説明

液晶表示装置及び電子機器

【課題】容易に簡素な構成でフリッカー等の表示不具合の発生を抑制して表示品位の向上を図ることが可能な液晶表示装置を提供する。
【解決手段】画素電極12を備えた素子基板10と、素子基板10に対向配置された、対向電極22を備えた対向基板20と、素子基板10と前記対向基板20との間に挟持された液晶層30と、素子基板10の液晶層30の側に設けられた第1配向膜15と、対向基板20の液晶層30の側に設けられた第2配向膜25と、を備え、画素電極12を構成する材料の仕事関数が、対向電極22を構成する材料の仕事関数に比べて小さく、第1配向膜15の密度と第2配向膜25の密度とが概ね等しく、且つ、第1配向膜15の厚みd1が第2配向膜25の厚みd2よりも厚くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プロジェクターに用いられる液晶表示装置においては、高コントラスト化及び光学系の防塵性の確保が容易であるといった観点から、反射型液晶表示装置が採用されるようになってきている。このような反射型液晶装置では、画素電極としてAlやAg等の反射電極材料を用い、対向電極としてITO(インジウム錫酸化物)やIZO(インジウム亜鉛酸化物)等の透明電極材料を用いることで反射表示を実現している。
【0003】
しかしながら、反射型液晶表示装置における画素電極と対向電極とにおいて、それぞれを構成する材料の仕事関数が非対称であるため、対向電極電位(LCCOM)が正負のいずれかに大きくシフトする、いわゆるLCCOMずれが発生する。このLCCOMずれが発生した状態で、液晶表示装置を動作させると、表示画像にフリッカーを生じたり、残像(焼き付き)を生じたりする等の表示不具合が発生することがあった。
【0004】
このような課題を解決するための技術が検討されており、例えば、特許文献1の技術では、画素電極上に仕事関数調整層を設けることで、画素電極を構成する材料の仕事関数と仕事関数調整層を構成する材料の仕事関数とを合わせた値が対向電極を構成する材料の仕事関数と同程度になるようにしている。これにより、画素電極を構成する材料の仕事関数と対向電極を構成する材料の仕事関数との非対称性を解消している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−49817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、画素電極上に仕事関数調整層を形成する工程が新たに必要となり手間がかかるとともに装置構成が複雑になってしまう。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、容易に簡素な構成でフリッカー等の表示不具合の発生を抑制して表示品位の向上を図ることが可能な液晶表示装置及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の液晶表示装置は、画素電極を備えた素子基板と、前記素子基板に対向配置された、対向電極を備えた対向基板と、前記素子基板と前記対向基板との間に挟持された液晶層と、前記素子基板の前記液晶層の側に設けられた第1配向膜と、前記対向基板の前記液晶層の側に設けられた第2配向膜と、を備え、前記画素電極を構成する材料の仕事関数が、前記対向電極を構成する材料の仕事関数に比べて小さく、前記第1配向膜の密度と前記第2配向膜の密度とが概ね等しく、且つ、前記第1配向膜の厚みが前記第2配向膜の厚みよりも厚くなっていることを特徴とする。
【0009】
本願発明者は、鋭意研究の結果、LCCOMずれを抑制する手段として第1配向膜と第2配向膜の密度、厚みを制御することが重要であることを見出した。そして、この知見に基づいて本発明を完成させた。本発明の液晶表示装置によれば、第1配向膜の密度と第2配向膜の密度とが概ね等しく、且つ、第1配向膜の厚みが第2配向膜の厚みよりも厚くなっているので、画素電極を構成する材料の仕事関数と対向電極を構成する材料の仕事関数との非対称性を解消し、LCCOMずれを抑制することができる。また、第1配向膜と第2配向膜とで同種の材料を用いることができ、画素電極上に仕事関数調整層を備える必要がないので、手間がかかったり装置構成が複雑になったりすることはない。よって、容易に簡素な構成でフリッカー等の表示不具合の発生を抑制して表示品位の向上を図ることが可能な液晶表示装置を提供することができる。
