説明

液晶表示装置

【課題】層数を減らしたIPS方式の液晶表示装置において、映像信号線、ドレイン電極、ソース電極の断線を防止し、製造歩留まりを向上させるとともに、信頼性を向上させる。
【解決手段】TFT基板100の上にゲート電極101が形成され、これを覆ってゲート絶縁膜102が形成され、その上に半導体層103が形成されている。半導体層103にはドレイン電極104とソース電極105が配置されている。ゲート絶縁膜102の上には平面形状の画素電極106が形成されている。画素電極106はドレイン電極104、ソース電極105、映像信号線等よりも先に形成され、その後、ソース電極105等を形成する。これによって、ITOをパターニングするときに、ITOにピンホール等が存在する場合に現像液を介した電池作用によって、映像信号線、ドレイン電極104、ソース電極105等が侵されて断線を引き起こすことを防止することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置に係り、特に視野角特性が優れ、かつ、製造コストを低減できる横電界方式の液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に使用される液晶表示パネルは、画素電極および薄膜トランジスタ(TFT)等を有する画素がマトリクス状に形成されたTFT基板と、TFT基板に対向して、TFT基板の画素電極と対応する場所にカラーフィルタ等が形成された対向基板が配置され、TFT基板と対向基板の間に液晶が挟持されている。そして液晶分子による光の透過率を画素毎に制御することによって画像を形成している。
【0003】
液晶表示装置はフラットで軽量であることから、色々な分野で用途が広がっている。携帯電話やDSC(Digital Still Camera)等には、小型の液晶表示装置が広く使用されている。液晶表示装置では視野角特性が問題である。視野角特性は、画面を正面から見た場合と、斜め方向から見た場合に、輝度が変化したり、色度が変化したりする現象である。視野角特性は、液晶分子を水平方向の電界によって動作させるIPS(In Plane Switching)方式が優れた特性を有している。
【0004】
IPS方式も種々存在するが、例えば、コモン電極あるいは画素電極を平面ベタで形成し、その上に、絶縁膜を挟んで櫛歯状の画素電極あるいはコモン電極を配置し、画素電極とコモン電極の間に発生する電界によって液晶分子を回転させる方式が透過率を大きくすることが出来るので、現在主流となっている。
【0005】
以上のような方式のIPSは、従来は、まず、TFTを形成し、TFTをパッシベーション膜で覆い、その上に、上記コモン電極、絶縁膜、画素電極等を形成している。しかし、製造コスト低減の要求があり、このために、TFT基板における導電膜、絶縁膜等の層数を低減することが行われている。
【0006】
コモン電極をパッシベーション膜よりも下層に形成したIPS方式の例として、「特許文献1」には、ゲート電極と同じ層にコモン電極を形成し、ゲート絶縁膜および、保護絶縁膜を挟んで櫛歯状の画素電極を形成する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−168878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図5は本発明が対象とするIPSのTFT基板100を示す断面図である。図5は、IPSにおいて、層数を低減した構成である。なお、図5の構成は「特許文献1」に記載のIPSの構成とは異なっている。図5において、ガラスで形成されたTFT基板100の上にゲート電極101が形成されている。ゲート電極101は例えば、AlNd合金の上にMoCrが積層された構成となっている。ゲート電極101の上にゲート絶縁膜102がSiNをスパッタリングすることによって形成されている。
【0009】
ゲート絶縁膜102の上で、ゲート電極101の上方に半導体層103が形成されている。半導体層103としてCVDによってa−Si膜が形成される。半導体層103の上には、ドレイン電極104とソース電極105が対向して形成されている。ドレイン電極104とソース電極105はMoCrによって同時に形成される。ドレイン電極104とソース電極105の間がTFTにおけるチャネル層となる。なお、半導体層103とドレイン電極104あるいはソース電極105との間にはオーミックコンタクトをとるために、図示しないn+Si層が形成されている。
【0010】
図5において、ドレイン電極104あるいはソース電極105を形成した後、画素電極106がITOによって平面べたで形成されている。画素電極106の一部はソース電極105と重なっており、画素電極106とソース電極105の電気的コンタクトを取っている。その後、ドレイン電極104、ソース電極105、画素電極106等を覆ってパッシベーション膜107が形成されている。パッシベーション膜107は、CVDによるSiNによって形成されている。パッシベーション膜107は本来TFTを保護するために形成されるが、図5においては、コモン電極108と画素電極106の間の絶縁膜の役割を兼ねている。
