説明

洗浄システム及び洗浄方法

【課題】洗浄液として洗浄性の高い炭化水素類等を用いて洗浄した後に、リンス液としてハイドロフルオロカーボン類やハイドロフルオロエーテル類を用いて洗浄液をすすぎ乾燥させる処理を、長時間連続して良好な状態で継続する。
【解決手段】リンス液の一部を被再生液として抜き出して冷却し、冷却後の該被再生液を上層液と下層液に比重分離し、得られる下層液をリンス液として再利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品表面に付着した汚れを除去する洗浄システム及び洗浄方法に関する。更に詳しくは、リンス液を効率的に再生して再利用できる洗浄システム及び洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品表面から、加工油、切削油、防錆油、離型剤、フラックス、潤滑剤、塗布物、付着物、不純物、異物等の汚れを除去する洗浄溶剤としては、優れた洗浄性、乾燥性、仕上りの良さを発揮することから、ハイドロクロロフルオロカーボン類が使用されてきた。
しかし、ハイドロクロロフルオロカーボン類は、洗浄性が良好であるものの、成層圏のオゾン層等環境への影響があり、環境対応の面で使用に際して注意が必要である。中でも、ジクロロペンタフルオロプロパンは、先進国において2020年に生産が全廃されることが決まっている。よって、洗浄溶剤を、ハイドロクロロフルオロカーボン類から他の有機溶剤へ転換することが求められている。
【0003】
そこで、洗浄溶剤として、環境への影響のより小さいハイドロフルオロカーボン類やハイドロフルオロエーテル類など塩素を含有しないフルオロカーボン類を用いることが知られている。
しかし、ハイドロフルオロカーボン類及びハイドロフルオロエーテル類はその分子中に塩素分子を含まないため、物品表面に付着する加工油、切削油、防錆油、離型剤、フラックス、潤滑剤、塗布物、付着物、不純物、異物等、汚れに対する溶解性が小さく、充分な洗浄性を持っていない。
一方、炭化水素類は、油分に対する洗浄性が高い洗浄溶剤として知られている。しかし、乾燥する際にエネルギーと時間を必要とし、引火性も有するという欠点を持つ。
また、アルコール類は、水溶性の汚れに有効な洗浄剤として知られている。しかし、炭化水素類と同様、引火性や乾燥性の点で安全に良好な洗浄性を得ることが困難である。
【0004】
そこで、洗浄剤として洗浄性の高い炭化水素類等を用いて洗浄した後に、リンス液としてハイドロフルオロカーボン類やハイドロフルオロエーテル類を用いてすすぎ、乾燥させることが行われている。
この洗浄方法では、長時間の連続洗浄により、リンス液中に炭化水素類や汚れ成分が混入し、リンス後にも汚れや炭化水素類が物品表面に残留したり、引火点が生じ安全上の問題が生じたりする問題がある。
そのため、リンス液を静置して、炭化水素類や汚れ成分を分離する方法が提案されている(特許文献1)。特許文献1では、静置による分離を促進するために加熱することが推奨されている(段落[0016])。
また、一般に溶剤を用いる洗浄装置では、蒸留再生機を使用し、留出分を洗浄溶剤として再利用することが行われている(非特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−334104号公報
【非特許文献1】「特定フロン使用削減マニュアル」、日本フロンガス協会、1990年1月8日、p61
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、リンス液であるハイドロフルオロカーボン類やハイドロフルオロエーテル類は、洗浄液である炭化水素類との相溶性があるため、特許文献1のように静置しても、充分な分離はできなかった。また、特許文献1のように、加熱条件下で分離を行っても、分離促進は困難であった。
また、リンス液中に混入した洗浄液の濃度が高まると、非特許文献1のように蒸留を行っても、リンス液と共に洗浄液も留出してしまい、蒸留によってリンス液から洗浄液を分離することは困難であった。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであって、洗浄液として洗浄性の高い炭化水素類等を用いて洗浄した後に、リンス液としてハイドロフルオロカーボン類やハイドロフルオロエーテル類を用いて洗浄液をすすぐ洗浄システム及び洗浄方法において、被洗浄物の汚れ洗浄、すすぎ、及び乾燥を、長時間連続して良好な状態で継続できるように、リンス液の再生再利用を効率的に行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1](1a)炭化水素類、(1b)グリコールエーテル類、及び(1c)エステル類から選ばれる1種以上を主成分とする洗浄液を収納し被洗浄物が浸漬される洗浄槽と、(2a)ハイドロフルオロカーボン類、及び(2b)ハイドロフルオロエーテル類から選ばれる1種以上を主成分とするリンス液を収納し被洗浄物が浸漬されるリンス液槽と、前記リンス液を収納し該リンス液の蒸気を発生させる蒸気槽と、該蒸気槽中のリンス液の一部を被再生液として抜き出して再生する再生ユニットを備え、該再生ユニットは、前記被再生液を冷却する冷却器と、冷却後の被再生液を上層液と下層液に分離する比重分離槽を有し、該比重分離槽で分離された下層液が前記蒸気槽に戻されることを特徴とする洗浄システム。