【0010】
また、前記液晶表示装置において、前記画素電極がAlからなり、前記対向電極がITOからなっていてもよい。
【0011】
この液晶表示装置によれば、画素電極及び対向電極が同じ材料(例えばITO)からなる場合に比べて、画素電極を構成する材料の仕事関数と対向電極を構成する材料の仕事関数との非対称性(素子基板と対向基板の特性の非対称性)が顕著となる。このため、画素電極及び対向電極が例えばITOからなる場合に比べて、液晶層を挟持する素子基板と対向基板との特性差に起因したLCCOMずれが顕著に発生することとなる。したがって、フリッカー等の表示不具合の発生を抑制して表示品位の向上を図ることが可能となる。
【0012】
また、前記液晶表示装置において、前記第1配向膜の厚みと前記第2配向膜の厚みとの比が1/1よりも大きく1.2/1よりも小さい範囲に設定されていてもよい。
【0013】
この液晶表示装置によれば、フリッカー等の表示不具合の発生を抑制する最適な厚み比率となっているので、表示品位を効果的に向上させることができる。これに対して、第1配向膜の厚みと第2配向膜の厚みとの比が1/1であると(厚みが同じであると)効果がない。また、第1配向膜の厚みと第2配向膜の厚みとの比が1/1よりも小さいと第1配向膜の厚みが薄すぎてしまい表示品位を効果的に向上させることができない場合がある。また、第1配向膜の厚みと第2配向膜の厚みとの比が1.2/1以上であると第1配向膜の厚みが厚すぎてしまい表示品位を効果的に向上させることができない場合がある。
【0014】
また、前記液晶表示装置において、前記第1配向膜と前記第2配向膜とはシリコン酸化物によって形成されていてもよい。
【0015】
この液晶表示装置によれば、耐熱性及び耐光性に優れた液晶表示装置となる。したがって、プロジェクター用途として最適な液晶表示装置を得ることができる。
【0016】
また、前記液晶表示装置において、前記液晶層は、誘電率異方性が負の液晶材料を主成分とする液晶組成物によって形成されていてもよい。
【0017】
この液晶表示装置によれば、コントラストの高いVA(Vertical Alignment)モードの液晶表示装置となる。したがって、プロジェクター用途として最適な液晶表示装置を得ることができる。
【0018】
本発明の電子機器は、上述した液晶表示装置を備えることを特徴とする。
【0019】
この電子機器によれば、上述した液晶表示装置を備えているので、フリッカー等の表示不具合の発生を抑制して表示品位の向上を図ることが可能な電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る液晶表示装置の概略断面図である。
【図2】電子機器の一例であるプロジェクターの概略構成を示す模式図である。
【図3】実施例の第1配向膜と第2配向膜との密度、厚みの関係を示すグラフである。
【図4】比較例の第1配向膜と第2配向膜との密度、厚みの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の液晶表示装置に係る実施の形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等が異なっている。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る液晶表示装置1の断面構造を模式的に示した概略断面図である。液晶表示装置1は、素子基板10とこれに対向配置された対向基板20との間に、誘電率異方性が負の液晶材料からなる液晶層30が挟持されており、初期配向状態が垂直配向となっている。本実施形態の液晶表示装置1は、スイッチング素子としてTFT(Thin-Film Transistor)素子を用いたアクティブマトリクス型の反射型液晶装置である。
【0023】
