内の低圧バックグラウンド気体に寄与する。
【0035】
任意的に、GCIB処理装置350は、取りつけられたシャッター358をもつシャフト354を作動させる線形アクチュエータ352を用いてもよい。アクチュエータ352は、制御可能な往復運動356をシャフト354およびシャッター358に与える。シャッター358は、制御可能に気体ジェット118の経路から除去され(通常のGCIB処理)、あるいは気体ジェット118中に導入されて、スキマー開口120に到達してソース・チャンバ104の外に出て行く前に、気体混合測定のために気体ジェットを受け止める。シャッター358が気体ジェット118を受け止めると、気体クラスターは解離され、結果として、ソース・チャンバ104内の圧力は実質的に上昇する。ソース・チャンバ104内の圧力は、MPESのような高圧範囲で動作する気体分析器をソース気体の混合物を分析するための気体分析器360として用いることのできる圧力範囲まで上昇する。そのような高圧動作は、ソース・チャンバ104内への大気の望まれない漏れが少ないため、ソース気体混合物を測定する際の誤差を低減させうる。
【0036】
いずれの場合でも(シャッター358なしで低圧気体分析器360でもシャッター358を使って高圧範囲の気体分析器360でも)、ソース・チャンバ104内に存在するソース気体混合物の構成要素が気体分析器360によって測定され、測定された気体混合物構成要素を表す信号が気体分析器360から、コントローラ220へのフィードバックとして返される。それらの信号は、質量分析またはプラズマ発光分析によってまたは用いられる特定の型の気体分析器360に適切な他の測定手段によって決定される、混合物から形成されるイオンに関係する振幅を含んでいてもよい。
【0037】
コントローラ220は、必要な較正があればそれも含めた、気体分析器360によって測定された気体構成要素の比を比較し、気体混合がGCIBプロセスのための所定の許容可能な限界内にあるかどうかを判定する。気体混合についての数値的な範囲は、GCIBプロセスについて確立される上の値と下の値によって定義されうる。気体混合が許容可能な限界外である場合、コントローラ220はプロセスを中断することができる。これはたとえば、加工対象152を完全にGCIB 128の経路外まで動かし、GCIB 128がビーム電流センサー218にはいるようにすることによる。また、GCIB処理装置350内での加工対象152の誤処理を防止するためにアラームを発することができる。あるいはまた、気体ソース110および230からの異なる気体がガス・マニホールド238において混合される場合、コントローラ220は、電気ケーブル364内の電気リードを通じて、気体調節バルブ316および/または気体調節バルブ318に制御信号を送り、バルブ316および318のどちらか一方または両方における流れを適宜増減させ、ソース・チャンバ104内の気体混合をGCIBプロセス要求のための許容可能な限界内である混合まで復元することができる。
【実施例3】
【0038】
図4を参照すると、同様の参照符号は図1〜図3と同様の特徴を指すが、GCIB処理装置400は、GCIB処理装置100(図1)と同様の構成であるが、本発明の第三の実施形態に基づく修正を含む。GCIB処理装置200(図1)によってなされるように気体給送管114からの高圧気体のサンプルを分析する代わりに、GCIB処理装置400は、スキマー開口120の下流に位置する気体分析器414を含む。たとえば、気体分析器414は、イオン化/加速チャンバ106内に、あるいは図示していないが処理チャンバ108内に位置されてもよい。気体混合物構成要素のGCIBソース気体への組み込みが必ずしもソース気体混合物と同じ組成をもつ気体クラスター・イオンに帰結するのではないことが知られている。
【0039】
気体混合物中のさまざまな気体がGCIB 128中の気体クラスター・イオンに取り込まれる度合いは、ソース気体混合物のみではなく、ノズル110を通じた気体流量(flow rate)にも依存する。したがって、単にソース気体混合物を本発明の第一および第二の実施形態におけるように制御するのでは十分でないことがありうる。正しいソース気体混合をもってしても、GCIB中の気体クラスター・イオンの組成はノズル気体の流れとともに変動しうる。したがって、GCIB処理装置400は、GCIB 128内の気体クラスターの実際の組成を測定および/または制御するのである。
【0040】
