説明

液圧モジュレータ

【課題】より小型化が可能な液圧モジュレータを提供することを課題とする。
【解決手段】モータハウジング45、ステータ46、ロータ47、モータ軸48からなるモータ37Rと、このモータ37Rの動力を外部に伝達する動力伝達機構60と、この動力伝達機構60で伝達される動力により直線的に移動するピストン41Rを有するマスターシリンダ73とを備えた液圧モジュレータに30Rおいて、マスターシリンダ73の軸線73aとモータ軸48の軸線48aが略直交するようにして、モータハウジング45とマスターシリンダ73が重なるように配置した。
【効果】マスターシリンダ73は、モータ軸48の軸長さの範囲にてモータハウジング45の側方に配置される。液圧モジュレータ30Rのモータ軸48に沿った長さは、概ねモータ軸48の軸長さに収まり、液圧モジュレータ30Rの小型化が図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪のブレーキ装置に液圧を供給する液圧モジュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
車輪の空転を回避することができるように、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)作動時に、ブレーキ配管内の圧力を下げることができるブレーキ装置が知られている。
また、ブレーキ操作子(レバーやペダル)が操作されたときに、その操作に基づく入力側油圧を検知し、この入力側油圧に対応する液圧を発生させることができるブレーキ装置が知られている(例えば、特許文献1(図4)参照。)。
【0003】
特許文献1の図4に示される液圧モジュレータ(6)(括弧付き数字は、特許文献1に記載された符号を示す。以下同様)は、自動二輪車に搭載される。
液圧モジュレータ(6)では、モータ(23)でカム軸(24)を回動させることができる。カム軸(24)の中心からオフセットした位置にカムローラ(25)が設けられ、このカムローラ(25)に、液圧室(17)へ進退するピストン(16)が当接している。
【0004】
モータ(23)により、カム軸(24)を回して、カムローラ(25)を液圧室(17)に接近させると、液圧室(17)での液圧は高まる。また、カムローラ(25)を液圧室(17)から遠ざけると、液圧室(17)での液圧は低下する。
【0005】
特許文献1の図4に示されるように、シリンダ(15)、ピストン(16)及び液圧室(17)からなるマスターシリンダと、モータ(23)とが、一体化されているため、液圧モジュレータ(6)は小型化が図れ、自動二輪車に適している。
しかし、自動二輪車は、四輪車に比較してスペースが極端に限られているため、液圧モジュレータ(6)の一層の小型化が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−212679公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、より小型化が可能な液圧モジュレータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、モータハウジングと、このモータハウジングに内蔵されるステータ及びロータと、このロータから延び一端が前記モータハウジングから突出するモータ軸を含むモータと、
このモータの動力を伝達する動力伝達機構と、
この動力伝達機構で伝達される動力により直線的に移動するピストンを有するマスターシリンダとを備えた液圧モジュレータにおいて、
前記マスターシリンダの軸線と前記モータ軸の軸線が略直交するようにして、前記モータハウジングと前記マスターシリンダが重なるように配置されることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明では、動力伝達機構は、ピストンを駆動するカム軸と、モータの動力を伝達してカム軸を回動させる複数個のギヤとを備え、
