説明

洗浄剤組成物およびハードディスク基板の洗浄方法

【課題】コロイダルシリカ等の研磨材に由来する微粒子汚れを高い清浄度で除去できる、ハードディスク基板用の洗浄剤組成物、およびハードディスク基板の洗浄方法の提供。
【解決手段】ハードディスク基板の洗浄に用いる洗浄剤組成物において、アルカリ金属の水酸化物(A)と、遷移金属を含む水溶性塩(B)と、キレート剤(C)と、過酸化物(D)とを含有し、かつ、前記キレート剤(C)の割合は、前記遷移金属を含む水溶性塩(B)に対して0.5モル当量以上であることを特徴とする洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスク基板の洗浄に好適な洗浄剤組成物、およびハードディスク基板の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスにおいては、微細な汚れが動作不良や性能低下を招きやすい。そのため、半導体基板、ハードディスク基板、液晶パネル等に用いられるディスプレイ基板などの電子デバイス用基板に付着した汚れを、ほぼ完全に除去することが求められる。
当該汚れとしては、ワックス等の基板固定剤に由来する有機物汚れ、コロイダルシリカ等の研磨材に由来する微粒子汚れ、Fe、Na、Cu等の金属もしくは金属イオンに由来する金属汚れ又はこれらの混合物等が挙げられる。
【0003】
従来、洗浄対象とする電子デバイス用基板や電子デバイス用基板に付着した汚れの種類に応じて要求される清浄度を達成するため、多様な精密洗浄技術が提案されている。
たとえば、ハードディスク基板は、酸化セリウムやアルミナ等の研磨材による粗研磨が行われた後、さらに酸化セリウム、アルミナ、コロイダルシリカ等の研磨材による仕上げ研磨が行われる。仕上げ研磨後のハードディスク基板の表面には、研磨で生じた砥粒や研磨カスが残留するため、これらを除去する必要がある。
この研磨で生じた砥粒や研磨カスの残留を除去するため、水と、過酸化水素と、無機酸、有機酸及びそれらの塩からなる群より選ばれた少なくとも一種とを含有する、ハードディスク基板を洗浄対象としたリンス剤組成物が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−182800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ハードディスクドライブの大容量化、高密度化が進み、その記録媒体であるハードディスク基板は、その高精細化が急速に進んでいる。さらに、磁気ディスクにおける垂直磁気記録方式の採用に伴って、ハードディスク基板に要求される清浄度は飛躍的に高まっている。
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、現在使用されているハードディスク基板を洗浄した際、研磨で生じた砥粒や研磨カスを充分に除去することが困難であった。なかでも、仕上げ研磨の際に用いられる研磨材として好適に使用されているコロイダルシリカの除去が困難であった。コロイダルシリカは、表面エネルギーが高く、ハードディスク基板の表面に一旦付着すると、洗い落とすのが難しい。そのため、ハードディスク基板の洗浄には、特にコロイダルシリカ等の研磨材に由来する微粒子汚れに対して高い洗浄効果を発揮する洗浄剤組成物が求められる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、コロイダルシリカ等の研磨材に由来する微粒子汚れを高い清浄度で除去できる、ハードディスク基板用の洗浄剤組成物、およびハードディスク基板の洗浄方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、上記課題を解決するために、以下の手段を提供する。
すなわち、本発明は、ハードディスク基板の洗浄に用いる洗浄剤組成物において、アルカリ金属の水酸化物(A)と、遷移金属を含む水溶性塩(B)と、キレート剤(C)と、過酸化物(D)とを含有し、かつ、前記キレート剤(C)の割合は、前記遷移金属を含む水溶性塩(B)に対して0.5モル当量以上であることを特徴とする洗浄剤組成物である。
【0007】
本発明の洗浄剤組成物においては、下記一般式(1)で表される化合物(E)をさらに含有することが好ましい。
2m+1−O−(CHCHO)−SOM ・・・(1)
[式中、Mはナトリウム、カリウム、アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン又は水酸化テトラメチルアンモニウムであり、mは1〜6の整数であり、nは0〜12の整数である。]
【0008】
また、本発明のハードディスク基板の洗浄方法は、上記本発明の洗浄剤組成物を用いてスクラブ洗浄を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コロイダルシリカ等の研磨材に由来する微粒子汚れを高い清浄度で除去できる、ハードディスク基板用の洗浄剤組成物、およびハードディスク基板の洗浄方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
