液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出装置、液状体の吐出方法、デバイスの製造方法、カラーフィルタの製造方法および有機EL発光素子の製造方法、電気光学装置および電子機器
【課題】副走査の回数を低減し、吐出ムラを抑制することが可能な液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出装置、この液滴吐出装置を用いた液状体の吐出方法、デバイスの製造方法、カラーフィルタの製造方法および有機EL発光素子の製造方法、電気光学装置および電子機器を提供すること。
【解決手段】本発明の液滴吐出ヘッド20は、複数のノズル22が略等間隔(P1)で配置された2つのノズル列22a,22bを有し、ノズル列22a,22bに直交する方向から見て複数のノズル22が異なる間隔(P2,P3)で交互に配列するように、一方のノズル列22aに対して他方のノズル列22bをずらして配置した。
【解決手段】本発明の液滴吐出ヘッド20は、複数のノズル22が略等間隔(P1)で配置された2つのノズル列22a,22bを有し、ノズル列22a,22bに直交する方向から見て複数のノズル22が異なる間隔(P2,P3)で交互に配列するように、一方のノズル列22aに対して他方のノズル列22bをずらして配置した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状体を液滴として吐出可能な液滴吐出ヘッドおよびこれを備えた液滴吐出装置、液状体の吐出方法、デバイスの製造方法、カラーフィルタの製造方法および有機EL発光素子の製造方法、電気光学装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
液状体を液滴として吐出可能な液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置としては、同一の液状体を吐出可能な複数の液滴吐出ヘッドを被吐出物に向けて保持する保持手段と、保持手段と被吐出物とを相対的に移動させる移動手段とを備えた吐出装置が知られている(特許文献1)。
【0003】
この吐出装置では、各液滴吐出ヘッドのノズル列が上記相対移動の方向に対して斜めに交差する方向にそれぞれ配列されている。また、ノズル列には、複数のノズルが略等間隔に配設されている。
【0004】
このような吐出装置は、各液滴吐出ヘッドの複数のノズルから同一の液状体を広い範囲に渡って吐出することを可能とした。また、被吐出物の大きさに対応した専用の液滴吐出ヘッドを必要とせず、規格品の液滴吐出ヘッドを複数配列させることによって種々の被吐出物に対応させた。
【0005】
また、流動性を有する液状体を吐出して基板上に精密で良好な微細パターンの機能性薄膜を形成できるようにした液滴吐出装置およびデバイスの製造方法が知られている(特許文献2)。
【0006】
このデバイスの製造方法では、液滴吐出装置に備えられたカメラにより、基板上に着弾した際の液状体の液滴の挙動を連続的に撮影した結果を基に、最適な液状体の吐出条件を決定することができるとしている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−159786号公報、頁2、頁7
【特許文献2】特開2004−290799号公報、頁3
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記吐出装置を用い、液状体を被吐出物としての基板に吐出する場合、保持手段と被吐出物との相対移動方向に液滴が連続して着弾するように吐出することは可能である。しかし、複数のノズルは略等間隔で配設されており、液滴吐出ヘッドを相対移動方向に対して斜めに交差する方向に配列しても、相対移動方向に対して直交する方向に液滴を連続して着弾させることは困難である。よって、必要量の液滴をよりムラ無く吐出するには、保持手段を相対移動方向に対して直交する方向にずらす改行動作が必要となる。
【0009】
そして、液状体を吐出しようとする面積が拡大すればするほど、相対移動方向に液滴を吐出する所謂主走査と改行動作(副走査)とを繰り返し行う必要が生ずるという課題がある。
【0010】
また、基板上に着弾した際の液状体の液滴の挙動は、実際には着弾する基板の表面状態や吐出量により左右される。着弾した液滴を濡れ拡げるために基板表面を親液化する表面処理にムラがあると、部分的に液滴が濡れ拡がらず孤立してしまう。複数のノズルから吐出される液滴の吐出量がばらついていると、たとえ改行動作を行って先に着弾した液滴と繋がるように後の液滴を吐出しても、少ない吐出量の液滴が孤立して吐出ムラとなる惧れがあった。
【0011】
本発明は、上記課題を考慮してなされたものであり、副走査の回数を低減し、吐出ムラを抑制することが可能な液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出装置、この液滴吐出装置を用いた液状体の吐出方法、デバイスの製造方法、カラーフィルタの製造方法および有機EL発光素子の製造方法、電気光学装置および電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の液滴吐出ヘッドは、充填された液状体を液滴として吐出可能な液滴吐出ヘッドであって、複数のノズルからなるノズル列を備え、ノズル列に対して直交する方向から見たときに、複数のノズルが異なる間隔で交互に配置されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、ノズル列に対して直交する方向から見たときに、複数のノズルが異なる間隔で交互に配置されている。したがって、隣り合うノズルの間隔が異なり、一方の間隔に比べて他方の間隔が狭い間隔となる。よって、狭い間隔で配置されたノズルから液状体を液滴として被吐出物に吐出すれば、複数のノズルが等間隔で配置された場合に比べて、少なくとも2つの液滴をより近づけて着弾させることができる。被吐出物と本発明の液滴吐出ヘッドとを対向配置させ、ノズル列の方向と交差する方向に相対移動させる主走査に同期して複数の液滴を吐出すれば、主走査方向と直交する副走査方向に近接する少なくとも2つの液滴を所定の間隔で着弾させることができる。より近くに着弾した液滴同士が濡れ拡がって合体する確率が高まるので、副走査方向に液滴を濡れ拡げ易くすることができる。すなわち、副走査方向に液滴をさらに吐出するために被吐出物と液滴吐出ヘッドとを相対移動させる副走査の回数を低減し、被吐出物の表面状態や液滴の吐出量のバラツキによって吐出された液滴が部分的に孤立して吐出ムラとなることを抑制することが可能な液滴吐出ヘッドを提供することができる。以降、ノズル列の方向と交差する方向を主走査方向とし、主走査方向に液滴を吐出することを主走査という。また、主走査方向に直交する方向を副走査方向とし、副走査方向に液滴吐出ヘッドと被吐出物とを相対移動させることを副走査として説明する。
【0014】
また、上記複数のノズルが略等間隔で配置されたノズル列を少なくとも2つ備え、ノズル列に対して直交する方向から見たときに、複数のノズルが異なる間隔で交互に配列するように、一方のノズル列に対して他方のノズル列がずれて配置されているとしてもよい。
【0015】
この構成によれば、1つのノズル列を有する場合に比べて、より多くのノズルを有しているので、1回の主走査によって副走査方向により高い密度で液滴を着弾させることができる。さらに、複数のノズルが異なる間隔で交互に配置されているので、副走査方向により高い密度で着弾した液滴のうち、狭い間隔で吐出された液滴同士が合体して濡れ拡がり易くなり、より副走査の回数を低減することができる。
【0016】
さらには、3つ以上のノズル列を備え、少なくとも1つのノズル列は、複数のノズルが異なる間隔で交互に配置されているとしてもよい。これによれば、1回の主走査により液滴を吐出可能なノズルの数が増え、少なくとも1つのノズル列の複数のノズルが異なる間隔で交互に配置されているので、さらに副走査の回数を低減することができる。
【0017】
また、上記複数のノズルの異なる間隔において、狭い方の間隔は、ノズルの直径に対して3分の2以上1未満の長さであることが好ましい。ノズルから吐出される液滴の着弾径は、吐出量や吐出速度だけでなくノズルの直径にも依存する。これによれば、狭い方のノズル間隔は、ノズルの直径に対して3分の2以上1未満の長さであるので、液滴が被吐出物に着弾したときに、互いに接して合体させることが容易となる。したがって、狭い間隔で吐出された液滴同士がすばやく合体して濡れ拡がり易くなり、より副走査の回数を低減することができる。
【0018】
本発明の液滴吐出装置は、複数のノズルからなるノズル列を有し、ノズル列に対して直交する方向から見たときに、複数のノズルが異なる間隔で交互に配置された液滴吐出ヘッドと、液滴吐出ヘッドとワークとを対向させて相対移動させる移動手段とを備え、移動手段による相対移動に同期して、液滴吐出ヘッドの複数のノズルから液状体を液滴としてワークに吐出することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、複数のノズルからなるノズル列を有し、ノズル列に対して直交する方向から見たときに、複数のノズルが異なる間隔で交互に配置された液滴吐出ヘッドと、液滴吐出ヘッドとワークとを対向させて相対移動させる移動手段とを備えている。液滴吐出ヘッドの狭い方の間隔で隣り合うノズルから吐出された液滴は、ワークに着弾後合体する確率が高まる。合体した液滴は副走査方向により濡れ拡がることになるので、副走査の回数を低減し、ワークに対して吐出ムラを抑制した状態で液状体を液滴として効率よく吐出可能な液滴吐出装置を提供することができる。
【0020】
本発明の液状体の吐出方法は、上記発明の液滴吐出装置を用い、液滴吐出ヘッドとワークとを対向させた状態で相対移動させる走査を行って、ワーク上の複数の区画領域に液状体を液滴として吐出する吐出方法であって、少なくとも1回の走査では、液滴吐出ヘッドの複数のノズルから1つの区画領域に複数の液滴が着弾するように吐出し、異なる間隔のうち狭い方の間隔で隣り合うノズルから吐出された液滴が部分的に繋がるように吐出することを特徴とする。
【0021】
この方法によれば、上記発明の液滴吐出装置を用い、異なる間隔のうち狭い方の間隔で隣り合うノズルから吐出された液滴が部分的に繋がるように吐出する。したがって、副走査方向に狭い吐出間隔で吐出された液滴同士が合体して濡れ拡がり、副走査の回数を低減して複数の区画領域に吐出ムラが抑制された状態で液状体を付与することができる。
【0022】
また、上記液滴吐出ヘッドのノズル列が区画領域の長手方向に対して略平行または傾斜するように対向配置され、液状体を複数のノズルから液滴として吐出することが好ましい。
【0023】
この方法によれば、区画領域の長手方向に対して直交する方向に液滴吐出ヘッドとワークとが相対移動する主走査を行う所謂横描画となり、該長手方向に副走査する回数を低減して、区画領域の長手方向に吐出ムラが抑制された状態で複数の区画領域に液状体を付与することができる。すなわち、主走査方向にスジ状となる吐出ムラを低減することができる。
【0024】
本発明のデバイスの製造方法は、ワークと、ワーク上の複数の区画領域に形成された薄膜とを有するデバイスの製造方法であって、上記発明の液状体の吐出方法を用い、薄膜形成材料を含む液状体を複数の区画領域に吐出して乾燥することにより薄膜を形成することを特徴とする。
【0025】
この方法によれば、副走査の回数を低減して複数の区画領域に吐出ムラが抑制された状態で液状体が付与されるので、区画領域においてより均一に薄膜を形成することができる。
【0026】
本発明のカラーフィルタの製造方法は、基板と、基板上の複数の区画領域に形成された複数色の着色層とを有するカラーフィルタの製造方法であって、上記発明の液状体の吐出方法を用い、異なる着色層形成材料を含む複数種の液状体を複数の区画領域に吐出して乾燥することにより複数色の着色層を形成することを特徴とする。
【0027】
この方法によれば、副走査の回数を低減して複数の区画領域に吐出ムラが抑制された状態で液状体が付与されるので、区画領域において吐出ムラによる色ムラが低減され、より均一な着色層を有するカラーフィルタを製造することができる。
【0028】
本発明の有機EL発光素子の製造方法は、基板と、基板上の複数の区画領域に形成された有機発光層を含む機能層とを有する有機EL発光素子の製造方法であって、上記発明の液状体の吐出方法を用い、発光層形成材料を含む液状体を複数の区画領域に吐出して乾燥することにより有機発光層を形成することを特徴とする。
【0029】
この方法によれば、副走査の回数を低減して複数の区画領域に吐出ムラが抑制された状態で液状体が付与されるので、区画領域において吐出ムラによる発光ムラが低減され、より均一な有機発光層を有する有機EL発光素子を製造することができる。
【0030】
本発明の電気光学装置は、一対の基板と、一対の基板により挟持された電気光学材料としての液晶とを備え、一対の基板のうちの一方が上記発明のカラーフィルタの製造方法によって製造されたことを特徴とする。これによれば、一対の基板のうちの一方が上記発明のカラーフィルタの製造方法によって製造されているので、色ムラが少なく高い表示品質を有する電気光学装置としての液晶表示装置を提供することができる。
【0031】
本発明の他の電気光学装置は、複数の有機EL素子が形成された基板と該基板を封止する封止基板とを備えた電気光学装置であって、有機EL発光素子が、上記発明の有機EL発光素子の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする。これによれば、有機EL発光素子が、上記発明の有機EL発光素子の製造方法を用いて製造されているので、発光ムラが少ない高い表示品質を有する電気光学装置としての有機EL表示装置を提供することができる。
【0032】
本発明の電子機器は、上記発明の電気光学装置が搭載されたことを特徴とする。これによれば、上記発明の電気光学装置が搭載されているので、高い表示品質を有する電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
(実施形態1)
<液滴吐出装置>
まず本実施形態の液滴吐出装置について図1を基に説明する。図1は、液滴吐出装置を示す概略斜視図である。各部の構成は、適宜縮尺して表示している。
【0034】
図1に示すように、本実施形態の液滴吐出装置10は、液状体を液滴として吐出してワークW上に液状体からなる膜を形成するものである。そしてワークWが載置されるステージ4と、載置されたワークWに液状体を液滴として吐出する複数の液滴吐出ヘッド20(図2参照)を有するヘッドユニット1とを備えている。
【0035】
また液滴吐出装置10は、ヘッドユニット1を副走査方向(X方向)に駆動するためのX方向ガイド軸2と、X方向ガイド軸2を回転させるX方向駆動モータ3とを備えている。また、ステージ4を主走査方向(Y方向)にガイドするためのY方向ガイド軸5と、Y方向ガイド軸5に係合して回転するY方向駆動モータ6とを備えている。そしてX方向ガイド軸2とY方向ガイド軸5とが上部に配設された基台7を備え、その基台7の下部には、制御部8を備えている。
【0036】
さらに、ヘッドユニット1の複数の液滴吐出ヘッド20をクリーニング(回復処理)するためのクリーニング機構9および吐出された液状体を加熱し溶媒を蒸発・乾燥させるためのヒータ12とを備えている。またクリーニング機構9にもY方向駆動モータ11が備えられている。
【0037】
ヘッドユニット1には、液状体をノズル22(吐出口)から吐出してワークWに塗布する複数の液滴吐出ヘッド20(図2参照)を備えている。そして、これら複数の液滴吐出ヘッド20により、制御部8から供給される吐出電圧に応じて個別に液状体を吐出できるようになっている。この液滴吐出ヘッド20とその配置については後述する。
【0038】
X方向駆動モータ3は、これに限定されるものではないが例えばステッピングモータ等であり、制御部8からX軸方向の駆動パルス信号が供給されると、X方向ガイド軸2を回転させ、X方向ガイド軸2に係合したヘッドユニット1をX方向に移動させる。
【0039】
同様にY方向駆動モータ6,11は、これに限定されるものではないが例えばステッピングモータ等であり、制御部8からY軸方向の駆動パルス信号が供給されると、Y方向ガイド軸5に係合して回転し、Y方向駆動モータ6,11を備えたステージ4およびクリーニング機構9をY軸方向に移動させる。
【0040】
クリーニング機構9は、液滴吐出ヘッド20をクリーニングする際には、ヘッドユニット1を臨む位置に移動し、液滴吐出ヘッド20のノズル面に密着して不要な液状体を吸引するキャッピング、液状体等が付着したノズル面を拭き取るワイピング、液滴吐出ヘッド20の全ノズルから液状体の吐出を行う予備吐出あるいは不要となった液状体を受けて排出させる処理を行う。クリーニング機構9の詳細は省略する。
