消火設備用開放弁装置
【課題】充水時に弁体がロックされ、手動による解除操作を必要とすることなく充水が完了したら弁体が自動的にロック解除となるようにした操作性を向上する。
【解決手段】消火設備用開放弁装置35Aは、加圧消火用水が供給される1次ポート44と、消火ヘッド34を備えた配管が接続される2次ポート46と、火災により開放作動する感熱ヘッド36を備えた感知配管49が接続される感熱ポート48と、1次ポート44と2次ポート46との間の流路を開閉する弁体58と、感知配管49に充水した加圧消火用水の圧力により弁体58を閉鎖状態とし、感知ヘッド36の開放作動による感知配管39の圧力低下により弁体58を開放状態に制御する弁制御機構とを備える。充水ロック制御機構を構成するロック制御弁70は、感知配管39に1次側から加圧消火用水を充水中に弁体58を閉鎖位置にロックし、充水完了でロックを解除する。
【解決手段】消火設備用開放弁装置35Aは、加圧消火用水が供給される1次ポート44と、消火ヘッド34を備えた配管が接続される2次ポート46と、火災により開放作動する感熱ヘッド36を備えた感知配管49が接続される感熱ポート48と、1次ポート44と2次ポート46との間の流路を開閉する弁体58と、感知配管49に充水した加圧消火用水の圧力により弁体58を閉鎖状態とし、感知ヘッド36の開放作動による感知配管39の圧力低下により弁体58を開放状態に制御する弁制御機構とを備える。充水ロック制御機構を構成するロック制御弁70は、感知配管39に1次側から加圧消火用水を充水中に弁体58を閉鎖位置にロックし、充水完了でロックを解除する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感知配管に設けた閉鎖型の感熱ヘッドの火災による熱気流を受けた際の開放作動により弁を開動作して開放型の消火ヘッドから水又は消火薬剤を散布する消火設備用開放弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駐車施設などの防護区画に設置される消火ヘッドとしては例えば図12に示すものがある(特許文献1)。図12において、ヘッド本体201の下部に開放型の放射散布部202と、上部に感熱作動部203を備え、ヘッド本体201内に弁体236を備えて常時は流路を閉鎖し、感熱作動部203が作動すると内部のパイロット弁236を開放させて放射散布部202から消火用水を放射する。
【0003】
パイロット弁236は内部に連通穴237を備え、ヘッド流入口206からの消火用水を感熱作動部203側に供給し、パイロット室240に入った消火用水の水圧によりパイロット弁236を下降させて閉止する。感熱作動部203が作動すると、パイロット室240が開放されるため、パイロット弁236が上昇することで、放射散布部202から消火用水が放射される。
【0004】
しかしながら、このような従来の構造では、消火ヘッドに消火用水を最初に充水する時に、消火用水が消火ヘッドから漏れる可能性があった。つまり、パイロット室240にまだ消火用水が充水されていないときに、ヘッド流入口206から消火用水が流入すると、パイロット室240側に圧力がないため、ヘッド流入ロ206の消火用水がパイロット弁236を押し上げてしまい、パイロット室240が充水されて圧力が発生するまでのあいだ、放射散布部202から放射がされてしまう問題がある。
【0005】
このような初期充水時の誤放射を防ぐための対策として、図13に示す開放弁が知られている(特許文献2)。図13において、感熱作動部307を接続した開放弁301内に弁体303を備え、初期的な消火用水の充水時に弁体303の動きを固定するためのストッパー305を備える。この構造により弁体303が開放することなく充水作業を行うことができるので、ヘッドからの誤散水を防ぐことができる。
【特許文献1】特開2001−238977号公報
【特許文献2】特開2001−340485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなストッパーにより弁体を固定した構造の消火ヘッド用の開放弁にあっては、駐車施設などの防護区画に対し例えば1000個を越える規模で多数取付けられており、それぞれストッパー305を使用して充水作業を行うのは非常に煩雑である。また、充水後に全ての消火ノズルの開放弁からストッパー305を外して固定を解除しなければならず、その作業が煩雑であると共に、解除忘れがあると、火災時に弁体314が動かないため、放射が行われないという重大な問題を起こす恐れがある。
【0007】
本発明は、初期的な充水時に弁体がロックされ、手動による解除操作を必要とすることなく充水が完了したら弁体が自動的にロック解除となるようにした操作性に優れた消火設備用開放弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は消火設備用開放弁装置を提供する。即ち、本発明は、
加圧消火用水が供給される1次ポートと、
消火ヘッドを備えた配管が接続される2次ポートと、
火災により開放作動する閉鎖型感知ヘッドを備えた感知配管が接続される感熱ポートと、
1次ポートと2次ポートとの間の流路を開閉する弁体と、
感知配管に充水した加圧消火用水の圧力により前記弁体を閉鎖状態とし、感知ヘッドの開放作動による感知配管の圧力低下により弁体を開放状態に制御する弁制御機構と、
を備えた消火設備用開放弁装置に於いて、
感知配管に1次側から加圧消火用水を充水中に弁体を閉鎖位置にロックし、充水完了でロックを解除する充水ロック制御機構を設けたことを特徴とする。
【0009】
ここで、弁制御機構は、
シリンダに摺動自在に収納され、弁体に連結されたピストンと,
ピストンの一方に形成され、感知ポートと連通する第1シリンダ室と、
第1シリンダ室に1次ポートから加圧消火用水を導入する第1連通路と、
ピストンを弁体の閉鎖方向に付勢するスプリングと、
を備え、
充水ロック制御機構は、
ピストンの他方に形成された第2シリンダ室と、
第2シリンダ室に第1シリンダ室を経由して1次ポートからの加圧消火用水を導入するピストンに貫通形成された第2連通路と、
1次ポートを第2シリンダ室に連通する第3連通路に設けられ、第2シリンダ室の加圧消火用水を制御圧として導入し、制御圧が所定値未満の場合は閉動作して第3連通路を閉鎖して第2シリンダ室を上回る第1シリンダ室の圧力によるピストンの押圧で弁体を閉鎖状態にロックし、制御圧が前記所定値以上となった時に第3連通路を開動作して1次ポートの加圧消火用水を第2シリンダ室に導入することにより第1シリンダ室と略同圧にして、前記弁体を開放可能なロック解除状態とするロック制御弁と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の別の形態として、
弁制御機構は、
シリンダに摺動自在に収納され、弁体に連結されたピストンと,
ピストン一方に形成され、感知ポートと連通する第1シリンダ室と、
第1シリンダ室に1次ポートから加圧消火用水を導入する第1連通路と、
ピストンを弁体の閉鎖方向に付勢するスプリングと、
を備え、
充水ロック制御機構は、
ピストンでの他方に形成された第2シリンダ室と、
第2シリンダ室に第1シリンダ室を経由して1次ポートからの加圧消火用水を導入する第2連通路と、
第2シリンダ室に連通する第1制御ポートと1次ポートに連通する第2制御ポートとの間に外部配管により接続され、第2シリンダ室の加圧消火用水を制御圧として導入し、制御圧が所定値未満の場合は閉動作して第1制御ポートと第2制御ポートを切り離して第2シリンダ室を上回る第1シリンダ室の圧力によるピストンの押圧で弁体を閉鎖状態にロックし、制御圧が所定値以上となった時に開動作して第1制御ポートと第2制御ポートを連通して1次ポートの加圧消火用水を第2シリンダ室に導入することにより、第1シリンダ室と略同圧にして弁体を開放可能なロック解除状態とするロック制御弁と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の別の形態として、
弁制御機構は、
シリンダに摺動自在に収納され、弁体に連結されたピストンと,
ピストンの一方に形成され、感知ポートと連通する第1シリンダ室と、
第1シリンダ室に1次ポートから加圧消火用水を導入する第1連通路と、
ピストンを弁体の閉鎖方向に付勢するスプリングと、
を備え、
充水ロック制御機構は、
ピストンの他方に形成された第2シリンダ室と、
第1シリンダ室に連通する第1制御ポートと第2シリンダ室に連通する第2制御ポートとの間を外部接続し、第2シリンダ室に第1シリンダ室を経由して1次ポートからの加圧消火用水を導入する外部連通配管と、
第2シリンダ室に連通する第2制御ポートと1次ポートに連通する第3制御ポートとの間に外部配管により接続され、第2シリンダ室の加圧消火用水を制御圧として導入し、制御圧が所定値未満の場合は閉動作して第制御ポートと第3制御ポートを切り離して第2シリンダ室を上回る第1シリンダ室の圧力によるピストンの押圧で弁体を閉鎖状態にロックし、制御圧が前記所定値以上となった時に開動作して第3制御ポートから1次ポートの加圧消火用水を第2シリンダ室に導入することにより第1シリンダ室と同圧にして、弁体を開放可能なロック解除状態とするロック制御弁と、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の別の形態にあっては、
弁制御機構は、
弁体に対し1次ポート側に配置された第1シリンダと、
第1シリンダに摺動自在に収納され、弁体に連結された第1ピストンと,
第1ピストンの一方に形成され、感知ポートと連通する第1シリンダ室と、
第1シリンダ室に1次ポートから加圧消火用水を導入する第1連通路と、
ピストンを弁体の閉鎖方向に付勢するスプリングと、
を備え、
充水ロック制御機構は、
弁体に対し2次ポート側に配置された第2シリンダと、
第2シリンダに摺動自在に収納され、弁体に連結された第2ピストンと、
第2ピストンで仕切られた第2シリンダ室と、
1次ポートに連通する第1制御ポートと第2シリンダ室に連通する第2制御ポートとの間に外部接続され、第1シリンダ室に連通する第3制御ポートを経由して1次ポートからの加圧消火用水を制御圧とし導入し、1次ポートに加圧消火用水が供給された際に、制御圧が所定値未満の場合は閉動作して第2シリンダ室を1次ポート側から切り離して第1ピストンの押圧により弁体を閉鎖状態にロックし、制御圧が所定値以上となった時に開動作して1次ポート加圧消火用水を第2シリンダ室に導入して第2ピストンの押圧により第1ピストンの押圧を相殺して、弁体を開放可能なロック解除状態とするロック制御弁と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、初期的な加圧消火用水の充水時に、感熱ヘッドを接続した感知配管に対し充水が完了するまでの間、感知配管へ供給する加圧消火用水が加わる1次シリンダ室と、1次シリンダ室に対し圧力増加が遅延する2次シリンダ室との圧力差により弁体を閉鎖位置に押圧してロックすることで、消火ヘッドからの誤散布を防止し、2次シリンダ室の圧力が所定の設定圧に達すると、ロック制御弁が開いて1次ポート側の加圧消火用水を第2シリンダ室に供給して1次シリンダ室との差圧をなくして弁体の差圧による閉鎖ロックを解除し、火災による感熱ヘッドの開放作動で弁体を開放可能とする状態に自動的に復帰することが、ロック解除のための作業を不要とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明による消火設備の実施形態を示した説明図である。図1において、地下階などには消火ポンプ設備として消火ポンプ10とモータ12が設置され、ポンプ制御盤14によるモータ12の起動で消火ポンプ10を運転し、水源水槽16の水を汲み上げて加圧供給し、給水本管18に供給するようにしている。
【0015】
