説明

液滴測定方法

【課題】基板上の所定の位置に所望の量の機能液の液滴が吐出されたか否かを特定することが可能な液滴測定方法を提供する。
【解決手段】照明装置13による照明光Rの照射が停止(光源の消灯)後、所定の時間後に撮影が行われる様にした。そして、照射光Rを照射した液滴L全体の発光の画像を、撮像装置12によって撮影するようにした。そして、その画像データを処理することで液滴Lの液滴量を算出するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」という)素子を用いた有機ELパネルが、軽量、高輝度、高視野角、高コントラスト比で他の表示装置より優れているとして注目されている。こうした有機ELパネルを用いた有機EL表示装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の有機EL表示装置の製造方法においては、EL材料を所定の溶媒に分散または溶解させて液滴化(インク化)し、その液滴を複数のノズルを備えた吐出ヘッドの各ノズルから吐出することで、基板上に液状パターンを形成し、その後、液状パターン中の溶媒を除去してEL材料からなる機能膜を形成するようにした、所謂液滴吐出法がある。この液滴吐出法では、必要な量のEL材料を溶媒に分散または溶解させて使用するので、蒸着法やスパッタ法に比べてEL材料の利用効率を向上させることができるという利点がある。
【特許文献1】特開2002−222695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、液滴吐出法では、形成される機能膜の膜厚にばらつきが生じてしまうことがある。機能膜の膜厚(発光層の膜厚)は、発光輝度に直接関係するので、機能膜の膜厚にばらつきがあると、輝度ムラといった問題が生じてしまう。この主な原因としては、前記吐出ヘッドの各ノズルの形状ばらつきノズルの濡れの状態等に起因した、前記液滴の吐出量のばらつきが考えられる。
【0005】
そこで、各ノズルから吐出された液滴量を測定し、その吐出量に基づいて、各ノズル毎に設けられた、液滴の吐出を駆動制御する駆動制御機構をフィードバック制御することで、ノズル毎に液滴の吐出量を補正するものがある。具体的には、特定のノズルから前記液滴を吐出させて、その飛翔時の様子をカメラで撮影する。そして、その撮影結果から、前記液滴の大きさや速度を算出して前記液滴の吐出量を算出する方法が知られている。また、特定のノズルから前記液滴を複数回吐出させて、その液滴の重量を測定し、その測定値を吐出回数で割り算して前記液滴の平均吐出量を算出する方法が知られている。しかし、上記各ノズルからの液滴量の測定方法では、何れも、正確に液滴量の吐出量を測定できなかった。また、測定装置が複雑で、測定に時間がかかり、吐出装置を短時間で調整することが難しかった。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、従来とは異なった方法で、基板上に所定の位置に所望の量の機能液の液滴が吐出されたか否かを特定することが可能な液滴測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液滴量測定方法は、基板上に配置された液滴に所定の波長領域の光を照射し、前記液滴の特定波長領域の発光を測定することにより前記液滴の液滴量を測定する。
これによれば、液滴に含まれる溶媒或いは溶質中に、蛍光或いは燐光等を発する性質の物質が含まれる場合、その物質を励起する波長領域の光を照射することでその液滴を発光させることができる。蛍光或いは燐光等による発光強度は、液滴中に含まれるその物質の
量に依存するため、蛍光或いは燐光等の波長領域に相当する所定の波長領域の発光を測定することで液滴中のその物質の量を測定することができる。液滴中に含まれるその物質の量は、ほぼ一定の割合であるため液滴の量を測定することができる。
【0008】
この液滴量測定方法において、前記液滴の特定波長領域の発光の画像を撮影し、前記液滴の液滴量を測定してもよい。
これによれば、基板上に配置された液滴は、2次元状の広がりを持っている。このため、特定の位置の発光強度のみを測定しても、液滴の量を決定することは難しい。また、複数の点の発光強度を個別に測定すると、測定時間が長くなる。液滴全体の発光の画像を撮影し、その画像データを処理することで液滴量を算出すれば、短時間で効率的に液滴量の測定を行うことができる。
【0009】
この液滴量測定方法において、前記撮影した画像の、前記液滴が存在する領域の発光のピーク強度により前記液滴量を算出するようにしてもよい。
これによれば、配置された液滴の大きさ、形状がほぼ一定である場合、基板上での液滴の最大の高さは液滴の量に依存した量となる。蛍光或いは燐光等による発光の強度は、基板上での液滴の高さに依存するため、ピーク強度を測定することで、液滴の最大高さを求めることができる。従ってその高さより液滴の量を求めることができる。この様に発光のピーク強度を用いることにより、簡単な計算で液滴の量を求めることができる。
【0010】
この液滴測定方法において、前記撮影した画像の、前記液滴が存在する領域の発光のピーク強度により前記液滴量を算出するようにしてもよい。
これによれば、蛍光或いは燐光による発光の強度は、基板上での液滴の高さに依存するため、ある位置での発光強度はその位置での液滴の高さに依存した量となる。液滴を撮像した画像で、液滴は配置された領域を複数の微小領域、例えば画素毎に分割し、それぞれの平均の発光強度を求める。求められた平均の発光強度からその微小領域の液滴の基板からの高さを求めることができる。各微小領域の面積と、それぞれの高さを掛け合わせ、それらの値を積算することで液滴の量を求めることができる。液滴の存在する領域全体で積算することにより、液滴の形状のばらつきが大きい場合でも高い精度で液滴の量を求めることができる。
【0011】
本発明の液滴測定方法は、基板上に配置された2つの液滴に所定の波長領域の光を照射し、前記2つの液滴の特定波長領域の発光を測定し、前記2つの液滴量の違いを検出する。
【0012】
この液滴測定方法において、前記2つの液滴の特定波長の発光の画像を撮影し、前記2つの液滴量の違いを検出するようにしてもよい。
この液滴測定方法において、前記撮影した画像の、前記2つの液滴が存在する領域のそれぞれの発光のピーク強度を比較することにより、前記2つの液滴量の違いを検出するようにしてもよい。
【0013】
この液滴測定方法において、前記撮影した画像の、前記2つの液滴が存在する領域の発光の信号強度を、それぞれの液滴が存在する面積に渡って積算することにより前記液滴量の違いを検出するようにしてもよい。
【0014】