【0041】
ヒータ12は、これに限定されるものではないが例えばランプアニールによりワークWを熱処理する手段であり、ワークW上に吐出された液状体の蒸発・乾燥を行うとともに膜に変換するための熱処理を行うようになっている。このヒータ12の電源の投入及び遮断も制御部8によって制御される。
【0042】
液滴吐出装置10の塗布動作は、制御部8から所定の駆動パルス信号をX方向駆動モータ3およびY方向駆動モータ6とに送り、ヘッドユニット1を副走査方向(X方向)に、ステージ4を主走査方向(Y方向)に相対移動させる。そして、この相対移動に同期して制御部8から吐出電圧を供給し、ヘッドユニット1の液滴吐出ヘッド20からワークWの所定の領域に液状体を液滴として吐出し塗布を行う。
【0043】
液滴吐出ヘッド20から吐出される液滴の吐出量は、制御部8から供給される吐出電圧の大きさによって調整することができる。
【0044】
<液滴吐出ヘッド>
次に本発明の一実施形態である液滴吐出ヘッドについて図2から図4に基づいて説明する。図2は液滴吐出ヘッドの要部構造を示す概略斜視図、図3液滴吐出ヘッドを示す斜視図である。
【0045】
図2に示すように液滴吐出ヘッド20は、複数のノズル22を有するノズルプレート21と、各ノズル22に対応してこれを区画する区画部24を含む液状体の流路が形成されたリザーバプレート23と、エネルギー発生手段としての圧電素子(ピエゾ)29を有する振動板28とからなる3層構造の所謂ピエゾ方式インクジェットヘッドである。ノズルプレート21とリザーバプレート23の区画部24および振動板28によって複数の圧力発生室25が構成されている。各ノズル22は、各圧力発生室25にそれぞれ連通している。また、圧電素子29は、各圧力発生室25に対応するように振動板28に複数配設されている。
【0046】
リザーバプレート23には、振動板28に形成された供給孔28aを通じてタンク(図示省略)から供給される液状体が一時的に貯留される共通流路27が設けられている。また共通流路27に充填された液状体は、供給口26を通じて各圧力発生室25に供給される。
【0047】
液滴吐出ヘッド20は、電気信号としての駆動波形が圧電素子29に印加されると圧電素子29自体が歪んで振動板28を変形させる。これにより、圧力発生室25の体積変動が起こり、これによるポンプ作用で圧力発生室25に充填された液状体が加圧され、ノズル22から液状体を液滴Lとして吐出することができる。尚、ノズル22から液状体を液滴Lとして吐出させるエネルギー発生手段は、圧電素子29に限定されず、加熱素子としてのヒータや電気機械変換素子としての静電アクチュエータ等でもよい。
【0048】
図3に示すように、液滴吐出ヘッド20は、複数のノズル22が略等間隔(ノズルピッチP1)でノズルプレート21に配置された2つのノズル列22a,22bを有している。また、ノズル列22a,22bに直交する方向から見たときに、複数のノズル22が異なる間隔(ノズルピッチP2とノズルピッチP3)で交互に配列するように、一方のノズル列22aに対して他方のノズル列22bがずれて配置されている。
【0049】
この場合、各ノズル列22a,22bには、それぞれ180個のノズル22が配設されており、ノズル列22a,22bに直交する方向から見ると、360個のノズル22が異なる間隔で交互に配置されている。すなわち、複数のノズル22が不等間隔で配置されている。ノズル22の直径は、およそ30μmである。ノズルピッチP1はおよそ140μm、ノズルピッチP2はおよそ30μm、ノズルピッチP3はおよそ110μmである。ノズル列22aとノズル列22bとの間隔は、およそ2.54mmである。
【0050】
このように異なる間隔で複数のノズル22を配置することにより、狭い方の間隔(ノズルピッチP2)で隣り合うノズル22から吐出される液滴LがワークWに着弾したときに、互いに接して合体し易くしたものである。これにより、それぞれのノズルから同一種類の液状体を吐出し着弾した後に液滴同士が一緒になって濡れ拡がりムラを軽減できる。吐出された液滴Lの着弾径は、ワークWの表面状態や液滴Lの吐出量、吐出速度、ノズル径等に依存する。液滴Lの吐出量、吐出速度は、吐出される液状体の物性にも左右されるので、着弾した液滴Lをより積極的に合体させるには、ノズルピッチP2をノズル22の直径に対して3分の2以上1未満の長さとすることが好ましい。なお、ワークWの表面が親液性ならば、着弾した液状体が濡れ拡がり易いので、着弾後の液滴Lの挙動を考慮してノズルピッチP2をノズル22の直径以上に広げてもよい。
【0051】
次にヘッドユニット1に備えられた複数の液滴吐出ヘッド20の配置について説明する。図4は、液滴吐出ヘッドの配置を示す概略平面図である。
【0052】
図4に示すように、ヘッドユニット1には、複数(6個)の液滴吐出ヘッド20をワークに向けて保持する略平行四辺形のキャリッジ1aを有している。キャリッジ1aには、ノズル列22a,22bが主走査方向(Y方向)に直交するように各液滴吐出ヘッド20が階段状に配設されている。前述したように液滴吐出ヘッド20は、360個のノズル22を有している。そのノズル長はLnである。そして、実際の液状体の吐出の際には、ノズル列22a,22bの両端側の10個のノズル22を用いていない。これは、両端側に位置するノズル22からの吐出量が他のノズル22に比べて安定しにくいことを考慮したものである。よって、有効ノズル長をLnpとする。Y方向に3個ずつ階段状に配置された6個の液滴吐出ヘッド20a,20b,20c,20d,20e,20fは、有効ノズル長LnpがX方向に連続するように配設されている。このような液滴吐出ヘッド20の配置は、有効ノズル長Lnpを最大利用してX方向(副走査方向)に液滴Lを吐出しようとするものである。ワークWの膜形成領域の大きさやその配置により、膜形成領域に着弾させる液滴Lの吐出量や1回の主走査による着弾密度を考慮して、ノズル列22a,22bが主走査方向(Y方向)に対して交差するように液滴吐出ヘッド20をキャリッジ1aに傾斜させて配置してもよい。
【0053】
また、キャリッジ1aに搭載する液滴吐出ヘッド20の数は、これに限定されるものでない。さらには、ヘッドユニット1に複数のキャリッジ1aを所定の間隔で備える構成としてもよい。
【0054】
図5は、制御部および制御部に関連する各部との電気的な構成を示すブロック図である。図5に示すように制御部8は、液状体の吐出データを外部情報処理装置から受け取る入力バッファメモリ13と、入力バッファメモリ13に一時的に記憶された吐出データを記憶手段(RAM)14に展開して関連する各部に制御信号を送る処理部15を備えている。また処理部15からの制御信号を受けてX方向駆動モータ3とY方向駆動モータ6とに位置制御信号を送る走査駆動部16と、同じく処理部15からの制御信号を受けて液滴吐出ヘッド20に駆動電圧パルス(駆動波形)を送るヘッド駆動部17とを備えている。
【0055】
入力バッファメモリ13に受け取られる吐出データは、ワークW上の膜形成領域の相対位置を表すデータと、膜形成領域に液状体の液滴をどのような着弾密度で吐出するかを示すデータと、液滴吐出ヘッド20のノズル列22a,22bのうちどのノズル22を駆動(ON−OFF)するかを指定するデータと、を含んでいる。
【0056】
処理部15は、記憶手段14に格納された吐出データの中から膜形成領域に関する位置の制御信号を走査駆動部16に送る。走査駆動部16は、この制御信号を受けてX方向駆動モータ3に位置制御信号を送ってヘッドユニット1(液滴吐出ヘッド20)を副走査方向であるX軸方向に移動させる。またY方向駆動モータ6に位置制御信号を送ってワークWが保持されたステージ4を主走査方向であるY軸方向に移動させる。これによってワークWの所望の位置に液滴吐出ヘッド20から液状体の液滴が吐出されるようにヘッドユニット1とワークWとを相対移動させる。
【0057】
また処理部15は、記憶手段14に格納された吐出データの中から膜形成領域に液状体の液滴をどのような着弾密度で吐出するかを示すデータを、ノズル22毎の4ビットの吐出ビットマップデータに変換してヘッド駆動部17に送る。また、液滴吐出ヘッド20のノズル列22a,22bの内どのノズル22を駆動(ON−OFF)するかを指定するデータに基づいて、液滴吐出ヘッド20の圧電素子29に印加する駆動電圧パルスをいつ発信するかの「タイミング検出信号」であるラッチ信号とチャンネル信号をヘッド駆動部17に送る。ヘッド駆動部17は、これらの制御信号を受けて液滴吐出ヘッド20に適正な駆動電圧パルスを送って、ノズル22から液状体の液滴Lを吐出させる。
【0058】
上記実施形態1の効果は、以下の通りである。
(1)上記実施形態1の液滴吐出ヘッド20は、複数のノズル22が略等間隔(ノズルピッチP1)で配置された2つのノズル列22a,22bを有している。また、ノズル列22a,22bに直交する方向から見たときに、複数のノズル22が異なる間隔(ノズルピッチP2とノズルピッチP3)で交互に配列するように、一方のノズル列22aに対して他方のノズル列22bがずれて配置されている。したがって、360個のノズル22が等間隔でノズルプレート21に配置されている場合に比べて、狭い方の間隔(ノズルピッチP2)で隣り合うノズル22から液滴Lを吐出すれば、少なくとも2つの液滴Lが互いに接するようにワークWに着弾させて、容易に合体させることができる。すなわち、複数のノズル22は副走査方向(X方向)に並んでいるので、副走査方向に着弾した液滴Lを濡れ拡げることができる。
【0059】
(2)上記実施形態1の液滴吐出装置10は、液滴吐出ヘッド20と、ステージ4にワークWを載置して、液滴吐出ヘッド20に対向させた状態でワークWを主走査方向(Y方向)に移動させるY方向駆動モータ6と、液滴吐出ヘッド20が搭載されたヘッドユニット1を副走査方向に移動させるX方向駆動モータ3とを備えている。複数のノズル22が副走査方向に並ぶように液滴吐出ヘッド20がヘッドユニット1(キャリッジ1a)に配置されており、液滴吐出ヘッド20の狭い方の間隔で隣り合うノズル22から液滴Lを吐出すると、少なくとも2つの液滴Lが副走査方向に濡れ拡がるように合体させることができる。すなわち、液滴吐出ヘッド20の副走査と副走査方向に着弾する液滴Lの密度を上げるように吐出する主走査の回数を減少させることができる。
【0060】
(実施形態2)
本実施形態は、電気光学装置としての液晶表示装置と、該液晶表示装置を構成するカラーフィルタの製造方法を例に説明する。
【0061】
<液晶表示装置>
次に本発明の一実施形態である液晶表示装置について、図6に基づいて説明する。図6は液晶表示装置の要部構造を示す概略断面図である。図6に示すように、本実施形態の電気光学装置としての液晶表示装置80は、パッシブマトリクス型液晶表示装置であって、一対の基板としてのカラーフィルタ60と対向基板67と、これらの基板60,67に挟持された液晶70とを備えている。このような液晶表示装置80は、受光型の表示装置であるため、例えば対向基板67の背面側に照明装置等を備えて用いられる。尚、本実施形態の液晶表示装置80は、これに限定されず、例えば対向基板67にTFT(Thin Film Transister)やTFD(Thin Film Diode)などのスイッチング素子を備えたアクティブマトリクス型液晶表示装置であってもよい。
【0062】
対向基板67は、例えばソーダガラス、低アルカリガラスを用いており、その液晶70側の表面に導電性材料からなる透明な複数の電極68を有している。電極68は、対向するカラーフィルタ60に設けられた電極66と直交してY方向に延在している。すなわち、液晶表示装置80は、互いに対向すると共に直交して格子状に配置された電極66と電極68とを有している。そして電極66と電極68とが直交して重なった部分が表示用の画素領域となっている。透明な電極66,68を構成する導電性材料としては、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zic Oxide)などが挙げられる。
【0063】
カラーフィルタ60は、例えばソーダガラス、低アルカリガラスを用いており、透明なガラス基板61の表面に着色領域に対応して開口している第1バンクとしての遮光膜62と、遮光膜62の上に設けられた第2バンク63とを備えている。また第2バンク63によって区画された着色領域にR(赤色)、G(緑色)、B(青色)に対応する着色層64と、着色層64と第2バンク63とを覆う平坦化層としてのOC(オーバーコート)層65とを備えている。電極66はOC層65上に形成されている。
【0064】
遮光膜62は、Cr、Al、Niなどの金属やその金属化合物からなり、第2バンク63によって区画された着色領域の内側に張り出すように設けられている。第2バンク63は、例えばアクリル系樹脂等の有機材料により構成されている。尚、遮光膜62の開口部62aは、各着色領域ごとにほぼ同一寸法となるように形成されている。したがって、カラーフィルタ60の各着色層64R,64G,64Bごとの開口率はほぼ同一である。
【0065】
着色層64は、第2バンク63によって実質的に区画された着色領域に着色層形成材料を含む3種(3色)の液状体を付与して形成され、Y方向に同一色の着色層64が配列するように所謂ストライプ状に配置されている。
【0066】
このようなカラーフィルタ60は、後述するカラーフィルタの製造方法を用いて製造されたものであり、各着色層64R,64G,64Bの断面形状がほぼ平坦(一定)で、膜厚もほぼ同一な状態に形成されている。
【0067】
液晶表示装置80は、カラーフィルタ60と対向基板67とをギャップ材69を介して所定の間隔で対向配置させ、図示しないシール材を用いて接合させたものである。またシール材により電気光学材料としての液晶70を一対の基板60,67の間に封止したものである。尚、一対の基板60,67の液晶70に面する側には、液晶70を所定の方向に配向させる配向膜が設けられているが、図6では省略している。また、液晶表示装置80の前面側と背面側の表面には、通常、入射あるいは出射する光を偏向させる偏光板や、視角等を改善するための光学機能性フィルムとしての位相差フィルム等が配設されるが、これらも省略している。
【0068】
このような液晶表示装置80は、膜厚がほぼ同一な各着色層64R,64G,64Bを有する基板としてのカラーフィルタ60を備えているので、各着色層64R,64G,64Bが不均一なことに起因する色ムラ等が少ない、高い表示品質を有する。
【0069】
<カラーフィルタの製造方法>
次にカラーフィルタの製造方法について図7〜図8を基に説明する。図7はカラーフィルタの製造方法を示すフローチャート、図8(a)〜(e)はカラーフィルタの製造方法を示す概略断面図である。
【0070】
図7に示すように、本実施形態のカラーフィルタ60の製造方法は、ガラス基板61の表面に第1バンクとしての遮光膜62を形成する工程(ステップS1)と、遮光膜62の上に第2バンク63を形成する工程(ステップS2)と、第2バンク63によって区画された着色領域を表面処理する工程(ステップS3)とを備えている。また表面処理された着色領域に異なる着色層形成材料を含む3種(3色)の液状体を付与する液状体吐出工程(ステップS4)と、吐出された液状体を乾燥して複数色の着色層64を形成する乾燥工程(ステップS5)と、第2バンク63と着色層64とを覆うようにOC層65を形成する平坦化層形成工程(ステップS6)とを備えている。
【0071】
図7のステップS1は、第1バンク形成工程である。ステップS1では、図8(a)に示すように、第1バンクとしての遮光膜62をガラス基板61上に形成する。遮光膜62の材料は、例えば、Cr、Al、Ni等の不透明な金属、あるいはこれらの金属化合物を用いることができる。遮光膜62の形成方法としては、蒸着法あるいはスパッタ法で上記材料からなる膜をガラス基板61上に成膜する。膜厚は、遮光性が保たれる膜厚を選定された材料に応じて設定すればよい。例えば、Crならば、100〜200nmが好ましい。そして、フォトリソグラフィ法により遮光膜62に対応する部分以外をレジストで覆い、上記材料に対応する酸等のエッチング液を用いて膜をエッチングする。これにより開口部62aを有する遮光膜62が形成される。開口部62aの幅をいずれも一定の値としておく。そしてステップS2へ進む。
【0072】
図7のステップS2は、第2バンク形成工程である。ステップS2では、図8(b)に示すように、第2バンク63を遮光膜62の上に形成する。第2バンク63の材料としては、アクリル系等の感光性樹脂材料を用いることができる。また、感光性樹脂材料は、遮光性を有することが好ましい。第2バンク63の形成方法としては、例えば、遮光膜62が形成されたガラス基板61の表面に感光性樹脂材料をロールコート法やスピンコート法で塗布し、乾燥させて厚みがおよそ2μmの感光性樹脂層を形成する。そして、着色領域Dに対応した大きさで開口部が設けられたマスクをガラス基板61と所定の位置で対向させて露光・現像することにより、第2バンク63を形成する方法が挙げられる。そしてステップS3へ進む。
