説明

流体送り装置及びタイヤ加硫装置

【課題】ロータ表面のゴミを除去することが可能な流体送り装置を提供する。
【解決手段】キャン式電動モータのロータ10を収容するロータ収容室14が設けられたロータ収容体15と、ロータ収容室14と密閉状に連設された流体送り室6が設けられ、この流体送り室6内に羽根車5が収容されたポンプケーシング4を備える。また、流体送り室6の側面近傍とロータ収容室14の上端とを中空状の管体16で接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体送り装置及びタイヤ加硫装置に関する。詳しくは、ロータとステータコイルとの間が隔壁(キャン)によって区画されたキャン式モータを使用した流体送り装置及びこうした流体送り装置を用いたタイヤ加硫装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤ加硫装置に代表される様に、温水や高温蒸気、高温ガス等を加熱媒体(流体)として使用する加熱機器用の流体送り装置として、いわゆるキャン式の電動モータを駆動モータとして用いているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
こうした流体送り装置は、ロータとステータコイルとが隔壁(キャン)で密閉状に区画された電動モータを備え、この電動モータで羽根車を回転させることで、吸入口から流体を吸入し、吸入した流体を吐出口から吐出することができる。
【0004】
ここで、キャン式の電動モータは、隔壁でステータコイルを密閉状に区画しているため、ステータコイルが加熱媒体(流体)から隔離されることとなり、蒸気の影響によるトラブルを回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−22644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の流体送り装置では、ロータが高温や高湿の環境に晒されているため、このロータの外周面が腐蝕し、腐蝕により発生した錆がゴミとなってロータの外周面に付着することがある。その結果、ロータの寿命が短命になったり、付着したゴミが隔壁との隙間に留まってロータの回転に悪影響を与えたりする。
【0007】
本発明は以上の点に鑑みて創案されたものであり、ロータ表面のゴミを除去することが可能な流体送り装置及びこうした流体送り装置を用いたタイヤ加硫装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の流体送り装置は、ロータと、該ロータの周囲に配設されたステータコイルを有するモータと、前記ロータを収容し、同ロータと前記ステータコイルとの間を密閉状に区画する第1の領域を有するロータ収容体と、一端が前記ロータと接続された駆動軸と、該駆動軸の他端と接続された羽根車と、前記第1の領域と密閉状に連設された第2の領域を有し、該第2の領域に前記羽根車が収容された羽根車収容体と、該羽根車収容体に設けられると共に、前記羽根車の回転により前記第2の領域に流体を吸入する吸入口と、前記羽根車収容体に設けられると共に、前記羽根車の回転により前記第2の領域から流体を吐出する吐出口と、一端が前記ロータよりも前記羽根車と逆側の第1の領域と接続され、他端が前記第2の領域のうち、前記羽根車の回転により前記第1の領域との連設領域よりも高い圧力となる領域に接続されると共に、その内部が中空状に形成された管体とを備える。
【0009】
ここで、管体の他端が第2の領域のうち、羽根車の回転により第1の領域との連設領域よりも高い圧力となる領域に接続されたことによって、管体の他端から一端に向けて流体が移動することとなり、ロータよりも羽根車と逆側の第1の領域に流体が供給されることとなる。そして、ロータよりも羽根車と逆側の第1の領域に供給された流体は、ロータとステータコイルとの間を通って第2の領域に戻ることとなる。即ち、管体が設けられたことによって、羽根車の回転時にロータとステータコイルとの間を流体が通過することとなる。
【0010】
なお、「第2の領域のうち、羽根車の回転により第1の領域との連設領域よりも高い圧力となる領域」としては、例えば、「第1の領域と第2の領域との連設領域よりも羽根車の回転により生じる流体の流れの下流側に位置する領域」が挙げられる。
【0011】