≪洗浄剤組成物≫
本発明の洗浄剤組成物は、ハードディスク基板の洗浄に用いるものであり、アルカリ金属の水酸化物(A)と、遷移金属を含む水溶性塩(B)と、キレート剤(C)と、過酸化物(D)とを含有する。
【0011】
[アルカリ金属の水酸化物(A)]
アルカリ金属の水酸化物(A)(以下「(A)成分」という。)の好適なものとしては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムがより好ましく、なかでも製造コストを抑えられることから水酸化ナトリウムが特に好ましい。
(A)成分は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
本発明の洗浄剤組成物における(A)成分の割合は、0.0001〜0.5質量%であることが好ましく、0.001〜0.1質量%であることがより好ましい。(A)成分の割合が下限値以上であると、ハードディスク基板における研磨材由来の微粒子汚れをより高い清浄度で除去できる。(A)成分の割合が上限値以下であれば、研磨材由来の微粒子汚れに対して充分に高い洗浄効果が発揮される。また、ハードディスク基板がガラス製の場合、当該基板表面の溶解がより抑制される。
【0012】
[遷移金属を含む水溶性塩(B)]
遷移金属を含む水溶性塩(B)(以下「(B)成分」という。)において、遷移金属としては、長周期型周期表における3〜11族の金属元素がつくる単体が挙げられる。なかでも、ハードディスク基板における研磨材由来の微粒子汚れに対してより高い清浄度が得られやすいことから、銅、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、銀が好ましく、銅、鉄、マンガン、コバルトがより好ましく、銅が特に好ましい。
水溶性塩としては、硫酸塩、塩化物、硝酸塩、臭素酸塩などが挙げられ、水等の溶媒への溶解性が特に良好であることから、硫酸塩、塩化物、硝酸塩が好ましく、硫酸塩がより好ましい。
(B)成分として具体的には、硫酸銅、硫酸鉄、硫酸マンガン、硫酸コバルト、硫酸ニッケル、硫酸銀等の硫酸塩;塩化銅、塩化鉄、塩化マンガン、塩化コバルト、塩化ニッケル等の塩化物;硝酸銅、硝酸鉄、硝酸マンガン、硝酸コバルト、硝酸ニッケル、硝酸銀等の硝酸塩;臭化銅、臭化鉄、臭化マンガン、臭化コバルト、臭化ニッケル等の臭素酸塩が挙げられる。
また、(B)成分は、上記化合物に加えて、上記化合物の水和物も用いることができる。
(B)成分は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0013】
[キレート剤(C)]
キレート剤(C)(以下「(C)成分」という。)としては、たとえば、ニトリロトリ酢酸塩、エチレンジアミンテトラ酢酸塩、β−アラニンジ酢酸塩、グルタミン酸ジ酢酸塩、アスパラギン酸ジ酢酸塩、メチルグリシンジ酢酸塩、イミノジコハク酸塩、ジエチレントリアミンペンタ酢酸塩等のアミノカルボン酸塩;セリンジ酢酸塩、ヒドロキシイミノジコハク酸塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸塩、ジヒドロキシエチルグリシン塩等のヒドロキシアミノカルボン酸塩;ヒドロキシ酢酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩等のヒドロキシカルボン酸塩;ピロメリット酸塩、ベンゾポリカルボン酸塩、シクロペンタンテトラカルボン酸塩等のシクロカルボン酸塩;カルボキシメチルタルトロン酸塩、カルボキシメチルオキシコハク酸塩、オキシジコハク酸塩、酒石酸モノコハク酸塩、酒石酸ジコハク酸塩等のエーテルカルボン酸塩;マレイン酸アクリル酸共重合体、カルボキシメチル化ポリエチレンイミン等の高分子キレート剤;トリポリリン酸塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸塩、ピロリン酸塩等のリン系キレート剤などが挙げられる。また、これらの酸型に該当する化合物も挙げられる。
なかでも、(C)成分としては、ハードディスク基板における研磨材由来の微粒子汚れに対してより高い清浄度が得られやすいことから、ポリカルボン酸系化合物、リン系キレート剤が好ましく、ポリカルボン酸系化合物がより好ましい。
【0014】