【0073】
図7のステップS3は、表面処理工程である。ステップS3では、O2を処理ガスとするプラズマ処理とフッソ系ガスを処理ガスとするプラズマ処理とを行う。すなわち、着色領域Dに対応する無機材料であるガラス基板61の表面や遮光膜62が親液処理され、その後有機材料からなる第2バンク63の表面(壁面を含む)が撥液処理される。そしてステップS4へ進む。
【0074】
図7のステップS4は、液状体吐出工程である。ステップS4では、図8(c)に示すように、表面処理された各着色領域Dのそれぞれに、対応する液状体51,52,53を付与して複数色の着色層64を形成する。液状体51はR(赤色)の着色層形成材料を含むものであり、液状体52はG(緑色)の着色層形成材料を含むものであり、液状体53はB(青色)の着色層形成材料を含むものである。各液状体51,52,53を付与する方法は、液滴吐出ヘッド20に各液状体51,52,53を充填し、液滴Lとして着色領域Dに着弾させる。各液状体51,52,53は、着色領域Dの面積に応じて所定量が付与され、着色領域D内に濡れ拡がり、表面張力によって盛り上がる。
【0075】
<液状体の吐出方法>
ここで、より詳しい液状体の吐出方法について述べる。図9は液状体の吐出方法を示す概略平面図である。なお、吐出方法を分かりやすく説明するために、図は適宜拡大縮小している。本実施形態の液状体の吐出方法は、前述した液滴吐出装置10を用いている。
【0076】
まず、図9(a)に示すように、区画領域としての着色領域Dの長手方向が各ノズル列22a,22bと平行な状態で液滴吐出ヘッド20と対向するようにワークWとしてのガラス基板61をステージ4に載置する。そして、Y方向に液滴吐出ヘッド20とワークWとが相対移動する主走査に同期して、1つの着色領域Dに掛かる複数のノズル22から液滴Lを複数吐出する。このとき狭い方の間隔で隣り合うノズル22から吐出された液滴51a,51bが着弾後部分的に繋がるように吐出する。この場合、1回の主走査では、図9(b)に示すように、さらに液滴51c,51dが同様に着色領域Dに着弾するように吐出する。
【0077】
着弾した液滴51a,51bおよび液滴51c,51dは、着色領域Dに対応するガラス基板61の表面が親液処理されているので、それぞれに合体して濡れ拡がる。そして、図9(c)に示すように、濡れ拡がった液状体同士がさらに合体した液滴51eが形成される。同様にして副走査方向(X方向)に着弾した液滴同士が合体した液滴51fが隣り合って形成されるので、図9(d)および図9(e)に示すようにそれぞれが濡れ拡がって合体した液状体51gが形成される。
【0078】
当然ながら1つの着色領域Dに所定の厚みの着色層64を均一に形成するために、所定量の液状体を吐出することが必要である。本実施形態の液状体の吐出方法では、1回の主走査により着色領域Dに液状体を広く濡れ拡げることができるので、主走査方向に該所定量に対応する液滴Lを連続的に着弾させれば、着色領域Dに隈なく液状体を付与することが可能である。すなわち、着色領域Dに隈なく液状体を付与するために、描画範囲を変えて副走査方向により着弾密度が高くなるように液滴を吐出する副走査と主走査を行う回数を減らすことが可能となる。
【0079】
このような液状体の吐出方法は、これに限定されず、所定量の液状体を複数回の主走査を行うことにより、着色領域Dに付与してもよい。例えば、少なくとも1回の主走査により、着色領域Dに濡れ拡がる程度に複数の液滴Lを吐出してから、所定量に到達するように残りの液状体を吐出してもよい。これによれば、先の吐出によって濡れ拡がった液状体に後の吐出でさらに液状体を付与するので、吐出ムラを低減してより均一に液状体を付与することが可能である。
【0080】
実際には、1つの液晶表示装置80に対応する複数の着色領域Dがマトリクス状に配置されたより大きなワークWを用いて複数のカラーフィルタ60を同時に形成する。よって、ヘッドユニット1に搭載された複数の液滴吐出ヘッド20が1回の主走査によって吐出可能な範囲(描画範囲)は、このようなワークWよりも小さく、ワークWのすべての着色領域Dに対応する各液状体51,52,53を吐出するには、ヘッドユニット1を副走査して改行することにより可能となる。そして、ステップS5へ進む。
【0081】
図7のステップS5は、乾燥工程である。ステップS5では、図8(d)に示すように、各着色領域Dに吐出された液状体51,52,53を乾燥して固定化し、各着色層64R,64G,64Bを形成する。乾燥方法としては、液状体51,52,53が吐出されたガラス基板61をチャンバー内に密閉して減圧状態とし、溶媒を一定速度で蒸発させて乾燥する減圧乾燥法が好ましい。これによれば、ムラなく乾燥され均一な着色層64を得ることが可能である。
【0082】
なお、付与された各液状体51,52,53の乾燥方法は、各液状体51,52,53をすべて付与した後に一括乾燥する方法に限らず、個々に液状体51,52,53を付与した後に乾燥を行う方法でもよい。そして、ステップS6へ進む。
【0083】
図7のステップS6は、平坦化層形成工程である。ステップS6では、図8(e)に示すように、着色層64と第2バンク63とを覆うようにOC層65を形成する。OC層65の材料としては、透明なアクリル系樹脂材料を用いることができる。形成方法としては、スピンコート法、オフセット印刷などの方法が挙げられる。OC層65は、着色層64が形成されたガラス基板61の表面の凹凸を緩和して、後にこの表面に膜付けされる電極66を平担化するために設けられている。また、電極66との密着性を確保するために、OC層65の上にさらにSiO2などの薄膜を形成してもよい。
【0084】
このようにして出来上がったカラーフィルタ60は、膜厚がほぼ一定な着色層64を有する。またこのカラーフィルタ60を用いて液晶表示装置80を製造すれば、各着色層64R,64G,64Bの断面形状と膜厚がほぼ一定であるため、着色層64の膜厚ムラによる色ムラが少ない、見映えのよい表示品質が得られる。
【0085】
上記実施形態2の効果は、以下の通りである。
(1)上記実施形態2の液状体の吐出方法は、着色領域Dの長手方向に対してノズル列22a,22bが平行となるように液滴吐出ヘッド20とワークWとを対向配置し、異なる間隔のうち狭い方の間隔で隣り合うノズル22から吐出された液滴Lが、着弾後に部分的に繋がるように吐出する。主走査方向から見て複数のノズル22が副走査方向に等間隔で配置された場合、ワークWに着弾した隣り合う液滴Lは、ワークWの表面状態や吐出量のバラツキによって、部分的に孤立することがある。また、副走査方向において隣り合う液滴同士がいずれの液滴Lと合体するかは一定となり難いので、吐出ムラとなる惧れがある。上記液状体の吐出方法によれば、副走査方向(X方向)に狭い方の間隔で隣り合うノズル22から吐出された液滴同士が合体するので、副走査方向に液滴Lの着弾密度を上げるように副走査と主走査を行う回数を低減することができる。また、少なくとも1回の主走査により着色領域Dの長手方向に複数の液滴Lを着弾させ、該長手方向に液状体をムラなく吐出することができる。
【0086】
(2)上記実施形態2のカラーフィルタ60の製造方法は、着色層形成工程において、着色層形成材料を含む3種の液状体を上記液状体の吐出方法を用いて、対応する着色領域Dに付与する。したがって、吐出ムラが低減され、乾燥工程で固定化すると、膜厚がほぼ一定な着色層64を形成することができる。すなわち、吐出ムラによる色ムラ等の不良が低減され歩留まりよくカラーフィルタ60を製造することができる。
【0087】
(3)上記実施形態2の液晶表示装置80は、一対の基板のうちカラーフィルタ60が上記カラーフィルタ60の製造方法を用いて製造されているので、色ムラ等の不具合が少ない高い表示品質を有する液晶表示装置80を提供することができる。
【0088】
(実施形態3)
本実施形態は、複数の有機EL発光素子が形成された基板と、該基板を封止する封止基板とを備えた電気光学装置としての有機EL表示装置および有機EL発光素子の製造方法を例に説明する。
【0089】
<有機EL表示装置>
図10は、有機EL表示装置の要部構造を示す概略断面図である。図10に示すように、本実施形態の電気光学装置としての有機EL表示装置100は、発光素子部117を有する基板101と、基板101と空間120を隔てて封着された封止基板119とを備えている。また基板101は、素子基板102上に回路素子部103を備えており、発光素子部117は、回路素子部103上に重畳して形成され、回路素子部103により駆動されるものである。発光素子部117には、3色の有機発光層117R,117G,117Bがそれぞれの区画領域Aに形成され、ストライプ状となっている。基板101は、3色の有機発光層117R,117G,117Bに対応する3つの区画領域Aを1組の絵素とし、この絵素が素子基板102の回路素子部103上にマトリクス状に配置されたものである。本実施形態の有機EL表示装置100は、発光素子部117からの発光が素子基板102側に出射するものである。
【0090】
封止基板119は、ガラス又は金属からなるもので、封止樹脂を介して基板101に接合されており、封止された内側の表面には、ゲッター剤119aが貼り付けられている。ゲッター剤119aは、基板101と封止基板119との間の空間120に侵入した水又は酸素を吸収して、発光素子部117が侵入した水又は酸素によって劣化することを防ぐものである。なお、このゲッター剤119aは省略しても良い。
【0091】
基板101は、素子基板102の回路素子部103上に複数の区画領域Aを有するものであって、複数の区画領域Aを区画すると共に、壁面に段差を有するバンクとしての二層バンク113と、複数の区画領域Aに形成された電極112と、電極112に積層された正孔注入輸送層116とを備えている。また複数の区画領域A内に発光層形成材料を含む3種の液状体を付与して形成された有機発光層117R,117G,117Bを有する発光素子部117を備えている。二層バンク113は、下層バンク114と区画領域Aを実質的に区画する上層バンク115とからなり、下層バンク114は、区画領域Aの内側に張り出すように設けられて、二層バンク113の壁面に段差を形成している。
【0092】
素子基板102は、例えばガラス等の透明な基板からなり、素子基板102上にシリコン酸化膜からなる下地保護膜102aが形成され、この下地保護膜102a上に多結晶シリコンからなる島状の半導体膜104が形成されている。尚、半導体膜104には、ソース領域104a及びドレイン領域104bが高濃度Pイオン打ち込みにより形成されている。なお、Pイオンが導入されなかった部分がチャネル領域104cとなっている。さらに下地保護膜102a及び半導体膜104を覆う透明なゲート絶縁膜105が形成され、ゲート絶縁膜105上にはAl、Mo、Ta、Ti、W等からなるゲート電極106が形成され、ゲート電極106及びゲート絶縁膜105上には透明な第1層間絶縁膜107と第2層間絶縁膜108が形成されている。ゲート電極106は半導体膜104のチャネル領域104cに対応する位置に設けられている。また、第1層間絶縁膜107および第2層間絶縁膜108を貫通して、半導体膜104のソース領域104a、ドレイン領域104bにそれぞれ接続されるコンタクトホール109,110が形成されている。そして、第2層間絶縁膜108上に、ITO(Indium Tin Oxide)等からなる透明な電極112が所定の形状にパターニングされて配置され(電極形成工程)、一方のコンタクトホール109がこの電極112に接続されている。また、もう一方のコンタクトホール110が電源線111に接続されている。このようにして、回路素子部103には、各電極112に接続された駆動用の薄膜トランジスタ103aが形成されている。尚、回路素子部103には、保持容量とスイッチング用の薄膜トランジスタも形成されているが、図10ではこれらの図示を省略している。
【0093】
発光素子部117は、陽極としての電極112と、電極112上に順次積層された正孔注入輸送層116、各有機発光層117R,117G,117Bと、上層バンク115と各有機発光層117R,117G,117Bとを覆うように積層された陰極118とを備えている。この場合、機能層は、正孔注入輸送層116とこれに積層された有機発光層117R,117G,117Bとを含む。なお、陰極118と封止基板119およびゲッター剤119aを透明な材料で構成すれば、封止基板119側から発光する光を出射させることができる。
【0094】
有機EL表示装置100は、ゲート電極106に接続された走査線(図示省略)とソース領域104aに接続された信号線(図示省略)とを有し、走査線に伝わった走査信号によりスイッチング用の薄膜トランジスタ(図示省略)がオンになると、そのときの信号線の電位が保持容量に保持され、該保持容量の状態に応じて、駆動用の薄膜トランジスタ103aのオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用の薄膜トランジスタ103aのチャネル領域104cを介して、電源線111から電極112に電流が流れ、更に正孔注入輸送層116と各有機発光層117R,117G,117Bとを介して陰極118に電流が流れる。各有機発光層117R,117G,117Bは、これを流れる電流量に応じて発光する。有機EL表示装置100は、このような発光素子部117の発光メカニズムにより、所望の文字や画像などを表示することができる。また有機EL発光素子を複数備えた発光素子部117は、後述する有機EL発光素子の製造方法を用いて製造されており、各有機発光層117R,117G,117Bの膜厚がほぼ一定であるため、膜厚が不均一による発光ムラ、輝度ムラ等の不具合の少ない高い表示品質を有している。
【0095】
<有機EL発光素子の製造方法>
次に有機EL発光素子の製造方法について図11および図12に基づいて説明する。図11は有機EL発光素子の製造方法を示すフローチャート、図12(a)〜(g)は有機EL発光素子の製造方法を示す概略断面図である。なお図12(a)〜(g)においては、素子基板102上に形成された回路素子部103は、図示を省略している。
【0096】
図11に示すように、本実施形態の有機EL発光素子の製造方法は、素子基板102に下層バンク114を形成する下層バンク形成工程(ステップS11)と、下層バンク114上に上層バンク115を形成する上層バンク形成工程(ステップS12)とを備えている。また上層バンク115で区画された区画領域Aの表面処理を行う工程(ステップS13)と、表面処理された区画領域Aに正孔注入輸送層116を形成する工程(ステップS14)とを備えている。そして、正孔注入輸送層116が形成された区画領域Aに、発光層形成材料を含む3種の液状体を付与して、各有機発光層117R,117G,117Bを形成する発光層形成工程(ステップS15)とを備えている。さらに、上層バンク115と各有機発光層117R,117G,117Bを覆うように陰極118を形成する工程(ステップS16)を備えている。
【0097】
図11のステップS11は、下層バンク形成工程である。ステップS11では、図12(a)に示すように素子基板102の複数の電極112の一部を覆うように下層バンク114を形成する。下層バンク114の材料としては、無機材料である絶縁性のSiO2(酸化珪素)等を用いる。下層バンク114の形成方法としては、例えば、後に形成される各有機発光層117R,117G,117Bに対応して、各電極112の表面をそれぞれレジスト等を用いてマスキングする。そして、マスキングされた素子基板102を真空装置に投入し、SiO2をターゲットあるいは原料としてスパッタリングや真空蒸着することにより下層バンク114を形成する方法が挙げられる。なお、下層バンク114は、SiO2により形成されているため、その膜厚が200nm以下であれば十分な透明性を有しており、後に正孔注入輸送層116および有機発光層117R,117G,117Bが積層されても発光を阻害することはない。また、後に陰極118が積層されても陰極118と電極112とが直接に短絡することを防ぐことができる。そしてステップS12へ進む。
【0098】
図11のステップS12は、上層バンク形成工程である。ステップS12では、図12(b)に示すように、各区画領域Aを実質的に区画すると共に、下層バンク114が区画領域Aの内側に張り出すように、下層バンク114の上に上層バンク115を形成する。上層バンク115の材料としては、アクリル系の感光性樹脂材料を用いることができる。上層バンク115の形成方法としては、例えば、下層バンク114が形成された素子基板102の表面に感光性樹脂材料をロールコート法やスピンコート法で塗布し、乾燥させて厚みがおよそ2μmの感光性樹脂層を形成する。そして、区画領域Aに対応した大きさで開口部が設けられたマスクを素子基板102と所定の位置で対向させて露光・現像することにより、上層バンク115を形成する方法が挙げられる。そして、ステップS13へ進む。
