浮上式塗布装置
【課題】浮上ステージにおいて分割ステージブロックの境界(繋ぎ目)にできる段差の許容度を大きくして浮上面の高さ位置調整作業を簡便に短時間で行えるようにする。
【解決手段】浮上ステージ10において、左端の搬入用ステージブロックSBAには、専ら噴出口12を多数配設した第1のラフ浮上領域MINが搭載される。真ん中のステージブロックSBBには、搬送方向(X方向)の両端部に専ら噴出口12を多数配設した突き上げ浮上領域MP,MQが局所的に搭載されるとともに、それらの間に噴出口12と吸引口14とを混在して多数配設した精密浮上領域MCTが搭載される。また、右端の搬出用ステージブロックSBCには、専ら噴出口12を多数配設した第2のラフ浮上領域MOUTが搭載される。
【解決手段】浮上ステージ10において、左端の搬入用ステージブロックSBAには、専ら噴出口12を多数配設した第1のラフ浮上領域MINが搭載される。真ん中のステージブロックSBBには、搬送方向(X方向)の両端部に専ら噴出口12を多数配設した突き上げ浮上領域MP,MQが局所的に搭載されるとともに、それらの間に噴出口12と吸引口14とを混在して多数配設した精密浮上領域MCTが搭載される。また、右端の搬出用ステージブロックSBCには、専ら噴出口12を多数配設した第2のラフ浮上領域MOUTが搭載される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板をステージ上で浮上搬送しながら基板上に処理液を塗布する浮上方式の塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ(FPD)の製造プロセスにおけるフォトリソグラフィー工程には、スリット状の吐出口を有する長尺形のレジストノズルを相対的に走査して被処理基板上にレジスト液を塗布するスピンレスの塗布法が多用されている。
【0003】
このようなスピンレス塗布法の一形式として、たとえば特許文献1に開示されるように、FPD用の矩形の被処理基板(たとえばガラス基板)を長めの浮上ステージ上で空中に浮かして水平な一方向(ステージ長手方向)に搬送し、搬送途中の塗布処理位置でステージ上方に設置した長尺形のレジストノズルよりレジスト液を帯状に吐出させることにより、基板上の一端から他端までレジスト液を塗布するようにした浮上方式が知られている。
【0004】
このような浮上方式のレジスト塗布装置に用いられている浮上ステージは、そのステージ上面から垂直上方に高圧の気体(通常はエア)を噴き出し、その高圧エアの圧力によって基板を水平姿勢で浮かすようにしている。そして、浮上ステージの左右両側に配置されている直進運動型の搬送部が、浮上ステージ上で浮いている基板を着脱可能に保持してステージ長手方向に基板を搬送するようになっている。
【0005】
浮上ステージの上面(浮上面)は、搬送方向に沿って搬入領域、塗布領域、搬出領域の3つに区画されている。塗布領域は、ここで基板上にレジスト液が供給される領域であり、長尺形レジストノズルは塗布領域の中心部の上方に配置される。塗布領域における浮上高はレジストノズルの下端(吐出口)と基板上面(被処理面)との間の塗布ギャップ(たとえば200μm)を規定する。この塗布ギャップはレジスト塗布膜の膜厚やレジスト消費量を左右する重要なパラメータであり、高い精度で一定に維持される必要がある。このことから、塗布領域のステージ上面には、高圧のエアを噴き出す噴出口に混在させて負圧で空気を吸い込む吸引口も多数設けられている。そして、基板の塗布領域を通過する部分に対して、噴出口から高圧エアによる垂直上向きの力を加えると同時に、吸引口より負圧吸引力による垂直下向きの力を加えて、相対抗する双方向の力のバランスを制御することにより、所定の浮上高(通常30〜60μm)を大きな浮上剛性で安定に保つようにしている。
【0006】
このように、塗布領域は、噴出口と吸引口とを多数混在させて基板を大きな浮上剛性が得られる精密な小さい浮上高で浮かせる精密浮上領域であり、単位面積当たりのコストは相当高くつく。もっとも、搬送方向における塗布領域のサイズは、レジストノズルの直下付近に上記のような狭い塗布ギャップを安定に形成できるほどの余裕があればよく、通常は基板のサイズよりも小さくてよく、たとえば1/3〜1/10程度でよい。
【0007】
これに対して、搬入領域は基板の搬入と浮上搬送の開始が行われる領域であり、搬出領域は浮上搬送の終了と基板の搬出とが行われる領域である。搬入領域および搬出領域の浮上高は、特に高い精度を必要とせず、浮上剛性は小さくても構わないため、通常200〜2000μmのラフな範囲内に保たれればよい。他方で、搬入領域および搬出領域は、搬送方向において基板を上回るサイズを有している。このことから、搬入領域および搬出領域には、専ら噴出口が一面に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−244155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような浮上方式のレジスト塗布装置は、他のFPD製造装置と同様に、装置メーカの製作工場で組み立てられて、最終試験と装置性能の確認を受ける。その後、レジスト塗布装置は、ハードウェア上の構成要素(ユニット、モジュール、サブアッセンブリ等)に分解される。そして、分解された構成要素が通常複数台のトラックまたはコンテナに分かれて納入先(FPD製造工場)へ運び込まれ、装置稼働場所で再びレジスト塗布装置が組み立てられる。
【0010】
ここで問題になっているのは、納入先で浮上ステージの搬入領域、塗布領域および搬出領域の各浮上面を同じ高さに揃える調整に多大な労力と時間が費やされているということである。
【0011】
すなわち、レジスト塗布装置に用いられる浮上ステージは、その全長が基板の数倍あり、LCD(液晶ディスプレイ)用では5mを優に超えるものもある。このため、近年は、浮上ステージを搬入領域、塗布領域、搬出領域別に分離可能な3つのステージブロックに分割するのが常態となっており、それらのステージブロックをそれぞれ独立した架台に取り付け、1組のステージブロックおよび架台を1つの構成要素(サブアッセンブリ)にして分解・輸送し、納入先の設置場所では3組の架台およびステージブロックを一列に並べて浮上ステージを再び組み立てるようにしている。その際、各サブアッセンブリにおいて架台とステージブロックとの間に設けられているアジャスタを手動操作して、各ステージブロックの高さ位置を揃えるようにしている。
【0012】
ところが、搬入領域および搬出領域の浮上高が200〜2000μmであるのに対して、塗布領域の浮上高は30〜60μmと1桁または2桁小さい。このため、搬入領域および搬出領域をそれぞれ搭載する両端のステージブロックと塗布領域を搭載する中間のステージブロックとの間では、高さ位置の差異または段差を数10μm以下に抑えなければならない。より正確には、後述するように、搬入領域と塗布領域との間では前者(搬入領域)の浮上面が後者(塗布領域)の浮上面よりも高くなる場合の段差が許容度は小さく、その段差が塗布領域の浮上高(30〜60μm)を超えると基板がその段差部分を擦って損傷する可能性がある。また、塗布領域と搬出領域との間では後者(塗布領域)の浮上面が前者(搬入領域)の浮上面よりも高くなる場合の段差が許容度は小さく、その段差が塗布領域の浮上高を超えると基板がその段差部分に当たって損傷する可能性がある。
【0013】
上記のような理由から、従来の浮上式レジスト塗布装置においては、納入先での装置再組み立て作業の中でステージブロックの高さ位置調整だけで丸1日かかることも珍しくはなく、現場関係者に大きな負担・不便をかけていた。
【0014】
さらに、ステージブロックの高さ調整を行って各ステージブロックの高さ位置を揃えても、経時変化や他のメンテナンス等に起因してステージブロックの繋ぎ目に許容値を超える不所望な高さの段差(高低差)が生じることがある。このため、非常に面倒なステージブロック浮上面の高さ位置調整を定期的または随時頻繁に行うほかなかった。
【0015】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するものであり、浮上高に対応した複数のステージブロックに分解可能な浮上ステージにおいてステージブロックの境界(繋ぎ目)にできる段差の許容度を大きくして浮上面の高さ位置調整作業を簡便に行えるようにするとともに、浮上式塗布処理の安全性および信頼性を改善する浮上式塗布装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の観点における浮上式塗布装置は、繋がって配置される物理的に分離可能な第1および第2のステージブロックにラフ浮上領域および精密浮上領域をそれぞれ搭載し、前記精密浮上領域ではその大部分の領域で基板を塗布処理に適した精密な第1の浮上高で空中に浮かし、前記ラフ浮上領域では前記基板を前記第1の浮上高よりも大きくてラフな第2の浮上高で空中に浮かせる浮上ステージと、前記基板を着脱可能に保持して前記ラフ浮上領域および前記精密浮上領域の順に前記浮上ステージの上を搬送する基板搬送部と、前記精密浮上領域内の所定位置で前記第1の浮上高で浮いている前記基板の被処理面に向けて塗布用の処理液を吐出する長尺型のノズルを有する処理液供給部とを有し、前記第2のステージブロックの前記第1のステージブロックと接触または近接する一端部に、前記精密浮上領域と隣接して前記第1の浮上高よりも一段高い第3の浮上高で前記基板を浮かせる突き上げ浮上領域を設ける。
【0017】
上記の構成においては、第1および第2のステージブロックを繋いだときに、ラフ浮上領域側の第1のステージブロックに対して精密浮上領域側の第2のステージブロックが低くなるような望ましくない段差が両者の境界(繋ぎ目)に生じた場合、第1のステージブロックのラフ浮上領域上のラフ浮上高の方が第2のステージブロックの塗布領域上の精密浮上高に屈するように引き下げられるが、塗布領域の上流側隣に位置する突き上げ浮上領域上の突き上げ浮上高が精密浮上高に勝ってそれよりも一段高いので、段差が突き上げ浮上高を超える大きさでなければ基板は第1のステージブロックの後端角部を擦らずにその上を通り抜ける。このように、第2のステージブロックの始端部に、精密浮上高よりも一段高い突き上げ浮上高が得られる突き上げ浮上領域を設ける構成により、第1および第2のステージブロックの間に生じ得る不所望な段差の許容量を従来よりも一段大きくすることができる。
【0018】
本発明の第2の観点における浮上式塗布装置は、繋がって配置される物理的に分離可能な第1および第2のステージブロックに精密浮上領域およびラフ浮上領域をそれぞれ搭載し、前記精密浮上領域ではその大部分の領域で基板を塗布処理に適した精密な第1の浮上高で空中に浮かし、前記ラフ浮上領域では前記基板を前記第1の浮上高よりも大きくてラフな第2の浮上高で空中に浮かせる浮上ステージと、前記基板を着脱可能に保持して前記精密浮上領域および前記ラフ浮上領域の順に前記浮上ステージの上を搬送する基板搬送部と、前記精密浮上領域内の所定位置で前記第1の浮上高で浮いている前記基板の被処理面に向けて塗布用の処理液を吐出する長尺型のノズルを有する処理液供給部とを有し、前記第1のステージブロックの前記第2のステージブロックと接触または近接する一端部に、前記精密浮上領域と隣接して前記第1の浮上高よりも一段高い第3の浮上高で前記基板を浮かせる突き上げ浮上領域を設ける。