ポリカルボン酸系化合物の中でより好適なものとしては、ニトリロトリ酢酸塩、エチレンジアミンテトラ酢酸塩、β−アラニンジ酢酸塩、グルタミン酸ジ酢酸塩、アスパラギン酸ジ酢酸塩、メチルグリシンジ酢酸塩、イミノジコハク酸塩、ジエチレントリアミンペンタ酢酸塩等のアミノポリカルボン酸塩;セリンジ酢酸塩、ヒドロキシイミノジコハク酸塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸塩等のヒドロキシアミノポリカルボン酸塩;クエン酸塩等のヒドロキシポリカルボン酸塩;ピロメリット酸塩、ベンゾポリカルボン酸塩、シクロペンタンテトラカルボン酸塩等のシクロポリカルボン酸塩;カルボキシメチルタルトロン酸塩、カルボキシメチルオキシコハク酸塩、オキシジコハク酸塩、酒石酸モノコハク酸塩、酒石酸ジコハク酸塩等のエーテルポリカルボン酸塩;マレイン酸アクリル酸共重合体、カルボキシメチル化ポリエチレンイミン等の高分子キレート剤、又はこれらの酸型に該当する化合物などが挙げられる。
【0015】
塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩等が挙げられ、ナトリウム塩、カリウム塩が特に好ましい。
【0016】
(C)成分は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0017】
本発明の洗浄剤組成物において、(C)成分の割合は、(B)成分に対して0.5モル当量以上であり、1.0モル当量以上であることが好ましい。(C)成分の割合が(B)成分に対して0.5モル当量以上であると、ハードディスク基板における研磨材由来の微粒子汚れに対して高い清浄度が得られる。
(B)成分に対する(C)成分の割合の上限値は高いほど、(B)成分から放出される遷移金属のハードディスク基板への残留が抑制されるため好ましく、上限値としては、実質的に100モル当量以下であることが好ましく、10モル当量以下であることがより好ましい。(B)成分に対する(C)成分の割合が上限値以下であると、(C)成分のハードディスク基板への残留による有機物汚染も抑制されやすくなる。
なお、(C)成分の(B)成分に対する割合は、モル比[(C)/(B)]で表すことができる。
【0018】
本発明の洗浄剤組成物における、(B)成分と(C)成分との合計の割合は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.01〜5質量%であることがより好ましい。
(B)成分と(C)成分との全体の割合が0.01質量%以上であると、ハードディスク基板における研磨材由来の微粒子汚れに対してより高い清浄度が得られやすくなる。当該全体の割合が5質量%以下であると、水溶液中で後述する(D)成分から発生する過酸化水素の分解による発泡を適度に制御でき、過酸化水素の失活が早まることを抑制できる。
【0019】
[過酸化物(D)]
本明細書および本特許請求の範囲において、「過酸化物」には、過酸化水素を包含するものとする。
過酸化物(D)(以下「(D)成分」という。)としては、過酸化水素、又は水溶液中で過酸化水素を発生するものであればよく、たとえば、過酸化水素、過炭酸、過ホウ酸、又はこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)若しくはアンモニウム塩などが挙げられる。なかでも、ハードディスク基板における研磨材由来の微粒子汚れに対してより高い清浄度が得られやすいことから、過酸化水素、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウムであることが好ましく、過酸化水素であることがより好ましい。
(D)成分は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
本発明の洗浄剤組成物における(D)成分の割合は、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.05〜5質量%であることがより好ましい。(D)成分の割合が0.01質量%以上であると、ハードディスク基板における研磨材由来の微粒子汚れに対してより高い清浄度が得られやすくなる。(D)成分の割合が10質量%以下であると、水溶液中で発生する過酸化水素量が抑制され、過酸化水素の分解による発泡を適度に制御できる。
【0020】
[一般式(1)で表される化合物(E)]
本発明の洗浄剤組成物においては、下記一般式(1)で表される化合物(E)(以下「(E)成分」という。)をさらに含有することが好ましい。(E)成分は、炭素鎖長の短い(アルキル基の炭素数の小さい)ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(短鎖AES)である。(E)成分を含有することにより、ハードディスク基板における研磨材由来の微粒子汚れをさらに高い清浄度で除去できる。
【0021】
2m+1−O−(CHCHO)−SOM ・・・(1)
[式中、Mはナトリウム、カリウム、アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン又は水酸化テトラメチルアンモニウムであり、mは1〜6の整数であり、nは0〜12の整数である。]
