液体吐出ヘッド及び液体吐出装置
【課題】小型化を図りつつも、液体の吐出時及び非吐出時のそれぞれにおいて、不要な液体を効率的に吸引し得る液体吐出ヘッド7及び液体吐出装置Aを提供する。
【解決手段】液体吐出ヘッド7は、液体を収容する圧力室11、圧力室11に連通するノズル12の先端が開口するノズル面を有するノズル板13、及び、圧力室11内の液体に圧力を印加することによって、ノズル12を通じて圧力室11内の液体を吐出する圧力印加手段14を含んで構成されるヘッド本体91と、ノズル12の開口の近傍位置に位置する吸引口18aを有すると共に、当該吸引口18aを通じて、液体の吐出時及び非吐出時のそれぞれにおいて、ノズル12開口の周囲に存在する不要な液体を吸引する吸引手段と、を備える。
【解決手段】液体吐出ヘッド7は、液体を収容する圧力室11、圧力室11に連通するノズル12の先端が開口するノズル面を有するノズル板13、及び、圧力室11内の液体に圧力を印加することによって、ノズル12を通じて圧力室11内の液体を吐出する圧力印加手段14を含んで構成されるヘッド本体91と、ノズル12の開口の近傍位置に位置する吸引口18aを有すると共に、当該吸引口18aを通じて、液体の吐出時及び非吐出時のそれぞれにおいて、ノズル12開口の周囲に存在する不要な液体を吸引する吸引手段と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴を吐出する液体吐出ヘッド及びそれを備えた液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録紙に対してインク滴を吐出するインクジェット技術が、近年、エレクトロニクス分野を始めとした様々な分野の製造過程に利用されている。すなわち、液体吐出ヘッドから液体材料を吐出することによって、各種のデバイス製造過程におけるパターンの形成や均一薄膜の形成等が行われている。そうしたパターン形成等に用いられる液体材料は、通常の記録に用いられるインクと比較して、粘度が高い性質を有している。そのため、液体材料の吐出時には、主液滴とは別に、相対的に遅い速度で主液滴から遅れて飛翔するサテライト滴や、飛翔方向が定まらずに様々な方向へ飛翔するような浮遊液滴(ミスト)が発生しやすい。こうしたサテライト滴や浮遊液滴は、着弾精度の低下や液滴量の不安定性を招き、液体吐出ヘッドの信頼性を低下させる。
【0003】
例えば特許文献1には、記録紙にインクを吐出して画像を形成するインクジェット式の記録装置において、こうしたサテライト滴や浮遊液滴を吸引する吸引手段を備える点が開示されている。この吸引手段は、サテライト滴等を吸引する吸引口が形成された吸引ユニットを備え、インクの非吐出時にはインクジェットヘッドのノズル面に当接するように吸引ユニットを配置して、ノズル面付近の残留インクを吸引する一方、インクの吐出時には、吸引ユニットをヘッドの側方位置に移動させて、サテライト滴等の吸引をするように構成されている。
【特許文献1】特開2007−216420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された吸引手段は、同じ吸引ユニットを用いて、インクの吐出時と非吐出時とのそれぞれにおいて不要な液滴を吸引しようとしているものの、インクの吐出時には、吸引ユニットがインクジェットヘッドの側方位置に位置付けられるため、吸引ユニットの吸引口は、インクジェットヘッドのノズルの開口に対して遠く離れてしまう。このため、インクの吐出時にノズルの開口近傍に生じるサテライト滴や浮遊液滴を、効果的に吸引することができないという問題がある。また、インクの吐出時と非吐出時とにおいて、インクジェットヘッドとは別体の吸引ユニットを、インクジェットヘッドに対して相対移動させる機構が必要であり、液体吐出装置の大型化を招く。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、小型化を図りつつも、液体の吐出時及び非吐出時のそれぞれにおいて、不要な液体を効率的に吸引し得る液体吐出ヘッド及び液体吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
液体吐出ヘッドは、液体を収容する圧力室、前記圧力室に連通するノズルの先端が開口するノズル面を有するノズル板、及び、前記圧力室内の液体に圧力を印加することによって、前記ノズルを通じて前記圧力室内の前記液体を吐出する圧力印加手段を含んで構成されるヘッド本体と、前記ノズルの開口の近傍に位置する吸引口を有すると共に、当該吸引口を通じて、前記液体の吐出時及び非吐出時のそれぞれにおいて、前記ノズル開口の周囲に存在する不要な液体を吸引する吸引手段と、を備えている。
【0007】
吸引手段の吸引口をノズル開口の近傍位置に配置することによって、そのノズルを通じた液滴の吐出時にはサテライト滴や浮遊液滴を効率的に吸引し得ると共に、液滴の非吐出時にもノズル面に付着した残留液滴を効率的に吸引し得る。その結果、液滴の飛び散りの防止、液滴の着弾精度の向上、吐出速度及び液滴量の安定化が図られ、液体吐出ヘッドの信頼性が向上し得る。
【0008】
この構成ではまた、吸引口の位置を変更させるための構成が不要であるため、その分、液体吐出ヘッドが小型化し得る。
【0009】
前記吸引口は、前記ノズルの中心軸に対して対称となるように複数配置されている、としてもよい。また、ノズルの周辺に円周形状の吸引口を配置してもよい。
【0010】
こうすることで、ノズルの中心軸に沿って飛翔する主液滴に対しては、各吸引口による吸引力が均等に作用し、主液滴の飛翔に対して悪影響を及ぼすことない一方、ノズルの中心軸に沿って飛翔しないようなサテライト滴や浮遊液滴については効率的に吸引し得る。
【0011】
前記吸引手段において、前記吸引口を含む吸引通路は、前記ヘッド本体内に形成されている、としてもよい。
【0012】
こうすることで、液体吐出ヘッドのさらなる小型化が図られると共に、構成が簡略化することにより製造コスト低減の点で有利になる。
【0013】
前記吸引口は、前記ノズル板のノズル面によって区画形成されている、としてもよい。こうすることで、ノズルの開口に対する吸引口の相対位置の精度が向上する。
【0014】
前記液体吐出ヘッドは、前記吸引手段の吸引力を変更する吸引力可変手段をさらに備えている、としてもよい。
【0015】
例えば液滴の吐出時と非吐出時とで吸引力を変えるようにすれば、液滴の吐出時におけるサテライト滴や浮遊液滴の吸引と、液滴の非吐出時におけるノズル面に付着した残留液滴の吸引とが、それぞれ最適化される。
【0016】
また、液滴の吐出時において、吐出開始時から吐出完了時の間で吸引力を変えるようにすれば、主液滴に対しては影響を与えずに、その主液滴の飛翔後に発生するサテライト滴や浮遊液滴に対しては、効率的な吸引が実現し得る。
【0017】
さらに、吸引口が複数存在しているときには、各吸引口による吸引力が互いに等しくなるように調整するようにすれば、吸引力のバランスをとり得る。
【0018】
前記ノズル板のノズル面には、前記ノズルの開口から前記吸引口に向かって延びかつ、前記不要な液体を前記吸引口へと導く導出路が形成されている、としてもよい。
【0019】
こうすることで、ノズル面に付着している液滴を、導出路に沿って吸引口へと移動させて効率的に吸引することが可能になる。
【0020】
前記ヘッド本体に装着されることによって、前記ノズルの開口が連通する密閉空間を形成する密閉部材をさらに備え、前記吸引手段の吸引口は、前記密閉空間内に開口している、としてもよい。
【0021】
こうすることで、密閉部材によって密閉空間を形成することにより、ノズル面に付着している不要な残留液滴を効率的に吸引し得る。それと共に、吸引手段による吸引力を利用して、空の圧力室内に液体を充填することも行い得る。このことは、例えば空の圧力室内に液体を充填するために、液体を貯留するタンク内を正圧にする手段を省略することが実現し、液体吐出装置の構成が簡略化する。
【0022】
液体吐出装置は、前記の液体吐出ヘッドを備えていることにより、液体の吐出時及び非吐出時のそれぞれにおいて不要な液滴を効率的に吸引して、液滴の飛び散りの防止、液滴の着弾精度の向上、吐出速度及び液滴量の安定化が図られ、液体吐出ヘッドの信頼性が向上し得ると共に、小型化も図り得る。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、この発明によると、小型化を図りつつ、液体の吐出時及び非吐出時のそれぞれにおいて不要な液滴を効率的に吸引することができ、液体吐出ヘッドの信頼性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示であり、適用物又は用途を制限することを意図するものではない。
【0025】
図1は、液体吐出装置Aの概略構成を示している。この液体吐出装置Aは、ヘッド本体(図2等参照)を備えた液体吐出ヘッド7と、被記録物4を支持するステージ31と、を備えている。液体吐出ヘッド7は、装置基台6に支持されたヘッド移動装置2によって主走査方向(図1に示すX方向)に往復移動し、ステージ31は、同じく装置基台6に支持されたステージ移動装置3によって副走査方向(図1に示すY方向)に往復移動する。ヘッド移動装置2は、液体吐出ヘッド7を支持するキャリッジ7aを含む。キャリッジ7aは、主走査方向に延びるキャリッジ軸7bにガイドされ、図示を省略する駆動源(例えばモータ)によって、主走査方向に往復移動する。
【0026】
ステージ移動装置3は、主走査方向に所定間隔を開けて配置されかつ、それぞれ副走査方向に延びる2つのステージ軸32,32を含む。ステージ31はこれらのステージ軸32,32にガイドされ、図示を省略する駆動源(例えばモータ)によって、副走査方向に往復移動する。
【0027】
液体吐出装置Aはこの構成によって、液体吐出ヘッド7とステージ31上の被記録物4とを相対移動させながら、液体吐出ヘッド7(ヘッド本体91)から被記録物4に向かって液体材料を吐出し、被記録物4上に所望のパターンや均一薄膜等を形成する。
【0028】
図2に示すように、ヘッド本体91は、液体材料を収容する圧力室11と、圧力室11に連通するノズル12が1つ形成されたノズル板13と、圧力室11内の液体材料に圧力を印加することによって、ノズル12を通じて圧力室11内の液体材料を吐出するためのアクチュエータ14と、を含んで構成されている。
【0029】
ノズル板13は、例えばステンレス鋼からなる板状の部材であり、ノズル12は、このノズル板13に対し板厚方向に貫通して形成されている。ノズル12は、この例では、基端(図2の上図における上端)から先端(図2の上図における下端)に向かって径が小さくなるテーパ形状を有しているが、径が一定のストレート形状としてもよい。ノズル12の先端開口の径は、例えばφ5〜300μm程度に設定すればよい。ノズル板13の下面は、ノズル12の先端が開口するノズル面であり、このノズル面には、液体材料の吐出安定性の観点から撥水処理を施すことが好ましい。