これらによれば、基板上に複数の液滴を配置して行く場合、装置の状況等により液滴の量がばらつくことがある。例えば液滴吐出法を用いて液滴を配置する場合、ノズルのつまり、表面の濡れ等の影響によりノズルごとに吐出される液滴の量が変動したりする。この様な場合、異なるノズルから吐出された2つの液滴に所定の波長領域の光を照射し、それらの所定領域の波長の発光を測定し比較することで、いずれかのノズルから吐出される液
滴量が変動したことを検出することができる。発光の強度を液滴の量に換算する必要が無いため、短時間で効率的に配置される液滴の量の変動を検出することができる。また、それぞれの液滴全体の発光の画像を撮影し、その画像データを処理することで、効率的に検出を行うことができる。また、それぞれの液滴の発光のピーク強度を比較する方法を用いることで、データの処理がより簡便となる。また、それぞれの液滴が存在する領域の発光信号強度を、液滴が存在する面積に渡って積算した値を比較することで、液滴の形状のばらつきが大きい場合でも高い精度で液滴の量の違いを検出することができる。
【0015】
この液滴測定方法において、前記液滴が、機能性材料を溶媒に溶解または分散させたものであってもよい。
これによれば、液滴吐出法で機能性薄膜を形成しようとする場合、機能性材料を溶媒に溶解又は分散させた液状組成物を、塗布後乾燥させる方法が用いられる。本発明は、この様に液滴吐出法で機能性薄膜を形成しようとする場合、その膜厚や膜質の均一性を保つ上で有用である。
【0016】
この液滴測定方法は、前記溶媒が蛍光性を有する有機溶媒を含んでもよい。
これによれば、液滴吐出法に用いられるシクロヘキシルベンゼン、トリメチルベンゼン、キシレン等の有機溶媒には、所定の波長領域の光を照射することで蛍光を発光するものが多い。液滴吐出法に用いられる液状組成物は、溶媒に対する溶質の量は0.5%程度から数%であり、そのほとんどが溶媒である。配置される液滴中での組成比の高い溶媒の蛍光による発光を測定することで、S/Nの高い測定を行うことができる。また、機能性材料が、蛍光或いは燐光等を発光する性質を有していない場合であっても、液滴の測定を行うことができる。
【0017】
この液滴測定方法において、前記液滴に照射する光が波長350nm〜450nmの光であってもよい。
これによれば、液滴吐出法に使用できるに有機溶媒の多くは350nm以下の波長の光を殆ど透過しないものが多い。このため、350nm以下の波長の光を照射した場合、その殆どが液滴の表面付近で吸収されてしまうため、蛍光を発したとしても液滴の表面付近の組成物しか発光に寄与しない。このため、発光からは基板上からの液滴の高さに関する情報を得ることができない。照射する光として、350nm〜450nmの波長の光を用いることで、溶媒に吸収よる吸収の影響を抑えることができる。450nm以上の波長の光を照射した場合では、強い強度の蛍光や燐光等による発光を得ることが難しい。したがって、照射する光として350nm〜450nm波長の光を用いることで液滴量の測定に有効な発光を得ながら、照射する光を液滴の底の領域まで、届かせることができる。このため、S/N比の高く、精度の高い液滴量の測定を行うことができる。
【0018】
この液滴測定方法において、前記所定の波長領域の光を、前記基板の面に対して45°〜70°の角度で入射する様に照射し、前記基板の面対して垂直な方向に出射される光を測定してもよい。
【0019】
これによれば、液滴に照射する光を基板の面に対して70°以下とし、基板の面に対して垂直な方向に出射される光を測定することで、液滴による反射光或いは散乱光の影響を抑えながら測定を行うことができる。これにより測定する光の信号のS/N比が向上し、液滴量の測定精度を向上することができる。また、液滴に照射する光を基板の面に対し45°以上とすることで、効率良く液滴内部まで照射する光を入射させることができる。従って、高い強度の発光を得ることができる。
【0020】
この液滴測定方法において、前記所定の波長領域の光を照射終了後、一定時間経過後に前記液滴の発光を測定してもよい。
これによれば、液滴から発せられる蛍光或いは燐光に発光の波長領域が、液滴に照射する光の波長に等しいか大きく重なる場合、高いS/N比で発光の測定を行うことが難しい。この様な場合であっても、照明光の照射終了後、一定時間経過してから発光の測定を行うことで発光の測定のS/N比を高め、液滴量の測定の精度を向上することができる。この測定方法は散乱光の影響が大きな材料を含む液滴を測定する場合に、特に有効である。更には、測定しようと光が燐光である場合には、他の発光による影響を除き易いため、非常に有効である。
【0021】
照明光の照射終了後から、測定までの時間は、散乱等による照明光の影響が顕著な場合には、数μsから数百μsとすることが好ましい。また、測定しようとする光が燐光である場合には、照射終了後から測定するまでの時間を数百μs以上とすることが望ましい。
【0022】
この液滴測定方法において、前記液滴を前記基板上に配置後、一定時間の範囲内で、前記液滴量の測定を行うようにしてもよい。
これによれば、液滴に用いられている溶媒が例えばキシレンといった揮発性の高い溶媒である場合、基板上に液滴が配置されてから急速に液滴中から溶媒が蒸発して行く。それに伴って、液滴量も変化してしまう。液滴を配置してから、測定を行う時間を一定の範囲とすることで、この様な溶媒の蒸発による測定への影響を抑えることができる。測定を行うまでの時間のばらつきは1秒以下が望ましいが、2〜3秒程度の範囲であればある程度の精度は確保することができる。また、液滴を配置してから測定までの時間は、5秒以下とすることが望ましい。5秒以下であれば、液滴吐出法での成膜に用いられる殆どの溶媒に対して、実用的な精度で測定を行うことが可能である。
【0023】
この液滴測定方法は、前記液滴に所定の波長領域の光を照射する光源に発光ダイオードを用いてもよい。
これによれば、発光ダイオードは、簡単な構成でありながら比較的狭い波長領域の光を、高い輝度で照射することができる。このため、測定の精度を低下させることなく、測定系とくに照明系をコンパクトに構成することができる。更には高速で点灯、消灯することができるため、光を照射終了後、一定時間後に測定を行う場合に容易に対応することができる。
【0024】
この液滴測定方法において、前記機能性材料が発光材料、電荷輸送材料を含んでもよい。
この液滴測定方法において、前記液滴を液滴吐出法により配置してもよい。
【0025】
