説明

波形断熱パネルの製造方法

【課題】波形断熱パネルの凸条を含むパネル空間内への発泡断熱材の注入・充填を容易にすると共に、パネル端部の美観の向上を図れるようにした波形断熱パネルの製造方法を提供すること。
【解決手段】表面板1の凸条2の裏面底部に、角部が切断可能なL形状の仮止め材5の一方の片5aを固着し、上記仮止め材5の他方の片5bと凸条の端部開口を塞ぐ塞ぎ部材7とを固定部材12で固定し、その後、上記一対の表面板1と枠部材8を仮組みし、空間内に発泡断熱材10の注入・充填をする。発泡断熱材硬化後、仮止め材5の切り込み溝6にて切断して上記塞ぎ部材7と上記仮止め材5の他方の片5bとをパネル本体から引き剥がす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、波形断熱パネルの製造方法に関するもので、更に詳細には、少なくとも一方が長手方向に沿う互いに平行な凹条と凸条を有する一対の表面板と枠部材で形成されたパネル空間内に発泡断熱材を充填してなる波形断熱パネルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、断熱パネルの製造方法においては、一対の表面板と枠部材とで仮組パネルを形成し、注入孔からパネル空間に発泡断熱材を注入・充填し、所定時間経過後に空間内に注入された発泡断熱材が発泡硬化することにより断熱パネルが完成する一連の工程によって行われている。
【0003】
このような断熱パネルの製造においては、発泡断熱材が漏れ出さないように、仮組パネル空間内は、ある程度の密閉性を確保する必要がある。このため、一対の表面板と枠部材のみでは要求される密閉性を確保できない場合は他の部材が必要となる。
【0004】
従来、互いに平行な凹条と凸条を有する表面板を用いた波形断熱パネルの製造方法として、左右端部にL形状側部を有する一方の表面板と、各凸条に亘り(裏面)シートを張着した他方の表面板とを、シートを介して仮組みし、一方の表面板とシートとの間の空間内に発泡断熱材を注入・充填する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1記載のものによれば、上記シートによって凸条に空間部を有する断熱パネルが得られる。しかし、上記構成のみでは発泡断熱材が充填される凸条を塞ぎ切れないため、凸条開口部に例えばテープ等の塞ぎ材を貼ってパネル空間内の密閉性を確保することが考えられる。
【0005】
また、波形状表面板の凸条群に端部材や押えアングル材を装着する構造のものが知られている。上記端部材は端部材に形成された係止舌片を表面板の凹部底面に穿設された係合スリット内に嵌合させることにより表面板と連結する構造であり、上記押えアングル材は押えアングル材の一片と波形状表面板の凸条群の端部をブラインド・リペッド等の固定具により、表面板と連結するものである(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−39652(段落0037、図7,図13,図14)
【特許文献2】特開昭57−144867(特許請求の範囲、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、凸条開口部にテープ等の塞ぎ材を貼るものにおいては、パネルのそれぞれの凸条開口部にテープを貼る必要があるため、非常に手間を要する。
【0008】
また、特許文献2記載のものにおいては、断熱パネルに押えアングル材を着けたまま製品として使用する場合においては、押えアングル材と表面板の間にゴミや水が溜まり易い等の問題があった。また、完成したパネル製品についてパネルの連結や組み立て(施工)の際、端部材等の除去が望まれる場合があり、例えば、凸条の開口部に上記押えアングル部材のような塞ぎ材をリベット等により固定した後、パネルから引き剥がすと、表面板に傷がついたり穴が開いてしまう欠点がある等、断熱パネルの美観が損なわれるという問題があった。