給水本管18には混合器20が設けられ、薬剤タンク22から供給された消火剤を混合して消火剤水溶液を出力する。混合器20の2次側の給水本管18は、建物の高さ方向に立ち上げられており、給水本管18の途中から分岐管26を引き出している。分岐管26の引き出し部分には流水検知装置28が設けられている。
【0016】
流水検知装置28は流水検知スイッチ30と、遠隔制御により開閉動作させる開閉弁32を備えている。流水検知装置28は分岐管26の流水を検知して流水検知スイッチ30をオンし、流水検知信号E1を出力する。また外部からの制御信号により開閉弁32を制御することで、流水検知装置28に一体に設けた制御弁を開閉制御できるようにしている。
【0017】
流水検知装置28の2次側の分岐管26は駐車場などの消火対象区画に引き出されており、本発明による開放弁装置35と感熱ヘッド36を備えた開放型の消火ヘッド34を接続している。また左端の消火ヘッド34については、その設置場所にダクト37が存在しているため、ダクト37の上部の空きスペースに開放弁装置35と感熱ヘッド36を設置し、消火ヘッド34をダクト37の下側に分離配置し、開放弁装置35を配管接続している。また開閉弁装置35に対し配管接続により分離配置される消火ヘッド34としては、必要に応じて複数の消火ヘッド34や放射用ノズルを配管接続するようにしても良い。
【0018】
分岐管26の末端には末端試験弁38が設けられ、末端試験弁38の2次側は排水管に接続される。消火ヘッド34を設置した消火対象区画に対しては火災感知器39が設置される。
【0019】
一方、消火ポンプ10の近傍には圧力タンク25が設置され、圧力タンク25は給水本管18に分岐接続されて管内圧力を導入して内部の空気を圧縮しており、内部の圧縮空気により圧力スイッチ27を作動させるようにしている。圧力スイッチ27は、閉鎖型ヘッド34の作動で給水本管18の管内圧力が所定圧力以下に低下したときに圧力検出信号E5をポンプ制御盤14に出力し、消火ポンプ10を起動させる。
【0020】
また消火ポンプ10に対しては、呼水を供給する呼水槽31が設置されている。更に給水本管18は、屋上などに設置した高架水槽に接続され、高架水槽からの水圧を受けて管内圧力を保持できるようにしている。
【0021】
このような消火設備は制御盤33により制御される。制御盤33には流水検知装置28に設けられた流水検知スイッチ30からの流水検知信号E1と火災感知器39からの火災信号E2が入力され、流水検知信号E1と火災信号E2に基づき、制御信号E3により開閉弁32を制御し、開閉弁32の開閉制御に伴って、流水検知装置28に設けている制御弁を開閉制御する。
【0022】
また薬剤タンク22から混合器20に対する薬剤供給管には薬剤タンク元弁24が設けられており、薬剤タンク元弁24は制御盤33からの制御信号E4により開閉制御される。流水検知装置28に設けた開閉弁32と薬剤供給管に設けた薬剤タンク元弁24としては、電動弁あるいは電磁弁などの遠隔制御可能な制御弁を用いる。
【0023】
制御盤33による流水検知装置28に設けた制御弁及び薬剤タンク元弁24の開閉制御は次のようになる。
(1)通常の監視時は、流水検知装置28の制御弁及び薬剤タンク元弁24を開状態に維持している。
(2)流水検知信号E1が得られた際に火災信号E2が得られている場合は、流水検知装置28の制御弁及び薬剤タンク元弁24の開状態を維持する。
(3)流水検知信号E1が得られた際に火災信号E2が得られていない場合は、流水検知装置28の制御弁及び薬剤タンク元弁24を閉状態に制御し、その後に火災信号E2が得られた際に流水検知装置28の制御弁及び薬剤タンク元弁24を開状態に制御する。
【0024】
図2は本発明による開放弁装置の第1実施形態を示した断面図である。図2において、第1実施形態の開放弁装置35Aは、ボディ40の上部にカバー42をねじ込み固定している。ボディ40の右側には図1の給水本管18側からの加圧消火用水が供給される1次ポート44が設けられ、下側に閉鎖型ヘッド34を配管接続する2次ポート46を設けている。
【0025】
ボディ40内の2次ポート46の流入側には弁座47が形成され、弁座47に対し弁体58を開閉自在に配置している。弁体58は弁座47側に弁シール60を設け、シール押え62で固定している。
【0026】
弁体58は、シリンダ50に摺動自在に収納したピストン52による弁制御機構により開閉駆動される。弁体58の上部の軸部は、シリンダ50に摺動自在に収納したピストン52に固定されている。ピストン52はスプリング55により閉鎖方向に付勢されている。ピストン52の上側には第1シリンダ室54が形成される。
【0027】
第1シリンダ室54は弁体58の内部に形成された第1連通路64により1次ポート44側と連通されている。このため弁体58の閉鎖状態で1次ポート44に加圧消火用水が供給されると、加圧消火用水は弁体58の第1連通路64を通って第1シリンダ室54に供給される。
【0028】
第1シリンダ室54の上部には感熱ポート48が設けられており、感熱ポート48には感熱配管45により閉鎖型の感熱ヘッド36を接続している。
【0029】
ピストン52の下側には第2シリンダ室56が形成されている。ピストン52には第2連通路65が貫通形成されている。このため第1連通路64を通って第1シリンダ室54に供給された加圧消火用水は、更に、第2連通路65を通って第2シリンダ室56に供給されるようになる。なお、ピストン52の外周部にはシール53が装着され、第1シリンダ室54と第2シリンダ室56を仕切り形成している。
【0030】
ピストン52の下側の第2シリンダ室56は、途中に設けたスプール弁穴68を通る第3連通路66a,66bにより1次ポート44側に連通している。第3連通路66a、66bの途中に形成されたスプール弁穴68には、本実施形態の充水ロック制御機構を構成するロック制御弁70が設けられている。
【0031】
ロック制御弁70はスプール弁体72の先端側にシール74,75を装着しており、シール74により第1シリンダ室54側の第3連通路66bと1次ポート44側の第3連通路66aを仕切っている。
【0032】
スプール弁体72の組込部分に対しては外部からスプールカバー76がねじ込み固定され、スプール弁体72とスプールカバー76との間にスプリング78を配置し、スプール弁体72を閉鎖方向に付勢している。またスプール弁体72の外部に取り出した後部にはネジ部80が形成され、ネジ部80に2つのナット82をねじ込み、閉鎖状態でスプール弁体72が第3連通路66a,66bの間を仕切る閉鎖位置に調整した後にロックしている。
【0033】
図3は図2の第1実施形態の模式的構成を示した説明図である。図3の模式的構成にあっては、1次ポート44に加圧消火用水が供給される前の状態を示している。この状態で1次ポート44に圧力Piの加圧消火用水が供給されると、弁体58はスプリング55の力により閉鎖していることから、加圧消火用水は第1連通路64を通って第1シリンダ室54に供給され、更に感熱ポート48から感熱配管45を通って感熱ヘッド36側に供給される。また第1シリンダ室54に供給された加圧消火用水は、第2連通路65を通って第2シリンダ室56に供給されるようになる。
【0034】
ここで第1シリンダ室54の圧力をP1、第2シリンダ室56の圧力をP2とすると、感熱配管45に対する加圧消火用水の充水中における圧力P1,P2の変化は図4のタイムチャートに示すようになる。
【0035】
図4において、時刻t0で1次ポート44に加圧消火用水を供給したとすると、第1連通路64からの加圧消火用水の供給による感熱配管45への充水に伴い、第1シリンダ室54の圧力P1は時間の経過に伴って1次ポート44の圧力Piに向かって増加する。
【0036】
一方、第2シリンダ室56の圧力P2は、感熱配管45に対する充水中は第2連通路65からの供給がほとんどないため、時間の経過に対し、わずかに増加するだけである。
【0037】
第2シリンダ室56に供給された加圧消火用水による圧力P2は、第3連通路66a,66bの間に設けているロック制御弁70に対し制御圧力Pcとして加わる。この制御圧力Pcは、図2のスプール弁体72をスプリング78に抗して開放方向に押す力を発生する。
【0038】
したがって、第2シリンダ室56の圧力P2の上昇に伴い制御圧力Pcが上昇し、時刻t1でスプリング78の設定圧Pthに達して越えると、ロック制御弁70が第3連通路66a,66bを開放し、1次ポート44側の加圧消火用水が開放状態にあるロック制御弁70を通って直接、第2シリンダ室56に供給され、時刻t1から圧力P2は急激に上昇し、第1シリンダ室54の圧力P1と同圧になる。この時刻t1でロック制御弁70が開動作した点がロック解除点74となる。
【0039】
図5は図4のロック解除点74に達してロック制御弁70が開動作した状態を示した断面図である。ロック制御弁70の開動作により、1次ポート44側の第3連通路66aと第2シリンダ室56側の第3連通路66bの間がスプール弁穴68を介して連通し、1次ポート44に供給されている加圧消火用水が、矢印で示すように第3連通路66a,66bを通って直接、第2シリンダ室56に供給され、第2シリンダ室56の圧力が急激に上昇することになる。
【0040】
図4のタイムチャートにおける加圧消火用水の供給を開始した時刻t0から、ロック制御弁70が開動作する時刻t1のロック解除点74までの間、第2シリンダ室56の圧力P2は第1シリンダ室54の圧力P1を下回っている。このためピストン52には、圧力P1,P2の差圧(P1−P2)による力にスプリング55の力を加えた下向きの力が作用し、この力によって弁体58を閉鎖位置にロックすることができる。
【0041】
このため1次ポート44に加圧消火用水を供給しても弁体58は開くことがなく、2次ポート46を通って開放型の消火ヘッド34に消火用水が供給されて誤散布してしまうことを確実に防止できる。
【0042】
更に、加圧消火用水の供給から、ある時間を経過すると、第2シリンダ室56の圧力P2の上昇に伴ってロック制御弁70が開動作し、第2シリンダ室56の圧力を上昇することで、第1シリンダ室54の圧力P1とほぼ同圧とする。これによって第1シリンダ室54の圧力P1と第2シリンダ室56の圧力P2の差圧(P1−P2)による弁体58を閉鎖方向に押す力がなくなり、弁体58はスプリング55の力のみによって閉鎖位置に保持され、この状態で感熱ポート48に感熱配管45を介して接続している感熱ヘッド36が開放動作した場合に、弁体58を開放可能な状態としている。
【0043】
図6は第1実施形態における火災時の散布動作を示した断面図である。図6において、感熱ヘッド36が火災による熱気流を受けて開放すると、感熱配管45を通って開放弁装置35Aの第1シリンダ室54の加圧消火用水が放出され、第1シリンダ室54の圧力P1が低下する。
【0044】
この第1シリンダ室54の圧力P1の低下に対し、第2シリンダ室56の圧力P2は第2連通路65からなる絞りを通って抜けるため、圧力P1の低下に対し圧力P2の低下が遅くなり、ピストン52は第2シリンダ室56の高い方の圧力P2により押されて、スプリング55に対して上方に移動し、弁体58の弁シール60を弁座47から離して弁を開く。
【0045】
弁シール60が弁座47から離れて弁体58が開くと、1次側からの加圧消火用水の圧力Piにより弁体54は上方向に押され、スプリング55を圧縮して図示の開位置に保持され、1次ポート44から供給された加圧消火用水を2次ポート46に供給し、2次ポート46に配管接続している消火ヘッド34から散布することになる。なお、開放弁装置35Aに感熱ヘッド36、消火ヘッド34を直接取り付けても良いし、一体で組み立てられても良い。
【0046】
図7は本発明による開放弁装置の第2実施形態を示した断面図であり、図8に図7の第2実施形態の模式的構成を示している。
【0047】
