説明

水処理装置及び水処理方法

【課題】1,4-ジオキサンを含む被処理水を十分に浄化する。
【解決手段】処理槽1の内部に、表面に光触媒5を有する複数の粒状吸着材2を充填し濾過床3を形成し、該濾過床3に1,4-ジオキサンを含む被処理水を通すことで、1,4-ジオキサン及び有機汚濁物質を粒状吸着材2に吸着させ、濾過床3の底部の粒状吸着材2を、移送手段31により上方に移送して濾過床3上に送り、移送手段31により移動中の粒状吸着材2且つ/又は濾過床3上を、紫外線照射ランプ4により照射し、紫外線照射した粒状吸着材2において光触媒反応を進行させてOHラジカルを生じさせ、該OHラジカルにより、粒状吸着材2に吸着した1,4-ジオキサン及び有機汚濁物質を酸化分解すると共に粒状吸着材2を再生するようにし、粒状吸着材2を頻繁に再生し新材として逐次用いるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置及び水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平成16年度から、水道水質基準に新たに1,4-ジオキサンが追加された。この1,4-ジオキサンは、常温常圧において無色透明の液体の有機化合物で分子式はCである。この1,4-ジオキサンの除去に関しては、以下の非特許文献1に記載があるが、下水処理場の生物処理では除去は期待できず、また、活性炭への吸着性が弱いとの報告がある。
【非特許文献1】新エネルギー・産業技術総合開発機構/独立行政法人 製品評価技術基盤機構「化学物質の初期リスク評価書 Ver.1.0」No.13 1,4ジオキサン
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように、1,4-ジオキサンの除去は難しいため、除去技術が早急に求められている。
【0004】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、1,4-ジオキサンを含む被処理水を十分に浄化できる水処理装置及び水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここで、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、1,4-ジオキサンは、活性炭を始めとした粒状吸着材への吸着性が弱いが、粒状吸着材を頻繁に再生し新材として逐次用いれば、1,4-ジオキサンを有効に除去できることを見出した。
【0006】
そこで、本発明による水処理装置は、1,4-ジオキサンを含む被処理水を導入し浄化するための処理槽と、表面に光触媒を有する複数の粒状吸着材が槽内に充填されて形成されると共に被処理水が通される濾過床と、この濾過床の底部の粒状吸着材を上方に移送し濾過床上に送るための移送手段と、を具備したことを特徴としている。
【0007】
また、本発明による水処理方法は、処理槽の内部に、表面に光触媒を有する複数の粒状吸着材を充填し濾過床を形成して、当該濾過床に1,4-ジオキサンを含む被処理水を通し、この濾過床の底部の粒状吸着材を、移送手段により、上方に移送して濾過床上に送り、この移送手段により移動中の粒状吸着材且つ/又は濾過床上を、紫外線照射ランプにより照射することを特徴としている。
【0008】
このような水処理装置及び水処理方法によれば、処理槽の内部に、表面に光触媒を有する複数の粒状吸着材が充填され濾過床が形成されて、当該濾過床に1,4-ジオキサンを含む被処理水が通されるため、1,4-ジオキサン及び有機汚濁物質(BOD、COD、環境ホルモン等)が粒状吸着材に吸着され、濾過床の底部の粒状吸着材は、移送手段により上方に移送されて濾過床上に送られ、移送手段により移動中の粒状吸着材且つ/又は濾過床上が、紫外線照射ランプにより照射される。紫外線照射された粒状吸着材にあっては光触媒反応が進行してOHラジカルが生じ、このOHラジカルにより、粒状吸着材に吸着された1,4-ジオキサン及び有機汚濁物質が酸化分解されると共に当該粒状吸着材が再生される。従って、粒状吸着材が頻繁に再生されて新材として逐次用いられ、1,4-ジオキサンを含む被処理水が十分に浄化されるようになる。加えて、槽での藻類の繁殖が防止される。特に、紫外線照射ランプにより濾過床上が照射される場合には、濾過床を通る被処理水中のNH、NOx類が酸化されるため、被処理水が一層十分に浄化されるようになる。
【0009】
