説明

流水検知装置

【課題】 弁座下部に環状の空間が設けられ、環状の空間に連通する穴が弁座に穿設されている流水検知装置において、シール部材の押グセ防止およびシール部材とシール部材が嵌入される溝との間に流体が留まらないようにすることで止水性能が向上され、かつ組立てにおける作業性を考慮した流水検知装置の提供。
【解決手段】 閉弁時に弁体20と弁座の間を封止する第1のシールと、環状の空間15に通じる穴Hの周囲に設置された第2のシールとが弁座上に連結した状態で設置され、第1のシールと第2のシールは弁座に刻設された溝33、38に埋め込まれて設置されており、第1のシールまたは第2のシールが埋め込まれている溝33、38から前記の環状の空間15へ通水可能な隙間または通路が設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラー設備に用いられる流水検知装置、特に流水の一部を自動警報弁の外に信号水として流出させ、これを検知することにより警報を発する流水検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流水検知装置は、スプリンクラー設備の配管に流水が生じた際に流水を検知し、信号を発する装置であり、スイング式の逆止弁を用いたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
該バルブの一次側は水源と接続され、二次側はスプリンクラーヘッドが設置された配管に接続されている。弁体の弁座と接触する側の面には、シール部材としてゴムシートが設けられている。
【0004】
弁座面には複数の穴が穿設され、穴の奥は中間室と呼ばれる環状の空間が設けられており、該中間室から外部に通じる警報用水路を設け、警報用水路には圧力スイッチ等の警報発生装置が接続されている。
【0005】
上記の流水検知装置において火災が発生すると、流水検知装置の二次側に設置されたスプリンクラーヘッドが作動し、二次側配管内の水が作動したスプリンクラーヘッドから外部に流出する。すると流水検知装置の一次側の圧力よりも二次側の圧力が低くなり、流水検知装置の弁体が回動して開き一次側から二次側へ水が流れ込む。
【0006】
弁体が開くと、弁座面に穿設された穴にも水が流入し、水は穴を通って前述の中間室に流れ込み、さらに警報用水路内を通り警報発生装置を作動させる。警報発生装置の作動によって、館内に火災が発生したことを報知したり、ポンプ等の給水装置を起動させて作動したスプリンクラーヘッドに送水を行い火災が消火される。
【0007】
しかしながら、上記の流水検知装置は、弁座面に複数の穴が穿設されており、また流水検知装置は通常閉弁状態にあることから、弁体側に設置したゴムシートに弁座面の穴の跡が弁を開放した後も戻らずに残る、いわゆる押グセがついてしまう問題があった。
【0008】
ゴムシートに押グセがついた状態であると、開いた弁体を閉じる際に弁体が元の位置より偏って着座するとゴムシートの押グセがついた部分と弁座の穴の位置がずれて、隙間を生じてしまい充分な止水効果を発揮できない場合がある。
【0009】
上記の問題を解決する一つの手段が、本出願人によって出願されている(特願2003−333187号)。これは、弁体と弁座の間に設けたシール部材であるゴムシートの弁座接触面に凹みを設けて閉弁時にゴムシートが弁座の穴に接触しないように構成したものである。
【0010】
【特許文献1】実開昭49−106934号公報(第1−2頁、第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の本出願人による流水検知装置には、実施例として弁座面に穿設された各々の穴の外側に環状のシール部材が接触されるように構成したものが記載されているが、組立ての際には弁体側に設置されたシール部材の位置と弁座の穴位置がずれないように位置を確認しながら作業する必要があった。
【0012】
そこで本発明では、シール部材の押グセ防止およびシール部材とシール部材が嵌入される溝との間に流体が留まらないようにすることで止水性能が向上され、かつ組立てにおける作業性を考慮した流水検知装置の提供を目的としている。