GCIB処理装置400は、取りつけられたクラスター解離チャンバ408をもつシャフト404を作動させる線形アクチュエータ402を用いる。線形アクチュエータ402は、制御可能な往復運動406をシャフト404および解離チャンバ408に与える。解離チャンバ408は、制御可能にGCIB 128の経路から除去され(通常のGCIB処理のために)、あるいはGCIB 128中に導入されて、加工対象152またはビーム電流センサー218に到達する前に、気体混合測定のためにGCIB 128を受け止める。ここではイオン化/加速チャンバ106内に位置されて示されているが、当業者は、解離チャンバ408がスキマー開口120の下流でかつGCIB 128が加工対象152またはビーム電流センサー218または気体クラスター・イオンを解離させる他の任意のオブジェクトを衝撃する前の任意の好都合な位置に位置されることができることを理解するであろう。当業者はまた、図4では高電圧電極126の下流(GCIBの加速後)でGCIB 128を受け止めるよう位置されているが、解離チャンバ408がスキマー開口120とイオン化器122との間に(クラスターからクラスター化されていない気体をスキム(skim)した後で、かつイオン化および加速してGCIB 128を形成する前に)置かれて、イオン化および加速される前に気体ジェット118からのイオン化されていないクラスターを受け止めることもできることを理解するであろう。
【0041】
クラスター解離チャンバ408は、開口410および打撃板412を有する。線形アクチュエータ402は、GCIB 128(また代替的には気体ジェット118からの非イオン化クラスター)が開口410を通って打撃板412に当たるよう、クラスター解離チャンバ408を操作するよう構成される。衝突に際して、GCIB 128気体クラスター・イオンは解離し、解離チャンバ408内の圧力PDCを約1×10-3torrないし約10torr(約0.13Paないし約1300Pa)の範囲またはより高圧にまで上昇させる。気体分析器414は高圧力範囲の動作が可能であってもよく、ある個別的な実施例では、開口416を通じて解離チャンバ408と結合されたMPESであってもよい。気体分析器414はGCIB 128内の気体クラスター・イオンの解離から帰結する気体混合を分析する。
【0042】
気体分析器414は、電気ケーブル418中の電気リードを通じてコントローラ220と通信する。気体分析器414は、電気ケーブル418を通じて必要な電力および制御信号を受け取り、気体混合物の二つ以上の構成成分の相対的な大きさに関する情報を含む信号をコントローラ220に返す。
【0043】
解離チャンバ408内に存在する気体環境の構成要素気体が気体分析器414によって測定され、気体分析データの形の信号がコントローラ220に返される。そうした信号は、プラズマ発光分析または用いられる特定の型の気体分析器414に適切なその他の測定手段によって決定される気体混合物から形成されるイオンに関係する振幅を含みうる。コントローラ220は、二つ以上の構成要素の間の比を決定し、GCIB 128内の気体クラスター・イオンにおける比を計算しうる。コントローラ220は、必要な較正があればそれも含めた、気体分析器414によって測定された気体構成要素の比を比較し、GCIB 128からサンプルされる気体がGCIBプロセスのための所定の許容可能な限界内にあるかどうかを判定する。気体混合物が許容可能な限界外である場合、コントローラ220はプロセスを中断することができる。これはたとえば、加工対象152を動かして、完全にGCIB 128の経路から外し、GCIB 128がビーム電流センサー218にはいるようにすることによる。また、GCIB処理装置400内での加工対象の誤処理を防止するためにアラームを発することができる。
【0044】
あるいはまた、事前混合気体が気体ソース111または230の一方または他方のみから供給されている場合、コントローラ220は、電気ケーブル418内の電気リードを通じて気体調節バルブ316または気体調節バルブ318に制御信号を送り、適切なほうのバルブにおける流れを適宜増減させ、気体混合物からGCIB 128中の気体クラスター・イオンへの二つの成分の組み込みのそれぞれの割合を、GCIBプロセス要求のための許容可能な限界内である混合に修正することができる。さらに、気体ソース111および230からの異なる気体がガス・マニホールド238において混合される場合、コントローラ220は、電気ケーブル418内の電気リードを通じて、気体調節バルブ316および/または気体調節バルブ318に制御信号を送り、バルブ316および318のどちらか一方または両方における流れを適宜増減させ、気体給送管114内の気体混合を、GCIB 128内の気体クラスター・イオン中の構成要素の適正な比を回復する混合に復元することができる。
【実施例4】
【0045】
