説明

洗浄装置

【課題】微細な凹凸を有する被洗浄面の汚れを効率良く洗浄する。
【解決手段】洗浄ノズル10を、気体噴出ノズル11、液体噴出ノズル12、流体供給部13から構成する。気体噴出ノズル11に複数個の気体噴出口22を並べて設ける。各気体噴出口22に対応する位置にノズルチップ32が位置するように、液体噴出ノズル12を気体噴出ノズル11内に配置する。ノズルチップ32から洗浄液43を噴出し、気体噴出口22からエアを噴出する。気体噴出口22からの気体噴流46により、液体噴出口32aからの液体噴流45を微細な液粒43aにし、これを気体噴流46によって加速して液粒噴流44として被洗浄面に衝突させる。微細液粒43aが被洗浄面50の微細な凹部まで入り込み、汚れを除去する。気体噴流46の被洗浄面50への衝突による衝撃波で被洗浄面50を振動させ、汚れやゴミを浮かせ、除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送機器、プラント機器等の金属表面や塗装表面を洗浄する洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
輸送機器、例えば鉄道車両の外板を洗浄するために、車両洗浄装置が用いられている。この車両洗浄装置は、車両の表面に洗剤などの薬液を塗布する薬液塗布部と、薬液が塗布された表面に洗浄液を噴射する洗浄液噴射部と、薬液が塗布された表面を洗浄する洗浄ブラシと、洗浄後の車両表面に気流を噴射するエアブロワ等を備えている。そして、車両を低速度で走行させながら、車両の表面に薬液を塗布した後に、この車両の表面に洗浄液を噴射しながら洗浄ブラシを回転させて車両の表面を洗浄し、この後に気流を噴射して車両の表面に付着した水滴などを飛ばしている(例えば、特許文献1)。
【0003】
近年、塗装車両に代わってステンレス車両が増加している。このようなステンレン車両の表面は、つや消し仕上げがされており、表面に微細な凹凸が形成されている。したがって、凹部に汚れが付着すると、洗浄ブランの繊維太さに対して凹部が小さいため、凹部の底までブラシ先端が届かず、汚れを除去することができないという問題がある。
【0004】
また、洗浄ブラシに代えて、高圧水流を利用した洗浄も行われている。しかし、このような洗浄方法では、吐出圧力が5MPa〜20MPa程度と水圧が高いため、車両の隙間から車内に水が侵入するという問題がある。また、高圧水流であるため、水の消費量が多くランニングコストが増える他に、廃水などの後処理も必要になるという問題がある。
【0005】
上記高圧水流洗浄に代えて、洗浄粒子と流体との混合液を圧縮気体によって噴射又は前記洗浄粒子を液体によって加圧して噴射することも提案されている(例えば特許文献2参照)。この噴射装置は、洗浄粒子及び水からなる混合液を吸引する吸引口、圧縮エアが噴射する噴射口、噴射口からの圧縮エアによって吸引口からの混合液を吸引しながら攪拌するガンボディ、ガンボディから洗浄粒子、水及びエアからなる噴射水を噴射するノズル部などを備えており、0.2MPa〜0.8MPa程度の低い吐出圧で噴射水を噴射する。洗浄粒子は凹部よりも微小であるので、凹部内に確実に到達し、凹部に付着している汚れを落とすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−002064号公報
【特許文献2】特開2006−061791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2記載のものでは、低い吐出圧で噴射水を噴射するため、洗浄表面に近接させて洗浄する必要があり、洗浄表面に突起部や凹み部がある場合には適切な噴射距離を設定することが困難であり、洗浄が不充分になるおそれがある。また、洗浄粒子を混合する手間を要する他に、洗浄粒子による目詰まりの発生もあり、メンテナンスに時間を取られるなどの不都合がある。さらには、特許文献2記載のものでは、ガンボディ内で洗浄粒子・水とエアとを合流させているため、圧力損失が大きくなり、エア等による送り出し効果が充分に得られないという問題もある。