説明

流体機械

本発明は、流体を圧縮若しくは圧送するための、殊にガスを高い圧力に圧縮するための流体機械であって、リニアモータ(2)、少なくとも1つのシリンダー(3)、シリンダー(3)内で軸線方向可動な固体ピストン(4)若しくは軸線方向可動な液体ピストン(4′)及び、シリンダー(3)と固体ピストン(4)若しくは液体ピストン(4′)との間に形成された少なくとも1つの圧縮室(5)を備え、リニアモータ(2)は並進駆動力を固体ピストン(4)若しくは液体ピストン(4′)に生ぜしめるようになっている形式のものに関する。この種の流体機械において、流体の、漏れのないかつ潤滑剤なしの圧縮若しくは圧送、殊に高い圧力へのガスの圧縮をできるだけ簡単な構成で可能にするために、固体ピストン(4)若しくは液体ピストン(4′)は、リニアモータ(2)の領域で不動に配置された隙間管(6)によって包囲されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を圧縮若しくは圧送するための流体機械、殊にガスを高い圧力に圧縮するための流体機械であって、リニアモータ、シリンダー、該シリンダー内で軸線方向可動な固体ピストン若しくは該シリンダー内で軸線方向可動な液体ピストン及び、前記シリンダーと前記固体ピストン若しくは前記液体ピストンとの間に形成された圧縮室を備えており、前記リニアモータは並進駆動力を前記固体ピストン若しくは前記液体ピストンに生ぜしめるようになっている形式のものに関する。
【0002】
流体機械は、種々の構造のものが公知であり、液体若しくはガスを圧送するか若しくは圧縮するかによって分類される。液体を圧送若しくは吐出するために用いられる流体機械は、一般的にポンプと称されるのに対して、ガス若しくは気体を圧縮するために用いられる流体機械は、圧縮機若しくはコンプレッサーと称される。さらに流体機械は、駆動力の種類に応じて、液圧式、電動式、或いは電磁式に分類され、かつ駆動運動の種類に応じて回転駆動式と並進駆動式とに分類される。
【0003】
本発明は、駆動力をリニアモータによって形成するようになっている形式の流体機械に関し、この場合にリニアモータは、シリンダー内に案内されたピストンに直接に、つまり伝動装置による回転運動の変換なしに、並進の駆動力(並進駆動力若しくは直線駆動力)を生ぜし若しくは伝達するようになっている。この種の流体機械を用いてガス若しくは気体を圧縮する場合には、流体機械はピストン圧縮機若しくはリニアコンプレッサー(リニア圧縮機)と称される。リニアモータは実質的に固定子若しくはステータと可動子若しくはアクチュエータとから成っていて、回転モータと同様に、非同期リニアモータ若しくは同期リニアモータとして形成されるものである。これによりリニアモータは、かご形誘導モータ若しくは永久磁石同期モータと同様に作動するものであり、この場合には固定子のコイル若しくは巻体によって回転磁界の代わりに移動磁界を生ぜしめるようになっている。力伝達は、回転磁界電動機と同じように非同期モータの可動子の誘導作用に基づき若しくは永久磁石の磁場との相互作用に基づき行われるようになっている。
【0004】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第102004055924A1号明細書に記載のリニアコンプレッサーにおいては、可動子のマグネットはマグネットフレームに取り付けられており、マグネットフレームはピストンの端面に固着されている。該公知のリニアコンプレッサーにはリニアモータの冷却のために冷却通路を設けてあり、該冷却通路を介して、固定子のコイルホルダーに取り付けられたコイルは冷却媒体で冷却されるようになっている。このためにポンプを設けてあり、ポンプは、リニアコンプレッサーを気密に密閉するケーシング内のオイルを冷却通路によってコイル若しくはコイルホルダーに向けて送るようになっている。この場合に、戻されたオイルはケーシングの下方の部分に捕集されるようになっている。