【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、弁座下部に環状の空間が設けられ、環状の空間に連通する穴が弁座に穿設されている流水検知装置において、前記穴の周囲に設置された第1のシールと、各々の第1のシールを環状に連結する第2のシールが弁座上に設置されている流水検知装置である。
【0014】
請求項2記載の発明は、前記流水検知装置において、第1のシールと第2のシールは弁座に刻設された溝に埋め込まれて設置されており、第1のシールまたは第2のシールが埋め込まれている溝から前記の環状の空間へ通水可能な隙間または通路が設置されている請求項1記載の流水検知装置である。
【0015】
請求項3記載の発明は、前記流水検知装置において、第1のシールは、弁座上に穿設された前記穴の内周と、該穴に嵌入される円筒形状のシール保持片の外周段部により形成された溝に埋め込まれており、シール保持片の外周段部から円筒内部に通じる通路が形成されている請求項1記載の流水検知装置である。

【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、第1のシールおよび第2のシールを弁座上に設けたことでシールが所定位置に固定設置され、従来品のように弁体の開閉によってシールの位置がずれることが無くなる。
【0017】
請求項2、3記載の発明によれば、第1のシールまたは第2のシールが埋め込まれている溝から環状の空間へ通水可能としたことで、シールが埋め込まれている溝に流体が留まることを防止できるので、シールが常に安定して作用するようになる。

【実施例】
【0018】
以下、この発明の実施例を図1から図4を参照して説明する。図1は本発明の流水検知装置の縦断面図。図2は弁座部分の拡大断面図。図3は弁座の平面図。図4はシール部材の他の実施形態である。
【0019】
実施例の流水検知装置は、ボディ10、弁体20、シートリング30、シール部材40等から構成される。
【0020】
ボディ10は、中空体であり両端には配管と接続するためのフランジが設けてある。内部は隔壁11によって一次側Iと二次側IIに分けられている。一次側Iは水源に通じる配管に接続され、二次側IIはスプリンクラーヘッドが設けられた配管と接続する。
【0021】
隔壁11には穴が穿設されており、該穴の周面には水平な溝12が刻設されている。該溝12から外部へ通じる水路13が設けられ、水路13は警報発生装置50へと通じている。
【0022】
穴の下部には牝ネジ14が設けられ、該牝ネジ14には後述のシートリング30の牡ネジ31が螺入される。シートリング30を穴に螺合させたことで、シートリング30の外周と前述の溝12との間に中間室15という環状の空間が形成される。
【0023】
弁体20は、ボディ10の一次側Iと二次側IIとの流通を閉止・開放するもので、ボディ10の内部に軸21によって回動自在に設置されている。弁体中央には穴22が穿設されている。
【0024】
穴22に嵌め込まれる支持材24の中心は上に伸びた円筒26となっており、該円筒26内部は逆止弁構造をしており、一次側Iから二次側IIへの通水が可能となっている。これは、二次側IIの水が微量の漏れや温度変化等によって二次側IIの圧力が低下した場合に弁体20が開く前に逆止弁が開放され二次側IIに一次側Iの水を送る作用を有する。
【0025】
支持材24は円筒26を弁体の穴22へ挿通させ、円筒26の外周に設けられた牡ネジにロックナット27を螺入させることで弁体20に固定される。
【0026】
シートリング30は、円筒形状をしており外周下部には牡ネジ31が螺設され、前述のようにボディ10の牝ネジ14と螺合してシートリング30がボディ10に設置される。
【0027】
シートリング30の上部はフランジ32となっている。フランジ32の上面は弁座となっており、弁座面には円周形状の溝33が刻設され、該溝33上に複数の穴34・・・が穿設されフランジ面を貫通している。
【0028】
穴34には、内部に貫通穴Hを有した円筒形状のシール保持片35が嵌め込まれる。シール保持片35の外周上部には段36Aが形成されており、段36Aから中間室15へ通じる孔37が穿設されている。
【0029】
穴34の上端部分には、段36Bが形成されており、穴34にシール保持片35が嵌め込まれると段36A、36Bによってシール保持片35の貫通穴Hの周囲に環状の溝38が形成される。各々の貫通穴Hの周囲に形成された溝38は、溝33によって連結されている。
【0030】
シール部材40は、前述の溝33、38内に埋め込まれて設置されており、平面形状は図3に示すように該溝33、38と略同じになっている。断面形状は円形である。シール部材40の他の実施形態として図4に示すものを用いることも可能である。
【0031】
警報発生装置50は、前述のように流水検知装置が作動したときに信号を出力するものであり、前述の水路13に接続された分岐管の一側に設置されている。分岐管の他側には、オリフィス51が接続され、オリフィス51を通過した水は排水配管Dから外部に排出される。
【0032】
次に、本発明の流水検知装置の作用について説明する。
【0033】
上記の流水検知装置は、ボディ10の一次側Iが給水装置が設けられた配管と接続され、二次側IIはスプリンクラーヘッドが設けられた配管と接続されており、一次側I及び二次側IIは充水されていて、弁体20は閉じた状態にある。
【0034】
その際、弁座に刻設された溝33、38内に設けられたシール部材40は、弁座面より僅かに突出した状態であり、シール部材40が弁体下面と接触している。溝38内のシール部材40は、溝38の外周側から水の圧力が加えられているので、中間室15に通じる孔37は塞がれた状態となっている。
【0035】
火災が発生すると、火災付近のスプリンクラーヘッドが作動して、配管内の水がスプリンクラーヘッドより流出する。
【0036】
すると流水検知装置の二次側IIの圧力が一次側Iの圧力よりも低下して、弁体20が回動し、一次側Iの水が二次側IIに流れ込む。と同時に弁体20が開放されたことで弁座に設けられた貫通穴Hにも水が流入し、中間室15から水路13を通り、警報発生装置50に流れる。
【0037】
警報発生装置50は、水路13から流れてきた水の圧力によって作動し、警報を発すると共に図示しないポンプを起動させて、一次側Iから二次側IIへ送水を行い作動したスプリンクラーヘッドから水を連続的に散布して火災が鎮圧される。
【0038】
続いて、流水検知装置がポンプの起動による水の振動によって瞬時的に弁体が開閉された場合の作用について説明する。
【0039】
上記の理由等によって流水装置の弁体が瞬時的に開閉すると、弁座に設けられた貫通穴Hから水が流入して中間室15に流れ込むが、水は水路13を通って警報発生装置50に達することなくオリフィス51を通過して排水配管Dに流れ込み外部へと排出されるので警報発生装置50が作動することはない。
【0040】
その際、溝33、38とシール部材40の隙間にも水が流入するが、溝内の水は、孔37から中間室15へ流れ、前述のように外部に排出されるので、溝内に水が残ってシール部材40が溝から浮き出ることが防止され安定したシール性能を得ることができる。

