説明

水晶振動デバイス

【課題】 耐衝撃性や周波数経年変化等の耐環境性能を向上させ、且つ動作信頼性の高い水晶振動デバイスを提供することを目的とする。
【解決手段】 平面視矩形形状の水晶振動素子2の表裏面に形成された第1のパッド電極と第2のパッド電極は、水晶振動素子2の長辺方向に延びる直線上に平面視で並列して配置され、第1と第2の導電性樹脂接合材S1,S2を介してセラミックパッケージ1の内底部上に形成された第1の導通パッド13と第2の導通パッド14と一対一で導通接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に用いられる水晶振動デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ATカット水晶振動素子を用いた厚み振動系水晶振動子は、一般に水晶振動素子(水晶振動板)の表裏面に一対の励振電極を正対向して形成し、当該励振電極に交流電圧を印加する構成である。このような水晶振動子の諸特性は水晶振動板自体の品質、形状に依存するとともに、励振電極や引出電極の構成、ベースへの接続構成等にも依存する。水晶振動素子をベースに搭載した後の固着においては導電性接合材が用いられているが、当該導電性接合材あるいはベースの影響により水晶振動子の特性が不安定になることがあった。
【0003】
従来の表面実装型の水晶振動子においては、ベースの一対の導通パッド上にペースト状の導電性接合材または金属バンプなどの接合材を形成し、この接合材上に表裏一対の励振電極が形成された水晶振動素子が搭載される。前記励振電極からはそれぞれ引出電極が導出され、当該引出電極に接続されたパッド電極が、水晶振動板の端面に形成されている。当該引出電極部分は当該導電性接合材および金属バンプにより、電気的機械的に接合される。このような構成の水晶振動子において、落下などによる衝撃が加わった場合に水晶振動素子と導通パッドとの接続が不安定な状態となって、等価直列抵抗の増大や周波数経時変化の増大等、水晶振動子の諸特性に悪影響を及ぼしたり、水晶振動素子と導通パッドとの接続不良により、不発振となる問題があった。
【0004】
このように外部衝撃が加わることによる圧電素子の諸特性の悪化については、例えば、特開2000−114911号(特許文献1)に開示されている。当該文献においては、断面凹状で薄肉の励振部と当該励振部周縁を包囲する厚肉環状囲繞部とを一体化した圧電素板において、振動エネルギーは薄肉部に閉じ込められるため、導電接着剤による接続位置を振動部近傍の厚肉部にすることによって、外部衝撃による圧電振動素子の自由端側の上下方向振幅を減少させ、接続部に及ぼす応力を減少させる構成が開示されている。
【0005】
また、金属バンプによって水晶振動素子を表面実装型ベース内に片持ち保持で電気的機械的に接続する構成の水晶振動子が、特開2001−85966号(特許文献2)に開示されている。当該文献は水晶振動素子の一方の主面上に励振電極を中心とした放射線状に沿って近接して配置された2つのパッド電極と、表面実装型ベース内底面上の2つの導通パッドを金バンプを用いてフリップチップ実装にて接続することを特徴とするものである。
【0006】
また、特開2004−112420号(特許文献3)は、水晶振動素子の下に形成した絶縁物(セラミック)の突堤を支点として導電性接着剤の硬化時の収縮応力によって水晶振動素子の自由端側を持ち上げる構成が特徴となっている。当該文献では水晶振動素子の一短辺外周部に並列して2箇所が導電性接着剤によって接合される構成となっている。
【0007】
【特許文献1】特開2000−114911号
【特許文献2】特開2001−85966号
【特許文献3】特開2004−112420号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、耐衝撃性や周波数経年変化等の耐環境性能を向上させ、且つ動作信頼性の高い水晶振動デバイスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明者は、ベースに対する水晶振動素子の保持構成について鋭意検討を行った結果、耐衝撃性等の耐環境性能に優れた水晶振動デバイスを次のような構成により、実現したものである。