【0005】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第10214047A1号明細書には、自動車の空調装置のための、閉じた冷却媒体回路を備えたコンプレッサーを開示してあり、該コンプレッサーはコンプレッサーケーシングを備えており、コンプレッサーケーシング内に圧縮室を形成してあり、圧縮室に行程ピストンを往復運動可能に配置してあり、この場合にコンプレッサーの駆動部として制御振動数の変化可能なリニアモータを用いてあり、リニアモータの作動部分の圧縮室側の端面に行程ピストンを取り付けてある。該公知のコンプレッサーは簡単に構成され、わずかな構成部分から成っていて、比較的に小さいスペースしか必要としておらず、80乃至160バールの高圧側の圧力レベルに際して支承、潤滑及びシールの問題は生じないようにするものである。この場合に圧縮室壁に対する行程ピストンの密閉は、行程ピストンに設けられた一般的なリングシール部分によって行われるようになっている。この種の可動のシール部分においては時間の経過に伴って大気への漏れが生じるので、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10214047A1号明細書に記載の流体機械は、流体を高い圧力(150バールを越える圧力)に圧縮するためには適さないものであり、使用されるに至っていないものである。
【0006】
前に述べてあるように、ここに述べる流体機械は、シリンダー内を軸線方向に可動な固体ピストン若しくは軸線方向に可動の液体ピストンを含むものである。固体ピストンは、本発明の枠内では従来慣用の(一般的な)剛性若しくは中実のピストン又は中実の金属ピストンを意味している。この種の固体ピストンを前記圧縮機は備えている。これに対して液体ピストンは、本発明の枠内では、流動性であるものの、固体のように振る舞い、液体の液面高さの変化に基づきガスの圧縮を達成する液体によって形成されているものである。この場合に、液体ピストンのための液体及び圧縮すべきガスの両方は、同一のシリンダー内に受容されているものの、液体とガスとの混合は生じることはない。これにより、液体ピストン若しくは液状のピストンは、固体ピストンと同様の機能を生ぜしめるようになっており、この場合に液体ピストンは固体ピストンと同様に、リニアモータのコイルによって生ぜしめる移動磁界に基づき並進的に駆動されるようになっている。
【0007】
液体ピストンを備えた流体機械は、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第102004046316A1号明細書により公知であり、該明細書に記載されている圧縮機においては、イオン液体を用いてあり、したがって該圧縮機はイオン式の圧縮機とも称される。該公知の圧縮機は互いに接続された2つのシリンダーを有しており、該各シリンダー内にはそれぞれ液体及び圧縮すべきガスが存在している。液体ポンプを用いて両方のシリンダー内の液面高さは次のように変化させられ、つまり一方のシリンダー内には圧縮すべきガスを吸い込むのに対して、他方のシリンダー内ではガスの圧縮を行うようになっている。
【0008】
本発明の課題は、流体を圧縮若しくは圧送するための冒頭に述べた形式の流体機械を改善して、該流体機械が極めて簡単な構造であり、漏れの生じないかつ潤滑剤の不要な状態で流体を圧縮若しくは圧送できるように、殊にガスを高い圧力に圧縮できるようにすることである。
【0009】
前記課題を解決するために本発明に基づく構成では、固体ピストン若しくは液体ピストンは、リニアモータの領域で、不動に配置された隙間管によって包囲されている。隙間管(定位置式のシールパイプ若しくはシールスリーブ)の配置によって、簡単に大気若しくは外部に対する漏れ防止(密閉性)を達成している。駆動部、ひいては大気に対する固体ピストンの密閉のための可動のシール部分の箇所で生じている漏れは、隙間管によって防止されるようになっている。隙間管を配置してあることに基づき、大気に対する密閉をもっぱら静的なシール部分によって行ってある。
【0010】
固体ピストン、つまり中実のピストン(棒状ピストン若しくはプランジャー形ピストン)を備える流体機械の有利な第1の実施態様では、リニアモータは固定子及び可動子を有しており、隙間管は、半径方向で可動子と固定子のコイル(巻体)との間に配置されていて、これによって可動子を包囲している。本発明の別の、つまり第2の実施態様では、可動子も固定子のコイルも隙間管内に配置されており、これによって隙間管は可動子及び固定子を包囲している。
【0011】
