水晶振動子及びその製造方法
【課題】特性が劣化せず、かつ小型化が容易な水晶振動子をドライエッチングにより製造する方法を提供する。
【解決手段】水晶振動子における振動領域11に対応して、表面に振動領域11より大きい窪み31が形成された支持基板30を用意し、支持基板30の表面に水晶板10を接合する。このとき、窪み31では水晶板が支持基板に接触しないようにする。その後、水晶板に対してドライエッチングを適用して、振動領域と振動領域を取り囲む枠部20とが支持梁部21,22を介して接続する形状となるように、水晶板を振動領域と枠部とに分離する。
【解決手段】水晶振動子における振動領域11に対応して、表面に振動領域11より大きい窪み31が形成された支持基板30を用意し、支持基板30の表面に水晶板10を接合する。このとき、窪み31では水晶板が支持基板に接触しないようにする。その後、水晶板に対してドライエッチングを適用して、振動領域と振動領域を取り囲む枠部20とが支持梁部21,22を介して接続する形状となるように、水晶板を振動領域と枠部とに分離する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動子とその製造方法とに関し、特に、小型化に適した水晶振動子とその製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子は、周波数または時間の基準源を構成するために、各種の電子機器において広く用いられている。水晶振動子は、一般に、振動板となる水晶板(水晶片ともいう)の表面に複数の励振電極を形成し、さらに、この水晶板を容器内に密閉封入するとともに励振電極を容器の外部に電気的に引き出した構成を有する。水晶振動子の共振周波数は、水晶板での結晶方位と形状及びサイズによって定まるので、所望の共振周波数の水晶振動子を得るためには、高精度で水晶板の外形加工を行う必要がある。
【0003】
電子機器における小型化、低消費電力化の進行とともに、水晶振動子としても小型であるものが要求されるようになってきている。小型化された水晶振動子を製造するために、フォトリソグラフィーを用いるエッチングによって水晶板を加工することが主流となりつつある。水晶板自体は二酸化シリコンからなるので、半導体デバイス製造工程で一般的に用いられているエッチング技術を用いて加工することができる。しかしながら、二酸化シリコンの単結晶である水晶は結晶異方性を有しており、例えば、フッ化水素などを用いるウェットエッチングによって加工した場合、マスク形状を転写したままではなくて結晶方位に依存した形でエッチングが進行するため、その形状の制御が極めて難しいとされる。
【0004】
そこで、結晶異方性の影響を受けにくいとされるドライエッチングの手法によって水晶板の外形加工を行うことが注目されている。例えば、特許文献1には、水晶基板上にエッチングガスを流通させてリアクティブイオンエッチングによって水晶振動子を製造することが開示されている。しかしながら、水晶のような酸化物単結晶は、ドライエッチングでの被加工性がよくなく、エッチング中に割れや欠けなどを生じやすい。これらの割れや欠けなどは、ドライエッチング中に水晶板の温度が例えば200℃以上に達するためであると考えられている。ドライエッチング中の割れや欠けの発生を防止するために、支持基板に対して水晶ウエハを貼り付けるか接合させることによって水晶ウエハを支持し、その状態で水晶ウエハに対してドライエッチングを行うことが提案されている。このように構成すれば、支持基板によって水晶板の全体が指示されていることから、エッチング中に温度が上昇したとしても、水晶板における割れや欠けの発生を防止することができる。例えば特許文献2は、シリコンやガラスなどからなる支持基板に、粘着剤フィルムを介し水晶ウエハを貼り付けてドライエッチングを行うことを開示している。
【0005】
ところで、水晶振動子における小型化の進行や、半導体デバイス製造技術を応用したMEMS(Microelectromechanical systems)技術の進展により、ドライエッチングの際に水晶ウエハを支持するために用いられる支持基板自体を水晶振動子の構造部材(例えば、容器)として用いることが検討されるようになってきている。しかしながら、水晶振動子を支持基板に貼り付けたり接合させたりした結果、水晶板における振動領域までが支持基板と接合したり接触したりしていると、水晶板のその共振周波数での振動が妨げられ、その結果、水晶振動子の特性の大きな劣化がもたらされる。
【0006】
なお特許文献3には、水晶板のドライエッチングに関するものではないが、水晶などの圧電基板を有する弾性表面波(SAW;Surface Acoustic Wave)デバイスの小型化のために、圧電基板の表面に樹脂層を形成するとともに、圧電基板における櫛歯電極(IDT;Interdigital Transducer)の形成部では樹脂層中に空洞部を設け、櫛歯電極の形成部が樹脂層と接しないようにした構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−242134号公報
【特許文献2】特開2010−177540号公報
【特許文献3】特開2010−56833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
水晶板をドライエッチングによって加工する際に割れや欠けの発生を防止するためには、水晶板を支持基板に貼り付けたり接合することは有効な手段である。しかしながら、水晶板が接合した支持基板をそのまま水晶振動子の構造部分に使用すると、水晶板の振動部が支持基板に接触したり接合したりしているので、水晶振動子の特性が大きく劣化するという問題が生じる。
【0009】
本発明の目的は、特性が劣化せず、かつ小型化が容易な水晶振動子をドライエッチングにより製造する方法と、そのような方法によって製造された水晶振動子とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の水晶振動子の製造方法は、水晶振動子における振動領域に対応して、表面に振動領域より大きい窪みが形成された支持基板を用意し、支持基板の表面に水晶板を、窪みでは水晶板が支持基板に接触しないように、接合する段階と、水晶板に対してドライエッチングを適用して、振動領域とその振動領域を取り囲む枠部とが支持梁部を介して接続する形状となるように、水晶板を振動領域と枠部とに分離する段階と、を有する。
【0011】
