説明

液体噴射装置

【課題】液体カートリッジの加圧動作と噴射ヘッドの吸引動作を同じポンプで行い、ポンプの稼働時間を短縮してポンプ寿命を確保するとともに廃液を加圧系にまわさない液体噴射装置を提供する。
【解決手段】記録紙に向かってインクを噴射する記録ヘッド30と、記録ヘッド30に供給するインクが封入されたインクパック24が収容されたインクカートリッジ9と、上記記録ヘッド30のノズル面をキャップするキャップ部材11aの内部空間を吸引するポンプ27と、上記ポンプ27をインクカートリッジ9内の加圧手段として機能させるようポンプ27の排出側をインクカートリッジに接続する接続経路13と、上記吸引動作によってポンプ27から排出される廃液を廃液回収タンク22に導入し、インクカートリッジ9を加圧するためにポンプ27から排出される加圧空気を接続経路13の下流側に向かって導入するための切換弁14とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として印刷データに対応してノズルからインク滴を吐出させて記録媒体にドットを形成させるインクジェット式記録装置として用いられる液体噴射装置に関し、詳しくは、液体カートリッジに空気圧を印加する加圧動作と、噴射ヘッドから液体を吸引排出する吸引動作とを同じポンプで行うようにした液体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ターゲットに対して液体を噴射する液体噴射装置としては、記録媒体に対してインクを噴射するインクジェット式記録装置が知られている。このような、インクジェット式記録装置は、一般にキャリッジ上に搭載されて記録用紙の幅方向に移動するインクジェット式記録ヘッドと、記録用紙を記録ヘッドの移動方向に対して直行する方向に相対的に移動させる紙送り手段が備えられ、印刷データに基づいて記録ヘッドよりインク滴を吐出させることにより記録用紙に対して印刷が行われる。
【0003】
一方、例えばオフィス向けまたは業務用に提供されるこの種の記録装置においては、比較的大量の印刷に対応させるために、大容量のインクカートリッジを配備する必要が生じ、このためにインクカートリッジを、例えば装置本体側に配置されたカートリッジホルダに装填させる形式の記録装置が提供されている。そして、記録ヘッドが搭載されたキャリッジ上にはサブタンクが配置され、上記各インクカートリッジから各サブタンクに対してインク補給チューブを介してそれぞれインクを補給し、さらに各サブタンクからそれぞれ記録ヘッドに対してインクを供給するように構成されている。
【0004】
また、昨今においてはより大きな紙面に対して印刷を行うことが可能な、キャリッジの走査距離の長い大型の記録装置が要求されている。このような記録装置においては、スループットを向上させるために、記録ヘッドにおいてはますます多ノズル化が図られている。さらに、スループットを向上させるために、印刷を実行しながらインクカートリッジからキャリッジに搭載された各サブタンクに対して逐次インクを補給することを可能とし、各サブタンクからそれぞれ記録ヘッドに対してインクを安定して供給するような記録装置が求められる。
【0005】
このような記録装置においては、インクカートリッジからサブタンクに対して、それぞれのインクに対応してインク補給チューブを接続する必要があり、キャリッジの走査距離が大きいために必然的にチューブの引き回し距離が増大する。しかも上述したとおり、記録ヘッドにおいては多ノズル化が図られているために、インクの消費量が多く、インクカートリッジからサブタンクに接続された各インク補給チューブ内においてインクの動圧(圧力損失)が高まり、サブタンクに対するインクの補給量が不足するという技術的課題を抱えている。
【0006】
このような課題を解決するための一つの手段として、例えばインクカートリッジ側に空気圧を印加し、インクカートリッジからサブタンクに対して空気圧によって強制的なインク流を発生させることで、サブタンクに対して必要十分なインクを補給する構成が採用されている。
【0007】
上述したような構成の記録装置に用いられるインクカートリッジとしては、外郭を構成するケースが気密状態となるように成形され、その内部にインクを封入した可撓性素材により形成されたインクパックが収納された構成を好適に採用することができる。このような構成におけるインクカートリッジにおけるインクパックは、ケース内に印加される加圧空気によってインクが押し出され、キャリッジに搭載された記録ヘッド側にインクが送り出されるように作用する。
【0008】
一方、インクジェット式記録装置では、インクの噴射不良を解消するために、増粘したインク等を記録ヘッドから強制的に排出したり、記録ヘッド内に滞留した気泡を強制的に排出して吐出不良を未然に防止するための、いわゆるクリーニング動作を適宜行っている。このクリーニングには、記録ヘッドのノズル形成面をキャッピング部材でキャップし、上記キャッピング部材の内部空間に対して吸引ポンプで負圧を与えることにより、ノズル開口から強制的にインクを吸引排出するものである。
【0009】
上述したような従来のインクジェット式記録装置では、インクの供給および回復動作を行うために、加圧動作を行うポンプと、記録ヘッドから排出された排インクを回収するポンプとが少なくとも2個必要である。
【0010】
そこで、インク袋を加圧変形させて記録ヘッドにインクを押し流すための加圧動作と、記録ヘッドから押し流された排インクを回収するインク回収動作とを同一のポンプで行うようにしたインクジェット式記録装置が提案されている(例えば下記の特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−162838
