水晶デバイス
【課題】本発明は、水晶素子の接合面の第1方向の熱膨張係数と第2方向の熱膨張係数との間の熱膨張係数を有する接合材が用いられることにより、接合材の剥がれが防がれた水晶デバイスを提供する。
【解決手段】水晶デバイス(100)は、電圧の印加により振動する励振部(131)と励振部の周囲を囲む枠部(132)とを有する水晶材により形成され枠部が第1方向と第1方向に交差する第2方向との辺を有する矩形形状の水晶素子(130)と、枠部の一主面に接合され第1方向と第2方向との辺を有する矩形形状のベース板(120)と、枠部の他主面に接合され第1方向と第2方向との辺を有する矩形形状のリッド板(110)と、を備え、水晶素子の第1方向の熱膨張係数と第2方向の熱膨張係数との間の熱膨張係数を有する接合材(140)が塗布される。
【解決手段】水晶デバイス(100)は、電圧の印加により振動する励振部(131)と励振部の周囲を囲む枠部(132)とを有する水晶材により形成され枠部が第1方向と第1方向に交差する第2方向との辺を有する矩形形状の水晶素子(130)と、枠部の一主面に接合され第1方向と第2方向との辺を有する矩形形状のベース板(120)と、枠部の他主面に接合され第1方向と第2方向との辺を有する矩形形状のリッド板(110)と、を備え、水晶素子の第1方向の熱膨張係数と第2方向の熱膨張係数との間の熱膨張係数を有する接合材(140)が塗布される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合材を介してベース板、リッド板及び水晶素子が接合された水晶デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
所定の振動数で振動する励振部及び励振部を囲む枠部を有する水晶素子と、水晶素子の表裏面に配置されるベース板及びリッド板とを有し、水晶素子、ベース板及びリッド板が互いに接合材を介して接合される水晶デバイスが知られている。このような水晶デバイスでは、接合材と水晶素子、ベース板及びリッド板との熱膨張係数の違いによって水晶デバイスの作製時に接合材等に応力がかかる。水晶デバイスでは、このような応力に起因した接合材の水晶素子、ベース板及びリッド板からの剥がれ、又は水晶デバイスの破損等の問題が生じている。
【0003】
例えば特許文献1では、このような熱膨張係数の違いにより発生する応力に起因した接合材の剥がれ等の問題に対して対処された水晶振動子に関しての開示がある。この水晶振動子は金属材料から成る蓋とセラミックスから成るベースとが接合材により接合されて形成されており、特許文献1では、接合材の熱膨張係数が蓋及びベースの熱膨張係数の近似値もしくは同一の値とされることにより蓋とベースとの接合時に発生する応力を抑える旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−259041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし水晶素子がベース板とリッド板との間に挟まれて形成され接合材により接合される水晶デバイスでは、水晶素子のベース板及びリッド板との接合面の熱膨張係数が接合面の方向により大きく異なる場合がある。このような場合は、接合材の熱膨張係数を水晶素子、ベース板及びリッド板の熱膨張係数の近似値もしくは同一の値とすることができない。
【0006】
そこで本発明は、水晶素子の接合面の第1方向の熱膨張係数と第2方向の熱膨張係数との間の熱膨張係数を有する接合材が用いられることにより、接合材の剥がれが防がれた水晶デバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1観点の水晶デバイスは、電圧の印加により振動する励振部と励振部の周囲を囲む枠部とを有する水晶材により形成され枠部が第1方向と第1方向と交差する第2方向の辺を有する矩形形状の水晶素子と、枠部の一主面に接合され第1方向と第2方向の辺を有する矩形形状のベース板と、枠部の他主面に接合され第1方向と第2方向の辺を有する矩形形状のリッド板と、を備え、水晶素子の第1方向の熱膨張係数と第2方向の熱膨張係数との間の熱膨張係数を有する接合材が塗布される。
【0008】
第2観点の水晶デバイスは、第1観点において、水晶素子がATカット水晶材であり、ベース板及びリッド板がATカット水晶材、Zカット水晶材又はガラス材である。
【0009】
第3観点の水晶デバイスは、第1観点において、水晶素子がZカット水晶材であり、ベース及びリッドがATカット水晶材、Zカット水晶材又はガラス材である。
【0010】
第4観点の水晶デバイスは、第1観点から第3観点において、接合材がポリイミド樹脂又は融点が500度以下のガラスである。
【0011】
第5観点の水晶デバイスは、第4観点において、接合材の熱膨張係数が10.5〜13ppm/℃(常温から200℃までの範囲)である
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水晶素子の接合面の第1方向の熱膨張係数と第2方向の熱膨張係数との間の熱膨張係数を有する接合材が用いられることにより、接合材の剥がれが防がれた水晶デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】水晶デバイス100の分解斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】(a)は、+Y’軸側の面に形成される電極が示された水晶素子130の平面図である。 (b)は、−Y’軸側の面に形成される電極が示された水晶素子130の平面図である。
【図4】(a)は、+Y’軸側の面に形成される電極が示されたベース板120の平面図である。 (b)は、−Y’軸側の面に形成される電極が示されたベース板120の平面図である。
【図5】水晶材のX軸、Y軸及びZ’軸方向の熱膨張係数と温度との関係が示されたグラフである。
【図6】水晶デバイス100の作製方法が示されたフローチャートである。
【図7】水晶ウエハW130の平面図である。
【図8】(a)は、+Y’軸側の面に形成される電極が示されたベースウエハW120の平面図である。 (b)は、−Y’軸側の面に形成される電極が示されたベースウエハW120の平面図である。
【図9】リッドウエハW110の平面図である。
【図10】(a)は、水晶ウエハW130とベースウエハW120とが接合されたウエハのZ’軸方向の断面図である。 (b)は、水晶ウエハW130とベースウエハW120とが接合されたウエハのX軸方向の断面図である。 (c)は、ベースウエハW120の概略平面図である。
【図11】(a)は、水晶ウエハW130とリッドウエハW110とが接合されたウエハのZ’軸方向の断面図である。 (b)は、水晶ウエハW130とリッドウエハW110とが接合されたウエハのX軸方向の断面図である。
【図12】水晶デバイス200の水晶素子130、ベース板220及びリッド板210の結晶軸の方向の組み合わせが示された図である。
【図13】(a)は、水晶ウエハW130とベースウエハW220とが接合されたウエハのZ’軸方向の断面図である。 (b)は、水晶ウエハW130とベースウエハW220とが接合されたウエハのX軸方向の断面図である。
【図14】(a)は、水晶ウエハW130とリッドウエハW210とが接合されたウエハのZ’軸方向の断面図である。 (b)は、水晶ウエハW130とリッドウエハW210とが接合されたウエハのX軸方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明の範囲は以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0015】
(第1実施形態)
<水晶デバイス100の構成>
図1は、水晶デバイス100の分解斜視図である。水晶デバイス100は表面実装型の水晶デバイスであり、プリント基板等に実装されて使用される。水晶デバイス100は主に、リッド板110と、ベース板120と、水晶素子130とにより構成されている。リッド板110、ベース板120及び水晶素子130には例えばATカットの水晶材が用いられる。ATカットの水晶材は、主面(YZ面)が結晶軸(XYZ)のY軸に対して、X軸を中心としてZ軸からY軸方向に35度15分傾斜されている。以下の説明では、ATカットの水晶材の軸方向を基準とし、傾斜された新たな軸をY’軸及びZ’軸として用いる。すなわち、水晶デバイス100において水晶デバイス100の長辺方向をX軸方向、水晶デバイス100の高さ方向をY’軸方向、X及びY’軸方向に垂直な方向をZ’軸方向として説明する。また、水晶デバイス100では、リッド板110、ベース板120、及び水晶素子130のX軸方向、Y’軸方向、及びZ’軸方向の各結晶軸方向が揃えられて形成されている。
【0016】
水晶素子130は、所定の振動数で振動する励振部131と、励振部131を囲む枠部132と、励振部131及び枠部132を連結する一対の連結部133と、を有している。また、励振部131と枠部132との間には水晶素子130をY’軸方向に貫通する貫通溝136が形成されている。一対の連結部133は、励振部131の−X軸側の辺と励振部131の−X軸側に形成される枠部132とを連結している。励振部131の+Y’軸側及び−Y’軸側の主面には、それぞれ励振電極134が形成されている。また枠部132には、各励振電極134から引き出されている一対の引出電極135が形成されている。−Y’軸側の面に形成される励振電極134からは、−Z’軸側の連結部133を通り、枠部132の−Y’軸側の面の−X軸側の辺の−Z’軸側の角まで引出電極135が引き出されている。また、+Y’軸側の面に形成されている励振電極134からは、+Z’軸側の連結部133を通り、貫通溝136の−X軸側の+Z’軸側の側面及び+Z’軸側の枠部132を介し、枠部132の−Y’軸側の面の+X軸側の+Z’軸側の角にまで引出電極135が引き出されている。