この製造方法では、水晶板との接合を行う前に予め支持基板の表面に窪みを設け、水晶板の振動領域が支持基板とは接触していない状態でドライエッチングが進行するようにする。このようにして得られる水晶振動子では、水晶振動子としての振動領域が支持基板と接触したり接合したりすることがないので、その振動が妨げられない。支持基板への窪みの生成は、例えば、ドライエッチングあるいはウェットエッチングなどの手法によって行われる。窪みの深さは、振動領域と支持基板との接触を確実を防ぐことができるものであればよく、例えば、0.1μm以上とする。また、窪みは、支持基板を貫通するものではないので、窪みの深さは支持基板の厚さ未満である。
【0012】
本発明の水晶振動子は、支持基板と、支持基板の表面に接合された水晶板とを有し、水晶板は、振動領域とその振動領域を取り囲む枠部とが支持梁部を介して接続する形状を有し、ドライエッチングによって振動領域と枠部とが分離されており、支持基板の表面には、振動領域と支持基板とが接触しないように、振動領域に対応して振動領域よりも大きい窪みが設けられている。
【発明の効果】
【0013】
ドライエッチングの際に水晶板を支持する支持基板に、水晶板の振動領域に対応してその振動領域よりも大きい窪みを予め設けておく。その結果、水晶板と支持基板とを接合したことによって水晶板の振動が妨げられることがなくなり、振動特性が良好に維持された水晶振動子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a),(b)は、本発明の実施の一形態での水晶ウェハを示す断面図と平面図である。
【図2】(a),(b)は、支持基板を示す断面図と平面図である。
【図3】水晶振動子の製造工程を示す断面図である。
【図4】(a),(b)は、水晶振動子の製造工程を示す断面図と平面図である。
【図5】(a),(b)は、水晶振動子を示す断面図と平面図である。
【図6】振動領域の支持部を拡大して示す図である。
【図7】(a),(b)は、封止部材を示す断面図と底面図である。
【図8】(a),(b)は、水晶振動子の製造工程を示す断面図と平面図である。
【図9】(a),(b)は、水晶振動子の製造工程を示す断面図と平面図である。
【図10】(a),(b)は、水晶振動子を示す断面図と平面図である。
【図11】水晶板の形状の一例を示す図である。
【図12】水晶板の形状の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
本発明に基づく水晶振動子は、水晶振動子の振動領域に対応して表面に振動領域より大きい窪みが形成された支持基板と、水晶板とを接合し、その後、水晶板に対してドライエッチングを適用して製造されるものである。
【0017】
図1(a),(b)は、それぞれ、接合前の水晶板10を示す断面図と平面図である。図1(a)は、図1(b)のA−A’線での断面を示している。水晶板10は、例えばGTカットの水晶板として水晶の単結晶から切り出されたものであり、略矩形の形状を有している。もっとも、複数の水晶振動子に相当する大きさの水晶板(すなわち水晶ウエハ)を用いて複数個の水晶振動子を同時に形成し、その後、ダイシングにより個々の水晶振動子に分割することも可能であり、その場合は、1個の水晶振動子に対応する部分が略矩形の形状を有することになる。ここでは、GTカットの水晶板の場合を例にして説明するが、水晶板の結晶方位はGTカットに限られるものではなく、例えば、ATカットやその他のカットのものであってもよい。
【0018】
水晶板10の中央部が振動領域11であり、振動領域11に対応して、水晶板10の両方の主面には、それぞれ、励振電極12,13が設けられている。ここでは輪郭振動型のGTカットの水晶振動子を想定しているので、振動領域11は真円に近い楕円形とされ、励振電極12,13は、振動領域と同形状に設けられている。水晶板10の図示上側の主面(第1の主面)の外周に沿って、後述する封止部材との接合に設けられる金属膜14が形成されている。水晶板10の第1の主面では、さらに、励振電極12と金属膜14との間の領域に、接続電極15,16が設けられており、接続電極15は、細長い形状の引出電極17を介して励振電極12に電気的に接続している。接続電極16の形成位置には、水晶板10の他方の主面(第2の主面)側に貫通した導電路18が設けられている。導電路18は、いわゆる貫通電極孔として形成されるものである。水晶板10の第2の主面には、導電路18の端部と励振電極13とを電気的に接続する引出電極19が設けられている。引出電極17,19は、後述するように、水晶板10における外周部である枠部20から振動領域11を保持する支持梁部21,22の形成領域に設けらている。ここでは、GTカットの水晶振動子を想定しているので、後述するドライエッチングによって、支持梁部21,22は、振動領域11から見て相互に反対方向に延びるように形成される。
【0019】
励振電極12,13及び引出電極17,19は、例えば、蒸着やスパッタリングなどの手法によって形成される。また、金属膜14及び接続電極15,16は、水晶板10上に例えば、クロム(Cr)薄膜と金(Au)薄膜とをこの順で、スパッタ、蒸着、メッキなどにより成膜し、その後、パターニングを行うことによって、同一材料で同一の厚さに形成される。励振電極12、金属膜14、接続電極15,16及び引出電極17を同時に形成するようにしてもよい。
【0020】
図2(a),(b)は、それぞれ、接合前の支持基板30を示す断面図と平面図である。図2(a)は、図2(b)のA−A’線での断面を示している。支持基板30は、例えば、シリコン(Si)などからなる。支持基板30の上面には、水晶板10における振動領域11、支持梁部21,22及び接続電極16の位置に対応して、これらの振動領域11、支持梁部21,22及び接続電極16よりもやや大きな形状の窪み31が形成されている。窪み31は、支持基板30に対してウェットエッチングあるいはドライエッチングを施すことによって形成され、その深さは例えば1μm程度とされる。
【0021】
次に、支持基板30の上面に対し、水晶板10の第2の主面を接合する。この接合は、接着剤などを用いない直接的な接合で行うものとする。例えば、表面活性化接合により、支持基板30と水晶板10とを接合する。表面活性化接合は、真空中においてAr+イオンなどを照射させることによって表面を活性化させ、その後、活性化させた表面同士を圧着することにより両者を接合するものであり、加熱などを行わなくてよいという利点を有するものである。図3は、接合を行った状態での断面形状を示しており、図1,2におけるA−A’線での断面に対応している。水晶板10の第2の主面に形成されている励振電極13及び引出電極19は、支持基板30の窪み31内にあって、支持基板30とは直接は接触していない。また、水晶板10における振動領域11及び支持梁部21,22となるべき部位も支持基板30とは接触していない。