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1の記録装置では、吸引と加圧の双方にポンプを使用するうえ、加圧時には常にポンプを回転駆動しなければならないので、ポンプの消耗が激しいという問題がある。特に、インクジェット式記録装置のポンプとしては、例えばチューブポンプのように、ゴム等の弾性部材を使用した体積変化を利用した形式のものが多用され、寿命の点で厳しいことから、加圧時に常時回転させることによるポンプの消耗が問題となる。また、記録ヘッドから吸引された廃液がカートリッジの加圧系にも回ってしまうため、廃液の経路が複雑になって廃液漏れに対する信頼性が低下し、その対策が必要になるうえ、廃液タンクの寿命予測が困難になるという新たな問題が発生する。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、液体カートリッジに空気圧を印加する加圧動作と、噴射ヘッドから液体を吸引排出する吸引動作とを同じポンプで行い、ポンプの稼働時間を大幅に短縮してポンプ寿命を確保するとともに、廃液を加圧系にまわさない液体噴射装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の液体噴射装置は、噴射対象物に向かって液体を噴射する噴射ヘッドと、噴射ヘッドに供給する液体が封入された可撓性の液体パックが収容された液体カートリッジと、上記噴射ヘッドのノズル面をキャップするキャップ部材の内部空間を吸引するポンプと、上記ポンプを液体カートリッジ内の加圧手段として機能させるようポンプの排出側を液体カートリッジに接続する接続経路と、上記吸引動作によってポンプから排出される廃液を廃液回収手段に導入し、液体カートリッジを加圧するためにポンプから排出される加圧空気を接続経路の下流側に向かって導入するための切換弁とを備えたことを要旨とする。
【0014】
本発明の液体噴射装置によれば、液体カートリッジに空気圧を印加する加圧動作と、噴射ヘッドから液体を吸引排出する吸引動作とを同じポンプを兼用して行うことから、ポンプ数を減らし、装置コストを低減できるほか、ポンプの設置スペースも小さくて済んで装置を小型化できる。また、上記吸引動作によってポンプから排出される廃液を廃液回収手段に導入し、液体カートリッジを加圧するためにポンプから排出される加圧空気を接続経路の下流側に向かって導入するための切換弁を備えていることから、噴射ヘッドから吸引された廃液が液体カートリッジの加圧系に回らずに、廃液回収手段だけに導入されるため、廃液の経路が複雑になることがなく、廃液漏れに対する信頼性が確保されるうえ、廃液タンクの寿命予測も確実に行える。
【0015】
本発明において、上記接続経路に設けられて液体カートリッジを加圧するための加圧空気を蓄える貯圧タンクをさらに備え、上記切換弁は、上記吸引時にポンプから排出される廃液を廃液回収手段に導入し、貯圧タンクの貯圧時にポンプから排出される加圧空気を貯圧タンクに導入するよう切り換える場合には、噴射ヘッドの吸引時と貯圧タンクの貯圧時にポンプを稼動させればすむことから、ポンプの稼働時間を大幅に短縮してポンプ寿命を確保することができる。
【0016】
本発明において、上記貯圧タンクと液体カートリッジの連通状態を開閉することにより、上記ポンプの稼動状態に関わらず貯圧タンクから液体カートリッジの加圧を可能とする圧力調整弁が設けられている場合には、ポンプを稼動させることなく液体カートリッジの加圧が行えるため、ポンプの稼働時間を大幅に短縮してポンプ寿命を確保することができる。また、ポンプを稼動させることなく圧力調整弁の開閉操作だけで液体カートリッジの加圧ができるため、ポンプの稼動の可否に関わらず必要なときに液体カートリッジの加圧を行うことができ、ポンプの稼働時間を大幅に短縮してポンプ寿命を確保することができる。
【0017】
本発明において、上記貯圧タンクの圧力を検知する第1圧力センサを備え、上記第1圧力センサで検知した圧力が所定圧より低いときに圧力調整弁を閉じるとともに切換弁を貯圧タンク側に切り換えて貯圧タンクを貯圧する場合には、貯圧タンクの貯圧が必要なときにポンプを稼動すればよく、ポンプの稼働時間を確実に短縮してポンプ寿命を確保することができる。
【0018】
上記液体カートリッジの圧力を検知する第2圧力センサを備え、上記第2圧力センサで検知した圧力が所定圧より低いときに圧力調整弁を開けて液体カートリッジを加圧する場合には、液体カートリッジの加圧が必要なときにポンプを稼動させることなく液体カートリッジの加圧ができるため、ポンプの稼働時間を確実に短縮してポンプ寿命を確保することができる。
【0019】
本発明において、電源投入時、噴射対象物への液体噴射動作開始時、吸引動作開始時のうち少なくともいずれかにおいて液体カートリッジの加圧動作を実行し、この加圧動作中に貯圧タンクの圧力が低下したときに貯圧動作を実行する場合には、液体カートリッジの加圧動作中に貯圧タンクの貯圧が必要になったときに、ポンプを稼動すればよく、ポンプの稼働時間を確実に短縮してポンプ寿命を確保することができる。
【0020】
本発明において、貯圧タンクへの貯圧動作を開始する際、噴射対象物への噴射動作中であるときは、噴射動作の終了を待って貯圧動作を実行する場合には、噴射動作中はキャップ部材内に液体が溜まっていることがあるため、貯圧動作においてインクが貯圧タンク内に導入されてしまうのを防止できる。
【0021】
本発明において、貯圧タンクへの貯圧動作を開始する際、クリーニング動作中であるときは、クリーニング動作の終了を待って貯圧動作を実行する場合には、クリーニング動作中はキャップ部材で液体を吸引しているため、貯圧動作においてインクが貯圧タンク内に導入されてしまうのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0023】
以下、本発明を具体化した液体噴射装置としてのインクジェット式記録装置の一実施形態を説明する。
【0024】
図1は、記録装置の基本構成を平面図で示したものである。符号1はキャリッジ1を示し、このキャリッジ1はキャリッジモータ2によって駆動されるタイミングベルト3を介し、走査ガイド部材4に案内されて紙送り部材5の長手方向、すなわち噴射対象物としての記録紙の幅方向である主走査方向に往復移動されるように構成されている。そして、図には示していないが、キャリッジ1には、紙送り部材5に対向する面に後述するインクジェット式の記録ヘッド30が搭載されている。
【0025】