前記第1の実施態様では、隙間管は電気式の駆動装置と流体の充填される圧縮室若しくは可動の固体ピストンとの間の隔壁として用いられていて、エネルギー伝達のために磁束によって貫通されるようになっている。磁束は隙間管を貫通(通過)する場合に、隙間管にうず電流を生ぜしめ、うず電流は電気的な損失、ひいては隙間管を加熱してしまうことになり、この場合に効率は、外側に位置する隙間管を備えるリニアモータの効率よりも小さくなっている。損失が大きいというこのような欠点は、隙間管によって可動子及び固定子を包囲する第2の実施態様では生じていない。該第2の実施態様においては、少なくとも、流体機械を腐食してしまうような媒体を密封するという利点は得られる。前記第1の実施態様では、コイルをも媒体による腐食から保護していて、コイルの耐用年数の低下を防止している。
【0012】
本発明に基づく流体機械の有利な実施態様では、可動子はマグネットを有しており、該マグネットは固体ピストンに直接に配置されている。マグネットを固体ピストンに直接に取り付けることにより、別個のマグネットフレームの配置は不要になっている。さらに、流体機械、殊にシリンダーの半径方向の寸法を減少させることができる。
【0013】
本発明の有利な別の実施態様では、流体機械は多段に形成されており、つまりガスの圧縮は少なくとも二段で、有利には四段で行われるようになっている。これとは異なる実施態様として、単段式の圧縮も可能であり、この場合に有利には補償段を設けて、圧縮の際の合成の力を小さく保つようになっている。ガスの圧縮を複数段で行う場合に有利には、固体ピストンは、直径の互いに異なる区分(ピストン区分)を有している。このようなピストンは、製作技術的に複数のピストン部分を互いに軸線方向で接合して組み立てられていてよい。
【0014】
固体ピストンを備える本発明に基づく流体機械の別の有利な実施態様では、隙間管に通じている圧縮室は、直接に流体機械の流体流入側、つまり流体吸引側に接続され、若しくは管路(導管)を介して或いは、シリンダー又はケーシング内に形成された通路を介して流体機械の流体流入側、つまり流体吸引側に接続されている。このような手段により、隙間管の領域の圧力は、流体流入側の低い圧力に低下されるようになっている。運動されるピストン密閉部に沿って流出する内部漏れは、流体流入側に導かれて吸い込み圧に放圧されるようになっている。このような作用効果により、隙間管の必要な壁厚を減少させることができ、ひいては、可動子と固定子のコイルとの間(隙間又は間隙)に配置された隙間管(間隙管)に生じる電気的な損失を減少させることができるようになっている。上記作用効果により、特に高い圧力の場合に従来技術では必要となる厚い若しくは二重壁の隙間管の使用を避けることができるようになっている。しかしながら安全性を高めるために、特に危険なガス(毒性のガス、環境負荷の高いガス若しくは放射性のガス)の場合に二重壁の隙間管の使用は可能である。
【0015】
隙間管の使用により発生することになる電気的な損失を減少させるために、有利な実施態様では隙間管は、金属によってではなく、プラスチック若しくはセラミックによって形成されている。プラスチックを選ぶかセラミックを選ぶかは、隙間管が発生する最大の圧力に耐え得るかにもより決められる。
【0016】
本発明の別の実施態様では、流体機械にリニアモータの冷却のため、殊に固定子のコイルの冷却のための冷却媒体回路を設けてある。有利な実施態様では流体の冷却のための少なくとも1つの熱交換器を設けてある。熱交換器を設けること自体は従来技術においても行われている。多段式の流体機械においては、有利には各圧縮段に熱交換器を配置してある。流体若しくはガスの冷却のために熱交換器に用いられる冷却媒体は、リニアモータの冷却のためにも用いられるものである。この場合にリニアモータの冷却は、有利には外側から、つまりリニアモータを取り囲むケーシングを介して行われ、したがって可動子も固定子も冷却媒体と直接に接触することはない。別個の冷却媒体を使用する実施態様とは異なり、別の実施態様では、圧縮すべき流体の冷却のためにもリニアモータの冷却のためにも、圧縮すべき流体と同じ流体を用いることができ、この場合には流体は適切な低温の状態で与えられるようになっている。
【0017】
