説明

液晶表示装置および液晶駆動方法

【課題】PVA液晶モードにおいて、オーバードライブ駆動を行なうと生じる揺戻し現象を起因とする動画応答特性の低下を改善する。
【解決手段】画素セルは、高階調側の表示を担当する高階調側のサブ画素と低階調側の表示を担当する低階調側のサブ画素に分割され、各サブ画素を独立に駆動する個別の薄膜トランジスタを具備した多分割ドメイン制御技術を採用して視野角改善を図る。高階調側のサブ画素に対するオーバードライブ駆動特性と低階調側のサブ画素に対するオーバードライブ駆動特性とを独立に設定するルックアップテーブルを設ける。高階調側のサブ画素に対するオーバードライブ駆動特性と低階調側のサブ画素に対するオーバードライブ駆動特性の少なくとも一方を過剰気味のオーバードライブ量に設定することで、揺戻し現象を起因とする動画応答特性の低下を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力映像信号に応じた階調表示が可能な液晶表示装置およびその駆動方法に関する。より詳細には、動画応答特性の改善技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(液晶ディスプレイ)は、画素がマトリクス状に配列され、液晶表示面を介して出力画像を表示するアクティブマトリクス型の画像ディスプレイである。液晶表示装置は、直視型のディプレイであり、通常、動画応答性が問題となる。このため、従来の液晶表示装置においては、液晶応答の高速化を実現する手法が種々考えられている(たとえば特許文献1を参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−343625号公報
【0004】
たとえば、従来の液晶表示装置においては、表示モードに関わらず、絵素容量に1表示周期に亘って電圧を印加し続けるスタティック駆動ではなく、絵素容量を入力画像信号に対応する充電状態とすることによって1表示周期ごとに表示を更新する駆動方式の場合には、低階調から高階調に移る駆動時においては、電圧書込み直後の液晶層の大きなキャパシタンス変化に起因して、電圧書込み後の最初の表示周期が電圧印加不足になることに起因して輝度変化の2段応答が現われる(特許文献1の段落19〜29を参照)。
【0005】
この対策のため、特許文献1(請求項1)では、液晶容量と液晶容量に電気的に並列に接続された蓄積容量とで絵素容量を構成するとともに、蓄積容量の液晶容量に対する容量比を1以上に設定することで、絵素容量の充電特性の応答速度(2段応答特性)が改善され、絵素容量が、少なくとも最高の階調電圧が印加されたとき、1垂直期間に亘って充電電圧の90%以上を保持するので、階調レベルが高い高階調領域における応答特性を改善するようにしている。2段応答に対して、液晶容量と並列に蓄積容量を設けることで液晶層に電荷を補填する役割を果たす仕組みである。
【0006】
また、特許文献1(請求項2,3)では、応答速度が遅い中間階調領域での液晶応答の高速化を実現する一手法として、信号切替直後の1表示周期に、前表示周期と現表示周期の入力階調差の組合せに応じて、予め決められた、現表示周期の入力階調より大きな階調で駆動するオーバードライブ駆動を行なっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の2段応答の対する改善手法では、当然の如く、液晶容量と蓄積容量との容量比の制約があり、素子構成上の自由度が少ない。液晶容量に対して蓄積容量を大きくするほど2段応答性は軽減されるが、パネル開口率が低下することとなる。
【0008】
また、オーバードライブ駆動を行なうと、低階調領域におけるオーバードライブ駆動直後に、液晶の配向乱れに起因する揺戻し現象を起因として、一時的に輝度が低下する表示モードのものがある。つまり、液晶表示モードによっては、オーバードライブ駆動を行なうと、揺戻し現象を起因とする一時的な輝度低下が起こり、動画応答特性が低下すると言った新たな問題が生じる。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、特許文献1に記載の仕組みとは異なる手法により、2段応答を起因とする動画応答特性の低下を改善する仕組みを提供することを第1の目的とする。また、特許文献1に記載の仕組みとは異なる手法により、揺戻し現象を起因とする動画応答特性の低下を改善する仕組みを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る表示装置の一形態は、液晶素子および液層素子に電気的に接続された薄膜トランジスタを具備する複数の画素セルがマトリクス状に配置された画素アレイ部と、現時点の入力階調と1表示周期前の入力階調のレベル差に応じたオーバードライブ駆動特性に従って液晶素子の光学応答を1表示周期内にほぼ完了させるようにオーバードライブ駆動を制御する表示制御部を備える。
【0011】
ここで、複数の画素セルのそれぞれは、入力されたある階調レベルについてレベル変換により担当分けされた高階調側の表示を担当する高階調側のサブ画素と低階調側の表示を担当する低階調側のサブ画素に分割され、各サブ画素を独立に駆動する個別の薄膜トランジスタを具備するものとする。そして、表示制御部は、高階調側のサブ画素に対するオーバードライブ駆動特性と低階調側のサブ画素に対するオーバードライブ駆動特性とを独立に設定する。
【0012】
画素分割した各サブ画素に対してオーバードライブ駆動を実行するに当たり、それぞれに対するオーバードライブ駆動特性を独立に設定することで、それぞれにより得られるオーバードライブ駆動の効果(掛り具合)を異なるようにできる。
【0013】
たとえば、画素セルが、オーバードライブ駆動後の表示周期内に、液晶素子の配向乱れを起因とした揺戻し現象により一時的に輝度が低下する現象を生じ得るものである場合には、表示制御部は、高階調側のサブ画素に対するオーバードライブ駆動特性と低階調側のサブ画素に対するオーバードライブ駆動特性の少なくとも一方を過剰気味のオーバードライブ量に設定することで、揺戻し現象を起因とする動画応答特性の低下を改善する。
【0014】
また、表示制御部は、液晶素子を含む絵素容量を入力画像信号に対応する充電状態とすることによって1表示周期ごとに表示を更新するとともに、入力階調が比較的高い階調範囲に属するときには、高階調側のサブ画素に対してはオーバードライブ駆動を行なわずに、低階調側のサブ画素に対しては過剰気味のオーバードライブ量に設定することで、2段応答を起因とする動画応答特性の低下を改善する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一形態によれば、液晶容量と蓄積容量との容量比の制約を受けることなく、揺戻し現象や2段応答を起因とする動画応答特性の低下を改善できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下においては、画素の表示素子として自発光型でない液晶素子を例に、また補助光源をバックライトとして使用する透過型の表示装置で具体的に説明する。ただしこれは一例であって、補助光源から発せられた照明光をフロント側から照射する反射型の表示装置や、画素の表示素子として自発光型でない液晶素子を使用しつつ補助光源を使用せず周囲光を利用する反射型の表示装置でもよい。さらに、透過型と反射型の機能を1つの表示パネルに取り込んだ半透過型と称される表示装置でもよい。
【0017】
<液晶表示装置の全体構成>
図1は、たとえば電気光学素子として液晶素子を用いてなる液晶表示装置の一実施形態の全体構成の概略を示す図である。このような表示装置は、半導体メモリやミニディスク(MD)やカセットテープなどの記録媒体を利用した携帯型の音楽プレイヤーやその他の電子機器の表示部に利用される。
【0018】
図1に示すように、液晶表示装置1は、基板2の上に画素アレイ部3が集積形成され、その近傍に第1の制御部であるゲートドライバ部5(垂直駆動部とも称される)と第2の制御部であるソースドライバ部6(水平駆動部とも称される)などが配置されている。ゲートドライバ部5やソースドライバ部6には、パネル外に配された駆動制御回路から、映像信号や種々のパルス信号が供給されるようになっている。ゲートドライバ部5、およびソースドライバ部6やパネル外に配された駆動制御回路を纏めて表示制御部9と称する。