また、キャリッジ1には記録ヘッド30にインクを供給する際にインクの圧力を減圧して調整するための圧力調整部7a〜7dが搭載されている。この圧力調整部7a〜7dは、この実施の形態においては、その内部において各インクを一時的に貯留するために、それぞれのインクに対応して4個具備されている。そして、この各圧力調整部7a〜7dには、装置本体に配置されたカートリッジ装着部としてのカートリッジホルダ8に装着されたインクカートリッジ9a〜9dから、可撓性のインク補給チューブ10をそれぞれ介して、ブラック、イエロー、マゼンタおよびシアンの各インクが供給されるように構成されている。
【0026】
なお、メインタンクすなわち液体カートリッジとしてのインクカートリッジ9a〜9dは、その外郭構成が偏平状に形成されており、上記カートリッジホルダ8において、偏平状の面がそれぞれ垂直方向に向くように、いわゆる縦置き状態で装着されている。
【0027】
一方、上記キャリッジ1の移動経路上における非印字領域(ホームポジョン)には、記録ヘッド30のノズル形成面を封止することができるキャッピング手段11が配置されており、さらにこのキャッピング手段11の上面には、上記記録ヘッド30のノズル形成面を封止し得るゴム等の可撓性素材により形成されたキャップ部材11aが配置されている。そして、キャリッジ1がホームポジョンに移動したときに、上記キャップ部材11aによって、記録ヘッド30のノズル形成面をキャップすることができるように構成されている。
【0028】
このキャップ部材11aは、記録装置の休止期間中において記録ヘッド30のノズル形成面を封止し、ノズル開口25の乾燥を防止する蓋体として機能する。また、このキャップ部材11aには、後述するポンプ27(チューブポンプ)におけるチューブの一端が接続され、ポンプ27による負圧を記録ヘッド30に作用させて、記録ヘッド30からインクを吸引排出させるクリーニング動作が実行されるように構成されている。そして、キャッピング手段11の印字領域側に隣接して、ゴムなどの弾性素材によるワイピング部材12が配置されていて、必要に応じて記録ヘッド30のノズル形成面を払拭して清掃することができるように構成されている。
【0029】
図2および図3は、キャリッジ1に搭載されて液体としてインクを噴射する記録ヘッド30と、その上部に装着される圧力調整部7a〜7dとを示したものである。
【0030】
上記記録ヘッド30は、噴射する液体を濾過するフィルタ32を備えたフィルタケース33と、上記フィルタケース33の下面に取り付けられたヘッド本体34とを備えて構成されている。
【0031】
上記フィルタケース33の上面には、4本の中空状のインク供給針31が直立状態に配置されており、上記フィルタケース33内に形成された各インク連絡流路35は、それぞれ各インク供給針31内のインク流路に連通されている。各インク供給針31の頂部にはインク導入孔31aが形成されており、圧力調整部7a〜7dからのインクは、このインク導入孔31aを介してインク供給針31内に導入され、上記インク連絡流路35を介してヘッド本体34に供給され、各ノズル開口25から噴射される。上記ノズル開口25は、4つの圧力調整部7a〜7dすなわち4つのインクカートリッジ9a〜9dに対応して4つのノズル列を形成しており、各ノズル列からインクカートリッジ9a〜9dに対応したインクを噴射する。
【0032】
上記各インク供給針31は圧力調整部7a〜7dの配置状態に合わせて所定の間隔を隔てて並ぶよう配置されている。一方、ヘッド本体34がインクの供給を受ける幅寸法はそれよりも小さいため、内側に配置されたインク連絡流路35よりも外側に配置されたインク連絡流路35の方が流路の傾斜角が大きくなっている。
【0033】
上記圧力調整部7の中には自己封止弁(減圧弁)37が収容されている。この自己封止弁37の動作により、インクカートリッジ9a〜9dからインク補給チューブ10を通じ、インク供給針31を通って記録ヘッド30側に送られるインクの圧力を減圧して調整する。たとえばキャリッジ1の加減速に伴ってインク補給チューブ10内のインクに圧力変動が生じた場合にインク滴の吐出が不安定になるので、圧力調整部7a〜7dはインクの圧力変動を抑制する。
【0034】
図4は、上記記録装置のインクカートリッジ9から記録ヘッド30に至るインク供給路、およびポンプ27の吸引経路およびインクカートリッジ9の加圧経路の構成を模式的に示したものである。
【0035】
上記インクカートリッジ9は、その外郭ケースとしてのカートリッジケース20が気密状態に形成されており、その内部には可撓性素材により形成されてインクが封入された液体パックとしてのインクパック24が収納されている。そして、カートリッジケース20とインクパック24とで形成される空間が圧力室23を構成しており、この圧力室23内に加圧空気が供給されるように構成されている。
【0036】
この構成により、各インクカートリッジ9a〜9dに収納された各インクパック24は、それぞれ加圧空気による加圧を受け、各インクカートリッジ9a〜9dから各圧力調整部7a〜7dに対して所定の圧力によるインク流が発生するようになされる。
【0037】
なお、上記各インクカートリッジ9a〜9dにおいて加圧されたインクは、それぞれ各インク補給バルブ26および各インク補給チューブ10をそれぞれ介して、キャリッジ1に搭載された各圧力調整部7a〜7d(図4においては代表して符号7として示しており、以下において代表して単に符号7として説明する場合もある。)に供給されるように構成されている。
【0038】
そして、各圧力調整部7から記録ヘッド30に対してインクが供給され、記録ヘッド30の図示しないアクチュエータに供給される印刷データに基づいて、記録ヘッド30のノズル形成面に形成されたノズル開口25より、噴射対象物としての記録紙に向かってインク滴が吐出されるように作用する。
【0039】
上記記録ヘッド30のノズル形成面は、上述したキャップ部材11aでキャップされ、キャップ部材11aの内部空間を吸引するポンプにより、記録ヘッド30内部のインクが吸引され排出されるように構成されている。
【0040】