【0030】
ノズル板13の上面には、圧力室11の側面を区画する弾性区画部材15がノズル12の基端開口を囲むように配置されている。弾性区画部材15は、後述するように、アクチュエータ14の駆動に伴い弾性的に伸縮変形して、圧力室11の体積を変化させるための部材であり、例えばその中心に円形状の孔を有する円環状に形成される。弾性区画部材15は、液体材料に対する耐食性を考慮して、例えば耐溶剤性のゴム、具体的にはフッ素ゴムやシリコンゴム等によって形成すればよい。
【0031】
弾性区画部材15の上面には前記アクチュエータ14が配設され、ノズル板13とアクチュエータ14とを互いに接合する接着層15aは、弾性区画部材15の外周面を取り囲むように設けられている。この接着層15aは、弾性区画部材15が弾性変形するときに、その弾性区画部材15が圧力室11の外方に向かって逃げ変形することを規制するようにもなっている。
【0032】
アクチュエータ14は、積層型圧電体からなり、積層方向の一端(下端)が弾性区画部材15の上面に対して接合されていると共に、その他端(上端)が、アクチュエータ保持部材16に固定されている。アクチュエータ14にはまた、ノズル12の中心軸と同軸になるように、厚み方向に貫通して形成された貫通孔が形成されており、この貫通孔内に、後述するように、圧力室内に液体を供給するための供給パイプ20が内挿されるようになっている。アクチュエータ14は、図2では図示を省略する電極に電圧が印可されることによって、図2の上図における上下方向に伸縮変形する(図2の矢印参照)。アクチュエータ14の駆動に伴い、弾性区画部材15が図2の上図における上下方向に伸縮変形することで、圧力室11の体積が増減するようになっている。
【0033】
アクチュエータ保持部材16は、板状部材であり、前述したようにその下面にアクチュエータ14が接合されることにより、このアクチュエータ14、弾性区画部材15及びノズル板13の一体化物を保持している。アクチュエータ保持部材16にはまた、その中央位置に、供給パイプ20を内挿するための貫通孔が板厚方向に貫通して形成されている。
【0034】
アクチュエータ保持部材16は外装部材17に対して固定されている。外装部材17は、略矩形塊状の部材であり、その上端面は、ヘッド保持プレート19に接合されている。外装部材17の内部には、下面に開口する凹陥部17aが形成されており、アクチュエータ保持部材16は、この凹陥部17a内の上壁に対して固定されている。これによって、アクチュエータ14、弾性区画部材15及びノズル板13の一体化物は、この凹陥部17a内に配設されることになる。
【0035】
外装部材17にはまた、その中央位置に上下方向に延びる貫通孔が形成されており、この貫通孔内には、上下方向に延びる供給パイプ20が配設されている。供給パイプ20の下端部は、前記アクチュエータ保持部材16の貫通孔及びアクチュエータ14の貫通孔内に配設されており、その下端面は、弾性区画部材15の上面に対して接合されている。供給パイプ20の下端面によって、圧力室11の上面が区画されている。供給パイプ20の内孔は、この供給パイプ20の上下の両端それぞれに開口しており、これによって、この内孔は圧力室11内に連通している。供給パイプ20の上端はまた、ヘッド保持プレート19を貫通して、このヘッド保持プレート19の上面から突出して配設されており、この上端には、図3に示すように、供給チューブ41を介して供給タンク42が接続されている。
【0036】
外装部材17にはまた、前記凹陥部17aを挟んだ両側位置に、吸引通路18がそれぞれ形成されている。各吸引通路18は、上下方向に延びて形成されていると共に、その下端において、凹陥部17a側に屈曲して形成されており、その屈曲端は、凹陥部17a内の側壁に開口している。この開口は、後述するように、液体の吐出時及び非吐出時のそれぞれにおいて、ノズル開口の周囲に存在する不要な液体を吸引するための吸引口18aとして機能するものであり、この吸引口18aは、図2の上図に示すように、ノズル板13のノズル面の高さに対応する高さ位置に位置していると共に、図2の下図に示すように、ノズル12の中心軸に対して対称となるように、ノズル12の開口を挟んだ両側それぞれに位置している。こうして各吸引口18aは、ノズル12の開口の近傍に位置していると共に、液滴の吐出方向(図2の上図における下向きの方向)に対して直交する方向に吸引を行うように構成されている。
【0037】
外装部材17の上部にはまた、ヘッド保持プレート19を貫通して配設された吸引パイプ21,21が、上下方向に延びるように取り付けられており、この各吸引パイプ21の下端は、各吸引通路18の上端に連通している。吸引パイプ21の上端には、図3に示すように、吸引チューブ45を介して吸引タンク46が接続されている。
【0038】
図3は、このヘッド本体91に対して設けられた液体供給系及び液体吸引系の構成を示している。液体供給系は、供給タンク42及び、液体供給手段としての供給ポンプ43(エアポンプ)を備えて構成されている。供給タンク42は、圧力室11内に供給する液体材料を収容するタンクであり、エア供給管44を介して供給ポンプ43に接続されていると共に、供給チューブ41を介してヘッド本体91の供給パイプ20に接続されている。供給ポンプ43に接続されているエア供給管44は、供給タンク42内の気相部分において開口している一方、供給パイプ20に接続されている供給チューブ41は、供給タンク42内の液体材料の領域内に開口している。供給タンク42内は、供給ポンプ43の作動に応じて正圧状態(圧力室11内に対して正圧状態)と、負圧状態(圧力室11内に対して負圧状態)とに切り替えられる。つまり、空の圧力室11内に液体を充填するときには、供給タンク42内が正圧状態にされる一方、ヘッド本体91の駆動時(液体を吐出するとき)には、供給タンク42内が負圧状態にされる。尚、供給タンク42の高さ位置を、圧力室11の高さ位置に対して相対的上下させることによって、その供給タンク42内を正圧状態及び負圧状態に切り替えるようにしてもよく、この場合は供給ポンプ43を省略することが可能である。
【0039】
これに対し液体吸引系は、吸引タンク46及び、液体吸引手段としての吸引ポンプ47(エアポンプ)を備えて構成されている。吸引タンク46は、後述するように、ヘッド本体91から回収した不要な液滴を収容するタンクであり、エア吸引管48を介して吸引ポンプ47に接続されている。吸引タンク46内は、吸引ポンプ47の作動に応じて負圧状態にされる。吸引タンク46はまた、吸引チューブ45を介してヘッド本体91の吸引パイプ21に接続されており、吸引チューブ45はその途中において2つに分岐して、一対の吸引パイプ21,21それぞれに接続されている。尚、吸引タンク46内を負圧状態にする手段としては、エアポンプに限定されるものではなく、液体ポンプや真空ポンプによるエア吸引を採用してもよい。また、ポンプに限定されるものでもなく、適宜の手段を採用して吸引タンク46内を負圧状態にしてもよい。さらに、吸引タンク46は、省略することも可能である。
【0040】
次に、上記構成のヘッド本体91の動作について説明する。圧力室11、及びノズル12内のそれぞれに液体材料が充填された状態でアクチュエータ14に所定の電圧(例えば20V)を印可することと、その電圧印加の解除とを行うことによって、アクチュエータ14を伸縮変形させる(同図の矢印参照)。アクチュエータ14の伸縮変形に伴い弾性区画部材15が伸縮変形することになり、圧力室11内の液体材料に対して圧力が印加される。そうして液体材料がノズル12から押し出されて被記録物4に向かって液滴(主液滴)として吐出され、液滴は被記録物4の上面にドット状に付着する。それと共に、供給タンク42から供給パイプ20を介して液体材料が圧力室11内に補充される。尚、液体(液滴)の吐出時には、供給ポンプ43の作動により供給タンク42内は所定の負圧状態にされている。このような伸縮変形する弾性区画部材15により圧力室11を形成する構成は、圧力室11内の液体材料に対して高い圧力を印加することができるため、このヘッド本体91は、特に高粘度の液体材料を吐出する場合に好適である。
【0041】
液滴の吐出時にはまた、吸引ポンプ47を作動させ、それによって各吸引口18aを通じた吸引を行う。これにより、主液滴がノズル面から飛翔した後に発生するサテライト滴や浮遊液滴等の不要な液滴が、吸引口18aを通じて吸引され、吸引タンク46内に回収されることになる。これにより、液滴の飛び散り防止や着弾位置精度の向上、吐出速度及び液滴量の安定化が図られる。
【0042】
ここで、吸引口18aはノズル12の先端開口の近傍に位置しているため、サテライト滴や浮遊液滴を効率的に吸引することが可能であると共に、一対の吸引口18a,18aは、ノズル12の中心軸に対して対称に配置されていると共に、その吸引方向が互いに逆向きに設定されているため、ノズル12の中心軸に沿って飛翔する主液滴に対しては吸引力が相殺し、主液滴の吐出に悪影響を及ぼすことが回避される。このことは主液滴の着弾精度を向上させることになる。一方、ノズル12の中心軸からずれたサテライト滴や浮遊液滴は、いずれかの吸引口18aを通じて確実に吸引されることになる。
【0043】
また、液滴の吐出と吐出との間の非吐出時にも、吸引ポンプ47の作動を継続し、吸引口18aを通じた吸引を継続して行う。これにより、液滴の吐出後の、ノズル12の近傍に付着した残留液滴を吸引口18aを通じて吸引して除去する。こうすることで、次に液滴を吐出するときには、ノズル12の近傍の残留液滴が存在していないため、着弾位置精度の向上や、吐出速度及び液滴量の安定化が図られる。特にヘッド本体91の駆動周波数が低く、液滴の吐出と吐出との時間間隔が比較的長いときには、静電気等に起因して、ノズル面に小液滴や埃等が吸着しやすいのに対し、前述したような液滴の吐出と吐出との間での吸引を行うことによって、ノズル面上の液滴や埃を効果的に除去することが可能になり、吐出性能の安定化の上で有効である。
【0044】
また、ヘッド本体91が例えば待避位置に位置付けられているような液滴の非吐出時においても、吸引ポンプ47の作動を適宜行うことによって、次の液滴の吐出に備えてノズル面に付着している残留液滴を除去することが望ましい。
【0045】
さらに、空の圧力室11内に液体材料を充填するとき(つまり、液滴の非吐出時に相当する)にも、吸引ポンプ47を作動させることによって吸引を行う。前述したように、空の圧力室11内に液体を充填するときには、供給タンク42内を正圧にすることによって圧力室11内に液体材料を送り込むことになるが、余剰の液体材料がノズル12から漏れ出ることになる。こうして、液体材料の充填時には、ノズル面に余分な液体材料が付着することになるが、その付着した液体材料は、吸引口18aを通じて吸引されることによって除去される結果、液体材料の吐出精度が向上し得る。