【0019】
詳細は後述するが、本実施形態の表示制御部9は、現時点の入力階調と1画面前の入力階調のレベル差に応じて、液晶素子の光学応答を1表示周期内にほぼ完了させるようにオーバードライブ駆動を制御するようになっている。
【0020】
図では、画素アレイ部3のみで表示パネル部とした形態を示しているが、製品形態としてはこのようなものに限らない。すなわち、製品形態としては、画素アレイ部3とゲートドライバ部5やソースドライバ部6などの制御部を同一のガラス基板上に搭載した表示パネル部と駆動信号生成部や映像信号処理部を別体とする形態(パネル上配置構成と称する)や、表示パネル部には画素アレイ部3を搭載し、それとは別基板(たとえばフレキシブル基板)上に制御部や駆動信号生成部や映像信号処理部などの周辺回路を搭載する形態(周辺回路パネル外配置構成と称する)が考えられる。
【0021】
また、画素アレイ部3と制御部とを同一のガラス基板上に搭載して表示パネル部を構成するパネル上配置構成の場合、画素アレイ部3のTFTを生成する工程にて同時に制御部(必要に応じて駆動信号生成部や映像信号処理部も)用の各TFTを生成する仕組み(TFT一体構成と称する)と、COG(Chip On Glass )実装技術により画素アレイ部3が搭載されたガラス基板上に制御部(必要に応じて駆動信号生成部や映像信号処理部も)用の半導体チップを直接実装する仕組み(COG搭載構成と称する)が考えられる。
【0022】
画素アレイ部3は、1対の基板2と両者の間に保持された液晶素子32とを備えたパネル構造を有する。たとえば、画素トランジスタなどを含む画素セル30が、透明絶縁基板、たとえば第1のガラス基板(駆動側基板)上に行列状に2次元配置され、この画素配列に対して行ごとに垂直走査線が配線されるとともに、列ごとに水平走査線が配線された構成となっている。第1のガラス基板は、第2のガラス基板(対向側基板)と所定の間隙を持って対向配置されるとともに、図示しないシール剤を介して貼り合わされている。そして、そのシール剤の位置よりも内側の領域に液晶材料が封入されることになる。カラー液晶表示パネルとする場合にはカラーフィルタが、フィルタ色の位置と画素位置を整合させて表示面側に配置される。
【0023】
たとえば、画素アレイ部3には、ゲートドライバ部5から供給される行選択パルスを伝送する垂直走査線12(ゲート線)とソースドライバ部6から供給されるソース出力電圧Vsourceを伝送して液晶素子を駆動するための水平走査線14(信号線やデータ線とも称される)が形成されている。両者の交差部には画素セル30が配置される。
【0024】
画素セル30は、液晶素子32、その画素電極を駆動する薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)34、および画素信号を保持する保持容量36(画素容量)を有する。図では、垂直走査線12、水平走査線14、および画素セル30をそれぞれ1つ示しているが、画素セル30が2次元マトリクス状に配置され、それらの画素セル30に対して垂直走査線12と水平走査線14が配線される。
【0025】
さらに、本実施形態の画素セル30は、詳細は後述するが(図2や図2Aを参照)、1つの画素セル30が、空間的に隣接した領域の複数(典型例は2つ)のサブ画素により表現されるようになっており、複数個のサブ画素を用いた空間的な変調を施すことにより視野角を改善するハーフトーン表示あるいは多分割ドメイン制御と称される技術を採用する。たとえば、一方のサブ画素を本来の階調(入力階調)よりも高い階調で表示し、他方のサブ画素を本来の階調(入力階調)よりも低い階調で表示すると、空間的に連続した画素を人間が見たときには、それらの合成輝度(1つの画素セル30の輝度)は平均化されて認識され、本来の映像と同じ映像を見ていると認識されるとともに、視野角の改善がなされる(たとえば特開2005−62882号公報や特開2007−86791号公報を参照)。
【0026】
ゲートドライバ部5は、垂直走査線12を介して各画素セル30を順次選択する。ソースドライバ部6は、選択された画素セル30に対し水平走査線14を介して画像信号を書き込む。たとえば、ゲートドライバ部5は、入力される基準ガンマ電圧Vγに基づきタイミングコントローラ部300からの出力画像信号Vsoutに対してガンマ補正を施すガンマ補正回路やガンマ補正後の映像信号をサンプリングして出力画像信号Vsoutとして保持するサンプリング回路や、出力画像信号Vsoutを水平走査線14を介して画素セル30に供給する出力バッファなどを有する。出力バッファは論理ゲートの組合せ(ラッチも含む)によって構成され、画素アレイ部3の各画素セル30を行単位で選択する。
【0027】
なお、図1では、画素アレイ部3の一方側にのみゲートドライバ部5を配置する構成を示しているが、画素アレイ部3を挟んで左右両側にゲートドライバ部5を配置する構成を採ることも可能である。ソースドライバ部6は、シフトレジスタやサンプリングスイッチ(水平スイッチ)などによって構成され、ゲートドライバ部5によって選択された行の各画素セル30に対して画素単位で映像信号を書き込む。なお、図1では、画素アレイ部3の一方側にのみソースドライバ部6を配置する構成を示しているが、画素アレイ部3を挟んで上下両側にソースドライバ部6を配置する構成を採ることも可能である。
【0028】
ここでは、選択行の各画素セル30に対して映像信号を画素単位で書き込む点順次駆動を例に挙げたが、選択行の各画素セル30に対して映像信号を行単位で書き込む線順次駆動を採ることも可能である。
【0029】
また、液晶表示装置1は、画素アレイ部3の周辺(図ではパネル外)に、入力画像信号Vsin を出力画像信号Vsoutに変換するレベル変換部100と、ソースドライバ部6用のγ(ガンマ、階調)カーブを示す階調基準電圧(以下基準ガンマ電圧Vγと称する)を生成する階調基準電圧生成部200と、タイミング信号を生成するタイミングジェネレータ部320を具備したタイミングコントローラ部300を備える。
【0030】
さらに液晶表示装置1は、表示パネルを照明する照明部(光源、ライティング部)の一例であるバックライト部400と、制御信号CN_1を介した指示に基づきレベル変換部100を制御する、制御信号CN_2を介した指示に基づき階調基準電圧生成部200を制御する、制御信号CN_3を介した指示に基づきタイミングコントローラ部300を制御する、制御信号CN_4を介した指示に基づきバックライト部400を制御するなど、装置全体の動作を制御する表示輝度制御部の一例である制御・統括部500を備える。
【0031】
図示しないが、その他にもたとえば、主にソースドライバ部6用の電源電圧(以下ソース電源電圧Vsdと称する)を生成するソース電圧用供給電源部や、主にゲートドライバ部5用の電源電圧Vgdを生成するゲート電源部なども設けられる。
【0032】
レベル変換部100は、たとえば抵抗分割回路を利用して補正量(オーバードライブ量)や補正後(オーバードライブ補正後)の階調値を規定する関数カーブを設定するアナログ方式、あるいはテーブルデータ(LUT:ルックアップテーブル)を利用したデジタル方式(たとえば8〜12ビット)で、現時点の入力階調と1画面前の入力階調のレベル差に応じたオーバードライブ駆動特性を規定し、このオーバードライブ駆動特性に従って、液晶素子32の光学応答を1表示周期内にほぼ完了させるようにオーバードライブ駆動を制御するべく、入力画像信号Vsin を出力画像信号Vsoutに変換する。本実施形態では後者のデジタル方式を採用する。
【0033】
レベル変換時には、液晶素子32の応答性改善のため、入力階調が変化したときに、表示の変化をより強調するようにオーバードライブを行なう。このとき、関数カーブを設定するアナログ方式では関数カーブの設定の自由度が少なく信号レベルによって応答性の改善度合いが左右され得るが、ルックアップテーブルを用いたデジタル方式を採用すると、信号レベルが変化した場合に応答が1表示周期内に過不足なく完了する補正データをテーブルとして予め書き込んでおくことができ、これによって、どのような信号レベルの切替えにおいても高速応答を実現できる。