また、上記の目的を達成するために、本発明の流体送り装置は、ロータと、該ロータの周囲に配設されたステータコイルを有するモータと、前記ロータを収容し、同ロータと前記ステータコイルとの間を密閉状に区画する第1の領域を有するロータ収容体と、一端が前記ロータと接続された駆動軸と、該駆動軸の他端と接続された羽根車と、前記第1の領域と密閉状に連設された第2の領域を有し、該第2の領域に前記羽根車が収容された羽根車収容体と、該羽根車収容体に設けられると共に、前記羽根車の回転により前記第2の領域に流体を吸入する吸入口と、前記羽根車収容体に設けられると共に、前記羽根車の回転により前記第2の領域から流体を吐出する吐出口と、前記羽根車の回転と連動して、前記第2の領域内の流体を前記ロータと前記ステータコイルとの間に供給する流体供給手段とを備える。
【0012】
ここで、羽根車の回転と連動して、第2の領域内の流体をロータとステータコイルとの間に供給する流体供給手段によって、羽根車の回転時にロータとステータコイルとの間を流体が通過することとなる。
【0013】
また、上記の目的を達成するために、本発明のタイヤ加硫装置は、金型と、該金型の内部に配置され、流体の供給排出で拡縮可能に構成されたブラダーと、該ブラダーに接続され、同ブラダーに流体を供給する流体供給管と、前記ブラダーに接続され、同ブラダーから流体を排出する流体排出管と、前記流体供給管と前記流体排出管とを連通する連通管と、前記流体供給管と、前記流体排出管と、前記連通管とで形成される循環回路に配設された流体送り装置とを備えるタイヤ加硫装置において、前記流体送り装置は、ロータと、該ロータの周囲に配設されたステータコイルを有するモータと、前記ロータを収容し、同ロータと前記ステータコイルとの間を密閉状に区画する第1の領域を有するロータ収容体と、一端が前記ロータと接続された駆動軸と、該駆動軸の他端と接続された羽根車と、前記第1の領域と密閉状に連設された第2の領域を有し、該第2の領域に前記羽根車が収容された羽根車収容体と、該羽根車収容体に設けられると共に、前記羽根車の回転により前記第2の領域に流体を吸入する吸入口と、前記羽根車収容体に設けられると共に、前記羽根車の回転により前記第2の領域から流体を吐出する吐出口と、一端が前記ロータよりも前記羽根車と逆側の第1の領域と接続され、他端が前記第2の領域のうち、前記羽根車の回転により前記第1の領域との連設領域よりも高い圧力となる領域に接続されると共に、その内部が中空状に形成された管体とを備える。
【0014】
ここで、管体の他端が第2の領域のうち、羽根車の回転により第1の領域との連設領域よりも高い圧力となる領域に接続されたことによって、管体の他端から一端に向けて流体が移動することとなり、ロータよりも羽根車と逆側の第1の領域に流体が供給されることとなる。そして、ロータよりも羽根車と逆側の第1の領域に供給された流体は、ロータとステータコイルとの間を通って第2の領域に戻ることとなる。即ち、管体が設けられたことによって、羽根車の回転時にロータとステータコイルとの間を流体が通過することとなる。
【0015】
また、上記の目的を達成するために、本発明のタイヤ加硫装置は、金型と、該金型の内部に配置され、流体の供給排出で拡縮可能に構成されたブラダーと、該ブラダーに接続され、同ブラダーに流体を供給する流体供給管と、前記ブラダーに接続され、同ブラダーから流体を排出する流体排出管と、前記流体供給管と前記流体排出管とを連通する連通管と、前記流体供給管と、前記流体排出管と、前記連通管とで形成される循環回路に配設された流体送り装置とを備えるタイヤ加硫装置において、前記流体送り装置は、ロータと、該ロータの周囲に配設されたステータコイルを有するモータと、前記ロータを収容し、同ロータと前記ステータコイルとの間を密閉状に区画する第1の領域を有するロータ収容体と、一端が前記ロータと接続された駆動軸と、該駆動軸の他端と接続された羽根車と、前記第1の領域と密閉状に連設された第2の領域を有し、該第2の領域に前記羽根車が収容された羽根車収容体と、該羽根車収容体に設けられると共に、前記羽根車の回転により前記第2の領域に流体を吸入する吸入口と、前記羽根車収容体に設けられると共に、前記羽根車の回転により前記第2の領域から流体を吐出する吐出口と、前記羽根車の回転と連動して、前記第2の領域内の流体を前記ロータと前記ステータコイルとの間に供給する流体供給手段とを備える。
【0016】
ここで、羽根車の回転と連動して、第2の領域内の流体をロータとステータコイルとの間に供給する流体供給手段によって、羽根車の回転時にロータとステータコイルとの間を流体が通過することとなる。
【0017】
