浄化フィルター、その製造方法及び排気ガス浄化装置
【課題】捕捉効率を向上するとともに、圧力損失の低下を抑制した浄化フィルター、その製造方法及び排気ガス浄化装置を提供すること。
【解決手段】原料基体上にウィスカーを形成して成る浄化フィルターであって、
上記原料基体が、Mn、Al、Cr、In、Ag、Ga、Sn、Cu、Sc、Ge、Ti及びSiなどを含む合金やセラミックスより成る原料基体上にウィスカーを形成して成る浄化フィルターである。原料基体は、平均細孔径がウィスカーの平均径より大きい多孔質体とする。原料基体は、担体内に粉粒体を充填して成る。
原料基体に含まれる元素の含有率を調整し、不活性雰囲気中且つ微量酸素の存在下で加熱処理して、形成するウィスカーの太さ及び長さを制御して浄化フィルターを製造する。
浄化フィルターを2層以上用い、上流側に原料基体上に形成されたウィスカーの平均長さ及び太さが大きい浄化フィルター、下流側にそれらが小さい浄化フィルターを配設して成る排気ガス浄化装置である。
【解決手段】原料基体上にウィスカーを形成して成る浄化フィルターであって、
上記原料基体が、Mn、Al、Cr、In、Ag、Ga、Sn、Cu、Sc、Ge、Ti及びSiなどを含む合金やセラミックスより成る原料基体上にウィスカーを形成して成る浄化フィルターである。原料基体は、平均細孔径がウィスカーの平均径より大きい多孔質体とする。原料基体は、担体内に粉粒体を充填して成る。
原料基体に含まれる元素の含有率を調整し、不活性雰囲気中且つ微量酸素の存在下で加熱処理して、形成するウィスカーの太さ及び長さを制御して浄化フィルターを製造する。
浄化フィルターを2層以上用い、上流側に原料基体上に形成されたウィスカーの平均長さ及び太さが大きい浄化フィルター、下流側にそれらが小さい浄化フィルターを配設して成る排気ガス浄化装置である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄化フィルター、その製造方法及び排気ガス浄化装置に係り、更に詳細には、微細なウィスカーを利用した浄化フィルター、その製造方法及び排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DPF(ディーゼルパーティキュレートフィルター)とは、主にディーゼル車の排気ガスに含まれる粒子状物質(DEP)を除去するために使う排出ガス浄化フィルターをいい、例えば、コーディエライト、炭化珪素、シリカ系繊維、Fe−Cr−Al合金及びSUSなどを用いたDPFが知られている。
これらの材料を用いたDPFは、以下のようなメリット及びデメリットがある。即ち、上記コーディエライトハニカムは、捕集効率が高いが、耐熱強度が低く、溶損・破損し易い。上記炭化珪素ハニカムは、捕集効率が高く耐熱強度が高いが、熱膨張により破損し易く高コストである。上記シリカ系繊維巻き付けは、捕集効率が高いが、耐熱強度が低く、高コストであり、捕集面積が小さい。上記コーディエライトフォームは、捕集面積が大きいが、捕集効率が低い、耐熱強度が低い、再生が困難である。上記Fe−Cr−Al金属フォームは、捕集面積が大きいが、捕集効率が低い、耐熱強度が低い、再生が困難ある。上記SUSメッシュは、耐震性に優れるが、捕集効率が低い、再生が困難であり、高コストである。
【0003】
また、粒子状物質(DEP)は、固形炭素粒、炭化水素、水、酸、塩基、アルコール、CO、CO2、NOx、SOx及びその他有機物などから構成され、図1に示すように、10μm〜10nmの範囲に粒径分布をもつ。また、質量分布からわかるように、0.01〜0.1μm、0.1〜1μm、1〜10μmの範囲にそれぞれピークがある。
従って、DEPを除去するには、これら全ての大きさの粒子をいかに効率良く除去するかが重要である。
【0004】
このような背景から、セラミックスハニカム構造体から成る触媒付DPFをセル隔壁の平均孔径の異なる複数種から構成し、平均孔の大きなものから小さなものを直列に配置することが提案されている(例えば特許文献1参照)。
しかし、このDPFでは、圧力損失を少なくするため、細孔の大きさは小さくても10μm程度である。このため、100nm以下の微細粒子についての捕捉は難しい。また、セラミックスを用いるため、耐震性や熱衝撃により破損するなどの問題点があった。更に、捕捉効率を上げるために、フィルタ本体にある程度の大きさが必要であった。
【特許文献1】特開2003−225540号公報
【0005】
また、金属メッシュと多孔質触媒層を組合せたフィルター、具体的には、導電性金属の金属素線で構成された金網と金属粉末の焼結層とから成る多孔質金属複合体で、フィルター機能とヒーター機能の複合機能を備えたDPFが提案されている(例えば特許文献2参照)。
しかし、このDPFは、金網構造のため、網目の孔が非常に大きい。また、金属粉末の焼結層を厚くすれば孔が小さくなるが一方で圧力損失が大きくなってしまう。このため、捕捉効率と低圧力損失の両立が難しいという問題点があった。
【特許文献2】特開2003−97253号公報
【0006】
更に、細孔径の平均値とその標準偏差を制御したセラミックスハニカムDPFが提案されている(例えば特許文献3参照)。このDPFは、平均粒径10μmの多孔質コーディエライトを使用して成り、0.1μm〜1μm程度までの粒子状物質(DEP)が捕捉可能である。
【特許文献3】WO2002/026351
【0007】
一方、本発明者らは、サイズの異なるウィスカーの製造方法を提案している(特願2004−319018号)。即ち、ウィスカーを成長させる原料基体に含まれるマンガン(Mn)の組成を変えて不活性ガス中で熱処理をすると、得られるウィスカーの大きさが変わることを見出した。
ここで、「ウィスカー」とは、細長いヒゲ状結晶を意味し、一般にはプラスティックやセラミックスの強化材として用いられる。また、ウィスカーを形成させた基体は表面積が増加するため、触媒の担持体などに利用できる。
【0008】
そこで、本発明者らは、かかるウィスカーを用いたDPFと、従来公知のDPFとを同一サイズにて比較したところ、前者は極めて優れた特性を示すことを見出した。