これらによれば、液滴吐出法で、発光材料や電荷輸送材料を用いたものの場合、安定して液滴を配置することが難しい。特に液低吐出法を用いる場合には、吐出が不安定となり易く、吐出量のばらつきが発生し易い。本発明は、この様なばらつきを即座に検出し、それによる不良の発生を防止しするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した各実施形態を、図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態における測定装置の構成の一例を示すものである。図1に示すように、測定装置10は、液滴吐出ヘッド11、撮像装置12、照明装置13を備えている。液滴吐出ヘッド11、撮像装置12、照明装置13は、同じキャリッジプレートCPに固定されており、基板Sに対して相対的に移動できる様に構成されている。液滴吐出ヘッド11は、液滴Lを吐出して基板S上に配置する。この液滴Lは、後述するように、機能材料を所定の溶媒に溶解または分散させてなる液状体であって、400nm〜450nmの波長領域の光(照射光R)が照射されるとその光を吸収して特定波長領域の光を発
光する性質を有する。測定装置10は、基板S上に液滴Lを配置後、配置した液滴Lが撮像装置12と対向する様にキャリッジプレートCPと基板Sとを相対的に移動させ、照明装置13より液滴Lに照射光Rを照射して、撮像装置12により液滴Lの映像を撮影するようになっている。
【0027】
撮像装置12は、CCD等の撮像素子(図示略)を有し、光学画像を電気信号に変換する機能を備えている。撮像装置12は、基板S上に配置された液滴Lを適当な大きさで撮影できる様な、たとえば数十倍から数百倍程度の適当な倍率の光学系12Aを備えている。また、撮像装置12は、特定波長の画像のみを撮影できる様にバンドパスフィルタ12Bを備えている。この様なバンドパスフィルタ12Bとしては、多層膜による干渉フィルタを用いることができる。測定する液滴の大小に対応するために、撮影倍率を光学的に変化させる機構を有していても良い。また、本発明の測定に適している観察(撮影)する光の波長領域は、測定する液滴Lの組成により異なる。このため、観察する光の波長領域を変化させるために、フィルタを切り替える機構や、透過する波長領域を可変とするフィルタ等を備える様にしても良い。本実施形態では、バンドパスフィルタ12Bとして、着色ガラスと多層膜干渉フィルタを組み合わせたものを使用し、540nm〜580nmの波長領域の光を透過するようにしている。
【0028】
照明装置13は、所定の強度で必要な波長領域の照射光Rを発生する光源13Aと、照射光Rを均一に液滴Lに照射するための光学系13B及び特定波長の照射光Rを照射するためのバンドパスフィルタ13Cを備えている。
【0029】
光源13Aには、ハロゲンランプ、放電灯、各種レーザ、発光ダイオード等を用いることが可能である。ハロゲンランプや、放電灯は発光の波長領域が広いため、フィルタ13Cとの組み合わせで照射光Rとして用いる光の波長領域を変化させることができる。各種レーザ及び発光ダイオードは、発光する波長の領域が狭く、照射光Rとして適当な波長領域が決まっている場合にはそれに合ったものを選ぶことで、コンパクトに照明装置13を構成することができる。特に半導体レーザや発光ダイオードは発光の制御が容易であり、照射光Rの照射と撮影のタイミングを制御する場合には有効である。また、光源13Aにハロゲンランプ等の点灯、消灯の制御が困難なものを用いる場合には、照射光Rを照射するタイミングを制御するためのシャッター機構を備えても良い。
【0030】
光学系13Bは、光源13Aから出た照射光Rをフライアイレンズや散乱板等を用いて、一定の範囲をほぼ均一な所定の光量で照明する様にしている。また、照射光Rをほぼ平行な光にして、光学系13Bから液滴Lまで距離が変わっても光量が変化しないようにしている。
【0031】
フィルタ13Cには多層膜による干渉フィルタやモノクロメータ等を用いることができる。それらにより光源13Aからの光を所定の波長領域に絞り込む様にしている。各種レーザや発光ダイオード等、発光する波長領域の狭い光源を用いる場合に、このフィルタを省略することも可能である。光源13Aとして、ハロゲンランプや放電灯等を用いる場合には、複数の多層の干渉フィルタを備えてそれらを切り替える様にしたり、透過する波長領域を可変とするフィルタを用いることで、異なる波長領域の光を照明に用いることができる。本発明の照射光Rとして適している波長領域は、測定する液滴Lの組成により異なっている。測定に適した波長領域を求めるために、照射光Rの波長領域を変えながら測定を行うのに有効である。この様に照射する光の波長領域を可変とする機構としては、回折格子の角度を変化させる機能を有するモノクロメータを用いることも可能である。
【0032】
本実施形態では、光源13Aとして発光ダイオードを、バンドパスフィルタ13Cとして着色ガラスと多層膜干渉フィルタを組み合わせたものを使用し、400nm〜450n
mの光を照射光Rとして照射する様にしている。
【0033】
また、照明装置13は、照射光Rが、液滴Lを配置した基板Sの面(素子形成面)Saに対してθ=50°の角度で液滴Lに入射する様に配置されている。本実施形態では、照射光Rが基板Sの面(素子形成面)Saに対してθ=50°の角度で入射する様にしたが、面Saに対してθ=45°〜70°程度の角度で入射する様にすればよい。これは、θ=30°以下の角度とすると、液滴L中に入射する照射光Rの量が少なくなり、液滴Lの発光量が低下し、測定のS/N比が低下する。また、液滴Lの凹凸による光の入射への影響が大きくなり、液滴L全体に均一に光が入射させるのが難しくなる。このため、液滴Lの発光が精度良く液滴量に依存しなくなり、測定の精度が低下する可能性がある。従って、基板Sの表面状態等の影響を見込んでθ=45°以上とするのが望ましい。また、θ=80°以上の角度θで入射させると、液滴L表面の散乱等の影響で基板Sの面Saに垂直な方向に反射する照射光Rの成分が急速に増加する。このため、照射光Rと観察(撮影)する光の波長領域が重なる或いは近接する場合、測定のS/N比が低下する可能性がある。従って、基板Sの表面状態等の影響を見込んでθ=70°以下の角度で入射させることが好ましい。ただし、照射光Rと観察する光の波長領域が大きく異なる場合には、θ=80°以上の角度で入射させても、精度良く測定することが可能である。
【0034】
液滴吐出ヘッド11は、一般的な液滴吐出法に用いられるものであり、インクジェットプルリンタ等に用いられるものと同様の構造を有している。必要に応じて、複数の吐出口(図示略)を有するものを用いることができる。
【0035】
液滴吐出ヘッド11より吐出する液滴Lとしては、ここでは機能性材料として、緑色(540nm〜600nm)の発光を有するポリフルオレン系高分子誘導体を、溶媒としてトリメチルベンゼンを用いたものを使用している。これらの機能性材料及び溶媒は、液滴吐出法で有機エレクトロルミネッセンス装置を作成するのに一般的に用いられるものである。本発明で使用する機能性材料としては、他にも有機エレクトロルミネッセンス装置の発光層の材料として知られるポリパラフェニレンビニレン誘導体やポリフェニ誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素等を上げることができる。また、有機エレクトロルミネッセンス装置の正孔注入層の材料として知られるポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体、ポリエチレンスルフォン酸(PSS)を用いることもできる。さらに、カラーフィルタ等に用いられる各種染料や顔料を用いることも可能である。溶媒としては、シクロヘキシルベンゼン、ジハドロベンゾフラン、テトラメチルベンゼン、トルエン、キシレン等各種の有機溶媒をあげることができる。また、水、イソプロピルアルコール、ノルマルブタノール等の極性溶媒を用いることも可能である。