【0011】
パッシベーション膜107の上には、櫛歯状のコモン電極108が形成されている。コモン電極108の上には図示しない配向膜が形成され、その上に液晶層が存在している。液晶層は、図示しないカラーフィルタ等が形成された対向基板との間に挟持されている。図5において、TはTFTが形成された領域であり、Sはソース電極105が形成された領域であり、Pは画素電極106が形成された領域であり、Dは映像信号線20が形成された領域である。
【0012】
図6は、TFT、画素電極106、コモン電極108等を示す平面図である。図6において、ゲート電極101の上に半導体層103が形成され、半導体層103の上にドレイン電極104とソース電極105が対向して形成されている。ドレイン電極104は映像信号線20が分岐したものである。また、ゲート電極101は走査線10が分岐したものである。
【0013】
図6において、画素電極106が矩形状に形成されている。画素電極106の一部はソース電極105の一部を覆って画素電極106とソース電極105のコンタクトをとっている。矩形状の画素電極106の上に、図示ないパッシベーション膜107を介して櫛歯状に形成したコモン電極108が配置されている。
【0014】
コモン電極108と画素電極106との間に電界が印加されると、電界の横成分によって液晶分子が回転して画素ごとにバックライトの透過率を制御することによって画像が形成される。
【0015】
図7は図6に示すような構造における問題点を示す図である。画素電極106のパターニングはフォトリソグラフィによって行う。すなわち、レジスト200をコーティングしたあと、例えばネガレジストであれば、必要な部分を露光して、現像液300に不溶にする。露光されていないレジスト200部分は現像液300によって除去される。現像液によってレジストが剥離される間、あるいはレジストが除去された後も、ある時間はITOは剥離液にさらされる。ITOにピンホールが存在すると、ピンホール部において、現像液の存在によって、ITOとMoCrとの間に電池作用が生じ、MoCrが急激にエッチングされ、MoCrが消失するという現象を生ずる。
【0016】
図7はこの様子を示すものである。図7(a)は、レジスト200が無い部分において、ITOによって形成された画素電極106にピンホール1061が存在している状態を示すものである。レジストがネガ型の場合、ITOを残す部分のレジスト200を露光して現像液300に不溶にし、他の部分のレジストは現像液300によって溶かす。この現像液300が存在している状態を示すものが図7(b)である。
【0017】
図7(b)において、現像液300がITOのピンホールを通してソース電極105に直接触れている。そうすると、ITOとソース電極105を形成しているMoCrとの間に現像液300を介する電池作用が生じ、ソース電極105が急激にエッチングされる。そうすると、図7(c)に示すように、ITOのピンホール部において、ソース電極105が消失する。この現象は場合によっては、ソース電極105の断線につながる。
【0018】
以上は、ソース電極105の部分について説明したが、ソース電極105とドレイン電極104、および、映像信号線20は同層で形成されるので、このような問題は、映像信号線20、ドレイン電極104等の部分においても同様に生ずる。特に映像信号線20は幅が狭く、長さが長いで、以上説明したような問題は特に深刻である。つまり、映像信号線20が断線する危険は大きく、歩留まりの低下、信頼性の低下を招くことになる。
【0019】
本発明の目的は、以上のような問題点を解決するものであり、層数を低減し、製造コストを抑えたIPS液晶表示装置において、製造歩留まりの向上と信頼性の向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は上記問題を克服するものであり、具体的な手段は次のとおりである。すなわち、ゲート絶縁膜の上にまず、画素電極をパターニングする。その後、ソース電極、ドレイン電極、映像信号線を形成する。このプロセスによれば、画素電極であるITOをパターニングするときは、MoCrで形成されたソース電極、ドレイン電極、映像信号線はまだ存在していないので、これらの電極がレジストの現像液によって侵されることも、現像液を介して、ITOとの間の電池作用によってこれらの電極が消失することも無い。
【0021】
このようなプロセスによる層構造は、ITOによる画素電極の端部の上にソース電極が重なる形となっている。したがって、ソース電極と画素電極とのコンタクトとは従来と同様に取ることが出来る。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ITOによって形成される画素電極をパターニングするときに、ソース電極、ドレイン電極、あるいは、映像信号線がITOをパターニングするときの現像液によって侵されることが無いので、製造歩留まりの高い、かつ、信頼性の高い液晶表示装置を実現することが出来る。また、本発明によって、層数の少ない、したがって、製造コストを低減したIPS液晶表示装置を実現することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明における液晶表示パネルのTFT基板の断面図である。
