液晶光学素子、液晶光学素子を備えた光学系、液晶光学素子を備えた光学系を備えた画像取得装置
【課題】光量損失が無く、高い結像性能を有する液晶光学素子、それを備えた光学系、及びそれらを備えた画像取得装置を提供する。
【解決手段】第1の液晶レンズ11及び第2の液晶レンズ12を有し、第1の液晶レンズ11と第2の液晶レンズ12とを、互いに配向方向が光軸と垂直な面内で直交するように対向配置するとともに、第1の液晶レンズ11において光線偏向作用を受ける一方の偏光方向の入射光に対する第1の液晶レンズ11の焦点距離に比べて、第2の液晶レンズ12において光線偏向作用を受ける、一方の偏光方向に直交する他方の偏光方向の入射光に対する第2の液晶レンズ12の焦点距離が短くなるようにしている。
【解決手段】第1の液晶レンズ11及び第2の液晶レンズ12を有し、第1の液晶レンズ11と第2の液晶レンズ12とを、互いに配向方向が光軸と垂直な面内で直交するように対向配置するとともに、第1の液晶レンズ11において光線偏向作用を受ける一方の偏光方向の入射光に対する第1の液晶レンズ11の焦点距離に比べて、第2の液晶レンズ12において光線偏向作用を受ける、一方の偏光方向に直交する他方の偏光方向の入射光に対する第2の液晶レンズ12の焦点距離が短くなるようにしている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結像光学系に関するものであり、より詳しくは光学特性可変光学素子としての液晶光学素子、それを備えた光学系、及びそれらを備えた画像取得装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
結像光学系の合焦は、通常、レンズを光軸方向に移動することによって行われる。しかし、レンズ系の全体或いは一部を移動させるためのスペースやアクチュエータが必要になり、光学系を小型化する上で好ましくない。そこで、これらの課題を解決する手段として、液晶レンズを用いた可変焦点レンズにより、レンズ系を移動させずに変倍や合焦をするようにした光学系が一般的に知られている。しかしながら、このような液晶レンズでは偏光板が必要であるため、光量損失が多くなるという問題があった。そこで、このような問題を解決する手段として、第1の回折型液晶レンズと、第2の回折型液晶レンズとを、互いに配向方向が光軸と垂直な面内で直交するように対向配置することで偏光板を必要としない焦点可変機構を実現する結像光学系が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−73758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に記載の光学系では、レンズ系全体でのP偏光の結像位置とS偏光の結像位置が異なってしまい、十分な結像性能が得られないという問題があった。
【0004】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、光量損失が無く、高い結像性能を有する液晶光学素子、それを備えた光学系、及びそれらを備えた画像取得装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明による液晶光学素子は、第1の液晶レンズ及び第2の液晶レンズを有し、前記第1の液晶レンズと前記第2の液晶レンズとを、互いに配向方向が光軸と垂直な面内で直交するように対向配置するとともに、前記第1の液晶レンズにおいて光線偏向作用を受ける一方の偏光方向の入射光に対する該第1の液晶レンズの焦点距離に比べて、前記第2の液晶レンズにおいて光線偏向作用を受ける、前記一方の偏光方向に直交する他方の偏光方向の入射光に対する該第2の液晶レンズの焦点距離が短くなるようにしたことを特徴としている。
【0006】
また、本発明の液晶光学素子においては、次の条件式(1)を満足するのが好ましい。
0<|(f1−f2)/f1|≦0.5 ・・・(1)
但し、f1は前記第1の液晶レンズにおいて光線偏向作用を受ける前記一方の偏光方向の入射光に対する該第1の液晶レンズの焦点距離、f2は前記第2の液晶レンズにおいて光線偏向作用を受ける、前記一方の偏光方向に直交する他方の偏光方向の入射光に対する該第2の液晶レンズの焦点距離である。
【0007】
また、本発明による光学系は、上記本発明のいずれかの液晶光学素子を有し、前記第1の液晶レンズにおいて光線偏向作用を受ける前記一方の偏光方向の入射光に対する焦点位置と、前記第2の液晶レンズにおいて光線偏向作用を受ける、前記一方の偏光方向に直交する他方の偏光方向の入射光に対する焦点位置とが略一致するようにしたことを特徴としている。
【0008】
また、本発明による光学系は、上記本発明のいずれかの液晶光学素子を有し、前記液晶光学素子に印加する電圧を制御して、異なる物点からの入射光に対する焦点位置のずれの補正を行うことを特徴としている。
【0009】
また、本発明の光学系においては、無限遠物点合焦時において、前記液晶光学素子が平行平板として作用するように、該液晶光学素子に入射する光束を回折又は屈折することなく透過させるようにするのが好ましい。
【0010】
また、本発明の光学系においては、前記液晶光学素子が光線偏向作用を持たないときに遠点物点に合焦し、前記液晶光学素子が光線偏向作用を持つときに近点物点に合焦するようにするのが好ましい。
【0011】
また、本発明の光学系においては、次の条件式(2)を満足するのが好ましい。
|Δ/f|≦0.6 ・・・(2)
但し、Δは前記第1の液晶レンズと前記第2の液晶レンズの間隔、fは該光学系の焦点距離である。
【0012】
また、本発明による画像取得装置は、上記本発明のいずれかの光学系と、撮像素子と、ズーム光学系、を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光量損失が無く、高い結像性能を有する液晶光学素子、それを備えた光学系、及びそれらを備えた画像取得装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
実施例の説明に先立ち、本発明の作用効果について説明する。なお、説明の便宜上、以下の説明においては、互いに直交する偏波面を有する2つの直線偏光のうち、一方の偏光方向の直線偏光をP偏光、他方の偏光方向の直線偏光をS偏光とする。
【0015】
図1は本発明の第一実施形態にかかる液晶光学素子の基本構成及び動作原理を示す概念図であって、(a)は液晶レンズに電圧を印加しないとき、(b)は液晶レンズに電圧を印加したとき、の入射光線の受ける作用を夫々示している。
本実施形態の液晶光学素子1は、第1の回折型液晶レンズ11と、第2の回折型液晶レンズ12とを備えている。なお、図1の例では、液晶光学素子1は、第1の回折型液晶レンズ11及び第2の回折型液晶レンズ12が、基板13a,13b,13cの間に積層されることによって一体化されている。
【0016】
第1の回折型液晶レンズ11及び第2の回折型液晶レンズ12は、例えば、図16に示すように、所定の鋸歯状レリーフ11a1(12a1)を有する基板11a(12a)上に、薄膜透明電極11b(12b)と対向電極11c(12c)とにより液晶11d(12d)を挟持してなる。そして、薄膜透明電極11b(12b)と対向電極11c(12c)との間に電極引出線を介して所望の電圧を印加することによって、液晶11d(12d)の屈折率を変化させ、液晶11d(12d)層の位相分布を変化させて、液晶レンズの回折次数を変化させるように構成されている。
【0017】
そして、本実施形態の液晶光学素子では、このように構成された2つの回折型液晶レンズ11及び12を備え、互いの配光方向が光軸と垂直な面内で直交するように夫々が対向配置されている。このため、第1の回折型液晶レンズ11が光線偏向作用を持つ偏光方向と、第2の回折型液晶レンズ12が光線偏向作用を持つ偏光方向とが直交する。
例えば、第1の回折型液晶レンズ11の液晶11dに電圧を印加することによって、第1の回折型液晶レンズ11がP偏光(又はS偏光)の入射光に対して光線偏向作用を持つ場合には、第2の回折型液晶レンズ12の液晶12dに電圧を印加することによって、第2の回折型液晶レンズ12がS偏光(又はP偏光)の入射光に対して光線偏向作用を持つ。なお、図1の例では、夫々液晶に電圧を印加することによって、第1の回折型液晶レンズ11がP偏光の入射光に対して光線偏向作用を持ち、第2の回折型液晶レンズ12がS偏光の入射光に対して光線偏向作用を持つようになっている。また、夫々の回折型液晶レンズ11,12における基板の屈折率と液晶11d,12dの常光屈折率とが等しくなるように設定される。
【0018】
このように構成された本実施形態の液晶光学素子1は、次のように動作する。
まず、第1の回折型液晶レンズ11の液晶11d、第2の回折型液晶レンズ12の液晶12dのいずれにも電圧を印加しない場合、液晶11d,12dは入射する光線の偏光方向(即ち、P偏光、S偏光の方向)に関係なく、常光屈折率として作用する。そして、夫々の回折型液晶レンズ11,12における基板の屈折率と液晶11d,12dの常光屈折率は等しいため、夫々の回折型液晶レンズ11,12は入射する光線の偏光方向に関係なく光線偏向作用を持たず、平行平板として作用する。即ち、夫々の回折型液晶レンズ11,12に入射する光線は、偏光方向(P偏光、S偏光)に関係なく、夫々の回折型液晶レンズ11,12で夫々0次回折光としての作用を受ける。
【0019】
これに対し、第1の回折型液晶レンズ11の液晶11dに電圧を印加した場合には、液晶11dはP偏光に対して異常光屈折率として作用し、第1の回折型液晶レンズ11はP偏光に対して1次回折光でブレーズ化された回折光学素子として機能する。このため、P偏光は1次回折光としての光線偏向作用を受ける。一方、液晶11dはS偏光に対しては、常光屈折率分布として作用する。このため、第1の回折型液晶レンズ11はS偏光に対して平行平板として作用し、S偏光は光線偏向作用を受けない。
【0020】
また、第2の回折型液晶レンズ12の液晶12dに電圧を印加した場合には、液晶12dはS偏光に対して異常光屈折率として作用し、第2の回折型液晶レンズ12はS偏光に対して1次回折光でブレーズ化された回折光学素子として機能する。このため、S偏光は1次回折光としての光線偏向作用を受ける。一方、液晶12dはP偏光に対しては、常光屈折率分布として作用する。このため、第2の回折型液晶レンズ12はP偏光に対して平行平板として作用し、P偏光は光線偏向作用を受けない。
【0021】
このため、本実施形態の液晶光学素子1において液晶11dと液晶12dの両方に夫々に電圧を印加すると、入射光は、第1の回折型液晶レンズ11において、P偏光が光線偏向作用を受けて光軸に対し所定方向に偏向されるとともにS偏光が光線偏向作用を受けないで出射し、第2の回折型液晶レンズ12に入射する。そして、第2の回折型液晶レンズ12において、S偏光が光線偏向作用を受けて光軸に対し所定方向に偏向されるとともに、P偏光が光線偏向作用を受けずに第1の回折型液晶レンズ11を介して偏向された方向に出射する。
【0022】
従って、本実施形態の液晶光学素子1によれば、入射する光線は、P偏光が第1の回折型液晶レンズ11で光線偏向作用を受け、S偏光が第2の回折型液晶レンズ12で光線偏向作用を受けるというように、P方向とS方向の偏光方向に関係なくいずれかの回折型液晶レンズで光線偏向作用を受けることになるので、光量ロスが無くなる。
【0023】
また、本実施形態の液晶光学素子1は、回折型液晶レンズを用いて構成されており、回折型液晶レンズは、液晶厚を薄くできる。このため、本実施形態の液晶光学素子1によれば、液晶レンズを低電圧で高速駆動できる。また、第1の回折型液晶レンズ11と第2の回折型液晶レンズ12の間隔を小さくすることができる。その結果、後述するように、第1の回折型液晶レンズ11を介して光線偏向作用を受けて偏向されたP偏光と、第2の回折型液晶レンズ12を介して光線偏向作用を受けて偏向されたS偏光の結像位置のずれをなくすように構成した場合において、P偏光とS偏光との結像の非対称性を小さくし易くなる。
【0024】
なお、本実施形態の液晶光学素子1においては、第1の回折型液晶レンズ11と第2の回折型液晶レンズ12は、図1に示したように、積層構造として一体化されていると、保持などの点で好ましい。なお、別個に備えても勿論よい。
【0025】
また、図1の例では、1次回折光として作用する構成について説明したが、これに制限されることはなく、2次回折光、3次回折光として作用する構成としてもよい。
【0026】
また、本実施形態の液晶光学素子1は、第1の回折型液晶レンズ11において光線偏向作用を受ける(互いに直交する偏波面を有する2つの直線偏光のうちの)一方の偏光方向(ここではP偏光)の入射光に対する第1の回折型液晶レンズ11の所定次数光(例えば1次光)での焦点距離に比べて、第2の回折型液晶レンズ12において光線偏向作用を受ける、一方の偏光方向に直交する他方の偏光方向(ここではS偏光)の入射光に対する第2の回折型液晶レンズ12の所定次数光と同一次数光での焦点距離が短くなるように構成されている。
【0027】
図1に示したように、第1の回折型液晶レンズ11と第2の回折型液晶レンズ12を積層した場合、第1の回折型液晶レンズ11の回折面と第2の回折型液晶レンズ12の回折面は離れている。