【0017】
リッド板110は、−Y’軸側の面に、凹部111と、凹部111を囲む接合面112とが形成されている。接合面112は、水晶素子130の枠部132の+Y’軸側の面に接合材140(図2参照)を介して接合される。
【0018】
ベース板120は、+Y’軸側の面に、凹部121と、凹部121を囲む接合面122と、+Y’軸側の面の四隅に配置される電極パッド123とが形成されている。接合面122は、水晶素子130の枠部132の−Y’軸側の面に接合材140(図2参照)を介して接合される。また、ベース板120の−Y’軸側の面には一対の実装端子124が形成されている。さらに、ベース板120の側面の四隅にはキャスタレーション126が形成されており、キャスタレーション126にはキャスタレーション電極125が形成されている。キャスタレーション電極125は、電極パッド123と実装端子124とを電気的に接続している。また、−X軸側の−Z’軸側の角に形成されている電極パッド123は水晶素子130の−X軸側の−Z’軸側の角に形成されている引出電極135に電気的に接続され、+X軸側の+Z’軸側の角に形成されている電極パッド123は水晶素子130の+X軸側の+Z’軸側の角に形成される引出電極135に電気的に接続される。
【0019】
図2は、図1のA−A断面図である。水晶デバイス100は、水晶素子130の+Y’軸側にリッド板110が配置され、−Y’軸側にベース板120が配置されている。また、水晶デバイス100の内部にはリッド板110の凹部111とベース板120の凹部121とによりキャビティ150が形成されており、キャビティ150には励振部131が配置されている。キャビティ150は、リッド板110の接合面112と枠部132の+Y’軸側の面、及びベース板120の接合面122と枠部132の−Y’軸側の面とのそれぞれの間に接合材140が形成されることにより密封されている。また、枠部132に形成される引出電極135がベース板120に形成される電極パッド123に電気的に接続されることにより、励振電極134と実装端子124とが電気的に接続される。
【0020】
図3(a)は、+Y’軸側の面に形成される電極が示された水晶素子130の平面図である。水晶素子130は、励振部131と、励振部131を囲む枠部132と、励振部131と枠部132とを連結する一対の連結部133と、により構成されている。励振部131の+Y’軸側の面に形成されている励振電極134から引き出されている引出電極135は、+Z’軸側の連結部133を通り、貫通溝136の−X軸側の+Z’軸側の端の側面に形成されている側面電極137に接続されている。
【0021】
図3(b)は、−Y’軸側の面に形成される電極が示された水晶素子130の平面図である。図3(b)では、水晶素子130を+Y’軸側から−Y’軸方向に見た図として示されている。励振部131の−Y’軸側に形成されている励振電極134からは、−Z’軸側の連結部133を通り、枠部132の−Y’軸側の面の−X軸側の辺の−Z’軸側の角まで引出電極135が引き出されている。また貫通溝136に形成されている側面電極137からは、+Z’軸側の枠部132を通り枠部132の−Y’軸側の面の+X軸側の+Z’軸側の角にまで引出電極135が引き出されている。
【0022】
図4(a)は、+Y’軸側の面に形成される電極が示されたベース板120の平面図である。ベース板120の+Y’軸側の面には、凹部121及び凹部121を囲んでいる接合面122が形成されている。また、ベース板120の四隅の側面にはキャスタレーション126が形成されており、キャスタレーション126にはキャスタレーション電極125が形成されている。さらに、ベース板120の+Y’軸側の面の四隅には電極パッド123が形成されており、各電極パッド123は各キャスタレーション電極125に電気的に接続されている。
【0023】
図4(b)は、−Y’軸側の面に形成される電極が示されたベース板120の平面図である。ベース板120の−Y’軸側の面には、+X軸側及び−X軸側に一対の実装端子124が形成されており、各実装端子124はベース板120の四隅に形成されているキャスタレーション電極125に電気的に接続されている。
【0024】
<水晶材の熱膨張係数>
水晶材の結晶軸であるX軸とY軸との熱膨張係数は等しく、Z軸方向の熱膨張係数はX軸とY軸との熱膨張係数よりも小さい。そのため、水晶材の結晶軸(XYZ)のY軸に対してX軸を中心としてZ軸からY軸方向に35度15分傾斜して導かれるATカットの水晶材の軸方向であるX軸、Y’軸、Z’軸の各軸方向の熱膨張係数はそれぞれ異なっていると考えられる。以下に図5を参照して、水晶材の熱膨張係数について説明する。
【0025】
図5は、水晶材のX軸、Y軸及びZ’軸方向の熱膨張係数と温度との関係が示されたグラフである。グラフの縦軸には熱膨張係数(ppm)が示され、グラフの横軸には温度(℃)が示されている。熱膨張係数は、温度の上昇によって物体の長さが膨張する割合を1℃あたりで示したものである。グラフの黒塗りの四角形で表わされた点は、水晶材のX軸及びY軸方向の熱膨張係数を示している。また、グラフの黒塗りの三角形で表わされた点は、水晶材のZ’軸方向の熱膨張係数を示している。Z’軸方向の熱膨脹係数は、Z軸方向の熱膨張係数より大きくてX軸方向の熱膨張係数より小さく、これらの値より導くことができる。Z’軸方向の熱膨張係数は、−250℃で5.6ppmであり、温度が上昇するにしたがって熱膨張係数も上昇し、573℃で18.38ppmとなる。X軸及びY軸方向の熱膨張係数は、−250℃で8.6ppmであり、温度が上昇するにしたがって熱膨張係数も上昇し、573℃で25.15ppmとなる。
【0026】
水晶デバイス100の水晶素子130、リッド板110、及びベース板120はATカットの水晶材で形成されており、図1に示されるようにリッド板110、ベース板120、及び水晶素子130の結晶軸方向が揃えられて形成されている。またリッド板110、ベース板120、及び水晶素子130はX軸及びZ’軸を含む平面で互いに接合されているため、接合材140の剥がれ等について考える場合には水晶材のX軸及びZ’軸方向の熱膨張係数が考慮される。Z’軸方向の熱膨張係数は、30℃から200℃において約10ppmである。また図5より、30℃から200℃のX軸方向の熱膨張係数は約15ppmであることがわかる。水晶デバイス100に用いられる接合材140には、後述の水晶デバイス100の作製方法において説明される理由により、水晶素子130の短辺方向(Z’軸方向)の熱膨張係数と長辺方向(X軸方向)の熱膨張係数との間の熱膨張係数を有する接合材が用いられる。すなわち接合材140は、水晶材のZ’軸方向の熱膨張係数よりも大きくX軸方向の熱膨張係数よりも小さい10〜15ppmの熱膨張係数を有している。さらに接合材140の熱膨張係数は10.5〜13ppmの間であるものが用いられることが好ましい。また接合材140には、例えば融点が500℃以下のガラスである低融点ガラスを用いることができる。
【0027】
<水晶デバイス100の作製方法>
図6は、水晶デバイス100の作製方法が示されたフローチャートである。以下、図6のフローチャートに沿って水晶デバイス100の作製方法について説明する。
【0028】
ステップS101では、水晶ウエハW130が用意される。水晶ウエハW130には複数の水晶素子130が形成されている。以下、図7を参照して水晶ウエハW130について説明する。
【0029】
図7は、水晶ウエハW130の平面図である。水晶ウエハW130はATカットの水晶材を基材として形成されている。また、水晶ウエハW130には複数の水晶素子130が形成されている。図7では、各水晶素子130が、後述される図6のステップS106でウエハが切断される線であり二点鎖線で示されたスクライブライン151に囲まれることにより示されている。また、各水晶素子130には貫通溝136が形成されることにより励振部131、枠部132、及び連結部133が形成される。励振部131の+Y’軸側の面及び−Y’軸側の面には励振電極134が形成され、枠部132には各励振電極134から引き出された引出電極135が形成されている。
【0030】
ステップS102では、ベースウエハW120が用意される。ベースウエハW120には複数のベース板120が形成されている。以下、図8(a)及び図8(b)を参照してベースウエハW120について説明する。
【0031】
図8(a)は、+Y’軸側の面に形成される電極が示されたベースウエハW120の平面図である。ベースウエハW120はATカットの水晶材を基材とし、複数のベース板120が形成されている。また図8(a)ではベースウエハW120にスクライブライン151が記載されており、各ベース板120はスクライブライン151に囲まれて形成されている。各ベース板120の+Y’軸側の面には凹部121が形成されており、凹部121を囲むように接合面122が形成されている。また、スクライブライン151の交点には、ベースウエハW120を貫通する貫通穴127が形成されている。貫通穴127は各ベース板120のキャスタレーション126(図4(a)参照)となる。また、ベースウエハW120の+Y’軸側の面の貫通穴127の周囲には電極パッド123が形成され、貫通穴127の側面にはキャスタレーション電極125(図1参照)が形成される。
【0032】
図8(b)は、−Y’軸側の面に形成される電極が示されたベースウエハW120の平面図である。図8(b)には、+Y’軸側から見たベースウエハW120が示されており、−Y’軸側の面に形成された実装端子124が示されている。ベースウエハW120では、各ベース板120の実装端子124はZ’軸方向につながって形成されており、貫通穴127の側面に形成されるキャスタレーション電極125(図1参照)に電気的に接続される。