素子基板10は、基材部14と、基材部14の一方面側に設けられる第1配向膜15と、を含んでいる。第1配向膜15は、液晶分子30aに所定方向へのプレチルト角を付与するためのものである。第1配向膜15は、例えば蒸着角度50°、真空度5.5×10−3Paとする条件で斜方蒸着を行うことで成膜されたものである。第1配向膜15の密度ρ1は1.93g/cm、第1配向膜15の厚みd1は74.4nm程度となっている。
【0024】
基材部14は、ガラス等の透光性材料からなる基板本体11を主体として構成されており、該基板本体11の内面にはAlあるいはAg等の反射性の高い導電性材料からなる画素電極12が形成されている。画素電極12上には、シリコン酸化物としての酸化シリコン(SiOx)からなるパッシベーション膜13が例えば真空蒸着法やスパッタ法(DCスパッタ)などのPVD法、またはCVD法により成膜されている。なお、パッシベーション膜13の形成材料としては、シリコン窒化物としての窒化シリコン(SiNx)、或いはアルミニウム酸化物としての酸化アルミニウム(AlxOy)を用いることもできる(x、yは正の整数)。
【0025】
また、素子基板10は、画素電極12への通電制御を行うためのスイッチング素子であるTFT素子、画像信号が供給されるデータ線、走査線(いずれも図示略)等を備えている。なお、データ線や走査線は、遮光膜としての機能を有することもある。
【0026】
一方、対向基板20は、基材部24と、基材部24の一方面側に設けられる第2配向膜25と、を含んでいる。第2配向膜25は、液晶分子30aに所定方向へのプレチルト角を付与するためのものである。第2配向膜25は、例えば蒸着角度50°、真空度5.5×10−3Paとする条件で斜方蒸着を行うことで成膜されたものである。第2配向膜25の密度ρ2は第1配向膜の密度ρ1と同様1.93g/cm、第2配向膜25の厚みd2は71.6nm程度となっている(d2<d1)。
【0027】
基材部24は、ガラス等の透光性材料からなる基板本体21を主体として構成されており、基板本体21の内面にはITO等の透明導電性材料からなる対向電極22が形成されている。対向電極22は基板本体21上に全面ベタ状に形成されている。対向電極22上には、パッシベーション膜23が例えばCVD法により形成されている。パッシベーション膜23の形成材料としては、上記パッシベーション膜13と同一の材料から構成されている。また、基板本体21の外面には偏光板42が形成されている。また、対向基板20はカラーフィルタや遮光膜を備えている。
【0028】
素子基板10と対向基板20との間には、第1配向膜15及び第2配向膜25によって初期配向状態が垂直配向を呈する液晶層30が挟持されている。液晶層30は、液晶分子30aの初期配向状態(電圧無印加時の配向状態)が垂直配向を呈している。
【0029】
第1配向膜15及び第2配向膜25は、斜方蒸着法を用いて配向膜の形成材料を基板本体11,21上に蒸着させることによって得られる。そのため第1配向膜15及び第2配向膜25は、複数の柱状の積層物を有しており、凹凸を備えたポーラスな表面となっている。複数の柱状積層物は、斜方蒸着時の入射角に対応する表面形状を有しており、この表面形状によって表面に接する液晶層の液晶分子にプレチルト角(基板本体11,21の法線方向に対する角度)を付与し、液晶分子30aを駆動させる際の傾斜方向を規定している。第1配向膜15及び第2配向膜25の材料としては、酸化シリコン(SiOx)を用いることができる。ここで、酸化シリコンとは、SiO及びSiOのいずれか1種類以上の材料を含む無機材料である。なお、酸化シリコンの他に、SiONやSiNなどの無機材料を用いることもできる。
【0030】
ところで、特許文献1の技術では、画素電極上に仕事関数調整層を設けることで、画素電極を構成する材料の仕事関数と仕事関数調整層を構成する材料の仕事関数とを合わせた値が対向電極を構成する材料の仕事関数と同程度になるようにし、これにより、画素電極を構成する材料の仕事関数と対向電極を構成する材料の仕事関数との非対称性を解消している。
【0031】
しかしながら、特許文献1の技術では、画素電極上に仕事関数調整層を形成する工程が新たに必要となり手間がかかるとともに装置構成が複雑になっていた。