図7において、第2実施形態は、充水ロック制御機構を構成するロック制御弁を配管接続により外部に設けるようにしたことを特徴とする。
【0048】
図7において、第2実施形態の開放弁装置35Bはボディ86とカバー88で構成され、ボディ86の右側に1次ポート90を形成し、左側に2次ポート92を形成している。1次ポート90と2次ポート92の間には両者を仕切る仕切壁98が形成され、仕切壁98の部分に設けた弁座100に対し、弁シール104を備えた弁体102を開閉自在に配置している。
【0049】
弁体102は上部にピストン110を一体に形成している。ピストン110はボディ86の上部のシリンダに摺動自在に収納され、上部に第1シリンダ室106を形成し、スプリング111により閉鎖方向に付勢されている。ピストン110は更に下側に第2シリンダ室108を形成している。
【0050】
弁体102には、1次ポート90から第4シリンダ室106に至る第1連通路114を形成している。第1連通路114の途中には逆止弁115が設けられている。またピストン110には、第1シリンダ室106を第2シリンダ室108に連通する第2連通路116が設けられている。
【0051】
第1シリンダ室106の上部には感熱ポート94が設けられ、感熱ポート94に対し感熱配管95を接続している。この実施形態にあっては、感熱配管95に2台の感熱ヘッド36を接続し、更に末端側に手動起動装置96を設けている。なおピストン110に相対するカバー88側にはストッパ118が装着され、ピストン110の開放状態における位置を決めている。
【0052】
第2シリンダ室108の右側には第1制御ポートC1が形成され、また1次ポート90側には第2制御ポートC2が形成され、この第1制御ポートC1と第2制御ポートC2の間に連通配管125によりロック制御弁120を接続している。
【0053】
ロック制御弁120は設定スプリング122を備え、制御配管127により供給されする制御圧力Pcが設定スプリング122により設定された設定圧力Pthを上回ると、開動作を行って、第1制御ポートC1と第2制御ポートC2の間を連通する。
【0054】
またロック制御弁120に対する第1制御ポートC1側の連通配管125にはオリフィス124が設けられ、第2制御ポートC2側の連通配管125aには逆止弁126が設けられている。
【0055】
次に図8の模式的構成を参照して第2実施形態の開放弁装置35Bの動作を説明する。消火設備の使用に先立ち、初期的に1次ポート90に対し圧力Piの加圧消火用水を供給すると、初期状態にあっては、弁体102はスプリング111の力により閉鎖しているため、1次ポート90に供給された加圧消火用水は弁体102の第1連通路114及び逆止弁115を通って第1シリンダ室106に流れ、更に感熱ポート94から感熱配管95に流れ、充水を開始する。また第1シリンダ室106に流れ込んだ加圧消火用水は、第2連通路116を通って第2シリンダ室108に流れ込む。
【0056】
ここで第1シリンダ室106の圧力をP1、第2シリンダ室108の圧力をP2とすると、第1実施形態における図4のタイムチャートと同様、第2シリンダ室108の圧力P2はロック制御弁120に制御圧力Pcとして供給されており、設定スプリング122による設定圧Pthに達する時刻t1までの間、第1シリンダ室106の圧力P1より低いため、両者の差圧(P1−P2)によりピストン110を下向きに押す力にスプリング111の力を加えた力で、弁体102を閉鎖位置にロックしている。
【0057】
感熱配管95の充水が進んで第1シリンダ室106の圧力P1が上昇すると、第2シリンダ室108の圧力P2も上昇し、図4の時刻t1でロック解除点74に達し、ロック制御弁120が開く。即ち、第2シリンダ室108の圧力P2による制御圧力Pcが設定スプリング122による設定圧Pthを超えることで、ロック制御弁120が開放動作を行い、第1制御ポートC1と第2制御ポートC2の間を連通する。
【0058】
このため、1次ポート90に供給されている加圧消火用水が、第2制御ポートC2、逆止弁126、開放状態にあるロック制御弁120及びオリフィス124を通って、第2シリンダ室108に供給され、図4に示したように、ロック解除点74から圧力P2が急激に上昇して第1シリンダ室106の圧力P1と同圧となり、圧力差(P1−P2)による弁体102のロック状態を解除し、感熱ヘッド36の開放作動に伴い弁体102を開放可能な状態に移行する。
【0059】
その後の監視中に、火災による熱気流を受けて感熱ヘッド36が開放すると、第1シリンダ室106の加圧消火用水が放出されることで圧力P1が低下し、圧力P1の低下に伴って弁体102が開き、一度開くと、弁体102に対する1次ポート90からの加圧消火用水の圧力により、スプリング111に抗して弁体102は開放位置に動作し、1次ポート90から供給された加圧消火用水を2次ポート92を通して消火ヘッド34に供給して散布するようになる。
【0060】
図9は本発明による弁開放装置の第3実施形態を示した断面図であり、図10に第3実施形態の模式的構成を示している。この第3実施形態は、充水ロック制御機構を構成するロック制御弁を外部に配管接続すると共に、第1シリンダ室と第2シリンダ室を連通する連通路についても外部配管により接続するようにしたことを特徴とする。
【0061】
図9において、第3実施形態の開放弁装置35Cは、ボディ130の上部にカバー132を装着固定している。ボディ130の左側には1次ポート134が形成され、右側には2次ポート135が形成され、その間に両者を仕切る仕切壁138を設けている。仕切壁138には弁穴140が設けられ、1次ポート134側の部分に弁座143を形成している。
【0062】
弁穴140に対しては、弁座143に当接する弁シール146を備えた弁体144が開閉自在に配置される。弁体144はピストン142の下方に一体に延在したロッド部分にねじ込まれ、更にガイドロッド145の先端に固定され、ガイドロッド145は上部をカバー132に摺動自在に挿入している。
【0063】
ピストン142はカバー132側に設けたシリンダ側に摺動自在に設けられ、ピストン142の上部に第1シリンダ室148を形成し、ピストン142の下側に第2シリンダ室150を形成している。
【0064】
第1シリンダ室148の上部右側には感熱ポート136が設けられ、感熱ポート136に、感熱配管135により感熱ヘッド136を接続している。また第1シリンダ室148の上部左側には第1制御ポートC1が設けられ、一方、第2シリンダ室150の左側には第2制御ポートC2が設けられている。
【0065】
第1シリンダ室148の第1制御ポートC1と第2シリンダ室150の第2制御ポートC2は連通配管152により接続されており、連通配管152の途中にはオリフィス162を設けている。
【0066】
更に、1次ポート134に設けた第3制御ポートC3からの連通配管154と第1シリンダ室148の第1制御ポートC1からの連通配管152の間に、ロック制御弁156を接続している。ロック制御弁156は設定スプリング158により開動作のための設定圧力Pthを設定しており、制御配管160により加わる制御圧力Pcによる力が設定スプリング158の設定圧力Pthを超えると開動作を行う。
【0067】
ロック制御弁156を開閉動作する制御圧力Pcは、連通配管152を接続した第2制御ポートC2から得られる第2シリンダ室150の圧力P2を使用する。
【0068】
次に図10の模式構成を参照して第3実施形態の開閉弁装置35Cの動作を説明する。消火設備において、設置する際の初期的な加圧消火用水の供給が1次ポート134に対し行われると、このとき弁体144はスプリング147の力により閉鎖位置にあるため、加圧消火用水は連通路151を通って第1シリンダ室148に流れ込み、感熱ポート136から感熱配管137を通って感熱ヘッド36側に充水される。
【0069】
更に、第1シリンダ室148に供給された加圧消火用水は、第1制御ポートC1から連通配管152を通って第2制御ポートC2から第2シリンダ室150に供給される。感熱配管137に対する加圧消火用水の充水中は、図4のタイムチャートに示したように、第1シリンダ室148の圧力P1が第2シリンダ室150の圧力P2より高く、その差圧(P1−P2)による力がピストン142に発生し、スプリング147による力と合わせて弁体144を閉鎖位置にロックし、消火ヘッド34からの誤散布を防止する。
【0070】
感熱配管137の充水が進行すると、第1シリンダ室148の圧力P1の増加に伴って第2シリンダ室150の圧力P2も増加し、ロック制御弁156に制御圧力Pcとして加えられている第2シリンダ室150の圧力P2が設定スプリング158による設定圧力Pthに達すると、ロック制御弁156が開動作する。
【0071】
このため第3制御ポートC3と第2制御ポートC2の間が連通し、1次ポート134に供給されている加圧消火用水が第2シリンダ室150に供給されることで圧力P2が急激に上昇し、第1シリンダ室148の圧力P1と同圧となり、差圧(P1−P2)による弁体144の閉鎖位置へのロックを解除し、充水完了で監視状態に移行する。
【0072】
その後の監視中に、火災による熱気流を受けて感熱ヘッド36が開放作動すると、第1シリンダ室148の圧力P1が抜けることで、ピストン142が第2シリンダ室150の圧力P2を受けて弁体144を開動作し、弁体144が開動作すると1次側の加圧消火用水の圧力を受けて弁体144は開放位置に動作し、1次ポート140に供給された加圧消火用水を、開放状態にある弁体144を介して2次ポート135に供給し、消火ヘッド134から散布するようになる。
【0073】
なお。第2制御ポートC2と第3制御ポートC3を手動切替弁を介して別途配管接続し、手動切替弁を開操作することで、強制的にロック解除させるフェールセーフ機構を設けてもよい。
【0074】
図11は本発明による開放弁装置の第4実施形態を模式的構成で示した説明図である。この第4実施形態にあっては、第1実施形態乃至第3実施形態が第2シリンダ室を1次ポート側に設けていたのに対し、第4実施形態にあっては第2シリンダ室を2次ポート側に設けるようにしたことを特徴とする。
【0075】
図11において、第4実施形態の開放弁装置35Dは、ボディ168の左側に加圧消火用水が供給される1次ポート170を設け、右側に消火ヘッド34が配管接続される2次ポート172を設けている。1次ポート170と2次ポート172の間の仕切壁の部分の弁座に対しては弁体177が開閉自在に設けられている。
【0076】
弁体177の1次ポート170側に位置する上部には第1ピストン176が摺動自在に設けられ、第1ピストン176の上部に第1シリンダ室174を形成しており、第1ピストン176はスプリング175により弁体177を閉鎖方向に付勢している。第1シリンダ室174には感熱ポート173が設けられ、感熱配管179により感熱ヘッド36を接続している。
【0077】
また第1シリンダ室174に対しては、配管182により逆止弁184を介して1次ポート170側が接続されている。なお、配管182による1次ポート170側との接続に代え、第1ピストン176自身に1次ポート170側と第1シリンダ室174を連通する連通路を形成してもよい。
【0078】
一方、ボディ168の2次ポート172側には第2シリンダ室178が形成され、第1ピストン176に連結された第2ピストン180を摺動自在に収納している。第2シリンダ室178には第1制御ポートC1が設けられ、また1次ポート170側には第2制御ポートC2が設けられ、両者の間に、連通配管186によりロック制御弁190を設けている。
【0079】
ロック制御弁190は設定スプリング192により弁開放のための設定圧力Pthを設定しており、制御配管188による制御圧力Pcが設定圧力Pthに達すると開放動作を行う。ロック制御弁190に対する制御配管188は第1シリンダ室174の第3制御ポートC3に接続しており、制御配管188は途中にオリフィス196を設けている。