【0009】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、波形断熱パネルの凸条を含むパネル空間内への発泡断熱材の注入・充填を容易にすると共に、パネル端部の美観の向上を図れるようにした波形断熱パネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明の波形断熱パネルの製造方法は、少なくとも一方が、長手方向に沿う互いに平行な凹条と凸条を有する一対の表面板と、両表面板の辺部に配置される枠部材と、両表面板と枠部材にて形成される空間内に注入・充填される発泡断熱材とからなる波形断熱パネルの製造方法であって、上記表面板の凸条における長手方向の端部側の裏面底部に、角部が切断可能なL形状の仮止め材の一方の片を固着し、上記仮止め材の他方の片と凸条の端部開口を塞ぐ塞ぎ部材とを固定部材で固定し、その後、上記表面板と上記枠部材を仮組みし、上記空間内に発泡断熱材を注入・充填し、上記発泡断熱材が硬化した後、上記仮止め材の角部を切断して上記塞ぎ部材と上記仮止め材の他方の片とを引き剥がす、ことを特徴とする。この場合、上記仮止め材が、内角部に切り込み溝を有する合成樹脂製部材である方が好ましい(請求項2)。
【0011】
このように構成することにより、長手方向に沿う互いに平行な凹条と凸条を有する表面板の凸条の裏面底部に、仮止め材の一方を、例えば両面粘着テープや接着剤等にて固着し、上記仮止め材の他方の片と凸条の端部開口を塞ぐ塞ぎ部材とを固定部材で固定することにより波形パネル空間内の密閉性を確保し、発泡断熱材の発泡硬化後、上記仮止め材の角部を切断して上記塞ぎ部材と上記仮止め材の他片とを引き剥がすことができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、上記のように構成されているので、波形断熱パネルの凸条を含むパネル空間内への発泡断熱材の注入・充填を容易にすると共に、パネル本体から表面板の美観を保ったまま塞ぎ部材を引き剥がし除去をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明における波形断熱パネルの第1実施形態の要部を示す斜視図である。
【図2】この発明における仮止め材を示す斜視図(a)及び側面図(b)である。
【図3】この発明における仮止め材の取付状態を示す斜視図である。
【図4】この発明における塞ぎ部材の取付状態を示す斜視図である。
【図5】この発明における表面板、枠部材を仮組みする状態を示す分解斜視図である。
【図6】この発明における仮組パネルへの発泡断熱材の注入状態を示す斜視図である。
【図7】この発明における塞ぎ部材を引き剥がし状態を示す斜視図である。
【図8】この発明に係る波形断熱パネルの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【図9】この発明における波形断熱パネルの第2実施形態の要部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、この発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、この発明における第1実施形態である両表面板が波形である波形断熱パネルの製造方法について説明する。
【0015】
波形断熱パネルは、図1に示すように、長手方向に沿う互いに平行な複数の凹条3と凸条2を有する一対の表面板1と両表面板1の辺部に配置される枠部材8と、後述する塞ぎ部材7によって凸条2の端部開口が塞がれた両表面板1と枠部材8にて形成される空間内に注入・充填される発泡断熱材10とからなり、塞ぎ部材7が除去された状態で製品化されている。この場合、表面板1は例えばアルミニウムや鋼等の板材を、プレス加工やロール加工等により複数の互いに平行な凸条2と凹条3が成形されている。
【0016】
枠部材8は、例えば塩化ビニル等の合成樹脂製材料にて形成されており、表面板1の部辺に折曲された折曲片9aが枠部材8に設けられた嵌合溝9b内に嵌挿されて表面板1と枠部材8とが連結されている。枠部材8の側面には、パネル同士を接合するために設けられる接合凹条部13又は接合凸条部14が設けられている。この場合、接合凹条部13は開口側が拡開するテーパ状に形成され、接合凸条部14は、先端側が狭小なテーパ状に形成されている。また、長手方向の枠部材8の中間部における接合凹条部13の底部には、後述する不活性ガス例えば窒素(N)ガスあるいは発泡断熱材10を注入・充填する注入用孔15が設けられている。
【0017】
発泡断熱材10は、例えば、水を有するポリオール系原液と、ポリイソシアネート系原液と、発泡剤として炭素数5の飽和系炭化水素例えばシクロペンタンもしくは代替フロン例えばHFC−245fa{ダイキン工業(株)製}との混合組成物にて形成されている。
【0018】
次に、上記波形断熱パネルを製造する手順の一例を、図3、図4、図5、図6、図7及び図8に示すフローチャートを参照して説明する。まず、図3に示すように、表面板1の凸条2における長手方向の端部側の裏面底部に、両面接着テープ11を貼着した後に、L形状の仮止め材5の固定片5aを固着する(S−1)。