【0010】
すなわち請求項1に示すように、平面視矩形形状の水晶振動素子を保持するベースと当該水晶振動素子を気密封止する蓋体を有してなる水晶振動デバイスにおいて、前記ベースは内底面上に、外部端子に導出する第1と第2の導通パッドからなる2つの導通パッドを具備しており、前記水晶振動素子は表裏面に一対の励振電極および当該励振電極と接続された引出電極と、当該引出電極に接続された一対のパッド電極とを有しており、前記一対のパッド電極は水晶振動素子の裏面側に形成された第1のパッド電極と、水晶振動素子の表面側の短辺近傍に形成された第2のパッド電極とから成り、第1のパッド電極と第2のパッド電極は水晶振動素子の長辺方向に延びる直線上に、平面視で並列して形成されており、前記第1の導通パッド上に第1の導電性樹脂接合材を介して前記第1のパッド電極が接合され、前記第2の導通パッド上に第2の導電性樹脂接合材を介して前記水晶振動素子の短辺側の一端部と前記第2のパッド電極とが接合されていることを特徴とする。
【0011】
上記構成により、導電性樹脂接合材によって接合される水晶振動素子の表裏面上の2つのパッド電極は、水晶振動板の長辺方向に延びる直線上に平面視で並列して配置されることから、水晶振動板の短辺方向に直交する直線上での保持となり、従来の水晶振動板の1短辺側を2点で保持する方法と比較して、水晶振動板に及ぼす導電性樹脂接合材の昇温硬化に伴う収縮応力を緩和することができる。さらに前記2箇所の保持点(固定点)間を結ぶ線に垂直な領域には励振領域(励振電極)が存在しないので、固定点間で発生する応力が励振領域に伝搬し難いため保持による悪影響を与えない。さらに前記水晶振動素子の2つのパッド電極と前記ベース内底面上の2つの導通パッドとの接続を導電性樹脂接合材にて行っているため、前記接続を金属バンプにて行った場合に比べて外部衝撃を吸収しやすく、応力を緩和することができるため耐衝撃性が向上する。
【0012】
また、前記水晶振動素子の裏面側に形成される第1のパッド電極は平面視で第2のパッド電極と近接し、水晶振動素子の1短辺側に偏在して振動領域から離間して形成することにより、等価直列抵抗等の水晶振動デバイスの諸特性の悪影響を抑制することができる。
【0013】
また、本発明によれば従来の水晶振動素子の一短辺外周部の2箇所の保持構成に比べて水晶振動素子の中心方向寄りを保持することになる。このような構成により、外部衝撃を受けた際に水晶振動素子自由端側の上下振幅が抑制され、前記パッド電極と前記導通パッドとの接合部が受ける応力を低減させることができる。
【0014】
さらに、請求項2に示すように前記第1と第2のパッド電極が平面視で水晶振動素子の2短辺の中心を結ぶ直線上に形成されていれば、2箇所の接合は水晶振動素子短辺の中心ライン上で行われ、水晶振動板2の短辺方向のバランスが最良となる。このような構成においては従来の水晶振動素子の一短辺外周部の2箇所の保持構成よりも水晶振動板は自由に膨張収縮でき、温度変化に起因して発生する熱応力を低減できる。よって、水晶振動素子の周波数温度特性に与える影響を軽減することができる。
【0015】
また、請求項3に示すように、前記第1と第2の導通パッドの間に絶縁材が形成されていてもよい。前記絶縁材は、前記第1と第2の導電性樹脂接合材の流出による第1と第2の接合部位間の相互短絡防止の役割を果たすものであり、樹脂やセラミックなどの絶縁材料から構成される。なお、前記絶縁材はベース上への樹脂の塗布または、ベースと一体成型にて形成されてもよい。
【0016】
請求項4に示すように、平面視で第1の導電性樹脂接合材の形成領域が、第2の導電性樹脂接合材の形成領域内に包含されるように配置されることにより、水晶振動素子が受ける導電性樹脂接合材の昇温硬化時の収縮応力は1箇所だけとなり、応力による歪を軽減することができ、水晶振動デバイスの周波数経年変化を抑制することができる。