そのため、第1の回折型液晶レンズ11の焦点距離と第2の回折型液晶レンズ12の焦点距離とが等しいと、P偏光とS偏光の一方が焦点の合った状態、他方が焦点のずれた状態で結像面に入射することとなり、結像面において二重像になってしまう。
そこで、本実施形態の液晶光学素子1では、第1の回折型液晶レンズ11で光線偏向作用を受ける偏光(ここではP偏光)と第2の回折型液晶レンズ12で光線偏向作用を受ける偏光(ここではS偏光)における同一次数光の結像位置(焦点位置)がほぼ一致するように、第1の回折型液晶レンズ11と第2の回折型液晶レンズ12の焦点距離を異ならせている。即ち、第1の回折型液晶レンズ11における一方の偏光方向(ここではP偏光)の入射光に対する焦点距離よりも、第2の回折型液晶レンズ12における一方の偏光方向に直交する他方の偏光方向(ここではS偏光)の入射光に対する同一次数の焦点距離が短くなるように構成している。
このようにすれば、2重像を防ぐことができる。
【0028】
なお、その場合、次の条件式(1)を満足するのが好ましい。
0<|(f1−f2)/f1|≦0.5 ・・・(1)
但し、f1は第1の回折型液晶レンズ11の焦点距離、f2は第2の回折型液晶レンズ12の焦点距離である。
【0029】
条件式(1)の上限を上回ると、第1の回折型液晶レンズ11と第2の回折型液晶レンズ12の焦点距離の差が大きくなり、第1の回折型液晶レンズ11で光線偏向作用を受ける偏光と第2の回折型液晶レンズ12で光線偏向作用を受ける偏光とで結像の非対称性が大きくなってしまう。
【0030】
好ましくは、次の条件式(1')を満足するのがよい。
0<|(f1−f2)/f1|≦0.4 ・・・(1')
但し、f1は第1の回折型液晶レンズ11の焦点距離、f2は第2の回折型液晶レンズ12の焦点距離である。
【0031】
さらに、好ましくは、次の条件式(1”)を満足するのがよい。
0<|(f1−f2)/f1|≦0.3 ・・・(1”)
但し、f1は第1の回折型液晶レンズ11の焦点距離、f2は第2の回折型液晶レンズ12の焦点距離である。
【0032】
また、本発明の光学系では、光学系全体として、第1の回折型液晶レンズ11で光線偏向作用を受ける偏光(ここではP偏光)と第2の回折型液晶レンズ12で光線偏向作用を受ける偏光(ここではS偏光)における同一次数光の結像位置(焦点位置)がほぼ一致するように、夫々の液晶レンズの焦点距離が設定されている。
ここで、結像位置(焦点位置)がほぼ一致するとは、理想的には、それぞれの偏光方向における結像位置が完全に一致していることが望ましいが、光学系全体として要求される結像性能に影響を与えない程度に、結像位置が異なっていてもよいことを意味する。例えば、その光学系では2重像として認識できない範囲の結像位置のずれの程度が挙げられる。
【0033】
また、本発明の光学系は、本実施形態として説明したいずれかの液晶光学素子1と、少なくとも1枚のレンズを有し、液晶光学素子1に印加する電圧を制御して、異なる物点からの入射光に対する焦点位置のずれの補正(合焦)を行うようにしている。
このようにすれば、光学系において上述した本実施形態の液晶光学素子1の効果が得られる。
【0034】
また、本発明の光学系においては、上述した本実施形態の液晶光学素子1が光線偏向作用を持たないときに遠点物点に合焦し、液晶光学素子1が光線偏向作用を持つときに近点物点に合焦するのが好ましい。
液晶光学素子1に用いる液晶レンズが製作誤差を大きく持つ場合、液晶レンズの光線偏向作用誤差による性能劣化が問題となる可能性がある。
しかるに、本発明の光学系のように遠点物点に対して液晶レンズが光線偏向作用を持たないように構成すれば、近点物点よりも高い結像性能が要求される遠点物点に対する性能劣化を回避することができる。
【0035】
また、本発明の光学系においては、次の条件式(2)を満足するのが好ましい。
|Δ/f|≦0.6 ・・・(2)
但し、Δは第1の回折型液晶レンズ11と第2の回折型液晶レンズ12の間隔、fはこの光学系の焦点距離である。
【0036】
条件式(2)の上限値を上回ると、第1の回折型液晶レンズ11で光線偏向作用を受ける偏光と、第2の回折型液晶レンズ12で光線偏向作用を受ける偏光との結像の非対象性が大きくなり過ぎる。
なお、好ましくは、次の条件式(2')を満足するのがよい、
0.0001≦|Δ/f|≦0.4 ・・・(2’)
但し、Δは第1の回折型液晶レンズ11と第2の回折型液晶レンズ12の間隔、fはこの光学系の焦点距離である。
さらに、好ましくは、次の条件式(2”)を満足するのがよい、
0.0001≦|Δ/f|≦0.2 ・・・(2”)
但し、Δは第1の回折型液晶レンズ11と第2の回折型液晶レンズ12の間隔、fはこの光学系の焦点距離である。
【0037】
そして、本発明のカメラは、上記本発明のいずれかの光学系と、撮像素子と、ズーム光学系を備えている。
このようにすれば、カメラにおいて上述した本実施形態の液晶光学素子の効果が得られる。
【0038】
なお、本実施形態の液晶光学素子1としては、回折型液晶レンズを例に説明したが、これに限られず、例えば、ゾーンプレート形状、平凸、及び平凹レンズ形状の液晶レンズであってもよく、更に、同心状に液晶層を形成した屈折率分布型レンズであってもよい。
【0039】
以下に、本発明の光学系の実施例1から実施例3について図面を参照して説明する。
光路図を図2〜図15に示す。
【0040】
実施例1
図2は本発明の液晶光学素子を用いた実施例1にかかる光学系の光学構成を無限遠物点合焦時の状態で示す光軸に沿う断面図、図3は図2の光学系に用いられている液晶光学素子の構成を示す説明図である。図4は実施例1の光学系における無限遠物合焦時での横収差図、図5は実施例1の光学系における近点合焦時(P偏光用液晶レンズのみ動作)での横収差図、図6は実施例1の光学系における近点合焦時(S偏光用液晶レンズのみ動作)での横収差図である。
実施例1の光学系は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL1、両凸レンズL2、液晶光学素子1’、両凹レンズL3と両凸レンズL4との接合レンズ、両凸レンズL5と両凹レンズL6との接合レンズ、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL7、平行平板P1、及び平行平板P2を備えている。
【0041】
なお、図2中、レンズ断面図におけるr1、r2、……及びd1、d2、……の数字は、数値データにおける面番号の数字1、2、……に対応する。また、Sは開口絞り、IMは撮像素子の撮像面を示す。また、以下の数値データにおいて、屈折率及びアッベ数は、d線における値である(以下、他の実施例においても同じ)。
【0042】
液晶光学素子1’は、図1に示した実施形態の液晶光学素子1と同様の構造であるので、同一の部材については同一の符号を付して説明を省略する。
実施例1にかかる光学系では、光学系全体として、第1の回折型液晶レンズ11で光線偏向作用を受ける偏光(ここではP偏光)と第2の回折型液晶レンズ12で光線偏向作用を受ける偏光(ここではS偏光)における同一次数光の結像位置(焦点位置)がほぼ一致するように、夫々の液晶レンズの焦点距離が設定されている。
【0043】
また、実施例1の光学系では、液晶光学素子1’において第1の回折型液晶レンズ11、第2の回折型液晶レンズ12として用いる回折型液晶レンズは、夫々液晶11d,12dに電圧を印加しないときには、入射光に対して0次光としての作用を与えて、光線偏向作用を持たずに無限遠物点に合焦し、液晶に電圧を印加したときには、入射光に対して1次光としての作用を与えて、レンズ先頭面から300mmの物点に合焦するように構成されている。
【0044】
実施例1の光学系のように、開口絞りS付近に第1及び第2の回折型液晶レンズ11,12を配置すると、第1及び第2の回折型液晶レンズ11,12の有効径を小さくすることができる。
【0045】
また、実施例1の光学系のように、液晶光学素子1’に用いる回折型液晶レンズ11,12を開口絞りS付近に配置すると、物点位置の変動に伴う軸上色収差を中心とした色収差も効果的に補正できる。このとき、次の条件式(3)を満足することが望ましい。
|y/sd|≦0.8 ・・・(3)
但し、yは液晶レンズにおける最軸外主光線の光線高、sdは液晶レンズの有効半径である。
【0046】
また、次の条件式(3')を満足すると、上記作用効果が更に大きくなるので好ましい。
但し、yは液晶レンズにおける最軸外主光線の光線高、sdは液晶レンズの有効半径である。
|y/sd|≦0.7 ・・・(3')
【0047】
さらに、次の条件式(3')を満足すると、上記作用効果がより一層大きくなるので好ましい。
|y/sd|≦0.6 ・・・(3”)
但し、yは液晶レンズにおける最軸外主光線の光線高、sdは液晶レンズの有効半径である。
【0048】
また、実施例1の光学系のように、液晶レンズを備えた液晶光学素子1’の前後のいずれにも正屈折を持つレンズと負屈折を持つレンズを配置しておくと、色収差補正し易いので好ましい。
【0049】
実施例1の液晶光学素子1’を備えた光学系を構成する光学部材の数値データを示す。
なお、以下の数値データの中において示される回転対称な非球面は次式の定義にしたがって示してある。
Z=ch2/[1+√{1−(1+k)c2h2}]+A4h4+A6h6+A8h8+A10h10+・・・
但し、cは頂点の曲率、kは円錐係数、A4は4次非球面係数、A6は6次非球面係数、A8は8次非球面係数、A10は10次非球面係数である。また、hは光軸からの距離であり、光軸に対し垂直な面における水平方向をx、垂直方向をyとしたときh2=x2+y2で示される。
【0050】
また、以下に数値データとして示す回折型液晶レンズの設計法として、次の文献に示されているsweatt法(超高屈折率法)を使用した。
文献:W.C.Sweatt,“Mathematical equivalence between a holographic optical element and an ultra-high index lens”,J.Opt.Soc.Am,Vol.69,No.3(1979)
そして、以下の数値データにおいては、基準波長587.56nmにおける超高屈折率レンズの屈折率=588.56としている。
【0051】
実施例1の光学系における、電圧OFF時の液晶の屈折率(常光屈折率)は1.458467、アッベ数νは65.0、電圧ON時の液晶の屈折率(異常光屈折率)は1.708467、アッベ数νは30、液晶の厚さは0.005mmである。これらは、以下の実施例でも同じである。また、以下、数値実施例における[1−1:無限遠物点]、[1−2:近点(P偏光用)]及び[1−3:近点(S偏光用)]について説明するが、この説明は他の実施例でも同じである。
【0052】
実施例1の光学系では、5面から12面までが液晶レンズ、7面から8面までの間、10面から11面までの間がそれぞれ液晶の層である。
【0053】
ここで、無限遠物点に対しては、P偏光用液晶レンズの回折面(DOE[1])とS偏光用液晶レンズの回折面(DOE[2])は、いずれも動作していない。すなわち、下記の数値データのうち、[1−1:無限遠物点]の数値データに示されているように、液晶の屈折率とアッベ数(1.4585、65.0)は、回折面(1.4585、65.0)と同じである。また、屈折率に関しては、液晶の屈折率、回折面の屈折率及び基板の屈折率はいずれも1.4585で同じになっている。そのため、回折面は物理的に存在しているが、光学的な作用(光偏向作用)は生じない。
【0054】
次に、近点に対しては、P偏光用液晶レンズとS偏光用液晶レンズのいずれもが動作している。ただし、P偏光の光についてはP偏光用液晶レンズのみが偏向作用を生じ、S偏光の光についてはS偏光用液晶レンズのみが偏向作用を生じる。そこで、近点に関しては[1−2:近点(P偏光用)]と[1−3:近点(S偏光用)]の2つの数値データを用いている。
【0055】
[1−2:近点(P偏光用)]は、P偏光の光に関する数値データである。P偏光の光に対しては、P偏光用液晶レンズの回折面(DOE[1])が偏向作用を生じ、S偏光用液晶レンズの回折面(DOE[2])は偏向作用を生じない。そこで、[1−2:近点(P偏光用)]の数値データでは、7面から8面の液晶の屈折率が1.4585から1.7085に変わっている。一方、10面から11面が液晶の屈折率は1.4585のままになっている。
【0056】
また、7面から8面の液晶の屈折率が1.7085になったことにより、P偏光用液晶レンズの回折面(DOE[1])が偏向作用を持つ。そこで、P偏光用液晶レンズの回折面(DOE[1])の屈折率も1.4585から588.56に変わっている。
【0057】
また、[1−3:近点(S偏光用)]はS偏光の光に関する数値データである。S偏光の光に対しては、P偏光用液晶レンズの回折面(DOE[1])は偏向作用を生じることはなく,S偏光用液晶レンズの回折面(DOE[2])に偏向作用が生じる。そこで、[1−3:近点(S偏光用)]の数値データでは、7面から8面の液晶の屈折率は1.4585のままになっている。一方、10面から11面が液晶の屈折率が1.4585から1.7085に変わっている。
【0058】
また、10面から11面の液晶の屈折率が1.7085になったことにより、S偏光用液晶レンズの回折面(DOE[2])が偏向作用を持つ。そこで、S偏光用液晶レンズの回折面(DOE[2])の屈折率も1.4585から588.56に変わっている。