【0034】
たとえば黒のレベルを“0”、白を“255”とした場合、1フレーム前の入力画像信号Vsin が8ビット階調データの最低値“0”であり、これが現在の入力画像信号Vsin =“118”に変化したとき、オーバードライブが必要なときには、レベル変換部100は、その“118”を出力画像信号Vsoutとして出力せずに、パネル上で必要な輝度が1フレーム表示期間(1V)以内に得られるように、液晶素子32をより早く応答させるために補正を施した、たとえば“128”を出力画像信号Vsoutとする。
【0035】
なお、ルックアップテーブルを用いたデジタル方式とする場合、表示信号レベル数すなわち表示階調数と階調変化量に1:1で対応する全ての補正データ(あるいは補正済みの階調データ)を持つようにしてもよい(たとえば8ビット時には256×256=65536個のデータとなる)が、データ量を削減するため、間引いてデータを保持し、データの存在しない部分については線形補間などにより求めるようにしてもよい。当然に、1:1で対応する全ての補正データを保持する形態では、全ての信号レベル変化の組み合わせにおいて、信号レベルが変化した場合に応答が1表示周期内に過不足なく完了する補正データがテーブルとして予め書き込むことができるのでオーバードライブ補正としては好ましい。
【0036】
ここで、本実施形態の液晶表示装置1は、オーバードライブ処理に特徴があり、複数個のサブ画素31の合成によって1画素分の輝度を表現するようになっている画素セル30に対して、個々のサブ画素31のオーバードライブ量を、一般的に設定される最適量とするのではなく、少なくとも一方のサブ画素31については、その最適量とは異なる値にすることで、液晶素子32の応答の際の揺戻し現象や2段応答を起因とする輝度変化を抑制し、動画応答特性を改善する点に特徴を有する。
【0037】
このため、レベル変換部100は、応答に関する課題を改善する手段として、視野角改善用途のハーフトーン表示技術をベースにして、各サブ画素31に対して異なる階調電圧を印加し、それらの輝度の足し合わせにより1画素の階調輝度とする。ここで、レベル変換部100は、ある映像信号に対して、各サブ画素31の階調を幾つにして表示出力させるかを決める差分型テーブルメモリ構成のルックアップテーブル110と、ルックアップテーブル110のデータを参照して入力画像信号Vsin に対して加減算処理を行ない出力画像信号Vsoutを生成するオーバードライブ演算部120を有する。なお、オーバードライブ演算部120の前段には、必要に応じて入力信号の画像表示レートを通常の60Hzから120Hzに上げる補間処理を行なう補間部を設ける。
【0038】
ルックアップテーブル110には、各サブ画素31に対してオーバードライブ駆動をするときに、入力レベル変更後の第1フレーム目の階調を幾つにするかを決めるオーバードライブ量ΔVodのデータが格納される。オーバードライブ演算部120は、入力画像信号Vsin とオーバードライブ量ΔVodを加算あるいは減算することで、補正後の階調データである出力画像信号Vsoutが生成され、これがソースドライバ部6に供給される。なお、ルックアップテーブル110をいわゆる置換型テーブルメモリとすることで、オーバードライブ演算部120を割愛した構成を採ることもできる。
【0039】
本実施形態を適用しない場合であれば、このオーバードライブ用のルックアップテーブル110はハーフトーン表示技術用に設けられた高階調領域VHのサブ画素31_Hと低階調領域VLのサブ画素31_Lのそれぞれに共通のものを用いることになるが、本実施形態では、応答速度を改善するためのオーバードライブ用のルックアップテーブル110を各サブ画素31について個別(独立に)に設ける、つまり高階調領域VH用のルックアップテーブル110_Hと低階調領域VL用のルックアップテーブル110_Lを設けることにより最適な応答を実現するようにする。高階調側のサブ画素31_Hに対するオーバードライブ駆動特性を規定する高階調側のルックアップテーブル110_Hと、低階調側のサブ画素31_Lに対するオーバードライブ駆動特性を規定する低階調側のルックアップテーブル110_LはLUTメモリ(テーブルメモリ)に記憶される。
【0040】
レベル変換部100のオーバードライブ演算部120は、タイミングコントローラ部300の制御の元で、外部からR,G,Bそれぞれの入力画像信号Vsin を取り込み、ルックアップテーブル110_Hに保持されたオーバードライブ量ΔVodVHのデータを利用して高階調領域VHに対する高階調出力画像信号Vsout_Hを生成するとともに、ルックアップテーブル110_Lに保持されたオーバードライブ量ΔVodVLのデータを利用して低階調領域VLに対する低階調出力画像信号Vsout_Lを生成し、それらをメモリに貯蔵する。その後、オーバードライブ演算部120は、タイミングコントローラ部300の制御の元で、メモリに貯蔵された高階調出力画像信号Vsout_Hおよび低階調出力画像信号Vsout_Lを、画素セル30の高階調領域用のサブ画素31_Hと低階調領域用のサブ画素31_Lの配置に合わせた順序でソースドライバ部6に供給する。
【0041】
ソースドライバ部6は、階調基準電圧生成部200からの基準ガンマ電圧Vγを用いて、レベル変換部100(オーバードライブ演算部120)からの高階調出力画像信号Vsout_Hや低階調出力画像信号Vsout_Lをアナログ信号に変換し、液晶パネルの垂直走査線12(ゲートライン)が駆動されるごとに水平走査線14(データライン)に供給する。その結果、R,G,Bの各画素セル30のそれぞれは、高階調領域VHと低階調領域VLとのそれぞれに供給された高階調出力画像信号Vsout_Hおよび低階調出力画像信号Vsout_Lに応じた高階調と低階調との組み合わせで階調を表現する。
【0042】
<画素セルの構成例>
図2は、本実施形態の画素セル30の構成例を説明する図である。図では、1つの画素セル30を2つのサブ画素31(高階調領域VHのサブ画素31_Hと低階調領域VLのサブ画素31_L)で構成する場合を例示している。
【0043】
本実施形態では、応答速度を改善するためのオーバードライブ用のルックアップテーブル110を各サブ画素31について個別(独立に)に設けることに対応して、画素セル30についても、複数個のサブ画素31を独立に駆動電圧を調整できる構造とする点に特徴を有する。独立に駆動電圧を調整できる構造とするには、画素セル30の高階調領域VHのサブ画素31_Hと低階調領域VLのサブ画素31_Lを異なる薄膜トランジスタ34_H,34_Lによって駆動する2TFT構成であればよく、たとえば、垂直走査線12を独立にしつつ水平走査線14を共通に使用する“2本のゲートバスライン+1本のソースバスライン”の図2(1)に示す第1構成例(2ゲート1ソースバスライン構造)と、水平走査線14を独立にしつつ垂直走査線12を共通に使用する“2本のソースバスライン+1本のゲートバスライン”の図2(2)示す第2構成例(1ゲート2ソースバスライン構造)に大別できる。
【0044】
何れの構成においても、高階調領域VHを担当するサブ画素31_Hは、液晶素子32_H、薄膜トランジスタ34_H、保持容量36_Hを有し、低階調領域VLを担当するサブ画素31_Lは、液晶素子32_L、薄膜トランジスタ34_L、保持容量36_Lを有する。
【0045】
図2(1)に示す第1構成例の場合、薄膜トランジスタ34_H,34_Lは、ソースおよびドレインの何れか一方が該当列の水平走査線14が共通に接続され、ソースおよびドレインの他方が、サブ画素31_H,31_Lの別に、液晶素子32_H,32_Lの一方の画素電極および保持容量36_H,36_Lの一方の端子に接続される。液晶素子32_H,32_Lの他方の画素電極は共通にたとえば接地配線に接続され、保持容量36_H,36_Lの他方の端子は、共通に、コモン配線13に接続される。ゲートは、サブ画素31_H,31_Lの別に(つまり薄膜トランジスタ34_H,34_Lごとに)、該当行の垂直走査線12_H,12_Lに接続される。