【0017】
従来の導通パッドはベース内底部の一短辺方向に並列して2箇所形成され、水晶振動素子の表裏面に形成される2つのパッド電極も水晶振動素子1短辺端部に並列して2箇所形成されている。そして前記2箇所の導通パッドと前記2箇所のパッド電極が導電性樹脂接合材によって接合されるが、水晶振動素子は導電性樹脂接合材の昇温硬化に伴う収縮応力を2つの接合箇所から受けることになる。この応力に起因する歪は水晶振動デバイスの周波数経年変化に悪影響を与える一因となっている。特にATカット水晶振動素子のように厚さで周波数が決定される水晶振動素子においては、発振周波数が高周波になるにしたがって水晶振動素子の厚みが薄くなるため、この影響力が顕著になるが、前記構成により水晶振動デバイスの周波数経年変化を抑制することができるとともに、接合部間の応力の問題を極めて抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、水晶振動素子が受ける導電性樹脂接合材の硬化時の収縮応力を減少させることができ、周波数経年変化および周波数温度特性を良好にすることができる。また耐衝撃性に優れた信頼性の高い水晶振動デバイスを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明による実施形態について図面に基づいて説明する。本発明の第1の実施形態を表面実装型の水晶振動子を例にとり、図1乃至図3とともに説明する。図1は第1の実施形態を示すベース長辺方向の断面図であり、図2は蓋体3による気密封止前の表面実装型の水晶振動子の図である。図2(a)はベース開口面から見たベースの平面図で、同図(b)は同図(a)に水晶振動素子が搭載された状態を示す平面図で、同図(c)は同図(b)のA−A断面図である。図3は水晶振動素子のベースへの搭載手順を示す図である。
【0020】
前記表面実装型水晶振動子は、上部が開口した断面凹状のベース1と、当該ベースの内底面上に搭載される水晶振動板2と、ベース開口部に接合される蓋体3から構成されている。なお、図1と図2(c)および図3の各図においては水晶振動板2に形成された励振電極および引出電極とパッド電極の記載を省略している。
【0021】
図1においてベース1は、平面視矩形形状でアルミナ等のセラミックを主体として内外部に導体配線が形成された断面凹状の上部が開口した圧電振動素子を収納するベースである。前記ベース1は圧電素子収納部4とその周囲に形成された提部11を有する構成となっており、当該堤部11の上面12は平坦で、当該堤部上面には周状に第1の金属膜層11aが形成されている。前記金属膜層11aの上面も平坦になるように形成されており、例えば堤部11上にタングステン、ニッケル、金の順序で構成されている。タングステンはメタライズ技術により、セラミック焼成時に一体的に形成され、ニッケル、金の各層はメッキ技術により形成される。
【0022】
図2に示すようにベース1の外周の4角には上下方向に伸長するキャスタレーションC1,C2,C3,C4が形成されている。当該キャスタレーションは円弧状の切り欠きが上下方向に形成された構成であり、ウェハからの小割切断時に必要となる。
【0023】
なお、第1の金属膜層11aはベース1に形成されたビアホール(図示せず)あるいは前記キャスタレーション部分に形成された導電膜(図示せず)により、ベース下面(裏面)に形成された外部接続電極(図示せず)に電気的に接続され、最終的にアース接続される。
【0024】
前記ベース1の内底部には、第1の導通パッド13と第2の導通パッド14が形成されており、これら導通パッドは連結電極(図示せず)を介して、ベース外部の底面に形成された外部接続電極17,18にそれぞれ入出力用端子(外部端子)として引き出されている。前記導通パッド13,14は例えばタングステンメタライズ層の上面にニッケル、金の順でメッキ等の手法により金属層が形成されている。ここで前記導通パッド13,14は当該ベース1の長辺方向に直線上に並列して形成される。本実施例では前記第1の導通パッド13と前記第2の導通パッド14は、平面視で前記ベース1の内底部上に圧電素子収納部の2短辺の中心を結ぶ直線上に形成されている。
