説明

液状封止用エポキシ樹脂組成物及び半導体装置

【課題】
密着性及び耐熱性に優れた液状封止用エポキシ樹脂組成物及びこの液状封止用エポキシ樹脂組成物を用いて封止した半導体装置を提供すること。
【解決手段】
エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤を含有する液状封止用エポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂として、ナフタレン型エポキシ樹脂、3官能型エポキシ樹脂及び4官能型エポキシ樹脂のうちの少なくとも一つを配合するとともに、ナフタレン型エポキシ樹脂を用いる場合はエポキシ樹脂の全量に対して20質量%以上、3官能型エポキシ樹脂又は4官能型エポキシ樹脂を用いる場合はエポキシ樹脂の全量に対して5〜20質量%配合し、硬化剤として、下記化学式(1)で示される酸無水物系硬化剤を、酸無水物系硬化剤の全量に対して10〜70質量%配合して成ることを特徴とする。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子を封止するために用いられる液状封止用エポキシ樹脂組成物及びこの液状封止用エポキシ樹脂組成物を用いて封止した半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂封止型の半導体装置(半導体パッケージ)は、デバイスの高密度化、高集積化、動作の高速化等の傾向にあり、従来型のパッケージ(QFP(クワドフラットパッケージ)等)よりさらに小型化、薄型化することができる半導体素子のパッケージが要求されている。これらの要求に対してBGA(ボールグリッドアレイ)及びCSP(チップサイズパッケージ)、ベアチップ実装といった高密度実装が可能なパッケージが注目されている。
【0003】
このようなパッケージを用いた電化製品としてはデジタルカメラやビデオ、ノート型パソコン、携帯電話等を挙げることができる。今後は、製品自体の小型化、薄型化、複雑化に伴って耐衝撃性やその他の信頼性が求められるとともに、電化製品の内部の基板や電子部品にも同様な性質が求められるものである。
【0004】
従来、樹脂封止型の半導体装置においては、半導体素子を封止する封止樹脂として、ビスフェノール型エポキシ樹脂や脂環式エポキシ樹脂等を主要成分とし、液状の酸無水物やフェノールノボラック樹脂等の硬化剤、さらに無機充填材等を含んだエポキシ樹脂組成物が用いられてきた。
【0005】
ところが、このようなエポキシ樹脂組成物で封止した半導体装置においては、チップ等の半導体素子と、封止樹脂が硬化した硬化物との間の熱膨張係数の差が大きく、このためヒートサイクル試験を行った際に応力が発生したり、また、JEDEC LEVELの吸湿試験により吸湿した水分が高温に曝される際に急激に気化膨張したりして、半導体素子や硬化物にクラックが生じ、製品としての信頼性の低下を招いていた。
【0006】
そこで、このような問題を解決するために、半導体素子と硬化物との間の熱膨張係数の差を低減する手法が検討され、その結果、エポキシ樹脂組成物に無機充填材を高充填させたり、シリコーンを添加したりして、硬化物を応力緩和し易くする方法が有効であるとの結論を得た(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特許第2853550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、液状のエポキシ樹脂組成物に無機充填材を高充填させると、硬化物の耐熱性は向上するものの、封止成形時において粘度が上昇して流動性が失われ、半導体素子の封止作業が困難となり、しかも、硬化物の密着性も低下するおそれがあった。また逆に、流動性や密着性を確保するために無機充填材の配合量を減らすと、硬化物の耐熱衝撃性等の耐熱性を高く得ることができなくなるという傾向がみられるものであった。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、密着性及び耐熱性に優れた液状封止用エポキシ樹脂組成物及びこの液状封止用エポキシ樹脂組成物を用いて封止した半導体装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る液状封止用エポキシ樹脂組成物においては、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤を含有する液状封止用エポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂として、ナフタレン型エポキシ樹脂、3官能型エポキシ樹脂及び4官能型エポキシ樹脂のうちの少なくとも一つを配合するとともに、ナフタレン型エポキシ樹脂を用いる場合はエポキシ樹脂の全量に対して20質量%以上、3官能型エポキシ樹脂又は4官能型エポキシ樹脂を用いる場合はエポキシ樹脂の全量に対して5〜20質量%配合し、硬化剤として、下記化学式(1)で示される酸無水物系硬化剤を、酸無水物系硬化剤の全量に対して10〜70質量%配合して成ることを特徴とする。
【0010】
【化2】