【0046】
これらの場合のように、ノズル面に付着している液滴を吸引する際には、液滴がノズル面上に沿って吸引口18aまで移動して、そこから吸引されることになるが、一対の吸引口18a,18aを、ノズル12の開口を挟んだ両側それぞれに配置することによって、液滴がノズル12の開口を横切って吸引口18aに吸引されることが回避される。これによって、ノズル12の開口の汚染が回避され、ヘッド本体91の吐出精度を高精度に維持することが可能になる。
【0047】
ここで、吸引口18aの開口面積は、例えば100μm2〜1mm2に設定すればよく、その吸引圧力は、例えば−0.1〜−70kPaに設定するのが好ましい。
【0048】
また、このヘッド本体91では、吸引通路18及び吸引口18aを、ヘッド本体91内に形成しているため、吸引口18aをノズル12の開口近傍に配置する上で有利であると共に、ヘッド本体91の小型化の上でも有利である。また、ヘッド本体91の構成が簡略化するため、製造コストが低減し得る。
【0049】
尚、ヘッド本体91に設ける吸引口の数に特に制限はなく、吸引口は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。複数の吸引口を設定する場合には、ノズル12の中心軸に対して対称となるように配置することが好ましい。
【0050】
以下、種々の変形例について図面を参照しながら説明する。尚、以下の説明において、図2に示すヘッド本体91と同様の構成については、同じ符号を付してその説明は適宜省略する場合がある。
【0051】
先ず、図4は吸引通路18の構成に係る変形例を示しており、このヘッド本体92は、吸引通路18の一部をノズル板130によって区画するようにしている。このヘッド本体92におけるノズル板130は、前記ヘッド本体91のノズル板13よりも両側に拡大しており、その拡大した両側部分は、外装部材17の下面に対し、弾性変形可能な弾性部材131を介して接合されている。そうして、そのノズル板130の両側部には、板厚方向に貫通する貫通孔が形成されており、この貫通孔はノズル板130を外装部材17に対して接合したときに、外装部材17内に形成された吸引通路18の下端に対し連通することにより、吸引通路18の一部を区画することになる。
【0052】
ノズル板130と外装部材17との間に介在する弾性部材131は、その中央に孔を有する環状であって、ノズル板130に形成された吸引通路18と外装部材17に形成された吸引通路18とを互いに連通させる。それと共にこの弾性部材131は、アクチュエータ14の駆動時に弾性変形することによって、ノズル板130の変位を許容して、弾性区画部材15の伸縮変形を可能にする。
【0053】
ノズル板130の下面(ノズル面)には、その両側位置に区画部材132がそれぞれ接合されている。各区画部材132には、上向きに開口すると共に水平方向に延びる凹溝132aが形成されており、この凹溝132aによって吸引通路18に連通すると共に、ノズル12の開口の近傍に位置する吸引口18aが形成されることになる。この構成では、吸引口18aがノズル板130を利用して区画形成されるため、ノズル12の開口と、吸引口18aとの相対的な位置の精度が向上するという利点がある。
【0054】
図5は、液体吸引系の構成の変形例を示している。この変形例では、ヘッド本体91における2つの吸引口18aに対し、それぞれ別の吸引タンク461,462及び吸引ポンプ471,472を接続している。従って、2つの吸引チューブ451,452及び2つのエア吸引管481,482を備えている。この構成では、各吸引口18aにおける吸引力を個別に調整することが可能になるため、例えば吸引口18a,18aにおける吸引力が互いに等しくなるように調整することにより、吸引性能の安定化を図り得る。
【0055】
図6は、液体吸引系の構成についての別の変形例を示している。この例では、2つに分岐された吸引チューブ45の一方に、吸引口18aにおける吸引力を変更調整可能な吸引力可変(調整)手段5を取り付けている。こうした吸引力可変手段5は、各吸引口18aにおける吸引力が互いに等しくなるように、吸引力を調整する上で有効な構成である。吸引力可変手段5は、具体的には図7〜9のいずれかの構成を採用し得る。
【0056】
図7は、吸引力可変手段5をソレノイド51を利用して構成した例であり、ソレノイド51への通電により戻し付勢されるプランジャー52を、可撓性を有する吸引チューブ45の側方に配置すると共に、吸引チューブ45を挟んだ逆側の側方には、吸引チューブ45の変位を規制する押さえ板53を配設して構成されている。この構成の吸引力可変手段5は、非通電時にバネの付勢力により、プランジャー52を図7における右方向に突出させたときには、吸引チューブ45の周壁が内方に押されて変形し通路断面積が縮小するようになる。これによって、吸引力を相対的に低下させることが可能になる。
【0057】
図8は、吸引力可変手段5をモータ54を利用して構成した例であり、モータ54の駆動により正転及び逆転方向に回転するねじ55を、吸引チューブ45の側方に配置した螺合板56に対して螺合して構成されている。この構成の吸引力可変手段5は、モータ54の駆動によりねじ55を回転させたときには、そのねじ55が螺合板56に対して相対的に進退するようになり、ねじ55によって、前記と同様に、吸引チューブ45の周壁が内方に押されて変形し通路断面積が縮小するようになる。これによって、吸引力を相対的に低下させることが可能になる。
【0058】
図9は、吸引力可変手段5をソレノイド51を利用して構成した例であるが、図7に示す構成例とは異なり、吸引チューブ45の周壁に形成した圧抜口45aを開閉することによって、吸引力を変更するようにしている。つまり、プランジャー52の先端に閉塞板57を取り付けておき、プランジャー52を、二点鎖線で示すように、右方向に突出させたときには、圧抜口45aが閉塞板57によって閉塞されることで、吸引力が相対的に高くなる一方、プランジャー52を、実線で示すように左方向に戻したときには、圧抜口45aが開放されることで、吸引力が相対的に低くなる。
【0059】
例えば、ヘッド本体91における一方の吸引通路18内に異物等が混入して、2つの吸引口18a間の吸引力が互いに異なることになったとしても、こうした吸引力可変手段5を備えることによって一対の吸引口18a間の吸引力を調整してバランスさせることが可能である。従って、こうした吸引力可変手段5は、ヘッド本体91における吸引性能を安定化し得る。尚、吸引力可変手段5は、分岐された吸引チューブ45のいずれか一方に取り付ければよいが、分岐された吸引チューブ45の双方に取り付けてもよい。
【0060】
図10は、液体吸引系の構成についてのさらに別の変形例を示しており、この例では、吸引チューブ45(分岐前の)に対し、吸引力可変手段としての高速バルブ61(応答性の高い開閉バルブ)を介設している。この高速バルブ61は、液滴の吐出時において各吸引口18aを通じた吸引力を変更する(吸引の実行、非実行を切り替える)機能を有している。
【0061】
ここで、液滴の吐出時の現象について詳細に説明すると、アクチュエータ14の駆動によって圧力室11内の液体材料に対し圧力が印可されることに伴い、ノズル12の開口から液体材料が押し出され、液滴が次第に大きく成長する。そうして、所定の大きさの液滴になった時点で、液滴(主液滴)はノズル12内の液体材料からちぎれて、ノズル面から飛翔する。その飛翔開始後に、換言すればアクチュエータ14の駆動開始から所定の時間が経過したときに、サテライト滴や浮遊液滴が発生するようになる。このようにサテライト滴や浮遊液滴の発生タイミングは、アクチュエータ14の駆動と同期していることから、吸引を行うタイミングは、アクチュエータ14の駆動に対して同期をとるように設定することが好ましい。さらに、アクチュエータ14の駆動開始から主液滴が飛翔するまでの間は、サテライト滴や浮遊液滴が発生しないため、吸引を行わないことが、主液滴の飛翔に対する影響を確実に無くす上では好ましい。そこで、この例においては、アクチュエータ14の駆動開始から主液滴が飛翔するまで期間に相当する所定期間は、高速バルブ61を閉じて吸引を行わないようにしておき、その後、高速バルブ61を開けることによって、サテライト滴や浮遊液滴の発生タイミングで吸引を開始して、それらの不要な液滴を効率的に吸引する。応答性の高い高速バルブ61を利用することによって、液滴の吐出動作の期間内において、吸引力の変更(吸引の実行、非実行の切り替え)を行うことが可能になる。尚、高速バルブの応答時間や流路長による時間遅れ等を考慮して、高速バルブのオン・オフタイミングを設定することにより、より精度良く、液体材料を吐出するタイミングと吸引するタイミングとを同期させることができる。尚、高速バルブ61が、その開度調整によって、吸引力を変更可能であるときには、アクチュエータ14の駆動開始から主液滴が飛翔するまで期間に相当する所定期間は、高速バルブ61の開度を相対的に小さくして吸引力を低くしておき、その後、高速バルブ61の開度を大きくすることによって吸引力を大きくするようにしてもよい。
【0062】
図11は、吸引力の変更に関係して、液滴の吐出時と非吐出時とで吸引力を変更する場合に好適な構成例を示している。この例では、吸引ポンプ47と吸引タンク46との間にレギュレータ62を介設しており、これによって吸引タンク46内の圧力を調整することで、吸引口18aを通じた吸引力を変更するようにしている。具体的に液滴の吐出時であって、サテライト滴や浮遊液滴等を吸引するときには、吸引力を相対的低く設定する(例えば−0.01〜−10kPa)一方、液滴の非吐出時であって、ノズル面の残留液滴を吸引するときには、吸引力を相対的高く設定する(例えば−10〜−70kPa)。ノズル面の残留液滴を吸引するときには、比較的高い吸引力が要求される一方で、サテライト滴や浮遊液滴等を吸引するときには、高い吸引力が要求されず、逆に高い吸引力で吸引を行った場合には、主液滴の飛翔に影響を及ぼす虞もあるところ、液滴の吐出時と非吐出時とで吸引力を変更して、それぞれにおいて最適な吸引力にすることで、ヘッド本体91の信頼性がより高まる。
【0063】
こうした吸引力を変更する構成は、液滴の吐出時と非吐出時とで吸引力を変更する目的に限らず、例えば液滴の吐出時の吸引力を、ヘッド本体91の動作環境に応じて変更する場合にも利用し得る。つまり、ここに示すヘッド本体91が吐出する液体材料のように比較的高粘度の液体材料は、温度に応じてその粘度が変化し、それに伴いサテライト滴や浮遊液滴の発生量が変化することになる。そこで、例えば温度等の動作環境に応じて、液滴吐出時の吸引力を変更するようにすれば、その吸引力をサテライト滴や浮遊液滴の発生量に応じた吸引力にすることが実現し、環境変化に対し吸引性能が安定化する。