【0007】
[2]前記再生ユニットが、前記冷却器と比重分離槽との間にフィルタ式コアレッサを有する[1]に記載の洗浄システム。
[3]前記再生ユニットが、前記冷却器の上流側の被再生液と前記下層液とを熱交換する熱交換器を有する[1]又は[2]に記載の洗浄システム。
[4]前記再生ユニットが、前記下層液を蒸留する下層液蒸留器を有し、該下層液蒸留器から留出する留出下層液が前記蒸気槽に戻される[1]〜[3]の何れかに記載の洗浄システム。
[5]前記再生ユニットが、前記上層液を蒸留する上層液蒸留器を有し、該上層液蒸留器に残留する釜残上層液が前記洗浄槽に戻される[1]〜[4]の何れかに記載の洗浄システム。
【0008】
[6]前記洗浄液が、下記の(1a)、(1b)、及び(1c)から選ばれる1種以上を主成分とする[1]〜[3]の何れかに記載の洗浄システム。
(1a) オクタン、デカン、ドデカン、及びテトラデカンから選ばれる炭化水素類。
(1b) 3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアルコール、2−ターシャリーブトキシエチルアルコール、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノノルマルブチルエーテル、及びエチレングリコールジエチルエーテルから選ばれるグリコールエーテル類。
(1c) 3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート。
【0009】
[7]前記リンス液が、下記の(2a)、及び(2b)から選ばれる1種以上を主成分とする[1]〜[6]の何れかに記載の洗浄システム。
(2a)1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサン、2−トリフルオロメチル−1,1,1,2,3,4,5,5,5−ノナフルオロペンタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロヘキサン、及び1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロオクタンから選ばれるハイドロフルオロカーボン類。
(2b)(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタン、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)プロパン、(パーフルオロブトキシ)メタン、及び(パーフルオロブトキシ)エタンから選ばれるハイドロフルオロエーテル類。
【0010】
[8](1a)炭化水素類、(1b)グリコールエーテル類、及び(1c)エステル類から選ばれる1種以上を主成分とする洗浄液に被洗浄物を浸漬して洗浄した後、(2a)ハイドロフルオロカーボン類、及び(2b)ハイドロフルオロエーテル類から選ばれる1種以上を主成分とするリンス液及び/又は該リンス液の蒸気で被洗浄物をすすぐ洗浄方法であって、前記リンス液の一部を被再生液として抜き出して冷却し、冷却後の該被再生液を上層液と下層液に比重分離し、得られる下層液をリンス液として再利用することを特徴とする洗浄方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の洗浄システム及び洗浄方法によれば、洗浄液として洗浄性の高い炭化水素類等を用いて洗浄した後に、リンス液としてハイドロフルオロカーボン類やハイドロフルオロエーテル類を用いて洗浄液をすすぎ乾燥させる処理を、長時間連続して良好な状態で継続できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の洗浄システムの一実施形態である。本実施形態の洗浄システムは、洗浄液1が収納される洗浄槽Wと、リンス液2が収納されるリンスユニットRと、リンス液2の一部を被再生液として再生する再生ユニットXとから、概略構成されている。
【0013】
洗浄槽Wに収納される洗浄液1は、(1a)炭化水素類、(1b)グリコールエーテル類、及び(1c)エステル類から選ばれる1種以上を主成分とする。
(1a)炭化水素類としては、パラフィン系炭化水素から選ばれる少なくとも1種の炭化水素が好ましく、具体的にはオクタン、デカン、ドデカン、及びテトラデカンが挙げられる。
(1b)グリコールエーテル類としては、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアルコール、2−ターシャリーブトキシエチルアルコール、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノノルマルブチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルが挙げられる。
(1c)エステル類としては、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテートが挙げられる。