【0022】
前記式(1)中、Mは、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン又は水酸化テトラメチルアンモニウムであり、ナトリウム、カリウムが好ましく、ナトリウムがより好ましい。
mは1〜6の整数であり、3〜5の整数が好ましい。
nは0〜12の整数であり、0〜8の整数が好ましい。
mが1〜6の整数であり、nが0〜12の整数であると、研磨材由来の微粒子汚れに対する洗浄力が向上する。また、特に研磨材として好適に使用されるコロイダルシリカとの親和性が向上する。
【0023】
(E)成分は、研磨材由来の微粒子汚れに対する洗浄力が向上することから、純水で1質量%に希釈したときの25℃における表面張力が50mN/mを超えるものが好ましい。
ここで「表面張力」は、表面張力計を使用し、Wilhelmy法に基づき、白金プレートを用いて測定される値を示す。
【0024】
(E)成分のなかで好適なものとしては、たとえば、C−O−CHCHO−SONa(オキシエチレンブチルエーテル硫酸ナトリウム)が挙げられる。
(E)成分として具体的には、たとえば、泰光油脂化学工業製のタイポールBxConc(商品名)等の市販のものを用いることができる。
【0025】
(E)成分は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
本発明の洗浄剤組成物における(E)成分の割合は、0.001〜5質量%であることが好ましく、0.005〜1質量%であることがより好ましい。(E)成分の割合が下限値以上であると、ハードディスク基板における研磨材由来の微粒子汚れに対してより高い清浄度が得られやすくなる。(E)成分の割合が5質量%以下であれば、研磨材由来の微粒子汚れに対して充分に高い洗浄性が発揮される。また、製造コストが抑えられ、経済的にも有利である。
【0026】
[その他の成分]
本発明の洗浄剤組成物においては、必要に応じて、上記の(A)〜(E)成分以外のその他の成分を併用してもよい。
その他の成分としては、溶媒、界面活性剤等が挙げられる。
当該溶媒としては、超純水、純水、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。
当該界面活性剤としては、特に限定されず、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩などのアニオン界面活性剤;高級アルコールのアルキレンオキシド付加物、プルロニック型界面活性剤などのノニオン界面活性剤等が挙げられる。
【0027】
本発明の洗浄剤組成物の調製方法は、特に限定されるものではなく、常法に準じて各成分を順次、混合することにより調製できる。
その際、(B)成分と(C)成分は、両方の成分同士を予め混合して乾燥させた混合物として用いてもよく、それぞれ別個に配合してもよい。また、(B)成分と(D)成分は、配合順序が離れていることが好ましい。これにより、(D)成分から発生する過酸化水素の分解を抑制でき、より安定に洗浄剤組成物を調製できる。
また、(D)成分と(B)成分とは、洗浄を行う直前に混合することが好ましく、(D)成分と(A)成分とは、洗浄を行う直前に混合することが好ましい。これにより、(D)成分から発生する過酸化水素の分解を抑制でき、より安定に洗浄剤組成物を調製できる。
さらに、上記調製方法以外に、(D)成分を含む調製物と(B)成分を含む調製物とを予め準備し、洗浄を行う際に両方の調製物同士を混合してもよい。かかる場合、(A)成分は、(B)成分を含む調製物に含まれていることが好ましく、(C)成分は、いずれの調製物に含まれていてもよい。
さらに、上記調製方法以外に、(D)成分を含む調製物と(C)成分を含む調製物と(B)成分を含む調製物と(A)成分を含む調製物を予め準備し、洗浄を行う際に前記の調製物同士を混合してもよい。その際、(B)成分を含む調製物と(D)成分を含む調製物とは、混合順序が離れていることが好ましく、(A)成分を含む調製物と(D)成分を含む調製物とは、混合順序が離れていることが好ましい。これにより、(D)成分から発生する過酸化水素の分解を抑制でき、より安定に洗浄剤組成物を調製できる。
【0028】
本発明の洗浄剤組成物においては、pHが8以上であることが好ましく、pH9〜13であることがより好ましい。洗浄剤組成物のpHが8以上、より好ましくは9以上であると、ハードディスク基板における研磨材由来の微粒子汚れに対してより高い清浄度で除去できる。洗浄剤組成物のpHが、好ましくは13以下であると、いったん除去された研磨材由来の微粒子汚れがハードディスク基板に再付着するのを防止する効果が向上する。
上記洗浄剤組成物のpHは、洗浄剤組成物を調製した直後から25℃で10分間放置した後の洗浄剤組成物のpHを示す。