【0099】
図11のステップS13は、区画領域Aを表面処理する工程である。ステップS13では、二層バンク113が形成された素子基板102の表面を、まずO2ガスを処理ガスとしてプラズマ処理する。これにより電極112の表面、下層バンク114の張り出し部および上層バンク115の表面(壁面を含む)を活性化させて親液処理する。つぎにCF4等のフッ素系ガスを処理ガスとしてプラズマ処理する。これにより有機材料である感光性樹脂からなる上層バンク115の表面のみにフッ素系ガスが反応して撥液処理される。そして、ステップS14へ進む。
【0100】
図11のステップS14は、正孔注入輸送層形成工程である。ステップS14では、図12(c)に示すように、正孔注入輸送層形成材料を含む液状体130を区画領域Aに付与する。液状体130を付与する方法としては、液状体130を液滴として吐出可能な液滴吐出ヘッド20を備えた液滴吐出装置10を用いる。また、実施形態2の液状体の吐出方法に基づいて液状体130を複数のノズル22から吐出する。
【0101】
図12(c)に示すように液滴吐出ヘッド20から吐出された液状体130は、液滴として素子基板102の電極112に着弾して濡れ拡がる。液状体130は区画領域Aの面積に応じて必要量が液滴として吐出され表面張力で盛り上がった状態となる。そして図12(d)に示すように、素子基板102を例えばランプアニール等の方法で加熱することにより、液状体130の溶媒成分を乾燥させて除去し、電極112の二層バンク113の段差により区画された領域に正孔注入輸送層116が形成される。本実施形態では、正孔注入輸送層形成材料としてPEDOT(Polyethylene Dioxy Thiophene;ポリエチレンジオキシチオフェン)を用いた。尚、この場合、各区画領域Aに同一材料からなる正孔注入輸送層116を形成したが、後の有機発光層の形成材料に対応して正孔注入輸送層の材料を区画領域Aごとに変えてもよい。また、上記液状体の吐出方法によらず、蒸着法等により正孔注入輸送層116を形成してもよい。そしてステップS15へ進む。
【0102】
図11のステップS15は、発光層形成工程である。ステップS15では、図12(e)に示すように、複数の区画領域Aに発光層形成材料を含む3種の液状体141,142,143を付与する。液状体141,142,143を付与する方法としては、先のステップS14と同様にして、液滴吐出装置10を用い液滴吐出ヘッド20に各液状体141,142,143を充填して、それぞれ液滴として対応する区画領域Aに着弾させる。液状体141は有機発光層117R(赤色)を形成する材料を含み、液状体142は有機発光層117G(緑色)を形成する材料を含み、液状体143は有機発光層117B(青色)を形成する材料を含んでいる。着弾した各液状体141,142,143は、区画領域Aに濡れ拡がって断面形状が円弧状に盛り上がる。そして、図12(f)に示すように、付与された各液状体141,142,143を減圧乾燥法により一括乾燥すると、より濡れ性がよい張り出し部まで濡れ拡がった状態を維持しながら乾燥され、膜厚がほぼ一定な各有機発光層117R,117G,117Bが形成される。そして、ステップS16へ進む。
【0103】
図11のステップS16は、陰極形成工程である。ステップS16では、図12(g)に示すように、素子基板102の各有機発光層117R,117G,117Bと上層バンク115の表面とを覆うように陰極118を形成する。陰極118の材料としては、Ca、Ba、Al等の金属やLiF等のフッ化物を組み合わせて用いるのが好ましい。特に有機発光層117R,117G,117Bに近い側に仕事関数が小さいCa、Ba、LiFの膜を形成し、遠い側に仕事関数が大きいAl等の膜を形成するのが好ましい。また、陰極118の上にSiO2、SiN等の保護層を積層してもよい。このようにすれば、陰極118の酸化を防止することができる。陰極118の形成方法としては、蒸着法、スパッタ法、CVD法等が挙げられる。特に有機発光層117R,117G,117Bの熱による損傷を防止できるという点では、蒸着法が好ましい。
【0104】
このようにして出来上がった発光素子部117は、上記実施形態2の液状体の吐出方法を用いているので、膜厚がほぼ一定な各有機発光層117R,117G,117Bを有する。このような発光素子部117を備えた基板101を用いて有機EL表示装置100を製造すれば、各有機発光層117R,117G,117Bの膜厚がほぼ一定であるため、抵抗がほぼ一定となる。すなわち回路素子部103により発光素子部117に駆動電圧を印加して発光させると、各有機発光層117R,117G,117Bごとの抵抗ムラによる発光ムラや輝度ムラ等が少ない、見映えのよい表示品質が得られる。
【0105】
上記実施形態3の効果は、以下の通りである。
(1)上記実施形態3の有機EL発光素子の製造方法は、上記実施形態2の液状体の吐出方法を用いて、発光層形成材料を含む3種の液状体を区画領域Aに付与する。したがって、吐出ムラが低減され、乾燥して固定化すると、膜厚がほぼ一定な有機発光層117R,117G,117Bを形成することができる。すなわち、吐出ムラによる発光ムラ等の不良が低減され歩留まりよく発光素子部117を製造することができる。
【0106】
(2)上記実施形態3の有機EL表示装置100は、基板101の発光素子部117が上記有機EL発光素子の製造方法を用いて製造されているので、発光ムラ等の不具合が少ない高い表示品質を有する有機EL表示装置100を提供することができる。
【0107】
(実施形態4)
次に実施形態2の液晶表示装置または実施形態3の有機EL表示装置を搭載した電子機器の具体例について説明する。図13は電子機器としての携帯電話機を示す概略斜視図である。
【0108】
図13に示すように、本実施形態の電子機器としての携帯電話機1000は、数字や文字の入力が可能な本体1002と、本体1002に対して折りたたみ可能な状態に取り付けられた表示部1001とを有している。表示部1001には、液晶表示装置80または有機EL表示装置100が搭載されている。
【0109】
上記実施形態4の効果は、以下の通りである。
(1)上記実施形態4の電子機器としての携帯電話機1000は、実施形態2の液晶表示装置80または実施形態3の有機EL表示装置100を搭載しているため、色ムラや発光ムラ等の不具合の少ない、高い表示品質で文字や画像等の情報を確認することが可能な携帯電話機1000を提供することができる。
【0110】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。例えば上記実施形態以外の変形例は、以下の通りである。
【0111】
(変形例1)実施形態1の液滴吐出ヘッド20における複数のノズル22の配置は、これに限定されない。図14は、変形例の液滴吐出ヘッドを示す概略図である。同図(a)は斜視図、同図(b)は概略断面図である。例えば、図14(a)に示すように、変形例の液滴吐出ヘッド30は、ノズルプレート31に1列のノズル列32aを有し、ノズルa1とノズルa2の間隔P4がノズルa2とノズルa3の間隔P5よりも狭くなるように不等間隔で配置されている。また、図14(b)に示すように、液滴吐出ヘッド30は、ノズルプレート31と、液状体流路を構成する区画部33と、振動板34とによって複数の圧力発生室35が構成されている。また、複数の圧力発生室35に対応したピエゾ39を有している。ピエゾ39は、圧電体37と上電極38を有し、振動板34に形成された下電極36と上電極38との間に駆動電圧が印加されると振動板34を変形させて圧力発生室35に充填された液状体を液滴としてノズル32から吐出することができる。ノズルa1〜a3を配置する方法としては、圧力発生室35の幅Cに対応して、例えば、a1とa3を幅Cのほぼ中央に位置するように形成する。ノズルa2は、幅Cの中央からそれたノズルa1に近い位置に形成する。このようにすれば、複数のノズル32を不等間隔で配置することができる。この状態では、間隔P4はノズル32の直径よりも大きいが、よりノズルa1とノズルa2とを近接させる方法としては、主走査方向に対してノズル列32aが交差するように傾斜させることで実質的に近接させた状態とすることができる。また、液滴吐出ヘッドのノズル列が3つ以上ならば、少なくとも1つのノズル列が複数のノズルが異なる間隔で交互に配置された状態、例えば上記液滴吐出ヘッド30のノズル列32aであればよい。さらには、略等間隔で配置された複数のノズルを有する液滴吐出ヘッドを図4に示したキャリッジ1aに、主走査方向(Y方向)から見て複数のノズルが異なる間隔で交互に配置されるようにY方向に配列させると共に、X方向にずらして複数配置してもよい。
【0112】
(変形例2)上記実施形態2の液状体の吐出方法を適用可能な薄膜を有するデバイスの製造方法は、カラーフィルタ60の着色層64や有機EL発光素子の正孔注入輸送層116、有機発光層117R,117G,117Bの形成方法に限定されない。例えば、液晶表示装置80の配向膜の形成方法、有機EL表示装置100の薄膜トランジスタ103aに接続される金属配線等の形成方法にも適用可能である。
【0113】
(変形例3)上記実施形態2のカラーフィルタ60の着色層64R,64G,64Bの配置は、ストライプ状に限定されない。例えば、同一色の着色層64が斜め方向に配置されたモザイク状、三角形の頂点の位置に配置されたデルタ状でも、本発明の液状体の吐出方法を適用することができる。なお、上記実施形態3の有機EL表示装置100の有機発光層117R,117G,117Bの配置においても同様である。
【0114】
(変形例4)上記実施形態2の液状体の吐出方法は、着色領域Dの長手方向に対してノズル列22a,22bが平行になる所謂横描画方法であるが、着色領域Dの短手方向に対してノズル列22a,22bが平行になる所謂縦描画方法においても適用可能である。
【0115】
(変形例5)上記実施形態3の有機EL表示装置100の封止基板119は必ずしも必要としない。例えば、基板101の発光素子部117を覆うように遮光性を有する樹脂等からなる封着剤によって封止してもよい。
【0116】
(変形例6)上記実施形態2の液晶表示装置80または上記実施形態3の有機EL表示装置100を搭載した電子機器としては、実施形態4の携帯電話機1000に限定されない。例えば、PDA(Personal Digital Assistants)と呼ばれる携帯型情報機器や携帯端末機器、携帯型パーソナルコンピュータ、ワープロ、デジタルスチルカメラ、車載用モニタ、デジタルビデオカメラ、液晶テレビ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワークステーション、テレビ電話機、POS端末機等、電気光学装置である液晶表示装置や有機EL表示装置を用いる機器が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】液滴吐出装置を示す概略斜視図。
【図2】液滴吐出ヘッドの要部構造を示す概略斜視図。
【図3】液滴吐出ヘッドを示す斜視図。
【図4】液滴吐出ヘッドの配置を示す概略平面図。
【図5】制御部および制御部に関連する各部との電気的な構成を示すブロック図。
【図6】液晶表示装置の要部構造を示す概略断面図。
【図7】カラーフィルタの製造方法を示すフローチャート。
【図8】(a)〜(e)はカラーフィルタの製造方法を示す概略断面図。
【図9】(a)〜(e)は液状体の吐出方法を示す概略平面図。
【図10】有機EL表示装置の要部構造を示す概略断面図。
【図11】有機EL発光素子の製造方法を示すフローチャート。
【図12】(a)〜(g)は有機EL発光素子の製造方法を示す概略断面図。
【図13】携帯電話機を示す概略斜視図。
【図14】(a)は変形例の液滴吐出ヘッドを示す斜視図、(b)は変形例の液滴吐出ヘッドの構造を示す概略断面図。
【符号の説明】
【0118】
10…液滴吐出装置、20,30…液滴吐出ヘッド、22,32…ノズル、22a,22b,32a…ノズル列、51,52,53…着色層形成材料を含む液状体、60…カラーフィルタ、61…基板としてのガラス基板、64,64R,64G,64B…着色層、67…一対の基板としての対向基板、70…液晶、80…液晶表示装置、100…有機EL表示装置、101…基板、117…有機EL発光素子が複数形成された発光素子部、117R,117G,117B…有機発光層、119…封止基板、1000…電子機器としての携帯電話機、A…区画領域、D…区画領域としての着色領域、P2,P4…狭い方の間隔、W…ワーク。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状体を液滴として吐出可能な液滴吐出ヘッドおよびこれを備えた液滴吐出装置、液状体の吐出方法、デバイスの製造方法、カラーフィルタの製造方法および有機EL発光素子の製造方法、電気光学装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
液状体を液滴として吐出可能な液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置としては、同一の液状体を吐出可能な複数の液滴吐出ヘッドを被吐出物に向けて保持する保持手段と、保持手段と被吐出物とを相対的に移動させる移動手段とを備えた吐出装置が知られている(特許文献1)。
【0003】
この吐出装置では、各液滴吐出ヘッドのノズル列が上記相対移動の方向に対して斜めに交差する方向にそれぞれ配列されている。また、ノズル列には、複数のノズルが略等間隔に配設されている。
【0004】
このような吐出装置は、各液滴吐出ヘッドの複数のノズルから同一の液状体を広い範囲に渡って吐出することを可能とした。また、被吐出物の大きさに対応した専用の液滴吐出ヘッドを必要とせず、規格品の液滴吐出ヘッドを複数配列させることによって種々の被吐出物に対応させた。
【0005】
また、流動性を有する液状体を吐出して基板上に精密で良好な微細パターンの機能性薄膜を形成できるようにした液滴吐出装置およびデバイスの製造方法が知られている(特許文献2)。
【0006】
このデバイスの製造方法では、液滴吐出装置に備えられたカメラにより、基板上に着弾した際の液状体の液滴の挙動を連続的に撮影した結果を基に、最適な液状体の吐出条件を決定することができるとしている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−159786号公報、頁2、頁7
【特許文献2】特開2004−290799号公報、頁3
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記吐出装置を用い、液状体を被吐出物としての基板に吐出する場合、保持手段と被吐出物との相対移動方向に液滴が連続して着弾するように吐出することは可能である。しかし、複数のノズルは略等間隔で配設されており、液滴吐出ヘッドを相対移動方向に対して斜めに交差する方向に配列しても、相対移動方向に対して直交する方向に液滴を連続して着弾させることは困難である。よって、必要量の液滴をよりムラ無く吐出するには、保持手段を相対移動方向に対して直交する方向にずらす改行動作が必要となる。
【0009】
そして、液状体を吐出しようとする面積が拡大すればするほど、相対移動方向に液滴を吐出する所謂主走査と改行動作(副走査)とを繰り返し行う必要が生ずるという課題がある。
【0010】
また、基板上に着弾した際の液状体の液滴の挙動は、実際には着弾する基板の表面状態や吐出量により左右される。着弾した液滴を濡れ拡げるために基板表面を親液化する表面処理にムラがあると、部分的に液滴が濡れ拡がらず孤立してしまう。複数のノズルから吐出される液滴の吐出量がばらついていると、たとえ改行動作を行って先に着弾した液滴と繋がるように後の液滴を吐出しても、少ない吐出量の液滴が孤立して吐出ムラとなる惧れがあった。
【0011】