図5を参照すると、同様の参照符号は図1〜図4と同様の特徴を指すが、GCIB処理装置500は、図4のものと同様の形であるが、本発明の第四の実施形態に基づく修正を含む。第三の実施形態におけるように除去可能な解離チャンバをGCIB中に挿入することによってGCIB 128からの解離された気体クラスター・イオンからの高圧気体の解離されたサンプルを分析する代わりに、この第四の実施形態は、既存の電流センサー218を気体クラスター・イオン分析のための解離チャンバとして使用する。電流センサー218は典型的には、イオン・ビーム線量測定の技術分野でよく知られたカップ形の容器であるファラデー・カップである。
【0046】
GCIB 128内の気体クラスター・イオンがカップ形電流センサー218内で衝撃すると、気体クラスター・イオンは解離し、センサー218内の圧力を上げる。電流センサー218は通常、GCIB処理を制御するための線量測定機能の一部として、GCIB 128によってセンサー218内に運び込まれる電荷を測定する。この第四の実施形態では、この実施形態についてはカップ形を有していてもよい電流センサー218は、それを打撃する解離した気体クラスター・イオンの構成要素を測定するはたらきもする。電流センサー218内の気体の高い解離率のため、その中の圧力は約10-3torrないし約10torr(約0.13Paないし約1300Pa)またはそれ以上の範囲に高められる。その圧力範囲では、気体分析器として、MPESのような高圧範囲動作気体分析器を用いることができる。
【0047】
気体分析器502は、開口506および電気絶縁管504を通じて電流センサー218に接続されている。電気絶縁管504は気体分析器502の電流センサー218への取り付けが電流センサー218のビーム電流測定機能に悪影響を及ぼすことを防止し、その一方で解離した気体クラスター・イオンからの解離生成物が気体分析器502にはいることを許容する。気体分析器502は、電流センサー218内の気体クラスター・イオンの解離から帰結する気体混合物をサンプルし、分析する。電流センサー218は、事実上、気体クラスター・イオンについての解離チャンバとして動作する。気体分析器502は、電気ケーブル508内の電気リードを通じてコントローラ220と通信する。気体分析器502は、電気ケーブル508を通じて必要な電力および制御信号を受け取り、気体混合物の二つ以上の構成成分の相対的な大きさに関する気体分析データを含む信号をコントローラ220に返す。
【0048】
電流センサー218内に存在する気体混合物の構成成分が気体分析器502によって測定され、コントローラ220に信号が返される。その信号は、プラズマ発光分析または用いられる特定の型の気体分析器414に適切なその他の測定手段によって決定される気体混合物から形成されるイオンに関係する振幅を含みうる。コントローラ220は、二つ以上の成分の間の比を決定し、GCIB 128中での気体クラスター・イオンにおける比を計算しうる。コントローラ220は、必要な較正があればそれも含めた、気体分析器414によって測定された気体構成要素の比を比較し、気体比の一つまたは複数から、GCIB 128からサンプルされている気体がGCIBプロセスのための所定の許容可能な限界内にあるかどうかを判定する。気体混合についての数値的な範囲は、そのGCIBプロセスについて確立された上限値および下限値によって定義されうる。
【0049】
気体混合物が許容可能な限界外である場合、コントローラ220はプロセスを中断し、GCIB処理装置500内での加工対象の誤処理を防止するためにアラームを発することができる。あるいはまた、事前混合気体が気体ソース111または230の一方または他方のみから供給されている場合、コントローラ220は、電気ケーブル508内の電気リードを通じて気体調節バルブ316または気体調節バルブ318に制御信号を送ることができる。制御信号は、適宜、バルブ316、318のうちの対応するものにおける気体の流れを増減させ、それにより、気体混合物からGCIB 128中の気体クラスター・イオンへの二つの成分の組み込みのそれぞれの割合を、GCIBプロセス要求のための許容可能な限界内である混合に修正する。さらに、気体ソース111および230からの異なる気体がガス・マニホールド238において混合される場合、コントローラ220は、電気ケーブル508内の電気リードを通じて、気体調節バルブ316および/または気体調節バルブ318に制御信号を送り、バルブ316および318のどちらか一方または両方における流れを適宜増減させ、気体給送管114内の気体混合を、GCIB 128内の気体クラスター・イオン中の構成要素の適正な比を回復する混合に復元することができる。
【実施例5】
【0050】
