液体検出装置の取付構造および液体容器
【課題】振動モードを単純にして検出感度を高めるとともに、液体から受ける振動の影響を低減することができる液体検出装置の取付構造を提供する。
【解決手段】キャビティ43とその底面の振動部61が設けられた振動キャビティ形成基部40と、上記振動部61側に形成された圧電素子17と、上記振動キャビティ形成基部40の開口側に積層され、上記キャビティ43に対するインク供給路19とインク排出路20が形成された流路形成板18とを備えた検出部13と、上記検出部13が取り付けられ、上記インク供給路19に連通する供給側バッファ室15と、上記インク排出路20に連通する排出側バッファ室16とを有するバッファ部14と、上記検出部13とバッファ部14との間に介在して検出部13とバッファ部14との間をシールする弾性シール部材29とを備え、検出精度を向上させ、インク液体が減って産業廃棄物も減少する。
【解決手段】キャビティ43とその底面の振動部61が設けられた振動キャビティ形成基部40と、上記振動部61側に形成された圧電素子17と、上記振動キャビティ形成基部40の開口側に積層され、上記キャビティ43に対するインク供給路19とインク排出路20が形成された流路形成板18とを備えた検出部13と、上記検出部13が取り付けられ、上記インク供給路19に連通する供給側バッファ室15と、上記インク排出路20に連通する排出側バッファ室16とを有するバッファ部14と、上記検出部13とバッファ部14との間に介在して検出部13とバッファ部14との間をシールする弾性シール部材29とを備え、検出精度を向上させ、インク液体が減って産業廃棄物も減少する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体検出装置および同装置を備えた液体容器に係わり、特に、液体噴射装置における液体残量の検出に適した液体検出装置の取付構造および液体容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の液体噴射装置の代表例としては、画像記録用のインクジェット式記録ヘッドを備えたインクジェット式記録装置がある。その他の液体噴射装置としては、例えば液晶ディスプレー等のカラーフィルタ製造に用いられる色材噴射ヘッドを備えた装置、有機ELディスプレー、面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッドを備えた装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドを備えた装置、精密ピペットとしての試料噴射ヘッドを備えた装置等が挙げられる。
【0003】
液体噴射装置の代表例であるインクジェット式記録装置においては、圧力発生室を加圧する圧力発生手段と、加圧されたインクをインク滴として射出するノズル開口と、を有するインクジェット記録ヘッドがキャリッジに搭載されている。
【0004】
インクジェット式記録装置では、インク容器内のインクが流路を介して記録ヘッドに供給され続けることにより、印刷を継続可能に構成されている。インク容器は、例えばインクが消費された時点でユーザが簡単に交換できる、着脱可能なカートリッジとして構成されている。
【0005】
従来、インクカートリッジのインク消費の管理方法としては、記録ヘッドでのインク滴の射出数やメンテナンスにより吸引されたインク量をソフトウエアにより積算してインク消費を計算により管理する方法や、インクカートリッジに液面検出用の電極を取付けることにより実際にインクが所定量消費された時点を管理する方法などがある。
【0006】
しかしながら、ソフトウェアによりインク滴の吐出数やインク量を積算してインク消費を計算上管理する方法には、次のような問題がある。ヘッドの中には吐出インク滴に重量バラツキを有するものがある。このインク滴の重量バラツキは画質には影響を与えないが、バラツキによるインク消費量の誤差が累積した場合を考慮して、マージンを持たせた量のインクをインクカートリッジに充填してある。従って、個体によってはマージン分だけインクが余るという問題が生ずる。
【0007】
一方、電極によりインクが消費された時点を管理する方法は、インクの実量を検出できるので、インク残量を高い信頼性で管理できる。しかしながら、インクの液面の検出をインクの導電性に頼ることになるので、検出可能なインクの種類が限定されてしまったり、電極のシール構造が複雑化してしまうという欠点がある。また、電極の材料としては、通常は導電性が良く耐腐食性も高い貴金属が使用されるので、インクカートリッジの製造コストがかさむ。さらに、2本の電極を装着する必要があるため、製造工程が多くなり、結果として製造コストがかさんでしまう。
【0008】
上記の課題を解決すべく開発された装置が、特開2001−146024号に圧電装置として開示されている。この圧電装置は、液体残量を正確に検出でき、かつ複雑なシール構造を不要としたものであり、液体容器に装着して使用することができる。
【0009】
即ち、特開2001−146024号に記載の圧電装置によれば、圧電装置の振動部に対向する空間にインクが存在する場合とインクが存在しない場合とで、駆動パルスにより強制的に振動させた後の圧電装置の振動部の残留振動(自由振動)に起因して発生する残留振動信号の共振周波数が変化することを利用して、インクカートリッジ内のインク残量を監視することができる。
【0010】
図10は、上述した従来の圧電装置を構成するアクチュエータを示している。このアクチュエータ106は、ほぼ中央に円形状の開口161を有する基板178と、開口161を被覆するように基板178の一方の面(以下、「表面」という。)に配置される振動板176と、振動板176の表面の側に配置される圧電層160と、圧電層160を両方からはさみこむ上部電極164および下部電極166と、上部電極164と電気的に結合する上部電極端子168と、下部電極166と電気的に結合する下部電極端子170と、上部電極164および上部電極端子168の間に配設され両者を電気的に結合する補助電極172と、を有する。
【0011】
圧電層160、上部電極164および下部電極166は、それぞれの本体部としての円形部分を有する。そして、圧電層160、上部電極164および下部電極166のそれぞれの円形部分が、圧電素子を形成している。
【0012】
振動板176は、基板178の表面に、開口161を覆うように形成される。振動板176のうち実際に振動する振動領域は、開口161によって決定される。キャビティ162は、開口161と面する振動板176の部分と基板(キャビティ形成部材)178の開口161とによって形成される。圧電素子とは反対側の基板178の面(以下、「裏面」という。)は、インク容器内方に面している。これにより、キャビティ162は液体(インク)と接触するように構成されている。なお、キャビティ162内に液体が入っても基板178の表面側に液体が漏れないように、振動板176は基板178に対して液密に取り付けられている。
【0013】
そして、上述した従来の技術におけるアクチュエータ106では、圧電素子に駆動パルスを印加して振動部を強制的に振動させた後に生じる振動部の残留振動(自由振動)が、同じ圧電素子によって逆起電力として検出される。そして、インク容器内の液面がアクチュエータ106の設置位置(厳密にはキャビティ162の位置)を通過する前後で振動部の残留振動状態が変化することを利用して、インク容器内のインク残量を検出することができる。
【特許文献1】特開2001−146024号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述した従来のアクチュエータ(圧電装置)106は、図11に示したようにインクカートリッジ180の容器本体181の容器壁に装着され、検出対象のインクを受け入れるキャビティ162をインクカートリッジ180内部のインク貯留空間に露出させるように構成されている。
【0015】
ところが、上述した従来のアクチュエータ(圧電装置)106においては、上記の如くインクカートリッジ180内部のインク貯留空間にキャビティ162を露出させるように構成されていたため、振動等によってインクカートリッジ180内部のインクが泡立つと、アクチュエータ106のキャビティ162内に気泡が容易に進入してしまう。このようにキャビティ162に気泡が進入してそこに滞留すると、インクカートリッジ180のインク残量が十分であるにもかかわらず、アクチュエータ106により検出される残留振動の共振周波数が速くなり、液面がアクチュエータ106の位置を通過してインク残量が少なくなったものと誤判定するという問題があった。
【0016】
また、上記アクチュエータ106では、インクカートリッジ180内部のインク貯留空間にキャビティ162を露出させるように構成されているため、アクチュエータ106の振動板176や圧電層160に対してインク貯留空間のインクの圧力が直接的に影響してしまうため、例えばオンキャリッジのインクカートリッジ180等においては、印字動作中のキャリッジの往復運動によってインク貯留空間内のインクが激しく振動し、この振動で発生したインクの圧力が直接的にアクチュエータ106に影響して誤判定するという問題があった。
【0017】
さらに、アクチュエータ106と面する位置にインクの振動や波を防ぐ防波壁等を形成することも検討されているが、アクチュエータ106周辺の空間構造が複雑になり、アクチュエータ106により検出される残留振動の振動モードもそれだけ複雑化し、センシングしにくくなって検出感度を鈍らせることになりかねない。
【0018】
また、液面の通過タイミングを精度良く検出するためにアクチュエータ106のキャビティ162の寸法を小さくすると、キャビティ162内にインクのメニスカスが形成されやすくなる。このため、インクの消費により液面がキャビティ162の位置を通過したにもかかわらず、キャビティ162の内部にインクが残留することにより、液面がアクチュエータ106の位置を通過しておらずインク残量が十分にあるものと誤判定するという問題があった。
【0019】
本発明は、上述した事情を考慮して成されたものであって、振動モードを単純にして検出感度を高めるとともに、液体から受ける振動の影響を低減することにより、液体の有無を確実に判定することができる液体検出装置の取付構造および液体容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するために、本発明による液体検出装置の取付構造は、互いに対向する第1面および第2面を有し、検出対象の媒体を受け入れるためのキャビティが、上記第1面側に開口するようにして形成され、上記キャビティの底面が振動可能に形成されている振動キャビティ形成基部と、
上記振動キャビティ形成基部の上記第2面側に形成された第1電極、上記第1電極に積層された圧電層、および上記圧電層に積層された第2電極を有する圧電素子と、
上記振動キャビティ形成基部の上記第1面側に積層され、上記キャビティに検出対象の液体を供給する液体供給路と、上記キャビティから検出対象の液体を排出する液体排出路とが形成された流路形成基部とを備えた検出装置と、
上記検出装置が取り付けられ、上記液体供給路に連通して液体供給路に供給される液体が存在する上流側空間と、上記液体排出路に連通して液体排出路から排出された液体が存在する下流側空間とを有する取付対象部材と、
上記検出装置と取付対象部材との間に介在し、上記液体供給路と上流側空間を連通させる供給側連通口と、上記液体排出路と下流側空間を連通させる排出側連通口とを有し、液体供給路と上流側空間との間および液体排出路と下流側空間との間をそれぞれシールする弾性シール部材とを備えたことを要旨とする。
【0021】
また、本発明の液体容器は、内部に貯留した液体を外部に送出する液体送出口を有する容器本体と、
上記容器本体に取り付けられて内部の液体を検出する検出装置とを備え、
上記検出装置は、互いに対向する第1面および第2面を有し、検出対象の媒体を受け入れるためのキャビティが、上記第1面側に開口するようにして形成され、上記キャビティの底面が振動可能に形成されている振動キャビティ形成基部と、
上記振動キャビティ形成基部の上記第2面側に形成された第1電極、上記第1電極に積層された圧電層、および上記圧電層に積層された第2電極を有する圧電素子と、
上記振動キャビティ形成基部の上記第1面側に積層され、上記キャビティに検出対象の液体を供給する液体供給路と、上記キャビティから検出対象の液体を排出する液体排出路とが形成された流路形成基部とを有して構成され、
上記容器本体は、上記液体供給路に連通して液体供給路に供給される液体が存在する上流側空間と、上記液体排出路に連通して液体排出路から排出された液体が存在する下流側空間とを有し、
上記検出装置と容器本体との間に介在し、上記液体供給路と上流側空間を連通させる供給側連通口と、上記液体排出路と下流側空間を連通させる排出側連通口とを有し、液体供給路と上流側空間との間および液体排出路と下流側空間との間をそれぞれシールする弾性シール部材をさらに備えていることを要旨とする。
【0022】
すなわち、本発明は、振動キャビティ形成基部の上記第1面側に積層され、上記キャビティに検出対象の液体を供給する液体供給路と、上記キャビティから検出対象の液体を排出する液体排出路とが形成された流路形成基部とを備えているため、キャビティへの液体の供給が液体供給路を介して行われ、キャビティからの液体の排出が液体排出路を介して行われるので、検出装置を検出対象とする液体の容器等に装着する際には、検出対象とする液体の収容空間に検出装置のキャビティを露出させることなく、液体供給路を介して液体をキャビティに供給することができる。
【0023】
このように、液体の消費時に検出装置の液体供給路および液体排出路の内部を液体が流れるように構成することによって、もし仮にキャビティの内部に気泡が進入したとしても、液体の流れによってキャビティ内から気泡が押し出される。これにより、キャビティ内に気泡が滞留することによる検出装置の誤検出を防止することができ、検出精度を向上させ、残量液体が減って産業廃棄物の減少にもつながる。
【0024】
また、キャビティを液体の収容空間に露出させる必要がないので、液面通過時にキャビティ内にメニスカスが形成されることを防止できる。これにより、キャビティ内での液体の残留による検出装置の誤検出を防止することができる。しかも、キャビティが液体の収容空間に向かって露出した空間ではなく、流路形成基部により上記収容空間から仕切られた空間となっているため、液面の変化や液体の有無等によって、キャビティ底面を強制振動させたときのキャビティ底面に残る残留振動の違いが大きくなり、検出感度が高くなって検出精度を高めることができ、誤検出を防止することができる。
【0025】
また、検出装置と取付対象部材との間に介在し、上記液体供給路と上流側空間を連通させる供給側連通口と、上記液体排出路と下流側空間を連通させる排出側連通口とを有し、液体供給路と上流側空間との間および液体排出路と下流側空間との間をそれぞれシールする弾性シール部材を備えているため、検出精度を確保できるとともに、製造工程も簡素化する。
【0026】
すなわち、例えば取付対象部材と検出装置との間を接着剤等でシールすると、液体供給路と上流側空間が形成する流路や液体排出路と下流側空間が形成する流路内に接着剤がはみ出しやすく、はみ出した接着剤に気泡が付着してとれにくくなり、キャビティ底面の残留振動に影響して検出精度に悪影響を与えるという問題があった。したがって、接着剤の流路へのはみ出しをなくすように管理しなければならないため、接着工程が極めて複雑化するという問題があった。
【0027】
これに対し、本発明では、液体供給路と上流側空間との間および液体排出路と下流側空間との間をそれぞれ弾性シール部材でシールすることから、上述した流路内への接着剤のはみ出しの問題が皆無になり、気泡の付着に起因する検出精度の低下や、接着剤のはみ出し管理を行うことによる工程の複雑化の問題が解消するのである。
【0028】
本発明において、上記検出装置の液体供給路の開口よりも弾性シール部材の供給側連通口の開口を大きくするとともに、上記検出装置の液体排出路の開口よりも弾性シール部材の排出側連通口の開口を大きくしている場合には、キャビティ底面の振動が液体を介して弾性シール部材自体に伝わるのを防止することができる。これにより、弾性シール部材に生じた振動がキャビティ底面の残留振動に影響することによる検出精度の低下を防止することができるのである。
【0029】
本発明において、弾性シール部材の供給側連通口の開口径が検出装置の液体供給路の開口径の2倍以上に設定されるとともに、弾性シール部材の排出側連通口の開口径が検出装置の液体排出路の開口径の2倍以上に設定されている場合には、キャビティ底面の振動が液体を介して弾性シール部材自体に伝わるのを有効に防止することができる。これにより、弾性シール部材に生じた振動がキャビティ底面の残留振動に影響することによる検出精度の低下を有効に防止することができるのである。
【0030】
本発明において、弾性シール部材の供給側連通口と液体検出装置の液体供給路とが同心状に配置されているとともに、弾性シール部材の排出側連通口と検出装置の液体排出路とが同心状に配置されている場合には、仮にキャビティ底面の振動が液体を介して弾性シール部材自体に多少伝わったとしても、供給側連通口と液体供給路および排出側連通口と液体排出路を同心状に配置することにより、弾性シール部材に生じる振動モードをより単純化することができ、弾性シール部材に生じた振動による検出精度の低下を最小に止めることができるのである。
【0031】
本発明において、上記液体供給路と液体排出路の開口が同じ大きさに設定されるとともに、供給側連通口と排出側連通口の開口が同じ大きさに設定されている場合には、キャビティ底面の振動が伝播する空間である液体供給路および液体排出路を含む空間の空間形状が単純化し、キャビティ底面に残る残留振動の振動モードも単純化する。このため、キャビティ底面を強制振動させたときの残留振動のシュミレーションも行いやすくなり、設計と実際との乖離が少なくなって、調整作業が少なくてすんだり、検出精度を向上させたりすることが可能となる。
【0032】
本発明において、上記液体供給路および供給側連通口と、上記液体排出路および排出側連通口とが、キャビティの中心に対して対称に形成されている場合には、キャビティ底面の振動が伝播する空間である液体供給路および液体排出路を含む空間の空間形状が単純化し、キャビティ底面に残る残留振動の振動モードも単純化する。このため、キャビティ底面を強制振動させたときの残留振動のシュミレーションも行いやすくなり、設計と実際との乖離が少なくなって、調整作業が少なくてすんだり、検出精度を向上させたりすることが可能となる。
【0033】
本発明において、上記検出装置を取付対象部材に向かって付勢することにより検出装置を取付対象部材に対して固定する付勢部材を備えている場合には、付勢部材の付勢力により検出装置が取付対象部材に対して確実に取り付けられるとともに、上記付勢力により弾性シール部材が圧縮されて変形し難くなり、キャビティ底面の振動が液体を介して弾性シール部材自体に多少伝わったとしても、弾性シール部材自体が振動しにくくなる。このため、弾性シール部材の振動による検出精度の低下を有効に防止できるのである。
【0034】