即ち、該ウィスカーを用いたDPFは、現在使用頻度が高いハニカムフィルターと比べると、比表面積が大きい、触媒が分散性良く担持できる(触媒使用量を低減できる)、ウィスカーの弾性により衝撃や熱応力に強い、基材を金属にすることができるので熱伝導を高められる、などのメリットがある。また、SiCなどの細線不織フィルターと比べると、ウィスカーが凹凸になるので粒子がより補足し易い、強度を気にせずウィスカーサイズを制御できる、ウィスカーを微細化することでより小さな粒子の除去が可能となる、などのメリットがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような従来技術の有する課題と新たな知見に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、捕捉効率を向上するとともに、圧力損失の低下を抑制した浄化フィルター、その製造方法及び排気ガス浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、所定の元素を含む原料基体上に成長させた微細なウィスカーにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、微細且つ表面積が増大したウィスカーを使用するので、圧力損失が少ないうえに従来品の補足可能限界の1/10以下の粒子まで補足できる。また、従来品と同じ補足効率のフィルターを、小型化、軽量化(低コスト化)することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の浄化フィルターについて詳細に説明する。なお、本特許請求の範囲及び本明細書において、「%」は特記しない限り質量百分率を表すものとする。
【0013】
上述の如く、本発明の浄化フィルターは、原料基体上にウィスカーを形成して成る。また、この原料基体は、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、インジウム(In)、銀(Ag)、ガリウム(Ga)、錫(Sn)、銅(Cu)、スカンジウム(Sc)、ゲルマニウム(Ge)、チタン(Ti)又はシリコン(Si)、及びこれら元素の任意の組み合わせを含む合金とするか、これら元素の少なくとも1種を含むセラミックスとする。
このような元素が原料基体の表面でウィスカーを形成することにより、比表面積の大きい浄化フィルターが得られる。また、ウィスカーは、片方の端部が開放されているため、圧力損失が少ない。更に、篩効果で10μm以下の粒子が捕捉されるとともに、ウィスカーの凹凸による衝突捕捉によっても粒子が捕捉されるため、捕捉効率が向上する。
【0014】
ここで、本発明の浄化フィルターが発揮する衝突捕捉について説明する。
図2(左図)に示すように、細孔による篩効果のみを利用したフィルターは、該細孔の大きさに対応した粒子を捕捉できるに留まるとともに、一旦粒子が捕捉されると細孔が塞がれてしまい圧力損失が増大する。
これに対して、本発明の浄化フィルターは、ウィスカーを用いるので篩効果に加えて、流れてきた粒子がウィスカーに衝突するときに該ウィスカーに引っ掛かることにより捕捉できる効果(衝突捕捉)を有する。即ち、図2(右図)に示すように、実際に細孔径を捕捉粒子のサイズまで小さくしなくても粒子を3次元的に捕捉できるため、従来の1/10以下の粒子まで捕捉でき、上記圧力損失の問題が改善される。
なお、太さ1μmのウィスカーを充填した浄化フィルターが衝突捕捉により捕集できるPM粒子の粒子径と捕集率との関係を図3のグラフに示す。
【0015】
また、本発明の浄化フィルターの使用による圧力損失の低減について説明する。
例えば、図4(左図)に示すように、原料基体として用いる直径10μmの粉粒体上に、太さ2μm、長さ20μmのウィスカー(円錐)を密生させる場合は、直径50μmの球体に対する空間占有率は3%となる。
また、図4(右図)に示すように、原料基体として用いる直径5μmの粉粒体上に、太さ20nm、長さ1μmのウィスカー(円錐)を密生させる場合は、直径7μmの球体に対する空間占有率は47%となる。
このようにウィスカーの間隙に確保される空間により、多孔度の高い浄化フィルターを構成できるので、圧力損失を大幅に低減できる。
【0016】
上記原料基体としては、多孔質体を使用でき、このときは、該多孔質体の平均細孔径が上記ウィスカーの平均径より大きいことが好適である。これより、多孔質の細孔内にウィスカーが形成され易くなり、平均細孔径がより小さくなるので、ウィスカー形成前よりも小さな粒子を捕捉できる。
上記多孔質体としては、例えば、図5に示すような合金メッシュや多孔質金属(発泡金属)などが挙げられ、これらにウィスカーを形成する場合は、細孔径より細かい粒子(1μm程度)まで篩効果を発揮でき、衝突捕捉効果により更に細かい粒子(〜0.01μm)まで除去できる。
【0017】
また、上記原料基体としては、粉粒体を使用することもできる。このときは、それらを担体内に充填して浄化フィルターとすることが好適である。このときは、粉粒体に形成されたウィスカー同士が絡み合い、適度な空隙率が確保された多孔質形状が構成され得る。よって、捕捉効率が向上し低圧力損失となるとともに、高強度(耐震性)で耐熱衝撃性に優れた浄化フィルターが得られる。例えば、粉粒体の表面積の半分に径1μm、長さ10μmのウィスカーを形成した場合は、ウィスカーを設けない場合に比べて表面積が8倍以上となる。また、従来のフィルターと同じ効果を奏するフィルターを小型化・軽量化(低コスト化)できる。
上記粉粒体としては、代表的には、Ni−Mn合金、インコネル(Ni−Cr−Fe系合金)、ステンレス(Fe−Cr−Ni系、Fe−Cr−Al系合金など)等の粉末の他、これら合金をチップ状、円柱状及び短繊維状などにしたものも含む。また、浄化フィルターを製造する際は、図6に示すように、粉粒体のアニール処理(加熱処理)後に担体に充填しても良いし(左図)、粉粒体を多孔質金属等に充填してからアニール処理しても良い(右図)。担体としては、上述の多孔質体やメタル担体などを使用できる。なお、担体内に充填する粉粒体は固定されていても良いし、固定されていなくても良い。