【0032】
本願発明者は、鋭意研究の結果、LCCOMずれを抑制する手段として第1配向膜15と第2配向膜25の密度、厚みを制御することが重要であることを見出した。すなわち、本発明の液晶表示装置1においては、第1配向膜15の密度ρ1と第2配向膜25の密度ρ2とが概ね等しく、且つ、第1配向膜15の厚みd1が第2配向膜25の厚みd2よりも厚くなるようにした。
【0033】
具体的には、第1配向膜15の密度ρ1及び第2配向膜25の密度ρ2をいずれも1.93g/cmとして互いに同一とし(ρ1=ρ2)、且つ、第1配向膜15の厚みd1を74.4nm、第2配向膜25の厚みd2を71.6nmとして第1配向膜15の厚みd1を第2配向膜25の厚みd2よりも厚くした(d1>d2)。
【0034】
このように、第1配向膜15の密度ρ1及び第2配向膜25の密度ρ2を同じにしておくことによって液晶の配向性を制御しやすくなる。また、第1配向膜15の厚みd1と第2配向膜25の厚みd2とを異ならせても配向性に影響は及ぼさないことが確認されている。したがって、第1配向膜15の密度ρ1と第2配向膜25の密度ρ2とが概ね等しく、且つ、第1配向膜15の厚みd1が第2配向膜25の厚みd2よりも厚くすることで、配向性に影響を及ぼすことなく、フリッカー等の表示不具合の発生を抑制することができる。
【0035】
なお、第1配向膜15の密度ρ1と第2配向膜25の密度ρ2とは必ずしも同一である必要はなく、第1配向膜15の密度ρ1と第2配向膜25の密度ρ2とが概ね等しくなっていればよい。ここで、「概ね等しい」とは第1配向膜15と第2配向膜25とを成膜する際の製造誤差を含む概念であり、例えば、第1配向膜15の密度ρ1と第2配向膜25の密度ρ2との比が0.99/1以上1.01/1以下の範囲であることが好ましい。
【0036】
また、第1配向膜15の厚みd1と第2配向膜25の厚みd2との比が1/1よりも大きく1.2/1よりも小さい範囲に設定されていることが好ましい。本実施形態では、第1配向膜15の厚みd1を74.4nm、第2配向膜25の厚みd2を71.6nmとし、第1配向膜15の厚みd1と第2配向膜25の厚みd2との比が74.4/71.6(=1.04/1)としている。このように、第1配向膜15の厚みd1と第2配向膜25の厚みd2との比(1.04/1)が前記範囲内(1/1よりも大きく1.2/1よりも小さい範囲)に設定されているので、フリッカー等の表示不具合の発生を抑制する最適な厚み比率となり、表示品位を効果的に向上させることができる。
【0037】
これに対して、第1配向膜の厚みと第2配向膜の厚みとの比が1/1であると(厚みが同じであると)効果がない。また、第1配向膜の厚みと第2配向膜の厚みとの比が1/1よりも小さいと第1配向膜の厚みが薄すぎてしまい表示品位を効果的に向上させることができない場合がある。また、第1配向膜の厚みと第2配向膜の厚みとの比が1.2/1以上であると第1配向膜の厚みが厚すぎてしまい表示品位を効果的に向上させることができない場合がある。
【0038】
また、この構成によれば、第1配向膜15の密度ρ1と第2配向膜25の密度ρ2とが概ね等しいので、第1配向膜15と第2配向膜25とで同種の材料を用いることができる。また、画素電極上に仕事関数調整層を備える必要がないので、手間がかかったり装置構成が複雑になったりすることはない。よって、容易に簡素な構成でフリッカー等の表示不具合の発生を抑制して表示品位の向上を図ることが可能な液晶表示装置1を提供することができる。
【0039】
また、この構成によれば、画素電極12がAlからなり、対向電極22がITOからなっているので、画素電極及び対向電極が同じ材料(例えばITO)からなる場合に比べて、画素電極12を構成する材料の仕事関数と対向電極22を構成する材料の仕事関数との非対称性(素子基板と対向基板の特性の非対称性)が顕著となる。このため、画素電極及び対向電極が例えばITOからなる場合に比べて、液晶層を挟持する素子基板10と対向基板20との特性差に起因したLCCOMずれが顕著に発生することとなる。したがって、フリッカー等の表示不具合の発生を抑制して表示品位の向上を図ることが可能となる。