本発明において、上記弾性シール部材の外周に外嵌して弾性シール部材を周囲から把持する把持部材を備えている場合には、弾性シール部材は把持部材によって外周方向への変形が規制され、付勢部材の付勢力により弾性シール部材が圧縮されたときにより変形し難くなる。このため、キャビティ底面の振動が液体を介して弾性シール部材自体に多少伝わったとしても、弾性シール部材自体が振動しにくくなって、弾性シール部材の振動による検出精度の低下を有効に防止できるのである。
【0035】
本発明において、上記取付対象部材は、上流側空間として液体供給路に連通する供給側バッファ室を有するとともに、下流側空間として液体排出路に連通する排出側バッファ室を有するバッファ部材である場合には、キャビティに対して液体が出入する液体供給路および液体排出路が、それぞれ供給側バッファ室と排出側バッファ室に対して開口し、検出対象とする液体の貯留空間に対して直接開口するのではないため、液体の貯留空間において液体の振動等によって気泡が発生したとしても、気泡は供給側バッファ室や排出側バッファ室に一旦トラップされてキャビティに侵入しにくくなる。したがって、キャビティ内に気泡が滞留することによる検出装置の誤検出を防止することができる。
【0036】
また、キャビティに対して液体が出入する液体供給路および液体排出路が、液体の貯留空間に対して直接開口するのではなく、それぞれ供給側バッファ室と排出側バッファ室に対して開口しているため、液体の貯留空間に発生した液体の圧力が直接キャビティに作用しないため、液体の振動等による圧力の影響による検出装置の誤検出を防止することができる。
【0037】
本発明において、上記供給側バッファ室と排出側バッファ室は、上記キャビティの中心に対して対称に形成されている場合には、供給側バッファ室と排出側バッファ室とを対称とすることにより両バッファ室を構成する部材の形状が単純化し、製造が容易になるうえ、部材の小型化も可能となる。
【0038】
本発明において、上記供給側バッファ室および排出側バッファ室は、それぞれキャビティの容量の少なくとも10倍以上の容量を有するものである場合には、液体容器内の液体貯留空間に発生した液体の圧力変動が検出装置のセンサ特性にほとんど影響しなくなり、液体の振動等による圧力の影響による検出装置の誤検出を防止することができる。さらに、キャビティ底面の振動によって両バッファ室内の圧力が高まることがないため、余分な振動が発生しなくなり、キャビティ底面に残る残留振動の振動モードが単純化し、検出精度を向上させることが可能となる。
【0039】
本発明において、上記バッファ部材は内部に貯留した液体を外部に送出する液体送出口を有する容器本体に取り付けられ、上記供給側バッファ室は、上記容器本体の内部空間のうちの主要な部分を構成して液体を貯留する液体貯留室に連通し、上記排出側バッファ室は、上記容器本体の内部空間のうち内部に貯留した液体を上記液体送出口に連通する液体送出空間に連通している場合には、上記容器本体の液体貯留室に貯留された液体が、検出装置の上記供給側バッファ室の入口から流入して排出側バッファ室の出口から排出されて上記容器本体の液体送出口に送られるとともに、上記容器本体の上記液体送出口に送られる液体の全量が事前に上記検出装置の上記供給側バッファ室,キャビティおよび排出側バッファ室を通過するため、液体の消費を確実に検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の一実施形態による液体検出装置の取付構造について図面を参照して説明する。
【0041】
図1は、本発明が適用される液体検出装置とインクカートリッジが使用されるインクジェット式記録装置(液体噴射装置)の概略構成を示し、図1中符号1はキャリッジであり、このキャリッジ1はキャリッジモータ2により駆動されるタイミングベルト3を介し、ガイド部材4に案内されてプラテン5の軸方向に往復移動されるように構成されている。
【0042】
キャリッジ1の記録用紙6に対向する側にはインクジェット式記録ヘッド12が搭載され、またその上部には記録ヘッド12にインクを供給するインクカートリッジ7が着脱可能に装着されている。
【0043】
この記録装置の非印字領域であるホームポジション(図中、右側)にはキャップ部材31が配置されており、このキャップ部材31はキャリッジ1に搭載された記録ヘッドがホームポジションに移動した時に、記録ヘッドのノズル形成面に押し当てられてノズル形成面との間に密閉空間を形成するように構成されている。そして、キャップ部材31の下方には、キャップ部材31により形成された密閉空間に負圧を与えてクリーニング等を実施するためのポンプユニット10が配置されている。
【0044】
そして、キャップ部材31における印字領域側の近傍には、ゴムなどの弾性板を備えたワイピング手段11が記録ヘッドの移動軌跡に対して例えば水平方向に進退できるように配置されていて、キャリッジ1がキャップ部材31側に往復移動するに際して、必要に応じて記録ヘッドのノズル形成面を払拭することができるように構成されている。
【0045】
つぎに、本発明が適用された液体検出装置およびそれを備えたインクカートリッジについて説明する。
【0046】
図2は本発明が適用された液体検出装置60を示す断面図である。また、図3は上記液体検出装置60を構成する検出部(検出装置)13を示す図であり、図4は上記液体検出装置60を構成するバッファ部14および弾性シール部材29を示す図である。
【0047】
なお、この例では、本発明の検出装置に相当する検出部13と、本発明の取付対象部材に相当するバッファ部14とを含む図2に示す全体で液体検出装置60を構成し、この液体検出装置60を後述する容器本体72に取り付けてインクカートリッジ70を構成したものを説明している。
【0048】
この液体検出装置60は、キャビティ43を有する検出部13と、上記キャビティ43に連通する供給側バッファ室(上流側空間)15および排出側バッファ室(下流側空間)16を有するバッファ部(取付対象部材)14とを備えて構成されている。
【0049】
そして、上記バッファ部14の上面に、弾性シール部材29を介して検出部13が載置され、上記弾性シール部材29により検出部13とバッファ部14との間をシールするようになっている。また、上記検出部13は、上記バッファ部14の上面に形成された鉤状のセンサ固定部材34と付勢部材35により、バッファ部14上面に対して押し付け固定されている。
【0050】
上記検出部13は、キャビティ板41に振動板42を積層して構成されて、互いに対向する第1面40aおよび第2面40bを有した振動キャビティ形成基部40と、上記振動キャビティ形成基部40の第2面40b側に積層された圧電素子17と、上記振動キャビティ形成基部40の第1面40a側に積層された流路形成板(流路形成基部)18とを備えてなる。
【0051】
振動キャビティ形成基部40には、検出対象の媒体(インク)を受け入れるための円筒形の空間形状を呈するキャビティ43が、第1面40a側に開口するようにして形成されており、キャビティ43の底面部43aが振動板42にて振動可能に形成されている。換言すれば、振動板42全体のうちの実際に振動する部分は、キャビティ43によってその輪郭が規定されている。振動キャビティ形成基部40の第2面40b側の両端には、下部電極端子44および上部電極端子45が形成されている。
【0052】
振動キャビティ形成基部40の第2面40bには下部電極(第1電極)46が形成されており、この下部電極46は、略円形の本体部46aと、この本体部46aから下部電極端子44の方向に延出して下部電極端子44に接続された延出部46bとを有する。下部電極46の略円形の本体部46aの中心はキャビティ43の中心軸Cと一致している。
【0053】
下部電極46の略円形の本体部46aは、円形のキャビティ43よりも大径に形成され、キャビティ43に対応する領域の略全体を覆っている。また、この下部電極46の略円形の本体部46aは、キャビティ43の周縁43bに対応する位置よりも内側に入り込むようにして形成された切欠き部46cを含んでいる。
【0054】
下部電極46の上には圧電層47が積層されており、この圧電層47は、キャビティ43よりも小径に形成された円形の本体部47aと、キャビティ43に対応する領域の範囲内において本体部47aから突出した突出部47bとを有する。図2から分かるように、圧電層47はその全体がキャビティ43に対応する領域の範囲内に収まっている。換言すれば、圧電層47は、キャビティ43の周縁43bに対応する位置を横切って延在する部分をまったく有していない。
【0055】
圧電層47の本体部47aの中心はキャビティ43の中心軸Cと一致しており、圧電層47の本体部47aは、下部電極46の切欠き部46cに対応する部分を除いてその略全体が下部電極46に積層されている。
【0056】
振動キャビティ形成基部40の第2面40b側には補助電極48が形成されている。この補助電極48は、キャビティ43に対応する領域の外側から、キャビティ43の周縁43bに対応する位置を越えてキャビティ43に対応する領域の内部まで延在する。補助電極48の一部は、下部電極(第1電極)46の切欠き部46cの内部に位置して圧電層47の突出部47bおよびその近傍を振動キャビティ形成基部40の第2面40b側から支持している。この補助電極48は、好ましくは、下部電極46と同じ材質でかつ同じ厚さを有している。このように補助電極48によって圧電層47の突出部47bおよびその近傍を振動キャビティ形成基部40の第2面40b側から支持することによって、圧電層47に段差が生じないようにして機械的強度の低下を防止することができる。
【0057】
圧電層47には、上部電極(第2電極)49の円形の本体部49aが積層されており、この上部電極49は、圧電層47の本体部47aよりも小径に形成されている。また、上部電極49は、本体部49aから延出して補助電極48に接続された延出部49bを有している。図2から分かるように、上部電極49の延出部49bと補助電極48との接続が始まる位置Pは、キャビティ43に対応する領域の範囲内に位置している。
【0058】
下部電極46、圧電層47、および上部電極49のそれぞれの本体部によって圧電素子17が形成されている。
【0059】
図3から分かるように、上部電極49は補助電極48を介して上部電極端子45に電気的に接続されている。このように補助電極48を介して上部電極49を上部電極端子45に接続することによって、圧電層47および下部電極46の合計の厚さから生じる段差を、上部電極49と補助電極48との両方によって吸収することができる。このため、上部電極49に大きな段差が生じて機械的強度が低下することを防止することができる。
【0060】
上部電極49の本体部49aは円形を成しており、その中心はキャビティ43の中心軸Cと一致している。上部電極49の本体部49aは、圧電層47の本体部47aおよびキャビティ43のいずれよりも小径に形成されている。
【0061】
このように、圧電層47の本体部47aは、上部電極49の本体部49aと下部電極46の本体部46aとによって挟みこまれる構造となっている。これにより、圧電層47は効果的に変形駆動され得る。
【0062】
なお、圧電層47と電気的に接続された下部電極46の本体部46aおよび上部電極49の本体部49aのうち、上部電極49の本体部49aの方が小径に形成されている。従って、上部電極49の本体部49aが、圧電層47のうちで圧電効果を発生する部分の範囲を決定することになる。
【0063】
圧電層47の本体部47a、上部電極49の本体部49a、および下部電極46の本体部46aは、それらの中心がキャビティ43の中心軸Cと一致している。また、振動板42の振動可能な部分を決定する円筒形状のキャビティ43の中心軸Cは、液体検出装置60の全体の中心に位置している。
【0064】
キャビティ43によって規定される振動板42の振動可能な部分、下部電極46の本体部46aのうちのキャビティ43に対応する部分、圧電層47の本体部47aおよび突出部47b、並びに上部電極49の本体部49aおよび延出部49bのキャビティ43に対応する部分は、液体検出装置60の振動部61を構成する。そして、この液体検出装置60の振動部61の中心は、液体検出装置60の中心と一致する。
【0065】
さらに、圧電層47の本体部47a、上部電極49の本体部49a、下部電極46の本体部46a、および振動板42の振動可能な部分(即ちキャビティ43の底面部43aに対応する部分)が円形形状を有しており、しかも、圧電層47の全体、即ち圧電層47の本体部47aおよび突出部47bがキャビティ43に対応する領域の内部に配置されているので、液体検出装置60の振動部61は液体検出装置60の中心に対して略対称な形状である。
【0066】
さらに、本実施例による液体検出装置60は、振動キャビティ形成基部40の第1面40aに積層され接合された流路形成板(流路形成基部)18を備えている。
【0067】
上記流路形成板18には、キャビティ43に検出対象のインクを供給するインク供給路(液体供給路)19と、キャビティ43から検出対象のインクを排出するインク排出路(液体排出路)20とが形成されている。インク供給路19とインク排出路20は、同じ大きさ形状に形成され、いずれも円筒形の空間形状を呈している。
【0068】
上記流路形成板18に形成されたインク供給路19とインク排出路20は、いずれも上記円形のキャビティ43に対応する領域内に形成されており、かつインク供給路19とインク排出路20はキャビティ43の中心軸Cに対して対称に配置されている。これにより、上記キャビティ43,インク供給路19およびインク排出路20を含んで形成される空間は、インク供給路19とインク排出路20に挟まれた領域に存在するキャビティの中心軸Cに対して対称に形成されている。
【0069】
また、上記インク供給路19およびインク排出路20は、それぞれキャビティ43に対して流路面積が絞られている。すなわち、この例では、1つのキャビティ43に対してインク供給路19とインク排出路20が1つずつ形成されているが、一方の流路(インク供給路19またはインク排出路20)の流路面積は、キャビティ43の面積の少なくとも半分より小さくなるように設定されている。また、上記インク供給路19およびインク排出路20は、内部に液体の流体的質量が存在するよう、ある程度の長さが設定されている。
【0070】
一方、上記液体検出装置60は、上記インク供給路19に連通してインク供給路19に供給されるインクが存在する供給側バッファ室15と、上記インク排出路20に連通してインク排出路20から排出されたインクが存在する排出側バッファ室16とを有するバッファ部14を備えている。
【0071】
上記バッファ部14は、この例では平面視で上記液体検出装置60よりも一回り大きな長方形を呈し、全体として直方体状に形成されている。上記バッファ部14の内部は、中央部に配置された1枚の仕切壁21により同じ大きさ形状の2つの空間に2分されており、一方が供給側バッファ室15に、他方が排出側バッファ室16になっている。
【0072】
上記バッファ部14の検出部13が接合される面と反対側の部分には、供給側バッファ室15にインクを流入させる流入開口22と、排出側バッファ室16のインクを流出させる流出開口23とが形成されている。また、上記バッファ部14の検出部13が取付られる面には、供給側バッファ室15に流入したインクをインク供給路19を介してキャビティ43に供給するための上部開口30Aと、キャビティ43のインクをインク排出路20を介して供給側バッファ室15に流出させるための上部開口30Bとが形成されている。
【0073】
そして、上記検出部13とバッファ部14との間には、上記インク供給路19と供給側バッファ室15を連通させる供給側連通口32と、上記インク排出路20と排出側バッファ室16を連通させる排出側連通口33とを有し、インク供給路19と供給側バッファ室15との間およびインク排出路20と排出側バッファ室16との間をそれぞれシールする弾性シール部材29が介在している。
【0074】
上記弾性シール部材29の材質としては、ゴム、エラストマー等の弾性部材を用いることができるが、特に好適なのは、ポリマーを三次元網目構造としてオイルを配合し、適度な硬度・ロス特性・バネ定数に設定した防振用の弾性部材(Micro Network Controlled Structure)を好適に用いることができる。
【0075】
また、上記弾性シール部材29は、全体として検出部13よりもやや大きく、バッファ部14よりもやや小さく設定された長方形の板状に形成されている。さらに、上記弾性シール部材29の外周部には、断面四角形で四角枠状に形成されて弾性シール部材29を周囲から把持する合成樹脂製の把持部材36が外嵌している。そして、上記把持部材36は、その高さが弾性シール部材29の厚みと略同じに設定され、左右端がバッファ部14左右のセンサ固定部材34に当接することにより、弾性シール部材29をバッファ部14上面の所定位置に位置決めしている。
【0076】
一方、上記バッファ部14上面の左右端辺部には、それぞれ上方に延びて先端が内側に鉤状に屈曲形成されたセンサ固定部材34が形成されている。このセンサ固定部材34は、図2における上下方向に延びる板状の縦片34Aがバッファ部14の上面左右に立設しており、上記縦片34Aの先端から内側に向かって板状の横片34Bが鉤状に屈曲形成されている。
【0077】
上記センサ固定部材34の横片34Bの下面、および検出部13の下部電極端子44と上部電極端子45の上面には、付勢部材35を位置決めする位置決め用の突起37が形成されている。そして、上記付勢部材35は、略横向きU字状の板ばねであり、横向きU字状の自由端近傍には上記突起に嵌合する嵌合孔(図示せず)が形成されている。
【0078】
このような構造により、バッファ部14の上面に把持部材36が外嵌した弾性シール部材29を載置してその上に検出部13を載置し、横向きU字状の付勢部材35を圧縮しながらセンサ固定部材34の横片34Bと検出部13上面との間に押し込んで、付勢部材35の嵌合孔をセンサ固定部材34の横片34Bと検出部13上面の突起に嵌合させることにより、検出部13が弾性シール部材29上で適切な位置に位置決めされるとともに、付勢部材35の付勢力により検出部13がバッファ部14に向かって付勢され、バッファ部14上面に押し付けられ固定される。この押し付け力により、弾性シール部材29によるインク供給路19と供給側バッファ室15との間およびインク排出路20と排出側バッファ室16との間とのシール性が保たれる。
【0079】
この状態で、上記弾性シール部材29の供給側連通口32および排出側連通口33は、それぞれバッファ部14の上部開口30A,30B上に配置される。また、検出部13のインク供給路19とインク排出路20は、それぞれ弾性シール部材29の供給側連通口32と排出側連通口33上に配置される。
【0080】
このような構成により、上記検出対象となるカートリッジ内部のインクは、流入開口22から供給側バッファ室15に流入して上部開口30A、供給側連通口32およびインク供給路19を介してキャビティ43に供給される。そして、キャビティ43に供給されたインクは、上記インク排出路20、排出側連通口33および上部開口30Bを介して排出側バッファ室16に排出され、さらに排出側バッファ室16から流出開口23を介して排出される。
【0081】
そして、上記インク供給路19とインク排出路20は、上述したように円筒状で同じ大きさ形状に形成されるとともに、上記供給側連通口32および排出側連通口33も、この例では実質的に円形に開口した空間に形成されており、同じ大きさ形状に形成されている。