【0022】
次に、水晶板10の第1の主面上に、ドライエッチングでのマスクとなる、レジストなどの保護膜材料35を形成する。図4は、保護膜材料35を形成した状態での水晶板10及び支持基板30を示すものであって、(a)は断面図であり、(b)は平面図である。図4(a)は、図4(b)のA−A’線での断面を示している。保護膜材料35は、フォトリソグラフィー技術によってパターニングされており、水晶片10における振動領域11、枠部20及び支持梁部21,22の上に設けられ、枠部20から振動領域11を分離する領域上には設けられていない。ここで重要なことは、支持基板30に設けられた窪み31の内側となる領域に対応する位置にのみに、保護膜材料35のうち振動領域11に対応する部分が形成されていることである。
【0023】
次に、保護膜材料35をマスクとして、水晶板10が貫通するまでエッチングを行い、保護膜材料35を除去する。図5(a),(b)は、それぞれ、エッチング後の状態を示す断面図と平面図である。図5(a)は、図5(b)のA−A’線での断面を示している。本実施形態は、水晶板10の振動領域11が支持基板30から浮いた状態でドライエッチングを行うことに特徴がある。ドライエッチングのエッチングガスとしては、二酸化シリコンのドライエッチングに一般的に使用されている、例えば、フッ化炭素(CF)系のガスを用いることができる。
【0024】
以上の工程により、水晶板10が振動領域11とその振動領域11を取り囲む枠部20とに分離され、振動領域11と枠部20とが支持梁部21,22を介して接続する形状に水晶板10が加工されたことになる。振動領域11及び支持梁部21,22は、支持基板30に形成された窪み31の領域内に位置している。振動領域11及び支持梁部21,22は支持基板30とは接触せず、振動領域11の振動が支持基板30によって阻害されることもない。図6は、水晶板10における振動領域11を支持する部分を拡大して示すものであり、説明のため、各電極の図示を省略している。振動領域11が窪み31内に位置することにより、支持基板30とは接触しないことが図6に示されている。
【0025】
接続電極15,16は励振電極12,13にそれぞれ電気的に接続しているので、支持基板30に支持されたままの水晶板10を例えばセラミックパッケージ内に格納し、接続電極15,16を外部に電気的に引き出すことにより、水晶振動子を最終的に完成させることができる。
【0026】
ところで、図5(a),(b)に示した支持基板30に支持されたままの水晶板10を容器内に格納して水晶振動子を構成した場合には、水晶振動子の高さ方向の寸法を小さくすることが難しい、という問題が生じる。そこで、支持基板30自体を水晶振動子の容器として用いることが考えられる。その場合には、水晶板10の第1の主面に対して封止部材を接合し、支持基板30、水晶板10の枠部20及び封止部材によって形成された空間内に振動領域11が密閉封入されるような構成とすればよい。
【0027】
図7(a),(b)は、それぞれ封止部材の一例の断面図と底面図である。図7(a)は、図7(b)のA−A’線での断面を示している。封止部材40は、例えば、シリコンなどからなる。封止部材40の底面では、水晶板10の金属膜14と対応するように金属膜41が設けられており、水晶板10での接続電極15,16に対応する位置に接続電極42,43が設けられている。接続電極42,43は金属膜41と同一工程、同一材料で同じ厚さに形成されている。接続電極42,43の位置には、外部接続用の貫通電極44,45がそれぞれ封止部材40に埋め込まれており、貫通電極44,45の一端はそれぞれ接続電極42,43に電気的に接続している。貫通電極44,45は、銅(Cu)や金をメッキで埋め込むことによって形成できる。あるいは、タングステン(W)層、または不純物がドープされたポリシリコン層をCVD(化学気相成長)法によって設けることによっても、貫通電極44,45を設けることができる。封止部材40の底面には、さらに、水晶板10での振動領域11に対応して振動領域11よりも大きな窪み48が設けられており、封止部材40を水晶板10に接合したときに振動領域11が封止部材40に接触しないようにされている。
【0028】
図8は、封止部材40を水晶板10に接合した状態を示したものであって、(a)は断面図であり、(b)は平面図である。図8(a)は、図8(b)のA−A’線での断面を示している。封止部材40の水晶板10への接合は、水晶板10の金属膜14と封止部材40の金属膜41とを接合させ、水晶板の接続電極15,16と封止部材40の接続電極42,43とを接合することによって行われる。接合には、例えば、表面活性化接合などの手法が用いられる。接合の結果、水晶板10の振動領域11は、支持基板30、枠部20及び封止部材40によって形成された空間内に密閉封入されることになる。特に、真空中において水晶板10への封止部材40の接合を行えば、振動領域11は真空中に密閉されることになる。
【0029】
次に、封止部材40の上面側から封止部材40を研磨することによって(バックグラインドすることによって)、貫通電極44,45を露出させる。図9(a),(b)は、それぞれ、貫通電極を露出させた状態での断面図と平面図である。図9(a)は、図9(b)のA−A’線での断面を示している。そののち、貫通電極44,45の露出位置に対応して、実装端子46,47を封止部材40の上面に形成する。実装端子46,47は、貫通電極44,45と電気的に接続しており、したがって、励振電極12,13と電気的に接続している。実装電極46,47は、完成した水晶振動子を回路基板上に表面実装するために用いられる。複数個の水晶振動子に相当する大きさの水晶板10、支持基板30及び封止部材40を用いて一括してこれら複数個の水晶振動子を形成した場合には、この段階において、ダイシングにより個々の水晶振動子に分割する。図10(a),(b)は、それぞれ、完成した水晶振動子の断面図と平面図である。図10(a)は、図10(b)のA−A’線での断面を示している。
【0030】
なお、この構成では、水晶板10への接合の前に、封止部材40において貫通電極44,45を形成しておくことができるので、貫通電極44,45における材料の自由度を高めることができる。また、封止部材40の水晶板10への接合により、封止と電気的配線とを同時に行うことができることもこの方法のメリットである。
【0031】