【0019】
上記の構成においては、第1および第2のステージブロックを繋いだときに、ラフ浮上領域側の第2のステージブロックに対して精密浮上領域側の第1のステージブロックが低くなるような望ましくない段差が両者の境界(繋ぎ目)に生じた場合、第2のステージブロックのラフ浮上領域上のラフ浮上高の方が第1のステージブロックの塗布領域上の精密浮上高に屈するように引き下げられるが、塗布領域の下流側隣に位置する突き上げ浮上領域上の突き上げ浮上高が精密浮上高に勝ってそれよりも一段高いので、段差が突き上げ浮上高を超える大きさでなければ基板は第2のステージブロックの始端角部に衝突せずにその上を通り抜ける。このように、第1のステージブロックの終端部に、精密浮上高よりも一段高い突き上げ浮上高が得られる突き上げ浮上領域を設ける構成により、第1および第2のステージブロックの間に生じ得る不所望な段差の許容量を従来よりも一段大きくすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の浮上式塗布装置によれば、上記のような構成および作用により、浮上ステージの組み立てまたは再組み立てにおいて、繋ぎ合わされるステージブロックの間で浮上面の高さ位置を揃える高さ位置調整の作業を簡便に短時間で済ますことができる。また、経時変化や他のメンテナンス等でステージブロックの境界(繋ぎ目)に望ましくない段差が生じても、その許容量が大きいので、再調整の頻度または回数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態におけるレジスト塗布装置の浮上ステージ回りの構成を示す側面図である。
【図2】上記浮上ステージにおける各領域の区割りと浮上面の構成を示す平面図である。
【図3】上記浮上ステージを架台と一緒にサブアッセンブリ単位で分解した状態を示す側面図である。
【図4】上記レジスト塗布装置の全体構成を示す斜視図である。
【図5】上記レジスト塗布装置において基板上にレジスト塗布膜が形成される様子を示す図である。
【図6】比較例の浮上ステージにおける各領域の区割りを示す上面図である。
【図7】比較例における搬入用ステージブロックと塗布用ステージブロックとの繋ぎ目付近の浮上高プロファイルを示す図である。
【図8】比較例において搬入用ステージブロックに対して塗布用ステージブロックが高い段差がある場合の浮上搬送を示す図である。
【図9】比較例において搬入用ステージブロックに対して塗布用ステージブロックが低い段差がある場合の浮上搬送(問題点)を示す図である。
【図10】実施形態における搬入用ステージブロックと塗布用ステージブロックとの繋ぎ目付近の浮上高プロファイルを示す図である。
【図11】実施形態において搬入用ステージブロックに対して塗布用ステージブロック低い段差がある場合の浮上搬送(問題の解消)を示す図である。
【図12】比較例において搬出用ステージブロックに対して塗布用ステージブロックが高い段差がある場合の浮上搬送を示す図である。
【図13】比較例において搬出用ステージブロックに対して塗布用ステージブロックが低い段差がある場合の浮上搬送(問題点)を示す図である。
【図14】実施形態における塗布用ステージブロックと搬出用ステージブロックとの繋ぎ目付近の浮上高プロファイルを示す図である。
【図15】実施形態において搬入用ステージブロックに対して塗布用ステージブロックが低い段差がある場合の浮上搬送(問題の解消)を示す図である。
【図16】一変形例による浮上ステージ上の各領域の区割りと浮上面の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
【0023】
図1〜図3に、本発明の一実施形態におけるレジスト塗布装置の浮上ステージ回りの構成を示す。図1は浮上ステージの側面図、図2は浮上ステージの上面図、図3は分離された各組のサブアッセンブリ(ステージブロック/架台)を示す側面図である。
【0024】
このレジスト塗布装置は、たとえばLCD用の矩形のガラス基板Gを被処理基板とし、基板Gの数倍の長さを有する長方体形状の浮上ステージ10を有している。この浮上ステージ10は、搬送方向となるステージ長手方向(X方向)に沿って物理的に分離可能な3つのステージブロックSBA,SBB,SBCに分割されている。浮上ステージ10は、ステージブロックSBA,SBB,SBCの各繋ぎ目(境界)が実質的に隙間の無い接触状態となるように組み立てられる。
【0025】
図2に示すように、搬送方向において最も上流側に配置される左端のステージブロックSBAには、専ら噴出口12を一定の密度または配置パターンで多数配設した搬入領域(第1のラフ浮上領域)MINが搭載されている。真ん中のステージブロックSBBには、搬送方向(X方向)の両端部に専ら噴出口12を一定の密度または配置パターンで多数配設した基板衝突防止領域(突き上げ浮上領域)MP,MQが局所的に搭載されるとともに、それら両端部の局所領域MP,MQの間に噴出口12と吸引口14とを一定の密度または配置パターンで混在して多数配設した塗布領域(精密浮上領域)MCTが搭載されている。また、最も下流側(最後尾)に配置される右端のステージブロックSBCには、専ら噴出口12を一定の密度または配置パターンで多数配設した搬出領域(第2のラフ浮上領域)MOUTが搭載されている。
【0026】
入口側の左端のステージブロックSBAは、独立して移動可能および輸送可能な架台FLAの上に多数の支柱18を介して取り付けられている。各支柱18の下端部には、手動式のアジャスタ(高さ位置調整部)20が設けられている。これらのアジャスタ20を手で操作して、ステージブロックSBAの浮上面の高さ位置および水平度を調整できるようになっている。
【0027】
中間のステージブロックSBBは、独立して移動可能および輸送可能な架台FLBの上に多数の支柱22を介してそれぞれ取り付けられている。各支柱22の下端部には、手動式のアジャスタ24がそれぞれ設けられている。これらのアジャスタ24を手で操作して、ステージブロックSBBの浮上面の高さ位置および水平度をそれぞれ調整できるようになっている。
【0028】
出口側のステージブロックSBCは、独立して移動可能および輸送可能な架台FLCの上に多数の支柱26を介して取り付けられており、各支柱26の下端部には手動式のアジャスタ28が設けられている。これらのアジャスタ28を手で操作して、ステージブロックSBCの浮上面の高さ位置および水平度を調整できるようになっている。
【0029】
搬入領域MINおよび搬出領域MOUTを搭載するステージブロックSBA,SBCの裏面(下面)には、高圧エア導入口30,32がそれぞれ取り付けられている。これらの高圧エア導入口30,32は、高圧エア供給管34を介して高圧エア供給部36に接続される。各ステージブロックSBA,SBCの内部には、高圧エア供給部36より供給される高圧エアを搬入領域MINまたは搬出領域MOUT内の各噴出口12に均一な圧力で分配するためのマニホールドおよびガス通路(図示せず)等が設けられている。
【0030】
塗布領域MCTを搭載するステージブロックSBBの裏面(下面)には、高圧エア導入口38とバキューム導入口40が取り付けられている。高圧エア導入口38は高圧エア供給管34を介して高圧エア供給部36に接続される。バキューム導入口40は、バキューム管42を介してバキューム装置44に接続される。ステージブロックSBBの内部には、高圧エア供給部48より供給される高圧エアを塗布領域MCT内の噴出口12に均一な圧力で分配するためのマニホールドおよびガス通路(図示せず)等と、バキューム装置44より供給される負圧吸引力を塗布領域MCT内の各吸引口14に均一な圧力で分配するためのマニホールドおよびガス通路(図示せず)等が設けられている。
【0031】
架台FLA,FLB,FLCは、たとえばステンレス鋼製のフレームまたは本体46,48,50と脚部52,54,56とをそれぞれ有しており、ステージブロックSBA,SBB,SBCをこの順序で繋ぎ合わせるようにして、床面58に一列に並んで配置される。長尺型のレジストノズル60は、ステージブロックSBBの中心部の真上に配置される。
【0032】
このレジスト塗布装置を製作する装置メーカの工場では、浮上ステージ10を図1に示すような状態に組み立てて、装置の最終試験および性能確認が行われる。この最終試験に先立ち、架台FLA,FLB,FLC上でアジャスタ20,24,28の手動操作によりステージブロックSBA,SBB,SBCの高さ調整がそれぞれ行われる。この実施形態においては、後に詳しく述べるように、塗布用ステージブロックSBBの搬送方向(X方向)の両端部に基板衝突防止領域(突き上げ浮上領域)MP,MQを搭載する構成により、ステージブロックSBA,SBB,SBCの高さ位置調整を従来よりも簡便かつ短時間に済ませられるようになっている。
【0033】
装置最終試験および性能確認が済むと、このレジスト塗布装置は、ハードウェア上の構成要素(ユニット、モジュール、サブアッセンブリ等)に分解される。その場合、浮上ステージ10は、図3に示すように、ステージブロックSBAと架台FLAとが第1組のサブアッセンブリJA,ステージブロックSBBと架台FLBとが第2組のサブアッセンブリJB,ステージブロックSBCと架台FLCとが第3組のサブアッセンブリJCとなって分解される。
【0034】
これら3つのサブアッセンブリJA,JB,JCは通常複数台のトラックまたはコンテナに分かれて納入先(LCD製造工場)まで輸送される。そして、納入先の装置稼働場所の床上にこれら3つのサブアッセンブリJA,JB,JCが一列に並べられて、浮上ステージ10が再び組み立てられる。
【0035】
この浮上ステージ10の再組み立て作業においても、上記と同じ理由により、ステージブロックSBA,SBB,SBCの高さ調整を簡便かつ短時間で行うことができる。このことによって、本レジスト塗布装置を速やかにスタートアップさせることができる。
【0036】
次に、図4および図5につき、この実施形態におけるレジスト塗布装置の全体構成と作用を説明する。
【0037】
図4に示すように、浮上ステージ10の左右両側には直進運動型の第1(左側)および第2(右側)の搬送部64L,64Rが配置されている。これらの搬送部64L,64Rは、各々単独で、あるいは両者協働して、ステージ10上で浮いている基板Gを着脱可能に保持してステージ長手方向(X方向)に基板Gを搬送するようになっている。浮上ステージ100上で基板Gは、その一対の辺が搬送方向(X方向)と平行で、他の一対の辺が搬送方向と直交するような水平姿勢をとって、浮上搬送される。
【0038】
第1(左側)および第2(右側)の搬送部64L,64Rは、浮上ステージ10の左右両側に平行に配置された第1および第2のガイドレール66L,66Rと、これらのガイドレール66L,66R上で搬送方向(X方向)に移動可能に取り付けられた第1および第2のスライダ68L,68Rと、両ガイドレール166L,66R上で両スライダ68L,68Lを同時または個別に直進移動させる第1および第2の搬送駆動部(図示せず)と、基板Gを着脱可能に保持するために両スライダ68L,68Rに搭載されている第1および第2の保持部70L,70Rとをそれぞれ有している。各搬送駆動部は、直進型の駆動機構たとえばリニアモータによって構成されている。