図6を参照すると、同様の参照符号は図1〜図5と同様の特徴を指すが、GCIB処理装置500は、図1のものと同様の形であるが、本発明の第五の実施形態に基づく修正を含む。図1の従来技術のシステムにおけるようにプロセス・チャンバ108内の気体の圧力を測定するスタンドアローン装置としてRGAを使う代わりに、本発明のこの第五の実施形態では、RGAまたはプロセス・チャンバ108の通常動作の低圧領域(典型的には約1×10-6torrないし約5×10-4torr(約1.3×10-4Paないし約6.7×10-2Pa))における動作に好適な他の気体分析器が、GCIB構成の能動制御のためのコントローラ220との通信と組み合わせて用いられる。
【0051】
GCIB処理のための動作の際、GCIB 128は加工対象152または電流センサー218またはプロセス・チャンバ108内の他のオブジェクトを打撃し、構成要素気体に解離する。気体分析器552は、プロセス・チャンバ108から気体分析器552中に気体がはいることを許す開口554をもつ。気体分析器552は、プロセス・チャンバ108内での気体クラスターの解離から帰結する気体混合を分析する。気体分析器552は電気ケーブル556内の電気リードを通じて、コントローラと通信する。気体分析器552は電気ケーブル556を通じて必要な電力および制御信号を受け取り、気体混合物の二つ以上の構成成分の相対的な大きさに関する気体分析データを含む信号をコントローラ220に返す。
【0052】
プロセス・チャンバ108内に存在する気体混合物の構成要素が気体分析器552によって測定され、信号がコントローラ220に返される。そうした信号は、プラズマ発光分析または用いられる特定の型の気体分析器552に適切なその他の測定手段によって決定される気体混合物から形成されるイオンに関係する振幅を含みうる。コントローラは、二つ以上の構成要素の間の比を決定し、GCIB 128内の気体クラスター・イオンにおける比を計算しうる。コントローラ220は、必要な較正があればそれも含めた、気体分析器552によって測定された気体構成要素の比を比較し、GCIB 128からサンプルされる気体がGCIBプロセスのための所定の許容可能な限界内にあるかどうかを判定する。気体混合物が許容可能な限界外である場合、コントローラはプロセスを中断し、GCIB処理システム内での処理対象の誤処理を防止するためにアラームを発することができる。
【0053】
あるいはまた、事前混合気体が気体ソース111または230の一方または他方のみから供給されている場合、コントローラ220は、電気ケーブル556内の電気リードを通じて気体調節バルブ316または気体調節バルブ318に制御信号を送り、適切なほうのバルブにおける気体の流れを適宜増減させ、気体混合物からGCIB 128中の気体クラスター・イオンへの二つの成分の組み込みのそれぞれの割合を、GCIBプロセス要求のための許容可能な限界内である混合に修正することができる。さらに、気体ソース111および230からの異なる気体がガス・マニホールド238において混合される他方の場合、コントローラ220は、電気ケーブル556内の電気リードを通じて、気体調節バルブ316および/または気体調節バルブ318に制御信号を送り、バルブ316および318のどちらか一方または両方における流れを適宜増減させ、気体給送管114内の気体混合を、GCIB 128内の気体クラスター・イオン中の構成要素の適正な比を回復する混合に復元することができる。
【0054】
本発明についてさまざまな実施形態の記述によって例解し、そうした実施形態についてかなり詳細に述べてきたが、付属の請求項の範囲をいかなる仕方であれそうした詳細に限定することは出願人の意図ではない。追加的な利点および修正が当業者にはすぐに思いつくであろう。よって、その広義の側面における本発明は、図示および記述した個別的な詳細、代表的な装置および方法ならびに解説上の例に限定されるのではない。したがって、出願人の全体的な発明概念の精神または範囲から外れることなくそのような詳細から外れることもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業対象物を気体混合物から生成されるガス・クラスター・イオン・ビームで照射するガス・クラスター・イオン・ビーム装置であって:
真空容器と;
前記気体混合物を提供するよう構成されている少なくとも一つの気体ソースと;
前記真空容器内に配されるガス・クラスター・イオン・ビーム源であって、前記気体混合物の流れを受け入れるよう前記少なくとも一つの気体ソースと結合され、前記気体混合物の流れからガス・クラスター・イオン・ビームを生成するよう構成されているガス・クラスター・イオン・ビーム源と;