【0082】
また、上記検出部13のインク供給路19の開口よりも弾性シール部材29の供給側連通口32の開口が大きくなるよう設定されており、同様に、上記検出部13のインク排出路20の開口よりも弾性シール部材29の排出側連通口33の開口が大きくなるように設定されている。ここで、検出部のインク供給路19およびインク排出路20の開口径D1,D3と、弾性シール部材29の供給側連通口32および排出側連通口33の開口径D2,D4との比率は、適宜に設定することができるが、弾性シール部材29の供給側連通口32の開口径D2を検出部13のインク供給路19の開口径D1の2倍以上に設定し、同様に、弾性シール部材29の排出側連通口33の開口径D4を検出部13のインク排出路20の開口径D3の2倍以上になるよう設定するのが好ましい。
【0083】
さらに、この例では、弾性シール部材29の供給側連通口32と検出部13のインク供給路19とが同心状に配置され、弾性シール部材29の排出側連通口33と検出部13のインク排出路20とが同心状に配置されている。そして、上記インク供給路19および供給側連通口32、上記インク排出路20および排出側連通口33およびキャビティ43によって形成される空間が、キャビティ43の中心軸Cに対して対称に形成されている。
【0084】
さらにこの例では、上記液体検出装置60の供給側バッファ室15および上部開口30Aと、排出側バッファ室16および上部開口30Bとは、上記キャビティ43の中心軸Cに対して対称に形成されている。さらに言い換えると、キャビティ43、インク供給路19、インク排出路20、供給側連通口32、排出側連通口33、上部空間30A、30B供給側バッファ室15、排出側バッファ室16によって形成される空間が、上記キャビティ43の中心軸Cに対して対称に形成されている。
【0085】
また、上記液体検出装置60の上記供給側バッファ室15および排出側バッファ室16の容量は、それぞれキャビティ43の容量の少なくとも10倍以上の容量を有するように設定されている。
【0086】
上記液体検出装置60に含まれる部材、特にキャビティ板41、振動板42、流路形成板18は、同一材質で形成されるとともに互いに焼成されることによって一体的に形成されている。このように複数の基板を焼成して一体化することによって、液体検出装置60の取り扱いが容易になる。また、各部材を同一材質で形成することによって、線膨張係数の違いによるクラックの発生を防止することができる。
【0087】
圧電層47の材料としては、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン(PLZT)、または、鉛を使用しない鉛レス圧電膜、を用いることが好ましい。キャビティ板41の材料としては、ジルコニアまたはアルミナを用いることが好ましい。また、振動板42には、キャビティ板41と同じ材料を用いることが好ましい。上部電極49、下部電極46、上部電極端子45および下部電極端子44は、導電性を有する材料、例えば、金、銀、銅、プラチナ、アルミニウム、ニッケルなどの金属を用いることができる。
【0088】
図5は上記液体検出装置を備えた本発明のインクカートリッジを示す図であり、図6はインクカートリッジに対する液体検出装置の取り付け部分の一例を示す図である。
【0089】
図5は、上述した液体検出装置60が装着されたインクカートリッジ(液体容器)70を示しており、このインクカートリッジ70は、内部に貯留したインクを外部に送出するインク送出口(液体送出口)71を有する容器本体72を備えている。
【0090】
図6に示すように、液体検出装置60はその全体が容器本体72に装着されており、容器本体72の壁面27に形成された長方形状の開口26に、バッファ部14が接着剤28等によって液密状に取り付けられている。このとき、液体検出装置60の検出部13が容器本体72の外側に配置され、バッファ部14の流入開口22および流出開口23が容器本体72の内側に開口するよう配置されている。
【0091】
そして、容器本体72の内部は(図5に戻る)、容器本体72の内部空間全体のうちの主要な部分を構成してインクを貯留する主貯留室(液体貯留室)75と、この主貯留室75よりも小さな容積を有する副貯留室(液体送出空間)76とに区画されており、主貯留室75と副貯留室76とは互いに分離されている。副貯留室76は、インク消費時のインクの流れ方向において主貯留室75よりもインク送出口71に近い側に位置している。
【0092】
上記液体検出装置60の流入開口22は上記主貯留室75に連通する位置に開口し、流出開口23は上記液体送出空間である副貯留室76に開口するよう配置されている。これにより、上記供給側バッファ室15は、上記容器本体72の内部空間のうちの主要な部分を構成して液体を貯留する主貯留室75に連通し、上記排出側バッファ室16は、上記容器本体72の内部空間のうち内部に貯留した液体を外部に送出するインク送出口71に連通する液体送出空間に連通するようになっている。
【0093】
主貯留室75の内部には、密閉された補助流路77が形成されており、この補助流路77の下端側には補助流路入口77aが形成されている。補助流路入口77aは、主貯留室75の内部の下端に位置している。また、補助流路77の上端部に、液体検出装置60の流入開口22が連通しており、この流入開口22が補助流路77の出口を構成している。
【0094】
上述したように、液体検出装置60の流入開口22が補助流路77を介して主貯留室75に連通し、流出開口23が副貯留室76を介してインク送出口71に連通している。これにより、主貯留室75に貯留されたインクは、補助流路77を経て流入開口22から供給側バッファ室15に流入して上部開口30A、供給側連通口32およびインク供給路19を介してキャビティ43に供給される。そして、キャビティ43に供給されたインクは、上記インク排出路20、排出側連通口33および上部開口30Bを介して排出側バッファ室16に排出され、さらに排出側バッファ室16から流出開口23、副貯留室76を経てインク送出口71から排出され、記録ヘッド12に供給される。
【0095】
このように本実施例においては、副貯留室76を通ってインク送出口71に送られるインクの全量が、事前に液体検出装置60のインク供給路19およびインク排出路20を通過するように構成されている。
【0096】
つぎに、上記液体容器において液体を検出する動作について説明する。
【0097】
上述した液体検出装置60を備えたインクカートリッジ70においては、容器本体72にインクが十分に残っており、副貯留室76の内部がインクで満たされている場合には、キャビティ43内はインクによって満たされている。一方、インクカートリッジ7の容器本体72内の液体が消費され、主貯留室75内のインクがなくなると、副貯留室76内の液面が低下し、液体検出装置60のキャビティ43の位置よりも下方まで液面が降下すると、キャビティ43内にインクが存在しない状態となる。
【0098】
そこで、液体検出装置60は、この状態の変化に起因する音響インピーダンスの相違を検出する。それによって、液体検出装置60は、容器本体72にインクが十分に残っている状態であるか、あるいは、ある一定以上のインクが消費された状態であるか、を検知することができる。
【0099】
より具体的には、液体検出装置60において、上部電極端子45および下部電極端子44を介して上部電極49と下部電極46との間に電圧を印加する。すると、圧電層47のうち、上部電極49および下部電極46に挟まれた部分に電界が生じる。この電界によって圧電層47が変形する。圧電層47が変形することによって、振動板42のうちの振動領域(キャビティ43の底面部43aに対応する領域)に、たわみ振動が生じる。このようにして圧電層47を強制的に変形させた後、電圧の印加を解除すると、しばらくは、たわみ振動が液体検出装置60の振動部61に残留する。
【0100】
この残留振動は、液体検出装置60の振動部61とキャビティ43内の媒体との自由振動である。従って、圧電層47に印加する電圧をパルス波形あるいは矩形波とすることで、電圧を印加した後の振動部61と媒体との共振状態を容易に得ることができる。この残留振動は、液体検出装置60の振動部61の振動であり、圧電層47の変形を伴う。このため、残留振動に伴って圧電層47は逆起電力を発生する。この逆起電力は、上部電極49、下部電極46、上部電極端子45および下部電極端子44を介して検出される。このようにして検出された逆起電力によって共振周波数が特定できるので、この共振周波数に基づいてインクカートリッジ7の容器本体72内のインクの有無を検出することができる。
【0101】
図7(a)、(b)は、液体検出装置60に駆動信号を供給して振動部61を強制的に振動させた場合における、液体検出装置60の振動部61の残留振動(自由振動)の波形と残留振動の測定方法とを示している。図7(a)は、液体検出装置60のキャビティ43内にインクがあるときの波形であり、一方、図7(b)は液体検出装置60のキャビティ43内にインクがないときの波形である。
【0102】
図7(a)、(b)において、縦軸は液体検出装置60に加えられる駆動パルスおよび液体検出装置60の振動部61の残留振動によって発生した逆起電力の電圧を示し、横軸は経過時間を示す。液体検出装置60の振動部61の残留振動によって、電圧のアナログ信号の波形が発生する。次に、アナログ信号を、信号の周波数に対応するデジタル数値に変換(二値化)する。図7に示した例においては、アナログ信号の4パルス目から8パルス目までの4個のパルスが生じる時間を計測している。
【0103】
より詳細には、液体検出装置60に駆動パルスを印加して振動部61を強制的に振動させた後、残留振動による電圧波形が、予め設定された所定の基準電圧を低電圧側から高電圧側へ横切る回数をカウントする。そして、4カウントから8カウントまでの間をHighとしたデジタル信号を生成し、所定のクロックパルスによって4カウントから8カウントまでの時間を計測する。
【0104】
図7(a)と図7(b)とを比較すると、図7(a)の方が図7(b)よりも4カウントから8カウントまでの時間が長いことがわかる。換言すると、液体検出装置60のキャビティ43におけるインクの有無によって4カウントから8カウントまでの所要時間が異なる。この所要時間の相違を利用して、インクの消費状態を検出することができる。
【0105】
アナログ波形の4カウント目から数えるのは、液体検出装置60の残留振動(自由振動)が安定してから計測をはじめるためである。4カウント目からとしたのは単なる一例であって、任意のカウントから数えてもよい。ここでは、4カウント目から8カウント目までの信号を検出し、所定のクロックパルスによって4カウント目から8カウント目までの時間を測定している。この時間に基いて、共振周波数を求めることができる。クロックパルスは、8カウント目までの時間を測定する必要は無く、任意のカウントまで数えてもよい。
【0106】
図7においては、4カウント目から8カウント目までの時間を測定しているが、周波数を検出する回路構成にしたがって、異なったカウント間隔内の時間を検出してもよい。例えば、インクの品質が安定していてピークの振幅の変動が小さい場合には、検出の速度を上げるために4カウント目から6カウント目までの時間を検出することにより共振周波数を求めてもよい。また、インクの品質が不安定でパルスの振幅の変動が大きい場合には、残留振動を正確に検出するために4カウント目から12カウント目までの時間を検出してもよい。
【0107】
このように本実施例による液体検出装置60においては、液体検出装置60の装着位置レベル(厳密にはキャビティ43の位置)を液面が通過したか否かについて、液体検出装置60の振動部61を強制的に振動させた後の残留振動の周波数の変化や振幅の変化によって検出することができる。
【0108】
図8は、上記のような液体検出装置60の振動部61の振動を近似してシュミレーションしうる等価回路図である。
【0109】
この図では、振動部61(Sensor Chip)のイナータンス(Mc)、インク供給路19およびインク排出路20(Hole)のイナータンス(Ms1,Ms2)をコイルで、振動部61(Sensor Chip)のコンプライアンス(Cc)、インクのコンプライアンス(Ci)をコンデンサで、インク供給路19およびインク排出路20(Hole)の抵抗(Rs1,Rs2)を抵抗で、インク供給路19およびインク排出路20が連通する供給側バッファ室15および排出側バッファ室16をグランドで、それぞれ表している。
【0110】
そして、振動部61のコンプライアンス(Cc)は構造有限要素法で求める。また、振動部61のイナータンス(Mc)は、イナータンスとコンプライアンスの直列系で近似し、つぎの近似式で近似値を計算できる。
Mc=1/(4π2)×1/(f2)×1/Cc
ここで、fは振動部61の固有周期であり、構造有限要素法もしくは実測で求めることができる。
【0111】
また、インクのコンプライアンス(Ci)は、下記の式で求めることができる。
Ci=C×Vi
ここで、Cはインクの圧縮率、Viはインクの体積である。水の圧縮率は4.5e−10/Paである。
【0112】
また、インク供給路19,インク排出路20(Hole)のイナータンス(Ms)は、流体有限要素法で求めるか、もしくは流路(Hole)が円筒の場合は下記の簡易式で求めることができる。
Ms=ρ×L/π/r2
ここで、ρはインクの粘度、Lは流路(Hole)の長さ、rは流路(Hole)の半径である。
【0113】
上記のようにして求めた値を使用し、図8の等価回路で近似して振動部61の振動をシュミレーションすることができる。
【0114】
このような等価回路で振動部61の振動をシュミレーションした結果、Ms1とMs2、Rs1とRs2はそれぞれ略等しいほうが振動がシンプルで余計な振動モードが発生しないことがわかる。したがって、本発明では、キャビティ43とインク供給路19,インク排出路20で形成される空間をキャビティ43の中心軸Cに対して対称に形成したのである。
【0115】
また、供給側バッファ室15および排出側バッファ室16がバッファとして機能する要件は、振動部61の振動によって各バッファ室15,16内の圧力がほとんど高くならないようにするために、バッファ室15,16のコンプライアンスを振動部61のコンプライアンス(Cc)の10倍以上とするのが好ましい。また、余計な振動を発生させないために、バッファ室15,16のイナータンスを流路(Hole)のイナータンス(Ms)の1/10以下とするのが好ましい。
【0116】
以上に述べたように、本実施例による液体検出装置60およびインクカートリッジ70によれば、上記キャビティ43にインクを供給するインク供給路19と、上記キャビティ43からインクを排出するインク排出路20とが形成された振動キャビティ形成基部40を備えているため、キャビティ43へのインクの供給がインク供給路19を介して行われ、キャビティ43からのインクの排出がインク排出路20を介して行われるので、液体検出装置60をインクカートリッジ70等に装着する際には、インクの収容空間に液体検出装置のキャビティ43を直接露出させることなく、インク供給路19を介してインクをキャビティ43に供給することができる。
【0117】
このように、インクの消費時に液体検出装置60のインク供給路19およびインク排出路20の内部をインクが流れるように構成することによって、もし仮にキャビティ43の内部に気泡が進入したとしても、インクの流れによってキャビティ43内から気泡が押し出される。これにより、キャビティ43内に気泡が滞留することによる液体検出装置60の誤検出を防止することができる。このように、液体の消費時に検出装置の液体供給路および液体排出路の内部を液体が流れるように構成することによって、もし仮にキャビティの内部に気泡が進入したとしても、液体の流れによってキャビティ内から気泡が押し出される。このように、液体検出装置60の検出精度を向上させ、残量液体が減って産業廃棄物の減少にもつながる。
【0118】
また、キャビティ43をインクの収容空間に露出させる必要がないので、液面通過時にキャビティ43内にメニスカスが形成されることを防止できる。これにより、キャビティ43内でのインクの残留による液体検出装置60の誤検出を防止することができる。しかも、キャビティ43がインクの収容空間に向かって露出した空間ではなく、流路形成板18により上記収容空間から仕切られた空間となっているため、インク液面の変化やインクの有無等によって、振動部61を強制振動させたときの振動部61に残る残留振動の違いが大きくなり、検出感度が高くなって検出精度を高めることができ、誤検出を防止することができる。
【0119】
また、検出部13とバッファ部14との間に介在し、上記インク供給路19と供給側バッファ室15を連通させる供給側連通口32と、上記インク排出路20と排出側バッファ室16を連通させる排出側連通口33とを有し、インク供給路19と供給側バッファ室15との間およびインク排出路20と排出側バッファ室16との間をそれぞれシールする弾性シール部材29を備えているため、検出精度を確保できるとともに、製造工程も簡素化する。
【0120】
すなわち、例えばバッファ部14と検出部13との間を接着剤等でシールすると、インク供給路19と供給側バッファ室15が形成する流路やインク排出路20と排出側バッファ室16が形成する流路内に接着剤がはみ出しやすく、はみ出した接着剤に気泡が付着してとれにくくなり、キャビティ43の振動部61の残留振動に影響して検出精度に悪影響を与えるという問題があった。したがって、接着剤の流路へのはみ出しをなくすように管理しなければならないため、接着工程が極めて複雑化するという問題があった。
【0121】
これに対し、本実施例では、インク供給路19と供給側バッファ室15との間およびインク排出路20と排出側バッファ室16との間をそれぞれ弾性シール部材29でシールすることから、上述した流路内への接着剤のはみ出しの問題が皆無になり、気泡の付着に起因する検出精度の低下や、接着剤のはみ出し管理を行うことによる工程の複雑化の問題が解消するのである。
【0122】
また、本実施例では、上記検出部13のインク供給路19の開口よりも弾性シール部材29の供給側連通口32の開口を大きくするとともに、上記検出部13のインク排出路20の開口よりも弾性シール部材29の排出側連通口33の開口を大きくしている。具体的には、弾性シール部材29の供給側連通口32の開口径D2が検出部13のインク供給路19の開口径D1の2倍以上に設定されるとともに、弾性シール部材29の排出側連通口33の開口径D4が検出部13のインク排出路20の開口径D3の2倍以上に設定されている。このため、キャビティ43底面の振動が液体を介して弾性シール部材29自体に伝わるのを有効に防止することができる。これにより、弾性シール部材29に生じた振動がキャビティ43底面の残留振動に影響することによる検出精度の低下を有効に防止することができるのである。
【0123】
さらに、本実施例では、弾性シール部材29の供給側連通口32と検出部13のインク供給路19とが同心状に配置されているとともに、弾性シール部材29の排出側連通口33と検出部13のインク排出路20とが同心状に配置されているため、仮にキャビティ43底面の振動がインクを介して弾性シール部材29自体に多少伝わったとしても、供給側連通口32とインク供給路19および排出側連通口33とインク排出路20を同心状に配置することにより、弾性シール部材29に生じる振動モードをより単純化することができ、弾性シール部材29に生じた振動による検出精度の低下を最小に止めることができるのである。