ここで、被処理水の導入部は、処理槽の底部に設けられているのが好ましい。このような構成を採用した場合、被処理水が処理槽の底部から導入される上向流とされ、この被処理水と向流接触し1,4-ジオキサン及び有機汚濁物質を吸着した粒状吸着材が、移送手段により、処理槽の底部から吸着順に上方に移送されて再生されるため、被処理水が一層十分に浄化されるようになる。
【0010】
また、濾過床で捕捉され、移送手段により粒状吸着材と共に上方に移送されたSSを、濾過床上に送らないように分離する分離部を有していると、被処理水が一層十分に浄化されるようになる。
【0011】
ここで、上記作用を効果的に奏する構成としては、具体的には、移送手段は、揚送管を含むエアリフトポンプであり、揚送管は、槽内の略中央に上下方向に延在するように設けられると共に、濾過床に進入し且つその上部が前記濾過床から突出し、粒状吸着材は、エアリフトポンプにより揚送管を通して上方に移送され、当該揚送管の上端から分離部内に落下する構成が挙げられる。
【発明の効果】
【0012】
このように本発明によれば、1,4-ジオキサンを含む被処理水を十分に浄化することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明による水処理装置、水処理方法の好適な実施形態について図1〜図3を参照しながら説明する。なお、各図において、同一の要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。図1は、本発明の第一実施形態に係る水処理装置を示す概略構成図、図2は、図1中の分離部を示す平面図であり、本実施形態の水処理装置は、水処理設備に設けられるもので、1,4-ジオキサン、有機汚濁物質(BOD、COD、環境ホルモン等)、SSを含む被処理水を浄化し、水道水質基準を満足する清澄水とするものである。
【0014】
図1に示すように、水処理装置100は概略、上記被処理水を導入し浄化するための処理槽1と、この処理槽1内に複数の粒状吸着材2より形成され上記被処理水が通される濾過床3と、この濾過床3の底部の粒状吸着材2を上方に移送し濾過床3上に送るための移送手段31と、を具備している。
【0015】
処理槽1は、その底部の中央周囲に上記被処理水を導入するための導入部20を備えている。
【0016】
濾過床3は、複数の粒状吸着材2が処理槽1の内部に密に充填されて形成される。
【0017】
この濾過床3を構成する粒状吸着材2は、被処理水中の1,4ジオキサンや有機汚濁物質を吸着するための粒状体であると共に、粒状吸着材2,2間にSSを捕捉するための粒状体であり、例えば、活性炭、ゼオライト、ベントナイト、シリカゲル等が用いられる。ここでは、特に好ましいとして、ヤシ殻活性炭が用いられ、1〜6mm程度のものが用いられている。
【0018】
この粒状吸着材2は、その表面に光触媒5を有している。この光触媒5は、紫外線が照射されると、光触媒反応を生じるもので、ここでは、特に好ましいとして、酸化チタン(TiO)が用いられている。この酸化チタンは、波長387nm以下の紫外線が照射されると、極めて強力な光触媒反応である酸化・還元作用を示す。この光触媒5は、粒状吸着材2の表面に例えばコーティング等により設けられている。
【0019】
移送手段31は、処理槽1内の略中央に上下方向に延在するように設けられると共に、濾過床3の底部まで進入し且つその上部が濾過床3から突出する揚送管6と、揚送管6内に進入し、外部から揚送管6内に例えば、空気、酸素、オゾン、窒素等の気体を給気する給気管8とを備えるエアリフトポンプである。この移送手段31は給気管8を通して揚送管6内に上記気体を供給することで、濾過床3の底部の粒状吸着材2及び粒状吸着材2,2間で捕捉したSSを連続的又は間欠的に揚送管6を通して上方に移送する。ここでは、粒状吸着材2を頻繁に再生すべく、連続的に移送する構成とされている。なお、揚送管6は粒状吸着材2及びSSに伴って処理水の一部も上方へ移送する。
【0020】
また、処理槽1は、その上部に、図1及び図2に示すように、粒状吸着材2とSSとを分離するための分離部7を備えている。
【0021】
この分離部7は、有底円筒状に構成された槽であり、内部に揚送管6及び給気管8の上部が進入し、揚送管6からのSSが水面に浮遊する構成とされている。この分離部7は、水面に浮遊するSSを外部に排出するための排出管11を備えている。
【0022】
また、分離部7の中央には、揚送管6及び給気管8の上部を取り囲むと共に分離部7内に進入するように、円筒状の粒状吸着材戻し管10が設けられている。この粒状吸着材戻し管10は、揚送管6と濾過床3とを連通し、揚送管6の上端へ移送され揚送管6の上端から流出する粒状吸着材2を濾過床3上へ戻すように案内するものである。そして、この粒状吸着材戻し管10と揚送管6との間で揚送管6の上部の側方には、紫外線照射ランプ4が上下方向に延在すると共に周方向に沿って複数設けられている。