前記ガス・クラスター・イオン・ビームによる照射のために前記作業対象物を前記真空容器内で支持するよう構成されている作業対象物ホルダと;
前記少なくとも一つの気体ソースから前記ガス・クラスター・イオン・ビーム源への前記流れをサンプルするよう構成され、前記気体混合物を分析して気体分析データを生成するよう構成された気体分析器と;
前記気体分析器と結合されたコントローラであって、前記気体分析器から通信される前記気体分析データに応じて前記作業対象物の照射を修正するよう構成されているコントローラとを有する、
ガス・クラスター・イオン・ビーム装置。
【請求項2】
前記コントローラが前記気体分析データに基づいて制御信号を計算するよう構成され、前記少なくとも一つの気体ソースが第一の気体ソースを含む、請求項1記載のガス・クラスター・イオン・ビーム装置であって、さらに:
前記コントローラに電気的に結合された第一の調節バルブを有し、前記第一の調節バルブは、前記コントローラから通信される制御信号に応じて、前記作業対象物の照射を修正するよう、前記気体混合物中の第一のプロセス気体の、前記第一の気体ソースから前記ガス・クラスター・イオン・ビーム源への流れを調整するよう構成されている、
ガス・クラスター・イオン・ビーム装置。
【請求項3】
前記少なくとも一つの気体ソースがさらに第二の気体ソースを含む、請求項2記載のガス・クラスター・イオン・ビーム装置であって、さらに:
前記コントローラに電気的に結合された第二の調節バルブを有し、前記第二の調節バルブは、前記コントローラから通信される制御信号に応じて、前記気体混合物中の第二のプロセス気体の、前記第二の気体ソースから前記ガス・クラスター・イオン・ビーム源への流れを調整するよう構成されている、
ガス・クラスター・イオン・ビーム装置。
【請求項4】
前記コントローラが、前記気体混合物が許容可能な数値的範囲の外であることが前記気体分析データによって示される場合に、前記作業対象物の照射を終了させるよう構成されている、請求項1記載のガス・クラスター・イオン・ビーム装置。
【請求項5】
作業対象物を気体混合物から生成されるガス・クラスター・イオン・ビームで照射するガス・クラスター・イオン・ビーム装置であって:
残留気体を含む真空容器と;
前記真空容器内に配されるガス・クラスター・イオン・ビーム源であって、前記気体混合物の気体クラスターを含む気体ジェットを生成するよう構成され、前記気体ジェットからガス・クラスター・イオン・ビームを生成するよう構成されているガス・クラスター・イオン・ビーム源と;
前記ガス・クラスター・イオン・ビームによる照射のために前記作業対象物を前記真空容器内で支持するよう構成されている作業対象物ホルダと;
前記真空容器内の残留気体を分析して気体分析データを生成するよう構成された、前記真空容器に結合された気体分析器と;
前記気体分析器と結合されたコントローラであって、前記気体分析器から通信される前記気体分析データに応じて前記作業対象物の照射を修正するよう構成されているコントローラとを有する、
ガス・クラスター・イオン・ビーム装置。
【請求項6】
前記コントローラが前記気体分析器から通信される前記気体分析データに基づいて制御信号を計算するよう構成された、請求項5記載のガス・クラスター・イオン・ビーム装置であって、さらに:
前記気体混合物に少なくとも第一の気体を寄与するよう構成された第一の気体ソースと;
前記コントローラに電気的に結合された第一の調節バルブとを有し、前記第一の調節バルブは、前記コントローラから通信される制御信号に応じて、前記作業対象物の照射を修正するよう、前記第一の気体の、前記第一の気体ソースから前記ガス・クラスター・イオン・ビーム源への流れを調整するよう構成されている、
ガス・クラスター・イオン・ビーム装置。
【請求項7】
請求項6記載のガス・クラスター・イオン・ビーム装置であって、さらに:
前記気体混合物に少なくとも第二の気体を寄与するよう構成された第二の気体ソースと;
前記コントローラに電気的に結合された第二の調節バルブを有し、前記第二の調節バルブは、前記コントローラから通信される制御信号に応じて、前記第二の気体の、前記第二の気体ソースから前記ガス・クラスター・イオン・ビーム源への流れを調整するよう構成されている、
ガス・クラスター・イオン・ビーム装置。
【請求項8】
前記コントローラが、前記気体混合物が許容可能な数値的範囲の外であることが前記気体分析データによって示される場合に、前記作業対象物の照射を終了させるよう構成されている、請求項7記載のガス・クラスター・イオン・ビーム装置。
【請求項9】