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑み、被洗浄面とノズルとの距離を充分に確保することができ、しかも洗浄液や圧縮エア量の消費を抑えて効率の良い洗浄を可能とする洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、被洗浄面に向けて気体を噴出する気体噴出口を複数有する気体噴出ノズルと、前記気体噴出ノズルの前記各気体噴出口内に配置され、該気体噴出口による前記気体の噴出方向に向けて液体を噴出する液体噴出口を有する液体噴出ノズルと、前記液体噴出ノズルに液体を供給するとともに、前記気体噴出ノズルに気体を供給する流体供給部とを備え、前記液体噴出ノズルからの液体噴流を前記気体噴出口からの気体噴流によって微細液粒に粉砕し、この微細液粒を前記気体噴流によって加速させて前記被洗浄面に衝突させることを特徴とする。
【0010】
前記気体噴出ノズルは、筒状のヘッド本体の周面に、該ヘッド本体の筒芯方向に前記気体噴出口を複数並べて配置して構成されており、前記液体噴出ノズルは、砲弾型に形成されていることを特徴とする。また、前記流体供給部は、前記液体を、圧力P1が0.15MPa以上0.5MPa以下で吐出量Q1が0.3L/min以上1.0L/min以下で供給し、前記気体を、圧力P2が0.05MPa以上1.2MPa以下で吐出量Q2が5000L/min以上17000L/min以下で供給し、P1<P2、Q1<Q2であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、液体噴流を気体噴流で粉砕して微細液粒とし、これを気体噴流によって加速させて被洗浄面に衝突させるから、微細な凹凸を有する被洗浄面の凹部内に微細液粒が入り込み、凹部内に付着した汚れに衝撃を与えて、これを確実に落とすことができる。しかも、気体噴流が被洗浄面に衝突して衝撃エネルギに代わり、板状の被洗浄面を振動させるため、凹部に入り込んだミクロン単位の微細な汚れを中から浮かすことができ、これを気体噴流によって吹き飛ばすことができる。また、液体噴流を気体噴流によって微細液粒として粉砕し、気体噴流によって被洗浄面に衝突させるため、従来の高圧水流洗浄方式に比べて使用する液体の量を減らすことができ、ランニングコストに優れる他に、高圧水流洗浄方式のように表面の隙間から内部に水が侵入することもなくなる。このように、液体噴流の気体噴流による微細液粒への分割効果、この微細液粒の気体噴流による加速効果、気体噴流が被洗浄面に衝突することによる衝撃エネルギによる被洗浄面の振動効果、気体噴流による吹き飛ばし効果によって、微細な凹部に付着したミクロン単位の微小な汚れから大きなゴミまで非接触式で取り除くことができる。
【0012】
特に、流体供給部は、前記液体を、圧力P1が0.15MPa以上0.5MPa以下で吐出量Q1が0.3L/min以上1.0L/min以下で供給し、前記気体を、圧力P2が0.05MPa以上1.2MPa以下で吐出量Q2が5000L/min以上17000L/min以下で供給し、P1<P2、Q1<Q2とすることにより、圧縮エアの使用量を抑えることができ、その分だけ、圧縮エアの供給源であるブロワ装置を小型化することができ、省エネを図ることができる。また、洗浄液の使用量も削減することができ、同様に省エネを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の洗浄ノズルの一部を切り欠いて示す側面図である。
【図2】洗浄ノズルの平面図である。
【図3】洗浄装置の使用状態を模式的に示す概略の斜視図である。
【図4】鉄道車両の洗浄装置を示す概略の正面図である。
【図5】被洗浄面を拡大して示す概略の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施態様について詳細に説明する。ただし、本発明はここに挙げる実施態様に限定されるものではない。図1に示すように、洗浄ノズル10は、気体噴出ノズル11と、液体噴出ノズル12と、これら各ノズル11,12に流体を供給する流体供給部13とから構成されている。