洗浄液1全体に占める上記(1a)〜(1c)の成分の合計割合は、40質量%以上が好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。洗浄液1は、上記(1a)〜(1c)の成分の他に、オレフィン系炭化水素類、ナフテン系炭化水素類、芳香族系炭化水素類等の(1a以外の炭化水素類)、アルコール類、エーテル類、ケトン類、ハイドロフルオロカーボン類、ハイドロフルオロエーテル類、界面活性剤類、並びに洗浄作業により不可避的に混入する成分を含んでいてもよい。
洗浄槽Wには、洗浄液1に超音波振動を与えるための超音波発信器U1が設けられている。
【0014】
リンスユニットRに収納されるリンス液2は、(2a)ハイドロフルオロカーボン類、及び(2b)ハイドロフルオロエーテル類から選ばれる1種以上を主成分とする。
(2a)ハイドロフルオロカーボン類としては、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサン、2−トリフルオロメチル−1,1,1,2,3,4,5,5,5−ノナフルオロペンタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロヘキサン、及び1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロオクタンが挙げられる。
(2b)ハイドロフルオロエーテル類としては、(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタン、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)プロパン、(パーフルオロブトキシ)メタン、及び(パーフルオロブトキシ)エタンが挙げられる。
【0015】
リンス液2全体に占める上記(2a)、(2b)の成分の合計割合は、60質量%以上が好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。リンス液2は、上記(2a)、(2b)の成分の他に、アルコール類、並びにすすぎ作業により不可避的に混入する成分を含んでいても良い。アルコール類としては、炭素数1〜4のアルカノールが好ましく、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールが特に好ましい。アルコール類は、単独でも、2種以上を混合して使用してもよい。
【0016】
リンスユニットRの下部は、第1リンス液槽R1、第2リンス液槽R2、蒸気槽R3で構成されており、これら3つの槽内に、各々リンス液2が収納されるようになっている。第2リンス液槽R2のリンス液2の液面は第1リンス液槽R1のリンス液2の液面よりも高く、第2リンス液槽R2からオーバーフローしたリンス液2が、第1リンス液槽R1に流入するようになっている。また、第1リンス液槽R1のリンス液2の液面は蒸気槽R3のリンス液2の液面よりも高く、第1リンス液槽R1からオーバーフローしたリンス液2が、蒸気槽R3に流入するようになっている。
【0017】
第1リンス液槽R1には、リンス液2に超音波振動を与えるための超音波発信器U2が設けられている。また、蒸気槽R3には、リンス液2上部における蒸気ゾーンVにリンス液2の蒸気を供給するためのヒーターH1が設けられている。
また、リンスユニットRの上部には、冷却コイルCが設けられ、蒸気ゾーンVからの外部への蒸気放出防止が図られている。また、冷却コイルCにより冷却され液化したリンス液2が導入される水分離槽G1が設けられている。この水分離槽G1では、液化したリンス液2が、水分を多く含む上層液A1と、水分をほとんど含有しない下層液A2に比重分離されるようになっている。この水分離槽G1にも図示しない冷却コイルが設置されている。そして、上層液A1は廃棄され、下層液A2は第2リンス液槽R2に戻されるようになっている。
【0018】
再生ユニットXは、比重分離槽G2を有している。また、蒸気槽R3から比重分離槽G2に至る採取流路3上に順次設けられた冷却器E1及びフィルタFを有している。また、比重分離槽G2から蒸気槽R3に至る下層液流路4に順次設けられた熱交換器E2、下層液蒸留器D1、冷却器E3を有している。さらに、比重分離槽G2から洗浄槽Wに至る上層液流路5に設けられた上層液蒸留器D2を有している。
【0019】
採取流路3の上流端は、蒸気槽R3のリンス液2の液面近くに開口している。液面近くの方が、洗浄液1等の混入成分の比率が高い場合があるからである。
比重分離槽G2は、被再生液を、洗浄液1を多く含む上層液B1と、リンス液2を多く含む下層液B2に比重分離するようになっている。そして、下層液B2が下層液流路4に流出し、上層液B1が上層液流路5に流出するようになっている。
冷却器E1は、被再生液を、冷却水、ブライン、冷媒などと間接的に接触させて冷却するものである。両者の接触の形態は、二重円筒管型、プレート型、シェル&チューブ型などが選択し得るが、この形態に限定されない。