前記真空容器が第一のチャンバおよび該第一のチャンバと流体連通する第二のチャンバを含み、前記作業対象物ホルダが前記第一のチャンバ内に位置され、前記気体分析器が前記第二のチャンバ内の残留気体をサンプルするよう構成されている、請求項5記載のガス・クラスター・イオン・ビーム装置。
【請求項10】
請求項9記載のガス・クラスター・イオン・ビーム装置であって、さらに:
前記気体混合物を気体クラスターを含む気体クラスタージェットとして前記第二のチャンバ内に放出するよう構成された、前記第二のチャンバ内に配されるノズルと;
前記第二のチャンバ内の可動部材であって、前記気体クラスター・ジェットの経路外の第一の位置と前記気体クラスター・ジェットが該可動部材に衝突して前記気体クラスターが解離する第二の位置との間で動くよう構成された可動部材とを有する、
ガス・クラスター・イオン・ビーム装置。
【請求項11】
請求項9記載のガス・クラスター・イオン・ビーム装置であって、前記真空容器が前記第一のチャンバと前記第二のチャンバの間に第三のチャンバを含み、前記第三のチャンバは前記第一のチャンバと流体連通しており、前記第三のチャンバは前記第二のチャンバと流体連通しており、前記気体分析器は前記第三のチャンバ内の残留気体をサンプルするよう構成されている、ガス・クラスター・イオン・ビーム装置。
【請求項12】
前記気体ジェットが前記第二のチャンバ内で発生して前記第三のチャンバに伝えられる、請求項11記載のガス・クラスター・イオン・ビーム装置であって、さらに:
前記気体ジェット中の気体クラスターの少なくとも一部をイオン化して気体クラスター・イオンを画定するよう構成された、前記第三のチャンバ内のイオン化器と;
前記気体クラスター・イオンを加速してガス・クラスター・イオン・ビームを形成するよう電気バイアス効果を加えるよう構成された、前記第三のチャンバ内に配される加速器と;
前記第三のチャンバ内の可動部材であって、前記ガス・クラスター・イオン・ビームの経路外の第一の位置と前記ガス・クラスター・イオン・ビームが該可動部材に衝突して前記気体クラスター・イオンが解離する第二の位置との間で動くよう構成された可動部材とを有する、
ガス・クラスター・イオン・ビーム装置。
【請求項13】
前記真空容器が第一のチャンバおよび該第一のチャンバと流体連通する第二のチャンバを含み、前記作業対象物ホルダが前記第一のチャンバ内に位置され、前記ガス・クラスター・イオン・ビーム源の少なくとも一部分が前記第二のチャンバ内に位置され、前記気体分析器が前記第一のチャンバ内の気体環境をサンプルするよう構成されている、請求項5記載のガス・クラスター・イオン・ビーム装置。
【請求項14】
請求項13記載のガス・クラスター・イオン・ビーム装置であって、さらに:
前記ガス・クラスター・イオン・ビームによる照射のために前記第一のチャンバ内に位置された、前記気体分析器と流体連通して結合された電流センサーを有する、
ガス・クラスター・イオン・ビーム装置。
【請求項15】
前記作業対象物ホルダが前記作業対象物を、該作業対象物が前記ガス・クラスター・イオン・ビームによって照射される第一の位置と、前記ガス・クラスター・イオン・ビームが前記電流センサーに衝突して前記気体クラスター・イオンが解離する第二の位置との間で動くよう構成されている、請求項13記載のガス・クラスター・イオン・ビーム装置。
【請求項16】
作業対象物を気体混合物から生成されるガス・クラスター・イオン・ビームで処理する方法であって:
前記気体混合物の流れからガス・クラスター・イオン・ビームを形成する段階と;
前記作業対象物を前記ガス・クラスター・イオン・ビームで照射する段階と;
前記ガス・クラスター・イオン・ビームを形成するのに使われる前記気体混合物の流れをサンプルする段階と;
サンプルされた前記気体混合物の流れから気体分析データを生成する段階と;
前記気体分析データに応じて前記作業対象物の照射を修正する段階とを有する、
方法。
【請求項17】
請求項16記載の方法であって、前記作業対象物の照射を修正する段階が:
前記気体分析データから、前記気体混合物が許容可能な数値範囲内であるかどうかを判定する段階と;
前記気体混合物が許容可能な数値範囲の外である場合に、前記ガス・クラスター・イオン・ビームによる前記作業対象物の照射を終了させる段階とを有する、
方法。
【請求項18】
請求項16記載の方法であって、前記作業対象物の照射を修正する段階が、さらに:
前記気体分析データから、前記気体混合物が許容可能な数値範囲内であるかどうかを判定する段階と;
前記気体混合物が許容可能な数値範囲の外である場合に、真空容器内に配置されたガス・クラスター・イオン・ビーム源に伝えられる流れにおける気体混合物の組成を調整する段階とを有する、
方法。
【請求項19】