【0025】
また、第1の導通パッド13と第2の導通パッド14との間隙には堤状の絶縁材料からなる突起15が形成されており、当該突起15は導電性樹脂接合材の流出による第1と第2の導通パッド間の相互短絡を防止する機能を有している。前記突起15は樹脂やセラミックなどの絶縁材料から構成され、前記ベース1と一体成型されることによって形成されるが、前記ベース1の内底部上へ樹脂を塗布した後、硬化することによって形成してもよい。また、前記第1と第2の導通パッド13,14上へ水晶振動板2が第1と第2の導電性樹脂接合材によって導通接合された状態において、水晶振動板2と前記突起15との間には空隙が存在していることが好ましい。また本発明において前記突起15が形成されていないベースであってもよい。
【0026】
図2において、水晶振動板2は例えば厚みすべり振動で駆動するATカット水晶振動板であり、X軸が長辺、Z軸が短辺、Y軸が厚み方向となる直方体形状となっている。当該水晶振動板2の表裏面には対向して平面視矩形形状の励振電極211,221(211は図示せず)が形成されており、当該励振電極各々から引出電極212,222が延出され、当該引出電極にパッド電極213,223が各々接続されている。パッド電極223(第2のパッド電極)は前記水晶振動板2の短辺端縁部分に形成されている。そして、前記2つのパッド電極213,223は水晶振動板の長辺方向に延びる直線上に平面視で並列して配置されている。本実施例では前記第1と第2のパッド電極は平面視で水晶振動板2の2短辺の中心を結ぶ直線上に形成されている。
【0027】
当該水晶振動板2は当該導通パッド13,14上に片持ち支持される。当該片持支持構成は導電性樹脂接合材S1,S2を用いて、パッド電極213,223と導通パッド13,14とを一対一で電気的機械的に接続する。当該導電性樹脂接合材の形成は、例えば図3(a)に示すように、ペースト状のシリコーン系樹脂導電接合材からなる第1の導電性樹脂接合材S1を第1の導通パッド13上に、前記第1の導電性樹脂接合材S1と同種の第2の導電性樹脂接合材S21(下塗り)を第2の導通パッド14上に塗布する。その後、第2の導電性樹脂接合材S21(下塗り)に第2の導電性樹脂接合材S22(上塗り)が接合されるように搭載される。具体的には図3(b)に示すように、第2の導電性樹脂接合材S22が一体的に形成された水晶振動板2を、ベース1の導通パッド13,14上に形成された第1の導電性樹脂接合材S1上と第2の導電性樹脂接合材S21上に搭載して導電接合する。ここで前記第2の導電性樹脂接合材S22も前記第2の導電性樹脂接合材S21と同一のものである。より具体的には、水晶振動板保持ツールTにより、水晶振動板2の主面を吸引し、吸引保持した状態で前記第2のパッド電極223部分に第2の導電性樹脂接合材S22をディスペンサ等により塗布する。塗布後、図3(c)に示すように直ちに導通パッド13,14上に形成された第1の導電性樹脂接合材S1上と第2の導電性樹脂接合材S21上に水平搭載し、導電接合を行う。前記導電接合した後、本実施例では所定温度プロファイルで制御されたトンネル炉を用いて導電性樹脂接合材の硬化が行われる。
【0028】
ベース1を気密封止する蓋体3は平面視矩形形状の平板構成である。当該蓋体3は、図示しないコバールからなるコア材に、第2の金属膜層31として金属ろう材が形成された構成であり、例えば上面からニッケル層、コバールコア材、銅層、銀ろう層の順の多層構成であり、第2の金属膜層である銀ろう層がベース1の第1の金属膜層11aと接合される構成となる。なお、蓋体の平面視外形はベース1の当該外形とほぼ同じである。
【0029】
以上のように構成されたベース1と蓋体1は、真空雰囲気中あるいは不活性ガス雰囲気中にて気密封止される。本実施の形態においては、シーム溶接法を用いて前述の銀ろう層を溶融硬化させ、気密封止されている。