【0064】
尚、レギュレータ62を介設する代わりに、例えば図7〜9に示した吸引力可変手段5に係る各構成を吸引チューブ45の分岐前の位置に配置することによっても、液滴の吐出時と非吐出時とで吸引力を変更することが実現し得る。また、図10に示す高速バルブ61を備えた例(但し、高速バルブ61のバルブ開度は調整可能である)でも、液滴の吐出時と非吐出時とで吸引力を変更することが実現し得る。
【0065】
図12〜14は、ノズル面に付着した残留液滴を除去する上で好適な変形例を示している。この例では、ノズル板13におけるノズル面に、残留液滴を吸引口18aへと導く導出路71を形成している。導出路71は、ノズル面から凹陥して形成された凹溝によって構成されており、この凹溝は、ノズル12の開口から両側方に、吸引口18aに向かうようにそれぞれ延びて形成されている。
【0066】
前述したように、ノズル面に撥水処理を施しているときには、液体材料を圧力室11内に充填しているときや、圧力室11内の気泡を除去しているとき等に、ノズル12の開口付近に付着した液滴が大きな球状に成長してしまい、吸引力だけでは液滴が移動し難くなってしまう場合がある。これに対し、ノズル面に導出路71を形成したときには、液滴が大きな球状になることが抑制され、結果として吸引口18aを通じた吸引により液滴を除去しやすくなる。また、こうした導出路71は、残留液滴の吸引時に、その残留液滴がノズル12の開口を横切ることを防止する上でも効果的である。
【0067】
尚、凹溝の断面形状は、図14に示すように横断面矩形状に限らず、例えば横断面三角形としたV溝状に形成してもよいし、例えば横断面半円形状としてもよい。凹溝の断面形状は、任意の形状を適宜採用し得る。
【0068】
図15に示す例は、ノズル面に凹溝を形成するのではなく、ノズル面における撥水処理を施す領域と親水処理を施す領域とを区分することによって、導出路71を構成している。具体的には、ノズル12の開口から両側方に向かってそれぞれ延びるように帯状に撥水処理を施す(符号72参照)一方、それ以外の領域73には親水処理を施すことによって、撥水処理の領域と親水処理の領域との境界を形成し、それによって導出路71を構成する。この構成でもノズル面に付着している残留液滴を、導出路71に沿って吸引口18aへと導いて、残留液滴が効率的に除去されるようになる。
【0069】
図16に示す例は、図15に示す例に対し撥水処理を施す領域72と親水処理を施す領域73とを逆転させた例である。この例でも、撥水処理の領域72と親水処理の領域73との境界によって導出路71が構成され、ノズル面に付着している残留液滴を、導出路71に沿って吸引口18aへと導いて、残留液滴が効率的に除去されるようになる。尚、液滴の吐出安定性の観点からはノズル12の開口の周囲は撥水性を有することが望ましいため、この例においては、ノズル12の開口周辺には撥水処理を施している。
【0070】
図17は、吸引口18aを通じた吸引によって、液体材料を圧力室11に充填することを実現し得る構成例を示している。この例では、ヘッド本体91(液体吐出ヘッド)の下端に密着して、ノズル面との間で密閉空間82を形成するキャップ81を備えている。このキャップ81のヘッド本体91に対する取り付けは、ヘッド本体91の例えば待避位置において、キャップ81をヘッド本体91に対し相対移動可能に配設しておくことによって、ヘッド本体91の下端に密着して取り付けるようにしてもよいし、例えば手動によって、キャップ81をヘッド本体91の下端に密着して取り付けるようにしてもよい。このような密閉空間82を形成することによって、吸引ポンプ47の駆動に伴い吸引タンク46内を負圧にすれば、圧力室11内もまた負圧状態になるため、供給タンク42内の液体材料を吸い込んで、圧力室11内に液体材料を充填させることが可能になる。この構成例では、供給ポンプ43によって供給タンク42内を正圧状態にすることを不要にするという利点がある。
【0071】
尚、キャップ81に大気開放弁を設けてもよい。圧力室11に液体材料が充填され、ノズル12から液体材料が出てきたときに、この大気開放弁を開放することによって、圧力室11に必要以上に液体材料が充填されることがなく、ノズル12の開口周囲の不要な液体材料を効果的に吸引して除去することができる。
【0072】
また、キャップによって外装部材17とヘッド本体91との間を密閉してもよい。この密閉により密閉性がさらに向上すると共に、液体材料がアクチュエータ14等のヘッド本体91に接しないため、アクチュエータ(圧電体)14等の劣化が防止される。
【0073】
尚、前述した各例では、液滴の吐出方向に対して直交する方向に吸引を行うように、吸引口18aの向きを設定しているが、例えば図18に示すように、液滴の吐出方向とは逆向きに吸引を行うように、吸引口18aをノズル面の高さと対応する高さ位置において下向きに開口するようにしてもよい。また、例えば図19に示すように、液滴の吐出方向に対して傾斜した向きに吸引を行うように、吸引口18aを斜め上向きに開口するようにしてもよい。
【0074】
また、ここではノズル板13に1つのノズル12を形成したヘッド本体91を例に説明をしたが、本技術は、ノズル板に複数のノズルを形成したヘッド本体に対しても適用することが可能である。複数のノズルは、例えば図2に示す紙面に直行する方向に並べて配置してもよく、この場合において吸引口は、ノズルを挟んだ両側のそれぞれにおいて、ノズルの1つ1つに対応するように、複数の吸引口をノズルの配列方向に並べて配置してもよい。また、複数のノズル、又は全てのノズルに対応するように、ノズルの配列方向にスリット状に延びる吸引口を配設してもよい。
【0075】
また、ヘッド本体における液体材料を吐出するための構成は、前述した構成に限定されるものではなく、圧電体を利用した他の構成を採用してもよいし、圧電体を利用するのではなく、例えばサーマル方式やバルブ方式、プランジャー方式、及び静電気吸引方式等を採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上説明したように、本発明は、小型化を図りつつも、液体の吐出時及び非吐出時のそれぞれにおいて、不要な液体を効率的に吸引して、液体吐出ヘッドの信頼性を向上させることができるから、例えばフラットパネルディスプレイや回路基板等の各種デバイスの製造といったエレクトロニクス分野を始めとして、オプトエレクトニクス分野、バイオ・メディカル分野などの各種の技術分野において、種々なパターンや均一薄膜等を形成する液体材料吐出ヘッド及び液体材料吐出装置として有用であると共に、インクを吐出することによって例えば記録紙等の記録媒体上に画像を形成するインク吐出ヘッド及び画像形成装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】液体吐出装置を示す概略斜視図である。
【図2】ヘッド本体を示す縦断面図及び底面図である。
【図3】ヘッド本体に対する液体供給系及び液体吸引系の構成を示す概略図である。
【図4】変形例に係るヘッド本体を示す縦断面図である。
【図5】変形例に係るヘッド本体に対する液体供給系及び液体吸引系の構成を示す概略図である。
【図6】吸引力可変手段を設けた例に係る液体吸引系の構成を示す概略図である。
【図7】吸引力可変手段の一例を示す概略説明図である。
【図8】吸引力可変手段の別の例を示す概略説明図である。
【図9】吸引力可変手段のさらに別の例を示す概略説明図である。
【図10】吸引力可変手段としての高速バルブを設けた例に係る液体吸引系の構成を示す概略図である。
【図11】吸引力可変手段としてのレギュレータを設けた例に係る液体吸引系の構成を示す概略図である。
【図12】変形例に係るヘッド本体を示す縦断面図である。
【図13】ヘッド本体の底面図である。
【図14】図13のXIV−XIV端面図である。
【図15】変形例に係るヘッド本体の底面図である。
【図16】さらに別の変形例に係るヘッド本体の底面図である。
【図17】キャップを設けた例に係るヘッド本体を示す縦断面図である。
【図18】吸引口の配置に関する変形例に係るヘッド本体を示す縦断面図である。
【図19】吸引口の配置に関する別の変形例に係るヘッド本体を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0078】
11 圧力室
12 ノズル
13 ノズル板
130 ノズル板
14 アクチュエータ(圧力印加手段)
18 吸引通路
18a 吸引口
46 吸引タンク
47 吸引ポンプ
5 吸引力可変手段
51 ソレノイド(吸引力可変手段)
54 モータ(吸引力可変手段)
61 高速バルブ(吸引力可変手段)
62 レギュレータ(吸引力可変手段)
7 液体吐出ヘッド
71 導出路
81 キャップ(密閉部材)
91 ヘッド本体
92 ヘッド本体
A 液体吐出装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴を吐出する液体吐出ヘッド及びそれを備えた液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録紙に対してインク滴を吐出するインクジェット技術が、近年、エレクトロニクス分野を始めとした様々な分野の製造過程に利用されている。すなわち、液体吐出ヘッドから液体材料を吐出することによって、各種のデバイス製造過程におけるパターンの形成や均一薄膜の形成等が行われている。そうしたパターン形成等に用いられる液体材料は、通常の記録に用いられるインクと比較して、粘度が高い性質を有している。そのため、液体材料の吐出時には、主液滴とは別に、相対的に遅い速度で主液滴から遅れて飛翔するサテライト滴や、飛翔方向が定まらずに様々な方向へ飛翔するような浮遊液滴(ミスト)が発生しやすい。こうしたサテライト滴や浮遊液滴は、着弾精度の低下や液滴量の不安定性を招き、液体吐出ヘッドの信頼性を低下させる。
【0003】
例えば特許文献1には、記録紙にインクを吐出して画像を形成するインクジェット式の記録装置において、こうしたサテライト滴や浮遊液滴を吸引する吸引手段を備える点が開示されている。この吸引手段は、サテライト滴等を吸引する吸引口が形成された吸引ユニットを備え、インクの非吐出時にはインクジェットヘッドのノズル面に当接するように吸引ユニットを配置して、ノズル面付近の残留インクを吸引する一方、インクの吐出時には、吸引ユニットをヘッドの側方位置に移動させて、サテライト滴等の吸引をするように構成されている。