【0039】
第1(左側)の保持部70Lは、基板Gの左側二隅の裏面(下面)にそれぞれ真空吸着力で結合する複数個の吸着パッド72Lと、各吸着パッド72Lを搬送方向(X方向)に一定の間隔を置いた複数箇所で鉛直方向の変位を規制して支持する複数個のパッド支持部74Lと、これら複数個のパッド支持部74Lをそれぞれ独立に昇降移動または昇降変位させる複数個のパッドアクチエータ76Lとを有している。
【0040】
第2(右側)の保持部70Rは、基板Gの左側二隅の裏面(下面)にそれぞれ真空吸着力で結合する複数個の吸着パッド72Rと、各吸着パッド72Rを搬送方向(X方向)に一定の間隔を置いた複数箇所で鉛直方向の変位を規制して支持する複数個のパッド支持部74Rと、これら複数個のパッド支持部74Rをそれぞれ独立に昇降移動または昇降変位させる複数個のパッドアクチエータ76Rとを有している。
【0041】
左右両側の各吸着パッド72L,72Rは、図示省略するが、たとえばステンレス鋼(SUS)からなる直方体形状のパッド本体の上面に複数個の吸引口を設けている。それらの吸引口はパッド本体内のバキューム通路および外部のバキューム管を介してパッド吸着制御部の真空源(図示せず)にそれぞれ通じている。
【0042】
浮上ステージ10において、このレジスト塗布装置でレジスト塗布処理を受けるべき新規の被処理基板Gは、たとえば搬送方向上流側に設置されているソーターユニット(図示せず)から平流しで搬入領域MINに搬入される。
【0043】
搬入領域MINは、基板Gの浮上搬送が開始される領域でもあり、この領域内には上述したように基板Gを比較的大きくてラフな浮上高Hβ(標準値:200〜2000μm)で浮かせるために高圧エアを噴き出す噴出口12が一定の密度または配置パターンで多数設けられている。なお、搬入領域MINには、基板Gをステージ10上で位置合わせするためのアライメント機構(図示せず)が設けられることもある。
【0044】
浮上ステージ10の長手方向中心部に設定された塗布領域MCTはレジスト液供給領域であり、基板Gはこの塗布領域MCTを通過する際に上方のレジストノズル60からレジスト液Rの供給を受ける。上述したように、塗布領域MCT内には、基板Gを浮上剛性の大きな精密浮上高Hα(標準値:30〜60μm)で安定に浮かせるために、高圧エアを噴き出す噴出口12と負圧で空気を吸い込む吸引口14とを一定の密度または配置パターンで混在させて設けている。
【0045】
塗布領域MCTの下流側に位置する浮上ステージ10の他端の搬出領域MOUTは、基板Gの浮上搬送が終了する領域である。塗布領域MCTで塗布処理を受けた基板Gは、搬出領域MOUTからたとえば平流しで下流側隣りのソーターユニット(図示せず)を経由して減圧乾燥ユニット(図示せず)へ移送される。この搬出領域MOURには、基板Gを比較的大きくてラフな浮上高Hβ(標準値:200〜2000μm)で浮かせるための噴出口12が一定の密度または配置パターンで多数設けられている。
【0046】
レジストノズル60は、その長手方向(Y方向)で浮上ステージ10上の基板Gを一端から他端までカバーできるスリット状の吐出口60aを有し、門形または逆さコ字形のフレーム(図示せず)に取り付けられ、たとえばボールネジ機構を有するノズル昇降部(図示せず)の駆動で昇降移動可能であり、レジスト液供給部(図示せず)からのレジスト液供給管62に接続されている。
【0047】
このレジスト塗布装置におけるレジスト塗布処理では、基板Gが浮上搬送によって浮上ステージ10の上を搬入領域MIN、塗布領域MCTおよび搬入領域MINの順に浮上高を変えながら移動する。その際、図5に示すように、基板Gが塗布領域MCTを精密浮上高Hαで通過する間に上方のレジストノズル60より帯状に供給されるレジスト液Rが基板G上で均一に塗布され、基板Gの前端から後端に向かってレジスト液Rの塗布膜RMが一定の膜厚で形成される。
【0048】
次に、この実施形態における特有の作用、つまりステージブロックSBBの搬送方向(X方向)の両端部に塗布領域MCTと隣接して基板衝突防止領域(突き上げ浮上領域)MP,MQを搭載する構成に基づく作用を説明する。
【0049】
先ず、従来技術に相当する比較例として、図6に示すように、塗布領域MCTだけを搭載し、基板衝突防止領域(突き上げ浮上領域)MP,MQを搭載しない構成(ステージブロックSBB'とする)の作用とその問題点を説明する。
【0050】
この場合、搬送方向(X方向)において、搬入用ステージブロックSBAの下流側でも搬入領域MINがそのまま続くと仮定すると、図7の(a)に示すように、基板Gはラフ浮上高Hβの標準値を保ったままステージブロックSBAを後にする。一方、塗布用ステージブロックSBB'の上流側でも塗布領域MCTが延在していると仮定すると、図7の(b)に示すように、基板Gは既に精密浮上高Hαの標準値を保った状態でステージブロックSBB'の上に進入してくる。
【0051】
そこで、ステージブロックSBAとステージブロックSBB'とを繋ぐと、搬送方向(X方向)における基板Gの浮上高のプロファイルは図7の(c)に示すようになる。すなわち、ステージブロックSBAの搬入領域MINでは、基板Gを噴出口12からの高圧エアにより浮かすだけでよく、ラフ浮上高Hβはサイズ的には大きくても浮上剛性は非常に小さい。これに対して、ステージブロックSBB'の塗布領域(精密浮上領域)MCTでは、噴出口12からの高圧エアによる垂直上向きの力と吸引口14からの負圧吸引力による垂直下向きの力とを相対抗させ、そのバランスを制御して小さな精密浮上高Hαを安定に保つようにしており、浮上剛性が非常に大きい。このため、搬入用ステージブロックSBA上のラフ浮上高Hβは、その標準値の大きさに関係なく塗布用ステージブロックSBB'上の精密浮上高Hαに屈するようにして、両ステージブロックSBA,SBB'の境界(繋ぎ目)よりも上流側の位置で精密浮上高Hαと同じ高さまで引き下げられる。こうして、両ステージブロックSBA,SBB'の境界(繋ぎ目)付近の浮上高HPは精密浮上高Hαに左右され、通常はHP=Hαとなる。
【0052】
ここで、両ステージブロックSBA,SBB'の境界(繋ぎ目)に段差または高低差δHがある場合を考える。この段差δHには、搬入用ステージブロックSBAの浮上面に対して塗布用ステージブロックSBB'の浮上面が高くなる場合(SBA<SBB')と低くなる場合(SBA>SBB')の二通りがある。
【0053】
SBA<SBB'となる段差δHが生じた場合は、上記のように搬入用ステージブロックSBA上のラフ浮上高Hβの方が塗布用ステージブロックSBB'上の精密浮上高Hαに屈するように引き下げられても、図8に示すように、基板Gは両ステージブロックSBA,SBB'のいずれとも当たったり擦ったりすることはなく、段差δHが極端に大きくなければ(たとえば1000μm以上でなければ)両ブロックSBA,SBB'を通じて浮上搬送に何の支障も生じない。
【0054】
しかし、SBA>SBB'となる段差δHが生じた場合は、搬入用ステージブロックSBA上のラフ浮上高Hβが塗布用ステージブロックSBB'上の精密浮上高Hαに屈するように引き下げられることにより、段差δHが精密浮上高Hα(30〜60μm)を超えるときは、図9に示すように、基板Gは搬入用ステージブロックSBAの後端の角部KPを擦る。そうなると、基板Gが損傷し、破損したり割れることもある。この場合、基板Gの前端は角部KPを擦らずにその上を通過するが、基板Gの塗布領域(精密浮上領域)MCTの中へ進むにしたがって、基板Gの前端部が精密浮上高Hαに向かってG(1)→G(2)→G(3)→G(4)と徐々に下がり、その過程で基板Gの裏面が搬入用ステージブロックSBAの後端角部KPに摺接する。
【0055】
これに対して、この実施形態においては、塗布用ステージブロックSBBの始端部に基板衝突防止領域(突き上げ浮上領域)MPが設けられる。この領域MPは、図10に示すように、その下流側隣りに浮上剛性の非常に大きな塗布領域(精密浮上領域)MCTが在るにも拘わらず、精密浮上高Hα(30〜60μm)に抗してそれより一段高い(たとえば120μm程度の)第3の浮上高つまり突き上げ浮上高HPが得られるようにしている。そのために、この領域MPにおいては、専ら噴出口12のみを配置するレイアウト(図2)が採られ、さらには相当強めの噴出圧力、つまり塗布領域MCT上の噴出圧力よりも高く、かつ搬入用ステージブロックSBA上の噴出圧力よりも高い噴出圧力が設定されている。
【0056】
この実施形態において、搬入用ステージブロックSBAと塗布用ステージブロックSBBとを繋いだときに、両ステージブロックSBA,SBBの境界(繋ぎ目)にSBA>SBBとなる段差δHが生じたとする。この場合、搬入用ステージブロックSBA上のラフ浮上高Hβの方が塗布用ステージブロックSBBの塗布領域MCT上の精密浮上高Hαに屈するように引き下げられるが、図11に示すように、塗布領域MCTより手前の基板衝突防止領域(突き上げ浮上領域)MP上の突き上げ浮上高HPが精密浮上高Hαに勝ってそれよりも一段高いので、段差δHが突き上げ浮上高HPを超える大きさでなければ基板Gは搬入用ステージブロックSBAの後端角部KPを擦らずにその上を通り抜ける。
【0057】
なお、両ステージブロックSBA,SBBの境界(繋ぎ目)にSBA<SBBとなる段差δHが生じた場合は、基本的には図8に似通ったプロファイルになり、基板Gは両ステージブロックSBA,SBBのいずれとも当たったり擦ったりすることはなく、段差δHが極端に大きくなければ(たとえば1000μm以上でなければ)両ステージブロックSBA,SBB上の浮上搬送には何の支障も生じない。
【0058】
このように、この実施形態によれば、塗布用ステージブロックSBBの始端部に、精密浮上高Hαよりも一段(たとえば2倍程度)高い突き上げ浮上高HPが得られる基板衝突防止領域(突き上げ浮上領域)MPを設ける構成により、搬入用ステージブロックSBAと塗布用ステージブロックSBBとの間に生じ得る段差δHの許容量を従来よりも一段(たとえば約2倍)大きくすることができる。これによって、浮上ステージ10の組み立てまたは再組み立てにおいて、搬入用ステージブロックSBAと塗布用ステージブロックSBBとの間で浮上面の高さ位置を揃える高さ位置調整の作業を簡便に短時間で済ますことができる。また、経時変化や他のメンテナンス等で両ステージブロックSBA,SBBの間にSBA>SBBとなる望ましくない段差δHが生じても、δHの許容量が大きいので、再調整の頻度または回数を減らすことができる。
【0059】
さらに、この実施形態では、塗布用ステージブロックSBBと搬出用ステージブロックSBCとの間でも従来技術の問題点を解消できる。すなわち、従来技術に相当する比較例においては、塗布用ステージブロックSBB'と搬出用ステージブロックSBCとの間で、搬出用ステージブロックSBC上の浮上剛性の小さいラフ浮上高Hβがその標準値の大きさに関係なく塗布用ステージブロックSBB'上の浮上剛性の大きい精密浮上高Hαに屈する形で、両ステージブロックSBB', SBCの境界(繋ぎ目)よりも下流側の位置で精密浮上高Hαと同じ高さまで引き下げられる。これによって、両ブロックSBB', SBCの境界(繋ぎ目)付近の浮上高HQは精密浮上高Hαに左右され、通常はHQ=Hαとなる。