【0059】
数値データ1(実施例1)
[1−1:無限遠物点]
単位 mm面データ
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ ∞
1 105.00 1.20 1.5182 58.9
2 5.09 1.24
3 38.32 1.50 1.7440 44.8
4 -11.49 0.50
5 ∞ 0.30 1.4585 67.8
6 ∞ 0.00 1.4585 65.0
7(回折面)-233418.48(DOE[1]) 0.005 1.4585 65.0
8 ∞ 0.30 1.4585 67.8
9 ∞ 0.00 1.4585 65.0
10(回折面)-237164.15(DOE[2]) 0.005 1.4585 65.0
11 ∞ 0.30 1.4585 67.8
12 ∞ 0.67
13 -10.80 0.28 1.7620 40.1
14 4.90 1.20 1.7282 28.5
15 -8.47 0.50
16(絞り面) 0.40
17 5.58 1.95 1.8160 46.6
18 -4.08 0.01 1.5638 60.7
19 -4.08 0.50 1.8052 25.4
20 4.08 1.87
21* 非球面[1] 2.40 1.8061 40.9
22 -5.66 4.13
23 ∞ 0.50 1.5163 64.1
24 ∞ 2.26
25 ∞ 0.50 1.5163 64.1
26 ∞ 0.49
像 面 ∞ 0.00
【0060】
非球面データ
面番号 第21面(非球面[1])
曲率半径 -36.45
k= 1.2194E-007
A4=-7.9872E-004 A6= 1.0007E-004 A8=-8.1194E-006
A10= 5.4486E-007
【0061】
[1−2:近点(P偏光用)]
単位 mm
面データ
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ 300.00
1 105.00 1.20 1.5182 58.9
2 5.09 1.24
3 38.32 1.50 1.7440 44.8
4 -11.49 0.50
5 ∞ 0.30 1.4585 67.8
6 ∞ 0.00 588.5600 -3.5
7(回折面)-233418.48(DOE[1]) 0.005 1.7085 30.0
8 ∞ 0.30 1.4585 67.8
9 ∞ 0.00 1.4585 65.0
10(回折面)-237164.15(DOE[2]) 0.005 1.4585 65.0
11 ∞ 0.30 1.4585 67.8
12 ∞ 0.67
13 -10.80 0.28 1.7620 40.1
14 4.90 1.20 1.7282 28.5
15 -8.47 0.50
16(絞り面) 0.40
17 5.58 1.95 1.8160 46.6
18 -4.08 0.01 1.5638 60.7
19 -4.08 0.50 1.8052 25.4
20 4.08 1.87
21* 非球面[1] 2.40 1.8061 40.9
22 -5.66 4.13
23 ∞ 0.50 1.5163 64.1
24 ∞ 2.26
25 ∞ 0.50 1.5163 64.1
26 ∞ 0.49
像 面 ∞ 0.00
【0062】
回折面データ
面番号 第7面(DOE[1])
曲率半径 -233418.48
k= 0.0000E+000
A4=-2.4691E-008 A6= 4.1725E-008 A8=-9.1727E-009
【0063】
非球面データ
面番号 第21面(非球面[1])
曲率半径 -36.45
k= 1.2194E-007
A4=-7.9872E-004 A6= 1.0007E-004 A8=-8.1194E-006
A10= 5.4486E-007
【0064】
[1−3:近点(S偏光用)]
単位 mm
面データ
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ 300.00
1 105.00 1.20 1.5182 58.9
2 5.09 1.24
3 38.32 1.50 1.7440 44.8
4 -11.49 0.50
5 ∞ 0.30 1.4585 67.8
6 ∞ 0.00 1.4585 65.0
7(回折面)-233418.48(DOE[1]) 0.005 1.4585 65.0
8 ∞ 0.30 1.4585 67.8
9 ∞ 0.00 588.5600 -3.5
10(回折面)-237164.15(DOE[2]) 0.005 1.7085 30.0
11 ∞ 0.30 1.4585 67.8
12 ∞ 0.67
13 -10.80 0.28 1.7620 40.1
14 4.90 1.20 1.7282 28.5
15 -8.47 0.50
16(絞り面) 0.40
17 5.58 1.95 1.8160 46.6
18 -4.08 0.01 1.5638 60.7
19 -4.08 0.50 1.8052 25.4
20 4.08 1.87
21* 非球面[1] 2.40 1.8061 40.9
22 -5.66 4.13
23 ∞ 0.50 1.5163 64.1
24 ∞ 2.26
25 ∞ 0.50 1.5163 64.1
26 ∞ 0.49
像 面 ∞ 0.00
【0065】
回折面データ
面番号 第10面(DOE[2])
曲率半径 -237164.15
k= 0.0000E+000
A4=-8.7050E-008 A6= 7.4874E-008 A8=-1.4487E-008
【0066】
非球面データ
面番号 第21面(非球面[1])
曲率半径 -36.45
k= 1.2194E-007
A4=-7.9872E-004 A6= 1.0007E-004 A8=-8.1194E-006
A10= 5.4486E-007
【0067】
実施例2
図7は本発明の液晶光学素子を用いた実施例2にかかる光学系の光学構成を無限遠物点合焦時の状態で示す光軸に沿う断面図、図8は実施例2の光学系における無限遠物合焦時での横収差図、図9は実施例2の光学系における近点合焦時(P偏光用液晶レンズのみ動作)での横収差図、図10は実施例2の光学系における近点合焦時(S偏光用液晶レンズのみ動作)での横収差図である。
実施例2の光学系は、液晶光学素子1’において第1の回折型液晶レンズ11、第2の回折型液晶レンズ12として用いている回折型液晶レンズの構成のみが、実施例1の光学系と異なっている。
【0068】
実施例2の光学系では、液晶光学素子1’において第1の回折型液晶レンズ11、第2の回折型液晶レンズ12として用いる回折型液晶レンズは、夫々液晶11d,12dに電圧を印加しないときには、入射光に対して0次光としての作用を与えて、光線偏向作用を持たずに無限遠物点に合焦し、液晶に電圧を印加したときには、入射光に対して1次光としての作用を与えて、レンズ先頭面から200mmの物点に合焦するように構成されている。
その他の構成は、実施例1の光学系と略同じである。
実施例2の液晶光学素子1’は、後述する実施例3の液晶光学素子と比較すると、同じ近点位置(200mm)に合焦するための回折型液晶レンズのパワーが弱くできる位置に回折型液晶レンズを配置しているので、回折型液晶レンズの製作が容易になる。
【0069】
次に、実施例2の液晶光学素子1’を備えた光学系を構成する光学部材の数値データを示す。
実施例2の光学系では、実施例1の光学系と同様、5面から12面までが液晶レンズ、7面から8面までの間、10面から11面までの間がそれぞれ液晶の層である。
数値データ2(実施例2)
[2−1:無限遠物点]
単位 mm
面データ
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ ∞
1 105.00 1.20 1.5182 58.9
2 5.09 1.24
3 38.32 1.50 1.7440 44.8
4 -11.49 0.50
5 ∞ 0.30 1.4585 67.8
6 ∞ 0.00 1.4585 65.0
7(回折面)-158686.60(DOE[3]) 0.005 1.4585 65.0
8 ∞ 0.30 1.4585 67.8
9 ∞ 0.00 1.4585 65.0
10(回折面)-161088.47(DOE[4]) 0.005 1.4585 65.0
11 ∞ 0.30 1.4585 67.8
12 ∞ 0.67
13 -10.80 0.28 1.7620 40.1
14 4.90 1.20 1.7282 28.5
15 -8.47 0.50
16(絞り面) 0.40
17 5.58 1.95 1.8160 46.6
18 -4.08 0.01 1.5638 60.7
19 -4.08 0.50 1.8052 25.4
20 4.08 1.87
21* 非球面[2] 2.40 1.8061 40.9
22 -5.66 4.13
23 ∞ 0.50 1.5163 64.1
24 ∞ 2.26
25 ∞ 0.50 1.5163 64.1
26 ∞ 0.49
像 面 ∞ 0.00
【0070】
非球面データ
面番号 第21面(非球面[2])
曲率半径 -36.45
k= 1.2194E-007
A4=-7.9872E-004 A6= 1.0007E-004 A8=-8.1194E-006
A10= 5.4486E-007
【0071】
[2−2:近点(P偏光用)]
単位 mm
面データ
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ 200.00
1 105.00 1.20 1.5182 58.9
2 5.09 1.24
3 38.32 1.50 1.7440 44.8
4 -11.49 0.50
5 ∞ 0.30 1.4585 67.8
6 ∞ 0.00 588.5600 -3.5
7(回折面)-158686.60(DOE[3]) 0.005 1.7085 30.0
8 ∞ 0.30 1.4585 67.8
9 ∞ 0.00 1.4585 65.0
10(回折面)-161088.47(DOE[4]) 0.005 1.4585 65.0
11 ∞ 0.30 1.4585 67.8
12 ∞ 0.67
13 -10.80 0.28 1.7620 40.1
14 4.90 1.20 1.7282 28.5
15 -8.47 0.50
16(絞り面) 0.40
17 5.58 1.95 1.8160 46.6
18 -4.08 0.01 1.5638 60.7
19 -4.08 0.50 1.8052 25.4
20 4.08 1.87
21* 非球面[2] 2.40 1.8061 40.9
22 -5.66 4.13
23 ∞ 0.50 1.5163 64.1
24 ∞ 2.26
25 ∞ 0.50 1.5163 64.1
26 ∞ 0.49
像 面 ∞ 0.00
【0072】
回折面データ
面番号 第7面(DOE[3])
曲率半径 -158686.60
k= 0.0000E+000
A4=-2.6651E-008 A6= 3.2511E-008 A8=-7.9738E-009
【0073】
非球面データ
面番号 第21面(非球面[2])
曲率半径 -36.45
k= 1.2194E-007
A4=-7.9872E-004 A6= 1.0007E-004 A8=-8.1194E-006
A10= 5.4486E-007
【0074】
[2−3:近点(S偏光用)]
単位 mm
面データ
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ 200.00
1 105.00 1.20 1.5182 58.9
2 5.09 1.24
3 38.32 1.50 1.7440 44.8
4 -11.49 0.50
5 ∞ 0.30 1.4585 67.8
6 ∞ 0.00 1.4585 65.0
7(回折面)-158686.60(DOE[3]) 0.005 1.4585 65.0
8 ∞ 0.30 1.4585 67.8
9 ∞ 0.00 588.5600 -3.5
10(回折面)-161088.47(DOE[4]) 0.005 1.7085 30.0
11 ∞ 0.30 1.4585 67.8
12 ∞ 0.67
13 -10.80 0.28 1.7620 40.1
14 4.90 1.20 1.7282 28.5
15 -8.47 0.50
16(絞り面) 0.40
17 5.58 1.95 1.8160 46.6
18 -4.08 0.01 1.5638 60.7
19 -4.08 0.50 1.8052 25.4
20 4.08 1.87
21* 非球面[2] 2.40 1.8061 40.9
22 -5.66 4.13
23 ∞ 0.50 1.5163 64.1
24 ∞ 2.26
25 ∞ 0.50 1.5163 64.1
26 ∞ 0.49
像 面 ∞ 0.00
【0075】
回折面データ
面番号 第10面(DOE[4])
曲率半径 -161088.47
k= 0.0000E+000
A4=-1.0564E-007 A6= 7.1812E-008 A8=-1.3925E-008
【0076】
非球面データ
面番号 第21面(非球面[2])
曲率半径 -36.45
k= 1.2194E-007
A4=-7.9872E-004 A6= 1.0007E-004 A8=-8.1194E-006