【0011】
請求項2に係る液状封止用エポキシ樹脂組成物においては、硬化促進剤として、アミン系及びイミダゾール系のうちの少なくとも一方を配合して成ることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る液状封止用エポキシ樹脂組成物においては、硬化剤として、前記化学式(1)で示される酸無水物系硬化剤に加えて多官能型の酸無水物系硬化剤を配合して成ることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る液状封止用エポキシ樹脂組成物においては、無機充填材を配合して成ることを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る半導体装置においては、請求項1〜4のいずれかに記載の液状封止用エポキシ樹脂組成物により封止されて成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上記本発明の請求項1によれば、密着性及び耐熱性に優れた液状封止用エポキシ樹脂組成物を得ることができる。
【0016】
上記本発明の請求項2によれば、液状封止用エポキシ樹脂組成物の硬化性を良好に確保することができる
上記本発明の請求項3によれば、液状封止用エポキシ樹脂組成物の耐熱性をより高めることができる。
【0017】
上記本発明の請求項4によれば、硬化物の吸湿性を低く抑えることができるとともに、線膨張を低く抑えることができる。
【0018】
上記本発明の請求項5によれば、密着性及び耐熱性に優れた半導体装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
本発明ではエポキシ樹脂として、ナフタレン型エポキシ樹脂、3官能型エポキシ樹脂及び4官能型エポキシ樹脂のうちの少なくとも一つを必須化合物とする。
【0021】
ナフタレン型エポキシ樹脂としては、例えば、1,6−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ナフタレン等が挙げられる。
【0022】
また、3官能型エポキシ樹脂及び4官能型エポキシ樹脂としては、下記化学式(2)〜(7)に示されるようなものが挙げられる。ここで、化学式中のGはグリシジル基を示す。
【0023】
【化3】

【0024】
【化4】

【0025】
なお、エポキシ樹脂として上記必須化合物以外のエポキシ樹脂を併用してもよいものであり、特に限定されるものではないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート等が挙げられ、これらの中から1種又は2種以上選んで使用することができる。これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂が、粘度と硬化物の物性の点から特に好ましい。
【0026】
また本発明における、上記必須化合物であるエポキシ樹脂の配合量については、ナフタレン型エポキシ樹脂を用いる場合はエポキシ樹脂の全量に対して20質量%以上、3官能型エポキシ樹脂又は4官能型エポキシ樹脂を用いる場合はエポキシ樹脂の全量に対して5〜20質量%とする。
【0027】
この理由として、ナフタレン型エポキシ樹脂を用いる場合においては、配合量がエポキシ樹脂の全量に対して20質量%未満であると、耐熱性の向上という本発明の目的を達成することができないためである。なお、配合量の上限としては特に限定されるものではない。
【0028】
また、3官能型エポキシ樹脂又は4官能型エポキシ樹脂を用いる場合においては、配合量がエポキシ樹脂の全量に対して5質量%未満であると、耐熱性の向上という本発明の目的を達成することができず、逆に、20質量%を超えると、液状封止用エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなりすぎて封止を行う際の作業性が低下するためである。
【0029】
本発明においては硬化剤として、下記化学式(1)で示される酸無水物系硬化剤を、酸無水物系硬化剤の全量に対して10〜70質量%配合して成るものである。
【0030】
【化5】

【0031】
その他併用する硬化剤は通常エポキシ樹脂と硬化するものであれば特に問題はない。例えば、ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミン等のアミン系硬化材、無水フタル酸、無水ピロメリット酸等の酸無水物系硬化材、フェノールノボラック系硬化材等が挙げられる。また、多官能型酸無水物系硬化剤としては下記化学式(8)〜(13)に示されるようなものが挙げられる。
【0032】
【化6】