カム軸の一端部は、モータ軸の先端を通りモータ軸に直交する面の近傍に設けられ、カム軸は、一端部からモータ軸と同じ側へ延び且つモータ軸と平行に配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明では、カム軸はモータ軸より短く形成され、カム軸の他端部に、カム軸の回転角を検出するポテンショメータが連結されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明では、ポテンショメータの接続端子は、マスターシリンダに重なるように指向していることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、マスターシリンダを複数個設け、これらのマスタシリンダをモータ軸の軸線方向に並べて配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、マスターシリンダとモータハウジングは重なるように配置される。重なるように配置することにより、液圧モジュレータ内のデッドスペースに、マスターシリンダが配置されることになり、液圧モジュレータの小型化を図ることが可能となる。
【0014】
請求項2に係る発明では、動力伝達機構は、ピストンを駆動するカム軸と、モータの動力を伝達してカム軸を回動させる複数個のギヤとを備え、カム軸の一端部は、モータ軸の先端を通りモータ軸に直交する面の近傍に設けられ、カム軸は、一端部からモータ軸と同じ側へ延び且つモータ軸と平行に配置されている。
モータ軸の先端を通りモータ軸に直交する面に沿って複数個のギヤを並べることができるため、動力伝達機構が不都合に張り出す心配はなく、液圧モジュレータの一層の小型化が図れる。
【0015】
請求項3に係る発明では、カム軸はモータ軸より短く形成され、カム軸の他端部に、カム軸の回転角を検出するポテンショメータが連結されている。そのため、カム軸の端部付近にできるスペースにポテンショメータを配置すれば、デッドスペースの解消が図れ、併せて液圧モジュレータの一層の小型化が図れる。
【0016】
請求項4に係る発明では、ポテンショメータの接続端子は、マスターシリンダに重なるように指向している。すなわち、接続端子はマスターシリンダと同方向に延びている。接続端子に接続するハーネスはマスターシリンダに平行に延ばすことができる。マスターシリンダはシリンダ軸方向に長いため、ハーネスを接続端子から直線的延ばすことができる。ハーネスを接続端子近傍で曲げる必要がないため、ハーネスの耐久性能を発揮させることができる。併せてハーネスの収まりがよく、ハーネスの引き回しが容易になる。
【0017】
請求項5に係る発明は、マスターシリンダを複数個設け、これらのマスタシリンダをモータ軸の軸線方向に並べて配置した。マスターシリンダの受圧面積は内蔵するピストンの面積と合致する。マスターシリンダを複数個にすることで、受圧面積を複数倍にすることができ、容易に受圧面積を確保することができる。または、必要な受圧面積は、複数のピストンの受圧面積の和となり、ピストンの数を増すことによりピストンの径を小さくすることができる。ピストンが小径であればマスターシリンダが薄型化する。
本発明によれば、受圧面積を確保しつつ、マスターシリンダの薄型化、小型化が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】自動二輪車におけるブレーキ装置の配置を説明する図である。
【図2】自動二輪車におけるブレーキ装置のシステムを説明する図である。
【図3】本発明に係る液圧モジュレータの正面図である。
【図4】本発明に係る液圧モジュレータの平面図である。
【図5】図4の5−5線断面図である。
【図6】図3の6−6矢視図である。
【図7】図3の7矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0020】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、自動二輪車10は、前輪11近傍に前輪速度センサ12F(Fは前を示す添え字。以下同じ)、ブレーキディスク13F及びブレーキキャリパ14Fを備え、後輪15近傍に後輪速度センサ12R(Rは前を示す添え字。以下同じ)、ブレーキディスク13R及びブレーキキャリパ14Rを備え、操向ハンドル16に運転者が手で操作するブレーキレバー17を備え、車体18の中央下部に運転者が足で操作するブレーキペダル19を備え、車体18にブレーキキャリパ14F、14Rへ送る液圧を調整する液圧モジュレータ30F、30Rを備え、車体18に制御部21及びバッテリ22を備えている。