pHの測定は、pHメーター(製品名:D−51、株式会社堀場製作所製)とpH電極(製品名:9611−10D、株式会社堀場製作所製)を用いて、約25℃の洗浄剤組成物に対してpH電極を浸漬し、15秒経過後の指示値を読み取ることにより行う。
なお、本発明の洗浄剤組成物は、(A)〜(D)成分の相互作用により、調製直後のpHの値が一定しない。そのため、本発明においては、洗浄剤組成物のpHがほぼ一定値を示す、調製後から10分後の洗浄剤組成物のpHを測定するものとする。
【0029】
(ハードディスク基板)
本発明の洗浄剤組成物は、ハードディスク基板の洗浄に用いるものである。
ハードディスク基板の材料としては、ガラス、ニッケルとリンとの混合物(Ni−P)、ニッケルと鉄との混合物(Ni−Fe)、アルミニウム、炭化ホウ素、炭素等が挙げられる。なかでも、ガラス、ニッケルとリンとの混合物(Ni−P)、ニッケルと鉄との混合物(Ni−Fe)、又はアルミニウムが好ましい。具体的には、たとえば、アルミニウム基板の表面にNi−Pメッキをした円形基板、ガラスの円形基板等が挙げられる。
本発明の洗浄剤組成物は、これら材料を用いたハードディスク基板を損傷させることなく、当該ハードディスク基板に付着した汚れ、特にコロイダルシリカ等の研磨材に由来する微粒子汚れを高い清浄度で除去できる。
【0030】
以上説明したように、本発明の洗浄剤組成物によれば、コロイダルシリカ等の研磨材に由来する微粒子汚れを高い清浄度で除去できる。かかる効果が得られる理由としては、定かではないが以下のように推測される。
本発明の洗浄剤組成物は、アルカリ金属の水酸化物(A)と、遷移金属を含む水溶性塩(B)と、キレート剤(C)と、過酸化物(D)とを含有し、かつ、(B)成分に対して0.5モル当量以上の(C)成分を含有する。
洗浄剤組成物中又は洗浄時、(B)成分と(C)成分は、金属錯体(錯化合物、錯塩)を形成する。特に、(C)成分の割合を、(B)成分に対して0.5モル当量以上とすることで、金属錯体を良好に形成できる。そして、当該金属錯体は、(D)成分から発生する過酸化水素の活性化能が従来のものに比べて高い。これによって、本発明の洗浄剤組成物は、ハードディスク基板における研磨材由来の微粒子汚れを高い清浄度で除去できると考えられる。
【0031】
洗浄対象であるハードディスク基板上には、上述したように、汚れの種類として有機物汚れ、微粒子汚れ、金属汚れ等が存在する。ハードディスク基板の精密洗浄では、当該金属汚れも、非常に高い清浄度で除去する必要がある。そのため、従来、なるべく金属を含まない洗浄剤組成物が用いられていた。
本発明の洗浄剤組成物は、本来汚れとして除去すべき金属を含む成分の(B)成分と(A)成分を、積極的に用いたことにより、特に研磨材由来の微粒子汚れに対する洗浄効果が従来よりも格段に高まったものである。なお、ハードディスク基板上の汚れとして存在する金属汚れに含まれる金属の量では、当該洗浄効果は得られない。また、(B)成分と(A)成分は、いずれもハードディスク基板への残留性が低い。
【0032】
また、本発明の洗浄剤組成物には、アルカリ剤として有機アルカリ剤ではなく、アルカリ金属の水酸化物(A)を用いる。
ハードディスク基板表面と、研磨材として好適に使用されるコロイダルシリカ微粒子は、通常、水中でマイナスに帯電する。そして、ハードディスク基板表面と、コロイダルシリカ微粒子のそれぞれのマイナスゼータ電位が、(A)成分を用いることによって高まる。その結果、ハードディスク基板とコロイダルシリカ微粒子との静電的反発力が強まり、コロイダルシリカ微粒子が基板から離れやすくなると共に、一旦ハードディスク基板から離れたコロイダルシリカ微粒子は再付着が起こりにくくなる。また、(A)成分は、コロイダルシリカ等の研磨材をある程度溶解できる。したがって、(A)成分を用いることによって、コロイダルシリカに対する洗浄力が向上すると考えられる。
なお、(A)成分の代わりに有機アルカリ剤を用いた場合、本発明の効果が低くなる。これは、以下のように推測される。有機アルカリ剤は、アルカリとしての作用が無機アルカリ剤に比べて比較的弱いため、無機アルカリ剤と同等の効果を得ようとすると、その使用量が多くなる。その結果、有機アルカリ剤とハードディスク基板との相互作用が強くなりすぎて、ハードディスク基板とコロイダルシリカ微粒子とが離れるのに充分な静電的反発力が得られにくくなるため、本発明の効果が低くなると考えられる。
【0033】
さらに、本発明の洗浄剤組成物は、(A)〜(D)成分に加えて、一般式(1)で表される化合物(E)を含有すると、本発明の効果がより向上する。特に、研磨材としてコロイダルシリカが用いられている場合、その効果が向上する。かかる効果が得られる理由としては、定かではないが、(E)成分は、コロイダルシリカのシラノール基を攻撃しやすく、コロイダルシリカとの親和性に優れるため、と推測される。
【0034】
本発明の洗浄剤組成物は、研磨材に由来する微粒子汚れに対する洗浄力に優れており、ハードディスク基板の精密洗浄に用いる洗浄剤組成物として特に好適である。