液体ピストン(流体ピストン)を用いてガスを高い圧力に圧縮する流体機械において、液体ピストンは有利には、蒸発圧力若しくは気化圧力を有さない、つまり圧力下でも蒸発しない磁性流体若しくは磁化可能な液体によって形成されており、したがって、磁性流体若しくは磁化可能な液体の分子は圧縮すべきガスと混合することはない。液体ピストンのための流体若しくは液体として1つの実施態様ではイオン液体を用いてある。圧縮すべきガスと混合しない流体を用いると、該流体の分解温度は超えられない間は、流体と圧縮すべきガスとの分離は不要になっている。液体ピストンを備える流体機械において、隙間管は有利には半径方向で固定子のコイルの内側に配置されていて、したがって可動子として機能する磁性流体若しくはイオン液体を包囲している。これによって隙間管はリニアモータの領域でシリンダー壁の機能を有している。
【0018】
固体ピストンの代わりに液体ピストンを用いることによって、中実のピストンの使用を避けることができるだけではなく、中実のピストンの場合には必要なピストン密閉部材(ピストン密閉要素若しくはピストンシール部分)の使用も避けることができるようになっている。圧縮室の密閉は、液体ピストンを成す液体によって直接に行われ、したがって大気への漏れは生じない。さらに、ピストン閉鎖部材の省略によって流体機械の保守費用若しくは整備費用も節減することができ、それというのは作業室内に摩耗部材を用いてないからである。
【0019】
公知技術に基づくイオン式の圧縮機と異なり、本発明に基づく流体機械においては、液面高さの変化は、液圧ポンプを用いてではなく、リニアモータを用いて行われるようになっており、リニアモータのコイルによって形成される移動磁界は、磁化可能な液体に並進運動力を生ぜしめるようになっている。液圧ポンプの代わりにリニアモータを用いることによって、一面において圧縮すべきガスのより高い最大圧力を達成でき、他面において液圧ポンプの場合の摩耗を避けることができるようになっている。
【0020】
液体ピストンの使用においてはさらに利点として、液体を介して、圧縮に際して生じる圧縮熱の少なくとも部分的な排出(導出)、ひいてはリニアモータの冷却、殊に固定子のコイルの冷却を達成できることである。このために1つの実施態様では、液体の冷却のための熱交換器を設けてある。
【0021】
本発明に基づく流体機械は、ガスを高い圧力に圧縮するために、殊に水素を500バールの圧力若しくはそれより高い圧力に圧縮するために適している。したがってこの種のリニアコンプレッサーは、水素タンクスタンド若しくは水素供給タンク箇所の設備のために適している。
【0022】
本発明に基づく流体機械は、種々に構成され、若しくは変更できるものである。次に本発明を図示の実施例に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に基づく流体機械の第1の実施例の断面図である。
【図2】図1の流体機械の符号Aで示す部分の拡大図である。
【図3】本発明に基づく流体機械の第2の実施例の断面図である。
【図4】図3の流体機械の一部分の拡大図である。
【図5】本発明に基づく流体機械の第3の実施例の断面図である。
【図6】本発明に基づく流体機械の第4の実施例の断面図である。
【0024】
図1、図3、図5及び図6には、本発明に基づく流体機械の各実施例を示してあり、この場合に本発明にとって重要な構成部分のみを図示してある。図示の流体機械1は、ガス、殊に水素を例えば500バールの高い圧力に圧縮するために用いられている。つまりこの種の流体機械1は特に水素供給用の水素貯蔵スタンドの設備のために有利に用いられるものである。
【0025】
図1、図3及び図5に示す流体機械1は、シリンダー3内に可動に配置された固体ピストン4の駆動のためのリニアモータ2を有している。駆動部としてリニアモータ2を用いることによって、固体ピストン4に並進駆動力を生ぜしめることができ、したがって固体ピストン4はシリンダー3内を軸線方向に往復運動するようになっている。シリンダー3,3′内には、圧縮すべきガスのための少なくとも1つの圧縮室5を設けてあり、この場合に圧縮室5の大きさは、固体ピストン4の位置に依存して変化させられるようになっている。
【0026】
