説明

流量制御装置

【課題】応答性に優れ、かつ高精度・広範囲に流量を制御することができる流量制御装置を提供する。
【解決手段】流量制御装置10は、圧力調整手段としてのパイロットレギュレータ20とその下流側に配置されたエアオペレートバルブ40とを備えている。エアオペレートバルブ40は、カバー41、シリンダ42、ボディ43からなる。ボディ43には吸入通路58と、排出通路59と、各通路58,59を連通する円形溝67と、吸入通路58と円形溝67とを連通する固定オリフィス64とが形成されている。吸入通路58の円形溝67側端部は弁座オリフィス58aとなっており、その開口部周囲は弁座63となっている。ダイアフラム弁体55は圧縮コイルバネ48の付勢力により常時弁座63に着座されており、圧力制御室51が操作エアにより加圧されると弁座63から離れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流量を制御する流量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流量制御装置は、半導体製造装置において薬液等の流体の流量を調整するために使用される他、薬品分野・化学分野において流体を適切な比率に混合させる場合にも用いられる。
【0003】
この種の流量制御装置としてレギュレータの下流側にオリフィスを設けたものが知られている。この場合、レギュレータによってオリフィスの一次側圧力(すなわちレギュレータの二次側圧力)が制御されることにより流体の流量が制御される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、上記流量制御装置では流量を高精度に制御しようとすると、開度の小さいオリフィスを用いる必要があるため、制御できる流量の範囲が狭くなる。一方、流量を広範囲にわたって制御しようとすると、開度の大きいオリフィスを用いることとなるため、流量を精度よく制御することが困難となる。したがって、上記流量制御装置では、広範囲の流量制御と高精度の流量制御とを両立させることができないという問題がある。
【0005】
そこで、上記問題点を解決できるものとして、モータによりオリフィスの弁開度を調整する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この技術によれば、オリフィスの弁開度がモータにより調整されるため、弁開度を大きく設定することにより高範囲に流量を制御することができるとともに、弁開度を小さく設定することにより高精度に流量を制御することができる。
【特許文献1】特許第3623125号公報
【特許文献2】特許第3801570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記したモータによりオリフィスの弁開度を可変にする技術では、流体の流量を変更する場合、モータによる弁開度の変更に比較的長い時間を要する。そのため、弁開度の変更が完了して流量が安定化するまでに供給される流体は、利用されることなく捨てられる場合がある。その結果、流体として高価な薬液を使用する場合には、経済的な損失が発生するおそれがある。
【0007】
複数種の液体を混合させて混合液を生成する液体混合ラインにおいて上記技術を用いる場合においても、液体の混合比率を安定化させるのに時間がかかってしまい、同様の問題が生じ得る。
【0008】
しかも、オリフィスの弁開度に応じてレギュレータ側の制御を複雑に変更しなければならないため、コントローラ側の演算処理にも所定の時間を必要とし、安定化までの時間が短くなる要素はない。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、応答性に優れ、かつ高精度に流量を制御したり広範囲に流量を制御したりできる流量制御装置を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、第1の発明の流量制御装置は、供給される流体の圧力を調整するレギュレータと、前記レギュレータの下流側において互いに並列に設けられた複数の絞り通路と、前記各絞り通路のうち所定の絞り通路を開位置と閉位置とに二位置切替する開閉部と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、レギュレータの下流側において互いに並列に設けられた複数の絞り通路のうち所定の絞り通路を開閉部により開位置と閉位置とに二位置切替することができる。したがって、所定の絞り通路を開閉部により開位置とすれば(絞り通路全体の)流路面積を大きくすることができるため高範囲に流量を制御することができ、所定の絞り通路を開閉部により閉位置とすれば流路面積を小さくすることができるため高精度に流量を制御することができる。また、開閉部は、所定の絞り通路を開位置と閉位置とに二位置切替するものであるため、応答性の面において優れている。よって、応答性に優れ、かつ高精度に流量を制御したり高範囲に流量を制御したりすることができる。
【0012】
また、この場合、所定の絞り通路を開閉部により開位置と閉位置とに二位置切替するだけだけで流量係数(Cv値)を変更することができ、その変更前後の流量係数は予め各絞り通路の流路面積の加算によって知ることができるため、コントローラにより流量を広範囲に制御したり高精度に制御したりする際にはその処理を迅速かつ容易とすることができる。
【0013】
第2の発明の流量制御装置は、供給される流体の圧力を調整するレギュレータと、前記レギュレータの下流側に設けられるとともに、常時開放とされている開放絞り通路と、前記レギュレータの下流側において前記開放絞り通路に並列に設けられるとともに、開閉部によって開位置と閉位置とに二位置切替される開閉絞り通路と、を備えていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、レギュレータの下流側には常時開放とされている開放絞り通路が設けられているため、この開放絞り通路を通じて常時流体を流すことができる。また、レギュレータの下流側には開閉部によって開位置と閉位置とに二位置切替される開閉絞り通路が開放絞り通路に並列に設けられているため、この開閉絞り通路を開閉部により開位置と閉位置とに二位置切替することにより開閉絞り通路を通じて流体を流したり流さないようにしたりすることができる。すなわち、開閉絞り通路を開閉部によって開閉させることにより開放絞り通路及び開閉絞り通路を合わせた絞り通路全体の流路面積を大小に切り替えることができる。したがって、開閉部により開閉絞り通路を開位置とすれば流量を広範囲に制御することができ、開閉部により開閉絞り通路を閉位置とすれば流量を高精度に制御することができる。また、開閉部は、開閉絞り通路を開位置と閉位置とに二位置切替するものであるため、応答性の面において優れている。よって、応答性に優れ、かつ高精度に流量を制御したり高範囲に流量を制御したりすることができる。