【0015】
気体噴出ノズル11は、円筒状のパイプからなるヘッド本体20と、このヘッド本体20の一端を塞ぐキャップ21とから構成されている。ヘッド本体20の周面には、管壁を貫通するように半径方向に気体噴出口22が形成されている。この気体噴出口22は、筒芯CL1に平行に一列に並べて形成されており、本実施形態では、直径D1が18mm、ピッチP1が35mmとなっている。
【0016】
ヘッド本体20のキャップ21の取付端部とは反対側の端部には、エア供給ホース23が接続されている。エア供給ホース23は蛇腹状の合成樹脂製ホースであり、可撓性に優れている。このエア供給ホース23はブロワ24に接続されており、ブロワ24からのエアがヘッド本体20内に送り込まれるようになっている。このように、ヘッド本体20の他端にヘッド本体20と同径のエア供給ホース23が直接に接続されることにより、圧力損失を少なくして、効率良くエアをヘッド本体20に送ることができる。
【0017】
キャップ21の中心には、キャップ21を貫通するように液体噴出ノズル固定孔25が形成されている。また、図2に示すように、ヘッド本体20の周面には、管壁を貫通するように液体噴出ノズル取付孔26が形成されている。
【0018】
図1に示すように、液体噴出ノズル12は、主管30と枝管31とノズルチップ32とから構成されている。図1に示すように、主管30の一端には丸棒からなる固定端部35が取り付けられ、主管30の他端には液体供給端部36が取り付けられている。固定端部35が、キャップ21のノズル固定孔25に嵌合し、液体供給端部36が取付孔26に嵌合することにより、ヘッド本体20内に液体噴出ノズル12が固定される。この液体噴出ノズル12は、ヘッド本体20の筒芯CL1に液体噴出ノズルの主管30が沿うように取り付けられる。なお、ヘッド本体20への固定端部35や液体供給端部36の取り付けに際し、これらの取り付け部分からエアが漏れることがないように、パッキン等のシール部材が入れられている。
【0019】
主管30に対して直交する方向で枝管31が、前記気体噴出口22の形成個数に対応して、且つ同じピッチで同数設けられている。枝管31の先端にはノズルチップ32が取り付けられている。枝管31の長さは、ノズルチップ32の液体噴出口32aの開口面が、ヘッド本体20の気体噴出口22の開口面と同一となるようにされている。そして、主管30に対する枝管31の固定は、塩化ビニール製パイプの場合には接着剤にて行われる。また、金属製パイプの場合には、溶接やネジ止めシール構造などによって固定される。
【0020】
図2及び図3に示すように、ノズルチップ32は砲弾状に形成されており、中心軸に沿って液体噴出口32aが形成されている。主管30及び枝管31によって、ノズルチップ32は気体噴出口22の中心にノズルチップ32の中心が合致するように構成されている。このように、液体噴出口32aの中心にノズルチップ32の中心が合致するように取り付けられており、且つノズルチップ32が砲弾形に形成されているので、ノズルチップ32の外周面と気体噴出口22の内周面との間からブロワ24から送られたエアが吹き出すことになる。
【0021】
図2に示すように、液体供給端部36には、カップリング39を介して洗浄液供給ホース40が接続されている。洗浄液供給ホース40はポンプ41に接続されている。ポンプ41はタンク42に接続されており、このポンプ41により、タンク42の洗浄液43を主管30に送液している。洗浄液43としては本実施形態では水を用いている。主管30に洗浄液43が供給されると、ノズルチップ32の先端から洗浄液43が噴出する。
【0022】