【図2】本発明におけるTFT基板の端子部の断面図である。
【図3】本発明における液晶表示パネルのTFT基板の平面図である。
【図4】本発明におけるTFT基板の製造プロセスである。
【図5】従来の液晶表示パネルのTFT基板の断面図である。
【図6】従来の液晶表示パネルのTFT基板の平面図である。
【図7】従来の液晶表示パネルのTFT基板の問題点を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の内容を実施例を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明によるTFT基板100の断面図である。図1において、画素電極106とソース電極105との積層の順番を除いては、先に説明した図5と同様な構成なので、同じ説明は省略する。図1において、ゲート電極101は2層構造となっており、下層がAlNd合金で200nmの厚さに形成され、上層はMoCr合金が40nmの厚さで形成されている。このように2層構造とするのは、後で説明する端子部をゲート電極101と同層で形成する場合に、その上に積層されるITOがAlNdと反応することを防止するためである。
【0026】
ゲート電極101の上にゲート絶縁膜102がCVDによって350nm程度の厚さで形成されている、ゲート絶縁膜102の上に半導体層103であるa−Si膜がCVDによって150nm程度の厚さに形成される。本発明の特徴は、この後、ソース電極105、ドレイン電極104、映像信号線20等を形成するのでなく、先に、画素電極106をゲート絶縁膜102の上に形成することである。
【0027】
画素電極106は通常のフォトリソグラフィによってパターニングされる。画素電極106をパターニングした後、MoCrをスパッタリングによって、例えば、77nmの厚さに形成し、フォトリソグラフィによってパターニングして、ソース電極105、ドレイン電極104、映像信号線20を同時に形成する。この時、ソース電極105の一部をITOで形成した画素電極106の一部と積層して、ソース電極105と画素電極106との導通を取る。
【0028】
画素電極106であるITOに対してフォトリソグラフィを行うときは、ソース電極105、ドレイン電極104、映像信号線20等はまだ形成されていない。したがって、仮にITOにピンホールが存在していても、レジスト200の現像液300を介する電池作用によって、従来のように、下層のソース電極105、ドレイン電極104、映像信号線20等が侵されることは無い。なお、画素電極106は、図3に示すように平面電極となっている。
【0029】
画素電極106をパターニングした後、MoCrをスパッタリングによって成膜し、パターニングを行って、ソース電極105、ドレイン電極104、映像信号線20を形成する。この時、ソース電極105等をパターニングする際、MoCr膜の上においてレジスト200が剥離された部分は、ITOとMoCrが積層された形となり、MoCrにピンホール等が存在すると、この部分で、電池作用によって、MoCrが侵されることになる。しかし、この部分のMoCrは、もともと除去される部分なので、問題はない。
【0030】
このように、本発明によれば、ソース電極105、ドレイン電極104、映像信号線20が、画素電極106となるITOのパターニング時の現像液300を介する電池作用によって侵されることはないので、これによる断線等は発生せず、製造歩留まりが高く、かつ、信頼性の高い液晶表示装置を実現できる。
【0031】
その後、CVDによるSiNによってパッシベーション膜107を500nm程度形成し、パッシベーション膜107の上に、コモン電極108を櫛歯状に形成することは図5と同様である。また、櫛歯状のコモン電極108の上に配向膜を形成し、さらにカラーフィルタ等が形成された対向基板との間に液晶が挟持されることも図5において説明したのと同様である。
【0032】
以上はソース電極105等にMoCrを使用した場合として説明したが、MoCrに限らず、ソース電極105、ドレイン電極104、映像信号線20が他の金属で形成されている場合であっても、画素電極106を形成するITOとの間に電池反応を生ずる金属であれば、本発明の効果を生ずる。
【0033】
図2は、図1に示す表示領域の構成に対応した端子部の断面構造である。図2の左側の端子部は、走査線10あるいはゲート電極101と同層で端子引出し線を形成している例である。この端子では、パッシベーション膜107およびゲート絶縁膜102にスルーホール110を形成し、このスルーホール110をITOで覆って、端子部を形成する。