以上説明した水晶振動子では、ドライエッチングにより水晶板10を加工し、枠部20から振動領域11を分離している。二酸化シリコンである水晶をドライエッチングする場合、フッ化炭素系のガスをエッチングガスとして用いることにより、大きなエッチング速度を得ることができるが、エッチングされた水晶の側面に、エッチング反応によって副生した堆積物(いわゆるデポ物)が付着する。この堆積物は、水晶の側面に強固に付着し、しかも、成分として酸化物を含んでいるため、半導体装置製造分野における通常の有機物除去工程に用いられる例えばアセトンなどの溶媒を用いた場合には、除去することが難しい。専用の除去液を用いた場合においても、水晶板の側面部に付着した堆積物はなかなか除去されない。
【0032】
本発明者らの検討によれば、ドライエッチングによって副生した堆積物は、直角に折れ曲がった部分の内側のような箇所には付着しやすいものの、ゆるやかな円弧状の内面のような形状に対する堆積物は、比較的除去しやすいことがわかった。すなわち、ドライエッチングされる部分を矩形ではなく滑らか円弧状とすることにより、ドライエッチング後の堆積物除去が容易になると考えられる。本実施形態の水晶振動子は、枠部20から延びる支持梁部21,22によって振動領域11を保持する構造となっているが、振動領域11の形状やサイズによって共振周波数や振動特性が異なり、良好な振動特性、所望の共振周波数を得るためには、振動領域11の形状やサイズを変えることができない。しかしながら、枠部20の内壁の形状については、共振周波数や振動特性に影響を与えないので、自由に設定することができる。そこで水晶板10をドライエッチングにして枠部20から振動領域11を分離する際に、枠部20の内周を円または楕円にすることが好ましい。水晶振動子の大きさの関係で枠部20の内周を円または楕円とすることが難しい場合には、角が丸められた多角形状に加工するようにすることが好ましい。角が丸められた多角形状は、例えば、角が丸められた矩形であり、角の曲率半径が0.1μm以上1mm以下というものである。
【0033】
図11は、このように枠部20の内周を円または楕円に形成した例を示している。図11ではGTカットの水晶振動子を想定して、振動領域11が真円に近い楕円に形成されている。図12は、枠部20の内周を円または楕円に形成した別の例を示している。図12ではATカットの水晶振動子を想定して、振動領域11が矩形に形成されている。
【符号の説明】
【0034】
10…水晶板、11…振動領域、12,13…励振電極、14…金属膜、15,16…接続電極、17,19…引出電極、18…導電路、20…枠部、21,22…支持梁部、30…支持基板、31…窪み、35…保護膜部材、40…封止部材、41…金属膜、42,43…接続電極、44,45…貫通電極、46,47…実装端子、48…窪み。
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動子とその製造方法とに関し、特に、小型化に適した水晶振動子とその製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子は、周波数または時間の基準源を構成するために、各種の電子機器において広く用いられている。水晶振動子は、一般に、振動板となる水晶板(水晶片ともいう)の表面に複数の励振電極を形成し、さらに、この水晶板を容器内に密閉封入するとともに励振電極を容器の外部に電気的に引き出した構成を有する。水晶振動子の共振周波数は、水晶板での結晶方位と形状及びサイズによって定まるので、所望の共振周波数の水晶振動子を得るためには、高精度で水晶板の外形加工を行う必要がある。
【0003】
電子機器における小型化、低消費電力化の進行とともに、水晶振動子としても小型であるものが要求されるようになってきている。小型化された水晶振動子を製造するために、フォトリソグラフィーを用いるエッチングによって水晶板を加工することが主流となりつつある。水晶板自体は二酸化シリコンからなるので、半導体デバイス製造工程で一般的に用いられているエッチング技術を用いて加工することができる。しかしながら、二酸化シリコンの単結晶である水晶は結晶異方性を有しており、例えば、フッ化水素などを用いるウェットエッチングによって加工した場合、マスク形状を転写したままではなくて結晶方位に依存した形でエッチングが進行するため、その形状の制御が極めて難しいとされる。
【0004】
そこで、結晶異方性の影響を受けにくいとされるドライエッチングの手法によって水晶板の外形加工を行うことが注目されている。例えば、特許文献1には、水晶基板上にエッチングガスを流通させてリアクティブイオンエッチングによって水晶振動子を製造することが開示されている。しかしながら、水晶のような酸化物単結晶は、ドライエッチングでの被加工性がよくなく、エッチング中に割れや欠けなどを生じやすい。これらの割れや欠けなどは、ドライエッチング中に水晶板の温度が例えば200℃以上に達するためであると考えられている。ドライエッチング中の割れや欠けの発生を防止するために、支持基板に対して水晶ウエハを貼り付けるか接合させることによって水晶ウエハを支持し、その状態で水晶ウエハに対してドライエッチングを行うことが提案されている。このように構成すれば、支持基板によって水晶板の全体が指示されていることから、エッチング中に温度が上昇したとしても、水晶板における割れや欠けの発生を防止することができる。例えば特許文献2は、シリコンやガラスなどからなる支持基板に、粘着剤フィルムを介し水晶ウエハを貼り付けてドライエッチングを行うことを開示している。
【0005】
ところで、水晶振動子における小型化の進行や、半導体デバイス製造技術を応用したMEMS(Microelectromechanical systems)技術の進展により、ドライエッチングの際に水晶ウエハを支持するために用いられる支持基板自体を水晶振動子の構造部材(例えば、容器)として用いることが検討されるようになってきている。しかしながら、水晶振動子を支持基板に貼り付けたり接合させたりした結果、水晶板における振動領域までが支持基板と接合したり接触したりしていると、水晶板のその共振周波数での振動が妨げられ、その結果、水晶振動子の特性の大きな劣化がもたらされる。
【0006】
なお特許文献3には、水晶板のドライエッチングに関するものではないが、水晶などの圧電基板を有する弾性表面波(SAW;Surface Acoustic Wave)デバイスの小型化のために、圧電基板の表面に樹脂層を形成するとともに、圧電基板における櫛歯電極(IDT;Interdigital Transducer)の形成部では樹脂層中に空洞部を設け、櫛歯電極の形成部が樹脂層と接しないようにした構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−242134号公報