【0080】
次に第4実施形態の開放弁装置35Dの動作を説明する。消火設備における配管内に充水するための初期的な加圧消火用水の供給が1次ポート170に対して行われると、このとき弁体177はスプリング175により閉鎖されており、1次ポート170に供給された加圧消火用水は外部配管182から逆止弁184を通って第1シリンダ室174に供給され、更に感熱ポート173を通って感熱配管179側に充水される。
【0081】
第1シリンダ室174の圧力P1は、感熱配管179側に対する充水中は圧力が低く、充水が進むにつれて徐々に増加する。
【0082】
また感熱配管179側に対する充水中は、第1ピストン176にスプリング175による力と第1シリンダ室174に加わる圧力P1による力を合わせた力で弁体177を閉鎖位置にロックしている。
【0083】
充水が進んで第1シリンダ室174の圧力P1がロック制御弁190の設定スプリング192による設定圧力Pthに達すると、ロック制御弁190が開動作を行う。このため、連通配管186を介して1次ポート170側の加圧消火用水が第2シリンダ室178に供給され、第2シリンダ室178の圧力P2が増加し、第2ピストン180を上方即ち弁体177の開方向に押すことになる。
【0084】
ここで第1ピストン176の受圧面積と第2ピストン180の受圧面積を同じにしていると、第1ピストン176に加わる第1シリンダ室174の圧力P1による閉鎖方向の力と第2シリンダ室178の圧力P2により第2ピストン180に加わる弁体177の開放方向の力は、ほぼ一致して相殺され、弁体177にはスプリング175による閉鎖方向の力のみが加わった開放可能状態となる。
【0085】
このようにロック解除を経て充水が完了すると、通常の監視状態に入る。その後の監視中に、火災による熱気流を受けて感熱ヘッド36が開放作動すると、第1シリンダ室174の圧力が抜け、第2シリンダ室178の圧力によるピストン180の開放方向の力を受けて弁体177が開放し、弁体177が一旦開けば1次ポート170からの加圧消火用水の力を受けて開放位置に固定され、2次ポート172に接続した消火ヘッド34から加圧消火用水を散布することになる。
【0086】
なお図7及び図8の第2実施形態に設けている逆止弁115,126及びオリフィス124は、必ずしも設ける必要はない。この点は第3実施形態の逆止弁164とオリフィス162についても同様であり、更に第4実施形態の逆止弁184,194及びオリフィス196についても同様である。
【0087】
また本発明にあっては、弁を開閉するためのピストンの一方に形成される第1シリンダ室に加えて反対側に第2シリンダ室を形成し、この第2シリンダ室を経由した圧力上昇の遅延によりロック制御弁を制御して、充水中のロック状態から充水完了に伴うロック解除を行うことを特徴としており、このような基本的な機能を備える適宜の構造につき、そのまま本発明を適用することができる。
【0088】
また本実施形態は、図1に示すように泡消火設備に適用したものであるが、スプリンクラー消火設備などにも適用できる。
【0089】
また本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に本発明は上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1は本発明の開放弁装置が使用された消火設備の説明図
【図2】本発明による開放弁装置の第1実施形態を示した断面図
【図3】図2の第1実施形態の模式的構成を示した説明図
【図4】第1実施形態における充水時の第1シリンダ室と第2シリンダ室の圧力変化を示したタイムチャート
【図5】第1実施形態における充水中の動作を示した断面図
【図6】第1実施形態における火災時の散布動作を示した断面図
【図7】本発明による開放弁装置の第2実施形態を示した断面図
【図8】図7の第2実施形態の模式的構成を示した説明図
【図9】本発明による開放弁装置の第3実施形態を示した断面図
【図10】図9の第3実施形態の模式的構成を示した説明図
【図11】本発明による開放弁装置の第4実施形態を模式的構成で示した説明図
【図12】従来の開放弁を備えた消火ヘッドの説明図
【図13】ピンにより弁体を固定した従来の開放弁を備えた消火ヘッドの説明図
【符号の説明】
【0091】
10:消火ポンプ
12:モータ
14:ポンプ制御盤
16:水源水槽
18:給水本管
20:混合器
22:薬剤タンク
24:薬剤タンク元弁
25:圧力タンク
26:分岐管
27:圧力スイッチ
28:流水検知装置
30:流水検知スイッチ
31:呼水槽
33:制御盤
32:開閉弁
34:消火ヘッド
35A〜35D:開閉弁装置
36:感熱ヘッド
38:末端試験弁
39:火災感知器
40,86,130,168:ボディ
42,88,132:カバー
44,90,134,170:1次ポート
45,95,137,179:感知配管
46,92,135,172:2次ポート
47,100,143:弁座
48,94,136,173:感熱ポート
50,94:シリンダ
52,110,142:ピストン
53,74,75,112:シール
54,106,148,174:第1シリンダ室
55,78,111,147:スプリング
56,108,150,178:第2シリンダ室
58,102,144,177:弁体
60,104,146:弁シール
62:シール押え
64,114:第1連通路
65,116:第2連通路
66a,66b:第3連通路
68:スプール穴
70,120,156,190:ロック制御弁
72:スプール弁体
76:スプールカバー
80:ネジ部
82:ナット
98:仕切壁
115,126,164,194:逆止弁
118:ストッパ
122,158,192:設定スプリング
124,162,196:オリフィス
125,152,186:連通配管
127,160,188:制御配管
140:弁穴
145:ガイドロッド
154:配管
176:第1ピストン
180:第2ピストン
C1:第1制御ポート
C2:第2制御ポート
C3:第3制御ポート
【技術分野】
【0001】
本発明は、感知配管に設けた閉鎖型の感熱ヘッドの火災による熱気流を受けた際の開放作動により弁を開動作して開放型の消火ヘッドから水又は消火薬剤を散布する消火設備用開放弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駐車施設などの防護区画に設置される消火ヘッドとしては例えば図12に示すものがある(特許文献1)。図12において、ヘッド本体201の下部に開放型の放射散布部202と、上部に感熱作動部203を備え、ヘッド本体201内に弁体236を備えて常時は流路を閉鎖し、感熱作動部203が作動すると内部のパイロット弁236を開放させて放射散布部202から消火用水を放射する。
【0003】
パイロット弁236は内部に連通穴237を備え、ヘッド流入口206からの消火用水を感熱作動部203側に供給し、パイロット室240に入った消火用水の水圧によりパイロット弁236を下降させて閉止する。感熱作動部203が作動すると、パイロット室240が開放されるため、パイロット弁236が上昇することで、放射散布部202から消火用水が放射される。
【0004】
しかしながら、このような従来の構造では、消火ヘッドに消火用水を最初に充水する時に、消火用水が消火ヘッドから漏れる可能性があった。つまり、パイロット室240にまだ消火用水が充水されていないときに、ヘッド流入口206から消火用水が流入すると、パイロット室240側に圧力がないため、ヘッド流入ロ206の消火用水がパイロット弁236を押し上げてしまい、パイロット室240が充水されて圧力が発生するまでのあいだ、放射散布部202から放射がされてしまう問題がある。
【0005】
このような初期充水時の誤放射を防ぐための対策として、図13に示す開放弁が知られている(特許文献2)。図13において、感熱作動部307を接続した開放弁301内に弁体303を備え、初期的な消火用水の充水時に弁体303の動きを固定するためのストッパー305を備える。この構造により弁体303が開放することなく充水作業を行うことができるので、ヘッドからの誤散水を防ぐことができる。
【特許文献1】特開2001−238977号公報
【特許文献2】特開2001−340485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなストッパーにより弁体を固定した構造の消火ヘッド用の開放弁にあっては、駐車施設などの防護区画に対し例えば1000個を越える規模で多数取付けられており、それぞれストッパー305を使用して充水作業を行うのは非常に煩雑である。また、充水後に全ての消火ノズルの開放弁からストッパー305を外して固定を解除しなければならず、その作業が煩雑であると共に、解除忘れがあると、火災時に弁体314が動かないため、放射が行われないという重大な問題を起こす恐れがある。
【0007】
本発明は、初期的な充水時に弁体がロックされ、手動による解除操作を必要とすることなく充水が完了したら弁体が自動的にロック解除となるようにした操作性に優れた消火設備用開放弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は消火設備用開放弁装置を提供する。即ち、本発明は、
加圧消火用水が供給される1次ポートと、
消火ヘッドを備えた配管が接続される2次ポートと、
火災により開放作動する閉鎖型感知ヘッドを備えた感知配管が接続される感熱ポートと、
1次ポートと2次ポートとの間の流路を開閉する弁体と、
感知配管に充水した加圧消火用水の圧力により前記弁体を閉鎖状態とし、感知ヘッドの開放作動による感知配管の圧力低下により弁体を開放状態に制御する弁制御機構と、
を備えた消火設備用開放弁装置に於いて、
感知配管に1次側から加圧消火用水を充水中に弁体を閉鎖位置にロックし、充水完了でロックを解除する充水ロック制御機構を設けたことを特徴とする。
【0009】
ここで、弁制御機構は、
シリンダに摺動自在に収納され、弁体に連結されたピストンと,
ピストンの一方に形成され、感知ポートと連通する第1シリンダ室と、
第1シリンダ室に1次ポートから加圧消火用水を導入する第1連通路と、
ピストンを弁体の閉鎖方向に付勢するスプリングと、
を備え、
充水ロック制御機構は、
ピストンの他方に形成された第2シリンダ室と、
第2シリンダ室に第1シリンダ室を経由して1次ポートからの加圧消火用水を導入するピストンに貫通形成された第2連通路と、
1次ポートを第2シリンダ室に連通する第3連通路に設けられ、第2シリンダ室の加圧消火用水を制御圧として導入し、制御圧が所定値未満の場合は閉動作して第3連通路を閉鎖して第2シリンダ室を上回る第1シリンダ室の圧力によるピストンの押圧で弁体を閉鎖状態にロックし、制御圧が前記所定値以上となった時に第3連通路を開動作して1次ポートの加圧消火用水を第2シリンダ室に導入することにより第1シリンダ室と略同圧にして、前記弁体を開放可能なロック解除状態とするロック制御弁と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の別の形態として、
弁制御機構は、
シリンダに摺動自在に収納され、弁体に連結されたピストンと,
ピストン一方に形成され、感知ポートと連通する第1シリンダ室と、
第1シリンダ室に1次ポートから加圧消火用水を導入する第1連通路と、
ピストンを弁体の閉鎖方向に付勢するスプリングと、
を備え、
充水ロック制御機構は、
ピストンでの他方に形成された第2シリンダ室と、
第2シリンダ室に第1シリンダ室を経由して1次ポートからの加圧消火用水を導入する第2連通路と、