【0030】
本発明による第2の実施形態について表面実装型の水晶振動子を例にとり、図4乃至図5とともに説明する。図4は第2の実施形態を示すベース長辺方向の図であり、同図(a)はベース開口面から見たベースの平面図で、同図(b)は同図(a)に水晶振動素子が搭載された状態を示す平面図で、同図(c)は同図(b)のB−B断面図である。図5は水晶振動素子2のベースへの搭載手順を示す図である。なお、前記第1の実施形態との同様部分については、同番号を付すとともに説明の一部を割愛した。
【0031】
前記表面実装型水晶振動子は、上部が開口した断面凹状のベース1と、当該ベースの内底面上に搭載される水晶振動板2と、ベース開口部に接合される蓋体3から構成されている。なお、図4(c)と図5の各図においては水晶振動板2に形成された励振電極および引き出しにおいては水晶振動板2に形成された励振電極および引出電極とパッド電極の記載を省略している。
【0032】
図4(a)に示すように前記ベース1の内底部には、第1の導通パッド13と第2の導通パッド14が形成されており、これら導通パッドは連結電極(図示せず)を介して、ベース外部の底面に形成された外部接続電極17,18にそれぞれ入出力用端子として引き出されている。前記導通パッド13,14は例えばタングステンメタライズ層の上面にニッケル、金の順でメッキ等の手法により金属層が形成されている。ここで前記導通パッド13,14は当該ベース1の長辺方向に直線上に並列して形成され、本実施例では前記第1の導通パッド13と前記第2の導通パッド14は、平面視で前記ベース1の内底部上に圧電素子収納部の2短辺の中心を結ぶ直線上に形成されている。前記2つの導通パッド13,14の間隙は、前記第1の実施例での2つの導通パッド13,14の間隙よりも狭くなるように形成される。さらに第1の導通パッド13と第2の導通パッド14との間隙には樹脂16が形成される。当該樹脂16は導電性樹脂接合材の流出による第1と第2の導通パッド間の相互短絡を防止する機能を有しており、前記ベース1の内底部上へ樹脂を塗布した後、硬化することによって形成される。なお、前記樹脂は絶縁材料からなる突起であってもよい。また、前記第1と第2の導通パッド13,14上へ水晶振動板2が第1と第2の導電性樹脂接合材によって導通接合された状態において、水晶振動板2と前記樹脂16との間には空隙が存在していることが好ましい。また本発明において前記突起16が形成されていないベースであってもよい。
【0033】
本実施例では前記第1と第2の導通パッドは樹脂16を挟んで対向して形成されており、前記2つの導通パッドは突起を有する断面視階段状の段差構成となっている。当該突起は前記2つの導通パッドが対向する面側に形成されている。これにより前記2つの導電性樹脂接合材の流出による第1と第2の導通パッド間の相互短絡を防止する機能をさらに向上させるためのものであり、前記2つの導通パッドの形状は前記段差部を設けた形状に限定されるものではない。
【0034】
また、本実施例では前記2つの導通パッドの間隔が前記第一の実施例における2つの導通パッドの間隙よりも小さいため、第1の実施例に比べて水晶振動素子2の保持領域がより短辺端部寄りに位置することになり、耐衝撃性能の低下を招く可能性がある。これを抑制する目的でベース内底部上には枕5が形成されている。当該枕5は前記ベース1内底部上に搭載保持された状態の水晶振動素子2の自由端側の2つのコーナー部分近傍領域の下方向の位置に2箇所形成され、樹脂やセラミックなどの絶縁材料からなる。また、枕5は水晶振動素子2の短辺方向の傾きを抑制する作用も有している。
【0035】