【0015】
第3の発明の流量制御装置は、第1又は第2の発明において、前記レギュレータの下流側には開閉弁が設けられており、その開閉弁には、前記各絞り通路及び開閉部が内蔵されており、更に、前記開閉部を閉位置へ向けて常時付勢する付勢部と、前記付勢部による付勢力に抗して前記開閉部を開位置へ向けて押圧する押圧状態とその押圧状態を解除した解除状態とに切り替えられる押圧部と、を備えていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、レギュレータの下流側に設けられた開閉弁において開閉部は、押圧部が押圧状態に切り替えられると付勢部による付勢力に抗して開位置へ向けて押圧されるため所定の絞り通路(開閉絞り通路を含む)を開放させることができ、押圧部が解除状態に切り替えられると押圧状態が解除され、付勢部により閉位置へ向けて付勢されるため所定の絞り通路を閉鎖することができる。これにより、開閉部の開位置と閉位置との二位置切替による所定の絞り通路の開閉を簡易な構成により実現することができる。
【0017】
また、各絞り通路は開閉弁に内蔵されているため、流路の簡素化を図ることができる。これにより、製造ライン等に組み込む際にはラインの簡素化に寄与することができる。
【0018】
第4の発明の流量制御装置は、第3の発明において、前記レギュレータは、流体の流入口と流出口との間を連通する流路の途中に設けられた弁座部に着座したり離間したりする弁体と、前記弁体を前記弁座部へ向けて付勢する第二付勢部と、前記第二付勢部による付勢力に抗して前記弁体を前記弁座部から離間する側に押圧するとともに、その押圧力を調整することにより流体の圧力を制御する操作部と、前記流路を前記第二付勢部の収容領域及び前記操作部とそれぞれ区画するとともに前記弁体に一体化されている圧力調整用ダイアフラムと、を備えており、前記開閉弁は、前記各絞り通路を含む流体の流路を前記押圧部側の空間と区画するとともに前記開閉部に一体化されている開閉用ダイアフラムを備えていることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、レギュレータには流体の流入口と流出口との間を連通する流路の途中に弁座部が設けられており、弁体が弁座部に着座して流路を閉鎖したり弁座部から離間して流路を開放したりすることにより流体の圧力を制御する。具体的には、弁体は第二付勢部により弁座部へ向けて付勢されることにより弁座部に着座し、操作部により第二付勢部による付勢力に抗して弁座部から離間される側に押圧されることにより弁座部から離間する。
【0020】
弁体には圧力調整用ダイアフラムが一体化されており、圧力調整用ダイアフラムが流路を第二付勢部の収容領域及び操作部とそれぞれ区画している。これにより、弁体の変位に起因して摺動する箇所をなくし又は低減させることができるため、パーティクルが発生する等の流体の純度を低下させる要因をなくし又は減らすことができる。
【0021】
一方、開閉弁において開閉部には開閉用ダイアフラムが一体化されており、各絞り通路を含む流体の流路を押圧部側の空間と区画している。したがって、開閉弁においてもレギュレータと同様、開閉部の変位に起因して摺動する箇所をなくし又は低減させることができる。その結果、流量制御装置全体としてパーティクルが発生する等、流体の純度を低下させる要因をなくしたり減らしたりすることができる。
【0022】
第5の発明の流量制御装置は、第3又は第4の発明において、前記レギュレータと前記開閉弁とは連結されて一体化とされているか又は共通のボディを用いた一体物として形成されていることを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、それぞれ別体として構成されているレギュレータと開閉弁とは連結されることにより一体化とされているか、又はレギュレータと開閉弁とは共通のボディを用いた一体物として形成されているため、流量制御装置をコンパクトに構成することができる。これにより、本発明に係る流量制御装置を製造ライン等に組み込む際にはラインの簡素化に寄与することができる。
【0024】
第6の発明の流量制御装置は、第3乃至第5のいずれかの発明において、前記レギュレータ及び前記開閉部を制御するコントローラを備え、当該コントローラは、前記レギュレータによる制御流量が小さい場合には前記閉位置となり、制御流量が大きい場合には前記開位置となるように、前記開閉部を制御することを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、コントローラによりレギュレータ及び開閉部を制御することができる。また、コントローラによりレギュレータによる制御流量が小さい場合には開閉部を閉位置とすることができ、レギュレータによる制御流量が大きい場合には開閉部を開位置とすることができる。これにより、レギュレータによる制御流量の大小に応じて自動的に流路面積を大小切り替えることができ、ひいては流量を自動的に高精度に制御したり広範囲に制御したりすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、半導体製造ラインの薬液供給に用いられる流量制御装置について具現化した一実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、図1は、流量制御装置10の構成を示す縦断面図である。
【0027】
図1に示すように、流量制御装置10は、圧力調整手段としてのパイロットレギュレータ20と、その下流側に配置されたエアオペレートバルブ40とを備えており、これらがボルト等の締結部材により一体に組みつけられることにより構成されている。
【0028】
パイロットレギュレータ20は、上カバー21、ボディ22、下カバー23の順にこれらがボルト等の締結部材によって一体に組み付けられることにより構成されており、全体としては略直方体状をなしている。なお、ボディ22は例えばフッ素系合成樹脂により成形され、カバー21,23は例えばポリプロピレン樹脂により成形されている。
【0029】