【0046】
一方、図2(2)に示す第2構成例の場合、薄膜トランジスタ34_H,34_Lは、ソースおよびドレインの何れか一方が、サブ画素31_H,31_Lの別に(つまり薄膜トランジスタ34_H,34_Lごとに)、該当列の水平走査線14_H,14_Lに接続される。ソースおよびドレインの他方は、サブ画素31_H,31_Lの別に、液晶素子32_H,32_Lの一方の画素電極および保持容量36_H,36_Lの一方の端子に接続される。液晶素子32_H,32_Lの他方の画素電極は共通にたとえば接地配線に接続され、保持容量36_H,36_Lの他方の端子は、共通に、コモン配線13に接続される。ゲートは、該当行の垂直走査線12に共通に接続される。
【0047】
<動画応答特性改善手法:第1実施形態>
図3および図3Aは、動画応答特性改善手法の第1実施形態の基本原理を説明する図である。ここで、図3(1)および図3A(1)は第1実施形態を適用しない比較例の応答特性例を示し、図3(2)および図3A(2)は第1実施形態を適用したときの応答特性例を示す。なお、1表示周期を1フレームとして扱う。
【0048】
第1実施形態の動画応答特性改善手法は、液晶素子32の応答の際の揺戻し現象を起因とする輝度変化を抑制する点に特徴を有する。
【0049】
液晶応答の高速化を実現する一手法として、信号切替直後のフレームに、表示の変化をより強調するように過剰な電圧を印加する、つまり本来の信号レベルを増加させる方向にレベル修正するオーバードライブ駆動が知られている。因みに、本来の信号レベルを減少させる方向にレベル修正することにより、液晶に対する印加電圧をマイナス側(絶対値が減少する方向)に補正することをアンダードライブと称し、その減少量をアンダードライブ量と称する。
【0050】
ここで、たとえばマルチドメインVA(Multi Domain Vertically Aligned )モードの液晶表示の場合は、図3(1)および図3A(1)に示すように、オーバードライブ駆動直後に、各サブ画素31_H,31_Lの双方に、液晶素子32の配向乱れを起因として、一時的に輝度が低下する現象(オーバードライブ後の揺戻し現象)が生じる。第1実施形態では、マルチドメインVAモードの液晶表示装置について説明するが、第1実施形態の仕組みが適用可能な液晶表示装置は、マルチドメインVAモードのものに限らず、オーバードライブ後の揺戻し現象が生じるモードのものであればどのようなものであってもよい。
【0051】
たとえば、液晶表示装置では一般に、画面を斜めに見るほど画像が歪曲して見える。このため、視野角を拡げる代表的な技術として、マルチドメインVAが知られている。VA(垂直配向)を用いた液晶表示装置(VAモードの液晶表示装置)では一般に、液晶セルに対して電界が印加されていないとき、負の誘電率異方性を示す液晶分子の配向方向が液晶パネルの表面に対してほぼ垂直に設定されており、液晶パネルに設置された偏光子によりその液晶セルを透過した光が遮断されるのでノーマリブラックとなる。
【0052】
液晶セルに対して電界が印加されているとき、液晶分子が電界の方向に対して斜めに傾くが、このとき、偏光子により、液晶分子の傾斜角に応じて液晶セルの光透過率が上昇する。さらに、マルチドメインVAモードの液晶表示装置では、各液晶セル(画素セル30)に含まれる液晶層が複数のドメイン(サブ画素31)に分割され、ドメインごとに液晶分子の傾斜方向が異なるようにされる(たとえば特開2005−62882号公報や特開2007−86791号公報を参照)。特に、液晶分子の傾斜方向を対称的に変化させることで、視角に応じた各画素セル30の光透過率の変化が抑えられるので、広い視野角が得られる。複数のドメインの形成には、各画素セル30の液晶層を挟む基板の表面に形成された突起や各画素セル30に含まれる電極に形成されたスリットが用いられる。
【0053】
ここで、複数のドメインが基板表面の突起を用いて形成されている液晶表示装置では、各画素セル30に対して電界がまだ印加されていないときに液晶分子が既に小さく傾斜しているプリチルト状態となる。プリチルトの方向はドメインごとに異なり、特に突起に対して対称に分布している。プリチルト状態にある液晶分子に対して電界が印加されると、液晶分子がプリチルトの方向にさらに大きく傾く。その結果、液晶分子の傾斜方向がドメインごとに変化する。ところが、突起の近傍では液晶分子の受ける拘束力が弱く、液晶分子の配向に乱れが生じ易く、その乱れに起因する光漏れが発生し、これによって輝度低下が起こってしまう。
【0054】
これに対して、本願発明者による検討の結果、個々のサブ画素31_H,31_Lのオーバードライブ量を、一般的に設定される最適量とするのではなく、サブ画素31_H,31_Lの少なくとも一方(ただし表示階調レベルに応じて最適な方は特定される)を、その最適量よりもオーバードライブ量が大きな過剰気味のオーバードライブ駆動とすることで、オーバードライブ駆動直後のフレーム(階調変化後の第2フレーム目)に関して、双方を足し合わせた合成後の輝度は、揺戻しによる輝度低下を抑制できることを見出した。これは、オーバードライブ量を通常の最適量よりも過剰気味にすることで、オーバードライブ駆動直後にオーバーシュートの効果が得られ、当該サブ画素31の輝度低下が抑制され、他方のサブ画素31に過剰なオーバードライブ駆動を掛けないとしても、合成輝度としてはオーバードライブ駆動直後に現われる輝度低下を相殺できることによると考えられる。
【0055】
ここで、一方を過剰気味にし他方を通常の最適量にする、あるいは、双方を過剰気味にすると、オーバードライブ駆動が適用される階調変化後の第1フレーム目の合成輝度がその分上昇することになる。そこで、好ましくは、図3A(2)および図3A(2)に示すように、サブ画素31_H,31_Lの他方を、その最適量よりもオーバードライブ量が小さな不足気味のオーバードライブ駆動とすることで、オーバードライブ駆動が適用される第1フレーム目にアンダーシュートの効果を享受することで、第1フレーム目に関して、オーバーシュートとアンダーシュートの合成により、全体の輝度維持も図るようにするのがよい。この際、画素の入力階調が比較的高い場合には、望ましくは、低階調領域VHのサブ画素31_Lの方を過剰気味のオーバードライブ駆動とし(オーバーシュートさせ)、高階調領域VHのサブ画素31_Hの方を不足気味のオーバードライブ駆動とする(アンダーシュートさせる)方が良好であることも見出した。これは、液晶の方位角ブレによる応答悪化が高階調ほど顕著であることに起因すると考えられる。
【0056】
因みに、画素の入力階調が比較的低い場合には、図3A(2)および図3A(2)に示すように、サブ画素31_H,31_Lの何れを過剰気味のオーバードライブ駆動と不足気味のオーバードライブ駆動とするかは任意である。なお、図3に示す第1例はサブ画素31_Hを不足気味のオーバードライブ駆動としサブ画素31_Lを過剰気味のオーバードライブ駆動とした場合を示し、図3Aに示す第2例はサブ画素31_Hを過剰気味のオーバードライブ駆動としサブ画素31_Lを不足気味のオーバードライブ駆動とした場合を示す。
【0057】
<第1実施例>
図4〜図4Eは、第1実施形態の動画応答特性改善手法を適用した第1実施例を説明する図である。ここで、図4は、本実施例で採用する液晶セルの動作原理を説明する図(画素アレイ部3の断面模式図)である。図4Aは、各サブ画素が担当する階調カーブ(ガンマ特性)の一例を示す図である。図4B〜図4Dは、オーバードライブ駆動時の各サブ画素の階調を示す図表である。図4Eは、透過率の時間変化を示す図であり、図4E(1)はサブ画素31_H,31_Lの別に比較例と第1実施例の透過率の時間変化を示し、図4E(2)はサブ画素31_H,31_Lの合成により得られる正規化した比較例と第1実施例の透過率の時間変化を示す。
【0058】