フィルタFは、フィルタ式コアレッサである。フィルタ式コアレッサとは、極細繊維からなる膜の表面に2種類以上の溶剤の混合液を通過させることにより、1つの溶剤中に分散した別の溶剤の液滴を、補足し、凝集させ、粗大化させる装置である。
【0020】
熱交換器E2は、下層液蒸留器D1より上流側において、下層液B2を、冷却器E1より上流側の採取流路3を流れる被再生液と間接的に接触させて加温するものである。換言すれば、冷却器E1より上流側において、被再生液を下層液蒸留器D1より上流側の下層液流路4を流れる下層液B2と間接的に接触させて冷却するものである。両者の接触の形態は、二重円筒管型、プレート型、シェル&チューブ型などが選択し得るが、この形態に限定されない。熱交換器E2により、冷却と加熱の効率化が図られている。
【0021】
下層液蒸留器D1はヒーターH2を有し、下層液B2を蒸留し、留出した下層液B2(留出下層液)の蒸気を冷却器E3に送るようになっている。冷却器E3は、この蒸気を冷却して液化し、留出下層液を得るようになっている。
上層液蒸留器D2は、ヒーターH3を有し、上層液B1を蒸留し、釜に残った上層液B1(釜残上層液)を洗浄槽Wに戻すようになっている。
【0022】
本実施形態の洗浄システムは、さらに、被洗浄物を順次移動させるための図示しない搬送機構を備えている。この搬送機構により、被洗浄物が、図中S1(洗浄開始前)、S2(洗浄槽W内)、S3(第1リンス液槽R1内)、S4(第2リンス液槽R2内)、S5(蒸気ゾーンV内)、S6(洗浄終了)の位置を順次移動するようになっている。
【0023】
本実施形態の洗浄システムの被洗浄物に特に限定はないが、加工油、切削油、防錆油、離型剤、フラックス、潤滑剤、塗布物、付着物、不純物、異物等の汚れが表面に付着した物品が好ましい。本発明の洗浄とは、被洗浄物から、これらの汚れを除去することを意味し、いわゆる脱脂洗浄、フラックス洗浄といった態様を含む。以下に、本実施形態の洗浄システムによる洗浄方法を説明する。
【0024】
本実施形態の洗浄システムを用いた洗浄方法は、被洗浄物を洗浄槽W内の洗浄液1に接触させる工程(I)、次にこの被洗浄物を第1リンス液槽R1内のリンス液2に接触させる工程(II)、次にこの被洗浄物を第2リンス液槽R2内のリンス液2に接触させる工程(III)、次にこの被洗浄物を蒸気ゾーンVにおいてリンス液2の蒸気に接触させる工程(IV)を有する。
【0025】
工程(I)では、被洗浄物をS1の位置からS2の位置に移動し洗浄液1に浸漬する。洗浄液1は、50℃以下の範囲で加温することが好ましい。本実施形態は、超音波発信器U1により汚れ除去を促進している。汚れ除去をさらに促進するために、被洗浄物を上下左右に揺動させる、洗浄液1をポンプ等で噴射して被洗浄物表面に衝突させる等の手段を併用してもよい。
工程(I)で、加工油、切削油、防錆油、離型剤、フラックス、潤滑剤、塗布物、付着物、不純物、異物等、汚れを除去し、次の工程に持ち込まないことが重要である。洗浄液1は一般に沸点が高く乾燥しにくいため、工程(II)以降ですすぎを行う。
【0026】
工程(II)では、被洗浄物をS2の位置からS3の位置に移動しリンス液2に浸漬する。第1リンス液槽R1内のリンス液2は、沸点より低い温度で加温することが好ましい。本実施形態は、超音波発信器U2により洗浄液1の除去を促進している。洗浄液1の除去をさらに促進するために、被洗浄物を上下左右に揺動させる、リンス液2をポンプ等で噴射して被洗浄物表面に衝突させる等の手段を併用してもよい。
【0027】
工程(III)では、被洗浄物をS3の位置からS4の位置に移動し、再度リンス液2に浸漬する。第2リンス液槽R2内のリンス液2も、沸点より低い温度で加温することが好ましい。第2リンス液槽R2においても、洗浄液1の除去をさらに促進するために、超音波発信器により超音波振動を与える、被洗浄物を上下左右に揺動させる、リンス液2をポンプ等で噴射して被洗浄物表面に衝突させる等の手段を採用することが可能である。
【0028】
工程(IV)では、被洗浄物をS4の位置からS5の位置に移動し、リンス液2の蒸気に接触させる。S5の位置(蒸気ゾーンV)にリンス液2の蒸気を供給するため、ヒーターH1により、蒸気槽R3内のリンス液2を沸騰させる。
工程(IV)では、リンス液2の沸点よりも低温の被洗浄物をリンス液2の蒸気に接触させることにより、被洗浄物表面でリンス液2が凝縮し、液滴となって落下する。これにより、工程(III)までで除去できなかった洗浄液1をすすぐことができる。
工程(IV)では、被洗浄物の温度がリンス液2の沸点に上昇するまで、被洗浄物をS5の位置に保持する。これにより、工程(IV)を終えて、被洗浄物をS5の位置からS6の位置に移動したとき、表面を濡らしているリンス液2を短時間で蒸発させ、乾燥させることができる。なお、S5の位置は、蒸気ゾーンV内であればいずれの場所でもよく、図1で示した場所に限定されない。
【0029】
工程(II)、(III)において、第1リンス液槽R1及び第2リンス液槽R2内のリンス液2に混入した洗浄液1は、リンス液2より比重が小さいため、第2リンス液槽R2から第1リンス液槽R1へのオーバーフロー、第1リンス液槽R1から蒸気槽R3へのオーバーフローを通じて蒸気槽R3に流入しやすい。また、これに加え、リンス液2は特定量の洗浄液1を溶解し得る。そのため、蒸気槽R3内のリンス液2の洗浄液1の混入量は次第に増加する。