【0021】
これらの構成要素の相互関係及び作用を図2で説明する。
説明を容易にするために非コンビネーションモードでの前側車輪制動システムを説明する。
前側車輪制動は、前側車輪の回転速度がゼロ又は所定値以下の第1モードと、前側車輪の回転速度が所定値以上の第2モードと、前側車輪の回転速度が所定値以上で且つ前側操作子の操作量が所定値以上の第3モードとの何れかが選択される。
【0022】
第1〜第3モードを、図2に基づいて順次説明する。
第1モード:
前輪速度センサ12Fで得た速度情報を制御部21で取得し、前輪速度が所定値以下と判断した時には、制御部21は、第1ソレノイドバルブ31F(常時閉)を閉じ、第2ソレノイドバルブ32F(常時開)を開き、第3ソレノイドバルブ33F(常時閉)を閉じた状態にする。ブレーキレバー17が握られるとマスターシリンダ34Fで液圧が発生し、ブレーキキャリパ14Fへ伝達される。よって、停車中や極低速での走行中には、それぞれソレノイドに通電されなくなり、省エネが図れる。
【0023】
ブレーキキャリパ14Fはブレーキディスク13Fを制動する。この第1モードはメインスイッチがオフの場合にも適用される。
常時閉とは、ソレノイドに異常が発生した場合は、スプリングの押力によりソレノイドの閉状態が保たれる形態を言う。常時開はその逆。
【0024】
第2モード:
前輪速度センサ12Fで得た速度情報を制御部21で取得し、前輪速度が所定値を超えていると判断した時、制御部21は第1ソレノイドバルブ31Fを開く。第2ソレノイドバルブ32Fは開いたまま、第3ソレノイドバルブ33Fは閉じたままとする。すなわち、第2モードは、いわゆるBBWに切換わる前段階の準備モードである。
【0025】
第3モード:
前輪速度センサ12Fで得た速度情報を制御部21で取得し、前輪速度が所定値を超えていると判断し且つ操作量検出器36Fで得た操作量情報を制御部21で取得し、操作量が所定値を超えている判断した時には、制御部21は、第1ソレノイドバルブ31Fは開いたままで、第2ソレノイドバルブ32Fを閉じ、第3ソレノイドバルブ33Fを開ける。
【0026】
第2ソレノイドバルブ32Fが閉じているため、マスターシリンダ34Fで発生した液圧はブレーキキャリパ14Fへ伝達されない。代わりに、制御部21は液圧モジュレータ30Fを作動させる。詳細には、モータ37Fを始動し、減速ギヤ群38Fを介しカム軸39Fを回動し、マスターシリンダ34Fのピストン41Fを前進させる。発生した液圧は第3ソレノイドバルブ33Fを通って、ブレーキキャリパ14Fへ伝達される。ブレーキキャリパ14Fはブレーキディスク13Fを制動する。
【0027】
この際に、マスターシリンダ34Fで発生した液圧は、第1ソレノイドバルブ31Fが開いているため、液圧はストロークシミュレータ35Fにも作用する。ストロークシミュレータ35Fは、液圧に応じてピストン42Fがスプリング43Fに抗して移動し、油路の体積を増加する。結果、ブレーキレバー17に「遊び」ができる。すなわち、ブレーキレバー17の操作フィーリングを維持する。
【0028】
ブレーキレバー17の操作量を電気信号に置き換え、この信号をワイヤ(配線)を介して制御部21へ送り、制御部21はワイヤを介して液圧モジュレータ30Fを制御する。ワイヤを介した制御であるため、バイワイヤ方式ブレーキシステム(ブレーキ・バイ・ワイヤ:BBW)と呼ばれる。
【0029】
以上の第1〜第3モードは、後輪15及びブレーキペダル19についても同様に実施される。符号にRを添える。構成、作用は前輪11に対するものと同一であるため、説明を省略する。
【0030】
ブレーキングシステムでは、他にコンビネーションブレーキングやABS操作が行われる。
コンビネーションブレーキングでは、ブレーキレバー17が操作されたときには、ブレーキペダル19の操作の有無に無関係に、前輪と後輪とに一定の比率で制動を掛ける。この制御は制御部21によって実施する。
【0031】
また、車速とは後輪の回転速度との差を検出し、この差が増大し、スリップの発生が予想されるときには、後輪のブレーキを緩めて対応する。前輪についても同様。
この操作をABS操作といい、制御部21がカム軸39Rを戻し、ピストン41Rを後退させることでABS操作を行う。
【0032】
バイワイヤ方式ブレーキシステムで主要機器である液圧モジュレータの構造を、以下に詳しく述べる。