【0124】
また、本実施例では、上記インク供給路19とインク排出路20の開口が同じ大きさ形状に設定されるとともに、供給側連通口32と排出側連通口33の開口が同じ大きさ形状に設定されている。そして、上記インク供給路19および供給側連通口32と、上記インク排出路20および排出側連通口33とが、キャビティ43の中心軸Cに対して対称に形成されている。このため、キャビティ43底面の振動が伝播する空間であるインク供給路19および供給側連通口32、インク排出路20および排出側連通口33、ならびにキャビティ43によって形成される空間の空間形状が単純化し、キャビティ43底面に残る残留振動の振動モードも単純化する。このため、キャビティ底面を強制振動させたときの残留振動のシュミレーションも行いやすくなり、設計と実際との乖離が少なくなって、調整作業が少なくてすんだり、検出精度を向上させたりすることが可能となる。
【0125】
また、上記キャビティ43を形成する空間は実質的に円筒形であるため、キャビティ43底面の振動が伝播する空間であるキャビティ43の空間形状がより単純化し、キャビティ43底面に残る残留振動の振動モードも単純化する。そして、キャビティ43底面を強制振動させたときの残留振動のシュミレーションも極めて行いやすくなり、設計と実際との乖離が少なくなって、調整作業が少なくて済み、検出精度を向上させることが可能となる。
【0126】
さらに、上記インク供給路19およびインク排出路20は、それぞれキャビティ43に対して流路面積が絞られるとともに、内部にインクの流体的質量が存在するよう長さが設定されているため、インク供給路19およびインク排出路20に適当な流路抵抗が生じるため、キャビティ43底面の振動によって発生するキャビティ43内の圧力変動が両バッファ室15,16に拡散されてしまうのを防止し、適切な残留振動を発生させて検出精度を向上し確保することが可能となる。
【0127】
また、本実施例では、上記検出部13をバッファ部14に向かって付勢することにより検出部13をバッファ部14に対して固定する付勢部材35を備えているため、付勢部材35の付勢力により検出部13がバッファ部14に対して確実に取り付けられるとともに、上記付勢力により弾性シール部材29が圧縮されて変形し難くなり、キャビティ43底面の振動が液体を介して弾性シール部材29自体に多少伝わったとしても、弾性シール部材29自体が振動しにくくなる。さらに、上記弾性シール部材29の外周に外嵌して弾性シール部材29を周囲から把持する把持部材36を備えているため、弾性シール部材29は把持部材36によって外周方向への変形が規制され、付勢部材35の付勢力により弾性シール部材29が圧縮されたときにより変形し難くなる。このため、キャビティ43底面の振動が液体を介して弾性シール部材自体に多少伝わったとしても、弾性シール部材自体が振動しにくくなって、弾性シール部材の振動による検出精度の低下を有効に防止できるのである。
【0128】
また、本実施例では、取付対象部材が、上流側空間としてインク供給路19に連通する供給側バッファ室15を有するとともに、下流側空間としてインク排出路20に連通する排出側バッファ室16を有するバッファ部14であるため、キャビティ43に対してインクが出入するインク供給路19およびインク排出路20が、それぞれ供給側バッファ室15と排出側バッファ室16に対して開口し、容器本体72のインク貯留空間に対して直接開口するのではないため、インク貯留空間においてインクの振動等によって気泡が発生したとしても、気泡は供給側バッファ室15や排出側バッファ室16に一旦トラップされてキャビティ43に侵入しにくくなる。したがって、キャビティ43内に気泡が滞留することによる液体検出装置60の誤検出を防止することができる。また、液体検出装置60をインクカートリッジ70の底部近傍に配置しているため、より気泡の侵入を防止する効果が高くなる。
【0129】
また、キャビティ43に対してインクが出入するインク供給路19およびインク排出路20が、容器本体72のインク貯留空間に対して直接開口するのではなく、それぞれ供給側バッファ室15と排出側バッファ室16に対して開口しているため、インクカートリッジ70内のインク貯留空間に発生したインクの圧力が直接キャビティ43に作用しないため、インクの振動等による圧力の影響による液体検出装置60の誤検出を防止することができる。
【0130】
さらに、上記液体検出装置60の供給側バッファ室15と排出側バッファ室16は、上記キャビティ43の中心軸Cに対して対称に形成されているため、供給側バッファ室15と排出側バッファ室16とを対称とすることにより両バッファ室15,16を構成する部材の形状が単純化し、製造が容易になるうえ、部材の小型化も可能となる。
【0131】
しかも、上記液体検出装置60の上記供給側バッファ室15および排出側バッファ室16は、それぞれキャビティ43の容量の少なくとも10倍以上の容量を有するものとすることにより、インクカートリッジ70内のインク貯留空間に発生したインクの圧力変動が液体検出装置60のセンサ特性にほとんど影響しなくなり、インクの振動等による圧力の影響による液体検出装置60の誤検出を防止することができる。さらに、キャビティ43底面の振動によって両バッファ室15,16内の圧力が高まることがないため、余分な振動が発生しなくなり、キャビティ43底面に残る残留振動の振動モードが単純化し、検出精度を向上させることが可能となる。
【0132】
さらに、上記バッファ部14は内部に貯留したインクを外部に送出するインク送出口71を有する容器本体72に取り付けられ、上記供給側バッファ室15は、上記容器本体72の内部空間のうちの主要な部分を構成してインクを貯留する主貯留室75に連通し、上記排出側バッファ室16は、上記容器本体72の内部空間のうち内部に貯留したインクを外部に送出するインク送出口71に連通する液体送出空間である副貯留室76に連通しているため、上記容器本体72の主貯留室75に貯留されたインクが、液体検出装置60の上記供給側バッファ室15の入口から流入して排出側バッファ室16の出口から排出されて上記容器本体72のインク送出口71に送られるとともに、上記容器本体72の上記インク送出口71に送られるインクの全量が事前に上記液体検出装置60の上記供給側バッファ室15,キャビティ43および排出側バッファ室16を通過するため、インクの消費を確実に検知することができる。
【0133】
また、上記液体検出装置60によれば、インク排出路20がキャビティ43に対応する領域に合わせて形成されているので、キャビティ43内に進入した気泡を確実に排出することができる。
【0134】
また、上記インクカートリッジ70では、容器本体72の内部を、互いに分離された主貯留室75と副貯留室76とに区画すると共に、液体検出装置60の流入開口22および流出開口23を介して主貯留室75と副貯留室76とを連絡し、液体検出装置60のキャビティ43を副貯留室76の上端部に配置するようにした。
【0135】
このため、主貯留室75内のインクが無くなった時点を液体検出装置60によって確実に検出することができるので、ユーザーにインクエンドが近づいていることを報知できる。さらに、予め分かっている副貯留室76内のインク量に基づいて、残存インクでの印刷可能枚数等をユーザーに知らせることが可能であり、1ページの途中でインクが無くなって印刷用紙を無駄にしてしまうようなことを防止できる。
【0136】
また、上記インクカートリッジ70によれば、密閉された補助流路77を主貯留室75の内部に形成し、補助流路77の補助流路入口77aを主貯留室75の下端に位置させると共に、補助流路77の上端部に液体検出装置60の流入開口22を連通させるようにした。このため、主貯留室75内で発生した気泡は補助流路77の内部に進入し難く、液体検出装置60のキャビティ43への気泡の進入を防止することができる。
【0137】
さらに、上記インクカートリッジ70によれば、主貯留室75内のインクがすべて消費されるまで、副貯留室76の内部はインクで満たされた状態にあるので、インクカートリッジ70に振動が加えられた場合でも、主貯留室75内にインクが残っている限りは副貯留室76内で液面が揺れるということがない。従って、液面の揺れによって液体検出装置60が誤検出を起こすことを防止することができる。
【0138】
また、上記液体検出装置60によれば、振動部61とインクとが接触する範囲が、キャビティ43が存在する範囲に限られているので、インクの検出をピンポイントで行うことが可能であり、これにより、インクレベルを高精度にて検出することができる。
【0139】
また、キャビティ43に対応する領域の略全体を下部電極46の本体部46aで覆うようにしたので、強制振動時の変形モードと自由振動時の変形モードとの相違が小さくなる。また、液体検出装置60の振動部61が液体検出装置60の中心に対して対称な形状であるので、この振動部61の剛性はその中心から見てほぼ等方的となる。
【0140】
このため、構造の非対称性から生じ得る不要な振動の発生が抑制されると共に、強制振動時と自由振動時との間の変形モードの相違による逆起電力の出力低下が防止される。これにより、液体検出装置60の振動部61における残留振動の共振周波数の検出精度が向上するとともに、振動部61の残留振動の検出が容易になる。
【0141】
また、キャビティ43に対応する領域の略全体をキャビティ43よりも大径の下部電極46の本体部46aで覆うようにしたので、製造時における下部電極46の位置ズレに起因する不要振動の発生が防止され、検出精度の低下を防止することができる。
【0142】
また、硬いが脆弱な圧電層47の全体がキャビティ43に対応する領域の内部に配置されており、キャビティ43の周縁43bに対応する位置には圧電層47が存在しない。このため、キャビティの周縁に対応する位置での圧電膜のクラックの問題がない。
【0143】
図9は、本発明が適用されたインクカートリッジの第2実施例である。
【0144】
このインクカートリッジ70Aは、液体検出装置60Aがバッファ部14を備えておらず、検出部13だけで構成された例である。このインクカートリッジ70Aは、容器本体72の壁面に、検出部13のインク供給路19と容器本体72の補助流路77を連通させる上流側連通開口38Aと、検出部13のインク排出路20と容器本体72の副貯留室76を連通させる下流側連通開口38Bとが形成されている。また、上記容器本体72の外側面には、検出部を固定するためのセンサ固定部材34が形成されており、上述した第1実施例と同様にして弾性シール部材29および検出部13が容器本体72の外側面に位置決めされ固定されている。
【0145】
この例では、補助流路77が上流側空間すなわちバッファ室として機能し、副貯留室76が下流側空間すなわちバッファ室として機能する。それ以外は上記第1実施例と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。そして、この実施例でも上記第1実施例と同様の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明が適用された液体検出装置を備えたインクカートリッジが使用されるインクジェット式記録装置の概略構成を示した斜視図である。
【図2】本発明が適用された液体検出装置の図3におけるA−A線に沿った断面図である。
【図3】上記液体検出装置の検出部を示す図であり、(a)は平面図、(b)は同底面図。
【図4】上記液体検出装置のバッファ部を示す図2におけるB−B断面図である。
【図5】上記液体検出装置を備えたインクカートリッジを示す図であり、(a)は側面図、(b)は同正面図。
【図6】上記インクカートリッジの液体検出装置の取り付け部分を示す拡大断面図である。
【図7】本発明の一実施形態による液体検出装置における駆動パルス波形および逆起電力波形を示す図であり、(a)はキャビティ内にインクが存在する場合の波形図、(b)はキャビティ内にインクが存在しない場合の波形図。
【図8】振動部の振動を近似してシュミレーションする等価回路の一例を示す図である。
【図9】本発明が適用されたインクカートリッジの第2実施例である。
【図10】従来の液体検出装置を示した図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線に沿った断面図、(c)は(a)のC−C線に沿った断面図。
【図11】図10に示した従来の液体検出装置を備えた従来のインクカートリッジの断面図。
【符号の説明】
【0147】
1:キャリッジ 2:キャリッジモータ 3:タイミングベルト 4:ガイド部材
5:プラテン 6:記録用紙 7:インクカートリッジ 10:ポンプユニット
11:ワイピング手段 12:記録ヘッド 13:検出部 14:バッファ部
15:供給側バッファ室 16:排出側バッファ室 17:圧電素子
18:流路形成板 19:インク供給路 20:インク排出路 21:仕切壁
22:流入開口 23:流出開口 26:開口 27:壁面 28:接着剤
29:弾性シール部材 30A:上部開口 30B:上部開口
31:キャップ部材 32:供給側連通口 33:排出側連通口
34:センサ固定部材 34A:縦片 34B:横片 35:付勢部材
36:把持部材 37:突起 38A:上流側連通開口 38B:下流側連通開口
40:振動キャビティ形成基部 40a:第1面 40b:第2面
41:キャビティ板 42:振動板 43:キャビティ 43a:底面部
43b:周縁 44:下部電極端子 45:上部電極端子 46:下部電極
46a:本体部 46b:延出部 46c:切欠き部 47:圧電層
47a:本体部 47b:突出部 48:補助電極 49:上部電極
49a:本体部 49b:延出部 60:液体検出装置 60A:液体検出装置
61:振動部 70:インクカートリッジ 70A:インクカートリッジ
71:インク送出口 72:容器本体 75:主貯留室 76:副貯留室
77:補助流路 77a:補助流路入口 106:アクチュエータ
160:圧電層 161:開口 162:キャビティ 164:上部電極
166:下部電極 168:上部電極端子 170:下部電極端子
172:補助電極 176:振動板 178:基板 180:インクカートリッジ
181:容器本体
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体検出装置および同装置を備えた液体容器に係わり、特に、液体噴射装置における液体残量の検出に適した液体検出装置の取付構造および液体容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の液体噴射装置の代表例としては、画像記録用のインクジェット式記録ヘッドを備えたインクジェット式記録装置がある。その他の液体噴射装置としては、例えば液晶ディスプレー等のカラーフィルタ製造に用いられる色材噴射ヘッドを備えた装置、有機ELディスプレー、面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッドを備えた装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドを備えた装置、精密ピペットとしての試料噴射ヘッドを備えた装置等が挙げられる。
【0003】
液体噴射装置の代表例であるインクジェット式記録装置においては、圧力発生室を加圧する圧力発生手段と、加圧されたインクをインク滴として射出するノズル開口と、を有するインクジェット記録ヘッドがキャリッジに搭載されている。
【0004】
インクジェット式記録装置では、インク容器内のインクが流路を介して記録ヘッドに供給され続けることにより、印刷を継続可能に構成されている。インク容器は、例えばインクが消費された時点でユーザが簡単に交換できる、着脱可能なカートリッジとして構成されている。
【0005】
従来、インクカートリッジのインク消費の管理方法としては、記録ヘッドでのインク滴の射出数やメンテナンスにより吸引されたインク量をソフトウエアにより積算してインク消費を計算により管理する方法や、インクカートリッジに液面検出用の電極を取付けることにより実際にインクが所定量消費された時点を管理する方法などがある。
【0006】
しかしながら、ソフトウェアによりインク滴の吐出数やインク量を積算してインク消費を計算上管理する方法には、次のような問題がある。ヘッドの中には吐出インク滴に重量バラツキを有するものがある。このインク滴の重量バラツキは画質には影響を与えないが、バラツキによるインク消費量の誤差が累積した場合を考慮して、マージンを持たせた量のインクをインクカートリッジに充填してある。従って、個体によってはマージン分だけインクが余るという問題が生ずる。
【0007】
一方、電極によりインクが消費された時点を管理する方法は、インクの実量を検出できるので、インク残量を高い信頼性で管理できる。しかしながら、インクの液面の検出をインクの導電性に頼ることになるので、検出可能なインクの種類が限定されてしまったり、電極のシール構造が複雑化してしまうという欠点がある。また、電極の材料としては、通常は導電性が良く耐腐食性も高い貴金属が使用されるので、インクカートリッジの製造コストがかさむ。さらに、2本の電極を装着する必要があるため、製造工程が多くなり、結果として製造コストがかさんでしまう。
【0008】
上記の課題を解決すべく開発された装置が、特開2001−146024号に圧電装置として開示されている。この圧電装置は、液体残量を正確に検出でき、かつ複雑なシール構造を不要としたものであり、液体容器に装着して使用することができる。
【0009】
即ち、特開2001−146024号に記載の圧電装置によれば、圧電装置の振動部に対向する空間にインクが存在する場合とインクが存在しない場合とで、駆動パルスにより強制的に振動させた後の圧電装置の振動部の残留振動(自由振動)に起因して発生する残留振動信号の共振周波数が変化することを利用して、インクカートリッジ内のインク残量を監視することができる。
【0010】
図10は、上述した従来の圧電装置を構成するアクチュエータを示している。このアクチュエータ106は、ほぼ中央に円形状の開口161を有する基板178と、開口161を被覆するように基板178の一方の面(以下、「表面」という。)に配置される振動板176と、振動板176の表面の側に配置される圧電層160と、圧電層160を両方からはさみこむ上部電極164および下部電極166と、上部電極164と電気的に結合する上部電極端子168と、下部電極166と電気的に結合する下部電極端子170と、上部電極164および上部電極端子168の間に配設され両者を電気的に結合する補助電極172と、を有する。
【0011】
圧電層160、上部電極164および下部電極166は、それぞれの本体部としての円形部分を有する。そして、圧電層160、上部電極164および下部電極166のそれぞれの円形部分が、圧電素子を形成している。
【0012】