【特許文献2】特開2010−177540号公報
【特許文献3】特開2010−56833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
水晶板をドライエッチングによって加工する際に割れや欠けの発生を防止するためには、水晶板を支持基板に貼り付けたり接合することは有効な手段である。しかしながら、水晶板が接合した支持基板をそのまま水晶振動子の構造部分に使用すると、水晶板の振動部が支持基板に接触したり接合したりしているので、水晶振動子の特性が大きく劣化するという問題が生じる。
【0009】
本発明の目的は、特性が劣化せず、かつ小型化が容易な水晶振動子をドライエッチングにより製造する方法と、そのような方法によって製造された水晶振動子とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の水晶振動子の製造方法は、水晶振動子における振動領域に対応して、表面に振動領域より大きい窪みが形成された支持基板を用意し、支持基板の表面に水晶板を、窪みでは水晶板が支持基板に接触しないように、接合する段階と、水晶板に対してドライエッチングを適用して、振動領域とその振動領域を取り囲む枠部とが支持梁部を介して接続する形状となるように、水晶板を振動領域と枠部とに分離する段階と、を有する。
【0011】
この製造方法では、水晶板との接合を行う前に予め支持基板の表面に窪みを設け、水晶板の振動領域が支持基板とは接触していない状態でドライエッチングが進行するようにする。このようにして得られる水晶振動子では、水晶振動子としての振動領域が支持基板と接触したり接合したりすることがないので、その振動が妨げられない。支持基板への窪みの生成は、例えば、ドライエッチングあるいはウェットエッチングなどの手法によって行われる。窪みの深さは、振動領域と支持基板との接触を確実を防ぐことができるものであればよく、例えば、0.1μm以上とする。また、窪みは、支持基板を貫通するものではないので、窪みの深さは支持基板の厚さ未満である。
【0012】
本発明の水晶振動子は、支持基板と、支持基板の表面に接合された水晶板とを有し、水晶板は、振動領域とその振動領域を取り囲む枠部とが支持梁部を介して接続する形状を有し、ドライエッチングによって振動領域と枠部とが分離されており、支持基板の表面には、振動領域と支持基板とが接触しないように、振動領域に対応して振動領域よりも大きい窪みが設けられている。
【発明の効果】
【0013】
ドライエッチングの際に水晶板を支持する支持基板に、水晶板の振動領域に対応してその振動領域よりも大きい窪みを予め設けておく。その結果、水晶板と支持基板とを接合したことによって水晶板の振動が妨げられることがなくなり、振動特性が良好に維持された水晶振動子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a),(b)は、本発明の実施の一形態での水晶ウェハを示す断面図と平面図である。
【図2】(a),(b)は、支持基板を示す断面図と平面図である。
【図3】水晶振動子の製造工程を示す断面図である。
【図4】(a),(b)は、水晶振動子の製造工程を示す断面図と平面図である。
【図5】(a),(b)は、水晶振動子を示す断面図と平面図である。
【図6】振動領域の支持部を拡大して示す図である。
【図7】(a),(b)は、封止部材を示す断面図と底面図である。
【図8】(a),(b)は、水晶振動子の製造工程を示す断面図と平面図である。
【図9】(a),(b)は、水晶振動子の製造工程を示す断面図と平面図である。
【図10】(a),(b)は、水晶振動子を示す断面図と平面図である。
【図11】水晶板の形状の一例を示す図である。
【図12】水晶板の形状の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
本発明に基づく水晶振動子は、水晶振動子の振動領域に対応して表面に振動領域より大きい窪みが形成された支持基板と、水晶板とを接合し、その後、水晶板に対してドライエッチングを適用して製造されるものである。
【0017】
図1(a),(b)は、それぞれ、接合前の水晶板10を示す断面図と平面図である。図1(a)は、図1(b)のA−A’線での断面を示している。水晶板10は、例えばGTカットの水晶板として水晶の単結晶から切り出されたものであり、略矩形の形状を有している。もっとも、複数の水晶振動子に相当する大きさの水晶板(すなわち水晶ウエハ)を用いて複数個の水晶振動子を同時に形成し、その後、ダイシングにより個々の水晶振動子に分割することも可能であり、その場合は、1個の水晶振動子に対応する部分が略矩形の形状を有することになる。ここでは、GTカットの水晶板の場合を例にして説明するが、水晶板の結晶方位はGTカットに限られるものではなく、例えば、ATカットやその他のカットのものであってもよい。
【0018】
水晶板10の中央部が振動領域11であり、振動領域11に対応して、水晶板10の両方の主面には、それぞれ、励振電極12,13が設けられている。ここでは輪郭振動型のGTカットの水晶振動子を想定しているので、振動領域11は真円に近い楕円形とされ、励振電極12,13は、振動領域と同形状に設けられている。水晶板10の図示上側の主面(第1の主面)の外周に沿って、後述する封止部材との接合に設けられる金属膜14が形成されている。水晶板10の第1の主面では、さらに、励振電極12と金属膜14との間の領域に、接続電極15,16が設けられており、接続電極15は、細長い形状の引出電極17を介して励振電極12に電気的に接続している。接続電極16の形成位置には、水晶板10の他方の主面(第2の主面)側に貫通した導電路18が設けられている。導電路18は、いわゆる貫通電極孔として形成されるものである。水晶板10の第2の主面には、導電路18の端部と励振電極13とを電気的に接続する引出電極19が設けられている。引出電極17,19は、後述するように、水晶板10における外周部である枠部20から振動領域11を保持する支持梁部21,22の形成領域に設けらている。ここでは、GTカットの水晶振動子を想定しているので、後述するドライエッチングによって、支持梁部21,22は、振動領域11から見て相互に反対方向に延びるように形成される。
【0019】
励振電極12,13及び引出電極17,19は、例えば、蒸着やスパッタリングなどの手法によって形成される。また、金属膜14及び接続電極15,16は、水晶板10上に例えば、クロム(Cr)薄膜と金(Au)薄膜とをこの順で、スパッタ、蒸着、メッキなどにより成膜し、その後、パターニングを行うことによって、同一材料で同一の厚さに形成される。励振電極12、金属膜14、接続電極15,16及び引出電極17を同時に形成するようにしてもよい。