また、上記の目的を達成するために、本発明のタイヤ加硫装置は、金型と、該金型の内部に配置され、流体の供給排出で拡縮可能に構成されたブラダーと、該ブラダーに接続され、同ブラダーに流体を供給する流体供給管と、前記ブラダーに接続され、同ブラダーから流体を排出する流体排出管と、前記流体供給管と前記流体排出管とを連通する連通管と、前記流体供給管と、前記流体排出管と、前記連通管とで形成される循環回路に配設された流体送り装置とを備えるタイヤ加硫装置において、前記流体送り装置は、ロータと、該ロータの周囲に配設されたステータコイルを有するモータと、前記ロータを収容し、同ロータと前記ステータコイルとの間を密閉状に区画する第1の領域を有するロータ収容体と、一端が前記ロータと接続された駆動軸と、該駆動軸の他端と接続された羽根車と、前記第1の領域と密閉状に連設された第2の領域を有し、該第2の領域に前記羽根車が収容された羽根車収容体と、該羽根車収容体に設けられると共に、前記羽根車の回転により前記第2の領域に流体を吸入する吸入口と、前記羽根車収容体に設けられると共に、前記羽根車の回転により前記第2の領域から流体を吐出する吐出口と、一端が前記ロータよりも前記羽根車と逆側の第1の領域と接続され、他端が前記流体供給管若しくは前記流体排出管の少なくともいずれか一方に接続されると共に、その内部が中空状に形成された管体とを備える。
【0018】
ここで、管体の他端が流体供給管に接続された場合には、流体供給管からブラダーに流体を供給する際に管体の他端から一端に向けて流体が移動することとなり、ロータよりも羽根車と逆側の第1の領域に流体が供給されることとなる。そして、ロータよりも羽根車と逆側の第1の領域に供給された流体は、ロータとステータコイルとの間を通って第2の領域に達することとなる。即ち、他端が流体供給管に接続された管体が設けられることによって、ブラダーへの流体の供給時にロータとステータコイルとの間を流体が通過することとなる。
【0019】
一方、管体の他端が流体排出管に接続された場合には、ブラダーから流体排出管に流体を排出する際に管体の一端から他端に向けて流体が移動することとなり、ロータよりも羽根車と逆側の第1の領域から流体が排出されることとなる。そして、ロータよりも羽根車と逆側の第1の領域から流体が排出されると、第2の領域の流体がロータとステータコイルとの間を通って第1の領域に供給され、第1の領域に供給された流体は管体を通じて排出されることとなる。即ち、他端が流体排出管に接続された管体が設けられることによって、ブラダーからの流体の排出時にロータとステータコイルとの間を流体が通過することとなる。
【0020】
なお、管体の他端が流体供給管及び流体排出管の双方に接続された場合には、ブラダーへの流体の供給時にロータとステータコイルとの間を流体が通過すると共に、ブラダーからの流体の排出時にロータとステータコイルとの間を流体が通過することとなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の流体送り装置及びタイヤ加硫装置では、ロータとステータコイルとの間を流体が通過するために、ロータ表面のゴミを除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を適用した流体送り装置の一例を説明するための模式的な断面図である。
【図2】本発明を適用した流体送り装置の一例の流体の流れを説明するための模式図である。
【図3】本発明を適用したタイヤ加硫装置の一例を説明するための模式図である。
【図4】本発明を適用したタイヤ加硫装置の他の一例に採用する流体送り装置を説明するための模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」と称する)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(流体送り装置(1))
2.第2の実施の形態(タイヤ加硫装置(1))
3.第3の実施の形態(タイヤ加硫装置(2))
4.第4の実施の形態(タイヤ加硫装置(3))
5.その他
【0024】
<1.第1の実施の形態>
図1は本発明を適用した流体送り装置の一例を説明するための模式的な断面図であり、ここで示す流体送り装置1は、キャン式電動モータによる駆動構造を適用して構成されたものであり、ポンプ部2とモータ部3から構成されている。
【0025】
ポンプ部2は、ポンプケーシング4及び羽根車5を有して構成されている。ポンプケーシング4は、その内部に流体送り室6が形成されると共に、中央部分(底部)に吸入口7が形成され、外周面(側面)に吐出口8が形成されている。
【0026】
また、吸入口7と吐出口8とは流体送り室6に連通している。更に、流体送り室6の内部に羽根車5が配置されており、羽根車5を回転することで、吸入口7から流体を吸入し、吸入した流体を吐出口8から吐出することとなる。