図1及び図3に示す両方の実施例において、流体機械1は全体で4段式に形成されており、したがってガスの圧縮は、順次に直列接続された4つの段で行われるようになっている。これに対応して、固体ピストン4には、直径の互いに異なる4つの区分41,42,43,44を形成してある。これに対応して、シリンダー3も内径の互いに異なる4つの区分を有しており、これにより全体で4つの圧縮室5を画成してある。これとは異なり、図5に示す流体機械1は1段式(単段式)に形成されていて、しかしながら、複動式の流体機械として構成されており、このために固体ピストン4の両方の端面側にそれぞれ圧縮室5を画成してある。
【0027】
3つのすべての実施例に共通している点として、固体ピストン4はリニアモータ2の領域で、定位置に、つまり不動に配置された隙間管6によって包囲されている。隙間管6の配置によってシリンダー内室7の確実な密閉を保証し、その結果、流体機械1の所期の漏れ防止を簡単な手段で達成している。大気若しくは外部に対する漏れ防止は、もはや、固体ピストン4に配置されるピストン密閉部材若しくはピストン密閉部分によっては行われておらず、固体ピストンに配置されるピストン密閉部材若しくはピストン密閉部分(密閉構成要素)は、漏れ防止作用を、該ピストン密閉装置の、可動のシール部分若しくはシール装置としての構成及び配置に基づき原理的に若しくは構造上保証し得るものではなく、或いは長期にわたって、特に潤滑なしに保証し得るものではない。従来技術では通常一般的に用いられている、駆動のためのピストンロッドの一般的な貫通案内部は、本発明では省略されており、さらに慣用の貫通案内部のために必要な可動のシール部分も省略されている。大気若しくは外部に対する漏れ防止(密閉性若しくは気密性)は、もっぱら静的なシール部分18によって保証されている。
【0028】
図1乃至図5に示してあるリニアモータ2は、コイル9から成る固定子並びに複数のマグネット10から成る可動子を含んでおり、この場合にはマグネット10を直接に固体ピストン4に配置してある。
【0029】
図1、並びに拡大図である図2に示す実施例においては、隙間管6は半径方向で可動子、つまりマグネット10と固定子のコイル9との間に配置されていて、したがって固体ピストン4だけではなく、可動子のマグネット10をも包囲している。該実施例では隙間管6を固定子と可動子との間に配置してあるので、磁束は隙間管6を通過するようになっている。これとは異なり、図3、並びに拡大図である図4に示す実施例においては、可動子、つまりマグネット10も固定子のコイル9も隙間管6の内側に配置されている。該実施例では、マグネット10並びにコイル9は、ピストンシール部分18を設けてあるにもかかわらずシリンダー内室7内で隙間管6の領域に流れ込む流体にさらされることになる。
【0030】
図1、図3及び図5に示してあるように、間隙室6と通じている圧縮室5は、管路11を介して流体機械1の流体入口側12に接続されている。これによって、ピストンシール部材8にもかかわらず固体ピストン4の外周とシリンダー3の内周壁との間に流れる内部漏れは、吸い込み圧に減圧されて、流体入口側12に戻されるようになっている。その結果、隙間管6によって取り囲まれたシリンダー内室7内の圧力は減少されて、図1及び図2の構成における隙間管6、並びに図3及び図4の構成におけるコイル9及び隙間管6は不当には負荷されなくなっている。隙間管6によって取り囲まれたシリンダー内室7内の圧力の上述の減少に基づき、隙間管6の壁厚を相応に減少させることができ、ひいては隙間管6内に発生するうず電流損失を減少させることができるようになっている。
【0031】
別の実施例として、間隙室6と通じている圧縮室5は直接に流体入口側12に接続されていてよく、つまり、流体流入は、間隙室6と通じている圧縮室5内で行われるようになっていてよい。圧縮すべき流体は温度が低いので、リニアモータ2に冷却作用を生ぜしめるようになっている。
【0032】
従来技術により知られているように、圧縮すべきガスの流入並びに流出は、各圧縮室5の領域に配置された弁13を介して行われるようになっており、弁は有利には板弁として形成されている。圧縮室5と各流入部若しくは各流出部と間に生じる差圧力により弁12の開閉は自動的に行われるようになっている。図1及び図3の両方の実施例ではガスの4段式の圧縮を行うようになっているので、流体機械1は各4つの流入弁13及び流出弁13を有している。
【0033】