振動板176は、基板178の表面に、開口161を覆うように形成される。振動板176のうち実際に振動する振動領域は、開口161によって決定される。キャビティ162は、開口161と面する振動板176の部分と基板(キャビティ形成部材)178の開口161とによって形成される。圧電素子とは反対側の基板178の面(以下、「裏面」という。)は、インク容器内方に面している。これにより、キャビティ162は液体(インク)と接触するように構成されている。なお、キャビティ162内に液体が入っても基板178の表面側に液体が漏れないように、振動板176は基板178に対して液密に取り付けられている。
【0013】
そして、上述した従来の技術におけるアクチュエータ106では、圧電素子に駆動パルスを印加して振動部を強制的に振動させた後に生じる振動部の残留振動(自由振動)が、同じ圧電素子によって逆起電力として検出される。そして、インク容器内の液面がアクチュエータ106の設置位置(厳密にはキャビティ162の位置)を通過する前後で振動部の残留振動状態が変化することを利用して、インク容器内のインク残量を検出することができる。
【特許文献1】特開2001−146024号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述した従来のアクチュエータ(圧電装置)106は、図11に示したようにインクカートリッジ180の容器本体181の容器壁に装着され、検出対象のインクを受け入れるキャビティ162をインクカートリッジ180内部のインク貯留空間に露出させるように構成されている。
【0015】
ところが、上述した従来のアクチュエータ(圧電装置)106においては、上記の如くインクカートリッジ180内部のインク貯留空間にキャビティ162を露出させるように構成されていたため、振動等によってインクカートリッジ180内部のインクが泡立つと、アクチュエータ106のキャビティ162内に気泡が容易に進入してしまう。このようにキャビティ162に気泡が進入してそこに滞留すると、インクカートリッジ180のインク残量が十分であるにもかかわらず、アクチュエータ106により検出される残留振動の共振周波数が速くなり、液面がアクチュエータ106の位置を通過してインク残量が少なくなったものと誤判定するという問題があった。
【0016】
また、上記アクチュエータ106では、インクカートリッジ180内部のインク貯留空間にキャビティ162を露出させるように構成されているため、アクチュエータ106の振動板176や圧電層160に対してインク貯留空間のインクの圧力が直接的に影響してしまうため、例えばオンキャリッジのインクカートリッジ180等においては、印字動作中のキャリッジの往復運動によってインク貯留空間内のインクが激しく振動し、この振動で発生したインクの圧力が直接的にアクチュエータ106に影響して誤判定するという問題があった。
【0017】
さらに、アクチュエータ106と面する位置にインクの振動や波を防ぐ防波壁等を形成することも検討されているが、アクチュエータ106周辺の空間構造が複雑になり、アクチュエータ106により検出される残留振動の振動モードもそれだけ複雑化し、センシングしにくくなって検出感度を鈍らせることになりかねない。
【0018】
また、液面の通過タイミングを精度良く検出するためにアクチュエータ106のキャビティ162の寸法を小さくすると、キャビティ162内にインクのメニスカスが形成されやすくなる。このため、インクの消費により液面がキャビティ162の位置を通過したにもかかわらず、キャビティ162の内部にインクが残留することにより、液面がアクチュエータ106の位置を通過しておらずインク残量が十分にあるものと誤判定するという問題があった。
【0019】
本発明は、上述した事情を考慮して成されたものであって、振動モードを単純にして検出感度を高めるとともに、液体から受ける振動の影響を低減することにより、液体の有無を確実に判定することができる液体検出装置の取付構造および液体容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するために、本発明による液体検出装置の取付構造は、互いに対向する第1面および第2面を有し、検出対象の媒体を受け入れるためのキャビティが、上記第1面側に開口するようにして形成され、上記キャビティの底面が振動可能に形成されている振動キャビティ形成基部と、
上記振動キャビティ形成基部の上記第2面側に形成された第1電極、上記第1電極に積層された圧電層、および上記圧電層に積層された第2電極を有する圧電素子と、
上記振動キャビティ形成基部の上記第1面側に積層され、上記キャビティに検出対象の液体を供給する液体供給路と、上記キャビティから検出対象の液体を排出する液体排出路とが形成された流路形成基部とを備えた検出装置と、
上記検出装置が取り付けられ、上記液体供給路に連通して液体供給路に供給される液体が存在する上流側空間と、上記液体排出路に連通して液体排出路から排出された液体が存在する下流側空間とを有する取付対象部材と、
上記検出装置と取付対象部材との間に介在し、上記液体供給路と上流側空間を連通させる供給側連通口と、上記液体排出路と下流側空間を連通させる排出側連通口とを有し、液体供給路と上流側空間との間および液体排出路と下流側空間との間をそれぞれシールする弾性シール部材とを備えたことを要旨とする。
【0021】
また、本発明の液体容器は、内部に貯留した液体を外部に送出する液体送出口を有する容器本体と、
上記容器本体に取り付けられて内部の液体を検出する検出装置とを備え、
上記検出装置は、互いに対向する第1面および第2面を有し、検出対象の媒体を受け入れるためのキャビティが、上記第1面側に開口するようにして形成され、上記キャビティの底面が振動可能に形成されている振動キャビティ形成基部と、
上記振動キャビティ形成基部の上記第2面側に形成された第1電極、上記第1電極に積層された圧電層、および上記圧電層に積層された第2電極を有する圧電素子と、
上記振動キャビティ形成基部の上記第1面側に積層され、上記キャビティに検出対象の液体を供給する液体供給路と、上記キャビティから検出対象の液体を排出する液体排出路とが形成された流路形成基部とを有して構成され、
上記容器本体は、上記液体供給路に連通して液体供給路に供給される液体が存在する上流側空間と、上記液体排出路に連通して液体排出路から排出された液体が存在する下流側空間とを有し、
上記検出装置と容器本体との間に介在し、上記液体供給路と上流側空間を連通させる供給側連通口と、上記液体排出路と下流側空間を連通させる排出側連通口とを有し、液体供給路と上流側空間との間および液体排出路と下流側空間との間をそれぞれシールする弾性シール部材をさらに備えていることを要旨とする。
【0022】
すなわち、本発明は、振動キャビティ形成基部の上記第1面側に積層され、上記キャビティに検出対象の液体を供給する液体供給路と、上記キャビティから検出対象の液体を排出する液体排出路とが形成された流路形成基部とを備えているため、キャビティへの液体の供給が液体供給路を介して行われ、キャビティからの液体の排出が液体排出路を介して行われるので、検出装置を検出対象とする液体の容器等に装着する際には、検出対象とする液体の収容空間に検出装置のキャビティを露出させることなく、液体供給路を介して液体をキャビティに供給することができる。
【0023】
このように、液体の消費時に検出装置の液体供給路および液体排出路の内部を液体が流れるように構成することによって、もし仮にキャビティの内部に気泡が進入したとしても、液体の流れによってキャビティ内から気泡が押し出される。これにより、キャビティ内に気泡が滞留することによる検出装置の誤検出を防止することができ、検出精度を向上させ、残量液体が減って産業廃棄物の減少にもつながる。
【0024】
また、キャビティを液体の収容空間に露出させる必要がないので、液面通過時にキャビティ内にメニスカスが形成されることを防止できる。これにより、キャビティ内での液体の残留による検出装置の誤検出を防止することができる。しかも、キャビティが液体の収容空間に向かって露出した空間ではなく、流路形成基部により上記収容空間から仕切られた空間となっているため、液面の変化や液体の有無等によって、キャビティ底面を強制振動させたときのキャビティ底面に残る残留振動の違いが大きくなり、検出感度が高くなって検出精度を高めることができ、誤検出を防止することができる。
【0025】
また、検出装置と取付対象部材との間に介在し、上記液体供給路と上流側空間を連通させる供給側連通口と、上記液体排出路と下流側空間を連通させる排出側連通口とを有し、液体供給路と上流側空間との間および液体排出路と下流側空間との間をそれぞれシールする弾性シール部材を備えているため、検出精度を確保できるとともに、製造工程も簡素化する。
【0026】
すなわち、例えば取付対象部材と検出装置との間を接着剤等でシールすると、液体供給路と上流側空間が形成する流路や液体排出路と下流側空間が形成する流路内に接着剤がはみ出しやすく、はみ出した接着剤に気泡が付着してとれにくくなり、キャビティ底面の残留振動に影響して検出精度に悪影響を与えるという問題があった。したがって、接着剤の流路へのはみ出しをなくすように管理しなければならないため、接着工程が極めて複雑化するという問題があった。
【0027】
これに対し、本発明では、液体供給路と上流側空間との間および液体排出路と下流側空間との間をそれぞれ弾性シール部材でシールすることから、上述した流路内への接着剤のはみ出しの問題が皆無になり、気泡の付着に起因する検出精度の低下や、接着剤のはみ出し管理を行うことによる工程の複雑化の問題が解消するのである。
【0028】
本発明において、上記検出装置の液体供給路の開口よりも弾性シール部材の供給側連通口の開口を大きくするとともに、上記検出装置の液体排出路の開口よりも弾性シール部材の排出側連通口の開口を大きくしている場合には、キャビティ底面の振動が液体を介して弾性シール部材自体に伝わるのを防止することができる。これにより、弾性シール部材に生じた振動がキャビティ底面の残留振動に影響することによる検出精度の低下を防止することができるのである。
【0029】
本発明において、弾性シール部材の供給側連通口の開口径が検出装置の液体供給路の開口径の2倍以上に設定されるとともに、弾性シール部材の排出側連通口の開口径が検出装置の液体排出路の開口径の2倍以上に設定されている場合には、キャビティ底面の振動が液体を介して弾性シール部材自体に伝わるのを有効に防止することができる。これにより、弾性シール部材に生じた振動がキャビティ底面の残留振動に影響することによる検出精度の低下を有効に防止することができるのである。
【0030】
本発明において、弾性シール部材の供給側連通口と液体検出装置の液体供給路とが同心状に配置されているとともに、弾性シール部材の排出側連通口と検出装置の液体排出路とが同心状に配置されている場合には、仮にキャビティ底面の振動が液体を介して弾性シール部材自体に多少伝わったとしても、供給側連通口と液体供給路および排出側連通口と液体排出路を同心状に配置することにより、弾性シール部材に生じる振動モードをより単純化することができ、弾性シール部材に生じた振動による検出精度の低下を最小に止めることができるのである。
【0031】
本発明において、上記液体供給路と液体排出路の開口が同じ大きさに設定されるとともに、供給側連通口と排出側連通口の開口が同じ大きさに設定されている場合には、キャビティ底面の振動が伝播する空間である液体供給路および液体排出路を含む空間の空間形状が単純化し、キャビティ底面に残る残留振動の振動モードも単純化する。このため、キャビティ底面を強制振動させたときの残留振動のシュミレーションも行いやすくなり、設計と実際との乖離が少なくなって、調整作業が少なくてすんだり、検出精度を向上させたりすることが可能となる。
【0032】
本発明において、上記液体供給路および供給側連通口と、上記液体排出路および排出側連通口とが、キャビティの中心に対して対称に形成されている場合には、キャビティ底面の振動が伝播する空間である液体供給路および液体排出路を含む空間の空間形状が単純化し、キャビティ底面に残る残留振動の振動モードも単純化する。このため、キャビティ底面を強制振動させたときの残留振動のシュミレーションも行いやすくなり、設計と実際との乖離が少なくなって、調整作業が少なくてすんだり、検出精度を向上させたりすることが可能となる。
【0033】
本発明において、上記検出装置を取付対象部材に向かって付勢することにより検出装置を取付対象部材に対して固定する付勢部材を備えている場合には、付勢部材の付勢力により検出装置が取付対象部材に対して確実に取り付けられるとともに、上記付勢力により弾性シール部材が圧縮されて変形し難くなり、キャビティ底面の振動が液体を介して弾性シール部材自体に多少伝わったとしても、弾性シール部材自体が振動しにくくなる。このため、弾性シール部材の振動による検出精度の低下を有効に防止できるのである。
【0034】
本発明において、上記弾性シール部材の外周に外嵌して弾性シール部材を周囲から把持する把持部材を備えている場合には、弾性シール部材は把持部材によって外周方向への変形が規制され、付勢部材の付勢力により弾性シール部材が圧縮されたときにより変形し難くなる。このため、キャビティ底面の振動が液体を介して弾性シール部材自体に多少伝わったとしても、弾性シール部材自体が振動しにくくなって、弾性シール部材の振動による検出精度の低下を有効に防止できるのである。
【0035】
本発明において、上記取付対象部材は、上流側空間として液体供給路に連通する供給側バッファ室を有するとともに、下流側空間として液体排出路に連通する排出側バッファ室を有するバッファ部材である場合には、キャビティに対して液体が出入する液体供給路および液体排出路が、それぞれ供給側バッファ室と排出側バッファ室に対して開口し、検出対象とする液体の貯留空間に対して直接開口するのではないため、液体の貯留空間において液体の振動等によって気泡が発生したとしても、気泡は供給側バッファ室や排出側バッファ室に一旦トラップされてキャビティに侵入しにくくなる。したがって、キャビティ内に気泡が滞留することによる検出装置の誤検出を防止することができる。
【0036】
また、キャビティに対して液体が出入する液体供給路および液体排出路が、液体の貯留空間に対して直接開口するのではなく、それぞれ供給側バッファ室と排出側バッファ室に対して開口しているため、液体の貯留空間に発生した液体の圧力が直接キャビティに作用しないため、液体の振動等による圧力の影響による検出装置の誤検出を防止することができる。
【0037】
本発明において、上記供給側バッファ室と排出側バッファ室は、上記キャビティの中心に対して対称に形成されている場合には、供給側バッファ室と排出側バッファ室とを対称とすることにより両バッファ室を構成する部材の形状が単純化し、製造が容易になるうえ、部材の小型化も可能となる。
【0038】
本発明において、上記供給側バッファ室および排出側バッファ室は、それぞれキャビティの容量の少なくとも10倍以上の容量を有するものである場合には、液体容器内の液体貯留空間に発生した液体の圧力変動が検出装置のセンサ特性にほとんど影響しなくなり、液体の振動等による圧力の影響による検出装置の誤検出を防止することができる。さらに、キャビティ底面の振動によって両バッファ室内の圧力が高まることがないため、余分な振動が発生しなくなり、キャビティ底面に残る残留振動の振動モードが単純化し、検出精度を向上させることが可能となる。
【0039】
本発明において、上記バッファ部材は内部に貯留した液体を外部に送出する液体送出口を有する容器本体に取り付けられ、上記供給側バッファ室は、上記容器本体の内部空間のうちの主要な部分を構成して液体を貯留する液体貯留室に連通し、上記排出側バッファ室は、上記容器本体の内部空間のうち内部に貯留した液体を上記液体送出口に連通する液体送出空間に連通している場合には、上記容器本体の液体貯留室に貯留された液体が、検出装置の上記供給側バッファ室の入口から流入して排出側バッファ室の出口から排出されて上記容器本体の液体送出口に送られるとともに、上記容器本体の上記液体送出口に送られる液体の全量が事前に上記検出装置の上記供給側バッファ室,キャビティおよび排出側バッファ室を通過するため、液体の消費を確実に検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の一実施形態による液体検出装置の取付構造について図面を参照して説明する。
【0041】
図1は、本発明が適用される液体検出装置とインクカートリッジが使用されるインクジェット式記録装置(液体噴射装置)の概略構成を示し、図1中符号1はキャリッジであり、このキャリッジ1はキャリッジモータ2により駆動されるタイミングベルト3を介し、ガイド部材4に案内されてプラテン5の軸方向に往復移動されるように構成されている。
【0042】
キャリッジ1の記録用紙6に対向する側にはインクジェット式記録ヘッド12が搭載され、またその上部には記録ヘッド12にインクを供給するインクカートリッジ7が着脱可能に装着されている。
【0043】
この記録装置の非印字領域であるホームポジション(図中、右側)にはキャップ部材31が配置されており、このキャップ部材31はキャリッジ1に搭載された記録ヘッドがホームポジションに移動した時に、記録ヘッドのノズル形成面に押し当てられてノズル形成面との間に密閉空間を形成するように構成されている。そして、キャップ部材31の下方には、キャップ部材31により形成された密閉空間に負圧を与えてクリーニング等を実施するためのポンプユニット10が配置されている。
【0044】
そして、キャップ部材31における印字領域側の近傍には、ゴムなどの弾性板を備えたワイピング手段11が記録ヘッドの移動軌跡に対して例えば水平方向に進退できるように配置されていて、キャリッジ1がキャップ部材31側に往復移動するに際して、必要に応じて記録ヘッドのノズル形成面を払拭することができるように構成されている。
【0045】
つぎに、本発明が適用された液体検出装置およびそれを備えたインクカートリッジについて説明する。
【0046】
図2は本発明が適用された液体検出装置60を示す断面図である。また、図3は上記液体検出装置60を構成する検出部(検出装置)13を示す図であり、図4は上記液体検出装置60を構成するバッファ部14および弾性シール部材29を示す図である。
【0047】
なお、この例では、本発明の検出装置に相当する検出部13と、本発明の取付対象部材に相当するバッファ部14とを含む図2に示す全体で液体検出装置60を構成し、この液体検出装置60を後述する容器本体72に取り付けてインクカートリッジ70を構成したものを説明している。
【0048】
この液体検出装置60は、キャビティ43を有する検出部13と、上記キャビティ43に連通する供給側バッファ室(上流側空間)15および排出側バッファ室(下流側空間)16を有するバッファ部(取付対象部材)14とを備えて構成されている。
【0049】
そして、上記バッファ部14の上面に、弾性シール部材29を介して検出部13が載置され、上記弾性シール部材29により検出部13とバッファ部14との間をシールするようになっている。また、上記検出部13は、上記バッファ部14の上面に形成された鉤状のセンサ固定部材34と付勢部材35により、バッファ部14上面に対して押し付け固定されている。
【0050】
上記検出部13は、キャビティ板41に振動板42を積層して構成されて、互いに対向する第1面40aおよび第2面40bを有した振動キャビティ形成基部40と、上記振動キャビティ形成基部40の第2面40b側に積層された圧電素子17と、上記振動キャビティ形成基部40の第1面40a側に積層された流路形成板(流路形成基部)18とを備えてなる。