なお、ポンプケーシング4は羽根車収容体の一例であり、流体送り室6は第2の領域の一例である。
【0027】
また、羽根車5はポンプ駆動軸9の下端に取り付けられており、このポンプ駆動軸9の上端にはモータ部3のロータ10が取り付けられている。なお、ポンプ駆動軸9は窒化ケイ素やステンレス等で形成されたベアリング11で軸支されている。
【0028】
ロータ10は、その周囲に配設されたステータコイル12と対をなすものであり、ロータ10とステータコイル12との間を隔壁(キャン)13で密閉状に区画することでキャン式電動モータが構成されることとなる。
【0029】
具体的には、その内部にロータ10を収容するためのロータ収容室14が形成されたロータ収容体15が設けられ、ロータ収容室14にロータ10を配置することで、ロータ10とステータコイル12とをロータ収容体15で密閉状に区画している。
なお、ロータ収容室14は第1の領域の一例であり、ロータ収容体15の側壁が隔壁(キャン)13として機能することとなる。
【0030】
また、ロータ収容室14と流体送り室6とは、ベアリング11内部の間隙や、ベアリング11で軸支されたポンプ駆動軸9の周辺の間隙で連通しており、こうした間隙を通して、ロータ収容室14と流体送り室6との間を流体が流動可能に構成されている。
【0031】
ここで、ロータ10は、ケイ素鋼板、鉄板、ケイ素鋼板とアルミニウム板の複合材料等により形成されている。また、防錆とゴミ付着低減を目的として、ロータ10の表面にはステンレスの溶射コーティングが施されている。
【0032】
また、ロータ収容体15(キャン13)は、非磁性体(チタン、ステンレス、プラスチック、アルミニウム、セラミックス等、またはこれらを含む複合材)や弱磁性体(チタン、ステンレス、プラスチック、アルミニウム、セラミックス等、またはこれらを含む複合材)で形成されている。
【0033】
更に、本発明を適用した流体送り装置1には、ロータ収容室14と流体送り室6とを連通する中空状の管体16が設けられている。具体的には、管体16の一端は、ロータ収容室14の上端と接続されている。また、管体16の他端は、ポンプケーシング4の吐出口8が形成された外周面(側面)の対面側に接続されている。
【0034】
なお、「ロータ収容室14の上端」は、「ロータよりも羽根車と逆側の第1の領域」の一例であり、「ポンプケーシング4の吐出口8が形成された外周面(側面)の対面側」は、「第2の領域のうち、羽根車の回転により第1の領域との連設領域よりも高い圧力となる領域」の一例である。
【0035】
上記の様に構成された第1の実施の形態に係る流体送り装置1では、キャン式電動モータを駆動させるとロータ10に取り付けられたポンプ駆動軸9が回転することとなり、それに伴って羽根車5が回転する。そして、羽根車5が回転することで、流体が吸入口7から吸入されると共に、吸入された流体が吐出口8から吐出されることとなる。
【0036】
ここで、羽根車5が回転することで、ポンプケーシング4の外周面(側面)側に流体が移動させられることとなり、結果として外周面の近傍の圧力が高くなる。具体的には、ポンプケーシング4の中央部分と比較して外周面の近傍の圧力が高くなる。
即ち、羽根車5が回転することで、ロータ収容室14と流体送り室6との連設領域であるポンプ駆動軸9の周辺の間隙よりも、管体16の他端が接続された外周面(側面)の圧力が高くなる。
【0037】
そのため、圧力差に起因して、図2で示す様に、管体16を通じて、流体送り室6内の流体がロータ収容室14に供給されることとなり(図2中符号A参照)、ロータ収容室14に供給された流体は、ロータ10と隔壁13との間隙を通って流体送り室6内に戻ることとなる(図2中符号B参照)。この様に、ロータ10と隔壁13との間隙に流体が供給されることで、ロータ10の表面に付着したゴミを除去することができる。
【0038】
また、第1の実施の形態に係る流体送り装置1では、流体送り装置1の稼働時に常に流体がロータ10と隔壁13との間隙に供給されており、ロータ10の表面に付着したゴミを充分に除去することが可能となる。即ち、ロータ10と隔壁13との間隙に所定のタイミングで流体を供給するといった場合と比較すると、ロータ10と隔壁13との間隙に常時流体を供給することで、より一層充分にロータ10の表面を洗浄することが可能となるのである。
【0039】