図4において、(1)は薄膜トランジスタ34がオフで黒を表示する状態を示し、(2)は薄膜トランジスタ34がオンでたとえば白を表示する状態を示している。図4(1),(2)に示すように、薄膜トランジスタ34、15μm幅の垂直走査線12(ゲート線)、12μm幅の水平走査線14(データ線)、20μm幅の保持容量36(蓄積キャパシタ)、および画素電極が配置される下部表示板としてのアレイ基板部600と、カラーフィルタ、共通電極、および4μmのスペーサ突起物が配置される上部表示板としてのカラーフィルタ基板部700を用意し、それぞれに対して垂直配向膜602,702を塗布し、負の誘電異方性を備える液晶組成物を滴下注入後に、前述のアレイ基板部600とカラーフィルタ基板部700を所定のセルギャップで対向配置させて貼り合わせてシールの硬化を行なうことで、一対の基板(アレイ基板部600とカラーフィルタ基板部700)間に形成された垂直配向膜602,702間に封止された液晶層3aとで画素アレイ部3(液晶表示パネル部)を構成した。
【0059】
つまり、本実施形態(第1実施形態に限らず後述の第2実施形態も含む)の動画応答特性改善手法を適用する画素アレイ部3は、薄膜トランジスタ34や保持容量36が配されるアレイ基板部600、これと対向しているカラーフィルタ基板部700、およびアレイ基板部600とカラーフィルタ基板部700との間に注入されアレイ基板部600とカラーフィルタ基板部700に垂直に配向されている液晶分子を含む負の誘電異方性を備える液晶層3aを備える。それぞれの基板部600,700には、垂直配向膜602,702が形成されており、垂直配向膜602,702は液晶層3aの液晶分子を各基板部600,700に対し垂直に配向させる垂直配向モード(VAモード)である。
【0060】
1つの画素セル30は、視野角(側面視認性)改善のため、2つのサブ画素31_H,31_Lから構成されており、その有効画素面積Area_H,Area_Lの比はArea_H:Area_L=1:2とした。画素電極は、10μm幅のスリットを設けており、アレイ基板とカラーフィルタ基板を合わせた状態にて25μm間隔で配置されている、いわゆるPVA(Patterned Vertically Aligned)構造とする。サブ画素31_H,31_Lの各領域構造としては、たとえば特開2005−62882号公報や特開2007−86791号公報に記載のものとするとよい。作製したセルに対して、偏向軸が互いに90度になるように偏光板をセル外側に貼り合わせることで、クロスニコル状態とした。
【0061】
アレイ基板部600は、ガラスなどの透明な絶縁物質からなる下部絶縁基板610上に、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide )などの透明な導電物質からなる第1画素電極620_Hおよび第2画素電極620_Lが形成されている。第1画素電極620_Hおよび第2画素電極620_Lは切開部622によって分離されている。第1画素電極620_Hは薄膜トランジスタ34_Hに直接連結され、また第2画素電極620_Lは薄膜トランジスタ34_Lに直接連結されて、1つの画素セル30を構成する複数のサブ画素31_H,31_Lがそれぞれ独立に画像信号電圧の印加を受けるようになっている。
【0062】
透過型液晶表示パネルの場合には、下部絶縁基板610の下面には下部偏光板(図示を割愛する)が取り付けられるが、反射型液晶表示パネルの場合には、画素電極620_H,620_Lは、透明でない物質で形成でき、下部偏光板も不要である。
【0063】
カラーフィルタ基板部700は、ガラスなどの透明な絶縁物質からなる上部絶縁基板710の下面に、R(赤),G(緑),B(青)の色別のカラーフィルタ730、保護膜740、ITOまたはIZOなどの透明な導電物質からなる共通電極750が形成されている。共通電極750には、アレイ基板部600側の画素電極620_H,620_Lの切開部622とともにフリンジフィールドを形成して液晶分子を分割配向するドメイン分割手段である切開部752が形成されている。なお、必要に応じて、画素領域に開口部を有して画素領域間から漏れる光を防止するためのブラックマトリックスを設けてもよい。ブラックマトリックスは、画素領域の周囲部だけでなく、切開部752によって発生する光漏れを防止するべく、共通電極750の切開部752と重畳する部分にも形成してもよい。
【0064】
このようにして作製した液晶セルを搭載した画素アレイ部3(パネルモジュール)のサブ画素31_H,31_Lに対して、表示階調に対応するオーバードライブ電圧を決めるルックアップテーブルをルックアップテーブル110_H,110_Lとして独立に持たせ、その駆動時における透過率の時間変化を評価した。比較対象として、サブ画素31_H,31_Lのオーバードライブ電圧(階調)を決めるルックアップテーブルを共通とした駆動回路を有する比較例のパネルモジュールも同時に用意した。
【0065】
モジュールの駆動周波数は60Hzとし、比較例のパネルモジュールのオーバードライブ電圧は印加してから1フレーム分(16.7ms)の時間が経過した後に目標階調の透過率に到達するように調整してあり、第1実施形態を適用するパネルモジュールは、高階調領域VH用のサブ画素31_Hに対してオーバードライブ電圧は不足気味とし、低階調領域VL用のサブ画素31_Lに対しては過剰気味とすることで、1フレーム目の画素の透過率が同じなるように調整を行なった。
【0066】
評価基準としては、オーバードライブ電圧を印加する1フレーム目の直後に表れる一時的な透過率変動(透過率低下)を表す揺戻し率を示す下記式(1)を用いた。式(1)で求められる揺戻し率の値が小さいほど透過率低下量が小さく、応答特性としてより好ましい。
【0067】
【数1】

【0068】
たとえば黒のレベルを“0”、白を“255”とした場合において、サブ画素31_H,31_Lが担当する階調カーブ(階調カーブ)を図4Aに示し、入力階調が“0”から“118”に変化したときにおける各サブ画素階調を図4Bに示し、透過率の時間変化を図4Eに示す。図4Bにおいて、第1フレームについて括弧内に示している値がオーバードライブ量である。
【0069】
図4Aに示すガンマ曲線から分るように、サブ画素31_Hは入力階調よりも高い高階調側を担当し、サブ画素31_Lは入力階調よりも低い低階調側を担当するように設定されおり、ハーフトーン表示技術(多分割ドメイン制御技術)によって視野角改善が図られる用になっている。
【0070】
さらに、図4Bに示す図表から分るように、第1実施形態を適用しない比較例(通常のオーバードライブを行なう場合)および第1実施形態を適用した例の何れも、入力階調変化後の第1フレームでは、サブ画素31_H,31_Lの双方は、それぞれが担当する階調レベルよりもさらに強調するようにオーバードライブを行なっている。
【0071】
たとえば、R,G,Bの各画素データが、それぞれ8ビットの信号であり、各色が“0”〜“255”の10進数で示す256階調により表現されているものとする。この場合、ルックアップテーブル110としては、基本的には1フレーム前の256階調と、現在の256階調とから補正後の階調を特定するための16ビット入力のテーブルを必要とする。しかしながら、これではメモリ容量が大きくなり過ぎるので、図4B,図4Cでは、補間処理を行なうことを前提に、階調レベルを間引いてデータを保存している。補間を行う手段は、特に限定されず、たとえば、直線補間あるいは3点補間その他の線形または非線形の手法を用いることができる。
【0072】
なお、図4Bは比較例の場合、図4Cは第1実施形態の場合である。図4B,図4Cでは、一部の値が記述されていないが、テーブルに格納されているオーバードライブ駆動を規定する補正後の階調値もしくはオーバードライブ量は、入力階調が変化したときの液晶の応答特性に基づき、予め実験値を参照して求めて設定がされる。因みに、入力階調が最高レベル近傍時には、電源電圧との関係で事実上オーバードライブ駆動ができないので、オーバードライブ量は“0”となる。
【0073】