ボディ22には、流体を吸入するための吸入ポート24と、流体をエアオペレートバルブ40へ供給するための供給ポート25とが設けられるとともに、吸入ポート24に通じる吸入通路26と、供給ポート25に通じる供給通路27とが形成されている。吸入ポート24には、薬液等の流体を流通させるための配管等が接続されるようになっている。
【0030】
ボディ22の中央部には、当該ボディ22を上カバー21側から下カバー23側に貫通する流体室28としての貫通孔が形成されている。流体室28は、その貫通孔の軸線方向における中央部において孔径が小さくなっている。当該中央部では、流体室28の内壁面が貫通孔の中心軸線側へ突出しており、その突出された部分の下部が弁座部36となっている。流体室28は、この弁座部36より下カバー23側が上流側流体室28aとなっており、弁座部36より上カバー21側が下流側流体室28bとなっている。そして、上流側流体室28aには吸入通路26が連通されており、下流側流体室28bには供給通路27が連通されている。
【0031】
流体室28には、その貫通孔の軸線方向に往復動可能な弁体30が収容されている。弁体30は、2つのダイアフラム部材32,33を含んで構成されており、これら2つのダイアフラム部材32,33が圧入等により連結されて一体化されている。以下、下カバー23側のダイアフラム部材32を第1ダイアフラム部材32、上カバー21側のダイアフラム部材33を第2ダイアフラム部材33という。
【0032】
第1ダイアフラム部材32は、ロッド部34と、そのロッド部34の下カバー23側端部において連結されているダイアフラム部35とからなる。ロッド部34はその軸線方向の中央部に断面積が拡径された拡径部34aを有している。拡径部34aは、ダイアフラム部35に近接するほど断面積が縮小するテーパ形状となっている。つまり、拡径部34aは、ダイアフラム部35と最も離間した端部(すなわち、上カバー21側の端部)においてその断面積が最大となっている。
【0033】
ロッド部34は、基本的にその拡径部34aを含む弁体30下部が上流側流体室28aに収容され、それよりも上方の弁体30上部が下流側流体室28bに収容されている。拡径部34aの上カバー21側端部の外径は、弁座部36における流体室28の内径よりも大きく形成されているため、拡径部34aの上カバー21側端部は弁座部36に当接することができる。したがって、弁体30が上カバー21側に移動すると、拡径部34aの上カバー21側端部が弁座部36に当接し、上流側流体室28aと下流側流体室28bとの間が遮断される。他方、弁体30が下カバー23側に移動すると、拡径部34aの上カバー21側端部が弁座部36から離れ、上流側流体室28aと下流側流体室28bとの間が連通される。
【0034】
ダイアフラム部35の周縁部35aは、ボディ22と下カバー23とにより挟持されている。下カバー23にはバネ収容室37が形成されており、バネ収容室37には圧縮コイルバネ38が収容されている。圧縮コイルバネ38の上カバー21側の端部は、第1ダイアフラム部材32の下カバー23側端部に組み付けられたバネストッパ39に当接しており、圧縮コイルバネ38の付勢力により第1ダイアフラム部材32が上カバー21側に付勢されるようになっている。つまり、圧縮コイルバネ38の付勢力により、ロッド部34の拡径部34aの上カバー21側端部が弁座部36に当接する状態が保持されるようになっている。
【0035】
下カバー23には、バネ収容室37を大気圧に保持するために大気開放される開放ポート29が形成されている。開放ポート29には配管(図示略)が接続されており、半導体製造装置に悪影響のない場所で大気開放されるようになっている。これにより、ダイアフラム部35の変形に伴うバネ収容室37内の容積変化が円滑に行われる。
【0036】
第2ダイアフラム部材33は、その周縁部33aがボディ22と上カバー21とにより挟持されている。第2ダイアフラム部材33の中央板部33bは、ボディ22の上カバー21側端面(詳しくは、流体室28を囲む上端面)に対向しており、これら両部材の間の隙間寸法分だけ第2ダイアフラム部材33がロッド部34の軸線方向に変位可能となっている。
【0037】
上カバー21にはエア導入ポート50が形成されている。エア導入ポート50は連通路31を通じて、上カバー21と第2ダイアフラム部材33との間の空間部(以下、圧力操作室66という)に連通している。エア導入ポート50には、圧力供給源より操作エアが供給され、その操作エアの操作圧力に応じて第2ダイアフラム部材33が変位するようになっている。
【0038】
以上のように構成されたパイロットレギュレータ20において、エア導入ポート50に操作圧力が作用していない初期状態では、圧縮コイルバネ38の付勢力によりロッド部34の拡径部34aの上カバー21側端部が弁座部36に当接している。この状態では、上流側流体室28aと下流側流体室28bとの間が遮断され、両流体室28a,28b間の流体の流通が阻止されている。
【0039】
これに対し、エア導入ポート50より圧力操作室66に操作エアが供給されると、その時の操作圧力に応じて第2ダイアフラム部材33(ひいては弁体30)がロッド部34の軸線方向に沿って下カバー23側に変位する。この変位により、ロッド部34の拡径部34aの上カバー21側端部が弁座部36から離れ、上流側流体室28aと下流側流体室28bとが連通される。これにより、流体の流通が許容される。このとき、吸入ポート24より吸入された流体が上流側流体室28a及び下流側流体室28bを経由して流れ、供給ポート25からエアオペレートバルブ40に供給される。
【0040】
そして、上流側流体室28aの圧力が高くなった場合には弁座部36に対してロッド部34は閉鎖側へ移動し、逆に上流側流体室28aの圧力が低くなった場合には弁座部36に対してロッド部34は開放側へ移動して、下流側流体室28bの圧力を一定に保つように動作することとなる。このような動作により、圧力操作室66に供給される操作圧力を調整することで、下流側流体室28b内の流体、すなわち供給ポート25からエアオペレートバルブ40へ供給される流体の圧力を制御することができる。
【0041】
次に、エアオペレートバルブ40の構成の詳細について説明する。
【0042】
エアオペレートバルブ40は、カバー41、シリンダ42、ボディ43の順にこれらがボルト等の締結部材によって一体に組みつけられることにより構成されており、全体としては略直方体状をなしている。なお、カバー41及びシリンダ42は例えばポリプロピレン樹脂よりなり、ボディ43は例えばフッ素樹脂よりなる。