【0020】
図2(a),(b)は、それぞれ、接合前の支持基板30を示す断面図と平面図である。図2(a)は、図2(b)のA−A’線での断面を示している。支持基板30は、例えば、シリコン(Si)などからなる。支持基板30の上面には、水晶板10における振動領域11、支持梁部21,22及び接続電極16の位置に対応して、これらの振動領域11、支持梁部21,22及び接続電極16よりもやや大きな形状の窪み31が形成されている。窪み31は、支持基板30に対してウェットエッチングあるいはドライエッチングを施すことによって形成され、その深さは例えば1μm程度とされる。
【0021】
次に、支持基板30の上面に対し、水晶板10の第2の主面を接合する。この接合は、接着剤などを用いない直接的な接合で行うものとする。例えば、表面活性化接合により、支持基板30と水晶板10とを接合する。表面活性化接合は、真空中においてAr+イオンなどを照射させることによって表面を活性化させ、その後、活性化させた表面同士を圧着することにより両者を接合するものであり、加熱などを行わなくてよいという利点を有するものである。図3は、接合を行った状態での断面形状を示しており、図1,2におけるA−A’線での断面に対応している。水晶板10の第2の主面に形成されている励振電極13及び引出電極19は、支持基板30の窪み31内にあって、支持基板30とは直接は接触していない。また、水晶板10における振動領域11及び支持梁部21,22となるべき部位も支持基板30とは接触していない。
【0022】
次に、水晶板10の第1の主面上に、ドライエッチングでのマスクとなる、レジストなどの保護膜材料35を形成する。図4は、保護膜材料35を形成した状態での水晶板10及び支持基板30を示すものであって、(a)は断面図であり、(b)は平面図である。図4(a)は、図4(b)のA−A’線での断面を示している。保護膜材料35は、フォトリソグラフィー技術によってパターニングされており、水晶片10における振動領域11、枠部20及び支持梁部21,22の上に設けられ、枠部20から振動領域11を分離する領域上には設けられていない。ここで重要なことは、支持基板30に設けられた窪み31の内側となる領域に対応する位置にのみに、保護膜材料35のうち振動領域11に対応する部分が形成されていることである。
【0023】
次に、保護膜材料35をマスクとして、水晶板10が貫通するまでエッチングを行い、保護膜材料35を除去する。図5(a),(b)は、それぞれ、エッチング後の状態を示す断面図と平面図である。図5(a)は、図5(b)のA−A’線での断面を示している。本実施形態は、水晶板10の振動領域11が支持基板30から浮いた状態でドライエッチングを行うことに特徴がある。ドライエッチングのエッチングガスとしては、二酸化シリコンのドライエッチングに一般的に使用されている、例えば、フッ化炭素(CF)系のガスを用いることができる。
【0024】
以上の工程により、水晶板10が振動領域11とその振動領域11を取り囲む枠部20とに分離され、振動領域11と枠部20とが支持梁部21,22を介して接続する形状に水晶板10が加工されたことになる。振動領域11及び支持梁部21,22は、支持基板30に形成された窪み31の領域内に位置している。振動領域11及び支持梁部21,22は支持基板30とは接触せず、振動領域11の振動が支持基板30によって阻害されることもない。図6は、水晶板10における振動領域11を支持する部分を拡大して示すものであり、説明のため、各電極の図示を省略している。振動領域11が窪み31内に位置することにより、支持基板30とは接触しないことが図6に示されている。
【0025】
接続電極15,16は励振電極12,13にそれぞれ電気的に接続しているので、支持基板30に支持されたままの水晶板10を例えばセラミックパッケージ内に格納し、接続電極15,16を外部に電気的に引き出すことにより、水晶振動子を最終的に完成させることができる。
【0026】
ところで、図5(a),(b)に示した支持基板30に支持されたままの水晶板10を容器内に格納して水晶振動子を構成した場合には、水晶振動子の高さ方向の寸法を小さくすることが難しい、という問題が生じる。そこで、支持基板30自体を水晶振動子の容器として用いることが考えられる。その場合には、水晶板10の第1の主面に対して封止部材を接合し、支持基板30、水晶板10の枠部20及び封止部材によって形成された空間内に振動領域11が密閉封入されるような構成とすればよい。
【0027】
図7(a),(b)は、それぞれ封止部材の一例の断面図と底面図である。図7(a)は、図7(b)のA−A’線での断面を示している。封止部材40は、例えば、シリコンなどからなる。封止部材40の底面では、水晶板10の金属膜14と対応するように金属膜41が設けられており、水晶板10での接続電極15,16に対応する位置に接続電極42,43が設けられている。接続電極42,43は金属膜41と同一工程、同一材料で同じ厚さに形成されている。接続電極42,43の位置には、外部接続用の貫通電極44,45がそれぞれ封止部材40に埋め込まれており、貫通電極44,45の一端はそれぞれ接続電極42,43に電気的に接続している。貫通電極44,45は、銅(Cu)や金をメッキで埋め込むことによって形成できる。あるいは、タングステン(W)層、または不純物がドープされたポリシリコン層をCVD(化学気相成長)法によって設けることによっても、貫通電極44,45を設けることができる。封止部材40の底面には、さらに、水晶板10での振動領域11に対応して振動領域11よりも大きな窪み48が設けられており、封止部材40を水晶板10に接合したときに振動領域11が封止部材40に接触しないようにされている。
【0028】
図8は、封止部材40を水晶板10に接合した状態を示したものであって、(a)は断面図であり、(b)は平面図である。図8(a)は、図8(b)のA−A’線での断面を示している。封止部材40の水晶板10への接合は、水晶板10の金属膜14と封止部材40の金属膜41とを接合させ、水晶板の接続電極15,16と封止部材40の接続電極42,43とを接合することによって行われる。接合には、例えば、表面活性化接合などの手法が用いられる。接合の結果、水晶板10の振動領域11は、支持基板30、枠部20及び封止部材40によって形成された空間内に密閉封入されることになる。特に、真空中において水晶板10への封止部材40の接合を行えば、振動領域11は真空中に密閉されることになる。