【0035】
≪ハードディスク基板の洗浄方法≫
本発明のハードディスク基板の洗浄方法は、上記本発明の洗浄剤組成物を用いてスクラブ洗浄を行う方法である。
当該洗浄方法としては、特に限定されるものではなく、たとえば、研磨材による研磨処理が施されたハードディスク基板に、洗浄剤組成物をノズル等から供給しながら洗浄ブラシで擦る方法;研磨材による研磨処理が施されたハードディスク基板を、洗浄剤組成物に浸漬しながら又は浸漬した後、洗浄ブラシで擦る方法;スクラブ洗浄に加えて超音波処理を併用する方法などが挙げられる。
【0036】
洗浄対象である、研磨材による研磨処理が施されたハードディスク基板において、研磨材としては、コロイダルシリカが用いられていることが好ましい。コロイダルシリカは、特に、仕上げ研磨用の研磨材に適している。
【0037】
また、研磨材には、コロイダルシリカ以外の研磨材が併用されていてもよく、たとえば、金属又は半金属の炭化物、窒化物、酸化物、ホウ化物、ダイヤモンド等が挙げられる。具体的には、α−アルミナ、炭化ケイ素、ダイヤモンド、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、ヒュームドシリカ等が挙げられる。
これら研磨材成分が併用される場合、研磨材全体におけるコロイダルシリカの割合は50〜100質量%であることが好ましい。
ハードディスク基板上に汚れとして存在する研磨材由来の微粒子汚れの大きさは、当該微粒子の質量平均粒子径が0.001〜0.5μm程度である。
当該微粒子の質量平均粒子径は、動的光散乱法などを用いて測定することができる。
【0038】
ハードディスク基板に施される研磨処理の方法としては、特に限定されず、たとえば、コロイダルシリカ、アルミナ、酸化セリウム、炭化ケイ素などの研磨材を含む研磨スラリーを、研磨機を用いて供給しながら、ハードディスク基板を加圧してその表面を研磨する方法などが挙げられる。また、ダイヤモンド等の砥粒でテクスチャ処理する方法も挙げられる。
また、たとえば、ガラスからなるハードディスク基板に施される研磨処理の方法としては、酸化セリウムでハードディスク基板表面を1次研磨(粗研磨)した後、純水等で洗浄し、さらにコロイダルシリカで仕上げ研磨を行う方法が好ましい。
また、Ni−Pからなるハードディスク基板に施される研磨処理の方法としては、アルミナでハードディスク基板表面を1次研磨(粗研磨)した後、コロイダルシリカで仕上げ研磨を行う方法が好ましい。
【0039】
本発明のハードディスク基板の洗浄方法としては、上述した研磨材による研磨処理が施されたハードディスク基板に、上記本発明の洗浄剤組成物を供給しながら、スクラブ洗浄を行う方法が一例として挙げられる。
本発明において、「スクラブ洗浄」とは、洗浄ブラシ等を備えたロール体を用いて、洗浄ブラシ等を洗浄対象物に接触させて、その接触部分に洗浄剤組成物、水その他の洗浄液を供給しながらロール体を回転させることにより、洗浄対象物を洗浄ブラシ等で摩擦洗浄する方法をいう。
【0040】
ハードディスク基板への洗浄剤組成物の供給方法は、具体的には、ノズル等から射出する方法が挙げられ、1つのノズルから洗浄剤組成物を射出する方法であってもよく、別々のノズルから、たとえば(D)成分を含む調製物と(A)〜(C)成分を含む調製物とをそれぞれ射出する方法であってもよい。
【0041】
ロール体の回転の速さは、特に限定されず、25〜500rpmであることが好ましく、50〜400rpmであることがより好ましい。ロール体の回転の速さが下限値以上であると、研磨材由来の微粒子汚れに対する洗浄性が向上し、上限値以下であると、ハードディスク基板が安定的に回転することでロール体との接触性が高まり、研磨材由来の微粒子汚れに対する洗浄性が向上する。
洗浄剤組成物の温度は、特に限定されず、常温以上であることが好ましく、5〜60℃であることがより好ましい。洗浄剤組成物の温度が常温以上であると、研磨材由来の微粒子汚れに対する洗浄性が向上する。
スクラブ洗浄時間(ロール体の回転している時間)は、特に限定されず、5〜300秒間であることが好ましく、10〜120秒間であることがより好ましい。スクラブ洗浄時間が下限値以上であると、研磨材由来の微粒子汚れに対する洗浄性が向上し、上限値以下であると、洗浄プロセスの短縮が図られて生産性が向上する。
ロール体の回転の速さ、洗浄剤組成物の温度、スクラブ洗浄時間がいずれも上記範囲であると、ハードディスク基板を損傷することなく、精密洗浄を行うことができる。
【0042】
洗浄ブラシの形状は、特に限定されず、たとえばカップブラシ、ロールブラシ等が挙げられる。
洗浄ブラシの材質は、特に限定されず、たとえばナイロン、ポリビニルアセタール、ポリビニルホルマール等が挙げられる。
【0043】
スクラブ洗浄の後、ハードディスク基板に、純水をスプレー等で吹き付けて濯ぎ、ハードディスク基板に残存する洗浄剤組成物等を除去する。