【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の流水検知装置の縦断面図
【図2】弁座部分の拡大断面図
【図3】弁座の平面図
【図4】シール部材の他の実施形態
【符号の説明】
【0042】
10 ボディ
20 弁体
30 シートリング
33 溝
34 穴
35 シール保持片
37 孔
38 溝
40 シール部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座下部に環状の空間が設けられ、環状の空間に連通する穴が弁座に穿設されている流水検知装置において、前記穴の周囲に設置された第1のシールと、各々の第1のシールを環状に連結する第2のシールが弁座上に設置されていることを特徴とする流水検知装置。
【請求項2】
前記流水検知装置において、第1のシールと第2のシールは弁座に刻設された溝に埋め込まれて設置されており、第1のシールまたは第2のシールが埋め込まれている溝から前記の環状の空間へ通水可能な隙間または通路が設置されていることを特徴とする請求項1記載の流水検知装置。
【請求項3】
前記流水検知装置において、第1のシールは、弁座上に穿設された前記穴の内周と、該穴に嵌入される円筒形状のシール保持片の外周段部により形成された溝に埋め込まれており、シール保持片の外周段部から円筒内部に通じる通路が形成されていることを特徴とする請求項1記載の流水検知装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−81592(P2006−81592A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266742(P2004−266742)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000199186)千住スプリンクラー株式会社 (87)
【Fターム(参考)】