【0051】
振動キャビティ形成基部40には、検出対象の媒体(インク)を受け入れるための円筒形の空間形状を呈するキャビティ43が、第1面40a側に開口するようにして形成されており、キャビティ43の底面部43aが振動板42にて振動可能に形成されている。換言すれば、振動板42全体のうちの実際に振動する部分は、キャビティ43によってその輪郭が規定されている。振動キャビティ形成基部40の第2面40b側の両端には、下部電極端子44および上部電極端子45が形成されている。
【0052】
振動キャビティ形成基部40の第2面40bには下部電極(第1電極)46が形成されており、この下部電極46は、略円形の本体部46aと、この本体部46aから下部電極端子44の方向に延出して下部電極端子44に接続された延出部46bとを有する。下部電極46の略円形の本体部46aの中心はキャビティ43の中心軸Cと一致している。
【0053】
下部電極46の略円形の本体部46aは、円形のキャビティ43よりも大径に形成され、キャビティ43に対応する領域の略全体を覆っている。また、この下部電極46の略円形の本体部46aは、キャビティ43の周縁43bに対応する位置よりも内側に入り込むようにして形成された切欠き部46cを含んでいる。
【0054】
下部電極46の上には圧電層47が積層されており、この圧電層47は、キャビティ43よりも小径に形成された円形の本体部47aと、キャビティ43に対応する領域の範囲内において本体部47aから突出した突出部47bとを有する。図2から分かるように、圧電層47はその全体がキャビティ43に対応する領域の範囲内に収まっている。換言すれば、圧電層47は、キャビティ43の周縁43bに対応する位置を横切って延在する部分をまったく有していない。
【0055】
圧電層47の本体部47aの中心はキャビティ43の中心軸Cと一致しており、圧電層47の本体部47aは、下部電極46の切欠き部46cに対応する部分を除いてその略全体が下部電極46に積層されている。
【0056】
振動キャビティ形成基部40の第2面40b側には補助電極48が形成されている。この補助電極48は、キャビティ43に対応する領域の外側から、キャビティ43の周縁43bに対応する位置を越えてキャビティ43に対応する領域の内部まで延在する。補助電極48の一部は、下部電極(第1電極)46の切欠き部46cの内部に位置して圧電層47の突出部47bおよびその近傍を振動キャビティ形成基部40の第2面40b側から支持している。この補助電極48は、好ましくは、下部電極46と同じ材質でかつ同じ厚さを有している。このように補助電極48によって圧電層47の突出部47bおよびその近傍を振動キャビティ形成基部40の第2面40b側から支持することによって、圧電層47に段差が生じないようにして機械的強度の低下を防止することができる。
【0057】
圧電層47には、上部電極(第2電極)49の円形の本体部49aが積層されており、この上部電極49は、圧電層47の本体部47aよりも小径に形成されている。また、上部電極49は、本体部49aから延出して補助電極48に接続された延出部49bを有している。図2から分かるように、上部電極49の延出部49bと補助電極48との接続が始まる位置Pは、キャビティ43に対応する領域の範囲内に位置している。
【0058】
下部電極46、圧電層47、および上部電極49のそれぞれの本体部によって圧電素子17が形成されている。
【0059】
図3から分かるように、上部電極49は補助電極48を介して上部電極端子45に電気的に接続されている。このように補助電極48を介して上部電極49を上部電極端子45に接続することによって、圧電層47および下部電極46の合計の厚さから生じる段差を、上部電極49と補助電極48との両方によって吸収することができる。このため、上部電極49に大きな段差が生じて機械的強度が低下することを防止することができる。
【0060】
上部電極49の本体部49aは円形を成しており、その中心はキャビティ43の中心軸Cと一致している。上部電極49の本体部49aは、圧電層47の本体部47aおよびキャビティ43のいずれよりも小径に形成されている。
【0061】
このように、圧電層47の本体部47aは、上部電極49の本体部49aと下部電極46の本体部46aとによって挟みこまれる構造となっている。これにより、圧電層47は効果的に変形駆動され得る。
【0062】
なお、圧電層47と電気的に接続された下部電極46の本体部46aおよび上部電極49の本体部49aのうち、上部電極49の本体部49aの方が小径に形成されている。従って、上部電極49の本体部49aが、圧電層47のうちで圧電効果を発生する部分の範囲を決定することになる。
【0063】
圧電層47の本体部47a、上部電極49の本体部49a、および下部電極46の本体部46aは、それらの中心がキャビティ43の中心軸Cと一致している。また、振動板42の振動可能な部分を決定する円筒形状のキャビティ43の中心軸Cは、液体検出装置60の全体の中心に位置している。
【0064】
キャビティ43によって規定される振動板42の振動可能な部分、下部電極46の本体部46aのうちのキャビティ43に対応する部分、圧電層47の本体部47aおよび突出部47b、並びに上部電極49の本体部49aおよび延出部49bのキャビティ43に対応する部分は、液体検出装置60の振動部61を構成する。そして、この液体検出装置60の振動部61の中心は、液体検出装置60の中心と一致する。
【0065】
さらに、圧電層47の本体部47a、上部電極49の本体部49a、下部電極46の本体部46a、および振動板42の振動可能な部分(即ちキャビティ43の底面部43aに対応する部分)が円形形状を有しており、しかも、圧電層47の全体、即ち圧電層47の本体部47aおよび突出部47bがキャビティ43に対応する領域の内部に配置されているので、液体検出装置60の振動部61は液体検出装置60の中心に対して略対称な形状である。
【0066】
さらに、本実施例による液体検出装置60は、振動キャビティ形成基部40の第1面40aに積層され接合された流路形成板(流路形成基部)18を備えている。
【0067】
上記流路形成板18には、キャビティ43に検出対象のインクを供給するインク供給路(液体供給路)19と、キャビティ43から検出対象のインクを排出するインク排出路(液体排出路)20とが形成されている。インク供給路19とインク排出路20は、同じ大きさ形状に形成され、いずれも円筒形の空間形状を呈している。
【0068】
上記流路形成板18に形成されたインク供給路19とインク排出路20は、いずれも上記円形のキャビティ43に対応する領域内に形成されており、かつインク供給路19とインク排出路20はキャビティ43の中心軸Cに対して対称に配置されている。これにより、上記キャビティ43,インク供給路19およびインク排出路20を含んで形成される空間は、インク供給路19とインク排出路20に挟まれた領域に存在するキャビティの中心軸Cに対して対称に形成されている。
【0069】
また、上記インク供給路19およびインク排出路20は、それぞれキャビティ43に対して流路面積が絞られている。すなわち、この例では、1つのキャビティ43に対してインク供給路19とインク排出路20が1つずつ形成されているが、一方の流路(インク供給路19またはインク排出路20)の流路面積は、キャビティ43の面積の少なくとも半分より小さくなるように設定されている。また、上記インク供給路19およびインク排出路20は、内部に液体の流体的質量が存在するよう、ある程度の長さが設定されている。
【0070】
一方、上記液体検出装置60は、上記インク供給路19に連通してインク供給路19に供給されるインクが存在する供給側バッファ室15と、上記インク排出路20に連通してインク排出路20から排出されたインクが存在する排出側バッファ室16とを有するバッファ部14を備えている。
【0071】
上記バッファ部14は、この例では平面視で上記液体検出装置60よりも一回り大きな長方形を呈し、全体として直方体状に形成されている。上記バッファ部14の内部は、中央部に配置された1枚の仕切壁21により同じ大きさ形状の2つの空間に2分されており、一方が供給側バッファ室15に、他方が排出側バッファ室16になっている。
【0072】
上記バッファ部14の検出部13が接合される面と反対側の部分には、供給側バッファ室15にインクを流入させる流入開口22と、排出側バッファ室16のインクを流出させる流出開口23とが形成されている。また、上記バッファ部14の検出部13が取付られる面には、供給側バッファ室15に流入したインクをインク供給路19を介してキャビティ43に供給するための上部開口30Aと、キャビティ43のインクをインク排出路20を介して供給側バッファ室15に流出させるための上部開口30Bとが形成されている。
【0073】
そして、上記検出部13とバッファ部14との間には、上記インク供給路19と供給側バッファ室15を連通させる供給側連通口32と、上記インク排出路20と排出側バッファ室16を連通させる排出側連通口33とを有し、インク供給路19と供給側バッファ室15との間およびインク排出路20と排出側バッファ室16との間をそれぞれシールする弾性シール部材29が介在している。
【0074】
上記弾性シール部材29の材質としては、ゴム、エラストマー等の弾性部材を用いることができるが、特に好適なのは、ポリマーを三次元網目構造としてオイルを配合し、適度な硬度・ロス特性・バネ定数に設定した防振用の弾性部材(Micro Network Controlled Structure)を好適に用いることができる。
【0075】
また、上記弾性シール部材29は、全体として検出部13よりもやや大きく、バッファ部14よりもやや小さく設定された長方形の板状に形成されている。さらに、上記弾性シール部材29の外周部には、断面四角形で四角枠状に形成されて弾性シール部材29を周囲から把持する合成樹脂製の把持部材36が外嵌している。そして、上記把持部材36は、その高さが弾性シール部材29の厚みと略同じに設定され、左右端がバッファ部14左右のセンサ固定部材34に当接することにより、弾性シール部材29をバッファ部14上面の所定位置に位置決めしている。
【0076】
一方、上記バッファ部14上面の左右端辺部には、それぞれ上方に延びて先端が内側に鉤状に屈曲形成されたセンサ固定部材34が形成されている。このセンサ固定部材34は、図2における上下方向に延びる板状の縦片34Aがバッファ部14の上面左右に立設しており、上記縦片34Aの先端から内側に向かって板状の横片34Bが鉤状に屈曲形成されている。
【0077】
上記センサ固定部材34の横片34Bの下面、および検出部13の下部電極端子44と上部電極端子45の上面には、付勢部材35を位置決めする位置決め用の突起37が形成されている。そして、上記付勢部材35は、略横向きU字状の板ばねであり、横向きU字状の自由端近傍には上記突起に嵌合する嵌合孔(図示せず)が形成されている。
【0078】
このような構造により、バッファ部14の上面に把持部材36が外嵌した弾性シール部材29を載置してその上に検出部13を載置し、横向きU字状の付勢部材35を圧縮しながらセンサ固定部材34の横片34Bと検出部13上面との間に押し込んで、付勢部材35の嵌合孔をセンサ固定部材34の横片34Bと検出部13上面の突起に嵌合させることにより、検出部13が弾性シール部材29上で適切な位置に位置決めされるとともに、付勢部材35の付勢力により検出部13がバッファ部14に向かって付勢され、バッファ部14上面に押し付けられ固定される。この押し付け力により、弾性シール部材29によるインク供給路19と供給側バッファ室15との間およびインク排出路20と排出側バッファ室16との間とのシール性が保たれる。
【0079】
この状態で、上記弾性シール部材29の供給側連通口32および排出側連通口33は、それぞれバッファ部14の上部開口30A,30B上に配置される。また、検出部13のインク供給路19とインク排出路20は、それぞれ弾性シール部材29の供給側連通口32と排出側連通口33上に配置される。
【0080】
このような構成により、上記検出対象となるカートリッジ内部のインクは、流入開口22から供給側バッファ室15に流入して上部開口30A、供給側連通口32およびインク供給路19を介してキャビティ43に供給される。そして、キャビティ43に供給されたインクは、上記インク排出路20、排出側連通口33および上部開口30Bを介して排出側バッファ室16に排出され、さらに排出側バッファ室16から流出開口23を介して排出される。
【0081】
そして、上記インク供給路19とインク排出路20は、上述したように円筒状で同じ大きさ形状に形成されるとともに、上記供給側連通口32および排出側連通口33も、この例では実質的に円形に開口した空間に形成されており、同じ大きさ形状に形成されている。
【0082】
また、上記検出部13のインク供給路19の開口よりも弾性シール部材29の供給側連通口32の開口が大きくなるよう設定されており、同様に、上記検出部13のインク排出路20の開口よりも弾性シール部材29の排出側連通口33の開口が大きくなるように設定されている。ここで、検出部のインク供給路19およびインク排出路20の開口径D1,D3と、弾性シール部材29の供給側連通口32および排出側連通口33の開口径D2,D4との比率は、適宜に設定することができるが、弾性シール部材29の供給側連通口32の開口径D2を検出部13のインク供給路19の開口径D1の2倍以上に設定し、同様に、弾性シール部材29の排出側連通口33の開口径D4を検出部13のインク排出路20の開口径D3の2倍以上になるよう設定するのが好ましい。
【0083】
さらに、この例では、弾性シール部材29の供給側連通口32と検出部13のインク供給路19とが同心状に配置され、弾性シール部材29の排出側連通口33と検出部13のインク排出路20とが同心状に配置されている。そして、上記インク供給路19および供給側連通口32、上記インク排出路20および排出側連通口33およびキャビティ43によって形成される空間が、キャビティ43の中心軸Cに対して対称に形成されている。
【0084】
さらにこの例では、上記液体検出装置60の供給側バッファ室15および上部開口30Aと、排出側バッファ室16および上部開口30Bとは、上記キャビティ43の中心軸Cに対して対称に形成されている。さらに言い換えると、キャビティ43、インク供給路19、インク排出路20、供給側連通口32、排出側連通口33、上部空間30A、30B供給側バッファ室15、排出側バッファ室16によって形成される空間が、上記キャビティ43の中心軸Cに対して対称に形成されている。
【0085】
また、上記液体検出装置60の上記供給側バッファ室15および排出側バッファ室16の容量は、それぞれキャビティ43の容量の少なくとも10倍以上の容量を有するように設定されている。
【0086】
上記液体検出装置60に含まれる部材、特にキャビティ板41、振動板42、流路形成板18は、同一材質で形成されるとともに互いに焼成されることによって一体的に形成されている。このように複数の基板を焼成して一体化することによって、液体検出装置60の取り扱いが容易になる。また、各部材を同一材質で形成することによって、線膨張係数の違いによるクラックの発生を防止することができる。
【0087】
圧電層47の材料としては、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン(PLZT)、または、鉛を使用しない鉛レス圧電膜、を用いることが好ましい。キャビティ板41の材料としては、ジルコニアまたはアルミナを用いることが好ましい。また、振動板42には、キャビティ板41と同じ材料を用いることが好ましい。上部電極49、下部電極46、上部電極端子45および下部電極端子44は、導電性を有する材料、例えば、金、銀、銅、プラチナ、アルミニウム、ニッケルなどの金属を用いることができる。
【0088】
図5は上記液体検出装置を備えた本発明のインクカートリッジを示す図であり、図6はインクカートリッジに対する液体検出装置の取り付け部分の一例を示す図である。
【0089】
図5は、上述した液体検出装置60が装着されたインクカートリッジ(液体容器)70を示しており、このインクカートリッジ70は、内部に貯留したインクを外部に送出するインク送出口(液体送出口)71を有する容器本体72を備えている。
【0090】
図6に示すように、液体検出装置60はその全体が容器本体72に装着されており、容器本体72の壁面27に形成された長方形状の開口26に、バッファ部14が接着剤28等によって液密状に取り付けられている。このとき、液体検出装置60の検出部13が容器本体72の外側に配置され、バッファ部14の流入開口22および流出開口23が容器本体72の内側に開口するよう配置されている。
【0091】
そして、容器本体72の内部は(図5に戻る)、容器本体72の内部空間全体のうちの主要な部分を構成してインクを貯留する主貯留室(液体貯留室)75と、この主貯留室75よりも小さな容積を有する副貯留室(液体送出空間)76とに区画されており、主貯留室75と副貯留室76とは互いに分離されている。副貯留室76は、インク消費時のインクの流れ方向において主貯留室75よりもインク送出口71に近い側に位置している。
【0092】
上記液体検出装置60の流入開口22は上記主貯留室75に連通する位置に開口し、流出開口23は上記液体送出空間である副貯留室76に開口するよう配置されている。これにより、上記供給側バッファ室15は、上記容器本体72の内部空間のうちの主要な部分を構成して液体を貯留する主貯留室75に連通し、上記排出側バッファ室16は、上記容器本体72の内部空間のうち内部に貯留した液体を外部に送出するインク送出口71に連通する液体送出空間に連通するようになっている。
【0093】
主貯留室75の内部には、密閉された補助流路77が形成されており、この補助流路77の下端側には補助流路入口77aが形成されている。補助流路入口77aは、主貯留室75の内部の下端に位置している。また、補助流路77の上端部に、液体検出装置60の流入開口22が連通しており、この流入開口22が補助流路77の出口を構成している。
【0094】
上述したように、液体検出装置60の流入開口22が補助流路77を介して主貯留室75に連通し、流出開口23が副貯留室76を介してインク送出口71に連通している。これにより、主貯留室75に貯留されたインクは、補助流路77を経て流入開口22から供給側バッファ室15に流入して上部開口30A、供給側連通口32およびインク供給路19を介してキャビティ43に供給される。そして、キャビティ43に供給されたインクは、上記インク排出路20、排出側連通口33および上部開口30Bを介して排出側バッファ室16に排出され、さらに排出側バッファ室16から流出開口23、副貯留室76を経てインク送出口71から排出され、記録ヘッド12に供給される。
【0095】
このように本実施例においては、副貯留室76を通ってインク送出口71に送られるインクの全量が、事前に液体検出装置60のインク供給路19およびインク排出路20を通過するように構成されている。
【0096】
つぎに、上記液体容器において液体を検出する動作について説明する。
【0097】