純水で濯いだ後は、公知の方法で乾燥して、ハードディスク基板に残存する純水を除去する。
【0044】
以上説明したように、本発明のハードディスク基板の洗浄方法によれば、研磨工程でハードディスク基板表面に付着した研磨材などの砥粒や研磨カスを充分に除去できる。特に、コロイダルシリカ等の研磨材に由来する微粒子汚れを高い清浄度で除去できる。
本発明の洗浄方法は、ハードディスクドライブの大容量化、高密度化が進むなか、高い清浄度が求められるハードディスク基板の洗浄方法として好適である。
【実施例】
【0045】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、「%」は特に断りがない限り「質量%」を示す。
【0046】
<洗浄剤組成物の調製>
表1〜3に示す組成の洗浄剤組成物を、常法に準じて、以下のようにして調製した。
マグネチックスターラーの入った石英ビーカー(直径60mm、高さ70mm)に、所定量の純水を入れ、25℃に調温し、マグネチックスターラーを回転させながら、それぞれ所定量のアルカリ金属の水酸化物(A)、遷移金属を含む水溶性塩(B)、キレート剤(C)を順次、配合して水溶液(α)を得た。
また、同様の手順にて、所定量の純水と過酸化物(D)を配合して水溶液(β)を得た。
そして、後述するように、水溶液(α)と水溶液(β)を混合することにより洗浄剤組成物を調製した。
実施例20の洗浄剤組成物において、(E)成分の短鎖AESは、水溶液(α)に配合した。比較例4の洗浄剤組成物において、(A’)成分のTMAHは、水溶液(α)に配合した。比較例1〜3の洗浄剤組成物は、(B)成分、(C)成分、(D)成分をそれぞれ未配合として調製した。
【0047】
なお、表1〜3中の配合量の単位は質量%であり、各成分の配合量はいずれも純分換算量を示す。
表における「バランス」とは、洗浄剤組成物に含まれる各成分の総量が100質量%になるように調整した、洗浄剤組成物中の純水の配合量を意味する。
表における「(B)+(C)[質量%]」は、洗浄剤組成物中の(B)成分と(C)成分との全体の割合[質量%]を示す。
また、表における「(C)/(B)[モル比]」は、(C)成分の(B)成分に対する割合(モル当量)を示す。
以下に、表中に示した成分について説明する。
【0048】
[表中に示した成分の説明]。
・ハードディスク基板の材料
Ni−Pアルミ:3.5インチのアルミニウム基板の表面にNi−Pメッキをしたハードディスク基板。
ガラス:2.5インチのガラスのハードディスク基板。
【0049】
・アルカリ金属の水酸化物(A)
NaOH:水酸化ナトリウム(関東化学製、特級)。
【0050】
・(A)成分の比較成分[以下「(A’)成分」と表す。]
TMAH:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(商品名:TMAH−20H、東洋合成工業製)。
【0051】
・遷移金属を含む水溶性塩(B)
M1:硫酸銅5水和物(関東化学製、1級)。
M2:硫酸鉄7水和物(関東化学製、特級)。
M3:硫酸マンガン5水和物(関東化学製、特級)。
M4:硫酸コバルト7水和物(和光純薬製)。
【0052】
・キレート剤(C)
C1:イミノジコハク酸4ナトリウム塩(IDS−4Na、ランクセス製)。
C2:ヒドロキシイミノジコハク酸4ナトリウム塩(HIDS−4Na、日本触媒製)。
C3:メチルグリシンジ酢酸3ナトリウム塩(MGDA−3Na、商品名:Trilon M、BASF製)。
C4:L−グルタミン酸ジ酢酸4ナトリウム塩(GLDA−4Na、キレスト製)。
C5:L−アスパラギン酸−N,N−二酢酸4ナトリウム塩(ASDA−4Na、三菱レイヨン製)。
C6:クエン酸三ナトリウム2水和物(関東化学製、1級)。
C7:トリポリリン酸ナトリウム(関東化学製、1級)。
C8:ヒドロキシエタンジホスホン酸ナトリウム(商品名:BRIQUEST ADPA−60SH、ローディア製)。
【0053】
・過酸化物(D)
過酸化水素:過酸化水素水(関東化学製、特級)。
【0054】
・一般式(1)で表される化合物(E)
短鎖AES:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(商品名:タイポールBxConc、泰光油脂化学工業製);C−O−CHCHO−SONa。
【0055】
純水:イオン交換樹脂でイオン交換した水(25℃の導電率が1μS/cm以下)。
【0056】
<洗浄剤組成物のpHの測定>
マグネチックスターラーの入った石英ビーカー(直径60mm、高さ70mm)に、上記水溶液(α)の所定量を入れ、25℃に調温し、マグネチックスターラーを回転させながら、上記水溶液(β)の所定量を加え、10秒間混合して洗浄剤組成物を調製した。
この洗浄剤組成物10mLを直ちにサンプル瓶に取り、蓋をせずに25℃で10分間放置した後、当該洗浄剤組成物のpHを測定した。