【0018】
次に、本発明の浄化フィルター製造方法について詳細に説明する。
本発明の製造方法では、まず、原料基体である合金又はセラミックスに含まれる元素のうち、ウィスカーを構成する元素の含有量を調整する。次いで、原料基体を反応炉内に設置し、不活性雰囲気中且つ微量酸素の存在下で加熱処理することにより、長さ及び太さが制御されたウィスカーを原料基体の表面に形成できる。
例えば、マンガン粉末含有ニッケル発泡金属を原料基体とする場合には、図7に示すように、同一の熱処理条件下において、Mn粉末の含有比率を10〜80%の範囲で変更すると、平均太さが10nm〜5μm、平均長さが2〜50μmまでの範囲でウィスカーの大きさを任意に設計できる。
このように、本発明では、ウィスカーの大きさを適宜制御することにより、対象物とする粒子の大きさに合ったサイズの浄化フィルターを製造できる。
【0019】
ここで、現時点では、かかるウィスカーが成長する原理は明らかではないが、ウィスカーを構成する元素は蒸気圧が高く、原料基体中では揮発し易いこと、また原料基体中の他の成分と比べて同じ温度においてより蒸気圧が低い酸化物(但し、複数の酸化数を持つ金属の場合、全ての酸化数でこの条件を満たす必要はない)があること、によるものと推察できる。即ち、まず、原料基体の表面周辺にウィスカー構成元素の蒸気又はその酸化物の蒸気が存在する状態が形成される。次いで、原料基体の表面にウィスカーの基点となる核が形成される。更に、この核を先端としてウィスカーが成長する。このとき、原料基体表面の温度と不活性ガスの流量には最適範囲があり、その範囲から大きくても小さくても形成密度が減少すると考えられる。例えば、マンガンとインジウムを含む原料基体の表面が1000℃のときは、マンガンの蒸気圧は約3×10−2Torr(約4Pa)で酸化マンガン(MnO)の蒸気圧が約3×10−7Torr、インジウムの蒸気圧は2×10−2Torrで酸化インジウムの蒸気圧が7×10−8Torrであることが密接に関係すると考えられる。
【0020】
上記原料基体は、合金又はセラミックスを多孔質状、メッシュ状(織布・不織布)及び粉粒状などにして使用できるが、特にフィルター構造に成形した後に、加熱処理することが好適である。このときは、ウィスカー形成基体を担体に充填する場合に比べて、捕捉効率が向上し、また圧力損失の制御も容易になる。
なお、「フィルター構造」とは、原料基体を多孔質体にしたり、担体としての多孔質体(原料基体としての性質は問わない)の細孔内に予め原料基体である粉粒体を担持又は充填させることなどが該当する。
【0021】
また、上記不活性雰囲気としては、例えば、アルゴン、窒素、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン及びラドン、又はこれらを任意に組合わせたガスなどを使用できる。
更に、加熱処理においては、これら不活性ガスとともに、微量の酸素が存在することを要する。これは、原料基体から形成されるウィスカーは、酸化物として成長するからである。但し、当該酸素は、反応炉内に不活性ガスを送入する前の大気に残存する程度(1〜1000ppm程度)で足りる。
更にまた、加熱処理時の焼成温度は、使用する反応炉や試料の大きさ、形状などにも依存する。例えば、反応炉の容積が3Lの場合には、不活性ガスを0.1〜5L/minで供給し、900〜1100℃で30〜1000分間焼成することができる。
【0022】
次に、本発明の排気ガス浄化装置について詳細に説明する。
本発明の排気ガス浄化装置は、上述の浄化フィルターを2層以上用いて構成される。また、排気ガスの流れ方向に対して上流側に、ウィスカーの平均長さ及び太さが大きい浄化フィルターを配設し、下流側に該平均長さ及び太さが小さい浄化フィルターを配設する。
これより、上流側で大きな粒子が捕捉され、下流側で小さな粒子が捕捉されるため、排気ガスを高効率で浄化できる。また、浄化フィルターにおいて、原料基体に対するウィスカーサイズ比率が大きいほど、空隙率が高くなるので、捕捉された粒子の蓄積による圧力損失の低下を防止できる。更に、再生までの寿命が長くなる。
なお、本発明の浄化フィルター1層において、原料基体に含まれるウィスカー構成元素の含有量比を偏らせたことによって、部分的に大きさの異なるウィスカーを有する場合も本排気ガス浄化装置と同様の効果を奏することは言うまでもない。
【0023】
ここで、本発明の排気ガス浄化装置の代表的な製造方法を以下に示す。
図8に示すように、第1例としては、細孔内にウィスカー構成元素を含む多孔質金属板(原料基体)を2枚用い、排気ガス流路の上流側には該ウィスカー構成元素の含有量の多いもの、下流側には該ウィスカー構成元素の含有量の少ないものを配設する。第2例としては、外側(先に排気ガスが接触する部位)にウィスカー構成元素の含有量が多い多孔質金属基板、内側に該含有量が少ない多孔質金属基板をそれぞれ筒型に加工してハウジングする。第3例としては、1枚の多孔質金属基板を筒型にして、その外側にウィスカー構成元素を多く含有させ、内側にウィスカー構成元素を少なく含有させる(粉末担持や金属形成時に組成を制御する)。
これら第1〜3例の基板を不活性ガス中でアニール処理し、その後にそれぞれを排気ガス流路に設置することで、排気ガス浄化装置が得られる。
【0024】
また、図9に示すように、第4例としては、ウィスカー構成元素を含む多孔質金属基板を、交互に目封止したハニカム状に構成する。このとき、排気ガス流路方向に対して下流側を封止した(上流側に開口を有する)排気ガス流路内はウィスカー構成元素の含有量を多くし、上流側を封止した(下流側に開口を有する)排気ガス流路内は該含有量を少なくする。この基板を不活性ガス中でアニール処理し、その後に排気ガス流路に設置することで、排気ガス浄化装置が得られる。
【0025】