【0043】
シリンダ42には、カバー41側からボディ43側に貫通する円筒状の摺動孔45が形成されている。摺動孔45は、いずれも同軸の大径孔部45aと小径孔部45bとを有している。摺動孔45には、ピストンロッド46が収容されている。ピストンロッド46は、大径部46aと小径部46bとを有しており、大径孔部45aに大径部46aが摺動可能に収容され、小径孔部45bに小径部46bが摺動可能に収容されている。なお、ピストンロッド46は、例えばポリプロピレン樹脂により構成してもよいし、ステンレス鋼やアルミニウム等の金属材料により構成してもよい。
【0044】
ピストンロッド46の大径部46aのボディ43側端部には、円筒状に形成されたガイド部材47が連結されている。ガイド部材47は、小径部46bを取り囲むように形成されており、摺動孔45の大径孔部45aに摺動可能に収容されている。これにより、ピストンロッド46の大径部46aが大径孔部45aに対して傾いた状態で収容されるのを防止している。また、ピストンロッド46の小径部46bにはその軸線方向に垂直な方向に延びるピン44が小径部46bを貫通して設けられている。
【0045】
ピストンロッド46とカバー41との間にはバネ収容室48が形成されている。バネ収容室48には圧縮コイルバネ49が収容されている。圧縮コイルバネ49の伸縮方向の一端はピストンロッド46の大径部46aに当接しており、他端はカバー41に当接している。これにより、圧縮コイルバネ49の付勢力によってピストンロッド46が常にその軸線方向に沿ってボディ43側へ付勢されるようになっている。
【0046】
ピストンロッド46とシリンダ42とにより囲まれた空間部は圧力制御室51となっている。圧力制御室51は、エア通路53を通じてエア導入ポート52に連通している。エア導入ポート52に圧力供給源より操作エアが供給されると、圧力制御室51に操作エアが導入されて圧力制御室51内のエア圧力が上昇する。これにより、ピストンロッド46は圧縮コイルバネ49の付勢力に抗してその軸線方向に沿ってカバー41側に移動する。なお、ピストンロッド46の大径部46a及び小径部46bの外周部には、圧力制御室51の気密性を高めるべく環状のシール部材54が配設されている。
【0047】
ピストンロッド46のボディ43側端部には、例えばフッ素樹脂よりなるダイアフラム弁体55が連結されている。ダイアフラム弁体55は、ピストンロッド46に連結されるボス部55aと、シリンダ42及びボディ43に挟持される周縁部55bと、ボス部55aと周縁部55bとの間に形成されるダイアフラム膜部55cとを有している。ボス部55aには雄ネジ部55dが設けられており、その雄ネジ部55dがピストンロッド46のネジ孔46cにねじ込まれることにより、ピストンロッド46とダイアフラム弁体55とが一体化されている。
【0048】
ボディ43には、パイロットレギュレータ20から供給される流体を吸入するための吸入ポート56と、流体を排出するための排出ポート57とが互いに反対側となる側面に形成されているとともに、吸入ポート56に通じる吸入通路58と、排出ポート57に通じる排出通路59とが形成されている。ボディ43のシリンダ42側端部には、摺動孔45と略同軸でありかつ当該摺動孔45に連通された円形溝67が形成されており、この円形溝67に吸入通路58及び排出通路59が連通されている。具体的には、吸入通路58は円形溝67の中央部において円形溝67と連通しており、排出通路59は円形溝67の偏心位置において円形溝67と連通している。
【0049】
吸入通路58は、円形溝67側の通路端では流路径が絞られたオリフィス(以下、弁座オリフィスという)58aとなっている。弁座オリフィス58aの円形溝67側の開口部周囲は弁座部63となっており、ダイアフラム弁体55のピストンロッド46とは反対側の端部に形成された弁部55eが当接するようになっている。したがって、ダイアフラム弁体55がボス部55aの軸線方向に沿ってカバー41から離間される側(閉位置)に移動すると、弁部55eが弁座部63に当接し、弁座オリフィス58aを介しての流体の流通が阻止される。他方、ダイアフラム弁体55がボス部55aの軸線方向に沿ってカバー41へ向かう側(開位置)に移動すると、弁部55eが弁座部63から離れ、弁座オリフィス58aを介して流体の流通が許容される。そして、本実施形態のダイアフラム弁体55は、エア導入ポート52を介して圧力制御室51へ操作エアが作用しているか否かにより、前記開位置と閉位置との二位置切替が行われる。
【0050】
ボディ43には、吸入通路58(詳細には弁座オリフィス58a)と円形溝67とを連通するオリフィス(以下、固定オリフィスという)64が形成されている。これにより、弁座オリフィス58aを介しての流体の流通がダイアフラム弁体55により阻止されている場合であっても、吸入通路58と排出通路59とは固定オリフィス64を介して常時連通されている。
【0051】
以上のように構成されたエアオペレートバルブ40において、エア導入ポート52を介して圧力制御室51へ操作エアが作用していない場合には、圧縮コイルバネ49の付勢により弁部55eが弁座部63に当接した閉位置となっている。この場合、弁座オリフィス58aと円形溝67との間が遮断され、弁座オリフィス58aを介しての流体の流通が阻止されている。すなわち、この場合、パイロットレギュレータ20から供給された流体は固定オリフィス64のみを介して吸入通路58から排出通路59へ流れる。
【0052】
これに対し、圧力供給源からエア導入ポート52を介して圧力制御室51へ操作エアが供給されると、ピストンロッド46(及びダイアフラム弁体55)が圧縮コイルバネ49の付勢力に抗してカバー41側に移動し、弁部55eが弁座部63から離れた開位置に切り替えられる。これにより、弁座オリフィス58aと円形溝67とは連通され、弁座オリフィス58aを介しての流体の流通が許容される。すなわち、この場合、パイロットレギュレータ20から供給された流体は固定オリフィス64だけではなく弁座オリフィス58aをも介して吸入通路58から排出通路59へ流れる。
【0053】
以上のように構成されたパイロットレギュレータ20とエアオペレートバルブ40とはシール部材としてのHシール11をこれらの間に介在させてボルト等により連結されて一体化されている。Hシール11は、その縦断面がH形状をなしており全体としては環状に形成されている。Hシール11は、例えばPFA等のフッ素樹脂よりなる。