本発明は、上記課題を考慮してなされたものであり、副走査の回数を低減し、吐出ムラを抑制することが可能な液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出装置、この液滴吐出装置を用いた液状体の吐出方法、デバイスの製造方法、カラーフィルタの製造方法および有機EL発光素子の製造方法、電気光学装置および電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の液滴吐出ヘッドは、充填された液状体を液滴として吐出可能な液滴吐出ヘッドであって、複数のノズルからなるノズル列を備え、ノズル列に対して直交する方向から見たときに、複数のノズルが異なる間隔で交互に配置されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、ノズル列に対して直交する方向から見たときに、複数のノズルが異なる間隔で交互に配置されている。したがって、隣り合うノズルの間隔が異なり、一方の間隔に比べて他方の間隔が狭い間隔となる。よって、狭い間隔で配置されたノズルから液状体を液滴として被吐出物に吐出すれば、複数のノズルが等間隔で配置された場合に比べて、少なくとも2つの液滴をより近づけて着弾させることができる。被吐出物と本発明の液滴吐出ヘッドとを対向配置させ、ノズル列の方向と交差する方向に相対移動させる主走査に同期して複数の液滴を吐出すれば、主走査方向と直交する副走査方向に近接する少なくとも2つの液滴を所定の間隔で着弾させることができる。より近くに着弾した液滴同士が濡れ拡がって合体する確率が高まるので、副走査方向に液滴を濡れ拡げ易くすることができる。すなわち、副走査方向に液滴をさらに吐出するために被吐出物と液滴吐出ヘッドとを相対移動させる副走査の回数を低減し、被吐出物の表面状態や液滴の吐出量のバラツキによって吐出された液滴が部分的に孤立して吐出ムラとなることを抑制することが可能な液滴吐出ヘッドを提供することができる。以降、ノズル列の方向と交差する方向を主走査方向とし、主走査方向に液滴を吐出することを主走査という。また、主走査方向に直交する方向を副走査方向とし、副走査方向に液滴吐出ヘッドと被吐出物とを相対移動させることを副走査として説明する。
【0014】
また、上記複数のノズルが略等間隔で配置されたノズル列を少なくとも2つ備え、ノズル列に対して直交する方向から見たときに、複数のノズルが異なる間隔で交互に配列するように、一方のノズル列に対して他方のノズル列がずれて配置されているとしてもよい。
【0015】
この構成によれば、1つのノズル列を有する場合に比べて、より多くのノズルを有しているので、1回の主走査によって副走査方向により高い密度で液滴を着弾させることができる。さらに、複数のノズルが異なる間隔で交互に配置されているので、副走査方向により高い密度で着弾した液滴のうち、狭い間隔で吐出された液滴同士が合体して濡れ拡がり易くなり、より副走査の回数を低減することができる。
【0016】
さらには、3つ以上のノズル列を備え、少なくとも1つのノズル列は、複数のノズルが異なる間隔で交互に配置されているとしてもよい。これによれば、1回の主走査により液滴を吐出可能なノズルの数が増え、少なくとも1つのノズル列の複数のノズルが異なる間隔で交互に配置されているので、さらに副走査の回数を低減することができる。
【0017】
また、上記複数のノズルの異なる間隔において、狭い方の間隔は、ノズルの直径に対して3分の2以上1未満の長さであることが好ましい。ノズルから吐出される液滴の着弾径は、吐出量や吐出速度だけでなくノズルの直径にも依存する。これによれば、狭い方のノズル間隔は、ノズルの直径に対して3分の2以上1未満の長さであるので、液滴が被吐出物に着弾したときに、互いに接して合体させることが容易となる。したがって、狭い間隔で吐出された液滴同士がすばやく合体して濡れ拡がり易くなり、より副走査の回数を低減することができる。
【0018】
本発明の液滴吐出装置は、複数のノズルからなるノズル列を有し、ノズル列に対して直交する方向から見たときに、複数のノズルが異なる間隔で交互に配置された液滴吐出ヘッドと、液滴吐出ヘッドとワークとを対向させて相対移動させる移動手段とを備え、移動手段による相対移動に同期して、液滴吐出ヘッドの複数のノズルから液状体を液滴としてワークに吐出することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、複数のノズルからなるノズル列を有し、ノズル列に対して直交する方向から見たときに、複数のノズルが異なる間隔で交互に配置された液滴吐出ヘッドと、液滴吐出ヘッドとワークとを対向させて相対移動させる移動手段とを備えている。液滴吐出ヘッドの狭い方の間隔で隣り合うノズルから吐出された液滴は、ワークに着弾後合体する確率が高まる。合体した液滴は副走査方向により濡れ拡がることになるので、副走査の回数を低減し、ワークに対して吐出ムラを抑制した状態で液状体を液滴として効率よく吐出可能な液滴吐出装置を提供することができる。
【0020】
本発明の液状体の吐出方法は、上記発明の液滴吐出装置を用い、液滴吐出ヘッドとワークとを対向させた状態で相対移動させる走査を行って、ワーク上の複数の区画領域に液状体を液滴として吐出する吐出方法であって、少なくとも1回の走査では、液滴吐出ヘッドの複数のノズルから1つの区画領域に複数の液滴が着弾するように吐出し、異なる間隔のうち狭い方の間隔で隣り合うノズルから吐出された液滴が部分的に繋がるように吐出することを特徴とする。
【0021】
この方法によれば、上記発明の液滴吐出装置を用い、異なる間隔のうち狭い方の間隔で隣り合うノズルから吐出された液滴が部分的に繋がるように吐出する。したがって、副走査方向に狭い吐出間隔で吐出された液滴同士が合体して濡れ拡がり、副走査の回数を低減して複数の区画領域に吐出ムラが抑制された状態で液状体を付与することができる。
【0022】
また、上記液滴吐出ヘッドのノズル列が区画領域の長手方向に対して略平行または傾斜するように対向配置され、液状体を複数のノズルから液滴として吐出することが好ましい。
【0023】
この方法によれば、区画領域の長手方向に対して直交する方向に液滴吐出ヘッドとワークとが相対移動する主走査を行う所謂横描画となり、該長手方向に副走査する回数を低減して、区画領域の長手方向に吐出ムラが抑制された状態で複数の区画領域に液状体を付与することができる。すなわち、主走査方向にスジ状となる吐出ムラを低減することができる。
【0024】
本発明のデバイスの製造方法は、ワークと、ワーク上の複数の区画領域に形成された薄膜とを有するデバイスの製造方法であって、上記発明の液状体の吐出方法を用い、薄膜形成材料を含む液状体を複数の区画領域に吐出して乾燥することにより薄膜を形成することを特徴とする。
【0025】
この方法によれば、副走査の回数を低減して複数の区画領域に吐出ムラが抑制された状態で液状体が付与されるので、区画領域においてより均一に薄膜を形成することができる。
【0026】
本発明のカラーフィルタの製造方法は、基板と、基板上の複数の区画領域に形成された複数色の着色層とを有するカラーフィルタの製造方法であって、上記発明の液状体の吐出方法を用い、異なる着色層形成材料を含む複数種の液状体を複数の区画領域に吐出して乾燥することにより複数色の着色層を形成することを特徴とする。
【0027】
この方法によれば、副走査の回数を低減して複数の区画領域に吐出ムラが抑制された状態で液状体が付与されるので、区画領域において吐出ムラによる色ムラが低減され、より均一な着色層を有するカラーフィルタを製造することができる。
【0028】
本発明の有機EL発光素子の製造方法は、基板と、基板上の複数の区画領域に形成された有機発光層を含む機能層とを有する有機EL発光素子の製造方法であって、上記発明の液状体の吐出方法を用い、発光層形成材料を含む液状体を複数の区画領域に吐出して乾燥することにより有機発光層を形成することを特徴とする。
【0029】
この方法によれば、副走査の回数を低減して複数の区画領域に吐出ムラが抑制された状態で液状体が付与されるので、区画領域において吐出ムラによる発光ムラが低減され、より均一な有機発光層を有する有機EL発光素子を製造することができる。
【0030】
本発明の電気光学装置は、一対の基板と、一対の基板により挟持された電気光学材料としての液晶とを備え、一対の基板のうちの一方が上記発明のカラーフィルタの製造方法によって製造されたことを特徴とする。これによれば、一対の基板のうちの一方が上記発明のカラーフィルタの製造方法によって製造されているので、色ムラが少なく高い表示品質を有する電気光学装置としての液晶表示装置を提供することができる。
【0031】
本発明の他の電気光学装置は、複数の有機EL素子が形成された基板と該基板を封止する封止基板とを備えた電気光学装置であって、有機EL発光素子が、上記発明の有機EL発光素子の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする。これによれば、有機EL発光素子が、上記発明の有機EL発光素子の製造方法を用いて製造されているので、発光ムラが少ない高い表示品質を有する電気光学装置としての有機EL表示装置を提供することができる。
【0032】
本発明の電子機器は、上記発明の電気光学装置が搭載されたことを特徴とする。これによれば、上記発明の電気光学装置が搭載されているので、高い表示品質を有する電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
(実施形態1)
<液滴吐出装置>
まず本実施形態の液滴吐出装置について図1を基に説明する。図1は、液滴吐出装置を示す概略斜視図である。各部の構成は、適宜縮尺して表示している。
【0034】
図1に示すように、本実施形態の液滴吐出装置10は、液状体を液滴として吐出してワークW上に液状体からなる膜を形成するものである。そしてワークWが載置されるステージ4と、載置されたワークWに液状体を液滴として吐出する複数の液滴吐出ヘッド20(図2参照)を有するヘッドユニット1とを備えている。
【0035】
また液滴吐出装置10は、ヘッドユニット1を副走査方向(X方向)に駆動するためのX方向ガイド軸2と、X方向ガイド軸2を回転させるX方向駆動モータ3とを備えている。また、ステージ4を主走査方向(Y方向)にガイドするためのY方向ガイド軸5と、Y方向ガイド軸5に係合して回転するY方向駆動モータ6とを備えている。そしてX方向ガイド軸2とY方向ガイド軸5とが上部に配設された基台7を備え、その基台7の下部には、制御部8を備えている。
【0036】
さらに、ヘッドユニット1の複数の液滴吐出ヘッド20をクリーニング(回復処理)するためのクリーニング機構9および吐出された液状体を加熱し溶媒を蒸発・乾燥させるためのヒータ12とを備えている。またクリーニング機構9にもY方向駆動モータ11が備えられている。
【0037】
ヘッドユニット1には、液状体をノズル22(吐出口)から吐出してワークWに塗布する複数の液滴吐出ヘッド20(図2参照)を備えている。そして、これら複数の液滴吐出ヘッド20により、制御部8から供給される吐出電圧に応じて個別に液状体を吐出できるようになっている。この液滴吐出ヘッド20とその配置については後述する。
【0038】
X方向駆動モータ3は、これに限定されるものではないが例えばステッピングモータ等であり、制御部8からX軸方向の駆動パルス信号が供給されると、X方向ガイド軸2を回転させ、X方向ガイド軸2に係合したヘッドユニット1をX方向に移動させる。
【0039】
同様にY方向駆動モータ6,11は、これに限定されるものではないが例えばステッピングモータ等であり、制御部8からY軸方向の駆動パルス信号が供給されると、Y方向ガイド軸5に係合して回転し、Y方向駆動モータ6,11を備えたステージ4およびクリーニング機構9をY軸方向に移動させる。
【0040】
クリーニング機構9は、液滴吐出ヘッド20をクリーニングする際には、ヘッドユニット1を臨む位置に移動し、液滴吐出ヘッド20のノズル面に密着して不要な液状体を吸引するキャッピング、液状体等が付着したノズル面を拭き取るワイピング、液滴吐出ヘッド20の全ノズルから液状体の吐出を行う予備吐出あるいは不要となった液状体を受けて排出させる処理を行う。クリーニング機構9の詳細は省略する。
【0041】
ヒータ12は、これに限定されるものではないが例えばランプアニールによりワークWを熱処理する手段であり、ワークW上に吐出された液状体の蒸発・乾燥を行うとともに膜に変換するための熱処理を行うようになっている。このヒータ12の電源の投入及び遮断も制御部8によって制御される。
【0042】
液滴吐出装置10の塗布動作は、制御部8から所定の駆動パルス信号をX方向駆動モータ3およびY方向駆動モータ6とに送り、ヘッドユニット1を副走査方向(X方向)に、ステージ4を主走査方向(Y方向)に相対移動させる。そして、この相対移動に同期して制御部8から吐出電圧を供給し、ヘッドユニット1の液滴吐出ヘッド20からワークWの所定の領域に液状体を液滴として吐出し塗布を行う。
【0043】
液滴吐出ヘッド20から吐出される液滴の吐出量は、制御部8から供給される吐出電圧の大きさによって調整することができる。
【0044】
<液滴吐出ヘッド>
次に本発明の一実施形態である液滴吐出ヘッドについて図2から図4に基づいて説明する。図2は液滴吐出ヘッドの要部構造を示す概略斜視図、図3液滴吐出ヘッドを示す斜視図である。
【0045】
図2に示すように液滴吐出ヘッド20は、複数のノズル22を有するノズルプレート21と、各ノズル22に対応してこれを区画する区画部24を含む液状体の流路が形成されたリザーバプレート23と、エネルギー発生手段としての圧電素子(ピエゾ)29を有する振動板28とからなる3層構造の所謂ピエゾ方式インクジェットヘッドである。ノズルプレート21とリザーバプレート23の区画部24および振動板28によって複数の圧力発生室25が構成されている。各ノズル22は、各圧力発生室25にそれぞれ連通している。また、圧電素子29は、各圧力発生室25に対応するように振動板28に複数配設されている。
【0046】
リザーバプレート23には、振動板28に形成された供給孔28aを通じてタンク(図示省略)から供給される液状体が一時的に貯留される共通流路27が設けられている。また共通流路27に充填された液状体は、供給口26を通じて各圧力発生室25に供給される。
【0047】
液滴吐出ヘッド20は、電気信号としての駆動波形が圧電素子29に印加されると圧電素子29自体が歪んで振動板28を変形させる。これにより、圧力発生室25の体積変動が起こり、これによるポンプ作用で圧力発生室25に充填された液状体が加圧され、ノズル22から液状体を液滴Lとして吐出することができる。尚、ノズル22から液状体を液滴Lとして吐出させるエネルギー発生手段は、圧電素子29に限定されず、加熱素子としてのヒータや電気機械変換素子としての静電アクチュエータ等でもよい。
【0048】
図3に示すように、液滴吐出ヘッド20は、複数のノズル22が略等間隔(ノズルピッチP1)でノズルプレート21に配置された2つのノズル列22a,22bを有している。また、ノズル列22a,22bに直交する方向から見たときに、複数のノズル22が異なる間隔(ノズルピッチP2とノズルピッチP3)で交互に配列するように、一方のノズル列22aに対して他方のノズル列22bがずれて配置されている。
【0049】
この場合、各ノズル列22a,22bには、それぞれ180個のノズル22が配設されており、ノズル列22a,22bに直交する方向から見ると、360個のノズル22が異なる間隔で交互に配置されている。すなわち、複数のノズル22が不等間隔で配置されている。ノズル22の直径は、およそ30μmである。ノズルピッチP1はおよそ140μm、ノズルピッチP2はおよそ30μm、ノズルピッチP3はおよそ110μmである。ノズル列22aとノズル列22bとの間隔は、およそ2.54mmである。
【0050】
このように異なる間隔で複数のノズル22を配置することにより、狭い方の間隔(ノズルピッチP2)で隣り合うノズル22から吐出される液滴LがワークWに着弾したときに、互いに接して合体し易くしたものである。これにより、それぞれのノズルから同一種類の液状体を吐出し着弾した後に液滴同士が一緒になって濡れ拡がりムラを軽減できる。吐出された液滴Lの着弾径は、ワークWの表面状態や液滴Lの吐出量、吐出速度、ノズル径等に依存する。液滴Lの吐出量、吐出速度は、吐出される液状体の物性にも左右されるので、着弾した液滴Lをより積極的に合体させるには、ノズルピッチP2をノズル22の直径に対して3分の2以上1未満の長さとすることが好ましい。なお、ワークWの表面が親液性ならば、着弾した液状体が濡れ拡がり易いので、着弾後の液滴Lの挙動を考慮してノズルピッチP2をノズル22の直径以上に広げてもよい。
【0051】
次にヘッドユニット1に備えられた複数の液滴吐出ヘッド20の配置について説明する。図4は、液滴吐出ヘッドの配置を示す概略平面図である。
【0052】
図4に示すように、ヘッドユニット1には、複数(6個)の液滴吐出ヘッド20をワークに向けて保持する略平行四辺形のキャリッジ1aを有している。キャリッジ1aには、ノズル列22a,22bが主走査方向(Y方向)に直交するように各液滴吐出ヘッド20が階段状に配設されている。前述したように液滴吐出ヘッド20は、360個のノズル22を有している。そのノズル長はLnである。そして、実際の液状体の吐出の際には、ノズル列22a,22bの両端側の10個のノズル22を用いていない。これは、両端側に位置するノズル22からの吐出量が他のノズル22に比べて安定しにくいことを考慮したものである。よって、有効ノズル長をLnpとする。Y方向に3個ずつ階段状に配置された6個の液滴吐出ヘッド20a,20b,20c,20d,20e,20fは、有効ノズル長LnpがX方向に連続するように配設されている。このような液滴吐出ヘッド20の配置は、有効ノズル長Lnpを最大利用してX方向(副走査方向)に液滴Lを吐出しようとするものである。ワークWの膜形成領域の大きさやその配置により、膜形成領域に着弾させる液滴Lの吐出量や1回の主走査による着弾密度を考慮して、ノズル列22a,22bが主走査方向(Y方向)に対して交差するように液滴吐出ヘッド20をキャリッジ1aに傾斜させて配置してもよい。