更に、図10に示すように、第5例としては、排気ガス流路内に設置する担体内にウィスカー形成粒子を充填する。このとき、排気ガス流れ方向に対して上流側に、大きいウィスカーを備える粒子を充填し、下流側に、小さいウィスカーを備える粒子を配設することができる(左図)。また、上流側及び下流側を交互に目封止したハニカム状担体を用意し、このうち、上流側に開口を有する排気ガス流路内には、大きいウィスカーを備える粒子を充填し、下流側に開口を有する排気ガス流路内には、小さいウィスカーを備える粒子を充填することができる(右図)。
【0026】
また、本発明の排気ガス浄化装置では、上記浄化フィルターを集塵極とし、この近傍に導電材より成る放電電極を配設することが好適である。
このときは、両極間に直流電圧を印加すると、排気ガス粒子が放電電極で電荷を帯び、集塵極に引き寄せられるので、捕捉効率がより向上する。また、直流電圧は、浄化フィルターの大きさなどにより異なるが、例えば1k〜10kV程度に設定できる。
【0027】
更に、本発明の排気ガス浄化装置では、上記ウィスカーの表面に酸化触媒を担持することが好適である。
酸化触媒を担持することで、効率良く再生処理できるので、排気ガス浄化装置を高寿命化できる。また、表面に細かい凹凸があるため、触媒が担持されやすく、担持量が少なくて済む。上記酸化触媒としては、例えば、パラジウム、ロジウム、白金、金、鉄、セリウム、バナジウム、ニッケル、コバルト、タングステンなどが挙げられる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0029】
(実施例1)
平均粒径10μmのNi−Mn合金粉末をディスク型の多孔質金属の容器に充填し(上流側:80%Mn、下流側:50%Mn)、これをArガスフロー中で1000℃/h昇温、1000℃で2h保持の加熱処理を行い、ウィスカーを備える浄化フィルターを得た。
具体的には、図11に示すように、上流側に平均太さが1〜5μm、平均長さが50μmのウィスカー(空隙率は約95%)を形成し、下流側に平均太さが100〜1000nm、平均長さが10μmのウィスカー(空隙率は約50%)を形成した。
【0030】
(比較例1)
実施例1と同一の外観形状(大きさ)の形状になるように、粒径10μmのカオリン、タルク、シリカ、アルミナ粉末を調整して得られる、質量比でSiO2:50%、Al2O3:35%、MgO:15%を含むコージェライト原料粉末を造孔材とともにディスク型に成型し、1400℃で焼成し空隙率50%のセラミックスフィルターを得た。
【0031】
<評価測定>
実施例1及び比較例1で得られたフィルターを排気ガス流路に設置し、ディーゼル排気ガスを1m/sで導入した際の、排気側のガス粒径分布を測定した。この結果を図11に示す。
【0032】
図11より、実施例で得たフィルターは、ウィスカーが形成されていることによる篩(ふるい)機能による粒子の捕捉と、粒子衝突による捕捉効果により、0.01μmの粒子まで高効率に捕捉できることがわかる。
一方、比較例1で得たフィルターは、粒子衝突による捕捉効果は少なく、また細孔径が大きいため、小さくても0.1μm程度までしか捕捉できないことがわかる。
【0033】
以上、本発明を若干の好適実施例により詳細に説明したが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。
例えば、原料基体としてはインコネルなども使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】粒子状物質(DEP)の粒径分布を示すグラフである。
【図2】衝突捕捉の一例を示す概略図である。
【図3】衝突捕捉により捕集できるPM粒子の粒子径と捕集率との関係を示すグラフである。
【図4】ウィスカーの密生度合による空間占有率を示す概略図である。
【図5】多孔質体の一例を示す概略図である。
【図6】粉粒体のアニール処理により形成されたウィスカーの一例を示す概略図である。
【図7】ウィスカー構成元素の含有比率と得られるウィスカーの一例を示す写真である。
【図8】排気ガス浄化装置の一例を示す概略図である。
【図9】排気ガス浄化装置の他の例を示す概略図である。
【図10】排気ガス浄化装置の更に他の例を示す概略図である。
【図11】実施例1で形成したウィスカーを示す写真である。
【図12】DPF通過前のガス粒径分布と、フィルター通過後(実施例及び比較例)の粒径分布図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄化フィルター、その製造方法及び排気ガス浄化装置に係り、更に詳細には、微細なウィスカーを利用した浄化フィルター、その製造方法及び排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DPF(ディーゼルパーティキュレートフィルター)とは、主にディーゼル車の排気ガスに含まれる粒子状物質(DEP)を除去するために使う排出ガス浄化フィルターをいい、例えば、コーディエライト、炭化珪素、シリカ系繊維、Fe−Cr−Al合金及びSUSなどを用いたDPFが知られている。
これらの材料を用いたDPFは、以下のようなメリット及びデメリットがある。即ち、上記コーディエライトハニカムは、捕集効率が高いが、耐熱強度が低く、溶損・破損し易い。上記炭化珪素ハニカムは、捕集効率が高く耐熱強度が高いが、熱膨張により破損し易く高コストである。上記シリカ系繊維巻き付けは、捕集効率が高いが、耐熱強度が低く、高コストであり、捕集面積が小さい。上記コーディエライトフォームは、捕集面積が大きいが、捕集効率が低い、耐熱強度が低い、再生が困難である。上記Fe−Cr−Al金属フォームは、捕集面積が大きいが、捕集効率が低い、耐熱強度が低い、再生が困難ある。上記SUSメッシュは、耐震性に優れるが、捕集効率が低い、再生が困難であり、高コストである。
【0003】
また、粒子状物質(DEP)は、固形炭素粒、炭化水素、水、酸、塩基、アルコール、CO、CO2、NOx、SOx及びその他有機物などから構成され、図1に示すように、10μm〜10nmの範囲に粒径分布をもつ。また、質量分布からわかるように、0.01〜0.1μm、0.1〜1μm、1〜10μmの範囲にそれぞれピークがある。