【0060】
両ステージブロックSBB', SBCを繋いだときに、SBB'> SBCとなる段差δHが生じた場合は、搬出用ステージブロックSBC上のラフ浮上高Hβの方が塗布用ステージブロックSBB'上の精密浮上高Hαに屈するように引き下げられても、図12に示すように、基板Gは両ステージブロックSBB',SBCのいずれとも当たったり擦ったりすることはなく、段差δHが極端に大きくなければ(たとえば1000μm以上でなければ)両ブロックSBB' ,SBCを通じて浮上搬送に何の支障も生じない。
【0061】
しかし、SBB' <SBCとなる段差δHが生じた場合は、搬出用ステージブロックSBC上の浮上高が塗布用ステージブロックSBB'の精密浮上高Hαに屈するように引き下げられることにより、段差δHが精密浮上高Hα(30〜60μm)を超えるときは、図13に示すように、基板Gは搬出用ステージブロックSBCの始端の角部KQに衝突する。そうなると、基板Gが損傷し、割れたりすることがある。この場合、基板Gの前端部分は角部KQの上方を通過した後にラフ浮上高Hβに向かってG(1)→G(2)→G(3)→G(4)と徐々に浮上高を上げていくが、その上がる前に基板Gの前端が搬出用ステージブロックSBCの始端角部KQに正面衝突する。
【0062】
これに対して、この実施形態においては、塗布用ステージブロックSBBの終端部に基板衝突防止領域(突き上げ浮上領域)MQが設けられている。この領域MQは、図14に示すように、その上流側隣りに浮上剛性の非常に大きな塗布領域(精密浮上領域)MCTが在るにも拘わらず、精密浮上高Hα(30〜60μm)に抗してそれより一段高い(たとえば120μm程度の)第3の浮上高つまり突き上げ浮上高HQが得られるようにしている。そのために、この領域MQにおいては、専ら噴出口12のみを配置するレイアウト(図2)が採られ、さらには相当強めの噴出圧力、つまり塗布領域MCT上の噴出圧力よりも高く、かつ搬出用ステージブロックSBC上の噴出圧力よりも高い噴出圧力が設定されている。
【0063】
この実施形態において、塗布用ステージブロックSBBと搬出用ステージブロックSBCとを繋いだときに、両ステージブロックSBB,SBCの境界(繋ぎ目)にSBB<SBCとなる段差δHが生じたとする。この場合、搬出用ステージブロックSBC上のラフ浮上高Hβが塗布用ステージブロックSBBの塗布領域MCT上の精密浮上高Hαに屈するように引き下げられるが、図15に示すように、塗布領域MCTに下流側に隣接する基板衝突防止領域(突き上げ浮上領域)MQ上の突き上げ浮上高HQが精密浮上高Hαに勝ってそれよりも一段高いので、段差δHが突き上げ浮上高HQを超える大きさでなければ基板Gは搬出用ステージブロックSBCの始端角部KQに衝突せずにその上を通り抜ける。
【0064】
なお、両ステージブロックSBB,SBCの境界(繋ぎ目)にSBB>SBCとなる段差δHが生じた場合は、基本的には図12に似通ったプロファイルになり、基板Gは両ステージブロックSBB,SBCのいずれとも当たったり擦ったりすることはなく、段差δHが極端に大きくなければ(たとえば1000μm以上でなければ)両ステージブロックSBB,SBC上の浮上搬送には何の支障も生じない。
【0065】
このように、この実施形態によれば、塗布用ステージブロックSBBの終端部に、精密浮上高Hαよりも一段(たとえば2倍程度)高い突き上げ浮上高HQが得られる基板衝突防止領域(突き上げ浮上領域)MQを設ける構成により、塗布用ステージブロックSBBと搬出用ステージブロックSBCとの間に生じ得る段差δHの許容量を従来よりも一段(たとえば約2倍)大きくすることができる。これによって、浮上ステージ10の組み立てまたは再組み立てにおいて、塗布用ステージブロックSBBと搬出用ステージブロックSBCとの間で浮上面の高さ位置を揃える高さ位置調整の作業を簡便に短時間で済ますことができる。また、経時変化や他のメンテナンス等で両ステージブロックSBB,SBCの間にSBB<SBCとなる望ましくない段差δHが生じても、δHの許容量が大きいので、再調整の頻度または回数を減らすことができる。
[他の実施形態または変形例]
【0066】
以上、本発明の好適な一実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種種の変形が可能である。
【0067】
たとえば、基板衝突防止領域(突き上げ浮上領域)MP,MQにおける浮上面の構成に関して、図2に示す構成例では各領域MP,MQに噴出口12を1列配置しているが、噴出口12を複数列配置してもよい。
【0068】
あるいは、図16に示すように、各領域MP,MQ内に噴出口12と吸引口14とを混在させて、噴出圧力と吸引圧力とのバランスを制御して所望の突き上げ浮上高HP,HQを実現することも可能である。この場合、各領域MP,MQにおける高圧ガスの消費量は増えることになるが、突き上げ浮上高HP,HQの浮上剛性ないし安定度を高めることができる。加えて、従来の塗布領域MCTに含まれていた噴出口12および吸引口14のハードウェアをそのまま基板衝突防止領域(突き上げ浮上領域)MP,MQに使用することもできる。
【0069】
また、上記実施形態では、浮上ステージ10を搬入領域MIN、塗布領域MCT、搬出領域MOUT毎に物理的に分離可能な3つのステージブロックSBA,SBB,SBCに分割した。しかし、浮上ステージ10を物理的に分離可能な2つのステージブロックSBA,SBDに分割し、前段のステージブロックSBAに搬入領域MINを搭載し、後段のステージブロックSBDに塗布領域MCTおよび搬出領域MOUTを一体的に搭載する構成も可能である。この場合は、塗布領域MCTの上流側隣りに基板衝突防止領域(突き上げ浮上領域)MPを設けるだけでよく、下流側隣りの基板衝突防止領域(突き上げ浮上領域)MQが不要になる。
【0070】
あるいは、浮上ステージ10を物理的に分離可能な2つのステージブロックSBE,SBCに分割して、前段のステージブロックSBEに搬入領域MINおよび塗布領域MCTを一体的に搭載し、後段のステージブロックSBCに搬出領域MOUTを搭載する構成も可能である。この場合は、塗布領域MCTの下流側隣りに基板衝突防止領域(突き上げ浮上領域)MQを設けるだけでよく、上流隣りの基板衝突防止領域(突き上げ浮上領域)MPが不要になる。
【0071】
上述した実施形態における第1の浮上高(精密浮上高)Hα、第2の浮上高(ラフ浮上高)Hβ、第3の浮上高(突き上げ浮上高)HP,HQの各値は一例であり、塗布処理の仕様等に応じて種種の値を採ることができる。
また、塗布品質に影響しない(たとえば塗布ムラを起こさない)限りで、搬入用ステージブロックSBAの後端角部KPおよび/または搬出用ステージブロックSBCの始端角部KQを面取り加工してもよい。
【0072】
上記した実施形態はLCD製造用のレジスト塗布装置に係るものであったが、本発明は被処理基板上に処理液を塗布する任意の塗布装置に適用可能である。したがって、本発明における処理液としては、レジスト液以外にも、たとえば層間絶縁材料、誘電体材料、配線材料等の塗布液も可能であり、現像液やリンス液等も可能である。本発明における被処理基板はLCD基板に限らず、他のフラットパネルディスプレイ用基板、半導体ウエハ、CD基板、ガラス基板、フォトマスク、プリント基板等も可能である。
【符号の説明】
【0073】
10 浮上ステージ
12 噴出口
14 吸引口
60 長尺型レジストノズル
64L,64R 搬送部
SBA 搬入用ステージブロック
SBB 塗布用ステージブロック
SBC 搬出用ステージブロック
MIN 搬入領域
MCT 塗布領域
MOUT 搬出領域
MP,MQ 基板衝突防止領域(突き上げ浮上領域)
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板をステージ上で浮上搬送しながら基板上に処理液を塗布する浮上方式の塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ(FPD)の製造プロセスにおけるフォトリソグラフィー工程には、スリット状の吐出口を有する長尺形のレジストノズルを相対的に走査して被処理基板上にレジスト液を塗布するスピンレスの塗布法が多用されている。
【0003】
このようなスピンレス塗布法の一形式として、たとえば特許文献1に開示されるように、FPD用の矩形の被処理基板(たとえばガラス基板)を長めの浮上ステージ上で空中に浮かして水平な一方向(ステージ長手方向)に搬送し、搬送途中の塗布処理位置でステージ上方に設置した長尺形のレジストノズルよりレジスト液を帯状に吐出させることにより、基板上の一端から他端までレジスト液を塗布するようにした浮上方式が知られている。
【0004】
このような浮上方式のレジスト塗布装置に用いられている浮上ステージは、そのステージ上面から垂直上方に高圧の気体(通常はエア)を噴き出し、その高圧エアの圧力によって基板を水平姿勢で浮かすようにしている。そして、浮上ステージの左右両側に配置されている直進運動型の搬送部が、浮上ステージ上で浮いている基板を着脱可能に保持してステージ長手方向に基板を搬送するようになっている。
【0005】
浮上ステージの上面(浮上面)は、搬送方向に沿って搬入領域、塗布領域、搬出領域の3つに区画されている。塗布領域は、ここで基板上にレジスト液が供給される領域であり、長尺形レジストノズルは塗布領域の中心部の上方に配置される。塗布領域における浮上高はレジストノズルの下端(吐出口)と基板上面(被処理面)との間の塗布ギャップ(たとえば200μm)を規定する。この塗布ギャップはレジスト塗布膜の膜厚やレジスト消費量を左右する重要なパラメータであり、高い精度で一定に維持される必要がある。このことから、塗布領域のステージ上面には、高圧のエアを噴き出す噴出口に混在させて負圧で空気を吸い込む吸引口も多数設けられている。そして、基板の塗布領域を通過する部分に対して、噴出口から高圧エアによる垂直上向きの力を加えると同時に、吸引口より負圧吸引力による垂直下向きの力を加えて、相対抗する双方向の力のバランスを制御することにより、所定の浮上高(通常30〜60μm)を大きな浮上剛性で安定に保つようにしている。
【0006】
このように、塗布領域は、噴出口と吸引口とを多数混在させて基板を大きな浮上剛性が得られる精密な小さい浮上高で浮かせる精密浮上領域であり、単位面積当たりのコストは相当高くつく。もっとも、搬送方向における塗布領域のサイズは、レジストノズルの直下付近に上記のような狭い塗布ギャップを安定に形成できるほどの余裕があればよく、通常は基板のサイズよりも小さくてよく、たとえば1/3〜1/10程度でよい。
【0007】