【0036】
また、液滴Lは、その溶媒或いは溶質中に、光(照射光R)が照射されると励起されて光(蛍光或いは燐光等)を発する性質の物質(発光物質)が含まれている。本実施形態の液滴Lは、400nm〜450nmの波長領域の光(照射光R)が照射されると励起されて特定波長の光を発光する。従って、液滴Lに照射光Rが照射されると、その液滴Lは発光するが、その際に発光する光(蛍光或いは燐光等)の発光強度は、液滴L中に含まれる発光物質の量に依存することにより、蛍光或いは燐光等の波長領域に相当する所定の波長領域の発光を測定することで液滴L中の発光物質の量を測定することができる。この結果、液滴L中に含まれる発光物質の量は、ほぼ一定の割合であるため、測定される液滴L中の発光物質の量から液滴Lの量を見積もることができる。
【0037】
図2は、基板Sの面Sa上に配置された液滴Lの様子を模式的に示したものである。図2(a)は通常の照明で観察(撮影)した場合の液滴Lのパターンのイメージであり、図2(b)は所定の強度で特定の波長領域の光を照射し、特定の波長領域の発光を観察(撮
影)した場合の液滴Lのパターンのイメージである。
【0038】
図2(a)において、基板Sの面Sa上の液滴配置領域Z1は、液滴Lに対して親液性を有する様に処理されており、その周囲の撥液領域Z2は、液滴Lに対して撥液性を有する様に処理されている。測定する液滴Lは、基板S上の液滴配置領域Z1に、液滴吐出ヘッド11から吐出された1つ或いは複数の液滴Lが広がったものである。複数の液滴Lが同じ液滴配置領域Z1に配置された場合、それらは合体して一つの液滴Lとなって液滴配置領域Z1内に配置される。
【0039】
図2(b)において、液滴Lが配置される領域、即ち、液滴配置領域Z1は、発光領域として観察される。発光領域内部には、発光強度に分布が見られる。発光領域の中央部には最も強く発光する領域(強発光領域Z1a)が見られ、液滴配置領域Z1の周辺にいくに従い発光が徐々に弱くなり(中発光領域Z1b)、弱い発光領域(弱発光領域Z1c)となる。
【0040】
図3(a)は、図2(b)のA−Aの断面図であり、図3(b)はその発光強度の変化を示したものである。
図3(a)に示す様に、液滴Lは、基板Sの面Sa上に凸状に大きく盛り上がった形状となっている。液滴吐出法で成膜を行う場合、塗布の容易性を確保するために溶媒に対する溶質の比率をあまり高く出来ない。このため、所定の膜厚を確保しようとする場合、配置する液滴Lの液滴量が配置する面積に対して多くなるため、この様な形状となっている。この様な液滴Lの形状は、液滴Lを構成する材料の表面張力や撥液領域Z2の表面張力の関係によって決まることが知られている。このため、液滴Lを構成する材料や、撥液領域Z2の表面張力が一定である場合には再現性良くほぼ一定の形状となる。
【0041】
図3(b)に示す様に、液滴配置領域Z1内での発光強度は、液滴Lの厚さに依存して変化している。このため、液滴L全体に渡って発光強度を測定することで、液滴L全体の液体の量を求めることができる。液滴Lの厚さによる発光強度の変化は、液滴Lの厚さの変化より小さくなっている。これは、主に、照射光Rの強度が液滴Lに吸収されることにより、液滴Lの内部に侵入するほど低くなるためと考えられる。また、液滴Lの内部ほど、発光した光が液滴Lを構成する材料に吸収されることも影響していると考えられる。このため、発光強度と液滴Lの量の関係は、液滴Lの組成により異なるため予め実験的に求めておく。また、液滴Lを構成する材料に対する吸収係数がある程度小さい方が、液滴Lの厚みに対する発光の変化が大きくなり、精度の高い測定を行うことができる。このため、測定する液滴Lの組成により精度の高い測定ができる様な照射光Rの波長領域と、観察(撮影)する波長領域との組み合わせを実験的に見つけておくことが好ましい。
【0042】
本実施形態では、発光は主に発光材料によるものである。溶媒中の発光材料の比率は1%前後と低く、液滴L中での照射光Rの吸収はある程度低く抑えられている。このため、図3(b)に示すように、液滴Lの厚さに比例する関係に近い強度の発光が得られている。
【0043】
図4は、撮像装置12による液滴の撮影画像のイメージを示すものである。撮像装置12により撮影した画像は、2次元状に配置された複数の撮像画素20毎の電気信号の大きさとして変換される。図4において、斜線部は、液滴配置領域Z1を含まない(無発光領域)にある撮像画素20を表している。各撮像画素20からの信号は、無発光領域ではほぼ0に近い値(暗時信号)となり、液滴Lの発光領域を含む領域ではその平均の発光強度に相当する値となる。
【0044】
図5(a),(b)は、それぞれ、撮像装置12により取得した電気信号より、液滴L
の液滴量を求める手順を示したものである。
本実施形態では、図5(a)に示した液滴Lが配置されている基板S上の液滴Lが配置されている領域、即ち、液滴配置領域Z1の発光のピーク強度により液滴Lの液滴量を算出する方法を用いている。撮像装置12より得た電気信号より、まず液滴Lが配置されている領域を決定する(ステップS1−1a)。これには、一般的な画像処理での輪郭検出の手順が有効である。液滴Lが配置されている領域の端では、図3(b)に示す様に急激に信号強度が高くなるため、隣接する無発光領域の撮像画素20からの信号強度とは大きな差が生じる。このため、この差を計算し、一定値以上の値を有する箇所を求めることで、輪郭を検出することができる。輪郭に相当する撮像画素20及びその内側に相当する領域を、液滴Lが配置されている領域とすることができる。
【0045】
次に、液滴Lが配置されている領域内の信号強度を比較して行くことにより、その最大値(ピーク強度)を求める(ステップS1−2a)。この発光信号のピーク強度と、予め実験により求めておいた発光のピーク強度から液滴量を換算し、液滴配置領域Z1に配置されている液滴Lの液滴量を求める(ステップS1−3a)。この様な一連の手順は、パーソナルコンピュータ等を用いて容易に行うことができる。この手順は、非常に簡便な方法であり、短時間で液滴量を求めることができる。このため、多数の液滴Lを測定する場合等に有効である。
【0046】