上記ポンプ27は、この例ではチューブポンプが採用されており、上記キャップ部材11aの内部と連通した可撓性のチューブが円弧状に配置され、その内周部を押圧部材が転動してチューブを順次押し潰すことにより、キャップ部材11aの内部を負圧にして記録ヘッド30のインクを吸引するものである。
【0041】
そして、上記ポンプ27をインクカートリッジ9内の加圧手段として機能させるようポンプ27の排出側をインクカートリッジ9に接続する接続経路13が設けられている。また、上記接続経路13の途中には、ポンプ27による記録ヘッド30の吸引動作によってポンプ27から排出される廃液を廃液回収手段としての廃液回収タンク22に導入し、インクカートリッジ9を加圧するためにポンプ27から排出される加圧空気を接続経路13の下流側に向かって送る切換弁14が設けられている。
【0042】
すなわち、上記切換弁14は、ポンプ27から排出される流体を、廃液回収タンク22側に流すか、インクカートリッジ9側に流すかを切り換える。上記キャップ部材11aが記録ヘッド30のノズル形成面をキャップしてポンプ27が記録ヘッド30の吸引動作を行うときには、切換弁14を廃液回収タンク22側に切り換え、記録ヘッド30から排出されたインクを廃液回収タンク22に回収する。また、上記キャップ部材11aが記録ヘッド30のノズル形成面から外されてポンプ27が加圧空気を下流側に送るときには、切換弁14をインクカートリッジ9側に切り換え、加圧空気を送る。
【0043】
また、上記接続経路13の切換弁14より下流側すなわちインクカートリッジ9側には、インクカートリッジ9を加圧するための加圧空気を蓄える貯圧タンク21が設けられている。したがって、上記切換弁14は、上記吸引時にポンプ27から排出されるインクを廃液回収タンク22に導入し、貯圧タンク21を所定の圧力まで貯圧する時にポンプ27から排出される加圧空気を貯圧タンク21に導入するよう切り換える。
【0044】
さらに、上記接続経路13の貯圧タンク21よりも下流側すなわちインクカートリッジ9側には、上記貯圧タンク21とインクカートリッジ9の連通状態を開閉することにより、上記ポンプ27の稼動状態に関わらず、貯圧タンク21からインクカートリッジ9の加圧を可能とする圧力調整弁15が設けられている。すなわち、貯圧タンク21が所定の加圧可能圧力以上の圧力であれば、ポンプ27を稼動させなくても圧力調整弁15を開けるだけでインクカートリッジ9の加圧が可能である。
【0045】
また、上記接続経路13の貯圧タンク21と圧力調整弁15の間には、上記貯圧タンク21の圧力を検知する第1圧力センサ16が設けられている。そして、上記第1圧力センサ16で検知した圧力が所定圧すなわちインクカートリッジ9を加圧するための加圧可能圧力より低いときに圧力調整弁15を閉じるとともに切換弁14を貯圧タンク21側に切り換えて貯圧タンク21を貯圧する貯圧動作を実行するようになっている。
【0046】
さらに、上記接続経路13の圧力調整弁15とインクカートリッジ9の間には、上記インクカートリッジ9の圧力を検知する第2圧力センサ17が設けられている。そして、上記第2圧力センサ17で検知した圧力が所定圧すなわち記録ヘッド30に対してインクを供給するための供給可能圧力より低いときに圧力調整弁15を開けてインクカートリッジ9を加圧する加圧動作を実行するようになっている。なお、この加圧動作のときは、切換弁14を廃液回収タンク22側に切り換えておいてもいいし、切換弁14を貯圧タンク21側に切り換えておいてもよい。
【0047】
そして、上記加圧動作は、記録装置への電源投入時、噴射対象物への液体噴射動作すなわち印刷動作時、吸引動作時のうち少なくともいずれかにおいて実行し、この加圧動作中に貯圧タンク21の圧力が低下したときに貯圧動作を実行することができる。
【0048】
図5は、上記記録装置のシステム構成の一例を示すブロック図である。
【0049】
ここで説明する印刷制御手段46、キャリッジ制御手段47、加圧制御手段50、ヘッド駆動手段48、クリーニング制御手段49、紙送り制御手段52は、本発明において制御手段として機能するものである。
【0050】
図において、44はホストコンピュータであり、プリンタドライバ45が内蔵され、このプリンタドライバ45のユーティリティ上で入力装置(図示せず)からの入力によって記録紙のサイズ,モノクロ/カラー印刷の選択,記録モードの選択,フォント等のデータおよび印字指令等を入力しうるように構成されている。
【0051】
印字指令の入力により、プリンタドライバ45からは印刷制御手段46に対して液体噴射データである印刷データが送出されるようになっている。また、印刷制御手段46は印刷データに基づいてビットマップデータを生成し、ヘッド駆動手段48により駆動信号を発生させて記録ヘッド30のアクチュエータである圧電振動子に入力し、記録ヘッド30からインク滴を吐出させるようになっている。このとき、印刷制御手段46からの指示により紙送り制御手段52は図示しない紙送りモータを制御して記録紙の副走査方向への移動制御を行う。また、印刷制御手段46からの指示によりキャリッジ制御手段47はパルスモータであるキャリッジモータ2を制御してキャリッジ1の主走査方向への往復移動制御を行う。
【0052】
上記ヘッド駆動手段48は、駆動手段として機能するもので、印刷データに基づく駆動信号のほかに、図示しないフラッシング制御手段からのフラッシング指令信号を受けてフラッシングのための駆動信号を記録ヘッド30に出力する。このフラッシング動作により、フラッシングボックスとしてのキャップ部材11aに対してノズルから印字とは無関係のインクを噴射することにより、ノズル近傍の増粘インクを排出して記録ヘッド30の噴射特性を回復する。
【0053】
ここで、ノズルの吐出能力が低下するメカニズムについて説明すると、印刷実行中は記録ヘッド30のノズル面がキャップ部材11aから開放された状態となり、加えてキャリッジ1で往復移動されている。このような状態でインクの吐出がなければ、ノズルの開口部に存在するインクから溶媒が蒸発して徐々にその粘度が高くなり、吐出能力が低下するのである。そして、印刷中に頻繁にインク滴を吐出しているノズルは、新しいインクが順次供給されて目詰まりはあまり生じないが、インク滴を吐出する機会が少ないノズルでは目詰まりを生じやすい。したがって、インクの吐出量が少なく空送時間が長いノズルほど増粘が進行し、その程度はノズル毎にばらつきがある。