図4において、水晶振動板2は例えば厚みすべり振動で駆動するATカット水晶振動板であり、X軸が長辺、Z軸が短辺、Y軸が厚み方向となる直方体形状となっている。当該水晶振動板2の表裏面には対向して平面視矩形形状の励振電極211,221(211は図示せず)が形成されており、当該励振電極各々から引出電極212,222が延出され、当該引出電極にパッド電極213,223が各々接続されている。パッド電極223(第2のパッド電極)は前記水晶振動板2の短辺端縁部分に形成されている。そして、前記2つのパッド電極213,223は水晶振動板の長辺方向(X軸方向)に延びる直線上に平面視で並列して配置されており、本実施例では前記第1と第2のパッド電極は平面視で水晶振動板2の2短辺の中心を結ぶ直線上に形成されている。前記2つのパッド電極213と223との間隙は、前記第1の実施例におけるパッド電極213と223との間隙よりも狭くなるように形成される。
【0036】
当該水晶振動板2は当該導通パッド13,14上に片持ち支持される。当該片持支持構成は導電性樹脂接合材S1,S2を用いて、パッド電極213,223と導通パッド13,14とを一対一で電気的機械的に接続する。図5(a)に示すように前記導電性樹脂接合材は、例えばペースト状のシリコーン系樹脂導電接合材であり、第1の導電性樹脂接合材S1を第1の導通パッド13上に、前記第1の導電性樹脂接合材S1と同種材料である第2の導電性樹脂接合材S21(下塗り)を第2の導通パッド14上に塗布する。その後、第2の導電性樹脂接合材S21(下塗り)に第2の導電性樹脂接合材S22(上塗り)が接合されるように搭載される。具体的には図5(b)に示すように、水晶振動板2をベース1の導通パッド13,14上に形成された第1の導電性樹脂接合材S1上と第2の導電性樹脂接合材S21上に搭載した後、第2の導電性樹脂接合材S22を介して、前記第2の導電性樹脂接合材S21と第2のパッド電極223と水晶振動板2の側端部とを導電接合する。ここで前記第2の導電性樹脂接合材S22は前記第2の導電性樹脂接合材S21と同一のものである。より具体的には水晶振動板保持ツールTにより、水晶振動板2の主面を吸引保持した状態で導通パッド13,14上に形成された第1の導電性樹脂接合材S1上と第2の導電性樹脂接合材S21上に水平搭載する。その後、図5(c)に示すように第2の導電性樹脂接合材S22が、第2のパッド電極223を覆い、第1の導電性樹脂接合材S1と対向する位置までディスペンサ等により塗布されるとともに、第2の導電性樹脂接合材S21の上に重なって水晶振動板2の一短辺端部側と接合塗布される。このとき前記第2の導電性樹脂接合材S2の形成領域は前記第1の導電性樹脂接合材S1の形成領域よりも平面視で大きく、かつ平面視で前記第1の導電性樹脂接合材S1の形成領域が、第2の導電性樹脂接合材S2の形成領域内に包含される位置にて塗布される。
【0037】
ベース1の圧電素子収納部4に水晶振動板2を格納し、前述のように導電性樹脂接合材S1,S2により導電接合している。その後、必要な接合材硬化処理を行い真空雰囲気中あるいは不活性ガス雰囲気中にて気密封止を行う。本実施の形態においては、シーム溶接法を用いて前述の銀ろう層を溶融硬化させ、気密封止されている。
【0038】
本実施の形態においては平面視で水晶振動板の表面側に形成される前記第2の導電性樹脂接合材S2の形成領域内に、水晶振動板2の裏面側に形成され前記第1の導電性樹脂接合材S1の形成領域が内包され、相互にはみ出さないことが好ましい。このように前記第2の導電性樹脂接合材S2の形成領域内に、前記第1の導電性樹脂接合材S1の形成領域が内包されることから実質1点だけで水晶振動板2と前記導通パッドが接合されることになり、従来のように水晶振動板の一短辺方向に並列して2箇所が導電性樹脂接合材によってベースと接合される場合よりも、水晶振動素子に及ぼす導電性樹脂接合材の硬化による収縮応力が1点に集中し、収縮応力の影響を減少させることができる。これにより前記収縮応力に起因する歪を抑制することができるため周波数経年変化(エージング特性)を改善することができる。
【0039】
なお、上記実施の形態において、気密封止方法として蓋体に形成された金属ろう材をシーム溶接により接合した構成であるが、金属リング体をベースの開口部に形成し、当該金属リング体と蓋体とをシーム溶接あるいは電子ビーム等のエネルギービーム溶接により接合してもよいし、ベースと蓋体とを金属ろう材により加熱雰囲気下で接合する方法を採用することも可能である。