【0029】
次に、封止部材40の上面側から封止部材40を研磨することによって(バックグラインドすることによって)、貫通電極44,45を露出させる。図9(a),(b)は、それぞれ、貫通電極を露出させた状態での断面図と平面図である。図9(a)は、図9(b)のA−A’線での断面を示している。そののち、貫通電極44,45の露出位置に対応して、実装端子46,47を封止部材40の上面に形成する。実装端子46,47は、貫通電極44,45と電気的に接続しており、したがって、励振電極12,13と電気的に接続している。実装電極46,47は、完成した水晶振動子を回路基板上に表面実装するために用いられる。複数個の水晶振動子に相当する大きさの水晶板10、支持基板30及び封止部材40を用いて一括してこれら複数個の水晶振動子を形成した場合には、この段階において、ダイシングにより個々の水晶振動子に分割する。図10(a),(b)は、それぞれ、完成した水晶振動子の断面図と平面図である。図10(a)は、図10(b)のA−A’線での断面を示している。
【0030】
なお、この構成では、水晶板10への接合の前に、封止部材40において貫通電極44,45を形成しておくことができるので、貫通電極44,45における材料の自由度を高めることができる。また、封止部材40の水晶板10への接合により、封止と電気的配線とを同時に行うことができることもこの方法のメリットである。
【0031】
以上説明した水晶振動子では、ドライエッチングにより水晶板10を加工し、枠部20から振動領域11を分離している。二酸化シリコンである水晶をドライエッチングする場合、フッ化炭素系のガスをエッチングガスとして用いることにより、大きなエッチング速度を得ることができるが、エッチングされた水晶の側面に、エッチング反応によって副生した堆積物(いわゆるデポ物)が付着する。この堆積物は、水晶の側面に強固に付着し、しかも、成分として酸化物を含んでいるため、半導体装置製造分野における通常の有機物除去工程に用いられる例えばアセトンなどの溶媒を用いた場合には、除去することが難しい。専用の除去液を用いた場合においても、水晶板の側面部に付着した堆積物はなかなか除去されない。
【0032】
本発明者らの検討によれば、ドライエッチングによって副生した堆積物は、直角に折れ曲がった部分の内側のような箇所には付着しやすいものの、ゆるやかな円弧状の内面のような形状に対する堆積物は、比較的除去しやすいことがわかった。すなわち、ドライエッチングされる部分を矩形ではなく滑らか円弧状とすることにより、ドライエッチング後の堆積物除去が容易になると考えられる。本実施形態の水晶振動子は、枠部20から延びる支持梁部21,22によって振動領域11を保持する構造となっているが、振動領域11の形状やサイズによって共振周波数や振動特性が異なり、良好な振動特性、所望の共振周波数を得るためには、振動領域11の形状やサイズを変えることができない。しかしながら、枠部20の内壁の形状については、共振周波数や振動特性に影響を与えないので、自由に設定することができる。そこで水晶板10をドライエッチングにして枠部20から振動領域11を分離する際に、枠部20の内周を円または楕円にすることが好ましい。水晶振動子の大きさの関係で枠部20の内周を円または楕円とすることが難しい場合には、角が丸められた多角形状に加工するようにすることが好ましい。角が丸められた多角形状は、例えば、角が丸められた矩形であり、角の曲率半径が0.1μm以上1mm以下というものである。
【0033】
図11は、このように枠部20の内周を円または楕円に形成した例を示している。図11ではGTカットの水晶振動子を想定して、振動領域11が真円に近い楕円に形成されている。図12は、枠部20の内周を円または楕円に形成した別の例を示している。図12ではATカットの水晶振動子を想定して、振動領域11が矩形に形成されている。
【符号の説明】
【0034】
10…水晶板、11…振動領域、12,13…励振電極、14…金属膜、15,16…接続電極、17,19…引出電極、18…導電路、20…枠部、21,22…支持梁部、30…支持基板、31…窪み、35…保護膜部材、40…封止部材、41…金属膜、42,43…接続電極、44,45…貫通電極、46,47…実装端子、48…窪み。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶振動子を製造する方法であって、
水晶振動子における振動領域に対応して、表面に該振動領域より大きい窪みが形成された支持基板を用意し、前記支持基板の前記表面に水晶板を、前記窪みでは前記水晶板が前記支持基板に接触しないように、接合する段階と、
前記水晶板に対してドライエッチングを適用して、前記振動領域と該振動領域を取り囲む枠部とが支持梁部を介して接続する形状となるように、前記水晶板を前記振動領域と前記枠部とに分離する段階と、
を有する方法。
【請求項2】
前記水晶板の第1の主面に、前記振動領域に対応して形成された第1の励振電極と、前記枠部の領域内に形成された第1及び第2の接続電極と、前記支持梁部に対応して形成され前記第1の励振電極と前記第1の接続電極とを電気的に接続する第1の引出電極とが設けられており、
前記第2の接続電極の位置において前記水晶板を貫通する導電路が形成されており、
前記水晶板の第2の主面に、前記振動領域に対応して形成された第2の励振電極と、前記支持梁部に対応して形成され前記第2の励振電極と前記導電路とを電気的に接続する第2の引出電極とが設けられており、
前記水晶板の前記第2の主面が前記支持基板に接合される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1及び第2の接続電極にそれぞれ対応する第1及び第2の貫通電極を有する封止部材を前記枠部に対して接合する段階をさらに備え、前記支持基板、前記枠部及び前記封止部材によって形成された空間内に前記振動領域を封入する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記分離する段階において前記ドライエッチングにより、前記枠部の内周を円、楕円、または角が丸められた多角形状に加工する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記支持基板はシリコン基板であり、表面活性化接合によって前記水晶板を前記支持基板に接合する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記振動領域は、GTカットまたはATカットの振動領域として形成される、請求項1乃至5に記載の方法。