また、図5(b)に示す手順を用いることもできる。この方法は、撥液領域Z2の撥液性が不安定だったり、配置する液滴の表面状態が変化し易い場合等に有効である。まず、図5(a)に示したのと同様の手順を用いて、液滴Lが配置されている領域を求める(ステップS1−1b)。これにより、液滴Lが存在する面積を見積もることができる。つぎに実験により求めておいた信号強度と液滴の厚さ(液量)の関係より、液滴配置領域Z1内の各撮像画素20の信号強度を、液滴Lの厚さ(液量)に換算する(ステップS1−2b)。さらに、この各撮像画素20の液滴Lの厚さと、撮像画素20の面積に相当する値を掛け合わせ、その値を液滴Lが配置されている領域内の全ての撮像画素20に関して積算することにより、液滴配置領域Z1に配置されている液滴Lの液滴量を求める(ステップS1−3b)。この方法、液滴Lを配置する領域の形状が変化した場合でも対応することが可能である。
【0047】
本実施形態では、溶質の発光を撮影する場合を説明したが、発光を撮影する対象は溶媒としても良い。どちらの発光を用いて観察するかは、利用可能な照明光の波長領域と撮影可能な波長領域とで高感度に発光を撮影できる方を選ぶことが望ましい。特に、有機溶媒には350nmから400nmの光を照射することで、強い蛍光を発するものも多いため、溶媒の発光を用いて液滴Lの液滴量を測定することが有効な場合も多い。
【0048】
上記実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
(1)本実施形態によれば、基板S上に配置された液滴Lに照射光Rを照射し、液滴Lの発光させるようにした。このとき、発光する光(蛍光或いは燐光等)の発光強度は、液滴L中に含まれる発光物質の量に依存するので、蛍光或いは燐光等の波長領域に相当する所定の波長領域の発光を測定することで液滴L中の発光物質の量を測定することができる。液滴L中に含まれる発光物質の量は、ほぼ一定の割合であることから、液滴Lの液滴量を測定することができる。
【0049】
(2)本実施形態によれば、照射光Rを照射した液滴L全体の発光の画像を、撮像装置12によって撮影するようにした。そして、その画像データを処理することで液滴Lの液滴量を算出するようにした。従って、基板S上に配置された液滴Lは、2次元状の広がりをもつため特定の位置の発光強度のみを測定しても液滴Lの量を決定することが難しく、また、複数の点の発光強度を個別に測定すると、測定時間が長くなるという問題を解決す
ることができる。
【0050】
(3)本実施形態によれば、撮像装置12によって撮影した液滴Lの発光のピーク強度により液滴Lの液滴量を算出するようにした。液滴Lの発光する光の強度は、基板S上での液滴Lの高さに依存するため、そのピーク強度を測定することで、液滴Lの最大高さが求められる。そして、その液滴Lの最大高さから液滴Lの量を求めることができる。この結果、簡単な計算で液滴Lの量を求めることができる。
【0051】
(4)本実施形態によれば、液滴Lが配置されている領域を求め、つぎに実験により求めておいた信号強度と液滴の厚さ(液量)の関係より、液滴配置領域Z1内の各撮像画素20の信号強度を、液滴Lの厚さ(液量)に換算する。さらに、この各撮像画素20の液滴Lの厚さと、撮像画素20の面積に相当する値を掛け合わせ、その値を液滴Lが配置されている領域内の全ての撮像画素20に関して積算することにより、液滴配置領域Z1に配置されている液滴Lの液滴量を求めるようにした。従って、撥液領域Z2の撥液性が不安定だったり、配置する液滴の表面状態が変化し易い場合であっても液滴Lの液滴量を求めることができる。また、液滴の形状のばらつきが大きい場合でも高い精度で液滴の量を求めることができる。
【0052】
(5)本実施形態によれば、液滴Lを、機能性材料を溶媒に溶解または分散させたものとした。従って、液滴吐出ヘッド11から液滴Lを吐出させてその吐出量に応じた膜厚の膜を形成するようにした、所謂液滴吐出法によって膜を形成する場合、その液滴の吐出量を測定することができることから、形成する膜の膜厚や膜質の均一性を保つ上で有用である。
【0053】
(6)本実施形態によれば、液滴Lを構成する溶媒は蛍光性を有する有機溶媒である。従って、溶媒に対する溶質の量は0.5%程度から数%であり、そのほとんどが溶媒である。この結果、液滴L中での組成比の高い溶媒の蛍光による発光を測定することで、S/Nの高い測定を行うことができる。また、液滴Lを構成する機能性材料が、蛍光或いは燐光等を発光する性質を有していない場合であっても、液滴Lの液滴量の測定を行うことができる。
【0054】
(7)本実施形態によれば、照射光Rの波長を350nm〜450nmとした。従って、液滴Lの底の領域まで液滴L内部に均一に照射光Rを照射することができるので、液滴Lからの発光を液滴L全体からの発光とすることができる。この結果、液滴Lの高さに関する情報を正確に得ることができることにより、S/N比の高く、精度の高い液滴Lの液滴量の測定を行うことができる。
【0055】
(8)本実施形態によれば、照射光Rを基板Sの面Saに対して50°の角度で入射する様にした。そして、基板Sの面Sa対して垂直な方向に出射される光を撮像装置12によって撮影するようにした。従って、液滴Lによる反射光或いは散乱光の影響を抑えられる。この結果。測定する光の信号のS/N比が向上し、液滴Lの液滴量の測定精度を向上させることができる。また、照射光Rを液滴Lの内部まで効率良く照射させることができるので、高い強度の発光を得ることができる。
【0056】
(9)本実施形態によれば、照射光Rの光源13Aを発光ダイオードとした。従って、発光ダイオードは、簡単な構成でありながら比較的狭い波長領域の光を、高い輝度で照射することができるため、測定の精度を低下させることなく、照明装置13をコンパクトに構成することができる。更には、高速で点灯、消灯することができるため、照射光Rを照射終了後、一定時間後に測定を行う場合に容易に対応することができる。
【0057】
(10)本実施形態によれば、液滴Lを構成する機能性材料は、発光材料、電荷輸送材料を含んでいる。従って、一般に、発光材料、電荷輸送材料を含んでなる液滴Lは、吐出が不安定となり易く、吐出量のばらつきが発生し易いが、この様なばらつきを即座に検出し、それによる不良の発生を防止することができる。
【0058】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態は、第1実施形態と撮像装置12、照明装置13、液滴吐出ヘッド11、キャリッジプレートCPの移動の制御方法のみが異なっており、測定装置10の構成、液滴Lの液滴量を求める手順は、第1実施形態と同様である。従って、同様構成をとる部分については、その詳細な説明を省略する。
【0059】