図1に示すように、液圧モジュレータ30Fはモータ37Fが車両長手方向において後側に配置され、液圧モジュレータ30Rはモータ37Rが車両長手方向において前側に配置されており、互いに勝手反対(線対称)の配置とされているが、その他の点においては構成要素等同一である。
【0033】
液圧モジュレータ30Fと液圧モジュレータ30Rのうち、液圧モジュレータ30Rを例に、以下説明する。
図3に液圧モジュレータ30Rの正面図、図4に液圧モジュレータ30Rの平面図、図5に液圧モジュレータ30Rの断面図(図4の5−5線断面図)を示す。
【0034】
図5に示すように、モータ37Rは、モータハウジング45と、このモータハウジング45に内蔵されるステータ46及びロータ47と、このロータ47から延び一端がモータハウジング45から突出するモータ軸48とからなる。
モータハウジング45は、一端(図では下面)が開放された有底円筒状のモータケース51と、このモータケース51の開口を塞ぐモータリッド52と、このモータリッド52をモータケース51に締結するボルト53とからなる。
【0035】
モータ軸48を支える2個の軸受のうち、一方の軸受54はモータリッド52に取付けられ、他方の軸受55はモータケース51に取付けられる。
この例では、ブラシ56へ給電するモータ端子57はモータリッド52に設けられている。
【0036】
モータ37Fの動力を外部に伝達する動力伝達機構60は、次に述べる減速機ケース61と減速機リッド62と複数のギヤ(減速ギヤ群38R)とからなる。
【0037】
モータリッド52を減速機ケース61に当てるようにして、モータ37Rは減速機ケース61に取付けられている。
減速機ケース61に、減速機リッド62を合わせることで、減速ギヤ群38Rの収納空間が確保される。
モータ軸48とモータリッド52はシール部材58でシールされ、モータリッド52と減速機ケース61はOリング59でシールされているため、減速ギヤ群38Rの収納空間がモータケース51内と、連通する心配はない。
【0038】
減速ギヤ群38Rは、例えば、モータ軸48の一端に形成された第1ギヤ63と、この第1ギヤ63より大径であって第1ギヤ63に噛み合う第2ギヤ64と、この第2ギヤ64より小径であり第2ギヤ64と一体形成されている第3ギヤ65と、この第3ギヤ65に噛み合う扇ギヤ66とからなる。
【0039】
扇ギヤ66は、軸受67を介して減速機リッド62に回転自在に支持され、このような扇ギヤ66にL字形状のカム軸39Rの先端が嵌められている。カム軸39Rは扇ギヤ66に、着脱可能であるがトルク(回転力)は伝達できるようにスプライン70で結合される。カム軸39Rと扇ギヤ66は一体品であっても差し支えない。そこで、便宜的に軸受67に嵌合している部位を、カム軸39Rの一端部39aと呼ぶ。
【0040】
カム軸39Rの他端部39bは軸受68を介して減速機ケース61で支持されている。カム軸39Rの他端部39bにはカム軸39Rの回転角を検知するポテンショメータ69が連結される。
カム軸39Rは、扇ギヤ66の回転中心66aから、δだけオフセットした位置にカム軸39Rの軸線71を有する。この実施例では、カム軸39Rに2個のローラ72、72が回転自在に取付けられている。
【0041】
この例では、2個のマスターシリンダ73、73が、液圧モジュレータ30Rに備えられる。マスターシリンダ43が複数である場合は、カム軸39Rの他端部39b側をマスターシリンダ73の軸線を73a、カム軸39Rの一端部39a側をマスターシリンダ73の軸線を73bと区別する。
【0042】
具体的には、マスターシリンダ73の軸線73a、73bが、モータ軸48の軸線48aに略直交するようにして減速機ケース61からシリンダケース74が延ばされ、このシリンダケース74にピストン41R、41Rが収納され、これらのピストン41R、41Rはスプリング75、75で押されて一端が各々ローラ72、72に当てられる。スプリング75、75は油室76、76に収納され、これらの油室76、76を連通する連通路77に圧油出口78が設けられている。また、油室76、76の最も低い位置にドレーンポート79が設けられており、適宜、ドレーンプラグ81を緩めることで、油室76、76からドレーンを抜くことができる。
【0043】