【0054】
なお、この例では、噴射ヘッドが噴射する液体がインクであり、インクの増粘によりノズルの噴射能力が低下する場合を説明したが、噴射特性の低下するメカニズムは、噴射する液体の種類によって異なる場合があり、本発明は、低下したノズルの噴射特性を液体の噴射で回復しうるものであれば、インクに限らず種々の液体を噴射する装置に適用できる趣旨である。
【0055】
キャリッジ制御手段47は、印刷動作中にキャリッジ1を主走査方向に往復移動させる移動制御を行うほか、所定のフラッシングタイミングにおいてキャリッジ1を印刷領域以外のフラッシングポジションに移動させ、記録ヘッド30をキャップ部材11aに対面させてフラッシング動作を行う位置に移動する移動制御を行う。
【0056】
また、上記キャリッジ制御手段47は、装置の電源オフのときや吸引動作を行う際には、記録ヘッド30をキャップ部材11aの位置に移動させる移動制御を行う。
【0057】
上記記録ヘッド30の吸引動作は、プリンタ本体を最初に使用するときに、最初にカートリッジ9を装着した際、記録ヘッド30や圧力調整部7等の流路にインクを最初に充填する初期充填動作の際に実行される。また、インクカートリッジ9を交換したときや、使用していたインクカートリッジ9を一旦取り外して再装填するときには、交換や再装填に伴って記録ヘッド30の流路内に空気が混入して正常な吐出ができなくなるため、混入した気泡を記録ヘッド30から強制吸引して除去するために実行される。
【0058】
上記吸引動作は、プリンタ本体を使用せずに放置しているときは、キャップ部材11aでノズル形成面を封止した状態であっても、図示しない放置タイマで計測した放置時間(前回の電源オフから今回の電源オンまでの時間)が長いと徐々にノズルの開口部に存在するインクから溶媒が蒸発してその粘度が高くなり、吐出能力が低下するので、それを回復するクリーニングのために電源オン時に、クリーニング制御手段49による制御によりクリーニングモードによる吸引が実行される。また、印刷動作を継続していると、流路内に残存した気泡が徐々に内部のフィルタ上流部に溜まることがあるため、定期的に気泡を強制吸引して除去するクリーニングのため、クリーニング制御手段49による制御によりクリーニングモードによる吸引が実行されることもある。
【0059】
上記各吸引動作は、初期充填時、インクカートリッジ9の交換時、クリーニング時での吸引等、状況によって吸引条件が異なる場合があるため、クリーニング制御手段49による制御でポンプ27の回転数や稼働時間を制御することにより、所定の吸引モードでの吸引が実行される。
【0060】
そして、上記吸引動作は、クリーニング制御手段49により、つぎのように制御される。すなわち、キャリッジ1をキャップ部材11aに対面させる位置に移動させるとともに、キャップ部材11aを図示しないメンテナンスモータの動作により例えばカム機構等により上昇させて記録ヘッド30のノズル形成面をキャップ部材11aで封止する。さらに、切換弁14を廃液回収タンク22側に切り換えて、メンテナンスモータによって駆動されるポンプ27の作用によりキャップ部材11a内を吸引してノズルからインク等を強制的に排出させる。吸引されたインクは、切換弁14を介して廃液回収タンク22内に回収される。
【0061】
所定時間の吸引を行った後、図示しない弁機構によりキャップ部材11a内を大気開放した状態でポンプ27を駆動して空吸引を行ってキャップ部材11a内の空間に残存したインクを排出する。その後、キャップ部材11aを下降させると、この状態ではノズル形成面にインクが付着しているため、メンテナンスモータの駆動によりワイピング部材12をその先端部がノズル形成面に接触し得る位置まで上昇させたのち、キャリッジ1を移動制御することにより、ノズル形成面に付着したインクをワイピング部材12で払拭することが行われる。
【0062】
一方、上記貯圧タンク21への貯圧動作は、第1圧力センサ16で検知した貯圧タンク21の圧力がインクカートリッジ9を加圧するための加圧可能圧力より低い場合に、キャップ部材11aを記録ヘッド30のノズル形成面から外し、圧力調整弁15を閉じるとともに切換弁14を貯圧タンク21側に切り換えて、ポンプ27を駆動することにより、キャップ部材11aから空気だけが吸引されて貯圧タンク21に送られて貯圧することが行われる。第1圧力センサ16で検知した貯圧タンク21の圧力が上記加圧可能圧力以上に達したときにポンプ27を停止する。
【0063】
また、貯圧タンク21からインクカートリッジ9への加圧動作は、第2圧力センサ17で検知したインクカートリッジ9の圧力が記録ヘッド30に対してインクを供給するための供給可能圧力より低いときに圧力調整弁15を開け、切換弁14を貯圧タンク21側に切り換え、貯圧タンク21内の加圧空気をインクカートリッジ9に導入して加圧することにより行われる。第2圧力センサ17で検知したインクカートリッジ9の圧力が上記供給可能圧力以上に達したときに圧力調整弁15を閉じる。
【0064】
上記貯圧動作における第1圧力センサ16で検知した圧力値の読み取り、ポンプ27、キャッピング手段11、切換弁14、圧力調整弁15の動作は、加圧制御手段50により制御される。また、加圧動作における第2圧力センサ17で検知した圧力値の読み取り、切換弁14、圧力調整弁15の動作は、加圧制御手段50により制御される。
【0065】
図6は、上記記録装置において、電源オン時にインクカートリッジ9の加圧動作を行うときの処理動作の一例を示すフローチャートである。
【0066】
まず、電源オン時の初期状態では、切換弁14は貯圧タンク21側を閉、廃液回収タンク22側を開に設定され、圧力調整弁15は閉弁されている。そして、第2圧力センサ17で検知した圧力値を読み取り、インクカートリッジ9内の圧力が所定の閾値よりも高いか低いかを判断する(S1)。S1において、インクカートリッジ9内の圧力値が所定の閾値よりも高い場合は、このシーケンスを終了し、インクカートリッジ9内の圧力値が所定の閾値よりも低い場合は、S2に進み、後述するインクカートリッジ9の加圧動作を実行する。