請求項18記載の方法であって、前記気体混合物の組成を調整する段階がさらに:
前記気体混合物の組成を調整するために複数の調節バルブを制御する段階を含む、
方法。
【請求項20】
作業対象物を気体混合物から生成されるガス・クラスター・イオン・ビームで処理する方法であって:
前記気体混合物の流れを、真空容器内に配置されたガス・クラスター・イオン・ビーム源に伝える段階と;
前記ガス・クラスター・イオン・ビーム源を使って前記気体混合物の流れからガス・クラスター・イオン・ビームを形成する段階と;
前記作業対象物を前記ガス・クラスター・イオン・ビームで照射する段階と;
前記真空容器内の排気された気体環境において残留気体から気体分析データを生成する段階と;
前記気体分析データに応じて前記作業対象物の照射を修正する段階とを有する、
方法。
【請求項21】
請求項20記載の方法であって、前記作業対象物の照射を修正する段階が:
前記気体分析データから、前記気体混合物が許容可能な数値範囲内であるかどうかを判定する段階と;
前記気体混合物が許容可能な数値範囲の外である場合に、前記ガス・クラスター・イオン・ビームによる前記作業対象物の照射を終了させる段階とを有する、
方法。
【請求項22】
請求項20記載の方法であって、前記作業対象物の照射を修正する段階が、さらに:
前記気体分析データから、前記気体混合物が許容可能な数値範囲内であるかどうかを判定する段階と;
前記気体混合物が許容可能な数値範囲の外である場合に、前記ガス・クラスター・イオン・ビーム源への流れにおける前記気体混合物の組成を調整する段階とを有する、
方法。
【請求項23】
請求項22記載の方法であって、前記気体混合物の組成を調整する段階がさらに:
前記気体混合物の組成を調整するために複数の調節バルブを制御する段階を含む、
方法。
【請求項24】
請求項20記載の方法であって、前記ガス・クラスター・イオン・ビームを形成する段階がさらに:
前記気体混合物をノズルを通じて前記真空容器中に射出し、気体クラスターを含む気体クラスター・ジェットを画定する段階と;
前記気体クラスターを解離させて前記真空容器内に残留気体を生成する段階とを有する、
方法。
【請求項25】
請求項24記載の方法であって、前記気体クラスター・イオンを解離させる段階がさらに:
可動部材を前記気体クラスター・ジェットの経路中に動かして、前記気体クラスターが該可動部材の一部に衝突して解離して前記残留気体を生成するようにする段階とを有する、
方法。
【請求項26】
請求項20記載の方法であって、前記ガス・クラスター・イオン・ビームを形成する段階がさらに:
前記気体混合物をノズルを通じて前記真空容器中に射出し、気体クラスターを含む気体クラスター・ジェットを画定する段階と;
前記気体クラスター・ジェット中の気体クラスターの少なくとも一部をイオン化して気体クラスター・イオンを形成するよう段階と;
前記一部の前記気体クラスター・イオンを加速してガス・クラスター・イオン・ビームを形成する段階とを有する、
方法。
【請求項27】
請求項25記載の方法であって、気体分析データを生成する段階がさらに:
前記気体クラスター・イオンを解離させて前記真空容器内に残留気体を生成する段階を含む、
方法。
【請求項28】
請求項27記載の方法であって、前記気体クラスター・イオンを解離させる段階がさらに:
可動部材を前記真空容器内のガス・クラスター・イオン・ビームの経路中に動かして、前記気体クラスター・イオンが該可動部材の一部に衝突して解離して前記残留気体を生成するようにする段階を有する、
方法。
【請求項29】
請求項27記載の方法であって、前記気体クラスター・イオンを解離させる段階がさらに:
前記ガス・クラスター・イオン・ビームを電流センサーで受け止めて、前記気体クラスター・イオンが前記電流センサーの一部に衝突して解離して前記残留気体を生成するようにする段階を有する、
方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−505678(P2011−505678A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536959(P2010−536959)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/083088
【国際公開番号】WO2009/073316
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(508233445)ティーイーエル エピオン インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】