【特許文献1】特開2007−216420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された吸引手段は、同じ吸引ユニットを用いて、インクの吐出時と非吐出時とのそれぞれにおいて不要な液滴を吸引しようとしているものの、インクの吐出時には、吸引ユニットがインクジェットヘッドの側方位置に位置付けられるため、吸引ユニットの吸引口は、インクジェットヘッドのノズルの開口に対して遠く離れてしまう。このため、インクの吐出時にノズルの開口近傍に生じるサテライト滴や浮遊液滴を、効果的に吸引することができないという問題がある。また、インクの吐出時と非吐出時とにおいて、インクジェットヘッドとは別体の吸引ユニットを、インクジェットヘッドに対して相対移動させる機構が必要であり、液体吐出装置の大型化を招く。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、小型化を図りつつも、液体の吐出時及び非吐出時のそれぞれにおいて、不要な液体を効率的に吸引し得る液体吐出ヘッド及び液体吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
液体吐出ヘッドは、液体を収容する圧力室、前記圧力室に連通するノズルの先端が開口するノズル面を有するノズル板、及び、前記圧力室内の液体に圧力を印加することによって、前記ノズルを通じて前記圧力室内の前記液体を吐出する圧力印加手段を含んで構成されるヘッド本体と、前記ノズルの開口の近傍に位置する吸引口を有すると共に、当該吸引口を通じて、前記液体の吐出時及び非吐出時のそれぞれにおいて、前記ノズル開口の周囲に存在する不要な液体を吸引する吸引手段と、を備えている。
【0007】
吸引手段の吸引口をノズル開口の近傍位置に配置することによって、そのノズルを通じた液滴の吐出時にはサテライト滴や浮遊液滴を効率的に吸引し得ると共に、液滴の非吐出時にもノズル面に付着した残留液滴を効率的に吸引し得る。その結果、液滴の飛び散りの防止、液滴の着弾精度の向上、吐出速度及び液滴量の安定化が図られ、液体吐出ヘッドの信頼性が向上し得る。
【0008】
この構成ではまた、吸引口の位置を変更させるための構成が不要であるため、その分、液体吐出ヘッドが小型化し得る。
【0009】
前記吸引口は、前記ノズルの中心軸に対して対称となるように複数配置されている、としてもよい。また、ノズルの周辺に円周形状の吸引口を配置してもよい。
【0010】
こうすることで、ノズルの中心軸に沿って飛翔する主液滴に対しては、各吸引口による吸引力が均等に作用し、主液滴の飛翔に対して悪影響を及ぼすことない一方、ノズルの中心軸に沿って飛翔しないようなサテライト滴や浮遊液滴については効率的に吸引し得る。
【0011】
前記吸引手段において、前記吸引口を含む吸引通路は、前記ヘッド本体内に形成されている、としてもよい。
【0012】
こうすることで、液体吐出ヘッドのさらなる小型化が図られると共に、構成が簡略化することにより製造コスト低減の点で有利になる。
【0013】
前記吸引口は、前記ノズル板のノズル面によって区画形成されている、としてもよい。こうすることで、ノズルの開口に対する吸引口の相対位置の精度が向上する。
【0014】
前記液体吐出ヘッドは、前記吸引手段の吸引力を変更する吸引力可変手段をさらに備えている、としてもよい。
【0015】
例えば液滴の吐出時と非吐出時とで吸引力を変えるようにすれば、液滴の吐出時におけるサテライト滴や浮遊液滴の吸引と、液滴の非吐出時におけるノズル面に付着した残留液滴の吸引とが、それぞれ最適化される。
【0016】
また、液滴の吐出時において、吐出開始時から吐出完了時の間で吸引力を変えるようにすれば、主液滴に対しては影響を与えずに、その主液滴の飛翔後に発生するサテライト滴や浮遊液滴に対しては、効率的な吸引が実現し得る。
【0017】
さらに、吸引口が複数存在しているときには、各吸引口による吸引力が互いに等しくなるように調整するようにすれば、吸引力のバランスをとり得る。
【0018】
前記ノズル板のノズル面には、前記ノズルの開口から前記吸引口に向かって延びかつ、前記不要な液体を前記吸引口へと導く導出路が形成されている、としてもよい。
【0019】
こうすることで、ノズル面に付着している液滴を、導出路に沿って吸引口へと移動させて効率的に吸引することが可能になる。
【0020】
前記ヘッド本体に装着されることによって、前記ノズルの開口が連通する密閉空間を形成する密閉部材をさらに備え、前記吸引手段の吸引口は、前記密閉空間内に開口している、としてもよい。
【0021】
こうすることで、密閉部材によって密閉空間を形成することにより、ノズル面に付着している不要な残留液滴を効率的に吸引し得る。それと共に、吸引手段による吸引力を利用して、空の圧力室内に液体を充填することも行い得る。このことは、例えば空の圧力室内に液体を充填するために、液体を貯留するタンク内を正圧にする手段を省略することが実現し、液体吐出装置の構成が簡略化する。
【0022】
液体吐出装置は、前記の液体吐出ヘッドを備えていることにより、液体の吐出時及び非吐出時のそれぞれにおいて不要な液滴を効率的に吸引して、液滴の飛び散りの防止、液滴の着弾精度の向上、吐出速度及び液滴量の安定化が図られ、液体吐出ヘッドの信頼性が向上し得ると共に、小型化も図り得る。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、この発明によると、小型化を図りつつ、液体の吐出時及び非吐出時のそれぞれにおいて不要な液滴を効率的に吸引することができ、液体吐出ヘッドの信頼性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示であり、適用物又は用途を制限することを意図するものではない。
【0025】
図1は、液体吐出装置Aの概略構成を示している。この液体吐出装置Aは、ヘッド本体(図2等参照)を備えた液体吐出ヘッド7と、被記録物4を支持するステージ31と、を備えている。液体吐出ヘッド7は、装置基台6に支持されたヘッド移動装置2によって主走査方向(図1に示すX方向)に往復移動し、ステージ31は、同じく装置基台6に支持されたステージ移動装置3によって副走査方向(図1に示すY方向)に往復移動する。ヘッド移動装置2は、液体吐出ヘッド7を支持するキャリッジ7aを含む。キャリッジ7aは、主走査方向に延びるキャリッジ軸7bにガイドされ、図示を省略する駆動源(例えばモータ)によって、主走査方向に往復移動する。
【0026】
ステージ移動装置3は、主走査方向に所定間隔を開けて配置されかつ、それぞれ副走査方向に延びる2つのステージ軸32,32を含む。ステージ31はこれらのステージ軸32,32にガイドされ、図示を省略する駆動源(例えばモータ)によって、副走査方向に往復移動する。
【0027】
液体吐出装置Aはこの構成によって、液体吐出ヘッド7とステージ31上の被記録物4とを相対移動させながら、液体吐出ヘッド7(ヘッド本体91)から被記録物4に向かって液体材料を吐出し、被記録物4上に所望のパターンや均一薄膜等を形成する。
【0028】
図2に示すように、ヘッド本体91は、液体材料を収容する圧力室11と、圧力室11に連通するノズル12が1つ形成されたノズル板13と、圧力室11内の液体材料に圧力を印加することによって、ノズル12を通じて圧力室11内の液体材料を吐出するためのアクチュエータ14と、を含んで構成されている。
【0029】
ノズル板13は、例えばステンレス鋼からなる板状の部材であり、ノズル12は、このノズル板13に対し板厚方向に貫通して形成されている。ノズル12は、この例では、基端(図2の上図における上端)から先端(図2の上図における下端)に向かって径が小さくなるテーパ形状を有しているが、径が一定のストレート形状としてもよい。ノズル12の先端開口の径は、例えばφ5〜300μm程度に設定すればよい。ノズル板13の下面は、ノズル12の先端が開口するノズル面であり、このノズル面には、液体材料の吐出安定性の観点から撥水処理を施すことが好ましい。
【0030】
ノズル板13の上面には、圧力室11の側面を区画する弾性区画部材15がノズル12の基端開口を囲むように配置されている。弾性区画部材15は、後述するように、アクチュエータ14の駆動に伴い弾性的に伸縮変形して、圧力室11の体積を変化させるための部材であり、例えばその中心に円形状の孔を有する円環状に形成される。弾性区画部材15は、液体材料に対する耐食性を考慮して、例えば耐溶剤性のゴム、具体的にはフッ素ゴムやシリコンゴム等によって形成すればよい。
【0031】
弾性区画部材15の上面には前記アクチュエータ14が配設され、ノズル板13とアクチュエータ14とを互いに接合する接着層15aは、弾性区画部材15の外周面を取り囲むように設けられている。この接着層15aは、弾性区画部材15が弾性変形するときに、その弾性区画部材15が圧力室11の外方に向かって逃げ変形することを規制するようにもなっている。
【0032】
アクチュエータ14は、積層型圧電体からなり、積層方向の一端(下端)が弾性区画部材15の上面に対して接合されていると共に、その他端(上端)が、アクチュエータ保持部材16に固定されている。アクチュエータ14にはまた、ノズル12の中心軸と同軸になるように、厚み方向に貫通して形成された貫通孔が形成されており、この貫通孔内に、後述するように、圧力室内に液体を供給するための供給パイプ20が内挿されるようになっている。アクチュエータ14は、図2では図示を省略する電極に電圧が印可されることによって、図2の上図における上下方向に伸縮変形する(図2の矢印参照)。アクチュエータ14の駆動に伴い、弾性区画部材15が図2の上図における上下方向に伸縮変形することで、圧力室11の体積が増減するようになっている。
【0033】
アクチュエータ保持部材16は、板状部材であり、前述したようにその下面にアクチュエータ14が接合されることにより、このアクチュエータ14、弾性区画部材15及びノズル板13の一体化物を保持している。アクチュエータ保持部材16にはまた、その中央位置に、供給パイプ20を内挿するための貫通孔が板厚方向に貫通して形成されている。
【0034】
アクチュエータ保持部材16は外装部材17に対して固定されている。外装部材17は、略矩形塊状の部材であり、その上端面は、ヘッド保持プレート19に接合されている。外装部材17の内部には、下面に開口する凹陥部17aが形成されており、アクチュエータ保持部材16は、この凹陥部17a内の上壁に対して固定されている。これによって、アクチュエータ14、弾性区画部材15及びノズル板13の一体化物は、この凹陥部17a内に配設されることになる。
【0035】
外装部材17にはまた、その中央位置に上下方向に延びる貫通孔が形成されており、この貫通孔内には、上下方向に延びる供給パイプ20が配設されている。供給パイプ20の下端部は、前記アクチュエータ保持部材16の貫通孔及びアクチュエータ14の貫通孔内に配設されており、その下端面は、弾性区画部材15の上面に対して接合されている。供給パイプ20の下端面によって、圧力室11の上面が区画されている。供給パイプ20の内孔は、この供給パイプ20の上下の両端それぞれに開口しており、これによって、この内孔は圧力室11内に連通している。供給パイプ20の上端はまた、ヘッド保持プレート19を貫通して、このヘッド保持プレート19の上面から突出して配設されており、この上端には、図3に示すように、供給チューブ41を介して供給タンク42が接続されている。