更に、第1の実施の形態に係る流体送り装置1では、管体16の他端の接続位置を、吐出口8が形成された外周面(側面)の対面側とすることで、ポンプ駆動軸9の周辺の間隙と管体16が接続された外周面との圧力差がより大きくなり、管体16を通じて効率的に流体をロータ収容室14に供給することが可能となる。
即ち、管体16の他端の接続位置を、吐出口8の近傍とした場合には、吐出口8から流体が吐出することに起因して、管体16の他端近傍が高い圧力を得ることが困難であるのに対して、本実施の形態の構成の場合には、管体16の他端近傍が高い圧力を得ることができ、管体16を通じて効率的に流体をロータ収容室14に供給することが可能となるのである。
【0040】
また、第1の実施の形態に係る流体送り装置1では、管体16を設けるのみでロータ10の表面を洗浄することが可能であり、極めてシンプルな構成であるが故に、実用性が高く、既存の設備への適用も容易である。
【0041】
また、第1の実施の形態に係る流体送り装置1では、管体16から供給される流体がベアリング11を通過することによって、ベアリング11に付着するゴミをも除去することができる。
【0042】
なお、本実施の形態では、管体16の他端をポンプケーシング4の外周面(側面)近傍と接続した場合を例に挙げて説明を行っているが、羽根車5が回転することで生じる圧力差に起因して、管体16を通じて流体をロータ収容室14に供給することができれば充分であり、必ずしも管体16の他端の接続位置は本実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0043】
また、本実施の形態では、流体がベアリング11を通過する場合を例に挙げて説明を行っているが、必ずしも流体がベアリング11を通過する必要は無く、例えば、ロータ10と隔壁13との間隙を通過した流体を流体送り室6に導く流路を別途形成しても良い。
【0044】
<2.第2の実施の形態>
図3は本発明を適用したタイヤ加硫装置の一例を説明するための模式図であり、ここで示すタイヤ加硫装置20は、上下の金型21と、加熱流体を供給することで拡張し、加熱流体を排出することで縮小するブラダー22を備えている。ここでのタイヤ加硫装置20は、金型21にセットした生タイヤ23の内面に、加熱流体(高温蒸気)の供給で膨張したブラダー22を押し付けることで、生タイヤ23を保持させながら加硫成形するものである。
【0045】
また、ブラダー22には、開閉弁24が設けられた流体供給管25と、開閉弁26が設けられた流体排出管27が接続されており、開閉弁24、26よりもブラダー22側の位置で流体供給管25と流体排出管27が連通管28で接続されている。
【0046】
更に、ブラダー22と、流体供給管25と、流体排出管27と、連通管28とで循環閉回路が形成され、循環閉回路上に流体送り装置29が配設されている(本実施の形態では、連通管28上に流体送り装置29が配設されている)。なお、流体送り装置29としては、上記した第1の実施の形態の流体送り装置1を採用している。
【0047】
ここで、本実施の形態では、流体送り装置29が連通管28の途中に配設された場合を例に挙げて説明を行っているが、流体送り装置29は循環閉回路上に配設されれば充分であり、流体供給管25の途中や流体排出管27の途中に流体送り装置29を配設しても良い。なお、連通管28にも開閉弁30が設けられている。
【0048】
上記の様に構成された第2の実施の形態に係るタイヤ加硫装置20では、金型21の内部に生タイヤ23をセットした状態で開閉弁24、26を開放し、流体供給管25から加熱流体を供給すると、ブラダー22の内部に加熱流体が流入していき、この加熱流体でブラダー22の内部が充満した状態で開閉弁24、26を閉鎖する。
【0049】
ブラダー22の内部を加熱流体で充満させた後、連通管28の開閉弁30を開放して循環閉回路を開通する。この状態で流体送り装置29を稼働させて、加熱流体を循環閉回路内で循環し、加熱流体が循環することによってブラダー22の内部を均一な温度に維持する。
【0050】
生タイヤ23の加硫成形が終了すると、開閉弁24、26を開放すると共に、開閉弁30を閉鎖して流体送り装置29を停止し、ブラダー22内部に充満した加熱流体を流体排出管27から排出する。
【0051】
本発明を適用したタイヤ加硫装置では、流体送り装置29として第1の実施の形態に係る流体送り装置1を採用しているために、ロータ10の表面に付着したゴミを除去することができる。
【0052】
また、本発明を適用したタイヤ加硫装置では、従来行っていたブロー工程(パージ工程)を省略することが可能となり、高い歩留まりでタイヤを加硫することができる。以下、この点について詳述する。
【0053】