【0033】
ステップS103では、リッドウエハW110が用意される。リッドウエハW110には複数のリッド板110が形成されている。以下、図9を参照してリッドウエハW110について説明する。
【0034】
図9は、リッドウエハW110の平面図である。リッドウエハW110はATカット水晶材を基材とし、複数のリッド板110が形成されている。また図8ではリッドウエハW110にスクライブライン151が記載されており、各リッド板110がスクライブライン151に囲まれて形成されている。各リッド板110には−Y’軸側の面に凹部111が形成されており、凹部111を囲むように接合部112が形成されている。
【0035】
ステップS104では、水晶ウエハW130とベースウエハW120とが接合される。以下、図10(a)、図10(b)及び図10(c)を参照して水晶ウエハW130とベースウエハW120との接合について説明する。
【0036】
図10(a)は、水晶ウエハW130とベースウエハW120とが接合されたウエハのZ’軸方向の断面図である。また、図10(a)は、図7、図8(a)、図8(b)、及び図10(c)のD−D断面を含んだ断面図である。水晶ウエハW130とベースウエハW120とは枠部132の−Y’軸側の面に接合面122が重なるように位置合わせされ、接合材140を介して互いに接合される。
【0037】
この接合は、接合材140に例えば融点が380℃以下の低融点ガラスが用いられた場合には、水晶ウエハW130の枠部132の−Y’軸側の面又はベースウエハW120の接合面122に接合材140が塗布され、水晶ウエハW130とベースウエハW120とが枠部132の−Y’軸側の面に接合面122が重なるように位置合わせされ、ウエハ及び接合材140の温度が380℃以上の接合材140が溶融した状態でウエハ同士が接合されることにより行われる。ウエハは接合された後に室温まで冷却される。
【0038】
ウエハが室温まで冷却されるときに、各ウエハ及び接合材140の間には熱膨張係数の違いにより応力が発生する。水晶デバイス100に用いられる接合材140の熱膨張係数は水晶材のZ’軸方向の熱膨張係数よりも大きいため、水晶材のZ’軸方向に於いては、水晶材に比べて接合材140の収縮が大きい。そのため、接合材140の水晶素子130及びベース板120との接合面にはZ’軸方向に水晶素子130及びベース板120から引っ張られる応力である引張応力160がかかる。この引張応力160は接合材140をZ’軸方向に引き伸ばす向きに働いている。
【0039】
図10(b)は、水晶ウエハW130とベースウエハW120とが接合されたウエハのX軸方向の断面図である。また、図10(b)は、図7、図8(a)、図8(b)、及び図10(c)のE−E断面を含んだ断面図である。水晶ウエハW130とベースウエハW120とが接合され室温に冷却されるときに、各ウエハ及び接合材140の間には熱膨張係数の違いにより応力が発生する。水晶デバイス100に用いられる接合材140の熱膨張係数は水晶材のX軸方向の熱膨張係数よりも小さいため、水晶材のX軸方向に於いては、水晶材に比べて接合材140の収縮が小さい。そのため、接合材140の水晶素子130及びベース板120との接合面にはX軸方向に水晶素子130及びベース板120から圧縮される応力である圧縮応力161がかかる。この圧縮応力161は接合材140をX軸方向に圧縮する向きに働いている。
【0040】
図10(c)は、ベースウエハW120の概略平面図である。図10(c)では、ベースウエハW120の+Y’軸側の面の凹部121及び貫通穴127以外の領域に塗布された接合材140がハッチングされて示されている。この接合材140のベースウエハW120との接合面には、Z’軸方向に引張応力160がかかっており、X軸方向に圧縮応力161がかかっている。
【0041】
図6に戻って、ステップS105では、接合材140により水晶ウエハW130とリッドウエハW110とが接合される。以下、図11(a)、及び図11(b)を参照して水晶ウエハW130とリッドウエハW110との接合について説明する。
【0042】
図11(a)は、水晶ウエハW130とリッドウエハW110とが接合されたウエハのZ’軸方向の断面図である。また、図11(a)は、図7、図8(a)、図8(b)、及び図9のD−D断面を含んだ断面図である。水晶ウエハW130とリッドウエハW110とは、接合材140を介して接合される。このステップS105における接合は、ステップS104で説明された水晶ウエハW130とベースウエハW120との接合と同様である。各ウエハ及び接合材140は、ステップS104で説明されたように、ウエハ同士は接合材140を介して接合された後に室温まで冷却される。接合材140の熱膨張係数は水晶材のZ’軸方向の熱膨張係数よりも大きく、水晶材のZ’軸方向に於いては、水晶材に比べて接合材140の収縮が大きい。そのため、接合材140の水晶素子130及びリッド板110との接合面にはZ’軸方向に水晶素子130及びリッド板110から引っ張られる応力である引張応力160がかかる。この引張応力160は接合材140をZ’軸方向に引き伸ばす向きに働いている。
【0043】
図11(b)は、水晶ウエハW130とリッドウエハW110とが接合されたウエハのX軸方向の断面図である。また、図11(b)は、図7、図8(a)、図8(b)、及び図9のE−E断面を含んだ断面図である。図10(b)で説明されたように、水晶デバイス100に用いられる接合材140の熱膨張係数は水晶材のX軸方向の熱膨張係数よりも小さく、水晶材のX軸方向に於いては、水晶材に比べて接合材140の収縮が小さい。そのため、接合材140の水晶素子130及びリッド板110との接合面にはX軸方向に水晶素子130及びリッド板110から圧縮される応力である圧縮応力161がかかる。この圧縮応力161は接合材140をX軸方向に圧縮する向きに働いている。
【0044】
図6に戻って、ステップS106では、ウエハがダイシングにより切断される。ダイシングはスクライブライン151に沿ってウエハが切断されることにより、個々の水晶デバイス100が作製される。
【0045】
水晶デバイス100では、ウエハ同士の接合に水晶素子130のX軸方向の熱膨張係数とZ’軸方向の熱膨張係数との間の値の熱膨張係数を有する接合材140が用いられた。そのため、接合材140の各ウエハとの接合面のX軸方向及びZ’軸方向にそれぞれ圧縮応力161及び引張応力160が働いている。このように、水晶デバイス100では接合材140にかかる応力が圧縮応力161及び引張応力160に分けられる事により各応力の大きさが小さくなっており、特定の方向に大きな応力がかからない状態になっている。また、ガラスは引張応力には弱いが圧縮応力には強い特性がある。そして、接合材140に働く応力は単位長さの応力と形成される接合材140の長さとの積になり、水晶デバイス100の長辺に平行であるX軸方向には短辺方向であるZ’軸方向よりも強い応力が働くことが予想されるため、水晶デバイス100の長辺に平行であるX軸方向には引張応力よりも圧縮応力がかかることが望ましい。水晶デバイス100では、接合材140の熱膨張係数を水晶材のX軸方向の熱膨張係数よりも小さくすることにより接合材140のX軸方向に圧縮応力がかかるようにされている。これらのことを考慮すると、接合材140の熱膨張係数の大きさは、水晶材のX軸方向の熱膨張係数である15ppmとZ’軸方向の熱膨張係数である10ppmの間の値であることが望ましい。さらに、Z’軸方向には引張応力がかかっているため、引張応力の大きさが小さくなるように接合材140の熱膨張係数がZ’軸方向の熱膨張係数に近い値とされて引張応力の大きさが小さくされることが望ましい。また、低融点ガラスには圧縮応力がかかると水晶材との接合強度が強くなることからも、低融点ガラスの熱膨張係数は水晶材の熱膨張係数よりも小さい方が望ましい。しかし、X軸方向の熱膨張係数である15ppmとは大きく異なる熱膨張係数である10〜10.5ppm以下の低融点ガラスを使用すると、水晶材のX軸方向の熱膨張係数と低融点ガラスとの熱膨張係数の差が大きくなるため、ウエハがたわんで水晶デバイスの作製が困難になる場合がある。そのため接合材140の熱膨張係数の大きさは、X軸方向の熱膨張係数よりも引張応力が働くZ’軸方向の熱膨張係数に近い値であり、10〜10.5ppmが除かれた10.5〜13ppmであることが好ましい。
【0046】
また水晶デバイス100では、水晶素子130、ベース板120及びリッド板110の結晶軸が揃えて形成されていることにより、水晶素子130、ベース板120及びリッド板110の間の応力の発生が小さく抑えられている。そのため、水晶デバイス100の作製過程において、各ウエハ間の熱膨張係数の違いによるウエハの反り等の発生が防がれている。さらに、ベース板120及びリッド板110に同じ基材が用いられていることにより、水晶素子130とベース板120、及び水晶素子130とリッド板110との接合に用いられる接合材140に同一の熱膨張係数を有する同一の接合材を用いることができるため好ましい。
【0047】
(第2実施形態)
ベース板及びリッド板にはZカット水晶材又はガラス材が用いられても良い。Zカット水晶材又はガラス材は安価であるという利点がある。以下に、ベース板及びリッド板にZカット水晶材又はガラス材が用いられた水晶デバイスについて説明する。また以下の説明では第1実施形態と同じ部分には同じ記号を用いその説明を省略し、水晶デバイスの結晶軸の説明は水晶素子の結晶軸を用いて説明する。
【0048】