マスターシリンダ73の軸線73bに注目すると、この軸線73bは、モータ軸48の突出部48cよりロータ47側にて、モータ軸48に重なっている。より正確には、モータ軸48の突出部48cを支える軸受54よりロータ47側にて、モータ軸48に重なっている。
【0044】
モータ37Rが回転制御されると、図6に示すように、動力は第1ギヤ63、第2ギヤ64、第3ギヤ65、扇ギヤ66の順で伝えられ、この間に減速されると共にトルクが増加され、カム軸39Rの一端部39aが回される。また、減速機ケース61に複数本(この例では2本)の位置決めピン61p、61pを立て、これらのピン61p、61pで減速機リッド(図5、符号62)を位置決めし、ボルト穴61bに連結ボルトを通り、減速機ケース61に減速機リッドを固定することは、組立工数を短縮する上で好ましい。
図5に示すように、カム軸39Rは、クランク軸と同じであるから、ピストン41R、41Rを前進又は後退させる。
【0045】
図3に示すように、減速機ケース61にモータリッド52が載せられ、このモータリッド52にモータケース51が載せられるようにして、減速機ケース61にモータハウジング45が縦向きに載せられている。このようなモータ37Rの側方に、軸線が図面表裏方向へ延びるようにしてマスターシリンダ73、73が配置され、これらのマスターシリンダ73、73の上方にポテンショメータ69が配置される。
【0046】
図4に示すように、ポテンショメータ69の接続端子82は、マスターシリンダ73に重なるように指向している。接続端子82に外部ハーネスを接続すると、外部ハーネスはマスターシリンダ73に重なるように且つモータ37Rの側方を通過するようにして延ばされる。外部ハーネスの接続空間が良好に確保されていることになる。
【0047】
さらに、モータ37Rにマスターシリンダ73を接近させることで、モータ37Rとマスターシリンダ73が密集して配置され、液圧モジュレータ30Rの平面積が小さくなり、結果、液圧モジュレータ30Rは十分に小型化になった。
【0048】
図4の7矢視図である図7に示すように、マスターシリンダ73、73とモータハウジング45とは、図面表裏方向に重なっている。
【0049】
以上のように構成したので、本発明は次のようにまとめることができる。
図5に示すように、モータハウジング45と、このモータハウジング45に内蔵されるステータ46及びロータ47と、このロータ47から延び一端がモータハウジング45から突出するモータ軸48を含むモータ37Rと、このモータ37Rの動力を伝達する動力伝達機構60と、この動力伝達機構60で伝達される動力により直線的に移動するピストン41Rを有するマスターシリンダ73とを備えた液圧モジュレータに30Rおいて、マスターシリンダ73の軸線73a、73bとモータ軸48の軸線48aが略直交するようにして、図7に示すようにモータハウジング45とマスターシリンダ73が重なるように配置した。
【0050】
マスターシリンダ73とモータハウジング45は重なるように配置される。重なるように配置することにより、液圧モジュレータ30R内のデッドスペースに、マスターシリンダ73が配置されることになり、液圧モジュレータ30Rの小型化を図ることが可能となる。
【0051】
動力伝達機構60は、ピストン41Rを駆動するカム軸39Rと、モータ37Rの動力を伝達してカム軸39Rは回動させる複数個のギヤ63〜66とを備え、カム軸39Rの一端部39aは、モータ軸48の先端を通りモータ軸48に直交する面48bの近傍に設けられ、カム軸39Rは、一端部39aからモータ軸48と同じ側(図では上方)へ延び且つモータ軸48と平行に配置されている。
【0052】
モータ軸48の先端を通りモータ軸48に直交する面48aに沿って複数個のギヤ63〜66を並べることができるため、動力伝達機構60が不都合に張り出す心配はなく、液圧モジュレータ30Rの一層の小型化が図れる。
【0053】
図5に示すように、カム軸39Rはモータ軸48より短く形成され、カム軸39Rの他端部39bに、カム軸39Rの回転角を検出するポテンショメータ69が連結されている。そのため、カム軸39Rの端部付近にできるスペース83にポテンショメータ69を配置すれば、デッドスペースの解消が図れ、併せて液圧モジュレータ30Rの一層の小型化が図れる。
【0054】