【0040】
また、この構成によれば、第1配向膜15と第2配向膜25とがシリコン酸化物によって形成されているので、耐熱性及び耐光性に優れた液晶表示装置1となる。したがって、プロジェクター用途として最適な液晶表示装置1を得ることができる。
【0041】
また、この構成によれば、液晶層30が誘電率異方性が負の液晶材料を主成分とする液晶組成物によって形成されているので、コントラストの高いVA(Vertical Alignment)モードの液晶表示装置1となる。したがって、プロジェクター用途として最適な液晶表示装置1を得ることができる。
【0042】
なお、本実施形態の液晶表示装置1では、対向電極22としてITOを用いた例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、IZOを用いるようにしてもよい。
【0043】
(電子機器)
次に、電子機器の一例として、第1実施形態の液晶表示装置1を光変調手段として備えたプロジェクターの構成について、図2を参照して説明する。図2は、液晶表示装置1を光変調装置として用いたプロジェクター100の概略構成を示す模式図である。
【0044】
本実施形態のプロジェクター100は、光源部110、レンズアレイ120、反射ミラー160、光学要素130から概略構成される偏光照明装置101を備えている。また、偏光照明装置101からの光を三色の色光に分離する色分離光学系500と、この色分離光学系500によって分離された三色の色光のそれぞれを変調する複数の反射型液晶素子300R、300G、300Bと、3つの反射型液晶素子300R、300G、300Bによって変調された光を合成するクロスダイクロイックプリズム550と、クロスダイクロイックプリズム550によって合成された色光を投写面700に投写する投写光学系600とを備えている。さらに、色分離光学系500によって分離されたそれぞれの色光を反射させて反射型液晶素子300R、300G、300Bに到達させるとともに、反射型液晶素子300R、300G、300Gによって変調された光を透過させてクロスダイクロイックプリズム550へ到達させる3つの偏光ビームスプリッタ200R、200G、200Bを備えている。
【0045】
光源部110は、光源ランプ111と、放物面リフレクター112とから大略構成されている。光源ランプ111から放射された光は、放物面リフレクター112によって一方向に反射され、略平行な光束となってレンズアレイ120に入射する。ここで、光源ランプ111としては、メタルハライドランプ、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ等が、また、リフレクターとしては本実施形態に挙げた放物面リフレクター112の他に、楕円リフレクター、球面リフレクター等が使用できる。
【0046】
反射ミラー160は、レンズアレイ120と光学要素130との間に配置されている。レンズアレイ120を透過した光は反射ミラー160で反射されて光学要素130に入射する。
【0047】
光学要素130は、集光レンズアレイ131、偏光分離ユニットアレイ141と選択位相差板147とからなる板状の偏光変換素子140、偏光変換素子140から出射された中間光束を反射型液晶素子300に重畳させる出射側レンズ150から大略構成される複合体である。この光学要素130は、中間光束のそれぞれをP偏光光束とS偏光光束とに分離した後、一方の偏光光束の偏光方向と他方の偏光光束の偏光方向とを揃え、偏光方向がほぼ揃ったそれぞれの光束を一箇所の被照明領域に導くという機能を有する。
【0048】
偏光照明装置101において、光源部110から出射されたランダムな偏光光束は、レンズアレイ120により複数の中間光束に分割された後、光学要素130により偏光方向がほぼ揃った一種類の偏光光束(本実施形態ではS偏光光束)に変換される。
【0049】
色分離光学系500は、偏光照明装置101から出射された光を赤色光R、緑色光G、青色光Bの三色の色光に分離する光学系である。色分離光学系500は、青色光・緑色光反射ダイクロイックミラー501、赤色光反射ダイクロイックミラー502、緑色光反射ダイクロイックミラー505、及び、2つの反射ミラー503、504から構成される。