【0034】
図2の右側の端子部は、映像信号線20、ソース電極105、ドレイン電極104等と同層で端子引き出し線を形成している例である。この端子では、パッシベーション膜107にスルーホール110を形成し、このスルーホール110をITOで覆って、端子部を形成する。端子に使用しているITOはコモン電極108と同層で形成されているので、本発明の構成の場合も、端子部の構成は従来の端子部の構成と同一である。
【0035】
図3は、本発明を示す画素部の平面図である。図3において、走査線10が分岐してゲート電極101を形成していること、図示しないゲート絶縁膜102を介して半導体層103が形成されていること、映像信号線20が分岐してドレイン電極104を形成していることは図6と同様である。なお、半導体層103はTFT部のみでなく、走査線10と映像信号線20との交点にも形成されている。交点における映像信号線の断切れを防止するためである。
【0036】
図3の特徴は、ドレイン電極104、ソース電極105、映像信号線20等を形成する前に、画素電極106を形成しておくことである。平面の画素電極106を形成した後、MoCr膜をスパッタリングによって成膜し、パターニングして、ドレイン電極104、ソース電極105、映像信号線20を形成する。したがって、図3において、画素電極106とソース電極105との積層部では、画素電極106が下側に形成されている。
【0037】
図4は、本発明におけるTFT基板100側の製造プロセスを従来の製造プロセスと比較して記載したものである。TFT基板100にゲート電極101を形成し、ゲート絶縁膜102で覆ったあと、半導体層103としてa−Siを形成することは従来と同様である。
【0038】
a−Si形成後、従来は、ソース電極105、ドレイン電極104を形成し、その後、画素電極106を形成していた。これに対して本発明では、a−Si形成後、まず、画素電極106を形成し、その後、ソース電極105、ドレイン電極104を形成する点が大きく異なる点である。その後、ソース電極105、ドレイン電極104、および、画素電極106を覆ってパッシベーション膜107を形成し、その後櫛歯状のコモン電極108を形成することは本発明によるプロセスも従来例によるプロセスも同様である。
【0039】
以上説明したように、本発明によれば、映像信号線20、ドレイン電極104、ソース電極105の断線の危険を大幅に低下させることができるので、層数を減らしたIPS液晶表示装置において、製造歩留まりを大幅に向上させることができ、製造コストを低減させることができる。
【符号の説明】
【0040】
10…走査線、 20…映像信号線、 100…TFT基板、 101…ゲート電極、 102…ゲート絶縁膜、 103…半導体層、 104…ドレイン電極、 105…ソース電極、 106…画素電極、 107…パッシベーション膜、 108…コモン電極、 110…スルーホール、 111…ゲート端子、 112…ドレイン端子、 200…レジスト、 300…現像液、 1061…ITOピンホール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TFT基板と対向基板と前記TFT基板と前記対向基板との間に液晶が挟持された液晶表示パネルを有する液晶表示装置であって、
前記TFT基板には、ゲート電極、ゲート絶縁膜、半導体層がこの順で形成され、前記半導体層にはドレイン電極とソース電極が配置され、
前記ゲート絶縁膜の上には、ITOによって形成された平面形状の画素電極が配置され、
前記画素電極の上には、絶縁膜が形成され、前記絶縁膜の上にはITOによって形成された櫛歯状のコモン電極が配置され、
前記画素電極の一部と前記ソース電極とは、前記画素電極が下層になった状態で直接積層していることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記ソース電極はMoCr合金によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
端子部には、前記ゲート電極と同層で形成された引き出し線が延在し、前記引出し線は前記コモン電極と同層で形成されたITOが積層されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
端子部には、前記ソース電極と同層で形成された引き出し線が延在し、前記引出し線は前記コモン電極と同層で形成されたITOが積層されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−73341(P2012−73341A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217062(P2010−217062)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(506087819)パナソニック液晶ディスプレイ株式会社 (443)
【Fターム(参考)】