洗浄液1の混入量がある程度少ない間は、沸点の高い洗浄液1の蒸気の発生は僅かであるので、工程(IV)のすすぎ作業に支障は生じない。しかし、洗浄液1の混入量が多くなりすぎると、リンス液2の蒸気と共に洗浄液1の蒸気も発生してしまい、工程(IV)を終えても被洗浄物表面に洗浄液1が残ることとなる。この場合、乾燥時間が長くなるだけでなく、洗浄液1と共に残存した汚れ成分も残ってしまう場合がある。
そこで、本実施形態の洗浄システムを用いた洗浄方法は、蒸気槽R3内のリンス液2の再生工程を、再生ユニットXにより、工程(I)〜(IV)と平行して連続的に行うものである。以下、この再生工程を説明する。
【0030】
本実施形態の洗浄システムを用いた洗浄方法において、再生工程は、蒸気槽R3からリンス液2の一部を被再生液として採取することから始まる。そして、採取した被再生液を熱交換器E2で予備冷却した後、冷却器E1で冷却する。
リンス液2と洗浄液1との相溶性は温度依存性があり、冷却するほど相溶性が低下するので、比重分離槽G2での分離が容易となる。相溶性の温度依存性は、リンス液2と洗浄液1の具体的組み合わせにより異なるので、冷却の温度はその組合せに応じて決定する。一般的には、蒸気槽R3内の温度、すなわち、リンス液2の沸点より10℃〜60℃低い温度とすることが望ましい。
次に、被再生液をフィルタFで濾過する。これにより、被再生液中に分散した洗浄液1の液滴が補足され凝集し、粗大化するので比重分離槽G2での分離が容易となる。
【0031】
次に、比重分離槽G2で、被再生液を、洗浄液1を多く含む上層液B1と、リンス液2を多く含む下層液B2に比重分離する。比重分離槽G2における滞留時間は、洗浄液1とリンス液2の具体的組合せによって、3分間から6時間の範囲で設定する。滞留時間を長くとるほど良好な分離ができる。なお、運転初期において二層分離が見られない場合は、全量を下層液B2とする。
本実施形態では、被再生液が予め冷却されており、さらにフィルタFで濾過されているので、下層液B2の洗浄液1の濃度は非常に低減されている。また、上層液B1のリンス液2の濃度は非常に低減されている。
【0032】
次に、比重分離槽G2で得る下層液B2を、熱交換器E2で予備加熱した後下層液蒸留器D1で蒸留する。そして、留出する下層液B2(留出下層液)の蒸気を冷却器E3で冷却して液化し、液化した留出下層液を蒸留槽3に戻す。蒸留前に予め洗浄液1の混入量が充分に低減されているので、留出下層液は、極めて純度の高いリンス液2となっている。
一方、比重分離槽G2で得る上層液B1を上層液蒸留器D2で蒸留する。そして、釜に残った上層液B1(釜残上層液)を洗浄槽Wに戻す。蒸留前に予めリンス液2の混入量が充分に低減されているので、釜残上層液は、極めて純度の高い洗浄液1となっている。
【0033】
再生工程における被再生液、上層液、下層液等の移送は、重力やポンプなどの動力を利用して行う。再生工程を連続的に行うことにより、リンスユニットRにおけるすすぎを効率的に行い、被洗浄物の汚れを的確に除去し、速やかに乾燥できる状態を長期間維持できる。
【0034】
なお、本実施形態の洗浄システムはリンス液槽を2つ備える構成としたが、本発明の洗浄システムはリンス液槽が1つのものであってもよい。また、本実施形態の洗浄システムでは、比重分離槽G2の上流側にフィルタFを、下流側に熱交換器E2を配置した構成としたが、本発明の洗浄システムはこれらの一方又は双方を省略してもよい。また、本実施形態の洗浄システムでは下層液蒸留器D1及び冷却器E3を備える構成としたが、本発明の洗浄システムはこれらを省略してもよい。さらに、本実施形態の洗浄システムでは上層液蒸留器D2を備える構成としたが、本発明の洗浄システムはこれを省略してもよい。
本発明の洗浄方法は、上記本発明の種々の洗浄システムに対応する洗浄方法とすることができる。さらに、本発明の洗浄方法は、リンス液槽の一部を被再生液としてもよい。この場合、蒸気槽R3のない洗浄システムにおいて本発明の洗浄方法を実施することもできる。
【実施例】
【0035】
図1の洗浄システムと同等の洗浄槽W及びリンスユニットRを備える洗浄システムにおいて、再生ユニットXの構成及び洗浄・再生条件を種々変更して洗浄実験を行った。以下に、各実験例の具体的条件及び結果を、図1の符号を用いつつ記載する。
【0036】
下記の実験例において、洗浄液1としては、NSクリーン220AE(ジャパンエナジー製)を用いた。リンス液2としては、(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタン(以下、HFE−347と表す)を用いた。
被洗浄物としては、100mm×100mmの100メッシュのSUS製金網5枚を接触しないように1cmの間隔を空けてカゴに入れ、まとめてダフニーカットAS25F(出光興産社製、以下AS25Fと表す)に浸漬後、引き上げて、10秒間液切りしたものを用いた。この被洗浄物に対するAS25Fの付着量は、合計約10gである。
【0037】