マスターシリンダ73を複数個(この例では2個)設け、これらのマスターシリンダ73をモータ軸48の軸線方向に並べて配置した。マスターシリンダ73の受圧面積は内蔵するピストン41Rの面積と合致する。マスターシリンダ73を複数個にすることで、受圧面積を複数倍にすることができ、容易に受圧面積を確保することができる。または、必要な受圧面積は、複数のピストンの受圧面積の和となり、ピストン41Rの数を増すことによりピストン41Rの径を小さくすることができる。ピストン41Rが小径であればマスターシリンダ73が薄型化(図5表裏方向での薄型化)する。本発明によれば、受圧面積を確保しつつ、マスターシリンダ73の薄型化、小型化が達成できる。
【0055】
尚、マスターシリンダ73は、実施例では2個としたが、1個又は3個以上であってもよい。
また、本発明の液圧モジュレータは、車載機器の設置スペースに制限がある自動二輪車に好適であるが、三輪車や四輪車に搭載することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の液圧モジュレータは、自動二輪車に好適である。
【符号の説明】
【0057】
10…自動二輪車、30F、30R…液圧モジュレータ、37F、38R…モータ、39F、39R…カム軸、41F、41R…ピストン、45…モータハウジング、46…ステータ、47…ロータ、48…モータ軸、48a…モータ軸の軸線、48b…モータ軸の先端に直交する面、60…動力伝達機構、61…減速機ケース、62…減速機リッド、63〜66…複数のギヤ、69…ポテンショメータ、73…マスターシリンダ、73a…マスターシリンダの軸線、82…接続端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータハウジング(45)と、このモータハウジング(45)に内蔵されるステータ(46)及びロータ(47)と、このロータ(47)から延び一端が前記モータハウジング(45)から突出するモータ軸(48)を含むモータ(37R)と、
このモータ(37R)の動力を伝達する動力伝達機構(60)と、
この動力伝達機構(60)で伝達される動力により直線的に移動するピストン(41R)を有するマスターシリンダ(73)とを備えた液圧モジュレータ(30R)において、
前記マスターシリンダ(73)の軸線(73a、73b)と前記モータ軸(48)の軸線(48a)が略直交するようにして、前記モータハウジング(45)と前記マスターシリンダ(73)が重なるように配置されることを特徴とする液圧モジュレータ。
【請求項2】
前記動力伝達機構(60)は、前記ピストン(41R)を駆動するカム軸(39R)と、前記モータ(37R)の動力を伝達して前記カム軸(39R)を回動させる複数個のギヤ(63〜66)とを備え、
前記カム軸(39R)の一端部(39a)は、前記モータ軸(48)の先端を通り前記モータ軸(48)に直交する面(48b)の近傍に設けられ、前記カム軸(39R)は、一端部(39a)から前記モータ軸(48)と同じ側へ延び且つ前記モータ軸(48)と平行に配置されていることを特徴とする請求項1記載の液圧モジュレータ。
【請求項3】
前記カム軸(39R)は前記モータ軸(48)より短く形成され、前記カム軸(39R)の他端部(39b)に、前記カム軸(39R)の回転角を検出するポテンショメータ(69)が連結されていることを特徴とする請求項2記載の液圧モジュレータ
【請求項4】
前記ポテンショメータ(69)の接続端子(82)は、前記マスターシリンダ(73)に重なるように指向していることを特徴とする請求項3記載の液圧モジュレータ。
【請求項5】
前記マスターシリンダ(73)を複数個設け、これらのマスターシリンダ(73)を前記モータ軸(48)の軸線方向に並べて配置したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の液圧モジュレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−121457(P2012−121457A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274009(P2010−274009)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】