上述した液体検出装置60を備えたインクカートリッジ70においては、容器本体72にインクが十分に残っており、副貯留室76の内部がインクで満たされている場合には、キャビティ43内はインクによって満たされている。一方、インクカートリッジ7の容器本体72内の液体が消費され、主貯留室75内のインクがなくなると、副貯留室76内の液面が低下し、液体検出装置60のキャビティ43の位置よりも下方まで液面が降下すると、キャビティ43内にインクが存在しない状態となる。
【0098】
そこで、液体検出装置60は、この状態の変化に起因する音響インピーダンスの相違を検出する。それによって、液体検出装置60は、容器本体72にインクが十分に残っている状態であるか、あるいは、ある一定以上のインクが消費された状態であるか、を検知することができる。
【0099】
より具体的には、液体検出装置60において、上部電極端子45および下部電極端子44を介して上部電極49と下部電極46との間に電圧を印加する。すると、圧電層47のうち、上部電極49および下部電極46に挟まれた部分に電界が生じる。この電界によって圧電層47が変形する。圧電層47が変形することによって、振動板42のうちの振動領域(キャビティ43の底面部43aに対応する領域)に、たわみ振動が生じる。このようにして圧電層47を強制的に変形させた後、電圧の印加を解除すると、しばらくは、たわみ振動が液体検出装置60の振動部61に残留する。
【0100】
この残留振動は、液体検出装置60の振動部61とキャビティ43内の媒体との自由振動である。従って、圧電層47に印加する電圧をパルス波形あるいは矩形波とすることで、電圧を印加した後の振動部61と媒体との共振状態を容易に得ることができる。この残留振動は、液体検出装置60の振動部61の振動であり、圧電層47の変形を伴う。このため、残留振動に伴って圧電層47は逆起電力を発生する。この逆起電力は、上部電極49、下部電極46、上部電極端子45および下部電極端子44を介して検出される。このようにして検出された逆起電力によって共振周波数が特定できるので、この共振周波数に基づいてインクカートリッジ7の容器本体72内のインクの有無を検出することができる。
【0101】
図7(a)、(b)は、液体検出装置60に駆動信号を供給して振動部61を強制的に振動させた場合における、液体検出装置60の振動部61の残留振動(自由振動)の波形と残留振動の測定方法とを示している。図7(a)は、液体検出装置60のキャビティ43内にインクがあるときの波形であり、一方、図7(b)は液体検出装置60のキャビティ43内にインクがないときの波形である。
【0102】
図7(a)、(b)において、縦軸は液体検出装置60に加えられる駆動パルスおよび液体検出装置60の振動部61の残留振動によって発生した逆起電力の電圧を示し、横軸は経過時間を示す。液体検出装置60の振動部61の残留振動によって、電圧のアナログ信号の波形が発生する。次に、アナログ信号を、信号の周波数に対応するデジタル数値に変換(二値化)する。図7に示した例においては、アナログ信号の4パルス目から8パルス目までの4個のパルスが生じる時間を計測している。
【0103】
より詳細には、液体検出装置60に駆動パルスを印加して振動部61を強制的に振動させた後、残留振動による電圧波形が、予め設定された所定の基準電圧を低電圧側から高電圧側へ横切る回数をカウントする。そして、4カウントから8カウントまでの間をHighとしたデジタル信号を生成し、所定のクロックパルスによって4カウントから8カウントまでの時間を計測する。
【0104】
図7(a)と図7(b)とを比較すると、図7(a)の方が図7(b)よりも4カウントから8カウントまでの時間が長いことがわかる。換言すると、液体検出装置60のキャビティ43におけるインクの有無によって4カウントから8カウントまでの所要時間が異なる。この所要時間の相違を利用して、インクの消費状態を検出することができる。
【0105】
アナログ波形の4カウント目から数えるのは、液体検出装置60の残留振動(自由振動)が安定してから計測をはじめるためである。4カウント目からとしたのは単なる一例であって、任意のカウントから数えてもよい。ここでは、4カウント目から8カウント目までの信号を検出し、所定のクロックパルスによって4カウント目から8カウント目までの時間を測定している。この時間に基いて、共振周波数を求めることができる。クロックパルスは、8カウント目までの時間を測定する必要は無く、任意のカウントまで数えてもよい。
【0106】
図7においては、4カウント目から8カウント目までの時間を測定しているが、周波数を検出する回路構成にしたがって、異なったカウント間隔内の時間を検出してもよい。例えば、インクの品質が安定していてピークの振幅の変動が小さい場合には、検出の速度を上げるために4カウント目から6カウント目までの時間を検出することにより共振周波数を求めてもよい。また、インクの品質が不安定でパルスの振幅の変動が大きい場合には、残留振動を正確に検出するために4カウント目から12カウント目までの時間を検出してもよい。
【0107】
このように本実施例による液体検出装置60においては、液体検出装置60の装着位置レベル(厳密にはキャビティ43の位置)を液面が通過したか否かについて、液体検出装置60の振動部61を強制的に振動させた後の残留振動の周波数の変化や振幅の変化によって検出することができる。
【0108】
図8は、上記のような液体検出装置60の振動部61の振動を近似してシュミレーションしうる等価回路図である。
【0109】
この図では、振動部61(Sensor Chip)のイナータンス(Mc)、インク供給路19およびインク排出路20(Hole)のイナータンス(Ms1,Ms2)をコイルで、振動部61(Sensor Chip)のコンプライアンス(Cc)、インクのコンプライアンス(Ci)をコンデンサで、インク供給路19およびインク排出路20(Hole)の抵抗(Rs1,Rs2)を抵抗で、インク供給路19およびインク排出路20が連通する供給側バッファ室15および排出側バッファ室16をグランドで、それぞれ表している。
【0110】
そして、振動部61のコンプライアンス(Cc)は構造有限要素法で求める。また、振動部61のイナータンス(Mc)は、イナータンスとコンプライアンスの直列系で近似し、つぎの近似式で近似値を計算できる。
Mc=1/(4π2)×1/(f2)×1/Cc
ここで、fは振動部61の固有周期であり、構造有限要素法もしくは実測で求めることができる。
【0111】
また、インクのコンプライアンス(Ci)は、下記の式で求めることができる。
Ci=C×Vi
ここで、Cはインクの圧縮率、Viはインクの体積である。水の圧縮率は4.5e−10/Paである。
【0112】
また、インク供給路19,インク排出路20(Hole)のイナータンス(Ms)は、流体有限要素法で求めるか、もしくは流路(Hole)が円筒の場合は下記の簡易式で求めることができる。
Ms=ρ×L/π/r2
ここで、ρはインクの粘度、Lは流路(Hole)の長さ、rは流路(Hole)の半径である。
【0113】
上記のようにして求めた値を使用し、図8の等価回路で近似して振動部61の振動をシュミレーションすることができる。
【0114】
このような等価回路で振動部61の振動をシュミレーションした結果、Ms1とMs2、Rs1とRs2はそれぞれ略等しいほうが振動がシンプルで余計な振動モードが発生しないことがわかる。したがって、本発明では、キャビティ43とインク供給路19,インク排出路20で形成される空間をキャビティ43の中心軸Cに対して対称に形成したのである。
【0115】
また、供給側バッファ室15および排出側バッファ室16がバッファとして機能する要件は、振動部61の振動によって各バッファ室15,16内の圧力がほとんど高くならないようにするために、バッファ室15,16のコンプライアンスを振動部61のコンプライアンス(Cc)の10倍以上とするのが好ましい。また、余計な振動を発生させないために、バッファ室15,16のイナータンスを流路(Hole)のイナータンス(Ms)の1/10以下とするのが好ましい。
【0116】
以上に述べたように、本実施例による液体検出装置60およびインクカートリッジ70によれば、上記キャビティ43にインクを供給するインク供給路19と、上記キャビティ43からインクを排出するインク排出路20とが形成された振動キャビティ形成基部40を備えているため、キャビティ43へのインクの供給がインク供給路19を介して行われ、キャビティ43からのインクの排出がインク排出路20を介して行われるので、液体検出装置60をインクカートリッジ70等に装着する際には、インクの収容空間に液体検出装置のキャビティ43を直接露出させることなく、インク供給路19を介してインクをキャビティ43に供給することができる。
【0117】
このように、インクの消費時に液体検出装置60のインク供給路19およびインク排出路20の内部をインクが流れるように構成することによって、もし仮にキャビティ43の内部に気泡が進入したとしても、インクの流れによってキャビティ43内から気泡が押し出される。これにより、キャビティ43内に気泡が滞留することによる液体検出装置60の誤検出を防止することができる。このように、液体の消費時に検出装置の液体供給路および液体排出路の内部を液体が流れるように構成することによって、もし仮にキャビティの内部に気泡が進入したとしても、液体の流れによってキャビティ内から気泡が押し出される。このように、液体検出装置60の検出精度を向上させ、残量液体が減って産業廃棄物の減少にもつながる。
【0118】
また、キャビティ43をインクの収容空間に露出させる必要がないので、液面通過時にキャビティ43内にメニスカスが形成されることを防止できる。これにより、キャビティ43内でのインクの残留による液体検出装置60の誤検出を防止することができる。しかも、キャビティ43がインクの収容空間に向かって露出した空間ではなく、流路形成板18により上記収容空間から仕切られた空間となっているため、インク液面の変化やインクの有無等によって、振動部61を強制振動させたときの振動部61に残る残留振動の違いが大きくなり、検出感度が高くなって検出精度を高めることができ、誤検出を防止することができる。
【0119】
また、検出部13とバッファ部14との間に介在し、上記インク供給路19と供給側バッファ室15を連通させる供給側連通口32と、上記インク排出路20と排出側バッファ室16を連通させる排出側連通口33とを有し、インク供給路19と供給側バッファ室15との間およびインク排出路20と排出側バッファ室16との間をそれぞれシールする弾性シール部材29を備えているため、検出精度を確保できるとともに、製造工程も簡素化する。
【0120】
すなわち、例えばバッファ部14と検出部13との間を接着剤等でシールすると、インク供給路19と供給側バッファ室15が形成する流路やインク排出路20と排出側バッファ室16が形成する流路内に接着剤がはみ出しやすく、はみ出した接着剤に気泡が付着してとれにくくなり、キャビティ43の振動部61の残留振動に影響して検出精度に悪影響を与えるという問題があった。したがって、接着剤の流路へのはみ出しをなくすように管理しなければならないため、接着工程が極めて複雑化するという問題があった。
【0121】
これに対し、本実施例では、インク供給路19と供給側バッファ室15との間およびインク排出路20と排出側バッファ室16との間をそれぞれ弾性シール部材29でシールすることから、上述した流路内への接着剤のはみ出しの問題が皆無になり、気泡の付着に起因する検出精度の低下や、接着剤のはみ出し管理を行うことによる工程の複雑化の問題が解消するのである。
【0122】
また、本実施例では、上記検出部13のインク供給路19の開口よりも弾性シール部材29の供給側連通口32の開口を大きくするとともに、上記検出部13のインク排出路20の開口よりも弾性シール部材29の排出側連通口33の開口を大きくしている。具体的には、弾性シール部材29の供給側連通口32の開口径D2が検出部13のインク供給路19の開口径D1の2倍以上に設定されるとともに、弾性シール部材29の排出側連通口33の開口径D4が検出部13のインク排出路20の開口径D3の2倍以上に設定されている。このため、キャビティ43底面の振動が液体を介して弾性シール部材29自体に伝わるのを有効に防止することができる。これにより、弾性シール部材29に生じた振動がキャビティ43底面の残留振動に影響することによる検出精度の低下を有効に防止することができるのである。
【0123】
さらに、本実施例では、弾性シール部材29の供給側連通口32と検出部13のインク供給路19とが同心状に配置されているとともに、弾性シール部材29の排出側連通口33と検出部13のインク排出路20とが同心状に配置されているため、仮にキャビティ43底面の振動がインクを介して弾性シール部材29自体に多少伝わったとしても、供給側連通口32とインク供給路19および排出側連通口33とインク排出路20を同心状に配置することにより、弾性シール部材29に生じる振動モードをより単純化することができ、弾性シール部材29に生じた振動による検出精度の低下を最小に止めることができるのである。
【0124】
また、本実施例では、上記インク供給路19とインク排出路20の開口が同じ大きさ形状に設定されるとともに、供給側連通口32と排出側連通口33の開口が同じ大きさ形状に設定されている。そして、上記インク供給路19および供給側連通口32と、上記インク排出路20および排出側連通口33とが、キャビティ43の中心軸Cに対して対称に形成されている。このため、キャビティ43底面の振動が伝播する空間であるインク供給路19および供給側連通口32、インク排出路20および排出側連通口33、ならびにキャビティ43によって形成される空間の空間形状が単純化し、キャビティ43底面に残る残留振動の振動モードも単純化する。このため、キャビティ底面を強制振動させたときの残留振動のシュミレーションも行いやすくなり、設計と実際との乖離が少なくなって、調整作業が少なくてすんだり、検出精度を向上させたりすることが可能となる。
【0125】
また、上記キャビティ43を形成する空間は実質的に円筒形であるため、キャビティ43底面の振動が伝播する空間であるキャビティ43の空間形状がより単純化し、キャビティ43底面に残る残留振動の振動モードも単純化する。そして、キャビティ43底面を強制振動させたときの残留振動のシュミレーションも極めて行いやすくなり、設計と実際との乖離が少なくなって、調整作業が少なくて済み、検出精度を向上させることが可能となる。
【0126】
さらに、上記インク供給路19およびインク排出路20は、それぞれキャビティ43に対して流路面積が絞られるとともに、内部にインクの流体的質量が存在するよう長さが設定されているため、インク供給路19およびインク排出路20に適当な流路抵抗が生じるため、キャビティ43底面の振動によって発生するキャビティ43内の圧力変動が両バッファ室15,16に拡散されてしまうのを防止し、適切な残留振動を発生させて検出精度を向上し確保することが可能となる。
【0127】
また、本実施例では、上記検出部13をバッファ部14に向かって付勢することにより検出部13をバッファ部14に対して固定する付勢部材35を備えているため、付勢部材35の付勢力により検出部13がバッファ部14に対して確実に取り付けられるとともに、上記付勢力により弾性シール部材29が圧縮されて変形し難くなり、キャビティ43底面の振動が液体を介して弾性シール部材29自体に多少伝わったとしても、弾性シール部材29自体が振動しにくくなる。さらに、上記弾性シール部材29の外周に外嵌して弾性シール部材29を周囲から把持する把持部材36を備えているため、弾性シール部材29は把持部材36によって外周方向への変形が規制され、付勢部材35の付勢力により弾性シール部材29が圧縮されたときにより変形し難くなる。このため、キャビティ43底面の振動が液体を介して弾性シール部材自体に多少伝わったとしても、弾性シール部材自体が振動しにくくなって、弾性シール部材の振動による検出精度の低下を有効に防止できるのである。
【0128】
また、本実施例では、取付対象部材が、上流側空間としてインク供給路19に連通する供給側バッファ室15を有するとともに、下流側空間としてインク排出路20に連通する排出側バッファ室16を有するバッファ部14であるため、キャビティ43に対してインクが出入するインク供給路19およびインク排出路20が、それぞれ供給側バッファ室15と排出側バッファ室16に対して開口し、容器本体72のインク貯留空間に対して直接開口するのではないため、インク貯留空間においてインクの振動等によって気泡が発生したとしても、気泡は供給側バッファ室15や排出側バッファ室16に一旦トラップされてキャビティ43に侵入しにくくなる。したがって、キャビティ43内に気泡が滞留することによる液体検出装置60の誤検出を防止することができる。また、液体検出装置60をインクカートリッジ70の底部近傍に配置しているため、より気泡の侵入を防止する効果が高くなる。
【0129】
また、キャビティ43に対してインクが出入するインク供給路19およびインク排出路20が、容器本体72のインク貯留空間に対して直接開口するのではなく、それぞれ供給側バッファ室15と排出側バッファ室16に対して開口しているため、インクカートリッジ70内のインク貯留空間に発生したインクの圧力が直接キャビティ43に作用しないため、インクの振動等による圧力の影響による液体検出装置60の誤検出を防止することができる。
【0130】
さらに、上記液体検出装置60の供給側バッファ室15と排出側バッファ室16は、上記キャビティ43の中心軸Cに対して対称に形成されているため、供給側バッファ室15と排出側バッファ室16とを対称とすることにより両バッファ室15,16を構成する部材の形状が単純化し、製造が容易になるうえ、部材の小型化も可能となる。
【0131】
しかも、上記液体検出装置60の上記供給側バッファ室15および排出側バッファ室16は、それぞれキャビティ43の容量の少なくとも10倍以上の容量を有するものとすることにより、インクカートリッジ70内のインク貯留空間に発生したインクの圧力変動が液体検出装置60のセンサ特性にほとんど影響しなくなり、インクの振動等による圧力の影響による液体検出装置60の誤検出を防止することができる。さらに、キャビティ43底面の振動によって両バッファ室15,16内の圧力が高まることがないため、余分な振動が発生しなくなり、キャビティ43底面に残る残留振動の振動モードが単純化し、検出精度を向上させることが可能となる。
【0132】
さらに、上記バッファ部14は内部に貯留したインクを外部に送出するインク送出口71を有する容器本体72に取り付けられ、上記供給側バッファ室15は、上記容器本体72の内部空間のうちの主要な部分を構成してインクを貯留する主貯留室75に連通し、上記排出側バッファ室16は、上記容器本体72の内部空間のうち内部に貯留したインクを外部に送出するインク送出口71に連通する液体送出空間である副貯留室76に連通しているため、上記容器本体72の主貯留室75に貯留されたインクが、液体検出装置60の上記供給側バッファ室15の入口から流入して排出側バッファ室16の出口から排出されて上記容器本体72のインク送出口71に送られるとともに、上記容器本体72の上記インク送出口71に送られるインクの全量が事前に上記液体検出装置60の上記供給側バッファ室15,キャビティ43および排出側バッファ室16を通過するため、インクの消費を確実に検知することができる。
