説明

水流発電機

【課題】水流中に係留配置される水中発電機の改良。
【解決手段】水中発電機10は、ステータコアと、逆回転タービンブレード14,16とを含み、ハブ18,20内の永久磁石32とコアハウジング12内のコイル34とを有している。ハウジングの突起によってつなぎ止められると、水流はタービンブレード14,16を回転させ、係留ワイヤ24を介して陸上施設に商用利用のために供給される電力を発生する。バラストタンク50,52は所定の深さで発電機10を維持するために設けられる。小さいステータコイル70及び永久磁石72は、回転ハブ18,20及びコアハウジング12にそれぞれ設けられて、ブレード14,16又はハブ18,20内のバッテリ74を充電することにより、ブレード14,16のピッチを変更して該ブレードが保守停止の間にフェザーリング可能なように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水流に反応して電力を発生させる発電機に関し、特に、本体部周りに回転可能なタービンブレードを有する水中発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
環境に配慮した発電に対する需要が増大するに伴い、炭素を発生する電力に対する多くの代替案が提案されている。例えば、米国特許第3,209,156号には、水中計測及び検出ユニットへ限られた電力を供給するための水中発電機が開示されている。供給された電力は、海洋機器の水中通信及び管理のための動力をもたらす。上述した特許における発電機は中央ハウジングを含み、中央ハウジングは、永久磁石とステータコイルの構成が前記機器を作動させるための電力を発生するように、前記ハウジングに軸支されたハブを回転させる、周方向に離間して配置された複数のブレードを装着している。開示された発電機は、しかしながら、従来のタービンと比較して低速度で回転し、得られる電力生産能力は非常に低い。上記特許の構成の採用は、陸地で用いる商用電力の発電には、著しく適していない。従って、商用陸地利用のための電力を生成するための水中発電機の開発が必要である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の好ましい実施形態では、水流中に配置される発電機であって、その内側に複数のステータコイルを保持するとともに、概略長手方向軸を規定する中心体と、前記中心体によって支持され、該中心体周りに回転可能な一対の環状ハブとを備え、前記ハブの各々には複数のタービンブレード及び磁束を発生させる複数の磁石が取り付けられており、前記ハブは前記ステータコイルの周囲に設置されており、前記ステータコイルは前記中心体周りの前記ブレード及び前記ハブの回転に応えて、前記磁束及び当該コイルとの相互作用によって発電可能であり、前記ブレードは自由端を有し且つ前記水流の方向において後方に傾斜されている、発電機が提供される。
【0004】
本発明の別の実施形態では、水流中に配置される発電機であって、その内部に複数のステータコイルを保持し、概略長手方向軸を規定する中心体と;前記中心体によって支持され、該中心体周りに回転可能な一対の環状ハブとを備え、前記ハブの各々には複数のタービンブレード及び磁束を発生する複数の磁石が取り付けられており、前記ハブは前記ステータコイルの周囲に設置され、前記ステータコイルは前記中心体周りの前記ブレード及びハブの回転に応えて、前記磁束と当該コイルとの相互作用によって発電可能であり、前記ブレードの少なくとも一部分は、当該ブレードの一部分が回転運動できるように、前記長手方向軸と非平行な軸周りに回転可能である、発電機が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
ここで、図面、特に図1を参照すると、概ね符号10を付されている、電力を生成するための水中発電機が図示されている。水中発電機10はステータコアハウジング12と、ロータとを備えている。ロータは、少なくとも一対の逆回転するタービン(インペラー)ブレード14,16であって、それぞれ逆回転するタービンハブ18,20に取り付けられたタービンブレード14、16を含む。図示されているように、ハブに取り付けられたインペラブレード14,16は、円周方向に互いに離間しており、それらの半径方向の外側端部は開放されている、即ちその先端は互いに接続されていない。発電機10は水中アンカー22につなぎ止められるように構成されている。係留ワイヤ24はアンカー22及びステータハウジング12の突出部上の連結器26を相互に接続する。 加えて、図1に示されているように、発電機10によって発生された電力は、好ましくは、係留ワイヤ24に保持される送電線によってアンカーへ送電され、その後、送電線28を介して、商用配電するための陸上の電力施設に送電される。
【0006】