A10= 5.4486E-007
【0077】
実施例3
図11は本発明の液晶光学素子を用いた実施例3にかかる光学系の光学構成を無限遠物点合焦時の状態で示す光軸に沿う断面図、図12は図11の光学系に用いられている液晶光学素子の構成を示す説明図である。図13は実施例3の光学系における無限遠物合焦時での横収差図、図14は実施例3の光学系における近点合焦時(P偏光用液晶レンズのみ動作)での横収差図、図15は実施例3の光学系における近点合焦時(S偏光用液晶レンズのみ動作)での横収差図である。
実施例3の光学系は、結像光学系の最も物体側に液晶レンズを配置した構成としている。
詳しくは、物体側から順に、液晶光学素子1”、両凹レンズL1’、両凸レンズL2、両凸レンズL3’と両凹レンズL4’との接合レンズ、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL5’、平行平板P1、及び平行平板P2を備えている。なお、図11中、Sは開口絞り、IMは撮像素子の撮像面を示す。
【0078】
液晶光学素子1”は、図1に示した実施形態の液晶光学素子1と同様の構造であるので、同一の部材については同一の符号を付して説明を省略する。
【0079】
また、実施例3の光学系では、液晶光学素子1”において第1の回折型液晶レンズ11、第2の回折型液晶レンズ12として用いている回折型液晶レンズは、夫々液晶11d,12dに電圧を印加しないときには、入射光に対して0次光としての作用を与えて、光線偏向作用を持たずに無限遠物点に合焦し、液晶に電圧を印加したときには、入射光に対して1次光としての作用を与えて、レンズ先頭面から200mmの物点に合焦するように構成されている。
液晶光学素子1”のその他の構成は、実施例1,2における液晶光学素子1’と略同じである。
【0080】
実施例3の光学系によれば、液晶レンズの焦点距離が204mmのとき、近点200mmに合焦する。このため、実施例1、2の光学系に比べて液晶レンズのパワーが強くなるが、レンズ系の先頭に液晶レンズがあるので、液晶レンズの配線の処理やメカ機構上好ましいものとなる。
【0081】
次に、実施例3の液晶光学素子1”を備えた光学系を構成する光学部材の数値データを示す。
実施例3の光学系では、1面から8面までが液晶レンズ、3面から4面までの間、6面から7面までの間がそれぞれ液晶の層である。
【0082】
数値データ3(実施例3)
[3−1:無限遠物点]
単位 mm
面データ
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ ∞
1 ∞ 0.30 1.4585 67.8
2 ∞ 0.00 1.4585 65.0
3(回折面)-119457.53(DOE[5]) 0.005 1.4585 65.0
4 ∞ 0.30 1.4585 67.8
5 ∞ 0.00 1.4585 65.0
6(回折面)-119939.41(DOE[6]) 0.005 1.4585 65.0
7 ∞ 0.30 1.4585 67.8
8 ∞ 1.00
9 -13.34 0.55 1.5163 64.1
10 5.74 0.99
11 17.40 1.12 2.0033 28.3
12 -12.42 0.60
13(絞り面) 0.40
14 5.58 1.95 1.8160 46.6
15 -4.08 0.01 1.5638 60.7
16 -4.08 0.50 1.8052 25.4
17 4.08 1.87
18* 非球面[3] 2.40 1.8061 40.9
19 -5.66 3.05
20 ∞ 0.50 1.5163 64.1
21 ∞ 2.26
22 ∞ 0.50 1.5163 64.1
23 ∞ 0.48
像 面 ∞ 0.00
【0083】
非球面データ
面番号 第18面(非球面[3])
曲率半径 -36.45
k= 1.2194E-007
A4=-7.9872E-004 A6= 1.0007E-004 A8=-8.1194E-006
A10= 5.4486E-007
【0084】
[3−2:近点(P偏光用)]
単位 mm面データ
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ 200.00
1 ∞ 0.30 1.4585 67.8
2 ∞ 0.00 588.5600 -3.5
3(回折面)-119457.53(DOE[5]) 0.005 1.7085 30.0
4 ∞ 0.30 1.4585 67.8
5 ∞ 0.00 1.4585 65.0
6(回折面)-119939.41(DOE[6]) 0.005 1.4585 65.0
7 ∞ 0.30 1.4585 67.8
8 ∞ 1.00
9 -13.34 0.55 1.5163 64.1
10 5.74 0.99
11 17.40 1.12 2.0033 28.3
12 -12.42 0.60
13(絞り面) 0.40
14 5.58 1.95 1.8160 46.6
15 -4.08 0.01 1.5638 60.7
16 -4.08 0.50 1.8052 25.4
17 4.08 1.87
18* 非球面[3] 2.40 1.8061 40.9
19 -5.66 3.05
20 ∞ 0.50 1.5163 64.1
21 ∞ 2.26
22 ∞ 0.50 1.5163 64.1
23 ∞ 0.48
像 面 ∞ 0.00
【0085】
回折面データ
面番号 第3面(DOE[5])
曲率半径 -119457.53
k= 0.0000E+000
A4= 6.2474E-008 A6=-4.9008E-009
【0086】
非球面データ
面番号 第18面(非球面[3])
曲率半径 -36.45
k= 1.2194E-007
A4=-7.9872E-004 A6= 1.0007E-004 A8=-8.1194E-006
A10= 5.4486E-007
【0087】
[3−3:近点(S偏光用)]
単位 mm
面データ
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ 200.00
1 ∞ 0.30 1.4585 67.8
2 ∞ 0.00 1.4585 65.0
3(回折面)-119457.53(DOE[5]) 0.005 1.4585 65.0
4 ∞ 0.30 1.4585 67.8
5 ∞ 0.00 588.5600 -3.5
6(回折面)-119939.41(DOE[6]) 0.005 1.7085 30.0
7 ∞ 0.30 1.4585 67.8
8 ∞ 1.00
9 -13.34 0.55 1.5163 64.1
10 5.74 0.99
11 17.40 1.12 2.0033 28.3
12 -12.42 0.60
13(絞り面) 0.40
14 5.58 1.95 1.8160 46.6
15 -4.08 0.01 1.5638 60.7
16 -4.08 0.50 1.8052 25.4
17 4.08 1.87
18* 非球面[3] 2.40 1.8061 40.9
19 -5.66 3.05
20 ∞ 0.50 1.5163 64.1
21 ∞ 2.26
22 ∞ 0.50 1.5163 64.1
23 ∞ 0.48
像 面 ∞ 0.00
【0088】
回折面データ
面番号 第6面(DOE[6])
曲率半径 -119939.41
k= 0.0000E+000
A4= 5.4913E-008 A6=-4.5332E-009
【0089】
非球面データ
面番号 第18面(非球面[3])
曲率半径 -36.45
k= 1.2194E-007
A4=-7.9872E-004 A6= 1.0007E-004 A8=-8.1194E-006
A10= 5.4486E-007
【0090】
次に、実施例1〜実施例3の光学系における条件式パラメータ対応値及び光学系の各種データを次の表1及び表2に示す。
表1
表2
なお、レンズ全長は先頭面から近軸像面までの距離、BFはレンズ最終面から近軸像面までの距離である。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、小型で迅速な焦点合わせをする画像取得装置を用いることが求められる分野に有用である。本発明における画像取得装置には、カメラ、顕微鏡、内視鏡、望遠鏡、及びスキャナー等の光学機器で静止画像や動画などを撮影する機器を含む。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる液晶光学素子の基本構成及び動作原理を示す概念図であって、(a)は液晶レンズに電圧を印加したとき、(b)は液晶レンズに電圧を印加したときの入射光線の受ける作用を示している。
【図2】本発明の液晶光学素子を用いた実施例1にかかる光学系の光学構成を無限遠物点合焦時の状態で示す光軸に沿う断面図である。
【図3】図2の光学系に用いられている液晶光学素子の構成を示す説明図である。
【図4】実施例1の光学系における無限遠物合焦時での横収差図である。
【図5】実施例1の光学系における近点合焦時(P偏光用液晶レンズのみ動作)での横収差図である。
【図6】実施例1の光学系における近点合焦時(S偏光用液晶レンズのみ動作)での横収差図である。
【図7】本発明の液晶光学素子を用いた実施例2にかかる光学系の光学構成を無限遠物点合焦時の状態で示す光軸に沿う断面図である。
【図8】実施例2の光学系における無限遠物合焦時での横収差図である。
【図9】実施例2の光学系における近点合焦時(P偏光用液晶レンズのみ動作)での横収差図である。
【図10】実施例2の光学系における近点合焦時(S偏光用液晶レンズのみ動作)での横収差図である。
【図11】本発明の液晶光学素子を用いた実施例3にかかる光学系の光学構成を無限遠物点合焦時の状態で示す光軸に沿う断面図である。
【図12】図11の光学系に用いられている液晶光学素子の構成を示す説明図である。
【図13】実施例3の光学系における無限遠物合焦時での横収差図である。
【図14】実施例3の光学系における近点合焦時(P偏光用液晶レンズのみ動作)での横収差図である。
【図15】実施例3の光学系における近点合焦時(S偏光用液晶レンズのみ動作)での横収差図である。
【図16】図1の液晶光学素子に適用可能な回折型液晶レンズの一構成例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0093】
1,1’,1” 液晶光学素子
11 第1の回折型液晶レンズ
11a,12a 基板
11a1,12a1 鋸歯状レリーフ
11b,12b 薄膜透明電極
11c,12c 対向電極
11d,12d 液晶
12 第2の回折型液晶レンズ
13a,13b,13c 基板
L1 物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズ
L2,L4,L5,L3’ 両凸レンズ
L3,L6,L1’,L4’ 両凹レンズ
L7,L5’ 物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズ
P1,P2 平行平板
S 開口絞り
IM 撮像素子の撮像面
【技術分野】
【0001】
本発明は、結像光学系に関するものであり、より詳しくは光学特性可変光学素子としての液晶光学素子、それを備えた光学系、及びそれらを備えた画像取得装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
結像光学系の合焦は、通常、レンズを光軸方向に移動することによって行われる。しかし、レンズ系の全体或いは一部を移動させるためのスペースやアクチュエータが必要になり、光学系を小型化する上で好ましくない。そこで、これらの課題を解決する手段として、液晶レンズを用いた可変焦点レンズにより、レンズ系を移動させずに変倍や合焦をするようにした光学系が一般的に知られている。しかしながら、このような液晶レンズでは偏光板が必要であるため、光量損失が多くなるという問題があった。そこで、このような問題を解決する手段として、第1の回折型液晶レンズと、第2の回折型液晶レンズとを、互いに配向方向が光軸と垂直な面内で直交するように対向配置することで偏光板を必要としない焦点可変機構を実現する結像光学系が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−73758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に記載の光学系では、レンズ系全体でのP偏光の結像位置とS偏光の結像位置が異なってしまい、十分な結像性能が得られないという問題があった。
【0004】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、光量損失が無く、高い結像性能を有する液晶光学素子、それを備えた光学系、及びそれらを備えた画像取得装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明による液晶光学素子は、第1の液晶レンズ及び第2の液晶レンズを有し、前記第1の液晶レンズと前記第2の液晶レンズとを、互いに配向方向が光軸と垂直な面内で直交するように対向配置するとともに、前記第1の液晶レンズにおいて光線偏向作用を受ける一方の偏光方向の入射光に対する該第1の液晶レンズの焦点距離に比べて、前記第2の液晶レンズにおいて光線偏向作用を受ける、前記一方の偏光方向に直交する他方の偏光方向の入射光に対する該第2の液晶レンズの焦点距離が短くなるようにしたことを特徴としている。