【0036】
外装部材17にはまた、前記凹陥部17aを挟んだ両側位置に、吸引通路18がそれぞれ形成されている。各吸引通路18は、上下方向に延びて形成されていると共に、その下端において、凹陥部17a側に屈曲して形成されており、その屈曲端は、凹陥部17a内の側壁に開口している。この開口は、後述するように、液体の吐出時及び非吐出時のそれぞれにおいて、ノズル開口の周囲に存在する不要な液体を吸引するための吸引口18aとして機能するものであり、この吸引口18aは、図2の上図に示すように、ノズル板13のノズル面の高さに対応する高さ位置に位置していると共に、図2の下図に示すように、ノズル12の中心軸に対して対称となるように、ノズル12の開口を挟んだ両側それぞれに位置している。こうして各吸引口18aは、ノズル12の開口の近傍に位置していると共に、液滴の吐出方向(図2の上図における下向きの方向)に対して直交する方向に吸引を行うように構成されている。
【0037】
外装部材17の上部にはまた、ヘッド保持プレート19を貫通して配設された吸引パイプ21,21が、上下方向に延びるように取り付けられており、この各吸引パイプ21の下端は、各吸引通路18の上端に連通している。吸引パイプ21の上端には、図3に示すように、吸引チューブ45を介して吸引タンク46が接続されている。
【0038】
図3は、このヘッド本体91に対して設けられた液体供給系及び液体吸引系の構成を示している。液体供給系は、供給タンク42及び、液体供給手段としての供給ポンプ43(エアポンプ)を備えて構成されている。供給タンク42は、圧力室11内に供給する液体材料を収容するタンクであり、エア供給管44を介して供給ポンプ43に接続されていると共に、供給チューブ41を介してヘッド本体91の供給パイプ20に接続されている。供給ポンプ43に接続されているエア供給管44は、供給タンク42内の気相部分において開口している一方、供給パイプ20に接続されている供給チューブ41は、供給タンク42内の液体材料の領域内に開口している。供給タンク42内は、供給ポンプ43の作動に応じて正圧状態(圧力室11内に対して正圧状態)と、負圧状態(圧力室11内に対して負圧状態)とに切り替えられる。つまり、空の圧力室11内に液体を充填するときには、供給タンク42内が正圧状態にされる一方、ヘッド本体91の駆動時(液体を吐出するとき)には、供給タンク42内が負圧状態にされる。尚、供給タンク42の高さ位置を、圧力室11の高さ位置に対して相対的上下させることによって、その供給タンク42内を正圧状態及び負圧状態に切り替えるようにしてもよく、この場合は供給ポンプ43を省略することが可能である。
【0039】
これに対し液体吸引系は、吸引タンク46及び、液体吸引手段としての吸引ポンプ47(エアポンプ)を備えて構成されている。吸引タンク46は、後述するように、ヘッド本体91から回収した不要な液滴を収容するタンクであり、エア吸引管48を介して吸引ポンプ47に接続されている。吸引タンク46内は、吸引ポンプ47の作動に応じて負圧状態にされる。吸引タンク46はまた、吸引チューブ45を介してヘッド本体91の吸引パイプ21に接続されており、吸引チューブ45はその途中において2つに分岐して、一対の吸引パイプ21,21それぞれに接続されている。尚、吸引タンク46内を負圧状態にする手段としては、エアポンプに限定されるものではなく、液体ポンプや真空ポンプによるエア吸引を採用してもよい。また、ポンプに限定されるものでもなく、適宜の手段を採用して吸引タンク46内を負圧状態にしてもよい。さらに、吸引タンク46は、省略することも可能である。
【0040】
次に、上記構成のヘッド本体91の動作について説明する。圧力室11、及びノズル12内のそれぞれに液体材料が充填された状態でアクチュエータ14に所定の電圧(例えば20V)を印可することと、その電圧印加の解除とを行うことによって、アクチュエータ14を伸縮変形させる(同図の矢印参照)。アクチュエータ14の伸縮変形に伴い弾性区画部材15が伸縮変形することになり、圧力室11内の液体材料に対して圧力が印加される。そうして液体材料がノズル12から押し出されて被記録物4に向かって液滴(主液滴)として吐出され、液滴は被記録物4の上面にドット状に付着する。それと共に、供給タンク42から供給パイプ20を介して液体材料が圧力室11内に補充される。尚、液体(液滴)の吐出時には、供給ポンプ43の作動により供給タンク42内は所定の負圧状態にされている。このような伸縮変形する弾性区画部材15により圧力室11を形成する構成は、圧力室11内の液体材料に対して高い圧力を印加することができるため、このヘッド本体91は、特に高粘度の液体材料を吐出する場合に好適である。
【0041】
液滴の吐出時にはまた、吸引ポンプ47を作動させ、それによって各吸引口18aを通じた吸引を行う。これにより、主液滴がノズル面から飛翔した後に発生するサテライト滴や浮遊液滴等の不要な液滴が、吸引口18aを通じて吸引され、吸引タンク46内に回収されることになる。これにより、液滴の飛び散り防止や着弾位置精度の向上、吐出速度及び液滴量の安定化が図られる。
【0042】
ここで、吸引口18aはノズル12の先端開口の近傍に位置しているため、サテライト滴や浮遊液滴を効率的に吸引することが可能であると共に、一対の吸引口18a,18aは、ノズル12の中心軸に対して対称に配置されていると共に、その吸引方向が互いに逆向きに設定されているため、ノズル12の中心軸に沿って飛翔する主液滴に対しては吸引力が相殺し、主液滴の吐出に悪影響を及ぼすことが回避される。このことは主液滴の着弾精度を向上させることになる。一方、ノズル12の中心軸からずれたサテライト滴や浮遊液滴は、いずれかの吸引口18aを通じて確実に吸引されることになる。
【0043】
また、液滴の吐出と吐出との間の非吐出時にも、吸引ポンプ47の作動を継続し、吸引口18aを通じた吸引を継続して行う。これにより、液滴の吐出後の、ノズル12の近傍に付着した残留液滴を吸引口18aを通じて吸引して除去する。こうすることで、次に液滴を吐出するときには、ノズル12の近傍の残留液滴が存在していないため、着弾位置精度の向上や、吐出速度及び液滴量の安定化が図られる。特にヘッド本体91の駆動周波数が低く、液滴の吐出と吐出との時間間隔が比較的長いときには、静電気等に起因して、ノズル面に小液滴や埃等が吸着しやすいのに対し、前述したような液滴の吐出と吐出との間での吸引を行うことによって、ノズル面上の液滴や埃を効果的に除去することが可能になり、吐出性能の安定化の上で有効である。
【0044】
また、ヘッド本体91が例えば待避位置に位置付けられているような液滴の非吐出時においても、吸引ポンプ47の作動を適宜行うことによって、次の液滴の吐出に備えてノズル面に付着している残留液滴を除去することが望ましい。
【0045】
さらに、空の圧力室11内に液体材料を充填するとき(つまり、液滴の非吐出時に相当する)にも、吸引ポンプ47を作動させることによって吸引を行う。前述したように、空の圧力室11内に液体を充填するときには、供給タンク42内を正圧にすることによって圧力室11内に液体材料を送り込むことになるが、余剰の液体材料がノズル12から漏れ出ることになる。こうして、液体材料の充填時には、ノズル面に余分な液体材料が付着することになるが、その付着した液体材料は、吸引口18aを通じて吸引されることによって除去される結果、液体材料の吐出精度が向上し得る。
【0046】
これらの場合のように、ノズル面に付着している液滴を吸引する際には、液滴がノズル面上に沿って吸引口18aまで移動して、そこから吸引されることになるが、一対の吸引口18a,18aを、ノズル12の開口を挟んだ両側それぞれに配置することによって、液滴がノズル12の開口を横切って吸引口18aに吸引されることが回避される。これによって、ノズル12の開口の汚染が回避され、ヘッド本体91の吐出精度を高精度に維持することが可能になる。
【0047】
ここで、吸引口18aの開口面積は、例えば100μm2〜1mm2に設定すればよく、その吸引圧力は、例えば−0.1〜−70kPaに設定するのが好ましい。
【0048】
また、このヘッド本体91では、吸引通路18及び吸引口18aを、ヘッド本体91内に形成しているため、吸引口18aをノズル12の開口近傍に配置する上で有利であると共に、ヘッド本体91の小型化の上でも有利である。また、ヘッド本体91の構成が簡略化するため、製造コストが低減し得る。
【0049】
尚、ヘッド本体91に設ける吸引口の数に特に制限はなく、吸引口は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。複数の吸引口を設定する場合には、ノズル12の中心軸に対して対称となるように配置することが好ましい。
【0050】
以下、種々の変形例について図面を参照しながら説明する。尚、以下の説明において、図2に示すヘッド本体91と同様の構成については、同じ符号を付してその説明は適宜省略する場合がある。
【0051】
先ず、図4は吸引通路18の構成に係る変形例を示しており、このヘッド本体92は、吸引通路18の一部をノズル板130によって区画するようにしている。このヘッド本体92におけるノズル板130は、前記ヘッド本体91のノズル板13よりも両側に拡大しており、その拡大した両側部分は、外装部材17の下面に対し、弾性変形可能な弾性部材131を介して接合されている。そうして、そのノズル板130の両側部には、板厚方向に貫通する貫通孔が形成されており、この貫通孔はノズル板130を外装部材17に対して接合したときに、外装部材17内に形成された吸引通路18の下端に対し連通することにより、吸引通路18の一部を区画することになる。
【0052】
ノズル板130と外装部材17との間に介在する弾性部材131は、その中央に孔を有する環状であって、ノズル板130に形成された吸引通路18と外装部材17に形成された吸引通路18とを互いに連通させる。それと共にこの弾性部材131は、アクチュエータ14の駆動時に弾性変形することによって、ノズル板130の変位を許容して、弾性区画部材15の伸縮変形を可能にする。
【0053】
ノズル板130の下面(ノズル面)には、その両側位置に区画部材132がそれぞれ接合されている。各区画部材132には、上向きに開口すると共に水平方向に延びる凹溝132aが形成されており、この凹溝132aによって吸引通路18に連通すると共に、ノズル12の開口の近傍に位置する吸引口18aが形成されることになる。この構成では、吸引口18aがノズル板130を利用して区画形成されるため、ノズル12の開口と、吸引口18aとの相対的な位置の精度が向上するという利点がある。