【0033】
【化7】

【0034】
本発明では、配合されるエポキシ樹脂に対する硬化剤の化学量論上の当量比は、0.6〜1.4の範囲が好適である。当量比が0.6未満であると、本発明の液状封止用エポキシ樹脂組成物が硬化しにくくなったり、硬化物の耐熱性や強度が低下したりするので好ましくない。 逆に、当量比が1.4を超えると、硬化物の耐熱性や接着強度が低下したり、硬化物の吸湿率が高くなったりする等の欠点が発現するおそれがあるので好ましくない。なお、上記の当量比は、0.75〜1の範囲が特に好ましい。
【0035】
また、信頼性の点からNaイオンやClイオン、Brイオン等の不純物が出来るだけ少ないエポキシ樹脂及び硬化剤を使用する方が好ましい。
【0036】
本発明で用いられる硬化促進剤としては、イミダゾール骨格を持ったイミダゾール系のものもしくはアミン系のもの(アミン類化合物)のうちの少なくとも一方を用いるのが好ましく、これにより、本発明の液状封止用エポキシ樹脂組成物の保存性及び硬化性を良好に確保することができる。
【0037】
このような硬化促進剤としては、例えば、1〜3級のアミン類もしくはその塩、トリアゾール類もしくはその塩、イミダゾール類もしくはその塩、ジアザビシクロウンデンセン(DUB)などのジアザビシクロアルケン類もしくはその塩等の公知のものを単独又は2種類以上併用することができる。さらに、上記のような単一の化学構造を持つもの以外に、イミダゾール骨格を有する化合物からなる核の周りに熱硬化性樹脂の被膜を配した微細球(いわゆるマイクロカプセル)、又はアミンアダクトの粒子などが硬化促進剤として好適に用いられる。
【0038】
本発明で用いられる無機充填材としては、特に限定されるものではないが、例えば、結晶シリカ、溶融シリカ、微粉シリカ、アルミナ、マグネシア、窒化珪素等を用いるのが好ましい。また、これらの無機充填材は本発明の液状封止用エポキシ樹脂組成物の全量に対して50〜85質量%の割合で配合することが好ましい。無機充填材の配合量が50質量%未満であると、本発明の液状封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の線膨張係数を低減することが難しく、ヒートサイクル性の低下などのように耐熱性が向上しにくくなる恐れがある。一方、無機充填材の配合量が85質量%を超えると、本発明の液状封止用エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなり、流動性が損なわれて使用することが困難になる恐れがある。
【0039】
また近年、金線ワイヤー間、バンプ間、充填ギャップ間(半導体素子と配線基板との間の隙間)が狭くなっていることから、無機充填材の粒径は、ある程度細かい方が好ましい。すなわち、無機充填材の粒径を細かくすることに伴う液状封止用エポキシ樹脂組成物の粘度上昇や、硬化時における無機充填材の沈降を考慮すると、具体的には、粒径30μm以上のものが全体の20質量%以下であって、粒径1μm以下のものが全体の5〜40質量%であるものを用いるのが好ましい。
【0040】
本発明に係る液状封止用エポキシ樹脂組成物は、上述したようなエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填材の他に、エポキシシランカップリング剤等のカップリング剤、界面活性剤、難燃剤、離型剤、消泡剤、染料、顔料等を配合することもできる。
【0041】
カップリング剤としては、シランカップリング剤が望ましく、その種類はエポキシ系、アミノ系、ビニル系、メタクリル系、チタネート系などエポキシ樹脂の改質、基板等の密着性を向上させる等の目的で用いられるものが好ましい。
【0042】
シランカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン、更に、エポキシ系、アミノ系、ビニル系の高分子タイプのシラン等があり、特に、エポキシシラン、アミノシラン、メルカプトシランが好適である。
【0043】
チタネートカップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、ジイソプロピルビス(ジオクチルホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられる。
【0044】