【0023】
この紫外線照射ランプ4は、揚送管6の上部を上昇し、粒状吸着材戻し管10と揚送管6との間を落下する粒状吸着材2に紫外線を照射するためのものである。この紫外線照射ランプ4としては、例えばUVランプ、蛍光灯、ブラックライト等が用いられる。
【0024】
さらに、処理槽1はその内壁に濾過床3を通り浄化された処理水を、処理槽1上部の貯水部13に案内する処理水導出管12を備えている。この導出管12は、円環状に構成され、その下端の導入口12aが濾過床3の中まで進入するように配置されている。また、貯水部13は、処理水を一旦貯水した後に浄化水として後段へ排出する。
【0025】
このように構成された水処理装置100によれば、処理槽1の内部に、処理槽1底部の導入部20から被処理水が導入され、当該被処理水は上方に向かう上向流とされ、この被処理水は濾過床3を通る。このとき、濾過床3の底部の粒状吸着材2は、移送手段31により、濾過床3の底部から上方へ移送されているため、粒状吸着材2は底部へ移動し、この底部へ移動する粒状吸着材2に被処理水が向流接触することにより、被処理水中の1,4-ジオキサンや有機汚濁物質が粒状吸着材2に吸着され、且つ、被処理水中のSSは粒状吸着材2,2間に捕捉され、浄化水として処理水導出管12、貯水部13を介して後段へ排出される。
【0026】
このように、処理槽1にあっては、被処理水は底部から導入され上向流とされているため、1,4-ジオキサンや有機汚濁物質は底部の粒状吸着材2から順に吸着されていき、且つ、SSは底部の粒状吸着材2に順に捕捉されていき、従って、底部の粒状吸着材2ほど高濃度に1,4-ジオキサンや有機汚濁物質を吸着し、且つ、SSを捕捉している。そして、この粒状吸着材2が、移送手段31により、濾過床3の底部から吸着順に取り出されると共に、SSが捕捉順に取り出されて、揚送管6を介して分離部7へ供給される。すなわち、高濃度に1,4-ジオキサンや有機汚濁物質を吸着した粒状吸着材2が順に取り出されると共に、高濃度に捕捉されたSSが順に取り出されて、揚送管6内を上方へ移送され、分離部7へ導入される。
【0027】
そして、粒状吸着材2及びSSは、分離部7に導入され、粒状吸着材2とSSとが分離され、SSは排出管11を通して外部へ排出される。一方、粒状吸着材2は揚送管6の上部を上昇する際及び揚送管6の上端から流出して 粒状吸着材戻し管10に案内されながら落下して下降する際に、紫外線照射ランプ4により紫外線が照射される。この紫外線照射により、粒状吸着材2の表面では、光触媒反応が進行し、この光触媒反応によりOHラジカルが生じ、当該OHラジカルにより、粒状吸着材2に吸着された1,4-ジオキサンや有機汚濁物質が酸化分解されると共に、当該粒状吸着材2が再生される。
【0028】
そして、再生された粒状吸着材2は、濾過床3上に落下し、濾過床3、揚送管6、粒状吸着材戻し管10、濾過床3を繰り返し循環する。
【0029】
このように本実施形態においては、処理槽1の濾過床3に被処理水を通して粒状吸着材2に被処理水中の1,4-ジオキサン、有機汚濁物質を吸着し、この吸着した濾過床3底部の粒状吸着材2を移送手段31により上方へ移送して濾過床3上へ送り、この移送手段31により移動中の粒状吸着材2を、紫外線照射ランプ4により照射することで、粒状吸着材2を効果的に再生し、このように粒状吸着材2を頻繁に再生して新材として逐次用いるようにしているため、1,4-ジオキサンや有機汚濁物質を含む被処理水が十分に浄化される。加えて、槽1での藻類の繁殖が防止される。
【0030】
また、濾過床3で捕捉され、移送手段31により粒状吸着材2と共に上方に移送されたSSを、濾過床3上に送らないように分離する分離部7を有しているため、被処理水は一層十分に浄化される。
【0031】
図3は、本発明の第二実施形態に係る水処理装置を示す概略構成図である。
【0032】
この第二実施形態の水処理装置200が第一実施形態の水処理装置100と違う点は、紫外線照射ランプ4に代えて、濾過床3の上方に紫外線照射ランプ14を配設し、これに伴い、処理水導出管12に代えて、導入口15aが濾過床3より上方に位置する処理水導出管15を用いた点である。
【0033】