第2シリンダ室に連通する第1制御ポートと1次ポートに連通する第2制御ポートとの間に外部配管により接続され、第2シリンダ室の加圧消火用水を制御圧として導入し、制御圧が所定値未満の場合は閉動作して第1制御ポートと第2制御ポートを切り離して第2シリンダ室を上回る第1シリンダ室の圧力によるピストンの押圧で弁体を閉鎖状態にロックし、制御圧が所定値以上となった時に開動作して第1制御ポートと第2制御ポートを連通して1次ポートの加圧消火用水を第2シリンダ室に導入することにより、第1シリンダ室と略同圧にして弁体を開放可能なロック解除状態とするロック制御弁と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の別の形態として、
弁制御機構は、
シリンダに摺動自在に収納され、弁体に連結されたピストンと,
ピストンの一方に形成され、感知ポートと連通する第1シリンダ室と、
第1シリンダ室に1次ポートから加圧消火用水を導入する第1連通路と、
ピストンを弁体の閉鎖方向に付勢するスプリングと、
を備え、
充水ロック制御機構は、
ピストンの他方に形成された第2シリンダ室と、
第1シリンダ室に連通する第1制御ポートと第2シリンダ室に連通する第2制御ポートとの間を外部接続し、第2シリンダ室に第1シリンダ室を経由して1次ポートからの加圧消火用水を導入する外部連通配管と、
第2シリンダ室に連通する第2制御ポートと1次ポートに連通する第3制御ポートとの間に外部配管により接続され、第2シリンダ室の加圧消火用水を制御圧として導入し、制御圧が所定値未満の場合は閉動作して第制御ポートと第3制御ポートを切り離して第2シリンダ室を上回る第1シリンダ室の圧力によるピストンの押圧で弁体を閉鎖状態にロックし、制御圧が前記所定値以上となった時に開動作して第3制御ポートから1次ポートの加圧消火用水を第2シリンダ室に導入することにより第1シリンダ室と同圧にして、弁体を開放可能なロック解除状態とするロック制御弁と、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の別の形態にあっては、
弁制御機構は、
弁体に対し1次ポート側に配置された第1シリンダと、
第1シリンダに摺動自在に収納され、弁体に連結された第1ピストンと,
第1ピストンの一方に形成され、感知ポートと連通する第1シリンダ室と、
第1シリンダ室に1次ポートから加圧消火用水を導入する第1連通路と、
ピストンを弁体の閉鎖方向に付勢するスプリングと、
を備え、
充水ロック制御機構は、
弁体に対し2次ポート側に配置された第2シリンダと、
第2シリンダに摺動自在に収納され、弁体に連結された第2ピストンと、
第2ピストンで仕切られた第2シリンダ室と、
1次ポートに連通する第1制御ポートと第2シリンダ室に連通する第2制御ポートとの間に外部接続され、第1シリンダ室に連通する第3制御ポートを経由して1次ポートからの加圧消火用水を制御圧とし導入し、1次ポートに加圧消火用水が供給された際に、制御圧が所定値未満の場合は閉動作して第2シリンダ室を1次ポート側から切り離して第1ピストンの押圧により弁体を閉鎖状態にロックし、制御圧が所定値以上となった時に開動作して1次ポート加圧消火用水を第2シリンダ室に導入して第2ピストンの押圧により第1ピストンの押圧を相殺して、弁体を開放可能なロック解除状態とするロック制御弁と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、初期的な加圧消火用水の充水時に、感熱ヘッドを接続した感知配管に対し充水が完了するまでの間、感知配管へ供給する加圧消火用水が加わる1次シリンダ室と、1次シリンダ室に対し圧力増加が遅延する2次シリンダ室との圧力差により弁体を閉鎖位置に押圧してロックすることで、消火ヘッドからの誤散布を防止し、2次シリンダ室の圧力が所定の設定圧に達すると、ロック制御弁が開いて1次ポート側の加圧消火用水を第2シリンダ室に供給して1次シリンダ室との差圧をなくして弁体の差圧による閉鎖ロックを解除し、火災による感熱ヘッドの開放作動で弁体を開放可能とする状態に自動的に復帰することが、ロック解除のための作業を不要とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明による消火設備の実施形態を示した説明図である。図1において、地下階などには消火ポンプ設備として消火ポンプ10とモータ12が設置され、ポンプ制御盤14によるモータ12の起動で消火ポンプ10を運転し、水源水槽16の水を汲み上げて加圧供給し、給水本管18に供給するようにしている。
【0015】
給水本管18には混合器20が設けられ、薬剤タンク22から供給された消火剤を混合して消火剤水溶液を出力する。混合器20の2次側の給水本管18は、建物の高さ方向に立ち上げられており、給水本管18の途中から分岐管26を引き出している。分岐管26の引き出し部分には流水検知装置28が設けられている。
【0016】
流水検知装置28は流水検知スイッチ30と、遠隔制御により開閉動作させる開閉弁32を備えている。流水検知装置28は分岐管26の流水を検知して流水検知スイッチ30をオンし、流水検知信号E1を出力する。また外部からの制御信号により開閉弁32を制御することで、流水検知装置28に一体に設けた制御弁を開閉制御できるようにしている。
【0017】
流水検知装置28の2次側の分岐管26は駐車場などの消火対象区画に引き出されており、本発明による開放弁装置35と感熱ヘッド36を備えた開放型の消火ヘッド34を接続している。また左端の消火ヘッド34については、その設置場所にダクト37が存在しているため、ダクト37の上部の空きスペースに開放弁装置35と感熱ヘッド36を設置し、消火ヘッド34をダクト37の下側に分離配置し、開放弁装置35を配管接続している。また開閉弁装置35に対し配管接続により分離配置される消火ヘッド34としては、必要に応じて複数の消火ヘッド34や放射用ノズルを配管接続するようにしても良い。
【0018】
分岐管26の末端には末端試験弁38が設けられ、末端試験弁38の2次側は排水管に接続される。消火ヘッド34を設置した消火対象区画に対しては火災感知器39が設置される。
【0019】
一方、消火ポンプ10の近傍には圧力タンク25が設置され、圧力タンク25は給水本管18に分岐接続されて管内圧力を導入して内部の空気を圧縮しており、内部の圧縮空気により圧力スイッチ27を作動させるようにしている。圧力スイッチ27は、閉鎖型ヘッド34の作動で給水本管18の管内圧力が所定圧力以下に低下したときに圧力検出信号E5をポンプ制御盤14に出力し、消火ポンプ10を起動させる。
【0020】
また消火ポンプ10に対しては、呼水を供給する呼水槽31が設置されている。更に給水本管18は、屋上などに設置した高架水槽に接続され、高架水槽からの水圧を受けて管内圧力を保持できるようにしている。
【0021】
このような消火設備は制御盤33により制御される。制御盤33には流水検知装置28に設けられた流水検知スイッチ30からの流水検知信号E1と火災感知器39からの火災信号E2が入力され、流水検知信号E1と火災信号E2に基づき、制御信号E3により開閉弁32を制御し、開閉弁32の開閉制御に伴って、流水検知装置28に設けている制御弁を開閉制御する。
【0022】
また薬剤タンク22から混合器20に対する薬剤供給管には薬剤タンク元弁24が設けられており、薬剤タンク元弁24は制御盤33からの制御信号E4により開閉制御される。流水検知装置28に設けた開閉弁32と薬剤供給管に設けた薬剤タンク元弁24としては、電動弁あるいは電磁弁などの遠隔制御可能な制御弁を用いる。
【0023】
制御盤33による流水検知装置28に設けた制御弁及び薬剤タンク元弁24の開閉制御は次のようになる。
(1)通常の監視時は、流水検知装置28の制御弁及び薬剤タンク元弁24を開状態に維持している。
(2)流水検知信号E1が得られた際に火災信号E2が得られている場合は、流水検知装置28の制御弁及び薬剤タンク元弁24の開状態を維持する。
(3)流水検知信号E1が得られた際に火災信号E2が得られていない場合は、流水検知装置28の制御弁及び薬剤タンク元弁24を閉状態に制御し、その後に火災信号E2が得られた際に流水検知装置28の制御弁及び薬剤タンク元弁24を開状態に制御する。
【0024】
図2は本発明による開放弁装置の第1実施形態を示した断面図である。図2において、第1実施形態の開放弁装置35Aは、ボディ40の上部にカバー42をねじ込み固定している。ボディ40の右側には図1の給水本管18側からの加圧消火用水が供給される1次ポート44が設けられ、下側に閉鎖型ヘッド34を配管接続する2次ポート46を設けている。
【0025】
ボディ40内の2次ポート46の流入側には弁座47が形成され、弁座47に対し弁体58を開閉自在に配置している。弁体58は弁座47側に弁シール60を設け、シール押え62で固定している。
【0026】
弁体58は、シリンダ50に摺動自在に収納したピストン52による弁制御機構により開閉駆動される。弁体58の上部の軸部は、シリンダ50に摺動自在に収納したピストン52に固定されている。ピストン52はスプリング55により閉鎖方向に付勢されている。ピストン52の上側には第1シリンダ室54が形成される。
【0027】
第1シリンダ室54は弁体58の内部に形成された第1連通路64により1次ポート44側と連通されている。このため弁体58の閉鎖状態で1次ポート44に加圧消火用水が供給されると、加圧消火用水は弁体58の第1連通路64を通って第1シリンダ室54に供給される。
【0028】
第1シリンダ室54の上部には感熱ポート48が設けられており、感熱ポート48には感熱配管45により閉鎖型の感熱ヘッド36を接続している。
【0029】
ピストン52の下側には第2シリンダ室56が形成されている。ピストン52には第2連通路65が貫通形成されている。このため第1連通路64を通って第1シリンダ室54に供給された加圧消火用水は、更に、第2連通路65を通って第2シリンダ室56に供給されるようになる。なお、ピストン52の外周部にはシール53が装着され、第1シリンダ室54と第2シリンダ室56を仕切り形成している。
【0030】
ピストン52の下側の第2シリンダ室56は、途中に設けたスプール弁穴68を通る第3連通路66a,66bにより1次ポート44側に連通している。第3連通路66a、66bの途中に形成されたスプール弁穴68には、本実施形態の充水ロック制御機構を構成するロック制御弁70が設けられている。
【0031】
ロック制御弁70はスプール弁体72の先端側にシール74,75を装着しており、シール74により第1シリンダ室54側の第3連通路66bと1次ポート44側の第3連通路66aを仕切っている。
【0032】
スプール弁体72の組込部分に対しては外部からスプールカバー76がねじ込み固定され、スプール弁体72とスプールカバー76との間にスプリング78を配置し、スプール弁体72を閉鎖方向に付勢している。またスプール弁体72の外部に取り出した後部にはネジ部80が形成され、ネジ部80に2つのナット82をねじ込み、閉鎖状態でスプール弁体72が第3連通路66a,66bの間を仕切る閉鎖位置に調整した後にロックしている。
【0033】
図3は図2の第1実施形態の模式的構成を示した説明図である。図3の模式的構成にあっては、1次ポート44に加圧消火用水が供給される前の状態を示している。この状態で1次ポート44に圧力Piの加圧消火用水が供給されると、弁体58はスプリング55の力により閉鎖していることから、加圧消火用水は第1連通路64を通って第1シリンダ室54に供給され、更に感熱ポート48から感熱配管45を通って感熱ヘッド36側に供給される。また第1シリンダ室54に供給された加圧消火用水は、第2連通路65を通って第2シリンダ室56に供給されるようになる。
【0034】
ここで第1シリンダ室54の圧力をP1、第2シリンダ室56の圧力をP2とすると、感熱配管45に対する加圧消火用水の充水中における圧力P1,P2の変化は図4のタイムチャートに示すようになる。
【0035】
図4において、時刻t0で1次ポート44に加圧消火用水を供給したとすると、第1連通路64からの加圧消火用水の供給による感熱配管45への充水に伴い、第1シリンダ室54の圧力P1は時間の経過に伴って1次ポート44の圧力Piに向かって増加する。