図2に示されているように、各ハブ18,20は、環状に軸方向に離間された列にて配置され、周方向に離間された複数の磁石32を保持している。鉄心の周囲に巻回されるとともに、コアハウジング12に保持された複数のステータコイル34は、永久磁石32に対して半径方向に対向している。ハブ18,20は固定されたステータコアに対して回転するので、磁束はステータコイルと協働して電力を発生させることが理解されよう。電力の発生は流速で三乗された水流の関数であるので、この装置を高流量領域に配置すること、及びブレードを横切って通過する水流の速度を増大させることは非常に有益である。このため、装置の中心に位置された大きいハウジングを有することによって、この領域を通常通過するであろう水は、中心ハウジングの周囲を通過することになる。これはブレード領域を通過する水の速度を増大させ、発電量を増やす。例えば、1/2メガワットタービンでは、コアハウジングの直径は、全径34フィート(約10.36m)に対して、約14フィート(約4.27m)とすることができる。 これらの寸法及びコアハウジング12が差し込まれた発電機の中心により、ローターブレードを通過する速度は、実質的に、例えば約17%上昇され、結果として利用可能な理論出力の約60%の上昇をもたらす。
【0007】
図2及び図4を参照すると、ハブ18,20の各々は、テーパ状の後方ベアリング面で終端している。例えば、ハブ20のベアリング面40はテーパ状に又は後方及び半径外側方向に傾斜されている。ステータコアハウジング12上の協働するベアリング面42は、同様に後方、半径外側方向にテーパ状となっている。面40,42は好ましくは高分子材料で形成される。これらの面がテーパ状である結果として、ブレード上で作用する水流は、コアハウジング12のテーパ面42に対してハブ18,20を軸上に着座させ及び中心に導く。加えて、流体力学の膜がベアリング面40,42の間にもたらされる。これはコアハウジング12内に設置されたポンプ46によって実現される。ポンプ46は海水を引き込んで、管路48を介してベアリング面40,42の間に海水を送り込む。流体力学の膜は摩擦及び摩耗を減少させ、特に始動中に有益である。なぜならば、タービンブレードが一旦全速になった後は、ブレードは磁力的に中心に位置されるからである。これは、高速で軸推力を補正する補助となるだろう。さらに、磁石及びポンプへの吸引管中のフィルタの設置による強制的な水の潤滑による濾過作用は、瓦礫がステータとロータの間の隙間に進入することを抑止し、ロータ中の永久磁石及びステータ中のコイルに起因する磁性領域に磁性材料を進入させない助けになるだろう。
【0008】
図2に最もよく示されているように、ブレード14,16は流れの方向において後方に傾斜している。加えて、図1に示されているように、ブレード14,16はそれらの外側端部が開放している。これは、ロータから瓦礫をはがし落とすことを可能にしつつ、瓦礫のないブレードを維持することを可能とする。
【0009】
前述の通り、ロータは相反して回転される。従って、コアハウジングにおける正味トルクは零で釣り合うことができ、それにより、ハウジング12の回転が防止されるとともに、実質的に回転しない姿勢で維持される。ブレードは互いに独立して逆回転することが好ましいが、ブレードは同じ回転速度で回転するように互いに連動させてもよい。これは二つのロータの間に機械的な歯車又はスラスト車を設置することによって実現できる。 また、二つのステータを電気的に互いに接続することにより、二つのロータは同じ回転速度で回転するように電気的な力を受けることになり、機械的な同期を必要としなくてもよい。さらに、前方のロータは後方のロータよりも、水流において、より効率的であると予測される。それ故、後方のロータは、トルクを実質的に均衡させるために、前方のロータよりも大きい直径を有し得る。
【0010】
バラスト室がコアハウジング12内に設けられる。特に、前方のバラスト室50及び後方のバラスト室52が設けられている。図2に示されるポンプ54は、前方及び後方のバラスト室50,52からそれぞれ海水を送り出し又はこれらに海水を送り込むために設けられる。 ポンプ54の圧力側は前方のバラスト室50、後方のバラスト室52の何れか、又は双方のバラスト室にバルブ56を介して連絡されている。バラスト室は、発電機を水面下の調整可能な且つ最適な深さに維持するように安定させ得る。装置は、それ故、最も高い流れに装置を位置させることによって、上昇又は降下されて発電量を最適化することが出来る。加えて、流れが、ある深さにおいて強すぎるならば、これに代わる深さをバラストを調整することによって実現できる。図示されたバラスト室は、コアハウジングの上部を必要な電気的設備の設置出来るように開けておくため、コアハウジングの下部に位置されている。従って、バラストは振り子として作用し、発電機の中心体の回転防止を容易にする。接続は一点接続のみ、即ち係留ワイヤ24だけなので、発電機は、一方の側又は他方の側において過度の緊張を生じることなく、流れ方向に留まるように、アンカーポイントの周囲のどのような方向においても回動自在である。また、前方及び後方のバラストタンクの両方を有することによって、流れ中の装置の姿勢を調整可能である。