図1及び図3にさらに示してあるように、各圧縮室5は管路14を介して互いに接続されており、この場合に各管路14には、圧縮されたガスの冷却のための熱交換器15を設けてある。さらに図1及び図3に示してあるように、流体機械1は、固定子のコイル9の冷却のため、ひいてはリニアモータ2全体の冷却のための冷却媒体回路16を有している。この場合に冷却は、外側から、つまりコイル9を取り囲むケーシング17を介して行われ、これによってコイル9は冷却媒体と直接には接触しないようになっている。熱交換器15による圧縮されたガスの冷却のために、並びにリニアモータ2の冷却のために、同一の冷却媒体を用いることができる。
【0034】
さらに図面から明らかなように、流体機械1の図示の実施例はそれぞれ2つのシリンダー3,3′を有しており、この場合に隙間管6を含むリニアモータ2若しくはリニアモータ2を包囲するケーシング17は、両方のシリンダー3,3′間に配置されている。両方のシリンダー3,3′の端面とケーシング17の端面との間の密閉(パッキン)は、静的なシール部分18を介して行われている。
【0035】
さらに図3及び図4から見て取れるように、隙間管6内に配置された固定子への電気的な導線19は、流体が漏れないように圧密のケーブル通し案内部20を用いて接続箱21に向けて案内されており、接続箱21も圧密のケーブル通し案内部21を有しており、したがって隙間管6によって達成された密閉性は導線19の接続部によって損なわれることはない。
【0036】
図6に示してある実施例の流体機械1は、無垢のピストン(中実ピストン)の代わりに液体ピストン4′を有している。液体ピストン4′を形成する液体は、両方のシリンダー3,3′及び隙間管6によって形成されたU字形のケーシング内に配置(収容)されている。両方のシリンダー3,3′内で液体の液面の上側に、圧縮すべきガスのための圧縮室5を設けてあり、この場合に両方の圧縮室5の大きさは液体の液面高さ、すなわち液体ピストン4′の位置に依存して変化されるようになっている。図6に示す流体機械1は、図5の流体機械1と同様に1段式に形成されていて、複動式の流体機械1であり、つまり液体ピストン4′の両方の端面側にそれぞれ1つの圧縮室5を画成してある。
【0037】
両方の圧縮室5内において流入部並びに流出部にはそれぞれ1つの弁13を配置してあり、両方の圧縮室5の流出部は管路14を介して互いに接続されており、前記管路には圧縮されたガスの冷却のための熱交換器15を配置してある。リニアモータ2は、隙間管6を一緒に、若しくはリニアモータ2を包囲するケーシング17と一緒に両方のシリンダー3,3′間に配置されており、この場合にリニアモータ2の領域内の隙間管6は、液体のためのシリンダー壁を成している。
【0038】
図示の流体機械1は、殊にガスを、有利には水素を高い圧力に、例えば1000バールに圧縮するために適していて、したがって水素貯蔵スタンドの設備に適している。
【符号の説明】
【0039】
1 流体機械、 2 リニアモータ、 3 シリンダー、 3′ シリンダー、 4 固体ピストン、 4′ 液体ピストン、 5 圧縮室、 6 隙間管、 7 シリンダー内室、 9 コイル、 10 マグネット、 12 流体流入側、 13 弁、 14 管路、 15 熱交換器、 16 冷却媒体回路、 17 ケーシング、 18 シール部分、 19 導線、 20,21 ケーブル通し案内部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を圧縮若しくは圧送するための流体機械、殊にガスを高い圧力に圧縮するための流体機械であって、1つのリニアモータ(2)、少なくとも1つのシリンダー(3)、該シリンダー(3)内で軸線方向可動な1つの固体ピストン(4)若しくは該シリンダー(3)内で軸線方向可動な1つの液体ピストン(4′)及び、前記シリンダー(3)と前記固体ピストン(4)若しくは前記液体ピストン(4′)との間に形成された少なくとも1つの圧縮室(5)を備えており、前記リニアモータ(2)は並進駆動力を前記固体ピストン(4)若しくは前記液体ピストン(4′)に生ぜしめるようになっている形式のものにおいて、前記固体ピストン(4)若しくは前記液体ピストン(4′)は、前記リニアモータ(2)の領域で不動に配置された隙間管(6)によって包囲されていることを特徴とする、流体機械。
【請求項2】