下記の実験例において、洗浄槽Wには20Lの洗浄液1を収納した。この洗浄液1の温度は約23℃とし、超音波振動の条件は25kHz、200Wとした。
リンスユニットRの第1リンス液槽R1には、10Lのリンス液2を収納した。このリンス液2の温度は45℃とし、超音波振動の条件は40kHz、200Wとした。
リンスユニットRの第2リンス液槽R2には、10Lのリンス液2を収納した。このリンス液2の温度は30℃とした。
リンスユニットRの蒸気槽R3には、8〜10Lのリンス液2を収納した。蒸気槽R3からの蒸気発生量が1kg/分となるように、3kWの容量のヒーターH1の電圧をスライダックで調整した。
リンスユニットRの水分離槽G1では、冷却コイルCで液化したリンス液2をさらに約30℃まで冷却することとした。
【0038】
[実験例1A]
再生ユニットXを、冷却器E1と仕切り板が挿入された容積10Lの比重分離槽G2のみで構成した。冷却器E1としては、5℃の冷却水が流れている伝熱面積0.8mのプレート式熱交換器を用い、被再生液を約30℃に冷却するようにした。
この再生ユニットXにより、蒸気槽R3のリンス液2を0.4kg/分の速度で抜出して被再生液とし、連続的に再生を行った。すなわち、比重分離槽G2における滞留時間を約40分とした。
【0039】
この再生作業を行いつつ、以下の洗浄作業を行った。すなわち、被洗浄物を、洗浄槽Wに1分間揺動させながら浸漬した。次に第1リンス液槽R1にて、超音波を当て揺動しながら1分間浸漬した。次に、第2リンス液槽R2にて揺動しながら1分間浸漬した。続いて、この被洗浄物を蒸気槽R3上部の蒸気ゾーンVに移し、1分間蒸気に曝した。その後、蒸気ゾーンVから外へ取出し、1分間乾燥させた。この操作を、自動搬送設備を用いて5分間隔で繰返し行い、連続で9時間洗浄を行った。
なお、洗浄槽Wの洗浄液1が減少して洗浄が困難になった際は、適宜洗浄液1を補充した。また、蒸気槽R3のリンス液2の液量が減少して運転が困難になった場合も、適宜リンス液2を補充した。
【0040】
比重分離槽G2の二層分離は、洗浄開始後6時間経過した頃から少しずつ現れた。
洗浄後の被洗浄物を目視観察し、外観やAS25Fの付着の有無を確認したところ、9時間継続して、AS25Fの付着が見られず、外観上綺麗に洗浄することができた。すなわち、9時間継続して安定的に洗浄を継続できることが確認できた。
【0041】
[実験例1B]
再生ユニットXを用いず、再生を行わずに洗浄した他は、実験例1Aと同様にして再生作業と洗浄作業を行った。
洗浄後の被洗浄物を目視観察し、外観やAS25Fの付着の有無を確認したところ、洗浄開始後8時間前後経過した頃から被洗浄物の一部にAS25Fの付着と考えられるシミが見られるようになり、9時間後では明確にシミが発生し、洗浄不良となった。
【0042】
[実験例1C]
再生ユニットXを、冷却器E1を除いて、比重分離槽G2のみで構成した他は、実験例1Aと同様にして再生作業と洗浄作業を行った。
洗浄後の被洗浄物を目視観察し、外観やAS25Fの付着の有無を確認したところ、洗浄開始後8時間前後経過した頃から被洗浄物の一部にAS25Fの付着と考えられるシミが見られるようになり、9時間後では明確にシミが発生し、洗浄不良となった。
【0043】
[実験例1A〜1C]
実験例1A〜1Cの結果から、比重分離槽G2の上流側で被再生液を冷却することにより、効果的に再生を行えることが分かった。
【0044】
[実験例2A]
再生ユニットXを、冷却器E1と、フィルタFと、仕切り板が挿入された容積10Lの比重分離槽G2で構成した。フィルタFとしては、フィルタ式コアレッサ(旭化成社製、ユーテックFS型)を用いた。冷却器E1としては、実験例1Aと同様のものを用いた。
この再生ユニットXにより、蒸気槽R3のリンス液2を4kg/分の速度で抜出して被再生液とし、連続的に再生を行った。すなわち、比重分離槽G2における滞留時間を約4分とした。
【0045】
この再生作業を行いつつ、実験例1Aと同様にして洗浄作業を行った。
洗浄後の被洗浄物を目視観察し、外観やAS25Fの付着の有無を確認したところ、9時間継続して、AS25Fの付着が見られず、外観上綺麗に洗浄することができた。すなわち、9時間継続して安定的に洗浄を継続できることが確認できた。
【0046】
[実験例2B]
再生ユニットXを、フィルタFを除いて、冷却器E1と比重分離槽G2のみで構成した他は、実験例2Aと同様にして再生作業と洗浄作業を行った。
洗浄開始後、6時間経過した頃から、比重分離槽G2でエマルジョンが発生し、二層分離がうまく行えなくなった。
洗浄後の被洗浄物を目視観察し、外観やAS25Fの付着の有無を確認したところ、洗浄開始後8時間前後経過した頃から被洗浄物の一部にAS25Fの付着と考えられるシミが見られるようになり、9時間後では明確にシミが発生し、洗浄不良となった。
【0047】
[実験例2C]
再生ユニットXを、冷却器E1とフィルタFを除いて、比重分離槽G2のみで構成した他は、実験例2Aと同様にして再生作業と洗浄作業を行った。
洗浄開始後、6時間経過した頃から、比重分離槽G2でエマルジョンが発生し、二層分離がうまく行えなくなった。