従って、DEPを除去するには、これら全ての大きさの粒子をいかに効率良く除去するかが重要である。
【0004】
このような背景から、セラミックスハニカム構造体から成る触媒付DPFをセル隔壁の平均孔径の異なる複数種から構成し、平均孔の大きなものから小さなものを直列に配置することが提案されている(例えば特許文献1参照)。
しかし、このDPFでは、圧力損失を少なくするため、細孔の大きさは小さくても10μm程度である。このため、100nm以下の微細粒子についての捕捉は難しい。また、セラミックスを用いるため、耐震性や熱衝撃により破損するなどの問題点があった。更に、捕捉効率を上げるために、フィルタ本体にある程度の大きさが必要であった。
【特許文献1】特開2003−225540号公報
【0005】
また、金属メッシュと多孔質触媒層を組合せたフィルター、具体的には、導電性金属の金属素線で構成された金網と金属粉末の焼結層とから成る多孔質金属複合体で、フィルター機能とヒーター機能の複合機能を備えたDPFが提案されている(例えば特許文献2参照)。
しかし、このDPFは、金網構造のため、網目の孔が非常に大きい。また、金属粉末の焼結層を厚くすれば孔が小さくなるが一方で圧力損失が大きくなってしまう。このため、捕捉効率と低圧力損失の両立が難しいという問題点があった。
【特許文献2】特開2003−97253号公報
【0006】
更に、細孔径の平均値とその標準偏差を制御したセラミックスハニカムDPFが提案されている(例えば特許文献3参照)。このDPFは、平均粒径10μmの多孔質コーディエライトを使用して成り、0.1μm〜1μm程度までの粒子状物質(DEP)が捕捉可能である。
【特許文献3】WO2002/026351
【0007】
一方、本発明者らは、サイズの異なるウィスカーの製造方法を提案している(特願2004−319018号)。即ち、ウィスカーを成長させる原料基体に含まれるマンガン(Mn)の組成を変えて不活性ガス中で熱処理をすると、得られるウィスカーの大きさが変わることを見出した。
ここで、「ウィスカー」とは、細長いヒゲ状結晶を意味し、一般にはプラスティックやセラミックスの強化材として用いられる。また、ウィスカーを形成させた基体は表面積が増加するため、触媒の担持体などに利用できる。
【0008】
そこで、本発明者らは、かかるウィスカーを用いたDPFと、従来公知のDPFとを同一サイズにて比較したところ、前者は極めて優れた特性を示すことを見出した。
即ち、該ウィスカーを用いたDPFは、現在使用頻度が高いハニカムフィルターと比べると、比表面積が大きい、触媒が分散性良く担持できる(触媒使用量を低減できる)、ウィスカーの弾性により衝撃や熱応力に強い、基材を金属にすることができるので熱伝導を高められる、などのメリットがある。また、SiCなどの細線不織フィルターと比べると、ウィスカーが凹凸になるので粒子がより補足し易い、強度を気にせずウィスカーサイズを制御できる、ウィスカーを微細化することでより小さな粒子の除去が可能となる、などのメリットがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような従来技術の有する課題と新たな知見に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、捕捉効率を向上するとともに、圧力損失の低下を抑制した浄化フィルター、その製造方法及び排気ガス浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、所定の元素を含む原料基体上に成長させた微細なウィスカーにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、微細且つ表面積が増大したウィスカーを使用するので、圧力損失が少ないうえに従来品の補足可能限界の1/10以下の粒子まで補足できる。また、従来品と同じ補足効率のフィルターを、小型化、軽量化(低コスト化)することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の浄化フィルターについて詳細に説明する。なお、本特許請求の範囲及び本明細書において、「%」は特記しない限り質量百分率を表すものとする。
【0013】
上述の如く、本発明の浄化フィルターは、原料基体上にウィスカーを形成して成る。また、この原料基体は、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、インジウム(In)、銀(Ag)、ガリウム(Ga)、錫(Sn)、銅(Cu)、スカンジウム(Sc)、ゲルマニウム(Ge)、チタン(Ti)又はシリコン(Si)、及びこれら元素の任意の組み合わせを含む合金とするか、これら元素の少なくとも1種を含むセラミックスとする。
このような元素が原料基体の表面でウィスカーを形成することにより、比表面積の大きい浄化フィルターが得られる。また、ウィスカーは、片方の端部が開放されているため、圧力損失が少ない。更に、篩効果で10μm以下の粒子が捕捉されるとともに、ウィスカーの凹凸による衝突捕捉によっても粒子が捕捉されるため、捕捉効率が向上する。
【0014】
ここで、本発明の浄化フィルターが発揮する衝突捕捉について説明する。
図2(左図)に示すように、細孔による篩効果のみを利用したフィルターは、該細孔の大きさに対応した粒子を捕捉できるに留まるとともに、一旦粒子が捕捉されると細孔が塞がれてしまい圧力損失が増大する。
これに対して、本発明の浄化フィルターは、ウィスカーを用いるので篩効果に加えて、流れてきた粒子がウィスカーに衝突するときに該ウィスカーに引っ掛かることにより捕捉できる効果(衝突捕捉)を有する。即ち、図2(右図)に示すように、実際に細孔径を捕捉粒子のサイズまで小さくしなくても粒子を3次元的に捕捉できるため、従来の1/10以下の粒子まで捕捉でき、上記圧力損失の問題が改善される。
なお、太さ1μmのウィスカーを充填した浄化フィルターが衝突捕捉により捕集できるPM粒子の粒子径と捕集率との関係を図3のグラフに示す。