ここで、本実施形態を適用しない比較例の場合、図4Bに示すように、ルックアップテーブル110としてはサブ画素31_H,31_Lに共通のもので、基本的に、現在の信号レベルが1フレーム前の信号レベルより低い場合は、現在の信号レベルよりさらに低い値(信号レベル)で現在の信号レベルを置換するし、また、現在の信号レベルが1フレーム前の信号レベルより高い場合は、現在の信号レベルよりさらに高い値(信号レベル)で現在の信号レベルを置換することのできるようなオーバードライブ量が設定される。
【0074】
たとえば、1フレーム前の信号レベルが“0”であり、現在の信号レベルが“118”の場合、通常の階調レベルはサブ画素31_Hは“183”、サブ画素31_Lは“60”に設定される。そして、階調変化後の第1フレーム時にはオーバードライブ駆動のため、それぞれ現在の信号レベルより高い値(たとえば図4Dに示すように、補正後においてサブ画素31_Hの階調は“221”、サブ画素31_Lの階調は“161”)が特定され、これが補正後の現在の信号レベルとして出力される。現在の信号レベルと補正後の現在の信号レベルとの差がオーバードライブ駆動のための補正量つまりオーバードライブ量である。
【0075】
ルックアップテーブル110として補正後の現在の信号レベルをデータとして持たずにオーバードライブ量を持つ場合には、オーバードライブ演算部120は、テーブルに格納されている対応する階調のオーバードライブ量を読み出し、その空間位置に対する現在の信号レベルに加算または減算する。
【0076】
加えて、図4B,図4C,(3)に示す図表から分るように、比較例で適用している通常のオーバードライブ駆動(たとえば補正後においてサブ画素31_Hの階調は“221”、サブ画素31_Lの階調は“161”)に対して、第1実施例(独立LUT駆動)は、たとえば図4Dに示すように、補正後において、サブ画素31_Hの階調は“202”であり不足気味のオーバードライブ量に設定されており、サブ画素31_Lの階調は“188”であり過剰気味のオーバードライブ量に設定されている。
【0077】
つまり、サブ画素31_H用のルックアップテーブル110_Hとサブ画素31_L用のルックアップテーブル110_Lを併用する仕組みを採り、すなわち、1つの画素セル30に独立に駆動することが可能な複数のサブ画素31_H,31_Lを備え、入力された映像信号に対してその各々のサブ画素31_H,31_Lに印加する電圧に関して、複数のサブ画素用に独立したルックアップテーブルを有する仕組みを採り、その独立した各ルックアップテーブル110_H,110_Lの双方には、オーバードライブ電圧を印加するためのデータが設定される。
【0078】
サブ画素31_H,31_Lについて共通のルックアップテーブルを使用して通常のオーバードライブ駆動を行なった比較例の場合、および各サブ画素31_H,31_Lに過剰気味もしくは不足気味のオーバードライブ駆動を行なった第1実施例の場合において、揺戻し率を算出すると、比較例では21.7%、第1実施例では10.7%となり、第1実施例(第1実施形態)における応答特性に改善効果が確認された。
【0079】
オーバードライブ電圧を印加するフレーム後の透過率変動を表す揺戻し率が最終到達透過率(目標階調透過率)に対して略10%以内である場合には、動画応答時に視覚的に比較的認識され難く、表示装置として好ましい。略10%以内と称しているが、厳格である必要はなく、10%よりも若干大きくてもよく、たとえば15%以下であればよい。前記実施例の結果では揺戻し率が10.7%となっており10%よりも若干大きいが、ほぼその要件を満たしているので、動画応答時には揺戻し現象を起因とする輝度変化は視覚的に認識され難く、揺戻しを起因とする輝度変化を抑制し、動画応答特性を改善することができるといってよい。
【0080】
<動画応答特性改善手法:第2実施形態>
図5は、動画応答特性改善手法の第2実施形態の基本原理を説明する図である。ここで、図5(1)は第2実施形態を適用しない比較例の応答特性例を示し、図5(2)は第2実施形態を適用したときの応答特性例を示す。
【0081】
第2実施形態の動画応答特性改善手法は、入力階調レベルが比較的高いときに液晶素子32の応答の際の2段応答現象を起因とする輝度変化を抑制する点に特徴を有する。
【0082】
第1実施形態でも述べたが、液晶応答の高速化を実現する一手法として、オーバードライブ駆動が知られている。ここで、VAモードであるか否かに拘わらず、TFT型液晶表示装置は、表示の切替後の階調レベルが最大レベル近傍の場合、電源電圧との関係から最大レベル以上のレベルの補正信号を発生できないため、事実上オーバードライブ駆動を行なうことができず、応答速度の改善を行なうことができない。このため、低階調から高階調に移る駆動時においては、電圧書込み直後の液晶層の大きなキャパシタンス変化に起因して、第1フレーム目が電圧印加不足になることによる輝度変化の2段応答特性(ステップ応答特性とも称される)が現われる。特許文献1の段落26〜29には、「2段応答特性」そのものの文言はないが、現象および問題点として指摘されている。
【0083】
これは、マトリクス状に配置された複数の絵素容量(本実施形態では液晶素子32の容量と保持容量36)が入力画像信号に対応する充電状態となることによって1垂直期間(1表示周期=1フレーム)ごとに表示を更新する液晶表示装置に起こるもので、絵素容量が充電された電荷を保持している期間(1フレームの間、特許文献1では1フィールドと記載している)に、絵素容量の電圧は徐々に下がっていくことに起因する。何故なら、対向する一対の電極の電極面に平行に配向した△ε>0の液晶分子は、印加された電圧に応じて電極面の法線方向に立ち上がる(電界に平行に配向する)。この液晶分子の配向の変化に伴い、液晶層の誘電率が上昇するので、液晶容量の静電容量が大きくなる、すなわち、絵素容量の静電容量が大きくなる。絵素容量の静電容量が大きくなると、Q=CVの関係に従って、絵素容量にかかる電圧は低下してしまう。
【0084】
このように、1フレームの間に絵素容量が保持する電圧が低下すると、図5(1)のサブ画素31_Hについて示したように、透過率(または充電電圧)つまり輝度が1フレームごとにステップ状に変化(ステップ応答)するので、階調変化直後の第1フレーム目では輝度不足となり、次フレームとの関係では段階的に輝度レベルが変化するので2段応答として観測されるのである。
【0085】
この2段応答は、絵素容量に1フレームに亘って電圧を印加し続ける、いわゆるスタティック駆動では起こらない。液晶パネルが2段応答するTFT型液晶表示装置では、液晶層に電圧が印加し続けるスタティック駆動による液晶表示装置に比べ、応答速度が遅くなり、残像の程度が大きくなるので、動画表示の品位が劣る。
【0086】
特許文献1では、その対策として、液晶容量Clcと電気的に並列に蓄積容量Csを設け、蓄積容量Csの液晶容量Clcに対する容量比がCs/Clc≧1の関係を満足するようにすることで、液晶分子の配向変化によって液晶容量Clcの静電容量が増大しても、絵素容量の静電容量の変化を抑制し、透過率(または充電電圧)の2段応答を抑制している。
【0087】
これに対して、第2実施形態の動画応答特性改善手法においては、容量比の前記条件の側面からではなく、高階調領域VHを担当するサブ画素31_Hに対するオーバードライブ量の側面から、2段応答を起因とする輝度変化を抑制し、動画応答特性を改善する対策を講じる点に特徴を有する。液晶容量と蓄積容量との容量比の制約を受けないので、素子構成上の自由度がある。
【0088】
具体的には、高階調側のサブ画素31_Hが最大の階調付近になる場合には、階調変化後の第1フレーム目にオーバードライブ駆動をすることができないため、液晶の誘電率変化に伴う電圧不足が光学的に表面化するようになる現象が現われるが、本願発明者による検討の結果、輝度低下を補償するために、もう一方の低階調側のサブ画素31_Lを過剰気味のオーバードライブにしてオーバーシュート気味とすることで、階調変化後の第1フレーム目の輝度低下を抑制できることを見出した。これは、低階調側のサブ画素31_Lのオーバードライブ量を通常の最適量よりも過剰気味にすることで、オーバードライブ駆動時にオーバーシュートの効果が得られ、合成後の輝度としては、オーバードライブ駆動時に現われる輝度不足を相殺できることによると考えられる。
【0089】
<第2実施例>