これらのカップリング剤は、単独で使用しても良いし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
これらのカップリング剤は、前記化学式(1)で示される酸無水物系硬化剤を含む液状封止用エポキシ樹脂組成物中に配合されることで、封止樹脂と半導体チップ及び回路基板の界面の接着性を向上して、半導体装置の信頼性を高めることができるようになる。また、カップリング剤の使用方法は、無機充填材を配合する場合においては、あらかじめ無機充填材に対して湿式法あるいは乾式法で処理しても良いし、無機充填材の配合有無に関わらず封止樹脂に混合するインテグラルブレンド法で使用しても良い。
【0046】
そして、本発明に係る液状封止用エポキシ樹脂組成物を調製するにあたっては、以下のようにして行うことができる。すなわち、上記のエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、その他必要に応じてカップリング剤、界面活性剤、難燃剤、離型剤、消泡剤、染料、顔料等を一緒に又は別々に配合し、必要に応じて加熱冷蔵処理を行いながら撹拌、溶解、混合、分散を行う。次に、この混合物に無機充填材を加えて、必要に応じて加熱冷蔵処理を行いながら撹拌、溶解、混合、分散を行うことによって、液状のエポキシ樹脂組成物を調製することができるものである。なお、上記の撹拌、溶解、混合、分散等の工程において、ディスパー、プラネタリーミキサー、ボールミル、3本ロール等を適宜組み合わせて使用することができる。
【0047】
次に、上記のようにして調製した液状封止用エポキシ樹脂組成物を用いて封止成形することによって、半導体装置を作製することができる。例えば、ガラス・エポキシ配線基板(ガラエポ基板)に搭載されたICチップ等の半導体素子を液状封止用エポキシ樹脂組成物でポッティング方式によりモールドすることによって、半導体素子をエポキシ樹脂組成物による封止樹脂で封止した半導体装置を作製することができるものである。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
(実施例1〜12及び比較例1〜9)
表1〜3に示す配合量でエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、及び無機充填材以外の成分を一緒にまたは別々に配合し、加熱冷蔵処理を行いながら攪拌、溶解、混合、分散を行った。次に、この混合物に無機充填材を加えて、加熱冷蔵処理を行いながら攪拌、溶解、混合、分散を行った。このようにして液状のエポキシ樹脂組成物で成る封止材料を得た。
【0049】
ここで、各材料としては以下のものを用いた。
(エポキシ樹脂)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン(株)(油化シェルエポキシ(株))の「エピコート828」、エポキシ当量189
ナフタレン型エポキシ樹脂:大日本インキ化学工業(株)の「HP−4032D」、エポキシ当量143
3官能型エポキシ樹脂:日産化学工業(株)の「TEPIC−S」、エポキシ当量99
4官能型エポキシ樹脂:大日本インキ化学工業(株)の「EXA4701」、エポキシ当量169
(硬化剤)
多官能型でない酸無水物A:メチルテトラヒドロ無水フタル酸、新日本理化(株)の「MH−700」、酸無水物当量166
3官能型酸無水物B:大日本インキ化学工業(株)の「B4400」、酸無水物当量140
4官能型酸無水物C:ジャパンエポキシレジン(株)の「PMDA」、酸無水物当量218
化学式(1)で示される酸無水物D:ジャパンエポキシレジン(株)の「DEGAN」、酸無水物当量170
(硬化促進剤)
硬化促進剤A(イミダゾール系):イミダゾール系マイクロカプセル型潜在性触媒、旭化成エポキシ(株)の「HX3088」
硬化促進剤B(リン系):トリフェニルホスフィン、北興化学工業(株)の「TPP」
硬化促進剤C(アミン系): アミン変性触媒、旭電化工業(株)の「EH3849S」
(カップリング剤)
カップリング剤:エポキシシランカップリング剤、日本ユニカー(株)の「A−187」
(無機充填材)
無機充填材:溶融シリカ、(株)トクヤマの「SE15」、平均粒径15μm
そして、実施例1〜14及び比較例1〜7の液状封止用エポキシ樹脂組成物及びその成形体(硬化物)について以下の物性評価を行った。
【0050】