【0054】
Hシール11は、パイロットレギュレータ20の供給ポート25の周囲とエアオペレートバルブ40の吸入ポート56の周囲との間に介在されている。具体的には、供給ポート25及び吸入ポート56の周囲にはそれぞれHシール11の凹凸と嵌合する凹凸条68,69が形成されており、Hシール11はパイロットレギュレータ20とエアオペレートバルブ40との間でこれらの凹凸条68,69に嵌合された状態で介在されている。これにより、パイロットレギュレータ20とエアオペレートバルブ40とのポート間での位置決めを図りながら、流体がパイロットレギュレータ20とエアオペレートバルブ40との間から外部へ漏れるのを防止している。
【0055】
次に、この流量制御装置10を使用して薬液を所定の比率で混合して混合液を生成する混合液生成回路について図2又は図3に基づいて説明する。なお、図2は混合液生成回路の全体構成を示す概略図であり、図3は流量制御システムの構成を示す概略図である。
【0056】
図2に示すように、混合液生成回路には2つの薬液タンクY1,Y2が設けられており、各薬液タンクY1,Y2にはそれぞれ第1薬液、第2薬液が貯留されている。第1薬液及び第2薬液はそれぞれ成分が相違する薬液である。本回路は、これらの薬液を適切な比率で混合し吐出するためのものである。
【0057】
本回路は、第1薬液回路L1及び第2薬液回路L2よりなる。これらの回路L1,L2は同一の構成部品からなる同一の回路であるため、図2では構成部品に同一の符号を付している。
【0058】
各回路L1,L2には、薬液の吸引及び吐出を行うための薬液ポンプ71が設けられている。薬液ポンプ71は、例えばダイアフラムポンプやカスケードポンプ等からなる。薬液タンクY1,Y2に貯留された各薬液は、それぞれ薬液の吸引通路を構成する吸引配管73を介して薬液ポンプ71によって吸引される。
【0059】
薬液ポンプ71の吐出側には、薬液の吐出通路を構成する吐出配管74が接続されている。吐出配管74には、流量制御手段としての流量制御システム60が設けられている。薬液ポンプ71より吐出された薬液はこの流量制御システム60を介して混合液タンクXに供給される。したがって、各薬液はそれぞれ流量制御システム60において所定の流量に制御され、その結果、所定の混合比率で混合液タンクXに吐出されるようになっている。
【0060】
図3に示すように、流量制御システム60には、薬液の流量を検出する流量センサ72と、その下流側において直列に接続される流量制御装置10とが備えられている。流量制御装置10を構成するパイロットレギュレータ20及びエアオペレートバルブ40にはそれぞれエア供給手段としての電空レギュレータ75及び電磁弁76が接続されている。
【0061】
電空レギュレータ75は、パイロットレギュレータ20のエア導入ポート50に接続されている。電空レギュレータ75は操作エア圧力を任意に調整できる構成を有し、その操作エア圧力の調整によりパイロットレギュレータ20の圧力操作室66内のエア圧力が調整されるようになっている。
【0062】
一方、電磁弁76はエアオペレートバルブ40のエア導入ポート52に接続されている。電磁弁76は、通電に応じて開閉されることによりエアオペレートバルブ40の圧力制御室51へのエアの供給又は遮断を行うものである。すなわち、エアオペレートバルブ40は電磁弁76の開閉により開閉操作される構成となっている。なお、圧力制御室51へのエアの供給を停止している場合には、圧力制御室51内は例えば大気開放されるなど、加圧状態から解放されるものとする。
【0063】
流量制御システム60は、さらにコントローラ70を備えている。コントローラ70は、CPUや各種メモリ等からなるマイクロコンピュータを主体として構成される電子制御装置である。コントローラ70には、本システムを統括して管理する管理コンピュータから混合比率の設定値に基づいた流量設定指令値(目標流量値)が入力される他、流量センサ72により検出された流体流量が逐次入力される。コントローラ70は、それら各入力に基づいて電空レギュレータ75及び電磁弁76を駆動させて流量フィードバック制御を実施する。
【0064】
以上の構成において、コントローラ70は、エアオペレートバルブ40の二次側圧力P2及び流体流量Qに基づいてエアオペレートバルブ40の一次側圧力P1(すなわち、パイロットレギュレータ20の二次側圧力)を算出することとしており、その算出には次の(1)式が用いられる。
【0065】
P1=P2+G・(Q/45.16Cv) …(1)
なお、Cvは流量係数であり、Gは比重である(流体が水であればG=1)。流量係数Cvは、弁開度に基づいて算出される係数である。本実施形態の場合、流量係数Cvは(エアオペレートバルブ40の)ダイアフラム弁体55の閉時においては固定オリフィス64の開度に基づいて算出され、例えばCv=0.1である。一方、ダイアフラム弁体55の開時においては固定オリフィス64及び弁座オリフィス58aの開度に基づいて算出され、例えばCv=0.5である。
【0066】
ここでは、流体流量Qは流量センサ72により検出され、二次側圧力P2は大気圧である。
【0067】
コントローラ70は、管理コンピュータから入力された流量設定指令値(目標流量値)に基づいて上記(1)式により一次側圧力P1の目標値(目標圧力)を算出する一方、流量センサ72により検出された流体流量Q及び二次側圧力P2(大気圧)に基づいて一次側圧力P1(実圧力)を算出する。そして、コントローラ70は、一次側圧力P1の目標圧力と実圧力との偏差を算出するとともに、その圧力偏差に基づいてPID演算等の演算処理を行い、電空レギュレータ75に対して指令信号を出力する。
【0068】
電空レギュレータ75はコントローラ70からの指令信号に基づいて操作エア圧力を調整する。これにより、パイロットレギュレータ20において圧力操作室66の圧力(パイロット圧)が増減調整される。上記一連の処理が繰り返し実行されることにより一次側圧力P1(すなわち、パイロットレギュレータ20の二次側圧力)が目標圧力に収束し、ひいては流体流量Qが設定指令値に収束する。
【0069】
また、コントローラ70は、流量設定指令値(目標流量値)が所定の閾値(例えば、2.5(l/min))以上である場合には電磁弁76に対して開放指令信号を出力し、電磁弁76を開放させる。これにより、エアオペレートバルブ40の圧力制御室51へ操作エアが供給され、弁座オリフィス58aが開放される。それに対し、流量設定指令値が所定の閾値より小さい場合には電磁弁76に対して閉鎖指令信号を出力し、電磁弁76を閉鎖させる。これにより、エアオペレートバルブ40の圧力制御室51への操作エアの供給は停止され、弁座オリフィス58aは閉鎖される。