先ず、従来のタイヤ加硫装置を用いたタイヤの加硫方法では、流体を循環閉回路内で循環する前段階で、ブラダーの劣化成分等を含有する加熱流体(高温スチーム等)であるドレンを排出する目的で、ブラダー内にスチームや窒素ガス、不活性ガス等を強制的に吹き込むブロー工程(パージ工程)を行っていた。これは、ドレンがブラダーの劣化成分等を含有するために、ドレンをブラダー内に残した状態で流体を循環閉回路内で循環させると、ロータの表面のゴミ付着が問題となることを回避するためである。
【0054】
これに対して、本発明を適用したタイヤ加硫装置では、ロータ10の表面に付着したゴミを除去することができ、ロータの表面のゴミ付着が問題となることはないために、ドレンをブラダー内に残した状態で流体送り装置29を稼働することができる。そして、ブロー工程(パージ工程)の省略によりブラダー22内部の熱逃げを無くし、効率よくタイヤを加硫することができる。特に、液体のドレンは、温度が安定した熱源であり、加硫時間の短縮化も実現する。また、ブロー工程(パージ工程)が省略できるために、スチームや窒素ガス、不活性ガス等の消費を抑制することができ、コスト負担の低減も実現することができる。
【0055】
<3.第3の実施の形態>
本発明を適用したタイヤ加硫装置の他の一例は、流体送り装置29として図4に示す構成の流体送り装置31を採用するものであり、それ以外については、上記した第2の実施の形態のタイヤ加硫装置と同一である。
【0056】
ここで示す流体送り装置31は、管体16の他端が流体供給管25と接続されている点で上記した第1の実施の形態の流体送り装置1と異なるものの、それ以外については、上記した第1の実施の形態の流体送り装置1と同一である。
【0057】
上記の様に構成された第3の実施の形態に係るタイヤ加硫装置では、金型21の内部に生タイヤ23をセットした状態で開閉弁24、26、30を開放し、流体供給管25から加熱流体を供給すると、ブラダー22の内部に加熱流体が流入していき、この加熱流体でブラダー22の内部が充満した状態で開閉弁24、26を閉鎖する。
【0058】
なお、流体供給管25から加熱流体を供給した際には、管体16を通じて、加熱流体がロータ収容室14に供給されることとなり、ロータ収容室14に供給された流体は、ロータ10と隔壁13との間隙を通って流体送り室6に達することとなる。
【0059】
ブラダー22の内部を加熱流体で充満させた後、流体送り装置31を稼働させて、加熱流体を循環閉回路内で循環し、加熱流体が循環することによってブラダー22の内部を均一な温度に維持する。
【0060】
生タイヤ23の加硫成形が終了すると、開閉弁24、26を開放すると共に、開閉弁30を閉鎖して流体送り装置31を停止し、ブラダー22内部に充満した加熱流体を流体排出管27から排出する。
【0061】
本発明を適用したタイヤ加硫装置では、流体供給管25からブラダー22内に加熱流体を供給する際に、ロータ10と隔壁13との間隙に加熱流体が供給されることで、ロータ10の表面に付着したゴミを除去することができる。
【0062】
また、本発明を適用したタイヤ加硫装置では、上記した第2の実施の形態と同様に、従来行っていたブロー工程(パージ工程)を省略することが可能となり、高い歩留まりでタイヤを加硫することができる。
【0063】
<4.第4の実施の形態>
本発明を適用したタイヤ加硫装置の更に他の一例は、管体16の他端が流体排出管27と接続されている点が上記した第3の実施の形態と異なるものの、それ以外については、上記した第3の実施の形態と同様である(図4参照)。
【0064】
ここで、第4の実施の形態に係るタイヤ加硫装置では、金型21の内部に生タイヤ23をセットした状態で開閉弁24、26を開放し、流体供給管25から加熱流体を供給すると、ブラダー22の内部に加熱流体が流入していき、この加熱流体でブラダー22の内部が充満した状態で開閉弁24、26を閉鎖する。
【0065】
ブラダー22の内部を加熱流体で充満させた後、連通管28の開閉弁30を開放して循環閉回路を開通する。この状態で流体送り装置31を稼働させて、加熱流体を循環閉回路内で循環し、加熱流体が循環することによってブラダー22の内部を均一な温度に維持する。
【0066】
生タイヤ23の加硫成形が終了すると、開閉弁24、26を開放すると共に流体送り装置31を停止し、ブラダー22内部に充満した加熱流体を流体排出管27から排出する。
【0067】
なお、流体排出管27から加熱流体を排出した際には、管体16を通じて、加熱流体がロータ収容室14から排出されることとなり、流体送り室6の流体が、ロータ10と隔壁13との間隙を通ってロータ収容室14に達し、ロータ収容室14に達した流体は管体16を通じて排出されることとなる。