【0006】
また、本発明の液晶光学素子においては、次の条件式(1)を満足するのが好ましい。
0<|(f1−f2)/f1|≦0.5 ・・・(1)
但し、f1は前記第1の液晶レンズにおいて光線偏向作用を受ける前記一方の偏光方向の入射光に対する該第1の液晶レンズの焦点距離、f2は前記第2の液晶レンズにおいて光線偏向作用を受ける、前記一方の偏光方向に直交する他方の偏光方向の入射光に対する該第2の液晶レンズの焦点距離である。
【0007】
また、本発明による光学系は、上記本発明のいずれかの液晶光学素子を有し、前記第1の液晶レンズにおいて光線偏向作用を受ける前記一方の偏光方向の入射光に対する焦点位置と、前記第2の液晶レンズにおいて光線偏向作用を受ける、前記一方の偏光方向に直交する他方の偏光方向の入射光に対する焦点位置とが略一致するようにしたことを特徴としている。
【0008】
また、本発明による光学系は、上記本発明のいずれかの液晶光学素子を有し、前記液晶光学素子に印加する電圧を制御して、異なる物点からの入射光に対する焦点位置のずれの補正を行うことを特徴としている。
【0009】
また、本発明の光学系においては、無限遠物点合焦時において、前記液晶光学素子が平行平板として作用するように、該液晶光学素子に入射する光束を回折又は屈折することなく透過させるようにするのが好ましい。
【0010】
また、本発明の光学系においては、前記液晶光学素子が光線偏向作用を持たないときに遠点物点に合焦し、前記液晶光学素子が光線偏向作用を持つときに近点物点に合焦するようにするのが好ましい。
【0011】
また、本発明の光学系においては、次の条件式(2)を満足するのが好ましい。
|Δ/f|≦0.6 ・・・(2)
但し、Δは前記第1の液晶レンズと前記第2の液晶レンズの間隔、fは該光学系の焦点距離である。
【0012】
また、本発明による画像取得装置は、上記本発明のいずれかの光学系と、撮像素子と、ズーム光学系、を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光量損失が無く、高い結像性能を有する液晶光学素子、それを備えた光学系、及びそれらを備えた画像取得装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
実施例の説明に先立ち、本発明の作用効果について説明する。なお、説明の便宜上、以下の説明においては、互いに直交する偏波面を有する2つの直線偏光のうち、一方の偏光方向の直線偏光をP偏光、他方の偏光方向の直線偏光をS偏光とする。
【0015】
図1は本発明の第一実施形態にかかる液晶光学素子の基本構成及び動作原理を示す概念図であって、(a)は液晶レンズに電圧を印加しないとき、(b)は液晶レンズに電圧を印加したとき、の入射光線の受ける作用を夫々示している。
本実施形態の液晶光学素子1は、第1の回折型液晶レンズ11と、第2の回折型液晶レンズ12とを備えている。なお、図1の例では、液晶光学素子1は、第1の回折型液晶レンズ11及び第2の回折型液晶レンズ12が、基板13a,13b,13cの間に積層されることによって一体化されている。
【0016】
第1の回折型液晶レンズ11及び第2の回折型液晶レンズ12は、例えば、図16に示すように、所定の鋸歯状レリーフ11a1(12a1)を有する基板11a(12a)上に、薄膜透明電極11b(12b)と対向電極11c(12c)とにより液晶11d(12d)を挟持してなる。そして、薄膜透明電極11b(12b)と対向電極11c(12c)との間に電極引出線を介して所望の電圧を印加することによって、液晶11d(12d)の屈折率を変化させ、液晶11d(12d)層の位相分布を変化させて、液晶レンズの回折次数を変化させるように構成されている。
【0017】
そして、本実施形態の液晶光学素子では、このように構成された2つの回折型液晶レンズ11及び12を備え、互いの配光方向が光軸と垂直な面内で直交するように夫々が対向配置されている。このため、第1の回折型液晶レンズ11が光線偏向作用を持つ偏光方向と、第2の回折型液晶レンズ12が光線偏向作用を持つ偏光方向とが直交する。
例えば、第1の回折型液晶レンズ11の液晶11dに電圧を印加することによって、第1の回折型液晶レンズ11がP偏光(又はS偏光)の入射光に対して光線偏向作用を持つ場合には、第2の回折型液晶レンズ12の液晶12dに電圧を印加することによって、第2の回折型液晶レンズ12がS偏光(又はP偏光)の入射光に対して光線偏向作用を持つ。なお、図1の例では、夫々液晶に電圧を印加することによって、第1の回折型液晶レンズ11がP偏光の入射光に対して光線偏向作用を持ち、第2の回折型液晶レンズ12がS偏光の入射光に対して光線偏向作用を持つようになっている。また、夫々の回折型液晶レンズ11,12における基板の屈折率と液晶11d,12dの常光屈折率とが等しくなるように設定される。
【0018】
このように構成された本実施形態の液晶光学素子1は、次のように動作する。
まず、第1の回折型液晶レンズ11の液晶11d、第2の回折型液晶レンズ12の液晶12dのいずれにも電圧を印加しない場合、液晶11d,12dは入射する光線の偏光方向(即ち、P偏光、S偏光の方向)に関係なく、常光屈折率として作用する。そして、夫々の回折型液晶レンズ11,12における基板の屈折率と液晶11d,12dの常光屈折率は等しいため、夫々の回折型液晶レンズ11,12は入射する光線の偏光方向に関係なく光線偏向作用を持たず、平行平板として作用する。即ち、夫々の回折型液晶レンズ11,12に入射する光線は、偏光方向(P偏光、S偏光)に関係なく、夫々の回折型液晶レンズ11,12で夫々0次回折光としての作用を受ける。
【0019】
これに対し、第1の回折型液晶レンズ11の液晶11dに電圧を印加した場合には、液晶11dはP偏光に対して異常光屈折率として作用し、第1の回折型液晶レンズ11はP偏光に対して1次回折光でブレーズ化された回折光学素子として機能する。このため、P偏光は1次回折光としての光線偏向作用を受ける。一方、液晶11dはS偏光に対しては、常光屈折率分布として作用する。このため、第1の回折型液晶レンズ11はS偏光に対して平行平板として作用し、S偏光は光線偏向作用を受けない。
【0020】
また、第2の回折型液晶レンズ12の液晶12dに電圧を印加した場合には、液晶12dはS偏光に対して異常光屈折率として作用し、第2の回折型液晶レンズ12はS偏光に対して1次回折光でブレーズ化された回折光学素子として機能する。このため、S偏光は1次回折光としての光線偏向作用を受ける。一方、液晶12dはP偏光に対しては、常光屈折率分布として作用する。このため、第2の回折型液晶レンズ12はP偏光に対して平行平板として作用し、P偏光は光線偏向作用を受けない。
【0021】
このため、本実施形態の液晶光学素子1において液晶11dと液晶12dの両方に夫々に電圧を印加すると、入射光は、第1の回折型液晶レンズ11において、P偏光が光線偏向作用を受けて光軸に対し所定方向に偏向されるとともにS偏光が光線偏向作用を受けないで出射し、第2の回折型液晶レンズ12に入射する。そして、第2の回折型液晶レンズ12において、S偏光が光線偏向作用を受けて光軸に対し所定方向に偏向されるとともに、P偏光が光線偏向作用を受けずに第1の回折型液晶レンズ11を介して偏向された方向に出射する。
【0022】
従って、本実施形態の液晶光学素子1によれば、入射する光線は、P偏光が第1の回折型液晶レンズ11で光線偏向作用を受け、S偏光が第2の回折型液晶レンズ12で光線偏向作用を受けるというように、P方向とS方向の偏光方向に関係なくいずれかの回折型液晶レンズで光線偏向作用を受けることになるので、光量ロスが無くなる。
【0023】
また、本実施形態の液晶光学素子1は、回折型液晶レンズを用いて構成されており、回折型液晶レンズは、液晶厚を薄くできる。このため、本実施形態の液晶光学素子1によれば、液晶レンズを低電圧で高速駆動できる。また、第1の回折型液晶レンズ11と第2の回折型液晶レンズ12の間隔を小さくすることができる。その結果、後述するように、第1の回折型液晶レンズ11を介して光線偏向作用を受けて偏向されたP偏光と、第2の回折型液晶レンズ12を介して光線偏向作用を受けて偏向されたS偏光の結像位置のずれをなくすように構成した場合において、P偏光とS偏光との結像の非対称性を小さくし易くなる。
【0024】
なお、本実施形態の液晶光学素子1においては、第1の回折型液晶レンズ11と第2の回折型液晶レンズ12は、図1に示したように、積層構造として一体化されていると、保持などの点で好ましい。なお、別個に備えても勿論よい。
【0025】
また、図1の例では、1次回折光として作用する構成について説明したが、これに制限されることはなく、2次回折光、3次回折光として作用する構成としてもよい。
【0026】
また、本実施形態の液晶光学素子1は、第1の回折型液晶レンズ11において光線偏向作用を受ける(互いに直交する偏波面を有する2つの直線偏光のうちの)一方の偏光方向(ここではP偏光)の入射光に対する第1の回折型液晶レンズ11の所定次数光(例えば1次光)での焦点距離に比べて、第2の回折型液晶レンズ12において光線偏向作用を受ける、一方の偏光方向に直交する他方の偏光方向(ここではS偏光)の入射光に対する第2の回折型液晶レンズ12の所定次数光と同一次数光での焦点距離が短くなるように構成されている。
【0027】
図1に示したように、第1の回折型液晶レンズ11と第2の回折型液晶レンズ12を積層した場合、第1の回折型液晶レンズ11の回折面と第2の回折型液晶レンズ12の回折面は離れている。
そのため、第1の回折型液晶レンズ11の焦点距離と第2の回折型液晶レンズ12の焦点距離とが等しいと、P偏光とS偏光の一方が焦点の合った状態、他方が焦点のずれた状態で結像面に入射することとなり、結像面において二重像になってしまう。
そこで、本実施形態の液晶光学素子1では、第1の回折型液晶レンズ11で光線偏向作用を受ける偏光(ここではP偏光)と第2の回折型液晶レンズ12で光線偏向作用を受ける偏光(ここではS偏光)における同一次数光の結像位置(焦点位置)がほぼ一致するように、第1の回折型液晶レンズ11と第2の回折型液晶レンズ12の焦点距離を異ならせている。即ち、第1の回折型液晶レンズ11における一方の偏光方向(ここではP偏光)の入射光に対する焦点距離よりも、第2の回折型液晶レンズ12における一方の偏光方向に直交する他方の偏光方向(ここではS偏光)の入射光に対する同一次数の焦点距離が短くなるように構成している。
このようにすれば、2重像を防ぐことができる。
【0028】
なお、その場合、次の条件式(1)を満足するのが好ましい。
0<|(f1−f2)/f1|≦0.5 ・・・(1)
但し、f1は第1の回折型液晶レンズ11の焦点距離、f2は第2の回折型液晶レンズ12の焦点距離である。
【0029】
条件式(1)の上限を上回ると、第1の回折型液晶レンズ11と第2の回折型液晶レンズ12の焦点距離の差が大きくなり、第1の回折型液晶レンズ11で光線偏向作用を受ける偏光と第2の回折型液晶レンズ12で光線偏向作用を受ける偏光とで結像の非対称性が大きくなってしまう。
【0030】
好ましくは、次の条件式(1')を満足するのがよい。
0<|(f1−f2)/f1|≦0.4 ・・・(1')
但し、f1は第1の回折型液晶レンズ11の焦点距離、f2は第2の回折型液晶レンズ12の焦点距離である。
【0031】
さらに、好ましくは、次の条件式(1”)を満足するのがよい。
0<|(f1−f2)/f1|≦0.3 ・・・(1”)
但し、f1は第1の回折型液晶レンズ11の焦点距離、f2は第2の回折型液晶レンズ12の焦点距離である。
【0032】
また、本発明の光学系では、光学系全体として、第1の回折型液晶レンズ11で光線偏向作用を受ける偏光(ここではP偏光)と第2の回折型液晶レンズ12で光線偏向作用を受ける偏光(ここではS偏光)における同一次数光の結像位置(焦点位置)がほぼ一致するように、夫々の液晶レンズの焦点距離が設定されている。
ここで、結像位置(焦点位置)がほぼ一致するとは、理想的には、それぞれの偏光方向における結像位置が完全に一致していることが望ましいが、光学系全体として要求される結像性能に影響を与えない程度に、結像位置が異なっていてもよいことを意味する。例えば、その光学系では2重像として認識できない範囲の結像位置のずれの程度が挙げられる。
【0033】
また、本発明の光学系は、本実施形態として説明したいずれかの液晶光学素子1と、少なくとも1枚のレンズを有し、液晶光学素子1に印加する電圧を制御して、異なる物点からの入射光に対する焦点位置のずれの補正(合焦)を行うようにしている。
このようにすれば、光学系において上述した本実施形態の液晶光学素子1の効果が得られる。
【0034】
また、本発明の光学系においては、上述した本実施形態の液晶光学素子1が光線偏向作用を持たないときに遠点物点に合焦し、液晶光学素子1が光線偏向作用を持つときに近点物点に合焦するのが好ましい。
液晶光学素子1に用いる液晶レンズが製作誤差を大きく持つ場合、液晶レンズの光線偏向作用誤差による性能劣化が問題となる可能性がある。
しかるに、本発明の光学系のように遠点物点に対して液晶レンズが光線偏向作用を持たないように構成すれば、近点物点よりも高い結像性能が要求される遠点物点に対する性能劣化を回避することができる。
【0035】