図6は、本発明の第2実施形態における照明装置13、撮像装置12及び液滴吐出ヘッド11の制御系を示したものである。図6に示すように、本実施形態の測定装置10は、制御部30を備えている。制御部30は、光源13Aの点灯(照射光Rの照射)及び消灯(照射光Rの照射の中止)のタイミング、撮像装置12の撮影のタイミング、液滴吐出ヘッド11の液滴吐出のタイミング、キャリッジ移動駆動装置の移動のタイミング及びステージ移動駆動装置の移動のタイミングを統合的に制御している。
【0060】
光源13Aの点灯及び消灯は、該光源13Aに設けられたシャッター(図示略)により行う方式を用いている。この様な統合的な制御系を用いることにより、液滴Lの配置から測定までの精度の高いタイミングの制御が可能となり、本発明の液滴測定方法における測定精度の向上を図ることができる。
【0061】
図7は、第2実施形態におけるキャリッジプレートCPの移動のタイミング、光源13Aの点灯/消灯のタイミング、撮像装置12の撮影開始のタイミング及び液滴吐出ヘッド11の液滴吐出のタイミングの関係を示した図である。
【0062】
図7に示すように、制御部30から出力される撮像装置制御信号Q4に従って液滴Lが吐出されてから所定の時間t1後に撮像装置12による撮影が行われる様に制御されている。その間に、制御部30から出力されるキャリッジプレート制御信号Q1に従ってキャリッジプレートCPが基板Sに対して相対的に移動し、撮像装置12が配置された液滴Lと対向する位置になる様に制御されている。この様な制御を行うことにより、撮影が行われるまでの間に蒸発する液滴Lの量を一定に保つことが可能となる。この結果、基板Sの面Sa上に配置された液滴Lから溶媒が蒸発することの測定への影響を低減することができる。特に溶媒が揮発性の高いものである場合や、発光を観察する対象が溶媒成分である場合に、液滴量測定の精度を確保する上で有効である。また、液滴Lの配置から測定までのそれぞれのタイミングを統合的に制御することにより、高い精度でのタイミングの制御が可能であり効率良く測定を進めることが可能となっている。実際上、この様な制御系を用いることで、数μsの単位でのタイミングの制御が可能となっている。
【0063】
キャリッジプレートCPに対する基板S或いは基板Sを載置しているステージの相対的な移動は、ステージの移動を制御することでも可能である。また、キャリッジプレートCP又はステージを連続的に移動し、移動中に液滴Lの吐出や、照明光の照射、撮影を行う様にしても良い。
【0064】
また、照明装置13による照射光Rの照射が停止(光源の消灯)後、所定の時間t2後に撮影が行われる様に制御されている。この結果、照射光Rのラマン散乱等による撮影への影響を低減することができる。照射光Rの照射が停止するとほぼ同じタイミングでラマン散乱等による光は無くなるため、蛍光や燐光のみの発光を測定することが可能となる。特に、発光の寿命の長い燐光を発光する液滴Lを測定する場合にはこの様なタイミング制
御による測定は有効である。実際上、上記の様な制御系を用いることで、数μsの単位でのタイミングの制御が可能であり、ラマン散乱による影響の大きい波長領域の光を撮影する必要がある場合でも、有効な撮影を行うことができる。
【0065】
上記実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
(1)本実施形態によれば、照明装置13による照射光Rの照射が停止(光源の消灯)後、所定の時間t2後に撮影が行われる様にした。従って、液滴Lから発せられる光の波長領域が、照射光Rの波長に等しいか大きく重なる場合であっても、高いS/N比で発光の測定を行うことができる。この結果、液滴Lの液滴量の測定の精度を向上することができる。
【0066】
(2)本実施形態によれば、液滴Lが吐出されて基板S上に液滴Lを配置した後、所定の時間t1後に撮像装置12による撮影が行われる様にした。従って、液滴Lを構成する溶媒が、揮発性の高い溶媒であっても溶媒の蒸発による測定への影響を抑えることができる。尚、測定を行うまでの時間のばらつきは1秒以下が望ましいが、2〜3秒程度の範囲であればある程度の精度は確保することができる。また、液滴Lを配置してから測定までの時間は、5秒以下とすることが望ましい。5秒以下であれば、液滴吐出法での成膜に用いられる殆どの溶媒に対して、実用的な精度で測定を行うことが可能である。
【0067】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態は、複数の液滴を一度の撮影で行うことによって測定するようにしたものであって、測定装置10の構成は、第1実施形態と同様である。従って、測定装置10の構成については、その詳細な説明を省略する。
【0068】
図8は、第3実施形態に係る撮像装置12の撮影画像の一例を示すものである。撮像装置12で適当な撮影倍率を選ぶことにより2つの液滴L1,L2の発光の分布を一つの撮影画像の中に収めている。液滴L1、液滴L2は、それぞれ液滴吐出ヘッド11に設けられた異なる吐出口より吐出される。この様に複数の液滴を一度に撮影することは、測定の高速化に有効である。特に表示装置等で液滴Lの吐出不良の検出等に適用する場合、多数の液滴の液滴量を短時間で測定する必要が生じるため有効である。図8では2つの液滴L1,L2を撮影する例を示しているが、より多くの液滴を一度に撮影する様にしても良い。
【0069】
図9は、第3実施形態における測定において、撮像装置12により撮影した信号より液滴吐出の不良等に起因する液滴L1,L2の液滴量の変動を検出する手順を示したものである。
【0070】
まず、上記第1実施形態と同様な方法を用いて、液滴L1,L2が配置されている領域を求めた後、それぞれの領域内での信号強度のピーク値を求める(ステップS2ー1〜S2ー4)。液滴L1の信号強度のピーク値と液滴L2の信号強度のピーク値を比較することにより、配置された液滴量の変動を検出する(ステップS2ー5)。液滴L1と液滴L2の液滴量の差がある程度以上大きいことは、それらの液滴を吐出した液滴吐出ヘッド11に液滴吐出口のいずれか或いは両方が吐出不良を起していることになる(ステップS2ー6)。
【0071】
この手順では、予め実験により発光強度のピーク値と液滴量の関係を求めて置く必要が無いため、吐出不良の検出のみ行う場合には特に有効である。また、液滴量への換算が不要のため、高速で行うことが可能である。
【0072】
以上、1回の撮影で複数の液滴L1,L2を測定する場合のみについて説明したが、液
滴L1,L2が配置された領域内での信号のピーク強度を比較することに、配置された液滴L1,L2の液滴量の変動を手順は、異なる撮影で得た画像を処理する場合にも有効である。また、複数の液滴を1回の撮影で測定して、第1実施形態に示した方法で各液滴L1の液滴量を算出しても良い。
【0073】
上記実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