前記固体ピストン(4)を備えており、前記リニアモータ(2)は固定子及び可動子を有しており、前記隙間管(6)は半径方向で前記可動子と前記固定子のコイル(9)との間に配置されていて、前記可動子を包囲している請求項1に記載の流体機械。
【請求項3】
前記固体ピストン(4)を備えており、前記リニアモータ(2)は固定子及び可動子を有しており、前記可動子並びに前記固定子のコイル(9)は前記隙間管(6)内に配置されており、これによって前記隙間管(6)は可動子並びに前記固定子を包囲している請求項1に記載の流体機械。
【請求項4】
前記可動子はマグネット(10)を有しており、該マグネット(10)は前記ピストン(4)に直接に配置されている請求項2又は3に記載の流体機械。
【請求項5】
前記固体ピストン(4)を備えており、ガスの圧縮は多段式に行われるようになっている請求項1から4のいずれか1項に記載の流体機械。
【請求項6】
前記固体ピストン(4)は、直径の互いに異なる区分(41,42,43,44)を有している請求項5に記載の流体機械。
【請求項7】
前記固体ピストン(4)を備えており、前記隙間管(6)に通じている前記圧縮室(5)は、直接に若しくは管路(11)を介して流体流入側(12)に接続されている請求項1から6のいずれか1項に記載の流体機械。
【請求項8】
前記固体ピストン(4)を備えており、前記リニアモータ(2)の冷却のため、殊に前記固定子のコイル(9)の冷却のための冷却媒体回路(16)を設けてある請求項1から7のいずれか1項に記載の流体機械。
【請求項9】
前記固体ピストン(4)を備えており、前記流体の冷却のための少なくとも1つの熱交換器(15)を設けてある請求項1から8のいずれか1項に記載の流体機械。
【請求項10】
前記リニアモータ(2)の冷却のため、及び前記流体の冷却のために同一の冷却媒体若しくは圧縮すべき前記流体を用いるようになっている請求項8又は9に記載の流体機械。
【請求項11】
ガスを高い圧力に圧縮するために液体ピストン(4′)を備えており、該液体ピストン(4′)は、蒸発圧力を有さない磁性流体によって形成されている請求項1に記載の流体機械。
【請求項12】
前記流体としてイオン液体を用いてある請求項11に記載の流体機械。
【請求項13】
前記隙間管(6)は半径方向で前記固定子のコイル(9)の内側に配置されていて、可動子として機能する前記液体を包囲している請求項11又は12に記載の流体機械。
【請求項14】
前記流体の冷却のための少なくとも1つの熱交換器(15)を設けてあり、有利には前記液体を前記リニアモータ(2)の冷却のためにも用いてある請求項11から13のいずれか1項に記載の流体機械。
【請求項15】
2つのシリンダー(3,3′)を備えており、前記リニアモータ(2)は前記隙間管(6)を含めて前記両方のシリンダー(3,3′)間に配置されている請求項1から14のいずれか1項に記載の流体機械。
【請求項16】
前記隙間管(6)は金属若しくはプラスチック若しくはセラミックから成っている請求項11から15のいずれか1項に記載の流体機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−513779(P2010−513779A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541843(P2009−541843)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【国際出願番号】PCT/EP2007/010872
【国際公開番号】WO2008/074428
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(509172745)アンドレアス ホーファー ホーホドルックテヒニーク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【氏名又は名称原語表記】Andreas Hofer Hochdrucktechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Ruhrorter Strasse 45, D−45478 Muehlheim an der Ruhr, Germany
【Fターム(参考)】