図6は、第2実施形態の動画応答特性改善手法を適用した第2実施例を説明する図である。ここで、図6は、黒のレベルを“0”、白を“255”とした場合において、入力階調が“0”から“225”に変化したときにおける各サブ画素階調を示す。図6において、第1フレームについて括弧内に示している値がオーバードライブ量である。適用したデバイスは第1実施例と同様のものである。
【0090】
図6に示す図表から分るように、比較例で適用している通常のオーバードライブ駆動(たとえば補正後においてサブ画素31_Lの階調は“231”)に対して、第2実施形態は、補正後において、サブ画素31_Lの階調は“242”であり過剰気味のオーバードライブ量に設定されている。つまり、第2実施形態においても、サブ画素31_H用のルックアップテーブル110_Hとサブ画素31_L用のルックアップテーブル110_Lを併用する仕組みを採り、すなわち、1つの画素セル30に独立に駆動することが可能な複数のサブ画素31_H,31_Lを備え、入力された映像信号に対してその各々のサブ画素31_H,31_Lに印加する電圧に関して、複数のサブ画素用に独立したルックアップテーブルを有する仕組みを採り、その独立した各ルックアップテーブル110_H,110_Lの双方には、オーバードライブ電圧を印加するためのデータが設定される。
【0091】
そして、サブ画素31_H,31_Lについて共通のルックアップテーブルを使用して通常のオーバードライブ駆動を行なった比較例の場合と、入力階調が比較的高いときにサブ画素31_Hにはオーバードライブを掛けずにサブ画素31_Lには過剰気味のオーバードライブ駆動を行なった第2実施形態の場合において、揺戻し率を算出すると、比較例では10.4%、第2実施例(第2実施形態)では6.2%となり、第2実施形態における応答特性に改善効果が確認された。
【0092】
これは、個々のサブ画素31_H,31_Lのオーバードライブ量を、一般的に設定される最適量(比較例で適用されているオーバードライブ量)とするのではなく、サブ画素31_H,31_Lの少なくとも一方(本例ではサブ画素31_L)を、その最適量よりもオーバードライブ量が大きな過剰気味のオーバードライブ駆動とすることで、揺戻しによる輝度低下を抑制できる第1実施形態の仕組みが、入力階調レベルが比較的高いときにも有効に機能していることによる。
【0093】
加えて、第2実施例(第2実施形態)では、入力階調が比較的高く、高階調領域VHを担当するサブ画素31_Lに対してオーバードライブ駆動を掛けられないときに、低階調領域VLを担当するサブ画素31_Lを、オーバードライブ量が最適量よりも大きな過剰気味のオーバードライブ駆動とすることで、階調変化後の第1フレーム目に関して、サブ画素31_Hで発生するステップ部分、つまり輝度上昇が得られず輝度不足が生じる部分を、サブ画素31_Lで発生するオーバーシュートの効果を享受することで、ステップ部分(輝度不足分)とオーバーシュートの合成により2段応答を補償でき、高階調域(階調が高い領域)における応答特性を改善できる。
【0094】
<変形例>
以上、本発明について実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で前記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0095】
また、前記の実施形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組合せにより種々の発明を抽出できる。実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0096】
たとえば、前記実施形態および実施例では、多分割ドメイン制御技術を採用して視野角改善を図るに当たり、1つの画素セル30を2つのサブ画素31に分割する例で示したが、サブ画素31の分割数は2つに限らず3以上であってもよく、その場合にも、前述の本実施形態の仕組みを適用できる。その際には、何れを過剰気味のオーバードライブ駆動特性にし、何れを不足気味のオーバードライブ駆動特性にするかは、それぞれが担当する階調領域に応じて決めればよい。
【0097】
たとえば、図7は、1つの画素セル30を4つのサブ画素31_A,31_B,31_C,31_Dに分割する例である。図7(1)に示すように、各サブ画素31_A,31_B,31_C,31_Dが担当する階調領域は、サブ画素31_Hが最も高い階調領域を担当し、31_B,31_C,31_Dの順でより低い階調領域を担当するものとする。
【0098】
この場合において、第1実施形態の揺戻し改善駆動を適用する場合、4つのサブ画素31_A,31_B,31_C,31_Dの少なくとも一方を過剰気味のオーバードライブ量に設定すればよい。好ましくは、何れか一方を過剰気味のオーバードライブ量に設定するとともに他方を不足気味のオーバードライブ量に設定するが、この際にはより低い階調領域を担当するものは過剰気味のオーバードライブ量に設定しより高い階調領域を担当するものは不足気味のオーバードライブ量に設定する限り、適用対象となるサブ画素31の数は任意である(ただし少なくとも2つではある)。
【0099】
よって、考え方としては、図7(2−1)に示すように、比較的低い階調領域を担当する2つのサブ画素31_C,31_Dを対象として第1実施形態を適用し、比較的高い階調領域を担当する2つのサブ画素31_A,31_Bについては通常のオーバードライブ駆動特性にしておくことも考えられる。あるいは、最も高い階調領域を担当するサブ画素31_Aを除く3つのサブ画素31_B,31_C,31_Dを対象として第1実施形態を適用し、サブ画素31_Aについては通常のオーバードライブ駆動特性にしておくことも考えられる。
【0100】
しかし、揺戻し現象がより大きく問題となるのは、より高い階調領域を担当するサブ画素である。よって、図7(2−2)に示すように、少なくとも最も高い階調領域を担当するサブ画素31_Aに対しては不足気味のオーバードライブ量に設定し、残りのサブ画素31_B,31_C,31_Dの少なくとも1つを過剰気味のオーバードライブ量に設定するのがよい。3分割の場合や5分割以上の場合についても、このような観点から、各サブ画素に対するオーバードライブ駆動特性を決めればよい。
【0101】
また、第2実施形態の2段応答改善駆動を適用する場合、図7(3)に示すように、4つのサブ画素31_A,31_B,31_C,31_Dのうち、最も高い階調領域を担当するサブ画素31_Aについてはオーバードライブ駆動を行なわず、残りの3つのサブ画素31_B,31_C,31_Dの少なくとも1つに対しては過剰気味のオーバードライブ量に設定するとよい。
【0102】
ただし、揺戻し現象を発生し得る液晶表示モードの場合には、残りの3つのサブ画素31_B,31_C,31_Dの中でより高階調領域を担当するサブ画素31_Bに対して過剰気味のオーバードライブ量に設定すると揺戻し現象の弊害が懸念される。よって、好ましくは、より高階調領域を担当するサブ画素31に対しては通常のオーバードライブ量に設定しあるいは第1実施形態と同様に不足気味のオーバードライブ量に設定し、より低階調領域を担当するサブ画素31に対して過剰気味のオーバードライブ量に設定する組合せを選択するのがよい。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】液晶表示装置の一実施形態の全体構成の概略を示す図である。
【図2】本実施形態の画素セルの構成例を説明する図である。
【図3】動画応答特性改善手法の第1実施形態の基本原理(第1例)を説明する図である。
【図3A】動画応答特性改善手法の第1実施形態の基本原理(第2例)を説明する図である。
【図4】第1実施形態の動画応答特性改善手法を適用した第1実施例で採用する液晶セルの動作原理を説明する画素アレイ部の断面模式図である。
【図4A】第1実施例(比較例も)において各サブ画素が担当する階調カーブの一例を示す図である。
【図4B】第1実施例(比較例も)においてオーバードライブ駆動時の各サブ画素の階調を示す図表(共通)である。