図12は、水晶デバイス200の水晶素子130、ベース板220及びリッド板210の結晶軸の方向の組み合わせが示された図である。水晶デバイス200は、Zカットの水晶材を基材としたリッド板210及びベース板220と、ATカットの水晶材を基材とした水晶素子130とにより構成されている。リッド板210及びベース板220はZカットの水晶材を基材としていること以外の構成はそれぞれリッド板110及びベース板120と同様である。Zカットの水晶材はZ軸方向をウエハの法線方向として切り出されているため、水晶デバイス200は、水晶素子130のX−Z’軸平面と、ベース板220及びリッド板210のX−Y軸平面とが接合されることにより構成される。
【0049】
図12に示される第1例EX1は、水晶素子130のX軸、Y’軸、Z’軸と、リッド板210及びベース板220のY軸、Z軸、X軸とがそれぞれ平行である組み合わせの例である。
【0050】
第2例EX2は、水晶素子130のX軸、Y’軸、Z’軸と、リッド板210及びベース板220のX軸、Z軸、Y軸とがそれぞれ平行である組み合わせの例である。
【0051】
第3例EX3は、水晶素子130のX軸、Y’軸、Z’軸と、リッド板210のX軸、Z軸、Y軸とがそれぞれ平行であり、さらに、水晶素子130のX軸、Y’軸、Z’軸と、ベース板220のY軸、Z軸、X軸とがそれぞれ平行である組み合わせの例である。
【0052】
第4例EX4は、水晶素子130のX軸、Y’軸、Z’軸と、リッド板210のY軸、Z軸、X軸とがそれぞれ平行であり、さらに、水晶素子130のX軸、Y’軸、Z’軸と、ベース板220のX軸、Z軸、Y軸方向とがそれぞれ平行である組み合わせの例である。
【0053】
図12に示された4つの例では、水晶素子130のX軸及びZ’軸が、リッド板210及びベース板220のX軸又はY軸に平行になっている。水晶材のX軸方向の熱膨張係数はZ’軸方向の熱膨張係数よりも大きく、図5に示されるように水晶材のX軸及びY軸方向の熱膨張係数は同じである。すなわち、水晶デバイス200では、Z’軸方向で水晶素子130とリッド板210及びベース板220との熱膨張係数が異なることになる。また、X軸とY軸との熱膨張係数が同じであるため、リッド板210及びベース板220の軸の方向は第1例EX1から第4例EX4に示されるような様々な向きに形成されることができる。
【0054】
水晶デバイス200に於いても、図6に示されたフローチャートと同様の方法により作製することができる。特にステップS104及びステップS105の接合材140が用いられる工程について、図12の第1例EX1の構成を基にして、図13及び図14を用いることにより以下に説明する。
【0055】
図13(a)は、水晶ウエハW130とベースウエハW220とが接合されたウエハのZ’軸方向の断面図である。ベースウエハW220は、複数のベース板220が形成されておりZカットの水晶材が基材とされているウエハである。図13(a)では、図6のステップS104における接合材140により水晶ウエハとベースウエハとが接合される工程が説明されており、また、図13(a)は、図7のD−D断面を含んだ断面図である。水晶ウエハW130とベースウエハW220とは枠部132の−Y’軸側の面と接合面122とが重なり、水晶ウエハW130のZ’軸とベースウエハW220のX軸とが平行になるように位置合わせされ、接合材140を介して互いに接合される。
【0056】
図10(a)において説明されたように、図13(a)においても、ウエハの冷却時に、水晶デバイス200のZ’軸方向では、接合材140の水晶ウエハW130との接合面に引張応力160がかかっている。また、水晶デバイス200のZ’軸方向はベースウエハW220のX軸方向であるため、接合材140のベースウエハW220との接合面には圧縮応力161がかかる。
【0057】
図13(b)は、水晶ウエハW130とベースウエハW220とが接合されたウエハのX軸方向の断面図である。図13(b)は、図7のE−E断面を含んだ断面図である。図10(b)において説明されたように、ウエハの冷却時に、水晶デバイス200のX軸方向では、接合材140の水晶ウエハW130との接合面に圧縮応力161がかかる。また、水晶材のX軸方向とY軸方向との熱膨張係数は等しいため、接合材140のベースウエハW220との接合面にも接合材140の水晶ウエハW130との接合面に大きさの等しい圧縮応力161がかかる。
【0058】
図14(a)は、水晶ウエハW130とリッドウエハW210とが接合されたウエハのZ’軸方向の断面図である。リッドウエハW210は、複数のリッド板210が形成されておりZカットの水晶材が基材とされているウエハである。また、図14(a)は、図7のD−D断面を含んだ断面図である。図14(a)では図6のステップS105における接合材140により水晶ウエハとリッドウエハとが接合される工程が説明される。水晶ウエハW130とリッドウエハW210とは、接合材140を介して接合される。このステップS105における接合の方法は、図10(a)で説明されたステップS104の水晶ウエハW130とベースウエハW120との接合と同様である。接合材140の熱膨張係数は水晶材のZ’軸方向の熱膨張係数よりも大きいため、水晶材のZ’軸方向に於いては水晶材に比べて接合材140の収縮が大きい。そのため、接合材140の水晶素子130との接合面ではZ’軸方向に水晶素子130から引っ張られる応力である引張応力160がかかる。この引張応力160は接合材140をZ’軸方向に引き伸ばす向きに働いている。また、接合材140の熱膨張係数は水晶材のX軸方向の熱膨張係数よりも小さいため、水晶材のX軸方向に於いては水晶材に比べて接合材140の収縮が小さい。そのため、接合材140のリッド板210との接合面ではX方向にリッド板210から圧縮される応力である圧縮応力161がかかる。この圧縮応力161は接合材140をX軸方向に圧縮する向きに働いている。
【0059】
図14(b)は、水晶ウエハW130とリッドウエハW210とが接合されたウエハのX軸方向の断面図である。また、図14(b)は、図7のE−E断面を含んだ断面図である。図13(b)で説明されたように、水晶デバイス200に用いられる接合材140の熱膨張係数は水晶材のX軸及びY軸方向の熱膨張係数よりも小さいため、水晶材のX軸及びY軸方向に於いては水晶材に比べて接合材140の収縮が小さい。そのため、接合材140の水晶素子130及びリッド板210との接合面には水晶デバイス200のX軸方向に水晶素子130及びリッド板210から圧縮される応力である圧縮応力161がかかる。この圧縮応力161は接合材140を水晶デバイス200のX軸方向に圧縮する向きに働いている。
【0060】
図13(a)、図13(b)、図14(a)、及び図14(b)では、図12の第1例EX1の例を示したが、第2例EX2から第4例EX4のいずれであっても良い。また、ベース板及びリッド板は、ガラス材で形成されていても良い。このときガラス材は、水晶素子のX軸方向の熱膨張係数とZ’軸方向の熱膨張係数との間の熱膨張係数を有していることが望ましい。
【0061】
以上、本発明の最適な実施形態について詳細に説明したが、当業者に明らかなように、本発明はその技術的範囲内において実施形態に様々な変更・変形を加えて実施することができる。
【0062】
例えば、上記の実施形態では、接合材として低融点ガラスを使用した場合について説明したが、接合材にはポリイミド樹脂等の樹脂が用いられても良い。この場合も、上記実施形態と同様に、ポリイミド樹脂の熱膨張係数は、水晶素子の長辺方向の熱膨張係数と短辺方向の熱膨張係数との間の値を取る樹脂が用いられる事が望ましい。水晶デバイスには、水晶デバイスをプリント基板に実装する場合等に熱がかかることがある。このような場合に、ポリイミド樹脂の熱膨張係数が水晶素子の長辺方向の熱膨張係数と短辺方向の熱膨張係数との間の値に取られることにより、接合材の剥がれ等によるキャビティの密封の破れ等を防ぐことができる。
【0063】
また、水晶素子にATカットの水晶材が用いられた場合を示したが、水晶素子にはZカットの水晶材又はBTカットの水晶材などが用いられても良い。さらに水晶素子は水晶材のみならず、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウムあるいは圧電セラミックを含む圧電材が用いられても良い。
【符号の説明】
【0064】
100、200 … 水晶デバイス
110、210 … リッド板
111、121 … 凹部
112、122 … 接合面
120、220 … ベース板
123 … 電極パッド
124 … 実装端子
125 … キャスタレーション電極
126 … キャスタレーション
127 … 貫通穴
130 … 水晶素子
131 … 励振部
132 … 枠部
133 … 連結部
134 … 励振電極
135 … 引出電極
136 … 貫通溝
137 … 側面電極
140 … 接合材
150 … キャビティ
151 … スクライブライン
160 … 引張応力
161 … 圧縮応力
W110、W210 … リッドウエハ
W120、W220 … ベースウエハ
W130 … 水晶ウエハ
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合材を介してベース板、リッド板及び水晶素子が接合された水晶デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
所定の振動数で振動する励振部及び励振部を囲む枠部を有する水晶素子と、水晶素子の表裏面に配置されるベース板及びリッド板とを有し、水晶素子、ベース板及びリッド板が互いに接合材を介して接合される水晶デバイスが知られている。このような水晶デバイスでは、接合材と水晶素子、ベース板及びリッド板との熱膨張係数の違いによって水晶デバイスの作製時に接合材等に応力がかかる。水晶デバイスでは、このような応力に起因した接合材の水晶素子、ベース板及びリッド板からの剥がれ、又は水晶デバイスの破損等の問題が生じている。
【0003】