また、洗浄後の被洗浄物を目視観察し、外観やAS25Fの付着の有無を確認したところ、8時間前後経過した頃から被洗浄物の一部にAS25Fの付着と考えられるシミが見られるようになり、9時間後では明確にシミが発生し、洗浄不良となった。
【0048】
[実験例2A〜2C]
実験例2A〜2Cの結果から、比重分離槽G2の上流側で被再生液を冷却することに加えてフィルタ式コアレッサを用いると、より効果的に再生を行うことができ、被再生液の流量を増加できることが分かった。
【0049】
[実験例3A]
再生ユニットXを、冷却器E1と、仕切り板が挿入された容積10Lの比重分離槽G2と、下層液蒸留器D1及び冷却器E3で構成した。冷却器E1、冷却器E3としては、実験例1Aの冷却器E1と同様のものを用いた。下層液蒸留器D1では、下層液B2を連続単蒸留する操作を行い、釜残液は温度が70℃に達したら廃棄する操作を行った。
この再生ユニットXにより、蒸気槽R3のリンス液2を1kg/分の速度で抜出して被再生液とし、連続的に再生を行った。すなわち、比重分離槽G2における滞留時間を約15分とした。
【0050】
この再生作業を行いつつ、第1リンス液槽R1にNSクリーン220AEを10g/分の速度で添加するようにした他は、実験例1Aと同様にして洗浄作業を行った。
洗浄後の被洗浄物を目視観察し、外観やAS25Fの付着の有無を確認したところ、9時間継続して、AS25Fの付着が見られず、外観上綺麗に洗浄することができた。すなわち、9時間継続して安定的に洗浄を継続できることが確認できた。
【0051】
[実験例3B]
再生ユニットXを、下層液蒸留器D1及び冷却器E3を除いて、冷却器E1と、フィルタFと、仕切り板が挿入された容積10Lの比重分離槽G2のみで構成した他は、実験例3Aと同様にして再生作業と洗浄作業を行った。
洗浄開始後、3時間前後経過した頃から被洗浄物の一部にAS25Fの付着と考えられるシミが見られるようになり、4時間後では明確にシミが発生し、洗浄不良となった。さらに、蒸気槽R3のリンス液2が激しく発泡し、運転困難となった。
【0052】
[実験例3A、3B]
実験例3A、3Bの結果から、比重分離槽G2の上流側で被再生液を冷却することに加えて下層液を蒸留すると、より効果的に再生を行うことができ、リンス液中への洗浄液の混入を加速した条件下でも、安定して洗浄できることが分かった。
【0053】
[実験例4A]
再生ユニットXを、冷却器E1と、仕切り板が挿入された容積10Lの比重分離槽G2と、上層液蒸留器D2で構成した。冷却器E1としては、実験例1Aと同様のものを用いた。上層液蒸留器D2では、上層液B1を60kPaの減圧下で連続単蒸留する操作を行った。
この再生ユニットXにより、蒸気槽R3のリンス液2を0.4kg/分の速度で抜出して被再生液とし、連続的に再生を行った。すなわち、比重分離槽G2における滞留時間を約40分とした。
【0054】
この再生作業を行いつつ、洗浄液1に予めAS25Fを0.8kg添加した他は、実験例1Aと同様にして洗浄作業を行った。
洗浄後の被洗浄物を目視観察し、外観やAS25Fの付着の有無を確認したところ、9時間継続して、AS25Fの付着が見られず、外観上綺麗に洗浄することができた。すなわち、9時間継続して安定的に洗浄を継続できることが確認できた。
【0055】
[実験例4B]
再生ユニットXを、上層液蒸留器D2を除いて、冷却器E1と、仕切り板が挿入された容積10Lの比重分離槽G2のみで構成した他は、実験例4Aと同様にして再生作業と洗浄作業を行った。
洗浄開始後、4.5時間前後経過した頃から被洗浄物の一部にAS25Fの付着と考えられるシミが見られるようになり、6時間後では明確にシミが発生し、洗浄不良となった。
【0056】
[実験例4A、4B]
実験例4A、4Bの結果から、比重分離槽G2の上流側で被再生液を冷却することに加えて上層液を蒸留すると、より効果的に再生を行うことができ、洗浄液中へ汚れ成分を予め混入した条件下でも、安定して洗浄できることが分かった。
【0057】
[実験例5A]
再生ユニットXを、冷却器E1と、フィルタFと、仕切り板が挿入された容積10Lの比重分離槽G2と、下層液蒸留器D1及び冷却器E3と、上層液蒸留器D2で構成した。冷却器E1、冷却器E3としては、実験例1Aの冷却器E1と同様のものを用いた。フィルタFとしては、実験例2Aと同様のものを用いた。下層液蒸留器D1では、下層液B2を連続単蒸留する操作を行い、釜残液は温度が70℃に達したら廃棄する操作を行った。上層液蒸留器D2では、上層液B1を60kPaの減圧下で連続単蒸留する操作を行った。
この再生ユニットXにより、蒸気槽R3のリンス液2を4kg/分の速度で抜出して被再生液とし、連続的に再生を行った。すなわち、比重分離槽G2における滞留時間を約4分とした。
【0058】
この再生作業を行いつつ、洗浄液1に予めAS25Fを0.8kg添加した他は、実験例1Aと同様にして洗浄作業を行った。
洗浄後の被洗浄物を目視観察し、外観やAS25Fの付着の有無を確認したところ、9時間継続して、AS25Fの付着が見られず、外観上綺麗に洗浄することができた。すなわち、9時間継続して安定的に洗浄を継続できることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る洗浄システムの一実施形態である。