【0019】
この場合、仮止め材5は、図2に示すように、例えばポリ塩化ビニルにて形成されており、固定片5aと除去片5bからなるL形状に形成されている。仮止め材5の大きさは使用される表面板1の凸部2の大きさによって決定されるが、除去片5bの高さは凸部の高さ同等程度であることが好ましい。固定片5aに対して除去片5bの切断を容易にするため、仮止め材5の内角部には切り込み溝6が形成されている。このように切り込み溝6を形成することにより、図2(b)に示すように、除去片5b部に、直交部を支点として反時計回りの方向に力が加わることにより亀裂が入り、除去片5bの切断が可能となる。このため、切り込み溝6は仮止め材5内角部付近であって、かつ、固定片5a部表面の端部付近に形成する方が好ましい。
【0020】
仮止め材5は、パネルの幅寸法に応じて表面板端部の凸条2の一つおきから三つおきに固着させることにより、塞ぎ部材7を固定した後、表面板1と塞ぎ部材7の間に隙間が生じにくく、高い密閉性が得られる。仮止め材5を両面接着テープ11を介して表面板1に貼り付ける際は、塞ぎ部材7を表面板1の凸条2の端部開口部に当てた状態で、塞ぎ部材7をガイドにして仮止め材5を貼り付ければ、塞ぎ部材7を固定した後、表面板1と塞ぎ部材7の間に隙間が生じにくくなる。
【0021】
次に、上記仮止め材5の除去片5bと、凸条2の端部開口を塞ぐ塞ぎ部材7とを固定部材であるブラインドリベット12で固定する(S−2)。この場合、塞ぎ部材7は、例えばL字形状に折曲された鋼板あるいはアルミニウム製の押出形材にて形成された断面略L字形状あって、垂直辺7bには適宜間隔をおいて複数の取り付け孔7aが設けられている。塞ぎ部材7の固定は以下の手順で行う。まず、塞ぎ部材7の取り付け孔7aの位置に合わせ、対応する仮止め材5の除去片5bに貫通孔5cをドリルにて形成する。次に、塞ぎ部材7の取り付け孔7aと仮止め材5の貫通孔5cを固定部材であるブラインドリベット12でかしめて固定する。なお、塞ぎ部材7のパネル本体への固定は仮止め材5とのブラインドリベット12による固定のみであり、表面板1との接着・固定をすることはない。
【0022】
上記のようにして塞ぎ部材7が固定された2枚の表面板1と、表面板1の辺部に配置される枠部材8とで、空間を形成した状態に仮組みをする(S−3)。
【0023】
次に、上述のようにして形成された仮組パネル4の空間内に、枠部材8に設けられた注入用孔15から図示しないNガス供給ノズルを挿入し、仮組パネル空間4内に不活性ガスであるNガスを注入し、空間内をNガスで置換する(S−4)。不活性ガス(Nガス)にてパネル空間内の酸素をパージすることにより、発泡剤としてシクロペンタンを使用する場合は、パネル空間内で酸素と可燃性の飽和炭化水素からなる発泡剤が混合するのを防ぎ、高い安全性と生産効率の向上を図ることができる。
【0024】
また、枠部材8には、図示しないガス抜き孔が設けられている。このように枠部材8にガス抜き孔を設けることによって、パネル空間内に注入されるNガスを空間内に満遍なく均一に供給して空間内をNガスで置換した後、置換に供されたNガスをガス抜き孔から外部に排出することができると共に、発泡断熱材10を空間内に注入した際に発生するガスを外部へ排出することができる。したがって、パネル内圧による表面板1や塞ぎ材7の膨れや外れを防止することができる。
【0025】
パネル空間内をNガスで置換した後、パネル空間内に発泡断熱材10を注入・充填する(S−5)。発泡断熱材10は、図示しないミキシング装置に接続する発泡断熱材供給用ノズル16から注入用孔15を介して仮組パネル4空間内に注入・充填される。
【0026】
上述のようにして仮組パネル4の空間内に発泡断熱材10を注入・充填し、発泡断熱材が発泡硬化した後、図7に示すように仮止め材5の切り込み溝6に亀裂を入れて、塞ぎ部材7と仮止め材5の除去片5bとを引き剥がすことにより塞ぎ部材7を除去する(S−6)。塞ぎ部材7を除去するは、図7に示すように、例えば矢印の方向に力を加えることにより、仮止め材5の切り込み溝6に亀裂を入れて、仮止め材5を切り込み溝6部で固定片5aと除去片5bに切断し、除去片5bにブラインドリベット12でのみパネル本体に固定されていた塞ぎ部材7は波形断熱パネル本体から引き剥がすことが可能となる。以上のように波形断熱パネルから容易に塞ぎ部材7を引き剥がすことができ、さらに、塞ぎ部材7を引き離すことにより表面板1を傷つけ穴を開けたりすることがないため表面板1の美観を保つことができる。
【0027】