これに対して、搬入領域は基板の搬入と浮上搬送の開始が行われる領域であり、搬出領域は浮上搬送の終了と基板の搬出とが行われる領域である。搬入領域および搬出領域の浮上高は、特に高い精度を必要とせず、浮上剛性は小さくても構わないため、通常200〜2000μmのラフな範囲内に保たれればよい。他方で、搬入領域および搬出領域は、搬送方向において基板を上回るサイズを有している。このことから、搬入領域および搬出領域には、専ら噴出口が一面に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−244155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような浮上方式のレジスト塗布装置は、他のFPD製造装置と同様に、装置メーカの製作工場で組み立てられて、最終試験と装置性能の確認を受ける。その後、レジスト塗布装置は、ハードウェア上の構成要素(ユニット、モジュール、サブアッセンブリ等)に分解される。そして、分解された構成要素が通常複数台のトラックまたはコンテナに分かれて納入先(FPD製造工場)へ運び込まれ、装置稼働場所で再びレジスト塗布装置が組み立てられる。
【0010】
ここで問題になっているのは、納入先で浮上ステージの搬入領域、塗布領域および搬出領域の各浮上面を同じ高さに揃える調整に多大な労力と時間が費やされているということである。
【0011】
すなわち、レジスト塗布装置に用いられる浮上ステージは、その全長が基板の数倍あり、LCD(液晶ディスプレイ)用では5mを優に超えるものもある。このため、近年は、浮上ステージを搬入領域、塗布領域、搬出領域別に分離可能な3つのステージブロックに分割するのが常態となっており、それらのステージブロックをそれぞれ独立した架台に取り付け、1組のステージブロックおよび架台を1つの構成要素(サブアッセンブリ)にして分解・輸送し、納入先の設置場所では3組の架台およびステージブロックを一列に並べて浮上ステージを再び組み立てるようにしている。その際、各サブアッセンブリにおいて架台とステージブロックとの間に設けられているアジャスタを手動操作して、各ステージブロックの高さ位置を揃えるようにしている。
【0012】
ところが、搬入領域および搬出領域の浮上高が200〜2000μmであるのに対して、塗布領域の浮上高は30〜60μmと1桁または2桁小さい。このため、搬入領域および搬出領域をそれぞれ搭載する両端のステージブロックと塗布領域を搭載する中間のステージブロックとの間では、高さ位置の差異または段差を数10μm以下に抑えなければならない。より正確には、後述するように、搬入領域と塗布領域との間では前者(搬入領域)の浮上面が後者(塗布領域)の浮上面よりも高くなる場合の段差が許容度は小さく、その段差が塗布領域の浮上高(30〜60μm)を超えると基板がその段差部分を擦って損傷する可能性がある。また、塗布領域と搬出領域との間では後者(塗布領域)の浮上面が前者(搬入領域)の浮上面よりも高くなる場合の段差が許容度は小さく、その段差が塗布領域の浮上高を超えると基板がその段差部分に当たって損傷する可能性がある。
【0013】
上記のような理由から、従来の浮上式レジスト塗布装置においては、納入先での装置再組み立て作業の中でステージブロックの高さ位置調整だけで丸1日かかることも珍しくはなく、現場関係者に大きな負担・不便をかけていた。
【0014】
さらに、ステージブロックの高さ調整を行って各ステージブロックの高さ位置を揃えても、経時変化や他のメンテナンス等に起因してステージブロックの繋ぎ目に許容値を超える不所望な高さの段差(高低差)が生じることがある。このため、非常に面倒なステージブロック浮上面の高さ位置調整を定期的または随時頻繁に行うほかなかった。
【0015】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するものであり、浮上高に対応した複数のステージブロックに分解可能な浮上ステージにおいてステージブロックの境界(繋ぎ目)にできる段差の許容度を大きくして浮上面の高さ位置調整作業を簡便に行えるようにするとともに、浮上式塗布処理の安全性および信頼性を改善する浮上式塗布装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の観点における浮上式塗布装置は、繋がって配置される物理的に分離可能な第1および第2のステージブロックにラフ浮上領域および精密浮上領域をそれぞれ搭載し、前記精密浮上領域ではその大部分の領域で基板を塗布処理に適した精密な第1の浮上高で空中に浮かし、前記ラフ浮上領域では前記基板を前記第1の浮上高よりも大きくてラフな第2の浮上高で空中に浮かせる浮上ステージと、前記基板を着脱可能に保持して前記ラフ浮上領域および前記精密浮上領域の順に前記浮上ステージの上を搬送する基板搬送部と、前記精密浮上領域内の所定位置で前記第1の浮上高で浮いている前記基板の被処理面に向けて塗布用の処理液を吐出する長尺型のノズルを有する処理液供給部とを有し、前記第2のステージブロックの前記第1のステージブロックと接触または近接する一端部に、前記精密浮上領域と隣接して前記第1の浮上高よりも一段高い第3の浮上高で前記基板を浮かせる突き上げ浮上領域を設ける。
【0017】
上記の構成においては、第1および第2のステージブロックを繋いだときに、ラフ浮上領域側の第1のステージブロックに対して精密浮上領域側の第2のステージブロックが低くなるような望ましくない段差が両者の境界(繋ぎ目)に生じた場合、第1のステージブロックのラフ浮上領域上のラフ浮上高の方が第2のステージブロックの塗布領域上の精密浮上高に屈するように引き下げられるが、塗布領域の上流側隣に位置する突き上げ浮上領域上の突き上げ浮上高が精密浮上高に勝ってそれよりも一段高いので、段差が突き上げ浮上高を超える大きさでなければ基板は第1のステージブロックの後端角部を擦らずにその上を通り抜ける。このように、第2のステージブロックの始端部に、精密浮上高よりも一段高い突き上げ浮上高が得られる突き上げ浮上領域を設ける構成により、第1および第2のステージブロックの間に生じ得る不所望な段差の許容量を従来よりも一段大きくすることができる。
【0018】
本発明の第2の観点における浮上式塗布装置は、繋がって配置される物理的に分離可能な第1および第2のステージブロックに精密浮上領域およびラフ浮上領域をそれぞれ搭載し、前記精密浮上領域ではその大部分の領域で基板を塗布処理に適した精密な第1の浮上高で空中に浮かし、前記ラフ浮上領域では前記基板を前記第1の浮上高よりも大きくてラフな第2の浮上高で空中に浮かせる浮上ステージと、前記基板を着脱可能に保持して前記精密浮上領域および前記ラフ浮上領域の順に前記浮上ステージの上を搬送する基板搬送部と、前記精密浮上領域内の所定位置で前記第1の浮上高で浮いている前記基板の被処理面に向けて塗布用の処理液を吐出する長尺型のノズルを有する処理液供給部とを有し、前記第1のステージブロックの前記第2のステージブロックと接触または近接する一端部に、前記精密浮上領域と隣接して前記第1の浮上高よりも一段高い第3の浮上高で前記基板を浮かせる突き上げ浮上領域を設ける。
【0019】
上記の構成においては、第1および第2のステージブロックを繋いだときに、ラフ浮上領域側の第2のステージブロックに対して精密浮上領域側の第1のステージブロックが低くなるような望ましくない段差が両者の境界(繋ぎ目)に生じた場合、第2のステージブロックのラフ浮上領域上のラフ浮上高の方が第1のステージブロックの塗布領域上の精密浮上高に屈するように引き下げられるが、塗布領域の下流側隣に位置する突き上げ浮上領域上の突き上げ浮上高が精密浮上高に勝ってそれよりも一段高いので、段差が突き上げ浮上高を超える大きさでなければ基板は第2のステージブロックの始端角部に衝突せずにその上を通り抜ける。このように、第1のステージブロックの終端部に、精密浮上高よりも一段高い突き上げ浮上高が得られる突き上げ浮上領域を設ける構成により、第1および第2のステージブロックの間に生じ得る不所望な段差の許容量を従来よりも一段大きくすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の浮上式塗布装置によれば、上記のような構成および作用により、浮上ステージの組み立てまたは再組み立てにおいて、繋ぎ合わされるステージブロックの間で浮上面の高さ位置を揃える高さ位置調整の作業を簡便に短時間で済ますことができる。また、経時変化や他のメンテナンス等でステージブロックの境界(繋ぎ目)に望ましくない段差が生じても、その許容量が大きいので、再調整の頻度または回数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態におけるレジスト塗布装置の浮上ステージ回りの構成を示す側面図である。
【図2】上記浮上ステージにおける各領域の区割りと浮上面の構成を示す平面図である。
【図3】上記浮上ステージを架台と一緒にサブアッセンブリ単位で分解した状態を示す側面図である。
【図4】上記レジスト塗布装置の全体構成を示す斜視図である。
【図5】上記レジスト塗布装置において基板上にレジスト塗布膜が形成される様子を示す図である。
【図6】比較例の浮上ステージにおける各領域の区割りを示す上面図である。
【図7】比較例における搬入用ステージブロックと塗布用ステージブロックとの繋ぎ目付近の浮上高プロファイルを示す図である。
【図8】比較例において搬入用ステージブロックに対して塗布用ステージブロックが高い段差がある場合の浮上搬送を示す図である。
【図9】比較例において搬入用ステージブロックに対して塗布用ステージブロックが低い段差がある場合の浮上搬送(問題点)を示す図である。
【図10】実施形態における搬入用ステージブロックと塗布用ステージブロックとの繋ぎ目付近の浮上高プロファイルを示す図である。
【図11】実施形態において搬入用ステージブロックに対して塗布用ステージブロック低い段差がある場合の浮上搬送(問題の解消)を示す図である。
【図12】比較例において搬出用ステージブロックに対して塗布用ステージブロックが高い段差がある場合の浮上搬送を示す図である。
【図13】比較例において搬出用ステージブロックに対して塗布用ステージブロックが低い段差がある場合の浮上搬送(問題点)を示す図である。
【図14】実施形態における塗布用ステージブロックと搬出用ステージブロックとの繋ぎ目付近の浮上高プロファイルを示す図である。
【図15】実施形態において搬入用ステージブロックに対して塗布用ステージブロックが低い段差がある場合の浮上搬送(問題の解消)を示す図である。
【図16】一変形例による浮上ステージ上の各領域の区割りと浮上面の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
【0023】
図1〜図3に、本発明の一実施形態におけるレジスト塗布装置の浮上ステージ回りの構成を示す。図1は浮上ステージの側面図、図2は浮上ステージの上面図、図3は分離された各組のサブアッセンブリ(ステージブロック/架台)を示す側面図である。
【0024】
このレジスト塗布装置は、たとえばLCD用の矩形のガラス基板Gを被処理基板とし、基板Gの数倍の長さを有する長方体形状の浮上ステージ10を有している。この浮上ステージ10は、搬送方向となるステージ長手方向(X方向)に沿って物理的に分離可能な3つのステージブロックSBA,SBB,SBCに分割されている。浮上ステージ10は、ステージブロックSBA,SBB,SBCの各繋ぎ目(境界)が実質的に隙間の無い接触状態となるように組み立てられる。