例えば特許文献1では、このような熱膨張係数の違いにより発生する応力に起因した接合材の剥がれ等の問題に対して対処された水晶振動子に関しての開示がある。この水晶振動子は金属材料から成る蓋とセラミックスから成るベースとが接合材により接合されて形成されており、特許文献1では、接合材の熱膨張係数が蓋及びベースの熱膨張係数の近似値もしくは同一の値とされることにより蓋とベースとの接合時に発生する応力を抑える旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−259041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし水晶素子がベース板とリッド板との間に挟まれて形成され接合材により接合される水晶デバイスでは、水晶素子のベース板及びリッド板との接合面の熱膨張係数が接合面の方向により大きく異なる場合がある。このような場合は、接合材の熱膨張係数を水晶素子、ベース板及びリッド板の熱膨張係数の近似値もしくは同一の値とすることができない。
【0006】
そこで本発明は、水晶素子の接合面の第1方向の熱膨張係数と第2方向の熱膨張係数との間の熱膨張係数を有する接合材が用いられることにより、接合材の剥がれが防がれた水晶デバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1観点の水晶デバイスは、電圧の印加により振動する励振部と励振部の周囲を囲む枠部とを有する水晶材により形成され枠部が第1方向と第1方向と交差する第2方向の辺を有する矩形形状の水晶素子と、枠部の一主面に接合され第1方向と第2方向の辺を有する矩形形状のベース板と、枠部の他主面に接合され第1方向と第2方向の辺を有する矩形形状のリッド板と、を備え、水晶素子の第1方向の熱膨張係数と第2方向の熱膨張係数との間の熱膨張係数を有する接合材が塗布される。
【0008】
第2観点の水晶デバイスは、第1観点において、水晶素子がATカット水晶材であり、ベース板及びリッド板がATカット水晶材、Zカット水晶材又はガラス材である。
【0009】
第3観点の水晶デバイスは、第1観点において、水晶素子がZカット水晶材であり、ベース及びリッドがATカット水晶材、Zカット水晶材又はガラス材である。
【0010】
第4観点の水晶デバイスは、第1観点から第3観点において、接合材がポリイミド樹脂又は融点が500度以下のガラスである。
【0011】
第5観点の水晶デバイスは、第4観点において、接合材の熱膨張係数が10.5〜13ppm/℃(常温から200℃までの範囲)である
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水晶素子の接合面の第1方向の熱膨張係数と第2方向の熱膨張係数との間の熱膨張係数を有する接合材が用いられることにより、接合材の剥がれが防がれた水晶デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】水晶デバイス100の分解斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】(a)は、+Y’軸側の面に形成される電極が示された水晶素子130の平面図である。 (b)は、−Y’軸側の面に形成される電極が示された水晶素子130の平面図である。
【図4】(a)は、+Y’軸側の面に形成される電極が示されたベース板120の平面図である。 (b)は、−Y’軸側の面に形成される電極が示されたベース板120の平面図である。
【図5】水晶材のX軸、Y軸及びZ’軸方向の熱膨張係数と温度との関係が示されたグラフである。
【図6】水晶デバイス100の作製方法が示されたフローチャートである。
【図7】水晶ウエハW130の平面図である。
【図8】(a)は、+Y’軸側の面に形成される電極が示されたベースウエハW120の平面図である。 (b)は、−Y’軸側の面に形成される電極が示されたベースウエハW120の平面図である。
【図9】リッドウエハW110の平面図である。
【図10】(a)は、水晶ウエハW130とベースウエハW120とが接合されたウエハのZ’軸方向の断面図である。 (b)は、水晶ウエハW130とベースウエハW120とが接合されたウエハのX軸方向の断面図である。 (c)は、ベースウエハW120の概略平面図である。
【図11】(a)は、水晶ウエハW130とリッドウエハW110とが接合されたウエハのZ’軸方向の断面図である。 (b)は、水晶ウエハW130とリッドウエハW110とが接合されたウエハのX軸方向の断面図である。
【図12】水晶デバイス200の水晶素子130、ベース板220及びリッド板210の結晶軸の方向の組み合わせが示された図である。
【図13】(a)は、水晶ウエハW130とベースウエハW220とが接合されたウエハのZ’軸方向の断面図である。 (b)は、水晶ウエハW130とベースウエハW220とが接合されたウエハのX軸方向の断面図である。
【図14】(a)は、水晶ウエハW130とリッドウエハW210とが接合されたウエハのZ’軸方向の断面図である。 (b)は、水晶ウエハW130とリッドウエハW210とが接合されたウエハのX軸方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明の範囲は以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0015】
(第1実施形態)
<水晶デバイス100の構成>
図1は、水晶デバイス100の分解斜視図である。水晶デバイス100は表面実装型の水晶デバイスであり、プリント基板等に実装されて使用される。水晶デバイス100は主に、リッド板110と、ベース板120と、水晶素子130とにより構成されている。リッド板110、ベース板120及び水晶素子130には例えばATカットの水晶材が用いられる。ATカットの水晶材は、主面(YZ面)が結晶軸(XYZ)のY軸に対して、X軸を中心としてZ軸からY軸方向に35度15分傾斜されている。以下の説明では、ATカットの水晶材の軸方向を基準とし、傾斜された新たな軸をY’軸及びZ’軸として用いる。すなわち、水晶デバイス100において水晶デバイス100の長辺方向をX軸方向、水晶デバイス100の高さ方向をY’軸方向、X及びY’軸方向に垂直な方向をZ’軸方向として説明する。また、水晶デバイス100では、リッド板110、ベース板120、及び水晶素子130のX軸方向、Y’軸方向、及びZ’軸方向の各結晶軸方向が揃えられて形成されている。
【0016】
水晶素子130は、所定の振動数で振動する励振部131と、励振部131を囲む枠部132と、励振部131及び枠部132を連結する一対の連結部133と、を有している。また、励振部131と枠部132との間には水晶素子130をY’軸方向に貫通する貫通溝136が形成されている。一対の連結部133は、励振部131の−X軸側の辺と励振部131の−X軸側に形成される枠部132とを連結している。励振部131の+Y’軸側及び−Y’軸側の主面には、それぞれ励振電極134が形成されている。また枠部132には、各励振電極134から引き出されている一対の引出電極135が形成されている。−Y’軸側の面に形成される励振電極134からは、−Z’軸側の連結部133を通り、枠部132の−Y’軸側の面の−X軸側の辺の−Z’軸側の角まで引出電極135が引き出されている。また、+Y’軸側の面に形成されている励振電極134からは、+Z’軸側の連結部133を通り、貫通溝136の−X軸側の+Z’軸側の側面及び+Z’軸側の枠部132を介し、枠部132の−Y’軸側の面の+X軸側の+Z’軸側の角にまで引出電極135が引き出されている。
【0017】
リッド板110は、−Y’軸側の面に、凹部111と、凹部111を囲む接合面112とが形成されている。接合面112は、水晶素子130の枠部132の+Y’軸側の面に接合材140(図2参照)を介して接合される。
【0018】
ベース板120は、+Y’軸側の面に、凹部121と、凹部121を囲む接合面122と、+Y’軸側の面の四隅に配置される電極パッド123とが形成されている。接合面122は、水晶素子130の枠部132の−Y’軸側の面に接合材140(図2参照)を介して接合される。また、ベース板120の−Y’軸側の面には一対の実装端子124が形成されている。さらに、ベース板120の側面の四隅にはキャスタレーション126が形成されており、キャスタレーション126にはキャスタレーション電極125が形成されている。キャスタレーション電極125は、電極パッド123と実装端子124とを電気的に接続している。また、−X軸側の−Z’軸側の角に形成されている電極パッド123は水晶素子130の−X軸側の−Z’軸側の角に形成されている引出電極135に電気的に接続され、+X軸側の+Z’軸側の角に形成されている電極パッド123は水晶素子130の+X軸側の+Z’軸側の角に形成される引出電極135に電気的に接続される。
【0019】
図2は、図1のA−A断面図である。水晶デバイス100は、水晶素子130の+Y’軸側にリッド板110が配置され、−Y’軸側にベース板120が配置されている。また、水晶デバイス100の内部にはリッド板110の凹部111とベース板120の凹部121とによりキャビティ150が形成されており、キャビティ150には励振部131が配置されている。キャビティ150は、リッド板110の接合面112と枠部132の+Y’軸側の面、及びベース板120の接合面122と枠部132の−Y’軸側の面とのそれぞれの間に接合材140が形成されることにより密封されている。また、枠部132に形成される引出電極135がベース板120に形成される電極パッド123に電気的に接続されることにより、励振電極134と実装端子124とが電気的に接続される。
【0020】
図3(a)は、+Y’軸側の面に形成される電極が示された水晶素子130の平面図である。水晶素子130は、励振部131と、励振部131を囲む枠部132と、励振部131と枠部132とを連結する一対の連結部133と、により構成されている。励振部131の+Y’軸側の面に形成されている励振電極134から引き出されている引出電極135は、+Z’軸側の連結部133を通り、貫通溝136の−X軸側の+Z’軸側の端の側面に形成されている側面電極137に接続されている。