【0070】
以上のような制御手順で各薬液回路L1,L2において流体(薬液)の流量が制御される。これにより、設定された混合比率で各薬液を混合液タンクXに吐出することができる。
【0071】
次に、本混合液生成回路において薬液の混合比率を変更する場合における混合比率の応答性について従来例と比較しつつ、図4に基づいて説明する。なお、図4は、第1薬液と第2薬液との混合比率を1:1から2:1に変更する場合における混合比率の経時変化を示す図である。
【0072】
従来は、混合液の生成途中に第1薬液と第2薬液との混合比率を1:1から2:1に変更する場合、薬液回路L1に設けられた弁の弁開度をモータにより調整することにより第1薬液の流量を倍増させ、混合比率を変更していた(例えば、上述した特許文献2に示す流量制御装置)。しかしながら、モータにより弁開度を調整する場合、第1薬液の流量を倍増させるのに時間を要するため、各薬液の混合比率を2:1に安定化させるのにも時間を要することとなる(図4の破線参照)。したがって、各薬液の混合比率が安定化するまでの間(図4における不定期間)は薬液を捨てざるを得ない状況が想定された。そのため、高価な薬液の場合、経済的な損失が大きかった。
【0073】
それに対し、本実施形態の流量制御装置10においては、混合液の生成途中に第1薬液と第2薬液との混合比率を1:1から2:1に変更する場合、薬液回路L1側のエアオペレートバルブ40において弁座オリフィス58aを開放させることにより流路面積を大きくし制御することができる流量範囲を広くした上で、パイロットレギュレータ20により流量制御をすることにより各薬液の混合比率を2:1に安定化させることができる。
【0074】
本実施形態では、第1薬液と第2薬液との混合比率が1:1の場合における第1薬液の流量は上述した所定の閾値(例えば、2.5(l/min))より小さく設定されている。すなわち、各薬液の混合比率が1:1の場合には弁座オリフィス58aを閉鎖することができるため、流量を高精度に制御することができる。一方、第1薬液と第2薬液との混合比率が2:1の場合における第1薬液の流量は所定の閾値以上に設定されている。したがって、第1薬液と第2薬液との混合比率を1:1から2:1に変更する場合、弁座オリフィス58aを開放し、第1薬液の流量を高範囲に制御可能な(すなわち所定の閾値以上に設定可能な)状態にし、その上でパイロットレギュレータ20により各薬液の混合比率が2:1となるように第1薬液の流量を制御する。
【0075】
以上のように、本実施形態では応答性の面で優れている二位置切替のダイアフラム弁体55によって弁座オリフィス58aを開放することで第1薬液の流量を広範囲に制御可能とすることにより、第1薬液と第2薬液との混合比率を1:1から2:1に変更することができるようにしている。したがって、従来と比べて各薬液の混合比率を2:1に安定化させるのに必要な不定期間を短縮させることができる(図4の実線参照)。これにより、各薬液の混合比率が安定化するまでの間に捨てざるを得ない薬液の流量を従来と比べ低減させることができる。
【0076】
以上詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0077】
パイロットレギュレータ20の下流側にはエアオペレートバルブ40が設けられており、エアオペレートバルブ40には常時開放の固定オリフィス64と、ダイアフラム弁体55の変位により開閉される弁座オリフィス58aとが並列に形成されている。したがって、ダイアフラム弁体55をカバー41側に移動させることにより弁座オリフィス58aを開放すれば流体が固定オリフィス64と弁座オリフィス58aとを介して比較的大きな流量で流れ、弁座オリフィス58aを閉鎖すれば流体が固定オリフィス64のみを介して比較的小流量で流れる。そのため、流量を広範囲に制御するニーズと、高精度に制御するニーズとのいずれのニーズにも対応することができる。
【0078】
本実施形態のダイアフラム弁体55は、開位置と閉位置とに二位置切替するものであるため、本エアオペレートバルブ40は応答性に優れている。したがって、応答性に優れ、かつ高精度又は高範囲に流量を制御することができる。
【0079】
圧縮コイルバネ49による付勢力によりダイアフラム弁体55が弁座部63に着座されることにより弁座オリフィス58aは閉鎖され、また、圧力制御室51に操作エアが導入されダイアフラム弁体55が弁座部63から離間されることにより弁座オリフィス58aは開放される。これにより、弁座オリフィス58aの開放又は閉鎖を簡易な構成により実現することができる。
【0080】
パイロットレギュレータ20は、ダイアフラム部材32,33で流路(流体室28)をバネ収容室37及び圧力操作室66と区画しており、ダイアフラム部材32,33の変形に伴い流体の流通を許容したり禁止したりしている。また、エアオペレートバルブ40は、ダイアフラム弁体55で流路(円形溝67)を圧力制御室51側の空間と区画しており、ダイアフラム弁体55の変形に伴い流体の流通を許容したり禁止したりしている。したがって、パイロットレギュレータ20、エアオペレートバルブ40共に流路内に摺動部の無い構成となっている。そのため、上記流量制御装置10は、パーティクルの発生が抑制されたものとなるため、半導体製造ラインなどの純度の高い流体の取扱いに優れている。
【0081】
パイロットレギュレータ20とエアオペレートバルブ40とはボルト等の締結部材により一体として組み付けられることにより構成されているため、上記流量制御装置10はコンパクトに構成されている。これにより、製造ライン等に組み込む際にはラインの簡素化に寄与することができる。
【0082】
流量設定指令値(目標流量値)が所定の閾値(例えば、2.5(l/min))以上である場合には弁座オリフィス58aを開放することができ、流量設定指令値が所定の閾値より小さい場合には弁座オリフィス58aを閉鎖することができる。これにより、流量設定指令値(目標流量値)が所定の閾値より大きいか小さいかにより自動的に流路面積を大小切り替えることができ、ひいては流体の流量を自動的に高精度に制御したり広範囲に制御したりすることができる。
【0083】
本発明は上記実施形態に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
【0084】