【0015】
また、本発明の浄化フィルターの使用による圧力損失の低減について説明する。
例えば、図4(左図)に示すように、原料基体として用いる直径10μmの粉粒体上に、太さ2μm、長さ20μmのウィスカー(円錐)を密生させる場合は、直径50μmの球体に対する空間占有率は3%となる。
また、図4(右図)に示すように、原料基体として用いる直径5μmの粉粒体上に、太さ20nm、長さ1μmのウィスカー(円錐)を密生させる場合は、直径7μmの球体に対する空間占有率は47%となる。
このようにウィスカーの間隙に確保される空間により、多孔度の高い浄化フィルターを構成できるので、圧力損失を大幅に低減できる。
【0016】
上記原料基体としては、多孔質体を使用でき、このときは、該多孔質体の平均細孔径が上記ウィスカーの平均径より大きいことが好適である。これより、多孔質の細孔内にウィスカーが形成され易くなり、平均細孔径がより小さくなるので、ウィスカー形成前よりも小さな粒子を捕捉できる。
上記多孔質体としては、例えば、図5に示すような合金メッシュや多孔質金属(発泡金属)などが挙げられ、これらにウィスカーを形成する場合は、細孔径より細かい粒子(1μm程度)まで篩効果を発揮でき、衝突捕捉効果により更に細かい粒子(〜0.01μm)まで除去できる。
【0017】
また、上記原料基体としては、粉粒体を使用することもできる。このときは、それらを担体内に充填して浄化フィルターとすることが好適である。このときは、粉粒体に形成されたウィスカー同士が絡み合い、適度な空隙率が確保された多孔質形状が構成され得る。よって、捕捉効率が向上し低圧力損失となるとともに、高強度(耐震性)で耐熱衝撃性に優れた浄化フィルターが得られる。例えば、粉粒体の表面積の半分に径1μm、長さ10μmのウィスカーを形成した場合は、ウィスカーを設けない場合に比べて表面積が8倍以上となる。また、従来のフィルターと同じ効果を奏するフィルターを小型化・軽量化(低コスト化)できる。
上記粉粒体としては、代表的には、Ni−Mn合金、インコネル(Ni−Cr−Fe系合金)、ステンレス(Fe−Cr−Ni系、Fe−Cr−Al系合金など)等の粉末の他、これら合金をチップ状、円柱状及び短繊維状などにしたものも含む。また、浄化フィルターを製造する際は、図6に示すように、粉粒体のアニール処理(加熱処理)後に担体に充填しても良いし(左図)、粉粒体を多孔質金属等に充填してからアニール処理しても良い(右図)。担体としては、上述の多孔質体やメタル担体などを使用できる。なお、担体内に充填する粉粒体は固定されていても良いし、固定されていなくても良い。
【0018】
次に、本発明の浄化フィルター製造方法について詳細に説明する。
本発明の製造方法では、まず、原料基体である合金又はセラミックスに含まれる元素のうち、ウィスカーを構成する元素の含有量を調整する。次いで、原料基体を反応炉内に設置し、不活性雰囲気中且つ微量酸素の存在下で加熱処理することにより、長さ及び太さが制御されたウィスカーを原料基体の表面に形成できる。
例えば、マンガン粉末含有ニッケル発泡金属を原料基体とする場合には、図7に示すように、同一の熱処理条件下において、Mn粉末の含有比率を10〜80%の範囲で変更すると、平均太さが10nm〜5μm、平均長さが2〜50μmまでの範囲でウィスカーの大きさを任意に設計できる。
このように、本発明では、ウィスカーの大きさを適宜制御することにより、対象物とする粒子の大きさに合ったサイズの浄化フィルターを製造できる。
【0019】
ここで、現時点では、かかるウィスカーが成長する原理は明らかではないが、ウィスカーを構成する元素は蒸気圧が高く、原料基体中では揮発し易いこと、また原料基体中の他の成分と比べて同じ温度においてより蒸気圧が低い酸化物(但し、複数の酸化数を持つ金属の場合、全ての酸化数でこの条件を満たす必要はない)があること、によるものと推察できる。即ち、まず、原料基体の表面周辺にウィスカー構成元素の蒸気又はその酸化物の蒸気が存在する状態が形成される。次いで、原料基体の表面にウィスカーの基点となる核が形成される。更に、この核を先端としてウィスカーが成長する。このとき、原料基体表面の温度と不活性ガスの流量には最適範囲があり、その範囲から大きくても小さくても形成密度が減少すると考えられる。例えば、マンガンとインジウムを含む原料基体の表面が1000℃のときは、マンガンの蒸気圧は約3×10−2Torr(約4Pa)で酸化マンガン(MnO)の蒸気圧が約3×10−7Torr、インジウムの蒸気圧は2×10−2Torrで酸化インジウムの蒸気圧が7×10−8Torrであることが密接に関係すると考えられる。
【0020】
上記原料基体は、合金又はセラミックスを多孔質状、メッシュ状(織布・不織布)及び粉粒状などにして使用できるが、特にフィルター構造に成形した後に、加熱処理することが好適である。このときは、ウィスカー形成基体を担体に充填する場合に比べて、捕捉効率が向上し、また圧力損失の制御も容易になる。
なお、「フィルター構造」とは、原料基体を多孔質体にしたり、担体としての多孔質体(原料基体としての性質は問わない)の細孔内に予め原料基体である粉粒体を担持又は充填させることなどが該当する。
【0021】
また、上記不活性雰囲気としては、例えば、アルゴン、窒素、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン及びラドン、又はこれらを任意に組合わせたガスなどを使用できる。
更に、加熱処理においては、これら不活性ガスとともに、微量の酸素が存在することを要する。これは、原料基体から形成されるウィスカーは、酸化物として成長するからである。但し、当該酸素は、反応炉内に不活性ガスを送入する前の大気に残存する程度(1〜1000ppm程度)で足りる。
更にまた、加熱処理時の焼成温度は、使用する反応炉や試料の大きさ、形状などにも依存する。例えば、反応炉の容積が3Lの場合には、不活性ガスを0.1〜5L/minで供給し、900〜1100℃で30〜1000分間焼成することができる。
【0022】
次に、本発明の排気ガス浄化装置について詳細に説明する。