【0053】
また、キャリッジ1aに搭載する液滴吐出ヘッド20の数は、これに限定されるものでない。さらには、ヘッドユニット1に複数のキャリッジ1aを所定の間隔で備える構成としてもよい。
【0054】
図5は、制御部および制御部に関連する各部との電気的な構成を示すブロック図である。図5に示すように制御部8は、液状体の吐出データを外部情報処理装置から受け取る入力バッファメモリ13と、入力バッファメモリ13に一時的に記憶された吐出データを記憶手段(RAM)14に展開して関連する各部に制御信号を送る処理部15を備えている。また処理部15からの制御信号を受けてX方向駆動モータ3とY方向駆動モータ6とに位置制御信号を送る走査駆動部16と、同じく処理部15からの制御信号を受けて液滴吐出ヘッド20に駆動電圧パルス(駆動波形)を送るヘッド駆動部17とを備えている。
【0055】
入力バッファメモリ13に受け取られる吐出データは、ワークW上の膜形成領域の相対位置を表すデータと、膜形成領域に液状体の液滴をどのような着弾密度で吐出するかを示すデータと、液滴吐出ヘッド20のノズル列22a,22bのうちどのノズル22を駆動(ON−OFF)するかを指定するデータと、を含んでいる。
【0056】
処理部15は、記憶手段14に格納された吐出データの中から膜形成領域に関する位置の制御信号を走査駆動部16に送る。走査駆動部16は、この制御信号を受けてX方向駆動モータ3に位置制御信号を送ってヘッドユニット1(液滴吐出ヘッド20)を副走査方向であるX軸方向に移動させる。またY方向駆動モータ6に位置制御信号を送ってワークWが保持されたステージ4を主走査方向であるY軸方向に移動させる。これによってワークWの所望の位置に液滴吐出ヘッド20から液状体の液滴が吐出されるようにヘッドユニット1とワークWとを相対移動させる。
【0057】
また処理部15は、記憶手段14に格納された吐出データの中から膜形成領域に液状体の液滴をどのような着弾密度で吐出するかを示すデータを、ノズル22毎の4ビットの吐出ビットマップデータに変換してヘッド駆動部17に送る。また、液滴吐出ヘッド20のノズル列22a,22bの内どのノズル22を駆動(ON−OFF)するかを指定するデータに基づいて、液滴吐出ヘッド20の圧電素子29に印加する駆動電圧パルスをいつ発信するかの「タイミング検出信号」であるラッチ信号とチャンネル信号をヘッド駆動部17に送る。ヘッド駆動部17は、これらの制御信号を受けて液滴吐出ヘッド20に適正な駆動電圧パルスを送って、ノズル22から液状体の液滴Lを吐出させる。
【0058】
上記実施形態1の効果は、以下の通りである。
(1)上記実施形態1の液滴吐出ヘッド20は、複数のノズル22が略等間隔(ノズルピッチP1)で配置された2つのノズル列22a,22bを有している。また、ノズル列22a,22bに直交する方向から見たときに、複数のノズル22が異なる間隔(ノズルピッチP2とノズルピッチP3)で交互に配列するように、一方のノズル列22aに対して他方のノズル列22bがずれて配置されている。したがって、360個のノズル22が等間隔でノズルプレート21に配置されている場合に比べて、狭い方の間隔(ノズルピッチP2)で隣り合うノズル22から液滴Lを吐出すれば、少なくとも2つの液滴Lが互いに接するようにワークWに着弾させて、容易に合体させることができる。すなわち、複数のノズル22は副走査方向(X方向)に並んでいるので、副走査方向に着弾した液滴Lを濡れ拡げることができる。
【0059】
(2)上記実施形態1の液滴吐出装置10は、液滴吐出ヘッド20と、ステージ4にワークWを載置して、液滴吐出ヘッド20に対向させた状態でワークWを主走査方向(Y方向)に移動させるY方向駆動モータ6と、液滴吐出ヘッド20が搭載されたヘッドユニット1を副走査方向に移動させるX方向駆動モータ3とを備えている。複数のノズル22が副走査方向に並ぶように液滴吐出ヘッド20がヘッドユニット1(キャリッジ1a)に配置されており、液滴吐出ヘッド20の狭い方の間隔で隣り合うノズル22から液滴Lを吐出すると、少なくとも2つの液滴Lが副走査方向に濡れ拡がるように合体させることができる。すなわち、液滴吐出ヘッド20の副走査と副走査方向に着弾する液滴Lの密度を上げるように吐出する主走査の回数を減少させることができる。
【0060】
(実施形態2)
本実施形態は、電気光学装置としての液晶表示装置と、該液晶表示装置を構成するカラーフィルタの製造方法を例に説明する。
【0061】
<液晶表示装置>
次に本発明の一実施形態である液晶表示装置について、図6に基づいて説明する。図6は液晶表示装置の要部構造を示す概略断面図である。図6に示すように、本実施形態の電気光学装置としての液晶表示装置80は、パッシブマトリクス型液晶表示装置であって、一対の基板としてのカラーフィルタ60と対向基板67と、これらの基板60,67に挟持された液晶70とを備えている。このような液晶表示装置80は、受光型の表示装置であるため、例えば対向基板67の背面側に照明装置等を備えて用いられる。尚、本実施形態の液晶表示装置80は、これに限定されず、例えば対向基板67にTFT(Thin Film Transister)やTFD(Thin Film Diode)などのスイッチング素子を備えたアクティブマトリクス型液晶表示装置であってもよい。
【0062】
対向基板67は、例えばソーダガラス、低アルカリガラスを用いており、その液晶70側の表面に導電性材料からなる透明な複数の電極68を有している。電極68は、対向するカラーフィルタ60に設けられた電極66と直交してY方向に延在している。すなわち、液晶表示装置80は、互いに対向すると共に直交して格子状に配置された電極66と電極68とを有している。そして電極66と電極68とが直交して重なった部分が表示用の画素領域となっている。透明な電極66,68を構成する導電性材料としては、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zic Oxide)などが挙げられる。
【0063】
カラーフィルタ60は、例えばソーダガラス、低アルカリガラスを用いており、透明なガラス基板61の表面に着色領域に対応して開口している第1バンクとしての遮光膜62と、遮光膜62の上に設けられた第2バンク63とを備えている。また第2バンク63によって区画された着色領域にR(赤色)、G(緑色)、B(青色)に対応する着色層64と、着色層64と第2バンク63とを覆う平坦化層としてのOC(オーバーコート)層65とを備えている。電極66はOC層65上に形成されている。
【0064】
遮光膜62は、Cr、Al、Niなどの金属やその金属化合物からなり、第2バンク63によって区画された着色領域の内側に張り出すように設けられている。第2バンク63は、例えばアクリル系樹脂等の有機材料により構成されている。尚、遮光膜62の開口部62aは、各着色領域ごとにほぼ同一寸法となるように形成されている。したがって、カラーフィルタ60の各着色層64R,64G,64Bごとの開口率はほぼ同一である。
【0065】
着色層64は、第2バンク63によって実質的に区画された着色領域に着色層形成材料を含む3種(3色)の液状体を付与して形成され、Y方向に同一色の着色層64が配列するように所謂ストライプ状に配置されている。
【0066】
このようなカラーフィルタ60は、後述するカラーフィルタの製造方法を用いて製造されたものであり、各着色層64R,64G,64Bの断面形状がほぼ平坦(一定)で、膜厚もほぼ同一な状態に形成されている。
【0067】
液晶表示装置80は、カラーフィルタ60と対向基板67とをギャップ材69を介して所定の間隔で対向配置させ、図示しないシール材を用いて接合させたものである。またシール材により電気光学材料としての液晶70を一対の基板60,67の間に封止したものである。尚、一対の基板60,67の液晶70に面する側には、液晶70を所定の方向に配向させる配向膜が設けられているが、図6では省略している。また、液晶表示装置80の前面側と背面側の表面には、通常、入射あるいは出射する光を偏向させる偏光板や、視角等を改善するための光学機能性フィルムとしての位相差フィルム等が配設されるが、これらも省略している。
【0068】
このような液晶表示装置80は、膜厚がほぼ同一な各着色層64R,64G,64Bを有する基板としてのカラーフィルタ60を備えているので、各着色層64R,64G,64Bが不均一なことに起因する色ムラ等が少ない、高い表示品質を有する。
【0069】
<カラーフィルタの製造方法>
次にカラーフィルタの製造方法について図7〜図8を基に説明する。図7はカラーフィルタの製造方法を示すフローチャート、図8(a)〜(e)はカラーフィルタの製造方法を示す概略断面図である。
【0070】
図7に示すように、本実施形態のカラーフィルタ60の製造方法は、ガラス基板61の表面に第1バンクとしての遮光膜62を形成する工程(ステップS1)と、遮光膜62の上に第2バンク63を形成する工程(ステップS2)と、第2バンク63によって区画された着色領域を表面処理する工程(ステップS3)とを備えている。また表面処理された着色領域に異なる着色層形成材料を含む3種(3色)の液状体を付与する液状体吐出工程(ステップS4)と、吐出された液状体を乾燥して複数色の着色層64を形成する乾燥工程(ステップS5)と、第2バンク63と着色層64とを覆うようにOC層65を形成する平坦化層形成工程(ステップS6)とを備えている。
【0071】
図7のステップS1は、第1バンク形成工程である。ステップS1では、図8(a)に示すように、第1バンクとしての遮光膜62をガラス基板61上に形成する。遮光膜62の材料は、例えば、Cr、Al、Ni等の不透明な金属、あるいはこれらの金属化合物を用いることができる。遮光膜62の形成方法としては、蒸着法あるいはスパッタ法で上記材料からなる膜をガラス基板61上に成膜する。膜厚は、遮光性が保たれる膜厚を選定された材料に応じて設定すればよい。例えば、Crならば、100〜200nmが好ましい。そして、フォトリソグラフィ法により遮光膜62に対応する部分以外をレジストで覆い、上記材料に対応する酸等のエッチング液を用いて膜をエッチングする。これにより開口部62aを有する遮光膜62が形成される。開口部62aの幅をいずれも一定の値としておく。そしてステップS2へ進む。
【0072】
図7のステップS2は、第2バンク形成工程である。ステップS2では、図8(b)に示すように、第2バンク63を遮光膜62の上に形成する。第2バンク63の材料としては、アクリル系等の感光性樹脂材料を用いることができる。また、感光性樹脂材料は、遮光性を有することが好ましい。第2バンク63の形成方法としては、例えば、遮光膜62が形成されたガラス基板61の表面に感光性樹脂材料をロールコート法やスピンコート法で塗布し、乾燥させて厚みがおよそ2μmの感光性樹脂層を形成する。そして、着色領域Dに対応した大きさで開口部が設けられたマスクをガラス基板61と所定の位置で対向させて露光・現像することにより、第2バンク63を形成する方法が挙げられる。そしてステップS3へ進む。
【0073】
図7のステップS3は、表面処理工程である。ステップS3では、O2を処理ガスとするプラズマ処理とフッソ系ガスを処理ガスとするプラズマ処理とを行う。すなわち、着色領域Dに対応する無機材料であるガラス基板61の表面や遮光膜62が親液処理され、その後有機材料からなる第2バンク63の表面(壁面を含む)が撥液処理される。そしてステップS4へ進む。
【0074】
図7のステップS4は、液状体吐出工程である。ステップS4では、図8(c)に示すように、表面処理された各着色領域Dのそれぞれに、対応する液状体51,52,53を付与して複数色の着色層64を形成する。液状体51はR(赤色)の着色層形成材料を含むものであり、液状体52はG(緑色)の着色層形成材料を含むものであり、液状体53はB(青色)の着色層形成材料を含むものである。各液状体51,52,53を付与する方法は、液滴吐出ヘッド20に各液状体51,52,53を充填し、液滴Lとして着色領域Dに着弾させる。各液状体51,52,53は、着色領域Dの面積に応じて所定量が付与され、着色領域D内に濡れ拡がり、表面張力によって盛り上がる。
【0075】
<液状体の吐出方法>
ここで、より詳しい液状体の吐出方法について述べる。図9は液状体の吐出方法を示す概略平面図である。なお、吐出方法を分かりやすく説明するために、図は適宜拡大縮小している。本実施形態の液状体の吐出方法は、前述した液滴吐出装置10を用いている。
【0076】
まず、図9(a)に示すように、区画領域としての着色領域Dの長手方向が各ノズル列22a,22bと平行な状態で液滴吐出ヘッド20と対向するようにワークWとしてのガラス基板61をステージ4に載置する。そして、Y方向に液滴吐出ヘッド20とワークWとが相対移動する主走査に同期して、1つの着色領域Dに掛かる複数のノズル22から液滴Lを複数吐出する。このとき狭い方の間隔で隣り合うノズル22から吐出された液滴51a,51bが着弾後部分的に繋がるように吐出する。この場合、1回の主走査では、図9(b)に示すように、さらに液滴51c,51dが同様に着色領域Dに着弾するように吐出する。
【0077】
着弾した液滴51a,51bおよび液滴51c,51dは、着色領域Dに対応するガラス基板61の表面が親液処理されているので、それぞれに合体して濡れ拡がる。そして、図9(c)に示すように、濡れ拡がった液状体同士がさらに合体した液滴51eが形成される。同様にして副走査方向(X方向)に着弾した液滴同士が合体した液滴51fが隣り合って形成されるので、図9(d)および図9(e)に示すようにそれぞれが濡れ拡がって合体した液状体51gが形成される。
【0078】
当然ながら1つの着色領域Dに所定の厚みの着色層64を均一に形成するために、所定量の液状体を吐出することが必要である。本実施形態の液状体の吐出方法では、1回の主走査により着色領域Dに液状体を広く濡れ拡げることができるので、主走査方向に該所定量に対応する液滴Lを連続的に着弾させれば、着色領域Dに隈なく液状体を付与することが可能である。すなわち、着色領域Dに隈なく液状体を付与するために、描画範囲を変えて副走査方向により着弾密度が高くなるように液滴を吐出する副走査と主走査を行う回数を減らすことが可能となる。
【0079】
このような液状体の吐出方法は、これに限定されず、所定量の液状体を複数回の主走査を行うことにより、着色領域Dに付与してもよい。例えば、少なくとも1回の主走査により、着色領域Dに濡れ拡がる程度に複数の液滴Lを吐出してから、所定量に到達するように残りの液状体を吐出してもよい。これによれば、先の吐出によって濡れ拡がった液状体に後の吐出でさらに液状体を付与するので、吐出ムラを低減してより均一に液状体を付与することが可能である。
【0080】
実際には、1つの液晶表示装置80に対応する複数の着色領域Dがマトリクス状に配置されたより大きなワークWを用いて複数のカラーフィルタ60を同時に形成する。よって、ヘッドユニット1に搭載された複数の液滴吐出ヘッド20が1回の主走査によって吐出可能な範囲(描画範囲)は、このようなワークWよりも小さく、ワークWのすべての着色領域Dに対応する各液状体51,52,53を吐出するには、ヘッドユニット1を副走査して改行することにより可能となる。そして、ステップS5へ進む。
【0081】
図7のステップS5は、乾燥工程である。ステップS5では、図8(d)に示すように、各着色領域Dに吐出された液状体51,52,53を乾燥して固定化し、各着色層64R,64G,64Bを形成する。乾燥方法としては、液状体51,52,53が吐出されたガラス基板61をチャンバー内に密閉して減圧状態とし、溶媒を一定速度で蒸発させて乾燥する減圧乾燥法が好ましい。これによれば、ムラなく乾燥され均一な着色層64を得ることが可能である。
【0082】
なお、付与された各液状体51,52,53の乾燥方法は、各液状体51,52,53をすべて付与した後に一括乾燥する方法に限らず、個々に液状体51,52,53を付与した後に乾燥を行う方法でもよい。そして、ステップS6へ進む。
【0083】