このような水処理装置200によれば、紫外線照射ランプ14により濾過床3上が照射されるため、揚送管6、粒状吸着材戻し管10を介して、濾過床3上に落下した粒状吸着材2が照射され、第一実施形態と同様に、光触媒反応による1,4-ジオキサンや有機汚濁物質の酸化分解及び粒状吸着材2の再生という効果が得られるのに加えて、濾過床3を下方から上方へ向かう被処理水が濾過床3の上面を通る際に、濾過床3上層の粒状吸着材2の光触媒反応により生じるOHラジカルによって、被処理水中のNH、NOx類が酸化され、この処理水が導入口15a、処理水導出管15、貯水部13を介して後段へ排出される。このように、被処理水中のNH、NOx類が酸化されるため、第一実施形態に比して被処理水が一層十分に浄化される。
【0034】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、特に好ましいとして、揚送管6を処理槽1内の略中央に上下方向に延在するように設けているが、略中央以外の位置でも良い。また、上記実施形態においては、移送手段31をエアリフトポンプとしているが、例えば、ドラフトチューブ内に撹拌羽根を配置し当該撹拌羽根の回転により、濾過床3の底部の粒状吸着材2をドラフトチューブを通して上方に移送する移送手段であっても良い。
【0035】
また、上記実施形態においては、特に好ましいとして、被処理水を底部から導入して上向流としているが、上部から導入して下向流とすることも可能である。
【0036】
また、紫外線照射ランプ4,14は、揚送管6の上部や濾過床3上を照射するのに限定されるものではなく、要は、移送手段31により移動中の粒状吸着材2且つ/又は濾過床3上を紫外線照射できれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第一実施形態に係る水処理装置を示す概略構成図である。
【図2】図1中の分離部を示す平面図である。
【図3】本発明の第二実施形態に係る水処理装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0038】
1…処理槽、2…粒状吸着材、3…濾過床、4,14…紫外線照射ランプ、5…光触媒、6…揚送管、7…分離部、20…導入部、31…エアリフトポンプ(移送手段)、100,200…水処理装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,4-ジオキサンを含む被処理水を導入し浄化するための処理槽と、
表面に光触媒を有する複数の粒状吸着材が槽内に充填されて形成されると共に前記被処理水が通される濾過床と、
この濾過床の底部の粒状吸着材を上方に移送し前記濾過床上に送るための移送手段と、
この移送手段により移動中の粒状吸着材且つ/又は濾過床上を紫外線照射する紫外線照射ランプと、を具備したことを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記被処理水の導入部は、前記処理槽の底部に設けられていることを特徴とする請求項1記載の水処理装置。
【請求項3】
前記濾過床で捕捉され、前記移送手段により前記粒状吸着材と共に上方に移送されたSSを、前記濾過床上に送らないように分離する分離部を有することを特徴とする請求項1又は2記載の水処理装置。
【請求項4】
前記移送手段は、揚送管を含むエアリフトポンプであり、
前記揚送管は、前記槽内の略中央に上下方向に延在するように設けられると共に、前記濾過床に進入し且つその上部が前記濾過床から突出し、
前記粒状吸着材は、前記エアリフトポンプにより前記揚送管を通して上方に移送され、当該揚送管の上端から前記濾過床上に落下することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の水処理装置。
【請求項5】
処理槽の内部に、表面に光触媒を有する複数の粒状吸着材を充填し濾過床を形成して、当該濾過床に1,4-ジオキサンを含む被処理水を通し、
この濾過床の底部の粒状吸着材を、移送手段により、上方に移送して前記濾過床上に送り、
この移送手段により移動中の粒状吸着材且つ/又は濾過床上を、紫外線照射ランプにより照射することを特徴とする水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−155184(P2008−155184A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−350191(P2006−350191)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(598067603)住重環境エンジニアリング株式会社 (36)
【Fターム(参考)】