【0133】
また、上記液体検出装置60によれば、インク排出路20がキャビティ43に対応する領域に合わせて形成されているので、キャビティ43内に進入した気泡を確実に排出することができる。
【0134】
また、上記インクカートリッジ70では、容器本体72の内部を、互いに分離された主貯留室75と副貯留室76とに区画すると共に、液体検出装置60の流入開口22および流出開口23を介して主貯留室75と副貯留室76とを連絡し、液体検出装置60のキャビティ43を副貯留室76の上端部に配置するようにした。
【0135】
このため、主貯留室75内のインクが無くなった時点を液体検出装置60によって確実に検出することができるので、ユーザーにインクエンドが近づいていることを報知できる。さらに、予め分かっている副貯留室76内のインク量に基づいて、残存インクでの印刷可能枚数等をユーザーに知らせることが可能であり、1ページの途中でインクが無くなって印刷用紙を無駄にしてしまうようなことを防止できる。
【0136】
また、上記インクカートリッジ70によれば、密閉された補助流路77を主貯留室75の内部に形成し、補助流路77の補助流路入口77aを主貯留室75の下端に位置させると共に、補助流路77の上端部に液体検出装置60の流入開口22を連通させるようにした。このため、主貯留室75内で発生した気泡は補助流路77の内部に進入し難く、液体検出装置60のキャビティ43への気泡の進入を防止することができる。
【0137】
さらに、上記インクカートリッジ70によれば、主貯留室75内のインクがすべて消費されるまで、副貯留室76の内部はインクで満たされた状態にあるので、インクカートリッジ70に振動が加えられた場合でも、主貯留室75内にインクが残っている限りは副貯留室76内で液面が揺れるということがない。従って、液面の揺れによって液体検出装置60が誤検出を起こすことを防止することができる。
【0138】
また、上記液体検出装置60によれば、振動部61とインクとが接触する範囲が、キャビティ43が存在する範囲に限られているので、インクの検出をピンポイントで行うことが可能であり、これにより、インクレベルを高精度にて検出することができる。
【0139】
また、キャビティ43に対応する領域の略全体を下部電極46の本体部46aで覆うようにしたので、強制振動時の変形モードと自由振動時の変形モードとの相違が小さくなる。また、液体検出装置60の振動部61が液体検出装置60の中心に対して対称な形状であるので、この振動部61の剛性はその中心から見てほぼ等方的となる。
【0140】
このため、構造の非対称性から生じ得る不要な振動の発生が抑制されると共に、強制振動時と自由振動時との間の変形モードの相違による逆起電力の出力低下が防止される。これにより、液体検出装置60の振動部61における残留振動の共振周波数の検出精度が向上するとともに、振動部61の残留振動の検出が容易になる。
【0141】
また、キャビティ43に対応する領域の略全体をキャビティ43よりも大径の下部電極46の本体部46aで覆うようにしたので、製造時における下部電極46の位置ズレに起因する不要振動の発生が防止され、検出精度の低下を防止することができる。
【0142】
また、硬いが脆弱な圧電層47の全体がキャビティ43に対応する領域の内部に配置されており、キャビティ43の周縁43bに対応する位置には圧電層47が存在しない。このため、キャビティの周縁に対応する位置での圧電膜のクラックの問題がない。
【0143】
図9は、本発明が適用されたインクカートリッジの第2実施例である。
【0144】
このインクカートリッジ70Aは、液体検出装置60Aがバッファ部14を備えておらず、検出部13だけで構成された例である。このインクカートリッジ70Aは、容器本体72の壁面に、検出部13のインク供給路19と容器本体72の補助流路77を連通させる上流側連通開口38Aと、検出部13のインク排出路20と容器本体72の副貯留室76を連通させる下流側連通開口38Bとが形成されている。また、上記容器本体72の外側面には、検出部を固定するためのセンサ固定部材34が形成されており、上述した第1実施例と同様にして弾性シール部材29および検出部13が容器本体72の外側面に位置決めされ固定されている。
【0145】
この例では、補助流路77が上流側空間すなわちバッファ室として機能し、副貯留室76が下流側空間すなわちバッファ室として機能する。それ以外は上記第1実施例と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。そして、この実施例でも上記第1実施例と同様の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明が適用された液体検出装置を備えたインクカートリッジが使用されるインクジェット式記録装置の概略構成を示した斜視図である。
【図2】本発明が適用された液体検出装置の図3におけるA−A線に沿った断面図である。
【図3】上記液体検出装置の検出部を示す図であり、(a)は平面図、(b)は同底面図。
【図4】上記液体検出装置のバッファ部を示す図2におけるB−B断面図である。
【図5】上記液体検出装置を備えたインクカートリッジを示す図であり、(a)は側面図、(b)は同正面図。
【図6】上記インクカートリッジの液体検出装置の取り付け部分を示す拡大断面図である。
【図7】本発明の一実施形態による液体検出装置における駆動パルス波形および逆起電力波形を示す図であり、(a)はキャビティ内にインクが存在する場合の波形図、(b)はキャビティ内にインクが存在しない場合の波形図。
【図8】振動部の振動を近似してシュミレーションする等価回路の一例を示す図である。
【図9】本発明が適用されたインクカートリッジの第2実施例である。
【図10】従来の液体検出装置を示した図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線に沿った断面図、(c)は(a)のC−C線に沿った断面図。
【図11】図10に示した従来の液体検出装置を備えた従来のインクカートリッジの断面図。
【符号の説明】
【0147】
1:キャリッジ 2:キャリッジモータ 3:タイミングベルト 4:ガイド部材
5:プラテン 6:記録用紙 7:インクカートリッジ 10:ポンプユニット
11:ワイピング手段 12:記録ヘッド 13:検出部 14:バッファ部
15:供給側バッファ室 16:排出側バッファ室 17:圧電素子
18:流路形成板 19:インク供給路 20:インク排出路 21:仕切壁
22:流入開口 23:流出開口 26:開口 27:壁面 28:接着剤
29:弾性シール部材 30A:上部開口 30B:上部開口
31:キャップ部材 32:供給側連通口 33:排出側連通口
34:センサ固定部材 34A:縦片 34B:横片 35:付勢部材
36:把持部材 37:突起 38A:上流側連通開口 38B:下流側連通開口
40:振動キャビティ形成基部 40a:第1面 40b:第2面
41:キャビティ板 42:振動板 43:キャビティ 43a:底面部
43b:周縁 44:下部電極端子 45:上部電極端子 46:下部電極
46a:本体部 46b:延出部 46c:切欠き部 47:圧電層
47a:本体部 47b:突出部 48:補助電極 49:上部電極
49a:本体部 49b:延出部 60:液体検出装置 60A:液体検出装置
61:振動部 70:インクカートリッジ 70A:インクカートリッジ
71:インク送出口 72:容器本体 75:主貯留室 76:副貯留室
77:補助流路 77a:補助流路入口 106:アクチュエータ
160:圧電層 161:開口 162:キャビティ 164:上部電極
166:下部電極 168:上部電極端子 170:下部電極端子
172:補助電極 176:振動板 178:基板 180:インクカートリッジ
181:容器本体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1面および第2面を有し、検出対象の媒体を受け入れるためのキャビティが、上記第1面側に開口するようにして形成され、上記キャビティの底面が振動可能に形成されている振動キャビティ形成基部と、
上記振動キャビティ形成基部の上記第2面側に形成された第1電極、上記第1電極に積層された圧電層、および上記圧電層に積層された第2電極を有する圧電素子と、
上記振動キャビティ形成基部の上記第1面側に積層され、上記キャビティに検出対象の液体を供給する液体供給路と、上記キャビティから検出対象の液体を排出する液体排出路とが形成された流路形成基部とを備えた検出装置と、
上記検出装置が取り付けられ、上記液体供給路に連通して液体供給路に供給される液体が存在する上流側空間と、上記液体排出路に連通して液体排出路から排出された液体が存在する下流側空間とを有する取付対象部材と、
上記検出装置と取付対象部材との間に介在し、上記液体供給路と上流側空間を連通させる供給側連通口と、上記液体排出路と下流側空間を連通させる排出側連通口とを有し、液体供給路と上流側空間との間および液体排出路と下流側空間との間をそれぞれシールする弾性シール部材とを備えたことを特徴とする液体検出装置の取付構造。
【請求項2】
上記検出装置の液体供給路の開口よりも弾性シール部材の供給側連通口の開口を大きくするとともに、上記検出装置の液体排出路の開口よりも弾性シール部材の排出側連通口の開口を大きくしている請求項1記載の液体検出装置の取り付け構造。
【請求項3】
弾性シール部材の供給側連通口の開口径が検出装置の液体供給路の開口径の2倍以上に設定されるとともに、弾性シール部材の排出側連通口の開口径が検出装置の液体排出路の開口径の2倍以上に設定されている請求項2記載の液体検出装置の取付構造。
【請求項4】
弾性シール部材の供給側連通口と検出装置の液体供給路とが同心状に配置されているとともに、弾性シール部材の排出側連通口と検出装置の液体排出路とが同心状に配置されている請求項2または3記載の液体検出装置の取付構造。
【請求項5】
上記液体供給路と液体排出路の開口が同じ大きさに設定されるとともに、供給側連通口と排出側連通口の開口が同じ大きさに設定されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の液体検出装置の取付構造。
【請求項6】
上記液体供給路および供給側連通口と、上記液体排出路および排出側連通口とが、キャビティの中心に対して対称に形成されている請求項5記載の液体検出装置の取付構造。
【請求項7】
上記検出装置を取付対象部材に向かって付勢することにより検出装置を取付対象部材に対して固定する付勢部材を備えている請求項1〜6のいずれか一項に記載の液体検出装置の取付構造。
【請求項8】
上記弾性シール部材の外周に外嵌して弾性シール部材を周囲から把持する把持部材を備えている請求項1〜7のいずれか一項に記載の液体検出装置の取付構造。
【請求項9】
上記取付対象部材は、上流側空間として液体供給路に連通する供給側バッファ室を有するとともに、下流側空間として液体排出路に連通する排出側バッファ室を有するバッファ部材である請求項1〜8のいずれか一項に記載の液体検出装置の取付構造。
【請求項10】
上記供給側バッファ室と排出側バッファ室は、上記キャビティの中心に対して対称に形成されている請求項9記載の液体検出装置の取付構造。
【請求項11】
上記供給側バッファ室および排出側バッファ室は、それぞれキャビティの容量の少なくとも10倍以上の容量を有するものである請求項9または10記載の液体検出装置の取付構造。
【請求項12】
上記バッファ部材は内部に貯留した液体を外部に送出する液体送出口を有する容器本体に取り付けられ、上記供給側バッファ室は、上記容器本体の内部空間のうちの主要な部分を構成して液体を貯留する液体貯留室に連通し、上記排出側バッファ室は、上記容器本体の内部空間のうち内部に貯留した液体を上記液体送出口に連通する液体送出空間に連通している請求項9〜11のいずれか一項に記載の液体容器の取付構造。
【請求項13】
内部に貯留した液体を外部に送出する液体送出口を有する容器本体と、
上記容器本体に取り付けられて内部の液体を検出する検出装置とを備え、
上記検出装置は、互いに対向する第1面および第2面を有し、検出対象の媒体を受け入れるためのキャビティが、上記第1面側に開口するようにして形成され、上記キャビティの底面が振動可能に形成されている振動キャビティ形成基部と、
上記振動キャビティ形成基部の上記第2面側に形成された第1電極、上記第1電極に積層された圧電層、および上記圧電層に積層された第2電極を有する圧電素子と、
上記振動キャビティ形成基部の上記第1面側に積層され、上記キャビティに検出対象の液体を供給する液体供給路と、上記キャビティから検出対象の液体を排出する液体排出路とが形成された流路形成基部とを有して構成され、
上記容器本体は、上記液体供給路に連通して液体供給路に供給される液体が存在する上流側空間と、上記液体排出路に連通して液体排出路から排出された液体が存在する下流側空間とを有し、
上記検出装置と容器本体との間に介在し、上記液体供給路と上流側空間を連通させる供給側連通口と、上記液体排出路と下流側空間を連通させる排出側連通口とを有し、液体供給路と上流側空間との間および液体排出路と下流側空間との間をそれぞれシールする弾性シール部材をさらに備えていることを特徴とする液体容器。
【請求項1】
互いに対向する第1面および第2面を有し、検出対象の媒体を受け入れるためのキャビティが、上記第1面側に開口するようにして形成され、上記キャビティの底面が振動可能に形成されている振動キャビティ形成基部と、
上記振動キャビティ形成基部の上記第2面側に形成された第1電極、上記第1電極に積層された圧電層、および上記圧電層に積層された第2電極を有する圧電素子と、
上記振動キャビティ形成基部の上記第1面側に積層され、上記キャビティに検出対象の液体を供給する液体供給路と、上記キャビティから検出対象の液体を排出する液体排出路とが形成された流路形成基部とを備えた検出装置と、
上記検出装置が取り付けられ、上記液体供給路に連通して液体供給路に供給される液体が存在する上流側空間と、上記液体排出路に連通して液体排出路から排出された液体が存在する下流側空間とを有する取付対象部材と、
上記検出装置と取付対象部材との間に介在し、上記液体供給路と上流側空間を連通させる供給側連通口と、上記液体排出路と下流側空間を連通させる排出側連通口とを有し、液体供給路と上流側空間との間および液体排出路と下流側空間との間をそれぞれシールする弾性シール部材とを備えたことを特徴とする液体検出装置の取付構造。
【請求項2】
上記検出装置の液体供給路の開口よりも弾性シール部材の供給側連通口の開口を大きくするとともに、上記検出装置の液体排出路の開口よりも弾性シール部材の排出側連通口の開口を大きくしている請求項1記載の液体検出装置の取り付け構造。
【請求項3】
弾性シール部材の供給側連通口の開口径が検出装置の液体供給路の開口径の2倍以上に設定されるとともに、弾性シール部材の排出側連通口の開口径が検出装置の液体排出路の開口径の2倍以上に設定されている請求項2記載の液体検出装置の取付構造。
【請求項4】
弾性シール部材の供給側連通口と検出装置の液体供給路とが同心状に配置されているとともに、弾性シール部材の排出側連通口と検出装置の液体排出路とが同心状に配置されている請求項2または3記載の液体検出装置の取付構造。
【請求項5】
上記液体供給路と液体排出路の開口が同じ大きさに設定されるとともに、供給側連通口と排出側連通口の開口が同じ大きさに設定されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の液体検出装置の取付構造。
【請求項6】
上記液体供給路および供給側連通口と、上記液体排出路および排出側連通口とが、キャビティの中心に対して対称に形成されている請求項5記載の液体検出装置の取付構造。
【請求項7】
上記検出装置を取付対象部材に向かって付勢することにより検出装置を取付対象部材に対して固定する付勢部材を備えている請求項1〜6のいずれか一項に記載の液体検出装置の取付構造。
【請求項8】
上記弾性シール部材の外周に外嵌して弾性シール部材を周囲から把持する把持部材を備えている請求項1〜7のいずれか一項に記載の液体検出装置の取付構造。
【請求項9】
上記取付対象部材は、上流側空間として液体供給路に連通する供給側バッファ室を有するとともに、下流側空間として液体排出路に連通する排出側バッファ室を有するバッファ部材である請求項1〜8のいずれか一項に記載の液体検出装置の取付構造。
【請求項10】
上記供給側バッファ室と排出側バッファ室は、上記キャビティの中心に対して対称に形成されている請求項9記載の液体検出装置の取付構造。
【請求項11】
上記供給側バッファ室および排出側バッファ室は、それぞれキャビティの容量の少なくとも10倍以上の容量を有するものである請求項9または10記載の液体検出装置の取付構造。
【請求項12】
上記バッファ部材は内部に貯留した液体を外部に送出する液体送出口を有する容器本体に取り付けられ、上記供給側バッファ室は、上記容器本体の内部空間のうちの主要な部分を構成して液体を貯留する液体貯留室に連通し、上記排出側バッファ室は、上記容器本体の内部空間のうち内部に貯留した液体を上記液体送出口に連通する液体送出空間に連通している請求項9〜11のいずれか一項に記載の液体容器の取付構造。
【請求項13】
内部に貯留した液体を外部に送出する液体送出口を有する容器本体と、
上記容器本体に取り付けられて内部の液体を検出する検出装置とを備え、
上記検出装置は、互いに対向する第1面および第2面を有し、検出対象の媒体を受け入れるためのキャビティが、上記第1面側に開口するようにして形成され、上記キャビティの底面が振動可能に形成されている振動キャビティ形成基部と、
上記振動キャビティ形成基部の上記第2面側に形成された第1電極、上記第1電極に積層された圧電層、および上記圧電層に積層された第2電極を有する圧電素子と、
上記振動キャビティ形成基部の上記第1面側に積層され、上記キャビティに検出対象の液体を供給する液体供給路と、上記キャビティから検出対象の液体を排出する液体排出路とが形成された流路形成基部とを有して構成され、
上記容器本体は、上記液体供給路に連通して液体供給路に供給される液体が存在する上流側空間と、上記液体排出路に連通して液体排出路から排出された液体が存在する下流側空間とを有し、
上記検出装置と容器本体との間に介在し、上記液体供給路と上流側空間を連通させる供給側連通口と、上記液体排出路と下流側空間を連通させる排出側連通口とを有し、液体供給路と上流側空間との間および液体排出路と下流側空間との間をそれぞれシールする弾性シール部材をさらに備えていることを特徴とする液体容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−167939(P2006−167939A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−359549(P2004−359549)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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