【0050】
偏光照明装置101から出射された光は、色分離光学系500に入射する。偏光照明装置101から出射された光のうち、赤色光Rの成分は、赤色光反射ダイクロイックミラー502によって反射ミラー503側へ反射される。このようにして分離された赤色光Rは、偏光ビームスプリッタ200Rへ入射する。
【0051】
一方、偏光照明装置101から出射された光のうち、緑色光G、および青色光Bの成分は、緑色光・青色光反射ダイクロイックミラー501によって反射ミラー504側へ反射される。さらに、反射ミラー504によって反射された緑色光G、青色光Bは、緑色光反射ダイクロイックミラー505に入射し、ここで緑色光Gの成分のみが反射される。緑色光反射ダイクロイックミラー505によって反射された緑色光Gは、偏光ビームスプリッタ200Gへ入射する。緑色光反射ダイクロイックミラー505を透過した青色光Bは、偏光ビームスプリッタ200Bへ入射する。
【0052】
偏光ビームスプリッタ200R、200G、200Bに入射したS偏光光束である各色光は、各偏光ビームスプリッタ200R、200G、200BのS偏光光束反射膜によってそのほとんどが反射されて、反射型液晶素子300R、300G、300Bに到達することになる。
【0053】
反射型液晶素子300R、300G、300Bに入射した各色光は、所定の画像情報に基づいた変調を受け、偏光ビームスプリッタ200R、200G、200B側へ出射され、各々のS偏光光束反射膜を透過した光のみがクロスダイクロイックプリズム550側へ出射される。
【0054】
クロスダイクロイックプリズム550は、XZ平面における断面形状が二等辺三角形の4つの三角柱状プリズムで構成されている。4つの三角柱状プリズムは、その側面同士が互いに接着されており、その接着面に沿って、2種類のダイクロイック膜551、552が形成されている。ダイクロイック膜551の波長選択特性は、赤色光Rを反射し、緑色光Gと青色光Bとを透過させるように設定されている。また、ダイクロイック膜552の波長選択特性は、青色光Bを反射し、赤色光Rと緑色光Gとを透過させるように設定されている。従って、クロスダイクロイックプリズム550に入射した光は、2種類のダイクロイック膜551、552の波長選択特性に基づいて合成され、投写光学系600を介して投写面700上に投写される。
【0055】
本実施形態のプロジェクター100によれば、上述した液晶表示装置1を備えているので、フリッカー等の表示不具合の発生を抑制して表示品位の向上を図ることが可能なプロジェクター100を提供することができる。
【0056】
なお、電子機器としては、この他にも、例えば携帯電話、パーソナルコンピューター、ビデオカメラのモニター、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、デジタルスチルカメラ、タッチパネルを備えた機器等が挙げられる。これらの電子機器に対しても、本発明に係る液晶表示装置1を適用させることができる。
【0057】
(実施例)
以下、本発明の実施例について説明する。本実施例では、素子基板側に設けられた第1配向膜と対向基板に設けられた第2配向膜とにおける密度、厚みが異なる液晶表示装置を用意し、それぞれに関するLCCOMずれを確認することで、本発明の効果を検証した。
【0058】
具体的には、第1実施形態に係る液晶表示装置を基本構造とし、第1配向膜の厚み及び第2配向膜の厚みを大きく異ならせた液晶表示装置を用いて、試験条件70℃、60分通電後のLCCOMずれを測定し、このLCCOMずれがフリッカーや焼き付き等の抑制が可能な所定値以内(0.1V以内)の範囲内であるか否かを確認した。
【0059】