【0025】
図2に示すように、搬送方向において最も上流側に配置される左端のステージブロックSBAには、専ら噴出口12を一定の密度または配置パターンで多数配設した搬入領域(第1のラフ浮上領域)MINが搭載されている。真ん中のステージブロックSBBには、搬送方向(X方向)の両端部に専ら噴出口12を一定の密度または配置パターンで多数配設した基板衝突防止領域(突き上げ浮上領域)MP,MQが局所的に搭載されるとともに、それら両端部の局所領域MP,MQの間に噴出口12と吸引口14とを一定の密度または配置パターンで混在して多数配設した塗布領域(精密浮上領域)MCTが搭載されている。また、最も下流側(最後尾)に配置される右端のステージブロックSBCには、専ら噴出口12を一定の密度または配置パターンで多数配設した搬出領域(第2のラフ浮上領域)MOUTが搭載されている。
【0026】
入口側の左端のステージブロックSBAは、独立して移動可能および輸送可能な架台FLAの上に多数の支柱18を介して取り付けられている。各支柱18の下端部には、手動式のアジャスタ(高さ位置調整部)20が設けられている。これらのアジャスタ20を手で操作して、ステージブロックSBAの浮上面の高さ位置および水平度を調整できるようになっている。
【0027】
中間のステージブロックSBBは、独立して移動可能および輸送可能な架台FLBの上に多数の支柱22を介してそれぞれ取り付けられている。各支柱22の下端部には、手動式のアジャスタ24がそれぞれ設けられている。これらのアジャスタ24を手で操作して、ステージブロックSBBの浮上面の高さ位置および水平度をそれぞれ調整できるようになっている。
【0028】
出口側のステージブロックSBCは、独立して移動可能および輸送可能な架台FLCの上に多数の支柱26を介して取り付けられており、各支柱26の下端部には手動式のアジャスタ28が設けられている。これらのアジャスタ28を手で操作して、ステージブロックSBCの浮上面の高さ位置および水平度を調整できるようになっている。
【0029】
搬入領域MINおよび搬出領域MOUTを搭載するステージブロックSBA,SBCの裏面(下面)には、高圧エア導入口30,32がそれぞれ取り付けられている。これらの高圧エア導入口30,32は、高圧エア供給管34を介して高圧エア供給部36に接続される。各ステージブロックSBA,SBCの内部には、高圧エア供給部36より供給される高圧エアを搬入領域MINまたは搬出領域MOUT内の各噴出口12に均一な圧力で分配するためのマニホールドおよびガス通路(図示せず)等が設けられている。
【0030】
塗布領域MCTを搭載するステージブロックSBBの裏面(下面)には、高圧エア導入口38とバキューム導入口40が取り付けられている。高圧エア導入口38は高圧エア供給管34を介して高圧エア供給部36に接続される。バキューム導入口40は、バキューム管42を介してバキューム装置44に接続される。ステージブロックSBBの内部には、高圧エア供給部48より供給される高圧エアを塗布領域MCT内の噴出口12に均一な圧力で分配するためのマニホールドおよびガス通路(図示せず)等と、バキューム装置44より供給される負圧吸引力を塗布領域MCT内の各吸引口14に均一な圧力で分配するためのマニホールドおよびガス通路(図示せず)等が設けられている。
【0031】
架台FLA,FLB,FLCは、たとえばステンレス鋼製のフレームまたは本体46,48,50と脚部52,54,56とをそれぞれ有しており、ステージブロックSBA,SBB,SBCをこの順序で繋ぎ合わせるようにして、床面58に一列に並んで配置される。長尺型のレジストノズル60は、ステージブロックSBBの中心部の真上に配置される。
【0032】
このレジスト塗布装置を製作する装置メーカの工場では、浮上ステージ10を図1に示すような状態に組み立てて、装置の最終試験および性能確認が行われる。この最終試験に先立ち、架台FLA,FLB,FLC上でアジャスタ20,24,28の手動操作によりステージブロックSBA,SBB,SBCの高さ調整がそれぞれ行われる。この実施形態においては、後に詳しく述べるように、塗布用ステージブロックSBBの搬送方向(X方向)の両端部に基板衝突防止領域(突き上げ浮上領域)MP,MQを搭載する構成により、ステージブロックSBA,SBB,SBCの高さ位置調整を従来よりも簡便かつ短時間に済ませられるようになっている。
【0033】
装置最終試験および性能確認が済むと、このレジスト塗布装置は、ハードウェア上の構成要素(ユニット、モジュール、サブアッセンブリ等)に分解される。その場合、浮上ステージ10は、図3に示すように、ステージブロックSBAと架台FLAとが第1組のサブアッセンブリJA,ステージブロックSBBと架台FLBとが第2組のサブアッセンブリJB,ステージブロックSBCと架台FLCとが第3組のサブアッセンブリJCとなって分解される。
【0034】
これら3つのサブアッセンブリJA,JB,JCは通常複数台のトラックまたはコンテナに分かれて納入先(LCD製造工場)まで輸送される。そして、納入先の装置稼働場所の床上にこれら3つのサブアッセンブリJA,JB,JCが一列に並べられて、浮上ステージ10が再び組み立てられる。
【0035】
この浮上ステージ10の再組み立て作業においても、上記と同じ理由により、ステージブロックSBA,SBB,SBCの高さ調整を簡便かつ短時間で行うことができる。このことによって、本レジスト塗布装置を速やかにスタートアップさせることができる。
【0036】
次に、図4および図5につき、この実施形態におけるレジスト塗布装置の全体構成と作用を説明する。
【0037】
図4に示すように、浮上ステージ10の左右両側には直進運動型の第1(左側)および第2(右側)の搬送部64L,64Rが配置されている。これらの搬送部64L,64Rは、各々単独で、あるいは両者協働して、ステージ10上で浮いている基板Gを着脱可能に保持してステージ長手方向(X方向)に基板Gを搬送するようになっている。浮上ステージ100上で基板Gは、その一対の辺が搬送方向(X方向)と平行で、他の一対の辺が搬送方向と直交するような水平姿勢をとって、浮上搬送される。
【0038】
第1(左側)および第2(右側)の搬送部64L,64Rは、浮上ステージ10の左右両側に平行に配置された第1および第2のガイドレール66L,66Rと、これらのガイドレール66L,66R上で搬送方向(X方向)に移動可能に取り付けられた第1および第2のスライダ68L,68Rと、両ガイドレール166L,66R上で両スライダ68L,68Lを同時または個別に直進移動させる第1および第2の搬送駆動部(図示せず)と、基板Gを着脱可能に保持するために両スライダ68L,68Rに搭載されている第1および第2の保持部70L,70Rとをそれぞれ有している。各搬送駆動部は、直進型の駆動機構たとえばリニアモータによって構成されている。
【0039】
第1(左側)の保持部70Lは、基板Gの左側二隅の裏面(下面)にそれぞれ真空吸着力で結合する複数個の吸着パッド72Lと、各吸着パッド72Lを搬送方向(X方向)に一定の間隔を置いた複数箇所で鉛直方向の変位を規制して支持する複数個のパッド支持部74Lと、これら複数個のパッド支持部74Lをそれぞれ独立に昇降移動または昇降変位させる複数個のパッドアクチエータ76Lとを有している。
【0040】
第2(右側)の保持部70Rは、基板Gの左側二隅の裏面(下面)にそれぞれ真空吸着力で結合する複数個の吸着パッド72Rと、各吸着パッド72Rを搬送方向(X方向)に一定の間隔を置いた複数箇所で鉛直方向の変位を規制して支持する複数個のパッド支持部74Rと、これら複数個のパッド支持部74Rをそれぞれ独立に昇降移動または昇降変位させる複数個のパッドアクチエータ76Rとを有している。
【0041】
左右両側の各吸着パッド72L,72Rは、図示省略するが、たとえばステンレス鋼(SUS)からなる直方体形状のパッド本体の上面に複数個の吸引口を設けている。それらの吸引口はパッド本体内のバキューム通路および外部のバキューム管を介してパッド吸着制御部の真空源(図示せず)にそれぞれ通じている。
【0042】
浮上ステージ10において、このレジスト塗布装置でレジスト塗布処理を受けるべき新規の被処理基板Gは、たとえば搬送方向上流側に設置されているソーターユニット(図示せず)から平流しで搬入領域MINに搬入される。
【0043】
搬入領域MINは、基板Gの浮上搬送が開始される領域でもあり、この領域内には上述したように基板Gを比較的大きくてラフな浮上高Hβ(標準値:200〜2000μm)で浮かせるために高圧エアを噴き出す噴出口12が一定の密度または配置パターンで多数設けられている。なお、搬入領域MINには、基板Gをステージ10上で位置合わせするためのアライメント機構(図示せず)が設けられることもある。
【0044】
浮上ステージ10の長手方向中心部に設定された塗布領域MCTはレジスト液供給領域であり、基板Gはこの塗布領域MCTを通過する際に上方のレジストノズル60からレジスト液Rの供給を受ける。上述したように、塗布領域MCT内には、基板Gを浮上剛性の大きな精密浮上高Hα(標準値:30〜60μm)で安定に浮かせるために、高圧エアを噴き出す噴出口12と負圧で空気を吸い込む吸引口14とを一定の密度または配置パターンで混在させて設けている。
【0045】
塗布領域MCTの下流側に位置する浮上ステージ10の他端の搬出領域MOUTは、基板Gの浮上搬送が終了する領域である。塗布領域MCTで塗布処理を受けた基板Gは、搬出領域MOUTからたとえば平流しで下流側隣りのソーターユニット(図示せず)を経由して減圧乾燥ユニット(図示せず)へ移送される。この搬出領域MOURには、基板Gを比較的大きくてラフな浮上高Hβ(標準値:200〜2000μm)で浮かせるための噴出口12が一定の密度または配置パターンで多数設けられている。
【0046】
レジストノズル60は、その長手方向(Y方向)で浮上ステージ10上の基板Gを一端から他端までカバーできるスリット状の吐出口60aを有し、門形または逆さコ字形のフレーム(図示せず)に取り付けられ、たとえばボールネジ機構を有するノズル昇降部(図示せず)の駆動で昇降移動可能であり、レジスト液供給部(図示せず)からのレジスト液供給管62に接続されている。
【0047】
このレジスト塗布装置におけるレジスト塗布処理では、基板Gが浮上搬送によって浮上ステージ10の上を搬入領域MIN、塗布領域MCTおよび搬入領域MINの順に浮上高を変えながら移動する。その際、図5に示すように、基板Gが塗布領域MCTを精密浮上高Hαで通過する間に上方のレジストノズル60より帯状に供給されるレジスト液Rが基板G上で均一に塗布され、基板Gの前端から後端に向かってレジスト液Rの塗布膜RMが一定の膜厚で形成される。
【0048】
次に、この実施形態における特有の作用、つまりステージブロックSBBの搬送方向(X方向)の両端部に塗布領域MCTと隣接して基板衝突防止領域(突き上げ浮上領域)MP,MQを搭載する構成に基づく作用を説明する。
【0049】