【0040】
また、上述した実施の形態においては、ベースを用いた表面実装型の水晶振動子について例示したが、本発明はガラスを主材料としたベースや金属を主体としたベースに適用することもできる。また水晶フィルタや他の電子素子を一体的に収納した水晶発振器についても適用することができる。
【0041】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0042】
水晶振動デバイスの量産に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明による第1の実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明による第1の実施形態を示す図である。
【図3】本発明による第1の実施形態の製造方法を示す図である。
【図4】本発明による第2の実施形態を示す図である。
【図5】本発明による第2の実施形態の製造方法を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 ベース
2 水晶振動板(水晶振動素子)
3 蓋体
4 圧電素子収納部
5 枕
11 堤部
11a 第1の金属膜層
12 開口部
13 第1の導通パッド
14 第2の導通パッド
15 突起(絶縁材)
16 樹脂
17,18 外部接続電極
31 第2の金属膜層
211,221 励振電極
212,222 引出電極
213 第1のパッド電極
223 第2のパッド電極
S1 第1の導電性樹脂接合材
S2 第2の導電性樹脂接合材
S21 第2の導電性樹脂接合材(下塗り)
S22 第2の導電性樹脂接合材(上塗り)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視矩形形状の水晶振動素子を保持するベースと当該水晶振動素子を気密封止する蓋体を有してなる水晶振動デバイスにおいて、前記ベースは内底面上に、外部端子に導出する第1と第2の導通パッドからなる2つの導通パッドを具備しており、
前記水晶振動素子は表裏面に一対の励振電極および当該励振電極と接続された引出電極と、当該引出電極に接続された一対のパッド電極とを有しており、前記一対のパッド電極は水晶振動素子の裏面側に形成された第1のパッド電極と、水晶振動素子の表面側の短辺近傍に形成された第2のパッド電極とから成り、第1のパッド電極と第2のパッド電極は水晶振動素子の長辺方向に延びる直線上に、平面視で並列して形成されており、
前記第1の導通パッド上に第1の導電性樹脂接合材を介して前記第1のパッド電極が接合され、前記第2の導通パッド上に第2の導電性樹脂接合材を介して前記水晶振動素子の短辺側の一端部と前記第2のパッド電極とが接合されていることを特徴とする水晶振動デバイス。
【請求項2】
前記第1のパッド電極と第2のパッド電極が、平面視で前記水晶振動素子の2短辺の中心を結ぶ直線上に形成されていることを特徴とする請求項1記載の水晶振動デバイス。
【請求項3】
前記第1と第2の導通パッド間に絶縁材が形成されていることを特徴とする請求項1及至2のいずれか1項記載の水晶振動デバイス。
【請求項4】
前記第2の導電性樹脂接合材が、前記第1の導電性樹脂接合材より大きく形成され、平面視で第1の導電性樹脂接合材の形成領域が第2の導電性樹脂接合材の形成領域内に包含されるように配置されてなる請求項1及至3のいずれか1項記載の水晶振動デバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−131549(P2008−131549A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316820(P2006−316820)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】