本発明の排気ガス浄化装置は、上述の浄化フィルターを2層以上用いて構成される。また、排気ガスの流れ方向に対して上流側に、ウィスカーの平均長さ及び太さが大きい浄化フィルターを配設し、下流側に該平均長さ及び太さが小さい浄化フィルターを配設する。
これより、上流側で大きな粒子が捕捉され、下流側で小さな粒子が捕捉されるため、排気ガスを高効率で浄化できる。また、浄化フィルターにおいて、原料基体に対するウィスカーサイズ比率が大きいほど、空隙率が高くなるので、捕捉された粒子の蓄積による圧力損失の低下を防止できる。更に、再生までの寿命が長くなる。
なお、本発明の浄化フィルター1層において、原料基体に含まれるウィスカー構成元素の含有量比を偏らせたことによって、部分的に大きさの異なるウィスカーを有する場合も本排気ガス浄化装置と同様の効果を奏することは言うまでもない。
【0023】
ここで、本発明の排気ガス浄化装置の代表的な製造方法を以下に示す。
図8に示すように、第1例としては、細孔内にウィスカー構成元素を含む多孔質金属板(原料基体)を2枚用い、排気ガス流路の上流側には該ウィスカー構成元素の含有量の多いもの、下流側には該ウィスカー構成元素の含有量の少ないものを配設する。第2例としては、外側(先に排気ガスが接触する部位)にウィスカー構成元素の含有量が多い多孔質金属基板、内側に該含有量が少ない多孔質金属基板をそれぞれ筒型に加工してハウジングする。第3例としては、1枚の多孔質金属基板を筒型にして、その外側にウィスカー構成元素を多く含有させ、内側にウィスカー構成元素を少なく含有させる(粉末担持や金属形成時に組成を制御する)。
これら第1〜3例の基板を不活性ガス中でアニール処理し、その後にそれぞれを排気ガス流路に設置することで、排気ガス浄化装置が得られる。
【0024】
また、図9に示すように、第4例としては、ウィスカー構成元素を含む多孔質金属基板を、交互に目封止したハニカム状に構成する。このとき、排気ガス流路方向に対して下流側を封止した(上流側に開口を有する)排気ガス流路内はウィスカー構成元素の含有量を多くし、上流側を封止した(下流側に開口を有する)排気ガス流路内は該含有量を少なくする。この基板を不活性ガス中でアニール処理し、その後に排気ガス流路に設置することで、排気ガス浄化装置が得られる。
【0025】
更に、図10に示すように、第5例としては、排気ガス流路内に設置する担体内にウィスカー形成粒子を充填する。このとき、排気ガス流れ方向に対して上流側に、大きいウィスカーを備える粒子を充填し、下流側に、小さいウィスカーを備える粒子を配設することができる(左図)。また、上流側及び下流側を交互に目封止したハニカム状担体を用意し、このうち、上流側に開口を有する排気ガス流路内には、大きいウィスカーを備える粒子を充填し、下流側に開口を有する排気ガス流路内には、小さいウィスカーを備える粒子を充填することができる(右図)。
【0026】
また、本発明の排気ガス浄化装置では、上記浄化フィルターを集塵極とし、この近傍に導電材より成る放電電極を配設することが好適である。
このときは、両極間に直流電圧を印加すると、排気ガス粒子が放電電極で電荷を帯び、集塵極に引き寄せられるので、捕捉効率がより向上する。また、直流電圧は、浄化フィルターの大きさなどにより異なるが、例えば1k〜10kV程度に設定できる。
【0027】
更に、本発明の排気ガス浄化装置では、上記ウィスカーの表面に酸化触媒を担持することが好適である。
酸化触媒を担持することで、効率良く再生処理できるので、排気ガス浄化装置を高寿命化できる。また、表面に細かい凹凸があるため、触媒が担持されやすく、担持量が少なくて済む。上記酸化触媒としては、例えば、パラジウム、ロジウム、白金、金、鉄、セリウム、バナジウム、ニッケル、コバルト、タングステンなどが挙げられる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0029】
(実施例1)
平均粒径10μmのNi−Mn合金粉末をディスク型の多孔質金属の容器に充填し(上流側:80%Mn、下流側:50%Mn)、これをArガスフロー中で1000℃/h昇温、1000℃で2h保持の加熱処理を行い、ウィスカーを備える浄化フィルターを得た。
具体的には、図11に示すように、上流側に平均太さが1〜5μm、平均長さが50μmのウィスカー(空隙率は約95%)を形成し、下流側に平均太さが100〜1000nm、平均長さが10μmのウィスカー(空隙率は約50%)を形成した。
【0030】
(比較例1)
実施例1と同一の外観形状(大きさ)の形状になるように、粒径10μmのカオリン、タルク、シリカ、アルミナ粉末を調整して得られる、質量比でSiO2:50%、Al2O3:35%、MgO:15%を含むコージェライト原料粉末を造孔材とともにディスク型に成型し、1400℃で焼成し空隙率50%のセラミックスフィルターを得た。
【0031】
<評価測定>
実施例1及び比較例1で得られたフィルターを排気ガス流路に設置し、ディーゼル排気ガスを1m/sで導入した際の、排気側のガス粒径分布を測定した。この結果を図11に示す。
【0032】
図11より、実施例で得たフィルターは、ウィスカーが形成されていることによる篩(ふるい)機能による粒子の捕捉と、粒子衝突による捕捉効果により、0.01μmの粒子まで高効率に捕捉できることがわかる。
一方、比較例1で得たフィルターは、粒子衝突による捕捉効果は少なく、また細孔径が大きいため、小さくても0.1μm程度までしか捕捉できないことがわかる。
【0033】
以上、本発明を若干の好適実施例により詳細に説明したが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。
例えば、原料基体としてはインコネルなども使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】粒子状物質(DEP)の粒径分布を示すグラフである。
【図2】衝突捕捉の一例を示す概略図である。
【図3】衝突捕捉により捕集できるPM粒子の粒子径と捕集率との関係を示すグラフである。