(1)本実施形態によれば、基板S上に配置された2つの液滴L1,L2に照射光Rを照射し、その2つの液滴L1,L2の特定波長の発光の画像を一度に撮影した。従って、短時間に複数の液滴Lの測定の高速化に有効である。これは、特に表示装置等で液滴Lの吐出不良の検出等に適用する場合、多数の液滴Lの液滴量を短時間で測定する必要が生じるため有効である。
【0074】
(2)本実施形態によれば、撮影した画像から2つの液滴L1,L2が存在する領域の発光の信号強度を、それぞれの液滴が存在する面積に渡って積算することにより液滴L1,L2の量の違いを検出するようにした。従って、異なるノズルから吐出された2つの液滴L1,L2に照射光Rを照射し、それらの各発光を測定し比較することで、いずれかのノズルから吐出される液滴L1,L2の液滴量が変動したことを検出することができる。この結果、いずれかのノズルから吐出される液滴量が変動したことを検出することができる。
【0075】
(3)本実施形態によれば、発光の強度を液滴の量に換算する必要が無いため、短時間で効率的に配置される液滴の量の変動を検出することができる。また、それぞれの液滴全体の発光の画像を撮影し、その画像データを処理することで、効率的に検出を行うことができる。
【0076】
(4)本実施形態によれば、それぞれの液滴L1,L2の各発光のピーク強度を比較する方法を用いることで、データの処理がより簡便となる。また、それぞれの液滴が存在する領域の発光信号強度を、液滴L1,L2が存在する面積に渡って積算した値を比較することで、液滴L1,L2の形状のばらつきが大きい場合でも高い精度で液滴L1,L2の量の違いを検出することができる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態を説明する。第4実施形態は、基板S上に成膜された薄膜の膜厚を測定するものである。第4実施形態に係る測定装置の構成は、第1実施形態の測定装置10と同様ものを用いている。従って、測定装置10に構成については、その詳細な説明を省略する。
【0077】
まず、上記第1実施形態と同様の方法で、基板S上に設けられた液滴配置領域Z1に液滴Lを配置する。この液滴Lから溶媒を除去することにより基板S上の液滴配置領域Z1に機能性薄膜40を形成する。溶媒の除去は、液滴Lを配置した基板Sを密閉容器に入れ、その内部を常温で減圧することにより行う。減圧する速度を、大気圧から100Pa付近までを数分程度とすることで、均一性の高い機能膜を形成することができる。
【0078】
図10(a)は、基板S上に機能性薄膜40が形成された様子を示すものである。図10(b)は形成された機能性薄膜40に照射光Rを照射したときの所定の波長領域での発光の様子を示すものである。有機機能性材料には第1実施形態と同様に緑色(540nm〜600nm)の発光を有するポリフルオレン系高分子誘導体を用いた場合に、400nm〜450nmの波長領域の照明光を照射し、540nm〜580nmの波長領域の画像を測定装置10の撮像装置12で取得したものである。
【0079】
図11(a)は、図10(b)中B−B断面における機能性薄膜40の断面の様子を模
式的に示したものである。液滴Lから溶媒を除去する条件を最適化することで、均一性の高い薄膜を得られている。図11(b)は、図11(a)に示す膜厚分布の場合の発光強度の分布の様子を示したものである。図11(b)に示すように、機能性薄膜40の膜厚に依存した発光強度が得られていることがわかる。
【0080】
この様に発光の信号強度が、機能性薄膜40の膜厚に依存することから、予め実験により機能性薄膜40の膜厚と発光の強度の関係を求めておくことにより、発光の信号強度から機能性薄膜40の膜厚を算出することができる。撮影した画像の機能性薄膜40が存在する領域のそれぞれの撮像画素20からの信号強度を膜厚に変換することで、配置された機能性薄膜40の膜厚の分布を求めることができる。また、乾燥条件の異状等により、機能性薄膜40の膜厚分布に異状が出た場合いは、複数の液滴Lでこれらの画像或いは膜厚分布を比較することで、検出することができる。
【0081】
また、上記第2実施形態の制御系を用いて、照射光Rの照射を停止後、一定時間後に撮影を行う様にしても良い。この様な方法を用いることで、測定する材料が、ラマン散乱等の影響を受け易い材料であっても、高いS/N比で膜厚分布に相当する発光画像を撮影することができる。
【0082】
上記実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
(1)本実施形態によれば、予め実験により機能性薄膜40の膜厚と発光の強度の関係を求めておくことにより、発光の信号強度から機能性薄膜40の膜厚を算出することができる。
【0083】
(2)本実施形態によれば、乾燥条件の異状等により、機能性薄膜40の膜厚分布に異状が出た場合には、複数の液滴Lでこれらの画像或いは膜厚分布を比較することで、検出することができる。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態を説明する。第5実施形態は、基板S上に配置された液滴Lの液滴量と所定の波長領域の光を照射したときの液滴Lの発光との関係を求める手順の一例を示したものである。第5実施形態に係る測定装置は、第1実施形態と同じであるので、測定装置に構成については、その詳細な説明を省略する。
【0084】
図12(a),(b),(c)は、発光のピーク強度と液滴Lの液滴量の関係を求める際の実験の方法を示したものである。詳しくは、吐出特性の安定した吐出口を備えた液滴吐出ヘッド11を用いて、1つの液滴配置領域Z1内に液滴Lを配置し、撮像装置12によってその発光を撮影する。基板Sは、実際に液滴Lの液滴量の測定を行うものと同じである。そして、液滴配置領域Z1内に吐出する液滴Lの数を、図12(a),(b),(c)に示すように、5ショット(吐出)、10ショット、15ショットに変更して配置する。続いて、それらの異なる液滴量を有する液滴Lに所定の強度及び波長領域の照射光Rをあてて、その発光を撮影する。そして、第1実施形態と同様の手順でそれらの画像の液滴領域のピーク信号強度を求める。この様にして求めた信号のピーク強度とショット数より、図15に示す様な関係が得られる。1ショットでの液滴量は、例えば容器中に多数のショット、例えば1万ショットを吐出したものの重量を測定することで求めることができる。この様にして求めたショット数を液滴量に換算することにより液滴量とピーク強度の関係を求めることができる。
【0085】
図13(a),(b),(c)は、発光の強度と機能性薄膜40の膜厚の関係を求める際の実験方法を示したものである。前記と同様に、吐出特性の安定した吐出口を備えた液滴吐出ヘッド11を用いて、1つの液滴配置領域Z1中に液滴Lを配置し、その液滴Lを乾燥させて得られる機能性薄膜40の発光を撮影する。基板Sは、実際に膜厚の測定を行