図3は、実施例の第1配向膜と第2配向膜との密度、厚みの関係を示すグラフである。すなわち、素子基板側の第1配向膜15の密度ρ1、厚みd1と、対向基板側の第2配向膜25の密度ρ2、厚みd2との関係を示すものである。実施例においては、第1配向膜15の密度ρ1及び第2配向膜25の密度ρ2をいずれも1.93g/cmとし同一とし(ρ1=ρ2)、且つ、第1配向膜15の厚みd1を74.4nm、第2配向膜25の厚みd2を71.6nmとし第1配向膜15の厚みd1を第2配向膜25の厚みd2よりも厚くした(d1>d2)。その結果、試験条件70℃、60分通電後のLCCOMずれは0.002Vとなった。
【0060】
図4は、比較例の第1配向膜と第2配向膜との密度、厚みの関係を示すグラフである。比較例においては、第1配向膜の密度を2.02g/cm、第2配向膜の密度を2.04g/cmとし、且つ、第1配向膜の厚みを43.1nm、第2配向膜の厚みを70.0nmとし第1配向膜の厚みを第2配向膜の厚みよりも薄くした。その結果、試験条件70℃、60分通電後のLCCOMずれは−0.210Vとなった。
【0061】
すなわち、第1配向膜15の密度ρ1及び第2配向膜25の密度ρ2をいずれも1.93g/cmとし同一とし(ρ1=ρ2)、且つ、第1配向膜15の厚みd1を74.4nm、第2配向膜25の厚みd2を71.6nmとし第1配向膜15の厚みd1を第2配向膜25の厚みd2よりも厚くすることで(d1>d2)、試験条件70℃、60分通電後のLCCOMずれは0.002Vとなり、LCCOMずれをフリッカーや焼き付き等の抑制が可能な所定値以内(0.1V以内)に抑えることができることが確認できた。
【0062】
以上述べたように、第1配向膜15の密度ρ1と第2配向膜25の密度ρ2とが概ね等しく、且つ、第1配向膜15の厚みd1が第2配向膜25の厚みd2よりも厚くなっている液晶表示装置1によれば、表示画像にフリッカーを生じたり、残像(焼き付き)を生じたりする等の表示不具合を抑えることができることが確認できた。
【符号の説明】
【0063】
1…液晶表示装置、10…素子基板、12…画素電極、15…第1配向膜、20…対向基板、22…対向電極、25…第2配向膜、100…プロジェクター(電子機器)、ρ1…第1配向膜の密度、ρ2…第2配向膜の密度、d1…第1配向膜の厚み、d2…第2配向膜の厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素電極を備えた素子基板と、
前記素子基板に対向配置された、対向電極を備えた対向基板と、
前記素子基板と前記対向基板との間に挟持された液晶層と、
前記素子基板の前記液晶層の側に設けられた第1配向膜と、
前記対向基板の前記液晶層の側に設けられた第2配向膜と、を備え、
前記画素電極を構成する材料の仕事関数が、前記対向電極を構成する材料の仕事関数に比べて小さく、
前記第1配向膜の密度と前記第2配向膜の密度とが概ね等しく、且つ、前記第1配向膜の厚みが前記第2配向膜の厚みよりも厚くなっていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記画素電極がAlからなり、前記対向電極がITOからなることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記第1配向膜の厚みと前記第2配向膜の厚みとの比が1/1よりも大きく1.2/1よりも小さい範囲に設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記第1配向膜と前記第2配向膜とはシリコン酸化物によって形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記液晶層は、誘電率異方性が負の液晶材料を主成分とする液晶組成物によって形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の液晶表示装置を備えることを特徴とする電子機器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−150382(P2012−150382A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10576(P2011−10576)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】