先ず、従来技術に相当する比較例として、図6に示すように、塗布領域MCTだけを搭載し、基板衝突防止領域(突き上げ浮上領域)MP,MQを搭載しない構成(ステージブロックSBB'とする)の作用とその問題点を説明する。
【0050】
この場合、搬送方向(X方向)において、搬入用ステージブロックSBAの下流側でも搬入領域MINがそのまま続くと仮定すると、図7の(a)に示すように、基板Gはラフ浮上高Hβの標準値を保ったままステージブロックSBAを後にする。一方、塗布用ステージブロックSBB'の上流側でも塗布領域MCTが延在していると仮定すると、図7の(b)に示すように、基板Gは既に精密浮上高Hαの標準値を保った状態でステージブロックSBB'の上に進入してくる。
【0051】
そこで、ステージブロックSBAとステージブロックSBB'とを繋ぐと、搬送方向(X方向)における基板Gの浮上高のプロファイルは図7の(c)に示すようになる。すなわち、ステージブロックSBAの搬入領域MINでは、基板Gを噴出口12からの高圧エアにより浮かすだけでよく、ラフ浮上高Hβはサイズ的には大きくても浮上剛性は非常に小さい。これに対して、ステージブロックSBB'の塗布領域(精密浮上領域)MCTでは、噴出口12からの高圧エアによる垂直上向きの力と吸引口14からの負圧吸引力による垂直下向きの力とを相対抗させ、そのバランスを制御して小さな精密浮上高Hαを安定に保つようにしており、浮上剛性が非常に大きい。このため、搬入用ステージブロックSBA上のラフ浮上高Hβは、その標準値の大きさに関係なく塗布用ステージブロックSBB'上の精密浮上高Hαに屈するようにして、両ステージブロックSBA,SBB'の境界(繋ぎ目)よりも上流側の位置で精密浮上高Hαと同じ高さまで引き下げられる。こうして、両ステージブロックSBA,SBB'の境界(繋ぎ目)付近の浮上高HPは精密浮上高Hαに左右され、通常はHP=Hαとなる。
【0052】
ここで、両ステージブロックSBA,SBB'の境界(繋ぎ目)に段差または高低差δHがある場合を考える。この段差δHには、搬入用ステージブロックSBAの浮上面に対して塗布用ステージブロックSBB'の浮上面が高くなる場合(SBA<SBB')と低くなる場合(SBA>SBB')の二通りがある。
【0053】
SBA<SBB'となる段差δHが生じた場合は、上記のように搬入用ステージブロックSBA上のラフ浮上高Hβの方が塗布用ステージブロックSBB'上の精密浮上高Hαに屈するように引き下げられても、図8に示すように、基板Gは両ステージブロックSBA,SBB'のいずれとも当たったり擦ったりすることはなく、段差δHが極端に大きくなければ(たとえば1000μm以上でなければ)両ブロックSBA,SBB'を通じて浮上搬送に何の支障も生じない。
【0054】
しかし、SBA>SBB'となる段差δHが生じた場合は、搬入用ステージブロックSBA上のラフ浮上高Hβが塗布用ステージブロックSBB'上の精密浮上高Hαに屈するように引き下げられることにより、段差δHが精密浮上高Hα(30〜60μm)を超えるときは、図9に示すように、基板Gは搬入用ステージブロックSBAの後端の角部KPを擦る。そうなると、基板Gが損傷し、破損したり割れることもある。この場合、基板Gの前端は角部KPを擦らずにその上を通過するが、基板Gの塗布領域(精密浮上領域)MCTの中へ進むにしたがって、基板Gの前端部が精密浮上高Hαに向かってG(1)→G(2)→G(3)→G(4)と徐々に下がり、その過程で基板Gの裏面が搬入用ステージブロックSBAの後端角部KPに摺接する。
【0055】
これに対して、この実施形態においては、塗布用ステージブロックSBBの始端部に基板衝突防止領域(突き上げ浮上領域)MPが設けられる。この領域MPは、図10に示すように、その下流側隣りに浮上剛性の非常に大きな塗布領域(精密浮上領域)MCTが在るにも拘わらず、精密浮上高Hα(30〜60μm)に抗してそれより一段高い(たとえば120μm程度の)第3の浮上高つまり突き上げ浮上高HPが得られるようにしている。そのために、この領域MPにおいては、専ら噴出口12のみを配置するレイアウト(図2)が採られ、さらには相当強めの噴出圧力、つまり塗布領域MCT上の噴出圧力よりも高く、かつ搬入用ステージブロックSBA上の噴出圧力よりも高い噴出圧力が設定されている。
【0056】
この実施形態において、搬入用ステージブロックSBAと塗布用ステージブロックSBBとを繋いだときに、両ステージブロックSBA,SBBの境界(繋ぎ目)にSBA>SBBとなる段差δHが生じたとする。この場合、搬入用ステージブロックSBA上のラフ浮上高Hβの方が塗布用ステージブロックSBBの塗布領域MCT上の精密浮上高Hαに屈するように引き下げられるが、図11に示すように、塗布領域MCTより手前の基板衝突防止領域(突き上げ浮上領域)MP上の突き上げ浮上高HPが精密浮上高Hαに勝ってそれよりも一段高いので、段差δHが突き上げ浮上高HPを超える大きさでなければ基板Gは搬入用ステージブロックSBAの後端角部KPを擦らずにその上を通り抜ける。
【0057】
なお、両ステージブロックSBA,SBBの境界(繋ぎ目)にSBA<SBBとなる段差δHが生じた場合は、基本的には図8に似通ったプロファイルになり、基板Gは両ステージブロックSBA,SBBのいずれとも当たったり擦ったりすることはなく、段差δHが極端に大きくなければ(たとえば1000μm以上でなければ)両ステージブロックSBA,SBB上の浮上搬送には何の支障も生じない。
【0058】
このように、この実施形態によれば、塗布用ステージブロックSBBの始端部に、精密浮上高Hαよりも一段(たとえば2倍程度)高い突き上げ浮上高HPが得られる基板衝突防止領域(突き上げ浮上領域)MPを設ける構成により、搬入用ステージブロックSBAと塗布用ステージブロックSBBとの間に生じ得る段差δHの許容量を従来よりも一段(たとえば約2倍)大きくすることができる。これによって、浮上ステージ10の組み立てまたは再組み立てにおいて、搬入用ステージブロックSBAと塗布用ステージブロックSBBとの間で浮上面の高さ位置を揃える高さ位置調整の作業を簡便に短時間で済ますことができる。また、経時変化や他のメンテナンス等で両ステージブロックSBA,SBBの間にSBA>SBBとなる望ましくない段差δHが生じても、δHの許容量が大きいので、再調整の頻度または回数を減らすことができる。
【0059】
さらに、この実施形態では、塗布用ステージブロックSBBと搬出用ステージブロックSBCとの間でも従来技術の問題点を解消できる。すなわち、従来技術に相当する比較例においては、塗布用ステージブロックSBB'と搬出用ステージブロックSBCとの間で、搬出用ステージブロックSBC上の浮上剛性の小さいラフ浮上高Hβがその標準値の大きさに関係なく塗布用ステージブロックSBB'上の浮上剛性の大きい精密浮上高Hαに屈する形で、両ステージブロックSBB', SBCの境界(繋ぎ目)よりも下流側の位置で精密浮上高Hαと同じ高さまで引き下げられる。これによって、両ブロックSBB', SBCの境界(繋ぎ目)付近の浮上高HQは精密浮上高Hαに左右され、通常はHQ=Hαとなる。
【0060】
両ステージブロックSBB', SBCを繋いだときに、SBB'> SBCとなる段差δHが生じた場合は、搬出用ステージブロックSBC上のラフ浮上高Hβの方が塗布用ステージブロックSBB'上の精密浮上高Hαに屈するように引き下げられても、図12に示すように、基板Gは両ステージブロックSBB',SBCのいずれとも当たったり擦ったりすることはなく、段差δHが極端に大きくなければ(たとえば1000μm以上でなければ)両ブロックSBB' ,SBCを通じて浮上搬送に何の支障も生じない。
【0061】
しかし、SBB' <SBCとなる段差δHが生じた場合は、搬出用ステージブロックSBC上の浮上高が塗布用ステージブロックSBB'の精密浮上高Hαに屈するように引き下げられることにより、段差δHが精密浮上高Hα(30〜60μm)を超えるときは、図13に示すように、基板Gは搬出用ステージブロックSBCの始端の角部KQに衝突する。そうなると、基板Gが損傷し、割れたりすることがある。この場合、基板Gの前端部分は角部KQの上方を通過した後にラフ浮上高Hβに向かってG(1)→G(2)→G(3)→G(4)と徐々に浮上高を上げていくが、その上がる前に基板Gの前端が搬出用ステージブロックSBCの始端角部KQに正面衝突する。
【0062】
これに対して、この実施形態においては、塗布用ステージブロックSBBの終端部に基板衝突防止領域(突き上げ浮上領域)MQが設けられている。この領域MQは、図14に示すように、その上流側隣りに浮上剛性の非常に大きな塗布領域(精密浮上領域)MCTが在るにも拘わらず、精密浮上高Hα(30〜60μm)に抗してそれより一段高い(たとえば120μm程度の)第3の浮上高つまり突き上げ浮上高HQが得られるようにしている。そのために、この領域MQにおいては、専ら噴出口12のみを配置するレイアウト(図2)が採られ、さらには相当強めの噴出圧力、つまり塗布領域MCT上の噴出圧力よりも高く、かつ搬出用ステージブロックSBC上の噴出圧力よりも高い噴出圧力が設定されている。
【0063】
この実施形態において、塗布用ステージブロックSBBと搬出用ステージブロックSBCとを繋いだときに、両ステージブロックSBB,SBCの境界(繋ぎ目)にSBB<SBCとなる段差δHが生じたとする。この場合、搬出用ステージブロックSBC上のラフ浮上高Hβが塗布用ステージブロックSBBの塗布領域MCT上の精密浮上高Hαに屈するように引き下げられるが、図15に示すように、塗布領域MCTに下流側に隣接する基板衝突防止領域(突き上げ浮上領域)MQ上の突き上げ浮上高HQが精密浮上高Hαに勝ってそれよりも一段高いので、段差δHが突き上げ浮上高HQを超える大きさでなければ基板Gは搬出用ステージブロックSBCの始端角部KQに衝突せずにその上を通り抜ける。
【0064】
なお、両ステージブロックSBB,SBCの境界(繋ぎ目)にSBB>SBCとなる段差δHが生じた場合は、基本的には図12に似通ったプロファイルになり、基板Gは両ステージブロックSBB,SBCのいずれとも当たったり擦ったりすることはなく、段差δHが極端に大きくなければ(たとえば1000μm以上でなければ)両ステージブロックSBB,SBC上の浮上搬送には何の支障も生じない。
【0065】
このように、この実施形態によれば、塗布用ステージブロックSBBの終端部に、精密浮上高Hαよりも一段(たとえば2倍程度)高い突き上げ浮上高HQが得られる基板衝突防止領域(突き上げ浮上領域)MQを設ける構成により、塗布用ステージブロックSBBと搬出用ステージブロックSBCとの間に生じ得る段差δHの許容量を従来よりも一段(たとえば約2倍)大きくすることができる。これによって、浮上ステージ10の組み立てまたは再組み立てにおいて、塗布用ステージブロックSBBと搬出用ステージブロックSBCとの間で浮上面の高さ位置を揃える高さ位置調整の作業を簡便に短時間で済ますことができる。また、経時変化や他のメンテナンス等で両ステージブロックSBB,SBCの間にSBB<SBCとなる望ましくない段差δHが生じても、δHの許容量が大きいので、再調整の頻度または回数を減らすことができる。