評価用のアルミ回路を形成した3mm角のチップを、FR4グレード相当のガラエポ基板(50mm×50mm、厚さt=0.6mm)に搭載し、25μmの金線ワイヤーをボンディングすることにより、TEG(テストエレメントグループ)を作製した。次いで、上記の液状封止用エポキシ樹脂組成物を1.5〜3g程度用いてチップ及び金線ワイヤーが見えなくなるようにTEGを封止し、100℃で1時間硬化させた後に、さらに150℃で2時間硬化させることによって、評価用パッケージを得た。
(TC試験)
次に、半導体装置の電気的動作確認結果が良品であったものについて、−55℃で30分、室温で5分、150℃で30分、室温で5分を1サイクルとする気相の温度サイクル試験にかけ、2000サイクル後の半導体装置の電気的動作確認を行い、良否を判断した。各実施例及び比較例について10個の半導体装置を供試サンプルとし、供試サンプル中の不良数が0〜3個を○、4〜6個を△、7〜10個を×とした。
【0051】
また、上記の2000サイクル後、供試サンプルの外観検査を行い、樹脂フィレット部にクラックが発生しているか否かの確認を行った。クラックが発生している供試サンプルの個数が0〜3個を○、4〜6個を△、7〜10個を×とした。
(プレッシャークッカー試験)
上記と同様に半導体装置の電気的動作確認結果が良品であったものについて、0.2MPa(2気圧)で121℃のプレッシャークッカー試験(PCT)にかけ、168時間後の半導体装置の電気的動作確認を行い、良否を判断した。各実施例及び比較例について10個の半導体装置を供試サンプルとし、供試サンプル中の不良数が0〜3個を○、4〜6個を△、7〜10個を×とした。
(粘度)
東京計器製のB8型粘度計(ローターNo7)を用いて、25℃の液状封止材料の粘度を測定して、1分後の値を粘度とした。そして、粘度が、120Pa・s以下を○、120Pa・s〜200Pa・sを△、201Pa・s以上を×とした。
【0052】
上記の試験結果を表1〜3に示す
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
表1〜3にみられるように、各実施例のものは動作不良の発生数とクラックの発生数がいずれも少なく、耐熱衝撃性及び密着性に優れることが確認される。これに対し、比較例のものは動作不良の発生数とクラックの発生数がいずれも高く、耐熱衝撃性及び密着性に乏しいことが確認される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤を含有する液状封止用エポキシ樹脂組成物において、
エポキシ樹脂として、ナフタレン型エポキシ樹脂、3官能型エポキシ樹脂及び4官能型エポキシ樹脂のうちの少なくとも一つを配合するとともに、ナフタレン型エポキシ樹脂を用いる場合はエポキシ樹脂の全量に対して20質量%以上、3官能型エポキシ樹脂又は4官能型エポキシ樹脂を用いる場合はエポキシ樹脂の全量に対して5〜20質量%配合し、
硬化剤として、下記化学式(1)で示される酸無水物系硬化剤を、酸無水物系硬化剤の全量に対して10〜70質量%配合して成ることを特徴とする液状封止用エポキシ樹脂組成物。
【化1】

【請求項2】
硬化促進剤として、アミン系及びイミダゾール系のうちの少なくとも一方を配合して成ることを特徴とする請求項1に記載の液状封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
硬化剤として、前記化学式(1)で示される酸無水物系硬化剤に加えて多官能型の酸無水物系硬化剤を配合して成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の液状封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
無機充填材を配合して成ることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液状封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の液状封止用エポキシ樹脂組成物により封止されて成ることを特徴とする半導体装置。

【公開番号】特開2006−206827(P2006−206827A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−23442(P2005−23442)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】