【0054】
図5は、液体吸引系の構成の変形例を示している。この変形例では、ヘッド本体91における2つの吸引口18aに対し、それぞれ別の吸引タンク461,462及び吸引ポンプ471,472を接続している。従って、2つの吸引チューブ451,452及び2つのエア吸引管481,482を備えている。この構成では、各吸引口18aにおける吸引力を個別に調整することが可能になるため、例えば吸引口18a,18aにおける吸引力が互いに等しくなるように調整することにより、吸引性能の安定化を図り得る。
【0055】
図6は、液体吸引系の構成についての別の変形例を示している。この例では、2つに分岐された吸引チューブ45の一方に、吸引口18aにおける吸引力を変更調整可能な吸引力可変(調整)手段5を取り付けている。こうした吸引力可変手段5は、各吸引口18aにおける吸引力が互いに等しくなるように、吸引力を調整する上で有効な構成である。吸引力可変手段5は、具体的には図7〜9のいずれかの構成を採用し得る。
【0056】
図7は、吸引力可変手段5をソレノイド51を利用して構成した例であり、ソレノイド51への通電により戻し付勢されるプランジャー52を、可撓性を有する吸引チューブ45の側方に配置すると共に、吸引チューブ45を挟んだ逆側の側方には、吸引チューブ45の変位を規制する押さえ板53を配設して構成されている。この構成の吸引力可変手段5は、非通電時にバネの付勢力により、プランジャー52を図7における右方向に突出させたときには、吸引チューブ45の周壁が内方に押されて変形し通路断面積が縮小するようになる。これによって、吸引力を相対的に低下させることが可能になる。
【0057】
図8は、吸引力可変手段5をモータ54を利用して構成した例であり、モータ54の駆動により正転及び逆転方向に回転するねじ55を、吸引チューブ45の側方に配置した螺合板56に対して螺合して構成されている。この構成の吸引力可変手段5は、モータ54の駆動によりねじ55を回転させたときには、そのねじ55が螺合板56に対して相対的に進退するようになり、ねじ55によって、前記と同様に、吸引チューブ45の周壁が内方に押されて変形し通路断面積が縮小するようになる。これによって、吸引力を相対的に低下させることが可能になる。
【0058】
図9は、吸引力可変手段5をソレノイド51を利用して構成した例であるが、図7に示す構成例とは異なり、吸引チューブ45の周壁に形成した圧抜口45aを開閉することによって、吸引力を変更するようにしている。つまり、プランジャー52の先端に閉塞板57を取り付けておき、プランジャー52を、二点鎖線で示すように、右方向に突出させたときには、圧抜口45aが閉塞板57によって閉塞されることで、吸引力が相対的に高くなる一方、プランジャー52を、実線で示すように左方向に戻したときには、圧抜口45aが開放されることで、吸引力が相対的に低くなる。
【0059】
例えば、ヘッド本体91における一方の吸引通路18内に異物等が混入して、2つの吸引口18a間の吸引力が互いに異なることになったとしても、こうした吸引力可変手段5を備えることによって一対の吸引口18a間の吸引力を調整してバランスさせることが可能である。従って、こうした吸引力可変手段5は、ヘッド本体91における吸引性能を安定化し得る。尚、吸引力可変手段5は、分岐された吸引チューブ45のいずれか一方に取り付ければよいが、分岐された吸引チューブ45の双方に取り付けてもよい。
【0060】
図10は、液体吸引系の構成についてのさらに別の変形例を示しており、この例では、吸引チューブ45(分岐前の)に対し、吸引力可変手段としての高速バルブ61(応答性の高い開閉バルブ)を介設している。この高速バルブ61は、液滴の吐出時において各吸引口18aを通じた吸引力を変更する(吸引の実行、非実行を切り替える)機能を有している。
【0061】
ここで、液滴の吐出時の現象について詳細に説明すると、アクチュエータ14の駆動によって圧力室11内の液体材料に対し圧力が印可されることに伴い、ノズル12の開口から液体材料が押し出され、液滴が次第に大きく成長する。そうして、所定の大きさの液滴になった時点で、液滴(主液滴)はノズル12内の液体材料からちぎれて、ノズル面から飛翔する。その飛翔開始後に、換言すればアクチュエータ14の駆動開始から所定の時間が経過したときに、サテライト滴や浮遊液滴が発生するようになる。このようにサテライト滴や浮遊液滴の発生タイミングは、アクチュエータ14の駆動と同期していることから、吸引を行うタイミングは、アクチュエータ14の駆動に対して同期をとるように設定することが好ましい。さらに、アクチュエータ14の駆動開始から主液滴が飛翔するまでの間は、サテライト滴や浮遊液滴が発生しないため、吸引を行わないことが、主液滴の飛翔に対する影響を確実に無くす上では好ましい。そこで、この例においては、アクチュエータ14の駆動開始から主液滴が飛翔するまで期間に相当する所定期間は、高速バルブ61を閉じて吸引を行わないようにしておき、その後、高速バルブ61を開けることによって、サテライト滴や浮遊液滴の発生タイミングで吸引を開始して、それらの不要な液滴を効率的に吸引する。応答性の高い高速バルブ61を利用することによって、液滴の吐出動作の期間内において、吸引力の変更(吸引の実行、非実行の切り替え)を行うことが可能になる。尚、高速バルブの応答時間や流路長による時間遅れ等を考慮して、高速バルブのオン・オフタイミングを設定することにより、より精度良く、液体材料を吐出するタイミングと吸引するタイミングとを同期させることができる。尚、高速バルブ61が、その開度調整によって、吸引力を変更可能であるときには、アクチュエータ14の駆動開始から主液滴が飛翔するまで期間に相当する所定期間は、高速バルブ61の開度を相対的に小さくして吸引力を低くしておき、その後、高速バルブ61の開度を大きくすることによって吸引力を大きくするようにしてもよい。
【0062】
図11は、吸引力の変更に関係して、液滴の吐出時と非吐出時とで吸引力を変更する場合に好適な構成例を示している。この例では、吸引ポンプ47と吸引タンク46との間にレギュレータ62を介設しており、これによって吸引タンク46内の圧力を調整することで、吸引口18aを通じた吸引力を変更するようにしている。具体的に液滴の吐出時であって、サテライト滴や浮遊液滴等を吸引するときには、吸引力を相対的低く設定する(例えば−0.01〜−10kPa)一方、液滴の非吐出時であって、ノズル面の残留液滴を吸引するときには、吸引力を相対的高く設定する(例えば−10〜−70kPa)。ノズル面の残留液滴を吸引するときには、比較的高い吸引力が要求される一方で、サテライト滴や浮遊液滴等を吸引するときには、高い吸引力が要求されず、逆に高い吸引力で吸引を行った場合には、主液滴の飛翔に影響を及ぼす虞もあるところ、液滴の吐出時と非吐出時とで吸引力を変更して、それぞれにおいて最適な吸引力にすることで、ヘッド本体91の信頼性がより高まる。
【0063】
こうした吸引力を変更する構成は、液滴の吐出時と非吐出時とで吸引力を変更する目的に限らず、例えば液滴の吐出時の吸引力を、ヘッド本体91の動作環境に応じて変更する場合にも利用し得る。つまり、ここに示すヘッド本体91が吐出する液体材料のように比較的高粘度の液体材料は、温度に応じてその粘度が変化し、それに伴いサテライト滴や浮遊液滴の発生量が変化することになる。そこで、例えば温度等の動作環境に応じて、液滴吐出時の吸引力を変更するようにすれば、その吸引力をサテライト滴や浮遊液滴の発生量に応じた吸引力にすることが実現し、環境変化に対し吸引性能が安定化する。
【0064】
尚、レギュレータ62を介設する代わりに、例えば図7〜9に示した吸引力可変手段5に係る各構成を吸引チューブ45の分岐前の位置に配置することによっても、液滴の吐出時と非吐出時とで吸引力を変更することが実現し得る。また、図10に示す高速バルブ61を備えた例(但し、高速バルブ61のバルブ開度は調整可能である)でも、液滴の吐出時と非吐出時とで吸引力を変更することが実現し得る。
【0065】
図12〜14は、ノズル面に付着した残留液滴を除去する上で好適な変形例を示している。この例では、ノズル板13におけるノズル面に、残留液滴を吸引口18aへと導く導出路71を形成している。導出路71は、ノズル面から凹陥して形成された凹溝によって構成されており、この凹溝は、ノズル12の開口から両側方に、吸引口18aに向かうようにそれぞれ延びて形成されている。
【0066】
前述したように、ノズル面に撥水処理を施しているときには、液体材料を圧力室11内に充填しているときや、圧力室11内の気泡を除去しているとき等に、ノズル12の開口付近に付着した液滴が大きな球状に成長してしまい、吸引力だけでは液滴が移動し難くなってしまう場合がある。これに対し、ノズル面に導出路71を形成したときには、液滴が大きな球状になることが抑制され、結果として吸引口18aを通じた吸引により液滴を除去しやすくなる。また、こうした導出路71は、残留液滴の吸引時に、その残留液滴がノズル12の開口を横切ることを防止する上でも効果的である。
【0067】
尚、凹溝の断面形状は、図14に示すように横断面矩形状に限らず、例えば横断面三角形としたV溝状に形成してもよいし、例えば横断面半円形状としてもよい。凹溝の断面形状は、任意の形状を適宜採用し得る。
【0068】
図15に示す例は、ノズル面に凹溝を形成するのではなく、ノズル面における撥水処理を施す領域と親水処理を施す領域とを区分することによって、導出路71を構成している。具体的には、ノズル12の開口から両側方に向かってそれぞれ延びるように帯状に撥水処理を施す(符号72参照)一方、それ以外の領域73には親水処理を施すことによって、撥水処理の領域と親水処理の領域との境界を形成し、それによって導出路71を構成する。この構成でもノズル面に付着している残留液滴を、導出路71に沿って吸引口18aへと導いて、残留液滴が効率的に除去されるようになる。
【0069】
図16に示す例は、図15に示す例に対し撥水処理を施す領域72と親水処理を施す領域73とを逆転させた例である。この例でも、撥水処理の領域72と親水処理の領域73との境界によって導出路71が構成され、ノズル面に付着している残留液滴を、導出路71に沿って吸引口18aへと導いて、残留液滴が効率的に除去されるようになる。尚、液滴の吐出安定性の観点からはノズル12の開口の周囲は撥水性を有することが望ましいため、この例においては、ノズル12の開口周辺には撥水処理を施している。
【0070】