また、本発明の光学系においては、次の条件式(2)を満足するのが好ましい。
|Δ/f|≦0.6 ・・・(2)
但し、Δは第1の回折型液晶レンズ11と第2の回折型液晶レンズ12の間隔、fはこの光学系の焦点距離である。
【0036】
条件式(2)の上限値を上回ると、第1の回折型液晶レンズ11で光線偏向作用を受ける偏光と、第2の回折型液晶レンズ12で光線偏向作用を受ける偏光との結像の非対象性が大きくなり過ぎる。
なお、好ましくは、次の条件式(2')を満足するのがよい、
0.0001≦|Δ/f|≦0.4 ・・・(2’)
但し、Δは第1の回折型液晶レンズ11と第2の回折型液晶レンズ12の間隔、fはこの光学系の焦点距離である。
さらに、好ましくは、次の条件式(2”)を満足するのがよい、
0.0001≦|Δ/f|≦0.2 ・・・(2”)
但し、Δは第1の回折型液晶レンズ11と第2の回折型液晶レンズ12の間隔、fはこの光学系の焦点距離である。
【0037】
そして、本発明のカメラは、上記本発明のいずれかの光学系と、撮像素子と、ズーム光学系を備えている。
このようにすれば、カメラにおいて上述した本実施形態の液晶光学素子の効果が得られる。
【0038】
なお、本実施形態の液晶光学素子1としては、回折型液晶レンズを例に説明したが、これに限られず、例えば、ゾーンプレート形状、平凸、及び平凹レンズ形状の液晶レンズであってもよく、更に、同心状に液晶層を形成した屈折率分布型レンズであってもよい。
【0039】
以下に、本発明の光学系の実施例1から実施例3について図面を参照して説明する。
光路図を図2〜図15に示す。
【0040】
実施例1
図2は本発明の液晶光学素子を用いた実施例1にかかる光学系の光学構成を無限遠物点合焦時の状態で示す光軸に沿う断面図、図3は図2の光学系に用いられている液晶光学素子の構成を示す説明図である。図4は実施例1の光学系における無限遠物合焦時での横収差図、図5は実施例1の光学系における近点合焦時(P偏光用液晶レンズのみ動作)での横収差図、図6は実施例1の光学系における近点合焦時(S偏光用液晶レンズのみ動作)での横収差図である。
実施例1の光学系は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL1、両凸レンズL2、液晶光学素子1’、両凹レンズL3と両凸レンズL4との接合レンズ、両凸レンズL5と両凹レンズL6との接合レンズ、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL7、平行平板P1、及び平行平板P2を備えている。
【0041】
なお、図2中、レンズ断面図におけるr1、r2、……及びd1、d2、……の数字は、数値データにおける面番号の数字1、2、……に対応する。また、Sは開口絞り、IMは撮像素子の撮像面を示す。また、以下の数値データにおいて、屈折率及びアッベ数は、d線における値である(以下、他の実施例においても同じ)。
【0042】
液晶光学素子1’は、図1に示した実施形態の液晶光学素子1と同様の構造であるので、同一の部材については同一の符号を付して説明を省略する。
実施例1にかかる光学系では、光学系全体として、第1の回折型液晶レンズ11で光線偏向作用を受ける偏光(ここではP偏光)と第2の回折型液晶レンズ12で光線偏向作用を受ける偏光(ここではS偏光)における同一次数光の結像位置(焦点位置)がほぼ一致するように、夫々の液晶レンズの焦点距離が設定されている。
【0043】
また、実施例1の光学系では、液晶光学素子1’において第1の回折型液晶レンズ11、第2の回折型液晶レンズ12として用いる回折型液晶レンズは、夫々液晶11d,12dに電圧を印加しないときには、入射光に対して0次光としての作用を与えて、光線偏向作用を持たずに無限遠物点に合焦し、液晶に電圧を印加したときには、入射光に対して1次光としての作用を与えて、レンズ先頭面から300mmの物点に合焦するように構成されている。
【0044】
実施例1の光学系のように、開口絞りS付近に第1及び第2の回折型液晶レンズ11,12を配置すると、第1及び第2の回折型液晶レンズ11,12の有効径を小さくすることができる。
【0045】
また、実施例1の光学系のように、液晶光学素子1’に用いる回折型液晶レンズ11,12を開口絞りS付近に配置すると、物点位置の変動に伴う軸上色収差を中心とした色収差も効果的に補正できる。このとき、次の条件式(3)を満足することが望ましい。
|y/sd|≦0.8 ・・・(3)
但し、yは液晶レンズにおける最軸外主光線の光線高、sdは液晶レンズの有効半径である。
【0046】
また、次の条件式(3')を満足すると、上記作用効果が更に大きくなるので好ましい。
但し、yは液晶レンズにおける最軸外主光線の光線高、sdは液晶レンズの有効半径である。
|y/sd|≦0.7 ・・・(3')
【0047】
さらに、次の条件式(3')を満足すると、上記作用効果がより一層大きくなるので好ましい。
|y/sd|≦0.6 ・・・(3”)
但し、yは液晶レンズにおける最軸外主光線の光線高、sdは液晶レンズの有効半径である。
【0048】
また、実施例1の光学系のように、液晶レンズを備えた液晶光学素子1’の前後のいずれにも正屈折を持つレンズと負屈折を持つレンズを配置しておくと、色収差補正し易いので好ましい。
【0049】
実施例1の液晶光学素子1’を備えた光学系を構成する光学部材の数値データを示す。
なお、以下の数値データの中において示される回転対称な非球面は次式の定義にしたがって示してある。
Z=ch2/[1+√{1−(1+k)c2h2}]+A4h4+A6h6+A8h8+A10h10+・・・
但し、cは頂点の曲率、kは円錐係数、A4は4次非球面係数、A6は6次非球面係数、A8は8次非球面係数、A10は10次非球面係数である。また、hは光軸からの距離であり、光軸に対し垂直な面における水平方向をx、垂直方向をyとしたときh2=x2+y2で示される。
【0050】
また、以下に数値データとして示す回折型液晶レンズの設計法として、次の文献に示されているsweatt法(超高屈折率法)を使用した。
文献:W.C.Sweatt,“Mathematical equivalence between a holographic optical element and an ultra-high index lens”,J.Opt.Soc.Am,Vol.69,No.3(1979)
そして、以下の数値データにおいては、基準波長587.56nmにおける超高屈折率レンズの屈折率=588.56としている。
【0051】
実施例1の光学系における、電圧OFF時の液晶の屈折率(常光屈折率)は1.458467、アッベ数νは65.0、電圧ON時の液晶の屈折率(異常光屈折率)は1.708467、アッベ数νは30、液晶の厚さは0.005mmである。これらは、以下の実施例でも同じである。また、以下、数値実施例における[1−1:無限遠物点]、[1−2:近点(P偏光用)]及び[1−3:近点(S偏光用)]について説明するが、この説明は他の実施例でも同じである。
【0052】
実施例1の光学系では、5面から12面までが液晶レンズ、7面から8面までの間、10面から11面までの間がそれぞれ液晶の層である。
【0053】
ここで、無限遠物点に対しては、P偏光用液晶レンズの回折面(DOE[1])とS偏光用液晶レンズの回折面(DOE[2])は、いずれも動作していない。すなわち、下記の数値データのうち、[1−1:無限遠物点]の数値データに示されているように、液晶の屈折率とアッベ数(1.4585、65.0)は、回折面(1.4585、65.0)と同じである。また、屈折率に関しては、液晶の屈折率、回折面の屈折率及び基板の屈折率はいずれも1.4585で同じになっている。そのため、回折面は物理的に存在しているが、光学的な作用(光偏向作用)は生じない。
【0054】
次に、近点に対しては、P偏光用液晶レンズとS偏光用液晶レンズのいずれもが動作している。ただし、P偏光の光についてはP偏光用液晶レンズのみが偏向作用を生じ、S偏光の光についてはS偏光用液晶レンズのみが偏向作用を生じる。そこで、近点に関しては[1−2:近点(P偏光用)]と[1−3:近点(S偏光用)]の2つの数値データを用いている。
【0055】
[1−2:近点(P偏光用)]は、P偏光の光に関する数値データである。P偏光の光に対しては、P偏光用液晶レンズの回折面(DOE[1])が偏向作用を生じ、S偏光用液晶レンズの回折面(DOE[2])は偏向作用を生じない。そこで、[1−2:近点(P偏光用)]の数値データでは、7面から8面の液晶の屈折率が1.4585から1.7085に変わっている。一方、10面から11面が液晶の屈折率は1.4585のままになっている。
【0056】
また、7面から8面の液晶の屈折率が1.7085になったことにより、P偏光用液晶レンズの回折面(DOE[1])が偏向作用を持つ。そこで、P偏光用液晶レンズの回折面(DOE[1])の屈折率も1.4585から588.56に変わっている。
【0057】
また、[1−3:近点(S偏光用)]はS偏光の光に関する数値データである。S偏光の光に対しては、P偏光用液晶レンズの回折面(DOE[1])は偏向作用を生じることはなく,S偏光用液晶レンズの回折面(DOE[2])に偏向作用が生じる。そこで、[1−3:近点(S偏光用)]の数値データでは、7面から8面の液晶の屈折率は1.4585のままになっている。一方、10面から11面が液晶の屈折率が1.4585から1.7085に変わっている。
【0058】
また、10面から11面の液晶の屈折率が1.7085になったことにより、S偏光用液晶レンズの回折面(DOE[2])が偏向作用を持つ。そこで、S偏光用液晶レンズの回折面(DOE[2])の屈折率も1.4585から588.56に変わっている。
【0059】
数値データ1(実施例1)
[1−1:無限遠物点]
単位 mm面データ
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ ∞
1 105.00 1.20 1.5182 58.9
2 5.09 1.24
3 38.32 1.50 1.7440 44.8
4 -11.49 0.50
5 ∞ 0.30 1.4585 67.8
6 ∞ 0.00 1.4585 65.0
7(回折面)-233418.48(DOE[1]) 0.005 1.4585 65.0
8 ∞ 0.30 1.4585 67.8
9 ∞ 0.00 1.4585 65.0
10(回折面)-237164.15(DOE[2]) 0.005 1.4585 65.0
11 ∞ 0.30 1.4585 67.8
12 ∞ 0.67
13 -10.80 0.28 1.7620 40.1
14 4.90 1.20 1.7282 28.5
15 -8.47 0.50
16(絞り面) 0.40
17 5.58 1.95 1.8160 46.6
18 -4.08 0.01 1.5638 60.7
19 -4.08 0.50 1.8052 25.4
20 4.08 1.87
21* 非球面[1] 2.40 1.8061 40.9
22 -5.66 4.13
23 ∞ 0.50 1.5163 64.1
24 ∞ 2.26
25 ∞ 0.50 1.5163 64.1
26 ∞ 0.49
像 面 ∞ 0.00
【0060】
非球面データ
面番号 第21面(非球面[1])
曲率半径 -36.45
k= 1.2194E-007
A4=-7.9872E-004 A6= 1.0007E-004 A8=-8.1194E-006
A10= 5.4486E-007
【0061】
[1−2:近点(P偏光用)]
単位 mm
面データ
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ 300.00
1 105.00 1.20 1.5182 58.9
2 5.09 1.24
3 38.32 1.50 1.7440 44.8
4 -11.49 0.50
5 ∞ 0.30 1.4585 67.8
6 ∞ 0.00 588.5600 -3.5
7(回折面)-233418.48(DOE[1]) 0.005 1.7085 30.0
8 ∞ 0.30 1.4585 67.8
9 ∞ 0.00 1.4585 65.0
10(回折面)-237164.15(DOE[2]) 0.005 1.4585 65.0
11 ∞ 0.30 1.4585 67.8
12 ∞ 0.67
13 -10.80 0.28 1.7620 40.1
14 4.90 1.20 1.7282 28.5
15 -8.47 0.50
16(絞り面) 0.40
17 5.58 1.95 1.8160 46.6
18 -4.08 0.01 1.5638 60.7
19 -4.08 0.50 1.8052 25.4
20 4.08 1.87
21* 非球面[1] 2.40 1.8061 40.9
22 -5.66 4.13
23 ∞ 0.50 1.5163 64.1
24 ∞ 2.26
25 ∞ 0.50 1.5163 64.1
26 ∞ 0.49
像 面 ∞ 0.00
【0062】
回折面データ
面番号 第7面(DOE[1])
曲率半径 -233418.48
k= 0.0000E+000
A4=-2.4691E-008 A6= 4.1725E-008 A8=-9.1727E-009
【0063】
非球面データ
面番号 第21面(非球面[1])
曲率半径 -36.45
k= 1.2194E-007