【0067】
図7はインクカートリッジ9の加圧動作の詳細を示すフローチャートであり、図8は貯圧タンク21の貯圧動作の詳細を示すフローチャートである。この加圧動作および貯圧動作は、上記S2において実行される。
【0068】
図7のカートリッジ加圧動作では、第2圧力センサ17で検知したインクカートリッジ9内の圧力が所定の閾値よりも低い場合に開始されるものであり(図6のS1、図9のS42およびS45、図10のS51およびS54)、まず、第1圧力センサ16で検知した圧力値を読み取り、貯圧タンク21内の圧力が所定の閾値よりも高いか低いかを判断する(S11)。S11において、貯圧タンク21内の圧力値が所定の閾値よりも高い場合はS13以降に進んでインクカートリッジ9の加圧を行い、貯圧タンク21内の圧力値が所定の閾値よりも低い場合は、S12に進み貯圧動作を実行する。
【0069】
S11において貯圧タンク21内の圧力値が所定の閾値よりも高い場合は、圧力調整弁15を開き貯圧タンク21内の加圧空気をインクカートリッジ9内に導入してインクカートリッジ9の加圧を開始する(S13)。つぎに、S14で第2圧力センサ17でインクカートリッジ9内の圧力値を検知し、インクカートリッジ9内の圧力値が所定の閾値よりも低い間はそのまま加圧を継続し、インクカートリッジ9内の圧力値が所定の閾値よりも高くなったときに、S15において圧力調整弁15を閉弁してこのシーケンスを終了する。
【0070】
一方、S11において、貯圧タンク21内の圧力値が所定の閾値よりも低い場合は、後述する貯圧動作を実行する。
【0071】
図8の貯圧動作では、第1圧力センサ16で検知した貯圧タンク21内の圧力が所定の閾値よりも低い場合に開始されるものであり(図7のS11)、まず、S21において印字中であるか否かを判断し、印字中の場合は印字の終了を待ち、印字が終了していればS22に進む。印字中は定期的にフラッシング動作やクリーニング動作が実行されるため、キャップ部材11a内にインクが溜まっていることがあり、そのまま貯圧動作を実行するとインクが貯圧タンク21内に導入されてしまうおそれがあるからである。
【0072】
S22ではクリーニング動作中であるか否かを判断し、クリーニング動作中の場合はクリーニング動作の終了を待ち、クリーニング動作が終了していればS23に進む。クリーニング中であれば、キャップ部材11aが記録ヘッド30をキャップして吸引をおこなっており、インクが貯圧タンク21内に導入されてしまうからである。
【0073】
印字およびクリーニングが終了していれば、S23において圧力調整弁15を閉弁し、引き続きS24において切換弁14を貯圧タンク21側を開、廃液回収タンク22側を閉に切り換える。つぎに、S25においてキャップ部材11aを記録ヘッド30のキャップ状態から開放し、S26でポンプ27を稼動させる。これにより、空で開放されたキャップ部材11a内を吸引することになるので、空気だけが貯圧タンク21に導入されて加圧空気が貯留される。
【0074】
つぎに、S27において第1圧力センサ16により貯圧タンク21内の圧力値を検知して圧力値が所定の閾値に達しなければそのまま吸引を継続し、貯圧タンク21内の圧力値が所定の閾値に達した場合S28に進み、切換弁14を貯圧タンク21側を閉、廃液回収タンク22側を開に切り換える。つぎに、S29においてキャップ部材11aを記録ヘッド30のキャップ状態とし、このシーケンスを終了する。
【0075】
図9は、上記記録装置において、印刷動作開始時にインクカートリッジ9の加圧動作を行うときの処理動作の一例を示すフローチャートである。
【0076】
まず、印刷開始時の初期状態では、切換弁14は貯圧タンク21側を閉、廃液回収タンク22側を開に設定され、圧力調整弁15は閉弁されている。そして、S41において印字データを受信すると、第2圧力センサ17で検知したインクカートリッジ9内の圧力値が所定の閾値よりも高いか低いかを判断する(S42)。S42においてインクカートリッジ9内の圧力値が所定の閾値よりも低い場合は、S43に進み、図7および図8で説明した加圧動作および貯圧動作を実行する。
【0077】
一方、S42においてインクカートリッジ9内の圧力値が所定の閾値よりも高い場合は、印刷動作を開始する(S44)。印刷動作中も、第2圧力センサ17で検知したインクカートリッジ9内の圧力値が所定の閾値よりも高いか低いかを判断し(S45)。インクカートリッジ9内の圧力値が所定の閾値よりも低くなった場合は、S46に進み、図7および図8で説明した加圧動作および貯圧動作を実行する。この場合、貯圧動作を行う場合は印刷を一時中断し、キャップ部材11aをノズル面から外すとともに切換弁14を廃液回収タンク22側に切り換えた状態でポンプ27を稼動する空吸引を行ってから貯圧動作を開始するのが好ましい。このようにすることにより、キャップ部材11a内にフラッシング吐出等されたインクを空吸引で廃液回収タンク22に回収してから貯圧を行えるため、貯圧タンク21側にインクがまわらない。一方、インクカートリッジ9内の圧力値が所定の閾値よりも高いままの場合は、印刷動作を継続し、印刷動作を終了して(S47)、このシーケンスを終了する。
【0078】
図10は、上記記録装置において、クリーニング動作開始時にインクカートリッジ9の加圧動作を行うときの処理動作の一例を示すフローチャートである。
【0079】
まず、クリーニング動作開始時の初期状態では、切換弁14は貯圧タンク21側を閉、廃液回収タンク22側を開に設定され、圧力調整弁15は閉弁されている。そして、S51において第2圧力センサ17で検知したインクカートリッジ9内の圧力値が所定の閾値よりも高いか低いかを判断する。S51においてインクカートリッジ9内の圧力値が所定の閾値よりも低い場合は、S52に進み、図7および図8で説明した加圧動作および貯圧動作を実行する。
【0080】