【0021】
図3(b)は、−Y’軸側の面に形成される電極が示された水晶素子130の平面図である。図3(b)では、水晶素子130を+Y’軸側から−Y’軸方向に見た図として示されている。励振部131の−Y’軸側に形成されている励振電極134からは、−Z’軸側の連結部133を通り、枠部132の−Y’軸側の面の−X軸側の辺の−Z’軸側の角まで引出電極135が引き出されている。また貫通溝136に形成されている側面電極137からは、+Z’軸側の枠部132を通り枠部132の−Y’軸側の面の+X軸側の+Z’軸側の角にまで引出電極135が引き出されている。
【0022】
図4(a)は、+Y’軸側の面に形成される電極が示されたベース板120の平面図である。ベース板120の+Y’軸側の面には、凹部121及び凹部121を囲んでいる接合面122が形成されている。また、ベース板120の四隅の側面にはキャスタレーション126が形成されており、キャスタレーション126にはキャスタレーション電極125が形成されている。さらに、ベース板120の+Y’軸側の面の四隅には電極パッド123が形成されており、各電極パッド123は各キャスタレーション電極125に電気的に接続されている。
【0023】
図4(b)は、−Y’軸側の面に形成される電極が示されたベース板120の平面図である。ベース板120の−Y’軸側の面には、+X軸側及び−X軸側に一対の実装端子124が形成されており、各実装端子124はベース板120の四隅に形成されているキャスタレーション電極125に電気的に接続されている。
【0024】
<水晶材の熱膨張係数>
水晶材の結晶軸であるX軸とY軸との熱膨張係数は等しく、Z軸方向の熱膨張係数はX軸とY軸との熱膨張係数よりも小さい。そのため、水晶材の結晶軸(XYZ)のY軸に対してX軸を中心としてZ軸からY軸方向に35度15分傾斜して導かれるATカットの水晶材の軸方向であるX軸、Y’軸、Z’軸の各軸方向の熱膨張係数はそれぞれ異なっていると考えられる。以下に図5を参照して、水晶材の熱膨張係数について説明する。
【0025】
図5は、水晶材のX軸、Y軸及びZ’軸方向の熱膨張係数と温度との関係が示されたグラフである。グラフの縦軸には熱膨張係数(ppm)が示され、グラフの横軸には温度(℃)が示されている。熱膨張係数は、温度の上昇によって物体の長さが膨張する割合を1℃あたりで示したものである。グラフの黒塗りの四角形で表わされた点は、水晶材のX軸及びY軸方向の熱膨張係数を示している。また、グラフの黒塗りの三角形で表わされた点は、水晶材のZ’軸方向の熱膨張係数を示している。Z’軸方向の熱膨脹係数は、Z軸方向の熱膨張係数より大きくてX軸方向の熱膨張係数より小さく、これらの値より導くことができる。Z’軸方向の熱膨張係数は、−250℃で5.6ppmであり、温度が上昇するにしたがって熱膨張係数も上昇し、573℃で18.38ppmとなる。X軸及びY軸方向の熱膨張係数は、−250℃で8.6ppmであり、温度が上昇するにしたがって熱膨張係数も上昇し、573℃で25.15ppmとなる。
【0026】
水晶デバイス100の水晶素子130、リッド板110、及びベース板120はATカットの水晶材で形成されており、図1に示されるようにリッド板110、ベース板120、及び水晶素子130の結晶軸方向が揃えられて形成されている。またリッド板110、ベース板120、及び水晶素子130はX軸及びZ’軸を含む平面で互いに接合されているため、接合材140の剥がれ等について考える場合には水晶材のX軸及びZ’軸方向の熱膨張係数が考慮される。Z’軸方向の熱膨張係数は、30℃から200℃において約10ppmである。また図5より、30℃から200℃のX軸方向の熱膨張係数は約15ppmであることがわかる。水晶デバイス100に用いられる接合材140には、後述の水晶デバイス100の作製方法において説明される理由により、水晶素子130の短辺方向(Z’軸方向)の熱膨張係数と長辺方向(X軸方向)の熱膨張係数との間の熱膨張係数を有する接合材が用いられる。すなわち接合材140は、水晶材のZ’軸方向の熱膨張係数よりも大きくX軸方向の熱膨張係数よりも小さい10〜15ppmの熱膨張係数を有している。さらに接合材140の熱膨張係数は10.5〜13ppmの間であるものが用いられることが好ましい。また接合材140には、例えば融点が500℃以下のガラスである低融点ガラスを用いることができる。
【0027】
<水晶デバイス100の作製方法>
図6は、水晶デバイス100の作製方法が示されたフローチャートである。以下、図6のフローチャートに沿って水晶デバイス100の作製方法について説明する。
【0028】
ステップS101では、水晶ウエハW130が用意される。水晶ウエハW130には複数の水晶素子130が形成されている。以下、図7を参照して水晶ウエハW130について説明する。
【0029】
図7は、水晶ウエハW130の平面図である。水晶ウエハW130はATカットの水晶材を基材として形成されている。また、水晶ウエハW130には複数の水晶素子130が形成されている。図7では、各水晶素子130が、後述される図6のステップS106でウエハが切断される線であり二点鎖線で示されたスクライブライン151に囲まれることにより示されている。また、各水晶素子130には貫通溝136が形成されることにより励振部131、枠部132、及び連結部133が形成される。励振部131の+Y’軸側の面及び−Y’軸側の面には励振電極134が形成され、枠部132には各励振電極134から引き出された引出電極135が形成されている。
【0030】
ステップS102では、ベースウエハW120が用意される。ベースウエハW120には複数のベース板120が形成されている。以下、図8(a)及び図8(b)を参照してベースウエハW120について説明する。
【0031】
図8(a)は、+Y’軸側の面に形成される電極が示されたベースウエハW120の平面図である。ベースウエハW120はATカットの水晶材を基材とし、複数のベース板120が形成されている。また図8(a)ではベースウエハW120にスクライブライン151が記載されており、各ベース板120はスクライブライン151に囲まれて形成されている。各ベース板120の+Y’軸側の面には凹部121が形成されており、凹部121を囲むように接合面122が形成されている。また、スクライブライン151の交点には、ベースウエハW120を貫通する貫通穴127が形成されている。貫通穴127は各ベース板120のキャスタレーション126(図4(a)参照)となる。また、ベースウエハW120の+Y’軸側の面の貫通穴127の周囲には電極パッド123が形成され、貫通穴127の側面にはキャスタレーション電極125(図1参照)が形成される。
【0032】
図8(b)は、−Y’軸側の面に形成される電極が示されたベースウエハW120の平面図である。図8(b)には、+Y’軸側から見たベースウエハW120が示されており、−Y’軸側の面に形成された実装端子124が示されている。ベースウエハW120では、各ベース板120の実装端子124はZ’軸方向につながって形成されており、貫通穴127の側面に形成されるキャスタレーション電極125(図1参照)に電気的に接続される。
【0033】
ステップS103では、リッドウエハW110が用意される。リッドウエハW110には複数のリッド板110が形成されている。以下、図9を参照してリッドウエハW110について説明する。
【0034】
図9は、リッドウエハW110の平面図である。リッドウエハW110はATカット水晶材を基材とし、複数のリッド板110が形成されている。また図8ではリッドウエハW110にスクライブライン151が記載されており、各リッド板110がスクライブライン151に囲まれて形成されている。各リッド板110には−Y’軸側の面に凹部111が形成されており、凹部111を囲むように接合部112が形成されている。
【0035】
ステップS104では、水晶ウエハW130とベースウエハW120とが接合される。以下、図10(a)、図10(b)及び図10(c)を参照して水晶ウエハW130とベースウエハW120との接合について説明する。
【0036】
図10(a)は、水晶ウエハW130とベースウエハW120とが接合されたウエハのZ’軸方向の断面図である。また、図10(a)は、図7、図8(a)、図8(b)、及び図10(c)のD−D断面を含んだ断面図である。水晶ウエハW130とベースウエハW120とは枠部132の−Y’軸側の面に接合面122が重なるように位置合わせされ、接合材140を介して互いに接合される。
【0037】
この接合は、接合材140に例えば融点が380℃以下の低融点ガラスが用いられた場合には、水晶ウエハW130の枠部132の−Y’軸側の面又はベースウエハW120の接合面122に接合材140が塗布され、水晶ウエハW130とベースウエハW120とが枠部132の−Y’軸側の面に接合面122が重なるように位置合わせされ、ウエハ及び接合材140の温度が380℃以上の接合材140が溶融した状態でウエハ同士が接合されることにより行われる。ウエハは接合された後に室温まで冷却される。
【0038】
ウエハが室温まで冷却されるときに、各ウエハ及び接合材140の間には熱膨張係数の違いにより応力が発生する。水晶デバイス100に用いられる接合材140の熱膨張係数は水晶材のZ’軸方向の熱膨張係数よりも大きいため、水晶材のZ’軸方向に於いては、水晶材に比べて接合材140の収縮が大きい。そのため、接合材140の水晶素子130及びベース板120との接合面にはZ’軸方向に水晶素子130及びベース板120から引っ張られる応力である引張応力160がかかる。この引張応力160は接合材140をZ’軸方向に引き伸ばす向きに働いている。