うのと同様のもの用いる。液滴配置領域Z1中に吐出する液滴Lの数を、図13(a),(b),(c)に示すように、例えば5ショット(吐出)、10ショット、15ショットの様に変更して、異なる膜厚の機能性薄膜40を形成する。それらの異なる膜厚を有する機能性薄膜40に所定の強度及び波長領域の光をあてて、その発光を撮影する。次にこれらの機能性薄膜40の一部を物理的な方法等で除去し、触針式の段差計等を用いてその膜厚を測定する。膜厚を測定した位置の発光の信号強度と、膜厚の関係をグラフ化することで、発光強度と機能性薄膜40の膜厚の関係を求めることができる。
【0086】
図14(a),(b),(c)は、発光の強度とその位置の液体の厚さ(液量)の関係を求める際の実験の方法を示したものである。この実験では、液滴Lの配置領域は、液滴Lの分布が周囲の撥液領域Z2の影響を受けない様に面積の大きなものを用いる。この様に面積の大きな液滴配置領域Z1を用いた場合には、液滴Lの厚さは液滴の量を液滴配置領域Z1の面積で割ったものに等しくなる。この様な撥液領域Z2を有する基板Sを用いて、ショット数を変えてその液滴Lの発光強度を測定することで、局所的な液滴Lの厚さと発光の信号強度の関係を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】測定装置の概略構成図。
【図2】(a),(b)は、それぞれ基板の上面図。
【図3】(a)は、図2(b)のA−Aの断面図、(b)はその発光強度の変化を示すグラフ。
【図4】撮像装置による液滴の撮影画像のイメージ。
【図5】(a),(b)は、それぞれ、液滴Lの液滴量を求める手順を示した図。
【図6】光源、撮像装置及び液滴吐出ヘッドの制御系を示した図。
【図7】キャリッジプレートの移動のタイミング、光源の点灯/消灯のタイミング、撮像装置の撮影開始のタイミング及び液滴吐出ヘッドの液滴吐出のタイミングの関係を示した図。
【図8】撮像装置の撮影画像の一例を示す図。
【図9】液滴吐出の不良等に起因する液滴の液滴量の変動を検出する手順を示した図。
【図10】(a)は、基板上に機能性薄膜が形成された様子を示す図であり、(b)はその機能性薄膜に所定の波長領域の光を照射したときの発光の様子を示す図。
【図11】(a)は、機能性薄膜の断面の様子を模式的に示した図であって、(b)は、(a)に示す膜厚分布の場合の発光強度の分布の様子を示した図。
【図12】(a),(b),(c)は、それぞれ、発光のピーク強度と液滴の液滴量の関係を求める際の実験の方法を示した図。
【図13】(a),(b),(c)は、それぞれ、発光の強度と機能性薄膜の膜厚の関係を求める際の実験方法を示した。
【図14】(a),(b),(c)は、発光の強度とその位置の液体の厚さ(液量)の関係を求める際の実験の方法を示した図。
【図15】吐出ショット数とピーク発光強度との関係を示す図。
【符号の説明】
【0088】
S…基板、L…液滴L、R…照射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配置された液滴に所定の波長領域の光を照射し、
前記液滴の特定波長領域の発光を測定することにより前記液滴の液滴量を測定することを特徴とする液滴測定方法。
【請求項2】
前記液滴の特定波長領域の発光の画像を撮影し、前記液滴の液滴量を測定することを特徴とする請求項1に記載の液滴測定方法。
【請求項3】
前記撮影した画像の、前記液滴が存在する領域の発光のピーク強度により前記液滴量を算出することを特徴とする請求項2に記載の液滴測定方法。
【請求項4】
前記撮影した画像の、前記液滴が存在する領域の発光の信号強度を、液滴が存在する面積に渡って積算することにより前記液滴量を測定することを特徴とする請求項2に記載の液滴測定方法。
【請求項5】
基板上に配置された2つの液滴に所定の波長領域の光を照射し、
前記2つの液滴の特定波長領域の発光を測定し、前記2つの液滴量の違いを検出することを特徴とする液滴測定方法。
【請求項6】
前記2つの液滴の特定波長の発光の画像を撮影し、前記2つの液滴量の違いを検出することを特徴とする請求項5に記載の液滴測定方法。
【請求項7】
前記撮影した画像の、前記2つの液滴が存在する領域のそれぞれの発光のピーク強度を比較することにより、前記2つの液滴量の違いを検出することを特徴とする請求項6に記載の液滴測定方法。
【請求項8】
前記撮影した画像の、前記2つの液滴が存在する領域の発光の信号強度を、それぞれの液滴が存在する面積に渡って積算することにより前記液滴量の違いを検出することを特徴とする請求項6に記載の液滴測定方法。
【請求項9】
前記液滴が、機能性材料を溶媒に溶解または分散させたものであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の液滴測定方法。
【請求項10】
前記溶媒が蛍光性を有する有機溶媒を含むことを特徴とする請求項9に記載の液滴測定方法。
【請求項11】
前記液滴に照射する光が波長350nm〜450nmの光であることを特徴とする請求項10に記載の液滴測定方法。
【請求項12】
前記所定の波長領域の光を、前記基板の面に対して45°〜70°の角度で入射する様に照射し、
前記基板の面に対して垂直な方向に出射される光を測定することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の液滴測定方法。
【請求項13】
前記所定の波長領域の光を照射終了後、一定時間経過後に前記液滴の発光を測定することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の液滴測定方法。
【請求項14】
前記液滴を前記基板上に配置後、一定時間の範囲内で、前記液滴量の測定を行うことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の液滴測定方法。
【請求項15】
前記液滴に所定の波長領域の光を照射する光源に発光ダイオードを用いることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の液滴測定方法。
【請求項16】
前記機能性材料が発光材料、電荷輸送材料を含むことを特徴とする請求項9乃至15のいずれか1項に記載の液滴測定方法。
【請求項17】
前記液滴を液滴吐出法により配置したことを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の液滴測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−121027(P2007−121027A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311455(P2005−311455)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】