一方、S51においてインクカートリッジ9内の圧力値が所定の閾値よりも高い場合は、クリーニング動作を実行する(S53)。クリーニング動作終了後、第2圧力センサ17で検知したインクカートリッジ9内の圧力値が所定の閾値よりも高いか低いかを判断し(S54)。インクカートリッジ9内の圧力値が所定の閾値よりも低くなった場合は、S55に進み、図7および図8で説明した加圧動作および貯圧動作を実行する。一方、クリーニング動作後にインクカートリッジ9内の圧力値が所定の閾値よりも高いままの場合は、このシーケンスを終了する。
【0081】
以上のように、上述した各動作により、上記第1圧力センサ16は、ポンプ27によって貯圧タンク21に導入された空気圧を検知し、切換弁14の開閉およびポンプ27の稼動を制御する。すなわち、貯圧タンク21内の圧力が所定の圧力値に達したことを検出した場合には、切換弁14を廃液回収タンク22側に切り換え、貯圧タンク21内の圧力が定められた圧力以下となったことを検出した場合には、切換弁14を貯圧タンク21側に切り換えるとともにポンプ27を稼動するように制御する。したがって、この繰り返しによって上述した貯圧タンク21内の空気圧は所定の範囲に維持される。
【0082】
また、上述した各動作により、上記第2圧力センサ17は、貯圧タンク21によってインクカートリッジ9に導入された空気圧を検知し、圧力調整弁15の開閉を制御する。すなわち、インクカートリッジ9内の圧力が所定の圧力値に達したことを検出した場合には、圧力調節弁15を閉弁し、インクカートリッジ9内の圧力が定められた圧力以下となったことを検出した場合には、圧力調節弁15を開弁するように制御する。したがって、この繰り返しによって上述した各インクカートリッジ9a〜9dに加わる空気圧は所定の範囲に維持される。
【0083】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0084】
すなわち、インクカートリッジ9に空気圧を印加する加圧動作と、記録ヘッド30からインクを吸引排出する吸引動作とを同じポンプ27を兼用して行うことから、ポンプ27数を減らし、装置コストを低減できるほか、ポンプ27の設置スペースも小さくて済んで装置を小型化できる。また、上記吸引動作によってポンプ27から排出される廃液を廃液回収タンク22に導入し、インクカートリッジ9を加圧するためにポンプ27から排出される加圧空気を接続経路13の下流側に向かって導入するための切換弁14を備えていることから、記録ヘッド30から吸引された廃液がインクカートリッジ9の加圧系に回らずに、廃液回収タンク22だけに導入されるため、廃液の経路が複雑になることがなく、廃液漏れに対する信頼性が確保されるうえ、廃液回収タンク22の寿命予測も確実に行える。
【0085】
また、上記接続経路13に設けられてインクカートリッジ9を加圧するための加圧空気を蓄える貯圧タンク21をさらに備え、上記切換弁14は、上記吸引時にポンプ27から排出される廃液を廃液回収タンク22に導入し、貯圧タンク21の貯圧時にポンプ27から排出される加圧空気を貯圧タンク21に導入するよう切り換えるため、記録ヘッド30の吸引時と貯圧タンク21の貯圧時にポンプ27を稼動させればすむことから、ポンプ27の稼働時間を大幅に短縮してポンプ27寿命を確保することができる。
【0086】
また、上記貯圧タンク21とインクカートリッジ9の連通状態を開閉することにより、上記ポンプ27の稼動状態に関わらず貯圧タンク21からインクカートリッジ9の加圧を可能とする圧力調整弁15が設けられているため、ポンプ27を稼動させることなくインクカートリッジ9の加圧が行えるため、ポンプ27の稼働時間を大幅に短縮してポンプ27寿命を確保することができる。また、ポンプ27を稼動させることなく圧力調整弁15の開閉操作だけでインクカートリッジ9の加圧ができるため、ポンプ27の稼動の可否に関わらず必要なときにインクカートリッジ9の加圧を行うことができ、ポンプ27の稼働時間を大幅に短縮してポンプ27寿命を確保することができる。
【0087】
また、上記貯圧タンク21の圧力を検知する第1圧力センサ16を備え、上記第1圧力センサ16で検知した圧力が所定圧より低いときに圧力調整弁15を閉じるとともに切換弁14を貯圧タンク21側に切り換えて貯圧タンク21を貯圧するため、貯圧タンク21の貯圧が必要なときにポンプ27を稼動すればよく、ポンプ27の稼働時間を確実に短縮してポンプ27寿命を確保することができる。
【0088】
上記インクカートリッジ9の圧力を検知する第2圧力センサ17を備え、上記第2圧力センサ17で検知した圧力が所定圧より低いときに圧力調整弁15を開けてインクカートリッジ9を加圧するため、インクカートリッジ9の加圧が必要なときにポンプ27を稼動させることなくインクカートリッジ9の加圧ができるため、ポンプ27の稼働時間を確実に短縮してポンプ27寿命を確保することができる。
【0089】
また、電源投入時、噴射対象物へのインク噴射動作開始時すなわち印刷開始時、吸引動作すなわちクリーニング動作開始時のうち少なくともいずれかにおいてインクカートリッジ9の加圧動作を実行し、この加圧動作中に貯圧タンク21の圧力が低下したときに貯圧動作を実行するため、インクカートリッジ9の加圧動作中に貯圧タンク21の貯圧が必要になったときに、ポンプ27を稼動すればよく、ポンプ27の稼働時間を確実に短縮してポンプ27寿命を確保することができる。
【0090】
また、貯圧タンク21への貯圧動作を開始する際、印刷動作中であるときは、印刷動作の終了を待って貯圧動作を実行するため、印刷動作中はキャップ部材11a内にインクが溜まっていることがあるため、貯圧動作においてインクが貯圧タンク21内に導入されてしまうのを防止できる。
【0091】
また、貯圧タンク21への貯圧動作を開始する際、クリーニング動作中であるときは、クリーニング動作の終了を待って貯圧動作を実行するため、クリーニング動作中はキャップ部材11aでインクを吸引しているため、貯圧動作においてインクが貯圧タンク21内に導入されてしまうのを防止できる。
【0092】
なお、本発明は、上記各実施形態に限定するものではなく、以下のような変更例を包含する趣旨である。
【0093】