【0039】
図10(b)は、水晶ウエハW130とベースウエハW120とが接合されたウエハのX軸方向の断面図である。また、図10(b)は、図7、図8(a)、図8(b)、及び図10(c)のE−E断面を含んだ断面図である。水晶ウエハW130とベースウエハW120とが接合され室温に冷却されるときに、各ウエハ及び接合材140の間には熱膨張係数の違いにより応力が発生する。水晶デバイス100に用いられる接合材140の熱膨張係数は水晶材のX軸方向の熱膨張係数よりも小さいため、水晶材のX軸方向に於いては、水晶材に比べて接合材140の収縮が小さい。そのため、接合材140の水晶素子130及びベース板120との接合面にはX軸方向に水晶素子130及びベース板120から圧縮される応力である圧縮応力161がかかる。この圧縮応力161は接合材140をX軸方向に圧縮する向きに働いている。
【0040】
図10(c)は、ベースウエハW120の概略平面図である。図10(c)では、ベースウエハW120の+Y’軸側の面の凹部121及び貫通穴127以外の領域に塗布された接合材140がハッチングされて示されている。この接合材140のベースウエハW120との接合面には、Z’軸方向に引張応力160がかかっており、X軸方向に圧縮応力161がかかっている。
【0041】
図6に戻って、ステップS105では、接合材140により水晶ウエハW130とリッドウエハW110とが接合される。以下、図11(a)、及び図11(b)を参照して水晶ウエハW130とリッドウエハW110との接合について説明する。
【0042】
図11(a)は、水晶ウエハW130とリッドウエハW110とが接合されたウエハのZ’軸方向の断面図である。また、図11(a)は、図7、図8(a)、図8(b)、及び図9のD−D断面を含んだ断面図である。水晶ウエハW130とリッドウエハW110とは、接合材140を介して接合される。このステップS105における接合は、ステップS104で説明された水晶ウエハW130とベースウエハW120との接合と同様である。各ウエハ及び接合材140は、ステップS104で説明されたように、ウエハ同士は接合材140を介して接合された後に室温まで冷却される。接合材140の熱膨張係数は水晶材のZ’軸方向の熱膨張係数よりも大きく、水晶材のZ’軸方向に於いては、水晶材に比べて接合材140の収縮が大きい。そのため、接合材140の水晶素子130及びリッド板110との接合面にはZ’軸方向に水晶素子130及びリッド板110から引っ張られる応力である引張応力160がかかる。この引張応力160は接合材140をZ’軸方向に引き伸ばす向きに働いている。
【0043】
図11(b)は、水晶ウエハW130とリッドウエハW110とが接合されたウエハのX軸方向の断面図である。また、図11(b)は、図7、図8(a)、図8(b)、及び図9のE−E断面を含んだ断面図である。図10(b)で説明されたように、水晶デバイス100に用いられる接合材140の熱膨張係数は水晶材のX軸方向の熱膨張係数よりも小さく、水晶材のX軸方向に於いては、水晶材に比べて接合材140の収縮が小さい。そのため、接合材140の水晶素子130及びリッド板110との接合面にはX軸方向に水晶素子130及びリッド板110から圧縮される応力である圧縮応力161がかかる。この圧縮応力161は接合材140をX軸方向に圧縮する向きに働いている。
【0044】
図6に戻って、ステップS106では、ウエハがダイシングにより切断される。ダイシングはスクライブライン151に沿ってウエハが切断されることにより、個々の水晶デバイス100が作製される。
【0045】
水晶デバイス100では、ウエハ同士の接合に水晶素子130のX軸方向の熱膨張係数とZ’軸方向の熱膨張係数との間の値の熱膨張係数を有する接合材140が用いられた。そのため、接合材140の各ウエハとの接合面のX軸方向及びZ’軸方向にそれぞれ圧縮応力161及び引張応力160が働いている。このように、水晶デバイス100では接合材140にかかる応力が圧縮応力161及び引張応力160に分けられる事により各応力の大きさが小さくなっており、特定の方向に大きな応力がかからない状態になっている。また、ガラスは引張応力には弱いが圧縮応力には強い特性がある。そして、接合材140に働く応力は単位長さの応力と形成される接合材140の長さとの積になり、水晶デバイス100の長辺に平行であるX軸方向には短辺方向であるZ’軸方向よりも強い応力が働くことが予想されるため、水晶デバイス100の長辺に平行であるX軸方向には引張応力よりも圧縮応力がかかることが望ましい。水晶デバイス100では、接合材140の熱膨張係数を水晶材のX軸方向の熱膨張係数よりも小さくすることにより接合材140のX軸方向に圧縮応力がかかるようにされている。これらのことを考慮すると、接合材140の熱膨張係数の大きさは、水晶材のX軸方向の熱膨張係数である15ppmとZ’軸方向の熱膨張係数である10ppmの間の値であることが望ましい。さらに、Z’軸方向には引張応力がかかっているため、引張応力の大きさが小さくなるように接合材140の熱膨張係数がZ’軸方向の熱膨張係数に近い値とされて引張応力の大きさが小さくされることが望ましい。また、低融点ガラスには圧縮応力がかかると水晶材との接合強度が強くなることからも、低融点ガラスの熱膨張係数は水晶材の熱膨張係数よりも小さい方が望ましい。しかし、X軸方向の熱膨張係数である15ppmとは大きく異なる熱膨張係数である10〜10.5ppm以下の低融点ガラスを使用すると、水晶材のX軸方向の熱膨張係数と低融点ガラスとの熱膨張係数の差が大きくなるため、ウエハがたわんで水晶デバイスの作製が困難になる場合がある。そのため接合材140の熱膨張係数の大きさは、X軸方向の熱膨張係数よりも引張応力が働くZ’軸方向の熱膨張係数に近い値であり、10〜10.5ppmが除かれた10.5〜13ppmであることが好ましい。
【0046】
また水晶デバイス100では、水晶素子130、ベース板120及びリッド板110の結晶軸が揃えて形成されていることにより、水晶素子130、ベース板120及びリッド板110の間の応力の発生が小さく抑えられている。そのため、水晶デバイス100の作製過程において、各ウエハ間の熱膨張係数の違いによるウエハの反り等の発生が防がれている。さらに、ベース板120及びリッド板110に同じ基材が用いられていることにより、水晶素子130とベース板120、及び水晶素子130とリッド板110との接合に用いられる接合材140に同一の熱膨張係数を有する同一の接合材を用いることができるため好ましい。
【0047】
(第2実施形態)
ベース板及びリッド板にはZカット水晶材又はガラス材が用いられても良い。Zカット水晶材又はガラス材は安価であるという利点がある。以下に、ベース板及びリッド板にZカット水晶材又はガラス材が用いられた水晶デバイスについて説明する。また以下の説明では第1実施形態と同じ部分には同じ記号を用いその説明を省略し、水晶デバイスの結晶軸の説明は水晶素子の結晶軸を用いて説明する。
【0048】
図12は、水晶デバイス200の水晶素子130、ベース板220及びリッド板210の結晶軸の方向の組み合わせが示された図である。水晶デバイス200は、Zカットの水晶材を基材としたリッド板210及びベース板220と、ATカットの水晶材を基材とした水晶素子130とにより構成されている。リッド板210及びベース板220はZカットの水晶材を基材としていること以外の構成はそれぞれリッド板110及びベース板120と同様である。Zカットの水晶材はZ軸方向をウエハの法線方向として切り出されているため、水晶デバイス200は、水晶素子130のX−Z’軸平面と、ベース板220及びリッド板210のX−Y軸平面とが接合されることにより構成される。
【0049】
図12に示される第1例EX1は、水晶素子130のX軸、Y’軸、Z’軸と、リッド板210及びベース板220のY軸、Z軸、X軸とがそれぞれ平行である組み合わせの例である。
【0050】
第2例EX2は、水晶素子130のX軸、Y’軸、Z’軸と、リッド板210及びベース板220のX軸、Z軸、Y軸とがそれぞれ平行である組み合わせの例である。
【0051】
第3例EX3は、水晶素子130のX軸、Y’軸、Z’軸と、リッド板210のX軸、Z軸、Y軸とがそれぞれ平行であり、さらに、水晶素子130のX軸、Y’軸、Z’軸と、ベース板220のY軸、Z軸、X軸とがそれぞれ平行である組み合わせの例である。
【0052】
第4例EX4は、水晶素子130のX軸、Y’軸、Z’軸と、リッド板210のY軸、Z軸、X軸とがそれぞれ平行であり、さらに、水晶素子130のX軸、Y’軸、Z’軸と、ベース板220のX軸、Z軸、Y軸方向とがそれぞれ平行である組み合わせの例である。
【0053】
図12に示された4つの例では、水晶素子130のX軸及びZ’軸が、リッド板210及びベース板220のX軸又はY軸に平行になっている。水晶材のX軸方向の熱膨張係数はZ’軸方向の熱膨張係数よりも大きく、図5に示されるように水晶材のX軸及びY軸方向の熱膨張係数は同じである。すなわち、水晶デバイス200では、Z’軸方向で水晶素子130とリッド板210及びベース板220との熱膨張係数が異なることになる。また、X軸とY軸との熱膨張係数が同じであるため、リッド板210及びベース板220の軸の方向は第1例EX1から第4例EX4に示されるような様々な向きに形成されることができる。
【0054】
水晶デバイス200に於いても、図6に示されたフローチャートと同様の方法により作製することができる。特にステップS104及びステップS105の接合材140が用いられる工程について、図12の第1例EX1の構成を基にして、図13及び図14を用いることにより以下に説明する。
【0055】