【0068】
本発明を適用したタイヤ加硫装置では、ブラダー22から流体排出管27に加熱流体を排出する際に、ロータ10と隔壁13との間隙に加熱流体が供給されることで、ロータ10の表面に付着したゴミを除去することができる。
【0069】
また、本発明を適用したタイヤ加硫装置では、上記した第2の実施の形態及び第3の実施の形態と同様に、従来行っていたブロー工程(パージ工程)を省略することが可能となり、高い歩留まりでタイヤを加硫することができる。
【0070】
<5.その他>
本実施の形態では、キャン式の電動モータを採用しているが、キャン式の電動モータは一般にモータ効率が悪く、条件によっては負荷が過大となってしまう。こうした過大な負荷に起因してモータが耐熱温度以上となることを避けるために、常にエアー等を供給して冷却を行う必要がある。そのため、キャン式電動モータの内部に熱電対を埋め込み、内部の温度を監視しながら供給する冷却エアー量を制御する構成とすることが好ましい。
【0071】
また、電動モータへの回転指令が同一であったとしても、流体による負荷によって羽根車の回転の状況が異なる。そのために、羽根車の実際の回転状況を確認することができるセンサ(例えば、非接触センサ)を設置した上で、実際の回転状況を確認しながら電動モータの制御を行うことによって、電動モータの過剰な運転を回避することができ、省エネ運転が実現することとなる。
【符号の説明】
【0072】
1流体送り装置
2ポンプ部
3モータ部
4ポンプケーシング
5羽根車
6流体送り室
7吸入口
8吐出口
9ポンプ駆動軸
10ロータ
11ベアリング
12ステータコイル
13隔壁(キャン)
14ロータ収容室
15ロータ収容体
16管体
20タイヤ加硫装置
21金型
22ブラダー
23生タイヤ
24開閉弁
25流体供給管
26開閉弁
27流体排出管
28連通管
29流体送り装置
30開閉弁
31流体送り装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと、該ロータの周囲に配設されたステータコイルを有するモータと、
前記ロータを収容し、同ロータと前記ステータコイルとの間を密閉状に区画する第1の領域を有するロータ収容体と、
一端が前記ロータと接続された駆動軸と、
該駆動軸の他端と接続された羽根車と、
前記第1の領域と密閉状に連設された第2の領域を有し、該第2の領域に前記羽根車が収容された羽根車収容体と、
該羽根車収容体に設けられると共に、前記羽根車の回転により前記第2の領域に流体を吸入する吸入口と、
前記羽根車収容体に設けられると共に、前記羽根車の回転により前記第2の領域から流体を吐出する吐出口と、
一端が前記ロータよりも前記羽根車と逆側の第1の領域と接続され、他端が前記第2の領域のうち、前記羽根車の回転により前記第1の領域との連設領域よりも高い圧力となる領域に接続されると共に、その内部が中空状に形成された管体とを備える
流体送り装置。
【請求項2】
前記管体の他端は、前記第1の領域と前記第2の領域との連設領域よりも前記羽根車の回転により生じる流体の流れの下流側に位置する領域に接続されている
請求項1に記載の流体送り装置。
【請求項3】
前記吸入口は前記羽根車収容体の底部に設けられ、前記吐出口は前記羽根車収容体の側面に設けられると共に、
前記管体の他端は、前記第1の領域と前記第2の領域との連設領域よりも前記羽根車収容体の側面側に位置する領域に接続されている
請求項1または請求項2に記載の流体送り装置。
【請求項4】
前記管体の他端は、前記吐出口が設けられた側面と略対向する側面の近傍に位置する領域と接続されている
請求項3に記載の流体送り装置。
【請求項5】
ロータと、該ロータの周囲に配設されたステータコイルを有するモータと、
前記ロータを収容し、同ロータと前記ステータコイルとの間を密閉状に区画する第1の領域を有するロータ収容体と、
一端が前記ロータと接続された駆動軸と、
該駆動軸の他端と接続された羽根車と、
前記第1の領域と密閉状に連設された第2の領域を有し、該第2の領域に前記羽根車が収容された羽根車収容体と、
該羽根車収容体に設けられると共に、前記羽根車の回転により前記第2の領域に流体を吸入する吸入口と、
前記羽根車収容体に設けられると共に、前記羽根車の回転により前記第2の領域から流体を吐出する吐出口と、
前記羽根車の回転と連動して、前記第2の領域内の流体を前記ロータと前記ステータコイルとの間に供給する流体供給手段とを備える
流体送り装置。
【請求項6】
金型と、