なお、第1実施形態は両表面板1が波形の波形断熱パネルの製造方法について説明したが、波形断熱パネルは少なくとも一方の表面板1が波形状であればよい。例えば図9に示すように、長手方向に沿う互いに平行な複数の凹条3と凸条2を有する表面板1と、平板状の表面板17と、両表面板1,17の辺部に配置される枠部材8と、塞ぎ部材7によって凸条2の端部開口が塞がれた表面板1と平板状表面板17と枠部材8にて形成された空間内に注入充填される発泡断熱材10とからなり、塞ぎ材7が除去された状態の波形断熱パネルであってもよい。
【0028】
第2実施形態において、平板状表面板17は例えばアルミニウムや鋼等の平板材にて形成される。第2実施形態の波形断熱パネルにおいて、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0029】
次に、第2実施形態の波形断熱パネルの製造方法について説明する。まず、図3に示すように、表面板1の凸条2における長手方向の端部側の裏面底部に、両面接着テープ11を貼着した後に、L形状の仮止め材5の固定片5aを固着する(S−1)。次に、上記仮止め材5の除去片5bと、凸条2の端部開口を塞ぐ塞ぎ部材7とを固定部材であるブラインドリベット12で固定する(S−2)。
【0030】
次に、上記塞ぎ部材7が装着された表面板1と平板状表面板17と枠部材8により仮組みをする(S−3)。平板状表面板17と枠部材8は平板状表面板17の部辺に折曲された図示しない折曲片が枠部材8に設けられた図示しない嵌合溝内に嵌挿されることにより連結する。平板状表面板17側については平板状表面板17と枠部材8の仮組のみでパネル空間内の密閉性の確保が可能である。
【0031】
上述のようにして形成された仮組パネルの空間内に、第1実施形態と同様、注入用孔15からNガスを注入し、パネル空間内を置換した後(S−4)、パネル空間内に発泡断熱材10を注入・充填する(S−5)。発泡断熱材10が発泡硬化した後、波形の表面板1にのみ装着された塞ぎ部材7を第1実施形態と同様に引き剥がす(S−6)。
【0032】
以上のように、一方の表面板1のみが波形の断熱パネルであっても、容易に塞ぎ部材7を引き剥がすことができ、さらに、塞ぎ部材7を引き離すことにより表面板1を傷つけ穴を開けたりすることがないため波形表面板1の美観を保つことができる。
【0033】
なお、上記実施形態では、発泡剤としてシクロペンタンを用いる場合について説明したが、シクロペンタンに代えて代替フロン例えばHFC−245fa{ダイキン工業(株)製}を用いてもよい。このように、発泡剤に代替フロンを用いた場合には、可燃性の問題がないので、仮組パネル4の空間内のNガス置換工程は不要となる。
【符号の説明】
【0034】
1 表面板
2 凸条
3 凹条
4 仮組パネル
5 仮止め材
5a 固定片(一方の片)
5b 除去片(他方の片)
6 切り込み溝
7 塞ぎ部材
8 枠部材
10 発泡断熱材
11 両面接着テープ(固着)
12 ブラインドリベット(固定部材)
17 平板状表面板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が、長手方向に沿う互いに平行な凹条と凸条を有する一対の表面板と、両表面板の辺部に配置される枠部材と、両表面板と枠部材にて形成される空間内に注入・充填される発泡断熱材とからなる波形断熱パネルの製造方法であって、
上記表面板の凸条における長手方向の端部側の裏面底部に、角部が切断可能なL形状の仮止め材の一方の片を固着し、
上記仮止め材の他方の片と凸条の端部開口を塞ぐ塞ぎ部材とを固定部材で固定し、
その後、上記一対の表面板と上記枠部材を仮組みし、上記空間内に上記発泡断熱材を注入・充填し、
上記発泡断熱材が硬化した後、上記仮止め材の角部を切断して上記塞ぎ部材と上記仮止め材の他方の片とを引き剥がす、ことを特徴とする波形断熱パネルの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の波形断熱パネルの製造方法において、
上記仮止め材が、内角部に切り込み溝を有する合成樹脂製部材である、ことを特徴とする波形断熱パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−785(P2011−785A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145241(P2009−145241)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(303013811)日軽パネルシステム株式会社 (47)
【Fターム(参考)】