【0036】
一方、第2シリンダ室56の圧力P2は、感熱配管45に対する充水中は第2連通路65からの供給がほとんどないため、時間の経過に対し、わずかに増加するだけである。
【0037】
第2シリンダ室56に供給された加圧消火用水による圧力P2は、第3連通路66a,66bの間に設けているロック制御弁70に対し制御圧力Pcとして加わる。この制御圧力Pcは、図2のスプール弁体72をスプリング78に抗して開放方向に押す力を発生する。
【0038】
したがって、第2シリンダ室56の圧力P2の上昇に伴い制御圧力Pcが上昇し、時刻t1でスプリング78の設定圧Pthに達して越えると、ロック制御弁70が第3連通路66a,66bを開放し、1次ポート44側の加圧消火用水が開放状態にあるロック制御弁70を通って直接、第2シリンダ室56に供給され、時刻t1から圧力P2は急激に上昇し、第1シリンダ室54の圧力P1と同圧になる。この時刻t1でロック制御弁70が開動作した点がロック解除点74となる。
【0039】
図5は図4のロック解除点74に達してロック制御弁70が開動作した状態を示した断面図である。ロック制御弁70の開動作により、1次ポート44側の第3連通路66aと第2シリンダ室56側の第3連通路66bの間がスプール弁穴68を介して連通し、1次ポート44に供給されている加圧消火用水が、矢印で示すように第3連通路66a,66bを通って直接、第2シリンダ室56に供給され、第2シリンダ室56の圧力が急激に上昇することになる。
【0040】
図4のタイムチャートにおける加圧消火用水の供給を開始した時刻t0から、ロック制御弁70が開動作する時刻t1のロック解除点74までの間、第2シリンダ室56の圧力P2は第1シリンダ室54の圧力P1を下回っている。このためピストン52には、圧力P1,P2の差圧(P1−P2)による力にスプリング55の力を加えた下向きの力が作用し、この力によって弁体58を閉鎖位置にロックすることができる。
【0041】
このため1次ポート44に加圧消火用水を供給しても弁体58は開くことがなく、2次ポート46を通って開放型の消火ヘッド34に消火用水が供給されて誤散布してしまうことを確実に防止できる。
【0042】
更に、加圧消火用水の供給から、ある時間を経過すると、第2シリンダ室56の圧力P2の上昇に伴ってロック制御弁70が開動作し、第2シリンダ室56の圧力を上昇することで、第1シリンダ室54の圧力P1とほぼ同圧とする。これによって第1シリンダ室54の圧力P1と第2シリンダ室56の圧力P2の差圧(P1−P2)による弁体58を閉鎖方向に押す力がなくなり、弁体58はスプリング55の力のみによって閉鎖位置に保持され、この状態で感熱ポート48に感熱配管45を介して接続している感熱ヘッド36が開放動作した場合に、弁体58を開放可能な状態としている。
【0043】
図6は第1実施形態における火災時の散布動作を示した断面図である。図6において、感熱ヘッド36が火災による熱気流を受けて開放すると、感熱配管45を通って開放弁装置35Aの第1シリンダ室54の加圧消火用水が放出され、第1シリンダ室54の圧力P1が低下する。
【0044】
この第1シリンダ室54の圧力P1の低下に対し、第2シリンダ室56の圧力P2は第2連通路65からなる絞りを通って抜けるため、圧力P1の低下に対し圧力P2の低下が遅くなり、ピストン52は第2シリンダ室56の高い方の圧力P2により押されて、スプリング55に対して上方に移動し、弁体58の弁シール60を弁座47から離して弁を開く。
【0045】
弁シール60が弁座47から離れて弁体58が開くと、1次側からの加圧消火用水の圧力Piにより弁体54は上方向に押され、スプリング55を圧縮して図示の開位置に保持され、1次ポート44から供給された加圧消火用水を2次ポート46に供給し、2次ポート46に配管接続している消火ヘッド34から散布することになる。なお、開放弁装置35Aに感熱ヘッド36、消火ヘッド34を直接取り付けても良いし、一体で組み立てられても良い。
【0046】
図7は本発明による開放弁装置の第2実施形態を示した断面図であり、図8に図7の第2実施形態の模式的構成を示している。
【0047】
図7において、第2実施形態は、充水ロック制御機構を構成するロック制御弁を配管接続により外部に設けるようにしたことを特徴とする。
【0048】
図7において、第2実施形態の開放弁装置35Bはボディ86とカバー88で構成され、ボディ86の右側に1次ポート90を形成し、左側に2次ポート92を形成している。1次ポート90と2次ポート92の間には両者を仕切る仕切壁98が形成され、仕切壁98の部分に設けた弁座100に対し、弁シール104を備えた弁体102を開閉自在に配置している。
【0049】
弁体102は上部にピストン110を一体に形成している。ピストン110はボディ86の上部のシリンダに摺動自在に収納され、上部に第1シリンダ室106を形成し、スプリング111により閉鎖方向に付勢されている。ピストン110は更に下側に第2シリンダ室108を形成している。
【0050】
弁体102には、1次ポート90から第4シリンダ室106に至る第1連通路114を形成している。第1連通路114の途中には逆止弁115が設けられている。またピストン110には、第1シリンダ室106を第2シリンダ室108に連通する第2連通路116が設けられている。
【0051】
第1シリンダ室106の上部には感熱ポート94が設けられ、感熱ポート94に対し感熱配管95を接続している。この実施形態にあっては、感熱配管95に2台の感熱ヘッド36を接続し、更に末端側に手動起動装置96を設けている。なおピストン110に相対するカバー88側にはストッパ118が装着され、ピストン110の開放状態における位置を決めている。
【0052】
第2シリンダ室108の右側には第1制御ポートC1が形成され、また1次ポート90側には第2制御ポートC2が形成され、この第1制御ポートC1と第2制御ポートC2の間に連通配管125によりロック制御弁120を接続している。
【0053】
ロック制御弁120は設定スプリング122を備え、制御配管127により供給されする制御圧力Pcが設定スプリング122により設定された設定圧力Pthを上回ると、開動作を行って、第1制御ポートC1と第2制御ポートC2の間を連通する。
【0054】
またロック制御弁120に対する第1制御ポートC1側の連通配管125にはオリフィス124が設けられ、第2制御ポートC2側の連通配管125aには逆止弁126が設けられている。
【0055】
次に図8の模式的構成を参照して第2実施形態の開放弁装置35Bの動作を説明する。消火設備の使用に先立ち、初期的に1次ポート90に対し圧力Piの加圧消火用水を供給すると、初期状態にあっては、弁体102はスプリング111の力により閉鎖しているため、1次ポート90に供給された加圧消火用水は弁体102の第1連通路114及び逆止弁115を通って第1シリンダ室106に流れ、更に感熱ポート94から感熱配管95に流れ、充水を開始する。また第1シリンダ室106に流れ込んだ加圧消火用水は、第2連通路116を通って第2シリンダ室108に流れ込む。
【0056】
ここで第1シリンダ室106の圧力をP1、第2シリンダ室108の圧力をP2とすると、第1実施形態における図4のタイムチャートと同様、第2シリンダ室108の圧力P2はロック制御弁120に制御圧力Pcとして供給されており、設定スプリング122による設定圧Pthに達する時刻t1までの間、第1シリンダ室106の圧力P1より低いため、両者の差圧(P1−P2)によりピストン110を下向きに押す力にスプリング111の力を加えた力で、弁体102を閉鎖位置にロックしている。
【0057】
感熱配管95の充水が進んで第1シリンダ室106の圧力P1が上昇すると、第2シリンダ室108の圧力P2も上昇し、図4の時刻t1でロック解除点74に達し、ロック制御弁120が開く。即ち、第2シリンダ室108の圧力P2による制御圧力Pcが設定スプリング122による設定圧Pthを超えることで、ロック制御弁120が開放動作を行い、第1制御ポートC1と第2制御ポートC2の間を連通する。
【0058】
このため、1次ポート90に供給されている加圧消火用水が、第2制御ポートC2、逆止弁126、開放状態にあるロック制御弁120及びオリフィス124を通って、第2シリンダ室108に供給され、図4に示したように、ロック解除点74から圧力P2が急激に上昇して第1シリンダ室106の圧力P1と同圧となり、圧力差(P1−P2)による弁体102のロック状態を解除し、感熱ヘッド36の開放作動に伴い弁体102を開放可能な状態に移行する。
【0059】
その後の監視中に、火災による熱気流を受けて感熱ヘッド36が開放すると、第1シリンダ室106の加圧消火用水が放出されることで圧力P1が低下し、圧力P1の低下に伴って弁体102が開き、一度開くと、弁体102に対する1次ポート90からの加圧消火用水の圧力により、スプリング111に抗して弁体102は開放位置に動作し、1次ポート90から供給された加圧消火用水を2次ポート92を通して消火ヘッド34に供給して散布するようになる。
【0060】
図9は本発明による弁開放装置の第3実施形態を示した断面図であり、図10に第3実施形態の模式的構成を示している。この第3実施形態は、充水ロック制御機構を構成するロック制御弁を外部に配管接続すると共に、第1シリンダ室と第2シリンダ室を連通する連通路についても外部配管により接続するようにしたことを特徴とする。
【0061】
図9において、第3実施形態の開放弁装置35Cは、ボディ130の上部にカバー132を装着固定している。ボディ130の左側には1次ポート134が形成され、右側には2次ポート135が形成され、その間に両者を仕切る仕切壁138を設けている。仕切壁138には弁穴140が設けられ、1次ポート134側の部分に弁座143を形成している。
【0062】
弁穴140に対しては、弁座143に当接する弁シール146を備えた弁体144が開閉自在に配置される。弁体144はピストン142の下方に一体に延在したロッド部分にねじ込まれ、更にガイドロッド145の先端に固定され、ガイドロッド145は上部をカバー132に摺動自在に挿入している。
【0063】
ピストン142はカバー132側に設けたシリンダ側に摺動自在に設けられ、ピストン142の上部に第1シリンダ室148を形成し、ピストン142の下側に第2シリンダ室150を形成している。
【0064】
第1シリンダ室148の上部右側には感熱ポート136が設けられ、感熱ポート136に、感熱配管135により感熱ヘッド136を接続している。また第1シリンダ室148の上部左側には第1制御ポートC1が設けられ、一方、第2シリンダ室150の左側には第2制御ポートC2が設けられている。
【0065】
第1シリンダ室148の第1制御ポートC1と第2シリンダ室150の第2制御ポートC2は連通配管152により接続されており、連通配管152の途中にはオリフィス162を設けている。
【0066】
更に、1次ポート134に設けた第3制御ポートC3からの連通配管154と第1シリンダ室148の第1制御ポートC1からの連通配管152の間に、ロック制御弁156を接続している。ロック制御弁156は設定スプリング158により開動作のための設定圧力Pthを設定しており、制御配管160により加わる制御圧力Pcによる力が設定スプリング158の設定圧力Pthを超えると開動作を行う。
【0067】
ロック制御弁156を開閉動作する制御圧力Pcは、連通配管152を接続した第2制御ポートC2から得られる第2シリンダ室150の圧力P2を使用する。
【0068】
次に図10の模式構成を参照して第3実施形態の開閉弁装置35Cの動作を説明する。消火設備において、設置する際の初期的な加圧消火用水の供給が1次ポート134に対し行われると、このとき弁体144はスプリング147の力により閉鎖位置にあるため、加圧消火用水は連通路151を通って第1シリンダ室148に流れ込み、感熱ポート136から感熱配管137を通って感熱ヘッド36側に充水される。