図17は、吸引口18aを通じた吸引によって、液体材料を圧力室11に充填することを実現し得る構成例を示している。この例では、ヘッド本体91(液体吐出ヘッド)の下端に密着して、ノズル面との間で密閉空間82を形成するキャップ81を備えている。このキャップ81のヘッド本体91に対する取り付けは、ヘッド本体91の例えば待避位置において、キャップ81をヘッド本体91に対し相対移動可能に配設しておくことによって、ヘッド本体91の下端に密着して取り付けるようにしてもよいし、例えば手動によって、キャップ81をヘッド本体91の下端に密着して取り付けるようにしてもよい。このような密閉空間82を形成することによって、吸引ポンプ47の駆動に伴い吸引タンク46内を負圧にすれば、圧力室11内もまた負圧状態になるため、供給タンク42内の液体材料を吸い込んで、圧力室11内に液体材料を充填させることが可能になる。この構成例では、供給ポンプ43によって供給タンク42内を正圧状態にすることを不要にするという利点がある。
【0071】
尚、キャップ81に大気開放弁を設けてもよい。圧力室11に液体材料が充填され、ノズル12から液体材料が出てきたときに、この大気開放弁を開放することによって、圧力室11に必要以上に液体材料が充填されることがなく、ノズル12の開口周囲の不要な液体材料を効果的に吸引して除去することができる。
【0072】
また、キャップによって外装部材17とヘッド本体91との間を密閉してもよい。この密閉により密閉性がさらに向上すると共に、液体材料がアクチュエータ14等のヘッド本体91に接しないため、アクチュエータ(圧電体)14等の劣化が防止される。
【0073】
尚、前述した各例では、液滴の吐出方向に対して直交する方向に吸引を行うように、吸引口18aの向きを設定しているが、例えば図18に示すように、液滴の吐出方向とは逆向きに吸引を行うように、吸引口18aをノズル面の高さと対応する高さ位置において下向きに開口するようにしてもよい。また、例えば図19に示すように、液滴の吐出方向に対して傾斜した向きに吸引を行うように、吸引口18aを斜め上向きに開口するようにしてもよい。
【0074】
また、ここではノズル板13に1つのノズル12を形成したヘッド本体91を例に説明をしたが、本技術は、ノズル板に複数のノズルを形成したヘッド本体に対しても適用することが可能である。複数のノズルは、例えば図2に示す紙面に直行する方向に並べて配置してもよく、この場合において吸引口は、ノズルを挟んだ両側のそれぞれにおいて、ノズルの1つ1つに対応するように、複数の吸引口をノズルの配列方向に並べて配置してもよい。また、複数のノズル、又は全てのノズルに対応するように、ノズルの配列方向にスリット状に延びる吸引口を配設してもよい。
【0075】
また、ヘッド本体における液体材料を吐出するための構成は、前述した構成に限定されるものではなく、圧電体を利用した他の構成を採用してもよいし、圧電体を利用するのではなく、例えばサーマル方式やバルブ方式、プランジャー方式、及び静電気吸引方式等を採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上説明したように、本発明は、小型化を図りつつも、液体の吐出時及び非吐出時のそれぞれにおいて、不要な液体を効率的に吸引して、液体吐出ヘッドの信頼性を向上させることができるから、例えばフラットパネルディスプレイや回路基板等の各種デバイスの製造といったエレクトロニクス分野を始めとして、オプトエレクトニクス分野、バイオ・メディカル分野などの各種の技術分野において、種々なパターンや均一薄膜等を形成する液体材料吐出ヘッド及び液体材料吐出装置として有用であると共に、インクを吐出することによって例えば記録紙等の記録媒体上に画像を形成するインク吐出ヘッド及び画像形成装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】液体吐出装置を示す概略斜視図である。
【図2】ヘッド本体を示す縦断面図及び底面図である。
【図3】ヘッド本体に対する液体供給系及び液体吸引系の構成を示す概略図である。
【図4】変形例に係るヘッド本体を示す縦断面図である。
【図5】変形例に係るヘッド本体に対する液体供給系及び液体吸引系の構成を示す概略図である。
【図6】吸引力可変手段を設けた例に係る液体吸引系の構成を示す概略図である。
【図7】吸引力可変手段の一例を示す概略説明図である。
【図8】吸引力可変手段の別の例を示す概略説明図である。
【図9】吸引力可変手段のさらに別の例を示す概略説明図である。
【図10】吸引力可変手段としての高速バルブを設けた例に係る液体吸引系の構成を示す概略図である。
【図11】吸引力可変手段としてのレギュレータを設けた例に係る液体吸引系の構成を示す概略図である。
【図12】変形例に係るヘッド本体を示す縦断面図である。
【図13】ヘッド本体の底面図である。
【図14】図13のXIV−XIV端面図である。
【図15】変形例に係るヘッド本体の底面図である。
【図16】さらに別の変形例に係るヘッド本体の底面図である。
【図17】キャップを設けた例に係るヘッド本体を示す縦断面図である。
【図18】吸引口の配置に関する変形例に係るヘッド本体を示す縦断面図である。
【図19】吸引口の配置に関する別の変形例に係るヘッド本体を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0078】
11 圧力室
12 ノズル
13 ノズル板
130 ノズル板
14 アクチュエータ(圧力印加手段)
18 吸引通路
18a 吸引口
46 吸引タンク
47 吸引ポンプ
5 吸引力可変手段
51 ソレノイド(吸引力可変手段)
54 モータ(吸引力可変手段)
61 高速バルブ(吸引力可変手段)
62 レギュレータ(吸引力可変手段)
7 液体吐出ヘッド
71 導出路
81 キャップ(密閉部材)
91 ヘッド本体
92 ヘッド本体
A 液体吐出装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する圧力室、前記圧力室に連通するノズルの先端が開口するノズル面を有するノズル板、及び、前記圧力室内の液体に圧力を印加することによって、前記ノズルを通じて前記圧力室内の前記液体を吐出する圧力印加手段を含んで構成されるヘッド本体と、
前記ノズルの開口の近傍に位置する吸引口を有すると共に、当該吸引口を通じて、前記液体の吐出時及び非吐出時のそれぞれにおいて、前記ノズル開口の周囲に存在する不要な液体を吸引する吸引手段と、を備えている液体吐出ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記吸引口は、前記ノズルの中心軸に対して対称となるように複数配置されている液体吐出ヘッド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記吸引手段において、前記吸引口を含む吸引通路は、前記ヘッド本体内に形成されている液体吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項3に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記吸引口は、前記ノズル板のノズル面によって区画形成されている液体吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記吸引手段の吸引力を変更する吸引力可変手段をさらに備えている液体吐出ヘッド。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記ノズル板のノズル面には、前記ノズルの開口から前記吸引口に向かって延びかつ、前記不要な液体を前記吸引口へと導く導出路が形成されている液体吐出ヘッド。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記ヘッド本体に装着されることによって、前記ノズルの開口が連通する密閉空間を形成する密閉部材をさらに備え、
前記吸引手段の吸引口は、前記密閉空間内に開口している液体吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドを備えている液体吐出装置。
【請求項1】
液体を収容する圧力室、前記圧力室に連通するノズルの先端が開口するノズル面を有するノズル板、及び、前記圧力室内の液体に圧力を印加することによって、前記ノズルを通じて前記圧力室内の前記液体を吐出する圧力印加手段を含んで構成されるヘッド本体と、
前記ノズルの開口の近傍に位置する吸引口を有すると共に、当該吸引口を通じて、前記液体の吐出時及び非吐出時のそれぞれにおいて、前記ノズル開口の周囲に存在する不要な液体を吸引する吸引手段と、を備えている液体吐出ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記吸引口は、前記ノズルの中心軸に対して対称となるように複数配置されている液体吐出ヘッド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記吸引手段において、前記吸引口を含む吸引通路は、前記ヘッド本体内に形成されている液体吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項3に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記吸引口は、前記ノズル板のノズル面によって区画形成されている液体吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記吸引手段の吸引力を変更する吸引力可変手段をさらに備えている液体吐出ヘッド。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記ノズル板のノズル面には、前記ノズルの開口から前記吸引口に向かって延びかつ、前記不要な液体を前記吸引口へと導く導出路が形成されている液体吐出ヘッド。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記ヘッド本体に装着されることによって、前記ノズルの開口が連通する密閉空間を形成する密閉部材をさらに備え、
前記吸引手段の吸引口は、前記密閉空間内に開口している液体吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドを備えている液体吐出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−188562(P2010−188562A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33525(P2009−33525)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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