pHの測定は、pHメーター(製品名:D−51、株式会社堀場製作所製)とpH電極(製品名:9611−10D、株式会社堀場製作所製)を用いて、約25℃の洗浄剤組成物に対してpH電極を浸漬し、15秒経過後の指示値を読み取ることにより行った。
【0057】
<研磨材に由来する微粒子汚れに対する清浄度の評価>
[洗浄剤組成物の調製]
マグネチックスターラーの入った石英ビーカー(直径60mm、高さ70mm)に、上記水溶液(α)の所定量を入れ、25℃に調温し、マグネチックスターラーを回転させながら、上記水溶液(β)の所定量を加え、10秒間混合して洗浄剤組成物を調製した。
そして、この洗浄剤組成物を直ちに、以下に示す洗浄試験に用いた。
【0058】
[洗浄試験]
鏡面研磨処理した、各例で用いたハードディスク基板の全体に、それぞれ、pH1.5に調整したコロイダルシリカ(質量平均粒子径20nm)の水分散液を塗布し、テストピースとした。
次いで、洗浄ブラシを備えたロール体を用いて、当該洗浄ブラシを前記テストピースの両面に押し当てるようにして接触させ、その接触部分に、各例の洗浄剤組成物を常温(25℃)で射出しながら供給し、ロール体を100rpmで回転させることにより、前記テストピースの両面を洗浄ブラシで擦る方法によって、20秒間のスクラブ洗浄を行った。
スクラブ洗浄の後、常温(25℃)の純水を用いた流水により60秒間すすいだ後、エアブローで乾燥し、評価用ハードディスク基板を得た。
なお、各例の洗浄剤組成物について10枚のテストピースをそれぞれ洗浄した。
【0059】
[清浄度の評価]
上記で得た評価用ハードディスク基板の表面をハロゲンランプで照射し、コロイダルシリカ微粒子の残留状態を、目視により観察して、下記基準に基づいて良品と不良品とに分けた。
(基準)
良品:コロイダルシリカ微粒子の凝集物が全く認められなかった。
不良品:コロイダルシリカ微粒子の凝集物が少しでも認められた。
そして、各例の洗浄剤組成物について、評価用ハードディスク基板10枚中の不良品の比率(不良率)を求め、下記の評価基準に基づいて、研磨材に由来する微粒子汚れに対する清浄度の評価を行った。○、◎、◎◎を合格範囲とした。その結果を表1〜3に示す。
(評価基準)
◎◎:不良率が0%であった。
◎:不良率が10%であった。
○:不良率が20%であった。
△:不良率が30〜50%であった。
×:不良率が60%以上であった。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

【0063】
以上の結果から明らかなように、本発明に係る実施例1〜21の洗浄剤組成物、および当該洗浄剤組成物を用いた洗浄方法によれば、ハードディスク基板の洗浄において、研磨材(コロイダルシリカ)に由来する微粒子汚れを高い清浄度で除去できることが確認できた。
また、実施例14と実施例20との対比から、一般式(1)で表される化合物(E)をさらに含有することにより、ハードディスク基板の洗浄において、研磨材(コロイダルシリカ)に由来する微粒子汚れをより高い清浄度で除去できることが確認できた。
【0064】
(B)成分を欠く比較例1、(D)成分を欠く比較例3の洗浄剤組成物は、当該微粒子汚れに対する清浄度がいずれも低く、(C)成分を欠く比較例2の洗浄剤組成物は、当該微粒子汚れに対する清浄度がやや低いことが確認された。
有機アルカリ剤を用いた比較例4の洗浄剤組成物は、当該微粒子汚れに対する清浄度がやや低いことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードディスク基板の洗浄に用いる洗浄剤組成物において、
アルカリ金属の水酸化物(A)と、遷移金属を含む水溶性塩(B)と、キレート剤(C)と、過酸化物(D)とを含有し、かつ、
前記キレート剤(C)の割合は、前記遷移金属を含む水溶性塩(B)に対して0.5モル当量以上であることを特徴とする洗浄剤組成物。
【請求項2】
下記一般式(1)で表される化合物(E)をさらに含有する請求項1記載の洗浄剤組成物。
2m+1−O−(CHCHO)−SOM ・・・(1)
[式中、Mはナトリウム、カリウム、アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン又は水酸化テトラメチルアンモニウムであり、mは1〜6の整数であり、nは0〜12の整数である。]
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の洗浄剤組成物を用いてスクラブ洗浄を行うことを特徴とするハードディスク基板の洗浄方法。

【公開番号】特開2010−132748(P2010−132748A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308663(P2008−308663)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】