【0069】
更に、第1シリンダ室148に供給された加圧消火用水は、第1制御ポートC1から連通配管152を通って第2制御ポートC2から第2シリンダ室150に供給される。感熱配管137に対する加圧消火用水の充水中は、図4のタイムチャートに示したように、第1シリンダ室148の圧力P1が第2シリンダ室150の圧力P2より高く、その差圧(P1−P2)による力がピストン142に発生し、スプリング147による力と合わせて弁体144を閉鎖位置にロックし、消火ヘッド34からの誤散布を防止する。
【0070】
感熱配管137の充水が進行すると、第1シリンダ室148の圧力P1の増加に伴って第2シリンダ室150の圧力P2も増加し、ロック制御弁156に制御圧力Pcとして加えられている第2シリンダ室150の圧力P2が設定スプリング158による設定圧力Pthに達すると、ロック制御弁156が開動作する。
【0071】
このため第3制御ポートC3と第2制御ポートC2の間が連通し、1次ポート134に供給されている加圧消火用水が第2シリンダ室150に供給されることで圧力P2が急激に上昇し、第1シリンダ室148の圧力P1と同圧となり、差圧(P1−P2)による弁体144の閉鎖位置へのロックを解除し、充水完了で監視状態に移行する。
【0072】
その後の監視中に、火災による熱気流を受けて感熱ヘッド36が開放作動すると、第1シリンダ室148の圧力P1が抜けることで、ピストン142が第2シリンダ室150の圧力P2を受けて弁体144を開動作し、弁体144が開動作すると1次側の加圧消火用水の圧力を受けて弁体144は開放位置に動作し、1次ポート140に供給された加圧消火用水を、開放状態にある弁体144を介して2次ポート135に供給し、消火ヘッド134から散布するようになる。
【0073】
なお。第2制御ポートC2と第3制御ポートC3を手動切替弁を介して別途配管接続し、手動切替弁を開操作することで、強制的にロック解除させるフェールセーフ機構を設けてもよい。
【0074】
図11は本発明による開放弁装置の第4実施形態を模式的構成で示した説明図である。この第4実施形態にあっては、第1実施形態乃至第3実施形態が第2シリンダ室を1次ポート側に設けていたのに対し、第4実施形態にあっては第2シリンダ室を2次ポート側に設けるようにしたことを特徴とする。
【0075】
図11において、第4実施形態の開放弁装置35Dは、ボディ168の左側に加圧消火用水が供給される1次ポート170を設け、右側に消火ヘッド34が配管接続される2次ポート172を設けている。1次ポート170と2次ポート172の間の仕切壁の部分の弁座に対しては弁体177が開閉自在に設けられている。
【0076】
弁体177の1次ポート170側に位置する上部には第1ピストン176が摺動自在に設けられ、第1ピストン176の上部に第1シリンダ室174を形成しており、第1ピストン176はスプリング175により弁体177を閉鎖方向に付勢している。第1シリンダ室174には感熱ポート173が設けられ、感熱配管179により感熱ヘッド36を接続している。
【0077】
また第1シリンダ室174に対しては、配管182により逆止弁184を介して1次ポート170側が接続されている。なお、配管182による1次ポート170側との接続に代え、第1ピストン176自身に1次ポート170側と第1シリンダ室174を連通する連通路を形成してもよい。
【0078】
一方、ボディ168の2次ポート172側には第2シリンダ室178が形成され、第1ピストン176に連結された第2ピストン180を摺動自在に収納している。第2シリンダ室178には第1制御ポートC1が設けられ、また1次ポート170側には第2制御ポートC2が設けられ、両者の間に、連通配管186によりロック制御弁190を設けている。
【0079】
ロック制御弁190は設定スプリング192により弁開放のための設定圧力Pthを設定しており、制御配管188による制御圧力Pcが設定圧力Pthに達すると開放動作を行う。ロック制御弁190に対する制御配管188は第1シリンダ室174の第3制御ポートC3に接続しており、制御配管188は途中にオリフィス196を設けている。
【0080】
次に第4実施形態の開放弁装置35Dの動作を説明する。消火設備における配管内に充水するための初期的な加圧消火用水の供給が1次ポート170に対して行われると、このとき弁体177はスプリング175により閉鎖されており、1次ポート170に供給された加圧消火用水は外部配管182から逆止弁184を通って第1シリンダ室174に供給され、更に感熱ポート173を通って感熱配管179側に充水される。
【0081】
第1シリンダ室174の圧力P1は、感熱配管179側に対する充水中は圧力が低く、充水が進むにつれて徐々に増加する。
【0082】
また感熱配管179側に対する充水中は、第1ピストン176にスプリング175による力と第1シリンダ室174に加わる圧力P1による力を合わせた力で弁体177を閉鎖位置にロックしている。
【0083】
充水が進んで第1シリンダ室174の圧力P1がロック制御弁190の設定スプリング192による設定圧力Pthに達すると、ロック制御弁190が開動作を行う。このため、連通配管186を介して1次ポート170側の加圧消火用水が第2シリンダ室178に供給され、第2シリンダ室178の圧力P2が増加し、第2ピストン180を上方即ち弁体177の開方向に押すことになる。
【0084】
ここで第1ピストン176の受圧面積と第2ピストン180の受圧面積を同じにしていると、第1ピストン176に加わる第1シリンダ室174の圧力P1による閉鎖方向の力と第2シリンダ室178の圧力P2により第2ピストン180に加わる弁体177の開放方向の力は、ほぼ一致して相殺され、弁体177にはスプリング175による閉鎖方向の力のみが加わった開放可能状態となる。
【0085】
このようにロック解除を経て充水が完了すると、通常の監視状態に入る。その後の監視中に、火災による熱気流を受けて感熱ヘッド36が開放作動すると、第1シリンダ室174の圧力が抜け、第2シリンダ室178の圧力によるピストン180の開放方向の力を受けて弁体177が開放し、弁体177が一旦開けば1次ポート170からの加圧消火用水の力を受けて開放位置に固定され、2次ポート172に接続した消火ヘッド34から加圧消火用水を散布することになる。
【0086】
なお図7及び図8の第2実施形態に設けている逆止弁115,126及びオリフィス124は、必ずしも設ける必要はない。この点は第3実施形態の逆止弁164とオリフィス162についても同様であり、更に第4実施形態の逆止弁184,194及びオリフィス196についても同様である。
【0087】
また本発明にあっては、弁を開閉するためのピストンの一方に形成される第1シリンダ室に加えて反対側に第2シリンダ室を形成し、この第2シリンダ室を経由した圧力上昇の遅延によりロック制御弁を制御して、充水中のロック状態から充水完了に伴うロック解除を行うことを特徴としており、このような基本的な機能を備える適宜の構造につき、そのまま本発明を適用することができる。
【0088】
また本実施形態は、図1に示すように泡消火設備に適用したものであるが、スプリンクラー消火設備などにも適用できる。
【0089】
また本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に本発明は上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1は本発明の開放弁装置が使用された消火設備の説明図
【図2】本発明による開放弁装置の第1実施形態を示した断面図
【図3】図2の第1実施形態の模式的構成を示した説明図
【図4】第1実施形態における充水時の第1シリンダ室と第2シリンダ室の圧力変化を示したタイムチャート
【図5】第1実施形態における充水中の動作を示した断面図
【図6】第1実施形態における火災時の散布動作を示した断面図
【図7】本発明による開放弁装置の第2実施形態を示した断面図
【図8】図7の第2実施形態の模式的構成を示した説明図
【図9】本発明による開放弁装置の第3実施形態を示した断面図
【図10】図9の第3実施形態の模式的構成を示した説明図
【図11】本発明による開放弁装置の第4実施形態を模式的構成で示した説明図
【図12】従来の開放弁を備えた消火ヘッドの説明図
【図13】ピンにより弁体を固定した従来の開放弁を備えた消火ヘッドの説明図
【符号の説明】
【0091】
10:消火ポンプ
12:モータ
14:ポンプ制御盤
16:水源水槽
18:給水本管
20:混合器
22:薬剤タンク
24:薬剤タンク元弁
25:圧力タンク
26:分岐管
27:圧力スイッチ
28:流水検知装置
30:流水検知スイッチ
31:呼水槽
33:制御盤
32:開閉弁
34:消火ヘッド
35A〜35D:開閉弁装置
36:感熱ヘッド
38:末端試験弁
39:火災感知器
40,86,130,168:ボディ
42,88,132:カバー
44,90,134,170:1次ポート
45,95,137,179:感知配管
46,92,135,172:2次ポート
47,100,143:弁座
48,94,136,173:感熱ポート
50,94:シリンダ
52,110,142:ピストン
53,74,75,112:シール
54,106,148,174:第1シリンダ室
55,78,111,147:スプリング
56,108,150,178:第2シリンダ室
58,102,144,177:弁体
60,104,146:弁シール
62:シール押え
64,114:第1連通路
65,116:第2連通路
66a,66b:第3連通路
68:スプール穴
70,120,156,190:ロック制御弁
72:スプール弁体
76:スプールカバー
80:ネジ部
82:ナット
98:仕切壁
115,126,164,194:逆止弁
118:ストッパ
122,158,192:設定スプリング
124,162,196:オリフィス
125,152,186:連通配管
127,160,188:制御配管
140:弁穴
145:ガイドロッド
154:配管
176:第1ピストン
180:第2ピストン
C1:第1制御ポート
C2:第2制御ポート
C3:第3制御ポート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧消火用水が供給される1次ポートと、
開放型の消火ヘッドを備えた配管が接続される2次ポートと、
火災により開放作動する閉鎖型の感知ヘッドを備えた感知配管が接続される感熱ポートと、
前記1次ポートと2次ポートとの間の流路を開閉する弁体と、
前記感知配管に充水した加圧消火用水の圧力により前記弁体を閉鎖状態とし、前記感知ヘッドの開放作動による前記感知配管の圧力低下により前記弁体を開放状態に制御する弁制御機構と、
を備えた消火設備用開放弁装置に於いて、
前記感知配管に1次ポート側から加圧消火用水を充水中に前記弁体を閉鎖位置にロックし、充水完了で前記ロックを解除する充水ロック制御機構を設けたことを特徴とする消火設備用開放弁装置。
【請求項2】
請求項1記載の消火設備用開放弁装置に於いて、
前記弁制御機構は、
シリンダに摺動自在に収納され、前記弁体に連結されたピストンと,
前記ピストンの一方に形成され、前記感知ポートと連通する第1シリンダ室と、
前記第1シリンダ室に前記1次ポートから加圧消火用水を導入する第1連通路と、
前記ピストンを前記弁体の閉鎖方向に付勢するスプリングと、
を備え、
前記充水ロック制御機構は、
前記ピストンの他方に形成された第2シリンダ室と、
前記第2シリンダ室に前記第1シリンダ室を経由して前記1次ポートからの加圧消火用水を導入する前記ピストンに貫通形成された第2連通路と、