図2に示すように、液体噴出口32aからの洗浄液43の噴出(この噴出による洗浄液を液体噴流45という)と、気体噴出口22からのエアの噴出(この噴出によるエアを気体噴流46という)によって、洗浄液43は微細液粒43aに破砕されて、液粒噴流44となって、被洗浄面50に向けて送られる。このときの、気体噴出量と液体噴出量とを調節することにより、液粒43aを1〜10μm程度の粒径のミスト(霧)にすることなく、50〜200μm程度の微細液粒にする。この微細液粒43aをエアの噴出により加速して被洗浄面50に液粒噴流44として送ることで、被洗浄面50の汚れを落とすことができる。しかも、7000〜12000Paで7m/min〜10m/minの気体噴出量とすることで、高圧エアを用いる必要が無くなり、効率よく洗浄を行うことができる。
【0023】
例えば、気体噴出口22の孔径を18mmとし、35mmピッチで10個形成し、この気体噴出口22内に、外径が10mmで液体噴出口32aの孔径が1mmのノズルチップ32を配置した場合に、平均粒径が100μm程度の微細液粒43aとする場合には、ヘッド本体20へのエア送り量を12m/min、気体噴出口22での吹き出し流速を45m/S、ノズルチップ32への水供給量を1チップ当たり300mL/min、供給圧力を0.3MPaとする。
【0024】
上記実施形態では、気体噴出口22及びノズルチップ32をヘッド本体20の筒芯CL1方向に1列で形成したが、これは複数列で形成してもよい。なお、気体噴出口22及びノズルチップ32は、被洗浄面50の洗浄エリアをカバーする数量及びピッチで形成されている。また、一定ピッチで気体噴出口22及びノズルチップ32を配置する代わりに、被洗浄面50の汚れ度合に応じて、汚れ度合が高い部位は気体噴出口22及びノズルチップ32のピッチを部分的に変えて、配置密度を高くしてもよい。
【0025】
図4に示すように、本実施形態では、4個の洗浄ノズル10を鉄道車両60の洗浄に用いている。このため、4個の洗浄ノズル10が鉛直方向に2列で2段に並べて取付フレーム51に取り付けられている。また、取付フレーム51は、鉄道車両60のレール61に沿って配置されている。したがって、洗浄ノズル10から液体噴流45と気体噴流46とを噴出させて、鉄道車両60を低速度で走行させることにより、鉄道車両60の側面を洗浄することができる。
【0026】
図2に示すように、洗浄時には気体噴出口22からエアが噴出されるとともに、液体噴出口32aから洗浄液である水が噴出される。気体噴出口22内にノズルチップ32をエア噴出方向及び気体噴出方向を一致させて配置させており、且つ液体噴出口32a及び気体噴出口22の開口面をほぼ同一としているため、液体噴出口32aから液体が噴出すると、この液体噴流45は、気体噴出口22からのエアの吹き出しによる気体噴流46によって、洗浄液43は粉砕・分割されて50〜200μmオーダーの略球状の微細液粒43a(図4参照)となる。この微細液粒43aは気体噴流46によって直進するエネルギを受けて加速され、液粒噴流44となって被洗浄面50に衝突する。特に、開放された大気圧状態で液体噴流45に気体噴流46を当てているため、気体噴流46の大気放出の際の膨張エネルギを利用することができ、効率良く液体噴流45を微細液粒43aに粉砕し分割することができる。
【0027】
被洗浄面50への微細液粒43aの衝突による衝撃によって、被洗浄面50に付着している汚れ56やゴミ57を剥離または削り取ることで、取り除くことができる。
【0028】
また、気体噴流46も被洗浄面50に衝突し、この衝突による衝撃波エネルギにより被洗浄面50に振動を与え、より一層効率良く汚れ56、ゴミ57をたたき落とす。また、たたき落とされた汚れ56やゴミ57は気体噴流46によって吹き飛ばされる。
【0029】
このように、液体噴流45に気体噴流46を合流させることによる微細液粒43aへの粉砕・分割効果、微細液粒43aの気体噴流46による加速効果、気体噴流46が被洗浄面50に衝突することによる衝撃波による被洗浄面50の振動効果、気体噴流46による吹き飛ばし効果が相乗効果となって作用し、被洗浄面の微小な汚れ56、ゴミ57から大きなゴミ等まで非接触式で確実に洗浄することができる。しかも、従来の高圧水流方式のジェット洗浄に比べて、洗浄液の使用量を抑えることができる他に、被洗浄面50の隙間などから高圧水流が侵入してしまうという不都合もない。また、ブラシ方式のような接触方式を取らないため、ブラシによる線状痕跡が残ることもない。