図7のステップS6は、平坦化層形成工程である。ステップS6では、図8(e)に示すように、着色層64と第2バンク63とを覆うようにOC層65を形成する。OC層65の材料としては、透明なアクリル系樹脂材料を用いることができる。形成方法としては、スピンコート法、オフセット印刷などの方法が挙げられる。OC層65は、着色層64が形成されたガラス基板61の表面の凹凸を緩和して、後にこの表面に膜付けされる電極66を平担化するために設けられている。また、電極66との密着性を確保するために、OC層65の上にさらにSiO2などの薄膜を形成してもよい。
【0084】
このようにして出来上がったカラーフィルタ60は、膜厚がほぼ一定な着色層64を有する。またこのカラーフィルタ60を用いて液晶表示装置80を製造すれば、各着色層64R,64G,64Bの断面形状と膜厚がほぼ一定であるため、着色層64の膜厚ムラによる色ムラが少ない、見映えのよい表示品質が得られる。
【0085】
上記実施形態2の効果は、以下の通りである。
(1)上記実施形態2の液状体の吐出方法は、着色領域Dの長手方向に対してノズル列22a,22bが平行となるように液滴吐出ヘッド20とワークWとを対向配置し、異なる間隔のうち狭い方の間隔で隣り合うノズル22から吐出された液滴Lが、着弾後に部分的に繋がるように吐出する。主走査方向から見て複数のノズル22が副走査方向に等間隔で配置された場合、ワークWに着弾した隣り合う液滴Lは、ワークWの表面状態や吐出量のバラツキによって、部分的に孤立することがある。また、副走査方向において隣り合う液滴同士がいずれの液滴Lと合体するかは一定となり難いので、吐出ムラとなる惧れがある。上記液状体の吐出方法によれば、副走査方向(X方向)に狭い方の間隔で隣り合うノズル22から吐出された液滴同士が合体するので、副走査方向に液滴Lの着弾密度を上げるように副走査と主走査を行う回数を低減することができる。また、少なくとも1回の主走査により着色領域Dの長手方向に複数の液滴Lを着弾させ、該長手方向に液状体をムラなく吐出することができる。
【0086】
(2)上記実施形態2のカラーフィルタ60の製造方法は、着色層形成工程において、着色層形成材料を含む3種の液状体を上記液状体の吐出方法を用いて、対応する着色領域Dに付与する。したがって、吐出ムラが低減され、乾燥工程で固定化すると、膜厚がほぼ一定な着色層64を形成することができる。すなわち、吐出ムラによる色ムラ等の不良が低減され歩留まりよくカラーフィルタ60を製造することができる。
【0087】
(3)上記実施形態2の液晶表示装置80は、一対の基板のうちカラーフィルタ60が上記カラーフィルタ60の製造方法を用いて製造されているので、色ムラ等の不具合が少ない高い表示品質を有する液晶表示装置80を提供することができる。
【0088】
(実施形態3)
本実施形態は、複数の有機EL発光素子が形成された基板と、該基板を封止する封止基板とを備えた電気光学装置としての有機EL表示装置および有機EL発光素子の製造方法を例に説明する。
【0089】
<有機EL表示装置>
図10は、有機EL表示装置の要部構造を示す概略断面図である。図10に示すように、本実施形態の電気光学装置としての有機EL表示装置100は、発光素子部117を有する基板101と、基板101と空間120を隔てて封着された封止基板119とを備えている。また基板101は、素子基板102上に回路素子部103を備えており、発光素子部117は、回路素子部103上に重畳して形成され、回路素子部103により駆動されるものである。発光素子部117には、3色の有機発光層117R,117G,117Bがそれぞれの区画領域Aに形成され、ストライプ状となっている。基板101は、3色の有機発光層117R,117G,117Bに対応する3つの区画領域Aを1組の絵素とし、この絵素が素子基板102の回路素子部103上にマトリクス状に配置されたものである。本実施形態の有機EL表示装置100は、発光素子部117からの発光が素子基板102側に出射するものである。
【0090】
封止基板119は、ガラス又は金属からなるもので、封止樹脂を介して基板101に接合されており、封止された内側の表面には、ゲッター剤119aが貼り付けられている。ゲッター剤119aは、基板101と封止基板119との間の空間120に侵入した水又は酸素を吸収して、発光素子部117が侵入した水又は酸素によって劣化することを防ぐものである。なお、このゲッター剤119aは省略しても良い。
【0091】
基板101は、素子基板102の回路素子部103上に複数の区画領域Aを有するものであって、複数の区画領域Aを区画すると共に、壁面に段差を有するバンクとしての二層バンク113と、複数の区画領域Aに形成された電極112と、電極112に積層された正孔注入輸送層116とを備えている。また複数の区画領域A内に発光層形成材料を含む3種の液状体を付与して形成された有機発光層117R,117G,117Bを有する発光素子部117を備えている。二層バンク113は、下層バンク114と区画領域Aを実質的に区画する上層バンク115とからなり、下層バンク114は、区画領域Aの内側に張り出すように設けられて、二層バンク113の壁面に段差を形成している。
【0092】
素子基板102は、例えばガラス等の透明な基板からなり、素子基板102上にシリコン酸化膜からなる下地保護膜102aが形成され、この下地保護膜102a上に多結晶シリコンからなる島状の半導体膜104が形成されている。尚、半導体膜104には、ソース領域104a及びドレイン領域104bが高濃度Pイオン打ち込みにより形成されている。なお、Pイオンが導入されなかった部分がチャネル領域104cとなっている。さらに下地保護膜102a及び半導体膜104を覆う透明なゲート絶縁膜105が形成され、ゲート絶縁膜105上にはAl、Mo、Ta、Ti、W等からなるゲート電極106が形成され、ゲート電極106及びゲート絶縁膜105上には透明な第1層間絶縁膜107と第2層間絶縁膜108が形成されている。ゲート電極106は半導体膜104のチャネル領域104cに対応する位置に設けられている。また、第1層間絶縁膜107および第2層間絶縁膜108を貫通して、半導体膜104のソース領域104a、ドレイン領域104bにそれぞれ接続されるコンタクトホール109,110が形成されている。そして、第2層間絶縁膜108上に、ITO(Indium Tin Oxide)等からなる透明な電極112が所定の形状にパターニングされて配置され(電極形成工程)、一方のコンタクトホール109がこの電極112に接続されている。また、もう一方のコンタクトホール110が電源線111に接続されている。このようにして、回路素子部103には、各電極112に接続された駆動用の薄膜トランジスタ103aが形成されている。尚、回路素子部103には、保持容量とスイッチング用の薄膜トランジスタも形成されているが、図10ではこれらの図示を省略している。
【0093】
発光素子部117は、陽極としての電極112と、電極112上に順次積層された正孔注入輸送層116、各有機発光層117R,117G,117Bと、上層バンク115と各有機発光層117R,117G,117Bとを覆うように積層された陰極118とを備えている。この場合、機能層は、正孔注入輸送層116とこれに積層された有機発光層117R,117G,117Bとを含む。なお、陰極118と封止基板119およびゲッター剤119aを透明な材料で構成すれば、封止基板119側から発光する光を出射させることができる。
【0094】
有機EL表示装置100は、ゲート電極106に接続された走査線(図示省略)とソース領域104aに接続された信号線(図示省略)とを有し、走査線に伝わった走査信号によりスイッチング用の薄膜トランジスタ(図示省略)がオンになると、そのときの信号線の電位が保持容量に保持され、該保持容量の状態に応じて、駆動用の薄膜トランジスタ103aのオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用の薄膜トランジスタ103aのチャネル領域104cを介して、電源線111から電極112に電流が流れ、更に正孔注入輸送層116と各有機発光層117R,117G,117Bとを介して陰極118に電流が流れる。各有機発光層117R,117G,117Bは、これを流れる電流量に応じて発光する。有機EL表示装置100は、このような発光素子部117の発光メカニズムにより、所望の文字や画像などを表示することができる。また有機EL発光素子を複数備えた発光素子部117は、後述する有機EL発光素子の製造方法を用いて製造されており、各有機発光層117R,117G,117Bの膜厚がほぼ一定であるため、膜厚が不均一による発光ムラ、輝度ムラ等の不具合の少ない高い表示品質を有している。
【0095】
<有機EL発光素子の製造方法>
次に有機EL発光素子の製造方法について図11および図12に基づいて説明する。図11は有機EL発光素子の製造方法を示すフローチャート、図12(a)〜(g)は有機EL発光素子の製造方法を示す概略断面図である。なお図12(a)〜(g)においては、素子基板102上に形成された回路素子部103は、図示を省略している。
【0096】
図11に示すように、本実施形態の有機EL発光素子の製造方法は、素子基板102に下層バンク114を形成する下層バンク形成工程(ステップS11)と、下層バンク114上に上層バンク115を形成する上層バンク形成工程(ステップS12)とを備えている。また上層バンク115で区画された区画領域Aの表面処理を行う工程(ステップS13)と、表面処理された区画領域Aに正孔注入輸送層116を形成する工程(ステップS14)とを備えている。そして、正孔注入輸送層116が形成された区画領域Aに、発光層形成材料を含む3種の液状体を付与して、各有機発光層117R,117G,117Bを形成する発光層形成工程(ステップS15)とを備えている。さらに、上層バンク115と各有機発光層117R,117G,117Bを覆うように陰極118を形成する工程(ステップS16)を備えている。
【0097】
図11のステップS11は、下層バンク形成工程である。ステップS11では、図12(a)に示すように素子基板102の複数の電極112の一部を覆うように下層バンク114を形成する。下層バンク114の材料としては、無機材料である絶縁性のSiO2(酸化珪素)等を用いる。下層バンク114の形成方法としては、例えば、後に形成される各有機発光層117R,117G,117Bに対応して、各電極112の表面をそれぞれレジスト等を用いてマスキングする。そして、マスキングされた素子基板102を真空装置に投入し、SiO2をターゲットあるいは原料としてスパッタリングや真空蒸着することにより下層バンク114を形成する方法が挙げられる。なお、下層バンク114は、SiO2により形成されているため、その膜厚が200nm以下であれば十分な透明性を有しており、後に正孔注入輸送層116および有機発光層117R,117G,117Bが積層されても発光を阻害することはない。また、後に陰極118が積層されても陰極118と電極112とが直接に短絡することを防ぐことができる。そしてステップS12へ進む。
【0098】
図11のステップS12は、上層バンク形成工程である。ステップS12では、図12(b)に示すように、各区画領域Aを実質的に区画すると共に、下層バンク114が区画領域Aの内側に張り出すように、下層バンク114の上に上層バンク115を形成する。上層バンク115の材料としては、アクリル系の感光性樹脂材料を用いることができる。上層バンク115の形成方法としては、例えば、下層バンク114が形成された素子基板102の表面に感光性樹脂材料をロールコート法やスピンコート法で塗布し、乾燥させて厚みがおよそ2μmの感光性樹脂層を形成する。そして、区画領域Aに対応した大きさで開口部が設けられたマスクを素子基板102と所定の位置で対向させて露光・現像することにより、上層バンク115を形成する方法が挙げられる。そして、ステップS13へ進む。
【0099】
図11のステップS13は、区画領域Aを表面処理する工程である。ステップS13では、二層バンク113が形成された素子基板102の表面を、まずO2ガスを処理ガスとしてプラズマ処理する。これにより電極112の表面、下層バンク114の張り出し部および上層バンク115の表面(壁面を含む)を活性化させて親液処理する。つぎにCF4等のフッ素系ガスを処理ガスとしてプラズマ処理する。これにより有機材料である感光性樹脂からなる上層バンク115の表面のみにフッ素系ガスが反応して撥液処理される。そして、ステップS14へ進む。
【0100】
図11のステップS14は、正孔注入輸送層形成工程である。ステップS14では、図12(c)に示すように、正孔注入輸送層形成材料を含む液状体130を区画領域Aに付与する。液状体130を付与する方法としては、液状体130を液滴として吐出可能な液滴吐出ヘッド20を備えた液滴吐出装置10を用いる。また、実施形態2の液状体の吐出方法に基づいて液状体130を複数のノズル22から吐出する。
【0101】
図12(c)に示すように液滴吐出ヘッド20から吐出された液状体130は、液滴として素子基板102の電極112に着弾して濡れ拡がる。液状体130は区画領域Aの面積に応じて必要量が液滴として吐出され表面張力で盛り上がった状態となる。そして図12(d)に示すように、素子基板102を例えばランプアニール等の方法で加熱することにより、液状体130の溶媒成分を乾燥させて除去し、電極112の二層バンク113の段差により区画された領域に正孔注入輸送層116が形成される。本実施形態では、正孔注入輸送層形成材料としてPEDOT(Polyethylene Dioxy Thiophene;ポリエチレンジオキシチオフェン)を用いた。尚、この場合、各区画領域Aに同一材料からなる正孔注入輸送層116を形成したが、後の有機発光層の形成材料に対応して正孔注入輸送層の材料を区画領域Aごとに変えてもよい。また、上記液状体の吐出方法によらず、蒸着法等により正孔注入輸送層116を形成してもよい。そしてステップS15へ進む。
【0102】
図11のステップS15は、発光層形成工程である。ステップS15では、図12(e)に示すように、複数の区画領域Aに発光層形成材料を含む3種の液状体141,142,143を付与する。液状体141,142,143を付与する方法としては、先のステップS14と同様にして、液滴吐出装置10を用い液滴吐出ヘッド20に各液状体141,142,143を充填して、それぞれ液滴として対応する区画領域Aに着弾させる。液状体141は有機発光層117R(赤色)を形成する材料を含み、液状体142は有機発光層117G(緑色)を形成する材料を含み、液状体143は有機発光層117B(青色)を形成する材料を含んでいる。着弾した各液状体141,142,143は、区画領域Aに濡れ拡がって断面形状が円弧状に盛り上がる。そして、図12(f)に示すように、付与された各液状体141,142,143を減圧乾燥法により一括乾燥すると、より濡れ性がよい張り出し部まで濡れ拡がった状態を維持しながら乾燥され、膜厚がほぼ一定な各有機発光層117R,117G,117Bが形成される。そして、ステップS16へ進む。
【0103】
図11のステップS16は、陰極形成工程である。ステップS16では、図12(g)に示すように、素子基板102の各有機発光層117R,117G,117Bと上層バンク115の表面とを覆うように陰極118を形成する。陰極118の材料としては、Ca、Ba、Al等の金属やLiF等のフッ化物を組み合わせて用いるのが好ましい。特に有機発光層117R,117G,117Bに近い側に仕事関数が小さいCa、Ba、LiFの膜を形成し、遠い側に仕事関数が大きいAl等の膜を形成するのが好ましい。また、陰極118の上にSiO2、SiN等の保護層を積層してもよい。このようにすれば、陰極118の酸化を防止することができる。陰極118の形成方法としては、蒸着法、スパッタ法、CVD法等が挙げられる。特に有機発光層117R,117G,117Bの熱による損傷を防止できるという点では、蒸着法が好ましい。
【0104】
このようにして出来上がった発光素子部117は、上記実施形態2の液状体の吐出方法を用いているので、膜厚がほぼ一定な各有機発光層117R,117G,117Bを有する。このような発光素子部117を備えた基板101を用いて有機EL表示装置100を製造すれば、各有機発光層117R,117G,117Bの膜厚がほぼ一定であるため、抵抗がほぼ一定となる。すなわち回路素子部103により発光素子部117に駆動電圧を印加して発光させると、各有機発光層117R,117G,117Bごとの抵抗ムラによる発光ムラや輝度ムラ等が少ない、見映えのよい表示品質が得られる。
【0105】
上記実施形態3の効果は、以下の通りである。
(1)上記実施形態3の有機EL発光素子の製造方法は、上記実施形態2の液状体の吐出方法を用いて、発光層形成材料を含む3種の液状体を区画領域Aに付与する。したがって、吐出ムラが低減され、乾燥して固定化すると、膜厚がほぼ一定な有機発光層117R,117G,117Bを形成することができる。すなわち、吐出ムラによる発光ムラ等の不良が低減され歩留まりよく発光素子部117を製造することができる。