該金型の内部に配置され、流体の供給排出で拡縮可能に構成されたブラダーと、
該ブラダーに接続され、同ブラダーに流体を供給する流体供給管と、
前記ブラダーに接続され、同ブラダーから流体を排出する流体排出管と、
前記流体供給管と前記流体排出管とを連通する連通管と、
前記流体供給管と、前記流体排出管と、前記連通管とで形成される循環回路に配設された流体送り装置とを備えるタイヤ加硫装置において、
前記流体送り装置は、
ロータと、該ロータの周囲に配設されたステータコイルを有するモータと、
前記ロータを収容し、同ロータと前記ステータコイルとの間を密閉状に区画する第1の領域を有するロータ収容体と、
一端が前記ロータと接続された駆動軸と、
該駆動軸の他端と接続された羽根車と、
前記第1の領域と密閉状に連設された第2の領域を有し、該第2の領域に前記羽根車が収容された羽根車収容体と、
該羽根車収容体に設けられると共に、前記羽根車の回転により前記第2の領域に流体を吸入する吸入口と、
前記羽根車収容体に設けられると共に、前記羽根車の回転により前記第2の領域から流体を吐出する吐出口と、
一端が前記ロータよりも前記羽根車と逆側の第1の領域と接続され、他端が前記第2の領域のうち、前記羽根車の回転により前記第1の領域との連設領域よりも高い圧力となる領域に接続されると共に、その内部が中空状に形成された管体とを備える
タイヤ加硫装置。
【請求項7】
金型と、
該金型の内部に配置され、流体の供給排出で拡縮可能に構成されたブラダーと、
該ブラダーに接続され、同ブラダーに流体を供給する流体供給管と、
前記ブラダーに接続され、同ブラダーから流体を排出する流体排出管と、
前記流体供給管と前記流体排出管とを連通する連通管と、
前記流体供給管と、前記流体排出管と、前記連通管とで形成される循環回路に配設された流体送り装置とを備えるタイヤ加硫装置において、
前記流体送り装置は、
ロータと、該ロータの周囲に配設されたステータコイルを有するモータと、
前記ロータを収容し、同ロータと前記ステータコイルとの間を密閉状に区画する第1の領域を有するロータ収容体と、
一端が前記ロータと接続された駆動軸と、
該駆動軸の他端と接続された羽根車と、
前記第1の領域と密閉状に連設された第2の領域を有し、該第2の領域に前記羽根車が収容された羽根車収容体と、
該羽根車収容体に設けられると共に、前記羽根車の回転により前記第2の領域に流体を吸入する吸入口と、
前記羽根車収容体に設けられると共に、前記羽根車の回転により前記第2の領域から流体を吐出する吐出口と、
前記羽根車の回転と連動して、前記第2の領域内の流体を前記ロータと前記ステータコイルとの間に供給する流体供給手段とを備える
タイヤ加硫装置。
【請求項8】
金型と、
該金型の内部に配置され、流体の供給排出で拡縮可能に構成されたブラダーと、
該ブラダーに接続され、同ブラダーに流体を供給する流体供給管と、
前記ブラダーに接続され、同ブラダーから流体を排出する流体排出管と、
前記流体供給管と前記流体排出管とを連通する連通管と、
前記流体供給管と、前記流体排出管と、前記連通管とで形成される循環回路に配設された流体送り装置とを備えるタイヤ加硫装置において、
前記流体送り装置は、
ロータと、該ロータの周囲に配設されたステータコイルを有するモータと、
前記ロータを収容し、同ロータと前記ステータコイルとの間を密閉状に区画する第1の領域を有するロータ収容体と、
一端が前記ロータと接続された駆動軸と、
該駆動軸の他端と接続された羽根車と、
前記第1の領域と密閉状に連設された第2の領域を有し、該第2の領域に前記羽根車が収容された羽根車収容体と、
該羽根車収容体に設けられると共に、前記羽根車の回転により前記第2の領域に流体を吸入する吸入口と、
前記羽根車収容体に設けられると共に、前記羽根車の回転により前記第2の領域から流体を吐出する吐出口と、
一端が前記ロータよりも前記羽根車と逆側の第1の領域と接続され、他端が前記流体供給管若しくは前記流体排出管の少なくともいずれか一方に接続されると共に、その内部が中空状に形成された管体とを備える
タイヤ加硫装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−122381(P2012−122381A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272842(P2010−272842)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000145002)株式会社市丸技研 (24)
【Fターム(参考)】