【0030】
前記液体噴流45を噴出するために洗浄ノズル10に供給される液体の圧力P1は、0.15MPa以上0.5MPa以下、吐出量Q1は0.3L/min以上1.0L/min以下、前記気体噴流46を噴出するために洗浄ノズル10に供給される気体の圧力P2は0.05MPa以上1.2MPa以下で吐出量Q2は5000L/min以上17000L/min以下で、P1<P2、Q1<Q2であれば、微細液粒43aの形成、吹き付け、気体噴流による衝撃波の付与、吹き飛ばし効果が得られる。このときの、気体噴出口22の直径は18mm、液体噴出口32aの直径は1.8mmである。また、ノズル先端12aと被洗浄面50との距離L1は80mmである。
【0031】
液体噴流45の吐出圧力P1が0.15MPa未満であると、液体噴流不足により衝突エネルギが弱くなり、P1が0.5MPaを超えると、液体噴流過多により気体噴流46が有効に作用せず、衝突エネルギが弱くなる。また、気体噴流46の吐出圧力P2が0.05MPa未満であると、衝突エネルギが弱くなる。このP2は高いほど衝突エネルギが大きくなり洗浄効果が上がるが、1.2MPaを超えると、被洗浄面の破壊が起こる。
【0032】
同様にして、液体噴流45の吐出量Q1が0.3L/min未満であると衝突エネルギが弱く、1.0L/minを超えると、液体噴流過多で気体噴流が有効に作用せず、衝突エネルギが弱くなる。また、気体噴流46の吐出量Q2が5000L/min未満であると、液体に作用する衝突エネルギが弱くなり、17000L/minを超えると被洗浄面の破壊が起こる。
【0033】
なお、上記P1、Q1、P2、Q2は、以下のような範囲であってもよい。好ましい範囲としては、P1が0.2MPa以上0.5MPa以下、Q1が0.5L/min以上0.7L/min以下、P2が0.1MPa以上1.2MPa以下、Q2が7000L/min以上12000L/min以下である。特に好ましい範囲としては、P1が0.25MPa以上0.3MPa以下、Q1が0.5L/min以上0.6L/min以下、P2が0.7MPa以上1.0MPa以下でQ2が8000L/min以上10000L/min以下である。
【0034】
また、気体噴出口22は孔径が変化しないストレートタイプとしたが、孔径が外側に向かうに従い次第に小さくなるテーパー状にしてもよい。また、テーパー形状も円錐面形状の他にテーパー面が内側に膨らむような形状であってもよい。
【0035】
上記実施形態では鉄道車両60の外板洗浄装置として本発明を実施したが、洗浄対象は鉄道車両60に限られることなく、自動車、航空機、船舶などの他の輸送機器であってもよく、また、輸送機器に限られず、洗浄が必要な微小凹凸を有するあらゆる面に対して本発明を実施することができる。また、被洗浄面50は平面に限られず湾曲面であってもよい。この場合には、ノズル先端と被洗浄面との距離L1が同じになるように、洗浄ノズル10を取り付ける取り付けフレームを湾曲面に合わせた形状とする。また、面洗浄に際して、被洗浄面を移動させる他に、洗浄ノズル10側を移動させてもよく、更には両方を移動させてもよい。
【0036】
なお、本実施形態の場合に、気体噴出口22からの気体吐出量を12000m/minとし、吹き出し流速を45m/secとして、気体噴出量を抑えているため、タールなどによるμmオーダーの微細な汚れに対して洗浄効果が低下することがある。この場合には、別途、吹き出し流速を高くした別の洗浄ヘッドを用いて、例えば窓が位置する部分などを別の方式で洗浄してもよい。
【実施例1】
【0037】