(1)上記実施形態では、エアオペレートバルブ40に2つのオリフィス58a,64を設けたが、オリフィスを3つ以上設けてもよい。この場合、1のみを固定オリフィスとし、残りの複数のオリフィスを2位置切替式(オンオフ式)の弁座オリフィスとするとよい。
【0085】
(2)上記実施形態では、固定オリフィス64を常時開放としたが、固定オリフィス64を弁座オリフィス58aと同様にダイアフラム弁による2位置切替式(オンオフ式)の弁座オリフィスとしてもよい。そうすれば、両オリフィス58a,64を閉鎖することにより、エアオペレートバルブ40においても流体の供給を停止させることができる。
【0086】
(3)上記実施形態では、流量制御装置10を半導体製造ラインの薬液供給に用いる場合を一例として説明したが、これ以外の薬液供給に用いてもよいし、薬液以外の流体の流量制御に用いてもよい。例えば、薬品の製造ラインに用いたり、化学製品の製造ラインに用いたりすることも可能である。
【0087】
(4)上記実施形態では、それぞれ別体として構成されているパイロットレギュレータ20とエアオペレートバルブ40とをボルト等により一体に組み付けることで流量制御装置10を構成したが、エアオペレートバルブ40をパイロットレギュレータ20に付属的に設けてもよい。以下、その例について、上記実施形態との相違点を中心に図5を参照しつつ説明する。なお、図5において、先の図1と対応する部材については便宜上同一の符号を付している。
【0088】
流量制御装置80は、圧力制御手段としてのレギュレータ部81と、その下流側に接続されたバルブ部82とを備えている。
【0089】
レギュレータ部81は、上カバー83、ボディ84、下カバー85の順にこれらがボルト等の締結部材によって一体に組み付けられることにより構成されており、全体としては略直方体状をなしている。ボディ84は、一側面側においてカバー85と離間された側に延びる延出部84aを有している。そのため、ボディ84の縦断面は略L字状をなしている。したがって、レギュレータ部81は、詳しくはボディ84のL字の内側に上カバー83が配置され、ボディ84を挟んだ上カバー83の反対側に下カバー85が配置される構成となっている。
【0090】
バルブ部82はシリンダ86とカバー87とを備えており、ボディ84の延出部85a側の側面に連結されている。具体的には、ボディ84,シリンダ86,カバー87の順にこれらがボルト等の締結部材により組みつけられることでバルブ部82はボディ84に、ひいてはレギュレータ部81に連結されている。
【0091】
ボディ84には、流体を吸入するための吸入ポート88と、流体を排出するための排出ポート89とが設けられるとともに、吸入ポート88に通じる吸入通路90と、排出ポート89に通じる排出通路91とが形成されている。詳しくは、排出ポート89及び排出通路91はボディ84の延出部84aに形成されている。また、ボディ84には、流体を吸入通路90から排出通路91へ導く中間通路92が形成されている。
【0092】
ボディ84の中央部には、当該ボディ84を上カバー83側から下カバー85側に貫通する流体室93としての貫通孔が形成されている。流体室93は、上記実施形態と同様、その貫通孔の軸線方向における中央部に形成された弁座部94より下カバー85側が上流側流体室93aとなっており、弁座部94より上カバー83側が下流側流体室93bとなっている。そして、上流側流体室93aには吸入通路90が連通されており、下流側流体室93bには中間通路92が連通されている。
【0093】
流体室93には、その貫通孔の軸線方向に往復動可能な弁体30が収容されている。弁体30及び弁体30周辺の構成は上記実施形態と基本的に同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0094】
弁体30は上記実施形態と同様、圧縮コイルバネ38の付勢力によりロッド部34の拡径部34aの上カバー83側端部が弁座部94に当接した状態が保持されている。これにより、上流側流体室93aと下流側流体室93bとの間は常時遮断されている。一方、上カバー83に形成されたエア導入ポート50から圧力操作室66に操作エアが導入されると、その時の操作圧力に応じて第2ダイアフラム部材33がロッド部34の軸線方向に沿って下カバー85側に変位する。この変位により、ロッド部34の拡径部34aの上カバー83側端部が弁座部94から離れ、上流側流体室93aと下流側流体室93bとが連通されるため流体の流通が許容される。
【0095】
なお、ダイアフラム部35の周縁部35aはボディ84と下カバー85とにより挟持されており、第2ダイアフラム部材33の周縁部33aはボディ84と上カバー83とにより挟持されている。
【0096】
シリンダ86には、カバー87側からボディ84側に貫通する円筒状の摺動孔96が形成されており、摺動孔96にはピストンロッド46が収容されている。摺動孔96は、上記実施形態と同様、いずれも同軸の大径孔部96aと小径孔部96bとを有しており、大径孔部96aに大径部46aが摺動可能に収容され、小径孔部96bに小径部46bが摺動可能に収容されている。その他ピストンロッド46周辺の構成は上記実施形態と基本的に同様であるため詳細な説明は省略することとし、構成の概略についてのみ以下に説明する。
【0097】
ピストンロッド46とカバー87との間にはバネ収容室97が形成されており、バネ収容室97には圧縮コイルバネ49が収容されている。ピストンロッド46は圧縮コイルバネ49の付勢力(圧縮反発力)により常にその軸線方向に沿ってボディ84側に付勢されるようになっている。一方、エア導入ポート102からエア通路103を通じてピストンロッド46とシリンダ86とにより囲まれた空間(以下、圧力制御室98という)に操作エアが導入されると、ピストンロッド46は圧縮コイルバネ49の付勢力に抗してピストンロッド46の軸線方向に沿ってカバー87側(図5の右方)に移動することができる。
【0098】
ピストンロッド46のボディ84側端部には、ダイアフラム弁体55が連結されている。ダイアフラム弁体55の周縁部55bは、ボディ84とシリンダ86との間に挟持されている。
【0099】
ボディ84のシリンダ86側端部には摺動孔96と略同軸であるとともに摺動孔96と連通された円形溝99が形成されており、この円形溝99には中間通路92及び排出通路91が連通されている。具体的には、中間通路92は円形溝99の中央部において円形溝99と連通しており、排出通路91は円形溝99の円周側端部において円形溝99と連通している。