【請求項7】
支持基板と、前記支持基板の表面に接合された水晶板とを有し、
前記水晶板は、振動領域と該振動領域を取り囲む枠部とが支持梁部を介して接続する形状を有し、ドライエッチングによって前記振動領域と前記枠部とが分離されており、
前記支持基板の前記表面には、前記振動領域と前記支持基板とが接触しないように、前記振動領域に対応して該振動領域よりも大きい窪みが設けられている、
水晶振動子。
【請求項8】
前記水晶板の第1の主面に、前記振動領域に対応して形成された第1の励振電極と、前記枠部の領域内に形成された第1及び第2の接続電極と、前記支持梁部に対応して形成され前記第1の励振電極と前記第1の接続電極とを電気的に接続する第1の引出電極とを備え、
前記第2の接続電極の位置において前記水晶板を貫通する導電路が形成され、
前記水晶板の第2の主面に、前記振動領域に対応して形成された第2の励振電極と、前記支持梁部に対応して形成され前記第2の励振電極と前記導電路とを電気的に接続する第2の引出電極とを備え、
前記水晶板の前記第2の主面が前記支持基板に接合する、請求項7に記載の水晶振動子。
【請求項9】
前記第1及び第2の接続電極にそれぞれ対応する第1及び第2の貫通電極を備えて前記枠部に対して接合した封止部材をさらに有し、
前記支持基板、前記枠部及び前記封止部材によって形成された空間内に前記振動領域が封入されている、請求項7または8に記載の水晶振動子。
【請求項10】
前記枠部の内周が、前記ドライエッチングにより、円、楕円、または角が丸められた多角形状に加工されている、請求項7乃至9のいずれか1項に記載の水晶振動子。
【請求項11】
前記支持基板はシリコン基板であり、表面活性化接合によって前記水晶板が前記支持基板に接合されている、請求項7乃至10のいずれか1項に記載の水晶振動子。
【請求項12】
前記振動領域は、GTカットまたはATカットの振動領域である、請求項7乃至11に記載の水晶振動子。
【請求項1】
水晶振動子を製造する方法であって、
水晶振動子における振動領域に対応して、表面に該振動領域より大きい窪みが形成された支持基板を用意し、前記支持基板の前記表面に水晶板を、前記窪みでは前記水晶板が前記支持基板に接触しないように、接合する段階と、
前記水晶板に対してドライエッチングを適用して、前記振動領域と該振動領域を取り囲む枠部とが支持梁部を介して接続する形状となるように、前記水晶板を前記振動領域と前記枠部とに分離する段階と、
を有する方法。
【請求項2】
前記水晶板の第1の主面に、前記振動領域に対応して形成された第1の励振電極と、前記枠部の領域内に形成された第1及び第2の接続電極と、前記支持梁部に対応して形成され前記第1の励振電極と前記第1の接続電極とを電気的に接続する第1の引出電極とが設けられており、
前記第2の接続電極の位置において前記水晶板を貫通する導電路が形成されており、
前記水晶板の第2の主面に、前記振動領域に対応して形成された第2の励振電極と、前記支持梁部に対応して形成され前記第2の励振電極と前記導電路とを電気的に接続する第2の引出電極とが設けられており、
前記水晶板の前記第2の主面が前記支持基板に接合される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1及び第2の接続電極にそれぞれ対応する第1及び第2の貫通電極を有する封止部材を前記枠部に対して接合する段階をさらに備え、前記支持基板、前記枠部及び前記封止部材によって形成された空間内に前記振動領域を封入する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記分離する段階において前記ドライエッチングにより、前記枠部の内周を円、楕円、または角が丸められた多角形状に加工する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記支持基板はシリコン基板であり、表面活性化接合によって前記水晶板を前記支持基板に接合する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記振動領域は、GTカットまたはATカットの振動領域として形成される、請求項1乃至5に記載の方法。
【請求項7】
支持基板と、前記支持基板の表面に接合された水晶板とを有し、
前記水晶板は、振動領域と該振動領域を取り囲む枠部とが支持梁部を介して接続する形状を有し、ドライエッチングによって前記振動領域と前記枠部とが分離されており、
前記支持基板の前記表面には、前記振動領域と前記支持基板とが接触しないように、前記振動領域に対応して該振動領域よりも大きい窪みが設けられている、
水晶振動子。
【請求項8】
前記水晶板の第1の主面に、前記振動領域に対応して形成された第1の励振電極と、前記枠部の領域内に形成された第1及び第2の接続電極と、前記支持梁部に対応して形成され前記第1の励振電極と前記第1の接続電極とを電気的に接続する第1の引出電極とを備え、
前記第2の接続電極の位置において前記水晶板を貫通する導電路が形成され、
前記水晶板の第2の主面に、前記振動領域に対応して形成された第2の励振電極と、前記支持梁部に対応して形成され前記第2の励振電極と前記導電路とを電気的に接続する第2の引出電極とを備え、
前記水晶板の前記第2の主面が前記支持基板に接合する、請求項7に記載の水晶振動子。
【請求項9】
前記第1及び第2の接続電極にそれぞれ対応する第1及び第2の貫通電極を備えて前記枠部に対して接合した封止部材をさらに有し、
前記支持基板、前記枠部及び前記封止部材によって形成された空間内に前記振動領域が封入されている、請求項7または8に記載の水晶振動子。
【請求項10】
前記枠部の内周が、前記ドライエッチングにより、円、楕円、または角が丸められた多角形状に加工されている、請求項7乃至9のいずれか1項に記載の水晶振動子。
【請求項11】
前記支持基板はシリコン基板であり、表面活性化接合によって前記水晶板が前記支持基板に接合されている、請求項7乃至10のいずれか1項に記載の水晶振動子。
【請求項12】
前記振動領域は、GTカットまたはATカットの振動領域である、請求項7乃至11に記載の水晶振動子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−81022(P2013−81022A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219204(P2011−219204)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]