図13(a)は、水晶ウエハW130とベースウエハW220とが接合されたウエハのZ’軸方向の断面図である。ベースウエハW220は、複数のベース板220が形成されておりZカットの水晶材が基材とされているウエハである。図13(a)では、図6のステップS104における接合材140により水晶ウエハとベースウエハとが接合される工程が説明されており、また、図13(a)は、図7のD−D断面を含んだ断面図である。水晶ウエハW130とベースウエハW220とは枠部132の−Y’軸側の面と接合面122とが重なり、水晶ウエハW130のZ’軸とベースウエハW220のX軸とが平行になるように位置合わせされ、接合材140を介して互いに接合される。
【0056】
図10(a)において説明されたように、図13(a)においても、ウエハの冷却時に、水晶デバイス200のZ’軸方向では、接合材140の水晶ウエハW130との接合面に引張応力160がかかっている。また、水晶デバイス200のZ’軸方向はベースウエハW220のX軸方向であるため、接合材140のベースウエハW220との接合面には圧縮応力161がかかる。
【0057】
図13(b)は、水晶ウエハW130とベースウエハW220とが接合されたウエハのX軸方向の断面図である。図13(b)は、図7のE−E断面を含んだ断面図である。図10(b)において説明されたように、ウエハの冷却時に、水晶デバイス200のX軸方向では、接合材140の水晶ウエハW130との接合面に圧縮応力161がかかる。また、水晶材のX軸方向とY軸方向との熱膨張係数は等しいため、接合材140のベースウエハW220との接合面にも接合材140の水晶ウエハW130との接合面に大きさの等しい圧縮応力161がかかる。
【0058】
図14(a)は、水晶ウエハW130とリッドウエハW210とが接合されたウエハのZ’軸方向の断面図である。リッドウエハW210は、複数のリッド板210が形成されておりZカットの水晶材が基材とされているウエハである。また、図14(a)は、図7のD−D断面を含んだ断面図である。図14(a)では図6のステップS105における接合材140により水晶ウエハとリッドウエハとが接合される工程が説明される。水晶ウエハW130とリッドウエハW210とは、接合材140を介して接合される。このステップS105における接合の方法は、図10(a)で説明されたステップS104の水晶ウエハW130とベースウエハW120との接合と同様である。接合材140の熱膨張係数は水晶材のZ’軸方向の熱膨張係数よりも大きいため、水晶材のZ’軸方向に於いては水晶材に比べて接合材140の収縮が大きい。そのため、接合材140の水晶素子130との接合面ではZ’軸方向に水晶素子130から引っ張られる応力である引張応力160がかかる。この引張応力160は接合材140をZ’軸方向に引き伸ばす向きに働いている。また、接合材140の熱膨張係数は水晶材のX軸方向の熱膨張係数よりも小さいため、水晶材のX軸方向に於いては水晶材に比べて接合材140の収縮が小さい。そのため、接合材140のリッド板210との接合面ではX方向にリッド板210から圧縮される応力である圧縮応力161がかかる。この圧縮応力161は接合材140をX軸方向に圧縮する向きに働いている。
【0059】
図14(b)は、水晶ウエハW130とリッドウエハW210とが接合されたウエハのX軸方向の断面図である。また、図14(b)は、図7のE−E断面を含んだ断面図である。図13(b)で説明されたように、水晶デバイス200に用いられる接合材140の熱膨張係数は水晶材のX軸及びY軸方向の熱膨張係数よりも小さいため、水晶材のX軸及びY軸方向に於いては水晶材に比べて接合材140の収縮が小さい。そのため、接合材140の水晶素子130及びリッド板210との接合面には水晶デバイス200のX軸方向に水晶素子130及びリッド板210から圧縮される応力である圧縮応力161がかかる。この圧縮応力161は接合材140を水晶デバイス200のX軸方向に圧縮する向きに働いている。
【0060】
図13(a)、図13(b)、図14(a)、及び図14(b)では、図12の第1例EX1の例を示したが、第2例EX2から第4例EX4のいずれであっても良い。また、ベース板及びリッド板は、ガラス材で形成されていても良い。このときガラス材は、水晶素子のX軸方向の熱膨張係数とZ’軸方向の熱膨張係数との間の熱膨張係数を有していることが望ましい。
【0061】
以上、本発明の最適な実施形態について詳細に説明したが、当業者に明らかなように、本発明はその技術的範囲内において実施形態に様々な変更・変形を加えて実施することができる。
【0062】
例えば、上記の実施形態では、接合材として低融点ガラスを使用した場合について説明したが、接合材にはポリイミド樹脂等の樹脂が用いられても良い。この場合も、上記実施形態と同様に、ポリイミド樹脂の熱膨張係数は、水晶素子の長辺方向の熱膨張係数と短辺方向の熱膨張係数との間の値を取る樹脂が用いられる事が望ましい。水晶デバイスには、水晶デバイスをプリント基板に実装する場合等に熱がかかることがある。このような場合に、ポリイミド樹脂の熱膨張係数が水晶素子の長辺方向の熱膨張係数と短辺方向の熱膨張係数との間の値に取られることにより、接合材の剥がれ等によるキャビティの密封の破れ等を防ぐことができる。
【0063】
また、水晶素子にATカットの水晶材が用いられた場合を示したが、水晶素子にはZカットの水晶材又はBTカットの水晶材などが用いられても良い。さらに水晶素子は水晶材のみならず、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウムあるいは圧電セラミックを含む圧電材が用いられても良い。
【符号の説明】
【0064】
100、200 … 水晶デバイス
110、210 … リッド板
111、121 … 凹部
112、122 … 接合面
120、220 … ベース板
123 … 電極パッド
124 … 実装端子
125 … キャスタレーション電極
126 … キャスタレーション
127 … 貫通穴
130 … 水晶素子
131 … 励振部
132 … 枠部
133 … 連結部
134 … 励振電極
135 … 引出電極
136 … 貫通溝
137 … 側面電極
140 … 接合材
150 … キャビティ
151 … スクライブライン
160 … 引張応力
161 … 圧縮応力
W110、W210 … リッドウエハ
W120、W220 … ベースウエハ
W130 … 水晶ウエハ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧の印加により振動する励振部と前記励振部の周囲を囲む枠部とを有する水晶材により形成され、前記枠部が第1方向と該第1方向に交差する第2方向との辺を有する矩形形状の水晶素子と、
前記枠部の一主面に接合され、前記第1方向と前記第2方向との辺を有する矩形形状のベース板と、
前記枠部の他主面に接合され、前記第1方向と前記第2方向との辺を有する矩形形状のリッド板と、を備え、
前記水晶素子の前記第1方向の熱膨張係数と前記第2方向の熱膨張係数との間の熱膨張係数を有する接合材が塗布される水晶デバイス。
【請求項2】
前記水晶素子はATカット水晶材であり、前記ベース板及び前記リッド板はATカット水晶材、Zカット水晶材又はガラス材である請求項1に記載の水晶デバイス。
【請求項3】
前記水晶素子はZカット水晶材であり、前記ベース及び前記リッドはATカット水晶材、Zカット水晶材又はガラス材である請求項1に記載の水晶デバイス。
【請求項4】
前記接合材は、ポリイミド樹脂又は融点が500度以下のガラスである請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の水晶デバイス。
【請求項5】
前記接合材は、熱膨張係数が10.5〜13ppm/℃(常温から200℃までの範囲)である請求項4に記載の水晶デバイス。
【請求項1】
電圧の印加により振動する励振部と前記励振部の周囲を囲む枠部とを有する水晶材により形成され、前記枠部が第1方向と該第1方向に交差する第2方向との辺を有する矩形形状の水晶素子と、
前記枠部の一主面に接合され、前記第1方向と前記第2方向との辺を有する矩形形状のベース板と、
前記枠部の他主面に接合され、前記第1方向と前記第2方向との辺を有する矩形形状のリッド板と、を備え、
前記水晶素子の前記第1方向の熱膨張係数と前記第2方向の熱膨張係数との間の熱膨張係数を有する接合材が塗布される水晶デバイス。
【請求項2】
前記水晶素子はATカット水晶材であり、前記ベース板及び前記リッド板はATカット水晶材、Zカット水晶材又はガラス材である請求項1に記載の水晶デバイス。
【請求項3】
前記水晶素子はZカット水晶材であり、前記ベース及び前記リッドはATカット水晶材、Zカット水晶材又はガラス材である請求項1に記載の水晶デバイス。
【請求項4】
前記接合材は、ポリイミド樹脂又は融点が500度以下のガラスである請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の水晶デバイス。
【請求項5】
前記接合材は、熱膨張係数が10.5〜13ppm/℃(常温から200℃までの範囲)である請求項4に記載の水晶デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−17163(P2013−17163A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−127725(P2012−127725)
【出願日】平成24年6月5日(2012.6.5)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月5日(2012.6.5)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】
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