【図4C】第1実施例(比較例も)においてオーバードライブ駆動時の各サブ画素の階調を示す図表(高階調用と低階調用)である。
【図4D】第1実施例(比較例も)においてオーバードライブ駆動時の各サブ画素の階調を示す図表(結果)である。
【図4E】第1実施例(比較例も)において透過率の時間変化を示す図である。
【図5】動画応答特性改善手法の第2実施形態の基本原理を説明する図である。
【図6】第2実施形態の動画応答特性改善手法を適用した第2実施例を説明する図である。
【図7】変形例(4つのサブ画素の場合)を説明する図である。
【符号の説明】
【0104】
1…液晶表示装置、100…レベル変換部、110_H,110_L…ルックアップテーブル、12…垂直走査線、120…オーバードライブ演算部、13…コモン配線、14…水平走査線、2…基板、200…階調基準電圧生成部、3…画素アレイ部、30…画素セル、300…タイミングコントローラ部、31_H,31_L…サブ画素、32…液晶素子、320…タイミングジェネレータ部、34…薄膜トランジスタ、36…保持容量、3a…液晶層、400…バックライト部、5…ゲートドライバ部、500…制御・統括部、6…ソースドライバ部、600…アレイ基板部、602…垂直配向膜、610…下部絶縁基板、620…画素電極、622…切開部、700…カラーフィルタ基板部、702…垂直配向膜、710…上部絶縁基板、730…カラーフィルタ、740…保護膜、750…共通電極、752…切開部、9…表示制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶素子および前記液層素子に電気的に接続された薄膜トランジスタを具備する複数の画素セルがマトリクス状に配置された画素アレイ部と、
現時点の入力階調と1表示周期前の入力階調のレベル差に応じたオーバードライブ駆動特性に従って、前記液晶素子の光学応答を1表示周期内にほぼ完了させるようにオーバードライブ駆動を制御する表示制御部と
を備え、
前記複数の画素セルのそれぞれは、入力されたある階調レベルについてレベル変換により担当分けされた高階調側の表示を担当する高階調側のサブ画素と低階調側の表示を担当する低階調側のサブ画素に分割され、各サブ画素を独立に駆動する個別の薄膜トランジスタを具備し、
前記表示制御部は、前記高階調側のサブ画素に対するオーバードライブ駆動特性と前記低階調側のサブ画素に対するオーバードライブ駆動特性とを独立に設定する
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記高階調側のサブ画素に対するオーバードライブ駆動特性を規定する高階調側のルックアップテーブルと、前記低階調側のサブ画素に対するオーバードライブ駆動特性を規定する低階調側のルックアップテーブルを記憶したテーブルメモリを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記画素セルは、オーバードライブ駆動後の表示周期内に、前記液晶素子の配向乱れを起因として、一時的に輝度が低下する現象を生じ得るものであり、
前記表示制御部は、前記高階調側のサブ画素に対するオーバードライブ駆動特性と前記低階調側のサブ画素に対するオーバードライブ駆動特性の少なくとも一方を過剰気味のオーバードライブ量に設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記高階調側のサブ画素に対するオーバードライブ駆動特性と前記低階調側のサブ画素に対するオーバードライブ駆動特性に関して、何れか一方を過剰気味のオーバードライブ量に設定するとともに、他方を不足気味のオーバードライブ量に設定する
ことを特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、入力階調が比較的高い階調範囲に属するときには、前記低階調側のサブ画素に対しては過剰気味のオーバードライブ量に設定するとともに、前記高階調側のサブ画素に対しては不足気味のオーバードライブ量に設定する
ことを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記複数の画素セルのそれぞれは、入力されたある階調レベルについて3つ以上に担当する階調領域が分けられたサブ画素と、各サブ画素を独立に駆動する個別の薄膜トランジスタを具備し、
前記表示制御部は、最も高い階調領域を担当するサブ画素に対しては不足気味のオーバードライブ量に設定するとともに、残りのサブ画素の少なくとも1つに対しては過剰気味のオーバードライブ量に設定する
ことを特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、オーバードライブ駆動を実行する表示周期後の透過率変動が最終到達透過率に対して15%以内となるように前記オーバードライブ量を設定する
ことを特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記画素アレイ部は、所定のセルギャップで対向配置された一対の基板と、前記一対の基板間に形成された配向膜間に封止された液晶層を有するものであり、
前記液晶層が負の誘電異方性を備える
ことを特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記表示制御部は、
前記液晶素子を含む絵素容量を入力画像信号に対応する充電状態とすることによって1表示周期ごとに表示を更新するとともに、
入力階調が比較的高い階調範囲に属するときには、前記高階調側のサブ画素に対してはオーバードライブ駆動を行なわずに、前記低階調側のサブ画素に対しては過剰気味のオーバードライブ量に設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記画素セルは、オーバードライブ駆動後の表示周期内に、前記液晶素子の配向乱れを起因として、一時的に輝度が低下する現象を生じ得るものであり、
前記複数の画素セルのそれぞれは、入力されたある階調レベルについて3つ以上に担当する階調領域が分けられたサブ画素と、各サブ画素を独立に駆動する個別の薄膜トランジスタを具備し、
前記表示制御部は、最も高い階調領域を担当するサブ画素に対してはオーバードライブ駆動を行なわずに、残りのサブ画素の内、より高い階調領域を担当するサブ画素には通常または不足気味のオーバードライブ量に設定するとともに、残りのサブ画素の少なくとも1つに対しては過剰気味のオーバードライブ量に設定する
ことを特徴とする請求項9に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
液晶素子および前記液層素子に電気的に接続された薄膜トランジスタを具備する複数の画素セルがマトリクス状に配置された画素アレイ部について、現時点の入力階調と1表示周期前の入力階調のレベル差に応じたオーバードライブ駆動特性に従って、前記液晶素子の光学応答を1表示周期内にほぼ完了させるようにオーバードライブ駆動する液晶駆動方法であって、
前記複数の画素セルのそれぞれは、入力されたある階調レベルについてレベル変換により担当分けされた高階調側の表示を担当する高階調側のサブ画素と低階調側の表示を担当する低階調側のサブ画素に分割され、各サブ画素を独立に駆動する個別の薄膜トランジスタを具備しており、
前記高階調側のサブ画素に対するオーバードライブ駆動特性と前記低階調側のサブ画素に対するオーバードライブ駆動特性とを独立に設定する
ことを特徴とする液晶駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3A】
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【図4】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−276653(P2009−276653A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129332(P2008−129332)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】