上記各実施形態において、記録ヘッド30は、液体を噴射させる駆動素子である圧力発生素子として、圧電振動子を利用した液体噴射装置に適用することもできるし、発熱素子を利用したタイプの液体噴射装置に適用することもできる。
【0094】
また、本発明の加圧動作の方法をコンピュータ装置に実行させるプログラムを、記録媒体に記録して提供したり、通信ネットワークを介して提供したりすることもできる。
【0095】
また、液体噴射装置の代表例としては、上述したような画像記録用のインクジェット式記録ヘッドを備えたインクジェット式記録装置があるが、本発明は、その他の液体噴射装置として、例えば液晶ディスプレー等のカラーフィルタ製造に用いられる色材噴射ヘッドを備えた装置、有機ELディスプレー、面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッドを備えた装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドを備えた装置、精密ピペットとしての試料噴射ヘッドを備えた装置等、各種の液体噴射装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明にかかるインクジェット式記録装置の一例を示した平面図である。
【図2】記録ヘッドの流路構造を示す図である。
【図3】記録ヘッドと圧力調整部を示す一部破断断面図である。
【図4】上記記録装置におけるインク供給路を示した模式図である。
【図5】上記記録装置のシステム構成を示す機能ブロック図である。
【図6】カートリッジ加圧動作の第1例を示すフローチャートである。
【図7】カートリッジ加圧動作の詳細を示すフローチャートである。
【図8】貯圧動作の詳細を示すフローチャートである。
【図9】カートリッジ加圧動作の第2例を示すフローチャートである。
【図10】カートリッジ加圧動作の第3例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0097】
1 キャリッジ,2 キャリッジモータ,3 タイミングベルト,4 走査ガイド部材,5 紙送り部材,7 圧力調整部,7a〜7d 圧力調整部,8 カートリッジホルダ,9 インクカートリッジ,9a〜9d インクカートリッジ,10 インク補給チューブ,11 キャッピング手段,11a キャップ部材,12 ワイピング部材,13 接続経路,14 切換弁,15 圧力調整弁,16 第1圧力センサ,17 第2圧力センサ,20 カートリッジケース,21 貯圧タンク,22 廃液回収タンク,23 圧力室,24 インクパック,25 ノズル開口,26 インク補給バルブ,27 ポンプ,30 記録ヘッド,31 インク供給針,31a インク導入孔32 フィルタ33 フィルタケース,34 ヘッド本体,35 インク連絡流路,37 自己封止弁,44 ホストコンピュータ,45 プリンタドライバ,46 印刷制御手段,47 キャリッジ制御手段,48 ヘッド駆動手段,49 クリーニング制御手段,50 加圧制御手段,52 紙送り制御手段,

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射対象物に向かって液体を噴射する噴射ヘッドと、噴射ヘッドに供給する液体が封入された可撓性の液体パックが収容された液体カートリッジと、
上記噴射ヘッドのノズル面をキャップするキャップ部材の内部空間を吸引するポンプと、
上記ポンプを液体カートリッジ内の加圧手段として機能させるようポンプの排出側を液体カートリッジに接続する接続経路と、
上記吸引動作によってポンプから排出される廃液を廃液回収手段に導入し、液体カートリッジを加圧するためにポンプから排出される加圧空気を接続経路の下流側に向かって導入するための切換弁とを備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
上記接続経路に設けられて液体カートリッジを加圧するための加圧空気を蓄える貯圧タンクをさらに備え、上記切換弁は、上記吸引時にポンプから排出される廃液を廃液回収手段に導入し、貯圧タンクの貯圧時にポンプから排出される加圧空気を貯圧タンクに導入するよう切り換える請求項1記載の液体噴射装置。
【請求項3】
上記貯圧タンクと液体カートリッジの連通状態を開閉することにより、上記ポンプの稼動状態に関わらず、貯圧タンクから液体カートリッジの加圧を可能とする圧力調整弁が設けられている請求項2記載の液体噴射装置。
【請求項4】
上記貯圧タンクの圧力を検知する第1圧力センサを備え、上記第1圧力センサで検知した圧力が所定圧より低いときに圧力調整弁を閉じるとともに切換弁を貯圧タンク側に切り換えて貯圧タンクを貯圧する請求項3記載の液体噴射装置。
【請求項5】
上記液体カートリッジの圧力を検知する第2圧力センサを備え、上記第2圧力センサで検知した圧力が所定圧より低いときに圧力調整弁を開けて液体カートリッジを加圧する請求項3または4記載の液体噴射装置。
【請求項6】
電源投入時、噴射対象物への液体噴射動作開始時、吸引動作開始時のうち少なくともいずれかにおいて液体カートリッジの加圧動作を実行し、この加圧動作中に貯圧タンクの圧力が低下したときに貯圧動作を実行する請求項2〜4のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
貯圧タンクへの貯圧動作を開始する際、噴射対象物への噴射動作中であるときは、噴射動作の終了を待って貯圧動作を実行する請求項2〜6のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
貯圧タンクへの貯圧動作を開始する際、クリーニング動作中であるときは、クリーニング動作の終了を待って貯圧動作を実行する請求項2〜7のいずれか一項に記載の液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−203562(P2007−203562A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−24150(P2006−24150)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】