【0100】
中間通路92は、円形溝99側の通路端において流路径が小さく絞られており、オリフィス(以下、弁座オリフィスという)92aとなっている。円形溝99の弁座オリフィス92a開口部の周囲は弁座部100となっており、ダイアフラム弁体55の弁部55eが当接することができるようになっている。したがって、ダイアフラム弁体55がボス部55aの軸線方向に沿ってカバー87側とは反対側に移動すると、弁部55eが弁座部100に当接し、弁座オリフィス92aを介しての流体の流通が阻止される。他方、ダイアフラム弁体55がボス部55aの軸線方向に沿ってカバー87側に移動すると、弁部55eが弁座部100から離れ、弁座オリフィス92aを介して流体の流通が許容される。
【0101】
ボディ84には、中間通路92と排出通路91とを連通するオリフィス(以下、固定オリフィスという)101が形成されている。これにより、弁座オリフィス92aを介しての流体の流通がダイアフラム弁体55により阻止されている場合であっても、固定オリフィス101を介して中間通路92と排出通路91とは常時連通されているため、流体は固定オリフィス101を介して吸入通路90から排出通路91へ流れる。これに対し、エア導入ポート52を介して圧力制御室98へ操作エアが供給され、ピストンロッド46(及びダイアフラム弁体55)が圧縮コイルバネ49の付勢力に抗してカバー87側に移動し、弁部55eが弁座部100から離れる場合、流体は固定オリフィス101及び弁座オリフィス92aを介して吸入通路90から排出通路91へ流れる。
【0102】
以上説明した流量制御装置80によっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。また、流量制御装置80はレギュレータ部81とバルブ部82とでボディ84が共有化されることにより、バルブ部82がレギュレータ部81の付属物として一体化されていることから、上記実施形態で用いたHシール11やバルブ部82専用のボディを不要とすることができるとともに、Hシール11を嵌合させるために複雑な加工が必要な形成した凹凸条68,69を設けなくて済むという利点がある。
【0103】
(5)上記実施形態又は上記別例(4)においては、パイロットレギュレータ20とエアオペレートバルブ40とを一体化してなる流量制御装置10や、レギュレータ部81とバルブ部82とを一体化してなる流量制御装置80について例示したが、これらを分離したものとしてもよい。すなわち、パイロットレギュレータ20の供給ポート25とエアオペレートバルブ40の吸入ポート56とを配管を介して連結して流量制御装置を構成するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】流量制御装置の構成を示す縦断面図。
【図2】混合液制御回路の全体構成を示す概略図。
【図3】流量制御システムの構成を示す回路図。
【図4】薬液の混合比率の経時変化を示す図。
【図5】別例における流量制御装置の構成を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0105】
10…流量制御装置、11…Hシール、20…レギュレータとしてのパイロットレギュレータ、30…弁体、36…弁座部、40…開閉弁としてのエアオペレートバルブ、46…ピストンロッド、55…ダイアフラム弁体、58…吸入通路、58a…絞り通路としての弁座オリフィス、60…流量制御システム、63…弁座部、64…絞り通路としての固定オリフィス、70…コントローラ、72…流量センサ、75…電空レギュレータ、76…電磁弁、80…流量制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される流体の圧力を調整するレギュレータと、
前記レギュレータの下流側において互いに並列に設けられた複数の絞り通路と、
前記各絞り通路のうち所定の絞り通路を開位置と閉位置とに二位置切替する開閉部と、
を備えていることを特徴とする流量制御装置。
【請求項2】
供給される流体の圧力を調整するレギュレータと、
前記レギュレータの下流側に設けられるとともに、常時開放とされている開放絞り通路と、
前記レギュレータの下流側において前記開放絞り通路に並列に設けられるとともに、開閉部によって開位置と閉位置とに二位置切替される開閉絞り通路と、
を備えていることを特徴とする流量制御装置。
【請求項3】
前記レギュレータの下流側には開閉弁が設けられており、
その開閉弁には、前記各絞り通路及び開閉部が内蔵されており、更に、前記開閉部を閉位置へ向けて常時付勢する付勢部と、前記付勢部による付勢力に抗して前記開閉部を開位置へ向けて押圧する押圧状態とその押圧状態を解除した解除状態とに切り替えられる押圧部と、を備えている請求項1又は2に記載の流量制御装置。
【請求項4】
前記レギュレータは、
流体の流入口と流出口との間を連通する流路の途中に設けられた弁座部に着座したり離間したりする弁体と、
前記弁体を前記弁座部へ向けて付勢する第二付勢部と、
前記第二付勢部による付勢力に抗して前記弁体を前記弁座部から離間する側に押圧するとともに、その押圧力を調整することにより流体の圧力を制御する操作部と、
前記流路を前記第二付勢部の収容領域及び前記操作部とそれぞれ区画するとともに前記弁体に一体化されている圧力調整用ダイアフラムと、
を備えており、
前記開閉弁は、前記各絞り通路を含む流体の流路を前記押圧部側の空間と区画するとともに前記開閉部に一体化されている開閉用ダイアフラムを備えている請求項3に記載の流量制御装置。
【請求項5】
前記レギュレータと前記開閉弁とは連結されて一体化とされているか又は共通のボディを用いた一体物として形成されている請求項3又は4に記載の流量制御装置。
【請求項6】
前記レギュレータ及び前記開閉部を制御するコントローラを備え、当該コントローラは、前記レギュレータによる制御流量が小さい場合には前記閉位置となり、制御流量が大きい場合には前記開位置となるように、前記開閉部を制御する請求項3乃至5のいずれか1項に記載の流量制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−230259(P2009−230259A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72264(P2008−72264)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】