洗浄ノズル10として、図1〜図3に示すものを用い、ヘッド本体20の外径を114mm、長さを530mm、気体噴出口22の直径を18mm、ノズルチップ32の外径を7mm、液体噴出口32aの直径を1mm、ノズルチップ32の先端形状を半球状とした。気体は1.2MPaの圧縮エアを用い、ノズル1本あたりの噴出量は10000L(リットル)/min、液体は0.3MPaの水を用い、ノズル1本あたりの噴出量は300mL/minとした。圧縮エアの気体噴出口22における圧力損失により、実際には1.2MPaで大気放出し、気体噴流46を形成した。ノズル先端から被洗浄面までの距離L1は80mmとした。この洗浄ノズル10を図4に示す取付フレーム51に取り付けて、ステンレス車両の側面を被洗浄面とした。
【0038】
洗浄効果の評価は、(株)キーエンス製のVH−6300型のマイクロスコープにより75倍で被洗浄面を撮影し、洗浄前と洗浄後の写真画像を比較し、汚れ、ゴミを目視判断により評価した。被洗浄面として鉄道車両の車両塗装表面(A面)、同じく車両ステンレス表面((つや消し仕上げ面)B面)、同じく窓ガラス面(C面)を任意に選んで、撮影した。洗浄前の各面は、A面がなだらかな表面の山谷全体に汚れが分布している状態であり、B面がつや消し仕上げの溝(ヘアライン)に入り込んだ汚れが広く分布し、溝と溝の間の頂上部にも汚れが点在している状態であり、C面が油脂状の汚れが点在している状態であった。本実施例による洗浄後には、A面は汚れが見られない状態でありOKレベルであった。また、B面は、頂上部に汚れは見られず、ヘアライン内部の汚れは、最奥部に薄く痕跡を残すものの、洗浄はOKレベルであった。C面は、油脂など大きな汚れは落ちているが、洗浄後の水切りを行わなかったため、洗浄液に含まれていたとみられるアルカリ分が白く結晶したスポットが残ったものの、洗浄としてはOKレベルであった。
【0039】
また、洗浄液及びエアの供給のための消費エネルギは電力換算で、エア供給用が7.4kWであり、洗浄液供給用が0.4kWであり、従来のコンプレッサを用いたジェットノズル方式のものに比べて、消費エネルギを小さくすることができ、省エネを図ることができた。
【符号の説明】
【0040】
10 洗浄ノズル
11 気体噴出ノズル
12 液体噴出ノズル
21 ヘッド本体
22 気体噴出口
30 主管
31 枝管
32 ノズルチップ
32a 液体噴出口
44 液粒噴流
45 液体噴流
46 気体噴流
50 被洗浄面
50a 凹部
56 汚れ
57 ゴミ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄面に向けて気体を噴出する気体噴出口を複数有する気体噴出ノズルと、
前記気体噴出ノズルの前記各気体噴出口内に配置され、該気体噴出口による前記気体の噴出方向に向けて液体を噴出する液体噴出口を有する液体噴出ノズルと、
前記液体噴出ノズルに液体を供給するとともに、前記気体噴出ノズルに気体を供給する流体供給部とを備え、
前記液体噴出ノズルからの液体噴流を前記気体噴出口からの気体噴流によって微細液粒に粉砕し、この微細液粒を前記気体噴流によって加速させて前記被洗浄面に衝突させることを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記流体供給部は、前記液体を、圧力P1が0.15MPa以上0.5MPa以下で吐出量Q1が0.3L/min以上1.0L/min以下で供給し、前記気体を、圧力P2が0.05MPa以上1.2MPa以下で吐出量Q2が5000L/min以上17000L/min以下で供給し、P1<P2、Q1<Q2であることを特徴とする請求項1記載の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−183239(P2011−183239A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47756(P2010−47756)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(596018506)遠州工機株式会社 (2)
【出願人】(507234922)有限会社モービル・クリーンベース (2)
【出願人】(391024951)東日本トランスポ−テック株式会社 (24)
【Fターム(参考)】