[他の実施形態または変形例]
【0066】
以上、本発明の好適な一実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種種の変形が可能である。
【0067】
たとえば、基板衝突防止領域(突き上げ浮上領域)MP,MQにおける浮上面の構成に関して、図2に示す構成例では各領域MP,MQに噴出口12を1列配置しているが、噴出口12を複数列配置してもよい。
【0068】
あるいは、図16に示すように、各領域MP,MQ内に噴出口12と吸引口14とを混在させて、噴出圧力と吸引圧力とのバランスを制御して所望の突き上げ浮上高HP,HQを実現することも可能である。この場合、各領域MP,MQにおける高圧ガスの消費量は増えることになるが、突き上げ浮上高HP,HQの浮上剛性ないし安定度を高めることができる。加えて、従来の塗布領域MCTに含まれていた噴出口12および吸引口14のハードウェアをそのまま基板衝突防止領域(突き上げ浮上領域)MP,MQに使用することもできる。
【0069】
また、上記実施形態では、浮上ステージ10を搬入領域MIN、塗布領域MCT、搬出領域MOUT毎に物理的に分離可能な3つのステージブロックSBA,SBB,SBCに分割した。しかし、浮上ステージ10を物理的に分離可能な2つのステージブロックSBA,SBDに分割し、前段のステージブロックSBAに搬入領域MINを搭載し、後段のステージブロックSBDに塗布領域MCTおよび搬出領域MOUTを一体的に搭載する構成も可能である。この場合は、塗布領域MCTの上流側隣りに基板衝突防止領域(突き上げ浮上領域)MPを設けるだけでよく、下流側隣りの基板衝突防止領域(突き上げ浮上領域)MQが不要になる。
【0070】
あるいは、浮上ステージ10を物理的に分離可能な2つのステージブロックSBE,SBCに分割して、前段のステージブロックSBEに搬入領域MINおよび塗布領域MCTを一体的に搭載し、後段のステージブロックSBCに搬出領域MOUTを搭載する構成も可能である。この場合は、塗布領域MCTの下流側隣りに基板衝突防止領域(突き上げ浮上領域)MQを設けるだけでよく、上流隣りの基板衝突防止領域(突き上げ浮上領域)MPが不要になる。
【0071】
上述した実施形態における第1の浮上高(精密浮上高)Hα、第2の浮上高(ラフ浮上高)Hβ、第3の浮上高(突き上げ浮上高)HP,HQの各値は一例であり、塗布処理の仕様等に応じて種種の値を採ることができる。
また、塗布品質に影響しない(たとえば塗布ムラを起こさない)限りで、搬入用ステージブロックSBAの後端角部KPおよび/または搬出用ステージブロックSBCの始端角部KQを面取り加工してもよい。
【0072】
上記した実施形態はLCD製造用のレジスト塗布装置に係るものであったが、本発明は被処理基板上に処理液を塗布する任意の塗布装置に適用可能である。したがって、本発明における処理液としては、レジスト液以外にも、たとえば層間絶縁材料、誘電体材料、配線材料等の塗布液も可能であり、現像液やリンス液等も可能である。本発明における被処理基板はLCD基板に限らず、他のフラットパネルディスプレイ用基板、半導体ウエハ、CD基板、ガラス基板、フォトマスク、プリント基板等も可能である。
【符号の説明】
【0073】
10 浮上ステージ
12 噴出口
14 吸引口
60 長尺型レジストノズル
64L,64R 搬送部
SBA 搬入用ステージブロック
SBB 塗布用ステージブロック
SBC 搬出用ステージブロック
MIN 搬入領域
MCT 塗布領域
MOUT 搬出領域
MP,MQ 基板衝突防止領域(突き上げ浮上領域)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繋がって配置される物理的に分離可能な第1および第2のステージブロックにラフ浮上領域および精密浮上領域をそれぞれ搭載し、前記精密浮上領域ではその大部分の領域で基板を塗布処理に適した精密な第1の浮上高で空中に浮かし、前記ラフ浮上領域では前記基板を前記第1の浮上高よりも大きくてラフな第2の浮上高で空中に浮かせる浮上ステージと、
前記基板を着脱可能に保持して前記ラフ浮上領域および前記精密浮上領域の順に前記浮上ステージの上を搬送する基板搬送部と、
前記精密浮上領域内の所定位置で前記第1の浮上高で浮いている前記基板の被処理面に向けて塗布用の処理液を吐出する長尺型のノズルを有する処理液供給部と
を有し、
前記第2のステージブロックの前記第1のステージブロックと接する端部近辺に、前記精密浮上領域と隣接して前記第1の浮上高よりも一段高い第3の浮上高で前記基板を浮かせる突き上げ浮上領域を設ける、浮上式塗布装置。
【請求項2】
前記突き上げ浮上領域では、専ら前記基板に垂直上向きの圧力を与えるための気体を噴出する噴出口を多数配置する、請求項1に記載の浮上式塗布装置。
【請求項3】
前記突き上げ浮上領域では、専ら前記基板に垂直上向きの圧力を与えるための気体を噴出する噴出口と前記基板に垂直下向きの圧力を与えるための気体を吸引する吸引口とを混在させて多数配置する、請求項1に記載の浮上式塗布装置。
【請求項4】
前記第1および第2のステージブロックを独立に運搬可能な第1および第2の架台にそれぞれ取り付ける、請求項1〜3のいずれか一項に記載の浮上式塗布装置。
【請求項5】
前記第1および第2の架台の少なくとも一方に、前記ステージブロックの浮上面の高さ位置を調整する高さ位置調整部を備える、請求項4に記載の浮上式塗布装置。
【請求項6】
繋がって配置される物理的に分離可能な第1および第2のステージブロックに精密浮上領域およびラフ浮上領域をそれぞれ搭載し、前記精密浮上領域ではその大部分の領域で基板を塗布処理に適した精密な第1の浮上高で空中に浮かし、前記ラフ浮上領域では前記基板を前記第1の浮上高よりも大きくてラフな第2の浮上高で空中に浮かせる浮上ステージと、
前記基板を着脱可能に保持して前記精密浮上領域および前記ラフ浮上領域の順に前記浮上ステージの上を搬送する基板搬送部と、
前記精密浮上領域内の所定位置で前記第1の浮上高で浮いている前記基板の被処理面に向けて塗布用の処理液を吐出する長尺型のノズルを有する処理液供給部と
を有し、
前記第1のステージブロックの前記第2のステージブロックと接する端部近辺に、前記精密浮上領域と隣接して前記第1の浮上高よりも一段高い第3の浮上高で前記基板を浮かせる突き上げ浮上領域を設ける、浮上式塗布装置。
【請求項7】
前記突き上げ浮上領域では、専ら前記基板に垂直上向きの圧力を与えるための気体を噴出する噴出口を多数配置する、請求項6に記載の浮上式塗布装置。
【請求項8】
前記突き上げ浮上領域では、専ら前記基板に垂直上向きの圧力を与えるための気体を噴出する噴出口と前記基板に垂直下向きの圧力を与えるための気体を吸引する吸引口とを混在させて多数配置する、請求項6に記載の浮上式塗布装置。
【請求項9】
前記第1および第2のステージブロックを独立に運搬可能な第1および第2の架台にそれぞれ取り付ける、請求項6〜8のいずれか一項に記載の浮上式塗布装置。
【請求項10】
前記第1および第2の架台の少なくとも一方に、前記ステージブロックの浮上面の高さ位置を調整する高さ位置調整部を備える、請求項9に記載の浮上式塗布装置。
【請求項1】
繋がって配置される物理的に分離可能な第1および第2のステージブロックにラフ浮上領域および精密浮上領域をそれぞれ搭載し、前記精密浮上領域ではその大部分の領域で基板を塗布処理に適した精密な第1の浮上高で空中に浮かし、前記ラフ浮上領域では前記基板を前記第1の浮上高よりも大きくてラフな第2の浮上高で空中に浮かせる浮上ステージと、
前記基板を着脱可能に保持して前記ラフ浮上領域および前記精密浮上領域の順に前記浮上ステージの上を搬送する基板搬送部と、
前記精密浮上領域内の所定位置で前記第1の浮上高で浮いている前記基板の被処理面に向けて塗布用の処理液を吐出する長尺型のノズルを有する処理液供給部と
を有し、
前記第2のステージブロックの前記第1のステージブロックと接する端部近辺に、前記精密浮上領域と隣接して前記第1の浮上高よりも一段高い第3の浮上高で前記基板を浮かせる突き上げ浮上領域を設ける、浮上式塗布装置。
【請求項2】
前記突き上げ浮上領域では、専ら前記基板に垂直上向きの圧力を与えるための気体を噴出する噴出口を多数配置する、請求項1に記載の浮上式塗布装置。
【請求項3】
前記突き上げ浮上領域では、専ら前記基板に垂直上向きの圧力を与えるための気体を噴出する噴出口と前記基板に垂直下向きの圧力を与えるための気体を吸引する吸引口とを混在させて多数配置する、請求項1に記載の浮上式塗布装置。
【請求項4】
前記第1および第2のステージブロックを独立に運搬可能な第1および第2の架台にそれぞれ取り付ける、請求項1〜3のいずれか一項に記載の浮上式塗布装置。
【請求項5】
前記第1および第2の架台の少なくとも一方に、前記ステージブロックの浮上面の高さ位置を調整する高さ位置調整部を備える、請求項4に記載の浮上式塗布装置。
【請求項6】
繋がって配置される物理的に分離可能な第1および第2のステージブロックに精密浮上領域およびラフ浮上領域をそれぞれ搭載し、前記精密浮上領域ではその大部分の領域で基板を塗布処理に適した精密な第1の浮上高で空中に浮かし、前記ラフ浮上領域では前記基板を前記第1の浮上高よりも大きくてラフな第2の浮上高で空中に浮かせる浮上ステージと、
前記基板を着脱可能に保持して前記精密浮上領域および前記ラフ浮上領域の順に前記浮上ステージの上を搬送する基板搬送部と、
前記精密浮上領域内の所定位置で前記第1の浮上高で浮いている前記基板の被処理面に向けて塗布用の処理液を吐出する長尺型のノズルを有する処理液供給部と
を有し、
前記第1のステージブロックの前記第2のステージブロックと接する端部近辺に、前記精密浮上領域と隣接して前記第1の浮上高よりも一段高い第3の浮上高で前記基板を浮かせる突き上げ浮上領域を設ける、浮上式塗布装置。
【請求項7】
前記突き上げ浮上領域では、専ら前記基板に垂直上向きの圧力を与えるための気体を噴出する噴出口を多数配置する、請求項6に記載の浮上式塗布装置。
【請求項8】
前記突き上げ浮上領域では、専ら前記基板に垂直上向きの圧力を与えるための気体を噴出する噴出口と前記基板に垂直下向きの圧力を与えるための気体を吸引する吸引口とを混在させて多数配置する、請求項6に記載の浮上式塗布装置。
【請求項9】
前記第1および第2のステージブロックを独立に運搬可能な第1および第2の架台にそれぞれ取り付ける、請求項6〜8のいずれか一項に記載の浮上式塗布装置。
【請求項10】
前記第1および第2の架台の少なくとも一方に、前記ステージブロックの浮上面の高さ位置を調整する高さ位置調整部を備える、請求項9に記載の浮上式塗布装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−195403(P2012−195403A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57627(P2011−57627)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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