A4=-7.9872E-004 A6= 1.0007E-004 A8=-8.1194E-006
A10= 5.4486E-007
【0064】
[1−3:近点(S偏光用)]
単位 mm
面データ
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ 300.00
1 105.00 1.20 1.5182 58.9
2 5.09 1.24
3 38.32 1.50 1.7440 44.8
4 -11.49 0.50
5 ∞ 0.30 1.4585 67.8
6 ∞ 0.00 1.4585 65.0
7(回折面)-233418.48(DOE[1]) 0.005 1.4585 65.0
8 ∞ 0.30 1.4585 67.8
9 ∞ 0.00 588.5600 -3.5
10(回折面)-237164.15(DOE[2]) 0.005 1.7085 30.0
11 ∞ 0.30 1.4585 67.8
12 ∞ 0.67
13 -10.80 0.28 1.7620 40.1
14 4.90 1.20 1.7282 28.5
15 -8.47 0.50
16(絞り面) 0.40
17 5.58 1.95 1.8160 46.6
18 -4.08 0.01 1.5638 60.7
19 -4.08 0.50 1.8052 25.4
20 4.08 1.87
21* 非球面[1] 2.40 1.8061 40.9
22 -5.66 4.13
23 ∞ 0.50 1.5163 64.1
24 ∞ 2.26
25 ∞ 0.50 1.5163 64.1
26 ∞ 0.49
像 面 ∞ 0.00
【0065】
回折面データ
面番号 第10面(DOE[2])
曲率半径 -237164.15
k= 0.0000E+000
A4=-8.7050E-008 A6= 7.4874E-008 A8=-1.4487E-008
【0066】
非球面データ
面番号 第21面(非球面[1])
曲率半径 -36.45
k= 1.2194E-007
A4=-7.9872E-004 A6= 1.0007E-004 A8=-8.1194E-006
A10= 5.4486E-007
【0067】
実施例2
図7は本発明の液晶光学素子を用いた実施例2にかかる光学系の光学構成を無限遠物点合焦時の状態で示す光軸に沿う断面図、図8は実施例2の光学系における無限遠物合焦時での横収差図、図9は実施例2の光学系における近点合焦時(P偏光用液晶レンズのみ動作)での横収差図、図10は実施例2の光学系における近点合焦時(S偏光用液晶レンズのみ動作)での横収差図である。
実施例2の光学系は、液晶光学素子1’において第1の回折型液晶レンズ11、第2の回折型液晶レンズ12として用いている回折型液晶レンズの構成のみが、実施例1の光学系と異なっている。
【0068】
実施例2の光学系では、液晶光学素子1’において第1の回折型液晶レンズ11、第2の回折型液晶レンズ12として用いる回折型液晶レンズは、夫々液晶11d,12dに電圧を印加しないときには、入射光に対して0次光としての作用を与えて、光線偏向作用を持たずに無限遠物点に合焦し、液晶に電圧を印加したときには、入射光に対して1次光としての作用を与えて、レンズ先頭面から200mmの物点に合焦するように構成されている。
その他の構成は、実施例1の光学系と略同じである。
実施例2の液晶光学素子1’は、後述する実施例3の液晶光学素子と比較すると、同じ近点位置(200mm)に合焦するための回折型液晶レンズのパワーが弱くできる位置に回折型液晶レンズを配置しているので、回折型液晶レンズの製作が容易になる。
【0069】
次に、実施例2の液晶光学素子1’を備えた光学系を構成する光学部材の数値データを示す。
実施例2の光学系では、実施例1の光学系と同様、5面から12面までが液晶レンズ、7面から8面までの間、10面から11面までの間がそれぞれ液晶の層である。
数値データ2(実施例2)
[2−1:無限遠物点]
単位 mm
面データ
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ ∞
1 105.00 1.20 1.5182 58.9
2 5.09 1.24
3 38.32 1.50 1.7440 44.8
4 -11.49 0.50
5 ∞ 0.30 1.4585 67.8
6 ∞ 0.00 1.4585 65.0
7(回折面)-158686.60(DOE[3]) 0.005 1.4585 65.0
8 ∞ 0.30 1.4585 67.8
9 ∞ 0.00 1.4585 65.0
10(回折面)-161088.47(DOE[4]) 0.005 1.4585 65.0
11 ∞ 0.30 1.4585 67.8
12 ∞ 0.67
13 -10.80 0.28 1.7620 40.1
14 4.90 1.20 1.7282 28.5
15 -8.47 0.50
16(絞り面) 0.40
17 5.58 1.95 1.8160 46.6
18 -4.08 0.01 1.5638 60.7
19 -4.08 0.50 1.8052 25.4
20 4.08 1.87
21* 非球面[2] 2.40 1.8061 40.9
22 -5.66 4.13
23 ∞ 0.50 1.5163 64.1
24 ∞ 2.26
25 ∞ 0.50 1.5163 64.1
26 ∞ 0.49
像 面 ∞ 0.00
【0070】
非球面データ
面番号 第21面(非球面[2])
曲率半径 -36.45
k= 1.2194E-007
A4=-7.9872E-004 A6= 1.0007E-004 A8=-8.1194E-006
A10= 5.4486E-007
【0071】
[2−2:近点(P偏光用)]
単位 mm
面データ
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ 200.00
1 105.00 1.20 1.5182 58.9
2 5.09 1.24
3 38.32 1.50 1.7440 44.8
4 -11.49 0.50
5 ∞ 0.30 1.4585 67.8
6 ∞ 0.00 588.5600 -3.5
7(回折面)-158686.60(DOE[3]) 0.005 1.7085 30.0
8 ∞ 0.30 1.4585 67.8
9 ∞ 0.00 1.4585 65.0
10(回折面)-161088.47(DOE[4]) 0.005 1.4585 65.0
11 ∞ 0.30 1.4585 67.8
12 ∞ 0.67
13 -10.80 0.28 1.7620 40.1
14 4.90 1.20 1.7282 28.5
15 -8.47 0.50
16(絞り面) 0.40
17 5.58 1.95 1.8160 46.6
18 -4.08 0.01 1.5638 60.7
19 -4.08 0.50 1.8052 25.4
20 4.08 1.87
21* 非球面[2] 2.40 1.8061 40.9
22 -5.66 4.13
23 ∞ 0.50 1.5163 64.1
24 ∞ 2.26
25 ∞ 0.50 1.5163 64.1
26 ∞ 0.49
像 面 ∞ 0.00
【0072】
回折面データ
面番号 第7面(DOE[3])
曲率半径 -158686.60
k= 0.0000E+000
A4=-2.6651E-008 A6= 3.2511E-008 A8=-7.9738E-009
【0073】
非球面データ
面番号 第21面(非球面[2])
曲率半径 -36.45
k= 1.2194E-007
A4=-7.9872E-004 A6= 1.0007E-004 A8=-8.1194E-006
A10= 5.4486E-007
【0074】
[2−3:近点(S偏光用)]
単位 mm
面データ
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ 200.00
1 105.00 1.20 1.5182 58.9
2 5.09 1.24
3 38.32 1.50 1.7440 44.8
4 -11.49 0.50
5 ∞ 0.30 1.4585 67.8
6 ∞ 0.00 1.4585 65.0
7(回折面)-158686.60(DOE[3]) 0.005 1.4585 65.0
8 ∞ 0.30 1.4585 67.8
9 ∞ 0.00 588.5600 -3.5
10(回折面)-161088.47(DOE[4]) 0.005 1.7085 30.0
11 ∞ 0.30 1.4585 67.8
12 ∞ 0.67
13 -10.80 0.28 1.7620 40.1
14 4.90 1.20 1.7282 28.5
15 -8.47 0.50
16(絞り面) 0.40
17 5.58 1.95 1.8160 46.6
18 -4.08 0.01 1.5638 60.7
19 -4.08 0.50 1.8052 25.4
20 4.08 1.87
21* 非球面[2] 2.40 1.8061 40.9
22 -5.66 4.13
23 ∞ 0.50 1.5163 64.1
24 ∞ 2.26
25 ∞ 0.50 1.5163 64.1
26 ∞ 0.49
像 面 ∞ 0.00
【0075】
回折面データ
面番号 第10面(DOE[4])
曲率半径 -161088.47
k= 0.0000E+000
A4=-1.0564E-007 A6= 7.1812E-008 A8=-1.3925E-008
【0076】
非球面データ
面番号 第21面(非球面[2])
曲率半径 -36.45
k= 1.2194E-007
A4=-7.9872E-004 A6= 1.0007E-004 A8=-8.1194E-006
A10= 5.4486E-007
【0077】
実施例3
図11は本発明の液晶光学素子を用いた実施例3にかかる光学系の光学構成を無限遠物点合焦時の状態で示す光軸に沿う断面図、図12は図11の光学系に用いられている液晶光学素子の構成を示す説明図である。図13は実施例3の光学系における無限遠物合焦時での横収差図、図14は実施例3の光学系における近点合焦時(P偏光用液晶レンズのみ動作)での横収差図、図15は実施例3の光学系における近点合焦時(S偏光用液晶レンズのみ動作)での横収差図である。
実施例3の光学系は、結像光学系の最も物体側に液晶レンズを配置した構成としている。
詳しくは、物体側から順に、液晶光学素子1”、両凹レンズL1’、両凸レンズL2、両凸レンズL3’と両凹レンズL4’との接合レンズ、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL5’、平行平板P1、及び平行平板P2を備えている。なお、図11中、Sは開口絞り、IMは撮像素子の撮像面を示す。
【0078】
液晶光学素子1”は、図1に示した実施形態の液晶光学素子1と同様の構造であるので、同一の部材については同一の符号を付して説明を省略する。
【0079】
また、実施例3の光学系では、液晶光学素子1”において第1の回折型液晶レンズ11、第2の回折型液晶レンズ12として用いている回折型液晶レンズは、夫々液晶11d,12dに電圧を印加しないときには、入射光に対して0次光としての作用を与えて、光線偏向作用を持たずに無限遠物点に合焦し、液晶に電圧を印加したときには、入射光に対して1次光としての作用を与えて、レンズ先頭面から200mmの物点に合焦するように構成されている。
液晶光学素子1”のその他の構成は、実施例1,2における液晶光学素子1’と略同じである。
【0080】
実施例3の光学系によれば、液晶レンズの焦点距離が204mmのとき、近点200mmに合焦する。このため、実施例1、2の光学系に比べて液晶レンズのパワーが強くなるが、レンズ系の先頭に液晶レンズがあるので、液晶レンズの配線の処理やメカ機構上好ましいものとなる。
【0081】
次に、実施例3の液晶光学素子1”を備えた光学系を構成する光学部材の数値データを示す。
実施例3の光学系では、1面から8面までが液晶レンズ、3面から4面までの間、6面から7面までの間がそれぞれ液晶の層である。
【0082】
数値データ3(実施例3)
[3−1:無限遠物点]
単位 mm
面データ
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ ∞
1 ∞ 0.30 1.4585 67.8
2 ∞ 0.00 1.4585 65.0
3(回折面)-119457.53(DOE[5]) 0.005 1.4585 65.0
4 ∞ 0.30 1.4585 67.8
5 ∞ 0.00 1.4585 65.0
6(回折面)-119939.41(DOE[6]) 0.005 1.4585 65.0
7 ∞ 0.30 1.4585 67.8
8 ∞ 1.00
9 -13.34 0.55 1.5163 64.1
10 5.74 0.99
11 17.40 1.12 2.0033 28.3
12 -12.42 0.60
13(絞り面) 0.40
14 5.58 1.95 1.8160 46.6
15 -4.08 0.01 1.5638 60.7
16 -4.08 0.50 1.8052 25.4
17 4.08 1.87
18* 非球面[3] 2.40 1.8061 40.9
19 -5.66 3.05
20 ∞ 0.50 1.5163 64.1
21 ∞ 2.26
22 ∞ 0.50 1.5163 64.1
23 ∞ 0.48