【図4】ウィスカーの密生度合による空間占有率を示す概略図である。
【図5】多孔質体の一例を示す概略図である。
【図6】粉粒体のアニール処理により形成されたウィスカーの一例を示す概略図である。
【図7】ウィスカー構成元素の含有比率と得られるウィスカーの一例を示す写真である。
【図8】排気ガス浄化装置の一例を示す概略図である。
【図9】排気ガス浄化装置の他の例を示す概略図である。
【図10】排気ガス浄化装置の更に他の例を示す概略図である。
【図11】実施例1で形成したウィスカーを示す写真である。
【図12】DPF通過前のガス粒径分布と、フィルター通過後(実施例及び比較例)の粒径分布図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料基体上にウィスカーを形成して成る浄化フィルターであって、
上記原料基体が、マンガン、アルミニウム、クロム、インジウム、銀、ガリウム、錫、銅、スカンジウム、ゲルマニウム、チタン及びシリコンから成る群より選ばれた少なくとも1種の元素を含む合金又はこれら元素の少なくとも1種を含むセラミックスであることを特徴とする浄化フィルター。
【請求項2】
上記原料基体が多孔質体であり、該多孔質体の平均細孔径が上記ウィスカーの平均径より大きいことを特徴とする請求項1に記載の浄化フィルター。
【請求項3】
上記原料基体が粉粒体であり、それらを担体内に充填して成ることを特徴とする請求項1に記載の浄化フィルター。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の浄化フィルターを製造するに当たり、
原料基体に含まれる少なくとも1種の元素の含有率を調整し、該原料基体を不活性雰囲気中且つ微量酸素の存在下で加熱処理して、形成するウィスカーの長さ及び太さを制御することを特徴とする浄化フィルター製造方法。
【請求項5】
上記原料基体をフィルター構造に成形した後に、加熱処理することを特徴とする請求項4に記載の浄化フィルター製造方法。
【請求項6】
上記原料基体が粉粒体であり、この粉粒体を多孔質体に担持させた後に、加熱処理することを特徴とする請求項4又は5に記載の浄化フィルター製造方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の浄化フィルターを2層以上用いて構成される排気ガス浄化装置であって、
排気ガス流れ方向に対して上流側に、上記原料基体上に形成されたウィスカーの平均長さ及び太さが大きい浄化フィルターを配設し、下流側に該平均長さ及び太さが小さい浄化フィルターを配設して成ることを特徴とする排気ガス浄化装置。
【請求項8】
上記浄化フィルターを集塵極とし、この近傍に導電材より成る放電電極を配設し、両極間に直流電圧を印加することにより排気ガス粒子が集塵極に吸引捕捉されることを特徴とする請求項7に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項9】
上記ウィスカーの表面に酸化触媒を担持して成ることを特徴とする請求項7又は8に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項1】
原料基体上にウィスカーを形成して成る浄化フィルターであって、
上記原料基体が、マンガン、アルミニウム、クロム、インジウム、銀、ガリウム、錫、銅、スカンジウム、ゲルマニウム、チタン及びシリコンから成る群より選ばれた少なくとも1種の元素を含む合金又はこれら元素の少なくとも1種を含むセラミックスであることを特徴とする浄化フィルター。
【請求項2】
上記原料基体が多孔質体であり、該多孔質体の平均細孔径が上記ウィスカーの平均径より大きいことを特徴とする請求項1に記載の浄化フィルター。
【請求項3】
上記原料基体が粉粒体であり、それらを担体内に充填して成ることを特徴とする請求項1に記載の浄化フィルター。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の浄化フィルターを製造するに当たり、
原料基体に含まれる少なくとも1種の元素の含有率を調整し、該原料基体を不活性雰囲気中且つ微量酸素の存在下で加熱処理して、形成するウィスカーの長さ及び太さを制御することを特徴とする浄化フィルター製造方法。
【請求項5】
上記原料基体をフィルター構造に成形した後に、加熱処理することを特徴とする請求項4に記載の浄化フィルター製造方法。
【請求項6】
上記原料基体が粉粒体であり、この粉粒体を多孔質体に担持させた後に、加熱処理することを特徴とする請求項4又は5に記載の浄化フィルター製造方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の浄化フィルターを2層以上用いて構成される排気ガス浄化装置であって、
排気ガス流れ方向に対して上流側に、上記原料基体上に形成されたウィスカーの平均長さ及び太さが大きい浄化フィルターを配設し、下流側に該平均長さ及び太さが小さい浄化フィルターを配設して成ることを特徴とする排気ガス浄化装置。
【請求項8】
上記浄化フィルターを集塵極とし、この近傍に導電材より成る放電電極を配設し、両極間に直流電圧を印加することにより排気ガス粒子が集塵極に吸引捕捉されることを特徴とする請求項7に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項9】
上記ウィスカーの表面に酸化触媒を担持して成ることを特徴とする請求項7又は8に記載の排気ガス浄化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−130463(P2006−130463A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−324675(P2004−324675)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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