【0011】
ブレードの回転は、水中の継続的な流れにかかわらず、発電機の保守が必要である場合に停止される可能性がある。このように、発電機を点検・修理するためにブレードの回転及び発電を停止することが必要な場合がある。発電の停止は、負荷を切断することによって達成され得る。しかし、これはブレードの回転を停止させず、負荷が無い場合においてブレードの回転速度を上昇させることがある。さらに、発電機は電圧の生成を継続する場合があり、電圧及び寄生電流は保守作業員に対して有害となり得るばかりか、設備のオーバーヒートや絶縁破壊の原因となる。
【0012】
ブレードの回転を停止するため、及び発電機の抵抗を上昇させてそれ故に係留ワイヤの負荷を増加させるであろうブレードの回転を停止させるため、ローターブレードはフェザーリングされている。 図示されているように、ブレードは全長に沿ってねじれており、もしもフェザーリングされたとしても、回転を完全に妨げるであろうブレードの特有の姿勢はない。タービンブレード14,16は、それ故に、好ましくは、例えば内側ブレード部58及び外側ブレード部60のような二つの部分で形成される。シャフト62(図3)は外側及び内側ブレードを相互に結合している。その結果、内側ブレード部58に対してシャフト62を回転させることによって、外側ブレード部60をフェザーリング姿勢に、即ちブレードの内側部58のねじれに対して逆方向にねじれた姿勢に、回転的に位置合わせすることが可能である。 内側及び外側ブレード部の逆方向へのねじれは、従ってブレード全体をフェザーリングするのに役立つ。
【0013】
発電機の水中の環境はその環境においてブレードをどのようにフェザーリングするかの問題を提示する。図3を参照すると、好ましくは各ハブ18,20において、ステータハウジング12上の複数の永久磁石72に対向して界磁コイル70が設けられている。ハブ及びステータハウジングの両者は、 それぞれにステータ及びロータとして役目を果たす。ステータコイル70は非常に小さくしてもよく、バッテリ74のような、ハブ又はブレード中に設置されたバッテリの蓄電、充電を維持するのに十分な電力を発生させるだけでよい。一方、バッテリ74は電気アクチュエータ76に接続されており、電気アクチュエータ76はシャフト62に機械的に連結されて、シャフト62を、そしてそれゆえにブレードの外側部60を回転させる。一旦ブレードの外側部60が所望の動作及びフェザーリング位置へと回転されたならば、内側及び外側ブレードの間の機械的な連結を行ってもよい。ステータコイル70及び永久磁石72は、バッテリ74を充電するときを除き、ハブの回転に抵抗を与えることはない。完全に充電される場合には、ハブに負荷を与えることはない。ブレードのフェザーリングをもたらす電気信号、即ちアクチュエータ76の作動は、コアハウジング12及びロータ間の信号によって実現できる。ロータの外側部は、発電機が持つ負荷をバランスさせるため、互いに相対的に調整することもできる。 従って、例えばメンテナンスのために発電機の運転が停止される場合には、ブレードの外側部はブレード上で水流によって生成されるトルクが小さいか又はない位置に回転される。加えて、フェザーリングする場合に、発電機本体に結果として生じる抵抗は、ブレードが例えばブレーキによって単に停止される場合よりも格段に小さい。ブレードが一旦停止されると、コアハウジング12内のバラストは、メンテナンスのために水面に発電機を浮かすように調整される。このように、ロータの回転に関する電気的及び機械的な危険を最小限に抑えることができる。
【0014】
本発明は最も実用的で望ましい実施形態として現在考えられるものに関連して記載されたものであるが、本発明は開示された実施形態に限定されることはなく、むしろ添付のクレームの精神及び範囲内に含まれる各種の変形や均等な構成に及ぶように意図されていることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の好ましい実施形態に従って構成された水流発電機の概略図である。
【図2】図2は、その断面図である。
【図3】図3は、その部分拡大断面図であり、バッテリ再充電動作中にブレードを係留する方法及び装置を示している。
【図4】図4は、図2におけるウォーターベアリングを示す拡大された部分断面図である。
【符号の説明】
【0016】
10 水中発電機
12 ステータコアハウジング
14,16 ブレード
18,20 タービンハブ
24 係留ワイヤ