【符号の説明】
【0060】
1…洗浄液、2…リンス液、3…採取流路、4…下層液流路、5…上層液流路、
W…洗浄槽、R…リンスユニット、X…再生ユニット、
R1…第1リンス液槽、R2…第2リンス液槽、R3…蒸気槽、
H1…ヒーター、V…蒸気ゾーン、C…冷却コイル、G1…水分離槽、
E1…冷却器、F…フィルタ、G2…比重分離槽、E2…熱交換器、
D1…下層液蒸留器、E3…冷却器、D2…上層液蒸留器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1a)炭化水素類、(1b)グリコールエーテル類、及び(1c)エステル類から選ばれる1種以上を主成分とする洗浄液を収納し被洗浄物が浸漬される洗浄槽と、(2a)ハイドロフルオロカーボン類、及び(2b)ハイドロフルオロエーテル類から選ばれる1種以上を主成分とするリンス液を収納し被洗浄物が浸漬されるリンス液槽と、前記リンス液を収納し該リンス液の蒸気を発生させる蒸気槽と、該蒸気槽中のリンス液の一部を被再生液として抜き出して再生する再生ユニットを備え、
該再生ユニットは、前記被再生液を冷却する冷却器と、冷却後の被再生液を上層液と下層液に分離する比重分離槽を有し、
該比重分離槽で分離された下層液が前記蒸気槽に戻されることを特徴とする洗浄システム。
【請求項2】
前記再生ユニットが、前記冷却器と比重分離槽との間にフィルタ式コアレッサを有する請求項1に記載の洗浄システム。
【請求項3】
前記再生ユニットが、前記冷却器の上流側の被再生液と前記下層液とを熱交換する熱交換器を有する請求項1又は2に記載の洗浄システム。
【請求項4】
前記再生ユニットが、前記下層液を蒸留する下層液蒸留器を有し、該下層液蒸留器から留出する留出下層液が前記蒸気槽に戻される請求項1〜3の何れかに記載の洗浄システム。
【請求項5】
前記再生ユニットが、前記上層液を蒸留する上層液蒸留器を有し、該上層液蒸留器に残留する釜残上層液が前記洗浄槽に戻される請求項1〜4の何れかに記載の洗浄システム。
【請求項6】
前記洗浄液が、下記の(1a)、(1b)、及び(1c)から選ばれる1種以上を主成分とする請求項1〜5の何れかに記載の洗浄システム。
(1a) オクタン、デカン、ドデカン、及びテトラデカンから選ばれる炭化水素類。
(1b) 3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアルコール、2−ターシャリーブトキシエチルアルコール、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノノルマルブチルエーテル、及びエチレングリコールジエチルエーテルから選ばれるグリコールエーテル類。
(1c) 3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート。
【請求項7】
前記リンス液が、下記の(2a)、及び(2b)から選ばれる1種以上を主成分とする請求項1〜6の何れかに記載の洗浄システム。
(2a)1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサン、2−トリフルオロメチル−1,1,1,2,3,4,5,5,5−ノナフルオロペンタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロヘキサン、及び1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロオクタンから選ばれるハイドロフルオロカーボン類。
(2b)(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタン、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)プロパン、(パーフルオロブトキシ)メタン、及び(パーフルオロブトキシ)エタンから選ばれるハイドロフルオロエーテル類。
【請求項8】
(1a)炭化水素類、(1b)グリコールエーテル類、及び(1c)エステル類から選ばれる1種以上を主成分とする洗浄液に被洗浄物を浸漬して洗浄した後、(2a)ハイドロフルオロカーボン類、及び(2b)ハイドロフルオロエーテル類から選ばれる1種以上を主成分とするリンス液及び/又は該リンス液の蒸気で被洗浄物をすすぐ洗浄方法であって、
前記リンス液の一部を被再生液として抜き出して冷却し、冷却後の該被再生液を上層液と下層液に比重分離し、得られる下層液をリンス液として再利用することを特徴とする洗浄方法。




【図1】
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【公開番号】特開2008−163400(P2008−163400A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−355115(P2006−355115)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】