【0106】
(2)上記実施形態3の有機EL表示装置100は、基板101の発光素子部117が上記有機EL発光素子の製造方法を用いて製造されているので、発光ムラ等の不具合が少ない高い表示品質を有する有機EL表示装置100を提供することができる。
【0107】
(実施形態4)
次に実施形態2の液晶表示装置または実施形態3の有機EL表示装置を搭載した電子機器の具体例について説明する。図13は電子機器としての携帯電話機を示す概略斜視図である。
【0108】
図13に示すように、本実施形態の電子機器としての携帯電話機1000は、数字や文字の入力が可能な本体1002と、本体1002に対して折りたたみ可能な状態に取り付けられた表示部1001とを有している。表示部1001には、液晶表示装置80または有機EL表示装置100が搭載されている。
【0109】
上記実施形態4の効果は、以下の通りである。
(1)上記実施形態4の電子機器としての携帯電話機1000は、実施形態2の液晶表示装置80または実施形態3の有機EL表示装置100を搭載しているため、色ムラや発光ムラ等の不具合の少ない、高い表示品質で文字や画像等の情報を確認することが可能な携帯電話機1000を提供することができる。
【0110】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。例えば上記実施形態以外の変形例は、以下の通りである。
【0111】
(変形例1)実施形態1の液滴吐出ヘッド20における複数のノズル22の配置は、これに限定されない。図14は、変形例の液滴吐出ヘッドを示す概略図である。同図(a)は斜視図、同図(b)は概略断面図である。例えば、図14(a)に示すように、変形例の液滴吐出ヘッド30は、ノズルプレート31に1列のノズル列32aを有し、ノズルa1とノズルa2の間隔P4がノズルa2とノズルa3の間隔P5よりも狭くなるように不等間隔で配置されている。また、図14(b)に示すように、液滴吐出ヘッド30は、ノズルプレート31と、液状体流路を構成する区画部33と、振動板34とによって複数の圧力発生室35が構成されている。また、複数の圧力発生室35に対応したピエゾ39を有している。ピエゾ39は、圧電体37と上電極38を有し、振動板34に形成された下電極36と上電極38との間に駆動電圧が印加されると振動板34を変形させて圧力発生室35に充填された液状体を液滴としてノズル32から吐出することができる。ノズルa1〜a3を配置する方法としては、圧力発生室35の幅Cに対応して、例えば、a1とa3を幅Cのほぼ中央に位置するように形成する。ノズルa2は、幅Cの中央からそれたノズルa1に近い位置に形成する。このようにすれば、複数のノズル32を不等間隔で配置することができる。この状態では、間隔P4はノズル32の直径よりも大きいが、よりノズルa1とノズルa2とを近接させる方法としては、主走査方向に対してノズル列32aが交差するように傾斜させることで実質的に近接させた状態とすることができる。また、液滴吐出ヘッドのノズル列が3つ以上ならば、少なくとも1つのノズル列が複数のノズルが異なる間隔で交互に配置された状態、例えば上記液滴吐出ヘッド30のノズル列32aであればよい。さらには、略等間隔で配置された複数のノズルを有する液滴吐出ヘッドを図4に示したキャリッジ1aに、主走査方向(Y方向)から見て複数のノズルが異なる間隔で交互に配置されるようにY方向に配列させると共に、X方向にずらして複数配置してもよい。
【0112】
(変形例2)上記実施形態2の液状体の吐出方法を適用可能な薄膜を有するデバイスの製造方法は、カラーフィルタ60の着色層64や有機EL発光素子の正孔注入輸送層116、有機発光層117R,117G,117Bの形成方法に限定されない。例えば、液晶表示装置80の配向膜の形成方法、有機EL表示装置100の薄膜トランジスタ103aに接続される金属配線等の形成方法にも適用可能である。
【0113】
(変形例3)上記実施形態2のカラーフィルタ60の着色層64R,64G,64Bの配置は、ストライプ状に限定されない。例えば、同一色の着色層64が斜め方向に配置されたモザイク状、三角形の頂点の位置に配置されたデルタ状でも、本発明の液状体の吐出方法を適用することができる。なお、上記実施形態3の有機EL表示装置100の有機発光層117R,117G,117Bの配置においても同様である。
【0114】
(変形例4)上記実施形態2の液状体の吐出方法は、着色領域Dの長手方向に対してノズル列22a,22bが平行になる所謂横描画方法であるが、着色領域Dの短手方向に対してノズル列22a,22bが平行になる所謂縦描画方法においても適用可能である。
【0115】
(変形例5)上記実施形態3の有機EL表示装置100の封止基板119は必ずしも必要としない。例えば、基板101の発光素子部117を覆うように遮光性を有する樹脂等からなる封着剤によって封止してもよい。
【0116】
(変形例6)上記実施形態2の液晶表示装置80または上記実施形態3の有機EL表示装置100を搭載した電子機器としては、実施形態4の携帯電話機1000に限定されない。例えば、PDA(Personal Digital Assistants)と呼ばれる携帯型情報機器や携帯端末機器、携帯型パーソナルコンピュータ、ワープロ、デジタルスチルカメラ、車載用モニタ、デジタルビデオカメラ、液晶テレビ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワークステーション、テレビ電話機、POS端末機等、電気光学装置である液晶表示装置や有機EL表示装置を用いる機器が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】液滴吐出装置を示す概略斜視図。
【図2】液滴吐出ヘッドの要部構造を示す概略斜視図。
【図3】液滴吐出ヘッドを示す斜視図。
【図4】液滴吐出ヘッドの配置を示す概略平面図。
【図5】制御部および制御部に関連する各部との電気的な構成を示すブロック図。
【図6】液晶表示装置の要部構造を示す概略断面図。
【図7】カラーフィルタの製造方法を示すフローチャート。
【図8】(a)〜(e)はカラーフィルタの製造方法を示す概略断面図。
【図9】(a)〜(e)は液状体の吐出方法を示す概略平面図。
【図10】有機EL表示装置の要部構造を示す概略断面図。
【図11】有機EL発光素子の製造方法を示すフローチャート。
【図12】(a)〜(g)は有機EL発光素子の製造方法を示す概略断面図。
【図13】携帯電話機を示す概略斜視図。
【図14】(a)は変形例の液滴吐出ヘッドを示す斜視図、(b)は変形例の液滴吐出ヘッドの構造を示す概略断面図。
【符号の説明】
【0118】
10…液滴吐出装置、20,30…液滴吐出ヘッド、22,32…ノズル、22a,22b,32a…ノズル列、51,52,53…着色層形成材料を含む液状体、60…カラーフィルタ、61…基板としてのガラス基板、64,64R,64G,64B…着色層、67…一対の基板としての対向基板、70…液晶、80…液晶表示装置、100…有機EL表示装置、101…基板、117…有機EL発光素子が複数形成された発光素子部、117R,117G,117B…有機発光層、119…封止基板、1000…電子機器としての携帯電話機、A…区画領域、D…区画領域としての着色領域、P2,P4…狭い方の間隔、W…ワーク。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填された液状体を液滴として吐出可能な液滴吐出ヘッドであって、
複数のノズルからなるノズル列を備え、
前記ノズル列に対して直交する方向から見たときに、前記複数のノズルが異なる間隔で交互に配置されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項2】
前記複数のノズルが略等間隔で配置されたノズル列を少なくとも2つ備え、
前記ノズル列に対して直交する方向から見たときに、前記複数のノズルが異なる間隔で交互に配列するように、一方の前記ノズル列に対して他方の前記ノズル列がずれて配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項3】
3つ以上の前記ノズル列を備え、
少なくとも1つのノズル列は、前記複数のノズルが異なる間隔で交互に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項4】
前記複数のノズルの異なる間隔において、狭い方の間隔は、前記ノズルの直径に対して3分の2以上1未満の長さであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項5】
複数のノズルからなるノズル列を有し、前記ノズル列に対して直交する方向から見たときに、前記複数のノズルが異なる間隔で交互に配置された液滴吐出ヘッドと、
前記液滴吐出ヘッドとワークとを対向させて相対移動させる移動手段とを備え、
前記移動手段による相対移動に同期して、前記液滴吐出ヘッドの前記複数のノズルから液状体を液滴としてワークに吐出することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の液滴吐出装置を用い、液滴吐出ヘッドとワークとを対向させた状態で相対移動させる走査を行って、ワーク上の複数の区画領域に液状体を液滴として吐出する吐出方法であって、
少なくとも1回の前記走査では、前記液滴吐出ヘッドの複数のノズルから1つの前記区画領域に複数の液滴が着弾するように吐出し、前記異なる間隔のうち狭い方の間隔で隣り合う前記ノズルから吐出された液滴が部分的に繋がるように吐出することを特徴とする液状体の吐出方法。
【請求項7】
前記液滴吐出ヘッドの前記ノズル列が前記区画領域の長手方向に対して略平行または傾斜するように対向配置され、前記液状体を前記複数のノズルから液滴として吐出することを特徴とする請求項6に記載の液状体の吐出方法。
【請求項8】
ワークと、ワーク上の複数の区画領域に形成された薄膜とを有するデバイスの製造方法であって、
請求項6または7に記載の液状体の吐出方法を用い、薄膜形成材料を含む液状体を前記複数の区画領域に吐出して乾燥することにより前記薄膜を形成することを特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項9】
基板と、基板上の複数の区画領域に形成された複数色の着色層とを有するカラーフィルタの製造方法であって、
請求項6または7に記載の液状体の吐出方法を用い、異なる着色層形成材料を含む複数種の液状体を前記複数の区画領域に吐出して乾燥することにより前記複数色の着色層を形成することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項10】
基板と、基板上の複数の区画領域に形成された有機発光層を含む機能層とを有する有機EL発光素子の製造方法であって、
請求項6または7に記載の液状体の吐出方法を用い、発光層形成材料を含む液状体を前記複数の区画領域に吐出して乾燥することにより前記有機発光層を形成することを特徴とする有機EL発光素子の製造方法。
【請求項11】
一対の基板と、
前記一対の基板により挟持された電気光学材料としての液晶とを備え、
前記一対の基板のうちの一方が請求項9に記載のカラーフィルタの製造方法によって製造されたことを特徴とする電気光学装置。
【請求項12】
複数の有機EL発光素子が形成された基板と前記基板を封止する封止基板とを備えた電気光学装置であって、
前記有機EL発光素子が、請求項10に記載の有機EL発光素子の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする電気光学装置。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載の電気光学装置が搭載されたことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
充填された液状体を液滴として吐出可能な液滴吐出ヘッドであって、
複数のノズルからなるノズル列を備え、
前記ノズル列に対して直交する方向から見たときに、前記複数のノズルが異なる間隔で交互に配置されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項2】
前記複数のノズルが略等間隔で配置されたノズル列を少なくとも2つ備え、
前記ノズル列に対して直交する方向から見たときに、前記複数のノズルが異なる間隔で交互に配列するように、一方の前記ノズル列に対して他方の前記ノズル列がずれて配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項3】
3つ以上の前記ノズル列を備え、
少なくとも1つのノズル列は、前記複数のノズルが異なる間隔で交互に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項4】
前記複数のノズルの異なる間隔において、狭い方の間隔は、前記ノズルの直径に対して3分の2以上1未満の長さであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項5】
複数のノズルからなるノズル列を有し、前記ノズル列に対して直交する方向から見たときに、前記複数のノズルが異なる間隔で交互に配置された液滴吐出ヘッドと、
前記液滴吐出ヘッドとワークとを対向させて相対移動させる移動手段とを備え、
前記移動手段による相対移動に同期して、前記液滴吐出ヘッドの前記複数のノズルから液状体を液滴としてワークに吐出することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の液滴吐出装置を用い、液滴吐出ヘッドとワークとを対向させた状態で相対移動させる走査を行って、ワーク上の複数の区画領域に液状体を液滴として吐出する吐出方法であって、
少なくとも1回の前記走査では、前記液滴吐出ヘッドの複数のノズルから1つの前記区画領域に複数の液滴が着弾するように吐出し、前記異なる間隔のうち狭い方の間隔で隣り合う前記ノズルから吐出された液滴が部分的に繋がるように吐出することを特徴とする液状体の吐出方法。
【請求項7】
前記液滴吐出ヘッドの前記ノズル列が前記区画領域の長手方向に対して略平行または傾斜するように対向配置され、前記液状体を前記複数のノズルから液滴として吐出することを特徴とする請求項6に記載の液状体の吐出方法。
【請求項8】
ワークと、ワーク上の複数の区画領域に形成された薄膜とを有するデバイスの製造方法であって、
請求項6または7に記載の液状体の吐出方法を用い、薄膜形成材料を含む液状体を前記複数の区画領域に吐出して乾燥することにより前記薄膜を形成することを特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項9】
基板と、基板上の複数の区画領域に形成された複数色の着色層とを有するカラーフィルタの製造方法であって、
請求項6または7に記載の液状体の吐出方法を用い、異なる着色層形成材料を含む複数種の液状体を前記複数の区画領域に吐出して乾燥することにより前記複数色の着色層を形成することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項10】
基板と、基板上の複数の区画領域に形成された有機発光層を含む機能層とを有する有機EL発光素子の製造方法であって、
請求項6または7に記載の液状体の吐出方法を用い、発光層形成材料を含む液状体を前記複数の区画領域に吐出して乾燥することにより前記有機発光層を形成することを特徴とする有機EL発光素子の製造方法。
【請求項11】
一対の基板と、
前記一対の基板により挟持された電気光学材料としての液晶とを備え、
前記一対の基板のうちの一方が請求項9に記載のカラーフィルタの製造方法によって製造されたことを特徴とする電気光学装置。
【請求項12】
複数の有機EL発光素子が形成された基板と前記基板を封止する封止基板とを備えた電気光学装置であって、
前記有機EL発光素子が、請求項10に記載の有機EL発光素子の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする電気光学装置。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載の電気光学装置が搭載されたことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−185603(P2007−185603A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−5771(P2006−5771)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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