像 面 ∞ 0.00
【0083】
非球面データ
面番号 第18面(非球面[3])
曲率半径 -36.45
k= 1.2194E-007
A4=-7.9872E-004 A6= 1.0007E-004 A8=-8.1194E-006
A10= 5.4486E-007
【0084】
[3−2:近点(P偏光用)]
単位 mm面データ
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ 200.00
1 ∞ 0.30 1.4585 67.8
2 ∞ 0.00 588.5600 -3.5
3(回折面)-119457.53(DOE[5]) 0.005 1.7085 30.0
4 ∞ 0.30 1.4585 67.8
5 ∞ 0.00 1.4585 65.0
6(回折面)-119939.41(DOE[6]) 0.005 1.4585 65.0
7 ∞ 0.30 1.4585 67.8
8 ∞ 1.00
9 -13.34 0.55 1.5163 64.1
10 5.74 0.99
11 17.40 1.12 2.0033 28.3
12 -12.42 0.60
13(絞り面) 0.40
14 5.58 1.95 1.8160 46.6
15 -4.08 0.01 1.5638 60.7
16 -4.08 0.50 1.8052 25.4
17 4.08 1.87
18* 非球面[3] 2.40 1.8061 40.9
19 -5.66 3.05
20 ∞ 0.50 1.5163 64.1
21 ∞ 2.26
22 ∞ 0.50 1.5163 64.1
23 ∞ 0.48
像 面 ∞ 0.00
【0085】
回折面データ
面番号 第3面(DOE[5])
曲率半径 -119457.53
k= 0.0000E+000
A4= 6.2474E-008 A6=-4.9008E-009
【0086】
非球面データ
面番号 第18面(非球面[3])
曲率半径 -36.45
k= 1.2194E-007
A4=-7.9872E-004 A6= 1.0007E-004 A8=-8.1194E-006
A10= 5.4486E-007
【0087】
[3−3:近点(S偏光用)]
単位 mm
面データ
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ 200.00
1 ∞ 0.30 1.4585 67.8
2 ∞ 0.00 1.4585 65.0
3(回折面)-119457.53(DOE[5]) 0.005 1.4585 65.0
4 ∞ 0.30 1.4585 67.8
5 ∞ 0.00 588.5600 -3.5
6(回折面)-119939.41(DOE[6]) 0.005 1.7085 30.0
7 ∞ 0.30 1.4585 67.8
8 ∞ 1.00
9 -13.34 0.55 1.5163 64.1
10 5.74 0.99
11 17.40 1.12 2.0033 28.3
12 -12.42 0.60
13(絞り面) 0.40
14 5.58 1.95 1.8160 46.6
15 -4.08 0.01 1.5638 60.7
16 -4.08 0.50 1.8052 25.4
17 4.08 1.87
18* 非球面[3] 2.40 1.8061 40.9
19 -5.66 3.05
20 ∞ 0.50 1.5163 64.1
21 ∞ 2.26
22 ∞ 0.50 1.5163 64.1
23 ∞ 0.48
像 面 ∞ 0.00
【0088】
回折面データ
面番号 第6面(DOE[6])
曲率半径 -119939.41
k= 0.0000E+000
A4= 5.4913E-008 A6=-4.5332E-009
【0089】
非球面データ
面番号 第18面(非球面[3])
曲率半径 -36.45
k= 1.2194E-007
A4=-7.9872E-004 A6= 1.0007E-004 A8=-8.1194E-006
A10= 5.4486E-007
【0090】
次に、実施例1〜実施例3の光学系における条件式パラメータ対応値及び光学系の各種データを次の表1及び表2に示す。
表1
表2
なお、レンズ全長は先頭面から近軸像面までの距離、BFはレンズ最終面から近軸像面までの距離である。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、小型で迅速な焦点合わせをする画像取得装置を用いることが求められる分野に有用である。本発明における画像取得装置には、カメラ、顕微鏡、内視鏡、望遠鏡、及びスキャナー等の光学機器で静止画像や動画などを撮影する機器を含む。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる液晶光学素子の基本構成及び動作原理を示す概念図であって、(a)は液晶レンズに電圧を印加したとき、(b)は液晶レンズに電圧を印加したときの入射光線の受ける作用を示している。
【図2】本発明の液晶光学素子を用いた実施例1にかかる光学系の光学構成を無限遠物点合焦時の状態で示す光軸に沿う断面図である。
【図3】図2の光学系に用いられている液晶光学素子の構成を示す説明図である。
【図4】実施例1の光学系における無限遠物合焦時での横収差図である。
【図5】実施例1の光学系における近点合焦時(P偏光用液晶レンズのみ動作)での横収差図である。
【図6】実施例1の光学系における近点合焦時(S偏光用液晶レンズのみ動作)での横収差図である。
【図7】本発明の液晶光学素子を用いた実施例2にかかる光学系の光学構成を無限遠物点合焦時の状態で示す光軸に沿う断面図である。
【図8】実施例2の光学系における無限遠物合焦時での横収差図である。
【図9】実施例2の光学系における近点合焦時(P偏光用液晶レンズのみ動作)での横収差図である。
【図10】実施例2の光学系における近点合焦時(S偏光用液晶レンズのみ動作)での横収差図である。
【図11】本発明の液晶光学素子を用いた実施例3にかかる光学系の光学構成を無限遠物点合焦時の状態で示す光軸に沿う断面図である。
【図12】図11の光学系に用いられている液晶光学素子の構成を示す説明図である。
【図13】実施例3の光学系における無限遠物合焦時での横収差図である。
【図14】実施例3の光学系における近点合焦時(P偏光用液晶レンズのみ動作)での横収差図である。
【図15】実施例3の光学系における近点合焦時(S偏光用液晶レンズのみ動作)での横収差図である。
【図16】図1の液晶光学素子に適用可能な回折型液晶レンズの一構成例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0093】
1,1’,1” 液晶光学素子
11 第1の回折型液晶レンズ
11a,12a 基板
11a1,12a1 鋸歯状レリーフ
11b,12b 薄膜透明電極
11c,12c 対向電極
11d,12d 液晶
12 第2の回折型液晶レンズ
13a,13b,13c 基板
L1 物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズ
L2,L4,L5,L3’ 両凸レンズ
L3,L6,L1’,L4’ 両凹レンズ
L7,L5’ 物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズ
P1,P2 平行平板
S 開口絞り
IM 撮像素子の撮像面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の液晶レンズ及び第2の液晶レンズを有し、
前記第1の液晶レンズと前記第2の液晶レンズとを、互いに配向方向が光軸と垂直な面内で直交するように対向配置するとともに、
前記第1の液晶レンズにおいて光線偏向作用を受ける一方の偏光方向の入射光に対する該第1の液晶レンズの焦点距離に比べて、前記第2の液晶レンズにおいて光線偏向作用を受ける、前記一方の偏光方向に直交する他方の偏光方向の入射光に対する該第2の液晶レンズの焦点距離が短くなるようにしたことを特徴とする液晶光学素子。
【請求項2】
次の条件式(1)を満足することを特徴とする請求項1に記載の液晶光学素子。
0<|(f1−f2)/f1|≦0.5 ・・・(1)
但し、f1は前記第1の液晶レンズにおいて光線偏向作用を受ける前記一方の偏光方向の入射光に対する該第1の液晶レンズの焦点距離、f2は前記第2の液晶レンズにおいて光線偏向作用を受ける、前記一方の偏光方向に直交する他方の偏光方向の入射光に対する該第2の液晶レンズの焦点距離である。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液晶光学素子を有し、前記第1の液晶レンズにおいて光線偏向作用を受ける前記一方の偏光方向の入射光に対する焦点位置と、前記第2の液晶レンズにおいて光線偏向作用を受ける、前記一方の偏光方向に直交する他方の偏光方向の入射光に対する焦点位置とが略一致するようにしたことを特徴とする光学系。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の液晶光学素子を有し、
前記液晶光学素子に印加する電圧を制御して、異なる物点からの入射光に対する焦点位置のずれの補正を行うことを特徴とする光学系。
【請求項5】
無限遠物点合焦時において、前記液晶光学素子が平行平板として作用するように、該液晶光学素子に入射する光束を回折又は屈折することなく透過させるようにしたことを特徴とする請求項4に記載の光学系。
【請求項6】
前記液晶光学素子が光線偏向作用を持たないときに遠点物点に合焦し、前記液晶光学素子が光線偏向作用を持つときに近点物点に合焦するようにしたことを特徴とする請求項4又は5に記載の光学系。
【請求項7】
次の条件式(2)を満足することを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の光学系。
|Δ/f|≦0.6 ・・・(2)
但し、Δは前記第1の液晶レンズと前記第2の液晶レンズの間隔、fは該光学系の焦点距離である。
【請求項8】
請求項3〜7のいずれかに記載の光学系と、
撮像素子と、
ズーム光学系、
を備えたことを特徴とする画像取得装置。
【請求項1】
第1の液晶レンズ及び第2の液晶レンズを有し、
前記第1の液晶レンズと前記第2の液晶レンズとを、互いに配向方向が光軸と垂直な面内で直交するように対向配置するとともに、
前記第1の液晶レンズにおいて光線偏向作用を受ける一方の偏光方向の入射光に対する該第1の液晶レンズの焦点距離に比べて、前記第2の液晶レンズにおいて光線偏向作用を受ける、前記一方の偏光方向に直交する他方の偏光方向の入射光に対する該第2の液晶レンズの焦点距離が短くなるようにしたことを特徴とする液晶光学素子。
【請求項2】
次の条件式(1)を満足することを特徴とする請求項1に記載の液晶光学素子。
0<|(f1−f2)/f1|≦0.5 ・・・(1)
但し、f1は前記第1の液晶レンズにおいて光線偏向作用を受ける前記一方の偏光方向の入射光に対する該第1の液晶レンズの焦点距離、f2は前記第2の液晶レンズにおいて光線偏向作用を受ける、前記一方の偏光方向に直交する他方の偏光方向の入射光に対する該第2の液晶レンズの焦点距離である。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液晶光学素子を有し、前記第1の液晶レンズにおいて光線偏向作用を受ける前記一方の偏光方向の入射光に対する焦点位置と、前記第2の液晶レンズにおいて光線偏向作用を受ける、前記一方の偏光方向に直交する他方の偏光方向の入射光に対する焦点位置とが略一致するようにしたことを特徴とする光学系。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の液晶光学素子を有し、
前記液晶光学素子に印加する電圧を制御して、異なる物点からの入射光に対する焦点位置のずれの補正を行うことを特徴とする光学系。
【請求項5】
無限遠物点合焦時において、前記液晶光学素子が平行平板として作用するように、該液晶光学素子に入射する光束を回折又は屈折することなく透過させるようにしたことを特徴とする請求項4に記載の光学系。
【請求項6】
前記液晶光学素子が光線偏向作用を持たないときに遠点物点に合焦し、前記液晶光学素子が光線偏向作用を持つときに近点物点に合焦するようにしたことを特徴とする請求項4又は5に記載の光学系。
【請求項7】
次の条件式(2)を満足することを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の光学系。
|Δ/f|≦0.6 ・・・(2)
但し、Δは前記第1の液晶レンズと前記第2の液晶レンズの間隔、fは該光学系の焦点距離である。
【請求項8】
請求項3〜7のいずれかに記載の光学系と、
撮像素子と、
ズーム光学系、
を備えたことを特徴とする画像取得装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−309900(P2008−309900A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−155661(P2007−155661)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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