32 永久磁石
34 ステータコイル
70 界磁コイル
72 永久磁石
74 バッテリ
76 電気アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水流中に配置される発電機であって、
その内側に複数のステータコイルを保持するとともに、概略長手方向軸を規定する中心体と、
前記中心体によって支持され、該中心体周りに回転可能な一対の環状ハブとを備え、
前記ハブの各々には複数のタービンブレード及び磁束を発生させる複数の磁石が取り付けられており、前記ハブは前記ステータコイルの周囲に設置されており、前記中心体周りの前記ブレード及び前記ハブの回転に応えて、前記磁束との相互作用によって発電可能であり、
前記ブレードは自由端を有し且つ前記水流の方向において後方に傾斜されており、
前記ハブ及び前記中心体はレジスタベアリング面と、該中心体によって保持されたポンプとを含み、該ポンプは該ベアリング内に水を注入して前記ベアリング面間に流体力学の膜をもたらす、発電機。
【請求項2】
前記ベアリング面は前記長手方向軸に対して傾斜して、前記ハブを前記中心体上において自ら中心に位置付けさせる請求項1に記載の発電機。
【請求項3】
前記ブレードの少なくとも一部分は、前記ブレードの一部分が回転運動できるように、前記長手方向軸に非平行な軸周りに回転可能である請求項1に記載の発電機。
【請求項4】
前記ブレードの一部分は、各々軸を有するシャフトによって支持されており、前記ブレードの一部分を前記シャフトの軸周りに回転させるアクチュエータを含んでいる請求項3に記載の発電機。
【請求項5】
前記中心体に保持された第2磁石と、前記回転可能なハブのうちの少なくとも一つのハブに保持された第2界磁コイルを含み、該第2界磁コイルは前記第2磁石の磁束との相互作用によって前記アクチュエータを駆動して発電を可能とする請求項4に記載の発電機。
【請求項6】
前記第2磁石及び前記第2界磁コイルは少なくとも一つのバッテリに電気的に接続されており、前記少なくとも一つのバッテリは前記少なくとも一つの回転可能なハブ及びハブに支持されたブレードに保持されており、前記少なくとも一つのハブ及びそのブレードが前記中心体に対して回転している時に前記バッテリが充電される請求項5に記載の発電機。
【請求項7】
前記バッテリは前記アクチュエータに電気的に接続されて、前記ブレードの一部分を回転させる請求項6に記載の発電機。
【請求項8】
前記中心体に連結された係留ワイヤを含む請求項1に記載の発電機。
【請求項9】
水流中に配置される発電機であって、
その内部に複数のステータコイルを保持し、概略長手方向軸を規定する中心体と、
前記中心体によって支持され、該中心体周りに回転可能な一対の環状ハブとを備え、
前記ハブの各々には複数のタービンブレード及び磁束を発生する複数の磁石が取り付けられており、前記ハブは前記ステータコイルの周囲に設置されており、前記ステータコイルは、前記中心体周りの前記ブレード及びハブの回転に応えて、前記磁束との相互作用によって発電を可能とし、
前記ブレードの少なくとも一部分は、当該ブレードの一部分が回転動作できるように、前記長手方向軸と非平行な軸周りに回転可能であり、
前記ブレードの一部分は、各々軸を有するシャフトに支持されており;前記シャフトの軸周りに前記ブレードの一部分を回転させるアクチュエータと、前記中心体に保持された第2磁石と、前記回転可能なハブのうちの少なくとも一つのハブに保持された第2界磁コイルとを含み、該第2界磁コイルは、前記第2磁石の磁束との相互作用によって前記アクチュエータを駆動して発電を可能とし、
前記第2磁石及び前記第2界磁コイルは、少なくとも一つのバッテリに電気的に接続されており;前記少なくとも一つのバッテリは、前記少なくとも一つの回転可能なハブ及びハブに支持されたブレードに保持されており、前記少なくとも一つの回転可能なハブ及びそのブレードが前記中心体に対して回転している時に前記バッテリが充電される、発電機。
【請求項10】
前記バッテリは前記アクチュエータに電気的に接続されて前記ブレードの一部分を回転する請求項9に記載の発電機。
【請求項11】
前記中心体に連結された係留ワイヤを含む請求項9に記載の発電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−16786(P2007−16786A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−185170(P2006−185170)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(506231467)ジェンコール インダストリーズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】