前記1次ポートを前記第2シリンダ室に連通する第3連通路に設けられ、前記第2シリンダ室の加圧消火用水を制御圧として導入し、前記制御圧が所定値未満の場合は閉動作して前記第3連通路を閉鎖して前記第2シリンダ室を上回る前記第1シリンダ室の圧力による前記ピストンの押圧で前記弁体を閉鎖状態にロックし、前記制御圧が前記所定値以上となった時に前記第3連通路を開動作して前記1次ポートの加圧消火用水を前記第2シリンダ室に導入することにより前記第1シリンダ室と略同圧にして、前記弁体を開放可能なロック解除状態とするロック制御弁と、
を備えたことを特徴とする消火設備用開放弁装置。
【請求項3】
請求項1記載の消火設備用開放弁装置に於いて、
前記弁制御機構は、
シリンダに摺動自在に収納され、前記弁体に連結されたピストンと,
前記ピストン一方に形成され、前記感知ポートと連通する第1シリンダ室と、
前記第1シリンダ室に前記1次ポートから加圧消火用水を導入する第1連通路と、
前記ピストンを前記弁体の閉鎖方向に付勢するスプリングと、
を備え、
前記充水ロック制御機構は、
前記ピストンでの他方に形成された第2シリンダ室と、
前記第2シリンダ室に前記第1シリンダ室を経由して前記1次ポートからの加圧消火用水を導入する第2連通路と、
前記第2シリンダ室に連通する第1制御ポートと前記1次ポートに連通する第2制御ポートとの間に外部配管により接続され、前記前記第2シリンダ室の加圧消火用水を制御圧として導入し、前記制御圧が所定値未満の場合は閉動作して前記第1制御ポートと第2制御ポートを切り離して前記第2シリンダ室を上回る前記第1シリンダ室の圧力による前記ピストンの押圧で前記弁体を閉鎖状態にロックし、前記制御圧が前記所定値以上となった時に開動作して前記第1制御ポートと第2制御ポートを連通して前記1次ポートの加圧消火用水を前記第2シリンダ室に導入することにより、前記第1シリンダ室と略同圧にして前記弁体を開放可能なロック解除状態とするロック制御弁と、
を備えたことを特徴とする消火設備用開放弁装置。
【請求項4】
請求項1記載の消火設備用開放弁装置に於いて、
前記弁制御機構は、
シリンダに摺動自在に収納され、前記弁体に連結されたピストンと,
前記ピストンの一方に形成され、前記感知ポートと連通する第1シリンダ室と、
前記第1シリンダ室に前記1次ポートから加圧消火用水を導入する第1連通路と、
前記ピストンを前記弁体の閉鎖方向に付勢するスプリングと、
を備え、
前記充水ロック制御機構は、
前記ピストンの他方に形成された第2シリンダ室と、
前記第1シリンダ室に連通する第1制御ポートと前記第2シリンダ室に連通する第2制御ポートとの間を外部接続し、前記第2シリンダ室に前記第1シリンダ室を経由して前記1次ポートからの加圧消火用水を導入する外部連通配管と、
前記第2シリンダ室に連通する前記第2制御ポートと前記1次ポートに連通する第3制御ポートとの間に外部配管により接続され、前記前記第2シリンダ室の加圧消火用水を制御圧として導入し、前記制御圧が所定値未満の場合は閉動作して前記第制御ポートと第3制御ポートを切り離して前記第2シリンダ室を上回る前記第1シリンダ室の圧力による前記ピストンの押圧で前記弁体を閉鎖状態にロックし、前記制御圧が前記所定値以上となった時に開動作して前記第3制御ポートから前記1次ポートの加圧消火用水を前記第2シリンダ室に導入することにより前記第1シリンダ室と同圧にして、前記弁体を開放可能なロック解除状態とするロック制御弁と、
を備えたことを特徴とする消火設備用開放弁装置。
【請求項5】
請求項1記載の消火設備用開放弁装置に於いて、
前記弁制御機構は、
前記弁体に対し1次ポート側に配置された第1シリンダと、
前記第1シリンダに摺動自在に収納され、前記弁体に連結された第1ピストンと,
前記第1ピストンの一方に形成され、前記感知ポートと連通する第1シリンダ室と、
前記第1シリンダ室に前記1次ポートから加圧消火用水を導入する第1連通路と、
前記ピストンを前記弁体の閉鎖方向に付勢するスプリングと、
を備え、
前記充水ロック制御機構は、
前記弁体に対し2次ポート側に配置された第2シリンダと、
前記第2シリンダに摺動自在に収納され、前記弁体に連結された第2ピストンと、
前記第2ピストンで仕切られた第2シリンダ室と、
前記1次ポートに連通する第1制御ポートと前記第2シリンダ室に連通する第2制御ポートとの間に外部接続され、前記第1シリンダ室に連通する第3制御ポートを経由して前記1次ポートからの加圧消火用水を制御圧とし導入し、前記1次ポートに加圧消火用水が供給された際に、前記制御圧が所定値未満の場合は閉動作して前記第2シリンダ室を1次ポート側から切り離して前記第1ピストンの押圧により前記弁体を閉鎖状態にロックし、前記制御圧が前記所定値以上となった時に開動作して前記1次ポート加圧消火用水を前記第2シリンダ室に導入して前記第2ピストンの押圧により前記第1ピストンの押圧を相殺して、前記弁体を開放可能なロック解除状態とするロック制御弁と、
を備えたことを特徴とする消火設備用開放弁装置。
【請求項1】
加圧消火用水が供給される1次ポートと、
開放型の消火ヘッドを備えた配管が接続される2次ポートと、
火災により開放作動する閉鎖型の感知ヘッドを備えた感知配管が接続される感熱ポートと、
前記1次ポートと2次ポートとの間の流路を開閉する弁体と、
前記感知配管に充水した加圧消火用水の圧力により前記弁体を閉鎖状態とし、前記感知ヘッドの開放作動による前記感知配管の圧力低下により前記弁体を開放状態に制御する弁制御機構と、
を備えた消火設備用開放弁装置に於いて、
前記感知配管に1次ポート側から加圧消火用水を充水中に前記弁体を閉鎖位置にロックし、充水完了で前記ロックを解除する充水ロック制御機構を設けたことを特徴とする消火設備用開放弁装置。
【請求項2】
請求項1記載の消火設備用開放弁装置に於いて、
前記弁制御機構は、
シリンダに摺動自在に収納され、前記弁体に連結されたピストンと,
前記ピストンの一方に形成され、前記感知ポートと連通する第1シリンダ室と、
前記第1シリンダ室に前記1次ポートから加圧消火用水を導入する第1連通路と、
前記ピストンを前記弁体の閉鎖方向に付勢するスプリングと、
を備え、
前記充水ロック制御機構は、
前記ピストンの他方に形成された第2シリンダ室と、
前記第2シリンダ室に前記第1シリンダ室を経由して前記1次ポートからの加圧消火用水を導入する前記ピストンに貫通形成された第2連通路と、
前記1次ポートを前記第2シリンダ室に連通する第3連通路に設けられ、前記第2シリンダ室の加圧消火用水を制御圧として導入し、前記制御圧が所定値未満の場合は閉動作して前記第3連通路を閉鎖して前記第2シリンダ室を上回る前記第1シリンダ室の圧力による前記ピストンの押圧で前記弁体を閉鎖状態にロックし、前記制御圧が前記所定値以上となった時に前記第3連通路を開動作して前記1次ポートの加圧消火用水を前記第2シリンダ室に導入することにより前記第1シリンダ室と略同圧にして、前記弁体を開放可能なロック解除状態とするロック制御弁と、
を備えたことを特徴とする消火設備用開放弁装置。
【請求項3】
請求項1記載の消火設備用開放弁装置に於いて、
前記弁制御機構は、
シリンダに摺動自在に収納され、前記弁体に連結されたピストンと,
前記ピストン一方に形成され、前記感知ポートと連通する第1シリンダ室と、
前記第1シリンダ室に前記1次ポートから加圧消火用水を導入する第1連通路と、
前記ピストンを前記弁体の閉鎖方向に付勢するスプリングと、
を備え、
前記充水ロック制御機構は、
前記ピストンでの他方に形成された第2シリンダ室と、
前記第2シリンダ室に前記第1シリンダ室を経由して前記1次ポートからの加圧消火用水を導入する第2連通路と、
前記第2シリンダ室に連通する第1制御ポートと前記1次ポートに連通する第2制御ポートとの間に外部配管により接続され、前記前記第2シリンダ室の加圧消火用水を制御圧として導入し、前記制御圧が所定値未満の場合は閉動作して前記第1制御ポートと第2制御ポートを切り離して前記第2シリンダ室を上回る前記第1シリンダ室の圧力による前記ピストンの押圧で前記弁体を閉鎖状態にロックし、前記制御圧が前記所定値以上となった時に開動作して前記第1制御ポートと第2制御ポートを連通して前記1次ポートの加圧消火用水を前記第2シリンダ室に導入することにより、前記第1シリンダ室と略同圧にして前記弁体を開放可能なロック解除状態とするロック制御弁と、
を備えたことを特徴とする消火設備用開放弁装置。
【請求項4】
請求項1記載の消火設備用開放弁装置に於いて、
前記弁制御機構は、
シリンダに摺動自在に収納され、前記弁体に連結されたピストンと,
前記ピストンの一方に形成され、前記感知ポートと連通する第1シリンダ室と、
前記第1シリンダ室に前記1次ポートから加圧消火用水を導入する第1連通路と、
前記ピストンを前記弁体の閉鎖方向に付勢するスプリングと、
を備え、
前記充水ロック制御機構は、
前記ピストンの他方に形成された第2シリンダ室と、
前記第1シリンダ室に連通する第1制御ポートと前記第2シリンダ室に連通する第2制御ポートとの間を外部接続し、前記第2シリンダ室に前記第1シリンダ室を経由して前記1次ポートからの加圧消火用水を導入する外部連通配管と、
前記第2シリンダ室に連通する前記第2制御ポートと前記1次ポートに連通する第3制御ポートとの間に外部配管により接続され、前記前記第2シリンダ室の加圧消火用水を制御圧として導入し、前記制御圧が所定値未満の場合は閉動作して前記第制御ポートと第3制御ポートを切り離して前記第2シリンダ室を上回る前記第1シリンダ室の圧力による前記ピストンの押圧で前記弁体を閉鎖状態にロックし、前記制御圧が前記所定値以上となった時に開動作して前記第3制御ポートから前記1次ポートの加圧消火用水を前記第2シリンダ室に導入することにより前記第1シリンダ室と同圧にして、前記弁体を開放可能なロック解除状態とするロック制御弁と、
を備えたことを特徴とする消火設備用開放弁装置。
【請求項5】
請求項1記載の消火設備用開放弁装置に於いて、
前記弁制御機構は、
前記弁体に対し1次ポート側に配置された第1シリンダと、
前記第1シリンダに摺動自在に収納され、前記弁体に連結された第1ピストンと,
前記第1ピストンの一方に形成され、前記感知ポートと連通する第1シリンダ室と、
前記第1シリンダ室に前記1次ポートから加圧消火用水を導入する第1連通路と、
前記ピストンを前記弁体の閉鎖方向に付勢するスプリングと、
を備え、
前記充水ロック制御機構は、
前記弁体に対し2次ポート側に配置された第2シリンダと、
前記第2シリンダに摺動自在に収納され、前記弁体に連結された第2ピストンと、
前記第2ピストンで仕切られた第2シリンダ室と、
前記1次ポートに連通する第1制御ポートと前記第2シリンダ室に連通する第2制御ポートとの間に外部接続され、前記第1シリンダ室に連通する第3制御ポートを経由して前記1次ポートからの加圧消火用水を制御圧とし導入し、前記1次ポートに加圧消火用水が供給された際に、前記制御圧が所定値未満の場合は閉動作して前記第2シリンダ室を1次ポート側から切り離して前記第1ピストンの押圧により前記弁体を閉鎖状態にロックし、前記制御圧が前記所定値以上となった時に開動作して前記1次ポート加圧消火用水を前記第2シリンダ室に導入して前記第2ピストンの押圧により前記第1ピストンの押圧を相殺して、前記弁体を開放可能なロック解除状態とするロック制御弁と、
を備えたことを特徴とする消火設備用開放弁装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−67895(P2008−67895A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−248989(P2006−248989)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】
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